1:2018/11/10(土) 16:00:17.423 ID:ubjOgrEsD.net
喪黒「私の名は喪黒福造。人呼んで『笑ゥせぇるすまん』。
ただの『せぇるすまん』じゃございません。私の取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。
この世は、老いも若きも男も女も、ココロのさみしい人ばかり。
そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。
いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。
さて、今日のお客様は……。
峯岸セシリア(30) アナウンサー
【山ガール】
ホーッホッホッホ……。」
ただの『せぇるすまん』じゃございません。私の取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。
この世は、老いも若きも男も女も、ココロのさみしい人ばかり。
そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。
いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。
さて、今日のお客様は……。
峯岸セシリア(30) アナウンサー
【山ガール】
ホーッホッホッホ……。」
3:2018/11/10(土) 16:02:20.106 ID:ubjOgrEsD.net
夜。東京、港区。帝国テレビ。スタジオにいるアナウンサーたちが、挨拶をする。
アナウンサーたち「こんばんは。X月X日、『ニュースダイヤモンド』です」
女性アナウンサー・峯岸セシリアが、今日の出来事を紹介する。原稿を読むセシリア。
セシリア「本日お伝えする主な内容はこちらです。では、最初のニュース……」
テロップ「峯岸セシリア(30) アナウンサー、帝国テレビ所属」
あるスーパー銭湯。サウナ室にある大型テレビが、「ニュースダイヤモンド」を流す。テレビを見つめる客たち。
客たち「この女子アナ、なかなか可愛いじゃん」「峯岸セシリアか。変わった名前だな」「彼女、日本人とフランス人のハーフらしいぞ」
テレビの画面には、峯岸セシリアの姿が映っている。
セシリア「台湾から金塊を密輸したとして、警視庁は数人の男を逮捕しました……」
アナウンサーたち「こんばんは。X月X日、『ニュースダイヤモンド』です」
女性アナウンサー・峯岸セシリアが、今日の出来事を紹介する。原稿を読むセシリア。
セシリア「本日お伝えする主な内容はこちらです。では、最初のニュース……」
テロップ「峯岸セシリア(30) アナウンサー、帝国テレビ所属」
あるスーパー銭湯。サウナ室にある大型テレビが、「ニュースダイヤモンド」を流す。テレビを見つめる客たち。
客たち「この女子アナ、なかなか可愛いじゃん」「峯岸セシリアか。変わった名前だな」「彼女、日本人とフランス人のハーフらしいぞ」
テレビの画面には、峯岸セシリアの姿が映っている。
セシリア「台湾から金塊を密輸したとして、警視庁は数人の男を逮捕しました……」
4:2018/11/10(土) 16:04:17.964 ID:ubjOgrEsD.net
帝国テレビ。部屋の中にある時計は、真夜中の0時を迎えようとしている。
アナウンサーたち「……おやすみなさい」
スタッフ「お疲れ様でしたーー!」
撮影を終え、リラックスした様子になるアナウンサーたち。
更衣室へ行き、着替えを始めるセシリア。私服姿となったセシリアが、帝国テレビを退社する。
深夜のホテル街。ある人物を待つ一人の男性。彼は背が高く、がっちりした身体つきだ。
停車するタクシー。タクシーのドアが開き、車の中からセシリアが姿を現す。
笑顔を見せる男性。男性に手を振るセシリア。男性とセシリアが手をつなぐ。何者かが、2人の姿をカメラで撮影する。
ホテルの中に入る男性とセシリア。……ある程度時間が経ったころ、建物から出てくる2人。キスをする男性とセシリア。
またも、何者かが男性とセシリアの姿をこっそり撮影する。2人は、自分たちが写真撮影されていることに気づいていない。
アナウンサーたち「……おやすみなさい」
スタッフ「お疲れ様でしたーー!」
撮影を終え、リラックスした様子になるアナウンサーたち。
更衣室へ行き、着替えを始めるセシリア。私服姿となったセシリアが、帝国テレビを退社する。
深夜のホテル街。ある人物を待つ一人の男性。彼は背が高く、がっちりした身体つきだ。
停車するタクシー。タクシーのドアが開き、車の中からセシリアが姿を現す。
笑顔を見せる男性。男性に手を振るセシリア。男性とセシリアが手をつなぐ。何者かが、2人の姿をカメラで撮影する。
ホテルの中に入る男性とセシリア。……ある程度時間が経ったころ、建物から出てくる2人。キスをする男性とセシリア。
またも、何者かが男性とセシリアの姿をこっそり撮影する。2人は、自分たちが写真撮影されていることに気づいていない。
5:2018/11/10(土) 16:06:20.957 ID:ubjOgrEsD.net
数日後。『週刊文隆』が、男性とセシリアの不倫を大きく報道する。
週刊文隆「巨神・三橋健吾コーチ、帝テレ人気女子アナ『峯岸セシリア』と度重なる密会」
雑誌には、ホテル街にいる三橋とセシリアの写真がいくつも掲載されている。
帝国テレビ。編成局長に説教されるセシリア。
編成局長「全く、君もバカなことをしてくれたな」
セシリア「す、すみません。編成局長……」
編成局長「読朝新聞と帝国テレビは、プロ野球の読朝ギガンツを商品価値にしているんだ」
「それなのに、自社グループのアナウンサーがコーチと不倫……」
「今回の事件は……。帝テレにとっても読朝巨神軍にとっても、対外イメージが傷つく出来事だぞ」
セシリア「申し訳ありません。本当に反省しています」
編成局長「峯岸さん。『ニュースダイヤモンド』の降板はやむを得ない。場合によっては、君は帝テレを退職して貰うことになる」
週刊文隆「巨神・三橋健吾コーチ、帝テレ人気女子アナ『峯岸セシリア』と度重なる密会」
雑誌には、ホテル街にいる三橋とセシリアの写真がいくつも掲載されている。
帝国テレビ。編成局長に説教されるセシリア。
編成局長「全く、君もバカなことをしてくれたな」
セシリア「す、すみません。編成局長……」
編成局長「読朝新聞と帝国テレビは、プロ野球の読朝ギガンツを商品価値にしているんだ」
「それなのに、自社グループのアナウンサーがコーチと不倫……」
「今回の事件は……。帝テレにとっても読朝巨神軍にとっても、対外イメージが傷つく出来事だぞ」
セシリア「申し訳ありません。本当に反省しています」
編成局長「峯岸さん。『ニュースダイヤモンド』の降板はやむを得ない。場合によっては、君は帝テレを退職して貰うことになる」
6:2018/11/10(土) 16:08:16.571 ID:ubjOgrEsD.net
夕方。街の郊外を歩くセシリア。彼女の前に、数人のマスコミ関係者が突然現れる。
記者A「すいません!私、『週刊近代』の者ですが……」
記者B「峯岸さん!私は『週刊新春』の者です!」
記者C「峯岸さん!あなたは、三橋コーチとはどういう関係だったんですか!?」
セシリア「あの……、私は……」
記者D「峯岸さん!」
記者たちに問い詰められ、困惑した様子のセシリア。セシリアの後ろに、喪黒福造が姿を現す。
喪黒「まあまあ……。落ち着いてください、みなさん」
セシリア「あなたは!?」
記者A「何のつもりですか、あなた!?」
記者B「そうですよ!私たちの取材に、ちょっかいを出さないでください!!」
喪黒「そのお言葉、あなたたちにお返ししますよ」
記者A「すいません!私、『週刊近代』の者ですが……」
記者B「峯岸さん!私は『週刊新春』の者です!」
記者C「峯岸さん!あなたは、三橋コーチとはどういう関係だったんですか!?」
セシリア「あの……、私は……」
記者D「峯岸さん!」
記者たちに問い詰められ、困惑した様子のセシリア。セシリアの後ろに、喪黒福造が姿を現す。
喪黒「まあまあ……。落ち着いてください、みなさん」
セシリア「あなたは!?」
記者A「何のつもりですか、あなた!?」
記者B「そうですよ!私たちの取材に、ちょっかいを出さないでください!!」
喪黒「そのお言葉、あなたたちにお返ししますよ」
7:2018/11/10(土) 16:10:15.278 ID:ubjOgrEsD.net
記者たち「何だって!?」
喪黒「一人の女性の私生活に、ちょっかいを出すべきではありません。峯岸さんが可哀想ですよ……」
喪黒は記者たちに右手の人差し指を向ける。
喪黒「ドーーーーーーーーーーーン!!!」
記者たち「ギャアアアアアアアアア!!!」
喪黒のドーンを受け、記者たちが倒れる。気絶した状態で、路上に寝そべる記者たち。
喪黒「さあ、早く逃げましょう!」
喪黒に言われるまま、セシリアは後をついていく。
喪黒「峯岸さん、こっちです!」
無我夢中で走る喪黒とセシリア。
BAR「魔の巣」。喪黒とセシリアが席に腰掛けている。
セシリア「ハア……、ハア……」
喪黒「一人の女性の私生活に、ちょっかいを出すべきではありません。峯岸さんが可哀想ですよ……」
喪黒は記者たちに右手の人差し指を向ける。
喪黒「ドーーーーーーーーーーーン!!!」
記者たち「ギャアアアアアアアアア!!!」
喪黒のドーンを受け、記者たちが倒れる。気絶した状態で、路上に寝そべる記者たち。
喪黒「さあ、早く逃げましょう!」
喪黒に言われるまま、セシリアは後をついていく。
喪黒「峯岸さん、こっちです!」
無我夢中で走る喪黒とセシリア。
BAR「魔の巣」。喪黒とセシリアが席に腰掛けている。
セシリア「ハア……、ハア……」
8:2018/11/10(土) 16:12:17.216 ID:ubjOgrEsD.net
喪黒「もう大丈夫ですよ、峯岸さん。ここにいれば、マスコミの人たちに見つからずに済むでしょう」
セシリア「あ、ありがとうございます……。それにしても、あなたは一体……」
喪黒「私ですか?私はこういう者です」
喪黒が差し出した名刺には、「ココロのスキマ…お埋めします 喪黒福造」と書かれている。
セシリア「……ココロのスキマ、お埋めします?」
喪黒「私はセールスマンです。お客様の心にポッカリ空いたスキマをお埋めするのがお仕事です」
セシリア「人生相談とか、そういうお仕事なんですか?」
喪黒「私のやっていることは、ボランティアみたいなものです」
「心に何かしらのスキマを抱え、人生が行き詰まった人たちを救うための仕事ですよ」
「ほら……、峯岸セシリアさんも心にスキマがおありのはずでしょう?」
セシリア「ええ……、おっしゃる通りです……」
喪黒「何なら、私があなたの相談に乗りましょうか?」
セシリア「はい。実は私……」
セシリア「あ、ありがとうございます……。それにしても、あなたは一体……」
喪黒「私ですか?私はこういう者です」
喪黒が差し出した名刺には、「ココロのスキマ…お埋めします 喪黒福造」と書かれている。
セシリア「……ココロのスキマ、お埋めします?」
喪黒「私はセールスマンです。お客様の心にポッカリ空いたスキマをお埋めするのがお仕事です」
セシリア「人生相談とか、そういうお仕事なんですか?」
喪黒「私のやっていることは、ボランティアみたいなものです」
「心に何かしらのスキマを抱え、人生が行き詰まった人たちを救うための仕事ですよ」
「ほら……、峯岸セシリアさんも心にスキマがおありのはずでしょう?」
セシリア「ええ……、おっしゃる通りです……」
喪黒「何なら、私があなたの相談に乗りましょうか?」
セシリア「はい。実は私……」
9:2018/11/10(土) 16:14:19.163 ID:ubjOgrEsD.net
身振り手振りを交え、喪黒に一連の事情を話すセシリア。
喪黒「ほう……、そうですか。それは実にお気の毒ですねぇ」
セシリア「ええ。今回の事件で、私は仕事も名誉も何もかも失い……。心理的にもかなりのショックを受けました」
喪黒「なるほど……。今のあなたは、心に大きな傷を抱えているようですねぇ」
セシリア「そうなんです。私は今、精神的にも追い詰められているんです」
喪黒「峯岸さん。あなたはしばらくの間、休養をとった方がいいですよ」
「周りと距離を置いて、充電期間を設けることも大事でしょう」
セシリア「はい……」
喪黒「私としては、大自然と向かい合うことをあなたにお勧めしたいのですよ」
セシリア「大自然と向かい合う?」
喪黒「はい。自然が豊かな山の中で1日を過ごすことは、傷ついたあなたの心の癒しとなるはずです」
セシリア「そうかもしれませんね……。でも私は今まで、アウトドアとかは趣味じゃなかったので……」
喪黒「ほう……、そうですか。それは実にお気の毒ですねぇ」
セシリア「ええ。今回の事件で、私は仕事も名誉も何もかも失い……。心理的にもかなりのショックを受けました」
喪黒「なるほど……。今のあなたは、心に大きな傷を抱えているようですねぇ」
セシリア「そうなんです。私は今、精神的にも追い詰められているんです」
喪黒「峯岸さん。あなたはしばらくの間、休養をとった方がいいですよ」
「周りと距離を置いて、充電期間を設けることも大事でしょう」
セシリア「はい……」
喪黒「私としては、大自然と向かい合うことをあなたにお勧めしたいのですよ」
セシリア「大自然と向かい合う?」
喪黒「はい。自然が豊かな山の中で1日を過ごすことは、傷ついたあなたの心の癒しとなるはずです」
セシリア「そうかもしれませんね……。でも私は今まで、アウトドアとかは趣味じゃなかったので……」
10:2018/11/10(土) 16:16:15.512 ID:ubjOgrEsD.net
喪黒「大丈夫です。峯岸さん、あなたもアナウンサーならご存知でしょう。ほら、近年流行りの山ガールというものを……」
セシリア「山ガールですか……。もちろん、私もいろいろ耳にしていますよ」
喪黒「女性が山の中に入るのは、決して珍しいことではありません」
「だから、峯岸さん。たまには、山の中で過ごすのも悪くはありませんよ」
セシリア「つまり、山ガールになれと……」
喪黒「その通りです。峯岸さん、山ガールになってみませんか?」
セシリア「……いいでしょう。たまには、山へ行くのもいいかもしれませんね」
喪黒「そうです!その調子!」
ある大型書店にいるセシリア。本棚には、キャンプに関係した本がずらっと並んでいる。
セシリア(えーーと……。キャンプについて書かれた本は……。ここか……)
とある本を手にするセシリア。彼女は本を開く。
セシリア「山ガールですか……。もちろん、私もいろいろ耳にしていますよ」
喪黒「女性が山の中に入るのは、決して珍しいことではありません」
「だから、峯岸さん。たまには、山の中で過ごすのも悪くはありませんよ」
セシリア「つまり、山ガールになれと……」
喪黒「その通りです。峯岸さん、山ガールになってみませんか?」
セシリア「……いいでしょう。たまには、山へ行くのもいいかもしれませんね」
喪黒「そうです!その調子!」
ある大型書店にいるセシリア。本棚には、キャンプに関係した本がずらっと並んでいる。
セシリア(えーーと……。キャンプについて書かれた本は……。ここか……)
とある本を手にするセシリア。彼女は本を開く。
11:2018/11/10(土) 16:18:15.597 ID:ubjOgrEsD.net
夜。自宅マンション。机に向かい、ノートパソコンを操作するセシリア。
パソコンの画面には、アウトドア用の女性の服装が映っている。
セシリア(これが山ガールの服装……。思っていたよりも、意外とおしゃれに見えるねー)
ある朝。とある山。自転車をこいで山道を走るセシリア。彼女は防寒着姿だ。
セシリア「ハア……、ハア……、ハア……」
(自転車をこぐのって、本当に久しぶり……。しかも、後ろに荷物があるからきつい……)
セシリアの自転車には、キャンプ用具などの荷物が積まれている。
とある林。原っぱの中に、自転車が止まる。自転車から降りるセシリア。
セシリア(よーーーし!ここにしよう!)
大きく背伸びをするセシリア。彼女の前の地平の方には、そびえ立つ山が見える。
パソコンの画面には、アウトドア用の女性の服装が映っている。
セシリア(これが山ガールの服装……。思っていたよりも、意外とおしゃれに見えるねー)
ある朝。とある山。自転車をこいで山道を走るセシリア。彼女は防寒着姿だ。
セシリア「ハア……、ハア……、ハア……」
(自転車をこぐのって、本当に久しぶり……。しかも、後ろに荷物があるからきつい……)
セシリアの自転車には、キャンプ用具などの荷物が積まれている。
とある林。原っぱの中に、自転車が止まる。自転車から降りるセシリア。
セシリア(よーーーし!ここにしよう!)
大きく背伸びをするセシリア。彼女の前の地平の方には、そびえ立つ山が見える。
12:2018/11/10(土) 16:20:21.330 ID:ubjOgrEsD.net
キャンプのやり方の本を見るセシリア。本には、テントの作り方が解説されている。
セシリア(まずは、テントの作り方……。こうやるのか……)
ゆっくりと、テントを組み立てるセシリア。
セシリア「よいしょ……」
テントが完成する。次に林へ行き、枝を集めるセシリア。枝に火がともり、焚き火が出来上がる。焚き火に手を当てるセシリア。
セシリア(あったかい……)
セシリアの頭の中に、喪黒の言葉が思い浮かぶ。
(喪黒「たまには、山の中で過ごすのも悪くはありませんよ」)
セシリア(その通りね。こんな形で休みを取るのも、悪くないよね……)
地平の方にある山を見つめるセシリア。
セシリア(ここにいると、気持ちが落ち着いてくる……)
セシリア(まずは、テントの作り方……。こうやるのか……)
ゆっくりと、テントを組み立てるセシリア。
セシリア「よいしょ……」
テントが完成する。次に林へ行き、枝を集めるセシリア。枝に火がともり、焚き火が出来上がる。焚き火に手を当てるセシリア。
セシリア(あったかい……)
セシリアの頭の中に、喪黒の言葉が思い浮かぶ。
(喪黒「たまには、山の中で過ごすのも悪くはありませんよ」)
セシリア(その通りね。こんな形で休みを取るのも、悪くないよね……)
地平の方にある山を見つめるセシリア。
セシリア(ここにいると、気持ちが落ち着いてくる……)
13:2018/11/10(土) 16:22:17.820 ID:ubjOgrEsD.net
夕方。金属製の飯盒が、焚き火で煮込まれる。器に盛られた米を食べるセシリア。
セシリア(おいしい……!)
夜。テントの近くで、焚き火に当たるセシリア。
高見沢「やぁ……。あなた、ソロキャンプをしてるんですか?」
セシリアに話しかける見知らぬ男性・高見沢。彼は防寒着姿で、顔立ちが整った男だ。
セシリア「は、はい……。もしかして、あなたもそうなんですか?」
高見沢「そうですよ。私もソロキャンプの最中だったんですよ」
高見沢と話をするセシリア。
高見沢「なるほど……。あなたは、帝国テレビのアナウンサーだったんですね」
セシリア「ええ。今の私は、悪い意味で有名人になってしまいましたから……」
「私のスキャンダルを知って、あなたもさぞ呆れたでしょうね」
高見沢「そんなことはありませんよ。あなたがアナウンサーであることや、この間の例の事件とかは、さっき知りました」
「何しろ、私はテレビを見ない生活をしていますから……。どうしても、世相に疎くなりがちで……」
セシリア(おいしい……!)
夜。テントの近くで、焚き火に当たるセシリア。
高見沢「やぁ……。あなた、ソロキャンプをしてるんですか?」
セシリアに話しかける見知らぬ男性・高見沢。彼は防寒着姿で、顔立ちが整った男だ。
セシリア「は、はい……。もしかして、あなたもそうなんですか?」
高見沢「そうですよ。私もソロキャンプの最中だったんですよ」
高見沢と話をするセシリア。
高見沢「なるほど……。あなたは、帝国テレビのアナウンサーだったんですね」
セシリア「ええ。今の私は、悪い意味で有名人になってしまいましたから……」
「私のスキャンダルを知って、あなたもさぞ呆れたでしょうね」
高見沢「そんなことはありませんよ。あなたがアナウンサーであることや、この間の例の事件とかは、さっき知りました」
「何しろ、私はテレビを見ない生活をしていますから……。どうしても、世相に疎くなりがちで……」
14:2018/11/10(土) 16:24:17.660 ID:ubjOgrEsD.net
セシリア「そうなんですか……。私が言うのも何ですが、高見沢さんって変わった方ですね」
高見沢「マスコミは大げさなんですよ。不倫をとやかく騒いで何になるんです?」
セシリア「でも、私もそのマスコミにいましたから……」
高見沢「だが……。今のあなたはマスコミの人間ではなく、大自然の中にいる人間でしょう?」
「人間も動物である以上、動物らしく本能のままに生きるべきなんですよ」
セシリア「ええ、まあ……」
高見沢「峯岸さん、見てください。この雄大な大自然を……」
「あなたが今まで悩んでいたことは、この大自然に比べるとちっぽけなものですよ」
セシリア「はい……」
高見沢「月が綺麗ですね」
セシリア「ええ……」
夜空に浮かぶ半月を見つめる高見沢とセシリア。半分ほど欠けた月が、林の中を照らす。
高見沢「マスコミは大げさなんですよ。不倫をとやかく騒いで何になるんです?」
セシリア「でも、私もそのマスコミにいましたから……」
高見沢「だが……。今のあなたはマスコミの人間ではなく、大自然の中にいる人間でしょう?」
「人間も動物である以上、動物らしく本能のままに生きるべきなんですよ」
セシリア「ええ、まあ……」
高見沢「峯岸さん、見てください。この雄大な大自然を……」
「あなたが今まで悩んでいたことは、この大自然に比べるとちっぽけなものですよ」
セシリア「はい……」
高見沢「月が綺麗ですね」
セシリア「ええ……」
夜空に浮かぶ半月を見つめる高見沢とセシリア。半分ほど欠けた月が、林の中を照らす。
15:2018/11/10(土) 16:26:18.577 ID:ubjOgrEsD.net
BAR「魔の巣」。喪黒とセシリアが席に腰掛けている。
喪黒「どうやら、あなたはソロキャンプを満喫できたようですなぁ」
セシリア「はい。精神的に落ち込んでいた私も、大自然の中で癒しを得ることができました」
喪黒「よかったですなぁ、峯岸さん」
セシリア「それに、私は山の中である人物に出会ったんです。実は……」
喪黒「ほう……。もしかすると、あなた……。その高見沢という人に惚れているのですか?」
セシリア「そ、そんなことはないです……。私は高見沢さんとたった1回、出会っただけですし……」
「それに、私はあの人に対して、連絡先も何も教えていませんから……」
喪黒「それでいいんですよ。だって峯岸さんは、不倫の恋で心に傷を負ったのでしょう?」
「だから……。あなたが再び誰かと恋愛をするのは、当分の間、控えるべきなんですよ」
セシリア「は、はい……」
喪黒「私は、峯岸さんに山で過ごすよう勧めました。でも、それはあなたを精神的に立ち直らせるのが目的ですから……」
「あなたが山で誰かと出会って、新しい恋をするためではありませんよ」
喪黒「どうやら、あなたはソロキャンプを満喫できたようですなぁ」
セシリア「はい。精神的に落ち込んでいた私も、大自然の中で癒しを得ることができました」
喪黒「よかったですなぁ、峯岸さん」
セシリア「それに、私は山の中である人物に出会ったんです。実は……」
喪黒「ほう……。もしかすると、あなた……。その高見沢という人に惚れているのですか?」
セシリア「そ、そんなことはないです……。私は高見沢さんとたった1回、出会っただけですし……」
「それに、私はあの人に対して、連絡先も何も教えていませんから……」
喪黒「それでいいんですよ。だって峯岸さんは、不倫の恋で心に傷を負ったのでしょう?」
「だから……。あなたが再び誰かと恋愛をするのは、当分の間、控えるべきなんですよ」
セシリア「は、はい……」
喪黒「私は、峯岸さんに山で過ごすよう勧めました。でも、それはあなたを精神的に立ち直らせるのが目的ですから……」
「あなたが山で誰かと出会って、新しい恋をするためではありませんよ」
16:2018/11/10(土) 16:28:18.521 ID:ubjOgrEsD.net
セシリア「ええ……。それは、もちろん承知していますよ」
喪黒「峯岸さん、私と約束してくださいよ。新しい恋人と出会うために、山へ行ってはいけません。いいですね!?」
セシリア「わ、分かりました……。喪黒さん」
夕方。レストランで食事をするセシリア。彼女の脳裏に、山で出会った男・高見沢のことが思い浮かぶ。
夜。自宅マンションで入浴をするセシリア。この時もなお、セシリアは高見沢のことを考えている。
数日後。とある山。防寒着姿のセシリアが、自転車をこいで山道を走っている。
セシリア(もう1度、あの山に行こう!!そうすれば、私は高見沢さんにまた会えるかもしれない……)
とある林。原っぱの中で、自転車から降りるセシリア。彼女の側に、高見沢が姿を現す。
高見沢「やぁ、峯岸さん」
セシリア「おはようございます、高見沢さん!私、あなたにもう1度会いたかったんですよ!」
テントの組み立てを終える高見沢とセシリア。
喪黒「峯岸さん、私と約束してくださいよ。新しい恋人と出会うために、山へ行ってはいけません。いいですね!?」
セシリア「わ、分かりました……。喪黒さん」
夕方。レストランで食事をするセシリア。彼女の脳裏に、山で出会った男・高見沢のことが思い浮かぶ。
夜。自宅マンションで入浴をするセシリア。この時もなお、セシリアは高見沢のことを考えている。
数日後。とある山。防寒着姿のセシリアが、自転車をこいで山道を走っている。
セシリア(もう1度、あの山に行こう!!そうすれば、私は高見沢さんにまた会えるかもしれない……)
とある林。原っぱの中で、自転車から降りるセシリア。彼女の側に、高見沢が姿を現す。
高見沢「やぁ、峯岸さん」
セシリア「おはようございます、高見沢さん!私、あなたにもう1度会いたかったんですよ!」
テントの組み立てを終える高見沢とセシリア。
17:2018/11/10(土) 16:30:18.013 ID:ubjOgrEsD.net
セシリア「高見沢さん。私、焚き火のための枝を集めてきますね!」
林の中に入るセシリア。枝を拾っている彼女の前に、喪黒が姿を現す。
喪黒「峯岸セシリアさん……。あなた約束を破りましたね」
セシリア「も、喪黒さん……!!」
喪黒「私は、峯岸さんに言ったはずですよ。新しい恋人と出会うために、山へ行ってはいけない……と」
セシリア「すみません……。でも、私……。高見沢さんに会いたくて、どうしても……」
喪黒「弁解は無用です。約束を破った以上、あなたには罰を受けて貰うしかありません!!」
喪黒はセシリアに右手の人差し指を向ける。
喪黒「ドーーーーーーーーーーーン!!!」
セシリア「キャアアアアアアアアアアア!!!」
夜。テント近くで焚き火に当たる高見沢とセシリア。
セシリア「高見沢さん、月が綺麗ですね。ほら、満月……」
林の中に入るセシリア。枝を拾っている彼女の前に、喪黒が姿を現す。
喪黒「峯岸セシリアさん……。あなた約束を破りましたね」
セシリア「も、喪黒さん……!!」
喪黒「私は、峯岸さんに言ったはずですよ。新しい恋人と出会うために、山へ行ってはいけない……と」
セシリア「すみません……。でも、私……。高見沢さんに会いたくて、どうしても……」
喪黒「弁解は無用です。約束を破った以上、あなたには罰を受けて貰うしかありません!!」
喪黒はセシリアに右手の人差し指を向ける。
喪黒「ドーーーーーーーーーーーン!!!」
セシリア「キャアアアアアアアアアアア!!!」
夜。テント近くで焚き火に当たる高見沢とセシリア。
セシリア「高見沢さん、月が綺麗ですね。ほら、満月……」
19:2018/11/10(土) 16:33:20.773 ID:ubjOgrEsD.net
夜空の満月を指差すセシリアと、満月を見つめる高見沢。その時……、高見沢の顔や身体に異変が起きる。
獣のような唸り声を上げ、顔や身体が毛深くなる高見沢。
セシリア「高見沢さん、どうしたんですか……?気のせいか、顔が毛深くなってますよ……」
高見沢の顔は、人間の顔から狼のそれへと変化していく。目の前に、兎の姿を見つける高見沢とセシリア。
次の瞬間、高見沢は兎に向かって飛びかかる。一心不乱で兎をむさぼり食う高見沢。表情に不安が浮かぶセシリア。
兎を食べ終えた狼男――高見沢が、じわり、じわりとセシリアに迫りくる。今にも、彼女に襲い掛かりそうな気配で――。
セシリア「い、嫌……。誰か助けて……。キャアアアアアアアアアッ!!!」
夜、とある山の中。テントの近くで、焚き火に当たる喪黒。
喪黒「日本は海洋国家と見られがちですが……。列島をよく見渡すと、山にも恵まれた山岳国家であることに気づきます」
「昔から……。山は人々に多くの恵みを与えてくれましたし、日本人は山の豊かな自然とともに生活を営んできました」
「何よりも、山の美しい自然は人間の心を癒してくれますし……。雄大な山の中では、悩みもちっぽけなものにさえ思えます」
「だから……。たまには山の中でゆっくり過ごすことで、日々の煩わしさから解放されてみるのもいいかもしれません」
「とはいえ、山には何かと危険がつきものですから……、身の安全にはくれぐれも気をつけるべきですよ。ねぇ、峯岸セシリアさん」
「オーホッホッホッホッホッホッホ……」
―完―
獣のような唸り声を上げ、顔や身体が毛深くなる高見沢。
セシリア「高見沢さん、どうしたんですか……?気のせいか、顔が毛深くなってますよ……」
高見沢の顔は、人間の顔から狼のそれへと変化していく。目の前に、兎の姿を見つける高見沢とセシリア。
次の瞬間、高見沢は兎に向かって飛びかかる。一心不乱で兎をむさぼり食う高見沢。表情に不安が浮かぶセシリア。
兎を食べ終えた狼男――高見沢が、じわり、じわりとセシリアに迫りくる。今にも、彼女に襲い掛かりそうな気配で――。
セシリア「い、嫌……。誰か助けて……。キャアアアアアアアアアッ!!!」
夜、とある山の中。テントの近くで、焚き火に当たる喪黒。
喪黒「日本は海洋国家と見られがちですが……。列島をよく見渡すと、山にも恵まれた山岳国家であることに気づきます」
「昔から……。山は人々に多くの恵みを与えてくれましたし、日本人は山の豊かな自然とともに生活を営んできました」
「何よりも、山の美しい自然は人間の心を癒してくれますし……。雄大な山の中では、悩みもちっぽけなものにさえ思えます」
「だから……。たまには山の中でゆっくり過ごすことで、日々の煩わしさから解放されてみるのもいいかもしれません」
「とはいえ、山には何かと危険がつきものですから……、身の安全にはくれぐれも気をつけるべきですよ。ねぇ、峯岸セシリアさん」
「オーホッホッホッホッホッホッホ……」
―完―
20:2018/11/10(土) 16:39:12.087 ID:S3nY46Fsd.net
雰囲気出てて良かった
21:2018/11/10(土) 17:23:04.683 ID:yH2qbZsEr.net
おもしろかったです!
喪黒福造「たまには、山の中で過ごすのも悪くはありませんよ」 女性アナウンサー「つまり、山ガールになれと……」
引用元:http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1541833217
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