1:2018/10/16(火) 22:52:49.512
喪黒「私の名は喪黒福造。人呼んで『笑ゥせぇるすまん』。
ただの『せぇるすまん』じゃございません。私の取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。
この世は、老いも若きも男も女も、ココロのさみしい人ばかり。
そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。
いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。
さて、今日のお客様は……。
花形英利(46) アナウンサー
【左遷された男】
ホーッホッホッホ……。」
ただの『せぇるすまん』じゃございません。私の取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。
この世は、老いも若きも男も女も、ココロのさみしい人ばかり。
そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。
いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。
さて、今日のお客様は……。
花形英利(46) アナウンサー
【左遷された男】
ホーッホッホッホ……。」
3:2018/10/16(火) 22:55:05.955
夜。東京、渋谷区。公共放送局「JBC」。
夜7時の時計をもじったCG映像。オーケストラ風の音楽。今日、起きた出来事が次々と紹介される。
画面の中央に出現する「JBCニュース19」のタイトル。さらに画面は切り替わり、男性アナウンサーの姿が現れる。
男性アナウンサーの花形は、年齢の割に頭髪に白髪が目立つ。彼は、整った顔立ちで誠実そうな表情だ。
花形「こんばんは。X月X日、X曜日、『JBCニュース19』です」
テロップ「花形英利(45) アナウンサー、JBC放送センター・アナウンス室」
全国各地で、JBCの夜のニュースが放送されている。テレビのニュースを見る一般人たち。
食事中の一家、居酒屋の客たち、大衆食堂の客たち、アパートに住む学生……。
彼らは皆、液晶テレビに映るアナウンサーの花形を見つめている。
ある居酒屋。店内にある液晶テレビに映っているのは、JBCの夜のニュースだ。
テレビを眺める客たち。客の中には喪黒福造もいる。
夜7時の時計をもじったCG映像。オーケストラ風の音楽。今日、起きた出来事が次々と紹介される。
画面の中央に出現する「JBCニュース19」のタイトル。さらに画面は切り替わり、男性アナウンサーの姿が現れる。
男性アナウンサーの花形は、年齢の割に頭髪に白髪が目立つ。彼は、整った顔立ちで誠実そうな表情だ。
花形「こんばんは。X月X日、X曜日、『JBCニュース19』です」
テロップ「花形英利(45) アナウンサー、JBC放送センター・アナウンス室」
全国各地で、JBCの夜のニュースが放送されている。テレビのニュースを見る一般人たち。
食事中の一家、居酒屋の客たち、大衆食堂の客たち、アパートに住む学生……。
彼らは皆、液晶テレビに映るアナウンサーの花形を見つめている。
ある居酒屋。店内にある液晶テレビに映っているのは、JBCの夜のニュースだ。
テレビを眺める客たち。客の中には喪黒福造もいる。
4:2018/10/16(火) 22:57:14.933
居酒屋ママ「それにしても、花形さんっていい男ねぇ。イケメンで品がよさそうだし」
サラリーマンA「このアナウンサー、突然、頭が白髪だらけになったのはびっくりしたよ」
サラリーマンB「ああ、実はな……。髪の毛が痛むからって理由で、白髪染めを使うのをやめたんだとさ」
居酒屋ママ「そうだったの。花形さん、身体の具合が悪いわけじゃないんだ……。よかった……」
サラリーマンC「でもなー。白髪頭になったおかげで前よりいい男になり、女性ファンが増えたんだから……」
「かっこいい男ってのは、つくづく得だよなー……」
喪黒「…………」
ある日。東京、公共放送局「JBC」。執務室の中で、編成局長と会話をする花形。
編成局長「花形さん。あなたは来年度から、京都放送局に赴任することが決まりました」
花形「えっ!?私が京都放送局へ異動するんですか?」
編成局長「そうです。優秀な花形さんなら、京都の放送局でも素晴らしい活躍ができるでしょう」
花形(京都放送局への異動だと……!?出世街道を歩んでいた俺が、よりによって左遷されるなんて……)
サラリーマンA「このアナウンサー、突然、頭が白髪だらけになったのはびっくりしたよ」
サラリーマンB「ああ、実はな……。髪の毛が痛むからって理由で、白髪染めを使うのをやめたんだとさ」
居酒屋ママ「そうだったの。花形さん、身体の具合が悪いわけじゃないんだ……。よかった……」
サラリーマンC「でもなー。白髪頭になったおかげで前よりいい男になり、女性ファンが増えたんだから……」
「かっこいい男ってのは、つくづく得だよなー……」
喪黒「…………」
ある日。東京、公共放送局「JBC」。執務室の中で、編成局長と会話をする花形。
編成局長「花形さん。あなたは来年度から、京都放送局に赴任することが決まりました」
花形「えっ!?私が京都放送局へ異動するんですか?」
編成局長「そうです。優秀な花形さんなら、京都の放送局でも素晴らしい活躍ができるでしょう」
花形(京都放送局への異動だと……!?出世街道を歩んでいた俺が、よりによって左遷されるなんて……)
5:2018/10/16(火) 22:59:28.336
テロップ「翌年――」
JBC京都放送局。花形は、覇気のない顔つきで廊下を歩いている。
テロップ「花形英利(46) アナウンサー、JBC京都放送局」
テレビ局関係者とすれ違う花形。
テレビ局関係者「花形さん、おはようございます!」
花形「おはようございます……」
花形の声は、東京にいた時と違って元気がない。
夕方。オープニング音楽と「イブニングニュース京都」のタイトル。花形と女性アナウンサー。
花形「こんばんは。X月X日、イブニングニュース京都の時間です」
夜。ニュースの撮影を終えた花形が、職員たちに声をかける。
花形「どうです?今夜はどこかの店へ飲みに行きませんか?」
職員たち「いや、私はいいですよ」「私も、今日はちょっと用事があるんで……」
花形「そうですか……。それは失礼しました」
JBC京都放送局。花形は、覇気のない顔つきで廊下を歩いている。
テロップ「花形英利(46) アナウンサー、JBC京都放送局」
テレビ局関係者とすれ違う花形。
テレビ局関係者「花形さん、おはようございます!」
花形「おはようございます……」
花形の声は、東京にいた時と違って元気がない。
夕方。オープニング音楽と「イブニングニュース京都」のタイトル。花形と女性アナウンサー。
花形「こんばんは。X月X日、イブニングニュース京都の時間です」
夜。ニュースの撮影を終えた花形が、職員たちに声をかける。
花形「どうです?今夜はどこかの店へ飲みに行きませんか?」
職員たち「いや、私はいいですよ」「私も、今日はちょっと用事があるんで……」
花形「そうですか……。それは失礼しました」
6:2018/10/16(火) 23:01:16.010
放送局の階段を下りる花形。一方、廊下では女性アナウンサーたちが話をしている。
女性アナウンサーA「ねぇ?今度、異動してきた花形さんってどう思う?」
女性アナウンサーB「まあ、何と言うか……。ちょっとお高くとまった感じだよねぇ」
女性アナウンサーC「なぜなら、彼は今までJBC本部に勤務するエリートだったんだから……」
「それなのに、京都へ飛ばされたんじゃ面白くないでしょ」
祇園。神社仏閣や、和風の古めかしい建物が並ぶ。石畳の道を歩く通行人たち。その中には花形もいる。
花形(ここが京都か。さすが、空襲を受けなかっただけあって、趣がある景色が今も残っているな……)
古風な街並みを抜けると、飲食店が目立ち始める。いつの間にか、花形は繁華街にいるようだ。
京都の繁華街の中を歩く喪黒福造。喪黒は花形の姿を見つけ、彼に近づく。
喪黒「おっ、あなたは……。もしかすると、JBCの花形英利アナウンサーではないですか?」
花形「え、ええ……。そうですよ。私が花形英利ですよ」
喪黒「花形さん、どこかいい店でも探しているんですかねぇ?」
女性アナウンサーA「ねぇ?今度、異動してきた花形さんってどう思う?」
女性アナウンサーB「まあ、何と言うか……。ちょっとお高くとまった感じだよねぇ」
女性アナウンサーC「なぜなら、彼は今までJBC本部に勤務するエリートだったんだから……」
「それなのに、京都へ飛ばされたんじゃ面白くないでしょ」
祇園。神社仏閣や、和風の古めかしい建物が並ぶ。石畳の道を歩く通行人たち。その中には花形もいる。
花形(ここが京都か。さすが、空襲を受けなかっただけあって、趣がある景色が今も残っているな……)
古風な街並みを抜けると、飲食店が目立ち始める。いつの間にか、花形は繁華街にいるようだ。
京都の繁華街の中を歩く喪黒福造。喪黒は花形の姿を見つけ、彼に近づく。
喪黒「おっ、あなたは……。もしかすると、JBCの花形英利アナウンサーではないですか?」
花形「え、ええ……。そうですよ。私が花形英利ですよ」
喪黒「花形さん、どこかいい店でも探しているんですかねぇ?」
7:2018/10/16(火) 23:03:17.511
花形「まあ、そんなところですけどね……」
喪黒「よろしかったら、私もお供しましょうか?」
ある料亭。和室の中で、酒を酌み交わす喪黒と花形。机の上には、豪勢な日本料理が並んでいる。
喪黒「なるほど……。花形さんは、今年度からJBC京都放送局への赴任が決まったのですか」
花形「はい……。とはいえ、京都での仕事は未だに慣れないことが多いですし……」
「それに何というか、京都放送局でも私は一人浮いたような状態なんです」
喪黒「ほう……。例えば、仕事を終えた後、職員たちを飲みに誘ったけど断られたとか?」
花形「そ、そうです!いやぁ、なかなか勘が鋭いですねぇ……。あなた……」
喪黒「なぁに……。仕事柄、長年、人間の観察を行ってきたおかげですよ。私はこういう者ですから……」
喪黒が差し出した名刺には、「ココロのスキマ…お埋めします 喪黒福造」と書かれている。
花形「……ココロのスキマ、お埋めします?」
喪黒「実はですねぇ……。私、人々の心のスキマをお埋めするボランティアをしているのですよ」
喪黒「よろしかったら、私もお供しましょうか?」
ある料亭。和室の中で、酒を酌み交わす喪黒と花形。机の上には、豪勢な日本料理が並んでいる。
喪黒「なるほど……。花形さんは、今年度からJBC京都放送局への赴任が決まったのですか」
花形「はい……。とはいえ、京都での仕事は未だに慣れないことが多いですし……」
「それに何というか、京都放送局でも私は一人浮いたような状態なんです」
喪黒「ほう……。例えば、仕事を終えた後、職員たちを飲みに誘ったけど断られたとか?」
花形「そ、そうです!いやぁ、なかなか勘が鋭いですねぇ……。あなた……」
喪黒「なぁに……。仕事柄、長年、人間の観察を行ってきたおかげですよ。私はこういう者ですから……」
喪黒が差し出した名刺には、「ココロのスキマ…お埋めします 喪黒福造」と書かれている。
花形「……ココロのスキマ、お埋めします?」
喪黒「実はですねぇ……。私、人々の心のスキマをお埋めするボランティアをしているのですよ」
9:2018/10/16(火) 23:05:21.057
花形「は、はあ……」
喪黒「そのご様子からして、花形さんの心にもスキマがおありのように見えますねぇ」
花形「ええ……。京都放送局へ異動してからというものの、毎日が憂鬱なんです」
喪黒「無理もありません。全国のニュースを担当するアナウンサーだったはずなのに……」
「いきなり、京都へ飛ばされてしまったのだから……」
花形「はい。私としては……。まさに屈辱というか、挫折というか、人生の冬というか……」
喪黒「失礼を承知で、いっそのこと単刀直入に言いましょうか。要するに、あなたは京都へ左遷されたんですよね?」
花形「まあ、喪黒さんの見立て通りですよ。誰がどう見ても、今の私の処遇は左遷に等しいものですから……」
喪黒「花形さん。あなたは、『左遷』という言葉に対してマイナスイメージを持っているでしょう?」
「それは大きな間違いです!」
花形「えっ!?」
喪黒「大きな組織で働く人間ならば……。左遷を受けることも、将来のために役立つ経験になりますよ!」
「左遷というものは学びの機会でもあり……。見方によっては、大いなるプラスにもなり得るのです!!」
喪黒「そのご様子からして、花形さんの心にもスキマがおありのように見えますねぇ」
花形「ええ……。京都放送局へ異動してからというものの、毎日が憂鬱なんです」
喪黒「無理もありません。全国のニュースを担当するアナウンサーだったはずなのに……」
「いきなり、京都へ飛ばされてしまったのだから……」
花形「はい。私としては……。まさに屈辱というか、挫折というか、人生の冬というか……」
喪黒「失礼を承知で、いっそのこと単刀直入に言いましょうか。要するに、あなたは京都へ左遷されたんですよね?」
花形「まあ、喪黒さんの見立て通りですよ。誰がどう見ても、今の私の処遇は左遷に等しいものですから……」
喪黒「花形さん。あなたは、『左遷』という言葉に対してマイナスイメージを持っているでしょう?」
「それは大きな間違いです!」
花形「えっ!?」
喪黒「大きな組織で働く人間ならば……。左遷を受けることも、将来のために役立つ経験になりますよ!」
「左遷というものは学びの機会でもあり……。見方によっては、大いなるプラスにもなり得るのです!!」
10:2018/10/16(火) 23:07:48.050
花形「言われてみれば、そうかもしれませんね……」
喪黒「しかもです……。京都で勤務することは、あなたの心身のリフレッシュにもつながるはずです」
「何しろ……。東京のJBC本部での勤務は、ストレスが溜まりっぱなしだったでしょう?花形さん」
花形「え、ええ……。確かに……。私が白髪頭になったのも、ストレスによるものでしたから……」
喪黒「だったら、花形さん……。京都放送局への異動は、むしろ喜ぶべきことですよ」
「なぜなら、左遷もまた貴重な経験になりますし……。逆境こそ、まさしく真のチャンスなのですから!」
花形「まあ、お励ましの言葉をいただくのはありがたいんですけど……。どうも、仕事に身が入らなくて……」
喪黒「クヨクヨする必要はありません。私があなたに気合を入れてあげましょう……」
喪黒は花形に右手の人差し指を向ける。
喪黒「さぁ、私の手をよーく見ててください……」
「ドーーーーーーーーーーーン!!!」
花形「うわああああああああ!!!」
喪黒「しかもです……。京都で勤務することは、あなたの心身のリフレッシュにもつながるはずです」
「何しろ……。東京のJBC本部での勤務は、ストレスが溜まりっぱなしだったでしょう?花形さん」
花形「え、ええ……。確かに……。私が白髪頭になったのも、ストレスによるものでしたから……」
喪黒「だったら、花形さん……。京都放送局への異動は、むしろ喜ぶべきことですよ」
「なぜなら、左遷もまた貴重な経験になりますし……。逆境こそ、まさしく真のチャンスなのですから!」
花形「まあ、お励ましの言葉をいただくのはありがたいんですけど……。どうも、仕事に身が入らなくて……」
喪黒「クヨクヨする必要はありません。私があなたに気合を入れてあげましょう……」
喪黒は花形に右手の人差し指を向ける。
喪黒「さぁ、私の手をよーく見ててください……」
「ドーーーーーーーーーーーン!!!」
花形「うわああああああああ!!!」
11:2018/10/16(火) 23:10:08.277
JBC京都放送局。執務室で、京都放送局長と会話する花形。
京都放送局長「花形さん。あなたを京都放送局の『顔』として扱おうと思っています」
花形「そ、そうですか……」
京都放送局長「何しろ、あなたは主婦層に人気がありますから……。この人気を生かさないわけにはいきません」
デスクに向かう花形。職員たちが好意的な様子で彼を出迎える。
職員A「花形さん。新しいポスター、できましたよ!」
花形「これは……」
机の上には、花形の笑顔が大写しになったポスターが置かれている。
このポスターのキャッチフレーズは、「新JBC」「JBC京都が変わります」だ。
職員B「すごいですね、花形さん!まさに、京都放送局のエースそのものじゃないですか!」
花形「い、いやぁ……。私は別に、その……」
京都放送局長「花形さん。あなたを京都放送局の『顔』として扱おうと思っています」
花形「そ、そうですか……」
京都放送局長「何しろ、あなたは主婦層に人気がありますから……。この人気を生かさないわけにはいきません」
デスクに向かう花形。職員たちが好意的な様子で彼を出迎える。
職員A「花形さん。新しいポスター、できましたよ!」
花形「これは……」
机の上には、花形の笑顔が大写しになったポスターが置かれている。
このポスターのキャッチフレーズは、「新JBC」「JBC京都が変わります」だ。
職員B「すごいですね、花形さん!まさに、京都放送局のエースそのものじゃないですか!」
花形「い、いやぁ……。私は別に、その……」
12:2018/10/16(火) 23:12:14.248
職員C「花形さん、謙遜することはないですよ」
花形(俺のために、ここまでの待遇をしてくれるなんて……。ならば俺も、もうひと頑張りしようじゃないか!!)
夕方。JBC京都放送局。「イブニングニュース京都」の撮影が行われている。
花形「こんばんは。X月X日、イブニングニュース京都の時間です」
いつもとは違い、はきはきした表情で話す花形。
夜。仕事を終えた花形に、女性アナウンサーや職員たちが声をかける。
女性アナウンサー「ねぇ、花形さん」
職員たち「たまには、私たちと飲みに行きませんか?」
花形「あ、ああ……。喜んで……」
女性アナウンサーや職員たちと一緒に、外へ出る花形。とある居酒屋の中で、花形ら一同は乾杯をする。
花形(よかった……。みんなと打ち解けることができて、ホッとした……)
花形(俺のために、ここまでの待遇をしてくれるなんて……。ならば俺も、もうひと頑張りしようじゃないか!!)
夕方。JBC京都放送局。「イブニングニュース京都」の撮影が行われている。
花形「こんばんは。X月X日、イブニングニュース京都の時間です」
いつもとは違い、はきはきした表情で話す花形。
夜。仕事を終えた花形に、女性アナウンサーや職員たちが声をかける。
女性アナウンサー「ねぇ、花形さん」
職員たち「たまには、私たちと飲みに行きませんか?」
花形「あ、ああ……。喜んで……」
女性アナウンサーや職員たちと一緒に、外へ出る花形。とある居酒屋の中で、花形ら一同は乾杯をする。
花形(よかった……。みんなと打ち解けることができて、ホッとした……)
13:2018/10/16(火) 23:14:14.048
土砂降りの空。JBC京都放送局。「イブニングニュース京都」が放映されている。
花形「こんばんは。X月X日、イブニングニュース京都の時間です」
女性アナウンサー「本日は、集中豪雨のニュースを中心にお伝えします」
花形「記録的な集中豪雨により、新たに福知山市に避難勧告が出されました」
豪雨の空。ある小学校の体育館。避難者たちが、液晶テレビに映る花形の顔を見つめる。
夏。祇園祭。京都の街の中で山鉾巡行が行われている。浴衣姿の花形が、祇園祭の関係者に対し、熱心に取材を行っている。
ネット掲示板「花形さん、浴衣がよく似合っているな」「和服姿でもやはりイケメンだな」「まさにJBCの貴公子」
「イブニングニュース京都」のスポーツコーナー。
女性アナウンサー「今日の特集はJリーグです。J1昇格を目指す京都カーネヴィオラを、花形アナウンサーが取材しました」
京都カーネヴィオラの選手にインタビューを行う花形。試合を観戦し、ユニフォーム姿で京都カーネヴィオラを応援する花形。
花形「こんばんは。X月X日、イブニングニュース京都の時間です」
女性アナウンサー「本日は、集中豪雨のニュースを中心にお伝えします」
花形「記録的な集中豪雨により、新たに福知山市に避難勧告が出されました」
豪雨の空。ある小学校の体育館。避難者たちが、液晶テレビに映る花形の顔を見つめる。
夏。祇園祭。京都の街の中で山鉾巡行が行われている。浴衣姿の花形が、祇園祭の関係者に対し、熱心に取材を行っている。
ネット掲示板「花形さん、浴衣がよく似合っているな」「和服姿でもやはりイケメンだな」「まさにJBCの貴公子」
「イブニングニュース京都」のスポーツコーナー。
女性アナウンサー「今日の特集はJリーグです。J1昇格を目指す京都カーネヴィオラを、花形アナウンサーが取材しました」
京都カーネヴィオラの選手にインタビューを行う花形。試合を観戦し、ユニフォーム姿で京都カーネヴィオラを応援する花形。
14:2018/10/16(火) 23:16:17.058
花形がサッカーの試合を観戦する様子が、ツイッターやネット掲示板で話題になる。
ツイッター「花形さん発見」「花形アナがサッカーを観戦」「まるでサッカー少年みたい」
ネット掲示板「花形さん、意外とお茶目」「東京にいた時より楽しそう」「意外と表情が豊かでワロタw」
秋。嵐山もみじ祭。大堰川の上に浮かぶ芸能船。芸能船の上には、平安時代の衣装の人間たちが乗っている。
花形が祭りを取材する様子が、「イブニングニュース京都」で放映される。
ある日の夜。赤信号から青信号になり、通行人たちは横断歩道を渡る。横断歩道の中で、花形は喪黒と再会する。
喪黒「お久しぶりです。花形さん」
花形「やぁ、喪黒さん」
寿司屋の中にいる喪黒と花形。
喪黒「どうです、花形さん。お仕事はうまくいっていますか?」
花形「ええ。京都放送局での仕事は、思った以上にやりがいがあるものでしたよ」
ツイッター「花形さん発見」「花形アナがサッカーを観戦」「まるでサッカー少年みたい」
ネット掲示板「花形さん、意外とお茶目」「東京にいた時より楽しそう」「意外と表情が豊かでワロタw」
秋。嵐山もみじ祭。大堰川の上に浮かぶ芸能船。芸能船の上には、平安時代の衣装の人間たちが乗っている。
花形が祭りを取材する様子が、「イブニングニュース京都」で放映される。
ある日の夜。赤信号から青信号になり、通行人たちは横断歩道を渡る。横断歩道の中で、花形は喪黒と再会する。
喪黒「お久しぶりです。花形さん」
花形「やぁ、喪黒さん」
寿司屋の中にいる喪黒と花形。
喪黒「どうです、花形さん。お仕事はうまくいっていますか?」
花形「ええ。京都放送局での仕事は、思った以上にやりがいがあるものでしたよ」
15:2018/10/16(火) 23:18:17.909
喪黒「よかったですなぁ。まさに今の花形さんは、京都放送局のエースとして生き生きしていますよ」
花形「まあ、京都放送局は私の顔が入ったポスターまで作ったくらいですから……」
喪黒「花形さんは、等身大の姿で取材をする様子が視聴者に受けているのです」
「東京時代から、誠実そうなイメージがあなたの売り物でしたからねぇ」
花形「は、はぁ……」
喪黒「だから……。もしも、そのイメージをぶち壊すようなことをしたら、ただじゃあ済まないでしょう」
花形「はい……。それはもう、気をつけていますよ……」
喪黒「どうですかねぇ?おそらくあなたは、昔から女性たちと浮名を流してきたはずですよねぇ」
花形「ええ、まあ……。分かりますか?」
喪黒「もちろんです。だって、あなたはルックスがいいですから……。たぶん、女性関係が弱点だろうと思ったんですよ」
花形「おっしゃる通りです。いやぁ、ここまで勘が鋭いとは……。恐れ入りましたよ」
喪黒「ならば、花形さん。私と約束してください。くれぐれも、女性関係で羽目を外さないようにしてくださいよ」
花形「わ、分かりました……。喪黒さん」
花形「まあ、京都放送局は私の顔が入ったポスターまで作ったくらいですから……」
喪黒「花形さんは、等身大の姿で取材をする様子が視聴者に受けているのです」
「東京時代から、誠実そうなイメージがあなたの売り物でしたからねぇ」
花形「は、はぁ……」
喪黒「だから……。もしも、そのイメージをぶち壊すようなことをしたら、ただじゃあ済まないでしょう」
花形「はい……。それはもう、気をつけていますよ……」
喪黒「どうですかねぇ?おそらくあなたは、昔から女性たちと浮名を流してきたはずですよねぇ」
花形「ええ、まあ……。分かりますか?」
喪黒「もちろんです。だって、あなたはルックスがいいですから……。たぶん、女性関係が弱点だろうと思ったんですよ」
花形「おっしゃる通りです。いやぁ、ここまで勘が鋭いとは……。恐れ入りましたよ」
喪黒「ならば、花形さん。私と約束してください。くれぐれも、女性関係で羽目を外さないようにしてくださいよ」
花形「わ、分かりました……。喪黒さん」
16:2018/10/16(火) 23:20:12.249
ある夜。JBC京都放送局。「イブニングニュース京都」の撮影が終わる。
撮影スタッフ「お疲れ様でしたーーー!!」
ほっとした表情になる花形と女性アナウンサー。花形は何食わぬ顔で、女性アナウンサーの尻を触る。
女性アナウンサー「キャアッ!!花形さん、何をするんですか!!」
撮影スタッフ(また、花形さんのいつもの癖が出ちゃったよ……)
エレベーターの中で、若手アナウンサーの胸ぐらをつかむ花形。花形は生放送の時と違い、すごんだ態度のようだ。
花形「さっきの番組で、若手が生意気に発言すんじゃねぇよ!!ここは、俺がコメントするとこなんだよ!!」
とある居酒屋。番組製作スタッフ、花形らアナウンサーたちによる打ち上げが行われている。
酒に酔い、上機嫌となる花形。笑顔の花形が、隣にいる新人女性アナウンサーの膝を触り出す。
花形「なぁ……。俺と2人で抜け出そう」
新人女性アナウンサー「わ、私……、トイレに行きますから……!!」
撮影スタッフ「お疲れ様でしたーーー!!」
ほっとした表情になる花形と女性アナウンサー。花形は何食わぬ顔で、女性アナウンサーの尻を触る。
女性アナウンサー「キャアッ!!花形さん、何をするんですか!!」
撮影スタッフ(また、花形さんのいつもの癖が出ちゃったよ……)
エレベーターの中で、若手アナウンサーの胸ぐらをつかむ花形。花形は生放送の時と違い、すごんだ態度のようだ。
花形「さっきの番組で、若手が生意気に発言すんじゃねぇよ!!ここは、俺がコメントするとこなんだよ!!」
とある居酒屋。番組製作スタッフ、花形らアナウンサーたちによる打ち上げが行われている。
酒に酔い、上機嫌となる花形。笑顔の花形が、隣にいる新人女性アナウンサーの膝を触り出す。
花形「なぁ……。俺と2人で抜け出そう」
新人女性アナウンサー「わ、私……、トイレに行きますから……!!」
17:2018/10/16(火) 23:22:15.824
トイレの中へ駆け込む新人女性アナウンサー。それに対し、彼女を追いかける花形。
新人女性アナウンサー「や、やめてください……」
ぎらついた表情の花形と、脅えた表情の新人女性アナウンサー。
新人女性アナウンサーの身体に覆いかぶさり、無理やりキスをする花形。
新人女性アナウンサー「イ、イヤアアアアッ……!!」
喪黒「おっと、そこまで!!」
新人女性アナウンサーと花形の目の前に、喪黒が姿を現す。
喪黒の姿に気を取られる花形。そのすきに、新人女性アナウンサーはトイレから逃げ出す。
喪黒「花形英利さん……。あなた約束を破りましたね」
花形「も、喪黒さん……!!」
喪黒「私はあなたに忠告しましたよ。くれぐれも、女性関係で羽目を外さないようにしろ……と」
花形「す、すみません……!!どうしても、魔が差してしまって……」
新人女性アナウンサー「や、やめてください……」
ぎらついた表情の花形と、脅えた表情の新人女性アナウンサー。
新人女性アナウンサーの身体に覆いかぶさり、無理やりキスをする花形。
新人女性アナウンサー「イ、イヤアアアアッ……!!」
喪黒「おっと、そこまで!!」
新人女性アナウンサーと花形の目の前に、喪黒が姿を現す。
喪黒の姿に気を取られる花形。そのすきに、新人女性アナウンサーはトイレから逃げ出す。
喪黒「花形英利さん……。あなた約束を破りましたね」
花形「も、喪黒さん……!!」
喪黒「私はあなたに忠告しましたよ。くれぐれも、女性関係で羽目を外さないようにしろ……と」
花形「す、すみません……!!どうしても、魔が差してしまって……」
18:2018/10/16(火) 23:24:18.462
喪黒「実はですねぇ……。私は、JBC京都放送局の女性アナウンサーから相談を受けていたのですよ」
「東京から来たエリートアナウンサーによるセクハラに困っている……と」
花形「くっ……」
喪黒「そこで、私は彼女にアドバイスをしました」
「ICレコーダーを衣服の中に忍ばせ、このアナウンサーのセクハラ行為を録音しろ……と」
「当然ながら、彼によるセクハラ行為の録音は、週刊誌に売り込んだ方がいい……私は彼女にこう言いました」
花形「そ、そんな……!!」
喪黒「約束を破った以上、あなたには罰を受けて貰うしかありません!!」
喪黒は花形に右手の人差し指を向ける。
喪黒「ドーーーーーーーーーーーン!!!」
花形「ギャアアアアアアアアア!!!」
その後――。線路を走る電車。電車内には、週刊誌の広告が掲載されている。花形のスキャンダルを特集する週刊誌の見出し。
週刊誌「JBCの貴公子・花形英利(46)の重大セクハラ事件」
「東京から来たエリートアナウンサーによるセクハラに困っている……と」
花形「くっ……」
喪黒「そこで、私は彼女にアドバイスをしました」
「ICレコーダーを衣服の中に忍ばせ、このアナウンサーのセクハラ行為を録音しろ……と」
「当然ながら、彼によるセクハラ行為の録音は、週刊誌に売り込んだ方がいい……私は彼女にこう言いました」
花形「そ、そんな……!!」
喪黒「約束を破った以上、あなたには罰を受けて貰うしかありません!!」
喪黒は花形に右手の人差し指を向ける。
喪黒「ドーーーーーーーーーーーン!!!」
花形「ギャアアアアアアアアア!!!」
その後――。線路を走る電車。電車内には、週刊誌の広告が掲載されている。花形のスキャンダルを特集する週刊誌の見出し。
週刊誌「JBCの貴公子・花形英利(46)の重大セクハラ事件」
19:2018/10/16(火) 23:27:42.013
自宅マンション前で、週刊誌記者からインタビューを受ける花形。彼は意気消沈した表情で、やつれた顔をしている。
週刊誌記者「花形さん。セクハラは、本当に今回の件が初めてなんですか!?」
「東京に勤務していたころのあなたによる、セクハラ被害の証言もたくさんあるんです!!」
花形「えっ!?」
週刊誌記者「あなたにセクハラを受けた女性たちが、次々と被害を告発しているんですよ!!」
「ここでは口にするのもはばかるような、おぞましい性犯罪の数々をね!!」
花形「うわああ……」
週刊誌の記者に攻められ、絶望した表情になる花形。
JBC京都放送局の前にいる喪黒。
喪黒「そもそも、左遷という言葉にはマイナスイメージがつきものですが……。左遷は過ごし方次第でプラスにもなり得ます」
「なぜなら、新しい職場で今までとは違う仕事を経験し……。新しい仲間の元、これまでとは違う考え方を学べるからです」
「それだけではなく……。左遷のおかげで人事の仕組みも理解できますし、自分自身と向き合う機会も生まれるわけです」
「従って……。見方を変えれば左遷はチャンスでもありますし、将来の自分につなげるための有意義な期間とも言えましょう」
「ただし、左遷から復活できる人もいれば、そうでない人もいますから……。どうやら、花形さんは後者のタイプだったようですねぇ」
「オーホッホッホッホッホッホッホ……」
―完―
週刊誌記者「花形さん。セクハラは、本当に今回の件が初めてなんですか!?」
「東京に勤務していたころのあなたによる、セクハラ被害の証言もたくさんあるんです!!」
花形「えっ!?」
週刊誌記者「あなたにセクハラを受けた女性たちが、次々と被害を告発しているんですよ!!」
「ここでは口にするのもはばかるような、おぞましい性犯罪の数々をね!!」
花形「うわああ……」
週刊誌の記者に攻められ、絶望した表情になる花形。
JBC京都放送局の前にいる喪黒。
喪黒「そもそも、左遷という言葉にはマイナスイメージがつきものですが……。左遷は過ごし方次第でプラスにもなり得ます」
「なぜなら、新しい職場で今までとは違う仕事を経験し……。新しい仲間の元、これまでとは違う考え方を学べるからです」
「それだけではなく……。左遷のおかげで人事の仕組みも理解できますし、自分自身と向き合う機会も生まれるわけです」
「従って……。見方を変えれば左遷はチャンスでもありますし、将来の自分につなげるための有意義な期間とも言えましょう」
「ただし、左遷から復活できる人もいれば、そうでない人もいますから……。どうやら、花形さんは後者のタイプだったようですねぇ」
「オーホッホッホッホッホッホッホ……」
―完―
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