1:2019/04/06(土) 19:53:46.890
不良「いいじゃねえか、ちょっとでいいんだ、ちょっとで」

弱気「お金なんかないです……」

不良「あぁ!? てめえがゲーム買うために貯金してんの知ってんだぞ!」

弱気「ひっ……!」

不良「いいから出せよ。痛い目あいたくねえだろ?」



優等生「やめろ!!!」



2:2019/04/06(土) 19:57:06.903
不良「これはこれは、成績トップの優等生じゃねえか」

不良「なんの用だ?」

優等生「カツアゲなんて下らない真似するな」

不良「下らない~? 俺にとっちゃ下る真似なんだよ。なんたって収入源なんだからな」

優等生「ふぅ……やっぱり君は下らない男だ」

不良「ンだとコラァ! ブッ殺してやるよ!」ダッ

弱気「危ないっ……!」
4:2019/04/06(土) 20:00:06.803
不良「ぐ、は……っ!」

優等生「もう大丈夫だ」

弱気「あ、ありがとう……君、強いんだね」

優等生「これでも武道をかじってるからね」

不良「ぐ……こんな奴に……」

不良「このままじゃ済まさねえぞ……覚えてやがれ!」

優等生「ああ、覚えておくよ」
6:2019/04/06(土) 20:03:08.070
不良「へへへ……」コソコソ

不良「……」シュボッ

不良「……」フゥー…

モワモワ…

不良「昼飯後の一服は最高だな」

サッ

不良「あっ、俺のタバコ!? 誰だ!?」
7:2019/04/06(土) 20:06:20.864
優等生「僕だ」

不良「またお前か! なにしやがる!」

優等生「喫煙なんてして、先生にバレたら大変なことになるよ」

優等生「それにそんな年からタバコなんか吸ってたら、将来体を悪くするよ。やめた方がいい」

不良「知るかよ! 俺が吸いたいんだから吸わせろや!」

優等生「ダメだ」

不良「うっぜえんだよ……今度こそブッ殺してやる!」
8:2019/04/06(土) 20:08:21.728
不良「が、がはっ……!」

優等生「ふぅ、タバコを吸ってるだけあってスタミナ不足だね」

優等生「僕に勝ちたかったら、少なくともタバコはやめた方がいいと思うよ」

不良「ぐ……!」

不良「覚えてやがれ!」

優等生「ああ、覚えておくよ」
10:2019/04/06(土) 20:11:37.459
不良「ふ、ふへへへ……」

不良「街の売人から、危ないクスリを買っちまった……」

不良「これを鼻から吸えば……」

優等生「なにやってるんだ!」バシッ

バサッ

不良「あーっ!!!」
11:2019/04/06(土) 20:13:31.371
不良「何しやがる! これ……高かったんだぞ! 3万もしたんだ!」

優等生「3万? 人生を捨てる代金としては安すぎると思うけど」

不良「人生を捨てるぅ? 大げさな奴だ、一回だけ体験したかったんだよ!」

優等生「その一回だけで人生が終わってしまった人は大勢いるんだよ」

不良「だったら……俺がお前の人生を終わらせてやるよ!」
12:2019/04/06(土) 20:16:03.265
不良「――ぐはぁっ!」

優等生「僕の勝ちだな」

優等生「君も男なら、二度とあんなクスリに手を出さないって誓えよ」

不良「ぐ、ぐ、次こそ……」

不良「覚えてやがれ!」

優等生「ああ、覚えておくよ」
13:2019/04/06(土) 20:19:31.370
卒業式――

ホータールノーヒーカーリー… マドノユーキー…

女子「優等生君、元気でね!」シクシク

級友「お前なら進学校でもトップ獲れるよ!」

弱気「絶対立派な人になってね!」

優等生「みんな、ありがとう」

不良「……おい」ボソッ

優等生「!」

不良「後で……校舎裏来い」

優等生「いいだろう」
14:2019/04/06(土) 20:22:20.356
不良「待ってたぜ……」パキポキ

優等生「なんの用だ?」

不良「決まってんだろ、今までのリベンジをするんだよ! たっぷり利子つけてな!」

不良「だが、逃げたっていいんだぜ? ここで別れりゃもう俺ら、会うこともないだろうからな!」

優等生「逃げたりするもんか……」

優等生「受けて立つ!」

不良「さすがだよ……優等生!」
16:2019/04/06(土) 20:24:15.820
不良「だりゃあああああっ!」ブオンッ

優等生「はっ!」

ドカッ!

不良「くっ、まだまだぁ!」

ガッ!

優等生「ぐあっ!」

優等生(強い……今までとは気迫が違う!)
18:2019/04/06(土) 20:27:06.723
優等生「いいだろう、僕も本気を出す!」バサッ

不良「いくぜぇぇぇぇぇ!!!」

ドカッ! バキッ! ガッ! ガスッ! ドゴッ! バキッ!

優等生「だああああああああああああああああああっ!!!」

不良「うおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」

ドカァッ!!!

優等生「……ぐ」
19:2019/04/06(土) 20:30:14.115
不良「ぐはぁっ……!」ドサッ

不良「タバコもやめて、ちゃんと筋トレしたってのによ……負けた。完敗だ」

優等生「不良君……」

不良「だが……まだだ!」

優等生「!」

不良「俺はまた必ずお前に挑む……覚えてやがれ!」

優等生「ああ、覚えておくよ」
20:2019/04/06(土) 20:32:47.785
十数年後――

上司「困るよ、こんなことじゃ……」

会社員「はい、申し訳ありませんでした」ペコペコ

会社員(はぁー……また怒られた)

会社員(ワルだった頃の俺だったら多分殴り返してただろうけど、もちろんそんなことできるわけない)

会社員(俺はこのまま、しょぼくれた大人として年を食ってくのかなぁ……)
21:2019/04/06(土) 20:33:59.743 ID:6JdKzhgur.net
お?
22:2019/04/06(土) 20:34:45.776
スタスタ…

会社員「――ん」

会社員(あれは……もしかして優等生じゃないか!?)

会社員(話しかけて……いや、やめとこう)

会社員(もし違ったら恥ずかしいし、あいつが俺のことを覚えてるわけないもんな)
23:2019/04/06(土) 20:37:45.504
エリート「君……もしかして不良君じゃないか?」

会社員「え……?」

エリート「ほら、僕だよ! 中学の頃よく喧嘩した……」

会社員「なんで、俺のことなんか……」

エリート「覚えてるに決まってるじゃないか! あれだけ覚えてやがれっていわれたんだから!」

会社員「……!」ジーン…

エリート「時間あるなら、ちょっとカフェでも入らない?」

会社員「ああ、俺なら大丈夫!」
26:2019/04/06(土) 20:40:21.360
会社員「へぇ~、一流大出た後、大物議員の秘書をやってるのか」

エリート「うん、僕も政治家になりたくてね」

会社員「すげえな……」

会社員「それに比べて、俺はちっぽけな会社のサラリーマンさ」

エリート「そんなことないよ」

エリート「そうやってスーツを着てる姿なんて、あの頃の君からは考えられないよ」

会社員「へへへ、もしお前がいなかったら、今頃どんだけ落ちぶれてたことか……」
27:2019/04/06(土) 20:42:46.429
エリート「それじゃまた」

会社員「ああ、会えて嬉しかったよ」

会社員(まさか、俺のこと覚えててくれたなんてなぁ、ビックリだ)

会社員(おかげでつまらなかった毎日に、少し張りが出たような気がするよ)

会社員(よーし、仕事頑張るぞ!)
28:2019/04/06(土) 20:43:38.271 ID:6JdKzhgur.net
いい話
29:2019/04/06(土) 20:45:49.344
……

父「俺はある人のおかげで道を踏み外さずに済んだんだ」

子供「ふうん、そんなにすごい人なの?」

父「ああ、勉強がよくできて、記憶力が特にすごかった」

父「俺なんかのことも覚えてたしな……」

子供「へぇ~、見てみたい!」

父「今は政治家になって、テレビにもよく出るようになった。ほら、ちょうど今も出てるぞ」
30:2019/04/06(土) 20:47:44.314
『使途不明金についてご説明をお願いします!』

政治家『覚えておりません』

『ある企業のために使ったのではないのですか!?』

政治家『記憶にございません』

フザケルナー! チャントコタエロー! セツメイシロー!


子供「この人、どこが記憶力がすごいの? 全然覚えてないじゃん!」

父「う、うーむ……」







― 終わり ―
32:2019/04/06(土) 20:49:08.616 ID:6JdKzhgur.net

面白かった
33:2019/04/06(土) 20:50:58.078 ID:v+BEo7zma.net
面白いw
34:2019/04/06(土) 20:51:07.115 ID:0Xj/PQFh0.net
そういうオチかー