1:2019/04/15(月) 22:07:06.645
国王「旅の商人よ、薔薇咲き誇る麗しきバラ王国へようこそ」
商人「聞きしに勝る美しさに、私まさに感動しております」
国王「して、売りたいものとは?」
商人「はい、貴国は長年、隣国であるカーネーション王国と対立状態にありますね?」
国王「うむ、その通り。奴らとは長らく対立関係にある。いまいましいことだ」
商人「本日お持ちしましたのは、その対立を終わらせる商品でございます」
国王「いったいどんな商品だ?」
商人「ずばり、無敵の鎧でございます」
国王「ほう、無敵の鎧!」
商人「聞きしに勝る美しさに、私まさに感動しております」
国王「して、売りたいものとは?」
商人「はい、貴国は長年、隣国であるカーネーション王国と対立状態にありますね?」
国王「うむ、その通り。奴らとは長らく対立関係にある。いまいましいことだ」
商人「本日お持ちしましたのは、その対立を終わらせる商品でございます」
国王「いったいどんな商品だ?」
商人「ずばり、無敵の鎧でございます」
国王「ほう、無敵の鎧!」
4:2019/04/15(月) 22:10:22.874
商人「私が売る鎧を兵士の皆さまが装備すれば、カーネーション王国など怖くありません」
商人「なにしろ敵の攻撃が一切通じなくなるのですから」
国王「それが本当なら素晴らしいことだ。ぜひ見せてくれ!」
商人「こちらです」サッ
国王「……ん?」
国王(何も持ってないではないか)
商人「なにしろ敵の攻撃が一切通じなくなるのですから」
国王「それが本当なら素晴らしいことだ。ぜひ見せてくれ!」
商人「こちらです」サッ
国王「……ん?」
国王(何も持ってないではないか)
5:2019/04/15(月) 22:13:17.239
商人「ご説明申し上げます」
国王「……?」
商人「この鎧は無敵ですが、愚か者には見えませんし、つけても効果がありません」
国王「え……!?」
国王(ってことは余は愚か者!? いや、そんなはずはない! だけど見えない……)
商人「ん? 陛下、まさか見えないなんてことは――」
国王「い、いや見える! 見えるぞ! わー、立派な鎧だなー」
商人「それはよかった」
国王「……?」
商人「この鎧は無敵ですが、愚か者には見えませんし、つけても効果がありません」
国王「え……!?」
国王(ってことは余は愚か者!? いや、そんなはずはない! だけど見えない……)
商人「ん? 陛下、まさか見えないなんてことは――」
国王「い、いや見える! 見えるぞ! わー、立派な鎧だなー」
商人「それはよかった」
8:2019/04/15(月) 22:16:26.426
商人「さっそく着てみますか?」
国王「うむ、着てみよう」
国王(やばい……手応えが全然ない)
商人「いかがですか?」
国王「えぇっと……すごくいい! 無敵になった気分!」
国王「どうだ、大臣よ」
大臣「え、ええ、ものすごくお似合いでございます!」
国王(くそっ、大臣には見えておるのか!)
大臣(正直に見えないなんていったら愚か者の烙印を押され罷免されかねんからな……)
国王「うむ、着てみよう」
国王(やばい……手応えが全然ない)
商人「いかがですか?」
国王「えぇっと……すごくいい! 無敵になった気分!」
国王「どうだ、大臣よ」
大臣「え、ええ、ものすごくお似合いでございます!」
国王(くそっ、大臣には見えておるのか!)
大臣(正直に見えないなんていったら愚か者の烙印を押され罷免されかねんからな……)
9:2019/04/15(月) 22:19:21.984
商人「だったら殴られてみたらいかがですか?」
国王「えっ」
商人「ちゃんと効力を確かめた方がよろしいかと」
国王「そ、それもそうだな……殴ってくれ」
大臣「分かりました」
大臣「えいっ!」
ボカッ!
国王「ぐほっ!」
商人「いかがです?」
国王「うん、全然痛くない!」
国王(いてえええええええええ!!!)
大臣(鎧の感触なんて全然なかったけど、防御力は本物ということか……!)
国王「えっ」
商人「ちゃんと効力を確かめた方がよろしいかと」
国王「そ、それもそうだな……殴ってくれ」
大臣「分かりました」
大臣「えいっ!」
ボカッ!
国王「ぐほっ!」
商人「いかがです?」
国王「うん、全然痛くない!」
国王(いてえええええええええ!!!)
大臣(鎧の感触なんて全然なかったけど、防御力は本物ということか……!)
11:2019/04/15(月) 22:22:14.700
国王「この鎧……気に入った!」
国王「我がバラ王国軍の正式装備として採用することにしよう!」
商人「ありがたき幸せ……」
国王「将軍よ、おぬしにはこの鎧が見えておるな?」
将軍「も、もちろんでございます!」
国王「さっそく、全兵士にこの鎧を装着させるのだ!」
将軍「かしこまりました!」
将軍「いやー、素晴らしい鎧だ……」
国王「我がバラ王国軍の正式装備として採用することにしよう!」
商人「ありがたき幸せ……」
国王「将軍よ、おぬしにはこの鎧が見えておるな?」
将軍「も、もちろんでございます!」
国王「さっそく、全兵士にこの鎧を装着させるのだ!」
将軍「かしこまりました!」
将軍「いやー、素晴らしい鎧だ……」
13:2019/04/15(月) 22:25:07.182
将軍「今日からこの無敵の鎧が正式採用になった!」
将軍「ただし、愚か者には見えないし、効果がないとのことなので見えない者は正直に申し出ること!」
ザワザワ… ドヨドヨ…
兵士A(全然見えないけど……見えないっていったら愚か者であることを自白するようなもんだしな)
兵士A「み、見える見える!」
兵士B(えっ、こいつ見えるの!?)
兵士C(嘘だろ! やばい、こいつより愚か者だなんて認めたくない!)
将軍「ただし、愚か者には見えないし、効果がないとのことなので見えない者は正直に申し出ること!」
ザワザワ… ドヨドヨ…
兵士A(全然見えないけど……見えないっていったら愚か者であることを自白するようなもんだしな)
兵士A「み、見える見える!」
兵士B(えっ、こいつ見えるの!?)
兵士C(嘘だろ! やばい、こいつより愚か者だなんて認めたくない!)
14:2019/04/15(月) 22:28:11.617
兵士A「こんな無敵そうな鎧、見たことがない!」
兵士B「なんてすごい鎧なんだ……!」
兵士C「こ、これなら絶対カーネーション軍に勝てるぞ!」
ワアァァァァァァ…
将軍「ふむ、みんな見えるのか」
将軍(マジかよ……見えてないのひょっとして俺だけ?)
兵士B「なんてすごい鎧なんだ……!」
兵士C「こ、これなら絶対カーネーション軍に勝てるぞ!」
ワアァァァァァァ…
将軍「ふむ、みんな見えるのか」
将軍(マジかよ……見えてないのひょっとして俺だけ?)
16:2019/04/15(月) 22:31:22.758
国王「兵士の反応はどうだった? 普通の鎧を希望する者もいたのでは?」
将軍「いえ、どうやらみんな鎧が見えているようです」
国王「つまり無敵の軍団が完成したということか!」
将軍「おっしゃる通りです」
国王「となれば、いよいよカーネーション王国に宣戦布告するか!」
国王「戦争の前に、士気を上げるために街でパレードを行う!」
将軍「はっ!」
国王(我が王国には愚か者が余以外にいないのか!? くっ、嬉しいやら悲しいやら……)
将軍「いえ、どうやらみんな鎧が見えているようです」
国王「つまり無敵の軍団が完成したということか!」
将軍「おっしゃる通りです」
国王「となれば、いよいよカーネーション王国に宣戦布告するか!」
国王「戦争の前に、士気を上げるために街でパレードを行う!」
将軍「はっ!」
国王(我が王国には愚か者が余以外にいないのか!? くっ、嬉しいやら悲しいやら……)
17:2019/04/15(月) 22:34:13.589
パラパパパー♪ パッパラパー♪ パラパパパー♪
ザッザッザッ… ザッザッザッ…
子供(なんでみんななんの鎧もつけてないんだろう……?)
母「どうしたの?」
子供「お母さん、あの兵士の人達……」
母「みんな、愚か者には見えない無敵の鎧をつけてるのよ」
子供「……」
ザッザッザッ… ザッザッザッ…
子供(なんでみんななんの鎧もつけてないんだろう……?)
母「どうしたの?」
子供「お母さん、あの兵士の人達……」
母「みんな、愚か者には見えない無敵の鎧をつけてるのよ」
子供「……」
18:2019/04/15(月) 22:37:19.089
子供「見える! 見えるよ!」
母「でしょう?」
子供「すっげー、かっこいい鎧!」
母「さすが私の息子だわ!」
母(ヤバイ……息子には見えてるのに私は見えてないだなんて……)
母「でしょう?」
子供「すっげー、かっこいい鎧!」
母「さすが私の息子だわ!」
母(ヤバイ……息子には見えてるのに私は見えてないだなんて……)
19:2019/04/15(月) 22:38:30.327 ID:y+wUvNFLr.net
子供もかよ
20:2019/04/15(月) 22:40:29.892
ヒュゥゥゥゥゥ…
国王「この平原が決戦の場だ」
国王「今日でようやくカーネーション王国との長き因縁も終わりを迎える!」
国王「皆には無敵の鎧があるのだ! 恐れるな!」
国王(余には見えてないんだけど……)
オーッ!!!
(俺には見えてないけど、他の奴らは見えてるらしいし何とかなるだろ)
(見栄張っちゃったけど、もし敵の攻撃喰らったら俺死ぬな……)
(俺って愚か者だったんだなぁ……)
国王「この平原が決戦の場だ」
国王「今日でようやくカーネーション王国との長き因縁も終わりを迎える!」
国王「皆には無敵の鎧があるのだ! 恐れるな!」
国王(余には見えてないんだけど……)
オーッ!!!
(俺には見えてないけど、他の奴らは見えてるらしいし何とかなるだろ)
(見栄張っちゃったけど、もし敵の攻撃喰らったら俺死ぬな……)
(俺って愚か者だったんだなぁ……)
21:2019/04/15(月) 22:43:12.556
将軍「陛下!」
国王「む?」
将軍「カーネーション軍が……やって参りました!」
国王「来たか……!」
ゾロゾロ… ゾロゾロ…
国王「む?」
将軍「カーネーション軍が……やって参りました!」
国王「来たか……!」
ゾロゾロ… ゾロゾロ…
23:2019/04/15(月) 22:46:42.805
国王「待っていたぞ、カーネーション王国!」
敵国王「バラ王国よ、今日こそ決着をつけてやる!」
敵国王「……?」
敵国王(なんでバラ王国軍は鎧をつけてないんだ?)
国王「最初にいっておくが、実は我が軍の兵士は無敵の鎧を身につけている!」
敵国王「なにっ!?」
国王「ただし、愚か者には見えない鎧だがな!」
敵国王「な、なんだと!?」
敵国王「バラ王国よ、今日こそ決着をつけてやる!」
敵国王「……?」
敵国王(なんでバラ王国軍は鎧をつけてないんだ?)
国王「最初にいっておくが、実は我が軍の兵士は無敵の鎧を身につけている!」
敵国王「なにっ!?」
国王「ただし、愚か者には見えない鎧だがな!」
敵国王「な、なんだと!?」
24:2019/04/15(月) 22:48:26.916 ID:i4ChmIsc0.net
みんな純粋ww
25:2019/04/15(月) 22:50:28.085
国王「まさか見えぬのか?」
敵国王「そんなことはない! 見える、見えるぞ!」
国王(マジか……やはり見えるのか。ってことは、余はあいつより愚か者なのかよ……)
国王(ところで、カーネーション軍の奴らはなんで武器を持ってないんだ? 素手で戦うつもりか?)
国王「あの……」
敵国王「こちらもいっておくが、実は我が軍は全員いかなるものをも切り裂く最強の剣を持っている!」
敵国王「鉄だろうとダイヤモンドだろうとスパスパと斬ってしまうのだ!」
敵国王「試し斬りしたところ、あまりに切れ味が鋭いので、まるで斬ってないように見えるほどだった!」
国王「なにっ!?」
敵国王「ただし、愚か者には見えない剣だがな!」
国王「な、なんだと!?」
敵国王「そんなことはない! 見える、見えるぞ!」
国王(マジか……やはり見えるのか。ってことは、余はあいつより愚か者なのかよ……)
国王(ところで、カーネーション軍の奴らはなんで武器を持ってないんだ? 素手で戦うつもりか?)
国王「あの……」
敵国王「こちらもいっておくが、実は我が軍は全員いかなるものをも切り裂く最強の剣を持っている!」
敵国王「鉄だろうとダイヤモンドだろうとスパスパと斬ってしまうのだ!」
敵国王「試し斬りしたところ、あまりに切れ味が鋭いので、まるで斬ってないように見えるほどだった!」
国王「なにっ!?」
敵国王「ただし、愚か者には見えない剣だがな!」
国王「な、なんだと!?」
26:2019/04/15(月) 22:53:37.282
敵国王「もしかして見えないのか?」
国王「そんなことはない! 見える! 見えるぞ!」
国王「なぁ、みんな!」
「み、見えますとも!」 「みんな恐ろしい剣を持ってやがる!」 「やっべ、切れ味よさそう!」
国王「……」
国王「ということはつまり、この戦いは――“無敵の鎧”と“最強の剣”がぶつかる戦いになるわけか」
敵国王「そういうことだな」
国王「そんなことはない! 見える! 見えるぞ!」
国王「なぁ、みんな!」
「み、見えますとも!」 「みんな恐ろしい剣を持ってやがる!」 「やっべ、切れ味よさそう!」
国王「……」
国王「ということはつまり、この戦いは――“無敵の鎧”と“最強の剣”がぶつかる戦いになるわけか」
敵国王「そういうことだな」
27:2019/04/15(月) 22:56:31.870
国王(無敵の鎧と最強の剣がぶつかったら、いったいどっちが勝つんだ!?)
国王(もし鎧の勝ちなら、奴らの剣は全て砕け、我が軍の勝利が決定する)
国王(しかし、もし剣の勝ちなら、我が軍の兵士はカーネーション軍に一人残らず斬られてしまうだろう)
国王(どうなるのか見当もつかない……)
国王(我が軍が圧勝する戦いのはずが、勝敗が見えなくなってしまった……)
国王「……」チラッ
敵国王「……」チラッ
国王「あ、あのー……」
敵国王「な、なに?」
国王(もし鎧の勝ちなら、奴らの剣は全て砕け、我が軍の勝利が決定する)
国王(しかし、もし剣の勝ちなら、我が軍の兵士はカーネーション軍に一人残らず斬られてしまうだろう)
国王(どうなるのか見当もつかない……)
国王(我が軍が圧勝する戦いのはずが、勝敗が見えなくなってしまった……)
国王「……」チラッ
敵国王「……」チラッ
国王「あ、あのー……」
敵国王「な、なに?」
28:2019/04/15(月) 22:59:40.338
国王「やはり戦争……やめようか」
敵国王「うむ、こちらもそう思ってたところだ。戦争は憎しみと悲しみしか生まない」
国王「これからはいがみ合いを止め、仲良く同盟を組もうではないか!」
敵国王「そうだな! そうしよう、そうしよう!」
国王「決まりだ!」
国王「ただいまより、両王国は同盟を組み、友好国となる!」
ワァッ!!!
敵国王「うむ、こちらもそう思ってたところだ。戦争は憎しみと悲しみしか生まない」
国王「これからはいがみ合いを止め、仲良く同盟を組もうではないか!」
敵国王「そうだな! そうしよう、そうしよう!」
国王「決まりだ!」
国王「ただいまより、両王国は同盟を組み、友好国となる!」
ワァッ!!!
29:2019/04/15(月) 23:02:41.891
商人「フンフ~ン……今日は高い酒ジャンジャン持ってきてくれ」
マスター「やけに上機嫌じゃねえか、一体どうしたい?」
商人「そりゃ上機嫌にもなるさ」
商人「なんたって大儲けできた上、平和に貢献できたんだからな」
マスター「平和に貢献? なに寝言いってやがんだ、口先だけの詐欺師がよ」
バラ王国とカーネーション王国の同盟は両国の頭文字を取って『バカ同盟』と称され、
現在に至るまでその友好関係は続いている――
~ END ~
マスター「やけに上機嫌じゃねえか、一体どうしたい?」
商人「そりゃ上機嫌にもなるさ」
商人「なんたって大儲けできた上、平和に貢献できたんだからな」
マスター「平和に貢献? なに寝言いってやがんだ、口先だけの詐欺師がよ」
バラ王国とカーネーション王国の同盟は両国の頭文字を取って『バカ同盟』と称され、
現在に至るまでその友好関係は続いている――
~ END ~
30:2019/04/15(月) 23:03:01.552
鎧の元ネタはドラえもんの「ウルトラよろい」です
31:2019/04/15(月) 23:04:26.032 ID:KX7hjs5gr.net
バカ同盟wwww
32:2019/04/15(月) 23:08:13.578 ID:i4ChmIsc0.net
裸の王様かと思ったら矛盾だった
34:2019/04/15(月) 23:32:29.771 ID:zJgi+BmGr.net
乙
コメントは節度を持った内容でお願いします、 荒らし行為や過度な暴言、NG避けを行った場合はBAN 悪質な場合はIPホストの開示、さらにプロバイダに通報する事もあります