1:2019/04/27(土) 20:02:34.837
男「あー大学生ぐらいから人生やり直したいなー」

???「それが、お前の願いか?」

男「!?」

魔人「大学からやり直す。それでいいのか?」

男「お、お前は?」



2:2019/04/27(土) 20:03:05.264
魔人「俺は魔人。それ以上に説明はいるまい」

男「俺の願い適えてくれるのか?」

魔人「……人とは不思議なものだ」

魔人「口に出す願いは、そろいもそろって人生をやり直したい」

魔人「いったいどれだけの人間が、悔いのある人生を送ってきたというのだ。なんとも嘆かわしい」
3:2019/04/27(土) 20:03:17.950
男「えっと……どうせなら、小学生からのやり直しにしてもらおうかな」

魔人「そのやり直しの時期もまた画一的で実につまらない」

魔人「つまるところ、学生時代に犯した過ちを悔いているのだ」

魔人「今の自分なら、その過ちすら犯すことなく順風満帆に学生生活を送ることができると。そう確信しているのだ」

魔人「だが、果たしてそうだろうか?」
4:2019/04/27(土) 20:03:31.448
男「魔人さん?」

魔人「では問おう。今のお前は何だ?」

男「……会社員です」

魔人「日常の中で失敗をすることはあるか?」

男「あります」
5:2019/04/27(土) 20:03:43.393
魔人「例えば?」

男「契約書の日時を間違えて客先に訂正印をもらいにいったり……署名が必要なのにもらい忘れて、透かして写したのが上司にばれたり……」

魔人「それだけか?」

男「そりゃあ、それだけじゃあないですけど……まあ、やり直すほど大したことではないです」

魔人「本当にそうだろうか?高校生で間違ったことを、たかだか数年が経ち社会人になったところで同じ過ちを繰り返さないと誰が言える?」
6:2019/04/27(土) 20:03:55.286
魔人「人は、そうたやすくは成長しない。どんな人間だろうと、いつ取り返しのつかない過ちを犯すかなんてわからないものだ」

魔人「本当にお前は、社会人になってから取り返しのつかない間違いを犯したことはないのか?」

男「……」

魔人「沈黙は、我が問いに答えられないということだ。すなわち、後ろ暗いことがあるということだ」

男「」
7:2019/04/27(土) 20:04:08.011
魔人「もう一度問う。貴様は、社会人になってから一度たりとも、過去にさかのぼり無かったことにしたいという間違いは一度たりとも犯したことはないのか?」

男「……」

魔人「答えよ」

男「……友人を亡くしました」

魔人「それはいつのことだ」
9:2019/04/27(土) 20:04:20.261
男「つい数年前のことです」

魔人「実に不思議な話だ」

魔人「実に不思議な話だとも。なぜなら、お前は友の復活ではなく高校生からの人生のやり直しを我に願ったのだから」

男「なんら不思議ではありません」

魔人「ふむ。友の復活を望まなかった理由をきかせてもらおうか」
10:2019/04/27(土) 20:04:32.362
男「それは……無駄に終わるからです」

魔人「我に、その願いを適えられる力が無いと?」

男「そうではありません。……友は、たとえ貴方に復活させてもらったとしても再び自ら命を絶つでしょうから」

魔人「つまり、友は自殺したということだな」

男「……その通りです」
11:2019/04/27(土) 20:04:44.518
魔人「復活させても、彼は死から逃れられない。そういうわけだな」

魔人「なるほど、君の根幹にある願いはそれなのだろう」

魔人「復活させても無駄に終わる。だからこそ、過去にさかのぼりたい」

魔人「つまるところ、友人の死に、君の若さゆえの愚かしさが関わっていると見たがどうであろうか」

男「……その通りです」
12:2019/04/27(土) 20:04:55.843
男「友とは、物心ついたころから常に一緒に過ごしていました」

男「同じ保育園を出て、同じ小学校に行き、同じ中学校に通いました」

男「友は、いつからか。あれは中学生ぐらいの時からだったと思います。口を開けばネガティブなことしか言わなくなりました」

男「やれ、俺は運動音痴だ。俺は不細工だ。俺は馬鹿だと」

男「俺は、それをひたすらに『そんなことないよ』と慰めていましたが。実のところ、そんな毎日に辟易していました」
13:2019/04/27(土) 20:05:08.096
男「そんなある日、友は言いました。『お前は、才能があっていいよな』」

男「俺は、その言葉に激昂しました」

男「自分で言うのもなんですが、俺は友よりルックスはいいですし。運動もできます。スポーツだって彼に比べれば大分マシです」

男「でもそれは、俺が彼より努力をしているだけであって。俺が最初から持ちうるものではありませんでした」

男「しかし、友はそれを認めなかった。生まれ持った物の違いだと決めつけた」
14:2019/04/27(土) 20:05:18.761
男「そして、そうではないと否定した俺に『ならば、俺が努力していないとでもいう気か』と。そう詰め寄りました」

男「卑怯だと思いました。彼の努力を、いったい彼以外の誰が否定できるというのですか?」

男「俺の努力を知らない者が、俺の努力を否定したからと言って。どうして彼の努力を知らない俺が、彼を否定することができるでしょうか」

男「俺は、その日以来、友とは距離をおくようになりました」

男「喧嘩をしているわけではありませんが。必要最低限の。それこそ、出会ったときに『おぅ』ぐらいの言葉をかける程度の関係になりました」
15:2019/04/27(土) 20:05:30.169
男「高校からは離れ離れになりました。俺は地元の進学校。友は、あまり偏差値の高くない私立高校です」

男「大学も別でした。俺は県外へ。彼は地元の大学へ。そして、彼は留年を繰り返ししばらくして大学を中退しました」

男「それでも、俺たちの関係は続いていました。実に細い紐のような関係でしたが、実家がすぐ近くで幼少期からずっと一緒の幼馴染だったのです」

男「切っても切れない関係とは、そういうものでしょう?」

男「友は、学校を辞めた後、地元の建築関係の仕事に就職しました」
16:2019/04/27(土) 20:05:41.671
男「高校からは離れ離れになりました。俺は地元の進学校。友は、あまり偏差値の高くない私立高校です」

男「大学も別でした。俺は県外へ。彼は地元の大学へ。そして、彼は留年を繰り返ししばらくして大学を中退しました」

男「それでも、俺たちの関係は続いていました。実に細い紐のような関係でしたが、実家がすぐ近くで幼少期からずっと一緒の幼馴染だったのです」

男「切っても切れない関係とは、そういうものでしょう?」

男「友は、学校を辞めた後、地元の建築関係の仕事に就職しました」
17:2019/04/27(土) 20:05:52.360
男「高校からは離れ離れになりました。俺は地元の進学校。友は、あまり偏差値の高くない私立高校です」

男「大学も別でした。俺は県外へ。彼は地元の大学へ。そして、彼は留年を繰り返ししばらくして大学を中退しました」

男「それでも、俺たちの関係は続いていました。実に細い紐のような関係でしたが、実家がすぐ近くで幼少期からずっと一緒の幼馴染だったのです」

男「切っても切れない関係とは、そういうものでしょう?」

男「友は、学校を辞めた後、地元の建築関係の仕事に就職しました」
18:2019/04/27(土) 20:06:48.276
男「俺も、友に少し遅れて大学を卒業し地元の会社に就職してしばらくしたころ。友の母から相談を受けました」

男「友は精神科に通っていると。そして、何らかの障害があると診断されたと」

男「俺は、友の母に言いました。そんなの気にするなと。それが、友を甘えさせる理由にはならないと」

男「俺は思ったんです。また友の悪い病気が出ただけだと。うまくいかないことを全て、自身以外の原因に求めていく悪い癖だと」
20:2019/04/27(土) 20:07:16.413
男「しばらくして、友の母から。友が自殺未遂を繰り返していると聞きました」

男「俺は、どうせ狂言自殺だろうと高をくくっていました。そして、それを友の母にも伝えました」

男「しばらくして、友は自殺に成功してしまいました」

男「俺は、悔いました」

男「狂言ではなかったんだと。あいつは、本気で自分自身のことを殺したかったんだと」
22:2019/04/27(土) 20:07:30.779
男「俺が、友の母の危機感を和らげようと発した言葉が無ければ。奴はまだ、生きていて、普段と変わらず俺にネガティブな話を延々と聞かせ続けていたのではないかと」

男「奴を殺したのは、俺ではなかったのかと」

男「……だから、人生をやり直せるなら小学生がいいと思ったんです」

男「友が歪むその前に、今の俺なら彼を真っ当に生かすことができるんじゃないかと」

男「……」
23:2019/04/27(土) 20:07:47.711
魔人「思い上がりも甚だしいな。実のところ、今のお前とかつて小学生だったころのお前にどんな違いがあるだろうか」

魔人「どんなに時を経ようが、お前はお前だ。たとえ、過去にお前が遡ったとしても」

魔人「お前はやはり、友の自己嫌悪に嫌気がさし、その内に彼を見放す」

魔人「ならば、同じことだ。お前の犯した取り返しのつかない過ちは、再び来た道をなぞる様に起こるだろう」

魔人「そうして、お前は再び同じ悔いに悩むのだ」
25:2019/04/27(土) 20:08:00.274
俺「……説教は、もういい。いいから俺の願いを聞いてくれ」

魔人「いいだろう。お前の願いを言え」

俺「小学生から人生をやり直させてくれ」

魔人「よろしい!その願い聞き入れた!」

魔人「それでは。その悔いを抱えたまま。一生を惨めに過ごすといい!」
26:2019/04/27(土) 20:08:26.022
俺「……」

俺「おい、消えちまったのか?」

俺「おいおいおいおいおい」

俺「願いを聞き入れるってそういうことかよ!願いを適えてくれるわけでは無いってことなのかよ!?」

俺「なんだよ、期待だけさせて。俺の心の内を抉っていっただけだっていうのかよ!?」
27:2019/04/27(土) 20:08:39.281
俺「……畜生!」

俺「誰か、俺を助けてくれ!」
30:2019/04/27(土) 20:19:10.865
続きなんてねえよ
誰かが言ってたがそうだよ、魔人なんて存在しねえし、友はもう氏んでんだ
俺が悔いたところで、なにも起こりやしねえし、小学生からやり直せるなんて起こりえねえ
だがな20年以上、毎日毎日毎日毎日、顔合わしてたんだ
そいつが毎日毎日、まるで恨み言を言うように俺に自身の不遇を愚痴ってくるんだぜ
そんなの耐えられるわけないだろう?甘えるなって俺が思ったとして誰が責められる?
だけど、そんな糞やろうな友でもよ、悪いとこばかりだったわけじゃねえんだよ
氏んでしまったからそう思うのかもしれないが、いいところだって多少はあったんだよ
死ぬほどではないだろと悔いて何が悪い
たちが悪い
死ぬほどたちが悪い
俺に、最悪の後味だけ残してあいつは死にやがった
もう何年たったがわからないが、いまだに夢に出てきやがる
死んだのはうそです
ってばかりにのうのうと夢に出てきやがる
でも、そのたびに、お前の葬式もう終わったぞ、どうやって世間様に顔向けすんだって思うんだが
それでもやっぱり、あの糞やろうが生きていたってことのほうが嬉しいんだ
そんなことをもう何年も何年も何年も繰り返してる
これはいつ終わるんだ
俺はいつ、あの糞やろうの死から逃れられるんだ
誰か俺を助けてくれ
37:2019/04/27(土) 20:29:43.884
誰か助けてくれよ
兄貴を蘇らせてくれよ
俺を悪夢から解き放ってくれよ
31:2019/04/27(土) 20:20:35.711 ID:c0Mg28kjM.net
気にしすぎだろ
メンヘラと仲違いするならそのくらい覚悟しろよ
35:2019/04/27(土) 20:25:59.072 ID:f86bBrvq0.net
ガチなのネタなの?どっち?
32:2019/04/27(土) 20:20:42.527 ID:t+VOoln20.net
神「話は聞いていた。学生時代に戻りやり直したいだったな。」

俺「くそっ。盗み聞きしてたのかよ。というか俺は神というものが信じられないんだ。」

俺「さんざん過酷な人生用意しやがって、祈ったって救いの手すらさしのべない。」

俺「今更、神に何を祈れっていうんだ?」
34:2019/04/27(土) 20:25:01.901 ID:t+VOoln20.net
神「そうか、せっかく願いを叶えようとして来たのだが、気が変わった。」

俺「!?」

俺「気が変わったってどういうことだよ?まさか未曾有の大災害でも起こそうっていうんじゃないだろうな?」

神「・・・・・・・。それも悪くないな。」
36:2019/04/27(土) 20:29:09.498 ID:t+VOoln20.net
神「お前、過去に戻りたいと言ったな?」

俺「ああ、そうだよ。」

神「ならばその願いかなえてやろう。」

神「ただし、過去に戻ってもお前にはさらに過酷な運命が待っているぞ。」

俺「うっせー!早く戻れるなら戻しやがれ。」
39:2019/04/27(土) 20:35:11.644 ID:t+VOoln20.net
突然視界が歪み、目の前が真っ暗になった。

 「・・・・・・」

 「・・・・・・・・・・・・」

 「・・・・・・・・・・・・」

俺(誰かが話しかけてくるけどはっきりしない)

 「・・・・・・・・・・・・」

 
 「だ・・・いじょ・・・・」

女「大丈夫ですか?」


俺「・・・・・・・・・」
40:2019/04/27(土) 20:39:17.088 ID:t+VOoln20.net
俺「だい・・・じょうぶです」

俺(道に倒れていたのか、記憶がはっきりしない)

俺(確か、魔人とあと神と・・・途中まで話してたはずだけどどうだったっけ・・・)

女「道端に倒れてたからびっくりしたんですよ。怪我とかしてないですか?」

俺「大丈夫です。」
42:2019/04/27(土) 20:44:07.942 ID:t+VOoln20.net
女「自分で帰れる?お父さんかお母さんに連絡しようか?」

俺「(お父さんかお母さん?)いいえ、大丈夫です。ご心配をかけました。」

女「そっか。気を付けるんだよ。」

そう言うと女はその場から立ち去った。

俺「しかし、俺はいつの間にこんなところに来てたんだ?ここは近所の川崎公園だよな。」

俺「とりあえず・・・家に帰るか。」
43:2019/04/27(土) 20:48:18.522 ID:t+VOoln20.net
ほどなくして家に着いた後、空腹を補うため何か食べたくなった。

俺「おっと、その前に手洗いだな。こういうところはきちんとしてるんだよな俺」

洗面所へいつもの足取りで向かい手を洗い始める。

俺「!?」

俺「これ・・・俺だよな・・・?いや、俺なんだけど・・・若返ってる!?」

そこには学生時代の頃に見た俺が立っていた。
44:2019/04/27(土) 20:52:06.540 ID:t+VOoln20.net
突然の出来事で思考が回らなくなる。いったい何が起こってるんだ。

-----------------------------

神「お前、過去に戻りたいと言ったな?」

俺「ああ、そうだよ。」

神「ならばその願いかなえてやろう。」

-----------------------------

俺「痛っ。(軽い頭痛がする)本当に戻れたのか!?」

俺「神、本当に俺の願い叶えてくれたのか。というか神って本当にいたんだな。」

俺「友・・・そうだ、友に会ってみよう。」
45:2019/04/27(土) 20:57:11.924 ID:t+VOoln20.net
俺「そういえば今何年だ?」

俺「え?2001年?まじかよ。ってことは俺19歳か。」

俺「そういえばこのころはよくともの家に行ってババ抜きして遊んでたなぁ。今思えばいっつも楽しかったなあ」

俺「思い出したらなんか涙出てきた。でも戻ってきたんだ!」

俺「もうすぐ友の家か。最近言ってなかったのに意外と覚えてるもんだなあ」
47:2019/04/27(土) 20:59:35.635 ID:t+VOoln20.net
友の家が近づいたときちょうど玄関から友が出てくる

俺「お、友、ナイスタイミング!」

俺「おーい、友、久しぶり!あ、久しぶりじゃなくて遊びに来たぞ~」

友「あなた、誰ですか?」
48:2019/04/27(土) 21:07:48.274 ID:t+VOoln20.net
俺「誰って、俺だよ俺!友もしかして俺の事忘れたのか?」

友「・・・・・・」

俺「え?冗談だよな。岩城中から一緒だった俺だよ。いつも一緒に遊んでたじゃないか」

友「人違いじゃないですか?」

友「岩城中は、僕も岩城中でしたけどごめんなさい。君のことは思い出せないです。」

俺「おい、友。ふざけんなよ!どういうつもりかしらないけど冗談にしてはひどすぎるんじゃないか?」

俺「だいたい・・・」

友母「友、どうしたの?」
49:2019/04/27(土) 21:12:27.147 ID:t+VOoln20.net
友母「大きな声がするから来てみたけど、お友達?」

友「同じ中学校にいた子みたなんだけど、急に怒鳴ってきて・・・。」

友母「ごめんね。友困ってるから、帰ってもらえるかしら?」

俺「友・・・。わかりました。」

俺「ご迷惑をおかけしてすみません。友・・・君もごめんね。」

友「うん大丈夫。」
50:2019/04/27(土) 21:17:42.406 ID:t+VOoln20.net
俺「何がどうなってるんだよ。友どうしちゃったんだよ。」

俺「日も暮れてきたし、今日はもう帰るか。」

俺「それにしても、友だけじゃなくて友母も俺の事忘れてたしわけわかんねえよ。」

俺「とりあえず家に着いたし、なんか疲れたし横になって休みたい。」

俺「ただいま。」

俺母「はーい。ちょっとまってください。」

俺「?」

俺母「えーと、どちら様ですか・・・?」
51:2019/04/27(土) 21:23:33.160 ID:t+VOoln20.net
俺「いや、そういうのいいから。飯はできてる?」

俺母「ちょっと。勝手に上がられたら困ります。あっ」

俺「あ。ごめん。変な冗談するから。」

その時二階から人が下りてくる足音がした。

男「なんか大きい音したよ。どうしたの?」

俺母「男。この人が急に家の中に入ろうとするから。」

俺「!?」