1:2019/05/13(月) 22:03:37.974 ID:9Rn8SZikp.net
勇者「トドメだっ! 雷鳴斬!」

解説担当「『説明しよう! 雷鳴斬とは、剣に雷呪文を纏わせた斬撃を放つ、勇者の必殺技である!』」

効果音担当「『ピカッ──』『ズバーッ!』」

解説担当「『この技の威力は絶大! 食らった魔物はひとたまりもなく散っていくのだ!』」

魔物「グギャーッ!」
通訳担当「『うわーっ! やられたーっ!』」

勇者「4人パーティーのはずが……。戦ってるのはいつも俺だけじゃないか……」

効果音担当「『ガックリ……』」

解説担当「『勇者は肩を落としつつも、仲間たちの存在を頼もしく思うのだった』」

通訳担当「……」

勇者「はぁ……」
4:2019/05/13(月) 22:05:07.537 ID:9Rn8SZikp.net
効果音担当「『ジリジリ……』」

勇者「はぁ……はぁ……砂漠がこんなに過酷だったなんて……」

効果音担当「『ポタッ……ポタッ……』」

解説担当「『勇者は汗を拭い、剣を構える。どんなに厳しい環境であっても魔物は生息しているのだ!』」

勇者「ん? うわっ、魔物だ……!」

効果音担当「『チャキッ』」

魔物A「グゲゲ」
通訳担当「『へっへっへ、久々の獲物だぜ』」

魔物B「グジュブブブ……」
通訳担当「『お、おい……あいつら勇者一行じゃないか!?』」

勇者「通訳邪魔! いいからさっさと倒すぞ!」

解説担当「『駆け出す勇者……飛びかかる魔物たち……! 勇者と魔物たちとの戦闘の火蓋は、今切って落とされた!』」

効果音担当「『テレレレレー♪』」

勇者「邪魔ぁっ!」
5:2019/05/13(月) 22:07:17.612 ID:9Rn8SZikp.net
勇者「やれやれ……盗賊退治も楽じゃないな……。クタクタだよ、もう宿に泊まりたい」

解説担当「『陽の高いうちから仲間を宿に誘う勇者……。仲間たちは部屋を何部屋取るか、慎重に協議を進めていた……』」

効果音担当「『ヒソヒソ』」

通訳担当「……」

勇者「当然二部屋取るから安心しろ。男の俺とこいつで一部屋」

解説担当「……」

勇者「で、女のお前たち二人で一部屋」

通訳担当「……」

効果音担当「……」

勇者「金もないし、一人一部屋とかいう贅沢は言うなよ? 嫌ならお前たちも戦え」

解説担当「『勇者の趣味を知らない仲間たち。勇者と同室になる仲間は、一人静かに覚悟を決めるのだった』」

効果音担当「『アッー!』」

勇者「お前たちは野宿な」
6:2019/05/13(月) 22:09:08.842 ID:Xp1OYrkx0.net
ノリが昭和後期
7:2019/05/13(月) 22:09:41.418 ID:9Rn8SZikp.net
効果音担当「『ザザァ……ザザァ……』」

勇者「いやぁ、船旅は快適でいいなー」

鳥「ピョロロロー」
通訳担当「『海サイコー!』」

勇者「ん? 解説が入らないな。あいつどこ行った?」

解説担当「『せ、説明──』オロロロロ……」

効果音担当「『キラキラキラ』」

勇者「船酔いしてたのか……」

魚「ピチピチ」
通訳担当「『エサだ! エサが降ってきた!』」

勇者「なんか俺まで気持ち悪くなってきた」

効果音担当「『デロデロデロデロデロデロデロデロ デンデロン♪』」

勇者「やめろよ……うぷっ……」
8:2019/05/13(月) 22:11:49.273 ID:9Rn8SZikp.net
効果音担当「『ヒュオ~……』」

勇者「うっわ……高いなぁ……。地面があんなに遠い……。落ちたら死んじゃうんじゃないか……?」

効果音担当「『ブルブル』」

解説担当「『塔の8階から大地を見下ろす勇者。そのへっぴり腰を狙う魔物が、背後からゆっくりと忍び寄る……!』」

魔物「グフフ……」
通訳担当「『こっそり近づいて突き落としちまえば、あの邪魔な勇者を楽に始末できるぜ……』」

解説担当「『勇者、絶体絶命! 果たしてこのピンチを切り抜けられるのか!』」

勇者「せいっ! 十文字斬り!」

解説担当「『説明しよう! 十文字斬りとは、目にも留まらぬ速さで敵を十字に切り裂く、勇者の必殺技である! ちなみに消費魔力は0だ!』」

効果音担当「『ザシュッ!』『ズバッ!』

解説担当「『この技の速さは圧倒的! 食らった魔物は瞬く間に四つに切り刻まれるのだ!』」

魔物「ギギャーッ!?」
通訳担当「『な、なぜ気付かれた……!? ぐわーっ! 無念!』」

勇者「……ふぅ。案外頼りになるんだよな」
9:2019/05/13(月) 22:14:37.168 ID:9Rn8SZikp.net
勇者「この奥に首がたくさんある竜がいるんだな……!」

解説担当「『緊張した面持ちで剣を握り直す勇者……。既に満身創痍だが、果たして邪悪な竜を退治できるのか……?』」

効果音担当「……」

通訳担当「……っ」

勇者「みんなも疲れ切ってるか。でもここで引くわけにはいかない! あとは敵の親玉を倒すだけなんだ! みんな、ついてきてくれ!」

効果音担当「『ババーン!』」

解説担当「『奮起する勇者……! 爽やかに応える仲間たち……! 希望を掴むべく、彼らは歩き出す!』」

通訳担当「……」

勇者「回復薬はもったな!? 行くぞーっ!」

効果音担当「『ワァァァァ!』」

通訳担当「──」ヒソヒソ

効果音担当「『ウォォォォ!』」

勇者「選曲をミスるな」
10:2019/05/13(月) 22:16:06.014 ID:9Rn8SZikp.net
勇者「強敵だったな……首めっちゃある竜……」

効果音担当「『グッタリ……』」

解説担当「『竜との二度に渡る死闘を終え、ようやく村に平和を取り戻した一行。開かれる宴を前にひと時の休息を楽しんでいた』」

通訳担当「すぅ……すぅ……」

勇者「お前たちって宴とか好きなのか? なんならこのまま宿で休んでもいいと思うけど」

解説担当「『説明しよう! 勇者は人の気持ちが分からないのである!』」

勇者「わ、悪かったよ……。行きたいなら別に止めないって……」

効果音担当「『ボロン』」

勇者「嫌がらせで変な音付けるな! 俺が頭おかしくなったみたいだろ!」

通訳担当「んぅ~……」

勇者「……」

解説担当「……」

効果音担当「……」
11:2019/05/13(月) 22:19:13.514 ID:9Rn8SZikp.net
門番「ここは由緒正しきお城。田舎者は帰れ帰れ!」

勇者「くっ……」

解説担当「『身なりを馬鹿にされ、門前払いされてしまった勇者一行。門番の理不尽な行いに、勇者は強硬姿勢を見せる!』」

勇者「しょうがない、こうなったら強行突破だ! 全員横並びで突撃するぞ!」

効果音担当「『ザッ……!』」

解説担当「『門番は彼ひとりだけ。4人横並びに立って突撃することで、一行のうちの誰かは城に入れるだろうという目論見である。……だが!』」

門番「ふっふっふっ……」
通訳担当「『なぜこの私がたったひとりで門番をしているのか……その意味を教えよう』」

勇者「な、なに……!?」

門番「はぁぁぁっ!」

効果音担当「『シュババババ!』」

解説担当「『速い! 速すぎる! 高速で動く門番の姿はなんと四人に見えるほどに! これでは誰も城に入れない!』」

門番「ふはははは!」
通訳担当「『体力の続く限り、この鉄壁の守りが破られることはない! 体力の続く限り!』」

勇者「疲れるまで待つか」

門番「はぁっ……はぁっ……。か、帰れ……田舎者め……」
通訳担当「『ふふふ、実はまだ余力があるのだ……!』」

効果音担当「『ヨロヨロ……』『ニヤニヤ』」

勇者「もう少し待つか」
12:2019/05/13(月) 22:21:51.305 ID:9Rn8SZikp.net
効果音担当「『パーパラッパッパッパッパッ パッパッパッ パッパッパッ パーーーッ!』」

勇者「やったー! どんな錠でも開けることが出来るカギを手に入れたぞ!」

解説担当「『トレジャーハンターへと転職する権利を得た一行。世界中のお宝を手にする日も、そう遠くないのかもしれない』」

勇者「私利私欲のためには使わないよ」

通訳担当「……」

効果音担当「『ジトー』」

勇者「ほ、本当だからな……?」

解説担当「『顔に出やすい勇者の考えなど、長い時を共に過ごした仲間たちには全てお見通しなのであった』」

勇者「……宝物はやっぱりロマンがあるし」

効果音担当「『ファ~オ♡』『ウフ~ン♪』」

勇者「そ、そんな目的には断じて使わない!」

通訳担当「……」

効果音担当「『ジトーッ……』」

解説担当「『どれだけ立派な人間であろうと、やはり勇者もひとりの男なのだ……』」

勇者「くっそーっ……!」
13:2019/05/13(月) 22:24:44.069 ID:9Rn8SZikp.net
王様「ワシは王様じゃ」
通訳担当「『ククク……俺の正体が魔物であることには誰も気づけまい……』」

効果音担当「『デデーン!』」

勇者「魔物が王様に化けてるのか!? なんてことだ!」

解説担当「『突然の事態に混乱する近衛兵たち。しかし! 混乱しているのは王様に化けた魔物も同じだった!』」

王様「ち、ちくしょう……! この俺の完璧な変身を見破るなんて……」

効果音担当「『ボワンッ!』」

巨大な魔物「秘密を知られたからには──」

解説担当「『魔物が状況を飲み込み、戦う覚悟を決めた時には……勇者は既に必殺技の構えに入っていた!』」

勇者「雷鳴十字斬っ!」

解説担当「『説明しよう! 雷鳴十字斬とは、雷鳴斬と十文字斬りを合わせた、勇者の新しい必殺技である!』

効果音担当「『バリバリバリ!』 『ズババッ!』」

巨大な魔物「ギョエーッ!」
通訳担当「『玉座の裏に隠した魔法の杖よ、どうか見つからないでくれぇっ! ぐふっ……!』」

勇者「玉座の裏だな」
15:2019/05/13(月) 22:28:02.710 ID:9Rn8SZikp.net
効果音担当「『ヒュー……ドロドロドロ……』」

勇者「気味の悪い幽霊船だな……。どうやら魔物の気配もあるようだ。体調の悪い奴は留守番しててくれ」

解説担当「『ひとり、またひとりと仲間たちが倒れていき……』うぷっ……」

勇者「倒れてるのはお前だろ。薬草齧って休んでろって」

通訳担当「……」

効果音担当「『オロオロ』『ビクビク』」

勇者「幽霊が苦手な奴も留守番な。ピラミッドの時みたいにパニックになられても大変だし」

解説担当「オロオロオロロロロ……」

効果音担当「『キラキラキラ』」

勇者「……じゃあ二人で行くか」

効果音担当「『ファ~オ♡』」

勇者「やっぱりお前も留守番な」

効果音担当「『Booooo!!』」
16:2019/05/13(月) 22:31:33.830 ID:9Rn8SZikp.net
解説担当「『いったいこの洞窟はどこまで続いているのか……勇者の顔に焦りの色が浮かぶ』」

勇者「体力は残りわずか、魔力はとっくに底をついたし、アイテムももう……」

効果音担当「『ガクッ……』」

勇者「ここまで、なのか……?」

通訳担当「……」

解説担当「『絶望的な状況に諦めかけたその時っ!』」

効果音担当「『キラリーン』『キラリーン』『キラリーン』『キラリーン』」

解説担当「『勇者の体力が回復した』『勇者の体力が回復した』『勇者の体力が回復した』『勇者の体力が回復した』」

勇者「な、なんで──って、それ薬草か? お前、俺のために残しておいてくれたのか……!?」

解説担当「『勇者以外はみな、普段使わないアイテムを溜め込んでいるのだ!』」

勇者「お前たち戦わないしな。あ、もしかしてこの状況で俺だけボロボロフラフラなのって……」

解説担当「『ニッコリと微笑みを浮かべ、そっと勇者の背中を押す一行であった』」

勇者「おい、ごまかすな。今までもお前たちだけ薬草使って楽してたろ! なんか元気だなーって思ってたんだ!」

通訳担当「……」

効果音担当「『スタスタスタ』」

勇者「おい! アイテム全部出せ!」
17:2019/05/13(月) 22:33:07.749 ID:9Rn8SZikp.net
勇者「どうしてこんなことに……。俺は良かれと思ってやっただけなのに……」

解説担当「『牢獄に囚われた勇者──。街の発展を優先し、住人を蔑ろにしたツケが回ってきたのだ……』」

勇者「やっぱり商人の真似事なんてするんじゃなかった……。というか、なんでお前は外で、俺とこいつだけ牢屋に入ってんだよ」

通訳担当「……」

解説担当「『全員が牢獄に囚われてしまえば、もう逃れる術はない……そう考えた仲間たちは知恵を振り絞り──』」

効果音担当「『カチャリ』」

勇者「……ん? おお!? カギが開いてる! 盗ってきてくれたのか!」

効果音担当「『パーパラッパッパッパッパーーーッ!』」

見張り「なんだ? 牢屋の方が騒がしいようだが……」

解説担当「『自由を目の前にしながら、不運にも看守に気づかれてしまう……! 勇者は棍棒を構え、覚悟を決める!』」

勇者「くっそ! でかい効果音鳴らすからだろうが! しょうがない、檜の棒で眠らせてやる!」

見張り「げっ!? なんだお前ら!?」
通訳担当「『うっわー……。逃げるなら静かに逃げろよ……。痛いのやだわー……』」

勇者「よし、話し合いで解決しよう」
18:2019/05/13(月) 22:35:27.697 ID:9Rn8SZikp.net
効果音担当「『ビュオー……』」

勇者「寒いぃ……。みんな、ちゃんと生きてるか?」

通訳担当「……」

効果音担当「『ガタガタガタ……』」

勇者「あれ? 一人いないな?」

解説担当「……」
通訳担当「『もう……ダメかもしれない……』」

勇者「うわ、雪だるまになってるし。顔も雪みたいに白くなっちゃって……。まったく……。ほら、火炎魔法使うからそばに寄れ」

効果音担当「『ボッ』『メラメラメラ……』」

解説担当「『せせせ雪原を征く勇者しゃしゃしゃ……火炎魔ほーっ──』くしゅんっ!ずびー」

通訳担当「……くちゅっ」

勇者「焚き火程度じゃダメか。……爆炎魔法っ! はぁっ!」

効果音担当「『ゴォォォッ!』『ボボボボボ……!』」

魔物「ギェェェ!?」
通訳担当「『あっつぅ!? なんじゃこりゃ──ぐわーっ!』」

勇者「おっ、なんか魔物も倒せたみたいだ。お手柄だぞ、お前たち」
19:2019/05/13(月) 22:37:13.945 ID:9Rn8SZikp.net
勇者「ここが童話にもなってる守り人の祠か。さすがに神秘的だ。それにあったかい」

解説担当「『聖なる気配にホッと安堵する勇者一行。身体だけでなく心も温め、祠の奥へと足を進めていく』」

勇者「あったかいのがそんなに嬉しいのか……」

解説担当「『気を抜いてよそ見をする勇者に、祠の奥から声が飛んでくる……!』」

双子「わたしたちは」
双子「わたしたちは」

勇者「な、なんだなんだ!?」

双子「おなかがすきました」
双子「おなかがすきました」

効果音担当「『ぐ~』」

勇者「本当になんなんだ……」

通訳担当「……」

効果音担当「『ぐ~』」

勇者「……みんなであったかいものでも食べようか」

双子「わーい♪」
双子「わーい♪」
20:2019/05/13(月) 22:39:20.298 ID:9Rn8SZikp.net
効果音担当「『バサーッ! バサーッ!』」

勇者「飛んでる! 俺たち空飛んでるよ! 伝説の神鳥の背中に乗ってるんだ!」

解説担当「わ゛あ゛ああああぁ゛ぁぁぁ!?」

勇者「お前高いとこもダメなのかよ……」

神鳥「クェー!」
通訳担当「『──』」

勇者「えぇっ!? なんだってー!? 風の音がすごくて聞こえないよ!」

効果音担当「『バサーッ! バサーッ!』『ビュオオオオオオ』

勇者「うるせぇっ!」

神鳥『今、あなたの心に直接呼びかけています』

勇者「あ、はい」

神鳥『そろそろ行き先を決めて──』

解説担当「あ゛あ゛あぁぁぁ゛ぁぁ゛っ!?」
通訳担当「『──』」

勇者「うるっせええぇぇぇ!」
21:2019/05/13(月) 22:41:35.505 ID:9Rn8SZikp.net
勇者「話を聞く限り、この辺にあるはずなんだが……」

効果音担当「『ガサガサ……ガサガサ……』」

解説担当「『神鳥の背に乗り、秘境にある森の奥まで幻の秘薬を探しに来たものの……一向に見つかる気配がなかった』」

勇者「死んだ人間すら生き返らせるっていう秘薬だ。魔王との決戦も近いし手に入れておきたいんだけど……」

効果音担当「『ピカーッ……!』」

勇者「おっ? なんの音だ? もしかして秘薬が見つかったとか?」

魔物「クケケケケ……!」
通訳担当「『不意打ち自爆魔法で勇者どもを一掃してやるぜ!』」

勇者「げっ……!? 爆発直前の光かよ!? みんなーっ、伏せろーっ!」

解説担当「『勇者の号令で一斉に身を伏せる仲間たち……! しかし勇者は伏せない! 仲間を守るため、仁王立ちをして盾に──』」

効果音担当「『カッ──』」

勇者「うおおおおおっ!」

効果音担当「『ドガァァァ゛ァァ゛ァン!』」

勇者「ぐわああああ!?」

通訳担当「……!」

解説担当「『仲間たちは一斉に回復薬を使った!』『勇者の傷が回復した』『勇者の傷が回復した』『勇者の傷が回復した』『勇者の傷が回復した』」

勇者「……けほっ。な、なんだよ……お前たち、助けてくれたのかよ……」

解説担当「『頼みの綱の勇者が氏んでしまえば自分たちも結局氏んでしまう──そんな気持ちは心の奥深くにしまう仲間たちであった』」

勇者「うん……まあいいよ……。本当に嬉しかったから……。ありがとな……」
22:2019/05/13(月) 22:44:32.831 ID:9Rn8SZikp.net
効果音担当「『パチッ……パチパチッ……』『メラメラメラ……』」

勇者「結局見つからなかったなぁ……。なんだか漁られたような場所があったし、誰かに先を越されちゃったのかもな」

解説担当「『一日がかりで探したものの、秘薬は手に入らなかった。一行は焚き火を囲みながらガックリと肩を落とす』」

勇者「お前たちがちゃんと戦力になったり、せめて身を守れるように装備を身につけてくれたら秘薬なんかいらないんだぞ?」

通訳担当「……」

解説担当「『仲間たちが布の服しか装備できないことを、この時の勇者はまだ知らなかった』」

勇者「え? そうなの? もう旅も佳境だけど、そんなの全然知らなかったよ」

効果音担当「『ホワンホワンホワンホワン ホワワワ~ン……』」

勇者「しょ、しょうがないだろ!? お前たちまともに喋らないんだから!」

解説担当「『勇者は知らなかった……仲間たちがとある呪いにかかっていることを……』」

通訳担当「……」

効果音担当「『ズーン……』」

勇者「そ、そうだったのか……。ごめん……俺、てっきりふざけてるのかとばかり……」

効果音担当「『テッテレー!』」

解説担当「『小粋なジョークにあっさりと乗せられる勇者であった』」

勇者「くそ……ほんとお前たち……。覚えとけよ……!」
23:2019/05/13(月) 22:46:50.787 ID:9Rn8SZikp.net
解説担当「『穏やかな夜。宿屋でくつろぐ勇者の顔は、しかし緊張の色が滲んでいた』」

勇者「いよいよ明日。ついに魔王の居城に突入だからな。負けるつもりはないけどさ、やっぱりちょっとな」ブルブル

解説担当「『だが心配することはない。何故なら、そう! 勇者には頼れる仲間がついているのだから! 平和を手にするその時まで!』」

勇者「……」ジトー

解説担当「『仲間の励ましを受け、黙り込む勇者……。その目にはうっすらと涙が……』」

勇者「よくもまあそんなことが言えたなって思っただけだよ」

解説担当「……」ソワソワ

勇者「どうした?」

解説担当「『……正義は必ず勝つのだ。悪に屈したりなど、しないのだ』」

勇者「……」

解説担当「……」

勇者「励ましてくれてる?」

解説担当「『勇者は仲間との絆を改めて感じ、静かに涙を拭うのだった』」

勇者「まあ、絆は感じるよな。なんだかんだずっと一緒だもん」

解説担当「『これからも一緒だぜ……勇者は素直な気持ちを仲間にぶつけると、大粒の涙を流すのだった』」

勇者「だから泣かないっての。……ちょっと外の空気吸ってくる」
24:2019/05/13(月) 22:48:42.055 ID:9Rn8SZikp.net
効果音担当「『ガチャッ』『パタン』」

勇者「はーぁ……。なんか頑張ろうって気合い入るなぁ……」

効果音担当「『スタスタスタ』」

勇者「魔王を倒すだけじゃなくて、みんなで帰れるように……俺が!」

効果音担当「『グッ……』」

勇者「……ん?」

効果音担当「『ジャーン!』」

勇者「うわっ、びっくりした……。溶け込みすぎてて気づかなかったよ……」

効果音担当「『Boooo!!』」

勇者「文句言うなら声くらいかけろ」

効果音担当「『バシバシバシ!』」

勇者「いたた……。なんだよ、そんな怒るなよ」

効果音担当「『ナデナデ』」

勇者「……?」

効果音担当「『ドヒューン!』」

勇者「……行っちゃった。まったく、不器用かよ」
25:2019/05/13(月) 22:50:59.028 ID:9Rn8SZikp.net
勇者「なんか調子狂うな……。はー、この村は空気がいいや。夜空も綺麗だし、平和になったらこういう場所に住むのもいいかもしれない」

通訳担当「……」コソコソ

勇者「ん? なんだ、お前も外にいたのか」

通訳担当「……」ビクーッ

勇者「村の中とはいえ、一人で出歩くのは危ないぞ? ほら、一緒に戻ろう」

通訳担当「……」フルフル

勇者「まだ戻りたくないのか? じゃあこっちで星でも見ようか。どうせお前なにも喋らないし」

通訳担当「……」ススス

勇者「綺麗だよなー。実はさっきまで少し、もうこんな景色も見られなくなっちゃうんじゃないかってウジウジしててさ」

通訳担当「……」ジーッ

勇者「でももうなんか全部吹っ切れた! きっと勝てるって自信が湧いてきたよ、はは」

通訳担当「……」クイクイ

勇者「ん? なんだ? 手を出せばいいのか?」スッ

通訳担当「……」ギュ

勇者「お、おお?」

通訳担当「……」ニコッ

勇者「お、おお……」

通訳担当「……」タタタッ

勇者「……きっと勝てる、なんてまだまだ甘いな。絶対勝つ。絶対勝つぞー! うおおおっ!」
26:2019/05/13(月) 22:53:54.692 ID:9Rn8SZikp.net
効果音担当「『テーレーレーレー レッテッテー♪』」

勇者「よしっ! 気合い十分! 体力も魔力も全快だ!」

通訳担当「……」

解説担当「あ、え、『決戦の朝が来た! 皆それぞれの決意を胸に秘め、魔王の居城を目指す!』」

勇者「お前なんでパジャマなんだよ」

解説担当「……」

勇者「集合時間間違えたろ。なあ。のんきに支度してたら遅刻しそうになったんだろ。なあ」

解説担当「『説明しよう! 勇者の言う通りなのである!』」

効果音担当「『ワハハハハ!』」

通訳担当「……」

勇者「はぁ……。こんな時でもマイペースだな、お前らは……」

解説担当「『そういう勇者も服の後ろ前が反対なのだが、本人だけは未だ気がついていない』」

勇者「……え?」
27:2019/05/13(月) 22:56:30.019 ID:9Rn8SZikp.net
神鳥「クェー!」
通訳担当「『上空から既にかなりの数の魔物がいます。どうしましょうか?』」

勇者「うーん……。むやみに突っ込むと、魔王のもとにたどり着く前に消耗しちゃうからなぁ……」

解説担当「『魔王の居城の守りは堅い。地上は険しい山々が道を阻み、空は魔物で溢れているのだ……』」

効果音担当「『ホーホホッホホー』」

勇者「それだ!」



魔物A「キキーッ?」
通訳担当「『おい、怪しい鳥が飛んできたぞ?』」

魔物B「ギャギャギャ!」
通訳担当「『怪しいな! おい! そこの鳥!』」

神鳥「……」

魔物B「ギャギャッ! ギャギャギャッ!」
通訳担当「『聞いてるのか!? 殺して食っちまうぞ!』」

効果音担当「『ホーホホッホホー』」

魔物A「キキッ」
通訳担当「『なんだ、ハトか』」

魔物B「ギャ……」
通訳担当「『持ち場に戻るか』」

勇者「……うまくいったな」
28:2019/05/13(月) 22:58:41.455 ID:9Rn8SZikp.net
勇者「いざ、魔王城攻略だ! お前たちは死なないことだけ考えろ!」

解説担当「『奮起する勇者。しかし、突入して1分も経たないうちに迷子になってしまうのだった』」

勇者「なんか入り組んでて分かり辛いんだよ。城っていうから玉座までは簡単にたどり着けると思ってたのに」

効果音担当「『シュババッ!』」

魔物「フォフォフォ」
通訳担当「『勇者だ! 殺せー!』」

勇者「くっ……! 魔物の巣窟で迷子だなんてシャレにならないぞ!」

魔物「フォッフォッフォ……」
通訳担当「『ふふふ、魔王様が城の外にある離れの地下に居るとは気づくまい。死ぬまで城の中を彷徨い続けるがいい』」

勇者「はぁっ! 真・十文字斬り!」

解説担当「『説明しよう! 真・十文字斬りとは、速さ、力、そして勇気の三つを極めた勇者が繰り出す、前人未到の高速剣である!』」

効果音担当「『ヒュ』『ヒュンッ』」

魔物「フォ?」
通訳担当「『む? 何かしたのか?』」

効果音担当「『ズルッ──』」

魔物「フォ……? フォーッ!?」
通訳担当「『か、体が……バラバラに……!? ギェェェッ!?』」

勇者「城の外だってさ。行こうか」
29:2019/05/13(月) 23:01:56.510 ID:9Rn8SZikp.net
勇者「外にも出られん……」

効果音担当「『アホーアホー』」

勇者「くっ……。お前たちだって道分かんないだろ……!」

解説担当「『説明しよう! 今来た道を引き返し、通路の奥を左へ、そして階段を下り、右へ進むと入り口に戻ることができるのだ!』」

勇者「……」

解説担当「『しかし! 入り口からでは魔王のいる離れへ行くことはできない! 何故なら、そう! 隠し通路を進んだ先の裏庭の先に離れがあるからである!」

勇者「……ちなみに隠し通路ってどこにあるの?」

解説担当「『ここである』」

効果音担当「『ガコッ』」

勇者「……」

通訳担当「……」

勇者「頭に来るくらい有能だよな、お前たち……。でももう少し早く説明してよ……。ありがたいけどさ……」
30:2019/05/13(月) 23:04:01.351 ID:9Rn8SZikp.net
解説担当「『襲い来る魔物の群れをなぎ倒し、ついに魔王のいる離れへとやって来た勇者と仲間たち』」

勇者「一応聞くけどさ。最後まで一緒に戦ってくれるよな? 魔王との決戦、お前たちもいてくれるよな?」

解説担当「『勇者の投げかける愚問に、仲間たちは小さな旗を振って応える』」

通訳担当「……」

効果音担当「『パタパタ』」

勇者「回復アイテムを使って支援してくれたりはしないの?」

解説担当「『仲間たちは悲しそうに俯く……。自分たちが勇者に近づけば、きっと足を引っ張ってしまう……故に応援する道を選んだのだ……』」

効果音担当「『ショボーン……』」

勇者「じゃあ回復薬分けてくれよ。隠れて応援してるなら必要ないだろ?」

効果音担当「……」

通訳担当「……」

解説担当「……」

勇者「目を逸らすな」
31:2019/05/13(月) 23:06:50.411 ID:9Rn8SZikp.net
魔王「ついにここまで来たか、勇者たちよ」

勇者「魔王っ……!」

魔王「しかし……たった5人で我を倒そうなどとは、この魔王も舐められたものよ。ククク……我に挑んだことを悔やみながら死ぬがよい!」

解説担当「『睨み合う勇者と魔王……。勇者は剣を構え、駆け出す! ……決戦の時!』」

勇者「くらえっ! 雷魔法!」

効果音担当「『ピシャーンッ!』」

魔王「ククク……真なる勇者の雷魔法、か。楽しませてくれる……」
通訳担当「『痛い……』」

勇者「雷魔法! 雷魔法! 雷魔法!」

効果音担当「『ピシャーッ』『バリバリバリーッ』『ズガーン!』」

解説担当「『怒涛の連続魔法攻撃が、魔王の体表を焼き焦がしていく! しかし魔王は膝を折らない!』」

魔王「ククク……。うっ……。ククククク……」
通訳担当「『こ、この程度でやられる我ではないわ……。今度はこっちの番だ……!』」

勇者「チッ……!」

効果音担当「『ガキーン……!』」

解説担当「『勇者の剣と魔王の爪が交わる……! お互い一歩も譲らないまま、戦闘は激しさを増すばかり!』」
32:2019/05/13(月) 23:10:10.039 ID:9Rn8SZikp.net
効果音担当「『シーン……』」

勇者「はぁっ……はぁっ……はぁっ……」

解説担当「『長い長い戦いの果て。立っているのは勇者と仲間たち──』」

勇者「や、やった……。ついに……魔王を倒した!」

効果音担当「『ワァァァァ!』」

通訳担当「……♪」

勇者「みんなも無事だな? ははっ、なんだよ……大団円じゃないか……! お前たちっ! やったぞ! さあ、みんなで帰ろう!」

解説担当「『笑顔で仲間たちを──』……っ!」

勇者「ん?」
魔王「……ふんっ!」グサッ

勇者「が、はっ……」

効果音担当「……っ!」

魔王「せめて……憎き勇者だけでも……道、連れ……に……ぐふっ……」ドサッ

勇者「あ……ぐっ……」ヨロヨロ

通訳担当「……っ」ガシッ
33:2019/05/13(月) 23:13:00.284 ID:9Rn8SZikp.net
勇者「あぁ……最後の最後で……」

通訳担当「勇者さまっ……! 勇者さまぁっ……!」

解説担当「回復薬が効かない……。勇者殿は……もう……」

勇者「俺はもう……いいから……。でも……お前たちが……ちゃんと帰れるか……はぁ、はぁ……心配だ、な……がはっ! げほっ!」

効果音担当「しっかりしてください! 勇者様!」

通訳担当「せっかく魔王を倒したのに……こんなのって……」

勇者「は、は……。最後に……お前たちが、喋るところを見られて……よかっ……た……」ガクッ

解説担当「くっ……」

効果音担当「勇者様……? 勇者様っ……」ユサユサ

通訳担当「そん、な……勇者さま……?」

勇者「……」

通訳担当「いやぁぁぁっ! 勇者さまぁぁっ!」

……

…………

……………………
35:2019/05/13(月) 23:23:30.656 ID:9Rn8SZikp.net
勇者「……ん?」

解説担当「『勇者は身体を起こし辺りを見回す。たしかに自分は死んだはず……そう言いたげに首を傾げた』」

勇者「あれ? 俺死んだんじゃないの?」

効果音担当「『ポカ~ン?』」

通訳担当「……」

記録担当「……」

勇者「な、なんか知らない奴がいる! 誰だお前!?」

解説担当「『説明しよう! 彼は勇者を支える4人目の仲間だ! 勇者とその仲間たちを見守り、旅の記録を取る役割を担っているぞ!』」

記録担当「……」

効果音担当「『スーッ……』」

勇者「あ、見えなくなった」

解説担当「『旅の最初からずっと一緒にいたが、身を隠す魔法に長けている彼は、これまで誰にも認識されてこなかったのである』

勇者「うん……分かったような分からないような……。それで? 俺が生きてるのはどういう理由なんだ?」

解説担当「『彼は幻の秘薬を手に入れていたのだ。姿が見えなかったために、勇者たちは気がつかなかったが……』」

勇者「……それを使ってくれたから、俺はこうして生きてる──いや、生き返ったんだな。あぁ、本当に助かったよ……ありがとう」
36:2019/05/13(月) 23:25:21.266 ID:9Rn8SZikp.net
勇者「はー。一度死にはしたけどやりきったー。あとは帰るだけだ。今度こそな」

通訳担当「……」

勇者「お前たち、もう喋らないのか? さっきはあんなに饒舌だったのに」

効果音担当「『ボロン』『ファ~オ♡』」

勇者「うわっ、やめろってその嫌がらせ! 分かったよ、もう聞かないよ……」

通訳担当「……」

勇者「帰ったらきっと盛大な宴が開かれるだろうなー。疲れ果てて寝ちゃうまで楽しんでやる」

効果音担当「『ウォォォォ!』」

解説担当「『宴! それは人生の楽しみ! 勇者と仲間たちは足取りも軽く、故郷の国へと帰還するのであった』」

通訳担当「……」

勇者「……帰ろうか。俺たちの国に」

通訳担当「……」
37:2019/05/13(月) 23:27:56.881 ID:9Rn8SZikp.net
王女「宴よ!」

勇者「イェー!」

王女「盛り上がっていくわよ!」

効果音担当「『ワァァァァ!』」

王女「世界の平和と勇者たちの活躍にぃ~……かんぱーい!」

勇者「かんぱーい!」
効果音担当「『カチーン』『コツンッ』『グビッ、グビッ、グビッ』」

解説担当「『うたげがはじまりゅと~……みなはおもいおもいにぃ……おしゃけを~』……ひっく」

勇者「お前ほんとさぁ……」

王女「うふふ、魔王討伐を勇者に任せてよかったわ。本当によくやってくれましたね」
通訳担当「『勇者と結婚すれば、世界でのあたしの立場は盤石に……むふふ♪』」

勇者「うわぁ……。王女様、昔っから変わりませんねぇ……」

王女「チッ……。まぁいいわ。お疲れ様、勇者。ほら、今日はあんたたちが主役なんだからどんどん飲みなさい? どんどんね」
通訳担当「『ぐでんぐでんにして朝までたっぷり……むふふふふ♪」

勇者「少しは変わってくださいよ……もうお姫様じゃなくて女王様なんですから……」

王女「ちょっと! お酒がないわよ! 樽で持ってきなさい! そのまま樽ごと渡しなさい!」

効果音担当「『グビッ、グビッ、グビッ、グビッ……』」

王女「ぷっはー! くぅーっ!」

勇者「……」
38:2019/05/13(月) 23:30:36.344 ID:9Rn8SZikp.net
勇者「んぁ~……さすがにもう騒ぎ疲れた……。ほとんどのやつがその辺で寝ちゃってるし……」フラフラ

通訳担当「……」ツンツン

勇者「ん、ああ。お前も疲れただろ? 王女様が俺たちのために部屋を用意してくれたってさ。一緒に行こう」

通訳担当「……!?」アセアセ

勇者「どうした? もしかして、お前一人でお城の部屋を丸々一部屋使うのが気が引けるとか?」

通訳担当「!」

通訳担当「……」ホッ

勇者「そんなこと気にしなくていいんだぞ? あ、他の二人ならもうそれぞれの部屋に運んだよ。お前のこともちゃんと送ってく」

通訳担当「……」

勇者「そうは言っても俺もフラフラだけどな。ちょっとはしゃぎすぎた。ははは」

通訳担当「……」ジーッ

勇者「やっと掴んだ平和だ。少しくらい、な。ふふ……これからどう暮らそうか。ま、しばらくはのんびりしたいけど」

通訳担当「……」モジモジ
39:2019/05/13(月) 23:32:51.696 ID:9Rn8SZikp.net
勇者「っと、ここだ。じゃあ、おやすみ。あいつらはそっちとあっちの部屋、俺は向かいの部屋だから、なにかあったら声をかけてくれ」

通訳担当「……」ツンツン

通訳担当「…………の部屋……せん、か……?」ポソ

勇者「ん? なんて?」

通訳担当「……っ」ブンブンブン

勇者「なんでもないって? そうか。うん、また明日な」

通訳担当「……」クイッ

通訳担当「……っ」チュ

勇者「……へ?」

通訳担当「……///」

カチャッ パタン

勇者「……」

勇者「……」

勇者「……」

勇者「……寝るかぁ」ポケーッ
40:2019/05/13(月) 23:34:14.094 ID:9Rn8SZikp.net
解説担当「『宴は国内だけでなく世界中で催され、お祭り騒ぎは何日も何日も続いた』」

解説担当「『ある者は平和を喜び、ある者は希望を抱き──』」

解説担当「『世界中の人々が幸せを噛み締めていた』」



解説担当「『……そして、数日が経ったある日──』」

効果音担当「『テーレーレーレー レッテッテー♪』」
41:2019/05/13(月) 23:36:26.144 ID:9Rn8SZikp.net
勇者「んーっ……。いやぁ、まさか5人全員が、一生遊んで暮らせるだけの報酬をもらえるとはなー」

勇者「お陰で、こんな静かで綺麗な場所に家を建てられた。旅も楽しかったけど、こうしてのんびり暮らすのも悪くない」

勇者「だよなー?」

通訳担当「……」

解説担当「『すっかり平和ボケした勇者。そんな勇者であっても、仲間たちは離れていったりなどしないのだ』」

効果音担当「『ゴ口リンゴ口リン』」

勇者「平和ボケもするよ。だってこんなに平和なんだ……。魔物もすっかり大人しくなったしさ」

通訳担当「……」

勇者「お前は本当に家買わなくてよかったのか? 今も宿に泊まってるみたいだけど」

通訳担当「……」

解説担当「『説明しよう! やはり勇者は人の気持ちが分からないのである!』」

勇者「な、なんだよ……? 俺何か変なこと言ったか?」

効果音担当「『ホワンホワンホワンホワン ホワワワ~ン……』」

勇者「おい、言いたいことがあるならちゃんと言え」

通訳担当「……」
42:2019/05/13(月) 23:39:00.344 ID:9Rn8SZikp.net
勇者「まったく……。あいつら、いつも俺のことをからかいやがって……」

ぬいぐるみ「……」ヒョコッ

勇者「ん? ぬいぐるみ?」

ぬいぐるみ「……」
通訳担当「『勇者さま、勇者さま』」

勇者「ははは、ぬいぐるみの言葉まで訳せるのか」

ぬいぐるみ「……」ピョコピョコ
通訳担当「『こんにちは、勇者さま♪ 少しお時間いいですか~?』」

勇者「もちろん。許可なんか取らなくてもいいし、いつだって話しかけてくれていいんだからな」

ぬいぐるみ「……」
通訳担当「『はい……♪』」

勇者「それにしても、まともにお喋りするのなんて初めてじゃないか?」

ぬいぐるみ「……」
通訳担当「『あの、ですね……! その、えっと……』」

勇者「……?」

ぬいぐるみ「……」
通訳担当「『……』」

ぬいぐるみ「……」
通訳担当「『……』」

勇者「おーい?」

ぬいぐるみ「……」
通訳担当「『……好き、です』」

勇者「!」
43:2019/05/13(月) 23:41:17.775 ID:9Rn8SZikp.net
ぬいぐるみ「……」
通訳担当「『好きです。勇者さまのこと……』」

勇者「あ、えと……」

通訳担当「ずっと……ずっと一緒に……いてくれませんか……?」

勇者「は、はは……。参ったな……こんなこと言われたの初めて──」

通訳担当「……っ」ムギュッ

勇者「──で、おっ、わっ」

通訳担当「……好きです」

勇者「……」ギュ

通訳担当「……」ギューッ

勇者「……今晩、一緒に食事でもどうかな? もっと話したいし……だからその、二人で」

通訳担当「……」ニコッ



効果音担当「『ヒューッ!』」

解説担当「『二人の様子を静かに見守る二つの影。幸せの気配を感じ取り、そっと親指を立てるのであった』」

効果音担当「『グッ!』」

──

────

────────
44:2019/05/13(月) 23:43:04.583 ID:9Rn8SZikp.net
記録担当「……」カキカキ

記録担当「……」カキカキ

記録担当「……その後、勇者と仲間たちはどうなったのか」

記録担当「さあ、どうだろうね?」

記録担当「世に知られている彼らの伝説は、旅の始まりから平和を掴むまで──」

記録担当「それ以上を語るのは野暮というものさ」

記録担当「ああ、でもひとつだけ残さなきゃいけない記録がある」

記録担当「……『勇者とその仲間たちは、幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし』」

記録担当「……」カキカキ

記録担当「……」カキカキ

記録担当「……」

記録担当「そして」

記録担当「新たな伝説が始まる──」
45:2019/05/13(月) 23:43:59.890 ID:9Rn8SZikp.net
兄勇者「……よし。じゃあ出発だ。絶対に大魔王を倒して帰ってくるぞ!」

いい魔物「ピキー! ピッキー!」
妹勇者「『俺たちにかかればあっという間さ! 気楽に行こうぜ!』」

音声担当「『優れた剣技と、強力な雷魔法を操る兄の勇者。癒しの魔法と、あらゆるものと心を通わせる力で兄を支える妹の勇者──』」

音声担当「『二人の勇者とその仲間は、世界を闇で覆わんとする大魔王を討つべく旅に出る!』」

兄勇者「実際戦うのは俺とこいつだけだけどな」

いい魔物「ピキッ! ピキキー!」
妹勇者「『へっ、俺たちだけで十分だろ! なあ、相棒!』」

音声担当「『ニッコリ』『プルルン』」

兄勇者「そうだな。かわいい妹には戦わせられないし、あいつは戦おうともしないし。俺たちが頑張らないと」

音声担当「『兄の勇者の真上から魔物が狙っていることなど、この時はまだ誰も知らなかった……』」

兄勇者「げっ……!?」

音声担当「『シュバッ!』『バコーン!』」

いい魔物「ピキーッ! ピッ、ピキキー!」
妹勇者「『おいおい、油断しすぎだぜ相棒! ま、俺がいるから大丈夫だけどな!』」

魔物「グギャッ!? グェェッ……!?」
妹勇者「『なんて連携だ……! ぐわーっ、やられたー!』」

兄勇者「幸先悪いな……。まぁみんな怪我もなかったことだし、気を取り直して次の街を目指そうか」

音声担当「『この先どのような運命が待ち受けているのだろうか……。勇者たちの冒険は、まだ始まったばかりだ』」



おしまい
46:2019/05/13(月) 23:46:13.674 ID:Zl01v0jxd.net
50:2019/05/13(月) 23:56:18.632 ID:XLceshQg0.net
通訳かわいいかった乙
勇者「世界の平和を取り戻すぞ!」 仲間たち「「「「……」」」」
引用元:http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1557752617