1: 2009/04/17(金) 22:39:56.95 ID:YemoYtA+0
魔王城跡


勇者「お前が死んで3年・・・結局、平和なんて一時的なものだったよ」

勇者「強欲な王達が世界の覇権を狙って争いを始めた・・・今では多くの国民が泣いている」

勇者「まだ、お前が支配していた頃の時代の方がよかったかもしれん」

勇者「お前を倒した俺だって、伝説として残ってるだけで・・・結局戦争を止める事は出来なかった」

勇者「・・・情けない話をしちまったな」

4: 2009/04/17(金) 22:40:58.21 ID:YemoYtA+0
『ふう、全くですねぇ』

勇者「!」

勇者「・・・幻聴か?」

『幻聴じゃありませんよ』

勇者「魔王!?どこに?」

『ここにはいません、私は勇者さんの心に話しかけてるんです』

勇者「心に・・・」

魔王『私が支配していた時代の方が良かったと言いましたね?』

勇者「・・・ああ、本音はな」

魔王『じゃあ、私を復活させてみませんか?』

勇者「出来るのか?」

6: 2009/04/17(金) 22:42:07.26 ID:YemoYtA+0
魔王『ええ、だが貴方は仮にも勇者と呼ばれ人間共にに慕われた男性です・・・民にとっての不幸はどっちか・・・』

勇者「・・・」

魔王『ま、よく考えてからもう一度来て下さい』




勇者「・・・民にとっての不幸か」

ドドドドドドド・・・

勇者「ん?・・・この音は、馬か」

ドドドドドドド・・・


兵士「待て待てーー!!」

「もっと早く!早く!!」

馬「ヒヒーーンッ!!」



勇者「馬車が騎馬兵に追われてるのか?」

7: 2009/04/17(金) 22:43:10.28 ID:YemoYtA+0
ドドドドド・・・

「!あれは?」

勇者「・・・」

「あの人・・・何処かで・・・」

勇者「俺が食い止めてやる!逃げろ!!」

「! す、すみません!」

ドドドドド・・・


勇者「止まれ!」

兵士「!」



パカパカパカパカ・・
兵士「貴様!邪魔をするな!」

兵士「死にたいか!」

9: 2009/04/17(金) 22:44:25.45 ID:YemoYtA+0
勇者「何故、あの馬車を追うんだ?」

兵士「あの馬車は我々の国から逃げ出した民なのだ」

兵士「もし、他国に逃げ我々の国の状況を漏らされては一大事になりかねん。だから捕まえるのよ」

勇者「今この乱世で民が国を捨て逃げるという事は、余程の問題が国にあるんじゃないか?」

兵士「貴様、我々を愚弄するか!」

兵士「許さん!覚悟しろ!!」

勇者「お前達も生きていく為、仕方なしの行動なんだろうけどな・・・、来い」



兵士「ぐは・・・」

兵士「・・・ッ」

ドサッ ドサッ

勇者「峰打ちだ、勘弁しろよ」

勇者「(こんな混乱した世の中なのに民が国を捨てる程だ・・・やはり・・・)」

10: 2009/04/17(金) 22:45:31.81 ID:YemoYtA+0
魔王城跡

勇者「魔王、聞こえるか」

魔王『来ましたか・・・心は決まったようですね』

勇者「ああ、このままでは世界は大変な事になる。まだ、お前がいた時の方マシだった」

魔王『私達が魔物を操り、奴等の行動を制御する事で世の中は安定を保ってこれたんですよ。一国の主の言葉に踊らされた結果がこれです』

勇者「・・・」

魔王『私達魔族と人間の争いの発端も一人の強欲者から始まった事なんですよ。やっぱり人間は管理する者がいなくては生きていけないという事ですねぇ』

11: 2009/04/17(金) 22:46:30.67 ID:YemoYtA+0
勇者「それで・・・どうしたらいいんだ?」

魔王『まず魔界に来てもらいます。私もそこにいますので』

勇者「魔界・・・どうやって行けばいいんだ?」

魔王『謁見の間に大きな画が飾ってあったのを覚えてますか?』

勇者「ああ、確かにあったな。なんか不自然だと思ったが」

魔王『そこで今から教える呪文を唱て下さい。それが鍵となり魔界への扉が開きますので』

勇者「わかった・・・」

12: 2009/04/17(金) 22:46:46.03 ID:Lhy65f+uO
つ世界樹の葉

13: 2009/04/17(金) 22:47:32.54 ID:YemoYtA+0
魔王城跡 謁見の間

勇者「これか・・・」

勇者「よし・・・ゴホンッ」





勇者「くぁwせdrftgyふじこlp」

ボウッ!!!

勇者「!ひ、引っ張られ・・・・!!」

ズオウッ!!!!

15: 2009/04/17(金) 22:49:35.03 ID:rrwzQlSu0
どうやって発音したwwwwwww

16: 2009/04/17(金) 22:49:39.35 ID:Lhy65f+uO
呪文www

14: 2009/04/17(金) 22:48:36.77 ID:YemoYtA+0
魔界

ズオウッ!!!

勇者「うはっ!!・・・はぁ」

勇者「ここが・・・魔界か。不気味な場所だ」

勇者「魔王、魔界についたが・・・」

勇者「・・・魔王?」

勇者「・・・・・・・・反応がない。仕方ない、先に進んでみるか・・・」

22: 2009/04/17(金) 22:50:36.04 ID:YemoYtA+0
魔峡谷

勇者「しかし、気味悪い場所だ・・・」

「随分と失礼な事を言ってくれますね」

勇者「!?お前は確か・・・」

ワイバーン「お久しぶりですね。魔王様の使いの者です」

勇者「出迎えに来てくれたのか」

ワイバーン「左様で・・・さぁ、乗ってください。魔王様がお待ちしています」

勇者「ああ」



24: 2009/04/17(金) 22:51:32.81 ID:YemoYtA+0
ワイバーン「まさか貴方が魔王様の復活を望むとは思いもしませんでしたよ」

勇者「俺もだ。まさか、魔王復活する為に魔界に来るなんぞ想像もしなかった」

勇者「・・というか、魔王は復活しようと思えば復活出来るのか?」

ワイバーン「ええ、それには条件がありますがね」

勇者「条件?なんだそれは」

ワイバーン「それは魔王様が直々に教えて下さるでしょう」

25: 2009/04/17(金) 22:52:43.05 ID:YemoYtA+0
魔王城

勇者「・・魔界にも魔王の城があるのか」

ワイバーン「ええ、こちらが本拠地ですがね。貴方の世界の魔王城は支部みたいなものです」



ワイバーン「さ、着きました。ここからは歩きで行って下さい」

勇者「ああ」

ワイバーン「魔王様は謁見の間でお待ちしています」



モンスター「グルル・・・」

モンスター「勇者だ・・・」ヒソヒソ

勇者「・・・」

27: 2009/04/17(金) 22:54:06.11 ID:YemoYtA+0
ガーディアン「勇者殿、お待ちしてました。魔王様はこちらでお待ちです」

勇者「ああ」

ガーディアン「くれぐれも失礼のないように・・・」

ギイイィィ・・・





魔王「あ、勇者さん」

勇者「こうやって再び会うとあの時を思い出すな」

魔王「戦ってみますか?ここで私は殺せませんけどね」

28: 2009/04/17(金) 22:55:06.86 ID:YemoYtA+0
勇者「・・・冗談はさておき、どうやってお前を復活させるんだ?」

魔王「簡単です、勇者さんの身体を私に捧げて下さい」

勇者「なに?」

魔王「今の私は向こうの世界で存在する為の身体がないんですよ。勇者さんに滅ぼされてしまいましたからね」

勇者「乗り移るって事か?」

魔王「乗り移るっていうか~合体ですかね」

勇者「が、合体だと?・・・戻れるのか?」

魔王「いいえ、戻れません」

31: 2009/04/17(金) 22:56:33.80 ID:YemoYtA+0
勇者「・・・」

魔王「勇者さん、世界を救いたかったんじゃないんですか?」

勇者「・・・・・いいだろう、世界の為だ。俺の身体、使うがいい」

魔王「おおぅ」

勇者「俺はもう伝説だけの存在だ」

魔王「ふふ、任せて下さい。また安定した世の中を実現してみせますよっ」


魔王「じゃあさっそく合体の準備に取り掛かりましょう」

勇者「どうやって合体するんだ?」

魔王「まず服を脱ぎます」

勇者「・・・・・・・・・服?」

34: 2009/04/17(金) 22:58:08.00 ID:UT3ZIOWS0
わっふるわっふる

35: 2009/04/17(金) 22:58:09.97 ID:Lhy65f+uO
服をたたみます

37: 2009/04/17(金) 22:59:30.89 ID:cldc2TwbO
砂糖と塩を間違えます

38: 2009/04/17(金) 23:00:24.76 ID:YemoYtA+0
魔王「装備したままでも合体は出来ますけど、そのまま一体化しちゃうんで」

勇者「なるほどな・・・」

スルル・・・

パサッ

勇者「そう言えば・・・」

魔王「はい?」

勇者「俺が倒した向こうの身体・・・あれはお前なのか?」

魔王「あ~・・・これホントは内緒なんですけど・・・まぁ合体するからいいか」

39: 2009/04/17(金) 23:01:30.76 ID:YemoYtA+0
魔王「あれ、前の勇者なんですよ」

勇者「なに?・・本当か?」

魔王「はい、勇者さんが生まれるず~っと昔ですけどね。今と同じような事が起こって世界が混乱してたんですよ」

魔王「それを憂いた前の勇者が前の魔王と合体したんです。それが今の私なんですよ」

勇者「合体後は別の魔王になるのか?」

魔王「はい、そうです。お互いの記憶は残されますけど。・・・歴史はこうやって繰り返していくんですよ」

勇者「救えないな・・・人間って」

魔王「ええ、本当ですよね」

40: 2009/04/17(金) 23:02:20.99 ID:YemoYtA+0
魔王「新しい魔王はいずれ新しい勇者に敗れる運命ですけど、その間まで世界に生きる人や魔物に安定した暮らしを送らせる事が本当の仕事なんです。世界支配ってのは建て前ですね、一応魔族ですから」

勇者「俺達はどれぐらいの間、安定した世を保てるのか・・・」

魔王「やってみなきゃわかりませんよ、勇者さん」

勇者「そうだな・・・」

魔王「頑張りましょう」

勇者「ああ」

41: 2009/04/17(金) 23:03:29.69 ID:YemoYtA+0
魔王「・・じゃ、合体しましょうか」

勇者「ああ、権力者共達の慌てふためく顔が想像出来るな」

魔王「魔物と人間が協力し、暮らしあえる世界が一番いいんですけどね」

勇者「ああ・・・だが人間はそこまで心も広くない。魔物だってそうだろう」

魔王「ふう・・・。ですよね、私達は私達の出来る事だけを」

勇者「そうだな」

43: 2009/04/17(金) 23:06:29.54 ID:YemoYtA+0


ゴゴゴゴゴゴゴ・・・・!!

ガーディアンA「!」

ガーディアンB「この揺れは・・・!」

ガーディアンA「ああ、遂に目覚められるぞ!我らの魔王様が!!」



47: 2009/04/17(金) 23:07:26.93 ID:YemoYtA+0
現世 魔王城跡

兵士A「本当にここに入ったのか?」

兵士B「ああ、近くの冒険者から聞いた」


兵士A「しっかし、こんなボロい城に何の用だ?」

兵士B「さぁな・・・まさか魔王復活を企てて怪しい儀式をしてるとか」

兵士A「お前、怖い事言うなよ」

兵士B「ビビってんのか?」

兵士A「だ、誰が!」

49: 2009/04/17(金) 23:08:34.36 ID:YemoYtA+0
ォォォォォ・・・・・・

兵士A「!?」

兵士B「い、今の音は??」

兵士A「お・・・奥からだ」

兵士B「モンスターの生き残りか?・・・でも、魔王が滅んだと同時に消えたハズだよな・・・」

兵士A「ど、どうする?見に行くか?」

兵士B「・・・モンスターなんかいないに決まってる!行くぞ!」

兵士A「ま、待てよ・・・!」

51: 2009/04/17(金) 23:10:12.61 ID:YemoYtA+0

魔王城跡 謁見の間

ギイイィ・・・

兵士B「・・・」

兵士A「・・・ど、どうだ?なんかいたか?」

兵士B「・・・・・・なんだありゃぁ?」

兵士A「え?」



オオオオオオオォォォ・・・・

兵士A「・・・画が光ってる」

兵士B「なんか・・・なんかヤバそうだぞ」


兵士Bが後ずさりをしたその時、大きな地震が発生した

56: 2009/04/17(金) 23:11:33.20 ID:YemoYtA+0
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!

兵士A「う、うわあああ!?」

兵士B「やや、やばい!崩れるぞ!!」


しかし兵士Bの言う事とは逆に、廃墟だった筈の魔王城は真新しい状態へと変化していった


兵士A「どうなってんだよこれ!?城が戻ってる??」

兵士B「まま、まさか・・・魔王が!?」

ゴゴゴゴゴゴ・・・・・ ゴゴ・・・


兵士B「・・・止まった」

57: 2009/04/17(金) 23:12:25.07 ID:YemoYtA+0
兵士A「お・・・おい、なんかヤバイぞ。逃げよう!」

兵士B「お、おう!・・・うべっ!!!」


二人がヨタヨタした歩き方で出口に向かおうとした時、何かにぶつかった



兵士A・B「・・・」

二人が恐る恐る見上げてみると・・・


ガーディアンA「・・・」

ガーディアンB「・・・」


兵士A「・・・!!!」

兵士B「モ・・・モモモモモモモ・・・!!」

『どうした?久々に魔物を見て驚いたのか?』


今度は後ろから優しそうな声が聞こえた

58: 2009/04/17(金) 23:13:40.71 ID:YemoYtA+0
兵士A「・・・・・」

兵士B「・・・・・」


魔王「これから復活の宴をする。君達も祝っていってくれたまえ」パチンッ

魔王が指を鳴らすと次々とモンスターが魔王城のいたる所に出現した


ドラゴン「グオオオオオ!!」

ギガンテス「オオオオオーーーーー!!!!」

ワイバーン「ギャオオオオーーーー!!!!」



兵士A「ま・・・!!」

兵士B「ままままま・・・!!!」


兵士A・B「魔王だあああああァァァァァーーーーーッッ!!!」


二人の兵士は小便をチビリながら魔王城から逃げて行った

60: 2009/04/17(金) 23:15:32.43 ID:YemoYtA+0
ガーディアンA「追いますか?」

魔王「よい、まずは復活の宴だ・・・。我々の新たなスタートの祝いも兼ねてな!!」

ガーディアンB「ははっ!」

モンスター「ウオオオーー!!魔王様万歳ーーー!!」

モンスター「復活万歳ーーー!!!」

モンスター「ウオオオオーーーーーー!!!!!」

魔王「ふっふっふ・・・」


魔物達の咆哮が魔王城周辺に響いた




61: 2009/04/17(金) 23:16:50.86 ID:YemoYtA+0


こうして新たな魔王が誕生し、人間達はお互いに争う事を止め、魔王討伐の為再び手を組んだ

魔王はモンスターや部下を巧みに動かし、世界の安定の為に指揮を執るのであった


そして百数年後・・・



64: 2009/04/17(金) 23:18:19.21 ID:YemoYtA+0
側近「魔王様!勇者の素質を持つ者が誕生したそうです!」

魔王「そうか・・・今回は少し長く続いたか・・・」

側近「人間共の士気もあがり各地の同志が苦戦しています!」

魔王「わかった、援軍を送ってやれ。これ以上人間共に勢いをつけさせてはならん」

側近「ははっ!」



魔王「さて勇者、お前はまた強欲な権力者の言葉に騙され私を討ちに来るのだろうな」

魔王「この歴史は何度繰り返されるのか・・・」

魔王「まぁいい、私は私のやる事をするだけ」

魔王「勇者、お前と語り合える日を楽しみにしているぞ・・・ふふ」

67: 2009/04/17(金) 23:18:58.71 ID:A+zM6jR9O
軽く一世紀流しましたね

72: 2009/04/17(金) 23:20:26.11 ID:YemoYtA+0
さらに十数年後

勇者「・・・じゃあ、行ってくるね!」

母「うん、気をつけてね。」

父「お前が勇者なんだ、しっかりしろよ!」

勇者「うん、国王様も同じ事言ってくれたよ!僕、頑張るから!」

母「たまには帰ってきなさいよ」

父「勇者、世界を頼んだぞ」

勇者「うん、じゃあ行ってきます!!」




~終わり~

92: 2009/04/17(金) 23:21:16.41 ID:YemoYtA+0
短く特に面白いオチでもなかったがなんか素朴な話を書いてみたかった
反省はしていない

117: 2009/04/17(金) 23:48:28.20 ID:YemoYtA+0
とりあえず残り分投下

勇者「まずは酒場で仲間を集めなきゃね・・・」


酒場

店主「はい、いらっしゃい。何か用?」

勇者「あの、旅に出るんで仲間が欲しいんですけど・・・」

店長「はいはい、ちょっと待ってね」


店長「誰か暇な人いる~??」

118: 2009/04/17(金) 23:51:01.91 ID:YemoYtA+0
戦士「あ?なんだよ?」

店長「この子が旅のお供を探してるんだけど、誰か手空いてない~?」

盗賊「冗談じゃねぇ、子供のお守りなんかしてられるかっての!」

魔法使い「子供は家帰って勉強してろよ!」

勇者「・・・うう」

店長「・・・ごめんね、口悪くって・・・でも、ここにはいないみたい。別当たってくれる?」

勇者「はい・・・」

122: 2009/04/17(金) 23:54:46.35 ID:YemoYtA+0
3時間後

勇者「はぁ、見つからない」

勇者「しょうがないや・・・次の街に行こう」




街道


道中、勇者はうずくまっている少女を見つける


「う、うう」

勇者「大丈夫ですか?」

123: 2009/04/17(金) 23:57:58.75 ID:YemoYtA+0

「すみません、日の出る時間帯はいっつもこうなんです・・・」

勇者「(日の出る時間帯?・・・変なの)あの、何処か休める所まで連れて行きましょうか?」

「宜しいのですか?」

勇者「ええ、見捨てるわけにも行きませんので」

「実は、私の屋敷すぐそこにあるんです。案内しますので、連れて行っていただけますか?」

勇者「(屋敷?どこかのお嬢さんなんだ・・・)」

124: 2009/04/18(土) 00:02:01.05 ID:vWc5hF7D0

少女の屋敷

少女「ここです」

勇者「立派なお屋敷ですね」

門番1「・・・!お嬢様!?」

門番2「おい、お前!お嬢様に何をした!!」

勇者「うわ、ちょっと・・・!」

少女「お止めなさい!この方は私の命の恩人なのですよ!!」

門番1「え!?」

門番2「そ、それは失礼しました!!」

少女「さ、早くお開けなさい」

門番1「はいっ!」

127: 2009/04/18(土) 00:06:21.55 ID:vWc5hF7D0
勇者「・・・」

少女「さ、行きましょう?」

勇者「は・・・はい」


勇者「(なんか・・・妙な雰囲気な館だなぁ)」

少女「屋敷まで入ればもう大丈夫。私について来て下さい」

勇者「あ、はい・・・」


少女「ここ、客間なので。御掛けになってお待ち下さい」

勇者「はい・・・(なんか、流れでお邪魔しちゃったけど・・・)」

128: 2009/04/18(土) 00:09:12.05 ID:vWc5hF7D0
スタスタスタ・・・

少女「お父様、この方が私を救ってくれた方です」

父「おお・・・娘の危ない所を助けて頂き、ありがとうございます」

勇者「い、いえいえ!そんな事・・・当然の事しただけですから・・・!(厳格そうな人だ・・・)」

父「我々、太陽に当たると目眩を起こしてしまう体質でしてな・・・」

勇者「そうなんですか・・・大変ですね」

少女「そういえば、お名前伺ってませんでしたわね・・・」

勇者「あ、申し送れました。僕、勇者っていいます」

父「!」

少女「勇者!?」

勇者「・・・?」

139: 2009/04/18(土) 00:38:54.63 ID:vWc5hF7D0
父「今、噂されているあの勇者殿ですかな?」

勇者「え・・あ、はい。そうです」

少女「魔王を倒しに旅立ったっていう・・・あの?」

勇者「はい(・・・な、なんか嫌な雰囲気だ)」

父「・・・そうでしたか。では、丁度良かった」ニッコリ

父「今日はこの屋敷で休んでいって下さい。娘を助けて頂いたお礼もしたいので」

勇者「いやいや、そんな!申し訳ないですよ」

少女「まぁまぁ、勇者様。私、冒険のお話しとかもお聞きしたいですし」

勇者「いや、まだ出発したばっかで・・・」

父「よし!決まりですな!ディナーの準備をしますので、勇者殿はお部屋で休んでいて下さい」

140: 2009/04/18(土) 00:44:56.37 ID:vWc5hF7D0
黒服「どうぞ、こちらへ」
勇者「あ・・じゃ、じゃあお言葉に甘えます・・・」

スタスタスタ・・・

父「勇者がこの屋敷に立ち寄るとは好都合だ」

少女「お父様、しかし・・・」

父「これは最大の好機だ。今ここで勇者を討ち取れば、魔王様の障害はなくなる」

少女「・・・」

父「恩人の死ぬ姿は見たくないか・・・お前は一族でも繊細な子だからな・・・」

少女「だって・・・」

父「勇者は私が始末する。お前は自分の部屋にいなさい」

少女「・・・はい」


黒服「ディナーの支度が整うまで、このお部屋でお待ち下さい」

勇者「すいません、なんか・・・」

黒服「失礼します」

勇者「・・・でも、こんなお屋敷に泊まれる事なんて滅多にないよね・・・ゆっくりさせてもーらおう」

142: 2009/04/18(土) 00:47:09.98 ID:vWc5hF7D0



勇者「お腹減ったな・・・もう夜だよ」

勇者「いくらなんでも時間かかりすぎじゃ~・・・

コンコン

勇者「!は、はい?」

黒服の声「お食事の用意が出来ました。中庭まで起こし下さい」

勇者「わかりましたー・・・て、中庭?外でやるんだ・・・変わってるなぁ」

143: 2009/04/18(土) 00:49:10.67 ID:vWc5hF7D0
中庭

勇者「わぁ、広い庭だ・・・」

父「素晴らしい庭だろう?」

勇者「あ、お父さん・・・(あれ、お父さん一人?ゴハンは・・・?)」

父「すまないね、待たせてしまって。完全に日が落ちないと我々も力が出ないのでね」

勇者「あ~・・・そうですかぁ(・・・力?)」

父「いくら子供とは言え、勇者と呼ばれた男・・・本気でやらないと失礼だろう?」

ギンッ
勇者「!?」

父の瞳が紅く染まった


勇者「ど、どういう事です?」

バンパイア「ここは、吸血鬼の館・・・そして私がその長。魔王様の為、君にはここで死んでもらおう」
ザワザワザワ・・・・

144: 2009/04/18(土) 00:50:38.20 ID:vWc5hF7D0
父の姿が完全に変わる

勇者「きゅ、吸血鬼・・・!」

バンパイア「娘を太陽光から救ってくれた事に恩義は感じているが、勇者となると話は別だ!」

バンパイアは勇者に向かって飛び掛る

勇者「わ、わあああ!!」

勇者は逃げ出した

自分の故郷から出発て倒したモンスターの数はたったの2匹

こんな大物相手に戦う覚悟も力も全く無い状態である


バンパイア「待てーーーー!!!!」

勇者「わああああああ!!」

勇者は迷路のような屋敷を走り回った


147: 2009/04/18(土) 00:59:12.03 ID:n32FIxkN0
わっふるわっふる

149: 2009/04/18(土) 01:00:31.69 ID:vWc5hF7D0
ロビー

バンパイアの声「逃げ足だけは中々のようだな・・・だが、この屋敷からは逃げられん」

勇者「・・・」

バンパイアの声「何処に隠れようと必ず見つけ出すぞ!!」

勇者「・・・」

勇者は柱に隠れた。息も気配も殺す

のしのし・・・とバンパイアの足音が近づいてくる


バンパイア「はー・・っ何処だぁー・・・?」


150: 2009/04/18(土) 01:01:36.94 ID:vWc5hF7D0
少女の部屋


少女「(この騒音・・・お父様と勇者は鬼ごっこでもしてるのかしら・・・)」

少女「(確かに、勇者は倒すべき敵であるのはわかってるんだけど・・・)」

少女「(あの時、勇者が来てくれなかったら私はそこらのモンスターに襲われてたかもしれないし)」

少女「(やっぱり・・・助けてくれた人を・・・始末するってのは・・・・!)」

ズズーー・・・ン

少女「!(・・・・・・・・助けなきゃ!)」

151: 2009/04/18(土) 01:07:29.54 ID:vWc5hF7D0

バンパイア「そこにいたかー!!」

勇者「うわあああ!」

勇者は必死に逃げ道を探す

バンパイア「何処に逃げようと無駄だ!この屋敷からは出られんのだから!!それともまだ鬼ごっこをしたいのか?ん??」

勇者「う・・・うぅ」

バンパイア「まだ後ろに階段があるが・・・逃げてみるかね?」

勇者「!・・・ッ」

153: 2009/04/18(土) 01:11:45.21 ID:vWc5hF7D0
勇者「!・・・ッ」

勇者には階段を上るしか逃げ道はなかった

急いで階段を駆け上がったが・・・

バンパイア「しかし・・・黙って逃がしてやる程私も優しくない!」

バンパイアは半分に破壊された柱を一つ持ち上げ、勇者に向かって投げた

勇者「!(駄目だ!当たる・・・!)」

死を覚悟したその時

少女「あ、勇・・・え?」

勇者「!」


勇者の前に少女が姿を現した

157: 2009/04/18(土) 01:17:16.16 ID:vWc5hF7D0
バンパイア「な!!!」

投げつけられた柱はそのまま勢いよく二人へと向かっていった

グオオオオオッ

少女「きゃ・・・」

バガアアアアンッ!!!


柱は壁にぶち当たり、粉々に砕け散った



バンパイア「娘よ!無事か!?」


パラパラ・・・
勇者「・・・だ、大丈夫?」

少女「え・・ええ・・・」

間一髪、勇者が少女に飛びつき、お互いの直撃を回避させた

159: 2009/04/18(土) 01:19:33.61 ID:vWc5hF7D0
バンパイア「娘よ!!!」
ドスンドスンドスンッ


しかし、娘を助けた事により勇者の逃げ道は完全になくなってしまった

勇者「・・・く」

少女「・・・勇者・・・様」

バンパイア「おお娘よ、無事で良かった!さあ、そこをどきなさい。勇者にトドメを刺す」

少女「・・・ダメですっ!!」

バンパイア「え?」

勇者「!?」

少女が突然大声でそう叫んだ

160: 2009/04/18(土) 01:20:26.56 ID:vWc5hF7D0
少女「私はこの方に二度も命を救われました!!この方を殺す事は私が許しません!!!」

バンパイア「な、なに!?娘よ、何を・・・」

少女「例え魔王様の為でも!お父様の命令でも!!ぜーーったいにダメです!!!」

勇者「え・・・えーと」

バンパイア「娘!!いい加減にしなさい!!」

少女「嫌です!!言う事聞いてくれないならお父様とは二度と話しません!!クッキーだってもう焼いてあげません!!!」

バンパイア「え・・・え!?」

勇者「(動揺してる・・・?)」

161: 2009/04/18(土) 01:21:42.64 ID:vWc5hF7D0
少女「こんな家だって出て行きます!!!二度と帰ってきません!!」

バンパイア「ええっ!!いや、ちょっと・・・」

少女「お父様!私は本気です!!!!」
ギンッ

勇者「・・・」

バンパイア「~~~~~っ・・・・わ、わかった・・・」

少女「!」

父「二度も愛娘の命を助けられては仕方あるまい・・・お前の言う通りにしよう」

少女「お父様!ありがとう!!」

勇者「た・・・助かった・・・・」

164: 2009/04/18(土) 01:31:14.38 ID:vWc5hF7D0
食卓

父「騒々しくなったが・・・ディナーを始めよう。勇者殿、驚かしてすまなかった・・・怪我はないかね?」

勇者「は、はい。大丈夫です」

少女「勇者様、遠慮しないでお食べになって下さいね!」

勇者「ええ、すいません・・・」

父「勇者殿、これからも一人で旅を続けるのかね?」

勇者「とりあえず、次の街で仲間探しをしようと思うのですが・・・」

父「次の街といっても、ここからでは結構な距離がある。その間襲ってくる魔物から身を守れるのかね?」

少女「・・・」

勇者「ま・・まあ、なんとかやりますよ・・・ははは(ホントは不安だけど)」

父「せめてもの償いだ。沢山食べて体力をつけていってくれ」

勇者「はい、すいません」

166: 2009/04/18(土) 01:38:37.78 ID:vWc5hF7D0
翌朝

勇者「すいません、すっかりお世話になりました」

父「気をつけてな。・・・敵の私がこういうのもなんだが」

少女「勇者様、これ持っていって下さい!」

少女は道具がパンパンに詰まった袋を勇者に渡す

勇者「え?頂いちゃっていいんですか?」

父「お前、何時の間にこんな物を・・・」

少女「お父様、命の恩人の命を奪おうとしたのですから、これぐらいの事は当然です!」

父「う・・・」

勇者「・・・ありがとうございます。奇妙な縁でしたが・・・またお会い出来る日を楽しみにしています!!」

父「うむ、道中気をつけてな」

少女「またお会いしましょう、勇者様ーー」フリフリ

勇者「」ペコリ


父「さ、昨日散らかしてしまった場所を片付けるぞ。娘、お前も来て手伝いなさい」
少女「・・はーい」

167: 2009/04/18(土) 01:42:26.94 ID:vWc5hF7D0
――その夜  勇者は道端で野宿をしていた


勇者「今日歩いた分だけで三分の一か・・・長いなぁ」

勇者「・・・というより、あの娘さんから貰った荷物が異常に重かったのも原因の一つか」

勇者「一体何が入ってるんだろ?ギッチギチに詰め込んだ感じだけど・・・」


勇者が袋の紐に手を伸ばした

その時

「待って下さいー!開けないでーー!」

168: 2009/04/18(土) 01:43:12.68 ID:vWc5hF7D0
勇者「!?」

何処かから声が聞こえた

勇者「だ、誰?」

パサパサパサパサ・・・

勇者の目の前に小さな蝙蝠が降り立った

勇者「コ、コウモリ・・・?」

どろんっ

勇者「わ!?」

少女「えへへ、勇者様・・・来ちゃいました」

蝙蝠の正体はあの少女だった

勇者「え?来ちゃったって・・・?え???」

少女「勇者様、私も旅のお供に加えて下さい!」

187: 2009/04/18(土) 09:12:56.65 ID:vWc5hF7D0

勇者「旅のお供って・・・お父さんは許したの?」

少女「いえ、これは私の独断です。」

勇者「いや、勝手に出てっちゃお父さん心配するっでしょ?」

少女「いいんです!お父さん、少し私に依存しすぎてるみたいですから」

勇者「あー・・・」

少女「それに、私物は全部持ってきてありますから!後戻りも出来ません!!」
ゴソゴソッ

少女が袋を開けると、少女の着替えやら何やらがみっちり入っていた

勇者「・・・これで重かったのか」

少女「勇者様、宜しくお願いしますね!」

188: 2009/04/18(土) 09:14:29.19 ID:vWc5hF7D0
勇者「・・・今お屋敷は大騒ぎしてるんじゃないかな」

少女「大丈夫ですよ、朝まではバレませんから」

勇者「しかし・・・なんで旅なんかに?」

少女「え・・・そ、それは///」

勇者「?」

少女「勇者様、私は貴方との出会いに運命を感じたんです・・・」

勇者「・・・運命!?」

少女「ええ・・・だって、同じ方に二度も命を救われるなんて、普通じゃ有り得ませんもの」

勇者「あー・・・あの」

189: 2009/04/18(土) 09:16:31.81 ID:vWc5hF7D0
少女「お父様が殺すつもりで柱を投げつけてきたのに、勇者様は逃げる事より私を助ける事を選んでくれたのです・・・もう決定的です!」

勇者「そ、そうかな・・・はは(あれは必死だったからなにがなんだか・・・)」

少女「私の生涯仕える旦那様は勇者様に決まりました!!」

勇者「ええっ!?」

少女「お互いの事をもっと良く知る為にも、同行させて頂きます!!」

勇者「えーー・・と」

少女「宜しくお願いします!・・・ねっ?」

勇者「あ・・・は、はい///」

190: 2009/04/18(土) 09:19:11.54 ID:vWc5hF7D0
翌朝

勇者「ん・・・ふああ~・・・・」

勇者「あれ、なんで僕外で寝て・・・へっきし!!!」

勇者「ズズ・・・あ、そうか。あの子をテントで寝かせてるからか・・・」

少女の声「勇者様、おはようございます」

勇者「おはよう・・・わ、どうしたのその姿」

少女「あ、私吸血鬼ですから・・・朝日の出てる時間帯はこうやって全身隠さないとまともに歩けないんですよ」

勇者「そっか・・・さて、準備が整ったら出発しようか。今頃、向こうも騒ぎになってるだろうしね」

少女「はいっ、わかりました!」

191: 2009/04/18(土) 09:25:30.55 ID:vWc5hF7D0
吸血鬼の館

父「な、なにぃぃーーー!?娘がいなくなっただと!?」

黒服「は、はい。何度呼びかけても返事がなかったので、中に入ってみたらこれが・・・」

父「手紙と・・・なんだ、そのカンカンは?」

黒服「中身は大量のクッキーです。お嬢様が作られたものだと」

父「手紙を」

黒服「はい」

父「…『お父様、勝手に出て行ってごめんなさい。でも私、あの方に運命を感じました。今この時を逃すと一生後悔してしまいそうな気がするのです。暫く帰って来れませんが、クッキーを沢山作って置きました。』」

父「…『我侭言ってごめんなさい。ps・お父様愛してる』・・・・はぁ」

黒服「追手を出しますか?」

父「・・・よい、あの子の好きにやらせてやろう」

黒服「はっ」

父「(惚れた相手にはとことん尽くす・・・死んだ妻に似ておるわ)」

204: 2009/04/18(土) 10:43:34.65 ID:vWc5hF7D0


少女「よいしょ、よいしょ」

勇者「重いでしょ?それ、僕が持つよ」

少女「い、いえ!大丈夫です!私の荷物ですから!」

勇者「朝日が出てる時間帯は力出ないんでしょ?無理しないでね?」

少女「ありがとうございます///」



勇者「・・・あ、看板だ。後もうちょっとだね」

少女「街ですかぁ、私あまり屋敷から出た事ないんで楽しみです」

勇者「僕も、故郷から出た事なんてないからドキドキだよ」

少女「じゃあお互い、迷子にならないようにしなければなりませんね」

勇者「はは、本当だね」


205: 2009/04/18(土) 10:45:17.14 ID:vWc5hF7D0


少女「わぁ、立派な街ー・・・」

少女は初めて見る街の光景に興奮した

勇者「わー・・・すごい」

田舎者の勇者も同じく


少女「勇者様、どうします?」

勇者「あ、ああ。とりあえず仲間を探さなきゃならないからさ、酒場に行こうと思う」

少女「わかりましたっ、行きましょう」

勇者「凄い人波だから、僕から離れないようにね」

少女「はい、わかりました!」

206: 2009/04/18(土) 10:46:18.25 ID:vWc5hF7D0
酒場前

勇者「ふう、やっとつい・・・・」


勇者が後ろを振り返ると少女の姿はなかった


勇者「え?あれ???離れないでって言ったのに?」

勇者「ど、どうしよう。ここで探しに行ったら二度と再開出来ないような気がする・・・」



少女「いけない、ちょっと違うお店に目が行って勇者様とはぐれちゃった・・・怒ってるだろうなぁ」

少女「夜だったら空飛べるのに・・・・うぅ」


急な不安感からか少女は泣きそうになる

少女は何度か通行人に話しかけたが、朝だというのに全身をローブで隠してる怪しい姿なので市民達は無視した


少女は都会に済む人々の冷たさを知った

207: 2009/04/18(土) 10:47:03.76 ID:vWc5hF7D0
少女「・・・」

「どうしたんだ?」

少女「?」

少女「(今、どうしたんだ?って・・・でも、私じゃないよね)」

「朝っぱらからそんな格好して、どうしたんだよ?」

声をかけた人物は少女の顔を覗き込む

少女「!あ、私ですか・・・?」

「アンタ以外にいるかよ。・・・で、どうしたんだ?そんな格好してしゃがみこんで」

少女「あの、一緒に旅をしてる方とはぐれてしまったんです!」

「なんだ、迷子か。相方は何処に向かっていったんだ?」

少女「酒場だと言ってたのですが、よろしければ酒場までの行き方を教えて頂きたいのですが」

「一人で行く気か?また迷子になるんじゃないか?」

少女「う・・・」

「はは、悪い悪い・・・俺も酒場に用があるんだ、案内してやるよ!」

少女「!あ、ありがとうございますっ」

209: 2009/04/18(土) 10:47:44.42 ID:vWc5hF7D0
酒場

勇者「迷子の案内所とかってありませんかね?」

店主「ま、迷子の案内所?そういうのはないなぁ・・・仲間とはぐれたのかい?」

勇者「はい・・・」

店主「大丈夫だろ、兄さんがここに来るって事は知ってるんだろ?だったら誰かに聞いて戻って来るさ」

勇者「そうでしょうか・・・」

店主「で、兄さん。それだけかい?」

勇者「え?」

店主「冷やかしはお断りだよ?」

勇者「あ・・・じゃ、じゃあ飲み物下さい」

210: 2009/04/18(土) 10:54:44.72 ID:vWc5hF7D0
カランカラーン

店主「おお、おかえり」

勇者「?」

「おう、今戻ったぜ。いやぁ、大変だった」

少女「・・・」オドオド


勇者「あ!少女!!」

店主「え?」

「ん?」

少女「あ、勇者様!!」

勇者「良かった、無事に会えて・・・」

「なんだ、坊主がお嬢ちゃんの連れか」


212: 2009/04/18(土) 10:55:42.33 ID:vWc5hF7D0
少女「この方がここまで案内して下さったんです」

勇者「あ、すみません。ありがとうございました」

「おう、女の子一人こんな街中に置いて行ったらダメだろ。ちゃんと見とけよ?」

勇者「はい、すみません」

店主「お嬢ちゃんも何か飲むかい?

少女「あ・・・じゃあトマトジュースを」

勇者「(トマトジュース・・・)」

「俺もくれ。酒だ酒」

店主「おう」

217: 2009/04/18(土) 11:02:00.45 ID:vWc5hF7D0
少女「本当にありがとうございました。えー・・・と」

傭兵「お?ああ、俺の名前は傭兵ってんだ」

少女「傭兵さん、ありがとうございました」

傭兵「なーに・・・」

勇者「傭兵をやられてるんですか?」

傭兵「ああ、さっきも仕事から戻ったばっかだ」

店主「はいよ、お待ち」ゴトゴトゴト

勇者「あの、契約金とかってだいたいいくらぐらいなんでしょう?」

傭兵「なんだ?坊主、傭兵探してんのか?」

勇者「はい、僕達魔王を倒す為に旅をしてまして・・・」

傭兵「魔王を?お前がか?はっはっは!」

少女「ちょ、ちょっと!笑わないで下さいよ!この方勇者様なんですから!」

218: 2009/04/18(土) 11:02:48.60 ID:vWc5hF7D0
店主「勇者?今噂になってる?」

勇者「はい・・・信じられませんよね」

傭兵「ここん所、魔物も凶暴化してるからなぁ・・・」

店主「ここは酒場件、傭兵所だが・・・どいつもこいつも半端な覚悟でやってるような奴だからな・・・」

傭兵「魔王討伐なんて仕事、引き受けても途中で逃げ出すだろうぜ」

勇者「そうですか・・・」

少女「勇者様、落ち込まないで下さい・・・」

傭兵「・・・」グビグビ

店主「・・・お前、ついて行ってやったらどうだ?」

傭兵「なに?俺か?」

219: 2009/04/18(土) 11:03:58.57 ID:vWc5hF7D0
店主「ああ、この傭兵達の中じゃお前が一番優秀だしな」

少女「傭兵さん、強そうですよね」

傭兵「(ガキの護衛なんてやってられるかよ。魔王の話だって嘘だろ)」

店主「(だが、これも何かの縁かもしれんぞ)」

勇者「傭兵さんが来てくれると、とても頼もしいです」

傭兵「・・・坊主、自惚れる訳じゃないが俺はかなり強い」

勇者「はい」

傭兵「くぐって来た戦場の数もここの傭兵共とは比べられない・・・つまりだな」

少女「お金の事ですか?」

傭兵「そうだ、俺の契約金は子供が到底払える額じゃないって事だ」

勇者「う・・・」

少女「勇者様、お金の事なら心配しないで下さい」

220: 2009/04/18(土) 11:05:02.12 ID:vWc5hF7D0
勇者「え?」

傭兵「なに?」

少女は懐から財布を取り出した

中には沢山のお金が

少女「これ、私の今の全財産なんですけど・・・これで如何でしょうか?」

傭兵「・・・・・」

勇者「ちょっと・・・」

少女「いいんです、勇者様のお役に立てれば」

店主「・・・ここまでされて断るってのもな?」

傭兵「・・・・・・・わかったよ、契約してやる」

227: 2009/04/18(土) 11:24:55.98 ID:vWc5hF7D0
少女「やった!勇者様、オッケーですって!」

勇者「うん、ありがとう。君のお陰だよ」

少女「ふふ、喜んで貰えてよかったです」


傭兵「金は今、受け取らん」

少女「え?いいんですか?」

傭兵「受け取る時は仕事を終えた時だ」

勇者「じゃあ、魔王を倒すまで着いてきてくれるって事ですか?」

傭兵「・・・ああ」

少女「よかった!よろしくお願いしますね!!」

勇者「お願いします!!」

傭兵「あ、ああ(なんか調子狂うぜ)」

店主「はは、こうやって見ると親子だな」

228: 2009/04/18(土) 11:26:26.17 ID:vWc5hF7D0
傭兵「とりあえず、今日は宿屋で身体を休めろ。出発は明日にしよう」

勇者「はい、ではまた明日の朝ここに来ますね」

傭兵「おう」

店主「ゆっくりな」

少女「はい、おやすみなさいー」


カランカラーン


少女「勇者様、よかったですね!」

勇者「うん、頼りになりそうな人でよかった。君のお陰だよ、本当にありがとう」

少女「いいんですよ!・・・さっきもいいましたけど、私は貴方のお役に立てればそれで・・・」

勇者「う・・・うん///ありがとう」

少女「今日はゆっくり身体を休めましょうね!」

229: 2009/04/18(土) 11:30:22.69 ID:vWc5hF7D0
宿屋

勇者「さて、寝るかー・・・ん?」

少女「・・・」

勇者「どうしたの?窓見て」

少女「いえ、夜になったんで元気も戻りましたから・・・街を見て回りたいなぁ・・なんて」

勇者「付き合おうか?」

少女「いえいえ!勇者様は休んでいて下さい!・・・でも、ちょっと散歩行ってきていいですか?」

勇者「うん・・・でも、迷子にならない?」

少女「大丈夫です!」

どろんっ

勇者「!」

蝙蝠「空から見て行きますから!」

勇者「そっか、気をつけてね」

蝙蝠「はーい、行ってきます!」
パサパサパサパサ・・・

勇者「吸血鬼も大変だなぁ・・・」

230: 2009/04/18(土) 11:31:02.41 ID:vWc5hF7D0
数分後

パサパサパサ・・・

勇者「(ん・・・?戻ってきたのか、早いな)」

どろんっ

「勇者くん」

野太い声が聞こえた


勇者「うわ?あ・・・貴方は」

父「娘は、散歩に行ったようだね。・・・心配でつい来てしまったのだ」

231: 2009/04/18(土) 11:31:56.71 ID:vWc5hF7D0
勇者「多分、もうちょっとで戻って来ると思いますが・・・」

父「いや、私もすぐ帰る」

父「娘は一途な吸血鬼だ。母親に似てな」

勇者「はい・・・」

父「あの子を悲しませる様な真似は絶対にしないと約束してくれ」

勇者「は、はい!もちろん・・・」

父「それだけだ、君に言いたかったのは・・・では、私は屋敷に戻る」

勇者「はい、お気をつけて・・・」」

父「娘を宜しく頼んだぞ。では」

どろんっ

パサパサパサパサ・・・

勇者「・・・余程心配だったんだな。ふふ」

232: 2009/04/18(土) 11:32:43.58 ID:vWc5hF7D0
翌朝

勇者「ん・・・・んー・・・」ゴソゴソ

勇者「朝か・・・」


勇者が何気なしに横を向くと



少女「・・・スー・・・スー」

勇者「!?うわわ!!!」

少女が自分の隣で眠っていた


勇者は驚くあまりベットから転げ落ちた

ドスンッ

247: 2009/04/18(土) 12:33:45.46 ID:vWc5hF7D0
すまん、さるさん喰らってた

少女「ん・・・?」

勇者「いてて・・・」

少女「あ、勇者様・・・おはようございます。どうしたんですか?」

勇者「お、おはよう・・・いや、ビックリしちゃって」


少女「ごめんなさい、外から戻ってきたらつい身体が冷えてしまって・・・」

少女「眠くなるまで勇者様の布団で温まろうかな~なんて思ったんです。そしたらそのまま眠っちゃって・・・ごめんなさい」

勇者「あ、いやいや。別に気にしてないけどね・・・」

少女「本当ですか?よかったですっ」

勇者「はは・・・さ、ご飯食べたら出発の準備をしようか」

少女「はいっ」

248: 2009/04/18(土) 12:35:40.12 ID:vWc5hF7D0
酒場

カランカラーン

店長「お、来たな」

男・少女「おはようございます」

店長「悪いな、あいつまだ来てないんだよ」

勇者「え?」

少女「来てない?」

店長「昨日、結構酒飲んで行ったからな。寝坊してるんだろ」

少女「・・・もー」

249: 2009/04/18(土) 12:36:59.45 ID:vWc5hF7D0
数十分後

カランカラーン

傭兵「悪い、遅くなった!」

店長「雇い主より後に来るとは何事だ」

勇者「いえ、いいんですよ」

少女「おはようございます」

傭兵「いやいや、申し訳ねぇ。傭兵のプロとしての自覚が足りなかった」

店長「とんだプロがいたもんだ」

勇者「傭兵さん、宜しくお願いしますね」

傭兵「おう、俺を雇ったからには大船に乗った気でいな!」

店長「酒癖の悪い奴だからな、気をつけろよ」

少女「はい、わかりました」

傭兵「おい、余計な事言うな!」

勇者「ははは・・・」

277: 2009/04/18(土) 15:50:06.58 ID:vWc5hF7D0
傭兵「さて、次は何処に向かうんだ?勇者様?」

勇者「王様から頂いた地図によれば、魔王城の方角はあっちですので・・・」

少女「この地図の通りだと、山にぶつかってしまいますね」

傭兵「ああ、この先に洞窟がある。洞窟を通って山を越えるんだよ」

勇者「そうですか、ではその洞窟を目指しましょう」

少女「はーい」

傭兵「ところで、お嬢ちゃんなんでそんな厚着なんだ?」

勇者「あ、その・・・」

少女「いいんです勇者様。私、吸血鬼なんです」

279: 2009/04/18(土) 15:52:17.94 ID:vWc5hF7D0
傭兵「きゅ、吸血鬼!?」

少女「はい、なので太陽光に当たるとまともに動けない程弱まってしまうんです」

傭兵「それでか・・・しかし、なんで勇者と吸血鬼が旅を・・・」

勇者「歩きながらお話ししますよ」



傭兵「――ほう、そんな事がか・・・」

少女「傭兵さんも、運命の出会いだと思いませんか???」

勇者「ちょ・・・」

傭兵「ああ、確かに思うな」

勇者「傭兵さんっ」

少女「ですよねー、えへへ」

傭兵「お嬢ちゃんの事を魔物というのは失礼だが、人間と魔物が愛し合うってのは・・・聞いた事ないからな」

少女「本当ですか?勇者様、やっぱり私達は運命の出会いだったんですよ!!」

勇者「そ、そうかな・・・ははは」

傭兵「自信を持て勇者、お前は今までになかった事をやっているんだからな」

280: 2009/04/18(土) 15:53:52.54 ID:vWc5hF7D0
洞窟前

傭兵「この洞窟を越えれば、次の村が見える」

勇者「薄暗いですね」

傭兵「洞窟に潜むモンスターってのは縄張り意識がとても強いからな。気を抜くなよ」

勇者「は、はいっ!」

少女「大丈夫ですよ勇者様!洞窟だったら私も戦えますので!!」

勇者「うん、でも無理はしないでね」

傭兵「お嬢ちゃんの方がお前より強そうだな・・・ハハッ」

281: 2009/04/18(土) 15:56:09.10 ID:vWc5hF7D0
洞窟

モンスター「グアオオオオ!!!」

傭兵「ち、囲まれたか」

勇者「つ・・・強そうだ」

モンスター「グルルォォ・・・」

傭兵「情けない事言うな!お前は勇者だろ!!」

勇者「は、はい!!」

少女「勇者様、頑張りましょう!」

少女はすでに戦闘態勢に入ってる

目が真っ赤だ

勇者「う、うん!やろう!!うわあああーーー!」

少女「ええーーいっ!!!」

傭兵「若さってのはいいな!こっちまで漲ってきたぜ!」

283: 2009/04/18(土) 16:00:28.82 ID:KN7GktWo0
wみwなwぎwっwてwきwたwぜw!w

284: 2009/04/18(土) 16:00:35.78 ID:vWc5hF7D0



勇者達は見事モンスター達を蹴散らした



傭兵「ふう、大丈夫か?お前達」

勇者「はい、なんとか・・・」

少女「勇者様、強かったですよ!!」

勇者「ほ、本当?・・・嬉しいな」

傭兵「お嬢ちゃんも強かったぞ、体術使いだとは思わなかったが」

少女「えへへ、お父様に仕込まれましたからね・・・・」


グオオオオォォ・・・・

勇者「ん?」

傭兵「なんだ、今の声は?」

285: 2009/04/18(土) 16:01:42.55 ID:vWc5hF7D0
少女「・・・・・」

グオオオォォォ・・・・

勇者「またモンスター・・・?」

少女「・・・この鳴き声、助けを求めてます」

傭兵「なに?」
勇者「わかるの?」

少女「なんとなくですけど・・・そんな感じがします」

傭兵「この鳴き声は相当大物じゃないか?関わるだけ野暮だろ」

勇者「うーん・・・」

少女「でも、モンスターだって悪いのばっかりじゃありませんよ!」

勇者「少女・・・そうだね、助けに行こうか」

少女「勇者様!」

傭兵「ふう、やれやれ・・・ま、雇われた身だ。仕方ない」

グオオオオォォ・・・・

少女「声はこっちから聞こえます!」
勇者「よし、行こう!」

286: 2009/04/18(土) 16:04:01.38 ID:vWc5hF7D0
洞窟最深部

グオオオオオオオオ・・・

少女「あ、いました!!」

傭兵「おいおい、冗談だろ?」

勇者「ト、トロール!?」


勇者達の前には落石に埋もれ身動きの取れないトロールがいた

トロール「グオオオオ・・・」

少女「苦しそう・・・いつからこんな・・・」

勇者「どうやって助けよう・・・こんな岩、手じゃ運べないよ」

傭兵「トロールは知性が低いからな・・・こんな所で何やってやがったんだか」

少女「大丈夫?今、助けるから!」

トロール「グオオオォ・・・・」

289: 2009/04/18(土) 16:14:19.10 ID:vWc5hF7D0
少女「苦しそう・・・いつからこんな・・・」

勇者「どうやって助けよう・・・こんな岩、手じゃ運べないよ」

傭兵「トロールは知性が低いからな・・・こんな所で何やってやがったんだか」

少女「大丈夫?今、助けるから!」

トロール「グオオオォ・・・・」

勇者「何かないかな?なにか・・・」

少女「・・・あ」

傭兵「ん?」

二人は傭兵が背負っているある物に目をつけた

290: 2009/04/18(土) 16:15:58.66 ID:vWc5hF7D0
勇者「傭兵さんの大剣があった!」

少女「傭兵さん!テコで岩を動かしてくださいよ!!」

傭兵「俺の武器をか!?じょ、冗談じゃねぇよ」

トロール「グオオオォ・・・・」

少女「お願い、傭兵さん。この子苦しそう・・・」

傭兵「落ち着けよお前ら、トロールは恐ろしく凶暴なんだぞ?助けたらすぐに襲い掛かってくるに決まってる」

勇者「でも見捨てるわけには・・・」

傭兵「襲い掛かってくるのをわかって助けるか?普通?」

少女「そんな、この子だって大分弱ってます!すぐ襲ってくるなんて事しませんよ!」

勇者「傭兵さん、どうか助けてやってください!」

傭兵「・・・・あー、はいはい。わかりましたよっ」

傭兵は背負っていた大剣を岩の下に潜らせた

傭兵「・・・ったく、モンスターを助ける勇者が何処にいるってんだ」ブツブツ

291: 2009/04/18(土) 16:18:18.38 ID:vWc5hF7D0
傭兵「んおおお~~~~っ!!!」

ググ・・・ グ・・・

勇者「僕達も手伝おう!」

少女「はいっ!」

トロール「グオオオ・・・」


傭兵「よぉし、お前ら1,2の3で行くぞ!」

勇者・少女「はい!」

傭兵「よぉし!1、2の!!」

勇者・少女「3!!!」


ググググ・・・   ゴトンッ

トロール「!」

293: 2009/04/18(土) 16:30:35.14 ID:vWc5hF7D0
傭兵「ふう、愛剣が折れるかと思ったぜ」

少女「大丈夫?」

トロール「グオオォ・・・」

傭兵「おい!起き上がるぞ、下がれ!」

勇者「少女、僕の後ろに!」


トロールはゆっくりと起き上がり、3人を見回した

トロール「・・・」

傭兵「・・・」

勇者「・・・」

少女「・・・」

トロール「グオ」

傭兵「?」

トロールは右手を顔の高さまで上げ、左右に2~3回手を振った

294: 2009/04/18(土) 16:32:04.96 ID:vWc5hF7D0
勇者「え・・・?」

少女「感謝しているんですよ、きっと・・・」

トロール「グオ・・・」
ズシン・・  ズシン・・

トロールはそのまま何処かへと去っていった

傭兵「・・・てっきり、あの手で叩き潰してくるかと思ったぜ」

少女「心が通じ合うモンスターだっているんですよ。ただ、外見が恐ろしいだけで」

勇者「うん・・・」

傭兵「まぁ、普通の人間はどうしても警戒しちまうからな・・・」

少女「人間はもう少し魔物を観察すべきです。命を落とさなくていい魔物だっているんです」

勇者「・・・ごめんね」

少女「あ、いや勇者様に言ったんじゃないですよ!」

傭兵「(心が通じ合うモンスターか・・・確かにな。国を支配する権力者共もこの嬢ちゃんのような考えを持っていたら・・・)」

296: 2009/04/18(土) 16:33:55.78 ID:vWc5hF7D0
傭兵「よし、モンスターの救助も終わったし。さっさとこの洞窟を抜けるぞ!」

勇者「はい」

少女「結構時間かかっちゃいましたね・・・」



――勇者一行は無事洞窟を抜け、近くの村へと立ち寄った

傭兵「ただの村だな、宿屋くらいしかなさそうだ」

勇者「泊まる所があるだけ十分ですよ、ねえ」

少女「はいっ!・・まさか傭兵さん、お酒が飲みたかったんですか?」

傭兵「え?・・・バレたか」

勇者「酒場がある街まで我慢して下さい。今日はもう休みましょう」

傭兵「ああ、わかってるよ」

300: 2009/04/18(土) 17:09:06.30 ID:vWc5hF7D0
宿屋

店主「いらっしゃいませ、3名様ですね?」

勇者「はい」

傭兵「ああ、部屋は分けてくれ」

勇者「え?一緒じゃダメですか?」

傭兵「・・・邪魔しちゃ悪いしな」

少女「!」

勇者「え?・・・!ちょっと傭兵さん!!///」

傭兵「はっはっは、大人は一人の方が落ち着くんだよ。お前らだって二人の方がいいだろ?」

勇者「え~?・・・ど、どう?」

少女「私はそれでいいと思いますっ!」

傭兵「決まりだな」

勇者「わ・・・わかりました」

302: 2009/04/18(土) 17:10:35.42 ID:vWc5hF7D0
勇者・少女の部屋

勇者「ほっ(よかった、ベッドは二つだ)」

少女「どうかしたんですか?」

勇者「え?いやいや、なんでもないよ!」

少女「? 変な勇者様」

勇者「夜御飯まで時間あるなぁ・・どうしよう」

少女「じゃあ、お散歩に行きませんか?もう日も沈みましたし!」

勇者「そうだね。行こうか」

少女「夜のお散歩っていいですよね。私大好きです」


303: 2009/04/18(土) 17:11:31.34 ID:vWc5hF7D0
村の外

サワサワサワ・・・

少女「いい風ですね」

勇者「うん・・・」

少女「傭兵さん、私達に気を使ってくれてましたね」

勇者「う、うん、そうだね」

少女「・・・迷惑でしたか?」

勇者「え!?」

少女「さっきの勇者様の表情見ると・・・なんか嫌だなーって感じがしまして」

勇者「そ、そんな事ないよ!ってかそんな顔してた?」

少女「・・・本当ですか?」

勇者「うん、全然嫌じゃないよ!ただ、その・・・恥ずかしい・・・っていうか」

304: 2009/04/18(土) 17:12:35.31 ID:vWc5hF7D0
少女「・・・そうでしたか、嫌われてなくてよかったです!!」

勇者「嫌いになるわけ・・・ないじゃん」

少女「! 勇者様、もう一回言って下さい!」

勇者「え?い、いいよ。もう」

少女「そんな事言わずもう一回!ハッキリ聞きたいんです!!」

勇者「ひ、引っ張らないで・・・」

少女「ちゃんと聞きますから!もう一度!!」

勇者「わ・・・わかった///」

305: 2009/04/18(土) 17:14:48.66 ID:vWc5hF7D0
少女「・・・」

勇者「僕が君の事・・・嫌いになるわけないでしょ・・・」


・・・・・・



勇者「(!?な、なにこの間?)」


勇者は恐る恐る少女の方を向いた




少女は全く違う方向を見つめていた

307: 2009/04/18(土) 17:17:34.50 ID:vWc5hF7D0
少女「勇者様、あそこに誰かいますよ」

勇者「え?」


少女が指差した方向を見ると、確かに誰かのシルエットが見えた

勇者「誰だろう?こんな時間に」

少女「何かあったのかもしれませんね。話しかけてみましょうか?」

勇者「う、うん」

309: 2009/04/18(土) 17:20:54.49 ID:vWc5hF7D0
村娘「・・・・」

少女「あの、どうかしましたか?」

村娘「え?あ、いやなんでもないです・・・」

突然声をかけられた女は顔を拭った

勇者「何かあったんですか・・・?」

村娘「・・・ちょっと嫌な事があってね」

少女「嫌な事?困ってるなら力になりましょうか?」

村娘「ありがとう・・・でも、もうどうにでもなる問題でもないの」

勇者「?」

少女「そうですか・・・失礼しました。勇者様、行きましょう」

勇者「うん、それじゃあ・・・」

村娘「うん・・・」


村娘「や・・・やっぱ待って!聞いて!」

勇者・少女「ええ?」

314: 2009/04/18(土) 17:41:21.79 ID:vWc5hF7D0
村娘「実は私、寝たきりのお父さんの世話をして生活してる者なんだけど・・・」

村娘「この間、お父さんの世話をしてる最中、吐血しちゃったの」

勇者「吐血・・・」

村娘「村のお医者様に見てもらったんだけど、原因不明で・・・治しようがないって・・・」

少女「・・・」

村娘「私が一人身だったらさ、こういう現実も運命だって受け入れるけどさ。・・寝たきりのお父さんがいるから・・・」

勇者「近所の人に頼めないんですか?」

村娘「近所の人達は自分の生活を送るのに精一杯なの。とてもじゃないけど手は借りられないわ」

316: 2009/04/18(土) 17:44:36.47 ID:vWc5hF7D0
村娘「酷い人なんか、心中しろなんて言うのよ」

勇者「それは酷い・・・」

少女「とんでもない人ですね」

村娘「お父さんは寝たきりだから・・・私が死ぬ事にも気づかないし、自分が死んでいくのもわからないだろうけど、やっぱり残して私だけ死んで行くってのは・・・」

勇者「うーん・・・」

少女「・・・方法が一つだけあります」

村娘「え?」

勇者「本当?」

少女「覚悟が必要ですが」


318: 2009/04/18(土) 17:46:31.56 ID:vWc5hF7D0

村娘「そ、その方法って・・・?」

少女「私が貴方の血を吸って吸血鬼にする事です」

村娘「・・・・・・・吸血鬼?」

少女「信じられないでしょうけど、私は吸血鬼なんです」

勇者「ちょっと、それはいくらなんでも・・・」

村娘「・・・からかってるの?」

少女「証拠と言ってもお見せ出来るのは、この八重歯と・・・」

どろんっ

村娘「!?」

蝙蝠「コウモリに変身出来る事ぐらいですが」

どろんっ

村娘「あ、あんた方二人とも吸血鬼なの?」

333: 2009/04/18(土) 18:49:26.40 ID:vWc5hF7D0

勇者「いえ、僕は普通の人間です。縁あって一緒に旅をしているんです」

少女「吸血鬼になれば、完全ではありませんが不死状態になれます」

村娘「完全じゃない不死?」

少女「はい、肉体的ダメージで死ぬ事はありませんが、寿命が来ると死んでしまいます」

勇者「へえぇ・・・」

少女「それと、寿命までその病気と付き合って生き続けなければならないんです」

村娘「・・・」

少女「私が協力出来るのはそれだけです。・・・どうしますか?」

334: 2009/04/18(土) 18:52:12.69 ID:vWc5hF7D0
村娘「・・・お願い」

少女「わかりました・・・勇者様」

勇者「?」

少女「先に宿へ戻っていただけませんか?血を吸う所は・・・勇者様には見られたくありませんので・・・」

勇者「あ・・・わ、わかったよ」


宿屋

ギィ

傭兵「お?勇者、何処行ってたんだよ」

勇者「あ、傭兵さん」

傭兵「飯が出来たってよ。食いに・・・あれ、お嬢ちゃんは??」

勇者「あ・・、食堂で説明します」

335: 2009/04/18(土) 18:53:30.57 ID:vWc5hF7D0
傭兵「吸血鬼にしただぁ?」

勇者「わ、あまり大きい声で言わないで・・・」

傭兵「まぁ、その娘が望んだ事なら仕方ないが・・・大丈夫なのか?」

少女「大丈夫ですよ」

勇者「あ、少女!」

傭兵「なんだ?・・・なんかツヤツヤしてるな」

少女「久しぶりの吸血でしたから・・・」

338: 2009/04/18(土) 18:56:30.43 ID:3O56ZEft0
村娘…(´・ω・`)

339: 2009/04/18(土) 18:56:56.53 ID:vWc5hF7D0
傭兵「本当に大丈夫なのか?突然この村の住民を襲うって事は?」

少女「大丈夫です、血が恋しくなった時はトマトで代用出来ると言っておきましたので」

勇者「へぇ・・・トマトって凄いね」

少女「ただ、朝外出歩く時はローブ着たり、教会に行かないようにとか銀製の物に触れないようにとか色々面倒な所はありますがね」

傭兵「ふーん・・・」

勇者「傭兵さん、少女は普通に僕達と行動してますし、大丈夫だと思います。少女が嘘を言うとも思えませんし」

少女「勇者様、ありがとうございます」

傭兵「へいへい、信じるよ。・・・しかし、洞窟では勇者がモンスターを助け、ここでは少女(吸血鬼)が人を助ける・・・なんか、凄い話だよな」

勇者「そう言われれば・・・」

少女「そうですね、なんか可笑しいです」

340: 2009/04/18(土) 19:00:27.07 ID:vWc5hF7D0
傭兵「じゃあ、おやすみ。お二人さん」

少女「おやすみなさい」

勇者「明日もお願いしますね」

傭兵「おう」

バタン


勇者「さて、寝ますか」

少女「はい」

ゴソゴソ

勇者「・・・おやすみ」

少女「おやすみなさい」


勇者「・・・」

少女「・・・」

342: 2009/04/18(土) 19:04:49.65 ID:vWc5hF7D0
少女「・・・・・・・・・勇者様?」

勇者「・・・・うん?」

少女「起きてましたか」

勇者「うん、なに?」

少女「魔物も人間も、なんで仲良く暮らせないんでしょうか?」

勇者「・・・なんでだろうね」

少女「勇者様は何故、魔王様を倒しに旅に出たんですか?」

勇者「んー・・・僕の故郷の一番偉い人に頼まれて・・・かな」

343: 2009/04/18(土) 19:09:02.66 ID:vWc5hF7D0
少女「断れなかったのですか?」

勇者「うん・・・一番偉い人だからね。断るわけにもいかないし・・・」

少女「断ったら何かされるんですか?」

勇者「何かされるって訳でもないけど。勇者に生まれちゃった人間の宿命らしいよ」

少女「・・・そういう考えの人がいつまでもいるから、私達と人間の争いが絶えないんじゃないんでしょうか」

勇者「・・・・・うーん、確かに」

少女「勇者様はその故郷のお偉いさんになんて言われたのですか?」

勇者「え?えーと確か・・・残虐の限りを尽くし、世界の民を悲しませてる魔王を倒してくれ・・・だったかな」

少女「残虐・・・人間には魔王様はそう言われているのですね」

勇者「魔王ってどんな人なの?」

少女「いえ、私は直接お会いした事がないので分かりませんが・・・お父様の話では真に世界の平和を願っているのは魔王様だと・・・」

勇者「うーん・・・」

少女「・・・ごめんなさい、変な事聞いてしまって。別に勇者様を困らせようと思って言ったんじゃないんです。」

勇者「いや、いいよ。気にしてないからさ」

348: 2009/04/18(土) 19:12:50.61 ID:vWc5hF7D0

翌朝

傭兵「よ、おはよう!」

勇者「おはようございます」

少女「傭兵さん、お早いですね」

傭兵「主人より先に起きて待ってる、これが傭兵の基本よ・・・それより勇者」

勇者「え?」

傭兵「昨日はヤったのか?」ゴニョゴニョ

勇者「え!?バ、バカな事聞かないで下さいよ!」

少女「?」

傭兵「はっはっは、怒るな怒るな」

350: 2009/04/18(土) 19:15:25.03 ID:vWc5hF7D0
勇者「えーと」

勇者が机に地図を広げた

傭兵「魔王城はまだ遠いな」

勇者「現在地はここですよね・・・えーと・・・うわ」

少女「どうしました?」

勇者「見てよコレ、次の街までの距離・・・」

少女「わぁ・・・すっごい長いですね・・・歩いて行ける距離じゃないんじゃ・・・」

傭兵「しかし、この道しかねぇんだ。気合入れて行くしかねぇぞ?」

勇者「そうですよね。・・少女、険しくなると思うけど大丈夫かな?」

少女「ご心配なく。勇者様と一緒なら何処でも平気です」

傭兵「おうおう、朝っぱらから・・・」


村娘「あ、ここにいた!」

352: 2009/04/18(土) 19:19:22.75 ID:vWc5hF7D0

少女「村娘さん」

勇者「おはようございます」

傭兵「うぃーっす」

村娘「もう旅立たつの?」

少女「はい、あまり長居も出来ませんので」

村娘「そうですか・・・気をつけて下さいね」

勇者「村娘さんも、お元気で」

少女「お父さん、大事にしてあげて下さいね」

村娘「うんっ、この恩は忘れないよ!ありがとう!!」

傭兵「・・・よぉーし、んじゃ出発すんぞー」

勇者「はいっ」

少女「行きましょう!」

355: 2009/04/18(土) 19:28:23.61 ID:vWc5hF7D0
2時間後

勇者「はぁ・・はぁ・・・」

少女「はっ・・・はぁ・・・」

傭兵「歩いても歩いても景色が変わらねぇ・・・おい、ちょっと休もう」

勇者「そ、そうですね」

少女「はぁ・・はい・・・」

勇者「・・・今、どこら辺ですかね?」

傭兵「ずっと同じ景色だ。わからんな」

少女「夜になれば、私飛行して後どれぐらいか分かるんですけどね」

傭兵「そうか・・・そうだな」
勇者「?」

傭兵「何もこんな日が照ってる時間帯に無理して歩かなくていいんだよ。涼しい夜に移動すりゃいいんだ・・・」

少女「そ、そう言えばそうですね」

勇者「気合入りすぎてましたね・・・」

傭兵「よし、そうと決まればテント張るぞ!勇者手伝え!」

勇者「は、はい」

356: 2009/04/18(土) 19:29:39.87 ID:vWc5hF7D0


傭兵「グゴー・・・グゴー・・・」

勇者「傭兵さん、夜ですよ」

ユサユサ

少女「起きませんね」

勇者「このままじゃ朝まで寝てそうだよ・・・どうしよう、口に砂でも入れてみようか」

少女「あはは、いいかもしれないですね・・・私、ちょっと飛んで周りを見てきます」

勇者「うん、気をつけてね」

少女「はい、行ってきます」

どろんっ

パサパサパサパサ・・・

359: 2009/04/18(土) 19:34:08.79 ID:vWc5hF7D0
勇者「傭兵さーん、起きて下さいって」

傭兵「んー・・・うるさい」

勇者「・・・ふう、本当に砂入れてやろうかな」

パサパサパサパサ

勇者「あ、お帰り」


どろんっ

少女「勇者様、ちょっと地図見せて下さい」

勇者「地図?ちょっと待って・・・・はい」

少女「・・・」

勇者「どうかしたの?」

少女「・・・地図に載ってない村があるんですよ、この先に」

勇者「え?本当?」

少女「はい、明かりもついてたんで人も住んでる感じでした」

勇者「傭兵さんに教えないと。傭兵さーん」

360: 2009/04/18(土) 19:35:19.55 ID:vWc5hF7D0
傭兵「ゴー・・・ゴー・・・」

サラサラサラ・・・

傭兵「ゴー・・・!??ぶへはぁっ!!!!?ゲホッ!ゲホッ!!」

勇者「wwwww」

少女「wwwww」

傭兵「べはっ!げはっ・・・な、何が起こった!?」


勇者「大丈夫ですか?傭兵さん」

少女「すみません、何度呼んでも起きなかったモノですから・・・」

傭兵「お、お前らの仕業か!!」

勇者「待って下さい傭兵さん、大事な話があるんですよ」

傭兵「あ?大事な話??」

364: 2009/04/18(土) 19:38:41.56 ID:vWc5hF7D0
傭兵「・・・本当か??」

少女「はい、確かにこの目で見たんです」

勇者「涼しい時間帯にもなりましたし、行ってみようと思うのですが」

傭兵「・・・そうだな、村があったらあったでラッキーだよな。酒もあると尚いい」

少女「傭兵さん・・・」

傭兵「はっはっは!そうと決まれば、テント片付けてその村に向かうぞ!」

勇者「はい!」

400: 2009/04/18(土) 21:18:41.77 ID:vWc5hF7D0
――歩く事30分


少女「ほら、見えましたよ!!」

少女は村の方向を指差す

勇者「・・・?」

傭兵「何処だよ?」

少女「え?いや・・・明かり見えるじゃないですか!あそこですよ!」

勇者「?」キョロキョロ

傭兵「だから何処だよ?全然見えないぞ?」

少女「???(二人には見えてない?)」


402: 2009/04/18(土) 21:19:54.37 ID:vWc5hF7D0
少女「勇者様、私と手繋いで下さい」

勇者「え?う、うん」

ギュッ

傭兵「?」

少女「傭兵さん、私達の後ついて来て下さいね」

少女は勇者を半ば強引に引っ張り、少女が見えてる村の方向へと向かった

傭兵「だからそっちはなんも無い・・・ちょ、待て待て」


ザッザッザッザッザ

勇者「本当に村が見えるの?」

少女「勇者様、私は嘘はつきませんよ」

・・・
ザッ

少女が『見えない村』の入り口に立ち止まる

403: 2009/04/18(土) 21:21:07.06 ID:vWc5hF7D0
少女「・・・」

勇者「?どうしたの、立ち止まって?」

少女「この門が見えませんか?」

勇者「うん・・・」

少女「よし・・・入ってみましょう。行きますよ」

勇者「わ、ちょ待って・・・」


傭兵「歩調を考えろって・・・こっちは剣と荷物背負ってるっつーのに・・・え!?」

少女が前に一歩歩み出した瞬間、勇者と少女が消えた

傭兵「き、消えた!?おい、勇者!お嬢!!」

傭兵「・・・・まさか・・・、本当にあるのか?そこに村が?」
ザッザッザッザ


傭兵も二人を追って歩みだした

405: 2009/04/18(土) 21:23:24.47 ID:vWc5hF7D0
モンスター村


少女「やっぱり・・・あった」

勇者「こ、ここは?少女が言ってた村?」

少女「はい、でも私しか見えなかったってのはどういう事なんでしょう?」


傭兵「お!?ここは・・・?」

二人の後を追い傭兵も入ってきた

勇者「傭兵さん」

傭兵「本当にあったんだな」

少女「でも、誰も外に出てませんね。すいませーん!誰かいませんかー?」

勇者「・・・・・反応がないね」

傭兵「でも、部屋の明かりはついているぞ?」

406: 2009/04/18(土) 21:25:16.64 ID:vWc5hF7D0
ガチャッ

勇者「!」

勇者達から一番近い家のドアが開いた
そこに出てきたのは・・・


少女「!」

傭兵「な・・!?」

勇者「!?」


オバサン「なんだい、その顔は?」

ゴブリン「鳩が豆鉄砲を食らったような顔して?」

なんと、人間の女性とモンスターであった


409: 2009/04/18(土) 21:27:18.17 ID:vWc5hF7D0
ガチャ  ガチャガチャ

爺「・・・」

エルフ「・・・」

婆「・・・」

人狼「・・・」

傭兵「ヒトと魔物が暮らしているのか?」

勇者「・・・」

少女「こんな村があったなんて・・・」

オバサン「ん?アンタ達人間だよね?どうしてこの村がわかったんだい?」

エルフ「ここはモンスターしか分からない村なんですがね・・・」


少女「そうか・・・だから私だけが見えてたんですね」

勇者「この村は・・・?」

オバサン「見りゃわかるだろ?人間とモンスターが暮らす村さ」

410: 2009/04/18(土) 21:28:33.86 ID:vWc5hF7D0
人狼「まァ、外の世界から来たんなら驚くのも無理はないわな」

ゴブリン「まぁ立ち話もなんだ、ウチに入れよ。茶ぐらいは出すぞ」

勇者「あ、はい・・・みんな、行こう」

少女「はい」

傭兵「・・・(こんな村が・・・既に実在していたのか)」


オバサン「フーン・・・」

ゴブリン「魔王様を倒しに・・・か」

勇者「あの、この村は何時からあるんですか?」

エルフ「もう何百年も前からですね。最初は本当にモンスターだけの村だったのですが・・・」

爺「ある日、人間が転がり込んで来ての。意外にもモンスター達と気があっての・・・それからか。チョコチョコ増えてきたのは」

ゴブリン「ここには、人間と魔物の争いを好まない人間やモンスターが自然と集まる村なんだよ。」

413: 2009/04/18(土) 21:31:39.47 ID:vWc5hF7D0
少女「やっぱり・・・人間とモンスターは判り合えるんですね!」

オバサン「一部の、だけどね。」

勇者「・・・」

傭兵「勇者、これは凄い発見だぞ」

勇者「はい・・・」

婆「外の世界じゃまだ人間と魔物は争っておるのか?」

少女「はい・・・」

爺「ふー・・・本当に、何度繰り返せば飽きるのやら」

オバサン「偏見の塊のような奴らが王を名乗って戦争を起こしてるんだ。そいつの跡継ぎだって同じ偏見を植え付けられて育って行くんだしね」

エルフ「まぁ・・・人間の良さに気づこうとしない、魔族にも問題はあるのですがね」

勇者「・・・」

少女「・・・」

414: 2009/04/18(土) 21:32:33.50 ID:vWc5hF7D0

爺「お前さんはどうしたいんじゃ?」

勇者「え?」

人狼「権力者のいいように動かされて、魔王を倒すのか?」

婆「魔王を倒したとしても、今度は人間同士の戦争が起こりよる」

エルフ「そしてまた新たな魔王様が誕生し、モンスターと人間の争いが起こる・・・貴方はそんな繰り返しを望んでいるのですか?」

傭兵「・・・」

オバサン「まぁまぁ、皆。そんなに攻めないでやっておくれよ・・・この子だって生まれたくて勇者に生まれたんじゃないんだし」

ゴブリン「まぁ、ここで暮らす俺達には関係の無い話だがな・・・」

416: 2009/04/18(土) 21:34:16.37 ID:vWc5hF7D0
勇者「・・・」

少女「勇者様・・・」

勇者「・・・繰り返させません」

オバチャン「ん?」

人狼「!」

勇者「こんな歴史、もう繰り返させません!僕が魔王の元を目指すのは、倒しに行く為じゃありません!共存の道を話し合う為です!」

傭兵「勇者・・・」

爺「・・・簡単に行くかの」

勇者「やってみせます!ここで暮らしている皆さんのように、僕の事を気に入ってくれた少女のように、判り合える筈です!」

少女「勇者様・・・」

443: 2009/04/18(土) 22:49:30.95 ID:vWc5hF7D0

オバサン「・・・そうかい、なら前祝でもしてやるかい」

ゴブリン「ふふ・・・そうだな」

人狼「俺は狩に行ってくる」

婆「爺さん、手伝っておくれ」

爺「おう」

ゾロゾロゾロゾロ・・・


傭兵「・・・キマったな、勇者」ポンッ

勇者「・・・はい」

少女「勇者様、私何処までもお供します!」

勇者「ありがとう」

傭兵「共存の道を話し合う・・・か。そりゃぁ魔王を倒すより大変だと思うが・・・まぁ、頑張ろうぜ」

勇者「はい!」

446: 2009/04/18(土) 22:51:50.84 ID:vWc5hF7D0
その夜、モンスター村では盛大なパーティーが開かれた


ワイワイ   ガヤガヤ

村の中央では、人狼と傭兵が飲み比べをしている

スライム「人狼の兄ちゃん、人間なんかに負けるなー!」

人狼「・・ッ・・・ッ」

傭兵「・・ッ・・・ッ・・・ッ!ぶはぁ!遅いぜ!!」

人狼「チッ」

オー  パチパチパチ


爺「おお~、やるのぉー・・・ワシの若い頃を思い出すわい!!」

婆「あんた酒飲めなかったでしょうがね」

449: 2009/04/18(土) 22:55:30.88 ID:vWc5hF7D0

勇者「盛り上がってるね」

少女「はい、傭兵さんの本領発揮ですね」

ゴブリン「お前達、出発する時は俺に声をかけろよ。馬車を貸してやるからな」

勇者「いいんですか?」

オバサン「ああ、この村じゃ馬車は必要ないからね」

少女「ありがとうございます」

エルフ「険しい道のりになるでしょうが・・・頑張って下さいね」

勇者「はい、頑張ります」

ゴブリン「ほら、姉ちゃん飲みな」

少女「あ、すいません」

勇者「少女、お酒だけど・・・大丈夫なの?」

少女「うー・・・ん・・お父様がいたら怒られるでしょうけど・・・無礼講です!」グビグビグビ

勇者「あーあーあー・・・知らないよ」

450: 2009/04/18(土) 22:56:34.50 ID:vWc5hF7D0
オバサン「おお、いい飲みっぷりだねぇ!」

エルフ「さ、勇者殿。貴方も」

勇者「え・・・いや僕は」

ゴブリン「彼女も飲んだのにお前だけ飲まないってのは白けるぞ?」

少女「そうですよぉ、勇者様!飲んで下さいよ!」

勇者「も、もう酔ってるの?」


―――宴は夜中まで続いた



飲み比べが終わった傭兵は、モンスター達と腕相撲大会をやっていた

傭兵「んおおおおおお!!!」

ゴーレム「・・・!」

人狼「気をつけろゴーレム、酒入ってるから手強いぞ!」

爺「懐かしいのぉ・・・ワシも若い頃はゴーレムを素手でちぎっては投げちぎって投げ・・・」

婆「はいはいはい」

454: 2009/04/18(土) 23:00:22.63 ID:vWc5hF7D0
少女「ごめんなさい、私もう限界でーっす」

勇者「大丈夫?」

オバサン「向こうの部屋のベッド使っていいからね」

少女「は~い、おやすみなさい~・・・」

少女は千鳥足で部屋に向かう

ゴブリン「おいおい、一人で行かせたら危ねぇだろ。お前連れて行ってやれよ」

勇者「あ、はい」

少女程ではないが、勇者もユラユラ歩行で少女を追う

457: 2009/04/18(土) 23:02:27.50 ID:vWc5hF7D0

少女「あ?勇者様ぁ」

勇者「大丈夫かい?フラフラしてるけど」

少女「あはは、勇者様だってフラフラじゃないですか~」

勇者「おっとっと、・・お酒は初めてだからねぇ。ほら、部屋入るよ」

少女「はーい」



部屋に入ると、大きなベッドが用意されていた

丁度二人が寝れるぐらいの・・・

460: 2009/04/18(土) 23:04:52.50 ID:vWc5hF7D0
勇者「ほら、ベッドについたよ」

少女「は~い、うーっ」ボスゥン

少女はベッドにダイブする

勇者「おいおい、大丈夫?・・うーっ」ボスゥン

勇者も釣られてダイブする

少女「~お酒って楽しいですねぇ」

勇者「そうだね~村の人もみんないい人だし・・・」

少女「共存出来る時代が来たら・・・もっと凄い祝いでしょうねぇ」

勇者「うん・・・」

少女「・・・」

勇者「どうしたの?黙って・・・」

少女「勇者様、さっきはカッコよかったです」

勇者「そ、そう?照れるなぁ」

少女「私、勇者様について来て良かったです」
勇者「え?嬉し うっ!?」

少女が突然、勇者にキスをしてきた

464: 2009/04/18(土) 23:06:44.32 ID:vWc5hF7D0
少女「・・・」

勇者「・・・///」

少女「・・・はぁっ」

勇者「あーあー・・・あ、はは///」

勇者は突然出来事+酔いで頭の中がパニックになった



少女「勇者様・・・」

勇者「!」

気づくと、少女は一矢纏わぬ姿になっていた

少女「・・・」

勇者「・・・」

酔いが入ってるせいか、少女が普段よりずっと色っぽく見えた

少女「勇者様、来て下さい・・・」

勇者「え、あ・・・(・・・もうどうにでもな~れっ)」

466: 2009/04/18(土) 23:08:32.18 ID:vWc5hF7D0
傭兵「どらぁぁぁ!!!」

ゴーレム「ウゴッ!?」

ドダアアァァンッ!!

ゴーレムが一回点半して地面に叩きつけられた

スライム「す、すっげー!傭兵の兄ちゃん!」

傭兵「がっはっは!酒が入れば俺は天下無敵よ!!」

傭兵「おい、次はオオカミ!お前だ!」

人狼「おいおい、お前相当酔ってるだろ。もう寝ろよ」

傭兵「酒に呑まれるようじゃ傭兵やってけねぇんだよ~」

人狼「ええい、いい加減に寝ろ。プースヤ(睡眠魔法)」

傭兵「!」バタッ

傭兵「グー・・・ガー・・・」

傭兵もついに力尽きたのであった

470: 2009/04/18(土) 23:12:05.56 ID:vWc5hF7D0
翌朝


勇者「ん・・・あ!痛っ・・・!」

目を覚ました瞬間、勇者は頭痛に襲われた

勇者「いって~・・・なにが・・・・?」

少女「大丈夫ですか?勇者様」

少女が水を持ってやってきた

勇者「あ、ありがと・・・もう起きてたんだ。早いね」

少女「はい・・・勇者様、昨日の事覚えてます?」

勇者「え・・・?あーごめん、わかんないや・・・酔っててなんかした?」

少女「・・・いいえ、なんでもありませんよ。ふふ」

勇者「???」

474: 2009/04/18(土) 23:13:12.30 ID:lmhvIfgp0
ゆうべはおたのしみでしたね

475: 2009/04/18(土) 23:13:48.18 ID:vWc5hF7D0
勇者「そういえば、傭兵さんは?」

少女「外でまだ寝てます。相当飲んだみたいですね」

勇者「しょっぱなから飲みまくってたからねぇ・・・」

少女「傭兵さんもあんな状態ですし、勇者様も頭痛が抜けないみたいですし、もう一日だけここでお世話になりましょう。この家の方もそう言っていましたので」

勇者「そっか・・・痛た・・・じゃあ、僕悪いけどもうちょっと寝かせてもらうよ」

少女「はい、ごゆっくり。・・おやすみなさい」

勇者「おやすみ・・・」




オバサン「ったく、食い散らかしてくれたもんだねぇ・・・」カチャカチャ

少女「オバ様、私も手伝います」

オバサン「あら、寝てていいのに。・・てか、アンタ酒残ってないのかい?」

少女「ええ、なんか不思議と・・・」

オバサン「なんか・・・嬉しそうな顔してるね?なにかあったのかい?」

少女「え!いえいえ、なんでもありませんよ!」

478: 2009/04/18(土) 23:21:09.19 ID:vWc5hF7D0

オバサン「あ!さてはアンタ昨日、あの子と・・・!」

少女「! しーっ、しーっ!」

爺「ん?」

人狼「・・・」ピコピコ

オバサン「なるほど、それでか~」

少女「あんまり大きい声で言わないで下さい///」

オバサン「若いっていいねぇ~」

少女「ほ、ほら!早く後片付けしちゃいましょうよ!」

オバサン「はいはい」

483: 2009/04/18(土) 23:25:25.08 ID:vWc5hF7D0
・・・

少女「勇者様、勇者様」

勇者「・・・ん?」

少女「もう、夕食の時間ですよ。起きて下さい」

勇者「あ・・・もうか。わかったよ」




オバサン「おはよう」

勇者「おはようございます、すいません。すっかり眠っちゃって・・・」

オバサン「夕べはお楽しみだったねぇ」

少女「お、オバ様!!///」

オバサン「おぉ、怖い怖い」

勇者「???」

少女「な、なんでもないです。早く行きましょう」

490: 2009/04/18(土) 23:34:38.34 ID:vWc5hF7D0
傭兵「おう、勇者」

勇者「傭兵さん、おはようございます」

傭兵「お前、何時の間にいなくなってたんだ?俺一人でモンスター達と飲んでたんだぞ?」

勇者「僕、昨日の記憶無いんですよ・・・少女、覚えてる?」

少女「お、覚えてますけど、勇者様酔いつぶれちゃってすぐ寝ちゃったんですよ!」

勇者「あれ~?確か少女をベッドに運んだような・・・」

傭兵「おいおい、まさかヤッたんじゃねぇだろうな?」

少女「ちょ、ちょっと傭兵さん!」

勇者「ま、まさか・・・ははは(覚えてないだけに怖い・・・この事は忘れよう)」

491: 2009/04/18(土) 23:37:04.53 ID:vWc5hF7D0
オバサン「明日には出るのかい?」

勇者「はい、あまりのんびりも出来ませんので」

傭兵「オバチャン、酒くれー」

ピシッ
少女「ダメです、昨日沢山飲んだじゃないですか」

傭兵「硬いなぁ・・・お嬢ちゃんは」

ゴブリン「お前、傭兵だろうが。移動中モンスターに襲われて二日酔いで動けないなんて笑えないぞ」

傭兵「う・・・わ、わかったよ。我慢するよ」

オバチャン「そうだよ、せっかくいい身体してんのに酒で壊しちゃもったいないよ!」

傭兵「酒あってこその俺なんだが・・・」

少女「水で我慢して下さい!これなら沢山飲んでいいですから」ゴトンッ

傭兵「へーい・・・」

勇者「残念でしたね、傭兵さん」

496: 2009/04/18(土) 23:46:19.68 ID:KxBXMgJw0
あーあおれも旅に出てぇ

503: 2009/04/18(土) 23:49:40.27 ID:vWc5hF7D0


傭兵「よし、俺は寝る。お前らも早く寝ろよ」

少女「はい、おやすみなさい」

勇者「おやすみなさいー」



勇者「あ(確かベッドって一つしかなかったよな)」

少女「どうかしたんですか?」

勇者「僕、ベッドの下で寝るからさ。少女ベッドで寝てよ」

少女「え?そんな、申し訳ないですよ。一緒に寝ましょうよ」

勇者「い、いやでも・・・(昨日何したかわからないのに、一緒に寝るだなんて)」

少女「大丈夫ですよ、一緒に寝ましょう。ベッドの方が温かいですし。風邪引くなんてつまらないですよ」

勇者「そ、そっか・・・わかったよ」

504: 2009/04/18(土) 23:51:09.69 ID:vWc5hF7D0

少女「おやすみなさい・・・」

勇者「おやすみ・・・」



・・・

勇者「・・・ねえ、少女」

少女「はい?」

勇者「僕、ホントに何もしなかった?」

少女「!・・・・」

505: 2009/04/18(土) 23:52:40.57 ID:vWc5hF7D0
勇者「・・・し、したの?」

少女「・・・・した、というか、私が誘ったというか・・・」

勇者「!!ご、ごめんなさい!」

少女「え?あ、謝らないで下さいよ!」

勇者「なんというか・・・申し訳ない!酒の勢いでその・・・や・・・やっちゃうなんて・・最低だ」

少女「そんな、勇者様・・・気にしないで下さい!私・・・う、嬉しかったですから///」

勇者「う、嬉しかった?・・・怒ってないの?」

少女「はい、ですから気にしないで下さい」

勇者「・・・ごめんね」

少女「ですから、もういいですってw」

512: 2009/04/18(土) 23:55:34.26 ID:vWc5hF7D0
少女「それより・・・頑張りましょうね」

勇者「え?」

少女「・・・人間と魔物が共存する世界を実現させる事・・・」

勇者「うん・・・出来るよ。この村の人達が証拠さ、必ず出来るよ」

少女「私も、出来る限りお手伝いしますね」

勇者「ありがとう、少女」

少女「じゃあ・・・おやすみなさい」

勇者「おやすみ・・・」

527: 2009/04/19(日) 00:14:52.69 ID:hxLfRu520


勇者「2日もお世話になって、すみませんでした」

オバサン「なになに、久々のお客さんだったぁら嬉しかったよ」

ゴブリン「馬車は村の出口に置いてある。遠慮なく使ってくれ」

勇者「はい、すいません」

傭兵「この旅が終わったら、またここに来るぜ」

人狼「フ、また飲み比べでもやるつもりか?」

傭兵「へっ、お前との腕相撲勝負がまだだからな」

人狼「(覚えていたのか)」

爺「お嬢ちゃんも気をつけての」

少女「はい、ありがとうございます」

婆「アンタ達の理想の世界、実現出来る事を祈っておるよ」

勇者「はい、頑張ります。必ず実現させてみせます!」

529: 2009/04/19(日) 00:15:58.02 ID:hxLfRu520
傭兵「よし・・・荷物は全部積んだな?」

少女「はい、全部ですね」

勇者「では皆さん、色々とありがとうございました!」

オバサン「ああ、気をつけてね」

ゴブリン「また来いよ」

エルフ「お元気で・・・」

少女「皆さんもお元気で!」

傭兵「じゃあまたな~」

パカパカパカパカパカ・・・



オバサン「行っちまったねぇ」

ゴブリン「ああ・・・」

エルフ「共存出来る世界・・・是非、この目で見てみたいものです」

爺「そんな世界が見れるなら・・・ワシ死んでもええわ」

婆「そうですかそうですか」

531: 2009/04/19(日) 00:17:59.33 ID:hxLfRu520
パカパカパカパカ・・・

傭兵「ん~♪馬車はいいねぇ・・・」

馬「ヒヒン」

傭兵「お前も久々に荷を引くだろ。あんま無茶すんなよ?」

馬「ブルルッ」


馬車内

勇者「ここだとローブを着なくてもいいから楽だね」

少女「はい、正直動きにくかったですからね。アレ」


新たな仲間(?)馬車を加え、勇者一行は次の目的地へと向かうのであった

553: 2009/04/19(日) 00:56:54.78 ID:hxLfRu520
魔王城


側近「魔王様、勇者達の情報ですが・・・」

魔王「何か入ったか?」

側近「仲間を2人加え、この魔王城へと着々と向かって来ております」

魔王「二人か?まぁ、最低限の人数だな」

側近「その仲間なのですが・・・」

魔王「?」


側近「一人は傭兵所で見つけた男。もう一人が・・・なんと吸血鬼の娘なのです」

魔王「・・・吸血鬼の娘?」

側近「はい、吸血鬼の長から話を聞きましたが、ある日消えるようにいなくなってしまったと」

側近「・・・魔物が勇者と旅をする等、これはどういう事でしょう」

魔王「吸血鬼の一族はプライドが魔物一倍高いが・・・その吸血鬼が仲間にいるとは、勇者は相当カリスマを持った人間なのかもしれんな」

側近「カリスマ・・・ですか」

魔王「・・・ふふ、何かが変わり始めてるのかもしれんな」

554: 2009/04/19(日) 00:58:11.18 ID:hxLfRu520
勇者一行がモンスター村を出発して二日、ついに次の目的地に到着した

馬「ブルルッ ブルルッ」

傭兵「おーい、着いたぞー」

勇者「zzz・・・ん、あ・・・はーい!」

少女「ん・・・」


傭兵「すっかり暗くなっちまったな」

勇者「ええ、今日はもう宿を取りましょう」

傭兵「ああ、だな。俺も久しぶりに酒飲みてぇや」

少女「まだ2日しか経ってないじゃないですか」

傭兵「俺にとって二日禁酒ってのは相当なダメージなんだよっ」

勇者「はは、わかりました。さ、宿屋に行きましょう」

556: 2009/04/19(日) 00:59:32.66 ID:hxLfRu520
宿屋

店主「3名様ですね?」

傭兵「勇者、俺酒飲みに行って来るからよ、部屋はまた別に取っておいてくれ!」

勇者「わかりました」

少女「飲みすぎて暴れないで下さいよ?」

傭兵「おう、わかってるよ!」


勇者「僕らはどうしようか?馬車で結構眠ってたし・・・」

少女「じゃあ、街に遊びに行きましょうよ!」

勇者「そうだね、折角だし・・・行こうか」

少女「はいっ」

560: 2009/04/19(日) 01:01:13.48 ID:hxLfRu520
酒場

傭兵「親父、酒くれ!」

店主「はいよ」

「隣、よろしいかしら?」

傭兵「ん?おお、美人は大歓迎だぜ」

お姉「貴方、旅の方?」

傭兵「ああ!傭兵やってんだ。姉さんも旅人かい?」

お姉「ええ・・・そんな所ね」

傭兵「おう、マスター!この姉さんにも酒だ!」

店主「はいよ」

お姉「あら、いいの?」

傭兵「美人と一緒に飲む酒は格別に美味いからな!遠慮すんな!」

562: 2009/04/19(日) 01:04:05.76 ID:hxLfRu520
お姉「傭兵やって結構長いの?」

傭兵「モチロン。俺程のベテラン傭兵はいねぇよ」

お姉「じゃあ貴方の仲間にも頼りにされてるんでしょうね」

傭兵「ん?ああ、そうかもな~!はっはっは!!」

傭兵「姉さんは何処に向かって旅してるんだ?」

お姉「ん?まぁ特に何処向かってるって訳じゃないんだけどね。気の向くまま、ふらりふらりと」

傭兵「自由か・・・いいねぇ」

お姉「ねえ、別の場所で飲みなおさない?」

傭兵「ん?ああ、俺はいいけど」

お姉「じゃあ、行きましょうか」

563: 2009/04/19(日) 01:08:27.63 ID:hxLfRu520
路地裏

お姉「ここでいいか・・・」

傭兵「ここに店があるのか?」

お姉「ええ、今度は私がご馳走するわ・・・死にも上りそうな快楽を・・・」
ゾワゾワゾワゾワ・・・ッ


傭兵「おお、コスプレって奴か?」

サキュバス「そう見えるの?・・・まぁ、いいか」

サキュバスがゆっくりと傭兵に近づく

サキュバス「ねえ・・・私にキスして」

傭兵「キスか?お安い御用だ・・ん~」

サキュバス「(チョロイわね、若い魂いただ)んがっ!!!?」ボグッ

サキュバスの脳天に棍棒が振り下ろされた

サキュバス「な・・・だ、誰・・・」
ドサッ

サキュバスは気を失った

棍棒を振り下ろしたのは・・・・少女だ

566: 2009/04/19(日) 01:11:47.75 ID:6Q57RdtB0
撲殺吸血鬼少女ちゃん

569: 2009/04/19(日) 01:14:34.21 ID:hxLfRu520
少女「あ・・・危なかったぁ・・・」


勇者「少女、ここにいたの・・・って、なにこの状況!?」


傭兵「おお?勇者と嬢ちゃんじゃねぇか」

少女「この女はサキュバスです。傭兵さん、下手したら魂抜かれてたかもしれないんですよ!」

傭兵「サキュバス?なんだそれ?」

勇者「駄目だ、相当酔ってるよ」

少女「酔いを回させたのもこの女の力ですよ。勇者様、この女は危険です・・・早く宿に逃げましょう」

勇者「いやでも・・・ここに放って置くってのは」

少女「・・・じゃあ、宿屋まで運びましょう」

傭兵「う~」

勇者「傭兵さんも自分で歩けないみたいだけど」

少女「傭兵さんなら大丈夫ですよ。この女を運んでから迎えにきましょう」

勇者「そうだね、傭兵さんなら酔ってても強盗くらいは倒せそうだしね」

570: 2009/04/19(日) 01:16:01.31 ID:hxLfRu520
サキュバス「ん~・・・ん?」

少女「目が覚めましたね」

サキュバス「な、なによこの縄!?解きなさいよ!私、そういう趣味ないんだけど!」

少女「淫魔が私達に何の用ですか?魔王様の刺客ですか??」

サキュバス「刺客?違うわよ、私はただ若い魂を求めて放浪してただけ・・って、なんでアンタ私の事知ってるのよ?」

少女「私も貴方と同じ魔物ですから」

サキュバス「あら、そうなの・・・で、これ解いてくれないのかしら?」

少女「すぐにこの街から出て行くって約束してくれるなら、解放してもいいです」

サキュバス「それは無理ねぇ、この街には沢山のいい男がいるから・・・」

少女「じゃあ、仕方ありませんね」ポンッポンッ

サキュバス「なにその棍棒・・・はっ!さっきアタシの頭殴ったのアンタね!?卑怯者!」

654: 2009/04/19(日) 09:14:56.98 ID:hxLfRu520

少女「淫魔にそんな事言われたくありません」

ガチャ

サキュバス「!」

勇者「少女、大丈夫?」

突然勇者が部屋に入って来た


少女「あっ・・・」

サキュバス「(チャンスッ)

サキュバスは十八番であるテンプテーションを発動、勇者を洗脳しようとした

勇者「あ・・・」

サキュバス「坊や、私を助け
少女「駄目ーーっ!!」

655: 2009/04/19(日) 09:16:27.54 ID:hxLfRu520
ボグッ
サキュバス「おがっ!!!」

間一髪、少女が再び棍棒を振り落とし洗脳を未然に防いだ

勇者「!あ、あれ?今なんか頭がホワ~ッと・・・」

少女「勇者様、部屋に入らないでって言いましたのに・・・」

サキュバス「・・・」

サキュバスは再び気絶した


勇者「ごめん・・・っていうか、また気絶させたの?」

少女「勇者様、今洗脳されそうだたんですよ。・・・やっぱりこの女は危険です」

勇者「じゃあ・・・どうしよう」

少女「う~ん、明日の朝みんなで考えませんか?今日はもう遅いですし」

勇者「うん、そうだね。傭兵さんにも教えてあげなきゃならないし」

656: 2009/04/19(日) 09:17:46.76 ID:hxLfRu520
少女「勇者様は傭兵さんの部屋で寝てもらえますか?途中でこの女が目を覚ましたら危ないので」

勇者「わかったよ。お休み、気をつけてね」

少女「はい、お休みなさい」

バタン


サキュバス「・・・」

少女「・・・(タオルケットくらいは掛けてあげるか・・・)」ゴソゴソ

少女「・・・(羨ましい身体だなぁ・・・)」

658: 2009/04/19(日) 09:19:00.69 ID:hxLfRu520
翌朝

傭兵「ん・・・ん・・お・・!あー・・・よく寝たぁ・・・ん?」

勇者「・・・」コクリコクリ

傭兵「勇者?なんでお前が俺の部屋に?」

勇者「ん、あ・・・おはようございます」

傭兵「おう、なんで俺の部屋にいるんだ?少女と喧嘩したのか?」

勇者「ち、違いますよ。傭兵さん昨日命狙われてたんですから」

傭兵「なに?俺がか?」

勇者「傭兵さんの命を奪おうとした者が少女の部屋にいます。行きましょう」

傭兵「お、おう」

661: 2009/04/19(日) 09:22:14.20 ID:hxLfRu520
ガチャ

少女「あ、勇者様!」

勇者「おはよう」

傭兵「おはよう、なんか昨日は大変みたいだったな」

少女「ええ・・・で、この人が傭兵さんを襲おうとしたんですけど・・・」

サキュバス「・・・?」

傭兵「おいおい、こんな美人が俺を?」

勇者「なんか大人しいね?」

少女「はい・・・それが問題なんです」

傭兵「?」

少女「どうも、昨日の私の一撃で記憶を失っちゃったみたいなんです」

663: 2009/04/19(日) 09:27:02.29 ID:hxLfRu520
勇者「き、記憶を?」

少女「はい・・・夜でしたんで私も力が沸いちゃってて・・・」

サキュバス「あ・・・あの」

勇者「ど、どうしようか?」

少女「こうなっちゃうと置いて行くわけにも行きませんよね・・・」

傭兵「姉ちゃん、大丈夫か?」

サキュバス「はい・・・あの、アタシは一体何者なのでしょう?」

傭兵「・・・姉ちゃんは俺らの仲間だよ。旅の途中で事故に遭って記憶を失っちまったんだ」

勇者「え?」

少女「!?」

664: 2009/04/19(日) 09:27:18.29 ID:UdE/A2pM0
少女「どうも、昨日の私の一撃で頭蓋骨陥没骨折しちゃったみたいなんです」

667: 2009/04/19(日) 09:38:35.88 ID:4jg/jT7OO
魔王が変な勘違いしそうなパーティーだww

669: 2009/04/19(日) 09:49:58.76 ID:hxLfRu520

サキュバス「そ、そうだったんですか?」

傭兵「ああ」

勇者「(ちょっと傭兵さん!)」

傭兵「元はと言えば俺が原因でこんな風になっちまったんだ。(・・・記憶が戻るまで一緒に連れて行ってもいいだろう?置いてく訳にも行かないって)」

少女「(でも、この女は淫魔なんですよ?そこらの魔物とは別の危険があるんです)」

サキュバス「そうか・・・仲間・・・うん、なんかそんな気が」

傭兵「大丈夫だ、俺が目を光らせとく」


少女「~・・どうしますか、勇者様?」

勇者「・・・例え魔物でも、記憶がなかったら普通の人間と変わらないし・・・何より女の子だからね。記憶が戻るまでなら・・・僕はかまわないけど」

傭兵「さすが勇者、話が分かるぜ」

少女「勇者様がそういうなら・・・従います。記憶を失わせた原因は私にもありますし・・・」

670: 2009/04/19(日) 09:51:59.02 ID:hxLfRu520
サキュバス「では、改めてヨロシク!」

傭兵「おう、俺は傭兵。こっちは勇者でこっちが少女だ」

勇者「ヨロシク」

少女「よ、よろしくお願いします」

勇者「・・・じゃあ朝食取って、次の目的地に向かいましょうか」

傭兵「おう、そうだな」

サキュバス「アタシもお腹減りました!昨日から何も食べてない感じ!」

少女「(馴染むの早すぎ・・・)」

671: 2009/04/19(日) 09:53:26.19 ID:hxLfRu520
――奇妙な仲間を加え、勇者一行は街を出た

パカパカパカパカ・・・

サキュバス「あの、記憶失う前のアタシってどんなのだったんですか?」

傭兵「ん?そうだな~・・・」


馬車内

勇者「仲良くやってるみたいだね」

少女「そうですね。テンプテーションも使えないようですし・・・危険も思ったより少なさそうです」

勇者「奇妙な縁だけど、仲間が増えるのってやっぱり嬉しいね」

少女「そうですね。ああやって見ると、人間と殆ど変わりませんもの」

672: 2009/04/19(日) 09:54:43.19 ID:hxLfRu520
勇者「昨日はバタバタして気づかなかったけど、あの街は城下町だったんだね」

少女「ええ、あそこの城には魔物の存在を良しとしてない人間が溢れているんですね・・・」


勇者「一番説得しにくいのはやっぱり人間だろうね」

少女「・・・私もそう思います」

勇者「どう説得したら、人間はわかってくれるだろう」

少女「人間は言葉で納得してくれると思いません。・・・証拠を見せるのが一番だと思います」

勇者「・・・人間と魔物が共存出来るという証拠か・・・・・」

680: 2009/04/19(日) 10:24:35.35 ID:hxLfRu520
――街を半日が経過した



パカパカパカパカ

傭兵「姉ちゃん、今どこら辺だ?」

サキュバス「えーと・・・」

サキュバスは地図を広げる

サキュバス「今、この街を出たから・・・えーと」

傭兵「ああ、もういいや。目的地が見えた」

サキュバス「う・・・。ご、ごめんなさい」

傭兵「ふふ、気にすんな、おーい、勇者!次の目的地に着いたぞ!」

681: 2009/04/19(日) 10:25:43.88 ID:hxLfRu520
竜の巣

勇者「ここが竜の巣ですか・・・」

傭兵「おう、ここを抜けたら魔王城との距離もグッと縮まる」

少女「竜の巣はその名の通りドラゴンの巣窟です。気をつけて行きましょう」

サキュバス「了解~」

勇者「サキュバスさん、貴方は記憶を失って間もないですから無茶しないでくださいよ?」

傭兵「それもそうだな、俺の後ろに歩け」

サキュバス「はーい」

少女「(・・・こう言うのも変ですけど、あの二人お似合いですね)」

勇者「(うん、僕もそう思ってた)」

傭兵「おい、なにボーッとしてるんだ?先進もうぜ?」

勇者「あ、はい!」

683: 2009/04/19(日) 10:26:52.19 ID:hxLfRu520
勇者一行は順調に洞窟の奥へと進んで行く

暫くすると、ひときわ大きい空間に出た


傭兵「ここだけ随分広いな」

少女「勇者様、これ・・・!」

勇者「!」

少女は巨大な足跡を見つけた

この巣にいるドラゴンに間違いないだろう


サキュバス「あ・・・あれなんだろ」
タッタッタッタ・・・

685: 2009/04/19(日) 10:29:37.93 ID:hxLfRu520
サキュバス「こっちこっち!見てくださいコレ!!」


勇者「!」

少女「!」

傭兵「!」


嫌な予感が的中した

サキュバス「コレコレ!すっごい大きい!!」

サキュバスが竜の玉子を抱いている

勇者「ちょ・・・サ、サキュバスさん!」

・・・シン

傭兵「早くその玉子を戻せ!親が戻ってきたら殺されるぞ!」

ズシン

少女「・・・お、遅かったみたいです」

686: 2009/04/19(日) 10:32:25.33 ID:hxLfRu520
傭兵「勇者!俺は姉ちゃん連れて逃げる!お前は少女と逃げろ!!」

勇者「わ、わかりました!!少女!!」

少女「はい!」

ドラゴン「グオオオオオオオオーーーーー!!!!!!!!!」


傭兵「おい!!つったってんな!!!」

サキュバス「あ!は、はい!!!」

傭兵がサキュバスを一喝する

傭兵「こっちだ!来い!」

サキュバス「はい!!」

ドラゴン「グオオオオオオ!!!!」


怒りに燃えるドラゴンは傭兵・サキュバス組を追っていく

688: 2009/04/19(日) 10:33:30.42 ID:hxLfRu520
ドドドドドドドドドド!!!!

ドラゴン「グオオオオオ!!!」

サキュバス「いやーーっ!なんでこっち追ってくるのーー!!」

傭兵「お前が玉子持ってるからだろうが!!」

サキュバス「じゃ、じゃあ捨てます!!」

傭兵「バカ!捨てたら本当に殺されるぞ!!!」

サキュバス「じゃあどうしたらいいんですかぁーー!?」

傭兵「どうするって・・・とりあえず逃げれる所まで逃げる!!」

ドドドドドド・・・・

711: 2009/04/19(日) 12:26:58.99 ID:hxLfRu520

勇者「どうしよう、ドラゴン傭兵さん達を追いかけて行っちゃった!」

少女「サキュバスさんが玉子を持ったまま逃げちゃいましたからね・・・」

勇者「あのままじゃいずれ追いつかれちゃう。なんとかしなきゃ!」

少女「悪いのは玉子を取ったサキュバスさんです。彼女がドラゴンに謝って玉子を返せばあるいは・・・」

勇者「でも、あの怒りようで話を聞いてくれるか・・・と、とりあえず二人を追いかけよう!」

少女「はいっ!」

712: 2009/04/19(日) 12:28:01.29 ID:hxLfRu520
――その頃

ドラゴン「グオオオオオ!!!」

サキュバス「きゃーーーっ!!」

傭兵「くそ!(こうなったらコイツを倒すしか・・・いや、玉子を奪って逃げたのは俺達だ。自分達が助かる為にコイツを殺す事は出来ない!そんな事をしたら、奴等と同じだ!)」

傭兵は足を止めた


傭兵「姉ちゃん!止まれ!!」

サキュバス「え!?でも・・・」

傭兵「あのドラゴンはきっと洞窟を抜けても追いかけて来るだろ!!玉子を返して許してもらう他ない1」

サキュバス「で、でもあんなに怒って・・・食べられちゃいますよ!」

傭兵「俺達が始めた事だ!!!」

サキュバス「!」

713: 2009/04/19(日) 12:29:05.81 ID:hxLfRu520
ドラゴン「グオオオオオッ!!」
ズシンッ ズシンッ

ドラゴンが二人に追いついた

ドラゴン「グォルルル・・・」

傭兵「・・さあ姉ちゃん、ドラゴンに卵をかえせ。謝るんだ」

サキュバス「・・・・」

傭兵「早く!」

サキュバスは、はい!!」


サキュバスは小走りでドラゴンの目の前に出る


ドラゴン「グオオ」

サキュバス「・・・」ゴクリ

サキュバス「か、勝手に玉子を奪って逃げてしまい・・・ごめんなさい!玉子はお返しします・・・!」

サキュバスが玉子をドラゴンに差し出した

714: 2009/04/19(日) 12:32:55.28 ID:hxLfRu520
ドラゴン「・・・・・」
フッ

傭兵「!」

先程まで血走っていた眼をしていたドラゴンだったが、怒りが静まったのか元に戻っていった


そして次の瞬間

ドラゴン「・・・いや、私の方こそつい血が上って怖がらせてしまった。怪我はないか?」

サキュバス「!しゃ・・・」

傭兵「喋った・・・」


ドラゴン「すまないが、その玉子を私の巣まで持って行ってくれないか?」

サキュバス「え?あ・・・」

ドラゴン「私は運べないのでな」

傭兵「よ、よし、俺が運ぼう」

サキュバス「す、すみません」

717: 2009/04/19(日) 12:36:16.92 ID:hxLfRu520
竜の巣 中央

勇者「ドラゴンの足跡は向こうへ続いてる」

少女「じゃあ傭兵さん達もこの奥に・・・」

勇者「でも、変だ」

少女「はい・・・急に静かになりました・・・まさか」

勇者「・・・」


ズシンッ ズシンッ

勇者「!戻ってきた!!」

少女「隠れましょう!」

勇者「いや、待って・・・あれは?」


傭兵「勇者!」

先に現れたのは卵を抱いた傭兵だった

720: 2009/04/19(日) 12:38:49.94 ID:hxLfRu520

勇者「傭兵さん!サキュバスさんは?」

傭兵「俺の後ろにいるよ」

サキュバス「・・・」

勇者「よかった、無事で・・・」


ズシンッ  ズシンッ

ドラゴン「・・・さっきはすまなかったな、驚かせて」

勇者「え」

少女「喋った・・・」


721: 2009/04/19(日) 12:41:05.10 ID:HLPfTAP30
スーパードラゴンのヨッシーさんでもしゃべるんだから喋れるだろえ

725: 2009/04/19(日) 12:48:02.84 ID:hxLfRu520
傭兵「ここでいいか?」

ドラゴン「ああ、頼む」

傭兵は卵を巣に戻す

少女「サキュバスさん、貴方の勝手な行いで大変な事になってたかもしれないんですよ?」

サキュバス「・・・ごめんね」

勇者「ドラゴンさんが許してくれたから良かったですけど、もうこんな勝手なマネはしないで下さいね」

サキュバス「うん・・・ごめん」


傭兵「まぁまぁ、俺からも説教しといたからそこらへんで許してくれ」

ドラゴン「卵も無事戻ってきたし、私ももう気にしてはいない」

勇者「そうですか・・・本当にすみませんでした」ペコ

727: 2009/04/19(日) 12:50:30.79 ID:hxLfRu520
ドラゴン「正直、卵を返されるとは思わなかった。君が立ち止まった時は仕掛けてくるかと思ったよ」

傭兵「ああ、以前の俺ならやってたかもしれないけどな・・・今の俺は違う」

少女「とにかくお互い無事でなによりです。ね、勇者様?」

勇者「うん、そうだね」

ドラゴン「・・・勇者?君がか・・・?」


勇者「はい、僕が勇者です」

ドラゴン「・・・我々竜の巣に住まう者達は、勇者一行をここで始末するのが任務になっているのだ」

729: 2009/04/19(日) 12:54:09.09 ID:hxLfRu520
傭兵「!」

少女「え・・・」

ドラゴン「ここは魔王城への入り口と言ってもいい場所だからな・・・」

勇者「ドラゴンさん、確かに僕達は魔王城を目指してはいますが、それは魔王を倒す為じゃないんです」

ドラゴン「魔王様を倒すのが目的ではない?ならば一体?」

少女「人間と魔物が共存して暮らす事の出来る世界を実現させる為に、話し合いに行くのです」

ドラゴン「人間と魔物の共存だと?なにを馬鹿な・・・」

サキュバス「・・・?(そんな誓いしたっけ?思い出せない・・・)」

勇者「信じられないでしょうけど、僕達は本気なんです」

ドラゴン「(冗談を言うようなタイプには見えない・・・それにこの目・・・)勇者よ、ちょっと私の前まで来てくれ」

730: 2009/04/19(日) 12:57:35.62 ID:hxLfRu520
勇者「?」

少女「何をする気ですか?」

ドラゴン「大丈夫だ、いきなり襲い掛かったりはしない。少し君の心を覗かせてほしいだけだ」

勇者「心を・・・。わかりました」

少女「私も一緒に。共存の世界を望む気持ちは勇者様と一緒です!」

ドラゴン「君は・・・バンパイアか。いいだろう、二人とも前に」



サキュバス「・・・あ、あのアタシも行った方が?」

傭兵「いいから、二人に任せとけ」


740: 2009/04/19(日) 13:51:05.19 ID:hxLfRu520
ドラゴン「では、行くぞ」

勇者「はい」

少女「いつでもどうぞ」

勇者と少女は手を繋ぐ


ドラゴン「・・・はっ!!!」

ドラゴンが叫ぶと、二人とドラゴンは光の球体に包まれた


傭兵「!」

サキュバス「あ、あれはヤバいんじゃないんですか?」

傭兵「・・・大丈夫だ、信じて待っているんだ」

742: 2009/04/19(日) 13:52:12.84 ID:hxLfRu520
心の空間

勇者「・・・ここは?」

少女「私達の・・・心の中でしょうか?」


辺りを見回すと今まで見てきた場面や景色が陽炎のように浮かんでいる

勇者「ドラゴンさんは・・・?」

少女「いませんね・・・」


「見させて貰ったよ」

勇者「!」

ドラゴンの声が何処からか聞こえる

ドラゴン「君達が共存の世界を望んでいるのは本当のようだ」

744: 2009/04/19(日) 13:53:13.07 ID:hxLfRu520
少女「よかったですね、勇者様!」

勇者「うん、良かった。信じてもらえて・・・」


ドラゴン「既にモンスターと人間が共に暮らしている村まであるとは驚いた」


少女「私達は、あの人達を見て核心したんです。共存の道は不可能ではないという事を」

ドラゴン「ああ・・・これは確かな証拠だ。・・・それに君にも魂が・・・」

少女「?」

ドラゴン「いや、これは内緒にしておこうか・・・いずれ解る事だ」


勇者「ドラゴンさんも本当はこんな不毛な争いを望んでないんですね?・・・なんとなくですが、そんな感じがします」

ドラゴン「ああ、本音を言うと私も疲れていた所だ」

少女「良かった、ここにも仲間がいて・・・」


ドラゴン「君達の気持ちは十分わかった。この洞窟を通る事を許可しよう」

745: 2009/04/19(日) 13:55:02.25 ID:hxLfRu520
傭兵「大丈夫だ、必ず戻って来る」

二人と一頭を包んだ光が次第に弱まっていく

サキュバス「あ・・・!傭兵さん」

傭兵「ああ、だから言っただろ」

シュウウウゥゥゥ・・・・


ドラゴン「・・・」

勇者「・・・」

少女「・・・」


ドラゴン「・・・君達の心、確かに見せて貰った。さぁ、先に進むがいい」

傭兵「ああ、ありがとよ」

サキュバス「良かったぁ」

勇者「・・・ん」

少女「んっ・・・」

二人とも意識を取り戻す

747: 2009/04/19(日) 13:56:32.62 ID:hxLfRu520
ドラゴン「お前達の望む世界が実現する事を祈っているぞ」

勇者「はい、ありがとうございます」

少女「必ず実現してみせます」

傭兵「色々バタバタさせてすまなかったな」

サキュバス「本当にすいませんでしたっ」

ドラゴン「なに、お前達も無事でな。魔王城はもう少しだ・・・」

勇者「じゃあ、行きます。ドラゴンさんもお元気で」

少女「またお会いしましょう」

ドラゴン「ああ、楽しみにしているぞ・・・」



ドラゴン「人間と魔物の共存か・・・そんな夢物語のような話、魔王様はどう受け取るのか・・・」

748: 2009/04/19(日) 13:58:41.55 ID:hxLfRu520
竜の巣 出口

勇者「ここを抜けたら後は・・・ん?」

少女「?どうかしたんですか?」

馬「ヒヒン」

サキュバス「あれ、アンタ確か入り口で待ってたんじゃ」

馬「ブルルッ」

傭兵「こまけぇこたぁいいんだよ。さ、急ごうぜ!」

勇者「そうですね、いよいよです。行きましょう!」

少女「はい!」



勇者一行は竜の巣を抜け、まっすぐ魔王城へと向かった

753: 2009/04/19(日) 14:03:07.15 ID:hxLfRu520


馬「ブルル」

傭兵「今日はこれ以上進むのは無理だな、ここらでキャンプにしよう」

勇者「そうですね。少女、サキュバスさん、今日はここでキャンプを取るんで準備を」

少女「わかりましたー」

サキュバス「了解~」



パチパチパチ・・・

勇者「・・・」

少女「ここら辺は本当に何もないんですね」

傭兵「まぁ、魔王城への通り道だからな」

サキュバス「殺風景もいい所ねぇ・・・」

勇者「・・・」

754: 2009/04/19(日) 14:04:24.62 ID:hxLfRu520

少女「勇者様?どうかしたんですか?」

傭兵「なんだ、何か悩みか?」

サキュバス「あの時、なにかあったの?」

勇者「いえ・・ただ、ちょっと不安になってきまして」

傭兵「魔王との話し合いがか?」

勇者「はい・・もし、鼻っから話し合いが通用しない相手だったら・・・て考えたら」

サキュバス「戦わなきゃいけないよね」

少女「サキュバスさん」

サキュバス「だって、そうなったら戦うしかないでしょ?それとも黙ってなぶられるって言うの?」

傭兵「まぁ平和を望んでいる魔物に沢山会ってきたが・・・魔王もそれを望んでるかどうかはわからんよな」

少女「そんな、私のお父様は真の世界平和を願っているのは魔王様だって・・・」

サキュバス「魔王の望む真の世界平和って・・・結局世界支配なんじゃないの?」

756: 2009/04/19(日) 14:06:28.06 ID:hxLfRu520
勇者「もし、戦いになったら僕は魔王に勝てるんでしょうか・・・旅してる間にも襲ってくるモンスターと戦って経験は積みましたけど・・・」

傭兵「まぁ、今更そんな事悩むだけ無駄だ、勇者。」

勇者「え?」

傭兵「ここまで来たら、もうお前の信じている事をやるしかないんだからな」

少女「傭兵さん・・・」

サキュバス「さすが傭兵さんっ」

傭兵「魔王城まで到着するのにまだ数日かかる、その間だが俺が稽古つけてやるよ。こい」

勇者「あ・・・はいっ!」


少女「傭兵さんに会えてよかったです・・・」

サキュバス「ねえ、少女!・・・私って傭兵さんとどういう関係だったの?」

少女「え?」ドキッ

サキュバス「折角だから教えてよ、私な~んにも思い出せないからさぁ」

少女「え・・えーとーー・・・」

758: 2009/04/19(日) 14:08:41.17 ID:hxLfRu520
勇者「傭兵さん、ありがとうございます。傭兵さんがいなかったら僕はここまで来れませんでした」

傭兵「おいおい、まだ礼を言うんじゃねぇよ」

勇者「え?」

傭兵「お前の目標を達成した時が、俺の仕事の終わる時だ」

傭兵「仕事はちゃんと完了してから、礼を言ってくれ。・・・な」

勇者「は・・・はいっ!」

傭兵「よし、じゃあ早速稽古始めんぞ!剣を持て!」

勇者「はい!宜しくお願いします!」

761: 2009/04/19(日) 14:12:31.26 ID:hxLfRu520
魔王城

側近「魔王様、勇者達が竜の巣を抜け、こちらへ向かっているとの情報が入りました!」

魔王「ほう、すぐそこにいるのか・・・ドラゴンを倒すとは中々やるな」

側近「そ、それが・・・勇者一行はドラゴンを倒さず竜の巣を通ったらしいのです」

魔王「繁殖時期で凶暴化しているドラゴンを倒さずにか?」

側近「はい、全く訳がわかりません」

魔王「・・そうか、わかった。下がれ」

側近「はっ」

魔王「勇者・・・早くお前に会いたくなったぞ。ふふふ・・・」


785: 2009/04/19(日) 15:49:28.81 ID:hxLfRu520
翌朝  馬車内

傭兵「・・・んお・・朝か・・・いつの間に寝て・・・」

サキュバス「・・・おはようございます」

何故か傭兵の横にサキュバスがいた

しかも素っ裸で

傭兵「うお!?な、なんだ?・・・って俺も裸じゃねぇか!」

サキュバス「そんなに恥ずかしがらないで下さいよ・・私達、恋人同士でしょ?」

傭兵「こ、恋人同士!?」

788: 2009/04/19(日) 15:51:21.59 ID:hxLfRu520
勇者「よく寝たぁ~・・・」

勇者がキャンプから出てくる

少女は既に起きており、朝食の準備に取り掛かっていた

少女「あ、おはようございます。昨日はお疲れ様でした」

勇者「おはよう、やっぱ傭兵さんはプロだよ。武器の扱い方が上手くて・・・」


傭兵「コラ、少女!!」

傭兵が下着一丁で馬車から飛び出してきた

789: 2009/04/19(日) 15:53:53.88 ID:hxLfRu520
少女「おはようございます」

勇者「どうしたんですか、パンツ一丁で?」

傭兵「お前、あの姉ちゃんになんて言ったんだ?」

少女「うっ。そ、それは・・・」

サキュバス「アタシと傭兵さんは旅先で運命的な出会い方をして婚約を誓った仲・・・」

サキュバスも馬車から出てくる

傭兵「こ、婚約?」

少女「(すみません、昨日何度もしつこく聞かれちゃってついデタラメを・・・)」

790: 2009/04/19(日) 15:56:07.32 ID:hxLfRu520
サキュバス「そんなに恥ずかしがらなくても・・・ねえ?」

勇者「あー・・・そうですね」

傭兵「勇者・・・」

少女「(まぁまぁ傭兵さん、記憶が戻るまで我慢して下さい)」

馬「ブヒヒ」

傭兵「お、お前ら人事だと思って・・・」

サキュバス「少女、私も支度手伝うわ~」

少女「は、はい。お願いします」


勇者「・・・自分の事を何も知らないで生きてくってのはとても怖いと思うんですよ・・・」

傭兵「・・・・・・・・わかったよ」

791: 2009/04/19(日) 15:59:15.18 ID:hxLfRu520
サキュバス「はい、傭兵さん。アーン・・・」

傭兵「ん」モグモグ

少女「(ノロケ全開ですね)」

勇者「(元々傭兵さんに気があったんじゃないかな)」

傭兵「・・・なに見てるんだよ」

勇者「え?いやいや、幸せそうだな~って思いまして」

少女「お似合いですよ、二人とも」

サキュバス「あら、当然よぉ・・・うふふっ」

傭兵「おいお前r
サキュバス「はいア~ン」

傭兵「むぐ」

勇者「w」

少女「w」

傭兵「モグ・・・勇者、後でみっちりしごいてやるからな」

勇者「ええ!」

少女「とんだ災難ですね。・・・ふふ」

792: 2009/04/19(日) 15:59:27.95 ID:hkDp+DTa0
ブヒヒwwwwwwwww

794: 2009/04/19(日) 16:05:09.89 ID:hxLfRu520

――勇者達が竜の巣を抜けて二日が経過した

変わる事の無い風景を見ながらの移動は肉体的にも精神的にも負担がかかった

しかし、勇者一行は遂に魔王城を目視出来る位置までたどり着いた


ヒュオオオオォォ・・・・

勇者「あれが・・・魔王城か」

少女「勇者様、遂にここまで来ましたね」

傭兵「さて、魔物達は魔王との面会を許してくれるかねぇ?」

サキュバス「うう、なんか興奮してきた~・・・」

勇者「こちら側に戦闘の意思はない事を伝えるには・・・やはり、アレしかないでしょうね」

少女「アレ・・・?」

795: 2009/04/19(日) 16:09:08.24 ID:hxLfRu520
魔王城バルコニー

魔王「・・・おお、あれは」

魔王も勇者一行も確認した

魔王「まっすぐこちらに向かっているな・・・」





ザッザッザッザ・・・

少女「勇者様、本当に大丈夫でしょうか?」

勇者「大丈夫だよ。信じてもらうにはこれしか方法がない」

傭兵「まぁ、万が一があったら俺が命張って守ってやるからよ」

サキュバス「・・・(魔王城か・・・なんか・・・初めて来た感じがしない・・・前にも見たような)」

797: 2009/04/19(日) 16:15:28.31 ID:hxLfRu520
魔王城 城門

門番A「止まれ!何者だ!!」

勇者「・・・僕は勇者です!魔王に会いに来ました!!」

門番B「勇者だと!?遂に来たか!!!」

ドラゴンゾンビ「グオオオォッ!!」

少女「ま、待って下さい!私達は争いに来たのではありません!」

門番A「なにぃ?」


勇者「見ての通り、僕達は丸腰です!どうか、魔王に会わせて頂きたい!」

門番A「丸腰だと?」

門番B「騙されんな!相手は勇者だぞ!」

799: 2009/04/19(日) 16:19:17.35 ID:hxLfRu520
魔王城 謁見の間

側近「魔王様!遂に勇者が来ました!」

魔王「そうか・・・来たか」

側近「勇者共は魔王様を倒しに来たのではなく、話し合いに来たなどと言っているようです」

魔王「! 私に話か」

側近「ええ、それも丸腰で。この魔王城を前に・・・」

魔王「丸腰だと・・・そこまでの覚悟か、勇者」

魔王が立ち上がる

側近「魔王様?」

803: 2009/04/19(日) 16:24:16.63 ID:hxLfRu520
城門

傭兵「俺達は本当に戦う気はないって言ってんだよ!」

門番A「騙されるか!それ以上近寄るな!」

サキュバス「こんだけ言ってんだから、少しは聞く耳持ちなさいよ!バカ!!」

門番B「なんだと貴様ぁ!」

門番Bがサキュバスに石を投げつける

ゴッ

サキュバス「うっ!」

少女「サキュバスさん!」

傭兵「てめぇら・・・」

勇者「止めて下さい!本当に戦いに来たんじゃないんです!」


「待て、お前達」

門番A「!!!・・そ、その声は!」

門番B「ま、魔王様!!!」

勇者「!」

808: 2009/04/19(日) 16:28:25.75 ID:hxLfRu520
魔王「よく来たな、勇者。遠路遥々ご苦労だった」

勇者「(この人が・・・魔王)」

少女「(始めてみた・・・)」

傭兵「(思ってたより悪そうな顔してねぇな・・・)」

サキュバス「魔王?・・・!」

魔王「部下が乱暴な事をしてすまなかったな。さ、入ってくれ」


魔王は勇者達を城に招きいれる

814: 2009/04/19(日) 16:32:46.53 ID:hxLfRu520
魔王城通路

モンスター「グルル・・・」

勇者「・・・」

少女「・・・」

モンスター「勇者だ・・・勇者が来た・・・」ヒソヒソ

傭兵「・・・。おい、姉ちゃん大丈夫か?」

サキュバス「え・・ええ」

サキュバスは先程の投石と魔王を見た時の衝撃から記憶を取り戻しつつあった

魔王「お前達の噂は聞いている。中々珍しい旅をしてきたみたいだな」

勇者「はい、まぁ・・・」

817: 2009/04/19(日) 16:48:33.16 ID:hxLfRu520

会議室

魔王「適当に掛けてくれ」

勇者「はい」

少女「失礼します」

傭兵「(モンスターにも会議室なんて用意してんだな・・・)」

サキュバス「(そうだ・・・思い出した、私はあの時街で・・・)」

少女「サキュバスさん、大丈夫ですか?」

サキュバス「え・・ええ、大丈夫よ。ありがとう」

819: 2009/04/19(日) 16:50:29.48 ID:hxLfRu520
魔王「さて、側近から聞いたが私に話があるそうだな?」

勇者「はい」

魔王「聞かせてくれるか」

勇者「・・・僕は仲間達と旅をしていく内に、魔物と人が互いに支えあって生きていけるという可能性に気づきました」

魔王「ほう、魔物と人間の共存か」

勇者「夢物語のような話ですが、実際にそれを実現している人達もいました」

魔王「・・・本当か?」

勇者「はい、その村には人間と魔物の戦争を嫌う者達が集まっていました。ヒトと魔物の差別もなく、皆協力しながら幸せそうに仲良く生活していました」

魔王「フム・・・にわかには信じがたいな」

勇者「信じられなければ、僕の心を見て下さい。竜の巣にいたドラゴンさんも同じ事をして僕達を信じてくれました」

820: 2009/04/19(日) 16:51:24.34 ID:hxLfRu520
魔王「フ、魔物に「さん」づけか・・・とことん変わった勇者だな、お前は」

魔王は勇者の頭に手をやる

傭兵「おい、何をする気だ?」

魔王「警戒しないでくれ、彼の心を読むだけだ」

少女「・・・傭兵さん、大丈夫ですよ」

傭兵「・・・」


魔王「では、行くぞ」

勇者「はい」

魔王「・・・はっ!」

826: 2009/04/19(日) 17:14:48.73 ID:hxLfRu520

心の空間


勇者「・・・」

「ふむ、確かに・・・これは凄いな」

「本当ですねぇ。私達の時代から既に実現していたのですね」

勇者「!?」

確かに声が二つ聞こえた

元勇者「確かに、見させてもらったぞ」

元魔王「こんな世界が実現したら、本当に素晴らしいですよね」


そこにいたのは合体前の勇者と魔王であった

勇者「これは・・・?」

元勇者「俺達が一つになったのが、今の魔王だ」

元魔王「初めまして、前の魔王です」

勇者「どういう事なんですか?」

827: 2009/04/19(日) 17:15:41.30 ID:hxLfRu520
・・・・・

勇者「・・・時代はそうやって繰り返されていたのですか」

元勇者「ああ、だがこれから新たな歴史が誕生する可能性が出来た訳だ」

元魔王「私達、魔族も本音では戦争なんて望んでないんですよ。外見はああですけど」

元勇者「人間と魔物の戦争の引き金は一人の権力に溺れた人間の仕業だった」

勇者「やはり、人間が発端だったんですか・・・」

元魔王「その権力者達が絶えない限り、魔物と人間の共存は有り得ないでしょうね」

元勇者「かといって、いきなり魔物と仲良くしましょうと言って仲良く出来る程人間も強くない」

勇者「・・・」

元魔王「ん~・・・地道に活動しても、権力者が軍隊を動かせばすぐ滅茶苦茶にされますからねぇ・・・」

勇者「・・・なんとかして、この世界に生きる人達にこの光景を見せる事が出来たらいいのですが・・・」

830: 2009/04/19(日) 17:29:04.83 ID:hxLfRu520

元勇者「・・・!」

元魔王「あ・・・!」

勇者「?」

元勇者「出来るぞ、勇者。世界の皆にこの光景を見せる事が」

勇者「ほ、本当ですか?」

元魔王「ええ、なんでこんな簡単な事に気づかなかったのか・・・今の魔王が復活した時やったようにすればよかったんですよ」

勇者「???」

元勇者「今の魔王が誕生してすぐに俺達は世界中の人間の頭にテレパシーのようなモノを送ったんだ。お前は生まれてないから知らないだろうが」

元魔王「わっはっは、魔王再臨~・・・ってね」

勇者「・・・じゃあ」

元勇者「ああ、そのテレパシーを使えばこの世界に生きる者達全員に共存が可能な事を伝えられるという訳だ」

元魔王「いやぁ、ずっと城にいると駄目ですねぇ。考える事も面倒になってしまいますよ」

831: 2009/04/19(日) 17:30:56.20 ID:hxLfRu520
元勇者「今の世界でも共存は望んでなくとも、戦争に疲れた魔物は人間も多いはずだ。これがきっかけになれば・・・面白い事になるかもしれん」

勇者「早速やりましょう!」

元魔王「ええ、ついでに彼女の事もテレパシーで流しましょう」

勇者「彼女?」

元勇者「ああ・・・お前の彼女の身体にな、別の新しい魂が宿っているんだ。その意味がわかるか?」

勇者「え・・・ホントですか?」

元魔王「これもまた人間と魔族が共存出来るという証拠になります。可愛い顔してやりますねぇ」ツンツン

勇者「・・僕と少女に・・・子供が・・・」

元勇者「喜ぶのは後だ、早速やるぞ!」

元魔王「私達は全生物の頭脳にリンクさせる準備をしますので、貴方はここで待ってて下さい」

勇者「ここで待ってる・・・?」

元勇者「リンクの準備が整ったら、お前の本音をここで叫べ。全生物に聞かせてやれ、お前の本音を」

840: 2009/04/19(日) 17:51:17.97 ID:mQ+ZzzzbO
ラスボスは多分バンパイア

855: 2009/04/19(日) 18:24:50.26 ID:hxLfRu520
会議室

魔王「・・・ふむ」

少女「!」

傭兵「勇者、大丈夫か?」

勇者「・・・・・・・」

少女「勇者様!?」

サキュバス「勇者!」

傭兵「おい、何をしやがった?」

魔王「落ち着け、奴はまだ心の中にいる」

少女「・・・心の中に?」

魔王「奴にしか出来ない仕事があるんだ。これからな」

サキュバス「そ、それは一体なんなのですか?」

傭兵「?(口調が・・・)」

魔王「フ・・・今に解る。お前達は黙って見ていろ」

859: 2009/04/19(日) 18:27:13.99 ID:hxLfRu520
心の空間

勇者「・・・僕の本音か」

勇者「ここで本音を言って、何人の人や魔物が理解をしてくれるだろう・・・」

勇者「・・・でも、傭兵さんが言ってくれてたように、ここまで来たらやるしかないんだ。たとえ、僕の言葉が伝わらなくても」


魔王の声「勇者よ、覚悟はいいか?」

勇者「・・・はいっ!」


勇者「・・・世界に生きる皆さんへ・・・僕は勇者です」

861: 2009/04/19(日) 18:29:21.62 ID:hxLfRu520
勇者の故郷

父「な、なんだこの声は?」

母「息子の声ですよ!!」

勇者『突然のことに皆さん、戸惑われているかと思いますが、是非聞いて見てほしいものがあります』



酒場

店主「この声は確か・・・・」





村娘「あの時の勇者とかいう・・・」




草原

トロール「グオ」

863: 2009/04/19(日) 18:32:17.60 ID:hxLfRu520
勇者『今から皆さんにお見せする光景は、僕が旅をして実際に見てきたものです』

世界に生きる全ての生物の頭の中に、勇者が見てきた場面が次々と再生される




市民「おい、これって・・・」

市民「モンスターと人が暮らしてる・・・?」

市民「嘘みたいだ・・・それに勇者と旅してる女・・・あれは吸血鬼なんだろ?」


モンスター村

人狼「フ、あいつら無事魔王の元へ行けたか・・・」

エルフ「これはおめでたい、あの少女に新たな命が・・・」

オバサン「あたしはあの子達ならやってくれると思ってたよ」

866: 2009/04/19(日) 18:35:46.03 ID:hxLfRu520
吸血鬼の館

父「な、なにぃぃぃぃ!!??」

黒服「だ、旦那様。落ち着いて下さい」

父「これが落ち着いていられるか!!愛娘に子供が出来たんだぞ!つまり・・・私はお爺ちゃんになるという事だ・・・むふははははは!!!」

黒服「お、おめでとうございます」

勇者『本来、人間と魔物は判り合えるんです。それなのに、権力を求める者達は自ら王と名乗り、世界を支配するのに生涯となる魔物に攻撃を加えているのです。今も!』

勇者『数人の権力者によって世は乱され、操られ、傷つかなくてもいい筈の人や魔物が被害に遭っているんです!』

873: 2009/04/19(日) 18:41:31.21 ID:hxLfRu520
勇者『・・・今、僕は魔王城にいます。魔王さんに協力してもらい、皆さんへ言葉と映像を送ってもらっています』

勇者『中には魔王に操られてるだけだ、と思う方もいるでしょう。しかし、僕は魔王さんと心で会話をしました。魔王さんも、その部下達も本当はこんな争いを望んでいません。出来る事なら共存の道を望んでいます』

勇者『僕達、人間は臆病者です。彼らの姿を見て警戒してしまいます。しかし、姿だけなんです。中身は僕達人間と変わりません!』

勇者『嫌う前に、逃げる前に、一度心を開いて接してみて下さい。きっと皆さんが思っているのと違う顔が見れる筈です!』

勇者『忘れないで下さい。僕らと魔王さんは共存の道を望んでいます。権力者達の言葉におドラさえr図、皆さん自身の目で一度確認してみて下さい』


勇者『・・・長くなりましたが、これが僕の本音です。共存の道は皆さんの手で作り上げなければなりません、それを忘れないで下さい』

勇者『それでは・・・世界に、平和を』

879: 2009/04/19(日) 18:44:09.78 ID:hxLfRu520
会議室

勇者「・・・・はっ」

少女「勇者様!」

傭兵「よぉ、お疲れ」

サキュバス「見直したわ」

勇者「みんな・・・ありがとう」

少女「私の身体、新しい命が宿っているんですね・・・」

勇者「うん、僕達の子供だ」

魔王「勇者、ご苦労だったな」

勇者「魔王さん」

886: 2009/04/19(日) 18:47:58.36 ID:hxLfRu520
勇者「僕の言葉は、本当の意味で世界に届いたでしょうか・・・」

魔王「フ、自信を持て。勇者・・・外を見てみろ」

勇者「え?・・・あ」

外を見ると、魔王城内の魔物と周辺にいた魔物が魔王城を取り囲んで何かを叫んでいた

魔王「少なくとも、我ら魔族は全員お前に賛同したという事だ」

勇者「そうですか・・・よかったです」


魔王「後は・・・人間次第だがな」

勇者「はい・・・」

889: 2009/04/19(日) 18:53:33.27 ID:hxLfRu520
勇者の演説(?)後、人間達の間でも変化が起こってきた

魔物に対する偏見が少しではあるが、無くなりつつあった

権力者が支配する土地は相変わらずだが、城に勤める者や城下町に住む人間達の心に影響を与えたのは間違いない


事実この演説の数年後、城で内乱が起こり次々と権力者は国を追われたのである

主を失った国は信頼出来る魔物と共に生活を始め、徐々にだが繁栄して行くのであった・・・

891: 2009/04/19(日) 18:58:00.82 ID:hxLfRu520
――数年後


女「・・・こうして人間と魔物の戦争は事実上なくなり、魔物と人間が一緒に暮らせる新しい時代が来ましたと、さ・・・おしまい」

子供「スー・・・スー・・・」

女「あら、寝ちゃったの・・・」

ガチャ

爺「ワシの可愛い孫はど~こだ~」

女「お父さん、今寝てるから静かにしてっ」

爺「おお、悪い悪い・・・いやぁ、可愛い寝顔だなぁ」

女「さて、私も寝るから。お父さん、部屋に戻って」

爺「一緒に寝ちゃ駄目かの?」

女「何言ってるの、この子がお父さんの寝返りで潰されたら大変でしょうが」

893: 2009/04/19(日) 19:00:24.07 ID:hxLfRu520
爺「そういや、パパはどうした?」

女「パパは、昔旅した人達に会いに行ってるの」

爺「お前は行かないのか?可愛い孫はワシが見てやるのに」

女「それが心配だから行かなかったの」

爺「なんじゃい、つまらん・・・」




酒場

カランカラーン

傭兵「おう!勇者、久しぶりだな!」

勇者「久しぶりです」

サキュバス「数年しかあってないのに、随分変わっちゃったね」

勇者「そ、そうですか?」

896: 2009/04/19(日) 19:03:12.86 ID:hxLfRu520
店主「ほら、いつもの」

勇者「すみません、いただきます」

傭兵「少女・・・いや、女は元気でやってるか?」

勇者「はい、今は子供の面倒見てます」

サキュバス「相変わらず仲良さそうねぇ」

勇者「はは・・・傭兵さんとサキュバスさんこそ」

傭兵「あ?コイツが勝手について来たんだよ。好きでいるワケじゃねぇ」

サキュバス「な?アンタ一人だといっつも突っ走るから助けてやってるんでしょうが!ありがたく思いなさいよ!」

勇者「ははは・・・」

900: 2009/04/19(日) 19:06:25.04 ID:hxLfRu520
エルフ娘「はい、おつまみでーす」

勇者「あ、ありがとう」

傭兵「おう、新しい子入ったんだな」

店主「ああ、可愛くて礼儀正しくて、店の人気者だよ」

サキュバス「まさか本当に人間と魔物が共存出来る世界が来るなんてねぇ」

傭兵「これも全部、お前のお陰だ。勇者」

勇者「いえいえ!皆さんの力があってこそ、出来た事です・・・皆さんがいなかったら僕はきっと、ただの勇者で終わってたと思います」

サキュバス「はぁ~、歴史を変えた偉人なんだから、もっと堂々としなさいよ」

勇者「す、すいません」

傭兵「まぁ、そこがお前のいい所なんだがな・・・それより、まだ来ないのか?」

勇者「?」

サキュバス「んー、抜け出すのに時間がかかるとか行ってたから・・・」

勇者「誰か来るんですか?」

901: 2009/04/19(日) 19:07:19.76 ID:dR0uCNkL0
馬「ブヒヒw」

905: 2009/04/19(日) 19:08:10.16 ID:hxLfRu520
傭兵「ああ、お忍びでな」

勇者「お忍び・・・?」

カランカラーン

エルフ娘「いらっしゃいませ~!」

「・・・」

傭兵「お、来た!おい、こっちだ!」

サキュバス「お久しぶりです」

勇者「あ・・・お忍びって・・・貴方だったんですか・・・!魔王さん!」

魔王「久しぶりだな。だが今日はお忍びだ。あまり大きい声を出すな」

906: 2009/04/19(日) 19:10:23.70 ID:W/MkPbs60
トロール来るかと思ってたオレは異端

907: 2009/04/19(日) 19:11:16.18 ID:hxLfRu520
エルフ娘「はい、どうぞー」

魔王「ああ」

勇者「よくお城を抜け出せましたね」

魔王「苦労したがな・・・くっくっく・・・」

傭兵「女が来てないのが残念だが・・・メンツも揃ったし、乾杯しようぜ」

サキュバス「そうだね」

魔王「うむ・・・では勇者頼む」


勇者「はい・・・では行きます」



勇者「新しい世界に・・・乾杯!」

魔王・傭兵・サキュバス「乾杯!!!」

  キンッ





終わり

908: 2009/04/19(日) 19:12:11.96 ID:Fmjie2lk0
乙!

909: 2009/04/19(日) 19:12:12.13 ID:hxLfRu520
途中から即興だったが、ここまで読んでくれて感謝。ありがとう

910: 2009/04/19(日) 19:12:19.10 ID:VxoNDJu+0
超おつwwww

913: 2009/04/19(日) 19:12:28.81 ID:PXA5qvSA0
乙面白かった

引用元: 勇者「魔王、お前が死んで3年か」