1: 2009/05/24(日) 01:01:02.87 ID:0ReHhxnt0
側近「働かずに召し上がる食事は、そんなに美味なものですか?」

魔王「何を言う。我が城のシェフの腕は確かだぞ、不味いわけがないだろう」

側近「はあ…」

魔王「……何だ」

側近「いえいえ別にー」

3: 2009/05/24(日) 01:05:39.01 ID:0ReHhxnt0
魔王「…………明日から」

側近「はい?」

魔王「明日から本気を出す」

側近「……(チッ)」

魔王「……(ビクッ)」

4: 2009/05/24(日) 01:10:29.36 ID:0ReHhxnt0
魔王「というわけで、見ろ。本気を出してみた」

側近「うわあい綺麗に手入れされていますねえ」

魔王「ふっ……薔薇園の剪定など私にとっては朝飯前…ってどこに行く側近!」

側近「俺は仕事があるんです。下らない用事で呼びつけないでください」

魔王「…………」

5: 2009/05/24(日) 01:13:32.79 ID:0ReHhxnt0
側近「で、本日は…………」

魔王「うむ。部屋の掃除だ」

側近「……」

魔王「このように手が折れるものだったのだな。メイド達の苦労がよく分かった…って、どうした側k」

側近「いい加減にしろこの駄目魔王があああ!!」

魔王「?!(ビクッ)」

6: 2009/05/24(日) 01:17:21.44 ID:0ReHhxnt0
側近「あんたの仕事は魔王だろうが!どこの世界に薔薇愛でて爽やかに汗流して掃除する魔王がいる?!」

魔王「ここに」

側近「うるせえ黙れ」

魔王「魔王に何だその言い種は。ちゃんと敬え」

側近「ちゃんと魔王らしい仕事をすればな」

7: 2009/05/24(日) 01:23:35.29 ID:0ReHhxnt0
側近「ったく……先代様は人間の村を焼いたり国を乗っ取ったり、色々手広くこなしておられたのに……跡継ぎのあんたがこれじゃあな」

魔王「父上はやり手だったからな」

側近「あんたも先代様を見習って、しっかり魔王を勤め上げろよ!」

魔王「嫌だ。手広くやり過ぎたせいで、父上は人間に討たれたのだぞ?」

側近「だからって何もしないのもどうかと思うがな」

魔王「む……」

8: 2009/05/24(日) 01:27:34.42 ID:0ReHhxnt0
側近「いいか魔王城警備員。あんたがそんなんじゃ、下に示しがつかない」

魔王「警備員……」

側近「今はまだ安心だが、その内魔王の座を狙う奴だって出てくるかも知れん。俺とか」

魔王「くっくっく……側近は面白いことを言うな」

側近(若干マジなんだがなあ……)

9: 2009/05/24(日) 01:28:16.00 ID:pKbUifro0
まあ頑張れよ

10: 2009/05/24(日) 01:31:43.65 ID:0ReHhxnt0
側近「……三日やる」

魔王「?」

側近「何か、魔王として名が通るようなデカイ仕事を考えろ。実現可能な範疇でな」

魔王「……私がか?というか、そもそも何でお前に命令され」

側近「出来なかった場合、ご自慢の薔薇園は焦土と化す」

魔王「くっ……人質とは卑怯な!!」

11: 2009/05/24(日) 01:37:17.02 ID:0ReHhxnt0
夜─

魔王「そう言われてもな……」
ペラッ
魔王「外に出るのは面倒だし」
ペラッ
魔王「かといって城で出来ることなどたかが知れている」
ペラッ
魔王「人質さえ取られていなければ、こんな無茶な要求……人質?」
ペラッ
魔王「…………?!」

魔王「これだ!」

12: 2009/05/24(日) 01:43:55.08 ID:0ReHhxnt0
朝─


魔王「早速良い案が浮かんだぞ側近!!」

側近「うわあ」

魔王「何だその目は。夜を徹して策を練った私に、労いの言葉はないのか」

側近「いや、だって早すぎるだろ…信用ならねえって」

魔王「ふっ…その減らず口、いつまで持つかな」

13: 2009/05/24(日) 01:46:04.87 ID:0ReHhxnt0
側近「一応聞いてやるわ。どんな案だよ」

魔王「おお。さる国の王族は特別な力を持っていてな。それが我等魔物には少々厄介故、この際潰してしまおうかと」

側近「そいつらを皆殺しにするだけか?そりゃ、派手だし魔王らしいが」

魔王「まあ最終的にはそのつもりだがな」

側近「?」

15: 2009/05/24(日) 01:50:12.10 ID:0ReHhxnt0
魔王「現在の国王には、まだ幼い一人娘がいるらしい」

側近「おう」

魔王「その姫を攫って来い」

側近「却下!!」

魔王「何故だ?!」

16: 2009/05/24(日) 01:54:19.50 ID:0ReHhxnt0
側近「確かにそれは犯罪だ。だがな!俺は邪な性癖には付き合ってられん!」

魔王「何を勘違いしているかは聞かぬが…姫は人質だ」

側近「…人質?」

魔王「餌とも言うな」

側近「性欲処理じゃ…」

魔王「そのような趣味はない」

20: 2009/05/24(日) 01:58:29.69 ID:0ReHhxnt0

魔王「姫を大々的に攫えば、きっと国軍は取り返そうとやっきになるだろう」

側近「まあ…そうだろうな」

魔王「姫はすぐには殺さず、人間どもをこちらに誘い出す餌とする」

側近「……で、俺たちはそいつらを」

魔王「私の悪名が各地に轟き、国が疲弊した頃を見計らい徹底的に叩き潰す」

側近「おお………」

22: 2009/05/24(日) 02:02:29.22 ID:0ReHhxnt0
魔王「長期戦にはなるが、魔王対人間という図式を作るには良い案だと思うのだが。どうだ?」

側近「…あんたが考えたにしてはまともだな。いや、正直見直したわ」

魔王「ふっ……私は魔王だぞ。見くびるな」

魔王(…『父上の遺した日記にあった計画を丸々拝借した』、などとは言えんな)

24: 2009/05/24(日) 02:08:42.22 ID:0ReHhxnt0
側近「よし!俺はこの計画、乗った!」

魔王「では……姫の件、頼まれてくれるか。」

側近「おう、折角あんたが出した計画だ。頓挫しねえよう、慎重に準備を始めるよ」

魔王「頼んだぞ」

側近「任しとけって!じゃあな!」

25: 2009/05/24(日) 02:14:07.71 ID:0ReHhxnt0
魔王(…誘拐が成功しなければ、そこでこの計画は終わり)

魔王(成功したとしても、城で人間どもが来るのを待つだけでいい)

魔王(あの国の軍がどれほど強大かは知らぬが、姫ばかりにそう力を裂けるはずもない)

魔王(すなわち……たまに来る人間を相手にするだけで、私の名は広まる)

魔王(どうせ側近が誘拐に成功するのも先の話だろう)

魔王(それまでは………警備員も悪くはない)

26: 2009/05/24(日) 02:19:03.65 ID:0ReHhxnt0
次の日─


側近「攫ってきたぞ」

魔王「なん、だと………?」

側近「いやあ、何かあの計画を聞いたら興奮しちまって。昨日の夜に行って来たんだ。早いほうがいいだろ?」

魔王「あ、ああ………」

側近「もう国中大騒ぎだぜ。近日中に軍が送られるって話だ」

魔王(あああああああああ)

28: 2009/05/24(日) 02:24:16.11 ID:0ReHhxnt0
魔王(ま…まあ、あの国からこの城まで、人間の足では一月は掛かる……つまりまだ私には暇が)

側近「いやー、あんたも早速仕事ができて良かったな」

魔王「は?」

側近「は、て。姫の面倒はあんたの仕事だから」

魔王「な、何だと?!」

側近「俺らは色々忙しくなるから、最悪餓死させかねん。計画じゃ、姫を殺しちゃまずいんだろ?」

魔王「ぐ……ぐぐ」

側近「客室に丁重に閉じ込めてるから、適当に飼ってくれ。じゃあまたなー」

魔王「お、おい側近!待て!」

29: 2009/05/24(日) 02:29:15.39 ID:0ReHhxnt0
魔王(側近は本気か…)

魔王(魔王が子守とはな……)

魔王(ああしかし!姫に死なれるとこの先色々と利用できなくなる!)

魔王(私の平和なニートタイムのためだ!少しの苦労は買ってやろうではないか!)

魔王(姫が何だ!人間など、適当に餌をやっていれば死ぬことはないだろう!)

30: 2009/05/24(日) 02:32:30.46 ID:0ReHhxnt0
客室─


ギィッ……

姫「ひ」

魔王「……?」

姫「あ、あ……」

魔王「お前」

姫「うう……」

魔王「姫か?」

姫「うあ……はい…」

32: 2009/05/24(日) 02:36:24.23 ID:0ReHhxnt0
魔王「そうか、姫か」

姫「あ、……あなた、は」

魔王「魔王だ」

姫「まお、う…?!」

魔王「…私が、恐ろしいか」

姫「こ………こわく、なんか、ないです!」

魔王「ふっ…そうか」

姫「ひっ」

35: 2009/05/24(日) 02:40:51.82 ID:0ReHhxnt0
魔王「では後ほど食事を運ばせる」

姫「……?」

魔王「よく食い、よく眠り、よく生きろ」

姫「…??」

魔王「またな」

36: 2009/05/24(日) 02:43:56.73 ID:0ReHhxnt0
ギイッ……


魔王「………」

魔王「あれは影武者か。王族の力が全く感じられん」

魔王「あの様子では、側近は気付いてはいないな」

魔王「……面白いし、気付くまで黙っているか」

37: 2009/05/24(日) 02:47:29.42 ID:0ReHhxnt0
次の日─


魔王「結局側近は気付かぬままか」

魔王「回りの者は多忙にしているが、私は姫の飼育だけ」

魔王「案外楽なものだな。餌を与え生死を確認するのみというのも」

魔王「さてと、姫は生きているかな」

39: 2009/05/24(日) 02:54:23.81 ID:0ReHhxnt0
ギィッ……


姫「ひっぐ……えう」

魔王「?!!」

姫「う…えぐ、あ、う」

魔王「お前…全く食事に手をつけていないではないか!」

姫「ひっ………!」

魔王「あ、ああすまん。そんなに怯えるな、寿命を縮めてしまうだろう」

40: 2009/05/24(日) 02:56:16.46 ID:0ReHhxnt0
魔王「…ほら、食え。口を開けろ」

姫「……(フルフル)」

魔王「くそ……どうすれば」

姫「………」

魔王「そうだ!」

姫「……?」

41: 2009/05/24(日) 02:59:17.07 ID:0ReHhxnt0
魔王「ほら、これならどうだ」

姫「…え」

魔王「わざわざ持ってきてやったのだ。ケーキなら、食えるだろう?」

姫「……」

魔王「食わんのか?子どもなら、甘いものが好きなはずだろう」

42: 2009/05/24(日) 03:01:17.39 ID:0ReHhxnt0
魔王「食ってくれ。お前に食ってもらわねば、私が困る」

姫「………(グー)」

魔王「ほれ」

姫「……(パク)」

魔王「よしよし、もっとあるぞ。沢山食え」

姫「……(コク)」

44: 2009/05/24(日) 03:04:08.75 ID:0ReHhxnt0
魔王「平らげてしまったな。これなら、普通の食事も食えるだろう」

姫「あ、あの」

魔王「何だ」

姫「あ……ううん」

魔王「変な奴だな」

姫「……」

45: 2009/05/24(日) 03:07:49.68 ID:0ReHhxnt0
眠いけどもうちょっと頑張る…


次の日─


魔王「昨夜気付いたのだが、食事だけではまずいな」

姫「…?」

魔王「今日は部屋から出してやる」

姫「え」

魔王「勘違いするな、適度な運動をしないと体に障るだろう」

姫「え、え?」

魔王「ほら、行くぞ」

姫「う、ん」

47: 2009/05/24(日) 03:12:08.57 ID:0ReHhxnt0
魔王「……」

姫「……(キョロキョロ)」

魔王「……お」

姫「……(ビクッ)」

側近「……何をやってるんだあんたは」

魔王「仕事だ」

48: 2009/05/24(日) 03:14:19.11 ID:0ReHhxnt0
側近「俺には仲良く散歩してるようにしか見えないんだがなあ」

魔王「運動をさせなければ、弱ってしまうからな」

側近「で、手を繋ぐ必要は?」

魔王「逃げられると面倒だからだ」

側近(………まさか、こいつ本当に、変態…)

姫「………(コソコソ)」

50: 2009/05/24(日) 03:17:44.49 ID:0ReHhxnt0
魔王「さて、運動は終わりだ」

姫「……うん」

魔王「ちゃんと夕食を取ること。分かったな」

姫「……(コクコク)」

魔王「よし。では、また明日」

姫「あ、あの!」

魔王「何だ」

姫「ほ、ほんとに……まおう、なの?」

魔王「…?何を今更」

51: 2009/05/24(日) 03:20:15.29 ID:0ReHhxnt0
次の日─


魔王「それでな、側近が馬鹿なことに……」

姫「うん」

魔王「私は止めたのだが、あいつは致命的に頭が」

姫「うん」

ギィッ

側近「…何やってんだあんた」

魔王「む」

52: 2009/05/24(日) 03:25:11.90 ID:0ReHhxnt0
魔王「見ての通り、仕事だ」

側近「俺には仲良くお茶してるようにしか見えんが」

魔王「適度に間食を与えれば、より一層健康が保てるだろう」

側近「なんか釈然としねえ……」

魔王「こいつは昨日の夕食を残していた。全く…ちゃんと見張っておかねばな」

姫「…」

74: 2009/05/24(日) 10:10:12.34 ID:DYU3O7cDO

次の日─


側近「で、とうとうあんたの部屋で飼うことに……」

魔王「一々客間に行くのが面倒でな」

側近「じゃあ膝に乗せる意味は」

魔王「逃げないよう…こら、菓子をこぼすな」

姫「……ごめんなさい」

76: 2009/05/24(日) 10:15:41.24 ID:DYU3O7cDO
魔王(案外楽なものだな)

姫「……♪」

魔王(姫も健康そのものだし、人間の動きの知らせも入ってこない)

姫「……?」

魔王(一応仕事をしているから側近も文句を言わんし、これは良い)

姫「どうか……したの?」

魔王「いや。お前、ずっと元気でいろよ」

姫「う、うん!」

78: 2009/05/24(日) 10:24:24.63 ID:DYU3O7cDO
次の日―


魔王「側近!大変だ!」

側近「うわ?!な、なんだどうした」

魔王「姫が……姫が!」

側近「ま、まさか死んだのか?!」

魔王「熱を…………出した」

側近「はあ?」

80: 2009/05/24(日) 10:29:24.01 ID:DYU3O7cDO
魔王「なんだその反応は?!」

側近「…そんな取り乱すことか?」

魔王「私の飼育は完璧だったのだぞ!それが……それが!!」

側近「知らん知らん。あんたの魔法でぱっぱと治せばいいだろ」

魔王「…人間の治療など、やった試しがない」

側近「ああ……なるほど」

83: 2009/05/24(日) 10:33:29.63 ID:DYU3O7cDO
魔王「このままでは死んでしまう。どうすれば……」

側近「どうせ風邪か何かだろ。そんな悲観するなよ。人間用の薬とか探して来てやるから」

魔王「……すまん」

側近「いいってことよ。あんたは姫の看病を頼んだ」

魔王「勿論だ」

86: 2009/05/24(日) 10:39:35.74 ID:DYU3O7cDO
魔王「調子はどうだ?」

姫「う……ん」

魔王「果物は欲しいか?」

姫「……(フルフル)」

魔王「………そうか」

姫「……」

89: 2009/05/24(日) 10:44:47.82 ID:0ReHhxnt0

魔王「……」

姫「……(ケホケホ)」

魔王「……」

姫「……」

魔王「……」

姫「……(スゥ)」

90: 2009/05/24(日) 10:49:22.04 ID:0ReHhxnt0
魔王(人間とは…脆いものだな)

魔王(お前がそんな調子では、私は暇で仕方がない……)

魔王(死ぬなよ)

魔王(死なないでくれ)

魔王(頼む……)

92: 2009/05/24(日) 10:54:52.94 ID:0ReHhxnt0
次の日朝─


姫「……ふぁ」

魔王「……(スゥスゥ)」

姫「………あ」

魔王「……」

姫「……えへへ」

93: 2009/05/24(日) 11:00:47.39 ID:0ReHhxnt0
魔王「…う…ん」

姫「あ……」

魔王「なんだ…お前、もう起きていたのか」

姫「うん…お、おはよ」

魔王「お早う。調子はどうだ?」

姫「げんき」

魔王「そうか良かった。しかし油断するなよ、今日一日はまだ寝ておけ」

姫「うん」

96: 2009/05/24(日) 11:04:25.11 ID:0ReHhxnt0
姫「て」

魔王「?」

姫「ずっと、にぎってて、くれたの?」

魔王「ああ。それがどうかしたか?」

姫「ううん。なんでもない」

魔王「変な奴だな」

姫「えへへ……ありがと」

魔王「何故感謝する?」

98: 2009/05/24(日) 11:10:25.53 ID:0ReHhxnt0
魔王「そうだ。一つ聞いておきたいことがある」

姫「なに?」

魔王「お前の名は?」

姫「……ひめ」

魔王「違う。お前の、本当の名は?」

姫「………にせ、ひめ」

魔王「偽姫か。良い名だ」

99: 2009/05/24(日) 11:18:21.63 ID:0ReHhxnt0
偽姫「……しってたの?」

魔王「ああ」

偽姫「………」

魔王「まあ、どうでもいいんだ。人間の反応を見る限り、『姫を攫う』という目的は達成されているのだし」

偽姫「……ここに」

魔王「?」

偽姫「いても、いいの?」

魔王「そうでなければ、私が困る」

101: 2009/05/24(日) 11:24:20.37 ID:0ReHhxnt0
次の日─


魔王「すっかり元気になったな」

偽姫「うん!」

魔王「では、今日は久々に散歩でも」

バンッ!!

側近「大変だ魔王!!」

魔王「何だ騒がしい」

側近「あの国の奴等…姫を見捨てやがった!!」

魔王「……何?」

偽姫「え………」

104: 2009/05/24(日) 11:30:55.79 ID:0ReHhxnt0
側近「…姫の様子は?」

魔王「泣き疲れて眠っている」

側近「そりゃそうだろうな…実の親どころか、国自体に捨てられたんだし」

魔王「……姫は、我等に殺されたと、そう公表されたのだったな」

側近「ああ。一応攻め込む予定らしいが…あまり本気でもなさそうだ」

魔王「………」

105: 2009/05/24(日) 11:35:23.07 ID:0ReHhxnt0
魔王「実はな…あれは影武者だ」

側近「何?!先に言えよ!」

魔王「私も、つい先日知ったばかりだ」

側近「本当かあ…?」

魔王「影武者故、助け出す必要もないのだろう」

側近「つっても同族だろ…そんな簡単に見殺しにしていいのかよ」

魔王「人間とは……厄介な生き物だな」

107: 2009/05/24(日) 11:39:32.05 ID:0ReHhxnt0
ギィッ…


魔王「……目が覚めたか」

偽姫「ひっく……えぐ…」

魔王「ああ、泣くな泣くな」

偽姫「うぐっ…………う、ん」

魔王「よしよし、いい子だ」

110: 2009/05/24(日) 11:42:47.39 ID:0ReHhxnt0
偽姫「あの、ね」

魔王「ああ」

偽姫「ほんとの、おひめさまはね、ちょっとまえにね、なくなったの」

魔王「…ああ」

偽姫「かわりにね、そっくりなわたしが、かわれたの」

魔王「そうか。話してくれて、ありがとう」

111: 2009/05/24(日) 11:47:17.21 ID:0ReHhxnt0
偽姫「でも、もう……どこにも、かえれない」

魔王「国に帰りたければ…返してやるぞ」

偽姫「ううん。あんなとこ、もういや…」

魔王「…そうか」

偽姫「ここが、いい」

魔王「……」

偽姫「まおうと、いっしょが……いい」

113: 2009/05/24(日) 11:51:11.85 ID:0ReHhxnt0
魔王「……私は、魔王だぞ」

偽姫「しってるよ」

魔王「恐ろしくはないのか?」

偽姫「やさしいから、すき」

魔王「お前は本当に…変な奴だな」

偽姫「えへへ……」

158: 2009/05/24(日) 17:46:02.31 ID:0ReHhxnt0

魔王「眠ったか」

偽姫「……(スゥスゥ)」

魔王「もうお前に、人質としての価値は無くなった」

魔王「帰る家も、帰りを待つ家族も、お前にはない」

魔王「………ならば」

159: 2009/05/24(日) 17:49:14.91 ID:0ReHhxnt0
側近の部屋―


魔王「……どうだろう」

側近「ああ」

魔王「分かってくれ。頼む」

側近「…本当、最近あんたは冴えてるな。俺は何の異論もねえよ」

魔王「では」

側近「いいんじゃね?他の魔物も、姫に同情的だしな」

魔王「……感謝する」

162: 2009/05/24(日) 17:51:46.68 ID:0ReHhxnt0
次の日─


魔王「起きたか」

偽姫「うん……」

魔王「それでは、お前の処遇についてだが…」

偽姫「………ぅぐ」

魔王「聞く前に泣くな」

偽姫「ご…ごめんなさい……」

163: 2009/05/24(日) 17:53:13.85 ID:0ReHhxnt0
魔王「悪い話ではない。まあ、聞け」

偽姫「う、うん」

魔王「ここにいたいと、昨夜言ったな」

偽姫「……(コクリ)」

魔王「ならば、お前…魔王になる気はないか」

偽姫「…え」

164: 2009/05/24(日) 17:55:14.73 ID:0ReHhxnt0
ここまで。また書き溜めて夜に来ます


魔王「私には後継者…つまり、子供がいない」

偽姫「……」

魔王「お前さえ良ければ……私の跡継ぎとして、城に迎えてやろう。どうだ?」

偽姫「そ、それ…って」

魔王「魔王の父親は、嫌か?」

偽姫「う………ううん、すき」

魔王「決まりだ。よろしく、娘」

偽姫「よ、よろしく!」

179: 2009/05/24(日) 19:28:52.43 ID:0ReHhxnt0

数日後─


偽姫「……(キョロキョロ)」

側近「お、偽姫ちゃん」

偽姫「そっきんさん、おはようございます」

側近「一人でどうしたんだ。魔王は一緒じゃないのか?」

偽姫「さがしてるの。そっきんさん、みなかった?」

側近「ああ…薔薇園じゃねえかな。あいつ他に行くとこねえし」

偽姫「ありがとー」

181: 2009/05/24(日) 19:32:56.08 ID:0ReHhxnt0
メイド「あら。お早うございます、姫様」

偽姫「おはよーございます」

メイド「魔王様はご一緒ではないのですか?」

偽姫「これから、むかえにいくの」

メイド「そうですか。お気をつけて」

偽姫「うん。いってきます!」

183: 2009/05/24(日) 19:35:21.73 ID:0ReHhxnt0

魔物「よう、姫さん」

偽姫「おはよーございます!」

魔物「今日は珍しく魔王様を連れてねえんだな」

偽姫「まおう、まいごなの」

魔物「そりゃ大変だ。魔王様を見つけたら、オレが捕まえておいてやるよ」

偽物「ありがとう。またねー」

184: 2009/05/24(日) 19:41:58.38 ID:0ReHhxnt0
薔薇園─


偽姫「まおう!」

魔王「む」

偽姫「おはよ!」

魔王「お早う。もう少し寝ていても良かったんだぞ」

偽姫「はやくおきたら、いっぱいあそべるもん」

186: 2009/05/24(日) 19:46:24.34 ID:0ReHhxnt0
偽姫「すごいねー。きれいだねー」

魔王「薔薇か」

偽姫「うん!おせわ、おてつだいしてもいい?」

魔王「では、このジョウロで水をやってくれ」

偽姫「わ、わわ…」

魔王「重いか?やめるか?」

偽姫「がんばる!」

魔王「そうか。頑張れ」

187: 2009/05/24(日) 19:49:32.38 ID:0ReHhxnt0
側近「よう。やっぱここか」

魔王「何か用か?」

側近「いや偽姫ちゃんの様子を見に来ただけだ」

魔王「あの子は向こうで水遣りに燃えている」

側近「へー……(ニヤニヤ)」

魔王「何か言いたそうだな」

側近「いや。あんた、この薔薇園他の誰にも今まで弄らせた事ねえよな」

魔王「あの子は特別だ」

190: 2009/05/24(日) 19:52:36.80 ID:0ReHhxnt0
側近「しかし偽姫ちゃんは人気者だねー。皆、あの子の話で持ちきりだ」

魔王「最近、すっかり魔物にも慣れてしまったしな」

側近「いやー、もうあんたより求心力あるんじゃね?」

魔王「ふっ…当然だ。私の娘だぞ」

側近「あ、今の褒め言葉で捉えるんだ」

191: 2009/05/24(日) 19:54:13.84 ID:ZRtXsAhj0
なんという親バカ

193: 2009/05/24(日) 19:57:04.20 ID:0ReHhxnt0
偽姫「まおう!」

魔王「おお、終わったか」

偽姫「うん!がんばった!」

魔王「よしよし、偉いぞ(ナデナデ)」

側近「偉いねー」

偽姫「えへへ」

197: 2009/05/24(日) 20:01:13.34 ID:0ReHhxnt0
偽姫「わたしね、ここ、だいすき」

魔王「そうか。気に入ってもらえて、良かった」

偽姫「ばらえんも、おしろも、みんなも、まおうも、ぜんぶすき」

魔王「そうかそうか(ナデナデ)」

偽姫「でも、いちばんすきなのは、まおう!」

魔王「ははは、そうか(ナデナデナデナデ)」

側近(うわあ)

202: 2009/05/24(日) 20:06:30.07 ID:0ReHhxnt0
一月後─


魔王「とうとう、この時が来たか」

側近「ああ。遂に昨日軍が出発した」

魔王「……」

側近「俺らの準備は既に万端だ。いつ攻められても」

魔王「いや」

側近「?」

魔王「『攻められる』のではない。我等も、『攻める』」

側近「…ほぉ」

203: 2009/05/24(日) 20:11:36.48 ID:0ReHhxnt0

側近「随分とやる気だな」

魔王「奴等は魔王の娘を虐げた。その報いを、受けねばならん」

側近「じゃあ…」

魔王「軍を潰してから、直にあの国を攻める。明日より、我等も出るぞ」

側近「了解。こりゃ忙しくなるな!」

魔王「ああ……」

206: 2009/05/24(日) 20:19:24.94 ID:0ReHhxnt0


側近「浮かない顔だな。どうした」

魔王「偽姫としばらく会えなくなると思うと…な」

側近「なあに、たかが人間だ。俺らが本気になりゃ数日で片がつくだろ」

魔王「む……それもそうだな」

側近「ま、気楽にやろうぜ、魔王様」

魔王「うむ」

210: 2009/05/24(日) 20:25:34.00 ID:0ReHhxnt0
魔王の部屋─


ギィッ…

魔王「ただいま」

偽姫「おかえりなさい!おはなし、おわったの?」

魔王「ああ……先に、寝ていても良かったのだぞ」

偽姫「だめ!いっしょにねるの!」

魔王「全く…頑固だなお前は」

偽姫「こればっかりはゆずれません!」

212: 2009/05/24(日) 20:28:18.47 ID:0ReHhxnt0
魔王「少し話がある」

偽姫「なあに?」

魔王「明日からしばらく、私は帰らない」

偽姫「………たたかう、の?」

魔王「ああ」

偽姫「……」

213: 2009/05/24(日) 20:32:30.95 ID:0ReHhxnt0
魔王「心配するな。お前を苛めた奴等に、少し灸を据えるだけだ」

偽姫「けがとか……しちゃ、やだよ」

魔王「私は魔王だ。怪我などせん」

偽姫「ちゃんとかえってくる?」

魔王「できるだけ、早く」

偽姫「やくそくだよ」

魔王「ああ。約束だ」

214: 2009/05/24(日) 20:35:42.32 ID:0ReHhxnt0
偽姫「おやすみ、おとーさん」

魔王「お休み、娘」

偽姫「おしごと、がんばってね」

魔王「お前のために、父は頑張るよ」



……────

216: 2009/05/24(日) 20:43:28.38 ID:0ReHhxnt0
───………



魔王「………ふああ」

側近「随分と余裕ですねー、居眠りとは」

魔王「…昨夜も戦略を練っていて、寝不足なのだ。仕方あるまい」

側近「いくら眠くても、敵の軍隊と睨み合う最中で寝ますか」

魔王「構わんだろう。あちらは攻めあぐねているのだから」

218: 2009/05/24(日) 20:48:08.94 ID:0ReHhxnt0
魔王「しかし睨み合って既に数日か」

側近「流石に、これだけの魔物を連れてちゃ人間どもも必要以上にビビリますよ」

魔王「ほぼ全戦力だからな。しかし、あちらも数が多い…」

側近「ところで、いい作戦は思いつきましたか?」

魔王「む……難しいな、こういう事は」

側近「まー、ゆっくりやりましょう。時間はあるんですし」

魔王「………」

246: 2009/05/24(日) 21:39:27.97 ID:0ReHhxnt0

魔王「……おい」

側近「何でしょう、魔王様」

魔王「お前、普通に喋っても良いのだぞ」

側近「俺が魔王様にタメ口きいてちゃ、士気に関わりますからね」

魔王「そうかもしれんが………正直慣れんな」

219: 2009/05/24(日) 20:53:08.75 ID:0ReHhxnt0
側近「まあ、俺もあんたを魔王と認めているんです」

魔王「……」

側近「俺だけじゃない。皆、魔王様を信じて、ここまで来たんです」

魔王「……ありがとう」

側近「ははは、礼は全部終わった後に頼みますよ」

223: 2009/05/24(日) 20:59:02.19 ID:0ReHhxnt0
魔王「そうだ、一応作戦は出来たんだ」

側近「おーおー。どんなのです?」

魔王「幸い、私は見た限りでは人間と区別がつかない」

側近「………はあ」

魔王「というわけで、私一人敵軍に潜り込み、機を見て一暴れ」

側近「却下!!」

魔王「何故だ?!」

227: 2009/05/24(日) 21:05:07.11 ID:0ReHhxnt0
側近「あんたにそんな危ない真似させられるか!」

魔王「私は魔王だぞ、心配はいらぬ」

側近「怪我でもされちゃ俺の株が落ちるんだよ!!第一、他の魔物も認めねえからな!」

魔王「む………過保護だな」

側近「いいから大将は大将らしく、頭だけ使ってくれ。頼むから」

魔王(…思わず素になる程、嫌なのか)

228: 2009/05/24(日) 21:09:15.67 ID:0ReHhxnt0
側近「てめえ!!結局一人で叩き潰しやがって!!!!」

魔王「…上手くいったのだから、良いだろう」

側近「いいから反省しろ!二度とこんな危ない真似するんじゃねえぞ?!!」

魔王「確かに……私にも至らぬ点はあった」

側近「お、珍しく殊勝じゃねえか…」

魔王「油断して、少し服が汚れてしまった。今後の反省点だな」

側近「てぇんめええええええええええ!!!!!」

236: 2009/05/24(日) 21:14:13.72 ID:0ReHhxnt0
一時間ほど休憩&書き溜めタイムに突入します。後は任せた!


魔王「しかし、これであの国までの障害物は取り払われた」

側近「ま……まあ、そうだがよ」

魔王「我等が悲願の成就のためだ、少しの無茶は許せ」

側近「………無茶っつーか…単に頭に血が登ってるだけだろ」

魔王「……」

253: 2009/05/24(日) 22:09:55.68 ID:0ReHhxnt0


側近「焦るのも分かる。あんたが、魔物を傷つけたくない気持ちも分かる」

魔王「……」

側近「だがな、俺たちもあんたに何かあったら、後悔どころじゃあ済まん」

魔王「………ああ」

側近「分かってくれよ。あんたは俺達の王なんだからな」

魔王「王……か」

257: 2009/05/24(日) 22:15:56.59 ID:0ReHhxnt0
側近「まあ、ここまで来たら勝利は目前だ。もうちょっと気楽に行こうぜ、って話だよ」

魔王「うむ」

側近「なあ。全部終わったら、したいこととかあるのか?」

魔王「ふっ……聞いて驚くな」

側近「何だよ勿体ぶって」

魔王「一緒に、歩く」

側近「……」

259: 2009/05/24(日) 22:19:18.22 ID:0ReHhxnt0
魔王「一緒に茶を飲む」

魔王「一緒に食事を取る」

魔王「一緒に薔薇園を眺める」

魔王「一緒に眠る」

264: 2009/05/24(日) 22:24:23.81 ID:0ReHhxnt0
魔王「どうだ」

側近「それはまた……『日常』だな」

魔王「ふっ……素晴らしいだろう」

側近「ああ。早く叶うといいな」

魔王「そのための戦いだ」

266: 2009/05/24(日) 22:30:50.98 ID:0ReHhxnt0
魔物「よお、魔王様」

魔王「おお。調子はどうだ?」

魔物「万全ですよ。とっととオレらも戦いに参加させてくださいよ」

魔王「まだ時期ではない。焦らず機を待て」

魔物「魔王様にゃ言われたくないね」

魔王「む……」

267: 2009/05/24(日) 22:36:26.26 ID:0ReHhxnt0
魔物「しかし魔王様も立派になったもんだね」

魔王「そうか?」

魔物「オレはあんたがちっちぇえ頃から知ってるからな。よく分かるよ」

魔王「ああ………」

魔物「先代様も、今のあんたを見れば喜んでくれるはずさ」

魔王「…そうだと、良いのだがな」

269: 2009/05/24(日) 22:42:14.51 ID:0ReHhxnt0
某国王都付近─


魔王「ふむ…静かだな」

側近「一般の住民は移住したって話だ」

魔王「では、中にいるのは」

側近「兵士と……国王だよ」

魔王「国王か………」

270: 2009/05/24(日) 22:46:38.69 ID:0ReHhxnt0
魔王「……っく」

側近「?」

魔王「く……く…ふははははははは!!!」

側近「お、おいどうした」

魔王「これが笑わずにいられるか側近よ!」

272: 2009/05/24(日) 22:52:06.93 ID:0ReHhxnt0
魔王「我が復讐が!我が悲願が!目と鼻の先にあるのだぞ!!」

側近「へいへい……落ち着けよ。ったく…不安だ……」

魔王「安心しろ。ちゃんと、私の役目と皆の役目はわきまえている」

側近「本当だろうな?流石にこればっかりは、あんたに任せるしかないんだからな」

魔王「分かっている。失敗は、許されないのだから」

側近「……最後の仕上げだ。頼む」

魔王「ああ」

274: 2009/05/24(日) 22:58:46.73 ID:0ReHhxnt0
魔王「聞け!魔物達よ!!」

魔王「遂にこの日がやって来た!」

魔王「我等が目的はただ一つ!」

魔王「我等が願いはただ一つ!」

魔王「我等が誇りを汚した人間どもに死を!!」

魔王「そして………我等が誇りを取り戻すために!!」

魔王「行け!!!」

ウォオオオオオオオォオオオッ──!!

275: 2009/05/24(日) 23:03:37.70 ID:0ReHhxnt0
側近「……全面戦争の開始、か」

魔王「ああ。しかし、それもすぐ終わる。終わらせる」

側近「気をつけろよ」

魔王「任せておけ」

側近「………一緒に行ってやれなくて、すまない」

魔王「気にするな。魔物のお前を連れてはいけないからな」

277: 2009/05/24(日) 23:08:08.03 ID:0ReHhxnt0

??「た、たすけて!助けてください!」

兵士1「な!まだ住民が残っていたのか?!」

??「ま、魔物が来る!!早く中に!中に入れて下さい!!」

兵士1「待ってろ!今門を開けさせる!!」

兵士2「ま、待て早まるな!!本当にあれは人g」



王城─



魔王「ご苦労」

282: 2009/05/24(日) 23:14:59.02 ID:0ReHhxnt0
兵士29「ぐあ?!」

兵士30「ぎゃあああああ!!」

兵士31「た、たすけ」

兵士32「ひ、ひあああああああ?!!!」

魔王「………」

283: 2009/05/24(日) 23:18:41.12 ID:0ReHhxnt0
謁見の間─


ギィ……………

国王「……貴様が、魔王か」

魔王「ああ」

国王「随分と、好き勝手に……やってくれたものだな」

魔王「貴様等の罪に比べれば、生ぬるい」

国王「………」

286: 2009/05/24(日) 23:23:44.60 ID:0ReHhxnt0


魔王「さあ、国王よ。あまり貴様に時間を掛けていられないのだ。死んでもらおうか」

国王「……お前は、魔王なのだろう」

魔王「それがどうした」

国王「我が一族の力を、知らぬわけではないだろう」

魔王「………知っているとも、嫌というほどな」

290: 2009/05/24(日) 23:29:33.26 ID:0ReHhxnt0
魔王「魔物を封じる、奇跡の術」

国王「生涯に数体のみだがな……だが幸いこの老いぼれでも、お前一匹を封じるのならば、可能だ」

魔王「ふっ………くっ…くく」

国王「何がおかしい!!」

魔王「私に、その術は効かない」

国王「何?!」

魔王「嘘ではないぞ。試しに、やってみろ」

国王「舐め………るな!!」

291: 2009/05/24(日) 23:32:25.71 ID:0ReHhxnt0
国王 は 呪文 を 唱えている!


魔王「………」

魔王「………」

魔王「長かった……」


国王 は 呪文 を 解き放った!!

293: 2009/05/24(日) 23:37:01.95 ID:0ReHhxnt0
国王「な……に?」

魔王「ほら、な」

国王「な、何故だ!!何故貴様は封印できない?!!」

魔王「………」

国王「呪文は完璧だったはず!それが!何故!!」

魔王「私は…」

国王「貴様は何者だ?!」

魔王「人間だ」

国王「?!!」

295: 2009/05/24(日) 23:41:05.35 ID:0ReHhxnt0
魔王「まあ、今となっては元人間だがな」

国王「で、でたらめを言うな!人間が魔王などと!馬鹿げたことを!!」

魔王「……貴様、私の顔に覚えはないか?」

国王「は…………」

魔王「まあ…かなり昔の話故、覚えておらぬのも無理はないだろうが」

国王「…………あ」



国王「あ、あ、」

299: 2009/05/24(日) 23:42:40.97 ID:0ReHhxnt0
国王「ああああああああああああああああああああ!!!!」



ザンッ──………



魔王「ああ、全く。煩い爺だった」

302: 2009/05/24(日) 23:46:50.21 ID:0ReHhxnt0
魔王「………ここか」


地下─


魔王「このような薄暗い場所で……」

魔王「何年も、何年も………」

魔王「………」

魔王「………え、ぐ」

307: 2009/05/24(日) 23:50:29.53 ID:0ReHhxnt0
魔王「だ、駄目だ。まだ、駄目だ」

魔王「……どこだ」

魔王「どこに………ある」

魔王「………」

魔王「………」

魔王「………」

魔王「あ」

魔王「あった……宝玉」

魔王「この、中に……」

308: 2009/05/24(日) 23:54:52.26 ID:0ReHhxnt0
……───


『………』

『あ、そっきんさん!』

『………偽姫、ちゃん』

『おかえりなさい!おとーさんは?おとーさんも、かえってきたんでしょ?』

『……ん』

『え?』

『ごめん……ごめんよ………俺は…あいつの力には……』

312: 2009/05/24(日) 23:59:32.89 ID:0ReHhxnt0
『あいつはあの国王の力を知っていた』

『知っていて、俺達に隠していたんだ』

『自分で、偽姫ちゃんの復讐をしたかったんだろう』

『それがこの……ザマだ』

『すまない………』

317: 2009/05/25(月) 00:03:30.76 ID:LILcjzcc0
『本気か、偽姫ちゃん』

『うん』

『いっぱい、べんきょうする』

『いっぱいがんばって、つよくなる』

『おとーさんのかわりに、ばらのおせわをする』

『わたしが、おとーさんをたすける』



『わたしが………まおうになる!』

321: 2009/05/25(月) 00:07:06.68 ID:LILcjzcc0
魔王「お父さん」

魔王「私はやったよ」

魔王「お父さんの代わりに、仕事も薔薇園のお世話も……復讐も」

魔王「それにね、私ね、あんまり泣かなくなったんだよ」

魔王「強くなったんだよ、私」

魔王「だから……褒めてくれるよね」

魔王「昔みたいに」



(魔王改め)魔王の娘「よしよしって、して……くれるよね!」


魔王の娘 は 宝玉 を 砕いた!!

327: 2009/05/25(月) 00:10:54.88 ID:LILcjzcc0
魔王「ここは……?」

娘「…………あ」

魔王「ん…………お前は……」

娘「あ、あ」

魔王「私の娘……か?」

娘「あ………う、う……」

333: 2009/05/25(月) 00:13:32.11 ID:LILcjzcc0
魔王「いやしかし……何だか大きくはないか、お前。一体何が」

娘「うわあああああああん!!」


娘 は 魔王 に 抱きついた!


魔王「うお」


魔王 は 動揺している!!

336: 2009/05/25(月) 00:15:26.99 ID:LILcjzcc0
魔王「どうした。これは一体何なのだ、何故お前が成長している」

娘「お、おとーさん………おとーさんだ。ほんものだ…」

魔王「ああ、父だ。だから、一体これは」

娘「封印されてる間のこと……知らないんだね」

魔王「ああ。全く分からない…………って、封印?何だそれは?」

娘「それでも………いい」

魔王「良くはないだろう」

341: 2009/05/25(月) 00:17:28.10 ID:LILcjzcc0
側近「おーおー、片付いたようだから見に来てやったが」

魔王「ああこら泣くな。全く…大きくなっても変わらんな、お前は(ナデナデ)」

娘「ひっく………」

側近「いやー、いいね。久々の『日常』っていうのは」

魔王「おい側近…」

側近「何だ?」

魔王「三行で……頼む」

側近「ああ?三行もいらねえよ」

344: 2009/05/25(月) 00:19:20.71 ID:LILcjzcc0
側近「『ハッピーエンド』。それ以外に何がある」

魔王「なるほど……?」

娘「おとーさん……」

魔王「何だ」

娘「お帰りなさい」

魔王「……ただいま」

娘「えへへー………」




【完】

345: 2009/05/25(月) 00:19:35.48 ID:Emwt+50+0
乙!

348: 2009/05/25(月) 00:19:53.71 ID:OBkgpC4x0

350: 2009/05/25(月) 00:20:07.49 ID:ZmJJEYp90
面白かったー
乙~

346: 2009/05/25(月) 00:19:35.86 ID:rmo7vTfa0
解説を・・・

353: 2009/05/25(月) 00:20:25.30 ID:LILcjzcc0
長らくお付き合い下さり、ありがとうございました!
正直書くの初めてで緊張しっぱなしでした。

>>216から時代が変わっていました。
娘は頑張りました。頑張ったので強くなりました。努力です。

356: 2009/05/25(月) 00:20:37.67 ID:AMqA4p+dO
乙!!!
>>216から魔王=姫だったのね
面白かった

361: 2009/05/25(月) 00:21:13.92 ID:pNlsGCmMO
感動した

381: 2009/05/25(月) 00:25:57.29 ID:LILcjzcc0
>>362
そんなもん全く決めてないんだぜ!!

>>369
側近の『株が落ちる』発言とか、色々工夫してみましたw

396: 2009/05/25(月) 00:34:47.09 ID:LILcjzcc0
>>391
ありがとう!なんだかにやけてしまうw

この後日談は全然考えてないけど、他にもネタは色々ストックしてあるから、またいつか書くかもしれない
その時はよろしくお願いします。全部魔王ネタだけどな!

414: 2009/05/25(月) 00:48:22.15 ID:LILcjzcc0
>>408
ありがたいコレクションが増えていく!


なんか思いの他好評でどうしたらいいのか分からないww
スレ立てるのも初めてで、叩かれるのも覚悟の上だったのにwwwもうね、皆ありがとう!!

419: 2009/05/25(月) 00:51:56.92 ID:LILcjzcc0
>>416
全く予定は立ってないんだ…ごめん
一応、個人サイトで魔王の話延々書いてるから、見つけたら笑えるかもしれない。これの原案とか置いてる

424: 2009/05/25(月) 00:59:47.43 ID:LILcjzcc0
ヒントだけ出そうかな。携帯サイトで、魔王がテーマ。
それじゃあお休みなさい!読んでくれた皆、改めてありがとう!

引用元: 魔王「今日も平和だ飯がうまい」