1: 2016/12/23(金) 01:33:13.99

「この戦争が終わったら……オレ、結婚するんだ」


諦観を含んだ微笑みとともにこうつぶやき、槍を持ち、敵軍に突撃していく兵士。

いつ終わるともしれぬ、泥沼化した戦い。
いくら犠牲者が増えても、まるで収まる気配がない。

戦場という怪物は、その際限のない食欲で、若い命を次々に呑み込んでいく。


この怪物が生まれた経緯を知るには、いくらか時間を遡らねばならない。

2: 2016/12/23(金) 01:34:22.57 ID:zR4XX9uXo

仲の悪い二つの国があった。A国、B国と呼ぶことにする。


両国は国境を挟んでしょっちゅう小競り合いを繰り返し、
見かねた周辺国がいくら仲裁しようとしても、一向に改善の兆しは見られなかった。


しかし、その争いの歴史にも、ようやく終止符が打たれる時がやってきた。

3: 2016/12/23(金) 01:35:23.61 ID:zR4XX9uXo

A国を治める王とB国を治める女王が、ある国際的な会議をきっかけに恋に落ち、
二人はめでたく結婚することになったのだ。


これを受け、二つの国は合併することになり、一つの国を王と女王が共同統治することとなった。


やっと平和な時代が訪れる、と両国はもちろん、周辺国の人々さえ喜んだ。

4: 2016/12/23(金) 01:36:30.62 ID:zR4XX9uXo

ところが、いざ王と女王が一つの宮殿で暮らすようになると、早くも亀裂が走り始めた。


王は元々傲慢で、しかもどんな小さなことでも根に持つ性質があった。

女王は女王で非常にヒステリックで、自分の思うようにならないと
すぐにわめき散らす性格をしている。


恋というヴェールがはがれ落ち、二人の本性がむき出しになった今、
もはやこの男女がうまくやっていける要素は皆無であった。

5: 2016/12/23(金) 01:37:45.73 ID:zR4XX9uXo

これは、国民についても同様であった。
旧A国と旧B国の国民は、ことあるごとに衝突した。


たとえばA国の人間は菜食な傾向にあり、B国は肉食が中心であった。

A国では上下関係が非常に重視されていたが、B国ではあまり重視されない。

A国の人間は賑やかな音楽が好きなのに対し、B国の人間は静かな曲を好む。

挙げようと思えばキリがない。


こうまで国民性がバラバラでは、とてもうまくいくわけがなかった。

6: 2016/12/23(金) 01:38:19.63 ID:zR4XX9uXo

まもなく、国中の人間がこう訴えた。


「あんな奴らと同じ国の国民でいるなんてまっぴらだ! 元通り、二つの国に分けてくれ!」


――と。

7: 2016/12/23(金) 01:39:39.36 ID:zR4XX9uXo

言われるまでもなく、王と女王はすでに離婚を決意していた。

結婚して以来、初めて二人の息が合った瞬間が別れる時だというのは、
まこと皮肉な話である。


だが、なまじ一度垣根を取り払い、合併したせいで、
両国間に渦巻く対立感情は、かつてない史上最悪のものになっていた。


これでは、たとえ二人が離婚して、A国とB国に再び分裂したとしても――

8: 2016/12/23(金) 01:40:33.24 ID:zR4XX9uXo

正式に離婚の手続きを行う日、A国の王は側近達にこう漏らしたとされる。


「この結婚が終わったら……オレ、戦争するんだ」







<終わり>

10: 2016/12/23(金) 03:36:04.58 ID:jfeEnJWe0
悪くない

11: 2016/12/23(金) 09:36:21.07 ID:Ud9GTlgeo
星バーーーローーっぽい


引用元: 兵士「この戦争が終わったら……オレ、結婚するんだ」