1:2018/09/14(金) 16:59:20.636
喪黒「私の名は喪黒福造。人呼んで『笑ゥせぇるすまん』。
ただの『せぇるすまん』じゃございません。私の取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。
この世は、老いも若きも男も女も、ココロのさみしい人ばかり。
そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。
いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。
さて、今日のお客様は……。
江頭陶子(38) ジャーナリスト
【ミステリアスな恋人】
ホーッホッホッホ……。」
ただの『せぇるすまん』じゃございません。私の取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。
この世は、老いも若きも男も女も、ココロのさみしい人ばかり。
そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。
いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。
さて、今日のお客様は……。
江頭陶子(38) ジャーナリスト
【ミステリアスな恋人】
ホーッホッホッホ……。」
2:2018/09/14(金) 17:01:22.912
6月末、東京。ある大型書店。ジャーナリスト・江頭陶子の新著『六代目山王組分裂』が山積みにされている。
書店の中に入り、『六代目山王組分裂』を手に取って表紙を見つめる喪黒福造。
とあるホテル。ある部屋で、目つきの悪い男たちを相手に何かの取材をする一人の女性。
男たちは質のいいスーツを着ているが、雰囲気的にどう見てもカタギの人間ではなさそうだ。
闇社会の関係者を相手に取材をしているのは、ショートヘアでパンツスーツ姿の女性だ。
この女性は整った顔立ちで、目つきや表情からして頭がよさそうな雰囲気の人間である。
テロップ「江頭陶子(38) ノンフィクション作家・ジャーナリスト」
宅間書店。「週刊ユウヒ芸能」編集部。男性編集者と会話をする陶子。
編集者A「江頭さん。あなたのおかげで、暴力団関係の特集記事はかなり充実した内容になりましたよ」
陶子「ありがとうございます」
編集者A「ところで、江頭さん。こういった闇社会関係の取材をして、死の恐怖を感じたことはないんですか?」
書店の中に入り、『六代目山王組分裂』を手に取って表紙を見つめる喪黒福造。
とあるホテル。ある部屋で、目つきの悪い男たちを相手に何かの取材をする一人の女性。
男たちは質のいいスーツを着ているが、雰囲気的にどう見てもカタギの人間ではなさそうだ。
闇社会の関係者を相手に取材をしているのは、ショートヘアでパンツスーツ姿の女性だ。
この女性は整った顔立ちで、目つきや表情からして頭がよさそうな雰囲気の人間である。
テロップ「江頭陶子(38) ノンフィクション作家・ジャーナリスト」
宅間書店。「週刊ユウヒ芸能」編集部。男性編集者と会話をする陶子。
編集者A「江頭さん。あなたのおかげで、暴力団関係の特集記事はかなり充実した内容になりましたよ」
陶子「ありがとうございます」
編集者A「ところで、江頭さん。こういった闇社会関係の取材をして、死の恐怖を感じたことはないんですか?」
3:2018/09/14(金) 17:03:23.275
陶子「それはありませんね。職業柄、私は自分が畳の上で死ねないことを覚悟していますし……」
「厄介な連中による脅しの類もすでに慣れました」
陶子が立ち去った後、会話をする「ユウヒ芸能」編集者たち。
編集者A「それにしても……。いつもながら、ずいぶん勇ましいよなぁ。江頭さんって……」
編集者B「ああ……。だけど、彼女は人を寄せ付けないような雰囲気があるんだよな」
ビル街を歩く通行人たち。通行人たちの中の一人に、陶子もいる。
陶子(人間は、最後は一人……。だから、私も一人で生きて、一人で氏んでいく……)
駐車場に停めてある軽四の自動車に乗り込む陶子。
陶子(私は……、一人だ……)
陶子がエンジンをかけようとしたその時……。車の後部座席から例の男――喪黒の声がする。
喪黒「江頭陶子さん……ですね」
陶子「!!」
「厄介な連中による脅しの類もすでに慣れました」
陶子が立ち去った後、会話をする「ユウヒ芸能」編集者たち。
編集者A「それにしても……。いつもながら、ずいぶん勇ましいよなぁ。江頭さんって……」
編集者B「ああ……。だけど、彼女は人を寄せ付けないような雰囲気があるんだよな」
ビル街を歩く通行人たち。通行人たちの中の一人に、陶子もいる。
陶子(人間は、最後は一人……。だから、私も一人で生きて、一人で氏んでいく……)
駐車場に停めてある軽四の自動車に乗り込む陶子。
陶子(私は……、一人だ……)
陶子がエンジンをかけようとしたその時……。車の後部座席から例の男――喪黒の声がする。
喪黒「江頭陶子さん……ですね」
陶子「!!」
4:2018/09/14(金) 17:05:24.724
後ろの席にいる喪黒をじっと見つめる陶子。
陶子(私としたことが、うかつだった……!)
(まさか……。山王組が送り込んだ殺し屋が、こんなところで待ち伏せしているとは……!!)
喪黒「私は、山王組が送り込んだ殺し屋ではありませんよ。江頭陶子さん」
陶子「あ……、あなたは一体何者なの!?」
喪黒「これはこれは……。自己紹介が遅れましたな。私はこういう者です」
喪黒が差し出した名刺には、「ココロのスキマ…お埋めします 喪黒福造」と書かれている。
陶子「ココロのスキマ、お埋めします?」
喪黒「私はセールスマンです。お客様の心にポッカリ空いたスキマをお埋めするのがお仕事です」
陶子「……怪しいお仕事ですね」
喪黒「怪しいお仕事ではありませんよ。私のやっていることは、ボランティアみたいなものですから」
「心に何かしらのスキマを抱え、人生が行き詰まった人たちを救うための仕事ですよ」
「ほら……、江頭陶子さんも心にスキマがおありのはずでしょう?」
陶子「そんなことはありません!!」
「私は心にスキマを抱えていませんし、人生が行き詰まっているわけでもありません!!」
陶子(私としたことが、うかつだった……!)
(まさか……。山王組が送り込んだ殺し屋が、こんなところで待ち伏せしているとは……!!)
喪黒「私は、山王組が送り込んだ殺し屋ではありませんよ。江頭陶子さん」
陶子「あ……、あなたは一体何者なの!?」
喪黒「これはこれは……。自己紹介が遅れましたな。私はこういう者です」
喪黒が差し出した名刺には、「ココロのスキマ…お埋めします 喪黒福造」と書かれている。
陶子「ココロのスキマ、お埋めします?」
喪黒「私はセールスマンです。お客様の心にポッカリ空いたスキマをお埋めするのがお仕事です」
陶子「……怪しいお仕事ですね」
喪黒「怪しいお仕事ではありませんよ。私のやっていることは、ボランティアみたいなものですから」
「心に何かしらのスキマを抱え、人生が行き詰まった人たちを救うための仕事ですよ」
「ほら……、江頭陶子さんも心にスキマがおありのはずでしょう?」
陶子「そんなことはありません!!」
「私は心にスキマを抱えていませんし、人生が行き詰まっているわけでもありません!!」
5:2018/09/14(金) 17:07:21.107
喪黒「まあまあ……。そうやって、肩肘を張った生き方ではストレスがたまる一方ですから……」
陶子「私は、自分の生き方を人に指図されるつもりはありません!」
喪黒「そうですか。ところで、江頭さん……」
「あなたは普段、『自分は一人で生きている』と考えているおつもりでしょう?」
陶子「なっ……!!」
喪黒「ほう……、図星ですか……。老婆心ながら、これだけは言っておきますが……」
「人間は、たった一人だけでこの世に生きているのではないのですよ!!江頭陶子さん」
陶子「…………」
喪黒「よろしかったら、私があなたの相談に乗りましょうか?」
BAR「魔の巣」。喪黒と陶子が席に腰掛けている。机の上には、陶子の著書『六代目山王組分裂』が置かれている。
陶子「烏龍茶をお願いします。私は車を運転する身ですから……」
陶子の前に烏龍茶が運ばれてくる。
喪黒「江頭さん。あなたの新著の『六代目山王組分裂』、なかなかの力作でしたよ」
陶子「私は、自分の生き方を人に指図されるつもりはありません!」
喪黒「そうですか。ところで、江頭さん……」
「あなたは普段、『自分は一人で生きている』と考えているおつもりでしょう?」
陶子「なっ……!!」
喪黒「ほう……、図星ですか……。老婆心ながら、これだけは言っておきますが……」
「人間は、たった一人だけでこの世に生きているのではないのですよ!!江頭陶子さん」
陶子「…………」
喪黒「よろしかったら、私があなたの相談に乗りましょうか?」
BAR「魔の巣」。喪黒と陶子が席に腰掛けている。机の上には、陶子の著書『六代目山王組分裂』が置かれている。
陶子「烏龍茶をお願いします。私は車を運転する身ですから……」
陶子の前に烏龍茶が運ばれてくる。
喪黒「江頭さん。あなたの新著の『六代目山王組分裂』、なかなかの力作でしたよ」
6:2018/09/14(金) 17:09:22.593
陶子「そりゃあ、どうも……」
喪黒「江頭さんは闇社会に詳しいジャーナリストですが、他にもタブーにかなり切り込んできましたねぇ」
「大物政治家の汚職、大企業の経営危機、霊感商法などを追及し……。さらには海外の戦場の取材まで……」
陶子「気が付いたら、そうなっていたんですよ」
喪黒「江頭さんの人生を変えた決定的な事件は……。おそらく、あなたのご両親が非業の死を遂げたことのはず……」
陶子「おっしゃる通りです。私が小学生のころ、いつものように帰宅した時……。両親は死に、家もなくなっていました」
「父は、路上で何者かに刃物で刺されて亡くなりました。一方、母は自宅で誰かに絞殺された後、家ごと焼かれたのです」
「以来、私は親戚の叔父の家で育ちました」
喪黒「その後、江頭さんは大学卒業後に宅間書店に勤務し……。週刊誌の記者を経てジャーナリストとなったわけですが……」
「あなたがジャーナリストとなった動機も、ご両親の不審死が影響しているはずでしょう」
陶子「そうです。後に、大きくなってから私は知ったのですが……」
「大手新聞社の記者だった私の父は……。殺される直前に、政財界が絡む疑獄事件の取材をしていました」
「このことを知り、私はジャーナリストとして生きていくことを心から決意したのです」
喪黒「江頭さんの特徴とでもいうべき……。社会悪を憎み、真実を追求する気持ち。死を恐れない勇敢さ……」
「これらは間違いなく……。あなたのご両親が、疑獄事件の黒幕に殺されたことの影響からきているでしょう」
陶子「私の両親の死が、人格形成に影響を与えたことは確かでしょう」
喪黒「江頭さんは闇社会に詳しいジャーナリストですが、他にもタブーにかなり切り込んできましたねぇ」
「大物政治家の汚職、大企業の経営危機、霊感商法などを追及し……。さらには海外の戦場の取材まで……」
陶子「気が付いたら、そうなっていたんですよ」
喪黒「江頭さんの人生を変えた決定的な事件は……。おそらく、あなたのご両親が非業の死を遂げたことのはず……」
陶子「おっしゃる通りです。私が小学生のころ、いつものように帰宅した時……。両親は死に、家もなくなっていました」
「父は、路上で何者かに刃物で刺されて亡くなりました。一方、母は自宅で誰かに絞殺された後、家ごと焼かれたのです」
「以来、私は親戚の叔父の家で育ちました」
喪黒「その後、江頭さんは大学卒業後に宅間書店に勤務し……。週刊誌の記者を経てジャーナリストとなったわけですが……」
「あなたがジャーナリストとなった動機も、ご両親の不審死が影響しているはずでしょう」
陶子「そうです。後に、大きくなってから私は知ったのですが……」
「大手新聞社の記者だった私の父は……。殺される直前に、政財界が絡む疑獄事件の取材をしていました」
「このことを知り、私はジャーナリストとして生きていくことを心から決意したのです」
喪黒「江頭さんの特徴とでもいうべき……。社会悪を憎み、真実を追求する気持ち。死を恐れない勇敢さ……」
「これらは間違いなく……。あなたのご両親が、疑獄事件の黒幕に殺されたことの影響からきているでしょう」
陶子「私の両親の死が、人格形成に影響を与えたことは確かでしょう」
7:2018/09/14(金) 17:11:23.537
喪黒「……とはいえ、江頭さんの両親の死はこんな形でも、あなたの人格形成に影響を与えました」
「無理をして気丈に振る舞い続けたことにより、あなたは人を寄せ付けにくい性格となったのです」
陶子「それは言えているかもしれませんね」
喪黒「江頭さんは、ご両親の愛を受けることができずに育ったのです。だから、人を愛することができない性格となりました」
「あなたのジャーナリストとしての正義感の強さは、人を受け入れず、許そうとしない性格の裏返しでもあります」
陶子「……そうかもしれませんね。今、あなたに指摘されるまで気付きませんでした」
喪黒「はっきり言いましょう。江頭陶子さんの心のスキマとは……。すなわち、『愛』に関することでしょう!!」
陶子「!!!」
喪黒「江頭さんは他人を愛せない性格ですから……。おそらく、男性との恋愛関係も一度もなかったはずですよねぇ」
陶子「ご名答ですね……。まさにその通りですよ」
喪黒「江頭さん。一度でもいいから、あなたは燃えるような大恋愛を経験すべきなのです!」
「人を愛する気持ちを持つことにより……。あなたは、人間としてもジャーナリストとしても一回り大きくなれますよ」
陶子「そうですか……。喪黒さんのおっしゃりたいことはよく分かりますが、今の私の年齢ではすでに手遅れ……」
喪黒「そんなことはありません。あなたに運命の恋人は必ず見つかるはずです」
「無理をして気丈に振る舞い続けたことにより、あなたは人を寄せ付けにくい性格となったのです」
陶子「それは言えているかもしれませんね」
喪黒「江頭さんは、ご両親の愛を受けることができずに育ったのです。だから、人を愛することができない性格となりました」
「あなたのジャーナリストとしての正義感の強さは、人を受け入れず、許そうとしない性格の裏返しでもあります」
陶子「……そうかもしれませんね。今、あなたに指摘されるまで気付きませんでした」
喪黒「はっきり言いましょう。江頭陶子さんの心のスキマとは……。すなわち、『愛』に関することでしょう!!」
陶子「!!!」
喪黒「江頭さんは他人を愛せない性格ですから……。おそらく、男性との恋愛関係も一度もなかったはずですよねぇ」
陶子「ご名答ですね……。まさにその通りですよ」
喪黒「江頭さん。一度でもいいから、あなたは燃えるような大恋愛を経験すべきなのです!」
「人を愛する気持ちを持つことにより……。あなたは、人間としてもジャーナリストとしても一回り大きくなれますよ」
陶子「そうですか……。喪黒さんのおっしゃりたいことはよく分かりますが、今の私の年齢ではすでに手遅れ……」
喪黒「そんなことはありません。あなたに運命の恋人は必ず見つかるはずです」
9:2018/09/14(金) 17:13:29.537
喪黒は、陶子に右手の人差し指を向ける。
喪黒「あなたは、近いうちに運命の恋人を必ず見つけます!!そして、燃えるような大恋愛をします!!」
「ドーーーーーーーーーーーーン!!!」
陶子「キャアアアアアアアアアアアア!!!」
7月、京都市。街の中で山鉾巡行が行われている。道路を行く山鉾を眺める群衆。人ごみの中には、着物姿の陶子もいる。
陶子の後ろには、着流し姿の男が2人いる。しかし、この2人は目つきが悪くて、得体の知れない殺気を醸し出している。
2人の男が陶子の身柄を無理やり掴む。悲鳴を上げないよう、男の掌によって口元を抑えられる陶子。
陶子「ムグッ……」
次の瞬間。背の高いスーツ姿の男性が、2人の怪しい男に拳や蹴りを入れる。急に身柄を解放される陶子。
陶子が気付くと、そこには……。背の高いスーツ姿の男性の側に、着流し姿の2人の暴漢がうめき声をあげて倒れている。
テロップ「ロバート・オオモリ(42) 日系アメリカ人」
ロバート「お前たち、お嬢さんに何をするつもりだったんだ!?」
2人の男「ううう……」
喪黒「あなたは、近いうちに運命の恋人を必ず見つけます!!そして、燃えるような大恋愛をします!!」
「ドーーーーーーーーーーーーン!!!」
陶子「キャアアアアアアアアアアアア!!!」
7月、京都市。街の中で山鉾巡行が行われている。道路を行く山鉾を眺める群衆。人ごみの中には、着物姿の陶子もいる。
陶子の後ろには、着流し姿の男が2人いる。しかし、この2人は目つきが悪くて、得体の知れない殺気を醸し出している。
2人の男が陶子の身柄を無理やり掴む。悲鳴を上げないよう、男の掌によって口元を抑えられる陶子。
陶子「ムグッ……」
次の瞬間。背の高いスーツ姿の男性が、2人の怪しい男に拳や蹴りを入れる。急に身柄を解放される陶子。
陶子が気付くと、そこには……。背の高いスーツ姿の男性の側に、着流し姿の2人の暴漢がうめき声をあげて倒れている。
テロップ「ロバート・オオモリ(42) 日系アメリカ人」
ロバート「お前たち、お嬢さんに何をするつもりだったんだ!?」
2人の男「ううう……」
11:2018/09/14(金) 17:15:40.580
ある料亭。和室の中で、机に向かい合いながら話をする陶子とロバート。
ロバート「あの2人は警察につき出しましたから、これでもう大丈夫ですよ」
陶子「さっきはありがとうございます。私は職業柄、多くの方面を敵に回していますから。それで、こんなことに……」
ロバート「一体、どういうことですか?」
陶子とロバートがいる席に、若女将が日本料理を運んでくる。
ロバート「なるほど。あなたが、あのトウコ・エガシラですか……。『ヤクザ』に詳しいジャーナリストの……」
陶子「私の取材活動のことを知っているんですか?」
ロバート「あなたの著作のいくつかは、アメリカでも翻訳されています。私も、あなたの著書を読んだことがあります」
陶子「……ということは、あなた、アメリカの方ですか?」
ロバート「イエス。私は日系アメリカ人です」
BAR「魔の巣」。喪黒と陶子が席に腰掛けている。
喪黒「祇園祭を取材していた江頭さんは、暴漢に襲われそうになったところをロバートさんに助けられました……」
「……それをきっかけに、あなたはロバートさんと交際を始めたのでしょうなぁ」
ロバート「あの2人は警察につき出しましたから、これでもう大丈夫ですよ」
陶子「さっきはありがとうございます。私は職業柄、多くの方面を敵に回していますから。それで、こんなことに……」
ロバート「一体、どういうことですか?」
陶子とロバートがいる席に、若女将が日本料理を運んでくる。
ロバート「なるほど。あなたが、あのトウコ・エガシラですか……。『ヤクザ』に詳しいジャーナリストの……」
陶子「私の取材活動のことを知っているんですか?」
ロバート「あなたの著作のいくつかは、アメリカでも翻訳されています。私も、あなたの著書を読んだことがあります」
陶子「……ということは、あなた、アメリカの方ですか?」
ロバート「イエス。私は日系アメリカ人です」
BAR「魔の巣」。喪黒と陶子が席に腰掛けている。
喪黒「祇園祭を取材していた江頭さんは、暴漢に襲われそうになったところをロバートさんに助けられました……」
「……それをきっかけに、あなたはロバートさんと交際を始めたのでしょうなぁ」
12:2018/09/14(金) 17:17:57.067
陶子「はい。喪黒さんのおっしゃった通りになりました。思わぬ形で、『彼』と出会うこととなったのですから」
喪黒「江頭さんにしてみれば……。ロバートさんはまさしく、運命の恋人でしょう?」
陶子「そうとしか言いようがありません。理屈では説明できませんが、私の直感がそう告げているんです」
喪黒「そういうものなんですよ。その相手が運命の恋人であるか否かを見分けるのは、本人の直感なのですから」
「世の中には、理屈で説明のつかないことがいろいろありますが……。その一つが、人間の第六感なのですよ」
陶子「ええ……。今までの私は理詰めでものを考えてきましたけど、理性を超えた何かの存在を改めて確認しました」
「ジャーナリストの仕事というのも、最後は、本人の直感が頼りとなるのですからね」
喪黒「それ以外でも……。ロバートさんとの出会いで、江頭さんの人生観は変わったはずです」
「『人間は一人だけで生きているのではない』ということを、あなたは心から実感したはずですよ」
陶子「それはもう……。現在の私が心からしみじみと感じていることですよ」
「昔の私は、心の中に私一人しかいませんでしたけど……。今の私は、心の中に『彼』が存在しています」
喪黒「ロバートさんとの出会いは、江頭さんの人生をいい方に変えたと私は思いますよ」
陶子「私もそう思います」
喪黒「ただ……。老婆心ながら、私の方からあなたに忠告をしておきたいことがありましてねぇ……」
喪黒「江頭さんにしてみれば……。ロバートさんはまさしく、運命の恋人でしょう?」
陶子「そうとしか言いようがありません。理屈では説明できませんが、私の直感がそう告げているんです」
喪黒「そういうものなんですよ。その相手が運命の恋人であるか否かを見分けるのは、本人の直感なのですから」
「世の中には、理屈で説明のつかないことがいろいろありますが……。その一つが、人間の第六感なのですよ」
陶子「ええ……。今までの私は理詰めでものを考えてきましたけど、理性を超えた何かの存在を改めて確認しました」
「ジャーナリストの仕事というのも、最後は、本人の直感が頼りとなるのですからね」
喪黒「それ以外でも……。ロバートさんとの出会いで、江頭さんの人生観は変わったはずです」
「『人間は一人だけで生きているのではない』ということを、あなたは心から実感したはずですよ」
陶子「それはもう……。現在の私が心からしみじみと感じていることですよ」
「昔の私は、心の中に私一人しかいませんでしたけど……。今の私は、心の中に『彼』が存在しています」
喪黒「ロバートさんとの出会いは、江頭さんの人生をいい方に変えたと私は思いますよ」
陶子「私もそう思います」
喪黒「ただ……。老婆心ながら、私の方からあなたに忠告をしておきたいことがありましてねぇ……」
13:2018/09/14(金) 17:20:18.227
陶子「は、はい……」
喪黒「江頭さんの長所は、剃刀のように切れる頭で、物事を客観的に判断できることです」
「……とはいえ。盲目的な恋に陥ると、周りが見えなくなることがありますから……。気を付けてください」
陶子「ええ……」
喪黒「自分の人生と、相手の人生の両方をお互いに大切にしてこそ、本当の意味での恋愛関係が成り立つのですよ」
「従って……。江頭さんは、日本国内での今の人生を大切にした上で、ロバートさんとの恋愛を行ってください」
「例えば……。ロバートさんと一緒に、彼の祖国へ行くようなことをしてはいけません。いいですね、約束ですよ!?」
陶子「わ、分かりました……。喪黒さん」
陶子のモノローグ「ロバート・オオモリ……。彼は氏素性が全く謎な、ミステリアスな男だった」
夜。ネオンが輝くビル街の中を、手をつなぎながら歩く陶子とロバート。
陶子のモノローグ「しかし、そんなことは私にはどうでもよかった」
昼。とある自然公園。芝生の上に座り、2人で手をつなぐ陶子とロバート。
陶子のモノローグ「ロバートが私の側にいてくれる……。たったそれだけで、私の心が満たされているからだ」
夜。とあるホテル。一緒にベッドで眠る陶子とロバート。
喪黒「江頭さんの長所は、剃刀のように切れる頭で、物事を客観的に判断できることです」
「……とはいえ。盲目的な恋に陥ると、周りが見えなくなることがありますから……。気を付けてください」
陶子「ええ……」
喪黒「自分の人生と、相手の人生の両方をお互いに大切にしてこそ、本当の意味での恋愛関係が成り立つのですよ」
「従って……。江頭さんは、日本国内での今の人生を大切にした上で、ロバートさんとの恋愛を行ってください」
「例えば……。ロバートさんと一緒に、彼の祖国へ行くようなことをしてはいけません。いいですね、約束ですよ!?」
陶子「わ、分かりました……。喪黒さん」
陶子のモノローグ「ロバート・オオモリ……。彼は氏素性が全く謎な、ミステリアスな男だった」
夜。ネオンが輝くビル街の中を、手をつなぎながら歩く陶子とロバート。
陶子のモノローグ「しかし、そんなことは私にはどうでもよかった」
昼。とある自然公園。芝生の上に座り、2人で手をつなぐ陶子とロバート。
陶子のモノローグ「ロバートが私の側にいてくれる……。たったそれだけで、私の心が満たされているからだ」
夜。とあるホテル。一緒にベッドで眠る陶子とロバート。
15:2018/09/14(金) 17:22:16.203
ある日。コーヒーチェーン店。隣同士の席で会話をする陶子とロバート。
ロバート「トウコ。僕は今度、アメリカへ帰るつもりだ」
陶子「えっ!?ずいぶん急な話じゃない!」
ロバート「できれば、君も僕に付いてきて欲しいという気持ちがあるものの……。僕としては……」
迷ったような表情のロバート。
陶子「何言ってるの!あなたと私の心は、いつも一緒じゃないの!」
ロバート「もしも、君が僕とともにアメリカへ行くのならば……」
「僕は自分の全てを……、嘘や隠し事が一切ない本当のことを……、君に話そうと思う」
ロバートを見つめる陶子。陶子の頭に、喪黒による忠告の言葉が思い浮かぶ。
(喪黒「例えば……。ロバートさんと一緒に、彼の祖国へ行くようなことをしてはいけません」)
夜。自宅マンション。ベッドの上で横になりながら考える陶子。
陶子(それにしても……。喪黒さんはなぜ、あんなことを私に言ったんだろう……)
ロバート「トウコ。僕は今度、アメリカへ帰るつもりだ」
陶子「えっ!?ずいぶん急な話じゃない!」
ロバート「できれば、君も僕に付いてきて欲しいという気持ちがあるものの……。僕としては……」
迷ったような表情のロバート。
陶子「何言ってるの!あなたと私の心は、いつも一緒じゃないの!」
ロバート「もしも、君が僕とともにアメリカへ行くのならば……」
「僕は自分の全てを……、嘘や隠し事が一切ない本当のことを……、君に話そうと思う」
ロバートを見つめる陶子。陶子の頭に、喪黒による忠告の言葉が思い浮かぶ。
(喪黒「例えば……。ロバートさんと一緒に、彼の祖国へ行くようなことをしてはいけません」)
夜。自宅マンション。ベッドの上で横になりながら考える陶子。
陶子(それにしても……。喪黒さんはなぜ、あんなことを私に言ったんだろう……)
16:2018/09/14(金) 17:24:20.960
高速道路を行き交う多くの車。軽四を運転する陶子。
陶子(やっぱり、私はロバートともにアメリカに行く……!アメリカに行けば、彼は自分の全てを私に話してくれる……!)
(私は自分の愛する男のことを、もっともっと知りたい……!だから……)
運転しながら考え事に夢中になる陶子。道路のカーブを曲がり、彼女がふと前を見ると……。
フロントガラスの方に大型トラックが見える。陶子は慌ててハンドルを切ったものの、トラックを避けられそうにない。
大型トラックにぶつかり、大破する陶子の軽四。頭から血を流し意識を失う陶子。真っ暗になる画面。
成田空港。腕時計を見つめながら、陶子が来るのを待つロバート。
一方、空港の中の柱の側にいる喪黒が、遠くの方にいるロバートを見つめている。喪黒は、陶子が来るのを待っている。
彼女が自分との約束を破って、ロバートに会いにこの空港へやって来ることを狙いに入れながら――。
成田空港を出発する旅客機。旅客機の座席にいるロバート。彼の隣の椅子は空席のようだ。
ロバート「…………」
陶子(やっぱり、私はロバートともにアメリカに行く……!アメリカに行けば、彼は自分の全てを私に話してくれる……!)
(私は自分の愛する男のことを、もっともっと知りたい……!だから……)
運転しながら考え事に夢中になる陶子。道路のカーブを曲がり、彼女がふと前を見ると……。
フロントガラスの方に大型トラックが見える。陶子は慌ててハンドルを切ったものの、トラックを避けられそうにない。
大型トラックにぶつかり、大破する陶子の軽四。頭から血を流し意識を失う陶子。真っ暗になる画面。
成田空港。腕時計を見つめながら、陶子が来るのを待つロバート。
一方、空港の中の柱の側にいる喪黒が、遠くの方にいるロバートを見つめている。喪黒は、陶子が来るのを待っている。
彼女が自分との約束を破って、ロバートに会いにこの空港へやって来ることを狙いに入れながら――。
成田空港を出発する旅客機。旅客機の座席にいるロバート。彼の隣の椅子は空席のようだ。
ロバート「…………」
17:2018/09/14(金) 17:26:22.249
ある大病院。ベッドの上で陶子が目を覚ます。全身が包帯姿となり、腕に点滴を付けた陶子。
陶子が横たわるベッドの側には、医者と看護師たちがいる。
陶子「ここは……」
看護師「気がつきましたか」
医者「江頭さん。あなたは交通事故で意識不明の状態だったのですが、手術の末、何とか一命を取り留めました」
陶子「ああっ……!!そういえば、私はある人とアメリカに行くことを約束していたんです……!」
「そのために成田空港に行こうとして……」
顔を合わせる看護師たち。医者や看護師たちの顔は、やや不安そうなものになっていく。
医者「江頭さん。まさか、その旅客機の便名はご存知ですか……」
陶子「え、ええ……。もちろんですよ。確か、私が彼と一緒に乗ろうとしていた飛行機は……」
すっかり深刻そうな表情になる医者や看護師たち。
しばらく時間が経ったころ――。病室のベッドの上で、陶子は新聞を見つめる。愕然とした表情の陶子。
新聞の一面のほぼ全てが、飛行機事故の記事となっている。新聞には「乗客乗員、全員絶望か」の見出しがある。
陶子が横たわるベッドの側には、医者と看護師たちがいる。
陶子「ここは……」
看護師「気がつきましたか」
医者「江頭さん。あなたは交通事故で意識不明の状態だったのですが、手術の末、何とか一命を取り留めました」
陶子「ああっ……!!そういえば、私はある人とアメリカに行くことを約束していたんです……!」
「そのために成田空港に行こうとして……」
顔を合わせる看護師たち。医者や看護師たちの顔は、やや不安そうなものになっていく。
医者「江頭さん。まさか、その旅客機の便名はご存知ですか……」
陶子「え、ええ……。もちろんですよ。確か、私が彼と一緒に乗ろうとしていた飛行機は……」
すっかり深刻そうな表情になる医者や看護師たち。
しばらく時間が経ったころ――。病室のベッドの上で、陶子は新聞を見つめる。愕然とした表情の陶子。
新聞の一面のほぼ全てが、飛行機事故の記事となっている。新聞には「乗客乗員、全員絶望か」の見出しがある。
20:2018/09/14(金) 17:28:44.625
両手で新聞を握りしめたまま、泣き崩れる陶子。
陶子「ウウッ……。ウウウ…………。ロバートォオオオオオ!!!」
陶子のモノローグ「小学生のころ、父と母を失った時……。私は心の底から悲しみを味わった」
葬儀場。父と母の遺影と祭壇。葬式に参加する小学生の陶子、親戚一同、その他の大勢の参列者たち。
陶子のモノローグ「しかし……。私の最愛の人間であるロバートを失うことの悲しみは、それ以上だった」
笑顔で手をつなぐロバートと陶子。在りし日のロバートとの思い出が頭に思い浮かび、涙を流す陶子。
ある日、病室で一人だけになる陶子。陶子の顔のアップ。
陶子のモノローグ「私は、あることを決心した」
上空を飛ぶ旅客機。飛行機の座席に陶子が座っている。アメリカで現地人たちを相手に、熱心に取材活動をする陶子。
テロップ「数年後――」
ある大型書店。江頭陶子の新著『ミステリアスな男と私』が山積みにされている。
書店の中に入り、『ミステリアスな男と私』を手に取って表紙を見つめる喪黒福造。
陶子「ウウッ……。ウウウ…………。ロバートォオオオオオ!!!」
陶子のモノローグ「小学生のころ、父と母を失った時……。私は心の底から悲しみを味わった」
葬儀場。父と母の遺影と祭壇。葬式に参加する小学生の陶子、親戚一同、その他の大勢の参列者たち。
陶子のモノローグ「しかし……。私の最愛の人間であるロバートを失うことの悲しみは、それ以上だった」
笑顔で手をつなぐロバートと陶子。在りし日のロバートとの思い出が頭に思い浮かび、涙を流す陶子。
ある日、病室で一人だけになる陶子。陶子の顔のアップ。
陶子のモノローグ「私は、あることを決心した」
上空を飛ぶ旅客機。飛行機の座席に陶子が座っている。アメリカで現地人たちを相手に、熱心に取材活動をする陶子。
テロップ「数年後――」
ある大型書店。江頭陶子の新著『ミステリアスな男と私』が山積みにされている。
書店の中に入り、『ミステリアスな男と私』を手に取って表紙を見つめる喪黒福造。
21:2018/09/14(金) 17:31:45.066
BAR「魔の巣」。喪黒と陶子が席に腰掛けている。机の上には、陶子の著書『ミステリアスな男と私』が置かれている。
喪黒「江頭さん。あなたの新著の『ミステリアスな男と私』、非常に読み応えがありましたよ」
陶子「ありがとうございます」
喪黒「アメリカに行って、ロバートさんの生涯をじっくり取材しただけあって……。かなりの労作です」
陶子「ええ……。それにしても……。ロバートの正体が、現地の闇社会で名の知れたスナイパーだったとは……」
喪黒「ロバートさんは、とある仕事で巨大なシンジケートを敵に回してしまい……。日本へ逃げていたそうですねぇ」
陶子「はい……。その逃亡先の日本で、彼が出会った人物が私だったということです。それに、ロバートも私も……」
「お互いに一匹狼で生きていて、人の愛を知らない人間だったからこそ……。ここまで深い関係になれたのでしょう」
喪黒「しかし、ロバートさんは急に帰国を決意しました」
陶子「おそらく、自分が裏の世界の人間で命を狙われる身であり、私に迷惑をかけるかもしれないからでしょう……」
「でも、彼の心の中では……。最愛の人間である私に対して、自分の本当の姿を正直に話したいという気持ちが……」
「どこかにあったのでしょうね」
喪黒「ロバートさんの命を奪ったあの飛行機事故は……。おそらく、例のシンジケートが仕組んだ可能性が高いでしょう」
「だから……。あの時、ロバートさんと一緒に飛行機に乗っていれば……。江頭さんは、今ごろこの世にいなかったはずです」
「皮肉にも……。あの交通事故のおかげで、あなたは今現在こうやって生きているのですよ」
喪黒「江頭さん。あなたの新著の『ミステリアスな男と私』、非常に読み応えがありましたよ」
陶子「ありがとうございます」
喪黒「アメリカに行って、ロバートさんの生涯をじっくり取材しただけあって……。かなりの労作です」
陶子「ええ……。それにしても……。ロバートの正体が、現地の闇社会で名の知れたスナイパーだったとは……」
喪黒「ロバートさんは、とある仕事で巨大なシンジケートを敵に回してしまい……。日本へ逃げていたそうですねぇ」
陶子「はい……。その逃亡先の日本で、彼が出会った人物が私だったということです。それに、ロバートも私も……」
「お互いに一匹狼で生きていて、人の愛を知らない人間だったからこそ……。ここまで深い関係になれたのでしょう」
喪黒「しかし、ロバートさんは急に帰国を決意しました」
陶子「おそらく、自分が裏の世界の人間で命を狙われる身であり、私に迷惑をかけるかもしれないからでしょう……」
「でも、彼の心の中では……。最愛の人間である私に対して、自分の本当の姿を正直に話したいという気持ちが……」
「どこかにあったのでしょうね」
喪黒「ロバートさんの命を奪ったあの飛行機事故は……。おそらく、例のシンジケートが仕組んだ可能性が高いでしょう」
「だから……。あの時、ロバートさんと一緒に飛行機に乗っていれば……。江頭さんは、今ごろこの世にいなかったはずです」
「皮肉にも……。あの交通事故のおかげで、あなたは今現在こうやって生きているのですよ」
22:2018/09/14(金) 17:34:57.263
陶子「ええ……。彼は氏んで、この世から身体がなくなったかもしれませんが……」
「私の心の中では今も生きていて……、こうやって私のことを見守っている気がするんです」
喪黒「ロバートさんだけでなく、江頭さんが今まで世話になってきた人たちも、あなたの心の中にいるはずですよ」
陶子「はい。現在の私は、決して一人ではないのですから……」
「多くの人たちと関わってきたおかげで……、私は今ここに存在しているのですから……」
両胸に手を当てて、涙を流す陶子。
江頭陶子が去り、マスターと喪黒の2人だけになったBAR「魔の巣」。
喪黒「この世にいる人間が持つ感情や行為の中で、最も崇高なものの一つ……。それは、すなわち『愛』です」
「誰かを愛し、誰に愛されることを繰り返してきたおかげで……。人々は今、この世界に存在しているのです」
「人を愛するという感情や行為は、いつも必ず報われることはなく……。時には悲しみや別離ももたらします」
「それでもなお、人間たちが『愛』の可能性を信じ続けることにより……。世界は今後も存続していくでしょう」
「まあ、ところで……。人を愛することの尊さを知った江頭陶子さんは、おそらく……」
「これからは……。人間としても、ジャーナリストとしても、一味違った人生を送っているでしょうねぇ……」
「オーホッホッホッホッホッホッホ……」
―完―
「私の心の中では今も生きていて……、こうやって私のことを見守っている気がするんです」
喪黒「ロバートさんだけでなく、江頭さんが今まで世話になってきた人たちも、あなたの心の中にいるはずですよ」
陶子「はい。現在の私は、決して一人ではないのですから……」
「多くの人たちと関わってきたおかげで……、私は今ここに存在しているのですから……」
両胸に手を当てて、涙を流す陶子。
江頭陶子が去り、マスターと喪黒の2人だけになったBAR「魔の巣」。
喪黒「この世にいる人間が持つ感情や行為の中で、最も崇高なものの一つ……。それは、すなわち『愛』です」
「誰かを愛し、誰に愛されることを繰り返してきたおかげで……。人々は今、この世界に存在しているのです」
「人を愛するという感情や行為は、いつも必ず報われることはなく……。時には悲しみや別離ももたらします」
「それでもなお、人間たちが『愛』の可能性を信じ続けることにより……。世界は今後も存続していくでしょう」
「まあ、ところで……。人を愛することの尊さを知った江頭陶子さんは、おそらく……」
「これからは……。人間としても、ジャーナリストとしても、一味違った人生を送っているでしょうねぇ……」
「オーホッホッホッホッホッホッホ……」
―完―
24:2018/09/14(金) 17:42:40.697 ID:/f1DHEV9a.net
おつ
25:2018/09/14(金) 17:49:08.477 ID:PFP3QrQQd.net
珍しく死ななかった
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