1:2018/09/10(月) 22:18:42.337
喪黒「私の名は喪黒福造。人呼んで『笑ゥせぇるすまん』。

    ただの『せぇるすまん』じゃございません。私の取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。

    この世は、老いも若きも男も女も、ココロのさみしい人ばかり。

    そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。

    いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。

    さて、今日のお客様は……。

    林田秀樹(29) 塾講師アルバイト

    【受験秀才の男】

    ホーッホッホッホ……。」



2:2018/09/10(月) 22:20:40.330
夕方。仕事を終えたサラリーマンたちが電車に乗っている。電車のつり革を持つスーツ姿のある男性。

林田(この電車にいる会社員たちは仕事の帰りか。一方、僕には……。これから今日の仕事が待っているんだよな)

テロップ「林田秀樹(29) 塾講師アルバイト」

自分の生い立ち回想する林田。

林田(僕は小さいころから神童扱いされ……、当然、小学校から高校までは地元で成績トップだった)

机に向かう小学生のころの林田。さらに、中学・高校の制服を着た少年時代の林田。

林田(勉強が得意だったおかげで……。僕は、東都大学に見事に合格……)
   (しかし……。東都大学には、僕をはるかにしのぐ秀才たちが大勢いた上……)
   (僕は大学での授業についていくのが精いっぱいだった……)

東都大学のキャンパスへ向かう大学生・林田。林田は浮かない表情をしていて、暗い顔をしている。


場面は電車の中に戻る。電車から降り、駅を出る林田。林田は再び回想する。

林田(しかも……。僕は就活がうまくいかず、企業面接はことごとく全滅……)

とある企業。室内で林田は、数人の社員を相手に面接に臨んでいる。緊張した表情でパイプ椅子に座る林田。
3:2018/09/10(月) 22:22:43.719
林田(たまたま教員免許を持っていたおかげで、大学卒業後に高校教師となったものの……)

ある高校。教室で生徒たちを前に授業を行う林田。林田を見つめる生徒たち。

職員室。年配の教師が、若手教師の林田に対し何かを言っている。

年配の教師「林田先生……。生徒たちから、あなた何て言われているか分かりますか?」

林田「もちろん、承知していますよ。私の授業が分かりにくいということでしょう?」

年配の教師「そうですよ。先生は東大卒なんだから、もっと分かりやすく授業をやれるはずでは?」

林田(僕は、数年で高校教師を辞めた……)

場面は街の中に戻る。学習塾「栄伸塾」の建物の中に入る林田。

林田(その結果……。現在の僕は、塾講師のアルバイトをやっている)


夜。学校を終えた小学生や、中高生が街の中を歩いている。栄伸塾へと向かう子供たち。

高校生A「大学受験、第一志望だけは合格したいよなー。そこに合格すれば、俺の親も納得してくれるだろうから」

高校生B「あー、分かるー。俺の親もメチャ厳しいからなー、地方の駅弁大学に志望校を変えたら怒られたわー」
4:2018/09/10(月) 22:24:43.969
黒板に板書をし、何かを話す林田。彼は教室内で、大勢の生徒を前に集団指導を行っている。

林田による板書を、ノートにせっせと書き写す生徒たち。


ある定食チェーン店。塾講師の仕事を終え、一人で食事をする林田。

林田(いい大学を出れば、いい仕事につけて幸せになれる……。僕の場合は、全くそうではなかった……)

定食チェーン店の中に入る喪黒福造。喪黒は、券売機で食券を買う。林田の席へ足を運び、彼の真向かいに座る喪黒。

喪黒「あなた、今日のお仕事を終えたんですか?」

林田「ええ、まあ……」

喪黒「お一人で食事をするのは寂しいでしょう?」

林田「いいえ。一人で過ごすのは慣れていますから……」

喪黒「この店を出たら、私と一緒にどこかへ飲みに行きませんか?」

林田「いや、私は酒を飲むことはめったにありませんから……」
   「だって、アルコール類は少量でも脳に悪影響を与える飲み物でしょう?」

喪黒「そうですか。ずいぶん生真面目な方ですねぇ、あなた……」
   「……とはいえ、こういう堅苦しい生活を続けていて息が詰まることはありませんか?」
5:2018/09/10(月) 22:26:36.123
林田「それは、ないですね……。何しろ、少年時代のころは勉強一筋で生きてきたので……」

喪黒「勉強一筋ということは……。おそらく、いい大学を出ているはずでしょう。まさか、東都大学とか……」

林田「そ、そうですよ……!その東都大学が私の出身校なんですよ。あなた、勘が鋭いですね……」

喪黒「なるほど……。見た様子からすると、あなたは東都大学の出身の割に……」
   「意外とうだつの上がらない人生を送っているのでは……、ないですかねぇ?」

林田「いやぁ、おっしゃる通りですよ……。今の私は塾講師のアルバイトで、やっと食いつなぐ毎日ですから……」

喪黒「そうですか……。あなたに時間があれば、後でゆっくりと話をしたいところですが……」

喪黒が差し出した名刺には、「ココロのスキマ…お埋めします 喪黒福造」と書かれている。

林田「ココロのスキマ、お埋めします!?」

喪黒「実はですね……。私、人々の心のスキマをお埋めするボランティアをしているのですよ」

林田「そうなんですか……。私は、林田といいます」

喪黒「じゃあ、林田さん。あなたに時間ができたら、例の店で会いましょう。場所は名刺の裏に書かれていますよ」

喪黒から貰った名刺の裏を見る林田。名刺の裏には、BAR「魔の巣」の住所がボールペンで書かれている。
6:2018/09/10(月) 22:28:37.014
休日。BAR「魔の巣」に入店する林田。店の席には、林田を待つ喪黒が座っている。

喪黒「お待ちしていましたよ。林田さん」

林田が喪黒の隣の席に腰掛ける。

林田「じゃあ、レモンジュースでお願いします」

喪黒「マスター、林田さんにレモンジュースを!」

林田の前にレモンジュースが置かれる。

喪黒「どうやら……。林田さんにも、心のスキマがおありのようですなぁ……」

林田「はい。仕事でも、人生でも……。今の私は行き詰まった状態と言えるでしょう」

喪黒「おそらく、今の林田さんは……。東都大学出身の肩書を、むしろ重圧に感じているのではないですか?」

林田「ええ、そうですよ……。東大合格をしたものの、その後の私は挫折が続いていますから……」
   「就職活動に失敗し、卒業後に何とか高校教師となったものの……。数年で学校を退職……」

喪黒「なるほど。林田さんも、いろいろ苦労をされてきたようですねぇ……」

林田「勉強ができることしか取り柄がなかった私が行き着いたのは……、塾講師のアルバイトでした」
7:2018/09/10(月) 22:30:43.960
喪黒「とはいえ、その塾講師のアルバイトでも……。あなたは何かと気苦労を抱えているようですなぁ……」

林田「おっしゃる通りです。授業のやり方や、生徒への指導で試行錯誤していますから……」

喪黒「大変ですねぇ」

林田「はい。東大を出たもの、社会には全く適応することができず今に至っています」

喪黒「人並み以上に学力が高くて、いい大学を出ることができても……」
   「それが社会に適応する能力につながるとは、必ずしも限らないのですから……」

林田「ええ……、お恥ずかしい話です。何しろ、一人前の大人として人生を生きるための知恵や……」
   「生存競争が厳しい社会に適応するための知恵ってのは……。受験勉強をしても身につきませんからね」

喪黒「そうですよ。マニュアル通りの生き方で何とかなるのは、大学受験までの話です」
   「だから……。社会人になってからは、応用力や世間知がないと世渡りは難しいのですよ」

林田「それは、言えてますね。今の私は、デカルトの言う『世間という大きな書物』から学ぶ必要があるのでしょうね」

喪黒「大丈夫です、林田さんはまだ若いですから……。世間について学ぶために、まだ十分な余裕があるはずです」

林田「とはいえ……。どんな風に世間について学べばいいのか、やり方が全然分からないのですから……」
8:2018/09/10(月) 22:32:36.821
喪黒「林田さん。例えば、社会人向けのサークルにでも加入してみたらどうです?」
   「ほら、要するに……。共通の趣味や嗜好を持った人たちが集まり、交流を深めるんですよ」
   「そうすることにより、仕事以外での楽しみができますし……」
   「コミュニケーション力や人生経験もついて、世間知を深めることができるはずです」

林田「なかなかよさそうですね、それ……」

喪黒は、林田に一枚の紙を渡す。

林田「これは一体何ですか……?」

喪黒「社会人向けサークルの案内状ですよ」
   「この紙に書かれた日程と場所で、新メンバー加入のための催しを行うことになっています」

林田「そうですか……。じゃあ、騙されたと思って……」


とあるホテル。宴会場には大勢の参加者たちがいる。スーツを着た林田が、周囲を眺めている。

林田に若い女性が声をかける。スーツ姿を着ていて、容姿端麗な女性だ。

仁美「あなた、このサークルに参加するのですね」

テロップ「和久田仁美(30) 博士研究員・サークルメンバー」
9:2018/09/10(月) 22:35:03.084
林田「はい。そうですけど……」

仁美と会話する林田。2人はすっかり打ち解けている。

仁美「なるほど……。林田さんは東大卒で、私より1歳年下……。同じ母校の後輩なんですね……」

林田「ええ……。でも、博士号を取った和久田さんと違って、僕は東大卒でも落ちこぼれですから……」
   「何しろ、僕は社会に適応できなかった上……。現在は塾講師のアルバイトなんですよ……」

仁美「林田さん、自分を卑下するべきではありませんよ。社会に適応できなかったというのは、私も共通しています」
   「なぜなら、現在の私は身分が不安定なポスドクで、アルバイトを掛け持ちする生活をしていますから……」

林田「そうなんですか……。和久田さんも、いろいろ苦労を抱えているんですね……」


BAR「魔の巣」。喪黒と林田が席に腰掛けている。

喪黒「どうです?あなたに合った社会人サークルは見つかりましたか?」

林田「はい。この間加入したサークルは、まさに私と相性が意外と合っていたようです」

喪黒「よかったですねぇ……。ところで、どんなことをやるサークルなんですか?」

林田「うーーーん……。一言で言うと、『何でもあり』ですかね……」
   「サークルが開催される日によって、やることが異なることが多いんですよ」
10:2018/09/10(月) 22:37:15.148
喪黒「間違いなく、今の林田さんにはいい経験になっているでしょう」

林田「はい。サークル活動のおかげで、今まで経験していない分野に触れることができました」

喪黒「それだけでなしに……。林田さんの人間関係も、今までより幅が広がったはずです」

林田「ええ……。サークル活動で出会った女性が、今では私の彼女になりましたから……」

喪黒「まさに、社会人サークルは……。林田さんにとっては、いいことずくめだったのでしょうねぇ。今のところは……」

林田「そりゃあ、もう……」

喪黒「ですがねぇ……。私は林田さんに、どうしても忠告しておきたいことがあるのですよ」

林田「は、はい……」

喪黒「サークル活動に夢中になるのもいいですが……。社会人サークルは、あくまでも人生の付属物なのですから……」
   「サークル活動が人生の目的となり、サークル仲間が人間関係の全てになると、自らの生活に支障をきたしますよ」

林田「ええ……。それは十分承知していますよ……」

喪黒「約束してください。社会人サークルにのめり込み過ぎてはいけません」
   「自分の今の仕事や人生を大切にした上で、ほどほどにサークル活動に関わるべきなのです」

林田「わ、分かりました……。喪黒さん」
11:2018/09/10(月) 22:39:18.731
社会人サークル。林田を含めたメンバーたちが多彩な活動をしている。

とある商業施設。広めのカフェで、読書会を行う例の社会人サークル。林田も分厚い本を読んでいる。

とある部屋。机の上にある胸像の周りを取り囲み、デッサンをする例の社会人サークル。林田も画用紙に模写を行っている。

とある森の中。テントを立ててキャンプを行う例の社会人サークル。林田もキャンプに加わっている。


ある日の休日。林田は、仁美と手をつなぎながら街の中を歩いている。

林田(こんな人生があったのか……)


夕方、栄伸塾。林田を含めた塾講師たちが、授業前のミーティングを行っている。

塾講師たちがいる机の上には、書類が並べられている。女性の室長が、林田に対して何かを言っている。

林田(いつもいつも、何かと僕を目の敵にするこの室長……。僕は、彼女とは全く相性が合わない……)

夜。塾講師たちが、各々の生徒たちに個別指導を行っている。ある男子生徒を相手に個別指導を行う林田。

男子生徒「あの、先生……」

林田「どうしたんですか……」
12:2018/09/10(月) 22:41:22.672
男子生徒「もう少し、分かりやすく教えてください。だって先生、東大卒でしょ?」

林田(僕はまた、こう言われるのか……。なまじ、東大に合格してしまったがために……)


ある日。ファミレスの中にいる林田と仁美。2人は食事をしながら会話をしている。

仁美「……そうなんですか、林田さん。塾講師のお仕事、大変なんですね……」

林田「ええ……。しかも、最近では室長との人間関係に悩んでいて……」

仁美「それはお気の毒ですね……。思い切って、転職でもしたらどうです?」

林田「次の仕事が簡単に見つかるのなら、僕だってここまで悩みませんよ……」
   「僕は学業しか取り柄がなかったから、今の塾講師のバイトしか仕事がないんですよ……」

仁美「そんなことはありません。林田さんに向いているお仕事、私、知っていますから……」
   「私が今働いている会社が、おそらくそうだと思います」

林田「え!?和久田さん、ポスドクでバイト暮しだったはずでしょ……!?」

仁美「今まではそうでした。でも、現在のサークル活動を通じて知り合った仲間に紹介して貰い……」
   「とある出版社に正社員として就職することができたんです」
13:2018/09/10(月) 22:43:27.736
林田「そ、それじゃあ……」

仁美「そうです。私が勤めている出版社の幹部に、サークル関係者がいるんですよ」
   「だから、彼に頼めば林田さんもその会社で正社員に採用されるはずです」

林田「うーーーーーん……」

林田の頭の中に、喪黒の忠告が思い浮かぶ。

(喪黒「サークル活動が人生の目的となり、サークル仲間が人間関係の全てになると、自らの生活に支障をきたしますよ」)

林田(果たして、そうだろうか……)

(喪黒「自分の今の仕事や人生を大切にした上で、ほどほどにサークル活動に関わるべきなのです」)

林田(いや、むしろ……。このまま塾講師のバイトを続けるよりも、和久田さんの話に乗った方が、僕には得なはず……)
   (それに、彼女の善意の誘いをこのまま断るのは悪い気がする……)

林田「分かりました、和久田さん!あなたが紹介した会社、今度、面接を受けてみますよ!!」

仁美「本当ですよね!!私、林田さんと一緒に働ける日を楽しみに待っていますから!!」

目を輝かせながら、林田の手を握る仁美。
14:2018/09/10(月) 22:45:30.611
ある都市の郊外。ビルの看板には、「楽園出版社」の文字が見える。

同社で面接に臨む林田。林田に対し、面接官が親しげに声をかける。

面接官「君が林田君か。実はな……。今、君がいる社会人サークルには、私も加入しているんだよ」

林田「そうなんですか……!」

面接官「道理で、見覚えがある顔のような気がしたんだよな……。君……」


アパートの室内。スマホを取り、楽園出版社の関係者と通話をする林田。

林田「もしもし、林田です……。そうですか……、ありがとうございます!」

スマホを切る林田。林田は、充実した表情をしている。

林田(やった……、楽園出版社に採用されたぞ……!)


ある朝。スーツを着た林田が電車に乗っている。この日は、林田が楽園出版社に出社する最初の日だ。

林田(これで僕も……、晴れて正社員……!いやぁ、緊張するなぁ……)
15:2018/09/10(月) 22:48:41.104
駅を降り、街の中を歩く林田。彼が人気のつかない道を歩き、角を曲がったその時……。目の前に喪黒が現れる。

林田「おはようございます、喪黒さん……。いやぁ、喪黒さんが紹介してくれたサークルのおかげで……」
   「私もようやく正社員に……」

喪黒「林田秀樹さん……。あなた約束を破りましたね」

林田「なっ……!?」

喪黒「社会人サークルに過度にのめり込まないこと……。これが、あなたと私との約束でしたよねぇ……」

林田「ええ、喪黒さんのと約束は今も覚えています。だから、サークルとの距離は適度に保っていますが……」

喪黒「林田さん……。私はあなたに忠告したはずです」
   「自分の今の仕事や人生を大切にした上で、ほどほどにサークル活動に関われ……と。にも関わらず、あなたは……」
   「塾講師のアルバイトを辞めて、サークル仲間が進めた出版社への転職を行いましたねぇ……」

林田「それの何がいけないんですか!」
   「不安定な身分である塾講師のバイトから、安定した会社の正社員になることができるんですよ!!」

喪黒「サークル活動が人生の目的となり、サークル仲間が人間関係の全てになって……。本当にいいんですか!?」

林田「私は別に構いません!今の生活に、私は心から満足していますから!!」
16:2018/09/10(月) 22:52:05.638
喪黒「分かりました……。そこまで言うのなら、あなたを止めるつもりはありません」
   「ですが……、どのようなことになっても私は知りませんよ!!」

喪黒は林田に右手の人差し指を向ける。

喪黒「ドーーーーーーーーーーーン!!!」

林田「ギャアアアアアアアアア!!!」


楽園出版社。正社員となった林田が、机の上のパソコンに向かう。林田の隣の席では、仁美が仕事相手と電話をしている。

林田が面接を受けた日の面接官だった管理職――例のサークルのメンバーが、林田と仁美に声をかける。

管理職「君たち……。今度のサークルには、ぜひとも参加してくれないか。なぜなら、特別な研修があるんだよ」


ある研修。林田を含めたTシャツ姿のメンバーたちが、DVDを見ている。プロジェクターにより、スクリーンに映像が映し出される。

仁美を含めた複数のメンバーに囲まれて、罵声を受ける林田。林田は身を震わせて泣きながら、何かを叫んでいる。

泣きやんだ後も、神妙な表情で何かを話し続ける林田。林田に対し、仁美を含めた周りのメンバーたちが一斉に拍手をする。

研修の様子はどうも変だ。林田や仁美を含め、メンバーたちは畳の上に座って何かの言葉を唱えながら瞑想をしている。
17:2018/09/10(月) 22:55:35.806
テロップ「数年後――」

朝。駅のプラットフォーム。会社や学校に向かう通行人たちが会話をしている。

通行人たち「全く、『楽園の会』は恐ろしい宗教だな!」「ああ。新幹線爆破テロをやるなんて、正気じゃねぇな!」

新興宗教「楽園の会」本部。テレビの中継を眺める教祖及び教団幹部たち。教団幹部の中には、林田や仁美もいる。

教祖「正義は我々の側にある。教団を迫害する悪の国家権力とは、どこまでも戦うのみだ!」

教団幹部たちの手には、拳銃が握られている。引き締まった表情の林田や仁美。教団本部の周辺には、機動隊員たちが集結している。


家電量販店。ショーウィンドウの奥にある液晶テレビを見つめる通行人たち。通行人たちから離れた所に喪黒がいる。

テレビ「たった今、機動隊が教団の本部に突入しました!」

喪黒「現代の日本は学歴社会であり……。多くの人々が熾烈な受験戦争や学歴によって、進路や人生を左右されています」
   「受験や学歴は社会を生きる重要な尺度の一つですが……、果たして学力の高さだけが社会人の価値なのでしょうか?」
   「なぜならば……。マニュアル通りの生き方をしてきた受験エリートは、社会に出てから必ずどこかで行き詰まるからです」
   「そもそも、社会を生き抜くための世間知は問題集には載っていないですから……。自分の頭で学ぶしかありません」
   「自分の頭でものを考えることをやめて、マニュアルを盲信する生き方で本当にいいのですかねぇ?林田秀樹さん……」
   「オーホッホッホッホッホッホッホ……」

                   ―完―
18:2018/09/10(月) 22:58:25.109 ID:Kbdoxfxb0.net
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