1:2019/09/11(水) 22:54:29.405 ID:h01Uby1r0.net
男「長生きなんてしたくないよな」

友人「分かる。ジジイになる前に死にたいよな」

男「ヨボヨボになってまで生きたくないよなぁ、70や80まで生きるなんて冗談じゃないよ」

友人「何歳ぐらいで死にたい? 50歳ぐらい?」

男「いやぁ~、50なんてもうジジイっしょ! 化石っしょ!」

友人「じゃあ40?」

男「40もジジイだろ。はっきりいって30だって長すぎるって思ってるし」

友人「じゃあ30までには死ぬか」

男「おう、30歳になるまでに死のうぜ」

友人「そうだな」
2:2019/09/11(水) 22:57:28.973 ID:h01Uby1r0.net
男「30まで好きなことやってさ、やりたいことやってさ、あとは死ぬだけって状態にしてさ」

男「30の誕生日が近くなったら、二人でパーっと死のうぜ」

友人「そりゃいいや!」

友人「見苦しく生にしがみつく奴らを置き去りにして、華々しくこの世を去ろうぜ!」

男「絶対だかんな!」

友人「ああ!」

――――

――
4:2019/09/11(水) 23:00:23.320 ID:h01Uby1r0.net
男(あれから俺も成長して――)

男(高校に入り……)


男「さて、予備校行かなきゃ」


男(なんとか二流大学に合格。大学に入ったら、人並みに遊び、学び、楽しみ……)


男「ウェーイ!」グビグビ

男「エントリーシート書くことねぇなぁ~」


男(どうにかこうにか、それなりの企業に就職できた)
6:2019/09/11(水) 23:02:54.634 ID:h01Uby1r0.net
上司「この件は君に任せようかな」

男「はいっ! 頑張ります!」

上司「期待してるよ」

男「必ず成功させてみせます!」



男(俺の性に合ってるのもあり、仕事は順調……)

男(同期の中じゃ、一番出世するんじゃないかともいわれている)
7:2019/09/11(水) 23:05:04.141 ID:h01Uby1r0.net
男(そして――)


男「結婚しよう」

女「はい……!」


男(こんな俺もついに結婚することができた)


赤子「おぎゃあ、おぎゃあ……」

男「パパだぞ~!」


男(やがて子供も産まれて、まさに順風満帆)

男(そんな時だった――)
8:2019/09/11(水) 23:07:30.166 ID:h01Uby1r0.net
ある日――

男(あれは……?)

友人「よっ、待ってたよ」

男「あ、お前……! どうしてここに……」

友人「今はここら辺に住んでるって聞いてな。何年ぶりだろうな」

男「ああ、もう全然会ってなかったからな」

友人「だけどお互い変わってないなぁ」

男「ハハハ、まぁな」
9:2019/09/11(水) 23:09:41.834 ID:h01Uby1r0.net
男「風の便りじゃ、お前は理系の大学に進んだんだっけ?」

友人「ああ、今は独立して一人で研究やってるよ。自宅を改造したりしてな」

男「すっげぇな~。どんな研究?」

友人「ん~……生命についてだな。あとは細菌とかウイルスとか……」

男「へぇ~、医療関係か。頭よかったもんなぁ」

男「……」

男「ところで、俺になんか用か? 俺を待ってたんだよな?」

友人「一緒に死のうぜ」
10:2019/09/11(水) 23:11:34.068 ID:h01Uby1r0.net
男「……え?」

男「なにいってんだ? いきなり」

友人「もうすぐ俺ら30だろ? 誕生日も近いし」

男「そうだけど……なんで死ななきゃならないんだよ!」

友人「だって俺たち約束したろ? 30になるまでに死のうって」

男「あ……」

友人「だからさ、一緒に死のう! いさぎよくパーっとさ!」

男「……」
11:2019/09/11(水) 23:12:35.907 ID:Hdz49soir.net
あらら
12:2019/09/11(水) 23:13:24.304 ID:h01Uby1r0.net
男「冗談じゃない!」

友人「!」

男「死ねるわけないだろ! 会社入って、結婚して、子供も産まれて、人生これからって時に!」

友人「は……? 死ねない……?」

友人「約束したじゃないか! 30までに死のうって! あの約束はなんだったんだ!」

男「ガキの頃の約束なんて、あんなの無効だ無効! 律儀に覚えてる方がどうかしてるぜ!」

友人「なんだって……!?」
14:2019/09/11(水) 23:16:36.713 ID:h01Uby1r0.net
友人「ちょっと待ってくれよ……俺はあの約束をずっと信じてたんだ!」

友人「俺は好きなことやって、やりたいことやって30手前で死ぬために生きてきたんだぞ!」

友人「見苦しく生にしがみつく奴らを置き去りにして、華々しくこの世を去るために!」

友人「だから今日、お前と一緒に死のうと……! ここでずっと待ってて……!」

男「知るかよ!」

男「きっとお前はもう死ぬからって、未来を見据えてない生活してきたんだろうが」

男「俺は心変わりしたんだ! 俺には俺の人生設計があるんだ! 80まで90まで生きたいんだ!」

男「分かったら、とっとと帰れ! 俺を巻き込むんじゃねえ!」
16:2019/09/11(水) 23:19:53.962 ID:h01Uby1r0.net
友人「だったら……殺してやる」

男「は?」

友人「俺はもうやりたいことをやってしまった……だからお前を殺してやる!」サッ

男(ナイフ!?)

友人「さっき俺は細菌やウイルスを研究してるっていったろ? 色んな薬品も扱うんだ」

友人「これには強力な毒を塗布してあってな……ちょっと刺すだけで楽にあの世に行ける」

男「な……!」

友人「さあ……じっとしてろ」

男「ちょっと待てよ……落ち着けよ……」

友人「うおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」

男「ひいっ!」
17:2019/09/11(水) 23:21:36.409 ID:h01Uby1r0.net
友人「うおおおっ! きえええっ! ひああああっ!」

ブンッ! シュバッ! ビュアッ!

男「わっ、わわわっ!」

男「ひいいっ!」ダッ

友人「待てえええええええええええええっ!!!」タタタタタッ



タタタタタッ… タタタタタッ…
19:2019/09/11(水) 23:24:24.388 ID:h01Uby1r0.net
友人「追い詰めたぞ……」ジリ…

男「うう……」

友人「逃げたつもりが、かえって人気のない場所に来てしまったな」

男「くっ……!」

友人「さあ、氏んでくれ! すぐに俺も後を追うから……! それがお前のためなんだ……!」

男「ひいっ!」

男「た、頼む……ま、待ってくれ……! ちょっとでいいから俺の話を聞いてくれ……!」

友人「……」
22:2019/09/11(水) 23:26:20.883 ID:h01Uby1r0.net
男「たしかに俺は、昔は30ぐらいまでに死にたかった……」

男「だけど、高校入って一生懸命受験勉強してさ、大学入って騒いだり学んだりして」

男「会社入って仕事に打ち込むうち……」

男「なんていうか、生きることの素晴らしさに気づいてしまったんだ!」

友人「……」

男「それに今の俺には妻も子供もいる……生きなきゃいけないんだ」

男「だ、だから頼む……! 俺を見逃してくれないか……! 助けて下さいっ!」

友人「……」
24:2019/09/11(水) 23:29:03.061 ID:h01Uby1r0.net
友人「……分かったよ」ポイッ

男「え」

友人「俺だって本当は、友達を手にかけることなんてしたくない」

友人「それにお前の幸せな人生をブチ壊しにしたくもない」

友人「お前を巻き込むのはやめるよ……」

男「ほ、本当か!? ……ありがとう!」

友人「じゃあな。俺は家に帰って、やりたかったことを中断してから、死ぬことにする」

友人「元気でな……」

男「ああ……」
26:2019/09/11(水) 23:32:21.448 ID:h01Uby1r0.net
グサッ!!!

友人「ぐっ……!?」

ドサッ…

男「おお~、本当にちょっと刺しただけで死にやがった」

男「ふん……お前みたいな危険人物、生かしておけるか」

男「いつまた心変わりして、俺を殺しにくるか分からないしな」

男(人気のないところに逃げ込んだのも実はわざとだ)

男(俺はお前を返り討ちにする気満々だったんだよ)

男(目撃者はいないし、死体は埋めて、ナイフはどこか捨てれば、俺の犯行がバレることはないだろう)
27:2019/09/11(水) 23:33:36.885 ID:DzRB9KGE0.net
オワタ
28:2019/09/11(水) 23:34:17.248 ID:dqG55fCZ0.net
捕まって人生終わるパターンかな
29:2019/09/11(水) 23:35:10.816 ID:h01Uby1r0.net
男「ただいまー」

妻「お帰りなさい、あなた」

男「赤ちゃんは元気か?」

妻「ええ、今はよく寝てるわ」

男「じゃあ寝顔を見せてもらおうかな」

男(これでよかったんだ……)

男(こんなに幸せなのに30までに死ぬなんてとんでもない! 俺は長生きしてやるんだ!)
30:2019/09/11(水) 23:36:01.448 ID:KJ3SKdwl0.net
大変なことになりそう
32:2019/09/11(水) 23:39:16.768 ID:h01Uby1r0.net
……

男(あれから俺は何事もなく30歳になれた)

男(仕事も家庭も順調そのもの。あいつのことも記憶から薄れかけてきた頃――)



TV『続いてのニュースです。昨日、男性の遺体が発見されました』

妻「まあ、物騒ねえ~」

男「……」

TV『身長は……、服装は……、年齢は……』

男「……!」

男(これは……あいつだ! ちっ、埋め方が甘かったか……!)

男(だが落ち着け! 警察が俺にたどり着くなんて絶対に不可能だ!)

男(いつも通り生活してりゃいいのさ……)
34:2019/09/11(水) 23:42:48.701 ID:h01Uby1r0.net
数日後――

TV『男性の遺体遺棄事件の続報です』

TV『身元が判明したため、警察が男性の自宅を調べたところ』

TV『この男性は自宅を研究室とし、さまざまな病原菌やウイルスを研究していることが分かりました』

TV『中には高度な研究所でしか保管を許されない危険なウイルスもあり……』

男「……!」

男(あいつ……こんな危険人物だったのか。まるでテ口リストじゃないか)

男(やっぱり殺しておいて正解だったな……)
39:2019/09/11(水) 23:46:18.323 ID:h01Uby1r0.net
TV『さらにこの男性は、独自のウイルスを開発しており、自分の誕生日になったら』

TV『そのウイルスが自動的に外界にばら撒かれるよう仕掛けを施しておりました』

男「なんだって!?」

男(そうか、あいつのやりたかったことって……)

男(危険なウイルスをばら撒いて、大勢の人間を道連れにすることだったのか!)

TV『このウイルスは空気感染する上、拡散速度は凄まじく、おそらくウイルスは既にかなりの広範囲に』

TV『広まっているものと思われ……』

男「ウソだろ……!?」

男(ってことは、俺はやっぱり死ぬのか!?)

男(くそっ! こうと知ってれば、あいつを殺さなかったのに!)

TV『男性が遺したノートには、このウイルスの効能が記載されておりました』

男「どんな症状だ! 熱が出るのか!? 血でも吐くのか!? どのぐらい苦しむんだ!?」
41:2019/09/11(水) 23:48:05.763 ID:h01Uby1r0.net
TV『なんとこのウイルス、感染した人間を不死身にするというウイルスで……』

TV『感染者は永遠に年を取り続け死ねなくなるという……』







―終―
44:2019/09/11(水) 23:50:40.594 ID:1CfJtba7r.net
こえーよ乙
43:2019/09/11(水) 23:50:00.295 ID:LqiP1hOI0.net
星新一っぽい
おつ
引用元:http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1568210069