1: 2011/06/23(木) 01:06:04.63 ID:eJi+2xnoO
お姫様「今更結婚の約束を思い出すなんて……」
お姫様「じ、じゃあ魔王を倒して来てくれたら考えてあげてもいいわよ?」
その後、魔王は討伐されるが、彼が戻ってくることは二度となかった
お姫様「じ、じゃあ魔王を倒して来てくれたら考えてあげてもいいわよ?」
その後、魔王は討伐されるが、彼が戻ってくることは二度となかった
7: 2011/06/23(木) 02:06:59.96 ID:LSQQycje0
民衆「陛下! 女王陛下万歳!」
臣下「……なき先王のご遺志を引き継がれ、非道なる魔王を暗殺、さらには残党軍との決戦を制された……陛下は英雄ですな」
女王「……英雄は私ではない」
臣下「勇者殿……でありますか?」
女王「彼こそが真の……」
臣下「愛国者、でありましたな。 しかし決戦で行方しれずになってからかれこれ10年……」
女王「……生きている、などとは申しておらぬ」
臣下「左様でございますか……ならばこそ、民草は勇者殿を神格化し、陛下を導き手たる英雄と見たのでございましょう」
女王「……」
臣下「しかし、不思議な縁ですな? 外をごらん下され」
女王「モニュメントか?」
臣下「世界大戦記念碑……勇者殿の名前はあそこに最初に刻まれておりますからな」
臣下「……なき先王のご遺志を引き継がれ、非道なる魔王を暗殺、さらには残党軍との決戦を制された……陛下は英雄ですな」
女王「……英雄は私ではない」
臣下「勇者殿……でありますか?」
女王「彼こそが真の……」
臣下「愛国者、でありましたな。 しかし決戦で行方しれずになってからかれこれ10年……」
女王「……生きている、などとは申しておらぬ」
臣下「左様でございますか……ならばこそ、民草は勇者殿を神格化し、陛下を導き手たる英雄と見たのでございましょう」
女王「……」
臣下「しかし、不思議な縁ですな? 外をごらん下され」
女王「モニュメントか?」
臣下「世界大戦記念碑……勇者殿の名前はあそこに最初に刻まれておりますからな」
18: 2011/06/23(木) 03:04:00.24 ID:LSQQycje0
女王「ふんっ」
臣下「時に陛下……」
女王「また婚儀の話か?」
臣下「これはこれは……」
女王「断る、余は……私はこの国の妻なのだから」
臣下「この国……なるほど、しかし、ご世継の争いで内乱となってはこの若輩……魔王軍との戦いで臥した戦友に顔向けできませぬ」
女王「……」
臣下「どうぞお考えください、これは、勇者殿……いえ、勇者の遺志よ」
女王「っ!!」
臣下「決戦に先立ち、軍主導の暗殺作戦で魔王を廃すこと自体は成功したけど払った犠牲は小さくなかった」
女王「貴様もその一人であったな」
臣下「片足一本ですんだのだからむしろ運がよかったというべきだわ」
臣下「時に陛下……」
女王「また婚儀の話か?」
臣下「これはこれは……」
女王「断る、余は……私はこの国の妻なのだから」
臣下「この国……なるほど、しかし、ご世継の争いで内乱となってはこの若輩……魔王軍との戦いで臥した戦友に顔向けできませぬ」
女王「……」
臣下「どうぞお考えください、これは、勇者殿……いえ、勇者の遺志よ」
女王「っ!!」
臣下「決戦に先立ち、軍主導の暗殺作戦で魔王を廃すこと自体は成功したけど払った犠牲は小さくなかった」
女王「貴様もその一人であったな」
臣下「片足一本ですんだのだからむしろ運がよかったというべきだわ」
19: 2011/06/23(木) 03:11:42.29 ID:LSQQycje0
女王「そうだな……」
臣下「だけど、決戦には参加できずに……戦勝と勇者行方不明の知らせだけを病室のベッドで聞かされたわ」
女王「私……余も似たようなものだ従軍を希望したが却下された」
臣下「しかし、陛下は私よりよっぽど勇者の最後に詳しいわ」
女王「父王から聞かされたのだ……敵の反攻で中央が突破され、瓦解しかけた軍主力を再編する時間を稼ぐ為に……」
臣下「唯一の渡河地点であったクリン橋を爆破……その際に自らも行方不明となる」
女王「まったく、やつらしくも無い最後じゃ」
臣下「まったくだわ。 小さい頃からおどおどして、陛下と一緒に私の後をついて回っていたのに……」
女王「沿岸警備隊も作戦に参加した陸・空軍の将兵も戦後、遺体を捜索したが結局発見されなんだ」
臣下「だけど、決戦には参加できずに……戦勝と勇者行方不明の知らせだけを病室のベッドで聞かされたわ」
女王「私……余も似たようなものだ従軍を希望したが却下された」
臣下「しかし、陛下は私よりよっぽど勇者の最後に詳しいわ」
女王「父王から聞かされたのだ……敵の反攻で中央が突破され、瓦解しかけた軍主力を再編する時間を稼ぐ為に……」
臣下「唯一の渡河地点であったクリン橋を爆破……その際に自らも行方不明となる」
女王「まったく、やつらしくも無い最後じゃ」
臣下「まったくだわ。 小さい頃からおどおどして、陛下と一緒に私の後をついて回っていたのに……」
女王「沿岸警備隊も作戦に参加した陸・空軍の将兵も戦後、遺体を捜索したが結局発見されなんだ」
20: 2011/06/23(木) 03:17:03.69 ID:LSQQycje0
臣下「必要爆薬量の約5倍。 クリンの大橋が吹き飛ぶほどの爆発には敵もたいそう驚いたでしょう」
女王「……奴は気弱な上に悪戯者であったからな」
臣下「陛下とよく私や同僚に悪戯を仕掛けてきたわね」
女王「……久しいな、この感覚」
臣下「……陛下、勇者といえば……」
女王「約束か……?」
臣下「ええ、『大きくなったら』」
女王「『お嫁さんにしてあげる』 か、結局、どちらを……とは最後までいわなんだ」
臣下「陛下……」
女王「……奴は気弱な上に悪戯者であったからな」
臣下「陛下とよく私や同僚に悪戯を仕掛けてきたわね」
女王「……久しいな、この感覚」
臣下「……陛下、勇者といえば……」
女王「約束か……?」
臣下「ええ、『大きくなったら』」
女王「『お嫁さんにしてあげる』 か、結局、どちらを……とは最後までいわなんだ」
臣下「陛下……」
21: 2011/06/23(木) 03:22:33.89 ID:LSQQycje0
10年前……
魔王軍総司令部
臣下「派手な泣き声が聞こえるわ……恐らく女中」
勇者「なら、巣はここで当たりだろう。その下品なドアごと吹っ飛ばしてやる」
臣下「……全室検査してる時間はなさそうね」
勇者「歴史に名を残す準備は?」
臣下「いつでも」
勇者「突入(ブリーチ)!」
BOM!!
魔王軍総司令部
臣下「派手な泣き声が聞こえるわ……恐らく女中」
勇者「なら、巣はここで当たりだろう。その下品なドアごと吹っ飛ばしてやる」
臣下「……全室検査してる時間はなさそうね」
勇者「歴史に名を残す準備は?」
臣下「いつでも」
勇者「突入(ブリーチ)!」
BOM!!
23: 2011/06/23(木) 03:29:59.72 ID:LSQQycje0
勇者「遂に追い詰めたぞクソ野郎がっ!」TOTOTOTOTOTONK!
臣下「クリア!」SHCOCOCOCOCO
勇者「死体を確認! 奥のベッドだ!」
臣下「ええ……っ、これは……」
勇者「こいつが……魔王?」
臣下「……間違いないわ。 それにしても、子供、それも姫様と同じくらいの年齢? 魔王の正確な正体は掴めていなかったけど、なるほどね」
勇者「デムッ! 冗談じゃないっ! 俺たちはこんな子供を! 女の子を……助けを求めて泣き叫ぶほど追い詰めて殺したってのかよっ!!」
臣下「落ち着きなさいっ! 大丈夫……大丈夫よ? 彼女は人類の天敵で、あなたは正しいことをしたわ……」
臣下「クリア!」SHCOCOCOCOCO
勇者「死体を確認! 奥のベッドだ!」
臣下「ええ……っ、これは……」
勇者「こいつが……魔王?」
臣下「……間違いないわ。 それにしても、子供、それも姫様と同じくらいの年齢? 魔王の正確な正体は掴めていなかったけど、なるほどね」
勇者「デムッ! 冗談じゃないっ! 俺たちはこんな子供を! 女の子を……助けを求めて泣き叫ぶほど追い詰めて殺したってのかよっ!!」
臣下「落ち着きなさいっ! 大丈夫……大丈夫よ? 彼女は人類の天敵で、あなたは正しいことをしたわ……」
24: 2011/06/23(木) 03:34:43.56 ID:LSQQycje0
者「あぁ……デムッ……クソッタレ……」
臣下「部屋の状況を見るに必死に隠れていたんでしょうが、戦闘音が近づいてくるのが怖くて隠れ場所を移そうとして……」
勇者「やめてくれ……あぁ、畜生」
臣下「すぐ前に私たちが居ることに気がついて、踏み込んで来た時に命乞いでもするつもりだったのかもしれないわ、だけど、扉が爆破された」
勇者「……」
臣下「だから何だって言うの? あなたは勇者にしかできない、偉大なことを成し遂げたのよ」
勇者「……」
臣下「死体を置いて立ちなさい! 作戦は今だ継続中なのよ? 滑走路を失えば投入された仲間達全員がここで死ぬことになる!」
勇者「……あぁ、わかったよ……とにかく滑走路の連中に連絡を……」
PAPAPAN
臣下「えっ……あっ、っぅぅぅ!!!」
勇者「臣下っ!?」 TOTOTOTONK
臣下「大丈夫、大丈夫よ……右足が動かないけど……」
勇者「最悪、何もかもが最悪だ……」
臣下「部屋の状況を見るに必死に隠れていたんでしょうが、戦闘音が近づいてくるのが怖くて隠れ場所を移そうとして……」
勇者「やめてくれ……あぁ、畜生」
臣下「すぐ前に私たちが居ることに気がついて、踏み込んで来た時に命乞いでもするつもりだったのかもしれないわ、だけど、扉が爆破された」
勇者「……」
臣下「だから何だって言うの? あなたは勇者にしかできない、偉大なことを成し遂げたのよ」
勇者「……」
臣下「死体を置いて立ちなさい! 作戦は今だ継続中なのよ? 滑走路を失えば投入された仲間達全員がここで死ぬことになる!」
勇者「……あぁ、わかったよ……とにかく滑走路の連中に連絡を……」
PAPAPAN
臣下「えっ……あっ、っぅぅぅ!!!」
勇者「臣下っ!?」 TOTOTOTONK
臣下「大丈夫、大丈夫よ……右足が動かないけど……」
勇者「最悪、何もかもが最悪だ……」
25: 2011/06/23(木) 03:37:25.98 ID:LSQQycje0
女王「……下! 臣下!」
臣下「はっ、失礼、少しボーとしていたわ」
女王「そのようじゃ、今日は夏日よの」
臣下「いや、お恥ずかしいところをお見せいたしました」
女王「城に着くまでは先ほどまでのように……そうな、昔のように喋ればよい。 アタシもその方が楽だし」
臣下「そうね、ではそうさせてもらうわ」
女王「ふふっ、で、どこまで話したかな?」
臣下「……お嫁さんにしてあげるのあたり」
女王「うん、そうだった。 でさでさ、結局、臣下はアイツとどこまでいったわけ?」
臣下「聞きたい?」
女王「あー、パス。 全部聞いたらアンタを磔刑に処しそうだわ」
臣下「どうしてそうなるのよ……」
女王「じょーだん、じょーだんだってば」
臣下「もう、本当に? 信じられないわ」
臣下「はっ、失礼、少しボーとしていたわ」
女王「そのようじゃ、今日は夏日よの」
臣下「いや、お恥ずかしいところをお見せいたしました」
女王「城に着くまでは先ほどまでのように……そうな、昔のように喋ればよい。 アタシもその方が楽だし」
臣下「そうね、ではそうさせてもらうわ」
女王「ふふっ、で、どこまで話したかな?」
臣下「……お嫁さんにしてあげるのあたり」
女王「うん、そうだった。 でさでさ、結局、臣下はアイツとどこまでいったわけ?」
臣下「聞きたい?」
女王「あー、パス。 全部聞いたらアンタを磔刑に処しそうだわ」
臣下「どうしてそうなるのよ……」
女王「じょーだん、じょーだんだってば」
臣下「もう、本当に? 信じられないわ」
27: 2011/06/23(木) 03:43:32.81 ID:LSQQycje0
女王「さっきの話じゃないけどアンタだって英雄の一人で名誉勲章の受勲者なのよ? それをこんな下らない理由で処刑してみなよ?」
臣下「くだらないの?」
女王「アタシから言わせてもらえば百回殺しても足りないくらい?」
臣下「ふふっ、懐かしいわね。 こういう会話」
女王「父上の崩御、戦後処理、戦災復興、各軍の再編にえとせとらえとせとら……アンタと合う時間も取れなかったから、どう、最近変わりない?」
臣下「まったく……ね。 変わったことといえば、下の娘が更に可愛くなったかしら」
女王「はぁっ? 知らないわよ、そんなの……と、言いたいところだけど見に行きたいなぁ……」
臣下「昔みたいに抜け出して会いに来ようとしないでよ? おてんばお姫様じゃすまないんだから」
女王「懐かしいなぁ……ねぇ……アイツ、変わりない?」
臣下「ええ」
女王・臣下「……」
臣下「会いたい?」
女王「やめとく。 あったら多分、我慢できない」
臣下「それが賢明ね。 たぶん何かあったら、あなたを許さない」
女王「こわっ!」
臣下「くだらないの?」
女王「アタシから言わせてもらえば百回殺しても足りないくらい?」
臣下「ふふっ、懐かしいわね。 こういう会話」
女王「父上の崩御、戦後処理、戦災復興、各軍の再編にえとせとらえとせとら……アンタと合う時間も取れなかったから、どう、最近変わりない?」
臣下「まったく……ね。 変わったことといえば、下の娘が更に可愛くなったかしら」
女王「はぁっ? 知らないわよ、そんなの……と、言いたいところだけど見に行きたいなぁ……」
臣下「昔みたいに抜け出して会いに来ようとしないでよ? おてんばお姫様じゃすまないんだから」
女王「懐かしいなぁ……ねぇ……アイツ、変わりない?」
臣下「ええ」
女王・臣下「……」
臣下「会いたい?」
女王「やめとく。 あったら多分、我慢できない」
臣下「それが賢明ね。 たぶん何かあったら、あなたを許さない」
女王「こわっ!」
28: 2011/06/23(木) 03:48:04.05 ID:LSQQycje0
臣下「そろそろ、お城に着くわね」
女王「えー、もう? まぁ、いいや アイツによろしく伝えといてよ」
臣下「ええ、恋するお姫様?」
女王「やめてよ……昔の話じゃない、そんなの……」
臣下「そう……ね」
女王「……むふっ、アンタ感謝してよ? アタシがもう諦めてなかったら確実に寝取ってやってるんだからね?」
臣下「うわっ、ムカつく。 こちとら特殊部隊あがりよ?」
女王「ははっ、今日は楽しかったわ じゃ、またね」
臣下「ええ、また……」
女王「えー、もう? まぁ、いいや アイツによろしく伝えといてよ」
臣下「ええ、恋するお姫様?」
女王「やめてよ……昔の話じゃない、そんなの……」
臣下「そう……ね」
女王「……むふっ、アンタ感謝してよ? アタシがもう諦めてなかったら確実に寝取ってやってるんだからね?」
臣下「うわっ、ムカつく。 こちとら特殊部隊あがりよ?」
女王「ははっ、今日は楽しかったわ じゃ、またね」
臣下「ええ、また……」
29: 2011/06/23(木) 03:49:58.58 ID:LSQQycje0
部下「陛下、今何か話し声が?」
女王「気のせいであろう。 ま、余が夢を見ていたのかも知れぬがな」
部下「夢?」
女王「懐かしき……懐かしき友の夢であった」
部下「?」
女王「思えば今日は奴の命日……顔を見せに来てくれたのかも知れぬ」
部下「はぁ?」
女王「もうよい、下がれ」
部下「はっ」
女王「臣下は結局、感染症であっけなく逝ったのであったな……」
女王「あやつめ、あの世で中睦まじくしていると自慢しに出てきたのかも知れぬがそうはさせぬぞ」
女王「まっておれ……まってなさいよ、勇者……」
女王「気のせいであろう。 ま、余が夢を見ていたのかも知れぬがな」
部下「夢?」
女王「懐かしき……懐かしき友の夢であった」
部下「?」
女王「思えば今日は奴の命日……顔を見せに来てくれたのかも知れぬ」
部下「はぁ?」
女王「もうよい、下がれ」
部下「はっ」
女王「臣下は結局、感染症であっけなく逝ったのであったな……」
女王「あやつめ、あの世で中睦まじくしていると自慢しに出てきたのかも知れぬがそうはさせぬぞ」
女王「まっておれ……まってなさいよ、勇者……」
30: 2011/06/23(木) 03:52:20.58 ID:LSQQycje0
――――
臣下「離れなさい、二人とも! 離れて!」
勇者「え、あの……その……」
お姫様「やーよ、ふふっ、勇者だってあたしと一緒にいたいわよね?」
臣下「もうっ、しらないんだからっ!」
勇者「あっ……」
お姫様「あーらら、『子供』ほっぽりだしてどこに行くんだか」
勇者「姫様……あのさ……」
お姫様「ん?」
勇者「約束、覚えてる?」
お姫様『ふふっ、なぁに、止めてよね? 昔の話じゃない? そんなの……』
fin
臣下「離れなさい、二人とも! 離れて!」
勇者「え、あの……その……」
お姫様「やーよ、ふふっ、勇者だってあたしと一緒にいたいわよね?」
臣下「もうっ、しらないんだからっ!」
勇者「あっ……」
お姫様「あーらら、『子供』ほっぽりだしてどこに行くんだか」
勇者「姫様……あのさ……」
お姫様「ん?」
勇者「約束、覚えてる?」
お姫様『ふふっ、なぁに、止めてよね? 昔の話じゃない? そんなの……』
fin
31: 2011/06/23(木) 04:05:11.16 ID:mkURNKtVO
おつ
引用元: お姫様「昔の話じゃない、そんなの……」
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