1: 2012/12/20(木) 03:58:09.02 ID:RzQtQJCE0
P「へ?」

小鳥「プロデューサーさんっ! 私、ちょろくなんてありませんから!」

P「ちょろい? なんの話ですか?」

小鳥「某所では『小鳥は好きだよと言えばすぐぴよぴよする』だとかなんとか言われていますけどねっ」

小鳥「私だって女です、人間です! そう簡単に、他人に心を開いたりはしないんですよ!」

P「……そうですね」

小鳥「わかってもらえますか?」

P「ええ」

小鳥「さっすがプロデューサーさん! そう言っていただけると、私、信じてました~!」

P「……音無さん」

小鳥「はい、なんですか?」


P「俺、音無さんのことが、すきです」

小鳥「……え」

P「だから、お付き合いをしてくれないでしょうか……」

小鳥「……え、ぇ、えぇぇ……!?」カァァ

3: 2012/12/20(木) 04:03:44.64 ID:WSC7EPwT0
ぴよぴよ

4: 2012/12/20(木) 04:05:08.45 ID:RzQtQJCE0
小鳥「あ、あの、その……いきなり何を……え、本気ですか……?」

P「……本気だとしたら、どうします?」

小鳥「そそ、そんな……急に言われても、今までそんなそぶり、全然見せてなかったのに……」

P「……」

小鳥「え、えっと、私……こういう冗談、慣れてないから……」

P「……なーんて」

小鳥「え?」

P「あ、あはは……ほ、ほら、やっぱりちょろいじゃないですか! そんなに慌てちゃって」

小鳥「……あっ! プロデューサーさん、私のこと、試したんですね!?」

P「え、ええ……そんなところです」

小鳥「もう! で、でも私、ちゃーんとわかってましたからね! だから即OK! なんてしなかったし!」

P「あはは、すみません、すみません!」

5: 2012/12/20(木) 04:13:10.44 ID:RzQtQJCE0
小鳥「……」

P「……あの」

小鳥「は、はいっ!」

P「……なんで急に、そんなこと言い始めたんですか? ちょろいとか……」

小鳥「あ、ああそれは……ちょっと、そういう夢を見てしまいまして」

P「夢? さっきの昼寝中に?」

小鳥「はい……って、ひ、昼寝なんてしていませんよ!?」

P「あはは、大丈夫ですよ、律子には黙っておきますから」

小鳥「……すみませんー……」

P「それで、夢って、どんな内容だったんですか?」

小鳥「……えっと、夢の中の私は、その……とある男性に好意を抱いていて……」

小鳥「それで、その人にちょっと声をかけられたりしただけで、すぐぴよぴよしてしまっているんです」

P「……ぴよぴよ?」

小鳥「なんといいますか、一種の興奮状態みたいなものですね」

P「へぇ……」

6: 2012/12/20(木) 04:14:00.15 ID:vzf4ppdn0
ぴよぴよ

14: 2012/12/20(木) 04:22:22.97 ID:RzQtQJCE0
小鳥「その様子を見たみんなから、私はからかわれているんです」

小鳥「『小鳥さんはちょろい!』って……」

P「なるほど……」

小鳥「……で、でも現実の私は、そんなちょろい女じゃありませんけどね!」

P「……確かに、俺もそうだと思います。小鳥さんは簡単な女性じゃないですよね」

小鳥「ふふっ、やっぱりプロデューサーさん、私のことよくわかってくれていますね♪」

P「……と、ところで!」

小鳥「はい、どうかしたんですか?」

P「音無さん、今日、良かったら……飲みにでもいきませんか? ふ、ふふ、ふたりで……」

小鳥「え、でも……プロデューサーさん、明日も早いでしょう?」

小鳥「このあとも外出て、帰りが遅くなるみたいですし……出かけたりしないで、ちゃんとお休みになったほうがいいですよ」

P「…………」

小鳥「飲みになら、今度、ゆっくりできるときにいきましょう。あ、そうだ! あずささんとか社長とかも誘って……」

小鳥「ふふっ! よーし、私、企画しちゃいますよー!」

P「……ありがとうございます…………はぁ」

16: 2012/12/20(木) 04:29:11.28 ID:RzQtQJCE0
P「……」スック

小鳥「あら、もう出るお時間ですか?」

P「は、はい……真をレッスンスタジオまで迎えにいかないといけないので」

小鳥「……プロデューサーさん!」

P「え?」

小鳥「今日もファイト! ですよ!」

P「……」

小鳥「私は裏方ですけれど……ここで真ちゃんとプロデューサーさんの頑張りを、応援していますから!」

P「……あ、ありがとうございます! 行ってきまーす!」

小鳥「うふふっ、行ってらっしゃーい♪」

17: 2012/12/20(木) 04:34:32.98 ID:RzQtQJCE0
【レッスンスタジオ】

P「…………」

P(音無さん、やっぱり優しくて、素敵な人だよなぁ……)

P(でも、なんていうか……鈍感すぎるというか……)

P(今までそれとなくアプローチしてきたつもりなのに、全く感づいてないみたいだし……)

P(さっきはまぁ、俺もへたれてしまったけど……ちゃんとこの気持ちが伝わる日、来るのだろうか)



P「……はぁ~……」

真「プロデューサー! おまたせしま……あれ?」

P「ん? ああ、真……レッスンおつかれさん」

真「はい! でもプロデューサーこそ、疲れた顔してますね……何かあったんですか?」

P「え!? あ、い、いや! そんなことないぞ! 今日も元気元気!」

真「うーん、そうかなぁ~……?」

19: 2012/12/20(木) 04:40:33.09 ID:RzQtQJCE0
真「今日はこのあと、テレビのお仕事、ですよね!」

P「ああ。レッスンのあとだから少々ハードだと思うけど……」

真「へへっ! 大丈夫ですよ、プロデューサー! ボク、まだまだバリバリ頑張れますからっ!」

P「おお、頼もしいな! それじゃあ、そろそろ行こうか」

真「はいっ!」




ブロロロ……

真「あの、プロデューサー」

P「んー?」

真「小鳥さんと、何かあったんですか?」

P「ブーーー!!!」

真「うわっ!? あ、安全運転安全運転!」

21: 2012/12/20(木) 04:47:10.68 ID:RzQtQJCE0
P「す、すまんすまん……大丈夫か?」

真「は、はい……」

P「えっと……、お、音無さん? どど、どうしてそんなこと……」

真「だってプロデューサー、小鳥さんのこと、好きなんですよね?」

P「…………」

真「みんな噂してますよっ! 『プロデューサーは小鳥さんの前でデレデレしまくってる』って」

P「そ、そうなのか!?」

真「っと……ご、ごめんなさい! えっと、陰口叩いてるってわけじゃないんですけど……」

P「あ、いや……もちろん、そうは思わないよ」


P(な、なんてことだ……恥ずかしい……)

25: 2012/12/20(木) 04:53:23.08 ID:RzQtQJCE0
P「……なぁ、真」

真「はいっ!」

P「俺って、そんなにわかりやすいかな……」

真「うーん、まぁ、全員気付いてるってわけじゃないみたいですけど……」

真「っていうか! それってつまり、小鳥さんのこと好きだって認めるってことですよね!?」ガタガタ

P「うおっ!? お、おい、シートを揺らすなって」

真「ああっ、すすみません! ボク、ちょっと興奮しちゃって……」

P「……真もやっぱり、年頃の女の子なんだなぁ」

真「むっ、やっぱりってなんですか! ボク、こーんなに、心から乙女オーラバリバリに出してるっていうのに!」

P「あははは、ちゃんとわかってるよ。ただ、やっぱりそうなんだなって再認識しただけだって」

真「むー……本当にわかってるのかなぁ……」

27: 2012/12/20(木) 05:03:10.16 ID:RzQtQJCE0
真「それでっ、どうなんですか!? 小鳥さんのこと、好きなんですよね!?」

P「……うん、そうだよ。俺は音無さんのこと、そののの……」

真「やっぱりー……! うわぁ~、憧れちゃうなぁ……!」

P「え、憧れるって?」

真「仕事を通じて少しずつ距離を縮め、ついにふたりは……って、なんかいいじゃないですかっ!」

P「……真、最近はそういうマンガを読んでるんだな」

真「えぇっ!? ば、バレちゃいましたか~……あははは、さすがプロデューサーだなぁ」

P「真がわかりやすいだけだとも思うけどね」

真「ねぇねぇプロデューサー、それでそれで……」

P「お、おいおい、そんなに聞かなくたっていいだろ? 話すネタもないし……」

真「でもでも……」

P「俺のことはどうだっていいんだよ。ほら、そろそろテレビ局が見えてきたぞ」

P「気持ち切り替えて、仕事、頑張っていこう!」

真「……はいっ!」

31: 2012/12/20(木) 05:09:45.34 ID:RzQtQJCE0
【テレビ局】

『きゃっぴぴぴぴーん! みんなのアイドル、菊地真ちゃんなりよー☆』

ヒューヒュー!!

『えっへへー、それじゃあ、いつもの行くよー! せーのっ!』

マッコマッコリーン!!!!

『やぁー! みんなー! ありがとぉー!』

ウォォォ!!!



P「……うんうん、撮影は順調みたいだな! 真も実に楽しそうだ」

P「ファンの皆も喜んでるみたいだし、こういう路線にして正解だったかな」

P(……しかし、少し時間が出来てしまったな)

P(ちょっと、飲み物でも買いにいくか)

34: 2012/12/20(木) 05:17:03.75 ID:RzQtQJCE0
P「えーっと……いおりんのオレンジジュース、っと」カチッ

ガコンッ

P「……しかし、コラボ商品とはいえ、妙なネーミングだよなぁ。律子は何を考えてこれをOKしたんだろう」

P「うまいからいいけど……」ゴクゴク

千早「……あら?」

P「……? おお、千早じゃないか!」

千早「ふふっ、おはようございます、プロデューサー」

P「奇遇だな、こんなところで会うなんて」

千早「そうですね。今日は誰かの付き添いですか?」

P「ああ、真のな」ゴクゴク

千早「……それ、飲んでるんですね」

P「ん? うん、まぁ……うまいし」

千早「……」

P「な、なんでそんな目で見るんだよ……」

39: 2012/12/20(木) 05:22:07.34 ID:RzQtQJCE0
P(……そういえば、さっき真はこんなこと言っていたな)

『みんな噂してますよっ! プロデューサーは小鳥さんの前でデレデレしまくってるって』

P(もしかして、千早も噂を聞いている一人だったりするのだろうか)

P(……なんか、俺だけ知らないっていうのもあれだし……それとなく、聞いてみようかな)


P「…………」

千早「……プロデューサー? どうかなさなったんですか?」

P「なぁ、千早」

千早「はい、何か……」

P「千早はさ……、恋、してるか?」

千早「……は?」

43: 2012/12/20(木) 05:29:58.42 ID:RzQtQJCE0
千早「え、え……な、何を急に言い出すんですか!?」

千早「……恋、って……そんなの、私まだ……」カァァ

P「あ、ああいや、間違った! 違うんだよ」

千早「え? ちがう?」

P「なんていうんだろうな……恋の話とか好きか? って言いたかったんだ」

千早「……恋の話……ですか?」

P「うん。千早もそういう年頃だろうし……」

千早「……どうでしょうか。個人的には、あまり……」

P「へー……」

P(この反応ってことは……皆の噂話は耳にしていないのかな?)

P(まぁ、真面目な千早だもんな。少し、安心したかもしれない……)


P「じゃあさ、千早自身は、恋とかしてないのか?」

千早「で、ですから私はっ! もう……こ、今度は何と言い間違ったんですか?」

P「いや、個人的に興味があるだけ」

千早「…………」

46: 2012/12/20(木) 05:35:43.68 ID:v5ncreu90
千早はPに依存しているという風潮

47: 2012/12/20(木) 05:42:12.00 ID:RzQtQJCE0
千早「私自身は……正直、まだよくわからないです」

P「わからない?」

千早「……ええ。物語や歌の歌詞に出てくるような、誰かを愛する激しい感情も……」

千早「一目見た瞬間に恋に落ちるような、そんな出会いも……私は、経験したことがありませんから」

P「……そっか」

千早「でも……数ある人の感情のひとつとしての、『恋心』になら、興味はありますね」

P「……どういうことだ?」

千早「歌は、感情や思いを伝えるものです。ですから、それを知れれば、私は……」

千早「もっと、たくさんの人の心に響くような……そんな歌が歌えるようになると思いますから」

P「千早の目標を達成するための手段としての、感情ってこと?」

千早「そういう言い方をしてしまうと、なんだか冷たいと思われるかもしれませんが……そうですね」

千早「嬉しいことも、悲しいことも、恋することも……」

千早「人の心に生まれるあらゆる気持ちを、あらゆる人に伝えられるような……そんな歌手に、私はなりたいですから」

49: 2012/12/20(木) 05:51:52.67 ID:RzQtQJCE0
P「……千早、なんだか変わったな」

千早「えっ……、そうですか?」

P「うん、良い顔するようになったよ。良い顔で、夢を語るようになった」

千早「……夢……」

P「前までの千早だったらさ、恋する暇があるならレッスンレッスン! ひたすらレッスン!」

P「って、感じだったじゃないか。余計なことには興味ありません! って言ってさ」

千早「……ふふっ、そうかもしれませんね」

P「そのうち千早も、本物の恋、するようになるんだろうな……そう考えると少し、さみしいかもしれない」

千早「え? な、なぜプロデューサーが……?」

P「なんていうか、小さかった女の子が成長していくのを見ているみたいでね」

千早「……」

P「っと、ごめんごめん、俺なんかが生意気というか……変なこと言ってしまった」

千早「……プロデューサーは、謝るべきことが別にあると思います」

P「へ?」

千早「なんでもありません」プイッ

57: 2012/12/20(木) 06:05:59.11 ID:RzQtQJCE0
P(な、何か間違ったことを言ってしまったのかな? 怒らせたか……?)

P「あ、あのさ、千早……」

千早「……ふふっ」

P「え」

千早「心配しなくても大丈夫ですよ、プロデューサー」クルッ

P「……大丈夫?」

千早「ええ。私、怒ったりなんてしていませんから」

P「……なあ、俺ってそんなに、感情が顔に出やすいかな」

千早「顔を見なくてもわかります。実際に、いま私は、あなたのことを見ていなかったでしょう?」

P「あ、ああ……確かに」

千早「声の調子だけで……私のことを気遣ってくれているということは、伝わってきましたから」

P「……本当に、変わったよ。魅力的になった」

千早「お、お世辞は結構ですっ」

58: 2012/12/20(木) 06:10:21.26 ID:RzQtQJCE0
P「千早、今日の予定は終わったのか?」

千早「はい、収録も終わりましたから……」

P「このあとは、プライベート?」

千早「そうですね。春香と、出かけることになっているんです」

P「そっか……それじゃあ、楽しんでおいで」

千早「ええ。……それでは」



P(……恋に憧れる気持ち)

P(真と千早では、形は違うものではあったけど……)

P(彼女達にとっては、かけがえの無い、大切な気持ちなんだろうな)

60: 2012/12/20(木) 06:15:26.49 ID:RzQtQJCE0
P(俺は……? 俺は、どうなんだろう)

P(俺が音無さんに恋する、この気持ちは……)


『……プロデューサーさん! 今日もファイト! ですよ!』


P(俺はただ……、優しくて、笑顔が素敵で……そんな音無さんに、憧れて)

P(でも、それは……──)




千早「……あ……プロデューサー!」

P「ん? ど、どうした?」

千早「頑張ってくださいね。私も、応援していますから!」

P「え……」

千早「ふふっ……それでは、失礼します」

P「ちょ、ちょっと、千早!?」

61: 2012/12/20(木) 06:21:04.03 ID:RzQtQJCE0
──────
────
──


真「プロデューサー! おっつかれさまでーっす!」

P「あ、ああ……」

真「どうでしたかっ? 今日のボクの仕事っぷりは!」

P「……うん、とても良かったよ。これでファン増加間違いなしだ!」

P(本当のこと言うと、千早と話してる間は見てなかったんだけど……)

P(……でも、この嬉しそうな真の顔を見れば、わかる。最高の仕事が出来たみたいだな)


P「あっはっは! この調子でいけば、真がトップアイドルになる日も遠くないかもな!」

真「本当ですかっ!? へへっ、やーりぃっ!」

63: 2012/12/20(木) 06:27:33.75 ID:RzQtQJCE0
【帰りの車内】

ブロロロ……

P「……そういえばさっきさ、千早に会ったんだ」

真「千早? へー、今日は同じとこで仕事してたんですね」

P「うん。それで……ちょっと真に聞きたいことがあるんだけど」

真「なんですか?」

P「……千早って、俺が音無さんに好意を持っているってこと、知ってる?」

真「……うーん、どうかなぁ」

P「……」

真「ボクがそういう話をするのは、春香と雪歩の前だけですし……すみません、わからないです」

P「そ、そっか。あ、いや、いいんだ。ちょっと気になっただけだから」


P(ということは、千早はやっぱり、俺の感情を読み取って……?)

P(……いやいや、あれくらい話しただけでそこまで筒抜けだなんて、認めてたまるか!)

P(まぁこの件については、今度また千早に聞いてみるとしよう……)

64: 2012/12/20(木) 06:35:30.69 ID:RzQtQJCE0
【765プロ事務所】

P「……っていう感じで、来週もよろしく頼むな」

真「はいっ!」

P「それじゃあ、連絡するのもこれくらいだし……あ、ジャンケンでもするか?」

真「おっ、いいですね! へへっ、今日でついに30連勝!」

P「あっはっは! 俺だって負けな──」

ガチャ

小鳥「ただいま戻りましたー……あら?」

P「お、おおっ、音無さんっ! お、お帰りなさい!」ガタッ

小鳥「ふふっ、お疲れさまです」

真「それじゃあプロデューサー、小鳥さん! お疲れさまでしたーっ!」タタッ

P「えぇっ!? お、おい真、ジャンケンするんじゃ……」

真「……プロデューサー、ガンバってくださいねっ!」ヒソヒソ

P「…………う、うむ……」

小鳥「……? なんだか、あわただしいですねぇ」

66: 2012/12/20(木) 06:43:27.37 ID:RzQtQJCE0
P「……」

小鳥「……~♪」ガサゴソ

P「……音無さん、買出しに行ってたんですか?」

小鳥「ええ。トイレの蛍光灯と、あとお茶っ葉と、コーヒー豆と……」

P「そ、そうですか……あっ、俺、蛍光灯替えてきますよ!」

小鳥「えっ? いいんですよ、私がやっておきますから」

P「でも音無さん、いつも脚立に乗るたびにプルプルしてるじゃないですか」

小鳥「そ、それは~……」

P「ほら、貸してください」

小鳥「……ふふっ、ありがとうございます♪ それじゃあ、お言葉に甘えちゃいますね」

P「ええ! まかせといてください!」



P(……カッコつけるという理由が半分)

P(何を話したらいいかわからないから逃げた、という理由が半分……)

P(……情けないな。思春期の中学生かよ……)

67: 2012/12/20(木) 06:49:14.97 ID:RzQtQJCE0
【トイレ】

P「さて、と……」

ガタンッ

P「……」キュ、キュ……

P「……はぁ~……なんだかなぁ……」

P「ダメもとで、もう一回飲みにでも……いやいや、それでしつこい男だなんて思われたら」

P「そもそも音無さんは俺を気遣ってああ言ってくれたわけだし、それを無碍にするなんて……」

P「うーん……」


『──ちゃんっ! いまトイレは……』

『も、もう、限界なのですっ! お願いですっ、止めないでくださいっ!』


P「……ん? なんだろう、なんだか騒がしいような──」

ガチャッ

貴音「あ」

P「お」

69: 2012/12/20(木) 06:55:07.66 ID:RzQtQJCE0
貴音「……」プルプル

P「……お、おつかれ、貴音。今帰りか?」

貴音「え、ええ……お疲れさまです……プロデューサー」プルプル

P「えーっと……あ、悪い、いま蛍光灯替えてるからさ」

貴音「……そのよう……ですね……」プルプル

P「もーちょっと待ってくれな。うーっしょっと……」キュ

貴音「…………」プルプル

P「うーん、なかなかうまく嵌らないな……これほんとにサイズ合ってるのか?」

貴音「プロデューサー……まだ、でしょうか……?」プルプル

P「ああ、ごめんごめん、いま──」

貴音「プロデューサー! いえ……あなた様っ!!!」

P「え!?」

貴音「……! ……!」

P(とても真剣な目をしている)

70: 2012/12/20(木) 06:56:38.37 ID:0MxWin/u0
どいてやれよww

72: 2012/12/20(木) 06:59:39.76 ID:RzQtQJCE0
貴音「……おねがいでございまず……」

P「へ? ……お、おい貴音、お前泣いて」

貴音「そのようなことはどうでもよいではないですか! どうが、どうか……!」

P「う、うん……」

貴音「今すぐ、ここから出て行ってくださいませ……!!」

P「え、でも……まだ蛍光灯替えてな」

貴音「あなた様っ!!! 事は一刻を争う事態なのです!!!」

P「ははいっ! ただいまっ!」

ガタガタッ

タッタッタ……

74: 2012/12/20(木) 07:08:24.72 ID:RzQtQJCE0
バタン……

P(──あんな表情の貴音を見たのは、初めてだったな……)

P(フフ……いつもはポーカーフェイスというか、何を考えているかわからないときもあるけれど……)

P(意外な一面ってやつ、か……。うん、ああいう表情も、悪くないな……)

コンコン

『……あなた様』

P「え? 貴音?」

『……、やはりまだそこにいたのですね……』

P「うん……」

『……どいてください』

P「えーっと……ああそっか、ここにいたら音が」

『……。……あの、小鳥嬢を……呼んできては、いただけないでしょうか……』

P「音無さん?」

『……暗いところで一人でいると、私、落ち着かなくて……その、用を……』

P「なるほど……わかった、今呼んでくるよ」

76: 2012/12/20(木) 07:16:15.69 ID:RzQtQJCE0
──────
────
──


ジャー……

ガチャッ


貴音「……」

小鳥「た、貴音ちゃん。許してあげて、プロデューサーさんも悪気があったわけじゃ……」

貴音「…………」

P「……あの……」

貴音「いけずどころの話ではありません」

P「え」

貴音「……う、うぅ……」

P「貴音……」

P(貴音が涙を流している……どうして、こんなことに……)

77: 2012/12/20(木) 07:22:40.41 ID:RzQtQJCE0
P「貴音……ごめんな。よく考えたら、デリカシーがなかったよ」

貴音「よく考えなくても、わかっていただきたかったところです……」

P「うん……」

貴音「……」

P「あ、そ、そうだ! お、お詫びに今から何か、食べにいくか? 奢るぞ」

貴音「プロデューサー」

P「はい……」

貴音「私がいつでも、食べ物で釣られると思われているのであれば、それは間違いというものですよ」

P「そのとおりです……」

貴音「……これは……、私からあなた様に、説教をしなくてはなりません」

P「説教?」

貴音「ええ。しばしの無礼をお許しくださいね」ゴゴゴ

P「……ああ」


P(当然だな……ここまで怒らせてしまったのだから……)

79: 2012/12/20(木) 07:25:15.53 ID:vrgMSyJ6O
お漏らちん

80: 2012/12/20(木) 07:26:27.42 ID:noJE1c0I0
間に合わなかったのか

81: 2012/12/20(木) 07:29:28.86 ID:RzQtQJCE0
貴音「……小鳥嬢」

小鳥「え、私? な、なにかしら……」

貴音「私とプロデューサーは、今から少々席を外します」

小鳥「ああ、お説教に行くのね……」

貴音「ええ。らーめんを食べながら、色々と話すことにしますので……それでは」

P・小鳥「「えっ」」

貴音「……?」

P「……ラーメン、食べにいくのか?」

貴音「先ほど、奢る、と……そう仰ったではないですか」

P「そ、そうだけど……」

貴音「ふふふっ……♪ では、参りましょう!」

P「……ああ、わかった。いくらでもかかって来い!」


P(それくらいで貴音の機嫌が直るなら、安いものだからな!)

88: 2012/12/20(木) 07:51:57.75 ID:RzQtQJCE0
貴音「……」ちゅるちゅる

P「……あのさ、貴音」

貴音「……プロデューサー」

P「え、なんだ?」

貴音「物を食べているときは、誰にも邪魔されず、自由で……」

貴音「なんと言ったら良いのでしょうか、救われてなければなりません」

P「なんの話だ……?」

貴音「つまり、静かに食べる、ということですよ」

P「でも、説教するんじゃ……」

貴音「私達には、まだいくらでも時間があります。話をするのは、そのあとでもよろしいかと」

P「……」

貴音「……」ちゅるちゅる……ごっくん

P「……店員さん、この子に……とびっきりの替え玉を」

店員「かしこまりましたー」

貴音「うふふっ……ありがとうございます」

92: 2012/12/20(木) 08:00:23.60 ID:RzQtQJCE0
店員「あ、ありがとうございましたー……」

ガララッ

貴音「ご馳走様でした、あなた様」

P「あ、ああ……」

P(結局、諭吉が飛んでいくことになってしまった)

P(それほど高い店でもないんだけどな……)




貴音「さて……それでは、参りましょうか」

P「え? どこに行くんだ?」

貴音「……どこへでもいいのです。私とあなた様がいれば、それで……」

貴音「話をするのに、それ以上の条件は必要ありませんから」

P「……うん、そうだな」

96: 2012/12/20(木) 08:13:06.67 ID:RzQtQJCE0
テクテク……


貴音「……」

P「……なぁ、貴音。さっきは……ごめんな」

貴音「……いえ。過ぎたことは、もういいのですよ」

貴音「あなた様に悪気があったかどうかくらい、私にはわかります」

P「……貴音……」

貴音「……大切なことは、これから、あなた様がどうするか……でしょう?」

P「……これから?」

貴音「ええ」

貴音「……仲違いを起こすことも、ささいなすれ違いを重ねてしまうことも、これまで、幾度もありました」

貴音「その度に私達は、たくさんのことを話し合い、再び手を取り合ってきたではないですか」

P「……そうだなぁ」

貴音「ふふっ……そしてそれはきっと、これからもです」

貴音「ですから、これくらいのことでいつまでも拗ねているような、弱い私ではありませんよ」

97: 2012/12/20(木) 08:20:35.46 ID:RzQtQJCE0
P「……もう、お前を泣かせたりしないよ」

貴音「うふふっ……あなた様?」

P「え?」

貴音「いいですか、よく見ていてくださいね?」

P「見るって、何を……」

貴音「……」


ポロポロ……


P「っ!? え、な、なんで……」

貴音「……」ゴシゴシ

P「……貴音、どうしていま……涙を」

貴音「……私の演技も、かなり上達したとは思いませんか?」

P「……演技?」

貴音「ええ。ふふふっ……いかがだったでしょうか」

P「……あはは、すっかり騙されたよ」

101: 2012/12/20(木) 08:30:35.74 ID:RzQtQJCE0
P「それじゃあ……さっきのも、演技だったのかな」

貴音「……それは、秘密です」

P「……あはは、参ったな」

貴音「ふふっ……あなた様?」

P「ん?」

貴音「……真だけでなく、ときには、私や千早のことも……、思い出してくださいね」

P「思い出すって……お前達のことを忘れたことなんて、一度もないよ」

貴音「…………」

P「……確かに最近は、お前達の活動が落ち着いたから、真ばかり見ることになっているけれど」

P「それでも俺は、いつだって──」

貴音「あなた様のことですから、その言葉に嘘はないでしょう」

P「……っ」

貴音「でも、それは……、態度で表していただかないと、伝わらないものです……」

P「……」

貴音「……申し訳ありません、このような、わがままを言ってしまって……」

103: 2012/12/20(木) 08:45:55.70 ID:RzQtQJCE0
P「……いや、いいんだ」

貴音「……」

P「態度で示す、か……そうだな」

貴音「……一目見ただけで、気持ちのすべてが伝わることなど、あり得ません」

P「……うん」

貴音「言葉を尽くし、手を重ね、そうすることでようやく……思いのかけらが伝わるというものです」

P「……それでも、かけらなのか」

貴音「ええ。この思いのすべてを伝えることは、途方もなく、難しいことですから」

P「……」

貴音「……誰かに気持ちを伝える……そのために、私達は、歌を歌います」

P「歌?」

貴音「私達は、アイドルです」

貴音「この思いを、はっきりと言葉にすることは……、禁じられていますので」

104: 2012/12/20(木) 08:58:02.44 ID:RzQtQJCE0
貴音「……けれど、あなた様は違います」

貴音「あなた様は、ご自身のやりたいように、信じるように……その気持ちをあの方に伝えればいいのです」

P「……!」

貴音「うふふっ……私としたことが、生意気を言ってしまいましたね」

P「……いや、いいんだよ。説教、してくれるんだろ?」

貴音「……そうですね。ふふっ、ふふふ……♪」



P(……そんな風に笑った貴音の頬には、まだ先ほど流した涙のあとが残っていて)

P(そこに星の光が反射して、とても綺麗に光って見えた)



P(貴音は、きっと……俺のことを、激励してくれているのだろう)

P(今はまだ、それがなぜかはわからない。けれど……)

P(貴音は、おそらく、俺の気持ちを知っていて──)

106: 2012/12/20(木) 09:03:58.69 ID:RzQtQJCE0
【765プロ事務所】

小鳥「……」

ガチャ

小鳥「!」

P「……ただいま戻りました」

小鳥「お、お帰りなさい、プロデューサーさん」

P「音無さん……まだ、帰ってなかったんですね」

小鳥「……えへへ、ちょっと心配で」

P「心配?」

小鳥「ええ……貴音ちゃん、随分怒っていたみたいだったから……」

P「……」

107: 2012/12/20(木) 09:11:35.50 ID:RzQtQJCE0
小鳥「……ちゃんと、仲直りできましたか?」

P「……はい。すみません、余計な心配をかけてしまって」

小鳥「プロデューサーさん。そんなことは言わないでくださいっ」

P「え?」

小鳥「『余計』なんてこと、全くありません。だって私達は……、家族じゃないですか」

P「か、家族ですか?」

小鳥「ふふっ、そうですよ」

P「……」

小鳥「この事務所を開いたとき、私達は決めたんです」

小鳥「……この場所は、家。そして、ここにいる間は……」

小鳥「アイドルも、スタッフも……みーんな、かけがえの無い、家族」

小鳥「そういう事務所にしよう、って……」

P「……そうだったんですか」

109: 2012/12/20(木) 09:19:02.30 ID:RzQtQJCE0
小鳥「そういえば、貴音ちゃんは?」

P「さっき、家の近くまで送っていきました」

小鳥「そうですか……」

P「……音無さんは、まだ帰らないんですか?」

小鳥「うーん、そうですねぇ……。ちゃんと仲直りしたって確認もできたし、そろそろ……」

P「それじゃあ……、送っていきますよ」

小鳥「え?」

P「俺も、今日やることはすべて終わりましたから」

小鳥「で、でもそんなの……悪いですよ。私、ひとりでも平気ですから」

P「……俺が、あなたと一緒に帰りたいんです」

小鳥「……え」

P「……話、しましょう」

小鳥「…………は、はい」

111: 2012/12/20(木) 09:22:50.94 ID:RzQtQJCE0
テクテク


P「……」

小鳥「……」


テクテク……


P「…………」

小鳥「…………」




P(な、何を話したらいいんだよ!)

P(さっきから音無さんも、うつむいてるみたいだし……)

P(……くそう、俺の意気地なし……!)

114: 2012/12/20(木) 09:28:30.60 ID:RzQtQJCE0
P「……」

小鳥「……」


P・小鳥「「……あのっ!」」


P「お、音無さんからどうぞ……」

小鳥「あ、いえ……そんな、プロデューサーさんから、言ってください」

P「いやぁ、あはは……」

小鳥「……あ、あはは……」

P「……実は、声をかけたはいいけど、まだ話す内容が固まってなくて……」

小鳥「……ふふっ、奇遇ですね……」

P「え? 奇遇?」

小鳥「……私も、あなたとおんなじです。なんとなく、声をかけちゃいました。ふふふっ……」

P「……そ、そそ、そうですか! あは、あははは! いやぁ、奇遇ですねっ!」


P(……本当に、単純だな、俺は)

P(こんなささいなことで、嬉しくなっている……)

117: 2012/12/20(木) 09:33:03.81 ID:RzQtQJCE0
P(……ああ、そっか)

P(今日一日、色々と考えたけど……そうなんだ)

P(俺が、この人に憧れている理由は──こんなに、単純なことだったんだ)



P「……音無さん」

小鳥「あ、話す内容、決まりましたか? ふふふっ……」

P「はい、聞いてくれますか?」

小鳥「ええ、どうぞ」

P「……」

小鳥「……? プロデューサーさん、どうし──」



P「俺、音無さんのことが、すきです」

120: 2012/12/20(木) 09:39:50.24 ID:RzQtQJCE0
小鳥「……え……」

P「……だから、お付き合いを、してくれないでしょうか」

小鳥「え、で、でも……、そんなこと言われ……あっ」ティン

小鳥「……ぷ、プロデューサーさんったら!」

P「え?」

小鳥「ま、また私をからかってるんですね? もう、ダメですよ! そう何度も何度も……」

P「……ちがいます。今度は、嘘じゃないです」

小鳥「……え、ぇ、えぇぇ……!?」カァァ

P「……」

小鳥「……あ、あの、それって……あっ」ティン

P「こ、今度はなんですか?」

小鳥「そ、それってあれですよね! 『今度は嘘じゃないっす』……あのバスケ漫画の名シーン」

P「……ちがいます。俺、本気ですから」

小鳥「…………」

121: 2012/12/20(木) 09:45:41.06 ID:RzQtQJCE0
P「……でも確かに、今言った『今度は嘘じゃないです』って言葉は、正しくないですね」

小鳥「どういうことですか……?」

P「今朝言ったことだって、嘘ではありませんでしたから」

小鳥「…………」

P「……今朝は、俺がへたれてしまったから。嘘というより、誤魔化しだったから……」

小鳥「……うぅぅ……」

P「音無さん、俺……」

小鳥「ちょおちょちょ、ストップ、すとーっぷ!」

P「な、なんですか!?」

小鳥「……いま、これ以上言葉をかけるの、だめです」

P「え、で、でも……」

小鳥「……もう、心臓が爆発しそうだから……、ちょっと待ってくださいぃぃ……!」

126: 2012/12/20(木) 09:54:11.87 ID:RzQtQJCE0
小鳥「おぉ、お、おお、落ち着くのよ小鳥ちゃん……」

小鳥「これは何かの罠、これは何かの策略……あるいは夢……」

小鳥「そ、そうよ。こんな、今日お昼に見ちゃった夢みたいなこと……現実なわけ……」ブツブツ

P「あの、音無さん……」

小鳥「ぴよっ!」

P「えっ」

小鳥「あ、あぁぅ……私としたことが、ぴよぴよしてしまったわ……」

P「あ、ああ、これが例の……」

小鳥「……」ボッ

P「……音無さん」

小鳥「ははは、はい」

P「これは、夢なんかじゃありません」

小鳥「…………」

P「……だから、あなたの答えを、聞かせてほしい」

129: 2012/12/20(木) 10:04:58.09 ID:RzQtQJCE0
小鳥「……あ、あの……」

P「……はい」

小鳥「……その前に、聞かせてください。……どうして、私なんでしょうか……」

P「どうして、って……」

小鳥「……プロデューサーさんのまわりには、私なんかより若くて、素敵な女の子がたくさんいます」

小鳥「それなのに、どうして私に、そんな言葉をかけてくださるんですか……?」

P「……すきになったから、じゃ、ダメですか?」

小鳥「す、すす、す……で、ですから! その、す……き、になった理由を聞きたいんですっ!」

P「……」

小鳥「……プロデューサーさんは、真面目な方だから、アイドルの子達を恋愛対象としては見ないでしょうけど……」

小鳥「でもだからって、こんな……こんな私を選ぶ理由には、ならないと思います」

P「……随分、疑り深いんですね」

小鳥「そうじゃなきゃ恋人いない歴=年齢にはなりません……」

P「え、そうだったんですか?」

小鳥「うわあああ!! い、今のなし! 今のなしぃぃ!!」

133: 2012/12/20(木) 10:11:42.50 ID:RzQtQJCE0
P「……音無さんは、ご自分で思っているよりも、ずっと素敵な女性ですよ」

小鳥「……そんなこと……」

P「そんなこと、あります。あなたは優しいし、とても綺麗だ。それに……」

小鳥「……ときどき、妄想して暴走しちゃったりしますよ……」

P「そういうところも、可愛らしいじゃないですか」

小鳥「うぅ……」

P「……それに、何より」

小鳥「……」

P「アイドル達のことを……、とても大切に思っている」

小鳥「……え……みんなの、こと?」

P「……はい」

135: 2012/12/20(木) 10:25:03.33 ID:RzQtQJCE0
P「……俺、本当のこと言うと、一目惚れではありませんでした」

小鳥「あ……そうですか、そうですよね……」

P「あ、いやいや、勘違いしないでくださいよ!? 綺麗な方だなーとは思っていましたから!」

小鳥「…………お、お世辞なんて……えへへ」

P「……俺がすきになったのは、あなたと一緒に仕事をするようになって、あなたのことを知ってからです」

小鳥「……!」

P「アイドルのみんなの活躍を、誰よりも喜んで……」

P「オーディションに失敗したときなんかは、本人達以上に落ち込んだりして」

小鳥「…………」

P「……俺、そんな風に生きていく音無さんの姿に、憧れたんだと思います」


P「自分ではない誰かのことを、家族と呼んで……」

P「その人のために、笑って、泣いて……そういうことが真剣に出来る、あなたのことを……」

P「俺がこの手で、笑顔にさせてやりたい、って……、そう思ったんです」

136: 2012/12/20(木) 10:32:50.32 ID:RzQtQJCE0
P「……音無さん」

小鳥「……っ」

P「これが、今伝えられる、俺の精一杯の気持ちです」

小鳥「い、いま……?」

P「……まだ、この思いのかけらしか、あなたには見せてやれていないと思う」

P「でも、これから……もっともっと、たくさんのことをあなたに伝えていきたいんです」

小鳥「……」

P「そのために……俺と一緒に、手を取って、歩いて……」

P「そして、笑いあってはくれませんか?」

小鳥「……っ……!」

139: 2012/12/20(木) 10:38:15.62 ID:RzQtQJCE0
小鳥「……っ! ……!」

P「……」

小鳥「………………ぃ」

P「……え?」



小鳥「……はい……!」

P「……!」

小鳥「……こ、こんな……わだしで、良ければ……」



小鳥「あなたといっしょに……いさせで……ください……!」

141: 2012/12/20(木) 10:43:56.20 ID:RzQtQJCE0
P「ほ、本当に……」

小鳥「……う、うぅ……」

ポロポロ……

P「!?」

小鳥「……ほ、ほんとの……ほんとでずか……!?」

P「……もちろん、ほんとのほんとです」

小鳥「……うれじい、でずぅ……!」

P「……音無さん……」

小鳥「……こ、こんな風に、言っでくれる゛人……ずびっ」

小鳥「今まで、生きてきて、ひっぐ……誰もいながっだがらぁ……!」

小鳥「……ううん、ぞうじゃないっ! そうじゃなくでぇ……!」

P「……そうじゃない?」

小鳥「そう言ってぐれたのが、ぷろじゅーしゃーさんだったがら……!」

小鳥「だから……嬉じいよぉ……!」

147: 2012/12/20(木) 11:08:32.32 ID:RzQtQJCE0
──────
────
──

ゴシゴシ

小鳥「……えへへ、すみません。カッコ悪いところ、見せちゃいました」

P「……そんなことありません、可愛かったですよ」

小鳥「も、もうっ! またすぐそーやって、からかって……」

P「……」フルフル

小鳥「……あら? どうなさったんですか、プロデューサーさ」

P「」シナシナ……

小鳥「!?」

──ペタン

P「」

小鳥「ぷ、プロデューサーさん……」


小鳥「……し、死んでる」

150: 2012/12/20(木) 11:16:24.48 ID:RzQtQJCE0
P「い、いや……死んでないですよ」

小鳥「あ、ああ……良かったぁ……!」

P「あはは……ちょっと、腰が抜けちゃって……すみません」

小鳥「あの……もしかして、ずっと……?」

P「え、ええ……。ずっと、緊張しっぱなしでした。倒れて吐きそうなくらい……」

小鳥「……そんなにまでして、思いを伝えてくれたんですね」

P「……音無さんは、簡単な女性じゃないですから。これくらい、頑張らないとと思って」

小鳥「……ふふ……ありがとう、ございまず……」ウルウル

P「ああっ、また!」

小鳥「え゛?」

P「……泣くんじゃなくて、笑ってください。いまここには、嬉しいことしかないんですから」

小鳥「あ、あらやだ……私ったら……」ゴシゴシ

P「それに俺は、音無さんの笑顔が……、一番すきなんですからね」

小鳥「……! も、もう……そんなにたくさん言ってると、ありがたみが無くなっちゃいますよ!」

152: 2012/12/20(木) 11:25:36.62 ID:RzQtQJCE0
P「……ありがたみ、かぁ」

小鳥「ええ、そうですよ。それに、そう何回も連呼されなくたって、その……」

P「音無さん。俺にすきって言われることは、嬉しいですか?」

小鳥「え……そ、そんなの……当たり前じゃないですか」

P「……どうして?」

小鳥「ふぉっ!? どうしてって……それはだって……え?」

P「ふっふっふ……どうして嬉しいのか教えてください」

小鳥「えぇっとぉ……逆に、なんでそんなことに疑問を持つのか、私にはわからないです……」

P「……たとえば、全く興味のない相手からすきって言われても、それはあまり嬉しくないですよね」

小鳥「私にはそういう経験がないから、なんとも言えませんが……そう、なんじゃないかしら?」

P「ということは、音無さんは俺のこと……」

小鳥「ええ、もちろん。私はあなたのこと、す……」

P「す……?」

小鳥「す、す、す……」カァァ

P「フフフ……」

154: 2012/12/20(木) 11:33:30.40 ID:RzQtQJCE0
小鳥「……あ、あぅ……」

P「……まだ、言ってもらってなかったから」

小鳥「い、言わなくてもわかりますよね!? だって、その……おーけー、したんですから……」

P「わかりません」

小鳥「え、えぇぇ……!?」

P「……もしかしたら音無さんは、俺のことを哀れんでオーケーしてくれたのかもしれませんし」

小鳥「そ、そんなことないですよ! わ、私だってその……そんなに、ちょろい女じゃありませんから!」

小鳥「ここ、告白されたから無条件で即OK、なんてしませんっ!」

P「それなら! お願いします!」

小鳥「うぅぅ……!」

P「『態度で表していただかないと、伝わらないものです』って、かつて銀髪の偉い人も言っていましたから」

小鳥「だれですかそれぇ……!」

156: 2012/12/20(木) 11:39:16.87 ID:RzQtQJCE0
小鳥「……わ、わかりました……そこまで言うなら……」

P「本当ですか!」

小鳥「音無小鳥、2[チョメチョメ]歳……う、生まれて初めて……」

小鳥「こ、この言葉を……男性に伝えます……!」

P「……」ドキドキ

小鳥「……ぷ、プロデューサーさん……」

P「は、はい……」

小鳥「…………────~~!!!」



ぎゅぅぅぅっ



P「っ!?」

小鳥「かおっ、顔、絶対見ないでくださいねっ!」ギュー

P「は、はい、はいっ! え、なんで抱き」

小鳥「……すぅ──……!」

157: 2012/12/20(木) 11:40:06.52 ID:RzQtQJCE0
 
 
 
小鳥「だいすきぃ……!」

163: 2012/12/20(木) 11:48:13.54 ID:RzQtQJCE0
P「お、音無さん……!」

小鳥「ほっ、ほんとはっ!」

P「え?」

小鳥「ほんとは、っていうか……あぁもう、なんて言ったらいいんだろ……」

小鳥「とにかく! わ、私だって、前からあなたのこと……、すきだったんですからぁ……!」

P「……!」

小鳥「……アイドルのみんなの為に、いつでも一生懸命な姿が、素敵でした……!」

小鳥「み、みんなにだけじゃなくて、私にもとっても優しくしてくれて……嬉しくて、嬉しくて……」

小鳥「それこそっ、夢に見ちゃうくらいっ! あなたのことが、だいすきだったんですぅ!」


ぎゅぅぅぅぅ!


P「お、音無さん、くるし……」

小鳥「それなのに、あなたは……それとなくアプローチしても、全然気付いてくれなくてぇ……!」

P「え!? そ、それはこっちの台詞ですよっ!」

小鳥「えぇっ!?」

166: 2012/12/20(木) 11:54:51.68 ID:RzQtQJCE0
P「俺、今日だって、あなたを食事に誘ったのに……」

小鳥「で、でもそれは……社交辞令的なあれかなーって……」

P「あの流れのどこにそんなものがあったんですか……」

小鳥「……そ、そんなこと言ったら、プロデューサーさんだって!」

P「え、俺ですか?」

小鳥「……プロデューサーさんのデスク、ちょうど私のデスクと向かい合う位置にありますよね」

P「は、はい……」

小鳥「だから、ときどき、視線を送ったりしてたのに……」

P「えぇー……」

小鳥「あ、あとあと、プロデューサーさんが事務所を出るときに、必ず声をかけたり!」

P「音無さん、みんなに声かけてるじゃないですか……」

小鳥「みんなに対するのとは、込めた思いの種類が違ったんですっ! それくらい気付いてください!」

P「す、すみません!」

小鳥「うー……」

169: 2012/12/20(木) 12:02:44.36 ID:RzQtQJCE0
P「……」

小鳥「……」

P「…………はは」

小鳥「……ふふっ」

P「……あ、あははは!」

小鳥「……ふふ、ふふふっ……!」


P「なんだか、ふたりとも……」

小鳥「え、ええ……そうですね。ふふっ……」

P「思春期の、中学生みたいだ」

小鳥「ほんと……もう良い年だっていうのに」


P「……随分、遠回りをしてしまったみたいです」

小鳥「……はい。でも……」

P「……きっと、だからこそ……」

小鳥「いま私たちの間にある、この幸せが……こんなにも大きく、感じられるんだと思います」

170: 2012/12/20(木) 12:12:16.27 ID:RzQtQJCE0
──────
────
──


P(……こうして)

P(俺と音無さんは晴れて、正式にお付き合いをすることになった)

P(お互い、素直に思いを伝えることができず……かなり回り道をしてしまったけれど)

P(でも、だからこそ……いま感じている、この大きな幸せを、大事にしていこうと思う)

P(……彼女の、言う通りに)



小鳥「……あ、プロデューサーさん……」

P「どうしたんですか?」

小鳥「……あの、ひとつ、お願いがあるんですけど……」

P「……?」

小鳥「せっかく、こうして、特別な関係になれたんですから……」


小鳥「……これからは、私のことを────」

172: 2012/12/20(木) 12:13:08.68 ID:YiPrjBYUP
リア充ピヨちゃん

173: 2012/12/20(木) 12:16:38.55 ID:RzQtQJCE0
【数日後……】

ガチャ

「「「おはようございまーす!」」」

P「お、来たなー。みんな、おはよう!」



真「……あれっ、プロデューサー?」

P「ん? どうした?」

真「うーん、なんか……先週までと顔つきが違うっていうか……何か良いことでもあったんですか?」

P「……フッフッフ……」

真「……ま、まさか!」

P「さぁ、今日もお仕事、頑張ろうな!」

真「えぇー! ちょ、ちょっと、教えてくださいよぉっ!」

174: 2012/12/20(木) 12:21:39.48 ID:RzQtQJCE0
真「プロデューサーがそういうつもりなら、ボク、小鳥さんに直接聞いちゃいますからねっ!」

P「ああ、いいぞ」

真「えっ!? い、いいんですか?」

P「うん。たぶん、そのほうが面白いリアクション見れるだろうし」

真「ふーん……よーし、それならっ! 小鳥さーん!」タタッ




千早「……ふふっ、プロデューサー?」

貴音「あまり、人をからかうものではありませんよ」

P「おいおい、からかうなんて心外だな……」

177: 2012/12/20(木) 12:27:37.88 ID:RzQtQJCE0
P「そういえば……ふたりにはちゃんと聞いておきたいことがあったんだ」

千早「なんでしょうか?」

P「……俺のすきな人、知ってる?」

千早「……ええ」

貴音「私も、存じ上げておりました」

P「そ、そっか……やっぱり……」

P「っていうか、そんなに広く噂されてたのか……まったく、女の子同士のネットワークって恐ろしいもんだよ」

千早「え? ネットワーク……?」

貴音「はて……? 一体、なんのことでしょうか」

P「だって、皆で噂してたんだろ?」

P「そういうの、したい気持ちはわかるけどな……もっと堂々と聞いてくれればいいのに」

千早「……皆で、というのは……心当たりがありませんけど……四条さんは?」

貴音「私もです。そのようなことは一切……」

P「へ?」

178: 2012/12/20(木) 12:33:44.26 ID:RzQtQJCE0
P「……じゃ、じゃあ、ふたりはどうやって……」

千早「……私は、春香から……」


『ねぇねぇ千早ちゃん、これは絶対に秘密なんだけどね……実はプロデューサーさんって……』


千早「と言う感じで、以前……」

P「ほ、ほぉ~……」

P(確かに真は、春香と雪歩としかそういう話をしない、とは言っていたけど……)

P(あー、そこから更に広がったパターンかぁ……なるほど……)


P「……じゃあ、貴音は……?」

貴音「私は、小鳥嬢からお話をお伺いしました」

P「あー、なるほ……えっ」

貴音「先週のあの日……その、真っ暗なお手洗いの中で……」

P「え、トイレで? わかんない、俺、その状況わかんない」

179: 2012/12/20(木) 12:46:20.36 ID:RzQtQJCE0
貴音「……小鳥嬢は、このように言っていました」


『ねぇ貴音ちゃん、あまり、プロデューサーさんを怒らないであげてね』

『きっと、悪気があったわけじゃないのよ。……たぶん、だけど』

『貴音ちゃんも知ってるだろうけど、プロデューサーさんは本当は、とっても良い人だから』

『えへへ、こないだもプロデューサーさんったら、私にね……』


貴音「そう語る彼女の声は、とても嬉しそうで……」

貴音「そのとき私は、小鳥嬢がプロデューサーに対して特別な感情を抱いている、と察したのです」

貴音「……そしてそれは、プロデューサーも同様、とも……」

P「……察しが良すぎだろう」

貴音「……ふふっ。もうおふたりとも、長い付き合いですからね」

181: 2012/12/20(木) 12:52:13.47 ID:RzQtQJCE0
P「……でも、まぁ、何はともあれ……俺と──」

小鳥「ちょ、ちょっとプロデューサーさんっ!」

P「はは、はいっ!?」

小鳥「まま、真ちゃんに、何を吹き込んだんですか!?」

真「ねー小鳥さんっ! 教えてくださいよー!」グイグイ

小鳥「あ、あの、だからね真ちゃん……えっと、そういうのは、恥ずかしいから……その……」ゴニョゴニョ

P「あはは……」

千早「……ふふっ。そういうことに、なったんですね」

貴音「おめでとうございます、プロデューサー」

P「……ああ! ありがとう、ふたりとも!」

小鳥「ちょっとー! プロデューサーさーんっ!」

186: 2012/12/20(木) 13:30:08.85 ID:RzQtQJCE0
P「真、そろそろスタジオに出発するぞー」

真「えー、でも……」

P「詳しいことは、車でゆっくり聞かせてやるから……な」

真「ほんとですかっ! へへっ、やーりぃっ!」

小鳥「えぇー!? そ、そんなぁ……!」


 * * *


P「……よし、三人とも!」

「「「はいっ!」」」

P「前から伝えてあったとおり、今日から新ユニットでの活動開始だ」

P「これまで培ってきたお前達の実力があれば、きっとすぐにトップを狙える。俺が保証するよ!」

P「だからこれから、一致団結して、みんなで頑張っていこうな! おー!」

「「「おーっ!」」」

189: 2012/12/20(木) 13:43:27.18 ID:RzQtQJCE0
P(……これからも、いろんなことが起こるだろう)

P(ケンカをしてしまうかもしれないし、悲しみで涙を流すことも、時にはあるかもしれない)

P(それでも、俺はきっと──)



小鳥「もう……」

P「あはは……ごめんなさい、少し調子に乗っちゃいましたか」

小鳥「…………ふふっ、冗談ですよ、冗談」



P(俺はきっと、この人と一緒なら、どんなことでも乗り越えていけると思う)

P(その心は、決して簡単じゃない。複雑で、傷つきやすくて……泣き虫で)

P(でも、だからこそ……だからこそ何より大切に思う、この彼女と一緒なら……)



小鳥「行ってらっしゃい、プロデューサーさん。今日も一日、頑張ってくださいね!」

P「……はい、もちろんです! それじゃあ……」


P「行ってきます、小鳥さん!」  おわり

190: 2012/12/20(木) 13:43:59.29 ID:7Xa7cZal0

191: 2012/12/20(木) 13:44:12.04 ID:YjGyjtWz0
可愛いなあちくしょう

引用元: 小鳥「私がちょろいという風潮!」