1: 2010/04/06(火) 00:42:22.85 ID:tjlauCkS0
「メり―ー―ーさん」










キョン「ん?」

妹「たぶんキョン君宛てだと思うよ?」

キョン「なんだろ、身に覚えがないな」

キョン「ん? んだこれ」

中身は四肢のない人形であった。
可愛らしい顔をしているが胴体と頭しかない。

キョン「なんだ……」

キョン「……ん?手紙か…? これ……」

2: 2010/04/06(火) 00:49:47.93 ID:tjlauCkS0
手紙が同封されていた。
なんだか気味が悪い。

キョン「……」

俺は警戒しながらも封を解く。

キョン「……」

キョン「はっ、ハルヒ達か?」


このぉ入形は大切な宝物なの
だからあなたに足と手を集めてほしぃの

一週間で集めれなかったら私が足りない分あなたの手足を持ってかえるね

                                                 
                                              メりー


キョン「バカにしてんのか」

俺はその人形と手紙を箱に押し入れた。

キョン「俺じゃなかったみたいだ、ほれおまえにやるよ」

妹「え? いいのっ! やったぁ!」

4: 2010/04/06(火) 00:56:14.05 ID:tjlauCkS0


――――――――
キョン「おい、ハルヒ」

ハルヒ「ん? なによ」

キョン「あんな手のこんだイタズラやめろよ」

ハルヒ「え?」

キョン「シラをきりとおすのか?」

ハルヒ「え? いや、なんのことっ?」

キョン「……」

キョン「もういいよ……」

ハルヒ「な、なんであんたにため息つかれなきゃなんないの!」

キョン「あ~ごめんごめん」




この時まだ気にしていなかった。
しかし四限目音楽の時間、俺はそのことを意識せざるを得なくなる。

5: 2010/04/06(火) 01:02:10.68 ID:tjlauCkS0


キョン「ん?」

ハルヒ「あんたポケットになに入れてんの?」

キョン「なんだこれ」

谷口「うわ……」

ハルヒ「え…… なにその足…」

谷口「おまえまさか……」

キョン「ち、違う!! こんな足知らん!」

キョン「ハルヒ! お前がいれたんだろ!」

ハルヒ「な、なんであたしのせい!? あんたねぇ!」

先生「だまらっしゃい!!」バンッ

キョン「……」

ハルヒ「……」

キョン(畜生~ハルヒめ! なんで足の玩具を……! 悪趣味持ちだと思われるだろ)

6: 2010/04/06(火) 01:07:12.05 ID:tjlauCkS0


――――――――
今日は学校で散々だった……。
変態扱いだけはごめんだ……。 

キョン(家に到着…っと。 ん?)

何気なくポストをみた。
偶然か運命か……。

キョン「なんだ? 手紙?」

キョン「……」

メリーさん、だと……。
いい加減にしてほしい。

キョン「はぁ……」

無視してもよかったがそれはあんまりだろう。
そう思い、俺は重たい体を玄関へ運んだ。

8: 2010/04/06(火) 01:12:21.67 ID:tjlauCkS0


キョン「ただいま」

妹「おかえり~」

妹「キョン君、お人形さんがおかしいの」

キョン「は?」

キョン(ま~た変な仕掛けを……)

キョン「どうした?」

妹「テーブルに置いてたらね、たまにぴょんって!」

キョン「ぴょん?」

妹「飛び上がるの! 蛙みたいにぴょんって!」

キョン「……」

キョン「ちょっと見せてみろ」

妹「待ってて~!」タタタッ

9: 2010/04/06(火) 01:17:57.40 ID:tjlauCkS0
妹「これっ」

キョン「ん」

キョン「……」

キョン「なあ」

妹「ん~?」

キョン「この人形の顔ってこんなに笑ってたか?」

妹「わかんな~い」

キョン「……」

キョン(えくぼなんてあったか? それとも気のせいか?)

キョン「……」ガサッ

俺は手紙を取り出した。
この人形の取り扱い説明書であることを期待しながら開ける。

キョン「……」

11: 2010/04/06(火) 01:25:39.35 ID:tjlauCkS0

ありがとう
いたくないよ、みぎあしはいたくないよ
でもほかのところは  まだいたいよ
はやくして はやくして



キョン「……」

キョン「は……はっ」

妹「……?」

キョン「ちょっとそれ貸しといてくれ」

妹「いいよ」

キョン「少しの間だから」

妹「ううん、ずっと貸してあげる」

妹「そのお人形さん、怖いから……」

キョン「そ、そうか……」


妙な胸騒ぎだ。
ビビってんのか? ハルヒの思う壺だな。

12: 2010/04/06(火) 01:34:27.12 ID:tjlauCkS0
キョン「……」

キョン「くっつくのか? 足……」

キョン「……」
キョン「……」

不気味な笑みを浮かべる人形に足を近づける。

キョン「……」ソーッ

ガチャ

キョン「……」

キョン「はまっ…… た……」

キョン「……」

キョン「……」ゾクッ!

キョン「……なん!」サッ

キョン「……」

確かに視界に入った。
カーテンの隙間から誰かが覗いていた。
誰かが…… 誰? ここ二階だぜ?
そこにベランダはないはず……。

13: 2010/04/06(火) 01:45:29.84 ID:tjlauCkS0
――――――――
古泉「メリーさん?」

キョン「これなんだが」

古泉「……」

ハルヒ「本当に私じゃないわよ……?」

キョン「じ、じゃあ誰だよ……」

キョン「……」

古泉「怖いのは勘弁ですね……」

長門「メリーさんとは変死体で発見された少女の事」

キョン「……」

古泉「変… 死体?」

一家心中にも関わらず父親は娘をバラバラにしたという。
ふつうの一家心中では考えられない。

それから2年後、怪奇文章が警察に届いた。

長門「それは解読できないほどの怪奇文章」

15: 2010/04/06(火) 01:56:31.63 ID:tjlauCkS0
殺害の経緯にはおぞましい状況が記されている。
少女は狂う父親から逃げ出し、近くのトンネルに逃げ込んだ。

そこは人がやっと二人入れるくらいの狭いトンネル。
入り口には金網があり、予め小さな穴があいていた。

少女は暗闇の中、そのトンネルに逃げ込んだ。

ハルヒ「……」

長門「しかし父親はその金網を破り」

長門「暗闇にも関わらず、少女の頭をカチ割った……」

キョン「お、おい… やめろ……」

長門「父親はその暗闇の中、少女をバラバラにした」

長門「後日、警察はその父親をトンネルで発見する」

キョン「……やめろって」

長門「父親の死体は……」

長門「四肢のない少女を抱いていたという―――――」

キョン「…やめろっ!」

ハルヒ「……わっ、びっくりした」ビクッ

18: 2010/04/06(火) 02:03:53.34 ID:tjlauCkS0
キョン「はぁ… はぁ…」

ハルヒ「ど、どうしたの?」

古泉「あ、あの……」

長門「……」

キョン「あ…… す、すまん…」

長門「……」

キョン「いやっ、あんまり怖かったもんだからっ! ははっ、すまん」

朝比奈「ひ…わわ… ちょっと… 出ちゃ… いましたぁぁ…」

ハルヒ「え!? た、大変! 今すぐ処置よ」タタタッ

朝比奈「ひぃぃ……」

キョン「……」

キョン「すまん… 長門……」

長門「気にしていない」

キョン「はは……」

19: 2010/04/06(火) 02:11:20.74 ID:tjlauCkS0


――――――――
キョン「……」

キョン「ああ……」


あれから4日。
長門のあの話が頭をループする……。
なんで…… くそっ……



ハルヒ「大丈夫? キョン」

キョン「ああ」

ハルヒ「あたし、力になるわよ? なんか困ってんの?」

キョン「いや… なんでもない…」



今日で一週間なんだが……。
どうなる…… 頼むから誰かのイタズラであってくれ。

21: 2010/04/06(火) 02:15:45.91 ID:tjlauCkS0
――――――――
そして……


その時はやってきたのであった。



プルルルルル

キョン「……」ビクッ

キョン「なんだ… 電話か……」

ピッ

キョン「はい」

「……」

キョン「もしもし…… 誰?」

「私……  メりーさん……」

キョン「……」ゾクッ

24: 2010/04/06(火) 02:19:59.09 ID:tjlauCkS0
キョン「え……?」


まるでジブリ作品のように毛がさかだつ。



「いま……  バス停にいるの……」

ブッ

キョン「……」

キョン「あ… あ……」




キョン「やべ… ぇ…」



来やがった… どうする… おい、ちょ… え…?
まじかよ… 冗談だろ?…  もし本当だったら…


プルルルルル…

27: 2010/04/06(火) 02:26:03.67 ID:tjlauCkS0
キョン「……」ゾクッ

キョン「ああぁあ… やべぇ… どうする…」

プルルルルル


キョン「っ…… ああ… 畜生…」

ピッ

キョン「……」

「私…… メリーさん……」

キョン「……」

「今…… 自動 販 売機の隣   にいるの……」

ブッ

キョン「……」ブルブル

キョン「どこの…… 自販機…? は… は?…」

俺の頭が勝手に指令をだした。

逃げろ――――――――

29: 2010/04/06(火) 02:30:18.98 ID:tjlauCkS0
ガチャ!

キョン「はぁ はぁ 」タタタッ




逃げろ逃げろ逃げろ逃げろッ!!
やばいまじやばい! 洒落にならん!!!


助けてくれ! 誰か!
誰か!  誰か……!


キョン「あ……」


長門――――――――



キョン「長門… 長門だ…  長門!」

キョン「長門に……!」ピポパ
プルルルルル

31: 2010/04/06(火) 02:32:51.57 ID:tjlauCkS0


キョン「出ろっ!」



プルルルルル

ガチャ



キョン「な、長門っ! やばいん…」






「私…… メリーさん…   今…… びょういn……」




キョン「うああああ!!」ダッ

33: 2010/04/06(火) 02:38:06.93 ID:tjlauCkS0
キョン「やべぇ… やべぇ…」タタタタッ



長門…… 頼む!
助けてくれ……!





キョン「はぁ… はぁ…」タタタッ

プルルルルル

キョン「う……」ビクッ

キョン「はぁ… も… もう勘弁してくれ……」

キョン「え…?」

キョン「な、長門からっ! 長門からだっ!」

ピッ

キョン「長門っ!」

長門「着信があったから。 なに?」

36: 2010/04/06(火) 02:45:07.03 ID:tjlauCkS0
キョン「長門っ、助けてくれっ!」

長門「状況を」

キョン「メリーさんだよ! メリーさんが!」

長門「落ち着いて、把握した」

長門「今から、処置をほどこす」

キョン「ま、まじか! 助かるのか!?」

長門「助かる」

キョン「……」


俺としたことが… 涙がこみあげてくる。
嗚呼… 今なら長門の事好きになれる……。


キョン「ありがとう……」

長門「…あなt… aびゃj  から…」

キョン「長門?」

長門「き をザッjmm+つザッ けて」

キョン「え?」

37: 2010/04/06(火) 02:48:18.27 ID:tjlauCkS0


私…  めりーさん……





キョン「え……」



うしろかr




今…   あなたの後ろにいるの……








え――――――――

38: 2010/04/06(火) 02:53:43.79 ID:tjlauCkS0

”おとうちゃあああん!! いやあああああああ!!”



なんだ? 悲鳴が……





”いやあああああああああ!! お父ちゃああああああん!!” 






ドッ



キョン「うっ――――――――!」ザクッッッッ





なんだ… いてえ……  熱い… いたい…

41: 2010/04/06(火) 03:00:22.62 ID:tjlauCkS0
キョン「……うっ」


視界がぼんやりしている…… どうなってんだ… ここ…




”痛い”

キョン「……?」


”痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い”

視界がはっきりしてくる……。
俺の至近距離から誰かが…… 長門?

違う… 誰だ―――――――


キョン「ひ……」

キョン「うわああああああああああああ!!」






43: 2010/04/06(火) 03:06:25.12 ID:tjlauCkS0
――――――――
長門「起きた」

ハルヒ「えっ! 起きた!?」

キョン「……ん」

キョン「長門?」

キョン「ハルヒ?」

ハルヒ「……なによ… わりと元気そうじゃない」

長門「あなたは道路に倒れていた」

キョン「道路に?」

キョン「……」ゾクッ

キョン「そんなはずない… 俺はみたんだ…」

ハルヒ「え? なにを?」

キョン「……」


オカッパ頭の女の子が……
目は潰れてて… 赤くて…
痛いって連呼してたのを……

45: 2010/04/06(火) 03:12:23.69 ID:tjlauCkS0
ハルヒ「え……」

長門「……」

キョン「……」

長門「あの霊はあなたを違うと認識した」

キョン「え?」

長門「暗闇の中、殺されたその霊は自分を殺した人を知らない」

長門「探している、自分と同じ目にあわせる為に……」

キョン「……」

キョン「父親ってことを知らないのか……?」

長門「そう」

ハルヒ「……」

キョン「……」

ハルヒ「なんか悲しい話ね……」

キョン「……」

47: 2010/04/06(火) 03:16:47.39 ID:tjlauCkS0
キョン「……」

キョン「長門…… その子が殺されたトンネルは何処かわかるか?」

長門「わかる」

ハルヒ「え? なにするの?」

キョン「……」

長門「……」

長門「把握した」

ハルヒ「え? ちょっとっ」

ハルヒ「なに以心伝心しちゃってんのよっ、あたしもいれなさい!」

――――――――

50: 2010/04/06(火) 03:22:51.89 ID:tjlauCkS0
――――――――

サッ

キョン「……」

キョン「ここでいいかな」

長門「線香の使用用途がわからない」

キョン「ああ、貸して」

ハルヒ「このトンネルなの……? ここであの子は……」

キョン「できるなら成仏させてやりたいが俺達が出来るのはこれくらいだ」


大きく引き裂かれた金網の前に花束を添えた。



キョン「……」

キョン「逃げたりしてすまなかったな……」

キョン「……」

ハルヒ「あの子来てるかしら」

キョン「……」

51: 2010/04/06(火) 03:26:55.52 ID:tjlauCkS0


キョン「さて、帰るか」

ハルヒ「そうね、暗くなってきたし」

キョン「……」スタスタ

キョン「……」ピタッ

キョン「……ん?」

キョン(今、後ろに……)

ハルヒ「どうしたの?」

キョン「……」

キョン「いや…… なんでもない…」スタスタ

長門「……」

キョン「……はは」

キョン「まさかな……」スタスタ――――――――

53: 2010/04/06(火) 03:31:49.78 ID:tjlauCkS0
――――――――

人形はいつの間にか消えていた。
どうやらその子からの疑いは晴れたらしい。


キョン「……」スタスタ

キョン(帰宅… っと)

キョン「……ん?」

キョン「手紙……?」


ポストに裸の手紙が突っ込んであった。



キョン「……」


キョン「あの子からか?」サッ


あの時とは違う気持ちで手紙を受け取れた。
なぜかはわからない。

そんな気がした。

58: 2010/04/06(火) 03:40:38.53 ID:tjlauCkS0
キョン「……」

ごく簡単な内容だった。
いや、これは手紙じゃなくてメッセージカードか。


キョン「ふっ、どういたしまして」


お前もそこにいたのか
そんな気がしてたよ。

がんばって書いてくれてありがとう。








ありがとう とまちがっちゃってごめんね

                       めりー




「メり―ー―ーさん」 終わり 

63: 2010/04/06(火) 03:56:54.61 ID:tjlauCkS0
「帰りは……」






ま~たハルヒの奴がむちゃな企画をたてた。
俺の夏休みを返せ。と言いたい。

――――――――

ハルヒ「肝だめしよ」

キョン「……」

朝比奈「……」

古泉「……」

長門「……」カタカタ

ハルヒ「なにシケてんのっ! 肝・試・しっ!」バンッ

キョン「……」

古泉「肝試しですか……」

ハルヒ「ふつうでしょ!? 夏は肝試しよ!」

64: 2010/04/06(火) 04:04:59.43 ID:tjlauCkS0
キョン「ヤブカがうぜぇ」

ハルヒ「ゴールドスプレーふってきた?」

キョン「せめてポケモンでも虫よけスプレーにしとけ」




かくして我らSOS団は肝試しをしにある場所へ向かった。


ハルヒ「やっぱりスリルが肝心よ!」

キョン「どこだ? ここ」

朝比奈「暗いですううう……」

ハルヒ「今から向かう場所はマジで出るらしいわ」

キョン「……」



めりーさん事件で俺は霊の存在を認めざるを得なくなった。
だからこそ怖い……。

キョン「な… なにがでるんだ?」

66: 2010/04/06(火) 04:13:11.15 ID:tjlauCkS0


ハルヒ「じゃ~ん!この札みて!」

キョン「……」

古泉「それを……?」

ハルヒ「今から寺に行って、この札を貼ってもらいます!!」

キョン「……」

キョン「ハルヒ、やめておこう…… バチが当たるぞ」

ハルヒ「なにキョン、びびってんの?」

キョン「は… はぁ? ビビってねぇし」

古泉「なるほど……」

キョン「あ? どうした?」

古泉「いえ、なにも……」

キョン「は? 気になるだろ、おい」

67: 2010/04/06(火) 04:22:46.18 ID:tjlauCkS0
ハルヒ「さあ、肝心の構成よ」

ハルヒ「誰と組むか…… あたしはもう決めてるわ…」

キョン「……ん~そうだな~俺は…」

古泉「……僕も願わくば…」

朝比奈「わ わたしは絶対…」

ハルヒ&キョン&古泉&朝比奈「有「長「長門「長門さんですっ!」さん!」門っ!」希っ!」バッ

長門「……」ビクッ

ハルヒ「なによ… チキンなの? あんな」

キョン「お前が当事者だろう? 腹くくれや」

古泉「困りましたね…… 怖いの苦手で」

朝比奈「わ、私、長門さんじゃないと死んじゃいます!」

長門「……」

69: 2010/04/06(火) 04:31:43.47 ID:tjlauCkS0


――――――――

クジ引きとは不公平なもので……



ハルヒ「古泉君かぁ… 大丈夫なの?」

古泉「安全の保障はできません」

朝比奈「やったぁ~ 長門さん! 助かりましたぁ」

長門「……」


必然的に俺が……


キョン「待て待て~い!!」

ハルヒ「なによ」

キョン「なによ!? 俺の台詞だバカ!!」

キョン「一人で肝試しって…  お前、想像するだけで鳥肌が…」

70: 2010/04/06(火) 04:38:40.95 ID:tjlauCkS0
ハルヒ「一組づつ行くわよ?」

古泉「じゃんけんですね」

キョン「おい… まじでこれで行くのか? 嘘だろ…」

ハルヒ「じゃーんけーん」

ハルヒ「ぽんっ」







一番:キョン
二番:長門&朝比奈
三番:ハルヒ&古泉


ハルヒ「行ってらっしゃい、はい懐中電灯」

キョン「……」ドヨーン

キョン(まじでハルヒは面白味に欠けるな)

キョン「あ゛~ 行きたくね~」

ハルヒ「いいから、行ってきて」

71: 2010/04/06(火) 04:46:29.52 ID:tjlauCkS0


――――――――
林の中、しかも細い複雑な道だ。
この先に寺なんてあんのか?

キョン「うぅ……」


両サイドの林から今にもなにかが出てきそうだ……。

キョン「こええ……」

ガサッ

キョン「うボォア!!」

キョン「はぁ…はぁ…! あぁ? 猫か……」


ふざけんなよ…… 早く終わらせたい…


キョン「ああぁぁぁ……怖い……」

73: 2010/04/06(火) 04:52:16.25 ID:tjlauCkS0
――――――――
結構歩いた。

物音に敏感になるな……。


キョン(めっちゃ遠くにきてるんだが寺なんてねーぞ)

キョン「あ゛~…… こっから戻るのも地獄だ…」

キョン「……」

キョン「ん?」


明るい……
寺か? いや…


キョン「ハルヒ?」

ハルヒ「あら、早かったわね」

キョン「え? どういうことだ…?」

ハルヒ「ちゃんとお札貼った?」

キョン「寺なんかなかったぞ…?  てかなんで戻ってきたんだ……」

ハルヒ「え?」

74: 2010/04/06(火) 04:59:30.87 ID:tjlauCkS0
ハルヒ「なに言ってんの?」

キョン「いやマジだって!」

ハルヒ「言い訳は通用しないわ、もっかい行ってきなさい」

キョン「じ、じゃあ長門達を行かせて、俺の言ってることが嘘だったら100回行ってきてやる」

ハルヒ「……」

ハルヒ「いい自信ね、あたしは事前に調べてんのに?」

キョン「は?」

ハルヒ「あたしは昼間にこの道で寺に着いたんだから」

キョン「……な」

ハルヒ「いいわ、有希達行ってきて」

ハルヒ「キョンはあと100回行きたいみたいだから」

長門「了解した」

朝比奈「こ、怖い……」

キョン「……」

76: 2010/04/06(火) 05:06:07.42 ID:tjlauCkS0


――――――――
絶対おかしい
俺は方向オンチなのか?
いや、真逆に進むほどボケてはいない




じゃあなんで……





ハルヒ「キョンはその寺、なにか知ってる?」

キョン「さあな」

ハルヒ「その寺は、七五三のお祝いをする寺だったの」

ハルヒ「七つの子供にお札を貼らせるのが江戸時代のしきたりみたいなものだったらしいわ」

キョン「ほ~」

78: 2010/04/06(火) 05:12:41.88 ID:tjlauCkS0
ハルヒとその寺の話をしていた時、

朝比奈「へ?」

ハルヒ「あら、おかえり」

キョン「寺はありました?」

長門「私たちは真っ直ぐ進んだ」 

ハルヒ「え? 寺は?」

長門「それらしいものはなかった」

キョン「ほら、見ろハルヒ! 俺の言うとおりだろ!」

ハルヒ「……」

ハルヒ「あっそ! じゃあ、あたしが直々に確かめてやるわっ!」 

ハルヒ「行くわよ、古泉君っ!」

古泉「心の準備が……」


スタスタスタ…

朝比奈「言っちゃいましたね……」

79: 2010/04/06(火) 05:18:39.14 ID:tjlauCkS0


――――――――
ハルヒ「有希までふざけちゃって!」

古泉「あ、歩くの早すぎですよ…」

ハルヒ「古泉君、男なんだからっ!」

古泉「ご容赦願います……」

ハルヒ「……」

ハルヒ「古泉君が言うんならちょっとペースダウンしてあげる」

古泉「ありがとうございます、はは」

ハルヒ「狭いわね」

古泉「ええ」

古泉「まるで……」

ハルヒ「え?」

古泉「いえ… なんでも……」

80: 2010/04/06(火) 05:24:08.94 ID:tjlauCkS0


――――――――
キョン「ああいう性格ですから」

朝比奈「素直になればいいのに」

キョン「一度言ったら退けないタイプですね」

長門「……」

長門「涼宮ハルヒの供述は真実」

キョン「え?」

長門「涼宮ハルヒは本当のことを言っている」

長門「しかし私達はそれに遭遇しなかった」

キョン「どういうことだ……?」

長門「不明、涼宮ハルヒの仕業ではない」

キョン「……」

キョン「それって……」

82: 2010/04/06(火) 05:32:05.68 ID:tjlauCkS0
ハルヒ「え? あれ寺よね?」
古泉「寺……?」

ハルヒ「なによ! あるじゃないの!」

古泉「……」

ハルヒ「帰ったら1000回ね、それも一人づつ」

古泉「涼宮さん… 帰りましょう」

ハルヒ「後は貼るだけでしょ? 貼らせてよ」

古泉「だめです、戻りましょう」

ハルヒ「じゃあ貼ったらダッシュよっ」

古泉「貼ってはいけない!」

ハルヒ「…わっ!」

ペタ

古泉「……」

ハルヒ「び、びっくりするじゃない!」

古泉「ああ…… これは大変な事になりました」

ハルヒ「えっ? どういうこと?」

83: 2010/04/06(火) 05:39:39.59 ID:tjlauCkS0
古泉「……」

ハルヒ「どうしたの?」

古泉「いえ、すみません。 まだ確信ではありません」

古泉「もときた道を戻りましょう」

ハルヒ「そ、そうよ。 帰るだけじゃない」

ハルヒ「パパッと帰りましょ? ねっ」タタタッ

古泉「はい…」






85: 2010/04/06(火) 05:47:03.60 ID:tjlauCkS0
――――――――
キョン「ハルヒ達が戻って来れない?」

長門「その恐れがある」

キョン「……」

キョン「なんでだ? なんで……」

長門「涼宮ハルヒが寺を見つけ、札を納めた場合」







ハルヒ「なんで戻れないのよ……」

古泉「……」

ハルヒ「相当走ってるのに……」

古泉「……」

古泉「涼宮さん、とーりゃんせという歌はご存知ですか?」

ハルヒ「え? ま、まぁ」

古泉「歌ってみてください……」

87: 2010/04/06(火) 05:56:14.77 ID:tjlauCkS0
ハルヒ「歌うの?」

古泉「はい……」
ハルヒ「あんまし覚えてないけど……」

ハルヒ「と~りゃんせ~ と~りゃんせ~」

ハルヒ「こ~こはど~この細道じゃ~ 天神さ~まの細道じゃ~」

ハルヒ「ちょーと通してくだしゃんせ~ ご用のない者……通させぬ~……」

ハルヒ「この子の七つのお祝いに~…… お札を納めにまいります~」

ハルヒ「行きはよいよい… 帰りは……」


”怖い”


ハルヒ「……!」ゾクッ

古泉「……いま」
ハルヒ「今の声… 古泉君?」

古泉「違います…… やばいですよ…これ…」

古泉「この歌は”児童虐待”を指してます」

ハルヒ「え……?」

89: 2010/04/06(火) 06:02:14.81 ID:tjlauCkS0
江戸時代

使えない子供はすべて殺してしまうほどだったようです。
とーりゃんせとはこれを暗示した歌。



七つは才能の分かれ目。
ここで殺すか生かすか。


そう…… とーりゃんせとは子供を殺し、寺に死体を捨てる事を暗示している。




故に行きはよいよい帰りは怖い。




子供達がそれを許しますか……?


ハルヒ「……」

古泉「今、僕すごいビビってますよ」

ハルヒ「……」ゾクッ

91: 2010/04/06(火) 06:10:22.15 ID:tjlauCkS0
――――――――
長門「……危険」

キョン「え? どうした」

長門「私達の入り口と涼宮ハルヒの出口に迷宮が生じた」

キョン「…やばいのか?」

長門「時空で考えるといい」

長門「あくまで例え、私達の時空と涼宮ハルヒの時空が異なった」

キョン「帰って… これないのか?」

長門「現段階で帰還は不可能」

キョン「……」

朝比奈「……」




キョン「なんだって……?」

114: 2010/04/06(火) 16:51:14.88 ID:tjlauCkS0




キョン「な……」

長門「涼宮ハルヒはこの世界にいない」

朝比奈「ど、どういうことですかぁ……」

長門「閉鎖空間は生じていない、非科学的な世界へ」

キョン「あの世か……?」

長門「……」

朝比奈「ひぇぇ… あ…あの世ぉ……?」

115: 2010/04/06(火) 16:56:27.46 ID:tjlauCkS0
ハルヒ「こ、古泉君」

古泉「どうしますか……」

ハルヒ「どうしたもこうしたも… 帰りたいんだけど」

古泉「こんなに歩いているのに出口が見つからないんですよ……?」

古泉「ここでなにか出てきたら……」

ハルヒ「や、やめてよ!」

古泉「寺に戻ってきましたね……」

ハルヒ「え? …なんで」

古泉「……」

古泉「涼宮さん……」

ハルヒ「え? なに…?」

117: 2010/04/06(火) 17:02:41.40 ID:tjlauCkS0
古泉「……」

ハルヒ「な… なに?」

古泉「あそこ……」

ハルヒ「え…? どこっ…」

ハルヒ「……」ゾクッ

古泉「あの寺…… 開いてませんでしたよね……」

ハルヒ「えっ… なんで開いてんの……?」

古泉「……」ブルッ

古泉「なに者かが……  開けた… あるいは」

ハルヒ「……」

古泉「出てきた……」

ハルヒ「ち、ちょっと! ここ…これ以上ふざけたら怒るわよっ」

古泉「ですが…… そうとしか……」

120: 2010/04/06(火) 17:11:01.19 ID:tjlauCkS0
古泉「……も、戻りましょう」

ハルヒ「そ、そうね……」

ハルヒ「なにかの拍子で開いたに違いないわよ……」

古泉「でしょうね……」スタスタ


カラン…



古泉&ハルヒ「……」ピタッ


後ろから鈴の音……?


古泉「す… 涼宮さん… 走りましょう……」

ハルヒ「な…な… なに…? 鈴…?」


カランカラン…


古泉「は、走ります… はやく…」

ハルヒ「そんな… 足が動かない……」ブルブル

121: 2010/04/06(火) 17:19:45.81 ID:tjlauCkS0
その音は静かに…… 確実に近づいてきている…… 

古泉「す、涼宮さんっ、ははははやくっ」

ハルヒ「…あ… ぁ…」ブルブル

カラン…  カ…ラン…

古泉「……」

止まった……?

ハルヒ「はぁ… はぁ…」

古泉「……」

と思ったのが間違いだった――――――――


カッ…… カランカランカラン!


古泉&ハルヒ「……!」

古泉「走って!!」ギュッ

ハルヒ「きゃああああ!」ダッ

124: 2010/04/06(火) 17:33:33.62 ID:tjlauCkS0



”後ろを見てはいけない”


何故か、僕はそう感じた。
見てしまったら…… 帰れなくなる。 


二度と帰れなくなる。


古泉「後ろを見てはいけませんっ!」

ハルヒ「ど~なんてんのよっ!!」タタタッ

古泉「とにかく走って!!」



なにも考えずひたすら走った。
ループしてることも忘れて。

125: 2010/04/06(火) 17:41:56.89 ID:tjlauCkS0


――――――――
キョン「三途の川?」

長門「そう、この道は三途の川と同じ性質を持つ」



三途の川には必ず役所があり、そこで天国か地獄か判決が下される。
前世で罪を犯した人は番人が自ら地獄へつれていく。


キョン「は、ハルヒ達は死ぬのか!?」

長門「わからない」


あくまで今のは例え。
三途の川での話。

長門「だからわからない」

キョン「……」

キョン「そんな……」

127: 2010/04/06(火) 17:51:02.24 ID:tjlauCkS0


古泉「はぁ…… はぁ……!」タタタッ

ハルヒ「はぁ…  なんなのよ……もう…」

古泉「……!」ビクッ

ハルヒ「あぅ……」ドン

古泉「……あれは……」

カラン…

古泉「今度は前から……」

古泉「……」グイッ

ハルヒ「いたっ……」

ハルヒ「な、なんで戻ってんのっ…ねぇ!…」タタタッ

古泉「……はぁ… はぁ…」タタタッ


暗闇に浮かぶその姿は……
江戸時代の子供の恐怖を具現化したもの。 

”鬼”であった

128: 2010/04/06(火) 17:58:12.86 ID:tjlauCkS0
生け贄か…… 僕たちは……

古泉「……っ」

ハルヒ「も… もう限界……」

古泉「……」


追っかけて来ない。
今なら大丈夫か……。


涼宮さんには今のうちに……

古泉「涼宮さん、この話は落ち着いて聞いてください」

ハルヒ「え?」

古泉(あなたに賭けます……)

古泉「通りゃんせの2番はご存知ですか?」

ハルヒ「え? し、知らないっ。 なんで?」

古泉「よかった…… 通りゃんせとは……」

129: 2010/04/06(火) 18:05:49.87 ID:tjlauCkS0


ゴゴゴゴ…


古泉「……!」

ハルヒ「え! なななに?」

古泉(鬼門が開く…… このままでは……!)

古泉「涼宮さんっ!」

ハルヒ「わっ」

古泉「このままだと僕たちは帰れません!」

ハルヒ「えっ……?」

古泉「通りゃんせの一番と二番は歌詞が違うだけで意味は同じなんです」

ハルヒ「ど、どういうことっ?」

古泉「結論から言えば、あの札を貼ったことで僕達は生け贄と認識された……」

ハルヒ「生け贄……?」ゾクッ

古泉「このままでは帰れません!」

ハルヒ「そ… そんな……」

131: 2010/04/06(火) 18:11:38.25 ID:tjlauCkS0
古泉「……」

ハルヒ「そんなの……」

ハルヒ「そんなのいやよ! なんであたしが生け贄に!」

古泉「――――――――」



希望の光が見えた。

ハルヒ「死ぬなんてまだはやいわよ! 古泉君!」

古泉「あ、はい?」

ハルヒ「なにボーッとしてんの! はやく帰るわよ!」グイッ

古泉「あ… はい」タタタ




これは……

いやまさかそれは考えられない……


132: 2010/04/06(火) 18:17:53.51 ID:tjlauCkS0


ハルヒ「絶対出口はあるわ! ないはずない!」タタタ

古泉「……」タタタッ





微かに差し込んだ光…… 信じがたいことにその光が強くなっていく。


涼宮さんは霊界にまで閉鎖空間を創り出した――――――――


閉鎖空間と霊界が反発し合い、中和していく……。


これはまさか……


ハルヒ「あっ! あれそうじゃない!?」

古泉「……!」



現世に還れた――――――――

136: 2010/04/06(火) 18:26:59.10 ID:tjlauCkS0
キョン「ハルヒ!」

ハルヒ「ほら、古泉君! すぐ帰れたじゃない!」

長門「……」

朝比奈「ふぇぇ… よかったぁぁ…」

古泉「……」



霊界に劣らない閉鎖空間?
霊界の強さとは人間が想像し得ない力らしい。


宇宙の神秘に並ぶその力と同等の閉鎖空間を……

ハルヒ「寺あったじゃない! 約束は守ってもらうわ」

キョン「はいはいおまえにはお手上げだよ……」

長門「……」

長門(このことは統合思念体に報告しない、極秘とする)

長門(思念体はエラーとして処分するだろうから)

139: 2010/04/06(火) 18:44:44.66 ID:tjlauCkS0
――――――――


未だに信じられない。


涼宮さんの秘められた力はとてつもないものだった。




ハルヒ「こいずみ君~」

古泉「はい、なんでしょう」

ハルヒ「調べてもでないわよ?」

古泉「え?」

ハルヒ「通りゃんせの二番よ」

ハルヒ「質問しても、そんなのありません^^ って」

古泉「ふふ、気になったんですか?」

ハルヒ「そりゃ気になるわよ」

古泉「あまり知名度はありませんからね」

ハルヒ「もう古泉君教えてよ、眠れないじゃない」

142: 2010/04/06(火) 18:50:36.75 ID:tjlauCkS0
古泉「いいですよ」

ハルヒ「さ、歌って」

古泉「それは勘弁、恥ずかしいです」

ハルヒ「別に恥ずかしくないわよ?」

古泉「紙に書いて渡しましょう」

ハルヒ「あ、じゃあお願~い。 次、キョンちょっと来て~」

古泉「ふふ」




涼宮さんはお化けと友達になれそうですね。

確率論も哲学も通じないようで。

145: 2010/04/06(火) 19:21:19.88 ID:tjlauCkS0
ハルヒ「なるほどね、こういう裏設定があったの」

彼女はのんきそう口にした。
命が危なかったというのに……

まあ、命の恩人であることに変わりはないですけどね。

ハルヒ「ふふっ、また遊びにいこうかしらっ」

ハルヒ「今日は解~散! お疲れ~」



また遊びにいくなんて言わないでくださいよ……
怖いのは勘弁。 歌が聞こえてきそうです。



と~りゃんせ~ と~りゃんせ~
こ~こは冥府の細道じゃ~
鬼神様の細道じゃ~
ちゃーと通してくだしゃんせ~ 贄~のない者とおしゃせぬ~
この子の七つのお祝いに~ 供養を頼みに参ります~

生きはよいよい 還りは怖い~

怖いながらもとーりゃんせ~ と~… りゃんせ~……


「帰りは……」 終わり

173: 2010/04/07(水) 00:39:00.61 ID:8xLMQ6To0
「ま~・ま~」












夏休みが終わり新学期に突入。
あっとゆーまに明日はシルバーウィークか。

親からじいちゃんのいえに顔だしにいけといわれノコノコと向かってる最中だ。
もちろん妹と一緒にな、別にイヤではないから構わない。


キョン「あ、久しぶり」

じい「おっ、来たか。」

じい「上がってていいぞ」

キョン「え? じいちゃん家そっちだろ?」

じい「借りたんだよ、うちは白アリで壊滅状態だからな」

176: 2010/04/07(水) 00:46:48.66 ID:8xLMQ6To0
妹「へ~、新しい家~?」

ばあ「あら、いらっしゃい」

キョン「家、借りたんだ」

ばあ「こっちもボロいけどねぇ、崩れて生き埋めになるよかましだよ」

キョン「はは」

白アリってそんなに強いのか?
家を崩すほど強ええのかよ。

ま~ ま~

キョン「ん?」

妹「あ~! 猫だ~!」

後ろについた片手に猫がじゃれてきた。

キョン「え? 猫?」

ばあ「あ、その子はもらいものでね、まーっていうんだよ」

ばあ「名前は鳴き声に由来したんだけどね」

キョン「へ~」

177: 2010/04/07(水) 00:53:35.30 ID:8xLMQ6To0
ま~、ねぇ。

キョン「……」

妹「キョン君みて~、かわい~」

猫「ま~、ま~ぁ」ゴロン

キョン「……」





なんだこの嫌悪感は。
ただの猫だろ? 




バア「はい、すいか」

キョン「あ、ありがとう」

ばあ「その子はすごい寂しがり屋でね」

ばあ「寝てても布団の中に入ってきて鳴くんだよ」

キョン「なつっこい猫だな」

179: 2010/04/07(水) 01:01:40.52 ID:8xLMQ6To0
――――――――
あれこれ話すうちにもう暗くなってきた。

キョン「前の家主はどんな人?」

じい「俺もよく知らんのだがお婆さんだったらしい」

キョン「へ~」

じい「心臓麻痺で亡くなられたそうだ」

妹「このさとうきびおいし~!」

キョン「とうもろこしだろ? 牛じゃないんだから」

ま~ ま~

じい「ま~、おいで」

猫「……」ジーッ

猫「……」プイッ

ばあ「あらら」

じい「はは、ま~はじゃれる時とプライベートを区別してるんだよ」

キョン(猫にプライベートもクソもないだろ)

キョン「……」

180: 2010/04/07(水) 01:08:32.95 ID:8xLMQ6To0


――――――――
ばあ「雨が強くなってきたね」

ザーッ

キョン「俺、風呂入ってきていいかな」

おば「いいよ」

妹「あたしも~」トテトテ

キョン「お前はじいちゃんかばあちゃんかどちらかと入りなさい」

妹「わかった~」

キョン「……」

キョン(こんな事を言ってくるのがあともう少しなんだと思うとなにか惜しい)

キョン「……」ギイ

キョン「お~、思っていたより綺麗だな」


カビだらけなイメージがあったんだが案外綺麗。
うちより綺麗じゃないか?

182: 2010/04/07(水) 01:17:34.64 ID:8xLMQ6To0


チャポンッ

キョン「ふ~っ」


まん丸の浴槽なんて初めて浸かった。
田舎独特の雰囲気が味わえるシルバーウィークになりそうだ。


キョン「……」バチャバチャ



ま~  ま~




キョン「……」

キョン(外からま~の鳴き声がするな)

184: 2010/04/07(水) 01:23:44.22 ID:8xLMQ6To0
ま~ ま~




キョン(雨降ってんのによく外にいれるな……)



ま~ ま~

キョン「……」


猫の鳴き声と雨音に耳を澄ましてみる。
これもまた価値あるもんだ。

今ままでの人生を振り返るいい機会かもしれん。


……


キョン「……」

キョン(鳴きやんだな……)

185: 2010/04/07(水) 01:31:24.24 ID:8xLMQ6To0


――――――――
キョン「お先しました」スタスタ

ばあ「どうでしたか? 湯加減は」

キョン「最高だったよ」

ばあ「それはよかった」

妹「ばあちゃん~ はいろ~」グイグイ

ばあ「じゃあ入ろうかね」

妹「O・F・R~♪ ラヴラヴ~」

キョン(TVなにかやってるかな)ピッ

キョン「……」

キョン「大したのやってね~な……」

ま~ ま~

キョン「ん? ま~……」

キョン(え……?)

187: 2010/04/07(水) 01:35:55.37 ID:8xLMQ6To0
キョン「……」


ま~ ま~


キョン「……」

キョン「じいちゃん… ま~ってずっとここいた?」

じい「ああ、ずっと俺の隣にいたよ」

キョン「……」

キョン(じゃあ風呂場で聞いた鳴き声は別の猫……?)

キョン(いや、でもま~って鳴く奴そういないぞ……)

キョン「……」

ま~ ま~ぁ

キョン「……」

キョン(深く考えるのはやめよう……)

189: 2010/04/07(水) 01:43:33.49 ID:8xLMQ6To0


――――――――
キョン「布団、俺が敷いたのに」

ばあ「お客さんに敷かせるわけにはいかないよ」

キョン「ごめん……」

妹「キョン君の隣で寝る~」

キョン「この部屋は俺とこいつだけ?」

ばあ「私らは朝早いからね、多分もの音で目が覚めるよ」

キョン「ああ……」

ばあ「じゃ、おやすみ~」

妹「おやすみ~」

キョン「おやすみ~」

バタン

妹「わくわくするね~、天井が違から」

キョン「お前、天井にこだわるのか……」

キョン(今日は寝よう…… 朝、早く起きて手伝いでもするか)

190: 2010/04/07(水) 01:51:13.85 ID:8xLMQ6To0
――――――――
ザーッ


キョン(雨が強いな……)

妹「……すーっ」zzz

キョン(かわいい寝息と雨の音が耳に……)


キョン「うおっ…… なんだ…」

モゾモゾ

キョン「…あ… ま~か?」

キョン(ばあちゃんが言ってたな、寂しがり屋だって)


今時めずらしいよ、こんな猫。
生活が充実しすぎてんだな。


キョン「……」

ま~ ま~

キョン「……」ゾクッ

191: 2010/04/07(水) 01:59:23.14 ID:8xLMQ6To0
キョン(え?)


窓の外からま~の鳴き声……?


ま~ ま~

キョン「……」

キョン(ま~はここにいる…… なんで外から……)


キョン「……」ゾクッ


ま~ ま~


キョン「……」

キョン(野良猫だろ…… 野良猫としか考えられない…)

ま~ ま~

キョン(それにしても珍しい奴が多いな……)

ま~ ま~

キョン「……」

195: 2010/04/07(水) 02:10:35.14 ID:8xLMQ6To0
キョン「……」

ま~ ま~

キョン「……」


待てよ……  なんか……


ま~ ま~



これ……


赤ん坊…… 赤ん坊……?


ま~ ま~   


赤ん坊……に 聞こえなくもない……

キョン「そ… そうだよ…」

キョン「あ、赤ん坊なわけ…… ない……」

198: 2010/04/07(水) 02:16:52.08 ID:8xLMQ6To0






妹「ばぁ!」ドスッ

キョン「あ゛ぁっ!」

妹「起きて~」

キョン「うう……」

キョン「あ… 朝……?」


もう朝か……


キョン「あれ、ま~は?」

妹「え? ま~?」

妹「ま~はあっちだよ」

キョン「……」

キョン「……」

199: 2010/04/07(水) 02:24:14.51 ID:8xLMQ6To0
――――――――
親戚が集まっていた。
ガキどもが走り回る。

ドタドタ…

ガキ「わ~待て~」

キョン「……」


猫に勝てるわけないだろう。
俺も昔は追いかけたなぁ


ガキ「待て~」

ヒョイ

ガキ「あっ、逃げられたっ!」

ガキ「隙間に逃げられた~!」

キョン(隙間……?)

妹「どこ~?」

ガキ「ここ」

200: 2010/04/07(水) 02:35:34.97 ID:8xLMQ6To0


――――――――
親戚「ここのお婆さんは惜しかったなぁ」

ばあ「どんな人だったんですか?」

親戚「近所付き合いがよくて、とても優しいお婆さんだったんよ」

ばあ「そうなんですか」

親戚「それが心臓麻痺で亡くなられて……」

ばあ「……まあ」

親戚「そういえば一時期、神隠し事件もあったね」

ばあ「神隠し?」

親戚「お婆さんがいきなり姿を消した、と思いきやひょいと現れた」

ばあ「まあ」

親戚「神のいたずらにあったお婆さんとしても有名なんよ~」

ばあ「そうなんですか~」

キョン「……」

キョン(田舎って疲れるな……)

201: 2010/04/07(水) 02:45:52.26 ID:8xLMQ6To0


――――――――
ガキ「絶対、隠し部屋があるよ!」

妹「おおお、すごい! 隠し部屋!?」

ガキ「隠し部屋!」

妹「隠し部屋ぁ~!?」

ガキ「うんっ、隠し部屋!!」ピョンピョン

妹「かくしへや~っ!!」ピョンピョン

キョン(うるせ~~!!!)


キョン「……ったく」 

キョン「……」



昨晩のことが気になってならない。
あれは野良猫だよな……

最近の俺はオカルチックに……

202: 2010/04/07(水) 02:52:31.53 ID:8xLMQ6To0
――――――――
今日で宿泊も終わりか。
長かったような短かったような。

キョン「……」ジョーッ

キョン「ふぅー……」


ま~ ま~


キョン「ま~? トイレまで来たか」

ま~俺の足にじゃれてくる。
でも俺はすぐに気づいた。


そのま~はま~じゃない。

キョン「……」ビクッ

キョン「……」

足を掴まれた… ま~が掴む… んなわけない。

キョン「……」

全身から汗が吹き出す。

204: 2010/04/07(水) 03:01:51.27 ID:8xLMQ6To0
キョン「……」

小さな手は綱をのぼるように上昇していく。

キョン「……」ゾクッ

シャツを掴まれた。
その手は止まることなく……


キョン「あ… あぁ…」ブルブル

背筋が凍るとはこのことか。

その手は俺の肩に手をかけた。



キョン「――――――――!!!」ゾクゾクッ

キョン「……」


呼吸を忘れた。
肩にかけられた手の気配がない。

おそるおそる振り向いた。

キョン「……」

205: 2010/04/07(水) 03:06:35.51 ID:8xLMQ6To0
キョン「……」

キョン「……」




いない…… 誰もいない……。


キョン「はぁ…っ…! はぁ… はぁ…」


俺は力なく壁にもたれかかった。



キョン「……はぁ… はぁ…」ブルッ



ま~? 違うね……。
少なくとも俺が知っているま~じゃなかった。

小さな手から赤ん坊か……?


キョン「あ゛~…   こぇぇ……」

207: 2010/04/07(水) 03:14:16.35 ID:8xLMQ6To0
――――――――
あの出来事で俺は眠れなくなるだろう。
それが一番の恐怖であった。

妹「おやすみ~」

キョン「ああ……」

キョン「……」



なんなんだよまじで…… なんで最近こんな出来事が続くんだ?
すべてはメリーさんから始まった。

長門がいうにはこうだ。

――――――――

キョン「霊感?」

長門「霊と接触した際、かならず体がその感覚を覚える」

長門「霊感とはそれを指し、普段気づかないような霊の存在にも気づく」

キョン「……」

ま~と初めて会った時に感じた嫌悪感。
これも霊感か。

208: 2010/04/07(水) 03:20:00.65 ID:8xLMQ6To0
――――――――
ザーッ



昨晩と同様、雨が地面をたたく。
妹の寝息も……

いや、今日は静かだな。




モゾッ

キョン「……」ビクッ

キョン「あ… ま~か」


びっくりさせるなよ。
ただでさえ心臓が爆発しそうな状態なのに。

ま~ ま~

布団の中から聞こえる鳴き声。
ああ、これはま~だな。

キョン「よしよし」ナデナデ

209: 2010/04/07(水) 03:21:35.52 ID:8xLMQ6To0
キョン「……」




え?






ち、違う……








ま~ ま~






これはま~じゃない――――――――!

213: 2010/04/07(水) 03:26:04.43 ID:8xLMQ6To0



最大の鳥肌が全身をかけ巡る。







ま~  ま~







キョン「……」ゾクッ

キョン「……」ビキン



追い打ちをかけたのが”金縛り”
過呼吸状態になり体は硬直。


キョン「はっ…  はっ…」

215: 2010/04/07(水) 03:32:50.18 ID:8xLMQ6To0
じわじわとのぼりつめるソイツに俺はなにもすることができない。



キョン(うああああ!! やめてくれやめてくれやめてくれ!!)



堅い体が胸を通過し…… 布団から小さな手がのびた。








キョン(……ああああああああああ!!)ドックン



手はシャツを握りしめ、布団がだんだん盛り上がっていく。



俺はこの時点で泡を吹きそうな勢いであった。

218: 2010/04/07(水) 03:40:55.55 ID:8xLMQ6To0
玩具のような機械的な動きで追いつめる。


キョン「はっ… ! はっ… はっ…!」



一瞬ソイツの動きが止まった。


そして勢いよく、ぬーっと顔を出した――――――――


「まぁぁ~……?」

キョン「………!!!」



目が黄色くて、顔はウロコに覆われた赤ん坊。



俺はそのまま意識を失った……






223: 2010/04/07(水) 03:47:05.26 ID:8xLMQ6To0
――――――――


誰かの声が聞こえる。



妹の声か……?



それとも……





猫「ま~」

キョン「うおあああ!」

猫「…」ビクッ

キョン「はぁ…! はぁ…! はぁ… え?」

妹「キョン君起きた~?」

キョン「……」

夢か現実か……。

225: 2010/04/07(水) 03:53:13.99 ID:8xLMQ6To0


――――――――
朝食を食えたもんじゃない。

キョン「……」

じい「また物件を探すか」

ばあ「そうですね」

キョン「……?」

ばあ「あ、まだ話てなかったね」

ばあ「この家、取り壊されることになったんだよ」

キョン「えっ……」

ばあ「詳しい話はできないんだけどね……」

じい「まさかこの家主であるお婆さんが……」

キョン「……」

キョン(なんだ……?)

227: 2010/04/07(水) 04:06:11.68 ID:8xLMQ6To0
――――――――
俺は複雑な思いを胸にその田舎をあとにした。






これは後に聞いた話。
あそこの元家主のお婆さんの神隠し事件は神隠しでもなんでもない。

赤ん坊拉致監禁事件であったという。



一人で寂しいお婆さんは赤ん坊を拉致した。
ではどこに監禁したのか……。

あのガキはただのガキじゃなかったみたいだな。
階段の裏の隙間の奥に隠し部屋があったという。

そこで赤ん坊とともに暮らした。
これが神隠し事件の真相だ。

その後、お婆さんが姿を現したのは…… これはいうまでもない。



赤ん坊はママを捜し求めていたんだろう。
ま~ ま~と鳴き、ママを捜していたんだ。

228: 2010/04/07(水) 04:12:30.75 ID:8xLMQ6To0


――――――――
ハルヒ「あんた最近、元気ないわよ?」

キョン「そうか……?」

ハルヒ「なにかに憑かれたんじゃない?」

キョン「そうかもな……」スタスタ

ハルヒ「ち… ちょっとぉ」

キョン「……」スタスタ

ハルヒ「……」




いらねー力をつけちまったな……霊感なんて損しかしない。
まったく……


これもハルヒ… おまえが望んだのか?

229: 2010/04/07(水) 04:20:50.04 ID:8xLMQ6To0
――――――――
俺のばあちゃんはメールをうてる。
この世代でメールをうてる人って少ないだろう。



キョン「メール……」ポチッ

キョン「ばあちゃん……?」

キョン「……」



メールの内容は祖母と孫のごく普通なやり取り。
また遊びにおいで、とか親によろしく言っといてとか。

キョン「……」

でも一つ気になった文章があった。



ま~はあれからすっかり甘えてきません。
布団にも入ってこないもんだから……


キョン「……」

231: 2010/04/07(水) 04:28:09.96 ID:8xLMQ6To0
俺は普通に返信をした。
祖母からみて孫の一番理想的な内容だと自負している。




キョン「……」




布団に入ってこなくなるのは当たり前。
だってそれはばあちゃんの知っている”ま~”じゃないから。




それでも”ま~”は幸せだったんじゃないかな。


おっと、それはあっちの”ま~”のことね。




「ま~・ま~」 終わり

232: 2010/04/07(水) 04:35:10.81 ID:zb/Hhb9i0
乙であります

235: 2010/04/07(水) 04:37:55.82 ID:LQe8EXX90
終わっちゃった(´・ω・`)

引用元: キョン「涼宮ハルヒのちょっぴり怖い怪談」