1:2019/11/16(土) 17:05:07.421 ID:JBIKYB+h0.net
男「…………」ドキドキ

中華娘「着てみたよ」

男「!」

中華娘「どう? に、似合てるか?」

男「うおおおおおおおおお!」

中華娘「!?」ビクッ

男「チャイナドレス最高ォォォォォ!!!」

男「シェイシェイ……シェイシェイ……」グスッ

中華娘「なにも泣くことないよ」
5:2019/11/16(土) 17:09:09.571 ID:JBIKYB+h0.net
男(俺がこの子と知り合ったのは、行きつけの中華料理屋だった――)



―中華料理店―

男「ちわーっす」

店主「いらっしゃい。大学の帰りかい?」

男「うん、今日は午前中だけだから。チャーハンセットね」

店主「あいよ!」
8:2019/11/16(土) 17:12:16.810 ID:JBIKYB+h0.net
中華娘「お待たせしました、チャーハンセットです」

男「!」

男「あれおやっさん、女の子雇ったの?」

店主「ああ、中国から来た子でね。日本に勉強しにきてるんだって」

男「へぇ~……ニ、ニーハオ」

中華娘「こんにちは!」

男「あ、日本語……」

店主「チャーハン持ってった時、日本語だったじゃないか」

男「あ、そうだった」

アッハッハ……
9:2019/11/16(土) 17:15:19.530 ID:JBIKYB+h0.net
―アパート―

男(さっきの子、可愛かったな)

男(中国の女の子ってのは、日本の女の子とはまた違った独特の色気があるっていうか)

男(あの子がスリットきいたチャイナドレス着たら最高だろうなぁ)

男「…………」

男「なぁんてアホなこと考えてないで、コンビニで飯でも買ってくるか」

ガチャッ
10:2019/11/16(土) 17:17:51.363 ID:JBIKYB+h0.net
玄関を出ると――

男「……ん?」

男「あ」

中華娘「あ」

男「君もこのアパートだったのか!」

中華娘「あなたも!」

男「え、えぇと……ニーハオ!」

中華娘「こんにちは」クスッ

男「あ、またやっちゃった」



男(こうして俺たちは仲良くなっていった――)
12:2019/11/16(土) 17:21:20.194 ID:JBIKYB+h0.net
……

男「ありがとう……まさか頼んだら着てくれるとは思わなかった」

中華娘「いつも店来てくれるし、これぐらいお礼よ」

男「いやいや、“俺が買うからチャイナドレス着てくれ!”って頼んで、着てくれる人なんてまずいないって」

中華娘「そんなにチャイナドレス好きか」

男「もう大好き!!!」

男「漫画やらアニメのキャラでチャイナドレス着てるキャラがいたら確実に好きになるし」

男「テレビとかでチャイナドレス見かけたら、その日一日は何が起ころうと幸せだね!」

中華娘「す、すごい。本格的ね」
14:2019/11/16(土) 17:24:32.793 ID:JBIKYB+h0.net
男「もし俺が総理大臣だったとして、中国の主席から『チャイナドレスの美女10人やるから日本くれ』って言われたら」

男「俺はあげちゃうかもしれない」

中華娘「あなたが総理なったら日本終わりね」

男「今日本がこうして平和なのは、俺が総理大臣を目指さなかったおかげなのかもしれないな」

中華娘「アハハ、おもしろい」

男「にしても、いやらしい目線抜きで、君はいい足してるよな。なにか運動やってるの?」

中華娘「ああ私、中国拳法やってる」

男「中国拳法!?」
16:2019/11/16(土) 17:26:13.959 ID:JBIKYB+h0.net
男「どこで習ってるの?」

中華娘「近くに道場あるよ」

男「へぇ~、知らなかった」

中華娘「今から二人でいてみる?」

男「うん、今日はもう予定ないし、面白そうだし、行ってみようかな」

中華娘「ただし着替えるね。これで出歩くのちょと恥ずかしいから」

男「残念……」
18:2019/11/16(土) 17:30:09.599 ID:JBIKYB+h0.net
―道場―

素早く突きや蹴りを繰り出す道場主。

師範「ハチャーッ! ホワチャァーッ!」

中華娘「師父!」

男(すげえ……ブルース・リーみたいな人だ)

師範「……ん」

中華娘「私の知り合い連れてきたよ。道場見学したいって」

師範「ホーイ!?」

男(ちょっと春巻も混じってんな)

男「ニ、ニーハオ」

師範「こんにちは」

男「あ、日本語OKですか」
19:2019/11/16(土) 17:33:18.806 ID:JBIKYB+h0.net
男「ところで、ご出身は?」

師範「北関東さ」

男「日本人だったの!?」

中華娘「だけど師父、中国武術の達人よ」

男「たしかにさっきのはすごかった。どうやって身に付けたんです?」

師範「私はさまざまな中国拳法を研究し、そこにカンフー映画などの要素も取り入れミックスさせ」

師範「独自の拳法を編み出したのさ」

男「ようするに自己流と」

師範「そうともいう」
20:2019/11/16(土) 17:36:22.476 ID:JBIKYB+h0.net
中華娘「ちょとやってみないか?」

男「俺が? 拳法を? うーん……」

中華娘「いい運動になるよ、きっと」

男「そうだなぁ、入門させてもらおうかな」

中華娘「やた!」

男「というわけで、よろしくお願いします」

師範「いいだろう。ただし、一つだけ戒めをしておこう」

男「なんでしょう?」

師範「拳法をケンカに使わないこと!」

男「大丈夫ですよ」

男(俺みたいなヘタレがケンカなんかするわけない)
21:2019/11/16(土) 17:39:21.691 ID:JBIKYB+h0.net
師範「ではさっそく稽古開始だ」

男「はいっ!」

師範「我が拳法の極意は、とにかく声を出しながら突きや蹴りを出すこと! さあ、続け!」

師範「アチャーッ!」

中華娘「アチャーッ!」

男「アチャーッ!」

師範「ホチャーッ!」

中華娘「ホチャーッ!」

男「ホチャーッ!」

師範に合わせ、二人も突きや蹴りを放つ。
22:2019/11/16(土) 17:41:20.294 ID:GMQ/VeoR0.net
師範「アチャーッ!」

中華娘「アチャーッ!」

男「アチャーッ!」

師範「ホチャーッ!」

中華娘「ホチャーッ!」

男「ホチャーッ!」
23:2019/11/16(土) 17:41:43.493 ID:JBIKYB+h0.net
師範「メチャーッ!」

中華娘「メチャーッ!」

男「メチャーッ!」

師範「クチャーッ!」

中華娘「クチャーッ!」

男「クチャーッ!」

男「あの……なんなんですか、この掛け声」

師範「考えるな、感じろ」

男(あの名言がこんな胡散臭く聞こえる日が来るとは)
25:2019/11/16(土) 17:44:26.444 ID:JBIKYB+h0.net
男(だけど、本当にメチャクチャ疲れた……!)ハァハァ…

中華娘「大丈夫か?」

男「うん……なんとか……」

師範「では今日はこの辺にしておこう」

中華娘「ありがとうございました!」

男「ありがとう、ございました……」ゼェゼェ…
29:2019/11/16(土) 17:47:34.098 ID:JBIKYB+h0.net
それから――

―中華料理店―

店主「お、いらっしゃい!」

中華娘「いらっしゃいませー!」

男「今日は豪勢にチンジャオロースのセットいってみようかな!」

店主「あいよ!」

中華娘「ご飯は私注ぐね!」

店主「頼むよ」
30:2019/11/16(土) 17:49:44.661 ID:JBIKYB+h0.net
中華娘「お待たせしましたー!」

男「あれ、ご飯……」

中華娘「ちょと大盛りにしたね。ナイショよ」シーッ

男「……ありがとう」ボソッ

店主「どうせなら、もっと大盛りにしてもよかったのに」ニヤッ

二人「バレてた!」
31:2019/11/16(土) 17:53:14.970 ID:JBIKYB+h0.net
―道場―

男「はぁっ、はぁっ、はぁっ……もうダメ~!」バタリ

師範「うーむ、君はスジはいいんだが、根性が不足しているようだな」

男「なんといわれようと、もう動けません……」

中華娘「師父、休むのも大事よ。休憩、休憩」

師範「じゃあ少し休憩しようか」

中華娘「ふぅ~、あちあち。汗かいちゃった」パタパタ

男「!」

男(汗で……拳法着がいい感じに濡れて……)ゴクッ
33:2019/11/16(土) 17:55:09.798 ID:JBIKYB+h0.net
男「なんだか俺、まだまだ動けそうな気がするッ!」ガバッ

男「アチャーッ! ハチャーッ!」

男「メチャーッ! クチャーッ!」

中華娘「おお、すごい」

師範「どうやら興奮すると、パワーアップするタイプなのかもしれないな」
35:2019/11/16(土) 17:59:29.618 ID:JBIKYB+h0.net
帰り道――

男「いやー、今日は疲れたー!」

中華娘「でも、あなただいぶ上達してるよ」

男「そうかなぁ?」

男(だけどたしかに……道場通うようになってからだいぶ鍛えられた気がする。体型もがっしりしてきたし)

男「……ん?」



傷面「…………」ジロッ



男(なんだあいつ……。頬にキズがあって……こっちを……)

中華娘「どしたの?」

男「いや、なんでもないよ」
36:2019/11/16(土) 18:03:15.280 ID:JBIKYB+h0.net
……

―アパート―

男「あ、あのさ」

中華娘「ん?」

男「大学の友達から、映画のチケットもらっちゃってさ……しかも二枚」

男「よかったら一緒に行かない?」

中華娘「いいの? 行く行く!」

男「やった! じゃあ今度の週末にでも!」

中華娘「うん!」
37:2019/11/16(土) 18:06:52.212 ID:JBIKYB+h0.net
―映画館―

ワイワイ…

男「映画、面白かったね!」

中華娘「うん……」

男「主人公と幼馴染の純愛……20年ぶりに再会するとこなんて泣きそうになっちゃったよ」

中華娘「そうだね……」

男「いやぁ、幼馴染っていいもんだねえ」

中華娘「……全然よくない!」

男「え」
38:2019/11/16(土) 18:08:41.485 ID:JBIKYB+h0.net
中華娘「アイヤ! ごめん……」

男「こっちこそ……変なこといっちゃったかな?」

中華娘「ううん、気にしないで」

男「それならいいんだけど」

男「また一緒に映画見よう。そん時は、悪をバッタバッタなぎ倒すカンフー映画みたいなのを!」

中華娘「そうしよう!」
39:2019/11/16(土) 18:12:06.679 ID:JBIKYB+h0.net
一週間後――

―アパート―

ピンポーン

男(誰だ? こんな夜遅くに……非常識だな)

男「どなたですか?」

「私よ。開けてもらえるか?」

男「あっ! すぐ開けるよ!」

ガチャッ

男「どうしたの、こんな夜遅く――」
41:2019/11/16(土) 18:15:10.182 ID:JBIKYB+h0.net
男「!?」

中華娘「チャイナドレス、着てきた……」

男「うおおおおおおおおおおっ!!! ……って近所迷惑だった」

男「どしたの!? さ、入って入って! 散らかってるけど!」

中華娘「お邪魔します」
42:2019/11/16(土) 18:18:34.056 ID:JBIKYB+h0.net
中華娘「あなた、チャイナドレス好きでしょ?」

男「好き好き! 大好き!」

中華娘「じゃあこの姿、忘れないでね」

男「忘れるもんか! 写真撮っていい?」

中華娘「もちろん。なんなら好きなポーズするよ」

男「マジですか!? じゃあ、チュンリーみたいに蹴りを……」

中華娘「こうか?」ビシッ

男(あかん……この脚線美、犯罪的すぎるっ……!)
44:2019/11/16(土) 18:22:05.644 ID:JBIKYB+h0.net
小一時間、撮影会や雑談は続いた。

中華娘「どうだた?」

男「いやーもう、最高だよ!」

男「今なら中国から俺めがけてミサイルが飛んできても悔いないね! 笑って爆死できる!」

中華娘「こっちこそいい思い出、できたよ」

男「俺もだよ! 本当にありがとう、ありがとう! シェイシェイ!」

中華娘「じゃあ……再見(さよなら)」

男「う、うん、ツァイツェン!」

バタン…

男「…………」

男(結局聞きそびれたけど、なんでいきなりこんなことを……?)
45:2019/11/16(土) 18:25:23.592 ID:JBIKYB+h0.net
―中華料理店―

男「えっ、辞めた!?」

店主「ああ、急に辞めなきゃいけないって……」

男「なんで……どうしてですか!?」

店主「あんまり詳しくは話してくれなかったけど……別の人のお世話になるから……って」

男「別の人?」

店主「分からないけど……同じ中国の人とかかねえ? 昔からの知り合いとか……」

男(同じ中国人で昔からの知り合い……)
46:2019/11/16(土) 18:27:29.757 ID:JBIKYB+h0.net
男『いやぁ、幼馴染っていいもんだねえ』

中華娘『……全然よくない!』



男(あの時のリアクション……まるで自分には“よくない幼馴染”がいるって感じだったな)

店主「そいつが悪い奴じゃなきゃいいんだけど。あの子いい子だし、ちょっと心配だよ」

男(悪い奴……)ハッ
48:2019/11/16(土) 18:30:33.229 ID:JBIKYB+h0.net
男(あの時の、頬にキズがある男!)

男「おやっさん!」

店主「なんだい?」

男「ここらへんで悪い奴らがたむろしてる場所っていうと、どこだろう!?」

店主「繁華街の北の一角は、そんな感じだけど……しょっちゅう警察沙汰が起こってるよ」

男「きっとそこだ! ありがとう、おやっさん!」ダッ

店主「お、おいっ! あんなとこうかつに立ち入るもんじゃ――」

タタタッ

店主「気をつけなよ……」
50:2019/11/16(土) 18:34:30.246 ID:JBIKYB+h0.net
―繁華街―

男「ここらへんだ……! 電話は繋がらないし、捜すしかない!」キョロキョロ

客引き「お兄さん、ちょっと楽しんでかない? 安くしとくよ!」

男「あのっ! 頬にキズのある男、知りませんか? すっごい目つき悪い奴」

客引き「ああ、あいつ? 近頃ここらででかい顔するようになった中国人だろ?」

男「! そいつだっ!」

客引き「いつもチンピラ引き連れて、我が物顔でここらへん歩いてるよ」

男「そいつ……今日はどこにいます!?」

客引き「さっきも女連れて、あっちの路地入ってったけど」

男「ありがとうございます!」ダッ
51:2019/11/16(土) 18:37:32.776 ID:JBIKYB+h0.net
暗く怪しい路地を走り回ると――

傷面「…………!」グイッ

中華娘「…………!」



男(いたっ! なにやら中国語で言い合いしてる!)

男「待てーっ!」タタタッ

中華娘「あっ!」

傷面「…………」ジロッ

男「ニ、ニーハオ」

傷面「なんだお前、日本人か」

男(またかよ!)
52:2019/11/16(土) 18:40:31.438 ID:JBIKYB+h0.net
男「そ、その子を……どうする気だ!?」

傷面「こいつか? こいつ、オレの幼馴染。日本来てやっと見つけたから、これから一緒に仕事する」

男「どんな仕事だよ!」

傷面「オレの店で働いてもらう。お酒注いだり、客と話したり、稼げるし楽しいお仕事よ」

男「どうせそれだけじゃないんだろ? もっと……」

傷面「だたらどうするね?」

傷面「いっとくけど、オレ中国マフィアとも繋がりある。その気なれば、お前なんか即コンクリ詰めよ」

傷面「ケーサツ駆け込んでも同じ運命な。中国マフィア、頃す決めたら絶対頃すよ」

男「…………!」
54:2019/11/16(土) 18:43:31.801 ID:JBIKYB+h0.net
中華娘「そうよ! こいつに手出したらただじゃ済まない! 逃げて!」

傷面「だとさ。忠告受け入れる、これ大事よ」

男「……逃げない」

傷面「へ?」

男「お前なんかにその子は渡さない! 返してもらう!」

男「うおおおおおおおおっ!」ダッ

傷面「日本人、勝てない戦に酔う。それ悪いクセね」ブオッ

バキィッ!

強烈な右拳が炸裂した。

男「ぶげっ!」

男(つ、強……!)
55:2019/11/16(土) 18:46:32.099 ID:JBIKYB+h0.net
ガッ! ゴッ! バキッ!

傷面「どしたどした? カラテでもジュードーでも見せてみろ、日本人」

男「げ、げほっ……!」

中華娘「≪もうやめて!≫」ガシッ

傷面「!」

中華娘「≪一生あんたについてくから! この人を傷つけないで!≫」

傷面「≪ふん、分かりゃいいんだ≫」

傷面「おい日本人、ととと帰れ」ペッ

男「う、ううう……」
56:2019/11/16(土) 18:49:18.213 ID:JBIKYB+h0.net
ヨロヨロ…

男(中国語は分からないが……あの子に助けられたってことは分かる……)

男(もうちょっとやれるもんだと思ってた……うぬぼれてた……)

男(だけど本物の喧嘩慣れしてる奴には全然敵わなかった……)

男(こんな痛い思いしたの、生まれて初めてだ……)



本来ならば、大人しく家に帰るか、病院や警察に向かうべきなのだろう。

しかし、彼の足は自然と“ある場所”に向かっていた。
58:2019/11/16(土) 18:53:22.350 ID:JBIKYB+h0.net
―道場―

師範「ホーイ!? どうしたんだい、その怪我は!?」

男「ちょっと転びまして……それより」

師範「それより?」

男「俺をもっと強くして下さい! ――今すぐに!」

師範「今すぐって……」

男「お願いします! お願いします! お願いします!」ガンガンガンッ

土下座して、頭を床に叩きつける。

師範「……分かった。とりあえず稽古をしよう。かかってきなさい」

男「ありがとうございます!」
59:2019/11/16(土) 18:56:32.939 ID:JBIKYB+h0.net
男「ハチャーッ! ホワチャーッ!」

師範「…………」

男の攻撃を受け流し、見極める師範。

男「ど、どうです!?」

師範「前にいったとおり、スジは悪くない。君は十分強いよ」

師範「だが、攻撃にどこか爆発力が足りないんだ。こればかりは私が教えることはできない」

男「くっ……!」

ゴトッ

師範「あ、スマホ落としたよ」

男「すみません」

男(スマホをポケットに入れたまま稽古するなんて、バカだな俺は)サッ
60:2019/11/16(土) 18:59:16.870 ID:JBIKYB+h0.net
男「…………」

師範「どうした?」

男「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」

男「燃えてきたあっ! 燃えてきたああああっ!!!」

師範「!?」

師範(こんな光景、たしか前にも見たような……)

師範「君、その状態のまま、もう一度かかってきなさい!」

男「分かりました! ハチャーッ!」
62:2019/11/16(土) 19:02:28.977 ID:JBIKYB+h0.net
師範「……これだ」

師範「今の君なら、たとえばそこらを歩いてるヤンキーなんかには負けはしないだろう」

男「本当ですか!?」

師範「しかし、いったい何をするつもりだ? まさかケンカじゃないだろうな?」

男「そ、それは……」

師範「…………」

師範「行くがいい。大切なものを取り戻すための戦い、それはケンカなどとは呼ばない」

男「!」

師範「師範として命じる。必ず取り戻してこいッ!」

男「はいっ!」
65:2019/11/16(土) 19:07:15.639 ID:JBIKYB+h0.net
―怪しい店―

中華娘は、中華風の装飾が施された怪しい店に連れてこられていた。

中華娘「汚い店……」

チンピラA「おっ、この女を働かせるのか」

チンピラB「なかなか美人じゃねえか。こりゃ稼げそうだ」

傷面「オレの幼馴染ね。日本来てからもオレが恋しくて追ってきたよ」

中華娘「誰が!」

中華娘「それで、私はどんなことするの?」

傷面「簡単よ。色ぽい服着て、来た客に料理運んだり、酒注いだり……」

チンピラA「客としゃべったり、胸触らせたり、揉ませたり……」

チンピラB「この中華テーブルにハダカのまま寝そべってグルグル回されたり……」

傷面「それ、お客大喜びな」

ハハハハ… ヒヒヒヒ…

中華娘「…………!」
66:2019/11/16(土) 19:10:12.208 ID:JBIKYB+h0.net
中華娘「嫌! そんなことしたくない!」

中華娘「私が日本来たの、こんなことするためじゃない! ちゃんと学んで……」

傷面「ダメ。もうお前逃げられない。一生オレのもとで働く。それに……」

傷面「≪もしも逃げたら、さっきの男も死ぬことになるぞ?≫」ジロッ

中華娘「…………!」

中華娘「分かった……ここで働く。私、逃げない」

チンピラA「お~、物分かりいいぜぇ!」

チンピラB「ここらはヤーさんも目ぇつけてねえし。大儲けしてやろうぜぇ!」

ハハハハ… ヒヒヒヒ…
67:2019/11/16(土) 19:13:25.977 ID:JBIKYB+h0.net
カランカラン…

傷面「お、さっそくお客来たね。お前、とりあえず接客しろ」

中華娘「……いらっしゃいませ――」

中華娘「…………!」

男「やあ、また来ちゃった。場所はそこら辺の人に聞いたらすぐ分かったよ」

傷面「な……! またお前か!」

チンピラA「なんだこいつ?」

チンピラB「怪我してんじゃねえか」

中華娘「どうして!? どうして来ちゃうの! せっかく逃げれたのに!」

男「中国の故事に“臥薪嘗胆”ってあるけど、俺せっかちだからああいうの無理みたいだから」
68:2019/11/16(土) 19:16:26.922 ID:JBIKYB+h0.net
傷面「お前、馬鹿だろ。あんだけ叩きのめされて全然懲りてない。アタマ畜生以下よ」

男「かもな」

チンピラA「客じゃねえんなら……」パキポキ

チンピラB「とっとと出ていってもらわなきゃな!」

中華娘「やめてぇ!」

傷面「やてしまえ! 殺してもいいぞ! 死体出てもどうせバレるない!」

チンピラ二人が襲いかかる。
70:2019/11/16(土) 19:18:38.302 ID:JBIKYB+h0.net
男(スマホに撮った、彼女のチャイナドレス姿を……)チラッ



男「うおほおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」



チンピラA「!?」ギョッ

チンピラB「なんだこいつ!?」
71:2019/11/16(土) 19:21:13.279 ID:JBIKYB+h0.net
男「ハチャーッ!」

ドゴッ!

鋭い突きが炸裂。

チンピラA「ぐへっ!」

男「ホワチャーッ!」

ドカァッ!

蹴りがチンピラの頭に命中。

チンピラB「ぎゃんっ!」

傷面「な……!?」
72:2019/11/16(土) 19:25:15.503 ID:JBIKYB+h0.net
傷面「どゆこと? さっきとは別人ね!」

男「俺はチャイナドレスの可愛い女の子を見ると、興奮してパワーアップするんだよ!」

男「これぞ酔拳ならぬ“チャイナドレス拳”!」ビシッ

傷面「ハァ? お前ヘンタイか!?」

男「おう、ヘンタイよ! 日本男児、みなヘンタイ!」

チンピラA「くそっ……!」

チンピラB「やりやがったなァ!」

ドカッ! バキッ! ドゴッ!

攻防の末、チンピラ二人を撃沈する。

男「はぁ、はぁ、はぁ……さあ、もう一度勝負だ!」

傷面「フン……タイマンやてやるよ!」
73:2019/11/16(土) 19:26:46.494 ID:ZWZ2mLgjr.net
名前ひどいw
74:2019/11/16(土) 19:28:29.478 ID:JBIKYB+h0.net
中華娘「が、頑張って!」

男「ああ、頑張る!」

睨み合い、間合いを詰める二人。

ジリ… ジリ…

男「ハチャーッ!」

ガッ!

傷面「ぐっ……!」

傷面「ハイヤァッ!」ブオッ

ドガッ!

男(なんて鋭い回し蹴り……!)

ドカッ! ガッ! バキッ!
75:2019/11/16(土) 19:31:16.787 ID:JBIKYB+h0.net
ドザァッ!

男「……うぐっ!」

傷面「フン、お前たしかに動きはキレあるよ。だけどやっぱり経験少ない……シロートね!」

男(もう一度写真を見て……)チラッ

男「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」

興奮した勢いで突っ込むが――

ドゴッ!

男「ぐはっ……!」

男(ダメだ、画像じゃ興奮が足りない!)
76:2019/11/16(土) 19:34:32.560 ID:JBIKYB+h0.net
中華娘「…………!」ハッ

中華娘(あの人はチャイナドレス大好き……そしてここはいやらしいお店……)

中華娘(もしかしたら!)ダッ

傷面「なんだあいつ。店の奥入ってったよ」

男「アチャーッ!」バッ

傷面「しつこい!」ドガッ

男「ぐあっ……!」

男(どうして店の奥へ……? 外に逃げてくれればよかったのに……)

ガッ! ドカッ! ガッ!

形勢は完全に頬キズの男に傾いていた。
78:2019/11/16(土) 19:37:16.611 ID:JBIKYB+h0.net
男「がはっ……!」ドザァッ

傷面「お前ほどムカつく日本人はじめてね。ただ殴る頃すだけじゃ収まらないよ」

傷面「この中華包丁で脳天かっさばいてやるよ!」ギラッ

男「ううっ……!」

傷面「永別了(さらば)!」

巨大な包丁を振り上げる。

男「くっ……!」
80:2019/11/16(土) 19:40:31.197 ID:JBIKYB+h0.net
その時だった。

中華娘「見てぇっ! 私を見てぇっ!」バッ



男「え……?」

傷面「ん?」

傷面「お前! 店の服(ドレス)を勝手に……!」

男「…………!」ビビビッ
81:2019/11/16(土) 19:43:29.047 ID:JBIKYB+h0.net
男「なんってチャイナドレスだ……。スリットは深いし、胸元あいてるし、装飾も色っぽいし」

男「俺が買った安物より、数段すごいじゃないか……!」ゴクリ

中華娘「う、うふぅ~ん」

精一杯のセクシーポーズを振る舞う。

男「!!!」ビビビッ

男「う……うをおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

男「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

男「チャイナドレス最高ォォォォォォォォォォォ!!!!!」

傷面「!?」ビクッ
82:2019/11/16(土) 19:47:31.999 ID:JBIKYB+h0.net
傷面「なんだお前!? なんで復活してんだ!?」

男「考えるな、感じろ」

傷面「ハァ!?」

男「諦めろ……彼女のあんなチャイナドレス姿を見てしまった以上、お前に勝ち目はない」

傷面「ふざけるなァ!」ダッ

ガッ! ゴッ! ドカッ!

傷面「ぐっ……!」

傷面(なんなんだこの日本人はァッ!)

男(乱れた呼吸を整えて……)コォォ…
84:2019/11/16(土) 19:51:24.149 ID:JBIKYB+h0.net
男「師範直伝……」

男「メチャーッ!!!」

バキィッ!

回し蹴りがクリーンヒット。

傷面「がは……ッ」ヨロッ…

男「クチャァーッ!!!」

全体重を乗せた突き。

ドゴォンッ!

傷面「ぐはあぁぁぁ……っ!」

ドザァッ!

男「滅茶苦茶拳!!!」ビシッ
85:2019/11/16(土) 19:55:30.093 ID:JBIKYB+h0.net
中華娘「や、やったよ! かっこよかたよ!」

男「いやぁ、そっちこそ……最高だったよ」

傷面「ぐ、ぐっ……!」

男「!」

傷面「バカ喜びして……こっちにはまだ仲間が控えてるんだ……」

傷面「おーい、みんな出てこいっ……!」


シーン…


男「なんだよ、いないじゃないか」

傷面「こんなはずは……!」

男(こいつがやられたからみんな逃げたのかな? 出てこなくてよかった……!)ホッ
86:2019/11/16(土) 19:58:23.038 ID:JBIKYB+h0.net
中華娘「…………」ツカツカ

傷面「!」

傷面「おお……やっぱりオレのところへ……」

中華娘「あんたには子供の頃からずっと困らされてきたけど……」

中華娘「もうあんたとは絶交! これからはあんたなんかにビクついたりしない!」

中華娘「彼が強くなったように、私も強くなる!」

中華娘「アチャーッ!!!」

ドガァッ!

傷面「ぎゃぶっ……!」ガクッ

男(おお……なんて美しい蹴りだ。ちょっと羨ましい)
88:2019/11/16(土) 20:02:08.094 ID:JBIKYB+h0.net
男「さ、帰ろうか」

中華娘「うん……!」





物陰では――

師範「フフ……いい戦いだったぞ。二人とも」

チンピラC「つ、強すぎ……」

チンピラD「ゲ、ゲホッ……」

チンピラE「10人以上、いたのに……」ガクッ
89:2019/11/16(土) 20:05:31.254 ID:JBIKYB+h0.net
……

……

―中華料理店―

店主「二人とも無事でよかったよ!」

店主「だけど、この後報復なんかがなければいいが……」

男「それがあの傷男、マフィアがどうとかってのは全部ホラだったみたいで」

男「自分はマフィアと繋がりがあるっていって、あのあたりのチンピラを従えてたみたいです」

男「それで、あのいかがわしい店で、儲けようとしてたとか……」

中華娘「しかもやっぱりまともな手段で日本来てなかった……あいつもう日本いられないね」

店主「ってことは、これで一安心ってことだな。よかったよかった!」
90:2019/11/16(土) 20:08:28.055 ID:JBIKYB+h0.net
店主「それにしても、敵地に一人で乗り込んで、女の子を助けちゃうなんてねえ……」

店主「本当にハリウッド映画とか、カンフー映画の主人公みたいじゃないか」

男「いやぁ……」

中華娘「本当にありがとう!」

男「なんのなんの」

中華娘「こんなお礼、嬉しくないかもしれないけど……」

男「?」

中華娘「お礼」チュッ

男「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!! キス最高ォォォォォ!!!」

中華娘「アイヤー!」

店主「君がどうやって悪者どもを倒したか、なんとなく分かったような気がするよ」
92:2019/11/16(土) 20:11:34.463 ID:JBIKYB+h0.net
……

それからしばらくして――

男「映画、面白かったね!」

中華娘「うん、異世界に転生したカンフーマスターがバッタバッタと敵を倒して爽快だたよ!」

男「じゃ、今日は師範のところで稽古しようか」

中華娘「そだね!」

中華娘「で、稽古が終わったら……」

男「?」
93:2019/11/16(土) 20:15:10.870 ID:JBIKYB+h0.net
中華娘「私が自分で買った……新しいチャイナドレス着たとこ見せてあげる」

男「うおおおおおおおおおおっ! ありがとぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

男「よーし、燃えてきた! 今日も二人で……」

男「メチャーッ!!!」

中華娘「クチャーッ!!!」







―劇終―
96:2019/11/16(土) 20:16:47.496 ID:3iEwzmrV0.net
面白かった乙
97:2019/11/16(土) 20:17:46.505 ID:YIboH8xN0.net
チャイナドレス最高!!
99:2019/11/16(土) 20:26:48.012 ID:z1iOi6e1r.net

ちょっとしたカンフー映画を見た気分
引用元:http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1573891507