1: 2008/05/31(土) 22:22:10.73 ID:XxPE11gY0
辺りが薄暗くなってきたころ、心神会本部の応接室で老齢の男二人が向き合って座っていた。
「とんでもないことになっとるようですな」
心神会元館長、愚地独歩が口を開く。
「オウ、驚いたわい」
合気の達人、渋川剛気がハブ酒をあおりながら答える。
「あのピクルとかいう原人の復活に続いてもう一つ…
 世間一般にはあり得ないことが起こったわけじゃからな」
「関東地方に突如現れた複数種の怪物。
 獣、鳥類、人工物、ガス状の生命体…
 その風貌は様々らしいですな。
 ピクルの件と立て続けにこのような事が起ころうとは。
 御老公の言葉を借りるなら…」
「シンクロニシティ、というやつかの」
酒をあおり、一息つく二人。
どこからともなく関東地方に現れた怪物たちは
人間に危害を加え続けていた。
人々は関東地方から退去し、東京はもはや無人の都市となっていた。
「で、おぬしはどうするつもりかの。ここも引き払うのか?」
「心神会内でも既に被害報告は後を絶ちません。
 元館長としては一応、一肌脱がにゃあならんでしょう」
「ホホ、闘りたいだけと違うんかの」

2: 2008/05/31(土) 22:23:57.58 ID:XxPE11gY0
同時刻、アメリカからの出動要請を受けたヘリが東京の上空にたどり着いた。
怪物たちを放置していては、いつ自国に被害が及ぶとも知れない。
そう考えた大統領が任期終了前の最後の頼みとして、ある男に怪物退治を懇願したのだ。

「開けろ!ストライダムッッ!!」
黒服の男に命じられ、欧米の軍人がドアを開ける。
と同時に、男はヘリから飛び降りた。パラシュート無しである。
「ユージロオオッ!!」
ストライダムと呼ばれた軍人が叫ぶ。
だがストライダムの心配をよそに、男はビルに指をかけ、
超人的な握力をもって落下にブレーキをかけた。
男は何事もなかったかのように地面に着地し、無人となった街を見渡した。
「美味そうな野生の臭いだ…」
範馬勇次郎が東京の地に舞い降りたのだ。

3: 2008/05/31(土) 22:25:11.06 ID:XxPE11gY0
10分ほど東京を闊歩する勇次郎。未だ怪物とは出会っていない。
政府の情報によると現時点で確認されている怪物の種類は137種。数も137匹。
異なる137種の脅威を持った怪物が、それぞれ一匹ずつ関東地方に放たれているのだ。
(最高の夜だ…)
離れていても怪物たちの危険な臭いが伝わってくる。
勇次郎がその臭いに酔いしれはじめていた、まさにその時。
ビルの陰から、球体がとてつもない勢いで勇次郎めがけ転がってきた。
勇次郎「ヌウッッ!!」
日常が臨戦態勢である勇次郎にとって、「臨戦態勢に入る」という言葉は存在しない。
一瞬で対象を確認すると、飛んでくる球体にめがけボクサーのジャブより速い蹴りを放つ。
重さ100kgを超える岩の塊「ゴローン」の体の一部が削り取られる。
「中国拳法には岩の角を削り取る『打岩』なる修行が存在すると聞く。
 動かぬ岩を削り取っても面白くも何ともねェが…こいつは別だ」
体の一部を失いなおも向かってくるゴローンの両腕を、勇次郎は手刀で削り取った。
ゴローンにとっての腕は推進力の要である。
それを失ったゴローンの戦力は半減していた。
それでも立ち向かうゴローンに容赦なく浴びせられる手刀、蹴り、正拳…。
ゴローンが物言わぬ石塊になったとき、その体は黒曜石と見まごうほど見事な球体に削られていた。

ゴローン死亡

4: 2008/05/31(土) 22:26:46.21 ID:XxPE11gY0
ゴローン戦での勇次郎の殺気を感じ取り、関東地方に散らばる怪物たちは
東京へ向かって歩みを進めていた。
ゴローンとの戦いから五分ほど経っただろうか。
退屈していた勇次郎の前に、炎を背に纏った馬が現れた。ポニータだ。
「面白ぇ。食うぜ」
歩みを進める勇次郎。だがポニータのとった行動は「逃走」だった。
踵を返し、勇次郎から逃げ出すポニータ。
「キサマッッ!!」
地を蹴り、すさまじい勢いでポニータを追う勇次郎。
脚力においては無類のはずのポニータが、徐々に距離を詰められる。
突如、ポニータは止まった。これこそがポニータの必勝パターン。
獲物である自分を追う相手。しかしこの相手こそがまさにポニータの獲物。
逃走から闘争へ。草食であるはずのポニータがその闘争心から、自然と身に着けた「狩り」。
突然走るのをやめたポニータに、勢いづいて襲い掛かる勇次郎。
その勇次郎にポニータの後ろ蹴りが食らわされた。
全速力で走ってきたところへの、強烈な後ろ蹴り。
常人ならばひとたまりもないだろう。しかし勇次郎は倒れない。
「猫科の猛獣はシマウマの後ろ蹴りを食らっても倒れぬと言う。
 この戦いはライオンとシマウマの戦いよ…」
今度は「狩り」ではない。全速力で逃げ出すポニータ。
横に並ぶ勇次郎。馬の首がへし折られる音が響いた。

ポニータ死亡

6: 2008/05/31(土) 22:28:43.27 ID:XxPE11gY0
ポニータを屠り去ったその瞬間、勇次郎は右足に違和感を覚えた。
(針…ッッ!)
勇次郎の足元にいた虫の様な生き物「ビードル」が飛ばした毒針だった。
「こざかしいわッッ!!」
ビードルを踏み潰す勇次郎。この男は殺気を隠そうとしない。
いつのまにか殺気を感じ取った怪物たちが、勇次郎を取り囲んでいた。
(コウモリ、猿、狂犬か…)
地面にはサイズの小さい犬「ガーディ」と、勇次郎の身長ほどもあろうかというサイズの犬「ウインディ」。
闘争心むき出しの猿「マンキー」と「オコリザル」。
空中には小振りのコウモリ「ズバット」と、一回り大きい「ゴルバット」。
さらに悪いことに、お互いが牽制しあっている間にも別の怪物たちが集まってくる。
二股の鳥「ドードー」、岩で出来たサイのような化け物「サイホーン」。
八匹もの凶悪な怪物が、勇次郎を取り囲んだ。
やがて牽制状態にあった怪物たちが、痺れを切らしたように一斉に勇次郎に襲い掛かる。
「八匹じゃねェ…四匹だッッ!!」
身軽さが災いして、真っ先に飛び込んだガーディが正拳に沈む。
直後、回し蹴りがマンキーを襲う。回避は不可能。マンキーも血の海に沈んだ。
背後のズバットの翼が手刀でそぎ落とされた。もう飛ぶことはできない。
ドードーは二つあるその首をいとも簡単にへし折られ、その生涯を終えた。
いくら数が多かろうと、四方から同時に飛びかかれるのは四匹程度まで。
仮にこの都市に集結している全ての怪物が勇次郎に同時に襲いかかろうと、
それは1対100余ではなく1対4なのだ。

9: 2008/05/31(土) 22:30:15.15 ID:XxPE11gY0
どこで身に着けたのか、空手を駆使して勇次郎に襲い掛かるオコリザル。
だがその技のどれもが、鬼の反射神経を上回ることはできなかった。
「じゃッッ!!!」
襲いくる拳。オコリザルは死の間際、自分が捕食者ではなかったことを知った。
目の前の光景を本能で理解し、距離をとるウインディ。
その口から激しい炎が吐き出される。
「ヌウッッ!!」
それに対し勇次郎が取った行動は「まわし受け」であった。
両手で円を描き、ウインディの炎を完全に防ぎきる勇次郎。
切り札を封じられ、もはやウインディの闘争心は完全に折れていた。
超音波を発して威嚇するゴルバットの口内を突きで貫き、
死骸をウインディに向かって放り投げた勇次郎。
一瞬視界が失われるウインディ。しかしその目が二度と光を見ることはなかった。
鈍重ゆえに攻撃が遅れたサイホーンは、ある意味幸運だったというべきか。
しかしその命が絶たれることに変わりはなかった。
死を覚悟したサイホーンの頭上に、無情にもかかと落としが振り下ろされた。

ガーディ、ウインディ、マンキー、オコリザル、ドードー、
サイホーン、ズバット、ゴルバット、ビードル   死亡

10: 2008/05/31(土) 22:31:48.44 ID:XxPE11gY0
勇次郎は期待せずにはいられなかった。
ここまでの挑戦者は自分を満足させるに至らなかったが、
この先どれほどの強者が自分の前に立つことになるのか…。
周囲を見渡す勇次郎。だが次の脅威は空中からやってきた。
その嘴で幾多もの生物を葬ってきた怪鳥「オニドリル」である。
勇次郎は頭上から急降下する鳥に気づき、立ち位置から距離をとった。
一瞬判断が遅れれば、ドリルのような嘴が勇次郎を襲っていただろう。
突進をかわされたオニドリルは、素早く方向を変え上空へと昇った。
だが次の瞬間、オニドリルの目に信じがたい光景が映る。
人間の手が自分の嘴をつかんだのだ。
むろん勇次郎である。脅威の跳躍力は急上昇するオニドリルに追いついていた。
嘴をへし折られるオニドリル。その末路は既に決定していた。

オニドリル 死亡。

12: 2008/05/31(土) 22:33:37.80 ID:XxPE11gY0
東京で数少ない緑。郊外の森の中に勇次郎は足を踏み入れていた。
理由はこの森の中に強者が存在するという直感、ただそれだけである。
突如、何かのさなぎのようなものが勇次郎に向かって飛び掛った。
黄色いさなぎ「コクーン」はその場で叩き割られ、
緑色の「トランセル」は叩き落とされたあと踏み潰された。
次の瞬間、勇次郎はこのさなぎたちが飛び掛ってきたわけではないことを知る。
植物のツタで構成された生き物「モンジャラ」によって投げつけられたのだ。
モンジャラは対象を視認すると、植物のツルを飛ばした。
さなぎに気を取られていた勇次郎は一瞬判断が遅れる。
「フン…」
左腕をツルにからまれた勇次郎。だがその表情は余裕である。
それもそのはず、勇次郎は心から余裕なのだ。
「ぬうんッッ!!」
勇次郎はツルにからまれた腕を高く持ち上げると、力任せに振り回した。
そこらじゅうの木にすさまじい勢いで叩きつけられるモンジャラ。
モンジャラが絶命した頃には、ツルは完全に振りほどけていた。

コクーン、トランセル、モンジャラ 死亡

13: 2008/05/31(土) 22:34:49.75 ID:XxPE11gY0
「他愛もねェ…これなら原人を喰ったほうがマシだったぜ」
歯ごたえのない怪物たちの相手に、勇次郎はいささか退屈を感じていた。
常人ではとても手も足も出ない怪物たち。しかし勇次郎はあまりに規格外であった。
突如、地面から何かが突き出す。
モグラであった。地中で生活する「ディグダ」。
そのディグダが穴を掘って地上に出てきたかと思えば、勇次郎の目に泥を浴びせかける。
目潰しのつもりだったのだろうが、勇次郎はそれを軽く振り払いディグダを踏み潰す。
背後の地面からディグダの突然変異種である「ダグトリオ」が飛び出て
勇次郎に捨て身のタックルを仕掛けたが、裏拳の一発に沈んだ。
つまらなさそうな顔で血を振り払う勇次郎。しかしそのセンサーが何かを捕らえた。
鬼が森を駆けていく。行く先にある何かを喰らうために。
途中、いもむし状の生物「キャタピー」や毒蛇「アーボ」が襲い掛かったが、どちらも一撃で昇天した。
やがて勇次郎は森の中央、木や背の高い草の一切ない小さな平原のような場所に出た。
「殺気の正体はおめェか…面白ェ。喰うぜ」
トカゲの亜種と呼んでは失礼だろうか。すさまじい殺気を放つ狂獣「リザードン」がそこにいた。

ディグダ、ダグトリオ、キャタピー、アーボ 死亡

15: 2008/05/31(土) 22:35:43.77 ID:XxPE11gY0
身長は勇次郎のほうが上だろうか。
しかし目の前の怪物はその身長以上に巨大なイメージを勇次郎に植え付ける。
「こいつァ喰いごたえがありそうだぜ」
先制したのは勇次郎だった。大地を蹴り、リザードンの懐へ飛び込む。
鬼の拳がリザードンの腹を襲う。と同時にリザードンの牙が鬼の肩に食い込む。
腹を殴られ苦しそうなリザードンだったが、牙は離さない。
勇次郎の拳がリザードンの首元に食い込む。しかしそれでも食い込んだ牙は離れない。
「いいもんだな。野生ってのはよ…」
ニタァ~っと笑う勇次郎。そのままリザードンの首を固める。
必死で牙を離すまいとするリザードンだったが、やがて苦しさのあまり口を開けてしまう。
その瞬間を勇次郎は見逃さなかった。首固めを解き、リザードンの顔面に正拳を放つ。
自慢の牙の半分はこの時砕け散っただろう。
だがリザードンは距離をとらず、近距離から炎を吐いた。
吐き出された炎はウインディのそれより数段強力なものだった。
回し受けでも防ぎがたいとみた勇次郎は、炎を受けずにリザードン目掛けまっすぐ突進した。
一瞬ひるんだリザードンの頭に手刀が振り下ろされる。
その一発で、頭蓋骨は完全に粉砕された。
「堪能したぜ…まだまだ楽しめそうだな」
満足そうに笑う勇次郎。その傍らには動かなくなったリザードンが倒れていた。

リザードン 死亡

16: 2008/05/31(土) 22:37:22.52 ID:XxPE11gY0
焼けた道着を破り捨て、上半身裸で森を闊歩する勇次郎。
リザードンとの戦いで勇次郎の気分は高揚していた。
この状態の勇次郎は止められない。目の前に餌があれば即座に喰らうことだろう。
襲い掛かってきた「ニドラン♀」「ニドラン♂」が、不運にも勇次郎の犠牲となった。
しかし、突如めまいを覚える勇次郎。
(何だ…?)
あのときのビードルの毒針が今頃になって効いてきた。
遅効性の毒だったが、勇次郎の常人離れした筋量のせいで一層効きが遅かったのだ。
そんな勇次郎を、猫型の化け物「ニャース」と「ペルシアン」が襲う。
特にペルシアンの動きは素早かった。鋭い爪を勇次郎の体に立てる。
普段の勇次郎なら難なくかわしていただろう。しかし毒のせいで動きが鈍る。
そのまま引き裂こうとするペルシアンだったが、砕けたのは自分の爪のほうだった。
「その程度の爪で俺の筋肉を引き裂こうなどと…100年早いわッッ!!!」
ペルシアンのあごを強烈なアッパーが捕らえる。と同時にニャースに蹴りが入る。
勇次郎は赤子のころ、素手で毒グモを潰したことがある。
常人なら死亡を免れない毒も、勇次郎にとってはハンデにすらならなかった。

ニドラン♀、ニドラン♂、ニャース、ペルシアン 死亡

17: 2008/05/31(土) 22:37:48.08
きゃたぴー・・・

20: 2008/05/31(土) 22:39:31.49 ID:XxPE11gY0
「さっきの小動物どもの敵討ち…ってワケか」
勇次郎の正面に「ニドリーナ」「ニドリーノ」が奮い立つ。
先ほど勇次郎が屠ったニドランの親代わりというわけだ。
「誰かの仇を討つため誰かと戦う…
 闘う理由など、闘争の世界においては不純物ッッ!!」
親代わりの二匹では、勇次郎の相手にはならなかった。
砕け散る骨の音。鬼の拳は哀れな親代わりを無残な肉塊へと変えていった。
疲れすら見せない勇次郎。そんな勇次郎を囲むかのように、
二匹の巨大な怪物が彼の行く道をさえぎった。
勇次郎の正面には♀の「ニドクイン」。背後には♂の「ニドキング」
どちらもサイズ的には大型であり、鋭い眼光はその実力を感じさせた。
「前門の虎、後門の狼ってか」
言うが早いか勇次郎はニドクインに襲い掛かる。
まるで相撲のようにニドクインをかかえこみ、すさまじい勢いで押していく勇次郎。
だがその背後からニドキングが突進してきた。
押しつぶされるニドクインと勇次郎。
キングとクインは夫婦であった。しかし失った息子、娘たちのあだ討ちに燃える二匹は
自分たちのダメージなどいとわず、ただ勇次郎を殺すことのみを考えて挑んできた。
「闘う理由なんざ不純物だが…お前らは最高だぜ」
二匹にはさまれた勇次郎がとった行動は、「押し」であった。
ただ単純に腕力に任せて二匹を押し開く。
片腕でニドクインを、片腕でニドキングを。
あまりの力の差に絶望した二匹は、それでも子供たちの敵を討つため襲い掛かった。
(まだやらせてくれるというのか…感謝!)
巨大な二匹の死骸の傍には、彼らの子供たちが横たわっていた。
弔いの気持ちではないだろう。楽しませてくれた彼らへの、勇次郎なりの礼と言った所だろうか。

ニドリーナ、ニドリーノ、ニドキング、ニドクイン 死亡

26: 2008/05/31(土) 22:43:56.60 ID:XxPE11gY0
「チッ、小ざかしい」
勇次郎は眠気に襲われていた。「ナゾノクサ」「クサイハナ」が放つ眠り粉のせいである。
勇次郎は「ラフレシア」のテリトリーに踏み込んでいた。
ラフレシアの手下ともいえるナゾノクサたちの眠り粉は、相手を眠りに落とす強力な武器である。
二匹が放つ眠り粉に襲われた勇次郎は、ラフレシアの放つ消化液をよけながら木に自分の身をぶつけていた。
襲い来る強烈な眠気を覚ますためである。
以前、勇次郎は麻酔銃の餌食となって眠りに落ちたことがある。
いくら勇次郎と言えども、麻酔は効くのだ。
木に身をぶつけ、眠気を覚ましながら徐々にラフレシアとの距離をつめる勇次郎。
だが敵はラフレシアたちだけではなかった。
地中に潜んでいた「イワーク」が突如勇次郎を襲う。
「くぅッッ!!」
巨大なイワークに締め付けられる勇次郎。怪物と眠気が同時に襲ってくる。
が、次の瞬間イワークをつなぎとめていた体の一部が破壊される。
勇次郎が握りつぶしたのだ。体の半分を失い地面に倒れるイワーク。
「いーい気付けになったぜ」
ニヤリと笑うと勇次郎は、一気にラフレシアとの距離を詰めた。
親分であるラフレシアが一撃で沈んだのを見て、半ば戦意を喪失しかけていたナゾノクサとクサイハナ。
だが折れないということは勇次郎との勝負の土俵に立ったということ。
手下の二匹も無残に葬り去られた。

ナゾノクサ、クサイハナ、ラフレシア、イワーク 死亡

31: 2008/05/31(土) 22:50:46.55 ID:XxPE11gY0
森にも鳥は住む。
怪鳥オニドリルほどの大物はいなかったものの、空からの使者も勇次郎に牙を向いた。
「ポッポ」、「オニスズメ」は勇次郎の体にその爪が伸びる前に、手刀の餌食となった。
幼虫「コンパン」をその背に乗せた巨大な毒蛾「モルフォン」も、
その粉を放つ前に勇次郎の目に留まり、一瞬で距離を詰められ屠り去られた。
これ以上森にいる価値なしと判断した勇次郎は、再び市街地に戻ることにした。
市街地も近づいたかという頃、巨大な毒蜂が鬼の行く道をさえぎった。
「スピアー」である。
スピアーの飛ばす巨大な毒針が勇次郎を狙う。
避けるのは簡単だったが、反撃しようにも相手は空中。
それも勇次郎を警戒してか、かなり上空から毒針を打ってくる。
「フン…こんな虫を何匹退治しようとも、満たされることなどあるまいが…」
勇次郎は落ちていた石を拾うと、スピアー目掛けて投げつけた。
それは銃の弾丸を上回る威力でスピアーの腹を貫いた。
地面に落ちてきた哀れな毒蜂は、さらに哀れなことに、鬼の足に踏み潰された。

ポッポ、オニスズメ、コンパン、モルフォン、スピアー 死亡

35: 2008/05/31(土) 22:57:11.23
カイリキーVS勇次郎

37: 2008/05/31(土) 22:59:35.67 ID:XxPE11gY0
市街地にはほとんど人が残っていなかった。
怖いものみたさでやってくる愚かな人間は、ほぼ例外なく怪物たちの餌食となった。
そんな中、勇敢にもこの傍若無人な怪物たちをなんとかしようとやってくる者もいる。
「ひどい有様だな」
畑中公平。全日本柔道の選手である。
海外での試合から帰ってきた畑中は、関東地方の惨状を知った。
そして自ら関東地方に赴いたというわけだ。
そんな畑中の前に、一匹の怪物が立ちふさがった
「……ッッ!」
すでに畑中は汗だくだった。自分の想像を超えた怪物が目の前に立っていたからだ。

勇次郎が市街地に戻ってくると同時に、襲い掛かってきた者たちがいる。
力自慢の「ワンリキー」「ゴーリキー」だ。
共に素手でトラックすら動かせるという強者だったが、上には上がいた。
二匹を茶化すかのように、手四つを組む勇次郎。
渾身の力を込めた二匹だったが、まずワンリキーの腕がへし折られた。
ついでゴーリキーが膝を突いた。
腕力では勝てないとみたゴーリキーは、低い姿勢から蹴りを放った。
だがそれすらも勇次郎の反射神経には及ばなかった。
ゴーリキーは蹴りが届く前に喉を突かれ絶命。残ったワンリキーも正拳で粉砕された。

ワンリキー、ゴーリキー 死亡

40: 2008/05/31(土) 23:04:50.39 ID:XxPE11gY0
柔道の畑中は恐ろしい化け物を目の当たりにしていた。
人間のような姿をしているが、その腕は四本。
しかも筋肉のつき方がすさまじい。腕力勝負では一瞬で不覚を取るだろう。
「イリャアアッ!!」
畑中は相手の四本ある腕の一本にしがみつき、投げを試みた。
しかしこの相手「カイリキー」の体重は130kg。
それだけではない。カイリキーのすさまじい筋肉は、畑中の投げを許さなかった。
(な…投げられない!びくともしないッ!!)
あまった三本の腕が振り下ろされ、畑中の命は奪い去られた。
ジャリ…。カイリキーの目の前にもう一人の男が現れた。
「面白ェ奴が現れたもんだ。喰うぜ」
そう。勇次郎である。
「先ほどの奴とは違う」 双方がそう直感していた。
まずは、勇次郎がカイリキーに向かって走り出した。

48: 2008/05/31(土) 23:14:34.28 ID:XxPE11gY0
四本の腕が勇次郎を迎え撃つ。
左脇から飛んでくる二本の豪腕を、左腕でガードする勇次郎。
と同時に、他の腕が勇次郎の顔面に叩き込まれる。
怪物退治の開始から今まで、正面からパンチを食らったのはこれが始めてだった。
四本の豪腕…他に類をみないこの相手との戦いに、勇次郎は滾っていた。
「クク…人間の間じゃ俺の前に立とうなどという強者は…もういなくなっちまっタッッ!!!」
タッッ!のタイミングで、カイリキーの腹に蹴りを入れる勇次郎。
だがカイリキーの固めた腹筋は、鉄板をはるかにしのぐ強度だった。
勇次郎の中段蹴りにすら耐えたカイリキーは、その四本の腕すべてを振り下ろした。
「ヌウッ!!」
二本の腕だけでこの連撃を捌く勇次郎。
この攻防がしばらく続き、勇次郎が反撃に出ようとしたまさにその瞬間、
豪腕四本のうち一本が、正面から抉るように振り上げられた。
その腕は勇次郎のあごを見事に捕らえ、勇次郎は宙に飛び、地面に叩きつけられた。
追撃を放とうとするカイリキーだったが、手首の違和感を覚えて思いとどまった。
振り下ろしていたほうの腕の手首を二つ、外されていたのだ。
「もう喰うぜ…」
いつのまにか立ち上がっていた勇次郎。先ほどよりさらに速い動きで
カイリキーの懐に飛び込んだかと思うと、渾身の一撃を顔面に叩き込んだ。
反応できない動きを相手にしては、腕が何本あろうと関係ない。
勇次郎は倒れたカイリキーに馬乗りになって、悲惨なほどに殴り続けた。

カイリキー 死亡

52: 2008/05/31(土) 23:16:57.52
勇次郎ならスタンド使いにも勝てるもんな

54: 2008/05/31(土) 23:19:40.29
>勇次郎の中段蹴りにすら耐えた

信じられん
戦車ですらグシャグシャだぜ

55: 2008/05/31(土) 23:23:03.92 ID:XxPE11gY0
突如、爆発が起こった。
吹っ飛ぶ勇次郎。その爆発は勇次郎の背後数メートルの位置で起こった。
畑中とカイリキーの死体は木っ端微塵となった。
爆発の正体は「ビリリダマ」だった。
カイリキーを甚振っていたときの勇次郎の殺気に反応し、爆発したのだ。
「チィッ!」
立つ煙。流れ出る血。
爆発の威力は予想以上に大きかった。
しかしそんな状況でも、怪物たちは容赦なく襲い掛かってくる。
炎を尾に灯らせたトカゲのような生物「ヒトカゲ」「リザード」。
森で勇次郎に屠られたリザードンの下に位置する存在である。
火炎を吐き出すヒトカゲとリザードだったが、その威力はリザードンには遠く及ばない。
しかし辺りに立ち込める煙で、勇次郎の判断は一瞬遅れていた。
二方向から迫る火炎が勇次郎の身を焼く。
「デッッ!!!」
巨大な拳が二匹を屠り去り、致命的なダメージは避けられた。
が、次の瞬間、先ほどの爆発をさらに上回る爆発が起こった。
「マルマイン」である。勇次郎の背後にいたその怪物は、火炎によって引火し大爆発を起こしたのだ。
派手に吹っ飛ぶ勇次郎。その姿は血だらけである。

ビリリダマ、ヒトカゲ、リザード 死亡

57: 2008/05/31(土) 23:27:24.25 ID:XxPE11gY0
大爆発を起こしたマルマイン自身も粉みじんとなって吹っ飛んだが、
勇次郎の受けたダメージも大きかった。
リザードンやカイリキーといった強敵との連戦、二度にわたる大爆発。
勇次郎ははっきりと負傷していた。
しかしそれでも鬼は止まらない。むしろこの状況に喜びすら感じていた。
脳内麻薬の分泌により、もはや鬼は痛みを感じていなかった。
血の臭いに誘われて襲い掛かってきた「ピジョン」「コラッタ」を瞬殺し、
勇次郎はさらなる強敵との戦いを渇望していた。

勇次郎から少し離れた場所を、愚地独歩が歩いていた。
心神会の元館長としてのケジメをつけるため、それ以上に
自らがこの常軌を逸した化け物共と闘うためである。
そんな独歩の目の前に一体の怪物が現れた。

マルマイン ピジョン コラッタ 死亡

61: 2008/05/31(土) 23:31:56.12 ID:XxPE11gY0
「おめェさん…何て名だい?」
怪物に尋ねる独歩。答えない怪物。
「ハハ、悪いな。まずは自分から名乗るのが礼儀ってもんんだ。オイラの名は…」
不意をついて、独歩が怪物に襲い掛かった。
虎をも殺す手刀が怪物に振り下ろされる。が、手刀はそのまま怪物をすり抜けた
「…ッ!?」
その怪物「ゴース」は実体を持たなかった。
いくら武神・愚地独歩の手刀と言えど、物理的な攻撃は一切受け付けないのだ。
突如、独歩を眠気が襲う。催眠術だ。
実体がない上に催眠術を駆使するゴースの前に、独歩はなすすべもなく倒れこんだ。
さらに攻撃を加えようとするゴースだったが、新たな気配に気がついてそちらを向いた。
「こいつァ珍味だ。今夜は飽きねェな」
血だらけの勇次郎がそこに立っていた。

67: 2008/05/31(土) 23:39:22.58 ID:XxPE11gY0
「シィッッ!!!」
勇次郎の放った物凄い威力の回し蹴りは、ゴースをすり抜けた。
先ほどから勇次郎の攻撃はどれもゴースに効いてはいない。
否、効いていないというより、当たっていないのだ。
どんなに凄い正拳だろうと、実体を持たない相手に効果はない。
空気を相手に蹴りが通じるだろうか?この相手は勇次郎にとって天敵だった。
だが勇次郎は下がらない。
「むゥんッッ!!」
なおも攻撃を続けるが、どれも当たるはずがない。
ついにゴースが攻撃に出た。催眠術だ。
「くぅッッ!」
森の中で戦った眠り粉による眠気と、同等の眠気が勇次郎を襲う。
「ちッッ!」
勇次郎は一旦距離を置き、窓ガラスを破壊しその破片を腕に刺した。
眠らないための気付けである。
麻酔銃、眠り粉…人間の限界を超えた麻酔の数々を受け、勇次郎の中で
眠りに対する耐性がつきはじめていた。
そのため、もはや催眠術では勇次郎は落とせなかった。
「面白ェ…こんな奴、いや、こんな概念には出会ったことがねェ」
ピンチの際、勇次郎は笑みを浮かべる。虚勢ではない。本当に楽しいのだ。

68: 2008/05/31(土) 23:46:13.95 ID:XxPE11gY0
勇次郎が取った行動は、あいも変わらず「蹴り」であった。
だが今度の蹴りはゴースに目掛けて放たれるものではない。
勇次郎はゴースと距離を置き、狂ったように蹴りを連発しはじめた。
相手のしたいことがわからず、余裕の表情を見せるゴース。
ゴースが攻撃に移ろうかとしたそのとき…
ピシッ!ゴースの体に切れ目が走った。
「かまいたち」である。勇次郎の常識離れした蹴りは、尋常ならざる風圧を生み
その場にかまいたちを発生させた。
実際、かまいたちはゴースに対し効果がある。殴る蹴るなどの物理的な攻撃法ではないからだ。
余裕を見せていたゴースの表情が一変した。
勇次郎はまったく疲れを見せず、むしろ蹴りの威力は底なしに上がっていった。
成長する鬼…未知の怪物ゴースとの戦闘中、この瞬間にも勇次郎は成長していた。
危機を感じて逃げるゴース。追いつく勇次郎。
振り上げたアッパーはゴースを捕らえなかったものの、
すさまじい風圧はその体を真っ二つに裂き、ゴースを絶命に追いやった。

ゴース 死亡

72: 2008/05/31(土) 23:52:05.75 ID:XxPE11gY0
対ゴース戦を、物陰から観察していた怪物がいた。「ギャロップ」である。
ポニータの上に位置する存在であり、その実力はポニータよりはるか上を行っていた。
このギャロップ、非常に知能の高い生き物である。
実は彼はポニータ戦も観察していた。その時点では敵わぬと見て、勇次郎が負傷するのを待っていたのだ。
重度の負傷の上に疲弊している鬼を見て、今なら倒せるとギャロップは判断した。
物陰から飛び出すギャロップ。幸運なことに同じ瞬間、逆方向からも怪物が勇次郎を襲っていた。
きつね型の怪物「ロコン」と「キュウコン」である。
だが勇次郎は右手を振りかぶったかと思うと、一振りでロコン、キュウコンを死に追いやった。
さらに逆方向からすさまじいスピードで襲い来るギャロップに一瞬で向き直ると、
蹴りでその首をへし折った。
ギャロップが得ていた情報はポニータ戦の時点での勇次郎のもの。
この激戦続きで、勇次郎は進化していた。
果てしない宇宙が膨張を続けるように、勇次郎は強くなり続けるのだ。

ロコン、キュウコン、ギャロップ 死亡

73: 2008/05/31(土) 23:53:14.12
無茶苦茶すぎるwwwww

83: 2008/06/01(日) 00:00:12.24 ID:9yTnPov30
「フン…」
勇次郎はその場に座り込んだ。
疲弊していたからでも負傷していたからでもない。
このまま格下どもを一匹ずつ相手にしてもつまらない。
彼らが血の臭いと殺気につられ、集まるのを待っていたのだ。

十分は経っただろうか。先ほどから勇次郎の周りを、大勢の怪物が取り囲んでいる。
血の臭いにつられた「ドードリオ」「ラッタ」「イシツブテ」
わざわざ森から這い出てきた「マダツボミ」「ウツドン」「ウツボット」「バタフリー」
今にも勇次郎に飛び掛ろうかと言う勢いの「サンド」「サンドパン」
かわいい外見とは裏腹に殺気を放つ「プリン」「プクリン」「コダック」「ニョロモ」

格下とはいえ、一匹一匹はともすればこれまで相手にしてきた猛獣…虎やライオンにも
匹敵する脅威である。
だが勇次郎には十頭以上のライオンを相手にしようとも、その全てを屠りさる自信があった。
立ち上がる勇次郎。それに反応するかのようにジリジリと距離を詰める怪物たち。
マダツボミの放つ眠り粉は、もはや勇次郎に何の効果もなかった。
森から出でた怪物たちは何が起こったのか知る間もなく屠りさられた。
好戦的なサンドパンも、その爪が届く前に絶命し、背後から一斉に襲い掛かるドードリオたちも
一蹴りの元にその生涯を終えた。
見た目がどうであれ勇次郎は容赦しない。
プリン、ニョロモといった生物たちも、勇次郎の前に立ったら敵。
敵はすべて餌。それ以上でもそれ以下でもない。
気がつくと勇次郎の足元には、無数の死骸が転がっていた。

ドードリオ、ラッタ、イシツブテ、マダツボミ、ウツドン、ウツボット
バタフリー、サンド、サンドパン、プリン、プクリン、コダック、ニョロモ 死亡

90: 2008/06/01(日) 00:06:24.46 ID:9yTnPov30
移動しようとして地面に横たわるコダックやニョロモが目に留まり、勇次郎は足を止める。
(こいつら…水中の生物か。面白ェ)
勇次郎は都内で一番大きな川へ向かった。
生物にはそれぞれ自分の得意なフィールドがある。
獣なら地上、鳥なら空中。そして…
今まさに川から勇次郎に襲い掛かった怪物「パウワウ」「ジュゴン」は、水中をフィールドとする者たちだった。
水の中に引きずり込まれる勇次郎。だがこれこそ勇次郎の望みだった。
「シィッ!」
水中で繰り出されるパンチ。だが当然その速度は地上とは比較にならないほど遅い。
パウワウの腹にヒットするも、その命を奪うには至らなかった。
それでも苦しむパウワウをよそに、ジュゴンは容赦なく尾で勇次郎を打ち付ける。
次の瞬間、勇次郎はジュゴンに抱きついた。
骨の砕ける音とともにジュゴンは絶命し、必死で抵抗するパウワウも同じ運命を辿った。

パウワウ、ジュゴン 死亡

97: 2008/06/01(日) 00:11:05.22 ID:9yTnPov30
一旦息継ぎのため、水上に上がろうとする勇次郎。
その勇次郎の足を何者かがつかんだ。「ニョロゾ」である。
振りほどこうとする勇次郎の顔面に、何か固いものがぶつかってきた。
貝状の生物「シェルダー」である。
まず勇次郎は、シェルダーを両腕でつかむと力まかせに潰した。
勇次郎は以前これと似た方法で人間一人を頭から潰したことがある。
凄惨な光景を見て萎縮したニョロゾは、勇次郎の手を離し逃げ出した。
水上へあがるチャンスだったが、勇次郎はあがらなかった。
ニョロゾを追いかけ、背後からとどめをさした。
ようやく水上に上がり息継ぎをした勇次郎だったが、休む暇はない。
体格のいい怪物が勇次郎を襲う、「ニョロボン」である。
さらにシェルダーの上に位置する「パルシェン」も水上に上がり、勇次郎を威嚇する。
「ケッ!烏合の衆どもが。まとめて葬り去ってくれるわッッ!!」

シェルダー、ニョロゾ死亡

100: 2008/06/01(日) 00:14:18.36 ID:9yTnPov30
ニョロボンは格闘技を使って勇次郎を攻撃する。
その体術は人間の格闘家をしのぐものであった。
だが勇次郎ももはや人間の格闘家のレベルではない。
ニョロボンは格の違いを感じ取ったが、それは臨終の間際の悟りとなった。
だがパルシェンはその様子を見ても動揺しない。
自分の固い殻は誰にも破られないと確信していたからだ。
同じく勇次郎も自分の拳に確信を持っていた。
拳を振り下ろす勇次郎。殻を硬くして待ち受けるパルシェン。
最強の矛と最強の盾。この時は矛に軍配が上がった。

ニョロボン、パルシェン 死亡

105: 2008/06/01(日) 00:20:06.47 ID:9yTnPov30
「ゼニガメ」「カメール」が水中から勇次郎に襲い掛かる。
だが鈍重な彼らでは勇次郎に攻撃を当てることはできなかった。
固い殻も勇次郎の手刀に耐えうるものではなく、いとも簡単に破壊された。
星型の怪物「ヒトデマン」も勇次郎の相手ではなかった。
「チッ。てめェらのフィールドで戦ってやっても、この程度かよ」
次の瞬間、勇次郎は思わず身構える。水中から発せられた殺気によるものだ。
それは森で感じたリザードンの殺気と同等のものだった。
「ここにも居やがるのか…」
ニヤリ。勇次郎は喜び勇んで水中に飛び込む。
そこにいたのは「カメックス」。不敵な笑みで勇次郎を挑発する。
カメックスの腕をつかみ、へし折ろうとする勇次郎。
だがその前にカメックスの殻についている砲台から、勢いよく水が噴射された。
まともに腹に喰らい、思わず手を離す勇次郎。
カメックスはその隙を捉え、殻にこもって回転しながら勢いよく勇次郎に体当たりした。
「ぐぅッ!!」
腹をかかえる勇次郎。相手はリザードンと同等の実力者。しかもここは相手のフィールド。
さらに勇次郎は負傷している。にもかかわらず、勇次郎は自分の勝ちを確信していた。

ゼニガメ、カメール、ヒトデマン 死亡

106: 2008/06/01(日) 00:22:37.55
パルシェンはナパーム弾も耐えるのに

107: 2008/06/01(日) 00:23:24.33
勇次郎の拳の威力はナパーム弾の比じゃない

108: 2008/06/01(日) 00:25:01.04 ID:9yTnPov30
勢いづいたカメックスは再び殻にこもり、勇次郎めがけて突進した。
「同じ手を二度喰らうバカがどこにいるかッッ!!」
両手を突き出し、突進をとめる勇次郎。
殻から両手両足を出すカメックス。そのまま水中で打撃戦へと突入した。
その気になればこのまま地上へカメックスを運び、自分のフィールドで屠り去ることもできた。
だがそれでは意味がない。勇次郎はあえて水中戦を選んだ。
勇次郎は滾っていた。地上では敵無しの自分が、水中でここまで追い詰められる。
それが楽しくて仕方がなかった。
この勝負に茶々を入れたものがいた。同じく水中にすむ「オムナイト」「カブト」である。
だがこの不幸な二匹は、勇次郎の怒りに触れて一撃で沈められた。
鬼は目の前のカメックスとの勝負を楽しんでいたのだ。
カメックスは打撃戦に不慣れだった。殻にこもり、ロケットのごとき体当たりで相手をしとめるのが
彼にとっての必勝パターンだったからだ。
一方で水中とはいえ、打撃戦は勇次郎の得意とするところ。
一分近く経ったろうか。カメックスは打ちのめされて動かなくなった。

カメックス、オムナイト、カブト 死亡

110: 2008/06/01(日) 00:28:30.15
水中で叩きのめせるのか……

115: 2008/06/01(日) 00:31:10.82 ID:9yTnPov30
強敵との戦いの直後、またも毒が勇次郎を襲った。
「メノクラゲ」「ドククラゲ」である。
カメックスに勝利を収め、水上へあがろうとしていた勇次郎に
メノクラゲの毒の触手が突き刺されたのだ。
メノクラゲ自身はその直後、勇次郎によって叩き殺されたのだが、毒のダメージは深刻だった。
地上に上がり、毒を吸い出す勇次郎。即効性の毒で、威力もビードルの比ではない。
地上まで追ってきたドククラゲを手刀で割るぐらいの体力は残っていたが、
しばらくは正常時に比べて劣る動きしかできないことだろう。
そんなとき、またも水中から勇次郎を襲うものが居た。
「ヤドン」「ヤドラン」。普段なら勇次郎の相手にもならない連中だ。
しかし毒を受けた勇次郎の相手としてはどうだろうか?

答えはやはり、相手にもならなかった。
正常時と比べ劣るとはいえ、相手は勇次郎である。
生半可な実力ではその足元にも及ばない。それに気づくほどの知能があれば、もっと長生きできたかもしれない。

メノクラゲ、ドククラゲ、ヤドン、ヤドラン 死亡

130: 2008/06/01(日) 00:37:15.14 ID:9yTnPov30
だがここで勇次郎にピンチが訪れた。
植物の変種であろう「フシギダネ」「フシギソウ」そして…
あのリザードンやカメックスと同等の実力と見受けられる「フシギバナ」が
徒党を組んで勇次郎の下に現れたのだ。
今、勇次郎は毒を喰らっている。
その上フシギバナ他二匹を相手にするのはかなり厳しいものがある。
さらに悪いことに、水中からは「ゴルダック」「シャワーズ」が地上へあがってきた。
特にこのシャワーズ、実力ではフシギバナにも劣らないと見受けられた。
「…ヘッ、人間じゃこうはいかねェよな。やっぱ野生は…」
つぶやく勇次郎に容赦なく大量の水が襲い掛かった。シャワーズが放ったものである。
ものすごい水圧で勇次郎は川沿いの堤防に叩きつけられた。
さらに追い討ちをかけるかのようにゴルダックの飛び蹴りが勇次郎を襲う。
「チィィッ!!」
ゴルダックに放たれた拳は、毒により威力の落ちるものであったが
それでも彼を葬るのには十分であった。
しかしシャワーズやフシギバナはこうはいかないだろう。
にも拘らず、勇次郎は余裕の表情を崩さなかった。
「お前、利用させてもらうぜ」

ゴルダック 死亡

131: 2008/06/01(日) 00:38:17.35
な ぜ し ん で る し

132: 2008/06/01(日) 00:38:45.11
ゴルダック噛ませ犬すぎwwwww

138: 2008/06/01(日) 00:43:32.83 ID:9yTnPov30
勇次郎はフシギダネに直線的に駆け寄ると、かかと落としでその命を奪った。
さらに呆気にとられるフシギソウに蹴りをいれ、宙に浮いたその体を全力で叩き落した。
怒れるフシギバナは勇次郎に向けてツルを飛ばすが、なんなくかわされる。
眠り粉が勇次郎に効かないのは相変わらずのことである。
手ごわしとみたフシギバナは、自身に付いている花をゆらし、葉っぱのカッターを飛ばす。
さらにこの間もシャワーズの攻撃の手は緩められない。
葉っぱのカッターと水圧の波状攻撃が勇次郎を襲う。それでも勇次郎は倒れない。
「こんなんじゃ昼寝中の俺を起こすこともできないぜ…」
ニタァ…っと笑う勇次郎に向けて、フシギバナは毒の粉を飛ばした。
勇次郎は既に毒に侵されている。この攻撃は意味を成さないものと思われた。
だが勇次郎は、こともあろうに自ら毒の粉を浴びにいった。
この状況が理解できず、動きが止まるフシギバナ。
毒の粉を浴び続ける勇次郎。一体どうしたことだろうか。
痺れをきらしたシャワーズが、とてつもない量の水を勇次郎目掛け放った。
次の瞬間、シャワーズは背後の鬼の手刀によってその命を絶たれた。

フシギダネ、フシギソウ、シャワーズ 死亡

143: 2008/06/01(日) 00:47:53.47 ID:9yTnPov30
状況が理解できず、呆然とするフシギバナ。
目の前の敵は、確かに毒を喰らったはずだ。
にもかかわらず、毒を喰らう前より動きが良くなっている。一体どういうことだろうか。
「…裏返ったんだよ」
勇次郎がつぶやく。
「お前が毒を『裏返し』ちまった」
フシギバナとの距離を縮める勇次郎。
必死で葉っぱのカッターを飛ばすフシギバナであったが、もはや勇次郎には当たらない。
「中国に伝わる『毒手』という技がある。
 だがこの技は同時に、毒の治療をも伝えるものでもある。
 俺の息子も毒を裏返して治したもんだ…」
万全となった勇次郎。もはやフシギバナに勝ち目はなかった。
背に乗った花に光を集め、渾身のビームを繰り出すも
宙に飛んだ勇次郎を捕らえることはできなかった。
落下する勇次郎。落下点にいた哀れな生物はその生涯を終えた。

フシギバナ 死亡

146: 2008/06/01(日) 00:50:59.34
御三家全滅か…

155: 2008/06/01(日) 00:58:03.89 ID:9yTnPov30
万全となった勇次郎は水を得た魚のようであった。
不用意にも勇次郎に襲い掛かった「ピッピ」「ピクシー」、
勇次郎に寄生しようと試みた「パラス」「パラセクト」は
全快した勇次郎の餌となった。
とは言え勇次郎は警戒していた。
先ほど屠ったパラスたちのように植物から派生したと思われる怪物は
毒をもっている可能性がある。
肉体の強さでは世界一を誇る勇次郎も、体内から蝕まれる攻撃には注意を払う必要がある。

勇次郎の他に、この東京に派遣された者たちがいた。
プロボクサーのアイアン・マイケル
キックボクシングのロブ・ロビンソン

マイケルは先日まで刑務所に収容されていたが、
東京の沈静化に尽力してくれたら恩赦として釈放されることになっていた。
ロブ・ロビンソンは高額の報酬を積まれ、日本に来ていた。
「ジャパンも恐ろしい国になっちまったな、ロブ」
「まったくだ。俺たち地下闘技場の戦士を二人も派遣しなきゃならないほどだって言うんだからな」
ザッ…。
天下無敵の二人の前に、怪物が立ちはだかった。

ピッピ、ピクシー、パラス、パラセクト 死亡

168: 2008/06/01(日) 01:04:23.77 ID:9yTnPov30
その怪物たちは奇妙な風体だった。
片方はボクシングのグローブをはめ、シャドーボクシングをしながら向かってくる。
もう片方は異常に進化した足、退化した手…蹴りのみに特化したモンスターだと人目でわかる。
「エビワラー」と「サワムラー」である。
「見ろよマイケル。おあつらえ向きの相手だぜ」
ロブ・ロビンソンが苦笑する。
「よりによって俺たちあいてに、ボクシングとキックときたもんだ…」
ロブの言葉が終わるより前に、サワムラーの回し蹴りが顔面に叩き込まれた。
「ロブ!」
ロブは盛大に吹っ飛ばされた。ふらつきながら起き上がるロブ。
「チッ、チッ、チッ…」
余裕を見せながら蹴りかかるロブだったが、ヒットしたのはサワムラーの飛び蹴りのほうだった。
「ロブゥゥッッ!!」
相棒がダウンしたのを見て、ボクシングの構えをとりつっかかるマイケル。
だがエビワラーのジャブはマイケルのそれよりわずかに速かった。
ダウンするマイケル。その後ろにはいつのまにか男が立っていた。
「こんな喰い残しみたいな連中を相手にしてもつまらんだろう」
勇次郎は悠然とボクシングの構えをとる。
「やろうぜ、ボクシング…」

169: 2008/06/01(日) 01:05:35.03
ロブとマイケル想像以上に悲惨wwwww

175: 2008/06/01(日) 01:08:24.04 ID:9yTnPov30
つっかかるエビワラー。だがダウンしたのはエビワラーのほうだった。
勇次郎のパンチがあごにクリーンヒットしていたのだ。
なんとか起き上がるエビワラー。だが眼前には異様な光景が広がっていた。
なんと、勇次郎が仰向けで寝ているのだ。
「アライ・猪狩状態…格闘技界最大の壁といわれている」
アライ・猪狩状態。
マホメド・アライと猪狩完至のミクスドマッチの際、誕生した型である。
勇次郎に覆いかかり、パンチを浴びせようとするエビワラー。
だが全てのパンチは届く前に捌き落とされた。
「足元がお留守だぜ」
足元を掬われ、ふらつくエビワラーに渾身のストレートがヒット。
エビワラーは二度と起き上がらなかった。

エビワラー 死亡

179: 2008/06/01(日) 01:14:27.71 ID:9yTnPov30
起き上がり、サワムラーに歩み寄る勇次郎。
サワムラーの飛び蹴りは確実に勇次郎の顔面にヒットした。
だが次の瞬間、サワムラーの意識ははるか彼方に飛んだ。
勇次郎のかかと落としがクリーンヒットしたのだ。
サワムラーの蹴りの威力はロブの比ではなかった。
だが勇次郎にとってはまさに五十歩百歩だったのだ。

この期を待っていたとばかりに、上空から襲い掛かる影があった。「ピジョット」だ。
襲い掛かろうとしたその瞬間、勇次郎のアッパーをまともにくらい、華麗に空へ舞い上がるピジョット。
だがそれは自らの羽を使い、悠然と空を舞っていたあのピジョットではなかった。

サワムラー、ピジョット 死亡

184: 2008/06/01(日) 01:20:21.33 ID:9yTnPov30
戦場でもこれほどの強敵との連戦はなかった。
まるで子供が見たこともない場所へ連れて行ってもらったときのように、勇次郎の心は弾んでいた。
相変わらず突如襲い掛かる化け物ども。今度は「カモネギ」であった。
素早い動きで勇次郎を翻弄しようとするも、一瞬で動きが捉えられて潰された。
次の敵の襲来にむけてあたりを一瞥する勇次郎だったが、
次の瞬間、カモネギが起き上がって再び勇次郎に襲い掛かった。
ふいをつかれた勇次郎はかすり傷を負ったものの、再びカモネギを叩き伏せた。
(完全に気を失ってもおかしくない一撃を入れたはずだったが…)
次に襲来したのは、巨大なはさみを持つ「クラブ」「キングラー」だった。
クラブのほうは攻撃を放つ間もなく一撃で沈められた。
キングラーにしても、大きなはさみで勇次郎を殴ろうとするも
片手で止められ、これまた一撃で沈められた。
だがこの二匹もまた、再び起き上がり勇次郎に襲い掛かった。
完全にとどめを刺し、勇次郎は周囲を警戒した。
二度連続でとどめを刺し損ねた…?明らかに異変が起こっているのだ。

カモネギ、クラブ、キングラー 死亡

187: 2008/06/01(日) 01:24:37.82
一体何が・・・
ポケモンがレベルアップしてるのか?

189: 2008/06/01(日) 01:25:30.24 ID:9yTnPov30
ゴースの催眠術で眠っていた独歩が、ようやく起き上がった。
「やれやれ、とんだ怪物がいたもんだぜ。格闘家も五体だけじゃ戦えない世の中になったかい。
 後で聞いた話じゃおいらァ、ドリアンとかいう海王の『暗示』にかかってたみたいだしよォ」
そう。暗示である。
カモネギたちは暗示により、肉体の限界まで強さを引き出されていたのだ。
それを行ったのは「スリープ」と「スリーパー」。
そのへんをうろついている雑魚に暗示をかけ、勇次郎への当て馬にしたのだ。
その後も勇次郎は暗示にかけられた怪物と戦っていた。
ヘドロ状の「ベトベター」「ベトベトン」。
彼らも明らかに致命傷を負った後、立ち上がり勇次郎に襲い掛かった。
「トサキント」「アズマオウ」などは水中の生物であるにもかかわらず、
陸上でも機敏な動きで勇次郎に襲い掛かった。
勇次郎もやがて「暗示」の使い手の存在を意識することになる。
「こそこそ隠れやがって…出てこいッッ!!」

ベトベター、ベトベトン、トサキント、アズマオウ 死亡

192: 2008/06/01(日) 01:30:27.01
今98匹目か…

195: 2008/06/01(日) 01:32:19.47 ID:9yTnPov30
だがスリープたちは出てこない。
自分が出て行くのは賢くない行動だと知っているからだ。
出てこいと叫ぶ勇次郎の目の前に出てきたのはまたも別の生物だった。
「サンダース」。素の実力の時点でかなり高いモンスターである。
そのサンダースが暗示にかけられ、能力が限界まで引き上げられている。強敵である。
(こいつが暗示使い…って感じじゃねェな)
サンダースに襲い掛かる勇次郎。だがその拳はサンダースに当たらない。
強化されたサンダースは勇次郎に向かい、電撃を放った。
「くぅッ!!」
いくら勇次郎と言えども電撃は効くのだ。
超人的な力を持つ死刑囚ヘクター・ドイルは、電気椅子に数秒耐えた。
だがそのドイル自身、もう数秒解放が遅れたら死んでいたと述べている。
いくら強靭な肉体を持とうとも、電撃のダメージを完全にシャットアウトすることはできない。
勇次郎はあえて攻撃せず、電撃を避けることに全神経を集中していた。
致命傷こそ避け続けているが、このままではサンダースを倒すことはできない。
サンダース自身、そう感じていたそのとき。
突然サンダースがけいれんをはじめ、その場に倒れたのだ。
「生き物の脳は自分の筋肉の使用に制限をかけている。
 フルに筋肉を使えば、自分自身が持たねェからだ。
 暗示でリミッターを外した者の末路なんざ、このようなものよ」
勇次郎はサンダースにとどめを刺した。

サンダース 死亡

204: 2008/06/01(日) 01:37:17.28 ID:9yTnPov30
切り札を失ったスリープたちは狼狽していた。
サンダース以上の実力者に暗示をかけるのは難しい。
下手すれば自分たちが殺されてしまうかもしれない。
慎重派のスリープたちは、二流の怪物にしか暗示をかけられないでいた。
タマタマ、タッツー、シードラが暗示をかけられ勇次郎に襲い掛かったが全滅。
サンダースより明らかに劣るイーブイも同じく暗示にかかるも、勝てるわけもなく敗北。
スリープたちは焦っていた。打つ手がなくなったからだ。
一旦距離を置いて…そう思ったスリープたちを絶望が襲った。
目の前に勇次郎が現れたのだ。
「出てくる連中の方角を辿ってみたら、簡単にたどり着いたぜ…
 暗示をかけるなら、現れる方向もバラバラになるようにしとくんだったな」
ニヤリと笑う勇次郎。二匹は己の人生の終了を悟った。

タマタマ、タッツー、シードラ、イーブイ、スリープ、スリーパー 死亡

206: 2008/06/01(日) 01:38:34.00
イーブイ(´・ω・`)

212: 2008/06/01(日) 01:44:03.75 ID:9yTnPov30
「フーディン」はスリープたちの死亡を直感した。
同じ怪電波を出す存在同士、彼らは意識しあっていた。
フーディンは部下にあたる「ケーシィ」「ユンゲラー」を連れ、勇次郎のいる方角へ向かった。

「りゃアッッッ!!!」
巨漢サイドンを前蹴りで吹っ飛ばす勇次郎。
勢いはどんどん増すばかりだ。
サイドンも多少の抵抗はしたが、勇次郎には及ばなかった。
突如、勇次郎の肉が切り裂かれた。
(鋭利な刃物か!?…違う)
「カブトプス」「ストライク」。鎌を持つ二匹が同時に勇次郎を襲った。
勇次郎の古い友人に日本刀の使い手がいる。
殺傷力では勇次郎も日本刀に及ばない、と豪語するほど、日本刀を愛する男だ。
おそらく日本刀はあらゆる存在の中で、最高の殺傷力を誇ると信じて疑わないはずだ。
だがその彼もカブトプスたちを見れば己の間違いに気づくだろう。
勇次郎の肉をいとも簡単に切り裂く切れ味。
これほどの「刃物」は人間界に存在しない。
「面白ェ…反撃しないから切ってみろよ」

218: 2008/06/01(日) 01:48:00.11 ID:9yTnPov30
いかに勇次郎と言えども、この鎌の一撃を急所に喰らいでもしたら致命傷となるだろう。
一瞬の油断が文字通り命取りになるのだ。
だが勇次郎は反撃しないと言う。
そして、確かに勇次郎は反撃しなかった。
カブトプスとストライクが繰り出す鎌の連撃も、紙一重で避けるだけで一切手を出さなかった。

数分したころ、二匹は攻撃をやめた。
勇次郎には攻撃が絶対当たらないのだ。
自らの鎌に絶対の自信を持っていた二匹は絶望した。敗北とは、心が折れることなのだ。
「負けを認めたな…」
ニヤリとする勇次郎。二匹に歩み寄ると、彼らを手刀で真っ二つにした。
死んだふりをし、機会をうかがっていたサイドンがこの瞬間立ち上がり
背後から勇次郎に襲い掛かるも、あえなく蹴り殺された。

カブトプス、ストライク、サイドン 死亡

224: 2008/06/01(日) 01:53:08.11 ID:9yTnPov30
カラカラ、ガラガラの親子は勇次郎と戦うつもりはなかった。
勝てないとわかっている相手には挑まない賢さを持っていた。
ガラガラは幼い息子カラカラと手をつなぎ、東京の街を歩いていた。
その親子の目の前に現れたフーディン。
スリープたちより強力な催眠は、仲のいい親子を殺戮の兵器に変えた。
勇次郎の前に現れたカラカラとガラガラは、最短距離をまっすぐ歩み
猛然と勇次郎に襲い掛かった。
腹への一撃で倒れるカラカラ。
顔に蹴りを入れられ、カラカラを守るように覆いかぶさり倒れるガラガラ。
屠り去られた二人の姿は、たわむれる親子のようだった。

カラカラ、ガラガラ 死亡

227: 2008/06/01(日) 01:54:09.50
フーディンおまえってやつは

235: 2008/06/01(日) 01:59:11.66 ID:9yTnPov30
アメリカでは、関東地方への衛星監視がなされていた。
当初137種と観測されていた怪物たちは、いまや149種にまで増えていた。
だがそのうち100種程度が勇次郎によって屠り去られ、残りわずかとなっていた。

シャワーズ、サンダースと同格の「ブースター」
さらに「オムスター」や「ラッキー」が勇次郎を取り囲む。
「カスどもが雁首そろえおってッッ!!」
怒りのままオムスターを叩き潰す勇次郎。続いてブースターを蹴り飛ばす。
ダメージを負ったブースターだったが、ラッキーの生む「たまご」によって傷を癒す。
ならばと、ラッキーをしとめようとする勇次郎だったが、ブースターがラッキーの前に立ちはだかる。
ブースターが負傷したらラッキーが治す。彼らはこのコンビネーションで勇次郎を仕留めるつもりだった。
が、その考えは浅はかだった。
勇次郎は体を捻転させたかと思うと、思い切りブースターを殴り飛ばした。
そのパンチはブースターを一撃で昇天させた。一撃で死んでは回復も何もない。
残ったラッキーに反撃のすべは残されていなかった。

オムスター、ラッキー、ブースター 死亡

248: 2008/06/01(日) 02:07:24.37 ID:9yTnPov30
「ドガース」と「マタドガス」を見た瞬間、勇次郎は警戒した。
明らかに「毒ガス」を発しているからだ。
実力ではカイリキーや鎌コンビのほうが上だろう。
だが勇次郎にとっては毒も警戒すべき敵なのだ。
ドガースたちと距離を置き、様子を伺う勇次郎。
その隙にと勇次郎を襲った「ナッシー」「ベ口リンガ」は、裏拳で叩き潰された。
このように向き合ってる間も周囲からの襲撃があるかもしれない。
警戒しながらも慎重に距離をつめる勇次郎。
勇次郎に気づき、ドガースたちはさらに毒ガスを発射する。
「くゥッ…!!」
拳圧で毒ガスを振り払い、猪突猛進する勇次郎。
ドガースを仕留めることに成功したが、マタドガスは距離をおき、一層毒ガスを発射する。
勇次郎も距離を置き、勢いよく周囲の建物に飛び込んだ。
困惑するマタドガス。次の瞬間、マタドガスにコンクリートの塊が当たる。
勇次郎が建物の壁をブチ抜いたのだ。
息も絶え絶えのマタドガス。毒ガスを噴射することもできない。
ゆっくりと近づく鬼が、マタドガスの終焉を告げた。

ナッシー、ベ口リンガ、ドガース、マタドガス 死亡

255: 2008/06/01(日) 02:13:43.13 ID:9yTnPov30
今までで一番の巨漢であろう生き物が、今勇次郎と対峙していた。
「カイリュー」。その身長は2メートルを軽く超えている。体重も200kgオーバーだ。
しかし勇次郎はまったく臆することもなかった。勝負は身長では決まらないのだ。
アンドレアス・リーガンという巨漢のプロレスラーがいる。
彼の身長は2メートル40センチ。だがそれよりはるかに小柄なバキに倒されている。
「木偶の坊がッ!!屠りさってくれるわッッ!!」
勢いよくつっかかる勇次郎だが、カイリューのしっぽにはじき飛ばされる。
勇次郎が「はじき飛ばされた」のだ。前代未聞の出来事である。
「ちッッ!!」
蹴りかかる勇次郎。
だがその蹴りが届く前に、カイリューの吐く光線が直撃した。
勢いよく吹っ飛び、3秒ほど仰向けに寝る勇次郎。
アライ・猪狩状態ではない。単にダメージを負って立ち上がれないのだ。
ゆっくりと起き上がり、カイリューを見据える勇次郎。
「今までで一番…喰いごたえがありそうだな」

260: 2008/06/01(日) 02:14:57.63
え? カイリューの破壊光線その程度wwww

269: 2008/06/01(日) 02:19:08.14 ID:9yTnPov30
飛び掛る勇次郎。光線を吐くカイリュー。
だが一度喰らった攻撃を二度喰らうのは三流のやることである。
勇次郎は空中で体をひねり、自らの軌道を変えた。
「りゃァッッ!!!」
蹴りがカイリューの水月にヒットする。
さらにその流れで正拳、手刀を急所に叩き込む。鬼は容赦しない。
嘔吐し、ふらつくカイリュー。
勇次郎がとどめを刺そうとしたそのとき、炎のようなものが勇次郎を襲う。
龍族の誇りをかけた一撃、龍の怒りとも呼べる技である。
「くッッ!!」
自らの肉の壁の厚さに関係なく、体を蝕む攻撃。
思わず距離をとってしまう勇次郎に、再び光線が襲う。
とっさに避けたものの、体勢は最悪である。
体重200kg以上のカイリューがのしかかってくるのに対し、避けることはできなかった。

281: 2008/06/01(日) 02:23:12.31 ID:9yTnPov30
馬乗りになって殴りかかってくるカイリュー。
たとえプロレスラーでも死は免れないほどの威力のパンチが、ダースで襲い掛かる。
さらにとどめとばかりに、至近距離から例の光線を放とうとするカイリュー。
その時、カイリューは宙に舞った。
空中で体勢を立て直そうとするカイリューの喉元に、強烈なアッパーが入る。
勇次郎が一瞬で体勢を立て直し、カイリューを追撃したのだ。
勢いに乗って攻撃する勇次郎。もはやカイリューの息は絶え絶えである。
このとき、勇次郎の背中には「鬼」が住んでいた。
打撃に特化した筋肉のつくりが見せる鬼の形相。
カイリューも相当の実力者だ。例えバキでも勝てるかどうかわからない。
だが今回ばかりは相手が悪かった。カイリューが絶命したころ、勇次郎は始めて満足していた。

カイリュー 死亡

305: 2008/06/01(日) 02:30:02.32 ID:9yTnPov30
「今宵、『鬼』が出せるとは思わなかった。クク…」
勇次郎の心が躍る際、必ず犠牲者が出る。
今回はコイル、レアコイルの鋼のボディが、勇次郎によって砕かれた。

ガルーラは子供を腹に抱えていた。
勇次郎とは戦いたい。一匹の怪物として。
だがあえて戦場に赴くことはしなかった。一匹の母親として。
ただ勇次郎を見ていたかった。
父のいない息子に、教えてやりたかったのだ。
息子よ、あれが父というものだ。父は絶対的に強い存在なのだ。
勇次郎もつけられていたことは知っていたが、あえて叩きのめさなかった。
向かってくるものは敵。だが向かってこない者に興味はない。
自分との戦いのフィールドに立ち、初めて敵とみなすのだ。
勇次郎を襲うミニリュウ、ハクリューが簡単に返り討ちにされる。
絶対的な強さを目の当たりにし、ガルーラの腹の子供は目を輝かせていた。

コイル、レアコイル、ミニリュウ、ハクリュー 死亡

339: 2008/06/01(日) 02:38:40.08 ID:9yTnPov30
「エレブー」「ブーバー」は戸惑っていた。
自分たちに敵はないと思っていた。事実、彼らが生息していた場所では
彼らはトップの実力を誇っていたからである。
だが彼らは勇次郎を目の当たりにしてしまった。
おそらく勝てぬ。だが勝てぬとて引き下がるわけにはいかぬ。しかし踏ん切りがつかない。
そんな二匹の前にフーディンが現れた。
二匹の戦士が、二匹の捨て駒へと変わった瞬間だった。

再び水辺に戻ってきた勇次郎は、「ラプラス」と戦っていた。
全長2.5メートル。吹雪を巻き起こす脅威の敵だ。
勇次郎の皮膚に氷の塊が突き刺さる。
空間全体に吹雪を巻き起こされては、ダメージを避けるすべがない。
そのうえラプラスは30メートルはあろうかという池の対岸から攻撃をしかけていた。
勇次郎ができることといえば、石などを投げることくらいである。
だがそれでは致命傷にならない。
一時勇次郎と並び賞されたガイアという軍人がいた。
そのガイアでさえ、10メートルの池を飛び越えるのが精一杯である。
もちろん10メートルも人間の限界を超えた数値だが、30メートルとなると生身の人間では…。
が、勇次郎は跳んだ。勢いをつけ、全力で跳んだ。
驚いたことにその跳躍は、直線距離にして20メートルを超えた。
勢いよく水に飛び込む勇次郎。水中はラプラスの領域だ。
しかし次の瞬間勇次郎は水中から勢いよく飛び出した。
足がかりになるものなどなに一つないはずの水中から、己の筋力のみを駆使して勢いよく飛び出したのだ。
不意をつかれたラプラスの首がへし折れる音が響いた。

ラプラス 死亡

350: 2008/06/01(日) 02:47:20.48 ID:9yTnPov30
勇次郎は背後から攻撃を受けた。
頭痛のような痛みが走り、すぐさま振り返り反撃に出た。
だがその反撃は相手の体をすり抜けた。天敵が再び登場したのである。
「ゴースト」。ゴースの上位に位置する存在である。
ガス生命体のようなものであり、物理的な攻撃は一切通用しない。
しかもゴースにはなかった攻撃手段をかねそろえている。
勇次郎は再び、かまいたちを発生させることでゴーストを仕留めようとした。
だがその戦法は反撃してこないゴースが相手だったからこそ有効な戦法。
謎の頭痛を伴う攻撃をしてくるゴーストが相手では、勇次郎のほうが先に力尽きてしまうかもしれない。
が、勇次郎は戦法を変えなかった。
それしか戦法がないからではない。己の正拳を持ってすれば実体のない相手すら倒せる。
己の強さにここまで確信が持てる人間はそうはいないだろう。
頭痛に耐え、風圧でゴーストを切り裂く。
傷だらけになったゴーストは、なんとか生き残る事を考えた。自分の強さに確信が持てなかったのだ。
この時点で勝負は決していた。勇次郎の最後の一撃に対し、ゴーストは完全に無抵抗だった。

ゴースト 死亡

359: 2008/06/01(日) 02:51:59.07 ID:9yTnPov30
風変わりなモンスターが勇次郎の前に立ちふさがった。「バリヤード」である。
バリヤードは自身の目の前に光の壁を張った。
物理攻撃を遮断する壁である。
「せいィッッ!!!」
だが勇次郎の一撃を遮断することはできなかった。
念力で勇次郎を押し飛ばそうとするバリヤードだったが、これも無駄な抵抗だった。
もはや勇次郎は並みの怪物では相手にならないほど、今回の駆除を通して成長しているのだ。
壁はまさにこの瞬間も、高くなり続けている。
そんな勇次郎にエレブー、ブーバーの二匹が襲い掛かる。
フーディンの暗示の下にある二匹の目に生気は宿っていなかった。
二匹を屠り去った勇次郎は、再び暗示の使い手が土俵に上がってきたことを直感した。

バリヤード、エレブー、ブーバー 死亡

365: 2008/06/01(日) 02:59:13.87 ID:9yTnPov30
フーディンたちはスリープたちより賢かった。
自分の居場所を悟られるようなマネはせず、遠くから念波で勇次郎の居場所を把握し、
効果的にポケモンを送り込んでいた。
岩石の塊であり、ゴローン以上の実力を持つゴローニャも暗示の餌食となり、勇次郎に立ち向かっていった。
「打岩はもう十分だ。あんなモンは所詮お遊び。
 生きた対象をぶっ叩くことでしか、開放のカタルシスは得られねェ…」
ゴローニャを屠った決め手は、驚いたことに抜き手である。
岩の塊を指で貫く。信じがたいことではあったが、勇次郎はやってのけた。
空手を志してから日々何百本と抜き手の練習をしてきた愚地独歩にも、おそらく無理な芸当だろう。
水の中がテリトリーであるはずのスターミーも暗示によって勇次郎に襲い掛かった。
この時点で勇次郎は、完全に暗示の使い手の存在を確信した。
「気にいらねェ…ッ!!」
勇次郎は正拳をまっすぐにスターミーに叩き込んだ。
力こそ全て。暗示などは闘争における不純物だとの主張が、その正拳には込められていた。

ゴローニャ、スターミー 死亡

370: 2008/06/01(日) 03:05:00.22 ID:9yTnPov30
ガルーラは森に向かって歩いていた。
勇次郎との戦いを完全に放棄し、子と共に静かに暮らそうと決めたのだ。
だが彼女は勇次郎の傍を離れてはいけなかったのだ。
子を想う親の目の前に、悪魔の暗示の使い手が現れた。

不思議な立体「ポリゴン」の発する光は勇次郎の目をくらませた。
暗闇の中、ポリゴンの放つ光線が勇次郎の体を蝕む。
しかし光線の放たれる方向からターゲットの位置は突き止められ、鬼の一撃が振り下ろされた。
「この方法で殺れりゃあいいんだがな。暗示使いもよ…」
スリープやこのポリゴンに通用した方法が、フーディンには通用しない。
彼らは本当に賢いのだ。
(駒がいなくなりゃ、現れざるを得ねェか…)
そう考えながら歩く勇次郎に、ガルーラが背後から忍び寄った。

ポリゴン 死亡

372: 2008/06/01(日) 03:05:45.07
ポケモンショックwww

380: 2008/06/01(日) 03:10:23.16 ID:9yTnPov30
背後のガルーラの気配がこれまでと違うことを、勇次郎は悟った。
突如けたたましい叫び声をあげ、勇次郎に襲い掛かるガルーラ。
母親のあまりの変貌振りに、腹の袋の中の子供は戸惑いを隠せなかった。
2メートルを超えるガルーラの巨体が勇次郎に襲い掛かる。
だが今更巨漢など何の障害にもならなかった。
顔面に一撃を食らわせる勇次郎。歯が何本も欠けるガルーラ。
だがガルーラは立ち上がった。フーディンによって後退のネジを外されている状態なのだ。
勇次郎の手刀がガルーラの首を落とす。泣き叫ぶ子供。
「泣くなッッ!!」
勇次郎が険しい表情で子供を叱る。泣き止む子供。
「いい子だ…」
勇次郎は子供を放置し、その場を後にした。

ガルーラ 死亡

396: 2008/06/01(日) 03:16:31.20 ID:9yTnPov30
フーディンはミスを侵した。
ガルーラの体には細かい葉がついていた。
それだけでは暗示をかけられた場所が森だと特定されることはないと思ったのだろうが、
勇次郎はガルーラが一度自分をつけていたことを知っている。
自分から離れた後森へ行き、そこで何者かに暗示をかけられ戻ってきたと勇次郎は考えた。
全速力で森へ駆ける勇次郎。
フーディンは驚いた。自分たちの位置が特定されたことが、
勇次郎の動きを捕らえている念波でわかったからだ。
フーディンは迎撃の覚悟を決めた。
手駒ならいる。暴れ者のカイロスとケンタロスに暗示をかけてある。
それに自分が戦うことになったとしても、負ける気はしなかった。
森へたどり着いた勇次郎を、またも頭痛が襲う。
ユンゲラーのサイコキネシスである。
スプーンを曲げながら木の陰に隠れ、せせら笑うユンゲラー。
「ぐぅッッ…小癪なッ!!」
隠れているユンゲラーに向かい、全力で駆けていく勇次郎。
ユンゲラーが逃げ出そうとしたときには手遅れ。スプーンと同様、自らの首も曲がってしまった。

ユンゲラー 死亡

406: 2008/06/01(日) 03:23:58.17 ID:9yTnPov30
勇次郎の動きを二匹のポケモンが捕捉した。
「カイロス」と「ケンタロス」である。
猛烈な勢いで突進してくるケンタロスを避ける勇次郎。
だが避けた方向にはカイロスが回り込んでいた。
頭についている巨大なハサミで勇次郎を挟むカイロス。
「~~~ッッ!!」
常人なら体が引きちぎれているだろう。
両手でハサミをこじ開けようとするが、カイロスの締め付ける力は強く、なかなかこじ開けられない。
そんな状態の所に、かまわず突進してくるケンタロス。
勇次郎はカイロスともども吹っ飛ばされた。
「おのれッッ!!カスどもが張り切りおってッッ!!」
勇次郎はカイロスのハサミをつかむと、桁外れの握力でそれを砕いた。
ハサミを砕かれたカイロスに反撃の術はない。勇次郎のかかと落としの餌食となった。
ケンタロスも、突進だけではどうしようもなかった。
勇次郎は横綱の突進をも軽々と止め、押し返したことがある。
「ぬうンッ!!」
ケンタロスの突進を正面から受け止め、膝蹴りを食らわす勇次郎。
悲鳴を上げるケンタロスに追撃が跳ぶ。
物陰からチャンスをうかがっていたケーシィが襲い掛かるが、もはや勇次郎にとってゴミも同然だった。


カイロス、ケンタロス、ケーシィ 死亡

419: 2008/06/01(日) 03:30:06.03 ID:9yTnPov30
リザードンと戦い、屠った平地にフーディンはいた。
フーディンがついに勇次郎の前に姿を現したのだ。
「カスがッッ!!土俵に上らずにままごとでもしていればよいものをッッ!!」
襲い掛かる勇次郎。だが次の瞬間、勇次郎は倒れていた。
「~~ッッ!!」
サイコウエーブ。フーディンの切り札である。
念波を飛ばし脳を直接攻撃する技である。
(何が起こった…ッ!!)
起き上がり距離をとる勇次郎。しかし再び波は襲い掛かった。
「グッッ…!!」
うずくまる勇次郎。余裕の表情を見せるフーディン。
フーディンは勇次郎を小馬鹿にするように、スプーンをくるくると回している。
勇次郎は太い木の枝をへし折り、フーディンに投げつけた。
しかしフーディンにとってはそんなものは意味のない行為であった。
フーディンが指をまげると、木の枝はポ口リと地面に落ちた。

435: 2008/06/01(日) 03:36:23.03 ID:9yTnPov30
フーディンとの距離、およそ10メートル。
距離をとっても念波は関係なく襲い掛かる。
ならばと距離を詰める勇次郎。だがフーディンは勇次郎から離れる。
念波によるダメージのせいで、勇次郎は思うように距離を詰められずにいた。
硬い物なら拳で破壊できる。
強い相手なら拳で破壊できる。
だが念波という目に見えない攻撃は、勇次郎にとって鬼門だった。
フーディンの念波は、森の入り口でユンゲラーが放った念波の比ではない。
しかも勇次郎にとって最悪な出来事が重なった。フーディンは切り札を用意していたのだ。
勇次郎の背後から忍び寄る影。
「シッッ!!!」
鬼の蹴りがとぶ。だがその蹴りは影をすり抜ける。
これで三度目。天敵、ガス状生命体。
ゴーストたちの上位に位置する「ゲンガー」がそこにいた。

438: 2008/06/01(日) 03:37:16.80
通信コンビ!

451: 2008/06/01(日) 03:40:19.91 ID:9yTnPov30
この状況ではかまいたち戦法は通用しない。
そんなことをしている間に、サイコウエーブで確実に仕留められてしまう。
「ウガァァァッ!!」
立ち上がり、力の限り暴れる勇次郎。だがゲンガーには当たらない。
フーディンとの距離を詰めようとしても、そのたびにひどい頭痛が襲い、ままならない。
かつてない絶体絶命のはずだった、が、勇次郎は笑っていた。
「…使うぜ」
勇次郎は両手を高くあげ、両足を開いた。これを構えと呼べるのだろうか。
背中に浮き出た鬼は、泣いているかのように見える。
勇次郎が両手を振りかぶったかと思った次の瞬間、フーディンの腹には鬼の一撃が食い込んでいた。
一瞬で距離を詰め、相手に致命的なダメージを与える。
オーガこと範馬勇次郎の本気だった。

459: 2008/06/01(日) 03:43:47.89 ID:9yTnPov30
相棒のフーディンが盛大に吹き飛ぶのを目の当たりにし、ゲンガーはショックを受けていた。
勇次郎はただちにゲンガーのほうに向き直る。
ゲンガーと距離を詰めると、例のごとく素振りを始める。かまいたち戦法である。
しかし今の勇次郎の背には鬼が浮き出ている。拳打の威力はゴーストたちのときの比ではない。
必死の抵抗を試みるも無残に切り裂かれ、ゲンガーは絶命した。
勇次郎はフーディンの方向に向き直る。
致命傷とも言えるダメージを喰らいつつも、立ち上がるフーディン。
万一に備え、物理攻撃対策の壁を張っておいたのだ。
極限まで薄く、強く張った壁は勇次郎の一撃から命を守った。

ゲンガー 死亡

475: 2008/06/01(日) 03:49:04.39 ID:9yTnPov30
フーディンの張った壁は強力だった。
バリヤードのそれとは桁が違う。いかに勇次郎と言えども、その壁を打ち破るのは難しいだろう。
だが勇次郎はフーディンに向かい、悠々と歩みを進めた。
サイコウエーブを放つフーディン。だが勇次郎には前ほど効果がなかった。
狼狽するフーディン。それもそのはず、さっきまで効いていた技の効果が薄くなっているのだから。
一つにはフーディンの体力消耗による技のキレの半減。
もう一つには、成長する鬼、勇次郎のサイコウエーブに対する「克服」があった。
頼みのサイコウエーブが効かない今、自らの体に張った壁で身を守るしかない。
フーディンはそう思った。
結論から言うと、これはフーディンに地獄を見せることとなった。
強力すぎる壁のおかげでフーディンは死なない。だが勇次郎の連撃を喰らうこととなる。
死ぬギリギリの点で勇次郎の連撃を耐え続けるフーディン。
必死で自己再生を試みるも、根本的な解決にはなっておらず、苦痛を長める結果となった。
ホッキョクグマをも屠る鬼の強烈な連撃に耐えかねて、ついにフーディンはバリアを解除した。
次の一撃を喰らったフーディンは、二度と起き上がることはなかった。

フーディン 死亡

496: 2008/06/01(日) 03:56:00.48 ID:9yTnPov30
連戦に次ぐ連戦で、鬼の体力は消耗していた。
人間じゃないと形容される勇次郎も、実際のところ人間。
無限に戦い続けることができるわけではないのだ。
都市に戻った勇次郎を待ち受けるのは、またしても連戦の嵐。
空から襲い来る「プテラ」、遠くから氷の塊を飛ばしてくる「ルージュラ」。
この二匹が同時に勇次郎に襲い掛かった。
「ぬうんッッ!!」
勇次郎のアッパーが地面を抉る。抉れたコンクリートは弾丸となりルージュラの体を襲う。
氷の塊を飛ばすルージュラは、コンクリートの塊に貫かれた。
次いで崩壊したビルのとっかかりをつかみ、腕力のみで屋上へあがる勇次郎。
だがプテラはさらに上にいた。頭上から光線を発射するプテラ。かわす勇次郎。
勇次郎はビルからさらに空中に飛び上がった。
ギリギリプテラの尾につかまった勇次郎。だがプテラはそこからさらに急上昇する。
手刀でプテラを絶命に追いやった勇次郎は、はるか上空から地面に落とされることとなった。

ルージュラ、プテラ 死亡

510: 2008/06/01(日) 04:02:04.96 ID:9yTnPov30
勇次郎は、はるか上空から思い切り地面に叩きつけられた。
仰向けになって動かない勇次郎。
その勇次郎の頭上を、水色に輝く鳥が横切った。
かと思うと、勇次郎の体は瞬時に氷漬けになった。

「実際に目の当たりにしないと信じられないかもしれませんね」
少林寺拳法の達人、三崎健吾はインタビュアーを前に語る。
「人間の体が一瞬で凍りついたんです」
怪物が関東地方に現れてからまもなく、三崎は東京へ駆けつけた。
そこで三崎は信じられない光景を目にする。
シュートレスリングの山本稔が、水色に輝く鳥と対峙していた。
次の瞬間、山本は一瞬で氷漬けになった。
「一瞬ですよ。ええ、瞬きなどしていません。
 本当に一瞬で氷漬けになったんです。
 ハハ…物理学で説明?おそらくできないでしょう
 理屈など超えてますよ。あれは…」

寝そべる勇次郎を氷漬けにした鳥。
それは伝説の鳥「フリーザー」だった。

528: 2008/06/01(日) 04:06:50.60 ID:9yTnPov30
氷漬けになった勇次郎は、指を動かすのが精一杯だった。
一体一体は勇次郎に劣っても、ここまで連戦を続けていれば
体力を消耗するのは当然のことである。
幼少時代のバキも、実力で圧倒的に勝っているにも拘らず
たかが不良高校生を相手に、40人抜きを前にしてK.Oされてしまった。
ここまで戦い続けてきた勇次郎も、ついにこれまでなのか…。

最近、氷漬けから復活した人間がいた。
信じられないだろうが、恐竜がいた時代に存在していた人類。
その男は氷付けにされようとも生き続け、現代に復活したのだ。
その原人はピクルと名づけられた。
ピクルにできたことが、勇次郎にできないだろうか。

「…」
「ッ…」
「ヌウウウッ!!!!!」

巨大な腕が凍りをぶち破る。
勇次郎は氷漬けから復活した。

536: 2008/06/01(日) 04:09:19.05 ID:9yTnPov30
フリーザーは驚愕していた。氷漬けになっても復活する人間が…
そこでフリーザーの思考は途切れた。宙に跳ね上がったその人間が、自分の羽をむしったのだ。
悲鳴をあげ、地上に堕ちるフリーザー。
勇次郎は成長した。空から落ち、氷漬けにされ…逆境を跳ね除けたことで飛躍的に成長したのだ。
成長する世界一…以前の勇次郎ならば、フリーザーは苦戦する相手だったかもしれない。
だが今ここにいる勇次郎は、驚くほど簡単にフリーザーを屠り去った。

フリーザー 死亡

554: 2008/06/01(日) 04:14:07.74 ID:9yTnPov30
伝説の鳥は一匹ではなかった…!
怪鳥「サンダー」が勇次郎に襲い掛かる。
鋭い嘴を突きたて、勇次郎にマッハの速度で向かってくる。
その脅威はオニドリルの比ではない。
だが勇次郎はその嘴を、オニドリルのときと同様掴み取った。
しかしサンダーの脅威はここからだ。強烈な電撃が勇次郎を襲う。
「ぬおおおッ!!!!」
勇次郎は痙攣し、その場で気を失った。
サンダーの電撃の威力は桁違いである。
かつて戦ったサンダースやエレブーをはるかにしのぐ電力。
その電力をいっぺんに放電し、やっと勇次郎を気絶させるに至ったのだ。
だがサンダーのほうにも余力は残ってなかった。
雷を操ることで伝説と呼ばれる鳥の持ちうる電力を全てつぎ込んでも
勇次郎の命は奪えなかった。
勇次郎にとどめをさすべく、サンダーは鬼の体を抱え、川辺へと運んだ。
そして無情にも川へ勇次郎の体を投げ込んだ。

571: 2008/06/01(日) 04:19:24.77 ID:9yTnPov30
水中で最大の捕食者と言えば、どれだろうか。
カメックスやシャワーズなどが候補に挙げられるかもしれない。
だが凶暴さという一点に重きを置くならば…

水中に投げ込まれた勇次郎は、最大の捕食者「ギャラドス」に狙われていた。
餌が投げ込まれたと思ったギャラドスは、鬼にかぶりついた!
だがこの瞬間、鬼は目を覚ました。餌となるのはギャラドスのほうだった。
容赦なくギャラドスの首を締め付ける勇次郎。ギャラドスは数秒と持たなかった。
以前の勇次郎なら、ここまで素早くギャラドスを落とすことはできなかっただろう。
ふいにギャラドスの傍らから、何かが体当たりしてきた。
非力な「コイキング」である。
だが非力だろうと、勇次郎の目の前に立てば敵。
コイキングは一瞬で屠られた。

コイキング、ギャラドス 死亡

591: 2008/06/01(日) 04:22:05.16 ID:9yTnPov30
覚醒した鬼に敵はなかった。
水上に上がり、その場にいたサンダーに前蹴りを入れる。
ふいの出来事に反応できず、うずくまるサンダー。
既に全ての電力を使い切っており、勇次郎への攻撃手段は残されていなかった。
東京に降り立ってからこの時点までで勇次郎を気絶させた唯一の存在。
さすが伝説といえるだろうが、今の勇次郎の前では無力だった。
必死で羽を羽ばたかせ攻撃するサンダーの顔面は叩き潰された。

サンダー 死亡

612: 2008/06/01(日) 04:26:47.53 ID:9yTnPov30
伝説と言えば、勇次郎はいくつもの伝説を屠ってきた。
実践柔術の第一人者、「本部以蔵」
虎殺し、「愚地独歩」
中国拳法界の長老、「郭海皇」
勇次郎の前では伝説は伝説ではない。
伝説も非力な雑魚も、どちらもただの餌なのだ。

伝説の鳥「ファイヤー」。
フリーザー、サンダーと肩を並べる存在である。
そのファイヤーが勇次郎の姿を捉えた。
激しい炎を纏い、突進するファイヤー。
「ダッッ!!!」
放たれた回し蹴りは、伝説の首をへし折った。
伝説に二度殺されかけ、勇次郎の成長はとどまるところを知らない。
今の勇次郎にカメックスやカイリュー、フーディンが襲い掛かったとしても
一瞬で屠り去られるだろう。それほどの急成長ぶりだった。

ファイヤー 死亡

616: 2008/06/01(日) 04:27:26.77
ファイヤー早すぎだろ

617: 2008/06/01(日) 04:27:37.73
ファイヤーさんおつかれさまでーす

650: 2008/06/01(日) 04:34:19.24 ID:9yTnPov30
460kg。アンドレアス・リーガンの体重のおよそ二倍。
勇次郎の前に立ったのは巨体「カビゴン」である。
鈍重だが力は強く、何より重い。
とはいえ今の勇次郎の相手にはならないだろう。そう思われた。
しかし勇次郎はあえてカビゴンを一瞬で屠ることはしなかった。
クイクイッ、と人差し指を動かす勇次郎。来い、というのだ。
「…力比べだ」
勇次郎はカビゴンの体重を支えるつもりなのだ。
ゆっくりとのしかかるカビゴン。
「ヌウンッ!!!!」
勇次郎はその体重を支えきった。そして…
「ジャッ!!!!!」
投げた。半トン近いカビゴンは、思い切り放り投げられた。
高さ十数メートルから地面に叩きつけられるカビゴン。即死だった。
単にパワーだけをとってみても、これほどのものなのである。
カビゴンの下敷きとなり、ピカチュウとライチュウは仲良く昇天した。

カビゴン、ピカチュウ、ライチュウ 死亡

687: 2008/06/01(日) 04:39:51.42 ID:9yTnPov30
アメリカの衛星で確認されている怪物は、残り三体。
そのうち一体は取るに足らなさそうな弱小怪物のようだが、
他の二体は恐ろしい殺気を放っていた。「ミュウツー」と「ミュウ」である。
勇次郎の前に、ミュウツーが姿を現した。
「…今までの中で一番の上玉だな。喰うぜ」
勢いよく突進する勇次郎。だが、ミュウツーはそれをかわすと
勇次郎の腹に拳をめり込ませた。
「グウッッ!!」
勇次郎の体が宙に浮いた。
「でいッッ!!!!」
鬼の手刀がミュウツーを襲う。が、ミュウツーはそれを両手で防ぐ。
ミュウツーは遺伝子操作によって作られた怪物だった。
いわば戦闘に特化した存在である。
だがそれは勇次郎も同じ。
戦闘に特化したもの同士のシンパシー。
二匹の怪物は全力で殴り合いを始めた。

707: 2008/06/01(日) 04:45:15.01 ID:9yTnPov30
「…恐ろしい怪物を生み出してしまった、そう思いました」
ミュウツーの生みの親は語る。
「40枚…でしたかね。瓦を重ねて実験をしたんです。
 ええ。何枚割れるか、ですよ。単純なパワーのデータを取りたかった。
 だがあの怪物は宙に浮いたかと思うと、瓦に手のひらを当て
 そのまま全ての瓦を押し割ったんです。
 ハハ、信じられないでしょう。事実です。そのときの映像も残っていますよ。
 あの存在と張り合えるものなど、いるはずがありません。
 その日のうちに研究所をたたみ、離れた町でポケモンの世話をして暮らすことに決めました…」

殴り合いは勇次郎のほうに分があった。
だがミュウツーは距離を取り、念力の弾丸を飛ばす攻撃も可能だった。
そのぶん戦術の幅はミュウツーのほうが広く、総合的には互角といったところだった。
勇次郎の体力を消耗したのを確認し、一気に至近距離での殴りあいに持っていこうとするミュウツー。
最初は有利に運んでいた勇次郎も、徐々に押され始めているように見えた。
「仕方ねェ。久々に…技を使うぜ」

721: 2008/06/01(日) 04:51:42.00 ID:9yTnPov30
殴り合いが続き、ミュウツーの渾身のブローが勇次郎の腹に入った。
が、フワリと浮き上がり着地した勇次郎は無傷だった。
もう一撃、今度は顔面に渾身のストレートが入った。
さらに追い討ちをかけるかのように念力の弾丸が数発、勇次郎の体を捕らえた。
…が、やはり勇次郎にダメージはなかった。
「消力…」
郭海皇との戦いで体得した消力。
脱力の極みで相手のダメージを全て受け流す技だ。
女子供の護身技と馬鹿にし、封印していた消力だったが
この戦いにおいては使わざるを得なかった。相手は未知の強敵なのだ。
「だが、こんなものは不純物だ。俺の流儀じゃねェ」
言うと同時に今度は勇次郎の一撃がミュウツーの顔面に入った。
ミュウツーの顔面はへこみ、首の骨もずれた。それでもミュウツーは立ち上がった。
勇次郎はあの構えを取る。両腕をあげた、鬼が泣く構えである。
次の瞬間、戦闘に特化した存在であるミュウツーは、その血塗られた生涯を終えることとなった。

ミュウツー 死亡

743: 2008/06/01(日) 04:57:17.12 ID:9yTnPov30
ミュウは敗北を悟っていた。
実力で言えばミュウツーは自分より上。
それもそのはずである。ミュウツーはミュウの遺伝子をベースに戦闘特化型として生み出されているからだ。
だが、ミュウはあえて勇次郎の前に現れた。
「…貴様、俺との勝負に立つつもりがねェな。消え失せいッ!!!」
怒鳴る勇次郎。だがミュウはその場を動かない。
勝てぬとわかっていても引くわけにはいかない。
やはりミュウにも強者の血が流れていた。

発せられる光線、炎、電撃、音波。
そのどれもがこれまで戦ってきた強敵たちと同等、あるいはそれ以上だった。
しかし今の勇次郎はそれらを克服してきた存在である。
己の全ての技が通用せず、抵抗をやめおとなしくなるミュウ。頭を叩き割られ、ミュウは絶命した。

ミュウ 死亡

773: 2008/06/01(日) 05:02:15.87 ID:9yTnPov30
アメリカの首脳陣は歓喜していた。
いずれ自分たちの脅威となるかもしれない化け物どもも、いまやほぼ壊滅。
最大の脅威となりそうだったミュウツー、ミュウも鬼に屠り去られた。
残るは弱小怪物「メタモン」のみである。

最後の怪物メタモンが、のそのそと勇次郎の前に現れた。
対峙する勇次郎とメタモン。と、その時、メタモンは姿を変え始めた。
もぞもぞと動きながらその姿を変えていくメタモン。
目の前の光景にはさすがの勇次郎も驚いた。
勇次郎がもう一人。
メタモンは勇次郎に「変身」したのだ。

二人が向き合う。これが最後の戦いである。
「ケッ、最後は自分かよ」
二人は同じポーズを取る。背に鬼を背負う、あの構えである。
『でりゃァァッッッ!!!』
二匹の鬼がぶつかり合った。

786: 2008/06/01(日) 05:06:05.42 ID:9yTnPov30
勇次郎が勇次郎に正拳を入れる。
勇次郎はそれを堪え、勇次郎に前蹴りを食らわす。
すさまじい試合、いや勝負だった。
メタモンは勇次郎のメンタル面までコピーしている。
その実戦性、闘争心までもが勇次郎なのだ。
「しィッ!!!」
勇次郎の背中の鬼が泣く。
もう一匹の鬼もまた泣く。
お互いの顔面に拳が入る。
「グウッ!!!!」
吹っ飛ぶ二人。
永遠に続くかと思われた戦いだが、ついにこの勝負の決着が見えつつあった。
オリジナルの勇次郎のほうは、連戦後でダメージを負っている。
次第にメタモン勇次郎が押し始めた。

801: 2008/06/01(日) 05:10:47.88 ID:9yTnPov30
勇次郎の蹴りがメタモンの蹴りの速度に追いつかなくなりはじめた。
一方的にダメージを受ける勇次郎。
「デリャアッッ!!」
「シッッ!!!」
勇次郎の正拳を左手で捕らえ、右手で腹に一撃を食らわすメタモン。
「グッッ!」
オリジナルの勇次郎の劣勢は明らかだった。
カイリューと戦い、フーディンと戦い…
氷漬けにされ、電撃で気を失い…
最強の遺伝子怪物と命を削った死闘を演じた。
この連戦によるダメージは大きかった。
ここまでの戦いは勇次郎を成長させたが、同時に勇次郎を蝕んだ。
御殿手、合気、消力…
使おうと思えば技を使うこともできた。
だがこの戦いでは、双方技を使おうとすることはなかった。

812: 2008/06/01(日) 05:14:16.51 ID:9yTnPov30
傍目にも一方的に勇次郎が押され始めたかと思われたころ…
小さな変化があった。勇次郎が劣勢を盛り返したのだ。
メタモンの手刀を捌き、前蹴りでメタモンを吹っ飛ばした勇次郎。
ここまでのダメージがあるにもかかわらず、その動きはメタモンを上回った。
「クゥッ!!」
構えを取り直すメタモン。向かってくる勇次郎にかかと落としを放った。
だが勇次郎はそれを両手で受け、そのままとび蹴りを放った。
またもメタモンは吹っ飛んだ。形勢が逆転しはじめたのだ。
「オオオォッ!!!」
メタモンの放つ正拳が勇次郎の顔面に食い込む。だが勇次郎は倒れない。
「オオオォッ!!!」
勇次郎が放つ正拳がメタモンの顔面に食い込む。メタモンは吹っ飛ぶ。
明らかに両者に差がつき始めていた。

831: 2008/06/01(日) 05:17:28.24 ID:9yTnPov30
メタモンがコピーしたのは、この死闘が始まる前の勇次郎だった。
今戦っている勇次郎はまさに、「戦いの途中で進化して」いたのだ。
メタモンは戦いの途中、相手に合わせて成長することができない。
相手のレベルが上がっても、それに合わせて自分も…ということはない。
成長速度だけはメタモンのままなのだ。
「ジャッ!!!!!」
オリジナルの勇次郎の手刀、投げ、蹴り…そして正拳。
もはやメタモンにそれらを防ぐ術はなかった。
二匹の鬼が泣く。だが真の鬼は、偽者を屠り去った。
鬼が泣く構えから繰り出した渾身の一撃は、メタモンの腹に食い込んだ。
その一撃でメタモンは元の姿に戻り、動かなくなった。

メタモン 死亡

842: 2008/06/01(日) 05:19:16.38
勝負ありッ!!!

860: 2008/06/01(日) 05:23:55.83 ID:9yTnPov30
メタモンとの戦いで一時劣勢だった勇次郎を見て
絶望を感じていたアメリカは、再び歓喜した。
「こりゃあまた、とんでもない化け物と同じ時に生まれてきたもんですな」
渋川が地上に降りてきて、苦笑しながら独歩に語りかける。
「まったくです」

ポケモンたちの遺体はカントー地方に送り返された。
カントー地方では全てのポケモンが治療を受け、息を吹き返していた。
そこには関東地方を破壊した凶暴なポケモンたちはいなかった。

メタモン戦決着の数分後、ヘリが下りてきた。
「ユージロー、肩を貸そう」
仰向けになっている勇次郎に手を差し伸べるストライダム。
「それともアライ・猪狩状態じゃないだろうね。ハハ…」
ジョークを言いながら勇次郎を起こそうとするストライダム。
だがその手は振り払われ、ゆっくりと鬼が起き上がった。
「ヘッ、久々に堪能したぜ。ストライダム」
満足げに笑みを浮かべたオーガは、歩いて東京を後にした。
その後姿には、鬼が笑っていた。


864: 2008/06/01(日) 05:24:30.57
乙!!!

863: 2008/06/01(日) 05:24:10.58
アーボックって出た?

876: 2008/06/01(日) 05:25:47.34 ID:9yTnPov30
みなさん乙でした。おやすみ!

877: 2008/06/01(日) 05:25:55.09
おつ(´・ω・`)

878: 2008/06/01(日) 05:25:57.44
アーボックが一番空気なポケモンってことが決定したな

879: 2008/06/01(日) 05:26:06.43
アーボック・・・出てないな

880: 2008/06/01(日) 05:26:10.88
レス抽出】
対象スレ: 範馬勇次郎がポケモン151匹を狩りに行くようです
キーワード: アーボック

863 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/06/01(日) 05:24:10.58 ID:XI+daGP8O


アーボックって出た?

867 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/06/01(日) 05:24:54.89 ID:vrlNMBlSO


な、なあ気のせいだったらすまんが…アーボック残ってないか?


抽出レス数:2

886: 2008/06/01(日) 05:26:17.44
生き残れたのに涙目なアーボック

901: 2008/06/01(日) 05:27:24.24
アーボック「・・・・・・危なかったー」

引用元: 範馬勇次郎がポケモン151匹を狩りに行くようです