1: 2014/01/06(月) 22:27:49.24 ID:blOWH/850
『急がば回れ』



烈海王は奔(はし)っていた。

ダダダッ!

烈(不覚……ッッ)

烈(私としたことが、神心会での稽古開始時刻を誤って記憶していたとは……!)

烈(稽古に遅れる拳法家など、言語道断!)

烈(間に合うか……ッッ!?)

ダダダダダッ!

3: 2014/01/06(月) 22:32:17.80 ID:blOWH/850
ザッ……!

烈「む……」

烈(ここは、いつぞやの川──)

烈(死刑囚ドイルを背負い、渡った川だ)

烈(今のこの足で、走って渡り切れるものか……?)

烈(できるかもしれぬが、絶対とはいえぬ)

烈(泳いでいけば容易いが、濡れた身体で道場に足を踏み入れるのは非礼に当たる)

烈(しかし、遠回りして橋を渡ったなら、稽古開始に間に合わぬのは確実……ッッ)

烈(どうする……!?)

4: 2014/01/06(月) 22:36:12.76 ID:blOWH/850
烈「!」ハッ



少年「いけッ!」ビュッ

ピッ ピッ ボチャン……

少年「あァ~……沈んじゃった」

父「もっと勢いよく投げて、回転をつけなきゃダメだな」

川に石を投げて遊ぶ父子。



烈(これだッ!)

5: 2014/01/06(月) 22:38:40.55
まさか回れって…

6: 2014/01/06(月) 22:38:58.68
それじゃない!

7: 2014/01/06(月) 22:40:16.73 ID:blOWH/850
烈(蹴りの遠心力で体重を殺し、濡れた和紙の上を渡り切るという演武……)

烈(克巳さんも最大トーナメントで披露していたが)

烈(あの演武における技術と足踏みを組み合わせれば──)

烈(今の私の足でも、この川を渡り切ることは十分に可能だッッッ!)

烈(──いざッッッ!)

チャプ……

8: 2014/01/06(月) 22:45:27.70 ID:blOWH/850
高速回転しながら、水面を猛烈な勢いで足踏みする烈。

ザババババババババババッ!

烈(うむ……)ギュルルルッ

ザババババババババババッ!

烈(イケるッッッ!)ギュルルルッ

ザババババババババババッ!

烈(この方法ならば、おそらく30メートルまでなら問題ないッッッ!)ギュルルルッ

ザババババババババババッ!



少年「お父さん……人が回りながら川を渡ってるよ……」

父「ああ……渡ってるな……」

12: 2014/01/06(月) 22:49:24.87 ID:blOWH/850
ダンッ!

烈(渡り切った……ッッ)ハァハァ…

烈「すまぬッ! お騒がせしたッ!」

少年「イ、イエ……」

父「こちらこそ……」

烈(いざ神心会へッッッ!)ダッ





『急がば回れ』

急いでいる時は、肉体を高速回転させれば、目的地に早く着くことができるということ。

13: 2014/01/06(月) 22:55:09.12 ID:blOWH/850
『犬も歩けば棒に当たる』



町中を歩く烈海王。

烈(……ほう)



女「コラ、ちゃんと道のはしっこを歩きなさい!」スタスタ…

犬「ワン、ワン」トコトコ…



烈(犬の散歩か……いいものだな)

14: 2014/01/06(月) 22:58:27.38 ID:blOWH/850
犬「ワンッ!」バッ

女「あっ!」

犬「ワン、ワン!」ダッ

女「ま、待ちなさいッ!」

飼い主の女性がヒモを放したスキに、犬が走りだしてしまった。



烈「む……」

烈が犬が走っていく方向に目をやると──

16: 2014/01/06(月) 23:02:37.54 ID:blOWH/850
ブロロロロ……



烈(自動車ッ!)

烈(このままあの子犬が一直線に走り続ければ──)

烈(子犬が自動車と激突する可能性大ッッッ!)

烈(やむをえんッッッ!)サッ

シュルッ……

カカカッ!

ズボンから、かつてドイルに使用した多節棍を取り出し、組み立てる烈。

17: 2014/01/06(月) 23:07:18.79 ID:blOWH/850
烈「破ッ!」

ブオンッ!

グサッ!

烈が投げた棍は、犬の目の前に突き刺さり──

犬「キャンッ」コツンッ

進路を妨害することで、犬の走行を止めることに成功した。



ブロロロロ……!

そのすぐ前方を、自動車が走り去っていったことはいうまでもない。

18: 2014/01/06(月) 23:11:35.22 ID:blOWH/850
女「あの……ありがとうございました!」

烈「礼には及びません」

烈「しかし、犬の散歩をする時はくれぐれもご注意を……」

女「は、はいッ!」

犬「クゥ~ン……」パタパタ…

女「もォ~……勝手に走りだしちゃダメでしょ!」

烈「では、私はこれで……」ザッ…





『犬も歩けば棒に当たる』

犬が危機に陥った時は、どこからともなく棒が飛んできて助けてくれるということ。

22: 2014/01/06(月) 23:17:22.11 ID:blOWH/850
『逃がした魚は大きい』



フェリーで海を観光する烈海王。

烈(ふむ……)

烈(たまにはじっくり海を眺めるというのもいいものだ)

烈(海は、全ての生命の源ともいわれる……)

烈(こうして海を眺めていると──)

烈(地球誕生から現代までの悠久の流れを、この五体にて感じ取ることができる)

キャァァァ…… ワァァァ……

烈(何事か?)

24: 2014/01/06(月) 23:21:35.00 ID:blOWH/850
烈「どうされましたか」

観光客A「あんなところにでっかい鮫が……!」

観光客B「こんな小さなフェリーじゃ、もし襲いかかられたら……!」

烈「…………」



ザザザッ……



烈(あれは……ホホジロザメ)

烈(ヒレから察するに……サイズは5メートルから6メートル、といったところか……)

烈(危険だな……)

27: 2014/01/06(月) 23:26:10.06 ID:blOWH/850
烈「皆さん、ご安心を」

観光客A「え?」

観光客B「いったいなにを……」

烈はフェリーから足を出すと──

烈「噴ッ!」ブンッ



バッシャァンッ!



震脚の要領で水面を力強く踏みつけた。

すると──

30: 2014/01/06(月) 23:30:47.64 ID:blOWH/850
サメ「!」ピクッ

ザザザッ……



観光客A「オオッ!」

観光客B「逃げていく!」



烈が起こした衝撃の大きさに驚いたのか、

あるいは衝撃を起こした本人の戦力に驚愕(おどろ)いたのか──

巨大ホホジロザメは海の彼方に逃げ去ってしまった。



烈「もはや、あのサメがこの海域に近づくことはないでしょう……」





『逃がした魚は大きい』

中国武術を極めれば、巨大な魚を寄せつけずに撃退できるということ。

32: 2014/01/06(月) 23:36:33.99 ID:blOWH/850
『帯に短したすきに長し』



神心会本部道場にて、道着に着替えようとする烈海王。

烈「…………」ギュ…

ブチッ……

烈「む……」

克巳「あらら……帯が切れちゃいましたね」

克巳「その長さじゃ、帯にもたすきにも使用(つか)えないでしょう」

克巳「ちぎれた帯はウチで処分しますから──」

烈「イヤ……」

烈「今日は少々予定を変更しましょう」

克巳「え……?」

33: 2014/01/06(月) 23:40:48.30 ID:blOWH/850
稽古開始──

烈「ハイィィィッ!」

ビュババババッ!

ビュバッ!

バババババッ!

鮮やかな帯(?)さばきで、周囲に置かれたガラス瓶を切り裂いていく烈。

烈「破ァッ!」

バシュッ!

最後のガラス瓶の頭も、ふっ飛んでしまった。

オォ~……!

克巳「スゲ……」

34: 2014/01/06(月) 23:45:39.95 ID:blOWH/850
克巳「おみごとです、烈さん」パチパチ…

克巳「まさか、ちぎれた帯がここまで鋭利な武器になるなんて……」

克巳「中国武術の真髄、堪能させてもらいました」

烈「ふむ、ちょうどいい機会だ」

烈「今日は予定を変更して、帯の武器化について講義いたしましょう」

克巳「よろしくお願いしますッ!」ザッ





『帯に短したすきに長し』

帯として巻くには短く、たすきにするには長い布は、鞭として活用できるということ。

36: 2014/01/06(月) 23:51:38.97 ID:blOWH/850
『仏の顔も三度』



ある寺院にて──

先輩「いいか? 絶対キズつけるなよ」

先輩「もしキズつけちまったら、とても弁償なんかできねえからな」

業者「ワカってますってェ~」

業者「俺だって初めてじゃないんスから……」

ガラガラガラ……

高価な仏像を、台車で注意深く運ぶ業者。

37: 2014/01/06(月) 23:55:13.32 ID:blOWH/850
しかし──

猫「ニャァ~ン」ダッ

業者「ウワァッ!?」ビクッ

グラッ…… ゴトン……

業者「し、しまった……ッッ!」

業者(早く起き上がらせないと……)ゴトッ

業者「!!!」

業者(仏像の顔が……ヘコンでる……ッッ)

39: 2014/01/06(月) 23:59:22.11 ID:blOWH/850
業者(ああ……もう終わりだ……!)

業者(どうすれば……ッッ)ガクッ

ザッ……

烈「オヤ……?」

業者「!」ギクッ

烈「どうかなされたか」

業者「イヤ……あの……!」

業者(寺の人!? いや、ちがう……カンフー映画!? 中国人!?)

たまたま寺を参拝していた烈海王であった。

40: 2014/01/07(火) 00:07:21.46 ID:blOWH/850
烈「ふむ……運び入れるハズの仏像を誤ってヘコませてしまった、といったところか」

烈「ここで出会ったのも、なにかの縁」

烈「私にお任せを」

業者「え……ッッ」

業者(お任せを……って、このカンフー兄ちゃん、いったいどうする気だ……?)

業者(まさか、ヘコんだのなら、いっそ壊しちまおうとかいうんじゃ……)

烈「噴ッ!」シュッ

ゴッ!

業者(マジで!?)

41: 2014/01/07(火) 00:10:22.56 ID:uKYOkO8V0
業者「チョ、チョットアンタ……仏像に拳なんか……ッッ!」

烈「破ッ!」ドリュッ

ガンッ!

業者「や、やめッ──」

烈「斗ォッ!」ボッ

ドンッ!

業者「ア~~~~~~~~~~~~~~ッッッ!」

業者「……ン?」

42: 2014/01/07(火) 00:14:22.17 ID:uKYOkO8V0
業者「な……直ってる……ッッ! 仏像のへこみが……キレイサッパリ……」

烈「私はこれにて……」ザッ…

業者「ありがとうございますッッッ!」



仏像『やれやれ……』

仏像『こんな荒療治を受けるとは、思わなかったぞ』

仏像『まァ……男前が戻ったということで、今回は許しておいてやろう』





『仏の顔も三度』

たとえ仏の顔がへこんでしまっても、三度殴れば元通りになるということ。

43: 2014/01/07(火) 00:20:38.66 ID:uKYOkO8V0
『鬼に金棒』



夜、繁華街にて──

刃牙「でさァ~……」

梢江「へぇ~……」



不良A「アイツがバキか……」

不良B「あんなガキを、花山の大将や柴さんが認めてるだと? 信じられねェ……」

不良A「ま、ウワサが真実にしろフカシにしろだ」

不良A「アレをやりゃあ、俺たちの名が上がるってのは間違いねェ」

不良A「今は女ツレてるし……後ろからバットでやりゃイッパツよ」ズイッ

44: 2014/01/07(火) 00:24:42.85 ID:uKYOkO8V0
烈「やめておきなさい」

不良A&B「オワッ!!?」ビクッ

不良A「なんだァ……てめぇ……?」

不良B「中国人……?」

不良A「やめておきなさい……ってもしかしてアンタ、バキ君を守ろうっての?」

烈「逆だ」

烈「君たちを守りにきた」

不良A「フゥ~~~~~ン」ピクピクッ

不良B「じゃ……守ってもらおうじゃないの……」

不良A「オラァッ!」ブオンッ

不良B「シャアッ!」ブウンッ

45: 2014/01/07(火) 00:29:50.51 ID:uKYOkO8V0
カカッ!

不良A&B「…………ッッ」

不良A(金属バットが……折れたんじゃない。切断(きれ)た……)

不良B(人間じゃねえ……!)

不良A&B「ヒエエ~~~~~ッ!」タタタッ

烈(たかが金属バットで、あの鬼の血をひく範馬刃牙に挑もうなどと──)

烈(勇気というよりは無謀……否、無謀というよりは無知、か)





『鬼に金棒』

素人が金棒を持ったところで、鬼には到底かなわないということ。

47: 2014/01/07(火) 00:35:09.04 ID:uKYOkO8V0
『二階から目薬』



あるマンションの下を通りがかった烈。

ビュオォォォォォ……!

烈(む……突風か。目に少しゴミが……)ゴシゴシ…

すると──

「ねえねえ、おじちゃーん」

烈「!」

50: 2014/01/07(火) 00:38:23.24 ID:uKYOkO8V0
烈が上を向くと、二階のベランダに母子がいた。

幼児「ボクが目薬さしてあげる~!」キャッキャッ

烈「…………」

母「コラッ、変なこといわないの!」

母「すみません、子供のいうことなんで気にしないで──」

烈「かまいません」

母「え……ッッ」

烈(無垢なる少年の好意──拳法家として無下にはできぬ)

烈「そこから目薬を落としていただいて、一向にかまいませんッッッ!」

母「~~~~~~~~~~ッッッ!」

52: 2014/01/07(火) 00:43:24.12 ID:uKYOkO8V0
幼児「じゃあ、いくよ~!」

ピチョンッ……

幼児の握る容器から落とされた薬液の滴(しずく)──

常人ならば視認することすら困難であろうが、

常日頃から鍛錬を欠かしていない烈海王の動体視力には、

まるでスローモーションのように感じられた。

しかし──

ビュアッ!

烈(再び突風ッ!)

滴は風にあおられ、5メートルは横に吹き飛んでしまった。

烈(間に合うッ! 間に合わせてみせるッ!)ダッ

53: 2014/01/07(火) 00:47:28.75 ID:uKYOkO8V0
ズザザッ!

まるで野球のスライディングのように、仰向けに地面に滑り込んだ烈海王。

烈の右目は、少年が落とした滴を見事にキャッチした。

ムクッ……

烈「謝々(アリガトウ)……」ペコッ…



幼児「カ、カッコイイ……」

母「……でも、マネしちゃダメよ」





『二階から目薬』

拳法家にとっては、二階から落ちてくる目薬を目で拾うことも容易いということ。

57: 2014/01/07(火) 00:53:30.20 ID:uKYOkO8V0
『情けは人の為ならず』



町を歩く烈海王。

ブロロロロ……!

ガタンッ! ドザザザザッ……!

烈「!」

トラックに積んであった土嚢が、道路に崩れ落ちてしまった。

キキィッ……

運転手「アッチャ~……他の車が来る前に、積み直さないと!」ダダダッ

60: 2014/01/07(火) 00:56:36.87 ID:uKYOkO8V0
烈「手伝いましょう」

運転手「ありがとう! 助かるよ!」

烈「…………」ヒョイッ

運転手(すげェ……指の力だけで土嚢をつまみ上げてる……)

運転手(一袋20キロはあるってのによ……)

烈のおかげで、あっという間に土嚢は積み終わった。

運転手「本当に助かったよ!」

烈「礼には及びません」

61: 2014/01/07(火) 01:00:34.37 ID:uKYOkO8V0
運転手「しかし、それじゃ俺の気が──」

烈「かまいません」

烈「失敬」ザッ…

運転手(いったい何者なんだ……プロの格闘家かなんか?)



烈(フム……よき鍛錬ができた)

他人のピンチを、ピンチ力(物をつまむ力)の鍛錬に生かす烈であった。





『情けは人の為ならず』

他者に情けをかけることは、己の武を高めることに繋がるということ。

62: 2014/01/07(火) 01:06:48.48 ID:uKYOkO8V0
『年寄りの冷や水』



中国武術師範、烈海王氏はこのように語っている。

烈「周辺の環境を武器と成す──」

烈「行住坐臥全て戦いといえる武術家にとっては、必須の技術といえるでしょう」

烈「この分野の第一人者といえば」

烈「環境利用闘法の師範、ガイア氏などが挙げられるでしょうが……」

烈「我、中国武術界の長老、郭海皇もまた環境の武器化には秀でております」

烈「私も先日、老師に教えを受けましたが、それはもう……」

………

……


64: 2014/01/07(火) 01:11:50.85 ID:uKYOkO8V0
郭「烈よ」

郭「このように、柔らかく頼りない“水”ではあるが」チャプ…

郭「使いようによっては、とてつもない武器になる」

烈「はっ……」

郭「例えば──」

郭「こうッッッ!」シュッ

パァァァンッ!

消力(シャオリー)の要領で、手首にスナップをきかせ、壁に水を投げつける郭海皇。

烈「…………ッッ(石の壁にヒビがッ!)」

65: 2014/01/07(火) 01:15:38.60 ID:uKYOkO8V0
郭「さらに──」

郭「目に当てれば目潰し、気管に叩き込めば呼吸困難に陥らせることもできる」

郭「涙穴に鋭打すれば、地上で“溺れさせる”ことも可能じゃ」

烈「ナルホド……」

郭「しかも水といっても、なにも“水”でなくともよい」

烈「……といいますと?」

郭「よ~するに、液体ならなんでもよい」

郭「汗でも、涙でも、唾液でも、胃液でも、血液でも、尿でも……」

郭「日頃我々が何気なく垂れ流してるモノは、実は大きな武器というわけじゃ」

烈(ナ、ル、ホ、ドォ~……)

67: 2014/01/07(火) 01:20:26.77 ID:uKYOkO8V0


……

………

烈「教えを乞いつつ、私は改めて郭老師の恐ろしさを思い知りました」

烈「あの方ならば……郭海皇ならば、使うでしょう」

烈「勝利に必要とあらば、迷わず使用(つか)うでしょう」

烈「必要とあらば──水でも体液でも、なんでもッ!」

烈「それが武というものなのですから……」





『年寄りの冷や水』

水を得た老人は非常に危険だということ。

68: 2014/01/07(火) 01:26:11.38 ID:uKYOkO8V0
『火のないところに煙は立たぬ』



神心会本部──

克巳「──以上ッ!」

克巳「本日の稽古はここまでッッッ!」

門下生A「オスッ!」

門下生B「館長、勉強させていただきましたッ!」

門下生C「ありがとうございましたァ!」

70: 2014/01/07(火) 01:30:13.78 ID:uKYOkO8V0
克巳(ふぅ……今日のところはこんなもんかな)

克巳(あとは自主練でも──)

克巳「!?」

ある部屋の扉から、白い煙のようなものが漏れ出していた。

克巳(なんだいありゃ……)

克巳(まさか──火事ッ!?)

ガラァッ!

勢いよく扉を開ける克巳。

すると──

74: 2014/01/07(火) 01:35:20.22 ID:uKYOkO8V0
克巳「…………」

克巳「烈……さん……?」

烈「む」

モワァ~……

克巳(今の煙の正体は──)

克巳(烈さんの体から流れる汗が気化してできた、湯気だったのか……ッッ)

克巳「站椿(たんとう)ですよね……。いったい何時間そうして……」

烈「数えていない」

克巳「ハハ……さすが!」

75: 2014/01/07(火) 01:40:33.30 ID:uKYOkO8V0
克巳「どうです……?」

克巳「こっちも門下相手の稽古が終わったところなんです」

克巳「組み手でもしませんか?」

烈「私はかまわん」

克巳(俺は腕、烈さんは足を失ったが──)

克巳(烈海王の炎のような闘気は未だ健在、だな)

克巳(俺も見習わなきゃなァ……)





『火のないところに煙は立たぬ』

煙を立たせることができる武術家は、もはや炎であるということ。

76: 2014/01/07(火) 01:41:04.91 ID:uKYOkO8V0
以上で終わりです
ありがとうございましたッ!

81: 2014/01/07(火) 02:00:08.73
面白かったッッッッッッ!!!! >>1乙ッッッッッッ!!!

引用元: 烈海王「この私が、ことわざの真の意味をお教えしようッッッ!」