1:2020/02/26(水) 21:00:05
父「みんなに話がある」

母「改まってどうしたの?」

父「実は……父さんな、ラノベ作家を目指すことにしたんだ」

息子「え……!?」

娘「ラノベって……ライトノベル?」

父「ああ、ライトノベルだ」

三人「……」
9:2020/02/26(水) 21:05:29
息子「なんでいきなり……?」

父「母さんもお前たちも、あまりよく知らんが今やそれぞれの道を歩んでいる」

父「だから父さんもここらで、自分の道というものを歩みたくなってな」

娘「だからって、なんでライトノベルなの?」

父「俺は若い頃小説家を目指していたんだが、結局会社員になった」

父「で、今はラノベってのが流行ってるんだろう?」

父「きっと傑作を生み出してみせるさ! ハッハッハ!」

三人「……」
12:2020/02/26(水) 21:08:34.830 ID:qRa7SysJ0.net
息子「いやー、ビックリしたな」

娘「ホント、まさかあの堅物のお父さんがライトノベルだなんて……」

母「どうする?」

三人「……」

息子「父さんは今まで、家族のために自分を押し頃して頑張ってきた。やらせてやろうよ」

娘「そうだね!」

母「じゃあ、家族でお父さんを全力で支援しましょう!」
14:2020/02/26(水) 21:11:17
父「よう」

母「わっ、どうしたのよ、その格好!」

父「和服を買ってきた」

母「どうして……?」

父「文豪といえば、和服だからな」

母「ラノベ作家って、和服着るかしら……」
15:2020/02/26(水) 21:15:03
父「それと原稿用紙も買ってきた」ドサッ

息子「原稿用紙!?」

娘「今時、小説ってパソコンとかで書くんじゃないの? お父さんパソコン使えるでしょ?」

父「いや、やっぱりこういうのは手書きじゃないと! 気分が出ない!」

娘「お父さんって、案外形から入るタイプだったんだ……」ヒソヒソ

息子「まあまあ、ここは黙って見守ってやろう」ヒソヒソ
16:2020/02/26(水) 21:18:45
父「うーん……」

父「どんなストーリーにするかな……」

父「そうだ! 悪い奴にさらわれた姫を助けに行くというのはどうだろう?」

母「ええ……」

息子「古い……」

娘「今時あまりなさそうだから、逆に新鮮かもしれないけど……」
20:2020/02/26(水) 21:26:13
娘「ラノベといったら、可愛い女の子だよね。どんな子出すの?」

父「いや、女の子は出さない」

娘「へ?」

父「俺は母さん以外と恋愛したことないし、女の子ってよく分からなくてな」

父「うまく描けそうにないし……姫以外の女キャラは極力出さない! ほとんど男でいく!」

息子「むさくるしいラノベになりそうだ……」
21:2020/02/26(水) 21:27:32
腐向けwww
22:2020/02/26(水) 21:30:13.286 ID:qRa7SysJ0.net
母「主人公と姫は最後どうなるの?」

父「姫は最終的に主人公じゃなく他の国の王子と結婚する」

母「は?」

父「やっぱり主人公とヒロインは必ず結ばれるってのはなにか違うと思うし」

父「主人公の努力が必ず実るものではない、っていう無常さを出したいんだよ」

娘「ことごとく、今のトレンドを外してくるね」

息子「わざとやってるんじゃって気にすらなってくるよ」
23:2020/02/26(水) 21:30:21.059 ID:rx6is1f40.net
これ逆にウケそうだな
25:2020/02/26(水) 21:33:50.552 ID:qRa7SysJ0.net
父「そして、最後は夢オチ!」

三人「な……!?」

父「植物人間だった主人公が見てた夢、というところで完結となる」

息子「えええ……都市伝説かなにか?」

娘「どうしてそんなラストなの?」

父「物語の最後には、どんでん返しが必要だろ?」

母「返せばいいってもんじゃない気がするわ……」
26:2020/02/26(水) 21:37:00.074 ID:qRa7SysJ0.net
カリカリ…

父「よし、できた!」

父「読んでみてくれ!」

息子「うおっ……」

娘「ホントに私たちにいった構想が……」

母「そのまま小説に……」

父「さっそく、ラノベの新人賞に応募だ!」

息子「じゃあ……この出版社にしたら? ちょうど作品を募集してるよ」

父「うん、そうするか!」
28:2020/02/26(水) 21:40:38.964 ID:qRa7SysJ0.net
しばらくして――

父「やったぁ、俺の作品が大賞だ!」

息子「おおっ!」

娘「すごい!」

母「よかったわね!」

父「三人ともありがとう。今夜は豪勢にお祝いしよう! いやー、俺って才能あったんだなー……」
29:2020/02/26(水) 21:43:04
プルルル…

父「はい……はい、ありがとうございます!」

父「聞いてくれ! アニメ化も決まったぞ!」

息子「ホントかい!?」

娘「すごいじゃない!」

母「おめでとう!」

父「ありがとう」
30:2020/02/26(水) 21:44:48
どういうことなの
31:2020/02/26(水) 21:46:51
TV『大賞を受賞した新作ラノベ、大好評発売中!』

父「コマーシャルもやってる!」

母「そりゃそうよ。あんなに面白いんだから」



TV『今大人気のライトノベルの特集を……』

父「おおっ、ニュースでも取り上げられてるぞ!」

母「よかったわね、あなた」
32:2020/02/26(水) 21:48:25
父「いよいよアニメ放映日だ……」



TV『ウオオオオオ! ヒメヲタスケニイクゼー! ザシュッ! ズバッ! ドゴォォォォォン!』

父「……」

父「アニメ、ずいぶん俺の原作と違うな」

父「主人公がいきなり強いし、女の子がいっぱい登場するし……」

娘「まあまあ、原作がアニメ化で改変されちゃうのはよくあることだから……」

父「そんなもんか」
34:2020/02/26(水) 21:51:45
父「どうだ! みんな見たか! 父さんの実力を!」

母「ええ、お父さんには文才があったのよ」

娘「見直しちゃった!」

息子「で、今後はどうする?」

父「うーん……次の作品を、といいたいところだけど」

父「とりあえず、ラノベ作家には満足したよ。しばらく執筆はもういいかなぁ」

三人「……」ホッ
36:2020/02/26(水) 21:53:48
母「よかったわね。ラノベ作家を中断してくれて」

息子「ああ、ホッとしたよ」

娘「これで私たちも一段落ってもんね」

母「お父さんを支援するのも大変だったわねえ」

息子「本当に苦労したよ。ぶっちゃけ今までの仕事で一番キツかったと思う」
37:2020/02/26(水) 21:55:16
息子「それにしても、俺たちがそれぞれみんな業界人だったのは幸運だったな」

息子「俺は大手出版社の社長で……」

娘「私は大手アニメ製作会社の社長……」

母「私は広告会社の社長で、本当によかったわねえ」






おわり
38:2020/02/26(水) 21:56:57
39:2020/02/26(水) 21:59:13.737 ID:HS5ddQeVr.net

父さん家族に愛されてんな
40:2020/02/26(水) 22:15:23
コネって大事ね…
引用元:http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1582718405