6: 2011/03/05(土) 09:26:27.84 ID:rbTcsoroO
オーキド「聞いとくれ、孫が旅にでとってな」


オーキド「今どのへんかのう・・・」


シゲル「じいちゃん・・・」

10: 2011/03/05(土) 10:10:06.48 ID:rbTcsoroO
俺がマサラタウンに帰ってきてもう・・・七年経つだろうか。
チャンピオンになることを断念した俺は、故郷の地で研究者として祖父と過ごすことに決めた。
祖父の功績に匹敵する研究はできていないが、雄大な自然とポケモンとの触れ合い。
俺は充実した毎日を送っていたと思う。

姉が嫁入りし二人で過ごすことになっても、その日々は変わらなかった、・・・しばらくは。

シゲル「じいちゃんこんなとこで何してんだよ?」


オーキド「桜をみてたんじゃよ、立派にさいておってな」

オーキド「ところで・・・」


オーキド博士、ポケモン研究の第一人者。



オーキド「・・・君はこのまちは初めてかな?」


あの快活に笑う老人はもうどこにもいない。

13: 2011/03/05(土) 10:20:29.52 ID:rbTcsoroO
祖父に変化が起きたのは二年程前だった。
最初は些細な、本当に些細な変化。
物忘れが激しくなり、熱心だったフィールドワークを殆どしなくなった。

俺は祖父がここまで息抜きもせず頑張ってきたから疲れがでたのだろうと思い、病院へ促した。

何日か休めばまた元気になるだろう、そう思っていた。




シゲル「痴呆・・・ですか?」

16: 2011/03/05(土) 10:31:42.89 ID:rbTcsoroO
シゲル「う・・・嘘だ!!!あのオーキド博士だぞ!?まさか知らないのかあなたは!!」


医者「落ち着いてください・・・私もあの人の研究はよく知っています、医学の発展にも大いに寄与しています」


医者「しかし・・・、残念なことに病気はどんな人間にも降り掛かる、それを否定することはできません」


シゲル「嘘だ・・・っ」



医者「幸いまだ初期段階です、治すことはできずともくい止めることはできる」


医者「それにはあなたの力が必要なんです、一緒に頑張りましょう」

21: 2011/03/05(土) 10:46:51.11 ID:rbTcsoroO
色々なものに縋った、じこさいせい研究やさいみんじゃつ療法にも手を出した。
祖父だけは違うんだという思いであれこれ試してみたが結果は一緒だった。


「じいちゃん、ご飯にしよっか」


「・・・」



最近祖父は「祖父」でない時間が増してきたように思う。
それとともに自分の疲労も。

25: 2011/03/05(土) 10:56:59.76 ID:rbTcsoroO
シゲル「なぁ、じいちゃん」


オーキド「・・・おぉシゲルか、どうしたんじゃ」


シゲル「ご飯食べたら散歩にいかないか?」


オーキド「シゲルは散歩が好きじゃのう・・・全く誰に似たのやら・・・ふふふ」


俺は祖父がまともな反応を示してくれたことに嬉しくなり、同時に泣きたくなった。


家にいると生気をすわれるような気がする、相当疲れているのかもしれない。

27: 2011/03/05(土) 11:07:51.85 ID:rbTcsoroO
だけど最近よく散歩にいってることを覚えていた、まだ大丈夫だ、じいちゃんはまだ・・・。

何が「まだ」なのかもわからなかったが、少し安堵した。


「じゃあいこっか、じいちゃん」


そんな矢先姉が訪ねてくることになった。
二年ぶりだろうか、祖父の病名を告げてそれきりだ。

じいちゃんは任せて、そういえばそんなことを言った気がする。
俺はじいちゃんの面倒をみれているのだろうか。
誰とは言わず、赤点をつけられている気がした。


オーキド「シゲルや、少しゆっくりいこう・・・」

29: 2011/03/05(土) 11:24:16.70 ID:rbTcsoroO
夜、祖父が床についたあとに俺はそっと本棚の奥からアルバムをとりだした。


小さい頃の祖父に遊んでもらっている写真、ポケモンと戯れている写真、旅立ちの日に撮った夕焼け、ジム、ポケモンリーグ、旅の終着点、そして・・・気恥ずかしくて一枚しかないライバルとの、親友との写真。


どれも笑っていた。
涙が流れた、悔しいからでも、辛いからでもない何かが胸を衝いて。

机の片隅の鏡をとって笑ってみた。
「俺は大丈夫」

あんなに上手かった愛想笑いは、もうできなくなっていた。

32: 2011/03/05(土) 11:48:48.22 ID:rbTcsoroO
姉「シゲル、あなた疲れてない?」


シゲル「大丈夫大丈夫、何にも問題ないって」


姉「あなたやつれたわ・・・タマムシに良いところがあるの」


シゲル「何言ってんのさ、じいちゃんは元気だよ、こないだだって一緒に散歩に・・・」


姉「聞いて、お祖父さんはもうかなり進んでしまってる、介護が辛くないわけないでしょう?」


シゲル「だからぁ・・・」

姉「私の顔もわからないのよ?」
姉「あなたはまだ若いし才能だってあるわ」


姉「あなたの人生を――シゲル「もう、うるせえよ!!!黙ってくれ!!」


姉「・・・ッ!」

35: 2011/03/05(土) 11:59:31.35 ID:rbTcsoroO
シゲル「姉ちゃんはいいよな!?家に帰って旦那の帰りだけ!!待ってればいいんだからさ!!どうせ俺やじいちゃんのことなんか他人事さ!!!」


シゲル「俺がこの二年間どんだけ苦労したか知ってるの!?ああすみませんね!!結局家族の病気を食い止める事もできないダメな弟で!!」


シゲル「でもね!!頑張ったんだよ俺も!!頑張って頑張って・・・それなのに今更施設!?はぁ!?じいちゃんはものじゃないんだよ!!!」


姉「・・・」


シゲル「あ・・・!」

48: 2011/03/05(土) 12:28:12.89 ID:rbTcsoroO
シゲル「ごめん・・・!ごめん、そんなつもりじゃ・・・」


姉「いいの、あなたは疲れているのよ、それに少し無責任すぎた」


姉「あなたは苦しんでたのね・・・本当にごめんなさい」


姉「今日は帰るね、でもゆっくり休んでもう一度考えてみて」


シゲル「うん・・・」

姉「紹介状置いてくから、何かあったら連絡ちょうだい・・・あ、あと・・・」


シゲル「・・・?」


姉「今度ご飯食べに来なさい、うちのカレーを食べると皆笑顔になるのよ、わかった?」

50: 2011/03/05(土) 12:36:14.85 ID:rbTcsoroO

姉の姿が小さくなる。
そのたび自分が小さい人間だと気付かされるようで、腹立たしかった。



ガンッ



「俺にどうしろって・・・どうしろっていうんだ・・・」


蹴りあげた椅子は、何も答えてくれるはずもなく、ただ呟きだけが夜の静けさに消えた。

52: 2011/03/05(土) 12:49:05.09 ID:rbTcsoroO
あれから一週間がたち、俺はあまり入ることのなくなったオーキド研究所にいた。

なんでも祖父のパソコンに使いたい文献があるとかで、かつての研究員の方から電話をいただいた。
俺たちが食いっぱぐれないですむのもこの人が懇意にしてくれているおかげだったので俺は快く応じたわけだったが・・・。


「どこにあるんだ・・・?」


どのファイルにも言われた文献はのっていなかった、隠しフォルダもあらかた探してみたが見当たらない。



「うーん・・・違うとは思うけど・・・」

メールフォルダ。

53: 2011/03/05(土) 12:59:50.25 ID:rbTcsoroO

――新着メールが一件あります。

ふと違和感を感じた。
このパソコンはもう殆どつかってないはずなのに、誰だ?


カチッ



――オーキド博士へ


近々そちらへ帰ります。
なかなか帰る機会に恵まれなかったので
シゲルたちに会うのが今から楽しみです。
では、これで。 サトシ

56: 2011/03/05(土) 13:15:12.61 ID:rbTcsoroO
二度、三度とその文章を眺めてから心臓の拍が早まっていった。
あいつにこんなことを言うのは癪だが、親友とはこんなにも・・・。



サトシの家は、サトシがポケモンリーグ統一チャンピオンになった年に遠いところへ引っ越した。

だがあれから急にサトシがチャンピオンを辞退するまで、噂はマサラタウンにも届いていた。


急に消えたことは少し心配もしたが、今度くるならそのことも詳しくきけるだろうか。

予期せぬ来訪に胸は高鳴った。

59: 2011/03/05(土) 13:23:23.73 ID:rbTcsoroO
シゲル「じいちゃん!!」


シゲル「じいちゃん!聞いて!」

シゲル「サトシが帰ってくるって!!」


「・・・」


シゲル「あいつ今までなにやってたんだか・・・」


「・・・」


シゲル「なぁ、じいちゃん?」


オーキド「・・・」


オーキド「お若いの」



オーキド「すまんが・・・人違いでは?」

62: 2011/03/05(土) 13:38:58.65 ID:rbTcsoroO
「は・・・え?」

「な、なに言ってんだよ、俺だよ、俺、わかるでしょ!?」


「な、なんかいってよ!もうそんな冗談いいからさ!ね?」

「ねぇ!!」

オーキド「サトシと言ったな?懐かしいのう・・・わしの知り合いなんじゃ」


「じい、ちゃん・・・?」


オーキド「聞いとくれ、孫が旅にでとってな」


オーキド「今どのへんかのう・・・」


「じいちゃん・・・」


今までもたびたびこういうことはあったが、それとは何かが根本的に違う。

俺が帰ると祖父は、完全に「祖父」ではなくなっていた。

64: 2011/03/05(土) 13:46:28.47 ID:rbTcsoroO
気付くと朝だった、何があったかよく思い出せない・・・。
もしかしたら、泣いていたのかもしれない。


じいちゃんは暴れたりはしなかった、暇なときは静かに座り、川柳のようなものをつくっていた。


俺はただ窓際に座り、外の景色を眺めることしかできなかった。

66: 2011/03/05(土) 13:52:36.46 ID:rbTcsoroO
初めて死にたいと思った。



窓の外を眺めているが、何も見てはいない、ただ目が開いていて、何かが映っているだけだった。

距離感も色彩も、質感さえもうまくつかめない・・・。


・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・!

ふと誰かが外に立っていることを認識した。

67: 2011/03/05(土) 13:58:50.75 ID:rbTcsoroO

サトシ・・・?


身長が伸びてはいるがあの赤い帽子は見間違えようがない。

サトシも窓際の俺に気づいたのか門を開けるよう合図してきた。


即座に顔を洗い、玄関を飛び出すと、そこには精悍な青年がたっていた。

69: 2011/03/05(土) 14:11:55.59 ID:rbTcsoroO
「よう、シゲルか?」


そこに立っていた青年は記憶の中にあるその人より、一回りも二回りも大きく、垢抜けた表情をしていた。
少し・・・目付きは厳しくなったかな。

どことなく風格のある、立派に成長したかつてのライバルは、俺が固まっているのをみて少し笑いながら口を開いた。



サトシ「研究所にいったらしまってて、こっちに来たんだが・・・どうした、ひどい顔だぞ?」


自分の境遇を皮肉りながら、笑って返した、・・・笑えていたと思う。


「まぁ・・・色々あってな」

71: 2011/03/05(土) 14:21:31.91 ID:rbTcsoroO

サトシ「そうか・・・」


シゲル「まぁ立ち話もなんだから、中に入ってくれ」


サトシ「あいよ」


――――ん・・・?


ふとした違和感。
玄関にあがったサトシを眺めて、不意に感づく。
何かが抜け落ちてる?



「お前、ピカチュウは?」


サトシ「・・・中で話すよ」

74: 2011/03/05(土) 14:34:49.91 ID:rbTcsoroO
サトシを自分の書斎にあげた、途中窓の外を眺めているじいちゃんを見つめて何かを悟ったようだった。


サトシは俺がかつて調べていたじこさいせい研究を読みながら、ことのあらましを聞いた。


サトシが静かに聞いていてくれたのは助かった。
何かの拍子に取り乱してしまうこともなかった。
少し、少しだけ、救われたような気がする。


サトシ「――オーキド博士がな・・・」


シゲル「俺はどうすればいいんだ・・・わからないんだ・・・」

77: 2011/03/05(土) 14:46:37.51 ID:rbTcsoroO
本当に答えを求めていたわけじゃない、でるはずないのだから、それはわかっていた。
ならなぜ訊いたのか?
わからない、もしかしたら「もういいよ」って言ってほしかったのかもしれない。


シゲル「・・・すまん、なんでもな・・・」


サトシ「・・・甘えてるよ」


ガシャン!!
ガラガラ!!


シゲル「!?」
サトシ「!?」


シゲル「じ、じいちゃん!!」


しまった!!何を考えていたんだ!!
あの状態のじいちゃんを一人にしとくなんて!!


祖父のいた部屋から何かが割れる音と何かを崩す音が聞こえた。

可能な限りの悪態を自分につきながら、俺は祖父のいた部屋に飛び込んだ。

80: 2011/03/05(土) 15:04:31.31 ID:rbTcsoroO
音の大きさとは違い、部屋はそこまで乱れた様子はなかった。
祖父が川柳を書くときに使う道具と台が倒れているだけ。


ただ、肝心の本人がいない。


サトシ「どうした!なにかあったのか?」


シゲル「じいちゃんがいない・・・」


シゲル「・・・ッ!じいちゃん・・・!!」

玄関に走りだそうとする俺をサトシが制止した。


サトシ「落ち着け!!まだ遠くにいってないはずだ!!」


サトシ「俺がポケモンと空から探す、お前は道路を探しながらこの事を役場までいって伝えて放送してもらえ!」


シゲル「わ、わかった!」


その後俺たちは必死に周辺を探したが、祖父はどこかに消えてしまった。

84: 2011/03/05(土) 15:30:40.50 ID:rbTcsoroO
その夜、俺の家には沢山の男たちが集まっていた。
オーキド博士に恩があるということで、様々な人たちが集まったのだ。


俺はそのことに涙がでそうになった。


そしてその中心で、サトシが作戦を練っている。
このまちの中で探していないのは森の中だけとなり、山狩りの準備が着々となされていた。


サトシ「ダメだ、この際言ってしまうが未熟なやつが多すぎる」

男「ですがその案では時間がかかりすぎてしまう!!」


サトシ「自分たちまで危険にさらしても意味が無い」


サトシは男たちにまとまって行動するよう述べた。

正直、マサラタウンには一人で夜の森に入れる人間はいない。
今となっては俺でさえも。
研究所に入るときに捕まえたポケモンは全て逃がした、研究所に締め付けるよりもその方がいいと思ったからだ。


サトシ「俺が先にいく、危険な場所は先につぶしておくから」


シゲル「俺もつれてってくれ!」

86: 2011/03/05(土) 15:37:56.75 ID:rbTcsoroO
俺の剣幕にサトシはたじろぎもせず、落ち着いた声でいった。


サトシ「お前、ポケモンは?」


シゲル「今は・・・いない」


サトシ「それでお荷物にならないとでも?」


シゲル「・・・!」


サトシ「・・・30分後に出発だ」

87: 2011/03/05(土) 15:45:23.11 ID:rbTcsoroO

俺は今再び自分の書斎でアルバムを眺めている。
その中でも小さい頃遊んでもらった写真を手にとり、ポケットに忍ばせた。


サトシ「シゲル、いくぞ」


サトシから声がかかる。
じいちゃん・・・本当にどこにいったんだよ、でてきてよ。


泣き言言ってる場合じゃない。
外でまつサトシのもとへ行こう。

88: 2011/03/05(土) 15:53:23.65 ID:rbTcsoroO
夜の森は暗い。
サトシのリザードンの上で懸命に目を凝らすが、人どころかポケモンさえ見つからない。
まるで黒い生きものにすべて飲み込まれてしまっているようだ。


シゲル「なぁ・・・」


サトシ「なんだ」


シゲル「なんで俺をのせてくれたんだ・・・?」


サトシ「・・・」


サトシ「今のお前、甘えてるよ」

90: 2011/03/05(土) 16:03:57.91 ID:rbTcsoroO
「は・・・?」


サトシ「言いたいことがあったからのせたんだ」


サトシ「今のお前はライバルでも何でもない、ただ甘えてるだけだ」


シゲル「な・・・」


サトシ「今のお前は状況に甘えてるだけじゃないのか?言い訳のためだけに頑張っていたんじゃないのか?」


シゲル「てめえ・・・!!」


サトシ「お前は今、前に進むための努力をしているのか?」

92: 2011/03/05(土) 16:23:24.30 ID:rbTcsoroO
シゲル「てめえに何がわかる!!」

俺はサトシを殴ろうと右の拳を振り上げたが、サトシは軽々とそれを止めた。


サトシ「わかりたくもない、失ったものを見ていつまでも絶望しているだけのやつなんかな!」


サトシ「なぁ、誰がいつ限界なんか決めたんだよ?」


サトシ「他人だろ?」


サトシ「・・・チャンピオンっていうのは、色んなやつに狙われる」


サトシ「度をわきまえないやつもいる、ポケモンだって生き物だ、死ぬことだって当然ある」


シゲル「・・・」

96: 2011/03/05(土) 16:54:53.75 ID:rbTcsoroO
シゲル「ピカチュウは・・・」

サトシ「多勢に無勢だった、・・・いや、俺の実力がなかった」


サトシ「悔しかった、でもな、俺が強くならなきゃ、誰がピカチュウの分を背負うんだ?」


サトシ「一歩ずつでも、前に歩かなきゃ進まないんだよ」


シゲル「でも、もう結論は・・・」


サトシ「違う、結論はでてるんじゃない、他人が出してるんだ」


サトシ「・・・お前には才能があるよ、保証する」


サトシ「立ち止まって、誰かが解決するのを待つのはもうやめな」

サトシ「自分の手で、手に入れるんだ」


シゲル「・・・」

98: 2011/03/05(土) 17:15:28.52 ID:rbTcsoroO

―――――――――。


サトシ「とまれ!リザードン!・・・何かあるぞ?」


白い・・・白衣?

シゲル「じいちゃんのだ!」
俺はリザードンが高度を落としきる前に飛び降りた。


サトシ「落ち着けって・・・縄のかわりに使ったのか?」


白衣は木の幹に結わい付けられていて、その下には洞窟があった。・・・・・・!


サトシ「ここが怪しいな・・・ったくこんなとこに何しに・・・っておい!」


サトシ制止された気がしたが気にしない、白衣をつたって俺も洞窟に入る。
じいちゃんはこの先にいる!

99: 2011/03/05(土) 17:20:11.83 ID:rbTcsoroO
ここは・・・写真の・・・!
心許ない記憶の糸を手繰りよせながら、先へ、先へ。


ここを抜けると・・・いたっ!


「じいちゃ・・・!」


「シゲルっ!しーっ・・・」

100: 2011/03/05(土) 17:33:34.43 ID:rbTcsoroO
今立っている場所は、洞窟の天井が抜けた広大な空間。
そこに一本の大木が生えている。

じいちゃんが、オーキド博士が指差すその先にはポケモンが二匹。

「シゲル、こっちじゃ」


促されるままに傍までよる、するとオーキド博士はいつもの調子で解説を始めた。


「シゲル、今から、ピチューが進化する、よく見ておくのじゃ」


指差す先、大木の根元にいたポケモンはピカチュウとピチューだろうか。

105: 2011/03/05(土) 17:45:22.91 ID:rbTcsoroO
この森のピチューは、ここでピカチュウになってから森にでるのじゃ。
そのレベルアップの最後の試練があの木に生えている木の実を落とすことなんじゃ。


なるほど、確かにピチューが木にむかって電気を発しているが・・・あたらない。
それをみて隣のピカチュウが見本をみせている。



・・・あっ。
電気がかすって、木の実がポトリとおちた。


そしてピチューがひとしきり喜んだあと、体が輝きはじめた。

107: 2011/03/05(土) 17:53:11.32 ID:rbTcsoroO
「サトシのピカチュウもここで進化していったんじゃよ、まぁあれは問題児じゃったが、ふふ」


「俺の名前、わかる?」


「当たり前じゃろ、孫の名前ぐらい」


「そっか・・・」


「迷惑かけたみたいじゃのう」


「大丈夫だよ」


「わしも年をとったかな」


「大丈夫、いつかきっと治すから・・・帰ろうか」

111: 2011/03/05(土) 18:08:08.11 ID:rbTcsoroO


―――――。


じいちゃん、俺最近昔の日記帳見つけたんだ。


ほら、医者の勉強始めた時のやつだよ、あの後大変だったなぁ。


あの年で勉強し直すっていうのもなかなか辛い体験だったし。


でも、あの時より少しだけだけど進めたから、別にいいよね。


あ、これ、ここ置いとくね?
じいちゃんとの最後の思い出だからね。

俺、じいちゃんみたいな人いっぱい助けるよ、本当にいっぱい。
だから応援してね。


んじゃ、またきます。



121: 2011/03/05(土) 19:29:09.47
ポケモンSSでこんなに泣いたのは久しぶりだった
乙!

引用元: オーキド「そこに3つのモンスターボールがあったんじゃよ?」