1: 2016/04/07(木) 14:56:54.82 ID:UNdfly9Qo
学校――

男(テストかぁ……かったるいな)

男(勉強なんて全然してないし、きっとひどい点数を取るに違いない)

男(だからこういう時は――もう一つの人格に頼もう!)

男(お~い、俺の代わりにテスト受けてくれ!)

男『任せとけ!』

https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1460008614

2: 2016/04/07(木) 14:57:49.79 ID:UNdfly9Qo
教師「よくやったな! 95点、学年トップだぞ!」

男「あ、ありがとうございます」



「すげぇ~」 「今回のテスト難しかったのに……」 「やるなぁ!」



男(俺のもう一つの人格は優秀だなぁ……ホント助かるよ)

3: 2016/04/07(木) 15:00:15.20 ID:UNdfly9Qo
校庭――

同級生A「次、お前の打席だぞ!」

同級生B「ツーアウト満塁だぞ! 絶対打ってくれよな!」

男「わ、分かってるよ」

男(なんでこんなチャンスに、俺に打席が回ってくるんだよぉ……)

男(お~い、俺の代わりに打席に立ってくれ!)

男『任せとけ!』

5: 2016/04/07(木) 15:03:01.49 ID:UNdfly9Qo
カキィンッ!



同級生A「やったーっ! 抜けたぁーっ!」

同級生B「回れ、回れーっ! 逆転だぁーっ!」



男(どうやらヒットを打ってくれたみたいだ。運動神経も抜群なんだよなぁ……)タッタッタ

6: 2016/04/07(木) 15:05:28.23 ID:UNdfly9Qo
道ばた――

ドンッ!

チンピラ「おいコラ、痛えじゃねえか」

男「あ……どうも、すみません」

チンピラ「すみませんじゃねえだろ? 金出せコラァ!」グイッ

男「ひいっ……!」

男(助けてくれーっ! 俺のもう一つの人格!)

男『任せとけ!』

7: 2016/04/07(木) 15:08:59.03 ID:UNdfly9Qo
ドゴッ! ドガッ! バキィッ!



チンピラ「は、はひぃ……すみませんでした、すみませんでしたぁっ!」

男「!」ハッ

男(ボコボコになったチンピラが土下座して謝ってる……さすが、もう一つの人格)

8: 2016/04/07(木) 15:11:05.26 ID:UNdfly9Qo
男(好きな子ができちゃったけど、告白する勇気がない……)

男(ていうか、フラれるのも怖い……)

男(だから頼む! 俺の代わりにあの子に告白してくれっ!)

男『任せとけ!』

9: 2016/04/07(木) 15:13:03.18
いやこれもう既に一つの人格が主人格みたいなもんじゃねぇか

10: 2016/04/07(木) 15:13:56.19 ID:UNdfly9Qo
女「今日はデートを楽しみましょ!」

男「う、うん」

男(……気づいたら、この子が彼女になっていた)

男(デート中にボロを出したくないから、また人格チェンジしなきゃいけないけど)



男(思えば俺は、物心ついた頃から、困ったらすぐもう一つの人格に頼っていた……)

男(勉強も、スポーツも、ケンカも、恋愛でさえ……なにもかも……)

11: 2016/04/07(木) 15:16:28.93 ID:UNdfly9Qo
男(なぁ……)

男『ん?』

男(お前はいつも主人格である俺に、いいように使われてるけど――)

男(本当にこれでいいのか? このままでいいのか?)

男『もちろんだとも! だってオレはそのために生まれたんだからな!』

男(……)

12: 2016/04/07(木) 15:19:18.16 ID:UNdfly9Qo
男(だけど悔しくないのか? お前の手柄は全部俺に取られてるんだぞ?)

男『別に?』

男(もし、お前が望むんなら、俺はお前にこの体を明け渡したっていいんだ)

男『オレはあくまで“もう一つの人格”だ』

男『お前の体を乗っ取る気はねえし、また、乗っ取ることもできねえよ』

男(そうか……)

13: 2016/04/07(木) 15:22:25.52 ID:UNdfly9Qo
男(もう一つの人格……なんていい奴なんだろう)

男(あれだけ優秀なのに、いつも俺を立ててくれる)

男(だけど、いい加減、このままじゃいけない気がしてきた!)

男(どんなに失敗してもいい、恥をかいてもいいから、自分の力で生きないと――)



ブロロロロ……!



「トラックが歩道に突っ込むぞ!」 「酔っ払い運転か!?」 「あ、危ないっ!」

14: 2016/04/07(木) 15:24:36.45 ID:UNdfly9Qo
男「!」ハッ

男(俺の目前に……トラック!?)

男(いつもなら別人格にチェンジして、トラックから素早く身をかわす場面だけど――)

男(自分の力で解決しないとッ!)



ドガッシャァァァァァンッ!

15: 2016/04/07(木) 15:27:29.11 ID:UNdfly9Qo
……

……

男(結論からいうと――)

男(俺は素手でトラックを殴り倒した挙げ句、中の運転手を無傷で救出していた)





男(ここから先の出来事は、まるで映画を早送りするかの如くだった)

男(“自分の力”を生まれて初めて自覚した俺は、瞬く間に人を集め、人の上に立ち――)

男(あっさりと世界を平らげ、全人類の頂点に君臨していた)

16: 2016/04/07(木) 15:30:11.51 ID:UNdfly9Qo
宮殿――

男(俺が王になってからというもの、世界は完全に平和となった……)

男『よう、久しぶり』

男(!)

男『ようやく、自分の力を恐れず使えるようになったようだな』

男(……ああ)

17: 2016/04/07(木) 15:34:17.40 ID:UNdfly9Qo
男『お前は生まれた時から、歴史上前例のない、突然変異の大天才だった』

男『赤子の頃にすでに頭はノーベル賞学者よりもよく、腕っぷしは世界チャンプより強く』

男『ひとたび能動的に動けば、どんな人間をも引きつけるカリスマ性を持ってた』

男『お前は本能的に分かっていたんだ』

男『“自分が才能を発揮してしまえば、あっという間に世界の中心人物になってしまう”と』

男『だから……お前は平穏に生きるため、もう一つの人格であるオレを生み出したのさ』

男『せいぜい“並みの天才”程度のオレをな』

男(うん……)

男『もし、オレにチェンジしなかったら、お前はおそらく――』

男『テストではオール100点、野球では軽々場外ホームラン……』

男『ケンカでは相手を死なせちまい、積極的に恋愛すればハーレムを築いていただろう』

男『お前はそれが嫌だったから、ずっとオレに頼ってたんだ』

18: 2016/04/07(木) 15:37:15.03 ID:UNdfly9Qo
男『だけど……今のお前ならもう大丈夫だ』

男『お前の心はもう、人類史上最高の頭脳と肉体に耐えうる器に仕上がっている』

男『お前なら……世界を正しい方向に導けるさ……』

男『じゃあな……』スゥゥ…



男(ありがとう……俺のもう一つの人格……)





<おわり>

19: 2016/04/07(木) 15:39:10.17
おつ

20: 2016/04/07(木) 16:27:27.13
( ;∀;)イイハナシダナ-

22: 2016/04/07(木) 20:59:16.04
これは予想外

23: 2016/04/07(木) 23:39:51.22
上手い変化球だった。乙

引用元: 男「テストかったるいから、もう一つの人格に頼もう!」