1: 2012/10/30(火) 21:51:32.12 ID:dw6D0b4DP
あずさ「すみません、いつも迷惑をかけて……」

P「いえいえ、いいんですよ。そこまでがお仕事というか、あずささんを迎えに行くときのお約束と言いますか」

あずさ「そうですか……?」

P「むしろそれがなくなったら物足りなくなるという感じで!」

あずさ「私は、迷った方がいいんですか?」

P「あ、いやそういうわけじゃないんですよ? でも気にしなくていいんです、仕方ないですから」

あずさ「はい……」


あずさ「はぁ、本当に困ったわねぇ……」

律子「どうかしたんですか?」

あずさ「あ、律子さん。いえ、そのこの方向音痴がどうにか直らないものかと思いまして……」

律子「あー……でも、気にしなくていいんじゃないですか? あずささんのはその、いい方向に行くときもありますし」

あずさ「自分で迷う分には構わないんですけど、他の人に迷惑をかけてしまうのが、どうしても……」

律子「まあ、確かにそうですね……目的地に着くまでは頑張ってそのことだけ考える、とか?」

あずさ「なるほど……やってみますね。ありがとうございます、律子さん」

律子「いえいえ、頑張ってくださいね。逆に言ってしまえば、あずささんの弱点はそれくらいなんですから」

2: 2012/10/30(火) 21:57:50.41 ID:dw6D0b4DP
あずさ「おはようございます!」

P「あ、おはようございますあずささん……ってあれ? 早いですね?」

あずさ「はい! 昨日律子さんに相談してアドバイスの通りやってみたら迷わずに来れたんですよ?」

P「おぉ、それはよかったです!」

あずさ「これでプロデューサーさんに迷惑を掛けなくて済みますね。あ、でも迷った方がいいんでしたっけ?」

P「あはは、それはそれですよ、確かにすんなり来てくれた方が楽ですしね」

あずさ「そうですよね。でも、もう大丈夫だと思います」

P「今日のあずささんは頼もしいですね! っと、まさに今日はそんなスケジュールでして」

あずさ「あら、そうなんですか?」

P「ちょっと長野まで行ってもらいたいんです」

あずさ「長野、ですか?」

P「あの、よくある散歩番組みたいな感じでやってほしいとのことなんです。それで、新幹線を使ってもらうんですけど」

あずさ「そうなんですか~」

P「生憎、俺他のところに行かなきゃいけなくてですね、できればお一人で現場まで向かって欲しいんです……」

あずさ「えっと、一人で……ですか」

3: 2012/10/30(火) 22:03:55.87 ID:dw6D0b4DP
P「チケットも取ってあります、ここに詳しく書いてあるので、駅までつけば後はスタッフいるんですけど」

あずさ「……わかりました、一人で行きますね」

P「大丈夫、ですか? とはいっても今日その後一旦撮影があったりと忙しいのでできればお願いしたいんですが」

あずさ「大丈夫だと思います、今日は自信ありますよ」

P「それなら大丈夫そうですね、と万が一と考えて1時間取ってありましたし、早くついてもらったので最悪2時間は大丈夫かな、と」

あずさ「はい、わかりました」

P「こっちも片付き次第合流して、次の仕事こなしていきますんで。お願いしますね!」




あずさ「えっと……こっちかしら」

あずさ「あっ、ここが駅ね」

「すみません、ちょっといいかしら……」

あずさ「あら? どうかされました?」

「765プロはどこでしょう?」

あずさ「あ、765プロなら……えっと、近くまで案内……で、でも」

あずさ(……一旦駅に来れたし、案内しても多分大丈夫、よね)

6: 2012/10/30(火) 22:12:07.19 ID:dw6D0b4DP
P「さてと、俺も動くか……」

プルルルル……

P「おっと、はい765プロです。……はい、えぇ確かに今日これから向かわせて……えっ!? 時間が違った!?」

P「あ、それは……いや、多分もう駅について……えぇ、わかりました」

ガチャン

P「参ったなぁ……時間がずれるとは。まあ、最悪あずささんにはあっちで待機してもらっててもいいが……」

P「そうすると今日中に撮らないといけない写真といい、インタビューといい……どうする」

ガチャッ

あずさ「あら?」

P「えっ? あずささん!?」

あずさ「あ、私……」

P「ちょうどよかった! まだ乗ってなかったんですね!」

あずさ「あ、えっと……ごめんなさい」

P「いえ、今日ばっかりは助かります! それが実は……」

9: 2012/10/30(火) 22:19:55.19 ID:dw6D0b4DP
あずさ「そうだったんですか……」

P「方向音痴がいい方向に行きましたね、っと気にしないでください! 結果が大事ですから!」

あずさ「あ、えぇ」

P「それじゃ、先に撮っちゃいましょうか」

あずさ「そうですね、お願いします」

あずさ「……」

――


「ありがとうございました」

あずさ「いえいえ! さてと……」


あずさ「あ、あら? ここは……変ねぇ確かこの辺だったと思うけれど」

あずさ「やっぱり引き返したのが間違いだったのかしら……」

あずさ「このままじゃ、遅れちゃうわ……」


あずさ「こんなに迷うなんて、私……あれ? ここ……事務所」
――
――

11: 2012/10/30(火) 22:25:05.61 ID:dw6D0b4DP
P「おっけーです! いやぁ結構手こずっちゃって……あぁ! もうこんな時間……」

P「えっと、すみませんあずささん! 俺これ片づけるんで少しだけ待っててもらえますか?」

あずさ「えっと、この後はさっきの収録に向かうんですよね?」

P「そうなんですけど、これ終わらせてからじゃないと……あぁでもちょっと走ることになるかも……」

あずさ「でしたら私、先に行ってた方がいいですか?」

P「え? まあそうですけど……その」

あずさ「大丈夫です、さっきは迷っちゃいましたけど、今度こそ」

P「……でも」

あずさ「……信じてくれないんですか?」

P「……わかりました、でもちょっと怪しいなって思ったら電話くださいね?」

あずさ「はい!」



P「……片づけてから行くと30分、その分余裕があると言っても、さっき30分くらいで事務所に戻ってきたからなぁ……迷ったらアウトか」

P「まあ最悪あっちも悪かったと責任分割で……無理か」

14: 2012/10/30(火) 22:36:10.42 ID:dw6D0b4DP
P「ん? メールか! ……ちょうど30分たったあたり」

P「……」

あずさ『新幹線、乗れましたので連絡しておきますね!』

P「……おぉ! 流石はあずささん!」

P「うん、やっぱりやるときはやる。って俺は何様だ」

P「でも、もう心配ないのかもな」


P「っと、そろそろ着いたかな?」

プルルル

P「おっと、はいこちらプロデューサー……えぇ、え? ちょ、ちょっとそれどういう!」

P「……わかりました、駅で待たせておきますので……はい」

ガチャン

P「どういうことだ……スタッフが時間変わったのを把握してなくて駅で待機してないとか、どうなってんだ」

P「まあおおかた名が知れてないからって適当にやってるんだろう……全く。あ、そうだあずささんに電話しておかないと」

P「……もしもしあずささんですか?」

あずさ「あ、プロデューサーさん。すみません、今着いたところで」

15: 2012/10/30(火) 22:40:58.53 ID:dw6D0b4DP
P「あぁ、よかった。えぇと実は駅にスタッフがいないらしくて、30分ほどそこで待機と……」

あずさ「え? ……その、収録現場についたんですけど、ダメでしたか?」

P「え? 収録現場って……あぁ! 地図を渡してましたけど、あ、あそこまでお一人で!?」

あずさ「あ、えぇ、まあ」

P「……すごいですよあずささん! 俺一回行ったとき迷ったくらいなのに! いやぁ、効果でてますね!」

あずさ「あはは、ありがとうございます。それじゃ、お仕事行ってきますね」

P「はい、頑張ってください!」

ピッ

P「ふぅ、いやぁあずささんには参ったな。でも、おかげさまであっちのスタッフにいい顔ができるってもんだ。あずささんには感謝しないとな」

P「収録は30分くらいで、すぐ帰ってくるとして……まあ2時間はかかるだろうけど、帰りもそんなすんなり……大丈夫だろう」



ガチャッ

P「っと、おかえりなさい……あずささん!」

あずさ「あ、あの……戻りました」

P「ホント、お疲れ様でした! うわぁ、きっかり電話から2時間! 流石ですね!」

16: 2012/10/30(火) 22:44:34.87 ID:dw6D0b4DP
あずさ「え、えっと……」

P「どうしたんですか? 今日は流石、参りました! 方向音痴なんて言ってすみませんでした」

あずさ「す、すみません……私」

P「どうしたんですか? でも、迷わなくなったあずささんはもう完璧って感じですよね」

あずさ「ごめんなさい……プロデューサーさん」

P「何をそんなに、今日はすばらしかったですよ? 全部の仕事がスムーズに行って」

あずさ「い、いや……これからは気を付けますから……」

P「……あずささん?」

あずさ「ごめんなさい……きっと、きっと直しますから……」

P「いや、だからもう方向音痴なあずささんじゃないですよ。まあ正直、方向音痴だと手間はかかりますし、よかったです!」

あずさ「ぁ……っ!」

バタン

P「えっ? ちょ、ちょっとあずささん!?」

P「……俺、何か言っちゃったかな? やっぱり方向音痴うんぬん言わない方がよかったか……」

17: 2012/10/30(火) 22:49:32.50 ID:dw6D0b4DP
あずさ「……なんで」

あずさ「……プロデューサーさんはもう私のこと見捨ててしまったのかしら」

あずさ「駅に向かったところまではよかったの。でも、道を聞かれて一旦戻って」

あずさ「その後すぐに駅に向かおうとしたけど、やっぱり迷ってしまって」

あずさ「もう、どうしようもないから携帯で連絡を取ろうと思ったら、ない」

あずさ「きっと、駅か、どこかで落としてしまった……」

あずさ「もう、遅刻……それどころじゃない、ドタキャンですもの」

あずさ「こんな、プロデューサーさんに会わせる顔がない……」

あずさ「なんて謝ったらいいのかしら……それでも、大丈夫ですって言ってくれるのかしら……」

あずさ「そう思っていたら、仕事が成功したって……そんな、皮肉を言わなくても……」

あずさ「私、次から頑張りますから……だから、許してください……」

「方向音痴は、手間がかかる」

あずさ「……私なんて」

「あの~すみません」

あずさ「……はい。……え?」

21: 2012/10/30(火) 22:52:46.87 ID:dw6D0b4DP
「よかった、探していたんです」

あずさ「……嘘」

「どうかしましたか?」

あずさ「どうして……私」

「あら、私ですよ?」

あずさ「い、いや……」

「……プロデューサーさんとお仕事をしてたのは、私ですよ?」

あずさ「……え?」

「それを言いに来たんです。よかった、迷わなくて~」

あずさ「そ、そんな……どうして、私、貴方は誰なんですか?」

「私ですか? そんな、三浦あずさですよ?」

あずさ「ち、違います! 私が三浦あずさです!」

「あらあら~? おかしいわねぇ……普通、同じ人って一人しかいないんじゃ、でも同姓同名なら」

あずさ「そんな、私は765プロの三浦あずさです!」

「でも、今日765プロでお仕事をしたのは私ですよね?」

24: 2012/10/30(火) 23:00:51.00 ID:dw6D0b4DP
あずさ「そ、そんな……」

「混乱しているようですから、私が教えてあげますね」

「AM8時、貴方が事務所に到着して、その30分後駅に向かいました」

「AM8:45に駅で会った人に道案内。その後貴方は迷子になりましたね」

あずさ「な、なんでそんなことを……」

「実はその人、私だったんですよ? それでちょうどプロデューサーさんが困ってたのでそのままお仕事をして」

「PM1:00、私は新幹線に乗って収録現場に。収録現場に3時位に着いて貴方が事務所に帰ってきたのが6時くらいですか?」

あずさ「私は……」

「あらあら、泣かないで? 私まで悲しくなってしまうから、ね?」

あずさ「どうして……それじゃあ携帯も……」

「そう、私がもらったんです」

あずさ「……そんな」

「だって」


「方向音痴な私は、いらないんです」

あずさ「え……」

25: 2012/10/30(火) 23:06:51.27
じゃあ方向音痴なあずささんはもらって行きますね

26: 2012/10/30(火) 23:10:06.57
いや俺が

28: 2012/10/30(火) 23:11:04.50 ID:dw6D0b4DP
「聞いたでしょう? 方向音痴は手間がかかる、結局はダメなんです努力しても」

あずさ「……」

「私は、貴方が憧れる方向音痴じゃない私」

あずさ「……」

「でも、直に私が三浦あずさになりますから」

あずさ「やめて……」

「そう思うなら、プロデューサーさんに言ってみたらどうかしら?」

あずさ「……それは」

「明日、来なくてもいいですよ? 私が代わりにお仕事しますから」

「でも、貴方はそうですね……さしずめ”あずさ2号”になるかしら」

あずさ「2号……」

「……それじゃ、また会いましょう。と言っても、貴方から私を探しちゃダメよ?」


「きっとまた、迷ってしまうから。……ふふっ」

あずさ「……」

――

32: 2012/10/30(火) 23:24:52.22 ID:dw6D0b4DP
「……当てもなく歩いて」

「なんだかこのままどこかに迷い込んでしまいたい……」

「こうやって歩いている時だけ、迷わないんですけど」

「……明日、事務所にいけるのかしら」

「もし、あの人がいたら私は……」

「……なんだろう、この歌は。聞いたことがあるけれど、随分と古い曲……」

「あずさ、2号……ふふっ、そんな偶然があるのかしら」

「どうして、そんな歌が流れる場所に来ちゃうのかしらね」

「……今、7時……もう8時かしら」

「このまま8時ちょうどの列車にのって、どこか遠くへ……なんて」

「そんなことをしても、始まらない。か」

「……帰りましょうか」


「プロデューサーさん……」

34: 2012/10/30(火) 23:34:17.17 ID:dw6D0b4DP
P「……さて、今日も頑張るか」

あずさ「おはようございます」

P「おはようございます、あずささん。今日も早いですね」

あずさ「いえいえ、慣れてしまったらこれくらいは~」

P「ホント、別人みたいですよ! って、これは失礼ですかね?」

あずさ「そんなこと、嬉しいですそういってもらえて」

P「それじゃ、今日はレッスンですね。車出しますんでちょっと待っててください」

あずさ「大丈夫ですよ、あのレッスン場でしたら近いですし」

P「え? いいんですか?」

あずさ「はい、その……ちょっと歩いて運動ついでに」

P「あぁ、なるほど。それじゃ、すみませんお願いします」

あずさ「はい!」


P「いやぁ、ホントあずささんがこうなると怖いものなしって感じだなぁ」

36: 2012/10/30(火) 23:39:00.77 ID:dw6D0b4DP
P「ふぅ、外も寒くなってきたな……っと」

あずさ「あ、おかえりなさい、プロデューサーさん」

P「あ、えぇ。どうも、帰ってらしたんですか」

あずさ「はい、早く着いたのでその分前倒しでやっていただきました」

P「それにしても……いやぁ、無駄な時間がないですね。流石としか」

あずさ「そんなこと言って、私は方向音痴じゃなきゃいけないんですか?」

P「あ、い、いえそういうわけじゃ!」

あずさ「……なんて、冗談ですよ?」

P「な、なんだ……あ、あはは、よかった~」

あずさ「ふふっ、それで次はどちらに?」

P「あ、えっと……あぁまたここですね。ちょっと遠いですが……」

あずさ「でも、ご近所ですから私一人で大丈夫ですよ?」

P「そうですか? いやぁ頼もしいなぁ。でも、たまには付き添いますよ?」

あずさ「私を信用してください、プロデューサーさん?」

P「あ、えぇ……それはもう。それじゃ、頑張ってきてください」

38: 2012/10/30(火) 23:42:26.46 ID:dw6D0b4DP
P「……なんだろう、やることがなくなった」

P「あぁ、そうか。あずささんの送り迎えがなくなったというのが」

P「……でもなぁ、なんか物足りないんだよな。いいことなんだけど」

P「っていかんいかん。いいことなんだしこれを機にもっといろんな仕事とってきますかね!」


P「……さて、そろそろ時間だが。うん、まあ帰りくらいはいいだろう、迎えにいくとしよう」

P「えっと、あずささんは……もう帰っちゃったかなぁ……」

P「あ、いたいた! あずささーん!」

あずさ「っ!」

P「あずささん、すみません迎えに来ちゃいました」

あずさ「……プロデューサー、さん」

P「あ、やっぱり迎えに来ちゃダメでしたか?」

あずさ「……いえ」

P「それはよかった、まあ帰りくらいは楽しましょうよ」

あずさ「……」

40: 2012/10/30(火) 23:53:59.87 ID:dw6D0b4DP
P「いやぁ、それにしてもびっくりしました」

あずさ「……」

P「さっき気が付いたんですけど、やることが減ってて。なんでかなって思ったら昨日今日と送り迎えしてないんですよね」

あずさ「……」

P「まあ、本当はアイドルなんですから車で送迎! って普通でしょうけど、まだうちも小っちゃいのでね……あはは」

あずさ「……プロデューサーさんはやっぱり、迷わないで行ってもらった方が嬉しいですか?」

P「え? まあそれは、いくらでも楽っていうのもありますし」

あずさ「そう、ですよね……」

P「……でも、なんていうか。こうやって車でお話しながら行くのも必要かな、なんて」

あずさ「……え?」

P「あ、い、いやその……言ってしまうと、ちょっとさみしいかな、なんて。最低限自力でやってもらう分にはありがたいんですけど」

P「俺も、好きであずささんや他のアイドル達もプロデュースしてますから、やっぱり少しでも……何て言ったらいいんですかね」

P「今思うと、方向音痴だったあずささんが懐かしいですよ」

あずさ「方向音痴だった……私が懐かしい」

P「なんか変な話ですけどね、俺は迷ったあずささんを迎えに行くのもお約束って言ってたじゃないですか」

43: 2012/10/30(火) 23:57:16.39 ID:dw6D0b4DP
あずさ「……ぐすっ」

P「え、えっ? ちょ、ちょっとあずささんひょっとして泣いてます?」

あずさ「な、泣いてませんよ? 安全運転お願いしますね?」

P「あ、す、すみません……大丈夫ですか?」

あずさ「……えぇ、ちょっと」

P「……」

あずさ「……その言葉を聞けて安心しました」

P「……え?」

あずさ「この後、スケジュールは?」

P「あ、えっと事務所で少し打ち合わせを」

あずさ「……それじゃあ、その駅で下してもらえますか?」

P「え? あ、えっと」

あずさ「大丈夫ですよ。私はもう、迷わないんです。ちょっとやりたいことがあるだけなので。事務所には後で向かいますから」

P「わかりました、それじゃまた後で」


あずさ「……プロデューサーさん、ありがとう」

46: 2012/10/31(水) 00:05:12.86 ID:F0w9u9cVP
あずさ「……ここから事務所までなら迷わず行けるかもしれない」

あずさ「でも、私は……やっぱりプロデューサーさんのためにこれを直したい」

あずさ「だから、少し旅にでますね? やっぱり、あの歌が響いたのかしら」

あずさ「……ふふっ、良く考えたらすごいラッキーよね」

あずさ「私はちゃんとお仕事をしたことになってるのに、一人旅なんて……ふふっ」

あずさ「……もしかしたら、迎えに来てくれるのかしら」

あずさ「私がいないことに気が付いて、いつもみたいに」

あずさ「嫌な顔一つしないで、ここにいたんですね、よかった。そう言っていつも迎えに来てくれる」

あずさ「……それじゃあ、待ちます。8時まで」

あずさ「……プロデューサーさん」



P「あの駅に何かあったかな、まあいいか」

P「戻りましたー」

あずさ「おかえりなさいプロデューサーさん」

P「あれ? もうお帰りになってたんですか?」

51: 2012/10/31(水) 00:18:55.24 ID:F0w9u9cVP
あずさ「えぇ、時間通りに終わったので」

P「それは、まあ。駅で何かしてらしたんですか?」

あずさ「駅? ……あぁ、そうですね。少し見たいものがありまして」

P「なるほど、いやぁそれにしてもお帰りが早い。これなら本当に迎えはいらないですね」

あずさ「そういってもらえると~これでもうプロデューサーさんにご迷惑をかけることはないですから~」

P「いえいえそんな、迷惑だなんて」

あずさ「でも、やっぱり時間を割いてもらっていたのは本当だと思うので」

P「ま、まあ」

あずさ「その、プロデューサーさんも方向音痴な私より、今の私の方がいいですよね?」

P「え? あ……まあ、そうですね」

あずさ「……嬉しいです」

P「……あずささん」

あずさ「今日はもう終わりですか?」

P「あ、そうですね一応これで」

あずさ「わかりました、それじゃお先に失礼しますね」

53: 2012/10/31(水) 00:23:36.43 ID:F0w9u9cVP
P「あ、はい。お疲れ様でした」

バタン

P「ふぅ。……あずささん、変わったなぁ」

P「本当、迎えに行ってた頃が懐かしい」

P「おっと、7時過ぎ? もうこんな時間か。なんか適当に買って帰るか……ん?」

P「あっ、あずささん忘れ物」



P「あずささん!」

あずさ「あら?」

P「よかった、これを」

あずさ「……これは」

P「え? いや、お守りって言って持ってたじゃないですか」

あずさ「あ、あぁ! そうでした」

P「思えば、このお守りからでしたか? 迷わなくなったの」

あずさ「……」

54: 2012/10/31(水) 00:28:38.05 ID:F0w9u9cVP
~~~
P「そういえば、律子のアドバイスってなんだったんですか?」

あずさ「えぇと、そのことだけに集中して目的地に向かう、というお話で」

P「ほうほう、それは確かに効き目がありそうですね」

あずさ「どうしようかな、と思ったんですけどその時思いついたのがこのお守りで」

P「お守りを握りながら、ってことですね。確かにそうすれば他のことに気を取られなくて済みますもんね」

あずさ「はい、おかげさまで」

P「なかなか、普通な感じのおまもりですね。……ん? P?」

あずさ「あっ、それは、その……」

P「なんのPですかこれ? あずささん……だから、Aでもないし……」

あずさ「そ、その……プロデューサーさんの……」

P「え? お、俺ですか?」

あずさ「は、はい……迎えに来てもらってるので、やっぱり一番迷いにくくなるかなぁ、なんて」

P「あはは、それはそれは光栄です。……それじゃ、ちょっと貸してもらえませんか?」

あずさ「え? あ、どうぞ」

P「……はっ!」

55: 2012/10/31(水) 00:33:25.63 ID:F0w9u9cVP
あずさ「えっと、何を……」

P「俺の気を込めておいたんです! 迷わなくなるように!」

あずさ「……」

P「なんて、ちょっと子供っぽいですかね……お守りだから、なんて思ったんですけど……」

あずさ「……ぷっ!」

P「あっ、ちょ、ちょっと!」

あずさ「ご、ごめんなさい。でも、おかしくって……」

P「もうー……ひどいなぁ」

あずさ「ふふっ、そういうつもりじゃないですよ? でも……嬉しいです。ありがとうございます。これ、大切にしますね」

P「……はい、ぜひぜひ」
~~~

あずさ「……そう、でしたね」

P「本当に忘れてたんですか?」

あずさ「そ、その……もう迷わなくなったのでいいかなぁなんて」

P「……なるほど」

あずさ「今までお世話になりましたから。でも、もうプロデューサーさんに迷惑をかけることもないです」

57: 2012/10/31(水) 00:37:54.29 ID:F0w9u9cVP
P「……」

あずさ「やっぱり、いつまでもこういうものに頼ってちゃダメですよね」

あずさ「だから、プロデューサーさんも気にしないで下さい」

P「……あずささん」

あずさ「はい?」

P「俺はあずささんのことを迎えに行くこと、迷惑だなんて考えたこと一度もないですよ」

あずさ「あ……えっと、それはでも私としては迷惑かな、と」

P「そうですね、いつもそういってくれます。でも、俺は嬉しいんです」

あずさ「……え?」

P「すみません、っていつも謝ってくれます。でも、最後にはありがとうございますって。そういってもらえると嬉しくて」

P「迎えにいくと、それだけ一緒にいる時間も長くて、いろんな話もできますし」

あずさ「……」

P「だから、迷惑だなんて思ってないです。むしろ今の方がなんとなくさみしい気もします」

あずさ「そういうことなら、たまにはお願いします」

P「……なんか、違うんですよね」

59: 2012/10/31(水) 00:43:04.47 ID:F0w9u9cVP
あずさ「え?」

P「ごめんなさい、なんとなくなんで。でも、今のあずささんはなんとなく、違う」

あずさ「……」

P「今まで一生懸命迷わなくなるように努力してました。でも、実際無理でしたよね?」

P「それでも俺は構わなかったです。でも、やっぱりあずささんは頑張ってました。それで今回のお守りに」

P「それなのに……あのお守りを手放しちゃうような、たとえ俺のためだからと言ってやっと直った方向音痴」

P「そのきっかけになったお守りを……なんか、あずささんがそんな人だと、思えないんです」

あずさ「……」

P「俺の勘違いだったら、すみません」

あずさ「……私は、間違っていましたか?」

P「……え?」

あずさ「もし、プロデューサーさんの言う通り、私はプロデューサーさんのために。もう迷惑をかけないようにお守りは、大丈夫なんです」

あずさ「そう、言い切ったとしたら……私は、三浦あずさではないですか?」

P「……一つだけ、うかがわせてください」

あずさ「……はい」

60: 2012/10/31(水) 00:47:29.62 ID:F0w9u9cVP
P「方向音痴に戻りたいですか?」

あずさ「……いえ、それは。でも、やっぱりお守りは大切にしようって思います。いつそうなるかわからないので」

P「……そうですか」

あずさ「……プロデューサーさん」

P「今のが本当なら、俺は貴方をあずささんだと……認めたくない、っていうのはすこし傲慢かもしれませんけど」

あずさ「……」

P「ごめんなさい、なんだか俺も混乱してて。俺の方が、方向音痴になっちゃったみたいですね」

P「忘れてください、また明日から……」

あずさ「……迷っちゃってたのは、私の方でしたよ?」

P「え?」

あずさ「……やっぱり、私は”2号”だったみたいですね」

P「……あずささん?」

あずさ「私は、まっすぐ帰ります。でも、まっすぐ帰れてない、としたら。迎えに行ってあげないと」

P「……一体何を」

あずさ「……私は、あずさ2号なんです。もう、会うことはないでしょう」

62: 2012/10/31(水) 00:51:49.13 ID:F0w9u9cVP
P「あずさ、2号……」

あずさ「もしかしたら、ちょうどそんな曲が。……それじゃ失礼します」

P「……あずささん」



あずさ「私は、絶対に迷わない。……だから、もうあなたのところに迷い込むこともないですよ?」

あずさ「……私は、私だったみたい……あぁでも最後までこの想いは」

「迷ったままだった、かしらね」



P「あずささん……一体どういう……」

P「あれ? どうして俺こんなところ……あずささんが移った、ってそれは失礼だろ」

P「駅……そういえばさっきあずささんが……」



あずさ「……来ない」

あずさ「そう、来るはずなんてないわ……」

あずさ「あの私は迷う事はない。でも、私は……もう、迷い過ぎたの」

64: 2012/10/31(水) 00:56:24.96 ID:F0w9u9cVP
あずさ「……行きましょうか」

 8時ちょうどの~

あずさ「あら、また……」

 あずさ2号で~

あずさ「ふふっ、あずさ2号ね。できればそれに乗りたかったかな……」

あずさ「……私は私は貴方から旅立ちます」


「あずささん!!」

あずさ「……え?」


P「……どこに行くんですか? そこまで、方向音痴じゃないでしょう?」

あずさ「……プロデューサーさん」

P「……この曲は」

あずさ「……ごめんなさい、私。”2号”なんです」

P「……え?」

あずさ「方向音痴、ってわかっていてもずっとずっと直せなくて……」

66: 2012/10/31(水) 01:00:16.73 ID:F0w9u9cVP
P「……」

あずさ「それでも迎えにきてくれるプロデューサーさんに甘えて……」

あずさ「もう、こんなことじゃいけない。迷惑なんて、とっくに通り越して……」

あずさ「わかってたんです……だから、私は……」

P「そんな、今更のことを言わないでください」

あずさ「……え?」

P「迷惑をかけたとか、今までの分を数えたらどれだけになると思ってるんですか?」

あずさ「そ、それは……」

P「だから、逃げるんですか? もう、諦めるんですか?」

あずさ「違います……私なんていなくても……私が……」

P「あずささんは、あずささんしかいません」

あずさ「……」

P「例え2号でも、あずささんに変わりはいないでしょう?」

あずさ「プロデューサー、さん……」

P「何度も何度も言ってきたじゃないですか、俺は迎えに行くことまでがお約束だって」

68: 2012/10/31(水) 01:05:42.88 ID:F0w9u9cVP
あずさ「うぅ……ぷ、ぷろでゅーさーさん……」

P「だったら……最後の最後まで、お迎えさせてくださいよ」

P「アイドルが終わるまで、ずっとずっと、迷子でいいですから。そのかわり、絶対に待っていてください」

あずさ「ぷろでゅーさーさん……」

P「……あずささん」

あずさ「ぐ、ぐすっ……プロデューサーさぁん……」

P「……おかえりなさい、あずささん」

あずさ「すみません……こんな、こんな格好で……」

P「……いいんです、これが俺の仕事ですから。今は、好きなだけ……」

あずさ「ごめんなさい……ごめんなさい……」



あずさ「……ごめんなさい、お恥ずかしいところを……」

P「だから大丈夫ですって。あ、そうだ、これ」

あずさ「……あ」

P「……あずささん、一つ聞いてもいいですか?」

71: 2012/10/31(水) 01:08:56.68 ID:F0w9u9cVP
あずさ「は、はい」

P「このまま方向音痴でいいと思いますか?」

あずさ「……できれば、直したいですけど、このままでもいいかなって思いました」

P「……」

あずさ「……迎えに来てくれる人が、いますから」

P「そうですか……うん、やっぱりあずささんですね」

あずさ「……私からも、一つ聞いていいですか?」

P「えぇ、どうぞ」

あずさ「……さっきの、ずっと待っていてくれって……その」

P「え?……あ、あぁ!」

あずさ「……」

P「ち、違います! そ、そのプロポーズとかではなく迷子的な意味で! 俺ごときがそんなおこがましい!」

あずさ「……」

P「あ、あれ? 怒ってます?」

あずさ「……知りません。もういいです、一人で帰ります……」

72: 2012/10/31(水) 01:11:22.73 ID:F0w9u9cVP
P「えぇ!? ちょ、ちょっとすみませんって! とっさにでたんです!」

あずさ「……また、ちゃんと言ってくれますか?」

P「え?」

あずさ「いいですよ、もう。……早く、帰りましょう?」

P「……そうですね」

あずさ「ふふっ……」


タタタ……

あずさ「プロデューサーさんの方向音痴!」

P「え? な、なんで?」

あずさ「知りません! ふふっ!」


あずさ「ずっとずっと、待ってますからね? プロデューサーさん」


73: 2012/10/31(水) 01:12:10.35
乙よー

79: 2012/10/31(水) 01:33:07.66
もう1人が救われないな
切ない

78: 2012/10/31(水) 01:20:40.98
おつ

引用元: P「あずさ2号」