1: 2013/07/23(火) 14:09:24 ID:WJDtHc8Q
女「あれ、こんにちは」

男「いや、どなたですか」

女「あいさつもできない人間に教える名前などない!」

男「こんにちは」

女「うふふ」

男「で、誰ですか?」

女「人です」

男「いや、そういうことではなくて」

女「humanです」

男「無駄に発音いいな」

2: 2013/07/23(火) 14:11:16 ID:WJDtHc8Q
男「ところでなんでうちの押入れにいるんですか」

女「不審者です!食べちゃうぞ!」

男「通報しますよ」

女「ごめんなさい勘弁してください」

女「なんか、自宅の押入れに入って見たんですよ、
  そしたら壁がなくて、うちの押入れってこんな広かったっけ?って
  思って進んでるうちに気付いたらあなたの家の押入れにいました」

男「どうなってんだうちの押入れ」

3: 2013/07/23(火) 14:11:49 ID:WJDtHc8Q
男「とにかく、帰ってください」

女「えー、いいじゃないですか、押入れ開通記念ですよ!」

男「誰と誰の」

女「あなたとわたしの!これでいつでも行き来できますね!!」

男「来ないし行きません」

4: 2013/07/23(火) 14:12:43 ID:WJDtHc8Q
女「押入れから出ていいですか?」

男「嫌です」

女「あなたのお部屋の押入れって布団一式しかないんですねー」

男「ちょっやめてください!でてこないでください!」

女「あれ、でれない!どうやら押し入れからはでられないみたいですね」

男「今人生で初めて神に感謝しました」

女「あ、わたしのことですか?いやーてれるなー」

男「ちがいます」

5: 2013/07/23(火) 14:14:00 ID:WJDtHc8Q
女「今何してるんですか?」

男「レポート書いてるんです」

女「なんの生態についてですか?キリン?」

男「なんで生態限定なんですか、違いますよ」

女「わたしキリンに乗りたいんですよー!
  観察に行く時はぜひ誘ってください」

男「その前に話聞いてください」

12: 2013/08/09(金) 15:57:36 ID:00Dp8k3Y

コンコン
父「男、いるか」

男「まずい、父さんだ・・・」

女「ご挨拶したほうがいいですかね!!」

男「何言ってるんですか戸閉めて隠れて!!」

女「でも未来のお義父さんになるかもしれない方ですし!!」

男「シーッ!!部屋に連れ込んでると思われるじゃないですか!!」

父「・・・男?誰と話しているんだ?」

男「なんでもないです父さん!!ちょっとねずみが押し入れに!!」

女「ひどい!!!」

13: 2013/08/09(金) 16:01:28 ID:00Dp8k3Y
ガラッ

父「男、レポートのほうは順調か?
 最近たるんでいるそうじゃないか。お前が出ている講義の
 教授が言っていたぞ。怠けるなよ」

男「はい、分かっています父さん」

女「・・・・・」(なんだこの雰囲気・・・)

父「私の顔に泥を塗るような真似だけはするなよ」

男「・・・はい。」

女「・・・・・」

14: 2013/08/09(金) 16:06:05 ID:00Dp8k3Y

ガララッ

男「・・・・はぁ。」

ガラッ

女「なんですかあの人!!なんですかあの人!!」

男「父さんだよ。俺が通ってる大学の教授をやってる」

女「この世で私が嫌いな人種の一つは、偉そうな教授です」

男「・・・・俺もそうだよ」

15: 2013/08/09(金) 16:17:38 ID:00Dp8k3Y
男「でも、家族だから」

女「家族だから?」

男「どうしても、嫌いになれないんだ」

女「・・・・」

男「父親だからね」

女「家族だからって何も言い返さないのは、違うよ」

女「あなたはとてもとても頑張ってる。私にはそう見えます」

男「どうして?」

女「目の下の隈に、パソコンの周りの栄養ドリンクの空き瓶」

男「!!」

女「見ず知らずの私にくらいは、
  本音言ってもいいんですよ?」

男「・・・ありがとう」

16: 2013/08/09(金) 16:23:05 ID:00Dp8k3Y
男「父さんはさ、テレビに出てるくらいの有名な教授なんだ」

男「だからさ、必然的に俺は周りから期待されてた。
  でも俺はほんとダメなやつでさ、ろくに勉強しなかったんだ。」

男「そんな俺を見た父さんは、いろんなコネと金つかって
  今の大学に俺を無理やり入学させたんだ。」

男「笑っちゃうよな、俺本当はあんな有名な大学入れるような
  頭じゃないのにさ。」

17: 2013/08/09(金) 16:37:59 ID:00Dp8k3Y
男「だから周りと話が噛み合わないし、友達だっていない」

男「広義には毎回出てるけど、父さんの息子だからって
  単位もらったり、レポートだって他人のを金で買ったりしてるんだ。」

男「最低だよ、俺は」

男「父さんも多分、気づいてるんじゃないかな。
  俺がどうしようもないやつだってことにさ」

18: 2013/08/09(金) 16:38:44 ID:00Dp8k3Y
女「じゃあ、今書いているレポートは?
  それがなによりの証じゃないですか。
  男さんは、だめ人間だけど、努力してます。」

男「これは・・・ただのきまぐれだよ」

女「きまぐれだったら、
  そんな何日も徹夜したみたいな顔しませんよ」

女「お父さんと、ちゃんと話してみたらどうですか?
  私に今話してくれたこと、ぜんぶ」

男「・・・・勇気が無いんだ。ずっとこうやって生きてきたから」

女「じゃあ、何かやりたいことはないですか?
  楽しいことを思い浮かべれば、たいていの辛いことは
  平気ですよ!」

男「簡単に言ってくれるね」

女「男さんには、できますよ。
  私がついてます!」

19: 2013/08/09(金) 16:42:01 ID:00Dp8k3Y

女「じゃあ、私はそろそろ帰りますね!」

男「待って!!・・・いない」

男「押し入れの壁、いつもと変わらないじゃないか・・・」

男「ありがとう、女さん。いつかまた押し入れが繋がるまで
  俺は待つよ」

男「・・・・大丈夫。俺にはあの娘がついてる」

20: 2013/08/09(金) 16:44:30 ID:00Dp8k3Y

ガラッ

男「父さん、話があるんだ」

父「なんだ男、いきなり改まって」

男「俺、大学辞めるよ。ごめん」

父「・・・そうか」

男「いままでやってきたことは、決して許されることじゃ
  ないから。その責任は、自分でとるよ」

父「お前、私が知っていることに気づいてたのか」

男「うん、本当にごめん。ありがとう、父さん」

21: 2013/08/09(金) 16:46:23 ID:00Dp8k3Y
男「俺、この家を出ようと思うんだ。」

父「大学を辞めて家を出て、どうするんだ?」

男「・・・キリンに乗りに行こうかな」

23: 2013/08/09(金) 17:00:38 ID:00Dp8k3Y

あの日以来、押入れが繋がることは無かった。

―今日はアパートへの引越しの日だ。
なるべく家と大学から離れたかった俺は、
遠い県外の部屋を借りた。
これからはアルバイトを探して、キリンの生息地である
アフリカに行く資金を貯めるつもりだ。
父さんは、「金を出そうか」と言ってくれたけど
それは遠慮しておいた。自分で働いて稼いだ金で行きたかったから。

24: 2013/08/09(金) 17:01:13 ID:00Dp8k3Y

男「っよし!まずはご近所に挨拶だな」

ピーンポーン

隣人「はーい」

男(この声は・・・?)

ガチャ

女「!!!」

男「!!!」

男&女「「押し入れの・・・・!!?」」

男「あっあの!!!!」

男「キリン!!!キリンに乗りに行きませんか!!!」

女「ふふふ!喜んで!」

25: 2013/08/09(金) 17:03:36 ID:00Dp8k3Y
これで終わりです

見てくださった方、レスくれた方ありがとうございました

ちなみに男と女の押入れはアパートでも
つながってます

たまに女が晩御飯食べに来たりします、押入れ経由で。

26: 2013/08/09(金) 17:09:19 ID:00Dp8k3Y
おまけ

男「俺、大学辞めたんですよ。で、父とも話しました」

女「私が何かの人だったら、あなたに賞をあげたいくらいです」

男「女さんとキリンに乗ることを想像して、勇気を出しました」

女「・・・・!!」

30: 2013/08/10(土) 14:01:18

女「帰ります」

男「えっ!?なんでですか」

女「こっち見ないでください!!」

男「顔が赤いですけどもしかして・・・」

女「・・・そうです!!だからこっち見ないで!」

31: 2013/08/10(土) 14:02:07
男「風邪ひいたんですか!それならそうと
  言ってくださいよ、女さんったら」

女「」

男「とりあえずコンビニ行ってポカリと
  風邪薬買ってきますね!」

女「・・・違います」

男「?」

女「好きだばーか!!!」

ダダダダッバンッ(押入れから自分の部屋に走り去る音)

男「風邪じゃなかったのか・・・・」


おしまい

男が鈍いのでやきもきした女さんが
直球勝負に出た話でした
これでほんとうにおしまいです
見てくださった方、ありがとうございました

引用元: うちの押入れがつながっていたときの話