1:2020/05/03(日) 19:54:20 ID:bzF+brFW0.net
牛丼屋――

女店員「いらっしゃいま――」

男「……」

女店員(またこいつか!)

男「すいません、三色チーズ牛丼の特盛りに温玉付きをお願いします」

女店員「いつもいつも……」

女店員「注文がなげーんだよ!!!」

女店員「ただの牛丼にしとけ、ただの牛丼に! 余計なオプションつけんな!」



7:2020/05/03(日) 19:57:35
男「しかし、そうおっしゃられても僕が食べたいのは三色チーズ牛丼の特盛り温玉付きですし……」

男「三色チーズ牛丼の特盛り温玉付きを食べたい以上、三色チーズ牛丼の特盛り温玉付きを注文するのは当然であって」

男「あなたにも三色チーズ牛丼の特盛り温玉付きを作って頂かないことには……」

女店員「あー、わーったわーった! もうしゃべんな!」

女店員「少々お待ちくださーいっ!」

男「分かって頂けて嬉しいです」
15:2020/05/03(日) 20:00:20.173 ID:bzF+brFW0.net
女店員「ほらよっ! 熱々だ!」

男「いただきます」

男「……」モグモグ

男「いやぁ、やはり三色チーズ牛丼の特盛り温玉付きは最高ですね」

女店員「牛丼の湯気で眼鏡曇らせながらいうんじゃねえ!」

男「これは失礼しました」クイッ

女店員「眼鏡クイッもやめろ! うぜえから!」
17:2020/05/03(日) 20:03:25.899 ID:bzF+brFW0.net
……

女店員「いらっしゃいませ」

男「……」

女店員「ハァ……ご注文は?」

男「すいません、三色チーズ牛丼の特盛りに温玉付きをお願いします」

女店員「またか! いつもいつもそればっか頼みやがって! たまには他のも頼めや!」

男「そうしたいのはやまやまなのですが、この牛丼屋に来るとどうしてもこれが食べたくなってしまうのです」

女店員「ちっ……」
23:2020/05/03(日) 20:07:40
女店員「だったらよ、これ注文すんなとは言わねえからせめて略せ! 長ったらしいから!」

女店員「たとえばそうだな……“チー牛”とかどうよ!?」

女店員「今度から“チー牛頼むわ”って言われたら、ちゃんとこれ作ってやっから!」

男「うーん、しかし僕は名称を略すというのがどうも好みではなくて……」

男「ソ連はソビエト社会主義共和国連邦と言わないと気が済みませんし」

男「こち亀はこちら葛飾区亀有公園前派出所と呼びたい気質なのです」

女店員「だったらキムタクも木村拓哉っていうのかよ!?」

男「はい!」

女店員「……」イライラ
24:2020/05/03(日) 20:08:33
常連俺「いつもの」ニチャア
26:2020/05/03(日) 20:10:17
女店員「だったらお前はピカソのことも」

女店員「パブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パウラ・ホアン・ネポムセーノ・マリーア・デ・ロス・」

女店員「レメディオス・クリスピン・クリスピアーノ・デ・ラ・サンディシマ・トリニダード・ルイス・イ・ピカソって言うのかよ!?」

男「……」

男「いえ、それはちょっと」

男「ピカソのフルネームを言えるなんて、素晴らしいですね」

女店員「褒めんな! なんか空気読まず豆知識披露した痛い奴みてえになるから!」
32:2020/05/03(日) 20:13:42
……

男「……」

女店員「来たな、チー牛野郎!」

男「すいません、三色チーズ牛丼の特盛りに温玉付きをお願いします」

女店員「へいお待ち!」サッ

男「早い!」

女店員「そろそろ来る頃だと思って、あらかじめ作っておいたのよ」ドヤァ…

男「もし来なかったら、どうしてたんですか?」

女店員「そん時はそん時よ」
33:2020/05/03(日) 20:16:46
男「しかし、店に入っていきなり三色チーズ牛丼の特盛り温玉付きが出てきたということは……」

男「このお店はいきなりステーキならぬ“いきなり三色チーズ牛丼の特盛り温玉付き”ですね」ドヤァ…

女店員「……」バシッ!

男「痛い! いきなり叩かないで下さい!?」

女店員「ごめん、ものすごく腹が立っちまった」

女店員「もう一発殴らせろ。次はグーでいくけど、許してくれ」

男「ひいい、暴力反対!」
36:2020/05/03(日) 20:20:11
……

ガシャァン!

店長「急に声かけるからビックリして器落としちまったじゃないか!」

店長「あーあ、おかげで割れちまったよ! 掃除も大変だ! どうしてくれる!」

女店員「すいません……」

女店員(クソが……どう考えてもてめーが悪いじゃねえかよ。器持ってスマホいじってたくせによ)

店長「バイトは謝ればいいから気楽でいいよなぁ、だけど店長は大変なのよ! 色々考えなきゃいけないことあるし……」ネチネチ

男「……」
38:2020/05/03(日) 20:23:26
男「店長さん」

店長「はい?」

男「すいません、三色チーズ牛丼の特盛りに温玉付きをお願いします」

店長「は、はい。おい、すぐに――」

男「店長さん。僕はあなたに作って頂きたいのです」

店長「……わ、分かりました。すぐ支度します」

女店員「……」
39:2020/05/03(日) 20:26:13.754 ID:bzF+brFW0.net
女店員(あいつの注文で店長のテンションが途切れて、説教が終わっちまった)

女店員(もしかして、アタシを助けてくれたのか……?)

男「……」モグモグ

女店員「あ、あのよ……」

男「?」

女店員「あ、ありがとよ」

男「……」パチッ

女店員「ウインクできてねえから! 両目ともつぶっちゃってるから!」
41:2020/05/03(日) 20:29:12.518 ID:bzF+brFW0.net
……

女店員「いらっしゃいませ」

男「……」ドヨーン

女店員(ん? いつになく落ち込んでやがるな)

男「すいません……三色チーズ牛丼の特盛りに温玉付きをお願いします……」

女店員「ああ……待ってな」
42:2020/05/03(日) 20:32:49
女店員「ほらよ」

男「ん? こ、これは……!」

男「今も伝説として語り継がれている七色チーズ牛丼の特盛り温玉付き! 通称レインボー丼!」

男「すこぶる美味だが作るのに手間がかかりすぎることからすぐ消えた幻のメニューだというのになぜ……!」

女店員「アタシもその……作り方知ってたからよ……」

女店員「もしかして……迷惑だった、かな?」

男「いえ! とても嬉しいです!」

男「今日はとても辛いことがあったのですが、これを励みに立ち直れそうです」モグモグ

女店員「フン……今日だけの特別だからな」
44:2020/05/03(日) 20:35:48
ある日――

男「さて、今日も三色チーズ牛丼の特盛り温玉付きを食べに行きますかね」

ガラッ

店長「ひいいいいっ!」タタタタタッ

男(あれは……たしか店長さん、のはず。走ってどこかへ行ってしまった)

男(店の中でいったい何が……!?)
46:2020/05/03(日) 20:38:36
強盗「へへへ……店長さんは逃げちまったなァ」

強盗「レジの金は頂いたし、あとはちょいとお前さんと楽しいことして、トンズラすっかな!」

女店員「う、ぐ……」

男「……! こ、これは!?」

女店員「こいつ刃物持ってる……に、逃げろ……!」

強盗「そうだ! 見世物じゃねえんだ、とっとと消えろ!」

男「……」
48:2020/05/03(日) 20:42:01
男「すいません、三色チーズ牛丼の特盛りに温玉付きをお願いします」

強盗「あ?」

男「すいません、三色チーズ牛丼の特盛りに温玉付きをお願いします」

強盗「なんだてめえ、消えろってのが聞こえ――」

男「すいません、三色チーズ牛丼の特盛りに温玉付きをお願いします」

強盗「えええ……?」

男「すいません、三色チーズ牛丼の特盛りに温玉付きをお願いします」

強盗(な、なんだこの“圧”は!?)
49:2020/05/03(日) 20:43:15
圧www
50:2020/05/03(日) 20:45:56
女店員(あいつのおかげで、強盗の注意がアタシから逸れた)

女店員(だけど、このままじゃあいつが刺されちまう!)

女店員(アタシにできることといったら……!)



男『すいません、三色チーズ牛丼の特盛りに温玉付きをお願いします』



女店員(あいつがあればっか注文してくるせいで、今やアタシは――)

女店員(三色チーズ牛丼の特盛り温玉付きをただの牛丼より早く作れるようになってる!)シュバババッ
51:2020/05/03(日) 20:48:40
男「すいません、三色チーズ牛丼の特盛りに温玉付きをお願いします」

強盗「いい加減にしろォ! もういい! てめえは氏ね!」

女店員「待ちなよ」

強盗「え?」

女店員「三色チーズ牛丼の特盛り温玉付き……お待ちどうッ!!!」ベシャッ!

強盗「ぶっ!? ぎにやぁぁぁぁぁっ! あっちいいいいいっ!」

女店員「食い物粗末にするのは心が痛むが……一番早く作れるやつだったからな」

強盗「チーズが目に……! ひいいいい、取れねえええ!」

女店員「今だ! 二人で取り押さえんぞ!」

男「は、はいっ!」
52:2020/05/03(日) 20:51:43
……

男「何とかなってよかったです」

女店員「……おう、ありがとな」

男「いえいえ、僕もテンパってしまって……」

女店員「う……」

女店員「うえぇぇぇぇぇん! 怖かったよぉぉぉぉぉぉ!」

男「……!」

男「え、あ、え、あの、えぇと、あの、だ、大丈夫です、か。ぼ、僕も怖かった、です」

女店員「そこはかっこよく慰めろよぉぉぉぉぉぉ!」
53:2020/05/03(日) 20:54:45
女店員「なぁ、チー牛野郎」

男「はい」

女店員「アタシのこと、どう思ってる?」

男「素敵な女性だと思ってますよ」

女店員「だったら、アタシと付き合わねえか?」

男「え!」

女店員「アタシはお前を気に入っちまったんだ……どうだ?」

男「あ、あの……不束者ですがお願いします!」

女店員「アハハ、なんだそりゃ。じゃあよろしくな!」
55:2020/05/03(日) 20:57:49
女店員「ところでお前、どうせ彼女いたことないんだろ?」

男「む……バカにしないで下さい、ありますよ!」

女店員「へぇ~、意外!」

女店員(なぜかちょっと残念)

女店員「まさか……ゲームとかの女の子ってオチじゃないだろうな」

男「なんで分かったんです!?」

女店員「当たってんのかよ!」
56:2020/05/03(日) 21:00:47
……

女店員「ここがアタシの家だ。一人暮らししてる」

男「お邪魔します……」

男「いやー、やはり女性の部屋というのは、女性特有のいい香りがしますねえ」クンクン

女店員「期待を裏切らない気色悪いコメントありがとよ」
61:2020/05/03(日) 21:04:11
女店員「んじゃー、何か料理作ってやるよ」

女店員「こう見えてもアタシ、料理教室に通ってたこともあるからな。料理得意なんだ」

男「意外ですねえ!」

女店員「意外とかいうな! 傷ついちゃうぞ!」

男「これは失礼しました」

女店員「で、どうする? なに作って欲しい? 和洋中、何でもいけるぞ?」

男「そうですねえ……では」
64:2020/05/03(日) 21:06:07.749 ID:bzF+brFW0.net
男「すいません、三色チーズ牛丼の特盛りに温玉付きをお願いします」

女店員「やっぱそれかよォォォ!!!」








おわり
65:2020/05/03(日) 21:06:44.688 ID:/Q50gZLJ0.net
71:2020/05/03(日) 21:13:00.467 ID:wywQ2JtUr.net

ちょっとチーズ牛丼食ってくる