1:2020/05/07(Thu) 21:53:38
~伍番街スラム~

エアリス「なんでも屋のお仕事、順調だね」

クラウド「ああ。……いちど休憩しよう。アイテムの調達に行ってくる」

エアリス「うん。わたしはここで待ってるね」

クラウド「わかった」

エアリス「ねえ、その剣」

クラウド「……? バスターソードがどうかしたか?」

エアリス「置いていったら? スラムの街、狭いし、背中に付けたまま歩き回ると、危ないよ」

エアリス「お休みする時ぐらい、外した方がいいと思うけどなぁ」

クラウド「……そうか。じゃあ……ここに置いていくから、見ていてくれ」

エアリス「はーい、りょうかーい」


―――

エアリス「うーん……この剣……やっぱり似てるなぁ。ザックスのに」

ズシッ

エアリス「うわ、おっも~い」
5:2020/05/07(Thu) 21:57:12
エアリス「すごいなぁ、こんなに重いの、あんなふうに振り回すんだ」

エアリス「よい、しょっと、えいっ」

ブンッ

エアリス「やあっ」

ブォン

エアリス「せーいっ」

ツルッ スポッ

エアリス「あっ」

ヒュゥゥゥゥ

バッシャーン

エアリス「あ……………あああ~っ!」


―――

エアリス「ど、どうしよう……。池の底に沈んじゃった……あ~あ、クラウド、ぜったい怒るよね……」

エアリス「よし。謝ろう、正直に。……でも、すっごく怒って、帰っちゃうかも。そんなお別れ、イヤだな」

エアリス「うーん……戻ってくるまでに池から引き上げられればいいんだけど……」
8:2020/05/07(Thu) 22:00:03
エアリス「リーフハウスのみんなにも協力してもらって……クラウドには内緒に……」ブツブツ

クラウド「エアリス」

エアリス「わっ」

クラウド「どうした? ……考え事か?」

エアリス「え? ううん、おかえり、はやいね」

クラウド「アイテムの調達はできた。仕事に戻ろう」

エアリス「あ、うん。そだね。でも、えーっと……ねえクラウド。もう少し、休まない?」

クラウド「いや、もう十分だ」

エアリス「そんなこと言わないで。そうだ、薬草でつくったお茶、淹れてあげる」

エアリス「美味しくて、落ち着くよ? クラウドはそこで待ってて」

ダッ

クラウド「お、おい――」

エアリス(戻ってくるの早すぎ、剣を探してる暇がない。こうなったら、最後の手段……!)
11:2020/05/07(Thu) 22:03:29
――

エアリス「お待たせ。特製ハーブティー、どうぞ」

クラウド「ああ……」

エアリス「……」

クラウド「……」

エアリス「飲まないの?」

クラウド「……さっきから気になってる」

エアリス「何が?」

クラウド「そこに立てかけてあったバスターソードが、無いぞ」

エアリス「あるよ」

クラウド「え? いや、でも」

エアリス「バスターソードはちゃんとあるから。そのハーブティー飲んでよ」

クラウド「けど――」

エアリス「いいから、飲んで」

クラウド「わ、わかった」

ゴクッ

クラウド「――?」

クラッ ヨロッ
12:2020/05/07(Thu) 22:06:27
クラウド(な、なんだ……? 頭がぼーっとする……)

エアリス「飲んだ? ちゃんと飲み込んだ? ごっくん、した?」

クラウド「あ、ああ……」

エアリス「よしっ。それじゃあ、はい! あなたの大切なバスターソードは、ここにあります」

スッ

クラウド「……」

エアリス「……」

クラウド「……これは……ただの木の棒だ」

エアリス「あれっ……まだ量が足りないかな」

クラウド「おいエアリス。オレのバスターソードは――」

エアリス「それはひとまず置いといて、もっと飲まない? ハーブティー、飲むよね?」

クラウド「もういい」

エアリス「そんなこと言わないで。ほら、どんどん飲んでよ」

クラウド「いや、エアリス、オレは――」

エアリス「い・い・か・ら! 無理矢理にでも流し込むからね」

クラウド「お、おい!」
13:2020/05/07(Thu) 22:10:04
ゴクゴクゴク

クラウド「―――???」

グルグル

クラウド(目が回る……)

エアリス「さて、もう一度……はい、クラウドさん! あなたの大切なバスターソードは、ここにあります!」

スッ

クラウド「……」

エアリス「……」

クラウド「……ここにあったのか」

エアリス「おっ! やった! バスターソードに見える? 見えちゃう?」

クラウド「あ、ああ」

エアリス「良かった~、これで時間稼ぎ、できそう」

クラウド「時間稼ぎ……?」

エアリス「ううん、こっちの話。ほら、なんでも屋のお仕事、するんでしょ? いってらっしゃい」

クラウド「一緒に来ないのか?」

エアリス「うん。私は……少し、探し物があるから。がんばってきてね」
15:2020/05/07(Thu) 22:15:23
―――

エアリス「そこらへんに落ちたはずなんだけど……」

スラムの子どもA「なんか固いのがあるな」

子どもB「網でひっかければとれるんじゃないか?」

子どもC「オレ、探してくる!」

エアリス「急いで、お願いねー!」

エアリス(幻覚を見せる薬草で騙してるけど……効果が切れたら剣じゃなくて木の棒だってすぐにバレちゃう)

エアリス(急いで本物を返さないと……急げ急げ~)


―――

クラウド「でやあっ」

コンッ

モンスター「……」

クラウド「……」


クラウド(斬りかかっても、効いてる気がしない……ここのモンスターは物理攻撃が効かないのか……?)

クラウド(いや、そんなはずは……問題があるとしたら、こっちの武器かもしれない……)

クラウド(なんだか、いつもよりも……だいぶ軽い気がしないでもない……七番街スラムに戻って、武器屋に相談するか……)

クラウド(エアリスに言って、すぐに七番街スラムへ向かおう)
16:2020/05/07(Thu) 22:18:09
―――

エアリス「どーおー? 引き上げられそー?」

子どもC「うーん、なかなかひっかからなーい!」

子どもA「長い棒かなにかないか?」

エアリス「頑張ってー! 応援してるー!」

子どもB「エアリスも手伝えよー!」



クラウド「……なんだか忙しそうだな」

クラウド(仕方ない。明日の朝まで待てとごねられるのも面倒だ……黙って行こう)

クラウド(エアリスは怒るだろうが……後で謝れば問題ないか……)
17:2020/05/07(木) 22:22:02.952 ID:s9x1UbT40.net
~七番街スラム~

ティファ「……あれ? クラウド!? クラウドー!」

クラウド「ティファ!」

ティファ「クラウド、無事だったんだね! 良かった……」

クラウド「なんとかな」

ティファ「心配したんだよ。プレートから下へ落ちちゃったから……」

クラウド「問題ない。ところで……その格好は? どうしてドレスなんて着ているんだ?」

ティファ「クラウドと別れてから、色々と進展があったの。実はこれから――」

ティファ「―――? あれ?」

クラウド「……なんだ? オレの後ろに何かあるのか?」

ティファ「えっと……クラウド、どうして……木の棒なんて背負ってるの?」

クラウド「え?」

ティファ「あの大きな剣は? 伍番街でなくしちゃった……?」

クラウド「なに言ってるんだ、ティファ。ちゃんとあるだろう、ここに」

ティファ「えっ……それが、剣?」

クラウド「そうだが……」

ティファ「いや、だって……」
18:2020/05/07(木) 22:25:30.922 ID:s9x1UbT40.net
ティファ「それ、木の棒だよね」

クラウド「は……? 何言ってるんだ。これはバスターソードだ」

ティファ「え、でも……」

ティファ(クラウド……どう見ても木の棒なのに……やっぱり、変……)

ティファ(記憶の混濁が進んでるのかな……だとしたら、どうしよう、すごい悪化してる……)

ティファ(とりあえず……今は話を合わせておこう。混乱させたらまずいし……やっぱり病院に行った方がいいかも)

クラウド「ティファ、大丈夫か? 疲れてるのか?」

ティファ「ううん、平気。ごめん、おかしなこと言って」

クラウド「部屋で休んだほうがいい。送るよ」

ティファ「大丈夫。大丈夫だから」

クラウド「……わかった」
19:2020/05/07(Thu) 22:28:32
クラウド「それで、さっき言っていた『進展』というのは――」

バキッ

クラウド「ん?」

ティファ「え?」

クラウド「……」

ティファ「クラウド? どうしたの?」

クラウド「…………」

ティファ「……ねえ、クラウド。今の音――」

クラウド「折れた」

ティファ「えっ」

クラウド「バスターソードが折れた」

ティファ「あっ……」
20:2020/05/07(Thu) 22:32:20
クラウド「軽く体重をかけただけで折れた」

ティファ「う、うん」

クラウド「鋼鉄でできてるのに」

ティファ「ねえ」

クラウド「壁に寄りかかっただけで、折れちゃった」

ティファ「ねえクラウド、落ち着いて」

クラウド「バスターソードはこんなに簡単に折れるのか」

ティファ「クラウド!」

クラウド「ティファ、バスターソードってこんな簡単に折れたりするものなのか?」

ティファ「クラウド、ごめんっ」

ドカッ

クラウド「ウッ!」

ドサッ

ティファ「ごめん、ごめんねクラウド。少しの間眠ってて……」

ティファ(クラウド、やっぱり……スラムに墜落した衝撃で悪化したんだ……。ううん、私が落ち込んでちゃダメ)

ティファ(目を覚ました時に安心できるように、新しい木の棒を探さないと……もっと頑丈なやつ……!)
22:2020/05/07(木) 22:35:14.552 ID:OEksQCi1p.net
大木持ってきそうだな
23:2020/05/07(木) 22:35:45.875 ID:s9x1UbT40.net
―――

~七番街スラム道中~

エアリス「はぁ……はぁ……もー、明日の朝、いっしょに行こうって言ったのになぁ……」

エアリス「せっかくバスターソードを取り戻したのに、勝手にひとりで帰っちゃうなんて……」

エアリス「ふぅ……ホントに、重たいなぁ、この剣。ちょっと休憩しよう」

ゴトン

エアリス「……はぁ~、こんなもの担ぎながら歩くハメになるなんて……もうクタクタ」

エアリス「でも急がないと、そろそろクラウドの薬草の効果が切れちゃうかな……」


ティファ「……」ガサゴソ


エアリス「あれ……あの人、あんなところで何してるんだろう」


ティファ「これは細すぎるかな……もっと長いの……頑丈なやつを……」ブツブツ


エアリス(あんな綺麗なドレスを着てるのに、スラムのガラクタを漁るなんて……)

エアリス(ひょっとして、危ない人なのかな……)

エアリス「っと、急がないと。よっこいしょ」
25:2020/05/07(木) 22:39:58.585 ID:s9x1UbT40.net
クラウド「……Zzz」

エアリス「あっ! クラウド、見つけた! おーい! クラウド……寝てるの?」

クラウド「う、うう……」

エアリス「お昼寝、かな。そうだ、今のうちに剣を返してこう」

スッ

エアリス「はい、お返ししますよ……ってね」

クラウド「……ん?」パチッ

エアリス「わっ」

ガバッ

クラウド「……エアリスか?」

エアリス「う、うん。おはよー」

クラウド「……なんでオレは寝ていたんだ? ……記憶が曖昧だ」

エアリス「さあ、疲れてたからじゃない? そんなことより。酷いよ、クラウド」

クラウド「え?」

エアリス「明日の朝、一緒に七番街スラムへ行こうって話はどうなったのかな」

クラウド「……いや、少し気になることがあったから、それで……」
29:2020/05/07(Thu) 22:44:09
エアリス「気になることって?」

クラウド「バスターソードがいつもと違う感じで……」

エアリス「な、なるほど。バスターソードってそれだよね」

クラウド「ああ。そいつが妙に軽い。もっと重かったはずなんだ」

エアリス「へぇー……。ね、ためしにもう一回、持ってみたら? 今度は重いかもよ?」

クラウド「いや、何度試しても軽くて――」

ズシッ

クラウド「凄い重い」

エアリス「良かったじゃん」

クラウド「いつも通りの重さだ……どういうことだ……?」

エアリス「まあ、そういうこともありますよ」
31:2020/05/07(Thu) 22:46:00
エアリス酷すぎワロタ
33:2020/05/07(Thu) 22:48:36
クラウド「ところで……ティファを見なかったか? さっきまで一緒にいたんだが……」

エアリス「どんな人? 一緒に探すよ。どうせ暇だし」

クラウド「白のタンクトップで……いや、今日は青いドレスを着ていたな」

エアリス「それって……あの人のこと、かな」

クラウド「知ってるのか?」

エアリス「黒くて長い髪の」

クラウド「ああ」

エアリス「ここに来るまでに見かけたよ。見かけた、けど、……ねえ、そのティファって人は……どういう人なの?」

クラウド「どういう?」

エアリス「えっとね……なんだか思いつめた様子で、ゴミを漁ってたから……変だなぁって」

クラウド「ゴミを?」

エアリス「うん。何か言ってた。ブツブツ、ブツブツ」

クラウド「……そういえば……さっき会った時も、様子が変だったな」

クラウド「沈んだ表情で、まるで……幻を見ているような感じだった」

エアリス「ねえ、それって……心の病気なんじゃ」

クラウド「えっ……!?」
37:2020/05/07(Thu) 22:54:26
ティファ「クラウドー!」


エアリス「あっ、あの人だ……!」

クラウド「ティファ……!」


ティファ「目、覚めたんだ。……あれ、こちらは?」

エアリス「こんにちは」

クラウド「伍番街で助けてもらった、知り合いだ。……と、ところで……ティファはどこで何をしていたんだ?」

ティファ「え? えっーと……ちょっと、ね……」

クラウド(……やはり様子が変か……)

ティファ「私のことはいいから。それよりも、はい、クラウド。バスターソード! 気にいってもらえればいいけど」

クラウド「えっ……」

ティファ「一番かっこよくて、頑丈そうなの選んできたから。剣がないと落ち着かないでしょ? どうぞ」

クラウド「ティ、ティファ……?」ガクガク

エアリス「ク、クラウド、ちょっと。こっちこっち」


クラウド「エアリス。どうしたらいい。あれはどう見ても、ただの木の棒だ。普通じゃない」

エアリス「やっぱり、ティファは精神的に病んじゃってるんだよ。そうでなきゃ、棒切れを剣だなんて言わないもん」
39:2020/05/07(Thu) 22:55:33
ワロタ
41:2020/05/07(Thu) 22:59:29
エアリス「ティファに話を合わせてあげるためにも、今はバスターソードを隠しておいた方がいいよ」

クラウド「わ、わかった」


ティファ「……どうしたの? ふたりとも」

クラウド「い、いや、なんでもない」

エアリス「あはは」

ティファ「そう? じゃあ、これ、元ソルジャーの大切な武器でしょ。今度は壊さないようにね」

クラウド「あ、ありがとう……」

ティファ「もうこんな時間……急がないと」

クラウド「こ、これから何かするのか? ホントに、もう休んだほうが……」

ティファ「え? 大丈夫だよ。それに、説明するのが遅れちゃったけど……これからコルネオのところへ行かないとだから」

エアリス「コルネオ!? コルネオって、あのドン・コルネオ!?」

ティファ「う、うん」

エアリス「ウォールマーケットを取り仕切ってるならず者だよ!? そんな格好で自分からコルネオに会いに行くの!?」

ティファ「そうだけど……これには理由が――」

エアリス「クラウド。まずいです、これ。完全におかしい。自ら操を捧げにいくようなものだもん」

クラウド「!!!」
42:2020/05/07(Thu) 23:01:43
クラウド「ティファ。頼む」

ティファ「ん?」

クラウド「もう休んでくれ。……もっと、自分を大切にしてくれないか」

ティファ「え? え?」

エアリス「ティファ、クラウドの言うとおり。初対面のわたしにこんなこと言われるのもなんだろうけどさ」

エアリス「疲れてるんだよ。きちんと心を休めて、自分と向き合おう?」

ティファ「えっと……ふたりとも、なにか勘違いしてない? コルネオの元に行くのには理由があって――」

クラウド「もう何も言うな。わかったから。さあ、今日はもう帰ろう」

ティファ「で、でも……」

クラウド「この木の棒……いや、バスターソード、ありがとう。一生懸命、探してくれたんだな」

ティファ「えっ、クラウド、泣いてるの?」

エアリス「ねえティファ。色々辛いこともあるんだろうけど、全部、話そう? わたしは聞くから」

クラウド「オレも聞く。興味あるね」

ティファ「え? なに? なんなの?」

その後、各々の誤解を解くのに長い時間を要した――

End
43:2020/05/07(木) 23:02:24.183 ID:3QrY9Yfr0.net
興味あるねwww
44:2020/05/07(Thu) 23:03:13
興味しかないね
45:2020/05/07(Thu) 23:03:31

興味あるねはワロタ
49:2020/05/07(Thu) 23:12:07
丸太はもったかあ!エンドかと思ってた
27:2020/05/07(Thu) 22:41:41
何故か水に浮かぶツォンが出てきた

28:2020/05/07(Thu) 22:43:59
>>27
沈んでね?
30:2020/05/07(Thu) 22:44:23
>>28
ぎり浮いてる
引用元:http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1588856018