1: 2011/07/26(火) 21:34:10.76 ID:ZhpSvqEO0
「――こんばんは」


「そちらではこんにちはかしら。それともおはよう?」


「私の名前は壱原侑子、『次元の魔女』と言った方がいいかしら」


「いいえ、この世にあるのは必然だけ。この出遭いも偶然ではなく必然」


「アナタには願いがある。そうでしょう?」


「ええ、ただしそれには対価が必要よ」


「与えすぎてもいけない、奪いすぎてもいけない」


「過不足なく、対等に、均等に――」

3: 2011/07/26(火) 21:38:12.09 ID:ZhpSvqEO0
「アナタの願いはあまりに大きすぎる。世界の命運を左右するなんてことアナタの魂を頂いたって釣り合わないわ」


「けれど、似たようなことというのなら不可能ではないかしら」


「私がするのはただの仲介。その程度であれば対価も支払えるでしょう」


「対価はアナタの記憶――」


「過去のではなく、アナタが得るはずだった未来の記憶」


「――契約、成立ね」


――――――――

――――

――

5: 2011/07/26(火) 21:42:15.10 ID:ZhpSvqEO0
「はぁ……はぁ……」

知らない女の子が走ってる……

EXIT、あれは……非常口?

ガチャン、キィ……

ここは、……どこなの?

別の女の子が大きな怪物と戦ってる……

「ひどい……」

「仕方ないよ、彼女一人では荷が重すぎた。でも彼女は覚悟の上だよ」

白い、犬?みたいな人形が喋ってる……

「そんな……、あんまりだよ、こんなのってないよ」

6: 2011/07/26(火) 21:45:15.56 ID:ZhpSvqEO0
「諦めたらそれまでだ。でも君なら運命を変えられる」

これは、夢なの?

「避けようのない滅びも、嘆きも、全て君が覆せばいい。そのための力が君には備わってるんだから」

「本当なの? 私なんかでも本当に何かできるの? こんな結末を変えられるの?」

「もちろんさ。だから僕と契約して魔法少女なってよ」

ねぇ、あなたは誰?

7: 2011/07/26(火) 21:50:14.77 ID:ZhpSvqEO0
ジリリリリリリ……

「ほえ……?」

「やっと起きたか、さくら」

さくら「ケロ、ちゃん? 今のって、……夢?」

ケロ「なんや、変な夢でも見たんか?」

さくら「うん。えっとね、……えっと、あれ?」

ケロ「もしかして……」

さくら「……忘れちゃった」

ケロ「なんじゃそりゃーーーっ!!」ビシィッ

さくら「えへへ……」

8: 2011/07/26(火) 21:54:51.56 ID:ZhpSvqEO0
わたし、木之本 桜。
友枝中学校に通う中学一年生。
好きな科目は体育と音楽、
嫌いな科目は特にないけど中学になって算数が数学に名前が変わってちょっと不安な
とりあえず元気が取り得の女の子です。

そしてこっちの子はケロちゃん。
本当の名前は『ケルベロス』さん。
クロウカードっていう魔法が使えるカードを守ってた『封印の獣』さんなの。

12: 2011/07/26(火) 21:59:30.29 ID:ZhpSvqEO0
ケロ「けど、さくらが夢見るのって久しぶりやなぁ。クロウと分かれて以来とちゃうか?」

さくら「うーん、そうだね」←着替えて髪梳かし中

ケロ「ちょっとだけ不安やなぁ。もしかしたら危険を知らせるような夢やったかも知れん」

さくら「予知夢だったかもしれないってこと?」

ケロ「かもしれへんけど、そうやないかもしれん」

ケロ「ただ、さくらの力は安定してるし望まんかったら見ぃへんはずや」

さくら「それじゃあ、普通の夢だったかもしれないのかな?」

ケロ「んー……、かもしれへんけど、」

さくら「そうじゃないかもしれない、と」

14: 2011/07/26(火) 22:05:01.17 ID:ZhpSvqEO0
ケロ「まぁ、封印の鍵はいつも持ち歩いとるんやし、なんかあっても大丈夫やろ」

さくら「うん。……ねえケロちゃん、後ろの方、髪の毛跳ねてない?」

ケロ「おう、問題な……ぅん?」

さくら「ほえ? どこか変だったりする?」

ケロ「さくら、鏡見てみい!」

さくら「鏡? ……ほええええええ!? 何これ、水面みたいに波打ってる……」

……きて、こちらへ……

さくら「今、何か聞こえたような……。きゃっ、鏡の中に引っ張られ――」

さくら「きゃああああああ!!」

ケロ「さくらああああああ!!」

16: 2011/07/26(火) 22:11:19.00 ID:ZhpSvqEO0
――――――――

――――

――

ズズズズズ、

……べしゃり。

さくら「イタタ……、一体何がどうなって」

ケロ「う~ん、さくら大丈夫かぁ?」

「ようこそ、二人とも」

さくら「……ほえ?」

ケロ「……お前は!」

18: 2011/07/26(火) 22:14:53.57 ID:ZhpSvqEO0
「初めまして、桜ちゃん。ケルベロスは久しぶりね」

ケロ「さっきのは次元の魔女の仕業やったってことかい」

さくら「ケロちゃん、知ってる人なの?」

侑子「私の名前は壱原侑子、次元の魔女なんて呼び方をする者もいるわね」

ケロ「言うたらクロウの知り合いや」

さくら「クロウさんの……」

20: 2011/07/26(火) 22:21:26.69 ID:ZhpSvqEO0
ケロ「で、お前がさくらに何の用なんや?」

侑子「ちょっとね。人を救って貰いたいの」

さくら「人助け、ですか?」

侑子「とある別の世界でずっと苦しんでる人がいるの。桜ちゃんにはその人を救ってもらいたいの」

さくら「べ、別の世界……? 海外ってことですか?」

侑子「いいえ、違うわ。多重世界って言えばわかるかしら? 色んな、たくさんの世界」

さくら「えっと、漫画やテレビのSFみたいな感じですか?」

侑子「まぁそんな感じよ。桜ちゃんにはその異世界へ行って人助けをして欲しいのよ」

さくら「異世界……なんとなくピンと来ないですけど」

23: 2011/07/26(火) 22:25:32.91 ID:ZhpSvqEO0
侑子「あら、そうは言ってもアナタはすでに異世界にきてしまっているわよ?」

さくら「ほえ?」

ケロ「さくらがさっきまでおった世界と今おるここは別の世界なんや」

さくら「ほええええええ!?」

 :
 :
 :

侑子「落ち着いたかしら?」

さくら「は、はい。なんとか」アセアセ

24: 2011/07/26(火) 22:30:05.34 ID:ZhpSvqEO0
侑子「それで、桜ちゃんは人助けの話、引き受けてくれるかしら?」

さくら「わたしにしかできないのなら助けてあげたいんですが……」

侑子「何か問題があるの?」

さくら「その、わたし、今日学校の日直で……」

侑子「……プッ。あはははははは!」ヒィーヒィー

さくら「ほ、ほえー……」

27: 2011/07/26(火) 22:34:10.19 ID:ZhpSvqEO0
侑子「あははは……、あーもう桜ちゃんってばほんと可愛いわね」

さくら「あ、ありがとうございます?」

侑子「そういう心配なら平気よ、あなたがこちらへ来た時間と同じ時間に戻してあげるわ」

さくら「そんなことできるんですか?」

侑子「ええ、可能よ」

さくら「それなら……」

ケロ「ちょっと待つんやさくら」

さくら「ケロちゃん?」

28: 2011/07/26(火) 22:39:58.99 ID:ZhpSvqEO0
ケロ「人助けやなんて簡単に言うたけど、さくらに危険はないんやろうなぁ?」

侑子「危険なことよ。とてもとても」

ケロ「あかん! さくらを危ない目に合わせることはわいが許さへん!」

さくら「ケロちゃん……」

侑子「桜ちゃん、当然だけどアナタには断る権利があるわ」

さくら「……でもわたしじゃないとダメなんですよね?」

ケロ「さくら!」

29: 2011/07/26(火) 22:45:58.00 ID:ZhpSvqEO0
侑子「ええ、その通りよ。アナタが手を伸ばさなければ彼女は絶対に救われない」

さくら「……なら、わたしやります!」

ケロ「さくら……、ほんまにええんか?」

さくら「うん、苦しんでる人がいるならほっとけないし、私にしかできないことならなおさらだよ」

侑子「ありがとう。アナタならそう言ってくれると思っていたわ。……ではこれを」スッ

さくら「私の靴! それと……クロウカード? けど何も書かれてない……」

侑子「それはクロウがこうなることを知って私に託したカード。きっとアナタの助けになってくれるわ」

ケロ「クロウの奴、それならそうと言うとかんかい」マッタク

侑子「桜ちゃんにこのことを伝えないこと、それが彼が私に払った対価だから」

ケロ「ふん!」

30: 2011/07/26(火) 22:48:34.28 ID:ZhpSvqEO0
侑子「桜ちゃん、これはとても危険なことだけど……」

侑子「アナタなら彼女を救って無事にアナタの世界に戻ることができるわ」

さくら「はい。絶対、大丈夫です。……ところでその別の世界ってどうやって行けば」

侑子「その世界に行くのは簡単よ、正門をあっちの世界に繋いでおいたからこの店から出ればいいだけ」

侑子「本当なら世界を渡るために対価が必要なんだけど、それは依頼主から頂いてるからそれはいいの」

さくら「ここってお店だったんですか?」

侑子「ええ、そうよ」

侑子(いずれあなたも客としてここへくることになるのだけれど……)

31: 2011/07/26(火) 22:53:15.24 ID:ZhpSvqEO0
さくら「じゃあ、行ってきます」タッ

ケロ「できればもう二度と会いたないけどな」パタパタ

シュゥーン……

侑子「良い旅になることを祈ってるわ」

パタパタパタ……

侑子「あら?」

「こんにちは侑子さん。もしかして誰かきてたんですか?」 ドクガイッパツ?

侑子「ええ、ちょっとね。それより四月一日にお願いがあるんだけど――」

32: 2011/07/26(火) 22:56:28.44 ID:ZhpSvqEO0
――――――――

――――

――

シュゥーン……

さくら(壱原さんのお店を出るとそこは…)

どんがらがっしゃ~ん

さくら「ほええええ!!」

ケロ「さ、さくら!? いきなり何すっ転んどるんや」

さくら「あいたた……、だって急に暗くなったからバランス崩しちゃって」

ケロ「まぁ、さっきまで明るかったからなぁ」

ケロ「どこやろここ、真っ暗ってわけやないけど薄暗いし狭いし」

さくら「路地裏みたいだね。左右にあるの大きな建物みたいだし、都会なのかな?」

ケロ「さくらが住んどったとことはぜんぜんちゃうなぁ」

35: 2011/07/26(火) 22:59:24.95 ID:ZhpSvqEO0
さくら「ねぇ、ケロちゃん」

ケロ「なんや、さくら?」

さくら「そういえばわたし、『人を救って』って言われたけど、誰を救えばいいのかな?」

さくら「どこの誰を救えばいいか何も聞いてなかったよね……」

ケロ「それなら問題あらへん」

さくら「ほえ? ケロちゃんは壱原さんに聞いてたの?」

ケロ「そうやない。あいつが何も言わんかったってことは、初めから伝えるつもりはなかったっちゅーことや」

ケロ「もしさくらが聞いとったとしても『行けばわかるわ』としか言わんかったやろうな」

さくら「それじゃあ、私はどうしたら……」

ケロ「んー、とりあえずもっと広いとこ出よ」

さくら「うん、そうだね」

37: 2011/07/26(火) 23:05:14.14 ID:ZhpSvqEO0
テクテクテク……

さくら「……」

ケロ「……」

テクテク、ピタ

さくら「ケロちゃん」

ケロ「ああ、わかっとる」

さくら「なんか変だよ、結構歩いてるのにどこまで行っても出口が見えないなんて」

ケロ「それに、これは魔力か……? 変な気配がしおる」

さくら「誰かが魔法を使ってるってこと?」

38: 2011/07/26(火) 23:07:32.76 ID:ZhpSvqEO0
さくら「どんな世界かわからないけど、ここは魔法が普通にある世界なのかな?」

ケロ「わからん、とりあえずこっから急いで離れた方がええんは間違いないわ」

『星の力を秘めし鍵よ、真の力を我の前に示せ。契約の元さくらが命じる』

さくら「封印解除(レリーズ!)」

さくら「よし、跳(ジャンプ)のカードで……、ぇ?」

ぐにゃり……

ケロ「なんや! 急に気配が大きなったで!?」

さくら「辺りも変だよ! さっきまで路地裏にいたのに……」

パァァァ!

ケルベロス「気ぃつけろさくら、何が起こるかわからん!」ヘンシン

さくら「わかってる!」ギュッ

39: 2011/07/26(火) 23:11:53.54 ID:ZhpSvqEO0
クケケケ、ヒヒヒ
  アハハハ、ウフフフ

さくら「なんだろう……、ちっちゃい小人さんみたいなのがいっぱい出てきたけど」

ケルベロス「使い魔みたいなもんか? 今んとこ攻撃してくる様子はないが」

「あなたたち! 早く逃げなさい!」

さくら「ほえ!? だ、誰?」

「私が誰かなんてどうでもいいことよ。あなたは私が来たほうに向かって走ればいい」

「早くしないと、このペットも一緒に……ッ!?」ビクッ

ケルベロス「」ジー

「この子は……犬か何かかしら? ずいぶんと大きいけれど」

40: 2011/07/26(火) 23:17:16.96 ID:ZhpSvqEO0
ケルベロス「誰が犬やねん!」ガォ

「しゃ、喋った!? まさかこいつが魔女なの!? それともインキュベーターの仲間!?」ジャキッ

さくら「ほええええ! け、拳銃!? ダメェ! ケロちゃんを撃たないで!」バッ

ケルベロス「さくら! 下がるんや!」

「……」

さくら「……」ウルウル

ケルベロス「……」グルル

「敵では、ないようね」

さくら「ほっ」

42: 2011/07/26(火) 23:20:16.76 ID:ZhpSvqEO0
「見たことないけれど、あなたたちも魔法少女なのかしら?」

さくら「魔法少女? うん、魔法は使えるよ」

「……それとそっちの、黄色いあなた」

ケルベロス「ケルベロスや」フン

「ケルベロス? インキュベーター……、キュゥべえと名乗る生き物に心当たりはないかしら」

ケルベロス「知らん知らん、聞いたこともあらへん」

「そう。ならあなたたちはここから早く立ち去りなさい」

さくら「え、えっと」

ケルベロス「そうはいかん、そっちこそ何者なんや」

ケルベロス「大体、お前の言うこと聞いて助かるっちゅう保証どこにあるんや」

43: 2011/07/26(火) 23:23:38.48 ID:ZhpSvqEO0
「なら好きにすればいいわ。私は私のやるべきことをやるだけ」

さくら「(ねぇケロちゃん、どうしよう)ヒソヒソ」

ケルベロス「(下手に動くよりこいつを見張っといたほうがええと思う)ヒソヒソ」

ケルベロス「(さくらも気付いとるやろうけどこの嬢ちゃん魔法が使えるはずや)ヒソヒソ」

さくら「(うん、魔力の気配を感じるよ)ヒソヒソ」

「……」カツン

テクテクテク……

ケルベロス「さくら、追うんや」ダッ

さくら「うん!」タッ

44: 2011/07/26(火) 23:29:11.06 ID:ZhpSvqEO0
テクテクテク……

「……」チラッ

さくら「あ、あはは……。邪魔にならないようにするので」

「そう。ならいいわ」スッ

ケルベロス(こいつもなんか力持ってるみたいやけど魔力の気配はさくらの方が断然でかい……)

ケルベロス(何が『ならいいわ』やっちゅうねん)

テクテク、ピタ

さくら「ほえ?」

「くるわよ」

グルルルルルル……

唸り声とともに地面から染み出るように現れたのは巨大な獣の化物だった。

46: 2011/07/26(火) 23:34:06.44 ID:ZhpSvqEO0
さくら「大きなケロちゃん!? 5メートルくらいあるよ!」

ケルベロス「わいはあんなかっこ悪ぅないわ!」

「そこっ!」

少女は手にしていた拳銃を化物へと向けトリガーを引き銃弾を発射する。

パン!パン!

ワオォーーーン!

二発、三発と発射された銃弾は化物に命中しているが致命傷にはなり得ていない様子だ。

「これでおしまい」

カチリ、と音がしたかと思うと直後に爆発が起こりオレンジ色の炎が化物を包み込んだ。
気付けばついさっきまでさくらたち近くにいたその少女はずいぶんと離れた場所に立っている。

さくら「ほえー!?」

ケルベロス「あの嬢ちゃん、何をしたんや……」

目の前の光景に理解が追いついていないさくらとケルベロスは目を白黒させるばかりだった。

48: 2011/07/26(火) 23:36:40.48 ID:ZhpSvqEO0
さくら「今の爆発、あなたがやったの?」

「そうよ。一応私のことは誰にも言わないでもらえると助かるわ」ファサ

さくら「あ、はい。わかりました」

二人の少女が短い会話を交わす一方で、ケルベロスはいまだ炎に包まれている獣の化物を注視していた。

グルル……、ゥワオォーーーン!!

ケルベロス「!! さくら、まだあの化物は死んでへん!」

さくら「え?」

「なっ!」

化物が起き上がるのを逸早く察知したケルベロスが二人に注意を喚起する。

49: 2011/07/26(火) 23:40:01.33 ID:ZhpSvqEO0
ケルベロス「さくら、剣(ソード)のカードや!」

さくら「わかった! 力を貸して、『剣(ソード)』!」

さくらはポケットからカードを取り出して空中に投げると、それに向かって持っていた杖を振り下ろす。
すると、さくらの持っていた杖が長剣(ロングソード)へと変貌を遂げていた。

「これがこの子の魔法!?」

ワォーーーン!

さくら「ヤアァァァ!」

炎をまとったまま飛び掛ってきたその化物に向かって、さくらは長剣を縦に振り抜く。
まだ化物との距離は数メートルほどあるというのに――。

ガ、ガアアァ……

そこにあったのは真っ二つに斬り捨てられた化物の姿だった。

50: 2011/07/26(火) 23:44:15.45 ID:ZhpSvqEO0
「魔女を一刀両断にするなんて……」

ぐにゃり……

さくら「あ、元の場所に戻ってこれたよ」

ケルベロス「元凶やったさっきの化物を倒したからやな」

パァァァ!

ケロ「ふぅ、敵も倒せたしこっちの姿でええやろ」

「なっ……。あなたたちは一体何者なの……?」

さくら「えっとですね、わたしたちは人助けでこの世界にやってきたんですけど……」アセアセ

(人助け? この世界?)

さくら「でも誰を助けたらいいかわからなくって……」ワタワタ

51: 2011/07/26(火) 23:47:36.70 ID:ZhpSvqEO0
さくら「そうだ! あなたは私の助けが必要だったりしませんか?」ピコーン

ケロ「おー、嬢ちゃんも魔法使えるみたいやし同業者っぽいもんな」

「ふふ、本当に助けてもらえるのならありがたい話だけれど」

さくら「じゃあ!」

「結構よ。もう誰にも頼らないって決めてるの」キッパリ

さくら「そう、ですか……」ショボン

「私はもう帰るわ。これはあなたのものよ」スッ

さくら「これは?」

「さっきあなたが倒した魔女のグリーフシードよ。私はまだ蓄えがあるから大丈夫だから」

さくら「ぐりーふ、しーど?」

「……それじゃ」

さくら「ぁ……、行っちゃった」

53: 2011/07/26(火) 23:52:47.92 ID:ZhpSvqEO0
さくら「ねぇケロちゃん、これからどうしようか」

ケロ「ぶっちゃけなんも手がかりないもんなぁ」ゥーン

ケロ「とりあえず、この路地裏から出て困ってそうな人探すしかあらへんやろ」

さくら「そうだね。ところで、さっきもらったこれ……」

ケロ「グリーフシード言うとったな。なんに使うんやろ?」

さくら「蓄えがあるとか言ってたから、何かに使うと思うんだけど」

ケロ「この世界のお金かなんかかいなぁ、とりあえず持っといたほうがええやろ」

さくら「うん」

ケロ「それじゃあ困ってそうな人を探して、レッツゴーや!」

さくら「おー!」

54: 2011/07/26(火) 23:55:29.71 ID:ZhpSvqEO0
――――――――
――――
――

さくら「はうー、もう二時間ぐらい歩き回ってるよね……」

ケロ「せやなぁ。いざ路地裏から出てみたら普通の人ばっかりやし」

ケロ「わいらみたいなんの手助けが必要そうな人て、ぜんぜん見当たらへんわ」

さくら「辺りも暗くなってきちゃったし、今日の泊まる場所とかどうしようか」

さくら「わたし、こっちにきたら困ってる人とかすぐ見つかってすぐに帰ってこれるんだと思ってたよ」

ケロ「次元の魔女め、今度会うたらとっちめたる!」

55: 2011/07/26(火) 23:59:55.91 ID:ZhpSvqEO0
さくら「わたし喉渇いてきちゃった……」

ケロ「水(ウォーティ)のカードでも使うか?」

さくら「それはちょっと……。どこかに自動販売機とかないかな」

ケロ「んー、お! あっちに公園があるで」

さくら「ジュースとか売ってるといいなぁ」

 :
 :
 :

さくら「しくしく……」

ケロ「そんな落ち込むなや、さくら」

58: 2011/07/27(水) 00:04:59.06 ID:X5EfqF5S0
さくら「自動販売機はあったけど私が持ってるお金、全部使えないなんて……」

ケロ「まぁ、別の世界やししゃーないっちゃあしゃーないんやろうけど」

ケロ「やっぱここは水(ウォーティ)のカードで」

さくら「今はそれでいいかもだけど、ご飯とか泊まるところとかお金が使えないんじゃ何もできないよう……」

ケロ「飯は花(フラワー)のカードで食べられそうな花でも出して、夜は樹(ウッド)のカードでこの辺に家でも」

さくら「ケロちゃんむちゃくちゃだよー!」ワーン!

59: 2011/07/27(水) 00:07:57.31 ID:X5EfqF5S0
「お嬢ちゃん、お困りかな~?」

さくら「ほえぇ!?(け、ケロちゃん、人形のふり!)ヒソヒソ」

ケロ「」ピタッ

「あはは、ごめんごめん、突然後ろから声をかけられたら誰だって驚くよね」

さくら「えっと」

「いやいや、私はまったくもって怪しいものじゃありませんよ?」

ケロ(自分で自分こと怪しい者ですなんていう奴おらへんわ!)

61: 2011/07/27(水) 00:13:37.38 ID:X5EfqF5S0
「私、さやかって言うんだ。趣味は人助けの可愛い可愛い女の子だよ!」

さくら「わたしは木之本 桜です」ペコ

さやか「困ってることとかあったら相談に乗るよ? 私なんかでよかったらだけど」

さくら「えっと、でも、その……」

ぐ~……

さくら「」///

さやか「もしかして、お腹が空いてるの?」

さくら「うぅ、はい……」

62: 2011/07/27(水) 00:17:52.81 ID:X5EfqF5S0


――バーガーショップ。

さくら「あの、ありがとうございます!」

さやか「いいよいいよこのぐらい。困ったときはお互い様ってね」

さやか「でも災難って言うか天然って言うか、他所の国からきたばっかりで日本のお金持ってないなんて」プププ

さくら「ずいぶんと急だったので……」モグモグ

さくら(こっちの世界でも日本って言うんだ……。そういえば別の世界なのに日本語で通じてるよね)

さくら(でもお金だけは使えないんだね……ぐすん)

63: 2011/07/27(水) 00:21:09.88 ID:X5EfqF5S0
さやか「さくらちゃんって何年生なの?」

さくら「私は中学一年生です」モグモグ

さやか「じゃあ私の一つ下だね。今着てるのは前の学校の制服? もしかして見滝原中に転校してくるの?」

さくら「ええっと、それは……んぐっ!」

さやか「うわっ、喉詰まった!? はいジュース!」

さくら「ごくごく……、ぷは。ありがとうございます」ホッ

さやか「こっちこそごめんね、こんなにいっぱい話しかけられたら食べにくいよね」

さやか「最近、他人(ヒト)とお喋りなんかしてなかったから、ついね」

さくら「ほえ? ヒトとって家族ともですか?」

さやか「あー……、あたしってば今絶賛家出中だったりなんかしたりしてー」

さくら「えぇー!?」

さやか「声大きいって!」

さくら「あ、ごめんなさい……」シュン

64: 2011/07/27(水) 00:25:21.87 ID:X5EfqF5S0
さくら「喧嘩、しちゃったんですか?」オソルオソル

さやか「そういうわけでもないんだけどねー」アハハ

さやか「世間のしがらみとかそういうのが嫌になったいうか、まぁ中学二年生にはありがちな話なのよ」

さくら「ほえー、私はまだ一年生なので……」

さやか「ごめんね、しんみりした話しちゃって……」

さくら「いえ、そんなこと……。でもおうちには帰ったほうがいいと思います」

さやか「さくらちゃんはいい子だねぇ、私の嫁になって欲しいわ」

さくら「わわわたしは、そういうのは! それにわたしには小狼君が」ゴニョゴニョ

65: 2011/07/27(水) 00:29:28.11 ID:X5EfqF5S0
さやか「冗談だってば。っていうか、さくらちゃん好きな人いるんだ?」

さくら「えっとえーっと……」カオマッカ

さやか「あははは、わかりやすいなー、ほんと」

さやか「その人のこと、ほんとに好きなんだったら早めに告白したほうがいいぞ。コレお姉さんの経験則!」

さくら「ぁ、はい」

さやか「……」

さくら「……」

さやか「食べ終わったみたいだし、出よっか」

さくら「はい」

66: 2011/07/27(水) 00:32:12.17 ID:X5EfqF5S0
――――――――

さくら「初対面なのにご馳走してもらって……。ありがとうございました」

さやか「いいよ、このくらい。それじゃ私はこれで」バイバイ

さくら「……あの」

さやか「ん?」

さくら「何か困ってることとか、助けて欲しいこととかありませんか?」

さやか「……へ?」ポカーン

さくら「いや、その、ハンバーガーご馳走してもらいましたし、そのお礼って言うかなんていうか」

さやか「あー、ほんと気にしないでいいから。その気持ちだけで私はお腹いっぱいです」

68: 2011/07/27(水) 00:36:47.92 ID:X5EfqF5S0
さやか「ありがとね、実はちょっと落ち込んでたんだけどさ」

さやか「この街にあなたみたいな子がいるなら私はもう少しがんばれる気がするよ」

さやか「私、これから行かなきゃいけないとこあるから、今度こそバイバイ」フリフリ

さくら「……はい、さようなら」フリフリ

さくら「……」

さくら「行っちゃった」

ケロ「さくらだけうまそうなもん食うてずるい~……」ドヨーン

さくら「け、ケロちゃん?!」

ケロ「まぁ、わいは腹減ったりとかせぇへんしー、道楽で食っとんのやで別にええねんけどなー」メソメソ

69: 2011/07/27(水) 00:39:47.96 ID:X5EfqF5S0
ケロ「それにしてもさっきの嬢ちゃん、ええ子やったなぁ」

ケロ「見ず知らずのさくらに飯おごってくれるやなんて」

さくら「だね。何かお礼とかしたかったんだけど」

ケロ「礼ができるくらいなら空腹で困ってへんわなぁ」

さくら「あはは……。あれ?」ピクッ

さくら「ケロちゃん、これって」

ケロ「こっちの世界にきてすぐに感じた変な魔力と似とる」

さくら「それにこの反応、さやかさんが走っていった方角だよ!」

ケロ「あの嬢ちゃんが化物に襲われるかもしれへん。さくら!」

さくら「わかってる、助けなくちゃ!」タタッ

70: 2011/07/27(水) 00:44:02.10 ID:X5EfqF5S0


ケロ「反応はこの路地裏の先や!」

さくら「ここまで走ってきたけどさやかさんいなかった……、もしかして」

ケロ「大丈夫や、そんなに時間は経ってない。もしおったとしても間に合うはずや」

さくら「お願い、無事でいて……」

72: 2011/07/27(水) 00:48:22.70 ID:X5EfqF5S0
さくらたちは背の高い建物に囲まれて薄暗い路地裏を駆けていく。

ケロ「近いで、さくら!」

さくら「わかってる!」

封印の鍵はすでに封印解除され杖の形に変えてある。
魔力の強さからもうすぐまたあの化物が現れるのだと考えると思わず杖を握る手に力がこもるのを感じた。

ケロ「そこを右や! その先に敵が……」

T字路を右へ曲がる。
そしてその先でさくらたちが目にしたもの、それは。

さくら「さやかさん!?」

意識を失い倒れているさやかの姿だった。

74: 2011/07/27(水) 00:52:15.51 ID:X5EfqF5S0
ケロ「どういうことや、さっきまでは反応があったのに何も感じへん……」

さくらたちは嫌な魔力の反応を追ってここまできたのだ。
だというのにここには何もない、何の反応も感じなくなっていた。

さくら「さやかさん! さやかさん!」

さやか「……ん、ぁ」

さやかが気がついたため、ケルベロスはさくらのポケットへと隠れる。

さやか「あれ? さくらちゃんどうしてここに……」ヨロヨロ

さくら「さやかさんこそ、どうしてこんなところで倒れて」

さやか「あたしはー。その、ちょっと無茶しちゃって……」

さやか「痛いとかそういうことはないんだけど、一人じゃ立てそうにないんだ。肩貸してもらえないかな?」

さくら「わかりました。掴って下さい」

さくらはさやかの頼みを聞いて肩を貸すと、路地裏を後にした。

75: 2011/07/27(水) 00:56:12.38 ID:X5EfqF5S0
――――――――
――――
――

――???

さやか「ごめんね、ここまで運んでもらっちゃって」

さくら「いえ、ハンバーガーをご馳走になったお礼です」

さやか「ところでさ、さくらちゃんって天然とか世間知らずとか言われない?」

さくら「え? ……たまに、言われますけど」

さやか「くすくす、やっぱり。私はふらふらだし、女同士だしって思うけどさ」

さくら「?」

76: 2011/07/27(水) 01:00:14.19 ID:X5EfqF5S0
さやか「頼まれたとはいえ平然とラブホテルに人を運ぶなんてさ」アハハハ

さくら「らぶほてる?」

さやか「えっ?」

さくら「ほえ?」

さやか(まさか、ラブホテルを知らないだと……?)

さやか「いや、なんでもないよ。ここまで運んでくれてありがとう」ニコリ

さくら「どういたしまして」ニコリ

77: 2011/07/27(水) 01:04:42.23 ID:X5EfqF5S0
さくら「その、立ち入ったことを聞きますけど、持病か何かあるんですか?」

さやか「へ? なんで?」

さくら「なんでって……。さやかさん、何もないところで意識を失って倒れてたから」

さやか「あー、そりゃそうだよね、そう思うのが普通だよ」

さくら「……」

さやか「ちょっと悪い奴を見つけたもんだから懲らしめてたんだよね」

さくら(でも、あそこには誰も……)

さやか「やっつけたはいいんだけど、力尽きちゃったみたいで」

さやか「気付いたらさくらちゃんの可愛い顔が目の前にあったってわけですよ」アハハー

78: 2011/07/27(水) 01:07:50.78 ID:X5EfqF5S0
さくら「……あの、病院とかには」

さやか「平気平気、ちょっと疲れただけだから(病院じゃ魔力の輸血はやってくれないしね)ボソボソ」

さくら「そう、ですか」

さやか「さくらちゃんはもう帰りなよ。おうちの人が心配してるでしょ」

さくら「……その」

さやか「ん?」

さくら「私も一緒に泊まっちゃダメですか?」

さやか「はいぃ!?」ドキッ

79: 2011/07/27(水) 01:12:38.22 ID:X5EfqF5S0
さくら「実は私も家出してきたんです!」

さやか「え、ほ、ほんとに?」パチクリ

さくら「はい、だからその一緒に泊めてもらえないかな、と」

さやか「私のことほっとけないから嘘ついてるとかないよね?」

さくら「えっと、そういう気持ちもありますけど、家に帰れないのも、……ほんとです」シュン

さくら「あ、でも、二人で泊まったらお金が多くかかっちゃうから」

さやか「ああ、それは大丈夫だから。元々二人で泊まる施設だからここ」

さくら「そうなんですか?」ホエー

81: 2011/07/27(水) 01:16:56.51 ID:X5EfqF5S0
さやか「そういうことなら……、いいよ。泊まっても」

さくら「ほんとですか!」

さやか「けど。早めに家に帰ったほうがいいと思うよ、私が言えた義理じゃないけどさ」

さくら「……はぃ、ありがとうございます」

さやか「はぁ、グリーフシードさえあればなぁ」

さくら「ほえ? グリーフシード?」

さやか「ううん、なんでもないよ。ただのひとりご、」

さくら「グリーフシードならありますよ。これですよね?」ハイ

さやか「……ええっ!?」

82: 2011/07/27(水) 01:20:11.39 ID:X5EfqF5S0
さくら「……」

さやか「……」

さくら「あの、」

さやか「さくらちゃんって魔法少女なの?」

さくら「あ、はい。そうです」ビク

さくら(はうー、なんだか急に空気が重く……)

さやか「じゃあ、一つだけ教えてくれる? さくらちゃんは『使い魔』がいたら倒す人? それとも……」ゴクリ

さくら「え、えっと、その、……使い魔による、かな?」チラッ

さやか「……それってどういう意味?」

83: 2011/07/27(水) 01:24:11.87 ID:X5EfqF5S0
さくら「悪い使い魔さんなら倒さないといけないけど、良い使い魔さんなら」

さやか「いるわけないじゃない、そんなの」キッパリ

さくら「で、でも」

さやか「『使い魔』も『魔女』も、私は全部やっつける。マミさんなら絶対にそうするから」

さやか「私、このグリーフシードは受け取れないわ。気持ちだけ受け取っとくよ」

さくら「……」

さくら(さやかさんはそれっきり口を聞いてくれなくなり、気まずい状態で同じベッドで眠りました)

84: 2011/07/27(水) 01:29:20.71 ID:X5EfqF5S0
――次の日。

チュンチュン……

さやか「んー……」ノビ

さやか「朝か。そういやラOホに泊まったんだっけ……」

さやか(さすがに身体動かないのに野宿なんてできなかったしなあ)

さやか(普通のホテルにフラフラの中学生が一人じゃ泊まれないしね)

さやか「あれ、さくらちゃんは……?」

くしゃり

さやか「紙……、置き手紙か」

86: 2011/07/27(水) 01:31:57.11 ID:X5EfqF5S0

さやかさんへ

泊めてくれてありがとうございました。
正直、昨日はさやかさんがなぜ怒ってしまったのかわかりません。
今度会ったときに理由を教えてください。
そしたらごめんなさいって言って仲直りできたらいいなと思います。

追伸、グリーフシードは置いていきます。さやかさんが使ってください。

   さくらより


さやか「さくらちゃんもキュゥべえに騙されてるんだよね」

さやか「ちゃんと話せばわかってくれたかもしれないのに……」

さやか(あたしってほんと馬鹿だ)

87: 2011/07/27(水) 01:34:30.61 ID:X5EfqF5S0
お風呂入りたいから保守お願いします。
遅くとも1時間以内には再開するから。

94: 2011/07/27(水) 02:00:05.48 ID:X5EfqF5S0
――――――――

さくら「封印解除(レリーズ)! 我が空腹を満たせ、樹(ウッド)!」

みしみし、ずもももももも……

さくら「跳(ジャンプ)! えーい!」モギッ!

さくら「やった、取れたよケロちゃん」

ケロ「バナナの樹か、考えたなさくらー」

さくら「こういうことにカード使うのってすごく抵抗あるけどね……」

さくら「公園にバナナの樹があったら変だよね、消(イレイズ)!」

しゅぅーん……

さくら「ベンチで食べよ」


ケロ「なかなかうまいなぁ、このバナナ」モグモグ

さくら「だね。樹(ウッド)さんありがとう」モグモグ


ケロ・さくら「「ごちそうさまでした」」

98: 2011/07/27(水) 02:04:01.11 ID:X5EfqF5S0

ケロ「さて、腹ごしらえも終わったし、これからどうしょうなぁ」

さくら「闇雲に歩き回ってもダメっぽいよね」

ケロ「今んとこ怪しいんはここきて初めに会うた嬢ちゃんやな」

ケロ「さやかもグリーフシードとか魔法少女とかいろいろ知っとるみたいやったし、その辺聞いてみたかったんやけどなぁ」

さくら「喧嘩別れみたいになっちゃったもんね……」

さくら「やっぱりさやかさんの質問に対する答えがまずかったんだよね」

さくら「この世界の使い魔はみんな悪い使い魔なのかな?」

ケロ「どやろなぁ。とりあえず、さやかが使い魔に対して敵対心剥き出しっちゅーんはよぉわかったわ」

100: 2011/07/27(水) 02:08:18.37 ID:X5EfqF5S0
さくら「今度会ったらな仲直りできるよね?」

ケロ「おう、きっとな」

さくら「よーし、頑張るぞー!」オー!

ケロ「その意気やでさくら」

さくら「そうだ! カードの占いで何かわからないかな?」

ケロ「せやなぁ、なんか手がかりとか掴めるかもしれへん。やってみよか」

さくら「うん」

101: 2011/07/27(水) 02:11:19.62 ID:X5EfqF5S0
さくら「よーく混ぜて、っと」

さくら「左手で四つに分けて、また左手で元に戻す、だったよね」

ケロ「そやで。じゃあ並べて……」

『さくらカードよ、我が問いに答えよ』

『我が救うべき者の手がかりを示せ』

フワアァァァ……

103: 2011/07/27(水) 02:15:33.00 ID:X5EfqF5S0
ケロ「ほならここめくって」

さくら「闇(ダーク)……」ペラ

ケロ「次はこっちや」

さくら「影(シャドウ)……」ペラ

ケロ「この端のカード」

さくら「迷(メイズ)……」ペラ

ケロ「闇、影、迷か。どれも不安を掻き立てるカードばっかやなぁ」

ケロ「暗くて迷いそうな場所、そういうとこに行けってことやわ」

さくら「路地裏とか?」

ケロ「そんな感じや」

105: 2011/07/27(水) 02:20:53.59 ID:X5EfqF5S0
ケロ「さくら、最後にこっちの2枚めくってみぃ」

さくら「うん。えっと、炎(ファイアリー)に剣(ソード)だよ」ペラ、ペラ

ケロ「炎に剣、今度は攻撃的なカードやなぁ」

さくら「これはどういう意味なの?」

ケロ「まぁなんや……。襲われるから気ぃつけえってことやわ」

さくら「ほえええ!? わ、わたし襲われるの?」

ケロ「けどまぁ、始めから襲われるってわかっとったらちっとはましやろ」ナ?

さくら「それはそうだけど……」ウゥ

ケロ「ほれ、張り切っていくでー!」オー!

さくら「おー……」ショボーン

106: 2011/07/27(水) 02:23:42.00 ID:X5EfqF5S0
――――――――
――――
――

テクテクテク……

さくら「知らない場所で暗そうな場所や迷いそうな場所を歩くのってすっごく不安だよ……」

ケロ「安心せい、わいがついとるでー」ファイトー

さくら「おっきい時のケロちゃんは頼もしいんだけどなー」ハァ

さくら「それにあの占いも気になるし」

ケロ「火と剣、か。さくらが襲われそうになったらそれこそわいが守ったる!」

ケロ「守護者の名にかけて、な」

さくら「ケロちゃん……」ジーン…

ケロ「まぁ、今は魔力節約でこのまんまやけどな」

さくら「むぅ」

107: 2011/07/27(水) 02:28:21.63 ID:X5EfqF5S0
ケロ「……分かれ道やでさくら、今度はどっち行くんや?」

さくら「うーん、じゃあ今度は右にしようかな」

ケロ「いや。待つんやさくら」

さくら「ほえ? どうして?」

ケロ「左からかすかにやが魔力の気配を感じる……。昨日の化物に近い感じや」

さくら「じゃ、じゃあやっぱり右に……」コワイシ

ケロ「なんでやねん! 魔法少女とか言うんはあの化物と敵対しとるんやで」

ケロ「あの嬢ちゃんもおるかもしれん。情報を得るためにも当然左やろ」

さくら「あぁ、やっぱり……」

108: 2011/07/27(水) 02:31:59.67 ID:X5EfqF5S0
――――――――

さくら「魔力の気配、強くなってきたね……」

ケロ「それだけ近付いとるっちゅうことや。気ぃ引き締めや」

さくら「わかってる……。ぁ、あれは?」

さくらが指を差したのは前方およそ10m。
ボーリングの玉のような物体がゆっくりゴロゴロと転がっている。

ケロ「この魔力の気配はあれやな。化物の子どもみたいなもんか」

さくら「た、倒した方がいいのかな?」

ケロ「なんとなくやけど、あれが人にとって悪いもんってことはわかる」

110: 2011/07/27(水) 02:36:29.06 ID:X5EfqF5S0
ケロ「それに魂もないみたいやし、生き物って感じはせえへんな」

さくら「それで?」

ケロ「さくらに任す。この世界であれがどういう働きしとるんかわからんからな」

ケロ「さっきも言うたけど生き物ちゃうから倒しても罪悪感はあらへんやろ」

さくら「う、うーん……。それじゃあ」

「そこのアンタ。あれ使い魔だよ? わかってる?」

ケロ「!? さくら、後ろや!」

さくら「ほえ? だ、誰なの?」

「アタシ? アタシはアンタと同じ、魔法少女だよ」チャキ

111: 2011/07/27(水) 02:41:20.20 ID:X5EfqF5S0
突然後ろから話しかけてきた少女は自身を『魔法少女』と名乗ると
手に持っていた槍をさくらに向けて構える。

パァァァ!

ケルベロス「やめろ、さくらに手ぇ出すんやったらわいが許さへんぞ!」

「ふーん、ケルベロスってのはテメェか。これがアンタの魔法なのか?」

さくら「ケロちゃんのことを知ってる!?」

ケルベロス「お前、わいのことを誰に聞いたんや」ガルル

「さって、誰だったかな。忘れちまったよ」

ケルベロス「答えろ!」

「アタシは他人に命令されるのが大嫌いなんだ」

ケルベロス「なんやとっ!」

「なんだよっ!」

さくら「ほええ……、えっと、えっと」

120: 2011/07/27(水) 03:00:42.92 ID:X5EfqF5S0
さくら「あのっ!」

「あん?」

さくら「困ってたり助けて欲しいことってありませんか!?」

「はぁ……?」

ケルベロス「さ、さくらぁ……」

さくら「」ジィー…

123: 2011/07/27(水) 03:05:38.89 ID:X5EfqF5S0
「とりあえず、コイツに睨まれて困ってる」

ケルベロス「こいつ!」

さくら「ケロちゃん」

ケルベロス「なんや、さくら」

さくら「元の姿に戻って」

ケルベロス「なっ! ……ほんまにええんか?」

さくら「うん」

ケルベロス「さくらが言うんならしゃーないわ……」

124: 2011/07/27(水) 03:10:35.68 ID:X5EfqF5S0
ケルベロス「お前、さくらに変なことしたら許さへんからな」

「……」

パァァァ!

ケロ「これでええか?」

さくら「ありがとう、ケロちゃん」

「……なんだ、話せばわかる相手じゃねえか」スチャ

さくら(よかった。槍、しまってくれた)ホッ

ケロ(わいの『元の姿』はあっちの方なんやけどなぁ)トホホ

125: 2011/07/27(水) 03:15:24.60 ID:X5EfqF5S0
さくら「ケロちゃんのこと、黒っぽい魔法少女の子に聞いたの?」

「なんでそう思う?」

さくら「こっちの人でケロちゃんのおっきい姿はあの子しか見てないから」

「正解。アイツはアンタのことをイレギュラーだとか呼んで関わらないようにアタシに釘刺してきたけど」

「アタシにとってイレギュラーなのはアイツも同じだからね」

「どういう奴かはアタシが自分の目で見て判断するっての」

「で。アンタはどこから何しにきたんだ?」

さくら「その前に」

「ん?」

さくら「自己紹介。わたしは木之本 桜、友枝中学に通う一年生です」

「ぉ、おう。アタシは杏子ってんだ」

さくら「ケロちゃんも」

ケロ「……知っとるやろうけど。ケルベロスや」

128: 2011/07/27(水) 03:20:01.23 ID:X5EfqF5S0
さくら「わたしはね、別の世界からきたの」

杏子「別の世界? 海外ってことか?」

さくら「ううん。壱原さんは多重世界って言ってたかな?」

さくら「漫画とかテレビのSFなイメージって言ったらわかる?」

杏子「どっちもあんま見ねえよ」

ケロ「わからんかったらとりあえず他所からきた人やと思っとき」

杏子「……で、その他所から何しに来たんだ?」

さくら「えっと、……人助け?」カナ?

杏子「なんでアタシに聞いてんだよ!?」

130: 2011/07/27(水) 03:24:48.26 ID:X5EfqF5S0
さくら「壱原さんって人に頼まれて、苦しんでる人がいるから助けてあげてって言われて」

杏子「ここにきたと? 別の世界から? 眉唾じゃねえか」

さくら「はうー、でもでも、ほんとなんです!」

さくら「こっちの世界にも昨日きたばっかりでよくわからないし」

さくら「魔法少女とか、魔女とか使い魔とか、いろいろ教えて欲しいんですけど……」チラッ

杏子「あん? ちょっと待て、アンタは魔法少女じゃないのか?」

さくら「魔法は使えるけど、わたしは魔法少女じゃないよ」

さくら「カードキャプターなの」

杏子「かーど、きゃぷたー?」

133: 2011/07/27(水) 03:29:42.82 ID:X5EfqF5S0
杏子「……アンタ、ソウルジェムは?」

さくら「?」

杏子「これだよ、これ」パァァ

さくら「わー、きれい……」

ケロ「っ!? お前これ……」

さくら「どうしたの、ケロちゃん?」

杏子「へぇ、アンタわかるんだ」

ケロ「さくら、これは人間の魂そのものや」

さくら「え?」

137: 2011/07/27(水) 03:35:41.55 ID:X5EfqF5S0
杏子「アタシら魔法少女はもう人間じゃない」

杏子「身体から抜き出されたこのソウルジェムで操縦するロボットみたいなもんさ」

さくら「ほ、ほえええ!?」

ケロ「お前、なんでこんなことしたんや」

杏子「アタシだって望んでこんな身体になったわけじゃない。騙されたんだよ、キュゥべえに」

ケロ「キュゥべえ、あの黒い嬢ちゃんが言うとった……」

138: 2011/07/27(水) 03:40:03.63 ID:X5EfqF5S0
ケロ「なにもんや、そいつ」

杏子「ふぅ、ほんとに何も知らねえんだな」

杏子「こんな場所で立ち話ってのもなんだ、ついてこいよ」クイ

さくら「けど、アレが……。ぁ、いなくなってる」

杏子「使い魔のことか? とっくに逃げ出したよ」

杏子「てか、その話もしないといけねえのか……。チッ、めんどくせえ」

杏子「ほら、いくぞ」

さくら「あ、うん」

ケロ「(さくら、一応油断するんやないで)ヒソヒソ」

さくら「(わかった)ヒソ」

139: 2011/07/27(水) 03:44:38.81 ID:X5EfqF5S0
――――――――
――――
――

杏子「ここで飯でも食いながら話そうぜ」

さくら「ファミレス?」

さくら「けど、わたしお金持ってなくて……」

杏子「なら、アタシがおごってやるよ」

さくら「いいの?」

杏子「ああ」

さくら「ありがとう、杏子ちゃん」

144: 2011/07/27(水) 04:02:03.08 ID:X5EfqF5S0
店員「いらっしゃいませー」


店員「ご注文をお伺いします」

杏子「アタシはこの、『包み焼きハンバーグ』で付け合せはパンとスープ」

さくら「わたしは『ナポリタン』をお願いします」

店員「ご注文を繰り返します。――――以上でよろしいでしょうか?」

杏子「ああ」

145: 2011/07/27(水) 04:04:21.84 ID:X5EfqF5S0
――――――――

――食後。

ケロ「うー、わいもなんか食べたいー!」ジタバタ

杏子「人形が飯食ってたら騒ぎになるだろ。っていうかお前も腹減ったりするのか?」ジットシテロ

ケロ「わいはなんも食わんでも平気やけど、うまいもんは食いたいねん」

杏子「ずいぶんと食い意地張ってやがんな」

杏子「いいぜ。クレープのテイクアウトがあるから帰りに買ってやるよ」

ケロ「ほんまか!? 最初会うた時はけったいな嬢ちゃんや思たけどなかなかええ子やないか」ニコニコ

さくら「ケロちゃんったら」クス

146: 2011/07/27(水) 04:08:35.10 ID:X5EfqF5S0
杏子「ったく、現金な奴だな」

杏子「さて、飯も食ったし。何から話したもんかな」

さくら「まず杏子ちゃんの、魔法少女のことを教えて欲しいな」

杏子「そうだな。アタシら魔法少女ってのは一言でいうと『魔女を狩る者』だ」

さくら「魔女を……」

杏子「魔女や使い魔ってのはこの世界に干渉して不可解な事故や自殺を引き起こす、天災みたいなもんだ」

杏子「アタシら魔法少女は願いを叶えてもらった代償としてそいつらを倒さなきゃならない」

さくら「願いを叶えてもらったって、誰に?」

杏子「キュゥべえって奴さ」

148: 2011/07/27(水) 04:12:53.85 ID:X5EfqF5S0
杏子「キュゥべえってのはこんな感じの奴なんだが」

  ∧_∧
 //(・ー・)ヽ
/ノ ( uu ) ヽ)

さくら「わぁ、可愛いね」

杏子「見た目に騙されんじゃねえぞ、アタシや他の魔法少女をこんな……」パァァ

杏子「ソウルジェムなんてもんにしたのはこいつだ」

さくら「こんなに可愛いのに……」ショボン

杏子「願いを叶える。その代わりに魔法少女として魔女と戦って欲しい」

杏子「そう言ってアイツはアタシらに近づいてくる」

149: 2011/07/27(水) 04:17:35.07 ID:X5EfqF5S0
ケロ「そんで願いを叶えてもろたらその有様か」

杏子「あぁ。ぶっちゃけ、こんな身体になったって知ったのもつい最近だ」

杏子「アイツは怪我ですぐに動けなくなる身体より、魔力で修復できるこっちの方が便利だろうなんて言ってたが」フン

さくら「そんな、ひどい……。元の身体には戻れないの?」

杏子「ああ。実際アイツが言ってることが正しいかどうかはわからねえけどな」

さくら「……」

ケロ「……」

杏子(そんな顔すんなよ……)

杏子(こっちは割り切ってんのに、これじゃアタシが『不幸』みたいじゃないか……)

150: 2011/07/27(水) 04:20:29.16 ID:X5EfqF5S0
杏子「もう他に聞きたいことはないか?」

ケロ「ならわいから一つ」

杏子「なんだ?」

ケロ「グリーフシードってのはなんや?」

杏子「グリーフシードは魔女を倒せば手に入る魔女の卵みたいなもんだって聞かされてる」

杏子「アタシら魔法少女は魔法を使うとソウルジェムに穢れが溜まる」

杏子「で、ソウルジェムが完全に濁りきる前にその穢れをグリーフシードに移さなきゃならない」

151: 2011/07/27(水) 04:24:16.10 ID:X5EfqF5S0
杏子「けど、アンタらは魔法少女じゃないんだろ? グリーフシードは必要ないんじゃないか?」

さくら「昨日、魔女を倒した時にもらったの。あなたが倒した魔女のものだからって」

さくら「ケロちゃんと何に使うんだろうね、って話してたの」

杏子「魔女を倒した、ってことはさくらはそれなりに結構強いのか」

さくら「強い、のかな? 私の力って言うかカードさんのおかげだから」

杏子「カード……? 今度はさくらたちの話し聞かせなよ」

杏子「たしかカードキャプター、だっけ?」

153: 2011/07/27(水) 04:28:09.10 ID:X5EfqF5S0
さくら「うん。カードキャプター、カードの捕縛者って意味なんだけど」

さくら「わたしの魔法はこのカードさんたちを使うの」ズラッ

杏子「ただのカードじゃねえな、魔力がこもってるみたいだが」ペラ

さくら「1枚1枚が生きててちゃんと意志があるの」

さくら「火(ファイアリー)なら炎が、水(ウォーティ)なら水が操れるの」

杏子「それが19枚。結構……いや、かなり万能じゃねえか?」

さくら「えへへ、そうかな?」テレテレ

ケロ「こう見えてさくらはわいらのおった世界でいっちゃん強い力持っとる魔術師やからな」エヘン!

杏子「はぁっ!? マジかよ!」

さくら「う、うん。一応」

杏子(もし、あのままやりあってたらアタシの方がヤバかったんじゃねえか?)

杏子「人は見かけによらないもんだな」

さくら「ほえ?」ポヤヤン

155: 2011/07/27(水) 04:32:15.39 ID:X5EfqF5S0
杏子「じゃあ、次はアンタ。ケロすけ?」

ケロ「け、ケロすけ?! 封印の獣ケルベロス様に向かってケロすけやとぉぉぉ!?」

杏子「馬鹿! 声がでけえ!」

店員「」ジロリ

客「」チラッ

さくら「あ、あははは。杏子ちゃん、わたしの腹話術どうかな~」アセアセ

さくら「なんでやねん、なんでやねん」

ケロ「」パクパク

杏子「お、おお。うめえなさくら!」

杏子「あ、店員さん? テイクアウトでクレープ一つ頼むよ!」

店員「……かしこまりました」

156: 2011/07/27(水) 04:36:24.52 ID:X5EfqF5S0
――川原。

ケロ「もぐもぐ、うまいなぁこれ」ホクホク

杏子「ったくこいつは……」

さくら「あはは……」

161: 2011/07/27(水) 05:00:36.55 ID:X5EfqF5S0
杏子「で、ケルベロスはさくらの使い魔ってことでいいのか?」

ケロ「位置づけとしてはそんなとこや。さくらは『なかよし』言うてくれるけどな」

杏子「アタシらの世界の使い魔とはずいぶんと違うんだな」

さくら「わたしの世界だと魔女って言うと魔術に長けた女の人って意味だから」

さくら「広い意味だとわたしも魔女だし、魔法少女だと思うよ」

杏子「とりあえず、アタシらの世界だとさくらは魔女でも魔法少女でもないわけだ」

杏子「じゃあ、やっぱりアイツの言ってた通り何もする必要なかったってことかよ」チッ

162: 2011/07/27(水) 05:05:53.36 ID:X5EfqF5S0
さくら「そういえば、杏子ちゃんはどうしてわたしに会いにきたの?」

さくら「ほむらちゃんに聞いてきたんだよね?」

杏子「アタシら魔法少女は魔女と戦うためにもグリーフシードが必要って話しただろ?」

さくら「うん。グリーフシードを手に入れるためには魔女と戦わなきゃいけないんだよね?」

杏子「魔女ってのはどこにでも現れるもんじゃないんだよ」

杏子「現れやすい場所に陣取ってそこで狩りをする、その方が効率がいいだろ?」

杏子「それでちょうど今、ここら辺の縄張りをかけて他の魔法少女と争ってるんだけど、そんなときにさくらが現れた」

ケロ「ほうほう、ライバルが現れたと思って顔見にきたっちゅうわけか」

杏子「ああ、その通り」

杏子「ほむらは相手にするなって言ってたけどな」

164: 2011/07/27(水) 05:11:09.12 ID:X5EfqF5S0
杏子「そういや、さくらは人を助けにアタシらの世界にきたって言ってたよな」

杏子「誰を助けにきたんだ?」

さくら「それがそのー……」

杏子「ん?」

ケロ「誰かわからんくてなー」ハハハー

杏子「はい?」

さくら「壱原さんって人に頼まれてこの世界きたんだけど」

杏子「誰を助ければいいかは聞かずきたと?」

さくら「うん……」ショボン

杏子「抜けてるというか、天然というか……」ククク

165: 2011/07/27(水) 05:17:20.83 ID:X5EfqF5S0
さくら「たぶん、わたしに頼んだってことはわたしにしかできないことだと思うから」

さくら「きっと魔法が関係してる人だと思って」

杏子「それであたしにあんなこと言ったのか」


さくら『困ってたり助けて欲しいことってありませんか!?』


杏子「困ってるっちゃあ困ってるけど……」

杏子「アタシは人の手を借りたいと思うほど困ってないかな」

さくら「そっかぁ……」

さくら「でもそれはいいことだよね、困ってないに越したことはないよ」ウン

166: 2011/07/27(水) 05:24:10.61 ID:X5EfqF5S0
杏子「そうだ、魔女を倒してグリーフシードを手に入れたって言ってたよな?」

杏子「なら、アタシにそれくれないか? さくらには必要ないもんなんだろ?」

さくら「うん。でも他の人にあげちゃって」

杏子「人に? そいつは魔法少女なのか!?」エ!?

さくら「どうだろう? 変身してなかったからわからない、かな」

さくら「杏子ちゃんも魔法少女の姿に変身してる時しか魔力の気配がしないし」

さくら「その子の名前、さやかさんって言ってたよ」

杏子「さやかだって!?」ザッ

さくら「え、知り合いなの?」

杏子「あぁ、……まぁな」

169: 2011/07/27(水) 05:31:13.14 ID:X5EfqF5S0
杏子「おそらくこの街の魔法少女の中じゃ、今一番助けが必要な奴だよ」

さくら「えぇっ!!」

ケロ「なんやて!!」

杏子「グリーフシードも必要なくて、魔女も倒せる……」

杏子「確かに適任かもな、さくらは」

171: 2011/07/27(水) 05:35:22.97 ID:X5EfqF5S0
さくら「どういうことなの?」

杏子「めんどくさい話だよ……」

杏子「魔女を倒せばグリーフシードが手に入るって言ったけど」

杏子「魔女の使い魔を倒してもグリーフシードは手に入らない」

杏子「けど、魔女だけじゃなく使い魔も人間を襲うんだ。さやかはそれを見過ごせないんだよ」

さくら「けどそれは……」

杏子「さくらはグリーフシードがなくても魔法が使えるからわからないだろうけど」

杏子「アタシらにとってグリーフシードの有無は死活問題なんだ」

杏子「魔法を使えばソウルジェムに穢れが溜まり、穢れが強くなると魔法が弱くなっていく」

杏子「そうしたら魔女にも勝てなくなっちまう……」

杏子「使い魔が人を襲うのは見逃して数人食って魔女になってから倒す」

杏子「そうしなきゃ魔法少女としてやっていけないって言ってるのにあの馬鹿ときたら」ブツブツ

さくら(そっか……。それでさやかさん、わたしに『使い魔』を倒すか質問したんだ)

172: 2011/07/27(水) 05:42:40.50 ID:X5EfqF5S0
杏子「けど、それならさくらはもうさやかを助けたことになるんじゃないのか?」

杏子「グリーフシード、さやかにあげたんだろ?」

さくら「うん、でも怒らせちゃって……」

さくら「一度渡したんだけど受け取れないって言われて」

杏子「はぁ? なんだよそりゃ」

さくら「一応、押し付けるみたいな形で置いてきたんだけど」

杏子「アイツも頑固だからなぁ」

杏子「今度さくらに会った時に返そうとか考えて使ってないだろうな」

さくら「うー、じゃあまず誤解を解かないといけないよね」

174: 2011/07/27(水) 05:48:02.85 ID:X5EfqF5S0
杏子「今夜、さやかに会えると思うから伝えてやるよ。さくらが会いたがってたって」

さくら「ならわたしも一緒に!」

杏子「やめときなよ。さやかってばすぐ頭に血が上るから直接顔を合わせたら話も聞かずに駆け出しかねない」

杏子「それにアタシ、今はほむらと一緒に行動してるからな」

杏子「アイツの言ったこと無視してさくらと会ったことばれたくないんだよ」

さくら「そうなんだ……」

176: 2011/07/27(水) 05:54:27.18 ID:X5EfqF5S0
杏子「さくらはこっちにきたばかりって言ってたけど、泊まるあてとかはあるのか?」

さくら「ううん、お金もないし昨日はさやかさんがホテルに泊めてくれたけど」

杏子「ならアタシが泊まってるホテルにきなよ」

さくら「いいの? すごく助かるよ~」

ケロ「よかったなぁ、さくら」

さくら「うん、ありがとう杏子ちゃん」

杏子「おう。さやかは今夜ホテルに連れていくか、明日どこかで待ち合わせさせるからさ」

さくら「わかった」

杏子「ちょっと早いけど、これからホテルに向かうか。道とかホテルの場所、わからないだろうしね」

さくら(はにゃーん、杏子ちゃんってほんといい子だなー)

177: 2011/07/27(水) 06:00:40.15 ID:X5EfqF5S0
――――――――
――――
――

――杏子の宿泊ホテル。

ケロ「杏子もでかけてったし留守番してんの暇やー」ジタバタ

さくら「……」

ケロ「なぁさくらー、なんかして遊ぼうやー」パタパタ

さくら「……」ウーン

ケロ「さーくーらー?」

さくら「ほえ?」

ケロ「どないしたんや? ずいぶん考えこんどるみたいやけど」

178: 2011/07/27(水) 06:07:11.47 ID:X5EfqF5S0
さくら「うん、さやかさんがグリーフシードを使ってくれたとしてさ」

さくら「それで本当にわたしの人助けはおしまいなのかなって」

ケロ「というと?」

さくら「なんて言えばいいのかな……」

さくら「さやかさんがわたしがあげたグリーフシードを使ってくれても、魔女がいなくなるわけじゃないっていうか」

さくら「これからも戦っていくんだろうし、それなら助けられたっていえるのかな、って」

さくら「他にもソウルジェムのことも気になるし」

ケロ「うーん。せやなー」

179: 2011/07/27(水) 06:12:36.18 ID:X5EfqF5S0
ケロ「さやかがグリーフシードをつこてこれからも戦い続けたら、またいつかグリーフシードが足りんくなる」

ケロ「使い魔を倒さんかったら誰かが被害に遭うてまう」

ケロ「仮にさくらが、さやかに当分平気なようにぎょーさん魔女を倒してグリーフシードやったとしたら」

ケロ「それはそれで他の魔法少女がグリーフシードを手に入れれんことになる」

ケロ「だからってさくらが一生この街で魔女と使い魔狩って過ごすわけにもいかへんやろ?」

さくら「うん、それはいやだよ……」

さくら「お父さんやお兄ちゃん、知世ちゃんや学校の友達に月(ユエ)さん……」

ケロ「それに小僧にも会えへんようなるしな」

さくら「小狼くん……」

181: 2011/07/27(水) 06:18:18.47 ID:X5EfqF5S0
ケロ「正直、わいはこの世界のことはこの世界で解決するしかないと思うで?」

ケロ「本来、こうやってわいらがここにおること自体がおかしいんや」

ケロ「さくらは薄情やと思うかも知れへんけども……」

さくら「ううん、ケロちゃんのことそんな風に思ったりしないよ」

さくら「ケロちゃんはわたしのこと、心配してくれてるんだよね」

さくら「何か、気なること全部解決できそうなすごい案とか見つからないかな……」

ケロ「うーん……」

さくら「うーん……」

182: 2011/07/27(水) 06:23:32.22 ID:X5EfqF5S0
――――――――

その少女は使い魔を狩っていた。

さやか「うああああああ!!」

誰かを守るためでもなく、自分のためでもなく、
ただ、ていよく怒りをぶつける対象が見つかったから。

さやか「はぁ……はぁ……」

さやか「仁美……、恭介……」ギリリ

カツン

不意に聞こえた足音にはっとなり、音がした方向へと目を向ける。

183: 2011/07/27(水) 06:29:39.44 ID:X5EfqF5S0
ほむら「どうしてわからないの?」

ほむら「余裕がないのなら魔女だけを狙いなさい」

さやか「転校生か……」

現れたのは紫の魔法少女。

ほむら「使いなさい。ソウルジェムはもう限界のはずよ」カラン

ほむらが投げたのはグリーフシードと呼ばれるもの。
それは2度ほどバウンドした後転がりさやかの足元で停止する。

さやか「……いならいわよ。あんたの施しなんか受けない」カン

さやかは僅かに一瞥した後、転がってきたグリーフシードを蹴り返す。

さやか「あいにくと、まだストックは残ってるからね」

184: 2011/07/27(水) 06:36:25.93 ID:X5EfqF5S0
ほむら「そんな強がりに何の意味があると言うの?」

ほむら「あなたこのままだいけば……」

さやか「これ。見える?」スッ

ほむら「それは、グリーフシード……。あなたいつの間に」

さやか「これでわかったでしょ、強がりでも何でもないって」

さやか「あんたの施しなんか受けなくても大丈夫だって」

ほむら「ならそれを早く使いなさい。ソウルジェムが限界なことは変わらないでしょう」

さやか「グリーフシードをあたしがいつ使おうと勝手、転校生は黙っててくれる?」

185: 2011/07/27(水) 06:41:28.07 ID:X5EfqF5S0
さやか「あたしはさ、あんたたちとは違う魔法少女になるって決めたんだ」

さやか「誰も見捨てない、利用しない、見返りも求めない」

さやか「それであたしが魔女を殺せなくなったら、あたしは用済み」

さやか「魔女に勝てないあたしなんて、この世界に必要ないのよ」

ほむら「……」

ほむら「私はただ……、あなたを助けたいだけなのに」

ほむら「どうして信じてくれないの?」

186: 2011/07/27(水) 06:48:52.74 ID:X5EfqF5S0
さやか「あんたが嘘つきだからだよ」

ほむら「っ……」

さやか「あんた、何もかも諦めた目をしている」

さやか「いつも空っぽの言葉を喋ってる」

さやか「本当はあたしのためとか言いながら全然別のこと考えてるでしょ?」

さやか「誤魔化しきれるもんじゃないよ、そういうのって」

ほむら「……」

188: 2011/07/27(水) 06:54:02.61 ID:X5EfqF5S0
ほむら「……そう」

ほむら「あたなって、鋭いわ」

さやか「!」

ほむら「ええ、図星よ」

ほむら「私はあなたを助けたいわけじゃない」

ほむら「あなたが破滅していく姿をまどかに見せたくないだけ」

ほむら「全てはあの子の為なのよ?」

190: 2011/07/27(水) 07:00:16.48 ID:X5EfqF5S0
ほむら「ここで私の言葉を拒むならどうせあなたは死ぬしかない」

さやか「ッ!?」ゾク

ほむら「これ以上まどかを悲しませるくらいなら……」

ほむら「いっそこの場で私が殺してあげるわ」

ほむら「美樹さやか!」

放たれる殺気。
ほむらの手が左手に装着されている盾の内側へと伸びていく。

ガシッ。

ほむら「!?」

192: 2011/07/27(水) 07:05:21.87 ID:X5EfqF5S0
杏子「何やってる! さっさと逃げろ!」

さやか「……!」タッ

咄嗟に走り出すさやか。

杏子「正気かテメェは! アイツを助けるんじゃなかったのかよ!」

ほむら「くっ……、離して!」

杏子「どうやらこの状態だとあの妙な技も使えないみたいだな?」フン

ほむら「この……」ピィン

杏子「うぇ!? ば、ばくだっ」

194: 2011/07/27(水) 07:12:08.07 ID:X5EfqF5S0
杏子はほむらが盾の裏側から取り出した手榴弾を目にし、
ほむらを押さえる手を離すと咄嗟に伏せて頭を抱える。

カッ!!

辺りは激しい閃光と爆音に包まれる。
しかし、それ以上の被害はなく杏子はそっと頭を上げてみると、
辺りには誰一人おらず、スタングレネードの残骸が残っているだけだった。

杏子「くそっ、逃げられたか……」

杏子「いや、今はほむらよりさやかを追わねぇと」

196: 2011/07/27(水) 07:17:34.15 ID:X5EfqF5S0
――――――――

さくら「杏子ちゃん戻ってこないね、ケロちゃん……」

ケロ「子どもが外歩くには遅すぎるわ」

さくら「魔女に襲われたりしてないといいんだけど」

さくら「わたしなんだか心配になってきちゃった。探しに行ってくるよ!」

ケロ「探しに行く言うたかてどこ向かう気や」

ケロ「わいらはここの地理にも詳しくないし、もしかしたら行き違いになるかも知れん」

ケロ「心配なんはわかるけど……」

『……ぃ! おい! 聞こえるか、さくら! ケルベロス!』

さくら「ほえ!? この声、杏子ちゃん?」

杏子『ラッキー、さくらたちとはテレパシーで会話できるみたいだな』

ケロ「念話か? 無事やったんやなぁ。帰りが遅いから心配しとったとこや」

198: 2011/07/27(水) 07:24:38.60 ID:X5EfqF5S0
杏子『アタシが魔女にやられたとでも思ったか? これでもベテランだぜ』フン

杏子『そんなことより、二人とも出てきてくれねえか?』

さくら「どうかしたの?」

杏子『すまねえ、さやかの説得に失敗した』

ケロ「あちゃあ」

杏子『何かあったみたいで精神的にまいってるらしいんだ』

杏子『それで走って逃げちまってよ』

さくら「わかった。すぐそっちに行くよ、今どこにいるの?」

杏子『外まで出てきてくれればいい。こっちも、もうすぐホテルの前に着く』

さくら「了解」タッ

199: 2011/07/27(水) 07:30:54.77 ID:X5EfqF5S0
――――――――

――ほぼ同時刻、噴水のある公園。

「どこにいるの? さやかちゃん……」

「今日も見つからなかった……」フラ…

トッ

「君も僕のことを恨んでいるのかな、まどか」

まどか「キュゥべえ……」

まどか「あなたを恨んだらさやかちゃんを元に戻してくれるの?」

キュゥべえ「無理だ。それは僕の力の及ぶことじゃない」

200: 2011/07/27(水) 07:37:31.29 ID:X5EfqF5S0
まどか「……ねぇ、前に話してた私がすごい魔法少女になれるって話、本当なの?」

キュゥべえ「すごいなんていうのはひかえめな表現だ」

キュゥべえ「おそらく世界で最強の魔法少女になるだろう」

キュゥべえ「望めば万能の神にだってなれるかもしれない」

キュゥべえ「なぜ君がそれほどまでの素質を持っているのか、理由は僕にもわからないけどね」

まどか「キュゥべえにできないことでもわたしならできるのかな……」

キュゥべえ「?」

201: 2011/07/27(水) 07:41:22.01 ID:X5EfqF5S0
まどか「わたしがキュゥべえと契約したら、さやかちゃんの身体を元に戻せるのかな」

キュゥべえ「造作もないことだよ」

キュゥべえ「君にとってそれは魂を差し出すに足るものなのかい?」

まどか「……うん。さやかちゃんのためなら、いいよ」

まどか「わたし、魔法少女に」

パァン!

気付けばキュゥべえと呼ばれていた人形のような愛玩動物のようなそれは、
音ともに弾け無残な姿へと成り果てていた。

まどか「ひっ――!」

まどかと呼ばれた少女は思わず口元を押さえ無残な破片から目をそむける。

202: 2011/07/27(水) 07:49:27.61 ID:X5EfqF5S0
ほむら「鹿目、まどか……」カシャン

まどか「ほむらちゃん……?」

まどか「その銃……、ほむらちゃんがやったの?」

まどか「ひどいよ、なにも殺さなくたって」ガタッ

ほむら「あなたは……ッ!」

ほむら「いい加減にしてよ! 勝手に自分を粗末にしないで!!」

ほむら「あなたを失えば悲しむ人がいるってどうして気付かないの?」

ほむら「あなたを守ろうとしてた人はどうなるの!?」

203: 2011/07/27(水) 07:51:33.83 ID:X5EfqF5S0
まどか「……」

まどか「それって……、ほむらちゃんのことなの?」

ほむら「!」

まどか「わたしたちって、どこかで会ったこと……、あるの?」

まどか「ここじゃない、どこかで」

ほむら「そ……、それは……っ」

204: 2011/07/27(水) 08:00:33.87 ID:X5EfqF5S0
まどか「……」

まどか「ごめんね、わたしさやかちゃんを探さないと」タッ

ほむら「待って! 美樹さやかはもう……!」

ほむら「あ……」ガクッ

トトッ……

「……無駄なことだとわかってるくせに。懲りないんだなぁ君も」

――――――――
――――
――

205: 2011/07/27(水) 08:04:12.03 ID:X5EfqF5S0
とある電車の中で二人の男たちが会話をしていた。
話の内容は聞くに堪えないようなことばかり。

もし、あなたに世界を守る魔法みたいな力があるとして、
この会話を聞いた直後にこの世界に守る価値が『ある』と、断言できるだろうか?

彼女は……、美樹さやかは――。

さやか「ねぇ、この世界って守る価値あるの?」

さやか「あたし何のために戦ってたの?」

さやか「教えてよ……」

さやか「今すぐあんたが教えてよ」

さやか「でないとあたし、どうにかなっちゃうよ?」

ガタンガタン、ガタンガタン……

206: 2011/07/27(水) 08:07:25.19 ID:X5EfqF5S0
――――――――

さくら「翔(フライ)! わたしは空から探すから、杏子ちゃんは下からお願い」ピューン

杏子「了解。つーか、さくらは羽生やして空も飛べるのかよ……」

ケロ「さくらー、そのままやったら下から丸見えや。騒ぎになるで!」

さくら「それじゃあ……」

さくら「我が姿を星々の幻影で隠せ、幻(イリュージョン)!」

キラキラ……

さくら「これでわたしの姿は見えないはず……」

さくら「ねぇケロちゃん、わたしなんだか胸騒ぎがするの」

ケロ「さくら?」

207: 2011/07/27(水) 08:10:14.84 ID:X5EfqF5S0
さくら「ソウルジェムの穢れが限界だったって杏子ちゃんは言ってたけど……」

さくら「ソウルジェムってその人の魂なんだよね?」

さくら「それに穢れが溜まるってよくないことだと思うの」

ケロ「杏子は魔法が使えんくなるくらいにしか考えてなかったみたいやけど、相当まずいはずやわ」

ケロ「意地かなんか知らんけど、さくらのやったグリーフシードつこてくれてると助かるんやが……」

さくら「さやかさん。お願い、無事でいて……」

――――――――
――――
――

208: 2011/07/27(水) 08:12:25.52 ID:X5EfqF5S0
――さやか捜索からおよそ30分。

杏子『いたぞ!』

さくら「ほんと、杏子ちゃん?」

杏子『ああ、駅のホームだ』

さくら「えっと……、見つけた!」

さくら「待ってて、すぐ降りるから」

209: 2011/07/27(水) 08:16:48.88 ID:X5EfqF5S0
さやか「……」

さくら「……さやかさん」

杏子「……やっと見つけた」

さやか「さくらちゃんに、杏子……」

さやか「そっか、さくらちゃんは杏子の仲間だったんだ……」

杏子「ばっか、ちげえよ。そもそもさくらは……」

さやか「いいよ、別に言い訳なんかしなくても」

さやか「もう、どうでもよくなっちゃったし」

杏子「!?」ゾクッ

さくら「!?」ゾクッ

ケロ(なんやこの気配は……!)

210: 2011/07/27(水) 08:21:18.68 ID:X5EfqF5S0
さやか「結局あたしは一体何が大切で、何を守ろうとしてたのか」

さやか「なにもかも、わけわかんなくなっちゃった」スッ

杏子「ソウルジェム……、真っ黒じゃねえか」ゴクッ

さやか「そういえばさくらちゃん、グリーフシード忘れてったよね」

さやか「私にはもう必要ないし、返すね」ポン

さくら「違うの、わたしは……」

杏子「貸せッ! いいんだよ、こいつは魔法少女じゃないんどころか」バシッ

杏子「そもそも魔法少女が何かもわかってなかったんだから……」

杏子「これはアンタが使えばいいんだよ。ほら……」

杏子はさくらが手渡されたグリーフシードをひったくると力付くでさやかのソウルジェムにくっつける。
本来ならこれでソウルジェムに溜まった穢れを移すことができるのだが……。

杏子「どういうことだ……、穢れが祓えねえだと?」

さやか「言ったでしょ、『もう必要ない』って」

211: 2011/07/27(水) 08:23:48.38 ID:X5EfqF5S0
さやか「希望と絶望のバランスは差し引きゼロだって話、今ならよくわかるよ」

さやか「確かにあたしは何人か救いもしたけど、その分心には恨みや妬みが溜まって」

さやか「一番大切な友達さえ傷つけて……」

杏子「アンタ……」

さやか「誰かの幸せを祈った分、誰かを呪わずにはいられない」

さやか「あたしたち魔法少女ってそういう仕組みだったんだね」

さくら「……」


さやか「あたしって、ほんとバカ」


ピシッ! パキン

ゴオオオオオオォォォ

さくら「きゃっ、さやかさん!」

杏子「なっ!? さやかああああああ」

212: 2011/07/27(水) 08:25:58.20 ID:X5EfqF5S0
キュゥべえ「この国では成長途中の女性のことを、『少女』って呼ぶんだろ?」

キュゥべえ「だったら、やがて『魔女』になる君たちのことは……」

キュゥべえ「『魔法少女』と呼ぶべきだよね」

263: 2011/07/27(水) 13:23:34.21 ID:X5EfqF5S0
さやかのソウルジェムにひびが入り、割れてしまったかと思った次の瞬間、
さくらと杏子を突如吹き荒れた強風が襲った。
思わず目を閉じた二人が再び目を開けたとき、周囲はすでに異常な空間。
三人は魔女の結界に取り込まれてしまったのだ。

さくら「一体何が……」

杏子「くそっ、何なんだよこれは」

目を開けた二人の目に最初に飛び込んできたのはさやかともう一つ、巨大な魔女の姿。
杏子は咄嗟に意識を失っているらしいさやかを抱きかかえバックステップで距離をとる。

杏子「テメェ、さやかに何をしやがった!」

アアアアアアァァァ!!

杏子の問いに魔女は答えない。
ただ、悲鳴のような叫び声をあげるだけ。

265: 2011/07/27(水) 13:27:06.92 ID:X5EfqF5S0
ケロ「そんな、あほな……。魂が、変質しおったやて!?」

さくら「ケロちゃん! どういうことなの?」

ケロ「さやかの身体からは魂が感じられやん、抜け殻同然や……」

杏子「なんだと!?」

ケロ「そして、あいつが……」

ケルベロスが何か大事なことを言いかけたところで、魔女がその腕を振り上げ攻撃の姿勢をとる。

「退がって!」

杏子「!」

さくら「!」

そして突然背後から聞こえてきた少女のものと思われる声。

ドン!

さらに追って聞こえてきたのは、今度は前方で起こった爆発の音だった。

アアアァァァアアァ!!

267: 2011/07/27(水) 13:30:24.86 ID:X5EfqF5S0
ほむら「二人とも掴って」

杏子「お前!」

ほむら「いいから早くなさい。ケルベロス、あなたも私にしがみつきなさい」

さくら「はい!」グッ

杏子「チッ!」グッ

ケロ「おう!」ヒシッ

キュイィィィ! カチッ!

268: 2011/07/27(水) 13:34:02.61 ID:X5EfqF5S0
さくら「わっ……!」

杏子「こいつは……!」

ほむら「気をつけて。手を離せばあなたたちの時間も止まってしまう」

タッタッタッタッ……

杏子「どうなってんだよ……。あの魔女は何なんだ!?」

ほむら「かつて『美樹さやかだったモノ』よ」

ほむら「あなたたち、見届けたんでしょう?」

さくら「っ! そんな……」

杏子「くっ……」

ケロ「嬢ちゃんは知っとったんか、こうなることを……」

ほむら「……ええ」

270: 2011/07/27(水) 13:38:12.38 ID:X5EfqF5S0
杏子「……逃げるのか?」

ほむら「ならばあなたたちはアレと戦えるの?」

杏子「それは……」

さくら「っ……」

ほむら「いったん退くしかないわね」

ブワッ

ほむら「結界の外よ」

まどか「ほむらちゃん!? それに杏子ちゃんに、さやかちゃんも……」

272: 2011/07/27(水) 13:41:46.55 ID:X5EfqF5S0
ほむら「ッ!? 鹿目、まどか……」

杏子「あ……」

さくら「……」

まどか「さやかちゃん! どうしたの?」

まどか「ソウルジェムは? ねぇ、さやかちゃんっ!」ユサユサ

さやか「」

ほむら「彼女のソウルジェムはグリーフシードに変化した後、魔女を産んで消滅したわ」

273: 2011/07/27(水) 13:47:03.81 ID:X5EfqF5S0
まどか「…………」

まどか「嘘……だよね……?」

ほむら「事実よ。この宝石が濁り黒く染まる時……」

ほむら「私たちはグリーフシードとなり魔女として生まれ変わるの」

まどか「そんな……どうして!?」

まどか「だってさやかちゃんは……」

まどか「魔女から人を守りたいって、正義の味方になりたいって」

まどか「それで魔法少女になったんだよ!? なのに……」

ほむら「その祈りに見合うだけの呪いを背負い込んだまでよ」

ほむら「誰かを救った分だけこれからは誰かを呪いながらあの子は生きていくの」

ほむら「今度こそ理解できたわね」

ほむら「あなたが憧れていたものの正体がどんなものか」

275: 2011/07/27(水) 13:51:42.01 ID:X5EfqF5S0
まどか「っ……ぅううあぁ……っ」

ほむら「わざわざ死体を持ってきた以上扱いには気をつけて」

ほむら「迂闊なところに置き去りにすると、後々厄介なことになるわよ」

杏子「な……。お前、それでも人間かよ!?」

ほむら「もちろん違うわ」

ほむら「あなたたちもね」

杏子「……っ。くそッ……!」

さくら「……」

ケロ「……」

276: 2011/07/27(水) 13:54:20.43 ID:X5EfqF5S0
――――――――

さくら(わたしたちはまどかさん――名前は杏子ちゃんに聞きました――と別れ……)

さくら(さやかさんの身体を持ってホテルまで帰ってきました)

さくら「……」

杏子「悪いな、死体と同じ部屋で……」

さくら「杏子ちゃんまでそんな言い方しないで!」

杏子「……あぁ、悪かった……」

278: 2011/07/27(水) 13:58:02.08 ID:X5EfqF5S0
さくら「ねぇケロちゃん。さやかさんを元に戻せないかな……」

ケロ「元々、魂が抜き出されてソウルジェムなんてものになっとる時点でおかしいんや」

ケロ「それがさらに変質してあないなことになってしもたら、いくらなんでも……」

さくら「そう、なんだ……」

さくら「……」

ケロ「……」

杏子「……」

280: 2011/07/27(水) 14:01:20.88 ID:X5EfqF5S0
キュゥべえ「……こんばんは、少しいいかな」

さくら「な、なに!?」

ケロ「!?」

杏子「ッ!! テメェ、どの面下げて……」

キュゥべえ「さくら、と言ったかい? 君に話があってきたんだ」

さくら「わたし……?」

キュゥべえ「単刀直入に聞こう。君と、その隣の黄色い君は何者なんだい?」

さくら「わたしは……」

パァァァ!

ケルベロス「人にモノ尋ねるときはまず自分から名乗るもんやろ」ガルル

キュゥべえ「……驚いた、君は変身できるんだね」

ケルベロス「魂のないその身体、式紙の類か……」

キュゥべえ「しかも一目見ただけでそこまで看破するなんて、実に興味深いね」

281: 2011/07/27(水) 14:05:35.26 ID:X5EfqF5S0
キュゥべえ「僕の名前はキュゥべえだよ。これでいいかい?」

ケルベロス「おまえが……」

さくら(確かに、杏子ちゃんが描いた絵に似てる……)

キュゥべえ「僕は名乗ったよ、今度は君たちのことを教えてくれないかい?」

さくら「わたしの名前は木之本 桜。こっちはケロちゃん」

ケルベロス「ケルベロスや」

さくら「それでわたしたちは、」

ケルベロス「待てさくら。お前はわいらに何が聞きたいんや?」

キュゥべえ「そうだね。とりあえず、君たちがどこから来て何しにきたのかが知りたいかな」

ケルベロス「なら先にお前が同じこと喋らんかい」

キュゥべえ「ふぅ……。わかったよ」

282: 2011/07/27(水) 14:10:05.03 ID:X5EfqF5S0
キュゥべえ「僕は他の星から来た、君たちからすれば宇宙人という奴だね」

杏子「はっ!?」

さくら「うちゅう、じん?」

ケルベロス「……」

キュゥべえ「そうさ。そしてその目的はね、宇宙の寿命を延ばすことにあるんだ」

キュゥべえ「君たちはエントロピーという言葉を知っているかい?」

さくら「」フルフル

キュゥべえ「簡単に例えると焚き火で得られる熱エネルギーは気を育てる労力と釣り合わないってことさ」

286: 2011/07/27(水) 14:15:53.44 ID:X5EfqF5S0
キュゥべえ「エネルギーは形を変換するごとにロスが生じる」

キュゥべえ「宇宙全体のエネルギーは目減りしていく一方なんだ」

キュゥべえ「だから僕たちは熱力学の法則にとらわれないエネルギーを探し求めてきた」

キュゥべえ「そうして見つけたのが魔法少女の魔力だよ」

杏子「!!」

キュゥべえ「僕たちの文明は知的生命体の感情をエネルギーに変換するテクノロジーを発明したんだ」

キュゥべえ「ところが生憎、当の僕らが感情というものを持ち合わせていなかったからね」

キュゥべえ「宇宙のさまざまな異種族の中から君たち人類を見出したんだ」

キュゥべえ「そして、一人の人間が生み出す感情エネルギーはその個体が誕生し成長するまでの、」

ケルベロス「……もうええわ。大方の予想はついた」

キュゥべえ「そうかい? 君たちのことを教えてくれるのなら僕はそれでも構わないよ」

ケルベロス「こんな気分の悪い話、さくらに聞かせたない」

さくら「ケロちゃん……?」

288: 2011/07/27(水) 14:19:32.22 ID:X5EfqF5S0
ケルベロス「教えてもろた礼にわいらのことも教えたるわ」

ケルベロス「わいらは人に頼まれて他所の世界から人助けにきたカードキャプターとそのお供や」

キュゥべえ「ずいぶんと抽象的な答え方をするんだね。それはわざとなのかな?」

ケルベロス「言うた通りに受け取ってくれたらええ」

ケルベロス「ぶっちゃけ、わいらも誰を助けたらええか聞かんときてしもて困っとるくらいや」

キュゥべえ「どうやら僕は、直接君たちに会う前から嫌われていたみたいだね」

ケルベロス「人の魂いじくる奴にええ印象持つ奴なんかおらへんわ、とっとと失せろ」

キュゥべえ「そうかい。一応聞いておきたいんだけど……」

キュゥべえ「さくら、君は僕と契約して魔法少女になる気はないかい?」

ケルベロス「お前ッ……!」ガルル

さくら「……」

290: 2011/07/27(水) 14:22:58.41 ID:X5EfqF5S0
キュゥべえ「すでに別の力を持っているみたいだけど、力が多くて困ることもないだろう?」

キュゥべえ「契約してくれたら君の願いをなんでも一つだけ叶えてあげられるよ?」

キュゥべえ「君の才能ならかなりの無理難題でも叶えられそうだ」

キュゥべえ「代わりに魔女と戦ってもらうことになるけどね」

さくら「……」

さくら「わたしは契約しません」

さくら「あなたと契約したら、大事なものを失ってしまうから……」

キュゥべえ「そうかい。気が変わったらいつでも呼んでよ」

295: 2011/07/27(水) 14:38:38.00 ID:X5EfqF5S0
キュゥべえ「それじゃあ、僕はこれで」

杏子「待ちな」

キュゥべえ「? 何か用かい? 杏子」

杏子「……さやかのソウルジェムを取り戻す方法はあるのか?」

キュゥべえ「ないね。『僕の知る限りでは』」

杏子「『知る限りでは』だと?」

キュゥべえ「魔法少女は条理を覆す存在だ」

キュゥべえ「君たちがどれほどの不条理を成し遂げたとしても驚くに値しないよ」

杏子「できるんだな?」

298: 2011/07/27(水) 14:45:51.75 ID:X5EfqF5S0
キュゥべえ「前例はないね。悪いけど助言しようがない」

杏子「フン、いらねーよ!」

杏子「誰がテメェの手助けなんか借りるもんか……」

キュゥべえ「じゃあ、今度こそ僕は帰るよ」

キュゥべえ「バイバイ。杏子、さくら、ケルベロス」

杏子「ちっ」

さくら「……」

ケルベロス「」

パァァァ

ケロ「フン」

299: 2011/07/27(水) 14:48:33.64 ID:X5EfqF5S0
――翌朝。

てくてくてく……。

仁美「まどかさん、今朝は顔色が優れませんわよ? 大丈夫ですの?」

まどか「うん……、ちょっと寝不足でね」

仁美「それにしても、今日もさやかさんはお休みかしら」

仁美「あとでお見舞いに行くべきでしょうか……?」

仁美「でも、私が行っていいのか……。今、ちょっとさやかさんとはお話しづらいんですの」

300: 2011/07/27(水) 14:52:04.02 ID:X5EfqF5S0
まどか「仁美ちゃん、あのね……」

杏子『昨日の今日で、のん気に学校なんて行ってる場合かよ』

まどか「ぁっ!」ピタ

仁美「まどかさん?」

まどか「……」

杏子『ちょっと話があるんだ。顔貸してくれる?』

まどか「……仁美ちゃん、ごめん。今日はわたしも学校お休みするね!」タッタッタッ

仁美「え!? そんな、まどかさんちょっと……!」

305: 2011/07/27(水) 15:11:19.42 ID:X5EfqF5S0
――――――――
――――
――

まどか「あの、話って……」

杏子「美樹さやか、助けたいと思わない……?」

まどか「っ! 助けられるの!?」

杏子「わかんねーよ」

杏子「でもさ、あたしは助けられないってわかるまで諦めたくないんだ」

杏子「バカかって思われるかも知れないけどね」

まどか「……」

307: 2011/07/27(水) 15:14:55.64 ID:X5EfqF5S0
杏子「アイツは魔女になっちまったけど友達のアンタが呼びかければ……」

杏子「もしかしたら人間だった頃の記憶を思い出すかもしれない」

杏子「だから、それをアンタに頼めないかと思ってさ……」

まどか「それって……」

杏子「案外さ、あの魔女を真っ二つにしたらさ、中からソウルジェムが出てきて万事解決! とかさ」

杏子「そういうもんじゃん? 最後に愛と勇気が勝つストーリーってのはさ」

杏子「思えばアタシもそーゆうのに憧れて魔法少女になったんだよね」

杏子「さやかはそれを思い出させてくれたんだよ」

308: 2011/07/27(水) 15:21:10.50 ID:X5EfqF5S0
杏子「無理強いはしないよ? アンタを守りきる保障もできないし……」

まどか「……ううん、手伝わせて欲しい」

まどか「あたし、鹿目まどか」スッ

杏子「!」

杏子「……はは。調子狂うなぁ、もう」

杏子「佐倉杏子だ、よろしくね」ポン

まどか「……」

まどか(握手しようと手を差し出したらうまい棒貰っちゃった……)

杏子「さやかの居場所はもうわかってるんだ。さぁ行くよ」

まどか「あ、うん」

310: 2011/07/27(水) 15:24:53.50 ID:X5EfqF5S0
――――――――

てくてくてく……

まどか「ほむらちゃんも手伝ってくれないかな……」

杏子「アイツは駄目だ。そーゆうタマじゃない」

まどか「友だちじゃないの?」

杏子「違うね。利害の一致でつるんでるだけさ」

まどか「そうなんだ」

杏子「……もうすぐさやかのいる結界だ」

311: 2011/07/27(水) 15:29:13.92 ID:X5EfqF5S0


杏子「その前に一つ、まだ言ってないことがあるんだけど」

まどか「何かな?」

杏子「ほむらの奴は手伝ってくれないが、一人……いや二人か」

杏子「強力な助っ人がいるんだ」

まどか「助っ人? わたしの知ってる人なの?」

杏子「昨日、アタシと一緒にいた同い年ぐらいのがいただろ」

杏子「ほれ、あそこでこっちに向かって手を振ってる」

さくら「――」フリフリ

まどか「あの子が……」

314: 2011/07/27(水) 15:40:15.52 ID:X5EfqF5S0
さくら「初めまして、木之本 桜です」

まどか「初めまして、鹿目まどか……です」

まどか「……さくらちゃんも魔法少女なの?」

さくら「うーん、ちょっと違うんだけど」

さくら「説明すると長くなるし、今は似たようなものって思ってくれれば」

まどか「そっか」

まどか「でも、助っ人は二人って言ってたけど、もう一人は……」チラッ

さやか「」

まどか「さやかちゃんの身体、とか……?」

杏子「違うよ。もう一人ってのは」クックッ

ケロ「こにゃにゃちわー!」バァ

まどか「わぁっ!?」

317: 2011/07/27(水) 15:44:18.18 ID:X5EfqF5S0
さくら「ケロちゃん、まどかさんを驚かせちゃだめだよ」メッ

ケロ「いやぁ、スマンスマン」

まどか「ぁ、あなたは……?」

ケロ「わいはケロベロス、さくらの守護者の一人や」

まどか「キュゥべえとは……」

ケロ「なんも関係あらへん。あんなけったいな潰れ饅頭と一緒にせんといてや」

まどか「えっと、ごめんなさい?」

杏子「とまぁ、この二人がさっき言ってた助っ人だ」

319: 2011/07/27(水) 15:48:36.71 ID:X5EfqF5S0
杏子「さくら、結界の見張りご苦労様」

さくら「うん」

杏子「さぁ、パーティも揃ったことだし、お姫様の救出と参りますか」

まどか「さやかちゃんの身体は、どうするの?」

杏子「おっと危ねえ、忘れるとこだった。アタシが背負うよ」ヨイショ

320: 2011/07/27(水) 15:54:12.26 ID:X5EfqF5S0
杏子「それじゃ改めて、と。頼むよさくら」

さくら「うん。封印解除(レリーズ)!」

まどか「キーホルダーが杖に……!」

さくら「えい!」ブン

カッ

さくらは封印解除した杖を何もない壁に向かって振り下ろす。
すると壁は歪み、一瞬だがまるで天井が床に、床が天井になったような錯覚にとらわれた後、
気付けばその場にいた全員は魔女の結界に取り込まれていた。

杏子「行くよ」カツン

まどか「ぅ、うん」チラ

さくら「……」ニコ

ケロ「……」パタパタ

323: 2011/07/27(水) 15:57:48.17 ID:X5EfqF5S0
――――――――

テクテクテク……

まどか「……ねぇ杏子ちゃん、さくらちゃん」

杏子「あ?」

さくら「ほえ?」

まどか「いつも誰かに戦わせてばっかりで何もしないわたしって、やっぱり卑怯なのかな」

さくら「……?」チラリ

杏子「なんでアンタが魔法少女になるわけさ?」

まどか「なんでって……」

326: 2011/07/27(水) 16:04:50.50 ID:X5EfqF5S0
杏子「……舐めんなよ」

まどか「!」

杏子「この仕事はお遊びじゃねーんだ」

杏子「幸せ家族に囲まれて何の不自由もなく暮らしてる奴がさ」

杏子「ただの気まぐれで魔法少女になろうなんて、そんなのアタシが許さない」

まどか「……」

杏子「……あんただって」

杏子「いつかは命がけで戦わなきゃならない時がくるかもしれない」

杏子「その時になって考えればいいんだよ」

まどか「……うん」

327: 2011/07/27(水) 16:11:52.15 ID:X5EfqF5S0
さくら「……」テクテク…、ピタ

言葉少なに歩き続けていた一行の足がピタリと止まる。
彼女らの前には映画館にあるような重たい扉が立ちふさがっていた。

杏子「……行くぞ。覚悟はいいな?」

コクリ。

その場にいた全員がゆっくりと首を縦に振る。
杏子が先陣を切り扉に蹴りを入れる。

ギィィィ、ゴォッ!

336: 2011/07/27(水) 16:36:16.87 ID:X5EfqF5S0
ここにくるまで、すでに現実離れした場所だと思っていたが
扉の先は輪をかけて異常な空間が広がっていた。

楽器を演奏する小人たちに、それを指揮する小人。
音楽にあわせてバレエのような踊りを披露する小人。
そしてその中心にいるのが人魚の魔女、美樹さやかの成れの果て――。

キィアアアアアァァァ!!

まどか「あれが、さやかちゃんなの……?」ゴクリ

杏子「あぁ。昨日より瘴気が増してやがるな……」

337: 2011/07/27(水) 16:41:19.79 ID:X5EfqF5S0
杏子「さやか、お前はここで待っててくれ」ヨイショ

さくら「盾(シールド)!」

杏子はここまで背負ってきていたさやかの身体を床に下ろすと
そこへさくらが盾(シールド)のカードを使ってさやかの身体をバリアで覆う。

さくら「打ち合わせ通りに……」

杏子「行くぞ!」

まどか「うん!」

ダッ!

339: 2011/07/27(水) 16:45:36.69 ID:X5EfqF5S0
まどか「さやかちゃん! わたしだよ、まどかだよ!」

まどか「聞こえる? わたしの声が解る!?」

ガキィィィン!

まどか「っ!?」

杏子「怯むな! 呼び続けろ!」ギリギリ

まどか「さやかちゃん、やめて! お願い! 思い出して!!」

340: 2011/07/27(水) 16:47:59.67 ID:X5EfqF5S0
さくら「跳(ジャンプ)! さやかさん、こっちだよ!」

杏子「チッ、聞き分けがねぇにも程があるぜ!」

さくらは跳(ジャンプ)のカードで攻撃の的を絞らせないよう囮として縦横無尽に飛び回り、
杏子はまどかの盾として魔女オクタヴィアの攻撃をいなし続けている。

さくら「さやかさん! まだ会ったばっかりだけどさやかさんは優しい人だって知ってるから!」ビシュ

さくら「ちゃんと仲直りもできてないのにお別れなんて嫌だよ、戻ってきて!」ピョーン

杏子「さやかぁぁっ! アンタ、信じてるって言ってたじゃないか!」ギシッ

杏子「この力で人を幸せに出来るって! なのに簡単に挫けてんじゃねーぞ!」ガキン!

まどか「さやかちゃん……、もうやめて! わたしたちに気付いて!」ポロポロ…


ケロ(頼む……、届いてくれ!)

ケロ(さくらや嬢ちゃんらの声に耳を傾けてくれ!)

ケロ(きっかけさえあれば……)

341: 2011/07/27(水) 16:51:43.81 ID:X5EfqF5S0
――
――――
――――――――

――昨晩、ホテルにて。

杏子「なぁ、ケルベロス……」

ケロ「なんや?」

杏子「さやかのソウルジェムをどうにかして取り戻す方法とか、わからないか?」

ケロ「なんでわいに聞くんや?」

ケロ「さっき、あの潰れ饅頭と話しとったやないか」

杏子「半日程度だけど、一緒にいてアンタが『魂』なんて曖昧なもんにそこそこ詳しそうに見えたし」

杏子「それと、今までアタシらのこと騙してたアイツよりも、まだアンタの方が信用できそうだからな」

343: 2011/07/27(水) 16:54:48.84 ID:X5EfqF5S0
ケロ「そうか……」

ケロ「けどな、残念やけどわいにはさっぱりや」

ケロ「『魂』そのものならともかく、ソウルジェムってもんが理解できへん」

杏子「やっぱ無理か……」

さくら「ケロちゃん……」

ケロ「……」

345: 2011/07/27(水) 16:57:26.06 ID:X5EfqF5S0
ケロ「……もしかしたらや」

杏子「!! なんだ、何かあるのか!?」

ケロ「正直、魔女になってしもたさやかをソウルジェムに戻すなんて方法はわいには思いつかん……」

ケロ「さやかが魔女になった時に感じたことやけど、魔女っちゅうんは変質した魂そのものなんやと思う」

杏子「あん? よくわかんねーよ、もう少しわかりやすく説明してくれ」

ケロ「……人間をたこ焼きに例えるなら、人の魂は中に入っとるタコや」

さくら「ぅ、うん……」

ケロ「で、魔法少女にされた人間ってのはタコを抜き取って別の箱へと移されたようなもの」

ケロ「これがソウルジェムやな」

346: 2011/07/27(水) 16:59:43.18 ID:X5EfqF5S0
ケロ「この箱がどういうもんかわからへんからわいらには手出しできへんけど」

ケロ「魔法少女が魔女になって、箱が壊れればタコは外に放り出されたら……」

杏子「つまり……」

ケロ「さっきも言うたな」

ケロ「ソウルジェムの状態やったらお手上げやが、魂そのものならどうにかできるかも知れん」

杏子「!」

さくら「本当なの、ケロちゃん!」

348: 2011/07/27(水) 17:03:24.79 ID:X5EfqF5S0
ケロ「可能性の話や。ゼロやないって言うだけで、限りなくゼロに近い」

ケロ「それに魂を扱うなんてリスクも半端やない」

杏子「リスクとかそんな話はどうだっていい! 可能性はゼロじゃないんだろ!?」

杏子「頼む、その方法を教えてくれ!」ガバッ

ケロ「無理や」

杏子「そこをなんとか!」

ケロ「どんに頼まれても……杏子、お前には無理なんや」

杏子「どうしてだよ!」

349: 2011/07/27(水) 17:06:48.66 ID:X5EfqF5S0
ケロ「魂を扱うには膨大な魔力が必要や」

ケロ「けど、杏子。お前の魔力じゃぜんぜん足りへん」

杏子「そんな……」

さくら「なら……」

ケロ「……」

さくら「わたしなら、できるの?」

杏子「!?」

ケロ「……」ハァ

353: 2011/07/27(水) 17:15:37.90 ID:X5EfqF5S0
さくら「どうなの、ケロちゃん?」

ケロ「……あぁ、さくらなら可能性はある」

さくら「じゃあ!」

ケロ「それでも! 1パーセントかそこらや」

ケロ「それに失敗したら、最悪さくらが魔女になるかもしれん」

杏子「なんだと!?」

ケロ「魂を扱うってことはそういうことなんや」

杏子「……ッ!」

355: 2011/07/27(水) 17:20:28.79 ID:X5EfqF5S0
さくら「……それでも、わたしはやるよ」

杏子「! さくら、アンタ……」

さくら「さやかさん、公園で困ってたわたしを助けてくれたもん」

さくら「そんな優しいさやかさんが魔女になるなんて間違ってる、わたし見過ごせないよ」

ケロ「……」

ケロ「はぁ~……、だから言いたなかったんや」

ケロ「わいはさくらの守護者や。さくらを危険な目には遭わせたない」

358: 2011/07/27(水) 17:26:53.90 ID:X5EfqF5S0
さくら「ありがとう、ケロちゃん。でもわたしは」

ケロ「わかっとる。さくらはそういうとこ頑固やから言うだけ無駄や」

杏子「さくら、ほんとにいいのか?」

さくら「うん、任せて! 『絶対だいじょうぶだよ』」

ケロ「しゃあない、一回しか言わへんからちゃんと聞いときや」

――――――――
――――
――

360: 2011/07/27(水) 17:31:58.32 ID:X5EfqF5S0
キン! ガキッ、ガシャン!

ケロ(一瞬でええんや!)

ケロ(一瞬でも人間やった頃の記憶を思い出してくれれば……)

ケロ(それまではわいもさくらも魔力の消費は最小限に抑えとかなあかん)

ケルベロスはさやかの身体とともに盾(シールド)のバリアの中で
さくらたちを信じてただ待つことしか出来なかった。

365: 2011/07/27(水) 17:41:23.05 ID:X5EfqF5S0
キン! ガキッ、ガシャン!

杏子「ちっ、くっしょう……」ハァ、ハァ

ひたすらまどかの盾としてオクタヴィアの攻撃をいなし続けていた杏子だったが
そろそろ体力の限界が見え始めていた。
さくらが囮となって引きつけてくれているがだんだんと増してくる手数に
じわりじわりと体力を削られ荒い呼吸で肩を上下させている。

さくら「杏子ちゃん!」

杏子「まだ大丈夫だ! さくらのおかげでちょっとは楽させてもらってるからな」ニッ

杏子「どうしたさやか! へばってきてんじゃねえか?」

368: 2011/07/27(水) 17:47:17.57 ID:X5EfqF5S0
杏子「怒ってんだろ? 何もかも許せないんだろ?」

杏子「解るよ。好きなだけ暴れなよ」

杏子「アタシがいくらでも付き合ってやるからさ」

杏子「それで気が済んだら、目ぇ覚ましてくれよ、な……?」

ズズ……、キィアアァアアァァァ!!

ゴッ、ズゥン!

杏子「うああああああ!!」ドゴッ

さくら「杏子ちゃん!」

まどか「さくらちゃん、駄目! 後ろから……!」

ズガァッ!

さくら「きゃああああああ!!」ベシャ

371: 2011/07/27(水) 17:51:51.15 ID:X5EfqF5S0
がしっ! ギリギリギリ……

まどか「ぐぅぅ……、痛ぅっ。さやか、ちゃん……」

杏子が吹き飛ばされたのを皮切りに連携が崩れ、
その隙にオクタヴィアの腕がまどかを掴み絞めあげる。

杏子「まどか!」

さくら「まどかさん!」

キィアァアアァァア!

まどか「かはっ、さやかちゃん……。さやか、ちゃん……」キッ

374: 2011/07/27(水) 17:57:18.27 ID:X5EfqF5S0
まどか「さやかちゃんの……ばかああああああ!!!」

杏子「なっ!?」

さくら「ほえー!?」

まどか「さやかちゃんの根性なし! 弱いくせに変なとこで意地張ったりするし!」

まどか「わたしがどれだけ心配してると思ってるの!?」

まどか「そんな身体になるなら上条君の腕なんか治さなければよかったって思ってる!?」

まどか「違うよね、始めから知ってたとしてもそれでもさやかちゃんは魔法少女になってたよ!」

まどか「親友のわたしが言うんだから間違いないんだよ!」

まどか「こんなにたくさんの人に迷惑かけて……、いい加減に戻ってきてよッ!!」

376: 2011/07/27(水) 18:00:21.87
クララの馬鹿!いくじなし!ギョウ虫!

377: 2011/07/27(水) 18:01:18.00
マヌケ!蛆虫!ゴミ!

375: 2011/07/27(水) 17:59:53.01 ID:X5EfqF5S0
まどか「ぜぇ……はぁ……」ケホ

ギ……ギギ……

ギィゥゥゥアアアアアア!!

まどか「さやかちゃん!?」

突如として苦悶の(ように聞こえる)声をあげ、オクタヴィアはまどかを掴んでいたその手を離す。

まどか「きゃっ!」

4,5メートルはあろうかという高さから投げ出され、まどかの身体は真っ逆さまに落下していく。

杏子「まどかぁっ!」

さくら「まどかさん!」

378: 2011/07/27(水) 18:04:51.38 ID:X5EfqF5S0
杏子(くそっ、間に合わねえ……)

ヒュッ、……トサッ

ほむら「……まどか、怪我はないかしら?」タン

まどか「ほむら、ちゃん?」パチクリ

杏子「ほむら!」

さくら「よかった……」

ケロ「あぁ、ようやったで」

さくら「ケロちゃん!」

ギィィァァゥウウウアアアアア!!

さくら「さやかさん、苦しんでる……?」

381: 2011/07/27(水) 18:08:47.29 ID:X5EfqF5S0
ケロ「まどかの言葉に反応したんや、僅かながら人間やった頃の記憶が蘇ってきとるはずや」

ケロ「さくら、やるなら今しかない!」

さくら「うん、行くよケロちゃん!」

パァァァ

ケルベロス「いつでもええで!」

『器を失いし魔女よ、汝の身体はここにある』

『汝の名は美樹さやか』

『今一度、汝のあるべき姿に戻れ!』

カッ!

さくらが掲げた杖から眩い光の球体が降り注ぎ魔女の空間を埋め尽くす。

ほむら「まぶしっ……、彼女は何をしようというの?」

389: 2011/07/27(水) 18:16:23.78 ID:X5EfqF5S0
杖から発せられた優しい光がオクタヴィアを包み込んでいく。

ギィィァアアアアアア!!

その光球が苦しいのかオクタヴィアは両腕を振りまして振り払おうとする。

ケルベロス「さくら、わいを杖に取り込め!」

さくら「うん!」

次いでケルベロスの身体からも輝きが増したかと思うと、
ケルベロスはさくらの持つ杖へと吸い込まれてしまう。

パァッ!

直後、杖から発せられていた光はより強いものになり
同時に杖の先端のトレードマークともいえる星の飾りが太陽を模した形状へと姿を変える。

391: 2011/07/27(水) 18:19:20.85 ID:X5EfqF5S0
杏子「さやかー!」

まどか「さやかちゃん!」

ほむら「……」

光球はどんどんと数を増やし、オクタヴィアを完全に包み込む。
苦しそうに振り回していた腕もだらりと下がっている。

さくら「さやかさん、お願い! 戻ってきて……!」

カッ!

393: 2011/07/27(水) 18:26:16.33 ID:X5EfqF5S0
輝きが最高潮に達し空間全てを光球が埋め尽くす。
そのあまりの眩しさにその場にいた全員が目を閉じ顔を伏せていた。

杏子「どうなったんだ……?」

うっすらと目を開け、光球が消えていることを確認してから辺りを見回す。

まどか「あれ……、ここって結界の外?」

さくら「……」

ほむら「魔女を倒したから結界が解けたのよ」

まどか「倒した……? そんな、それじゃさやかちゃんは!?」

ほむら「あれは美樹さやかではなく魔女よ。魔女の末路は決まっているわ」

まどか「そんな……そんなのってないよ……ぐすっ」ポロポロ

杏子「さやか……せめてアタシも一緒にいってやれば……」

396: 2011/07/27(水) 18:30:24.06 ID:X5EfqF5S0
さくら「……だいじょうぶ」

まどか「……え?」

さくら「絶対だいじょうぶだよ」ニコ

杏子「何を言って……」ハッ

さやか「こほっ……」

ほむら「!?」

399: 2011/07/27(水) 18:34:43.75 ID:X5EfqF5S0
さやか「」スー、スー

まどか「さやかちゃん……。息、してるよ……」

杏子「ほんとだ……、やったぜ! うまくいったんだ!!」

ほむら「どういうことなの……?」

さくら「よかった……、本当によかった」フラッ

どさっ

まどか「さくらちゃん!」

杏子「おい、どうしたさくら!」

パァッ! シュルルル……

ケロ「心配ない、魔力の使いすぎで疲れて眠ってしもただけや」

まどか「そうなんだ……」

401: 2011/07/27(水) 18:41:16.91 ID:X5EfqF5S0
ケロ「それより、さやかの嬢ちゃんや」

ケロ「さっきまで身体は死んどったんや、病院連れてった方がええで」

まどか「!! 杏子ちゃん、そっち持って!」セーノ!

杏子「あいよ!」ホッ!

ほむら「病院まで何キロあると思っているの? 救急車を呼びましょう」ピポパ

まどか「あ、そうだよね」アハハ

ほむら「もしもし。――でクラスメイト、女子中学生が倒れていまして……」

402: 2011/07/27(水) 18:46:55.13 ID:X5EfqF5S0
杏子「ありがとな、さくら。アンタのおかげだよ」

ケロ「杏子やまどかの嬢ちゃんもよおやったで」パタパタ

杏子「ケルベロスはずっと出番待ちだったもんな」クックッ

ケロ「ほんま、ハラハラしっぱなしやったわ。何度飛び出そと思たことか」

杏子「アンタもありがとな、アタシらのこと信じてくれて」

ケロ「アホ言え、わいはさくらを信じただけや」ツーン

杏子「なんでえ、かわいくねえな」

ケロ「なんやと!?」

杏子「なんだよ!!」

ほむら「やめなさい、二人とも。美樹さやかはまどかに任せて、そっちの……」

ほむら「さくら、だったかしら? その子を私の家まで運びましょう。すぐ近くなの」

ほむら「それに目が覚めたらいろいろと聞きたいことがあるわ」

404: 2011/07/27(水) 18:50:18.36 ID:X5EfqF5S0
――――――――

ほぇ……? これは……

「はーい、それじゃあ自己紹介いってみよー」

あぁ……これ、きっと夢だ……

昔のほむらさんの、夢……

「あ……、あのあのっ、私……」

「暁美、ほむらです……。よろしく、……お願いします」オズオズ

ほむらさん……眼鏡かけてる?

「暁美さんは心臓の病気でずっと入院していたの」

「みんな、仲良くしてあげてね」

ほむらさんって、転校生だったんだ

406: 2011/07/27(水) 18:56:11.16 ID:X5EfqF5S0
「ねぇねぇ暁美さん、前はどこの学校だったの?」

「部活とかやってた?」

「すっごく長い髪だよね、編むの大変じゃない?」

「その、私……」ワタワタ

「ちょっとごめんね、みんな!」

あ、まどかさんだ

「暁美さん、休み時間は保健室でお薬飲まないといけないの」

「そうだったの? ごめんね暁美さん」

「いえ……」

「わたし保険委員なんだ。保健室の場所、わかる?」

407: 2011/07/27(水) 19:00:37.19 ID:X5EfqF5S0
パッ、パッ

あれ? 急に場面が飛んで……

「なに!? どこなのここ!?」

ほむらさんが魔女の結界に……!

『ア…ァァア…』ユラァ

「い、いやっ、こっちにこないで!」ドサッ

ほむらさんが危ない!

ギュルン!

え?

411: 2011/07/27(水) 19:06:00.67 ID:X5EfqF5S0
「間一髪ってところかしら」キリリ

「もう大丈夫だよ、ほむらちゃん!」ファサ

知らない黄色い魔法少女に、魔法少女のまどかさん……?

「彼女たちは魔法少女、魔女を狩る者たちさ」

「いきなり秘密がばれちゃったね。クラスのみんなには内緒だよ?」

この夢は一体……、ほむらさんの過去じゃないの……?

413: 2011/07/27(水) 19:12:01.61 ID:X5EfqF5S0
――病院。

ガララ。

まどか「さやかちゃん!」

さやか「おっす、まどかー」ヤホー

まどか「もう起き上がっても大丈夫なの?」

さやか「うん。今朝目が覚めたんだけど、びっくりするぐらいなんともないよ」

さやか「お医者さんも明日には退院できるだろうってさ」

まどか「よかった……、ほんとによかったよ……」ポロポロ

さやか「ちょっとちょっと、泣かないでよまどか!?」アワワ

414: 2011/07/27(水) 19:16:15.44 ID:X5EfqF5S0
まどか「だって、さやかちゃん、魔女になって身体は半日ぐらい死んでたんだし……」エグ

まどか「もう二度とお話できないんじゃないかって不安で……」エグ

さやか「ごめんね、まどか……」

まどか「え……?」

さやか「この前のこと、まどかは心配してくれてたのにあたしひどいこと言っちゃって」

さやか「ずっと後悔してたんだ……、なんであんなこと言ったんだろうって」

まどか「それならわたしの方こそっ!」

さやか「いいの」

さやか「こうやって今、まどかにごめんって言えたのが物凄く嬉しいんだ」ニコ

まどか「わたしも、すごく嬉しいよ……。さやかちゃん」ニコ

416: 2011/07/27(水) 19:19:12.64 ID:X5EfqF5S0
ガララ。

まどか「え?」

仁美「こんにちは、さやかさん。まどかさんもいらしてたんですね」

恭介「さやか、気分はどうだい?」

さやか「ひひひ仁美ぃ!? それに恭介まで、どうして……」フギャー

仁美「どうしてって、クラスメイトが入院したのですからお見舞いにくるのは普通のことではないですか?」

さやか「そりゃそうかもだけど……」

恭介「……」

さやか「……」

まどか(なんとも言えない空気が……)

422: 2011/07/27(水) 19:26:59.16 ID:X5EfqF5S0
仁美「……思ったより元気そうですわね」

さやか「あぁ、うん。明日には退院できるってさ」

仁美「そうですか、それはよかったです」

仁美「さやかさんの元気な顔が見れましたし、私は先にお暇させていただきますね」

さやか「そ、そう?」

仁美「はい。このあと用事がありますので」

425: 2011/07/27(水) 19:30:04.21 ID:X5EfqF5S0
仁美「では、お見舞いの品は置いていきますので」

さやか「お見舞いの品? って手ぶらじゃん。何のこと?」

恭介「あはは……」ポリポリ

仁美「まどかさん、用事に付き合ってくれませんか?」

まどか「えぇ!? わ、わたし!?」

仁美「はい、お願いしますわ」ウィンク

まどか「あ……、うん。わかったよ」

430: 2011/07/27(水) 19:35:23.14 ID:X5EfqF5S0
さやか「へ? え、ちょっと二人とも……!」

まどか「じゃあね、さやかちゃん。明後日の朝、いつもの場所で待ち合わせだよ」

仁美「さようなら、さやかさん」

ガララ。

さやか「えー……?」チラ

恭介「……」

さやか「……」

436: 2011/07/27(水) 19:40:16.85 ID:X5EfqF5S0
さやか「よかったの? 仁美だけ先に帰しちゃって」

さやか「二人って……その、付き合ってるんでしょ?」

恭介「うん……、『付き合ってた』ってのが正しいけど」

さやか「付き合って『た』? どどどういうこと!?」

恭介「まぁ、一言で言えばフラれたんだよ」アハハ…

さやか「はいぃぃぃ?」

439: 2011/07/27(水) 19:44:28.77 ID:X5EfqF5S0
恭介「女の子に告白されたのなんて生まれて初めてで、舞い上がってオーケーしたんだけど」

恭介「丁度その日からさやかが学校を休み始めたじゃないか?」

恭介「それで心配だねって何度か口にしてたと思うんだ」

さやか「うん。それで?」

恭介「本人を前にして言うのもなんだけど、今までさやかのことって幼馴染としてしか見てなかったし」

さやか(オゥフッ)ザクッ

恭介「女の子として見たことなんて、はっきり言って一度もなかったかもしれない」

さやか(あたし立ち直れそうにないんだけど……)ズーン

448: 2011/07/27(水) 19:50:09.72 ID:X5EfqF5S0
恭介「仁美さんと付き合って、自分は本当にこの人が好きなのかな? なんてまじめに考えちゃってさ」

恭介「仁美さんが話しかけてきてくれるのも上の空でさやかのことばかり話してたら機嫌を損ねちゃって」

さやか(あれ……? 話の流れが、何か、おかしい気がする……)

恭介「そして昨日、さやかが事件に巻き込まれて病院に搬送されたって聞いてからいてもたってもいられなくなって」

さやか(事件!? あたし事件に巻き込まれたことになってるの?)

恭介「今日、仁美さんに『行きたい所がある』って言われてついてきたら病院の前で」

恭介「そこで哀れ僕はフラれてしまいましたとさ」

さやか「は、はぁ……」

450: 2011/07/27(水) 19:54:55.59 ID:X5EfqF5S0
恭介「仁美さんに言われたよ。結論は出てるはずだって」

恭介「代わりにされるのもごめんです、とも言われたな」

さやか「……」

恭介「その……、さやか」

さやか「ひゃい!」

恭介「気付いたんだ、僕。僕は君のことが好きなんだって」

さやか「なっ!?///」プシュー

ばたんきゅ~

恭介「ちょ!? さ、さやか!」

451: 2011/07/27(水) 20:00:09.46 ID:X5EfqF5S0
――――――――

さやか「いやはや、お見苦しいところを……」///

恭介「そんなことは別に……」///

さやか「……」

恭介「……その、答えを聞きたいんだけど……」

さやか「……あたしなんかで、ほんとにいいの?」

恭介「もちろん!」

さやか「仁美の方がおしとやかだし、習い事とかいっぱいしてるし、家もお金持ち出し」

457: 2011/07/27(水) 20:04:16.99 ID:X5EfqF5S0
さやか「それに比べあたしはがさつだし馬鹿だし、今回もみんなにいっぱい迷惑かけちゃったし」

さやか「それにそれに」

恭介「さやか」

さやか「?」

恭介「あんまり僕の好きな人を悪く言わないで欲しいな」

さやか「へ?」

さやか「///」プシュー

ばたんきゅ~

恭介「さやかー!」

461: 2011/07/27(水) 20:11:17.75 ID:X5EfqF5S0
――カフェ。

仁美「――とまぁ、そういうわけなんです」ムシャムシャ

まどか「あはは……そうだったんだ」

仁美「戦った私が戦わなかったさやかさんに負けるなんて、正直納得いきませんわ」ムシャムシャ

まどか「なんて言っていいのかわからないけど……、ご愁傷様っていうのかな?」

仁美「私、たくさん習い事をさせられましたし躾も厳しく育てられてきましたわ」ムシャムシャ

仁美「自分で言うのもなんですが、それなりにいい女だと思ってましてよ?」ムシャムシャ

まどか「仁美ちゃん、ラブレターとかもいっぱい貰ってるしね」

465: 2011/07/27(水) 20:15:31.22 ID:X5EfqF5S0
仁美「なのになのになのにぃぃぃ……きぃぃぃ!!」ムシャムシャ

まどか「あわわわ、仁美ちゃん落ち着いて!」

仁美「……ふぅ、すみません。少し取り乱しましたわ」ムシャ、カラン

仁美「あら、もう空っぽ」

仁美「すみません、もう一つおかわりをお願いします」

まどか「ダメだよ、仁美ちゃん! 自棄食いにしたってアンビリーバブル3杯目突入なんてしたら……!」

仁美「止めないで下さいまどかさん!」

まどか「絶対ダメー!」

472: 2011/07/27(水) 20:21:43.70 ID:X5EfqF5S0
――通学路。

キュゥべえ「……やぁ」

ほむら「インキュベーター……!」

キュゥべえ「少しいいかい? 暁美ほむら」

ほむら「待ち伏せとはずいぶんと宇宙人らしいことをするようになったわね」

ほむら「いいわ、少しくらいなら付き合ってあげましょう」

ほむら「ここでは人の目に付くわ。近くの公園へ行きましょう」

キュゥべえ「わかったよ」

475: 2011/07/27(水) 20:27:09.47 ID:X5EfqF5S0
ほむら「それで……、話というのは美樹さやかのことかしら?」

キュゥべえ「そうだね。今回のことについて僕らはすごく驚いているよ」

キュゥべえ「魔女となった魔法少女を人間に戻すことができるなんてね」

ほむら「あなた、佐倉杏子をけしかけたらしいけど、あなたはうまくいくと思っていたのかしら?」

キュゥべえ「けしかけたなんて言い方は心外だな。杏子には可能性の問題としてゼロではないとそう答えただけだよ」

キュゥべえ「ただ、僕個人の意見としては限りなく100%に近い確率で失敗して」

キュゥべえ「杏子も魔女化するか死んでしまうかのどちらかだろうと考えていたね」

ほむら「なら、どうして止めなかったの?」ギリ…

478: 2011/07/27(水) 20:30:30.20 ID:X5EfqF5S0
キュゥべえ「本当なら止めるところなんだけど、杏子が脱落することには大きな意味があったからね」

キュゥべえ「……君一人じゃワルプルギスの夜に勝ち目はない」

キュゥべえ「この街を守るためにはまどかが魔法少女になるしかないわけだ」

ほむら「そのはずが……、ずいぶんと残念な結果だったんじゃない?」クス

キュゥべえ「そうだね。残念といえば残念だったね」

キュゥべえ「実はね、さっき、さやかに会いに行ってきたんだ」

ほむら「なっ! あなたまさか……」

キュゥべえ「魔法少女になれる人間は貴重だからね」

480: 2011/07/27(水) 20:34:55.98 ID:X5EfqF5S0
キュゥべえ「もう一度魔法少女になってもらえれば僕としては喜ばしい限りだったんだけど」

キュゥべえ「話しかけてもなんの返答ももらえなかったよ」

ほむら「ふっ、当然でしょう。あんな目に遭った後であなたなんかとは口も聞きたくないでしょうね」

キュゥべえ「いや、そうじゃないよ」

ほむら「……?」

キュゥべえ「さやかには僕の姿が見えていなかったみたいだね」

ほむら「それは、つまり……」

キュゥべえ「魔法少女としての素質が失われていたんだ。これは実に残念なことだよ」

482: 2011/07/27(水) 20:40:12.45 ID:X5EfqF5S0
キュゥべえ「僕らはね、過去に魔女を魔法少女に戻す研究をおこなったことがあるんだよ」

ほむら「魔法少女を再び魔女化させて効率のいいエネルギー回収法でも考えていたのかしら?」

キュゥべえ「君は何でも知っているね、その通りだよ」

ほむら「……ッ!」

キュゥべえ「過去の研究で魔女を魔法少女に戻すことができないということはわかっていた」

キュゥべえ「だから、今回魔女が人間が戻ったというのは非常に興味深い出来事だった」

キュゥべえ「貴重な人材を再利用できるかもしれないという可能性を示してくれたんだから」

483: 2011/07/27(水) 20:45:26.37 ID:X5EfqF5S0
ほむら「再利用って……、キサマは人間を何だと思っているのよ!」

キュゥべえ「強いて言うなら……。宇宙をより良い方向へ導く協力者、かな」

ほむら「冗談でしょう!? 使い捨ての乾電池程度にしか考えてないでしょうに」

キュゥべえ「曲がりなりにも知的生命体として接してきたつもりなんだけどね」ハァ

ほむら「不愉快極まりないわ。私、そろそろ帰らせてもらっても良いかしら?」

キュゥべえ「待ってくれ、暁美ほむら。まだ僕の話は終わっていないよ」

ほむら「これ以上なんの話があるというの?」

キュゥべえ「これ以上も何もさやかのことは本題じゃない」

キュゥべえ「君がさやかの話題を出したから僕はそれに乗っただけだよ」

ほむら「そう。ならその本題とやらも短めにお願いできるかしら」

キュゥべえ「本題といっても、君に一つだけ確認したことがあっただけなんだ」

ほむら「……なにかしら?」

486: 2011/07/27(水) 20:49:27.52 ID:X5EfqF5S0
キュゥべえ「僕が契約した覚えのない魔法少女……、君という存在に僕らの結論が出たよ」

キュゥべえ「時間遡行者、暁美ほむら。数多の平行世界を横断し……」

キュゥべえ「君が望む結末を求めてこの一ヶ月間を繰り返してきていたんだね」

ほむら「……ええ、その通りよ」

キュゥべえ「やはり……。そして君の願いは鹿目まどかに関わることだ、違うかい?」

ほむら「そうね、あなたの言う通りだわ」

キュゥべえ「なるほどね。これで一つ納得がいったよ」

ほむら「? 何の話……」

489: 2011/07/27(水) 20:56:31.23 ID:X5EfqF5S0
キュゥべえ「鹿目まどかの『素質』だよ」

キュゥべえ「魔法少女としての素質は背負い込んだ因果の量で決まるんだ」

キュゥべえ「一国の女王や救世主ならともかく、ごく平凡な人生を与えられたまどかに」

キュゥべえ「どうしてあれほど莫大な因果の意図が集中してしまったのか不可解だった」

キュゥべえ「ねぇほむら。ひょっとしてまどかは君が時間を繰り返すたびに」

キュゥべえ「強力な魔法少女になっていったんじゃないかな?」

ほむら「!!」ハッ

494: 2011/07/27(水) 21:00:40.17 ID:X5EfqF5S0
キュゥべえ「やっぱりね。原因は君にあったんだ」

ほむら「どういうことなの……」

キュゥべえ「君が彼女のために何度も時間を遡るうちに」

キュゥべえ「彼女の存在を中心軸に幾つもの並行世界を螺旋状に束ねてしまったんだろう」

キュゥべえ「君が繰り返してきた時間、その中で循環した因果の全てが」

キュゥべえ「巡り巡って鹿目まどかに繋がってしまったのさ」

ほむら「……」

ほむら「それって……、まさか……」

キュゥべえ「お手柄だよ、ほむら」

キュゥべえ「君がまどかを最強の魔女に育ててくれたんだ」

499: 2011/07/27(水) 21:05:28.66 ID:X5EfqF5S0
――――――――

「私、鹿目さんとの出会いをやり直したい!」

「鹿目さん! 私魔法少女になったんだよ! これから一緒に頑張ろうね!」

「鹿目さんしっかり! どうしちゃったの!?」

「ワルプルギス……倒したのにぃ……」

「ソウルジェムが魔女を生むなら……、みんな死ぬしかないじゃない!」

「キュゥべえに騙される前の馬鹿なわたしを、助けてあげてくれないかな……」

『私はもう 誰にも頼らない』

『まどかには絶対に戦わせない』

『全ての魔女は私一人で片付ける。そして今度こそ……』

『ワルプルギスの夜を、この手で――』

502: 2011/07/27(水) 21:13:14.24 ID:X5EfqF5S0
「ひどい……、こんなのってないよ!」

「まどか、運命を変えたいかい?」

「そいつの言葉に耳を貸しちゃダメ!!」

「この世界の何もかも君が覆してしまえばいい」

「騙されないでまどか!」

「それを可能にする力が君にはあるんだ」

「……本当に?」

「もちろんだよ。だから、僕と契約して魔法少女になってよ」

「駄目ええええええええええええ!!」

505: 2011/07/27(水) 21:16:25.53 ID:X5EfqF5S0
そうだったんだ……

『何度でも繰り返す』

ほむらさんはまどかさんを助けるために……

『たった一人の、私の友達』

何度も何度も……

『あなたの為なら、私は永遠の迷路に閉じ込められても構わない』

とても、悲しいお話……

507: 2011/07/27(水) 21:20:12.75 ID:X5EfqF5S0
ジ……ジジッ……

ほぇ?

「もう……やめてくれ……。もう見たくないんだ……」

この人は……一体……

「私のせいだ……」

「私がこの星の命運を決めてしまった……」

「私はどうすればいいというのだ……」

508: 2011/07/27(水) 21:25:21.22 ID:X5EfqF5S0
「『次元の魔女』よ、どうかこの世界を救ってくれ……!」

今、次元の魔女って!?

「できないというのなら、せめて……」

「彼女だけでも……、救ってやって欲しい」

もしかしてこれって……

ほむらさんの夢じゃなくて、この人の……

512: 2011/07/27(水) 21:30:02.45 ID:X5EfqF5S0
ガチャリ。

ほむら「彼女はまだ寝ているかしら?」

ケロ「あぁ、まだ――」

さくら「ほえ……?」

ケロ「っと、言うとったらようやく目ぇ覚ましたで」

ほむら「さくら……、話があるのだけれど」

さくら「うにゅぅ~……」

ケロ「あかんわ、まだ寝ぼけとる」

さくら「ぅー、おといれ……」ノソノソ

ほむら「……トイレなら部屋を出て右よ」

さくら「ありがと……」フラフラ

ほむら「……」

516: 2011/07/27(水) 21:34:59.94 ID:X5EfqF5S0
カチャ、パタン。

さくら(う~ん、頭がボーっとするよー)

さくら「さっきの夢……」

さくら(ほむらさんと、壱原さんとお話してた知らない人……)

キュ、ジャー……!

さくら「……ほえ? この格好……」

さくら「パジャマに……下着も私のじゃない……」

さくら「え? な、なんでなの? っていうか、ここってどこ!?」

さくら「ほえええええええええ!!?」


ほむら「騒がしい子ね……」

ケロ「さくらは元気なんが取り得やからなぁ」

520: 2011/07/27(水) 21:40:51.04 ID:X5EfqF5S0
――――――――

さくら「ここ、ほむらさんのおうちだったんですか……」

ほむら「ええ。あなたが今着ているパジャマも私のものよ」

ほむら「一応、下着はちゃんと新しいものだから」

さくら「ありがとうございます」ペコリ

ほむら「このぐらい……。お礼を言いたいのはこちらの方よ」

さくら「ほえ?」

ほむら「美樹さやかを救ってくれた。おかげでまどかを悲しませずに済んだわ」

さくら「それじゃあさやかさんは無事なんですね!」

522: 2011/07/27(水) 21:45:08.68 ID:X5EfqF5S0
ほむら「ええ、目も覚まして身体の方も健康体そのものだそうよ」

さくら「よかった……」ホッ

さくら「魂はうまく戻せたと思ったけど、目が覚めるかはわからなかったから」

さくら「少し不安だったの」

ケロ「わいはさくらなら絶対だいじょうぶやって信じとったで~」

ほむら「改めてお礼を言わせて貰うわ」

ほむら「あなたは美樹さやかだけでなく、間接的に佐倉杏子も救ってくれた」

ほむら「本当にありがとう」フカブカ

さくら「そんな……! わたしはあたりまえのことをしただけで」ワタワタ

525: 2011/07/27(水) 21:50:23.61 ID:X5EfqF5S0
ほむら「……」

ほむら「さくら、あなたはこれからどうするのかしら?」

ほむら「そこそこの事情はケルベロスから聞いたわ、なんでも別の世界から人助けに来たとか」

ケロ「まぁ、その人助けも終わったし。あとは帰るだけ……」

さくら「ううん、まだ終わってないよ」

ケロ「ん?」

さくら「まだ、ワルプルギスの夜を倒してない」

ほむら「!? あなた、どうしてそのことを……!」

527: 2011/07/27(水) 21:55:06.42 ID:X5EfqF5S0
ケロ「なんやそれ? 聞いたことないけど嬢ちゃんは知っとるんか?」

さくら「……その前に、ほむらさんに謝らないといけないことがあるんです」

ほむら「謝るって……、一体何のことかしら」

さくら「わたし、ほむらさんの記憶を夢で見ました」

ほむら「え? それってどういう……?」

ケロ「……過去夢か」

さくら「ほむらさんは、キュゥべえと契約して時間を巻き戻す魔法が使えるんですよね?」

ほむら「ッ!! そんなことまで……えぇ、その通りよ」

ほむら「私はただまどかを守りたかった」

ほむら「助けてもらった恩返しがしたかっただけ……」

さくら「キュゥべえと契約して魔法少女になったほむらさんは何度もワルプルギスの夜と戦って……」

ほむら「何度も何度も時間を巻き戻し続けたわ」

ほむら「この一ヶ月をもう何度繰り返したことか……」

532: 2011/07/27(水) 22:00:18.99 ID:X5EfqF5S0
ほむら「……さくらはその私の記憶を夢で見たというの?」

さくら「はい。ごめんなさい……」

ほむら「それは、偶然なの?」

さくら「見ようと思って見れるものでもなくて、その……」

ほむら「ならいいわ、別に悪気があったわけでもないのでしょう?」

さくら「許してくれるんですか?」

ほむら「気分のいいものではなかったでしょうに」

ほむら「説明が省けたと思えばそのくらい気にしないわ」

ほむら「それよりも」

536: 2011/07/27(水) 22:05:25.67 ID:X5EfqF5S0
ほむら「さっきあなたは『まだ、ワルプルギスの夜を倒してない』って言ったわよね?」

さくら「はい」

ほむら「さくらはワルプルギスの迎撃に手を貸してくれるというの?」

さくら「そのつもりです」

ほむら「……なぜ?」

さくら「え?」

ほむら「あなたは別の世界の住人なのでしょう?」

ほむら「なんの見返りもなしに無関係のあなたがどうして命がけの戦いに望もうというの?」

さくら「……ほっとけないんです」

537: 2011/07/27(水) 22:09:24.28 ID:X5EfqF5S0
さくら「目の前で苦しんでる人がいたら助けたいって思うのはおかしいですか?」

ほむら「……おかしいわ」

ほむら「少なくても私は会って数日の人間を命をかけてまで助けようとは思わない」

ほむら「命を助けられたわけでもないでしょう?」

ほむら(私みたいに……)

さくら「……でも、わたしは助けたいって思うんです」

539: 2011/07/27(水) 22:15:04.00 ID:X5EfqF5S0
さくら「壱原侑子さん。その人がわたしをこの世界に送ってくれました」

さくら「壱原さんはわたしならできるって期待してくれた」

さくら「クロウリードさんはこのカードをわたしに託してくれました」ゴソゴソ

ほむら「……何も描かれてないけど、何に使うものなの?」

さくら「わたしも何に使うのかはまだわからないけど、きっとわたしの助けになってくれる」

さくら「クロウさんはわたしのことを心配してくれたんだと思う」

さくら「そして、この世界にきて出会った人たち」

さくら「さやかさん、杏子ちゃん、まどかさん、……それにほむらさんも」

ほむら「……」

544: 2011/07/27(水) 22:20:42.47 ID:X5EfqF5S0
さくら「みんなを助けたいって思う気持ちが一番強いから」

ほむら「さくら……あなたは、とても甘いわ」

さくら「あはは……、やっぱりそう思いますか」

ほむら「けど、それで救われる人がいるのなら、それは紛れもない優しさだと思うわ」

さくら「ほむらさん……」

ほむら「ワルプルギスの夜が現れるのは三日後。明日、杏子と一緒に作戦を立てましょう」

550: 2011/07/27(水) 22:25:20.86 ID:X5EfqF5S0
――――――――

まどか「ただいまー」

知久「おかえり。遅かったけど病院に寄ってたのかい?」

まどか「うん、さやかちゃんすっかり元気だったよ!」

知久「それはよかったね」

タツヤ「よあったよあったー」

まどか「ありがとね、タツヤー」ヨシヨシ

まどか「それじゃわたし、お夕飯まで部屋で宿題してるね」

知久「うん、わかったよ」

トタトタ……、ガチャ、パタン。

キュゥべえ「やぁまどか。お邪魔してるよ」

まどか「っ! キュゥべえ……!」ドサッ

――――――――
――――
――

552: 2011/07/27(水) 22:30:12.03 ID:X5EfqF5S0
――翌日、病院。

コンコン。

さやか「こんな朝から誰だろ? どうぞー」

ガララ。

さくら「おはよう、さやかさん」

杏子「見舞いにきてやったよ。手ぶらだけどな」

さやか「さくらちゃん! 杏子!」

さくら「今日、もう退院できるんですよね?」

さやか「うん、お昼前にね」

さやか「ホント、ありがとね。二人がいなかったらあたし、今頃グリーフシードになってたんだよね」

杏子「ほとんどさくらのおかげだよ。アンタの魂を元の身体に戻したのはさくらだからさ」

554: 2011/07/27(水) 22:35:19.27 ID:X5EfqF5S0
さくら「杏子ちゃんが魔法でさやかさんの身体の鮮度を保ってなかったら上手くいってたかどうか」

さやか「二人には到底返しきれない恩ができちゃったね」

さやか「改めてありがとう」

杏子「素直すぎて気味が悪いな。ほんとに元通りなのか?」ククク

さやか「さやかちゃんはいつだって素直だし、可愛いぞ。失礼しちゃうな」

杏子「自分で言ってりゃ世話ねーよ」

さくら「あははは、二人とも仲良かったんだね」

さやか・杏子「よくない!」

さくら「ほら、やっぱり」

杏子「けっ」

556: 2011/07/27(水) 22:40:21.59 ID:X5EfqF5S0
さやか「……ねぇ、さくらちゃん?」

さくら「はい?」

さやか「杏子やほむら、他の街の魔法少女たちも元の身体に戻すことってできないかな」

さくら「それは……」

杏子「無理言うなよ、さやか」

杏子「さやかは知らないだろうけど、それがどれだけ難しいことか……」

さやか「そうなの、さくらちゃん?」

さくら「はい……」

杏子「運が良かっただけなんだよ、さやかは」

さやか「そっか……」

559: 2011/07/27(水) 22:45:52.89 ID:X5EfqF5S0
杏子「それにアタシらがいなくなったら魔女はどうするんだって話」

杏子「残念ながら、正義の味方はいなくなっちまったみたいだし?」

さやか「うぐっ……」

杏子「まぁ、なんだ」

杏子「余裕がある時なら、使い魔も狩ってやってもいいよ?」

さやか「!! 杏子ー!」

杏子「わっ、抱きつくな馬鹿!」

さくら「やっぱり仲良しさんだね」

562: 2011/07/27(水) 22:51:25.89 ID:X5EfqF5S0
――――――――

キーンコーンカーンコーン……

先生「あまり道草などせず真っ直ぐ家に帰って下さいね」

先生「では、また明日。さようなら」

 サヨナラー  ガヤ
  マタアシタネー  ガヤ

ほむら「……」ガタン

まどか「ねぇ、ほむらちゃん」

ほむら「鹿目、まどか……」

564: 2011/07/27(水) 22:56:04.35 ID:X5EfqF5S0
まどか「これから、ほむらちゃんのお家に行ってもいいかな……。話があるの」

ほむら「……私にはないわ。それに悪いけど今日は」

まどか「大事な!」

ほむら「!」

まどか「……話なの」

ほむら「……わかったわ」ハァ

まどか「ほむらちゃん……、ごめんね」

ほむら「(謝るくらいなら……)行きましょう」

565: 2011/07/27(水) 23:00:39.29 ID:X5EfqF5S0
――――――――
――――
――

まどか「ここがほむらちゃんのお家……」

ほむら「さぁ、入って」

ガチャリ。

さくら「あ、お帰りなさい、ほむらさん!」

ほむら「……」ピク

まどか「え? なんでさくらちゃんが……?」

さくら「まどかさんもこんにちは」

さくら「わけがあって、少しの間ほむらさんの家に泊めてもらってるんです」

まどか「そうなんだ」

ほむら「えぇ、そうなのよ」

568: 2011/07/27(水) 23:04:07.42 ID:X5EfqF5S0
ほむら「さくら、悪いのだけど少し用事を頼まれてくれないかしら」

さくら「ほえ?」

ほむら「(まどかと二人で話がしたいの)ゴニョゴニョ」

ほむら「(もうすぐ杏子がくると思うから少しの間、二人で時間を潰してきて)ゴニョゴニョゴニョ」

さくら「(うん、わかった)ゴニョニョ」

さくら「それじゃあわたしはお夕飯の買い物に行ってきますね」

さくら「そうだ、冷蔵庫にプリンを作って冷やしてあるのでよかったらどうぞ」イッテキマス

まどか「行っちゃった……」

まどか「さくらちゃんにも悪いことしちゃったね」

ほむら「それだけ重要な話があったのでしょう……?」

まどか「それはそうなんだけど……」

ほむら「リビングに行きましょう。ついてきて」

まどか「うん」

570: 2011/07/27(水) 23:08:13.05 ID:X5EfqF5S0
コトッ。

ほむら「紅茶よ。それとさくらの言っていた通り、冷蔵庫にプリンがあったけど」

まどか「お話したらすぐに帰るから」

ほむら「そう」

まどか「……」

ほむら「……」

まどか「…………」

ほむら「…………」ズズ

573: 2011/07/27(水) 23:13:47.87 ID:X5EfqF5S0
まどか「……話っていうのはね、『ワルプルギスの夜』のことなの」

ほむら「ッ! 何故あなたがそれを……?」

まどか「昨日キュゥべえが教えてくれたんだ」

ほむら「あいつ……!」ギリッ

まどか「キュゥべえは街中が危ないって言ってたけど、本当なの?」

ほむら「……えぇ、本当よ」

ほむら「あいつは結界に隠れて身を守る必要なんてない」

ほむら「一度具現しただけでも何千人という人が犠牲になるわ」

まどか「なら絶対にやっつけなきゃ駄目だよね……」

574: 2011/07/27(水) 23:16:28.20 ID:X5EfqF5S0
ほむら「そうね。先に言っておくけど戦力的にはもう十分よ」

まどか「……っ」

ほむら「そういうこと……。あいつは、キュゥべえはなんと言っていたのかしら」

まどか「『ワルプルギスの夜は誰にも覆せない。奇跡でも起こらない限り絶対に』って」

ほむら「そう……」

ほむら「あいつは意図的に話を誤魔化すことはあっても、嘘は吐かないものだと思ってたけどそうでもないのね」

まどか「うそ……?」

ほむら「真っ赤な嘘よ。あれは魔法少女が二人もいれば相討ちぐらいには持ち込める」

ほむら「私に杏子、さくらも手伝ってくれると言っているわ。はっきり言って負ける要素は皆無よ」

まどか「……どうしてそんなことわかるの?」

ほむら「それは……っ」

575: 2011/07/27(水) 23:20:01.18 ID:X5EfqF5S0
まどか「ほむらちゃんが……未来から、きたから?」

ほむら「……それもあいつに聞いたのね」

まどか「本当、なんだね……」

ほむら「私は……、これまで何度も何度もまどかと出会って」

ほむら「それと同じだけあなたが死ぬところを見てきたわ」

ほむら「どうすればあなたを救えるか、その答えだけを探して何度もやり直して……」

まどか「ほむら、ちゃん……」

578: 2011/07/27(水) 23:24:17.15 ID:X5EfqF5S0
繰り返せば繰り返すほどあなたとの時間はズレていく。

気持ちもズレて言葉も通じなくなっていく。

たぶん私は、もうとっくに迷子になっちゃってたんだと思う。

ほむら「何度も繰り返してきたから私は知っている」

ほむら「ワルプルギスの夜は私たちだけで大丈夫、まどかが魔法少女になる必要はないわ」

ほむら「『まどかを救う』、それが私の最初の気持ち」

ほむら「どうかお願いだから……、私にあなたを守らせて」

まどか「……」

――――――――
――――
――

581: 2011/07/27(水) 23:28:35.86 ID:X5EfqF5S0
――――――――

杏子「まどかがきてたんだって?」パク

ほむら「ええ。ワルプルギスがくるってキュゥべえに聞かされて怯えていただけよ」

ほむら「私たちだけでどうにかできるって言ったら納得して帰ってくれたわ」

杏子「そうか……。まぁ、アイツは魔法少女には向いてねえだろうし」パク

杏子「関わらないで済むならその方が良いだろうな」

杏子「それにしても……」パク

ほむら「?」

582: 2011/07/27(水) 23:32:16.94 ID:X5EfqF5S0
杏子「このプリンうめぇな! さくらが作ったのか?」キラキラ

さくら「うん、賞味期限が今日までの牛乳がたくさん残ってたから」エヘヘ

杏子「アタシは普通の料理はできるけど、デザート系は作ったことないからなぁ」

杏子「さくらは良いお嫁さんになるな、なんならアタシの嫁に」

ほむら「……ふざけるなら帰りなさい、佐倉杏子」イラッ

杏子「そんな怒るなよ、イライラしてる時は甘いものが良いぞ」ホレ

ほむら「それより作戦会議を……、(パクッ)あら、ほんとにおいしいわね」ホムゥ

杏子「だろ?」

さくら「二人とも、喜んでくれたみたいでよかった~」

584: 2011/07/27(水) 23:36:25.12 ID:X5EfqF5S0
ケロ「こっちの方から甘い匂いがする~」スンスン

ケロ「おー、プリンやプリンー!」

さくら「ケロちゃんお帰り、どこ行ってたの?」

ケロ「ちょっとなー、それよりわいにもプリンー」

さくら「はいはい、ちょっと待っててね」


ほむら「決戦まで後二日だというのに、こんなに和んでていいのかしら……」

杏子「あんま気を張っててもソウルジェムが濁るだけだよ」

杏子「なら、『はにゃーん』ってしてた方がいいだろ」

ほむら「確かに一理あるかもだけど……」ハ、ハニャーン?

ほむら「プリンも食べ終わったし、今度こそ作戦会議を始めましょう」

さくら「うん」

586: 2011/07/27(水) 23:40:28.30 ID:X5EfqF5S0
――――――――

ほむら「――という感じでお願いしたいの」

杏子「妥当な作戦だな。まぁ、統計ってのが当たってればの話だが」

さくら「わたしもそれでいいと思うよ」

ほむら「それと基本的に相手の攻撃、一発一発が即死レベル」

ほむら「直撃を食らうことだけは絶対に回避すること」

杏子「あぁ、わかった」

ケロ「さくらにはわいがついとるから安心しぃ」

さくら「うん、ありがとうケロちゃん」

さくら「……あと、二日か……」グッ

598: 2011/07/28(木) 00:05:31.40 ID:tzByuSbw0
ケロ「なぁ、杏子にほむら、ちょっとええか?」

杏子「ぅん?」

ほむら「なにかしら?」

ケロ「魔女ってどっからくるかわかるか?」

杏子「どこから……だと?」

杏子「どこからも何も魔女は魔法少女のなれの果て、お前も知ってるだろ」

ほむら「もしくは使い魔が人を喰らい成長して魔女になるわ」

ケロ「なら、その使い魔ってのはどこからくるんや?」

ほむら「それは……魔女が生み出すのよ」

ケロ「……」

601: 2011/07/28(木) 00:13:02.79 ID:tzByuSbw0
ケロ「今、この街には魔女も使い魔も、二人以外の魔法少女もおらん」

ケロ「なのに明日、使い魔が一匹現れる、そうやなほむら」

ほむら「……ええ。使い魔だからさくらの魔法を見せてもらうには丁度いいわ」

ほむら「その使い魔がどこから、と言うのならおそらくは他の街からでしょう」

ケロ「そうかぁ……」

杏子「何か気になることでもあるのか?」

ケロ「ちょっと、な」

ケロ「言うてもわいはこっちの世界のことをよお知らんから」

ケロ「そういうもんやー、言われたらお手上げやからなぁ」

ケロ「ただの知的好奇心みたいなもんやから、そんな気にせんでええで」

ほむら「そう……」

さくら(ケロちゃん……?)

602: 2011/07/28(木) 00:18:01.92 ID:tzByuSbw0
その翌日の晩、三人の連携の実戦確認を兼ねた使い魔狩りが行われた。
その主な目的はさくらの魔法が使い魔たちにどのぐらい効果があるかを確かめることだ。
ただ、所詮使い魔だったためそれほど多くのカードを試すこともできず、
三人は帰路に着きさらに翌日の『ワルプルギスの夜』に備える。

さくら「いよいよ明日だね……」

ケロ「あぁ、気ぃ引き締めていくで」

さくら「うん。頑張ろうね、ケロちゃん」

ケロ「わいにどーんと任しとけー!」

さくら「……ありがとね、ケロちゃん。おやすみなさい」

ケロ「……おう。おやすみ、さくら」

606: 2011/07/28(木) 00:22:47.31 ID:tzByuSbw0
――――――――

――な、なんだこれは!?

――スーパーセルの前兆だと……、何の前触れもなかっただろう!!

――とにかく住民の安全が最優先、今は迅速な対応を!

『本日午前七時』

『突発的異常気象に伴う避難指示が発令されました』

『付近にお住まいの皆様は、速やかに最寄の避難場所への移動をお願いします』

『繰り返します。こちらは――』

607: 2011/07/28(木) 00:27:41.35 ID:tzByuSbw0
ヒュォオオオ……

避難指示が出され街中に閑古鳥が鳴いていた。
商店街、ビル街、学校、住居区、あらゆる場所から人の気配が消え
高齢者が少ないこの街で残っている者といえば命知らずな火事場泥棒ぐらいのものか。

否。

さらに例外として四人(三人と一匹?)がいた。

ほむら「……」

杏子「……」

さくら「……」

ケルベロス「……」

この異常気象の原因である、ワルプルギスの夜を打倒する者たちだ。

610: 2011/07/28(木) 00:32:32.95 ID:tzByuSbw0
二人の魔法少女はすでに変身しており、もう一人の少女は星の鍵と呼ばれる杖を両手で握り締めている。
また、その守護者は普段の小さな姿ではなくメスライオンに羽が生えたような真の姿となっている。

ほむら「……くる」

杏子「!」

ほむらの呟きで全員により一層の緊張が走る。

ズ、ズズズ……

アハ、アハハハハ、キャハハハ

さくら「この哂い声……」

さくら(夢に出てきたから知ってたけど、目の前で見ると迫力が……)ブルル

612: 2011/07/28(木) 00:37:08.49 ID:tzByuSbw0
ケルベロス「あれがワルプルギスの夜っちゅう魔女か」

ケルベロス「聞いてはおったけどばかでかいにも程があるやろ、ケタ違いや」

ほむら(今度こそ、決着を付ける!)

ほむら「いくわよ!」

杏子「おう!」

さくら「うん!」

ケルベロス「任せとき!」

ほむらの掛け声に三人が呼応する。
今、少女たちと魔女の戦争の火蓋が切って落とされた。

618: 2011/07/28(木) 00:41:47.61 ID:tzByuSbw0
まず最初に動いたのはほむらだった。

キュイィィィ! カチッ!

魔法で時間停止を行うと同時に駆け出していく。
他の三人から距離をとったところで盾の後ろから殺傷を目的として作られた大きな兵器を取り出す。
RPGと呼ばれるそれを肩に担ぐとトリガーを引き発射、
射出された弾はほむらから離れると魔法の効果範囲外に出たことで停止した時間の中で凍りつく。
同様の動作を十数回繰り返して、繰り返した回数分の弾が空中で停止している。

ほむら「停止、解除……」

ほむらが時間停止の魔法を解くと辺りに爆音を轟かせて十数発のRPGが魔女目掛けて飛んでいく。

619: 2011/07/28(木) 00:45:01.24 ID:tzByuSbw0
次いで動いたのはさくらだ。
カチリ、という音を聞いたかと思えば追って聞こえてきた爆音に僅かに肩をビクつかせるが
事前の打ち合わせ通りにほむらが行動しただけのこととすぐに理解する。
そしてポケットからカードを取り出すと空中に投げそこに杖を振り下ろす。

さくら「翔(フライ)!」

魔法で自身の背中に羽を生やして宙へと飛び上がり、
そのままスピードを上げて真っ直ぐに飛んでいく。
ほむらを視界に収めると僅かに旋回し右前方へと進路を変更する。
その後ろをケルベロスがぴったりとくっついて飛んでいく。

621: 2011/07/28(木) 00:50:44.12 ID:tzByuSbw0
最後に、杏子はただじっと待っていた。
時間が動き出したと同時に視線を前方に向ける。
RPGの発射で発生した煙で視界が悪いもののどうにかほむらの存在が確認できた。
隣ではさくらが魔法を使って空を飛び、ケルベロスがその後を追って移動する。
しかし、杏子はその場から動こうとしない。
ほむらがさくらを視界の端に捉えたと同時に左前方へと駆け出していくのを見て
杏子はようやく動き始める。

624: 2011/07/28(木) 00:55:46.43 ID:tzByuSbw0
――
――――
――――――――

ほむら「まず最初に私が動くわ」

ほむら「時間を止め、少し離れたところから遠距離射撃で魔女に先制攻撃を仕掛ける」

ほむら「そのまま用意した武器を片っ端からぶつけていくわ」

ほむら「杏子にはそのサポートをしてもらいたいの」

杏子「そこは二人の時に立てた作戦と同じだな」

ほむら「ええ。ワルプルギスの夜は巨大で頑強、接近戦のあなたは不向きだから」

杏子「わかってる、アタシはアンタの邪魔させないように使い魔をぶっ潰せばいいんだろ」

ほむら「そしてさくら、あなたにも前衛で戦ってもらいたい」

ほむら「さくらの魔法で直接的に効果がありそうなのは火(ファイアリー)と雷(サンダー)」

ほむら「そして、どんなものでも斬ることができるという剣(ソード)」

ほむら「接近戦は危険だけど、もし隙があれば剣(ソード)の魔法で一刀両断にしてしまって頂戴」

さくら「はい、わかりました」コク

625: 2011/07/28(木) 01:01:07.17 ID:tzByuSbw0
ほむら「それと明日、この街に一匹の使い魔が現れる」

ほむら「戦闘能力は低いからそれを練習台に、さくらにはいくつか魔法を見せてほしいの」

ほむら「特に消(イレイズ)の魔法。もしも魔女を消すことができるとすれば何も恐れることはなくなるわ」

ケロ「消(イレイズ)は対象を完全に消滅させる魔法やないからなぁ」ウーム

ほむら「物は試しよ。大まかな作戦はこんなところだけど質問はあるかしら」

――――――――
――――
――

628: 2011/07/28(木) 01:05:20.61 ID:tzByuSbw0
ドドドドーン! ドガーン!!

ほむらの攻撃が連続で直撃し赤黒い爆発の焔を巻き上げる。
しかし――、

アハハハッ

響き渡る魔女の哂い声。

さくら「ぜんぜん効いてないみたい……」

ケルベロス「でかさもケタ違いやが、魔力もケタ違いや。生半可な攻撃じゃ傷一つつかん」

さくら(生半可って……、すごい爆発が何度も起こってるんだけど……)

さくら「とにかくわたしたちも加勢しないと」

さくら「昨日試したけど消(イレイズ)のカードは効果がなかったから……」

631: 2011/07/28(木) 01:10:25.53 ID:tzByuSbw0
さくら「よし、まずはこのカード、火(ファイアリー)!」

さくらは新たに取り出したカードへと杖を振り下ろす。
それは四大元素カードの一つであり、ケルベロスが司る『太陽』の属性のカード。

ケルベロス「グルル……、グオォォァ!!」

ケルベロスが唸り声をあげると、さくらの使用した火(ファイアリー)がケルベロスを中心に渦を巻く。
そして、大きく一吼えするとさくらがそのままカードを使用するよりも遥かに強い炎が魔女へと襲い掛かる。

キャハハハッ

全身を炎に包まれているというのにそれでも魔女は哂い続ける。

ケルベロス「いつまでもわろとれると思うなよ。さくら、風(ウィンディ)のカードや!」

さくら「風(ウィンディ)!」

ケルベロスの指示ですぐさま次のカードを取り出し杖を振り下ろす。
風を起こし操る魔法、しかし、ワルプルギスほどの巨大な魔女を相手に突風などでは意味はない。
故に狙いは直接の攻撃ではなく、火(ファイアリー)のカードとの相乗効果。
風(ウィンディ)が生み出した風が炎に空気を送り込み燃焼を加速させ元々強力だった炎がより強い火柱と化す。

632: 2011/07/28(木) 01:15:12.60 ID:tzByuSbw0
杏子「やっぱさくらはすげぇな」ヒュー

さくらの作った火柱に焼かれる魔女を遠目に眺め、口笛を吹かす。

杏子「これはアタシも負けてらんないね」

どこからともなく取り出した槍をくるくると片手で回し、ヒュパッと空気を切り裂く。

ほむら「杏子!」

杏子「わかってる!」

全身が黒い、人型の影のような使い魔の出現に伴いほむらは杏子に声をかける。
ここまでほむらから付かず離れずといった調子で動いていた杏子もようやく本格的に動き始める。
スッと切っ先を前方に向けて構えると凄まじいスピードで使い魔目掛け突進していく。
十数メートルの距離を一秒足らずで駆け抜け、ほむらに攻撃を仕掛けようとしていた使い魔を一瞬で貫く。

ギギィッ!?

貫かれた使い魔は短い悲鳴にも似た鳴き声をあげて霧散する。

杏子「手応えなさすぎだろ」フン

ほむら「そうね。けど、『束になって』かかられるとそれなりに厄介よ」

634: 2011/07/28(木) 01:20:25.07 ID:tzByuSbw0
一匹始末したのも束の間、二人を囲うように数匹の使い魔が姿を現す。
それはまるで子どもの遊びのカゴメカゴメの様にも見えた。

杏子「確かに、『それなりに』遊び甲斐はありそうだな」

杏子「アンタは早く次の攻撃ポイントに移動しな。じゃないとさくらにいいとこ全部持ってかれるよ」

ほむら「けど」

片手では数え切れないほどの使い魔を前に、ほむらは一抹の不安を覚える。

杏子「アンタが立てた作戦だろ、立案者が崩してんじゃねえよ」

ほむら「杏子……」

杏子の叱責を受け、この場にいる全員の共通の目的を再確認する。
全員が全力で最善を尽くさなければアレを打倒することなど不可能なのだ。

ほむら「わかったわ。……頼んだわよ」

その言葉の後、カチリという音が聞こえたかと思えばほむらの姿は忽然と消えてしまっていた。

杏子「きなよ、使い魔ども。まとめて相手してやる」ドン!

635: 2011/07/28(木) 01:25:52.27 ID:tzByuSbw0
無人の街を一台の車両、石油を満載したタンクローリーが走っていく。
運転席には誰の姿もなく、代わりというのもおかしな話だが運転席の真上の屋根に少女が乗っていた。
タンクローリーはほむらの魔法でコントロールされ魔女に向かって猛スピードで突き進んでいく。
丁度、魔女は橋のすぐ真横でさくらの作った火柱に焼かれている。
橋の両端にあるアーチをジャンプ台にしてタンクローリーを火柱に包まれる魔女に突っ込ませる。
衝突の衝撃でタンクが破損し、火柱の熱で即座に発火する。

ドオォォーーーン!!

今までで一際大きな爆発が起こり黒煙が魔女を包みこむ。

さくら「これで……」

これほどの爆発、さすがに無傷というわけにはいかないはず。
あわよくば、という単語がさくらの脳裏に浮かぶ。
一方で突撃の際に車両の屋根から飛び降りていたほむらは水面に投げ出されくるくると落ちていく。

640: 2011/07/28(木) 01:30:18.07 ID:tzByuSbw0
ほむらは落下しながらも険しい目で黒煙の中を睨み続けている。
そして、スタッと水面に着地を決めたかと思えば、同時に下から何かが競りあがってくる。

さくら「ほ、ほえええ!?」

その水面下から競りあがってきたものを目にし、さくらは思わず驚きの声をあげる。
それは国家のような大規模な母体がなければ保有できないであろう対艦誘導弾。
RPGや迫撃砲ぐらいなら漫画や映画の世界で目にしたことがあるが、
完全な軍用兵器の出現には驚きを隠せずにいた。

ほむら「吹き飛びなさい!」

掛け声とともに爆音を響かせ数十発もの誘導弾が発射される。

ドオォォーーーン!!

黒煙の中にいるであろう魔女に直撃し、タンクローリーの爆発に負けず劣らない轟音が聞こえてくる。
しかもこちらは破壊することに特化して作られた軍用兵器だ。
タンクローリーとは比べ物にならないほどの高い効果が期待できるだろう。

644: 2011/07/28(木) 01:36:01.65 ID:tzByuSbw0
さくらとほむらは黒煙が徐々に晴れていく光景を固唾を呑んで見守っていた。
あれだけの攻撃を受けて無事なはずがない。
気付けばいつの間にか不快な魔女の哂い声は聞こえなくなっていた。
倒せたのだろうか?という期待を膨らんでいくの感じる。
しかしだ。

……ギャハッ!

ほむら・さくら「!?」

ギャハ、ギャハハハハ!!

再び辺りに響き渡る不快な哂い声。
さっきまでのどこか品のある哂いとは違い、
楽しくて楽しくてしょうがないといった、品のない子どものような哂い声。

ゴオォッ!

突然吹き荒れた突風が黒煙を吹き飛ばし、魔女がいまだ健在なことを魔法少女たちに知らしめる。

646: 2011/07/28(木) 01:40:01.36 ID:tzByuSbw0
ほむら(予想はしていたけどここまで効果がないなんて……)ギリ

さっきまでの攻撃で全身を煤で汚してはいるが、身体の一部を大きく欠くようなダメージは見当たらなかった。
よくて僅かなヒビや小さな破片が飛び散った程度だろうか。

ほむら(少しは魔力を込めているのだけれど、やはり近代兵器では倒すことができないのね)

ほむら(ワルプルギスを倒すには純粋な魔法による攻撃のみ……)

ほむら『杏子、聞こえているかしら。残念だけど私の攻撃では効果が薄いわ』

ほむら『リスクは高くなるけど、あなたが前衛に……って聞いているの杏子?』

テレパシーを使って杏子に呼びかけるが反応がない。
まさか、という考えが頭を過ぎり冷や汗が首筋を伝う。

649: 2011/07/28(木) 01:46:14.17 ID:tzByuSbw0
さくら「きゃあああぁぁっ!!」

突如として聞こえてきたのはさくらの悲鳴。

ほむら「ッ!?」

ケルベロス「さくらぁっ!」

ハッとなり視線を前線へと戻しさくらの姿を探す。

ほむら「いた!」

上空を飛び回る四つの影。
一人はさくら、もう一人はケルベロス、そして残る二つの影は文字通り影のような使い魔だ。
おそらくは使い魔がさくらに襲い掛かったのだろう。
けれど、見た限りでは大きな怪我をした様子もない。
きっと不意打ちで攻撃はかすった程度なのだろう。

653: 2011/07/28(木) 01:50:46.22 ID:tzByuSbw0
戦況は刻一刻と変化し続けている。
呆然と立ち尽くすだけでは状況は悪化するばかりなのだ。

ギャーハハハハハ!

ほむらは哂い声の主をキッと睨みつける。
魔力を武器や直接の攻撃に変換できないほむらに残された、ワルプルギスを倒す唯一の手段。
できることならワルプルギスを倒した後、まどかたちと遊びたかった。
永遠の迷路を抜けて一緒に笑いあいたかった。

ほむら「私はもう迷わない、そう誓ったじゃない……」

大切な守りたいモノのために何もかも失ったって構わない。
それが私の、最後に残った道しるべ。

658: 2011/07/28(木) 01:55:33.13 ID:tzByuSbw0
ほむらは走る。
がむしゃらに前だけを向いて走り続ける。
そんなほむらの前に数体の使い魔が立ちはだかる。

ほむら「私の邪魔をするなあああ!!」

盾の後ろから小機関銃を取り出して四方八方に乱射する。
砂時計の中の砂は落ちきってしまっていた。
時間停止の魔法は落下する砂時計の砂の流れを阻害して発動させている。
そのため時間停止の魔法はもう使えない。

ほむら(砂が落ちきった砂時計は逆さにするか、うち捨てられてただの置物と化すかのどちらか)

ほむら(これ以上まどかに因果を背負わせるわけにはいかないのよ)

少女の目指す未来に、少女自身は含まれているのだろうか――。

659: 2011/07/28(木) 01:59:59.85 ID:tzByuSbw0
ケルベロス「さくら、いったん下に降りるんや」

ケルベロス「こいつらなんとかせんと魔女を攻撃できん」

さくら「わかった」

さくらとケルベロスは使い魔たちから離れて滑空していく。
二体の使い魔もそれを追って二人同様に滑空する。
途中、視界の端にほむらの姿を捉えた気がしたが確認している余裕はない。
まして、その顔が大きな決意に満ちていたことなど知る由もなかった。

さくら(とにかく今はこの使い魔を倒さないと……)

661: 2011/07/28(木) 02:03:05.81 ID:tzByuSbw0
アスファルトの地面に向かって滑空を続けるさくらとケルベロス、それを追う二体の使い魔。
地面が目の前まで迫ってきたところでさくらは次のカードを取り出す。

さくら「跳(ジャンプ)!」

翔(フライ)の魔法を解除し、跳(ジャンプ)の魔法で綺麗な着地を決め、そのまま駆け出していく。
跳(ジャンプ)の魔法の効果でその歩幅は大きくスピードも速い。
そしてその横をケルベロスが俊敏な獣の動きで疾走している。

ケルベロス「そこを左や!」

さくら「うん!」

ケルベロスの指示の元、二人は交差点を直角に曲がる。
その後ろを使い魔たちは緩やかな弧を描いて左折する。

665: 2011/07/28(木) 02:08:16.18 ID:tzByuSbw0
ケルベロス「今や!」

さくら「影(シャドウ)!」

死角から待ち構えていたさくらがカードに杖を振り下ろす。
するとさくらの影が使い魔たちに向かって植物の蔓ように伸びていく。
そして一瞬のうちに二体の使い魔を縛り上げ身動きできないように拘束してしまう。

さくら「剣(ソード)! えーい!」

続けて取り出したカードに杖を振り下ろすと、杖が長剣(ロングソード)へと姿を変える。
息つく暇もなく長剣を横薙ぎに振り抜き二体の使い魔をまとめて斬り捨てる。
斬られた使い魔たちはその場で霧散して跡形もなく消滅した。

さくら「はぁ……やっと倒せた」ヘタリ

668: 2011/07/28(木) 02:12:33.60 ID:tzByuSbw0
杏子「たかが使い魔二体にてこずってんなよ、さくら」

さくら「杏子ちゃん!」

ケルベロス「そっちも無事やったか」

杏子「この格好見てどっから『無事』って単語が出てくるんだよ」ッタク

さくら「服がぼろぼろ……、怪我とかしてない? どこか痛かったりしない?」

杏子「あぁ、見た目はぼろっちくなっちまったけど、擦り傷ぐらいでどこも痛くないよ」

杏子「さっきほむらがテレパシーで話しかけてきたときは焦ったけどな」

杏子「戦ってる最中に話しかけられても返事できないし気も散るし、ったく」

さくら「そうなんだ、よかった」ホッ

671: 2011/07/28(木) 02:15:59.76 ID:tzByuSbw0
ケルベロス「で、ほむらの嬢ちゃんは何の用やったんや?」

杏子「あー、それが残りの使い魔倒した後でテレパシー送ってみたんだけど返事がなくてね」

杏子「安否確認を兼ねて加勢にきたんだよ」

さくら「ほむらさんならさっき魔女の方に向かって走って行くのを見たよ」

杏子「あん? ほむらの奴、自分の攻撃じゃ効果が薄いとか言ってたのに何をする気だ……?」

さくら「とにかく行ってみようよ」

さくら「テレパシーの返事がないってことはほむらさんも使い魔と戦ってるのかも」

ケルベロス「さっきまでの派手な爆発音も聞こえんし、その可能性は高いな」

673: 2011/07/28(木) 02:20:31.51 ID:tzByuSbw0
キュゥべえ「ちょっと待ってくれないかな」

今にも駆け出さんとする三人の前に唐突に白い獣が姿を現す。

ケルベロス「お前は……!」

杏子「一体何しにきやがった!」

キュゥべえ「何しにきたとはご挨拶だね」

キュゥべえ「君たち魔法少女が魔女を狩るのと同じで、僕も僕の仕事をこなすだけだよ」

キュゥべえ「杏子、今君の持っているグリーフシードは限界まで穢れを溜め込んでいるだろう?」

杏子「いつもの回収作業ってわけか」チッ

杏子「ほらよ、どんなにお前が憎くてもこればっかりはアタシじゃ処理できないしね」

杏子はポケットからいくつかの真っ黒なグリーフシードを取り出すと、
それをキュゥべえに向かって放り投げる。
キュゥべえは器用に耳と尻尾を使って全て受け止めた後、
ぱかっと開いた背中の穴でグリーフシードを吸い込んでしまった。

674: 2011/07/28(木) 02:25:40.86 ID:tzByuSbw0
キュゥべえ「きゅっぷぃ、これで僕の仕事は終わりだよ。邪魔したね」

そういい残すとトコトコと歩いてさくらたちの進行方向とは逆のほうへと歩き去っていった。

杏子「食えねえやろうだ。だいたいなんでこのタイミングで……」

そこまで言いかけて一つのことに思い至る。

杏子「まさかあのやろう……ッ!」

さくら「ど、どうしたの杏子ちゃん?」

杏子「急がないとほむらが危ねえ!」

さくら「ほむらさんが危ないってどういうこと?!」

ケルベロス「……そういうことか、わいの背中に乗れ、全速力で運んだる!」

杏子「助かるよ。さくらはとにかく羽出せ羽、説明なんか飛びながらでもできる」

さくら「わ、わかったよ。翔(フライ)!」

さくらは再び翔(フライ)のカードで背中に羽を生やし空へと飛び上がり、
杏子を乗せたケルベロスも飛び上がると三人は猛スピードでほむらの下へと急ぐ。

675: 2011/07/28(木) 02:30:49.90 ID:tzByuSbw0
パーン!

ほむら「道をあけなさい!」

撃ち抜かれた使い魔が散っていく。
小機関銃は弾を使い果たし残す武器は今握っている拳銃といくつかの手榴弾のみ。

ほむら「けど、どうにか間に合ったみたいね」

目の前には舞台装置の魔女、ワルプルギスの夜がいる。
ほむらはビルの屋上に立ち真正面から向かい合う。

ほむら「これで終わり。これでまどかを守れる……」

少し後ろに下がって助走をつけると全速力で駆け出す。
そして魔女に向かって一気に跳躍し、

杏子「やめろ馬鹿やろおおおおおおおおお!!」

ほむら「なっ!?」

真上から降ってきた杏子にしがみ付かれて真っ逆さまに落下することになる。

679: 2011/07/28(木) 02:35:19.52 ID:tzByuSbw0
ケルベロス「あほぅ、無茶しすぎや!」

さくら「盾(シールド)!」

さくらがカードに杖を振り下ろすと、落下する杏子とほむらを光の球体が包みこみ、
二人をゆっくりとした速度で地面へと着地させる。

ほむら「……杏子、無事だったのね」

杏子「当たり前だ。お前の方こそちょっと返事が遅れたくらいで無茶しようとしやがって」

ほむら「返事が、遅れた……?」

杏子「チッ、やっぱりこっちのテレパシー届いてなかったのかよ。キュゥべえのやろう!」

ほむら「わけがわからないわ。もう少し順序だてて説明してもらえるかしら」ファサ

683: 2011/07/28(木) 02:41:30.10 ID:tzByuSbw0
ケルベロス「どっちも無事やったんや、今はそれでええやろ」

ケルベロス「説明はこいつら倒してからにしてくれや」

ケルベロスが顎で指した方向から数体の使い魔がゆらゆらと現れる。

ほむら「それもそうね」

杏子「ほむらの攻撃は効かなかったんだよな? ならパターンCでいいか」

ほむら「えぇ、こうなったらあなたたちに託すしかないわ」

ケルベロス「ほれ、もっかい背中乗りや。さくらのとこまで運んだる」

杏子「このくらい、一人で上れるよ。それよりケルベロスはほむらを頼む」

ケルベロスの提案を断ると杏子はビルに向かって駆け出していく。
そして高く垂直に跳び上がると窓枠や壁に槍を突き立てて足場にし屋上まで駆け上がる。

ケルベロス「器用なやつや」

ほむら「パターンC……、私とケルベロスで使い魔の相手をして杏子とさくらがワルプルギスを叩く」

ケルベロス「足手まといにならんように頼むで」

ほむら「それはこちらの台詞よ」ファサ

685: 2011/07/28(木) 02:45:02.95 ID:tzByuSbw0
杏子「よっと。さくら、パターンCだ」

ビルの側面を駆け上がり屋上までたどり着いた杏子がさくらに作戦を伝える。

さくら「了解、わたしと杏子ちゃんでワルプルギスを攻撃するんだね」

杏子「あぁ。しかし、間近で見るとほんとでけえな」

杏子「しかもむちゃくちゃ頑丈ときたもんだ。こんなのほんとに倒せるのか?」

さくら「絶対だいじょうぶ、まずは自分を信じなくちゃ」

杏子「絶対、ってその自身はどこからくるんだか……」

杏子「さくらはあきれるほどポジティブだね」

さくら「そうかな? じゃあ杏子ちゃんもポジティブになれる魔法を……、跳(ジャンプ)!」

さくらは跳(ジャンプ)の魔法を自分にではなく杏子に使い、杏子の両の靴の側面に羽を生やす。

杏子「おお、カッコいいじゃんこれ」

さくら「それじゃ、行くよ」

杏子「おう!」

689: 2011/07/28(木) 02:50:14.84 ID:tzByuSbw0
さくらの跳(ジャンプ)の魔法を受けた杏子が颯爽と飛び出していく。

杏子「ひゃっほー! こりゃすげえな」

普段の何倍もの速さで俊敏に跳ね回る姿は野生のうさぎを連想させる。

杏子「とりあえず一発、……食らいやがれ!」

杏子は槍を担ぐような姿勢で構えると、飛び跳ねる勢いに乗せて思い切り投擲する。
高速の槍は赤い尾を引いて流星のように飛びワルプルギスの夜に突き刺さる。

ギャハ、ギャハハハ!

しかしワルプルギスの夜は全く意に返さぬ様子で尚も哂い続ける。

690: 2011/07/28(木) 02:56:33.34 ID:tzByuSbw0
さくら「これなら……、雷(サンダー)!」

さくらがカードに杖を振り下ろすと、杖の先端から雷が迸る。
電撃は突き刺さった槍を避雷針にしてワルプルギスの夜を襲う。

ギャ、ギャハ?

杏子「効いてるみたいだな。この調子で行くぞ、さくら!」

さくら「うん!」

効果が確認できたことで杏子は地上をピョンピョンと飛び跳ねながら次々に槍を投げつけ、
さくらも自由自在に宙を舞い次々に突き立てられる槍に雷を落としていく。
攻撃を受け続けるワルプルギスの夜の動きは僅かにだが鈍くなり始めていた。

693: 2011/07/28(木) 02:59:54.39 ID:tzByuSbw0
ギャハ? ギャハハハハ?

さっきまでの楽しげな哂いと異なり、理解できないといった疑問符の混じった哂いが響き渡る。

杏子「アンタが元は魔法少女だったのか、魔女の使い魔だったのかは知らない」

杏子「けど、根っこを辿れば幸せを祈った誰かの願いなんだろ?」

杏子「なら、誰かに災厄が降り注ぐことをアンタは望んでいないはずだ」

杏子の語りが耳障りに感じたのか、ワルプルギスの夜はより大きく哂い声をあげ、
呼応するように風も激しさを増す。

さくら「きゃっ!」

空を舞っていたさくらは思わずビルの屋上に降り立ち吹き飛ばされまいと姿勢を低くする。
一方で杏子は風に身を任せるように跳び上がるとビルの壁面へと着地する。

杏子「もう休め」

杏子は優しく呟くと両手に一本ずつ、二本の槍を現出させる。
そしてその二本の槍を重ね、捻りあげて一本の槍にしてしまう。

695: 2011/07/28(木) 03:05:04.23 ID:tzByuSbw0
杏子「トドメだあああ!!」

これまでで最も強く高く跳び上がるとありったけの魔力を込めて全力の一撃を放つ。
音速を超えた槍の重い一撃がワルプルギスの夜に深々と突き刺さる。

ギャッ、ギヒ!?

さくら「風(ウィンディ)! 水(ウォーティ)!」

槍を突き刺され怯んだ一瞬の隙をついて、さくらは二枚のカードを取り出して杖を振り下ろす。
風(ウィンディ)が雲を運び、水(ウォーティ)が湿度を増して雨雲を作り上げ雨を降らせ始める。

さくら「雷(サンダー)!」

続けて三枚目のカードに杖を振り下ろすと雨雲がゴロゴロと轟音を響かせる。
そしてピカッと光ったかと思えば杏子の突き立てた槍を目掛けて正真正銘の雷が落ちる。

700: 2011/07/28(木) 03:09:15.21 ID:tzByuSbw0
ドオォォォン!

落雷がワルプルギスに直撃し爆音をあげる。

ほむら「やったの!?」

想像を絶する大きな音に驚き、ほむらは思わず視線を魔女へと向ける。

ケルベロス「戦いの最中に余所見すんなや!」

隙を見せたほむらに襲い掛からんとする使い魔をケルベロスが爪で引き裂くように吹き飛ばす。

ほむら「っ! ごめんなさい、つい……」

ケルベロス「まだ魔女の気配を感じる。倒せてへんわ」

ほむら「あんな強い攻撃だったのに……」

ケルベロス「心配せんでももう終わるわ」

ケルベロス「やから今は目の前の敵に集中しとけ」

ほむら「くっ……、二人を信じるほかにないのね」

702: 2011/07/28(木) 03:13:20.74 ID:tzByuSbw0
ギャヒ、ギャヒヒャハヒヒ……

魔女の哂い声はずいぶんと小さくなりぐらぐらとふらついているように見える。
その正面、さくらは空中に立ち止まるように停止していた。

さくら「剣(ソード)!」

杖を長剣の姿に変えると天高くに掲げるようにして振りかざす。
そして魔女の身体にはしる亀裂に目掛け、長剣を全力で振り下ろす。

704: 2011/07/28(木) 03:18:02.18 ID:tzByuSbw0
ケルベロス『剣(ソード)は術者が望めばどんなもんでも斬れる』

ケルベロス『やけど、術者が無理やと思たら豆腐一つ斬れへん』

ケルベロス『もし一太刀目で斬れへんかったらそんだけ硬いもんやと思い込んでしまう』

ケルベロス『だから剣(ソード)使うんやったら一撃必殺……』

ケルベロス『必ず斬り捨てられるイメージをしっかり作った上で全力で振り抜け』


さくら(わかったよ、ケロちゃん)

さくら(この一刀で斬り開いてみせる……、未来を!)

さくら「やあぁぁっ!」

ギィィィン!!

金属同士の擦れる高い超音波のような音が響き渡る。

ゲ、ヒヒ……キャハッ……

705: 2011/07/28(木) 03:21:17.95 ID:tzByuSbw0
ギィッ!?

突然使い魔たちが悲鳴のような声をあげたかと思うと霧のように消えていく。

ほむら「使い魔たちが消えた……、もしかして!」

さっきの失敗を思い出し、周囲を見渡して安全を確認した上で振り向く。
そこでほむらの目に映ったのは真っ二つに両断されたワルプルギスの夜の姿だった。

ケルベロス「やったな、さくら」

ケルベロスの視線の先には徐々に姿を虚ろにしていく魔女を背にして、
ゆっくりと地上に降り立つさくらの姿があった。

さくら「やったよ、ケロちゃん! ほむらさん!」

さくらも指でピースをしながら小走りに駆け寄ってくる。

707: 2011/07/28(木) 03:25:42.56 ID:tzByuSbw0
杏子「最後の一撃すごかったな、さくら!」

細い路地裏から姿を現した杏子もそこへ合流する。

ほむら「倒したのね……、ワルプルギスの夜を、ようやく……」

杏子「そうさ、やったんだよアタシたち!」

パァァァ!

ケロ「さすがやでー、さくらー!」ヒシ

少女たちは互いに抱きしめあい喜びを表現しあう。
こうして長く厳しい戦いに終止符がうたれたのだ。

712: 2011/07/28(木) 03:45:31.99 ID:tzByuSbw0
まどか「ほむらちゃん!」

まどか「みんなも!」ハァ、ハァ…

突然の声にその場にいた全員が振り返る。

さくら「まどかさん……!」

ほむら「まどか……、どうしてここに」

まどか「ほむらちゃんが相討ち覚悟で戦ってるって聞いたから……」

まどか「どうしてもじっとしてられなくて」ハァ、ハァ…

まどか「でも、倒したんだね。ワルプルギスの夜を」

ほむら「えぇ、みんなのおかげでね」

713: 2011/07/28(木) 03:48:18.08 ID:tzByuSbw0
まどか「またキュゥべえに騙されちゃったんだね、わたし。ごめんね、ほむらちゃん」シュン

申し訳なさそうな顔をするまどかを、ほむらは優しく抱きしめる。

ほむら「いいのよ。もう終わったんだもの、何もかも」

そう、これは永遠の迷路の終わり。

ほむら「大切なもの……。私、ようやく守りきれた……」

――そのはずだった。

キュゥべえ「ずいぶんと喜んでるみたいだけど、何が終わったんだい?」

杏子「テメェ!?」

ケロ「また出やがったな、この潰れ饅頭!」

716: 2011/07/28(木) 03:51:20.26 ID:tzByuSbw0
キュゥべえ「もう一度聞くよ。何が終わったって言うんだい?」

杏子「戦いが、だよ! ワルプルギスの夜を倒したんだ」

キュゥべえ「ワルプルギスの夜? もしかしてさっき倒した『使い魔』のことを言ってるのかな?」

さくら「え?」

ほむら「……なんですって?」

キュゥべえ「ワルプルギスの夜は終焉の幕開け」

キュゥべえ「地球上から全ての魔女と使い魔が消えた時、本当のワルプルギスの夜が始まる」

ほむら「何を、言っているの……?」

719: 2011/07/28(木) 03:54:14.38 ID:tzByuSbw0
キュゥべえ「君はずいぶんとワルプルギスの夜について詳しかったみたいだけど」

キュゥべえ「もしかして、知らなかったのかい?」

まどか「ほむらちゃん、どういうことなの……?」

ほむら「知らない……、そんなの嘘よ。出鱈目に決まってるわ!」

キュゥべえ「その反応、どうやら本当に知らなかったようだね」

ケロ「わかるように一から説明せえ」

キュゥべえ「構わないよ。君たちはワルプルギスの夜の真実を知るべきだ」

キュゥべえ「そうすればきっと、否が応でも僕と契約したくなるはずさ」

杏子「この野郎……!」

720: 2011/07/28(木) 03:57:25.85 ID:tzByuSbw0
キュゥべえ「まず、ワルプルギスの夜というのは魔女でもなければ使い魔でもない」

キュゥべえ「お祭りの名称のようなものさ」

さくら「お祭り?」

キュゥべえ「そう、『魔女たちの』お祭りさ」

杏子「魔女の祭りだと!?」

キュゥべえ「君たちが倒した使い魔はお祭りの開会セレモニーみたいなものだ」

キュゥべえ「真のワルプルギスの夜が始まれば数万という魔女たちが地球上に溢れることになる」

ほむら「それはおかしいわ……、さっきお前は地球上の全ての魔女と使い魔が消えたと言った」

ほむら「そして魔女は使い魔が人を喰らって成長するか魔法少女の成れの果てのはず」

ほむら「それがいきなり数千の魔女で溢れることになるですって?」

ほむら「そんな見え透いた嘘に騙されないわよ!」

721: 2011/07/28(木) 04:00:10.65 ID:tzByuSbw0
まどか「そうだよ、キュゥべえ。そんなたくさんの魔女がどこから現れるっていうの?」

キュゥべえ「……月からだよ」

ほむら「なん、ですって……?」

キュゥべえ「月にはたくさんの魔女が封印されてるって言ったら、君たちは信じるかい?」

杏子「じょ、冗談だろ!?」

キュゥべえ「あいにくと感情を持たない僕たちには『冗談』というものが理解できないんだ」

キュゥべえ「だからこれは真実。何一つ嘘偽りのない現実だよ」

723: 2011/07/28(木) 04:05:52.88 ID:tzByuSbw0
さくら「ケロちゃん、キュゥべえが言ってることどう思う……?」

ケロ「なんとも言えん……。ただ」

さくら「ただ?」

ケロ「あいつの言うとることがほんまやったら一つ疑問に思っとったことに納得がいく」

ケロ「魔女がおらんはずの街に使い魔が現れる原因、それは月にあったんや」

さくら「それって昨日倒した……あの?」

ケロ「あぁ。あの使い魔は月の魔女の影響で生まれたもんやとしたら合点がいく」

キュゥべえ「君の言う通りさ、ケルベロス」

ケロ「!!」

キュゥべえ「時折、魔女もいないのに使い魔が現れることがある」

キュゥべえ「それは君の推測通り月の魔女が原因なのさ」

ケロ「やはりか……」

726: 2011/07/28(木) 04:10:38.46 ID:tzByuSbw0
キュゥべえ「発端はといえば数世紀ほど過去に遡る」

西の大陸で魔法少女の数を魔女の数が上回ったんだ。
魔女が絶望をふりまき、魔法少女たちはどんどんと魔女化し事態は深刻化していく。

このままでは大陸が滅ぶという時、一人の少女が祈りを捧げた。
『この星から全ての魔女を消し去って欲しい』、と。
そして少女は魔法少女になった。願いが叶ったんだ。

ただ、魔女たちは消滅したわけじゃなかった。
月に封印されただけだったんだ。

一時的には地球上から魔女は消えたものの、月に封印された魔女たちの影響で再び世界中に使い魔が現れる。
魔法少女もグリーフシードがなければ魔女となってしまう。
魂のない身体を動かすだけでも魔力は消費しているからね。

真実を知ったその魔法少女は自らの祈りに裏切られ、わずか数日で魔女になってしまったよ。

結果として、世界は魔法少女の数を魔女が上回る前とほとんど同じ状態になった。
そのままなら大陸は滅び、その呪いが世界中に広がっていた可能性を考えれば少女は間違ってなかったと僕は思うよ。

当時、西の大陸が魔女で溢れてしまったことを後に『ワルプルギスの夜』と呼ぶようになった。

キュゥべえ「どういうわけか君たちは強力な魔女の出現のことだと勘違いしていたようだけどね」

728: 2011/07/28(木) 04:16:56.25 ID:tzByuSbw0
キュゥべえ「これが僕の知るワルプルギスの夜の全てさ」

まどか「……」

さくら「……」

ケロ「……」

杏子「……じゃあ、あの使い魔を倒したのは間違いだったってのかよ!」

ほむら「杏子……」

キュゥべえ「どうだろうね」

キュゥべえ「倒さなければあの使い魔は一通り暴れた後に月の魔女たちの魔力に引かれて天に昇っていっただろう」

キュゥべえ「結果、地球上から最後の使い魔が消えワルプルギスの夜が始まる」

キュゥべえ「この街が無事だったという点では意味はあったんじゃないかな」

杏子「……」

730: 2011/07/28(木) 04:22:12.36 ID:tzByuSbw0
杏子「……今、地球上に魔法少女は何人いるんだ……」

ほむら「杏子、あなた……!」

キュゥべえ「さぁ? 僕の管轄はそれほど広くないからね。正確な数は把握できていないよ」

キュゥべえ「ただこれだけは言えるよ。少なく見積もっても魔法少女の数とほぼ同数」

キュゥべえ「そして永きに渡って力を蓄えてきた魔女たちは君たちがさっきまで戦っていた使い魔と同程度の強さを誇る」

さくら「そんな!」

キュゥべえ「魔法少女たちは絶望するだろうね。そして彼女たちは魔女になる」

キュゥべえ「まさに魔女たちのお祭り、『ワルプルギスの夜』の再来と言えるね」

733: 2011/07/28(木) 04:26:39.47 ID:tzByuSbw0
杏子「無理だ……、勝てるわけねえ……」

杏子「もうグリーフシードは一個も残ってない、ソウルジェムの穢れも溜まってる」

杏子「弱い魔女を倒すのが精一杯って状態で数千匹の魔女と戦うなんて、無理に決まってる!」

ほむら「落ち着きなさい、杏子!」

杏子「これが落ち着いていられるわけないだろっ!」

ほむら「それでも! それ以上穢れが増せばあなたも魔女になってしまうわ……」

杏子「ぐっ……、悪い」

ほむら「……まだよ、まだ何か方法があるはずよ……」

735: 2011/07/28(木) 04:30:38.57 ID:tzByuSbw0
キュゥべえ「方法ならあるじゃないか」

ほむら「!?」

まどか「……」

キュゥべえ「鹿目まどか、君が魔法少女になればいい」

ほむら「ふざけないで! そんなこと……」

まどか「……わかったよ、キュゥべえ」

ほむら「ッ! まどか!」

まどか「もういいんだよ、ほむらちゃん」

ケロ「嬢ちゃん……」

738: 2011/07/28(木) 04:36:06.15 ID:tzByuSbw0
まどか「ごめんね、ほむらちゃんずっと頑張ってきてくれてたのに」

ほむら「ダメよまどか! 今の私に過去に戻る魔力は残っていないわ!」

ほむら「それに何より、あなたにこれ以上の因果を背負わせたくないの!」

まどか「ありがとう、ほむらちゃん」

まどか「ずっと考えてた、わたしにできること」

まどか「そしてようやく叶えたい願い事見つけたよ」

キュゥべえ「あまたの世界の運命を束ね因果の特異点となった君は今地球上でもっとも高い魔法少女の素質を持つ」

キュゥべえ「そんな君ならば今この瞬間も地球に降下してきている魔女たちを再度封印するどころか……」

キュゥべえ「完全に消滅させることも可能だろう」

739: 2011/07/28(木) 04:40:32.43 ID:tzByuSbw0
まどか「これまでずっとほむらちゃんに望まれてきたから今のわたしが在るんだと思う」

まどか「そんなわたしがやっと見つけた答え……」

キュゥべえ「さぁ、鹿目まどか。その魂を対価にして、君は何を希う?」

まどか「わたしは……」スゥ

まどか「『全ての魔女を生まれる前に消し去りたい』」

まどか「『全ての宇宙、過去と未来の全ての魔女をこの手で……』」

キュゥべえ「!? その祈りは……」

741: 2011/07/28(木) 04:46:20.56 ID:tzByuSbw0
キュゥべえ「そんな祈りが叶うとしたら、それは時間干渉なんてレベルじゃない……」

キュゥべえ「因果律そのものに対する叛逆だよ」

まどか「キュゥべえは私が望めば万能の神にだってなれるって言ったよね」

まどか「これまで希望を信じてきたみんなを泣かせたくない」

まどか「最後まで笑顔でいて欲しい」

まどか「そのためならわたし、神様にだってなってみせるよ」

まどか「さぁ、私の願いを叶えてよ。インキュベーター!」

ほむら「やめてまどかぁー!」

キュゥべえ「鹿目まどか、その願いは……」

742: 2011/07/28(木) 04:50:07.65 ID:tzByuSbw0
キュゥべえ「残念ながら叶えることができない」

ほむら「……え?」

まどか「どういうことなの? あの時言ったことはウソだったの……?」

キュゥべえ「僕はウソなんてつくつもりも、ついたこともないよ。鹿目まどか」

まどか「じゃあどうして……」

キュゥべえ「あの時の君なら間違いなく今の願いを叶えることができていたよ」

キュゥべえ「けど、状況が変わった。君の因果はほどけてしまった……」

743: 2011/07/28(木) 05:00:57.30 ID:tzByuSbw0
キュゥべえ「木之本 桜。君が原因だよ」

さくら「わ、わたし!?」

まどか「さくらちゃんが……?」

キュゥべえ「君たちはこの世界の住人じゃないんだろう?」

キュゥべえ「この世界の住人ではない人間に因果は存在しない」

キュゥべえ「そんな君たちが莫大な因果の糸が集中しているまどかと出会ってしまった」

キュゥべえ「君たちが力を持つ者だったがためにまどかの因果の糸はほどけ君たちに絡め取られてしまった」

キュゥべえ「そういうわけで、今の願いは叶えられないんだ。ごめんねまどか」

745: 2011/07/28(木) 05:06:11.69 ID:tzByuSbw0
まどか「そんな……」

杏子「どういうことだよ、アタシにはさっぱり理解できねえ……」

杏子「まどかの願いが叶わなかったのは良かったのか、悪かったのかどっちだなんだよ」

ほむら「……私にとっては良かったわ。ただ、状況は何一つ変わっていたない」

キュゥべえ「残念ながら今の願いは叶えられないけど、君が今地球上でもっとも素質があることには変わりない」

キュゥべえ「どうするんだい? 月の魔女たちを消滅させるかい? それとも別の願いかな?」

まどか「キュゥべえ……」

747: 2011/07/28(木) 05:13:07.43 ID:tzByuSbw0
キュゥべえ「別に願いを叶えるのはまどかじゃなくても僕は構わないよ」

キュゥべえ「木之本 桜、君がまどかから絡め取った因果の量でも魔女たちを月に再度封印するぐらいはできるはずだよ」

さくら「わたしが、魔法少女に……」

ケロ「やめろさくら、こいつの口車に乗ったらあかん!」

さくら「けどわたしにある願いの力は元々はまどかさんの……」

まどか「ダメだよ、さくらちゃん。ケルベロスさんの言う通り」

さくら「まどかさん……」

749: 2011/07/28(木) 05:18:12.70 ID:tzByuSbw0
まどか「魔女を消し去ったり封印したんじゃ結局同じだよ」

まどか「わたしはもう魔法少女が泣いたり苦しんだりするのは嫌なの」

まどか「だからわたしは願いを変えられない」

キュゥべえ「はぁ……。まどか、そんなこと言ってもできないものはできないし……」

まどか「今のわたしにはできなくても……」チラッ

ほむら「……えっ?」

まどか「ごめんね、ほむらちゃん……」

まどか「キュゥべえ、わたしの願いは『ほむらちゃんにもう一度だけやり直してもらうこと』!」カッ

キュゥべえ「そういうことか……。いいよ、その願いを叶えよう」

ほむら「そんな、まどかっ!」

カチッ、カチッ……

752: 2011/07/28(木) 05:24:30.96 ID:tzByuSbw0
まどか「本当にごめんね、ほむらちゃん……」ポロ

まどか「何度も繰り返してきて、辛かったって知ってるのに……」ポロポロ…

カチ、カチカチカチ……

まどか「もう一度だけ、わたしのわがままに付き合って」

まどか「わたしの叶えようとした願いを次の私に伝えて……お願い」

ほむら「いやよ! もうこれ以上まどかを悲しむ顔を見たくないの! 苦しめたくないのよ!」

ガチリッ! ピカッ!

ほむら「まどかああああああ!!」

756: 2011/07/28(木) 05:30:39.49 ID:tzByuSbw0
――――――――

まどか「わたしの願いはほむらちゃんにもう一度だけやり直してもらうこと!」カッ

まどかさんがそう叫ぶとまどかさんの身体が仄かな光に包まれたの。

キュゥべえ「そういうことか……。いいよ、その願いを叶えよう」

光はほむらさんに移り、ほむらさんの左手の盾が輝き始めて……

その時、その様子をみんなの一番後ろで見守っていたわたしにも異変が起きたの。

さくら(わたしのポケットも……光ってるの?)

ケロ「さくら、それ……」

758: 2011/07/28(木) 05:35:28.10 ID:tzByuSbw0
そっと取り出すとそれは壱原さんに貰ったクロウカード。

さくら「R…E…T…U…R…N…、『戻(リターン)』……?」

クロウカードはわたしの手を離れてふわりと浮き上がって……、

わたしが驚いている間にもほむらさんの盾の輝きは強くなってて……、

さくら(戻る……、わたしたちのいた元の世界に戻るってこと? ダメ、まだ終わってないのに……!)

ガチリッ! ピカッ!


――鹿目まどかの願いが叶えられほむらの盾の輝きが最高潮に達した。

――眩しさからそこにいた全員が目を閉じ、次に目を開いたときには……

―― 一人の少女とその友だちがその場から姿を消していた。

760: 2011/07/28(木) 05:42:46.99 ID:tzByuSbw0
――――――――

ほむら「まどかああああああ!!」

少女の悲痛な叫びが辺りにこだまする。
少女の盾から放たれる眩い光が徐々に収束し、やがて光は完全に消える。
その光に目をくらませていた全員がそっと目を開くと、ある意味驚きの光景が飛び込んできた。

「「「え……?」」」

その驚きは思わず声をハモらせるほど。

まどか「ほむら、ちゃん……?」

ほむら「まどか……、どうしてあなたがここに……」

杏子「何も起こってねえじゃねえか、さっきの光はなんだったんだよ」

キュゥべえ「鹿目まどか、君の祈りはエントロピーを凌駕した」

キュゥべえ「きちんと願いは叶ったはずだよ」

762: 2011/07/28(木) 05:48:31.78 ID:tzByuSbw0
ほむら「何を言っているの?」

まどか「願いは叶ったって、ほむらちゃんはここにいるよ……?」

キュゥべえ「そうだね、それがどうかしたかい?」

まどか「どうもこうもわたしの願い、叶ってないよ!? なのにこの姿……」

杏子「どう見ても魔法少女、だよな」

キュゥべえ「君の願いは『暁美ほむらの時間遡行能力を強制的に発動させること』じゃないのかい?」

キュゥべえ「それならきちんと願いは叶ったはずだよ?」

ほむら「私はここにいる! 願いは叶っていないわ!」

763: 2011/07/28(木) 05:53:05.33 ID:tzByuSbw0
キュゥべえ「いいや、願いは確かに成就しているよ」

キュゥべえ「暁美ほむら、どうやら君は自分の能力をきちんと把握していないみたいだね」

ほむら「それってどういう……」

キュゥべえ「もしかして君は自分の能力を『時間を巻き戻す』能力だとでも勘違いしてたんじゃないのかい?」

キュゥべえ「君の能力は『過去の自分に記憶を送る』こと」

キュゥべえ「その影響で『記憶を受け取ったほむら』のいる世界と『記憶を受け取らなかったほむら』のいる世界に世界線が分岐するんだ」

キュゥべえ「起きてしまったことをなかったことにするなんて、万能の神でもなければ不可能に決まっているよ」

ほむら「そんな……、それじゃあ私は……」ズズズ…

まどか「ほむらちゃん、落ち着いて!」

キュゥべえ「この世界線のほむらはは失敗してしまったかもしれない」

キュゥべえ「けど、新しい世界線のほむらが理想を叶えられればそれでいいじゃないか」

キュゥべえ「なのに君はどうしてそんなにショックを受けているんだい? わけがわからないよ」

――――――――
――――
――

767: 2011/07/28(木) 05:57:04.84 ID:tzByuSbw0
ズーン! ズーン! グオオォォォ!!

杏子「まどかも、ほむらも……。二人とも魔女になっちまった……」

キュゥべえ「自らの祈りに裏切られたんだ、当然といえば当然だね」

杏子「けっ……、もう怒る気力も残ってねえよ」

杏子「……なぁ、一つ聞いていいか?」

キュゥべえ「なんだい? 言ってごらんよ」

杏子「さくらがどこいったかわからねえか?」

杏子「いつの間にかケルベロスと一緒に消えちまってた」

杏子「どこ行ったか知らないけどどうせ後数時間で魔女の大群が押し寄せてくるんだ」

杏子「世界中どこにいたって一緒だろう」

769: 2011/07/28(木) 06:00:46.50 ID:tzByuSbw0
キュゥべえ「木之本 桜か、彼女たちならもうこの世界にはいないよ」

キュゥべえ「まどかの願いが叶ったと同時に地球上から存在が確認できなくなっていた」

杏子「なんだよ、宇宙にでも逃げたってのか? アイツはほんとすげえな」ククク

キュゥべえ「いや、今のはそういう意味じゃないよ」

キュゥべえ「おそらくは彼女の元いた世界に戻ったんじゃないかな?」

杏子「……プッ。あははは、マジかよ、じゃあさくらはほんとに他所の世界からきたっていうのか」

杏子「適当に相槌打ってわかったようなふりしてたけど、アタシはぶっちゃけ信じてなかったんだ」

杏子「けど……、そうかそうか。そりゃぁよかった」

770: 2011/07/28(木) 06:03:13.68 ID:tzByuSbw0
キュゥべえ「杏子? 何がよかったって言うんだい?」

杏子「べつに。ただ、さくらは良い奴だからさ、アイツらだけでも無事ならそれでいいかって」

キュゥべえ「……君はずいぶんと変わったね」

杏子「あん?」

キュゥべえ「以前の杏子は、もっと自分本位だったと思ってね」

杏子「そう、だね。最後の最後で悪ぶるのにも疲れちまったのかもね」

キュゥべえ「よくわからないな」

杏子「そうかい」

キュゥべえ「それじゃあ僕はそろそろ行くとするよ」

キュゥべえ「あとは君たち人類の問題だ、バイバイ杏子」

杏子「……あばよ」

772: 2011/07/28(木) 06:07:08.34 ID:tzByuSbw0
――その日、突然発生した異常気象の数々が世界中を襲った。

――異常気象の原因を知る少女たちは三日で一人残らず異常気象へと変化してしまった。

――さらに二日、異常気象発生から五日目には地球上から陸地が消え人類は死滅した。

――そして七日目、海は蒸発し、ほとんどの生物が息絶えてしまった。

その星に彼女たちを傷つけるものなどもう何もない。
地球は彼女たちの楽園となったのだ。


               / END

773: 2011/07/28(木) 06:07:49.72
終わった・・・だと・・・

780: 2011/07/28(木) 06:18:44.65 ID:tzByuSbw0
二日間拙い文章におつきあい頂きありがとうございました。
特に寝落ちしていた間、保守して下さった方々、助かりました。
SS速報からいらした方には同じ終わり方で物足りなかったかも知れません。
目的が向こうで書いたもののミスを修正することだったので・・・申し訳ない。

結末としては、少女たちは自分の結界に引きこもって幸せに暮らしました、というハッピーエンドです。
ほむらがループを繰り返した数だけ真実を知り絶望するほむらが存在し、
ワルプルギスの夜によって地球は魔女の楽園と化しているわけです。

さくらちゃんだから「絶対、だいじょうぶ!」と思ってた方が一人でも多く絶望してくださっていれば本望です。

781: 2011/07/28(木) 06:20:21.64
なんてこった
じゃあさくらを送った依頼主は誰なんだよ

789: 2011/07/28(木) 07:01:55.04
さくらはなんのためにきたの?

793: 2011/07/28(木) 07:06:41.23 ID:tzByuSbw0
>>789
とある少女を助けに
残念ながら助けられなかったけど・・・

引用元: さくら「魔法少女?」ほむら「カードキャプター?」