3:2015/08/04(火) 18:29:32.286 ID:TyMEJZuX0.net
旭丘分校教室

一穂「れんちょん、ここにいたんだ」

れんげ「ああ、ねぇねぇ」

一穂「まぁ九年間も通った学校だもんね」

れんげ「そうなんな」

一穂「まあしょうがないよ、閉鎖するのは」

れんげ「ウチは今でもほたるんやこまちゃんやなっつんと一緒に遊んでた時の事思い出すのん」

一穂「蛍ちゃんが卒業してから四年間ずっと一人だったからねぇ」
5:2015/08/04(火) 18:31:33.648 ID:TyMEJZuX0.net
校舎前

れんげ「…ねぇねぇ、分校閉鎖したらこの校舎取り壊すのん?」

一穂「いや、とり壊すことはないみたいだよ、一時的とはいえ置いとくらしいってさ」

れんげ「…村に子供がいないからしょうがないのん」

一穂「ウチの子供がひょっとしたらここに通うかもって思ったんだけどね」

れんげ「ねぇねぇの子供はまだ三歳なのん、それまで予算を付けてくれるほど財政に余裕はないのん」

一穂「そうだねぇ、ウチは旦那と一緒に町のほうに家買ったからね」

れんげ「…これも時代の流れなのん」
7:2015/08/04(火) 18:34:53.668 ID:TyMEJZuX0.net
一穂「れんちょん、車乗って帰る?」

れんげ「…小学校に入学したときと同じコースで帰ってみるのん」

一穂「迷わない?」

れんげ「ウチもう15歳なん、背だってこないだ155センチ超えたのん」

一穂「そっか、じゃあ先に帰ってるね」ニコッ
9:2015/08/04(火) 18:37:07.045 ID:TyMEJZuX0.net
れんげ(…懐かしいな、小学校に入る前に予行演習で学校に来たんだっけ)

れんげ(…拾った棒で道しるべとか付けちゃって、夏海ちゃんが伝説の剣とか言ってたな)

れんげ(…そのすぐ後に蛍ちゃんが転校してきて、みんなでお花見とかしたなぁ)

れんげ(…蛍ちゃんは中学を卒業してすぐ、またお父さんのお仕事の都合で東京に戻って…)

れんげ(…小鞠ちゃんは大学に行って…もう会うことなんてめったになくて…)
12:2015/08/04(火) 18:39:10.001 ID:TyMEJZuX0.net
ブロロロロ

夏海「あれ、れんちょんどうしたの?軽トラで良ければ乗ってく?」

れんげ「なっつん、農作業帰りなん?」

夏海「そうだよ、バス待ってるなら乗せてってやるよ」

れんげ「…では、お言葉に甘えさせていただきます」
15:2015/08/04(火) 18:41:13.036 ID:TyMEJZuX0.net
軽トラの中

ブロロロロロロ

夏海「れんちょん、今日卒業式だったんだろ?」

れんげ「そうなのん、ウチが旭丘分校最後の卒業証書を受け取ったのん」

夏海「そっか…寂しいけど、これも時代の流れだからね」

れんげ「なっつんはこのみと上手くやってるん?」

夏海「義姉ちゃんとは元々姉妹のようなもんだったから問題はないけど、今は妊娠中だからさ」

れんげ「やっぱり気を使うのん?」

夏海「まあそれなりにね」
16:2015/08/04(火) 18:43:24.813 ID:TyMEJZuX0.net
夏海「それより母ちゃんが見合いしろ見合いしろってうるさくてまいっちゃうよ」

れんげ「なっつん結婚するのん?」

夏海「ウチまだ21だよ?まだまだ早いって」

れんげ「でも、気をつけた方がいいのん、20を過ぎたら光陰は矢のように過ぎ去るものなん」

夏海「そんなものかね?」

れんげ「駄菓子屋が言ってたから間違いないのん」
18:2015/08/04(火) 18:45:40.467 ID:TyMEJZuX0.net
夏海「それじゃ久しぶりに駄菓子屋寄ってく?」

れんげ「そういえばなっつん知ってるのん?」

夏海「何を?」

れんげ「駄菓子屋、彼氏ができたらしいのん」

夏海「マジか!?」

れんげ「ウチも詳しくは知らないけど、駄菓子屋多分最後のチャンスなのん」

夏海「駄菓子屋、もう今年で29歳だかんなー」
19:2015/08/04(火) 18:47:46.139 ID:TyMEJZuX0.net
宮内家

れんげ「ただいまなのん」

一穂「ああ、おかえりれんちょん」カタカタ

れんげ「ねぇねぇ、パソコン使っていいのん?」

一穂「あいよ、ちょっと待ってねアカウント切り替えるから」カチャカチャ

れんげ「義兄さんはどうしたのん?」

一穂「子供と一緒に風呂入ってるよ」
20:2015/08/04(火) 18:49:54.558 ID:TyMEJZuX0.net
れんげの部屋

れんげ(…今日無事に中学校を卒業しました…と)メルメル

ほのか『私も今日卒業式だったよ、皆で一緒に写真撮ったの』ピロリーン

れんげ(…ウチ、高校がちゃんと楽しめるか少し不安です…と)メルメル

ほのか『れんげちゃんなら大丈夫だよ、私が保証します』ピロリーン

れんげ(…ありがとう、高校生になったら都会で一緒に遊ぼうね…と)メルメル

はのか『わかった、楽しみにしてるね!』ピロリーン

れんげ(…こちらこそ、楽しみ…と)メルメル
21:2015/08/04(火) 18:52:02.699 ID:TyMEJZuX0.net
れんげ「ふぅ」

れんげ(…久しぶりに蛍ちゃんにもメールしてみようかな)

れんげ(…ウチが九年間通った教室)

れんげ(…ウチが育ったこの村)

れんげ(…思い出が抱えきれないほどある大好きなこの村)

れんげ(…ウチも大人になったら出て行かなければならないのかな)

れんげ(…そしていつか忘れちゃうのかな)

れんげ(…そんなの嫌だな)
23:2015/08/04(火) 18:54:09.408 ID:TyMEJZuX0.net
翌日

宮内家縁側

シュッシュッ

一穂「おはよ、れんちょん…朝っぱらから何やってるの?」

れんげ「みてわからんの?具のスケッチなん!」シュッシュッ

具「…」ジッ

一穂「なんでまた」

れんげ「ウチ、決めたん!高校に入ったら漫画研究部に入って漫画を描くのん!」

一穂「漫画?何をやぶから棒に?」
25:2015/08/04(火) 18:56:18.041 ID:TyMEJZuX0.net
れんげ「この村がいつかなくなっても、ウチらの思い出を漫画にしとけばいつまでも消えないのん!」シュッシュッ

れんげ「それにそしたら、都会に行ったほたるんやこまちゃんもいつでもこの村の事を思い出してくれるのん!」

れんげ「ウチはこの村がずるずる衰退していくだけなんて絶対いやなん!」

れんげ「こんな綺麗な村があるということと、そこに生きていた子供がいたって事をずっと遺したいのん!」

一穂「…そっか…じゃあ期待してるよ」ニッコリ
26:2015/08/04(火) 18:58:23.425 ID:TyMEJZuX0.net
れんげ「それにもうタイトルだって決めてるのん」

一穂「どんな?」

れんげ「のんびりのどかな村の物語だから『のんのど村の毎日』ってタイトルにするん」

一穂「語呂悪いねぇ…変えたほうが良いんじゃない?」

れんげ「語呂悪いのん?でも代案なんて考えてないのん」

一穂「…じゃあ、のんびりのんきな毎日ってことで、『のんのん毎日』はどう?」

れんげ「それも語呂悪いのん」

一穂「難しいねぇ…そんなん漫画描いてからいいんじゃない?『待てば海路の日和あり』って言うしさ」

れんげ「それなのん!」

一穂「えっ!?何が?」

れんげ「ほたるん、こまちゃん、ウチ絶対この村を皆の胸の中から消えさせたりしないのん!」グッ
28:2015/08/04(火) 19:00:23.663 ID:TyMEJZuX0.net
そして8年後

編集者「先生、次回作の構想ですが…」

れんげ「はい、これはウチが子供の頃から温めてたんですが、のどかな村を舞台として子供達が…」

END

以上です。
引用元:http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1438680450