1:2017/06/04(日) 21:31:17.951 ID:4kD2nuMA0.net
―住宅街 工事現場付近―


タプリス「今日は、わたしなんかのためにパーティだなんて……」

タプリス「みなさん、本当にありがとうございます」


ヴィーネ「そんなの気にしなくていいのよ、タプちゃん。だって、誕生日だもの」

ラフィエル「そうですよ。みんな、タプちゃんのことが大好きですから」

ラフィエル「祝ってあげたいんです」

サターニャ「わ、私は別にそんなんじゃ……」

ガヴリール「っていうわりに、プレゼントがあーだこーだ、うるさかったじゃないか」

サターニャ「ちょ! それ今、言わなくてもいいでしょ!」

タプリス「く、胡桃沢先輩もありがとうございます!」

サターニャ「ふ、ふんっ。まぁ、この大悪魔であるサタニキア様が」

サターニャ「最高に盛り上がる余興を考えているから、覚悟しておきなさい!」

ガヴリール「覚悟させてどうするんだよ」

タプリス「あははは……」


 バリッ


タプリス「ん? 何か今、目の前を電気のようなものが……」


 バリッ バリバリバリッ


タプリス「えっ、なんですか、これ!? これが、胡桃沢先輩の余興ですか!?」

サターニャ「し、知らないわよこんなの!」


 ピカァァァッ キキーッ


ガヴリール「うわっ! なんだ、これ……、車、か?」
6:2017/06/04(日) 21:33:09.437 ID:4kD2nuMA0.net
シュゥゥゥゥ


ラフィエル「光の中から車が出てくるなんて、ただ事ではないですね」


 ウィーン


ヴィーネ「……ドアが開いたわ。タプちゃん、私の後ろに」

タプリス「あ、ありがとうございます」


金髪の女性「……着きましたね。場所も、ぴったりみたいです」

金髪の女性「こんばんは、みなさん」ニコッ


タプリス「えっと、こんばんは……」

金髪の女性「ふふっ、懐かしい姿です」

タプリス「えっ? 懐かしい?」

ガヴリール「というか、この人。タプリスに似てないか?」

ヴィーネ「たしかに……そうね」


金髪の女性「みなさん、驚かないで聞いてください」

金髪の女性「わたしはここよりも未来から、ある目的のためにやってきた」

金髪の女性「千咲=タプリス=シュガーベル、といいます」


ガヴリール「は?」

ヴィーネ「ん?」

ラフィエル「えっ?」

サターニャ「はぁっ!?」


タプリス「どええええっ!?」
7:2017/06/04(日) 21:34:32.049 ID:4kD2nuMA0.net
金髪の女性「簡単に経緯を説明しますと、ここより未来にて、科学者とわたしは」

金髪の女性「天界との共同開発の末、ついにタイムトラベルを可能とした、この車……」

金髪の女性「その名も、タプリアンを開発しました」

タプリス「タプリアン……」

ガヴリール「……そんなデタラメ、信じられるはずないだろ」

金髪の女性「さすが、天真先輩です。おっしゃるとおりだと思います」

ガヴリール「私の名前は知ってるんだな」

金髪の女性「まずは、わたしがタプリスであることの証明は……そうですね」

金髪の女性「わたしだけしか知り得ないこと、ですから……」

金髪の女性「わたしが何歳までオネショをしていたか、でどうでしょうか」

タプリス「はぁ!? な、何を言ってるんですか、あなた!」

ガヴリール「あ、それは興味あるな」

ラフィエル「うふふ、私もです」

金髪の女性「えっとですね、わたしは……」

タプリス「ストップ! ストップです!」

タプリス「せめてわたしに、耳打ちでお願いします!」

金髪の女性「しょうがないですね、では……」


 ごにょごにょ

タプリス「……うぅ、正解です」

金髪の女性「その他には、あんなことや、こんなことも……」


 ごにょごにょ

タプリス「……合ってます」カァァ
9:2017/06/04(日) 21:36:02.479 ID:4kD2nuMA0.net
タプリス「この人、本物です。親も知らないようなことを、知ってました……」

ガヴリール「マジかよ。で、オネショは何歳なんだ?」

タプリス「言うわけないじゃないですか!」

ラフィエル「あらあら、残念ですね」

金髪の女性「とりあえず、わかっていただけたようで、何よりです」

ヴィーネ「えっと……それで、その未来のタプちゃんが、どうしてこの時代に?」


金髪の女性「実はですね、このタイムトラベル装置を快く思わない組織から」

金髪の女性「わたしは、命を狙われる立場になりました」

タプリス「えぇ!? そんな物騒なことに……」

金髪の女性「ですが、わたしたちの開発チームの協力もありまして」

金髪の女性「今までは、組織による暗殺計画を未然に防ぐことができたんです」

ガヴリール「開発チーム、優秀だな」


金髪の女性「はい。しかし、組織は方針を変えて、次の一手を打ってきました」

金髪の女性「わたしたちから、もう一台あったタプリアンを盗み出した組織は」

金髪の女性「過去を変えることで、わたしの存在自体を抹消して」

金髪の女性「タイムトラベル装置の開発を阻止する計画を立てたんです」

ラフィエル「……過去のタプちゃんを亡き者に、ということですね」

金髪の女性「そうです、白羽先輩」

金髪の女性「そして、その計画の第一段階が、この時代におけるわたしの暗殺」

金髪の女性「ちょうどまだ、科学の科の字も始めていなかった、わたしです」

金髪の女性「その計画を食い止めるため、わたしはここに来ました」


タプリス「わ、わたしが、殺されるだなんて……」ガクガク
13:2017/06/04(日) 21:37:31.628 ID:4kD2nuMA0.net
金髪の女性「安心してください、過去のわたし」

金髪の女性「タプリアンの燃料は特別製で、組織では入手することができません」

金髪の女性「そして、盗まれたタプリアンに積まれていた燃料は」

金髪の女性「タイムトラベル2回分。ちなみにわたしが乗ってきた方は5回分あります」

金髪の女性「よって、2回の襲撃を防げば、我々の勝ちです」

ガヴリール「その1回目が、今ってわけだな」

金髪の女性「はい。それに組織は、必要以上の過去改変を恐れていますので」

金髪の女性「わたし以外の命は、けっして狙いません」

金髪の女性「そして、2回目の襲撃の場所は……」


 バリッ バリバリバリッ

 ピカァァァッ キキーッ


金髪の女性「ま、まさか奴らが!? 予定よりも早い!?」

金髪の女性「み、みなさん! 急いでタプリアンに乗ってください!」


 ウィーン


組織の少女「ターゲット確認、撃つ」

タプリス「ひっ!?」

金髪の女性「危ないっ!」


 パァンッ


金髪の女性「かはっ!」


サターニャ「余興に使おうと思ってたけどっ!」

サターニャ「くらいなさい! 煙幕ボール!」


 ヒュン モクモクモク


組織の少女「くっ、小癪な真似を……」
14:2017/06/04(日) 21:38:59.999 ID:4kD2nuMA0.net
タプリス「ど、どうして、わたしをかばって……」

金髪の女性「はぁ……はぁ、奴らの狙いは、あなたの命よ」

金髪の女性「科学者ってのは、命よりも実績が大事なの」

金髪の女性「わたしがここで氏んでも、実績は残るけど……」

金髪の女性「あなたが死んだら、それもなくなっちゃう」

タプリス「で、でも……」

金髪の女性「おそらくわたしは、長くはありません」

金髪の女性「わたしがここで奴らを食い止めるから、みなさんは」

金髪の女性「2回目の襲撃を防いで……ください……」


組織の少女「まともに見えなくたって……」


 パァンッ パァンッ


金髪の女性「ここは危険です、早く」

タプリス「あぁ……」

金髪の女性「先輩たち、わたしを……頼みます」

ガヴリール「ああ、任せとけ」

金髪の女性「それでは」ダッ


 パァンッ パァンッ


ガヴリール「ドアを閉めろ、発進するぞ!」

タプリス「で、でも! 未来のわたしが……」

ガヴリール「あいつの思いを無駄にするんじゃない!」

タプリス「……ッ」


 ブロロロロロッ
16:2017/06/04(日) 21:40:27.289 ID:4kD2nuMA0.net
―タプリアン内部―


ガヴリール「で、何でお前が運転席にいるんだよ、サターニャ!」

サターニャ「だって、面白そうだったんだもの!」

ガヴリール「早く発進させろ! とりあえず、アクセル踏み込め!」

サターニャ「アクセル? なんか、自転車のペダルみたいのしかないんだけど……」

ガヴリール「ここまでハイテクなのに、動力が人力っておかしいだろ!」

ヴィーネ「と、とりあえず、サターニャ。目一杯こいで!」

サターニャ「わ、わかったわ!」


 キコキコ


ラフィエル「全然、速度が足りません! サターニャさん、頑張ってください!」

サターニャ「なんでぇ、私がぁ、こんなことぉ!!」


 キコキコキコーッ


ガヴリール「MAXまで、もうちょいだ。お前の馬鹿力見せてやれ!」

サターニャ「誰が、馬鹿ですってぇぇぇぇっっ!!」


 バリッ バリバリバリッ

 ピカァァァッ


タプリス「目の前が、光って!?」

ガヴリール「飛ぶぞ! 過去へ!」
17:2017/06/04(日) 21:42:39.907 ID:4kD2nuMA0.net
―天界―


 バリッ バリバリバリッ

 ピカァァァッ キキーッ


ガヴリール「つ、着いたみたいだな……」

ラフィエル「ここは、天界ですか」

ヴィーネ「私たち、悪魔なのに入っちゃって良いのかしら……」

サターニャ「大丈夫でしょ、バレないバレない」


タプリス「それにしても、ここは何年前なんでしょうね」

ガヴリール「ディスプレイに表示されてるな……って、20年前!?」

ヴィーネ「20年前って……タプちゃん生まれてないじゃない」

サターニャ「行き先、間違ったとか?」

ラフィエル「いえ、行き先はあらかじめ設定されていたみたいです」

ラフィエル「とすると、組織はこの時代で、タプちゃんの存在を消そうとしている」

タプリス「で、でも、わたしがいないのに、わたしを消すって、どうやって……」

ガヴリール「そんなの決まってるだろ、お前の親御さんだよ」

タプリス「なっ!? わたしの両親を頃して」

タプリス「わたしが生まれないようにするつもりですか!?」

ラフィエル「いえ、組織はタプちゃん以外の命はけっしてとらないと」

ラフィエル「未来のタプちゃんは言っていました」

タプリス「では、どのように……」

ガヴリール「そんなのいくらでも方法があるだろ」

ガヴリール「例えば……、お前の親御さんを結婚させないとか――」


 『キャァァァァァ!!』
18:2017/06/04(日) 21:43:57.653 ID:4kD2nuMA0.net
タプリス「ひ、悲鳴!?」

ガヴリール「やばっ、外に誰か倒れてるぞ」

ラフィエル「と、とりあえず、外に出ましょう」


 ウィーン


天使の少女「あわわわわ……」

ガヴリール「おい、お前! 大丈夫か、怪我はないか?」

天使の少女「あ、あなたたち、一体何者ですか。それにこれは……」

ラフィエル「これはですね、天使大学が極秘に開発していた装置で」

ラフィエル「複数人を瞬時に移動させることができるんです」

天使の少女「は、はぁ」

ラフィエル「驚かせてしまって、ごめんなさいね」

ラフィエル「ですから、このことは他言無用でお願いしたいのですが」

天使の少女「わ、わかりました。でも、悪魔の方もいらっしゃるようですけど……」

ラフィエル「はい、この方たちには、実験に協力してもらっているんです」

ラフィエル「天使以外でも移動できることを証明するために」

天使の少女「そ、そうだったんですね」


ガヴリール「よくもまぁ、そこまで上手く嘘を並べられるものだな」コソッ

ラフィエル「タイムトラベルについては、説明が面倒ですからね」コソッ

ラフィエル「今は、これが最善でしょう」

タプリス「……」

ヴィーネ「タプちゃん、どうしたの? さっきから固まって」


タプリス「あの、すみません。差し支えなければ、で良いのですが」

タプリス「あなたのお名前をお聞きしても良いでしょうか?」

天使の少女「わ、私の名前は――」
19:2017/06/04(日) 21:46:04.651 ID:4kD2nuMA0.net
タプリス「……」パクパク

ガヴリール「ん? どうした、タプリス」

タプリス「やっぱり……、お母さんです」

ガヴリール「え?」

タプリス「旧姓ですが、わたしの母と同じ名前です……」

ラフィエル「なるほど……、タプちゃんのお母様の居場所まで」

ラフィエル「しっかりと設定されていたんですね」

ヴィーネ「たしかに、どことなく、タプちゃんに似ている感じがするわね」

天使の少女「えっ? えっ?」

ラフィエル「いえいえ、何でもありませんよ。お気になさらず」

天使の少女「は、はぁ」


ガヴリール「とりあえずは、母親を確保できてよかったな。あとは父親か」

ガヴリール「おい、タプリス。父親はどこにいるんだ?」

タプリス「そう言われましても……、あ、そういえば、両親は」

タプリス「学生結婚したって言ってましたね」

ガヴリール「じゃあ、既に知っている可能性があるな」

ガヴリール「父親の名前に心当たりがないか、この子に聞いてみてくれ」

タプリス「わ、わかりました」


――

天使の少女「彼は、今晩、学校で行われる舞踏会の準備をしているはずです」

ラフィエル「舞踏会ですか。そういえば、学生主体でそんなイベントがありましたね」

ガヴリール「私も参加したことあるけど、20年前からあったんだな」

天使の少女「でも、どうして彼のことを? ま、まさかあなた……」

タプリス「ち、違います! そういうのじゃありませんから!」
20:2017/06/04(日) 21:47:53.772 ID:4kD2nuMA0.net
ガヴリール「なるほどね。今晩の舞踏会で彼を誘って告白、というわけか」

天使の少女「……」カァァ

ガヴリール「危うく、タプリスが間に入って、ややこしくなるところだったな」

ヴィーネ「タプちゃんと、タプちゃんのお父さんが結ばれちゃったら」

ヴィーネ「タプちゃんは生まれてこないからね……」

ラフィエル「ヴィーネさん、それです」

ヴィーネ「えっ、それって?」

ラフィエル「組織の人たち、たしか私たちと同じくらいの少女でしたよね」

ラフィエル「しかも、かなり可愛かったです」

ガヴリール「そんな子に、父親がもし、詰め寄られたら……」

ヴィーネ「タプちゃんのお父さんとお母さんが結ばれなくなってしまう」

タプリス「そ、そんな!」


天使の少女「えっと、あなたたち、何の話をして……」

ラフィエル「ぜひ! その恋、私たちにも応援をさせてください!」ズイッ

天使の少女「は、はい?」



―天使学校 舞踏会 会場―


ガヴリール「それで、そのお相手はどこにいるんだ」

天使の少女「たしかここで準備を……、あ、いました!」


天使の少年「――」

組織の少女「――」


天使の少女「だ、誰か知らない子が隣に……」

ラフィエル「あれは、組織の!?」
22:2017/06/04(日) 21:50:57.829 ID:4kD2nuMA0.net
ガヴリール「くそっ、一歩遅かったか」

ヴィーネ「ず、ずいぶん楽しそうに話をしてるわね」

タプリス「あ、あれ……わたしの手が……」

サターニャ「ちょっと! あんたの手、透けてきてるわよ!」

ラフィエル「まずいですね。タプちゃんの存在が消えかかっているみたいです」

サターニャ「今ここですぐに、あいつを倒せば良いんじゃないの?」

ガヴリール「馬鹿、そんなことしたら最悪、舞踏会が中止になる」

ラフィエル「その後でお二人が結ばれるかは、少々博打になってしまいますね」

サターニャ「だったら、どうすればいいのよ」

ガヴリール「そうだな……ここは正攻法でいこう」ニヤッ

天使の少女「えっ?」


――

天使の少女「あ、あの……」

天使の少年「ああ、君は確か隣のクラスの……」

天使の少女「こ、今夜、私と一緒に踊っ――」

組織の少女「すみません、ちょっといいですか?」

天使の少女「えっ?」

組織の少女「今、彼は私と話しているんです」

組織の少女「それに、今夜は私と踊ってくれることを約束してくれました」

組織の少女「ですので、お引き取り願えませんか?」


――

ガヴリール「……で、のこのこと引き下がってきたわけか」

天使の少女「うぅ……ごめんなさい……」

ガヴリール「奴らはもう、元の時代に戻れない片道切符だからな。必死というわけか」
23:2017/06/04(日) 21:53:07.016 ID:4kD2nuMA0.net
ヴィーネ「でも、本当にどうするのよ。このままじゃ、タプちゃんが……」

タプリス「うぅ……手がどんどん消えて……」

ガヴリール「仕方ない、最終手段だ」

サターニャ「最終手段って何よ」

ガヴリール「ラフィエル、あれを頼む」

ラフィエル「わかりました♪ ちょっと、こちらに良いですか?」

天使の少女「え? あ、はい……」

タプリス「白羽先輩は何を?」

ガヴリール「一種の暗示だよ。お前の母親を超強気にして、父親を奪い取る」

ヴィーネ「……なんか、嫌な予感しかしないんだけど」



―その日の夜 天使学校 舞踏会 会場―


ラフィエル「みなさん、できました♪」

天使の少女「あはっ、この超絶かわいい美少女の私に、惚れない男なんていないわ!」

サターニャ「ちょっと……これ、やりすぎじゃないの……」

ガヴリール「まぁ、大丈夫だろ。よし行ってこい!」

天使の少女「うんっ!」キラッ


タプリス「なんか、お母さんのこんな姿、見たくなかったです……」

ヴィーネ「あははは……それは、そうよね」

ラフィエル「私たちは、近くの茂みで待機しましょう」

ラフィエル「隙を見て、組織の子を捕獲します」
24:2017/06/04(日) 21:55:30.877 ID:4kD2nuMA0.net
天使の少女「ちょっとあなた!」

組織の少女「なに、また来たの。何度来たって……」


 ぎゅぅぅ

天使の少年「えっ? えっと……」カァァ

天使の少女「……彼に気安く話しかけないで」

組織の少女「はぁ? な、何を言ってるの……」

天使の少女「私ね。今まで、ずっと怖くて伝えられなかったんだ」

天使の少女「でも、言わずに後悔するのは、もっと嫌。だから、言うね」

天使の少女「……前からずっと、あなたのことが好きでした」

天使の少年「ほ、ほんとに?」

組織の少女「ちょっと、いきなりなんてことを……」

天使の少年「ぼ、僕もだよ! 僕も初めて会ったときから君のことが好きだった!」

組織の少女「はぁ!?」

天使の少女「嬉しい……、私たち、両思いだね」

天使の少年「そ、そうだね」

天使の少女「じゃあ、その……、今夜は一緒に踊りませんか?」

天使の少年「はい、喜んで」


組織の少女「くっ……こうなったら最後の手段」チャキッ

組織の少女「この男を頃して、私も……」


サターニャ「させないわ! デビル、ダンス、キィィィィクッ!!」


 ドガッ

組織の少女「ぐはっ!」

ラフィエル「今です! 縛り上げましょう!」
26:2017/06/04(日) 21:57:25.684 ID:4kD2nuMA0.net
天使の少女「本当にありがとうございました。この御恩は忘れません」

ラフィエル「気にしないでください。恋仲を取り持つのも、天使の務めですから」

天使の少年「それで、その女の子は……」

組織の少女「」チーン

ガヴリール「こいつは、私らの知り合いのようなものだ」

ガヴリール「まぁ、気にしないでいい。忘れてくれ」

天使の少年「は、はぁ、わかりました」

タプリス「あ、あの!」

天使の少女「はい?」

タプリス「なんて言ったら良いかわかりませんが……、頑張ってくださいね!」

天使の少女「ええ、ありがとう」ニコッ

ラフィエル「それでは、私たちは用がありますので、これで失礼しますね」

天使の少女「はい、それでは!」


ヴィーネ「そういえばタプちゃんが透けていたのも、直ったわね」

タプリス「はい、よかったです……」

サターニャ「別に、そんな急いで戻らなくても良いんじゃないの」

ラフィエル「あまり違う時代に長く干渉すると、未来が変わる可能性がありますから」

ガヴリール「そうだな。さっさと帰るぞ」

タプリス「お父さん、お母さん、お元気で……」



―タプリアンの内部―


 キコキコキコ

サターニャ「それで……なんでまた、私がこぐのよ!」

ガヴリール「お前しか、規定のスピードまで出せないからだっての」
27:2017/06/04(日) 21:59:40.399 ID:4kD2nuMA0.net
組織の少女「んーっ、んーっ」ギシギシ

ラフィエル「うふふ、大人しくしててくださいね」ニコッ

組織の少女「……ッ」ビクッ

ヴィーネ「ラフィ、怖いって……」


ガヴリール「えっと次は……あ、私たちの時代が設定されているみたいだな」

サターニャ「えぇー、もう終わり? つまんないわよ!」

ヴィーネ「サターニャったら、そんなワガママ言わないの!」

サターニャ「ほら、ここをこうしたら……ぽちっと」


 ピッ ピピッ

ガヴリール「おい馬鹿! お前勝手に何してんだ!」グイッ

サターニャ「何するのよ! 別にいいじゃない、ちょっとくらい!」グイッ

タプリス「やめてください、お二人とも!」


 バリッ バリバリバリッ

ガヴリール「やばっ、どっかに飛ぶぞ!」

タプリス「ひええええっ!」


 ピカァァァッ



―天界 天界病院前―


 キキーッ

ガヴリール「この大馬鹿サターニャ! なんてことしてくれたんだ!」

サターニャ「別にいいでしょ! 無事にどっか着いたんだし!」

ヴィーネ「ここは……病院かしら」

ラフィエル「えっと日時は……今から16年前の6月4日ですね」
28:2017/06/04(日) 22:01:38.000 ID:4kD2nuMA0.net
タプリス「そ、それって、わたしが生まれた日ですよ!」

タプリス「しかもここ、天界病院なので、まさにここで生まれたんです!」

ガヴリール「マジかよ……」

サターニャ「ふふっ、この大悪魔であるサタニキア様にかかれば、こんなものよ」

ラフィエル「そうですねぇ、無事にタプちゃんが生まれてきたかどうか」

ラフィエル「確認するくらいなら良いかもですね」

ヴィーネ「生まれたばかりのタプちゃんが見られるなら行きたい!」

ガヴリール「……ったく、しょうがないな。ちょっとだけだぞ」



―天界病院内 受付―


ラフィエル「あの、産婦人科でお世話になっている千咲のお見舞いに来たのですが」

受付「千咲さんですね。少々お待ちください」

タプリス「……き、緊張してきました」

ヴィーネ「まぁ、赤ん坊の自分に会うんだものね。仕方ないと思うわ」

サターニャ「それにしても、私やヴィネットが普通に入れてるわね」

ガヴリール「騒がなきゃ大丈夫だろ。たぶん」



―病室―


ラフィエル「お邪魔します」

天使の女性「えっ、あなたは確か、天使学校の舞踏会のときの……」

ラフィエル「はい。風のうわさで、お二人にお子さんがお生まれになると聞きまして」

ラフィエル「お祝いに伺ってしまいました」

天使の女性「わざわざ、ありがとうございます。この子が生まれたのは」

天使の女性「言うなれば、あなたたちのおかげですから」


赤ん坊「おぎゃあ、おぎゃあ……」
29:2017/06/04(日) 22:03:46.766 ID:4kD2nuMA0.net
ラフィエル「えっと、この子が?」

天使の女性「はい、元気な女の子で」

ガヴリール「よかったな、男の子じゃなくて」

ヴィーネ「もうガヴ、変な冗談はやめなさい」

天使の女性「よかったら、声をかけてあげてください」

ラフィエル「ほら、タプちゃん」

タプリス「えっ、あ、はい……」


赤ん坊「おぎゃあ、おぎゃあ……」

タプリス「あの、えっと……お、おめでとう、ございます」

タプリス「あなたが生まれてきてくれて、ほんとによかったです」

タプリス「これから、たくさん、いろいろ、辛いこともありますけど」

タプリス「それと同じくらい、楽しいこともありますから」

タプリス「がんばって、くださいね」ニコッ

天使の女性「ふふっ、ありがとうございます。この子も喜んでいるみたい」

タプリス「そ、そうですかね」

天使の女性「ええ。元気に育ってくれると良いんですけど」

タプリス「……それはきっと、大丈夫です」

天使の女性「えっ」

タプリス「わたしが、保証します。逆に元気すぎて、迷惑かけちゃうかも、です」

天使の女性「あははっ、子供はそのくらいの方がいいと思うわ」

タプリス「あ、ありがとうございます」

天使の女性「ん? どうして、あなたがお礼を?」

タプリス「い、いえ、何でもないですっ」
30:2017/06/04(日) 22:05:15.710 ID:4kD2nuMA0.net
ガヴリール「あとはこれ、出産祝いです」

天使の女性「これは……ペンダント?」

ガヴリール「はい」

天使の女性「ありがとうございます。この子が大きくなったら……」

天使の女性「私から渡してあげたいと思います」


ヴィーネ「ちょっとガヴ。あれ、大きい方のタプちゃんへの贈り物じゃ……」コソッ

ガヴリール「別にいいだろ、どっちにあげたって」

ヴィーネ「まぁ、ガヴがいいなら良いけど……」


ラフィエル「それでは、私たちはそろそろ失礼しますね」

天使の女性「はい、本当にありがとうございました」

天使の女性「みなさん、お元気で」ニコッ



―タプリアンの内部―


 キコキコキコ

サターニャ「赤ん坊、なかなか可愛かったじゃない」

ヴィーネ「サターニャの顔見たら、ピタッと泣き止んでたわね」

ガヴリール「面白い顔だからだろ」

サターニャ「誰が面白い顔ですって!!」

ガヴリール「いいから、黙ってこげ」

サターニャ「きーっ!」


タプリス「……」

ラフィエル「タプちゃん、大丈夫ですか?」

タプリス「はい。わたし、お母さんにあんな風に思われて生まれてきたんだなって」

タプリス「……わたしの両親があの二人で、本当に良かったです」

ラフィエル「そうですかそうですかぁ」
31:2017/06/04(日) 22:07:28.311 ID:4kD2nuMA0.net
バリッ バリバリバリッ


ガヴリール「よし、今度こそ、現代だな」

ヴィーネ「頑張ってサターニャ! もうひと踏ん張り!」

サターニャ「はぁぁぁっ!! いくわよぉぉぉぉっ!」


 キコキコキコーッ

 ピカァァァッ



―住宅街 工事現場付近―


 キキーッ

サターニャ「ぜぇ……ぜぇ、着いた、みたいね」

ヴィーネ「あ、あそこに、誰か倒れてるわ!」

ラフィエル「あれは、未来から来たタプちゃんです」

ガヴリール「くそっ! 全てが終わったあと、ってことか」

ガヴリール「もう少しだけ前の時間に戻ってれば……」

ラフィエル「私たちでは操作は無理ですし、仕方がありません……」

タプリス「は、早く開けてください!」


 ウィーン


ヴィーネ「タ、タプちゃん。彼女はもう……」

タプリス「ま、まだわかりませんよ!」ダッ


金髪の女性「……」

タプリス「しっかりしてください! 目を開けてください!」ユサユサ

タプリス「わたしたち、ちゃんと過去で、組織の陰謀を阻止したんです!」

タプリス「あなたのおかげで、こうして、わたしは生きているのに……」

タプリス「どうしてあなただけが……、ぐすっ……こんな目に……」

ラフィエル「タプちゃん……」

タプリス「お願いです……目を、目を開けてください……」
32:2017/06/04(日) 22:09:13.294 ID:4kD2nuMA0.net
金髪の女性「……んっ」

タプリス「えっ?」

金髪の女性「あれ、ここは……、そうか……わたし、撃たれて気絶して」

タプリス「あ、あぁっ……」


 ぎゅぅぅ

金髪の女性「……えっ、過去のわたし?」

タプリス「よかった……よくわからないけど、よかったぁ……」

金髪の女性「そうですか。計画の阻止、成功したんですね。ありがとうございます」

金髪の女性「それにしても、わたし、撃たれたはずなのにどうして……」ゴソゴソ


 カチャン

タプリス「こ、これは……ペンダント?」

金髪の女性「ええ、母親からもらった、大切なペンダントです」

金髪の女性「これが……銃弾から、わたしを守ってくれたんですね」


ヴィーネ「ガヴ、まさか……これを狙って?」

ガヴリール「……そんなの偶然に決まってるだろ」

ラフィエル「うふふ」


金髪の女性「それにしても、自分に自分が抱きしめられるって」

金髪の女性「なんだか不思議な感覚ですね」

タプリス「そ、そうですね」

金髪の女性「……ふふっ」

タプリス「あは、あははっ……」


サターニャ「はぁ……太ももがパンパンだわ」
34:2017/06/04(日) 22:11:25.940 ID:4kD2nuMA0.net
金髪の女性「それでは、わたしは自分の時代へ、帰ろうと思います」

金髪の女性「この組織の子も連れて」

組織の少女「んーっ」

ラフィエル「……」ニコッ

組織の少女「……ッ」ビクッ


ラフィエル「……それにしても、もう少しいろいろ、お話を聞きたかったです」

金髪の女性「それはあれです、長い干渉は厳禁ですから」

ラフィエル「ふふっ、そうですね」


金髪の女性「先輩のみなさん、協力してくださって、本当にありがとうございました」

ヴィーネ「ええ、タプちゃんも元気でね」

ガヴリール「未来の私を労るのを忘れずにな」

サターニャ「あの人力ペダルだけは、絶対に改良しなさい」

金髪の女性「あはは……善処します」


金髪の女性「そして、過去のわたし」

タプリス「は、はい」

金髪の女性「未来のわたしを知ったからといって」

金髪の女性「それに囚われることなんて、全くありません」

タプリス「えっ」

金髪の女性「あなたの可能性は無限大に広がっているんですから」

金髪の女性「あなたは、あなたの信じる道を進んでくださいね」

タプリス「わ、わかりました、ありがとうございます!」

金髪の女性「いい返事です」


タプリス「……あのっ、最後に一つだけ質問いいですか」

金髪の女性「なんでしょう」

タプリス「あ、あなたは何年後の未来から、来たんですか!?」


金髪の女性「ふふっ……、秘密です♪」
35:2017/06/04(日) 22:13:15.154 ID:4kD2nuMA0.net
バリッ バリバリバリッ

 ピカァァァッ


ヴィーネ「行っちゃったわね」

ガヴリール「ったく、大人になっても迷惑かけっぱなしだな、お前」

タプリス「ご、ごめんなさい……」

ラフィエル「まぁまぁ、タイムトラベルだなんて、貴重な体験ができましたし」

サターニャ「そうね、悪くなかったわ! 足パンパンだけど!」

ガヴリール「大人のあいつが、今必死になって、こいでるのを想像すると笑えるな」


ヴィーネ「はいはい、そのくらいにして。それじゃ、気を取り直して……」

ヴィーネ「タプちゃんのお家で、誕生日パーティしましょうか!」



―タプリスの家の前―


タプリス「ん? わたしの家の前に、なんだか大きな黒い車が……」

サターニャ「私、知ってるわ! あれ、金持ちが乗る車でしょ?」

ヴィーネ「あ、中から人が……」


運転手「お待ちしておりました、千咲様」

タプリス「えっ? わ、わたしですか!?」

運転手「はい、そうです。そして、ご学友の方々も」

ヴィーネ「え、私たちも?」

運転手「これより、誕生祝賀会の会場へご案内いたします」

タプリス「あの……、人違いではないですか?」

運転手「いえ、間違いございませんよ」

サターニャ「なになに、誕生祝賀会って、なんか楽しそう!」

タプリス「いったい何がどうなって……」
38:2017/06/04(日) 22:15:21.449 ID:4kD2nuMA0.net
―車内―


ガヴリール「今ネットで調べてみたんだが、大変なことになってるぞ」

ヴィーネ「大変なこと?」

ガヴリール「タプリス。お前の母親な、天界で一二を争う大女優らしい」

タプリス「えぇっ!? わたしのお母さんは、ごくごく普通の主婦ですけど……」

タプリス「あ、でも……昔、演劇をやっていたって聞いたことが」

タプリス「いったい何がどうなって……」

ガヴリール「……まさか、ラフィエル」

ラフィエル「……」ギクッ

ガヴリール「タプリスの母親にかけた暗示、解くの忘れただろ?」

ラフィエル「うふふ、いったいなんのことだか……」

ヴィーネ「つまり演劇の才能があって、性格が前向きになっちゃったから……」

ラフィエル「花、開いちゃったんですかねぇ……」


ガヴリール「……続報だ。その母親の英才教育を受けた娘も同じ道へと進み」

ガヴリール「その実力は今や折り紙つき。若くして、母親すら追い抜く勢いである」

ガヴリール「現代の超売れっ子、女優……」

ガヴリール「それが、千咲=タプリス=シュガーべル、とのことだ」

ガヴリール「そして今は……、天界と人間界を取り持つ、親善大使らしい」


タプリス「あ、頭が追いつきません……」

タプリス「た、たしかに、現代に戻ってきてから、少し違和感があったんです」

タプリス「知らないことをたくさん知ってるような、そんな感覚が……」

ラフィエル「落ち着いてください、タプちゃん」

ラフィエル「今はそうであっても、これから何をするかはタプちゃんの自由です」

ラフィエル「未来のタプちゃんも言ってたじゃないですか、可能性は無限大と」

タプリス「白羽先輩……。そ、そうですよね。自由なんですよね」
39:2017/06/04(日) 22:17:34.164 ID:4kD2nuMA0.net
―誕生祝賀会 ドーム会場―


 ワァァァッ キャァァァ タプリスチャァァァン


タプリス「……」パクパク

タプリスの母「遅かったわね、タプリス」

タプリス「お、お母さん。な、なんて豪華な格好を……」

タプリスの母「何を言ってるの。普通でしょう、これが」

タプリスの父「さあ、タプリス。こっちへ」


タプリス「て、天真先輩ぃ……」

ガヴリール「諦めろ。そして、受け入れろ」

ガヴリール「これがお前が勝ち取った、自分だ! そして、私に貢げ!」

タプリス「無茶苦茶ですぅ……」

ラフィエル「どうやら、この様子は全世界へ配信されているそうですね」

タプリス「えぇ……」

サターニャ「なんかこう、声援を送られるってのは、いい気分ね」

ヴィーネ「言っとくけど、サターニャに向けてじゃないからね……」


司会者『それでは、みなさんお待たせしました!』

司会者『誕生祝賀会の主役である、千咲=タプリス=シュガーベルちゃんの登場です!』


 キャァァァ ワァァァッ


タプリス(あぁ……もう、どうにでもなれです!)

タプリス「ど、どうもー」
40:2017/06/04(日) 22:19:55.278 ID:4kD2nuMA0.net
司会者『世界中のみなさん! 千咲=タプリス=シュガーベルちゃんへ……』

司会者『お祝いの言葉をどうぞ!!』


 『おめでとう! 千咲ちゃん誕生日おめでとう!』

 『タプリスちゃん! おめでとう!!』

 『おめでとぉぉぉぉぉぉぉっ!!』

 『おめでとうございます! 生まれてきてくれてありがとう!』

 ワァァァァッ キャァァァァ


タプリス(せ、世界中の人たちが、わたしの誕生日を祝ってくれるだなんて)

タプリス(正直、照れてしまいますけど……)

タプリス(でもこんなに、こんなに嬉しいことはありません)


ヴィーネ「ふふっ、誕生日おめでとう、タプちゃん」

サターニャ「私からの、おめでとう、という言葉に感謝しなさい、タプリス!」

ラフィエル「うふふ、おめでとうございます、タプちゃん」ニコッ

ガヴリール「また一つ年をとったな。おめでとさん、タプリス」



タプリス「お父さん、お母さん! かけがえのない先輩たち!」

タプリス「そして、現在過去未来、全ての世界で私と関わってくれた、みなさん!」


タプリス「今日はわたしのことを祝ってくれて……」

タプリス「ほんとに、本当に……」



タプリス「ありがとう、ございますぅぅぅぅぅ!!!!」



おしまい
41:2017/06/04(日) 22:21:28.647 ID:Ui8govb00.net

タプちゃん誕生日おめでとう
44:2017/06/04(日) 22:25:38.402 ID://ev6w3f0.net
引用元:http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1496579477