1: 2011/05/29(日) 21:23:59.42 ID:B3jEqWNwo
紬「私はそのお話知ってるわ~♪」
澪「そ、それって怖い話?」
梓「たしか夢の中で雪の降るお屋敷に誘われて~、というお話ですよね?」
律「お、梓知ってたのかー」
唯「私は初めて聞くよ。誘われたその後はどうなるの?」
律「…………死んだ人に会えるんだってさ」
澪「そ、それって怖い話?」
梓「たしか夢の中で雪の降るお屋敷に誘われて~、というお話ですよね?」
律「お、梓知ってたのかー」
唯「私は初めて聞くよ。誘われたその後はどうなるの?」
律「…………死んだ人に会えるんだってさ」
2: 2011/05/29(日) 21:25:04.08 ID:B3jEqWNwo
梓「こ、こんばんは」
唯「いらっしゃーい。こんな時間にどうしたのー?」
梓「大した用事じゃないんですけど。心配で……えっと……」
唯「そっかー。ありがとね!あずにゃん」
梓「……はい、唯先輩」
唯「せっかくだから上がっていってよー。今なら温かいお茶もついてくるよ!」
梓「じゃあお言葉に甘えてお邪魔させてもらいます」
唯「はい、お客様一名ご案内でーす」
梓「……」
唯「いらっしゃーい。こんな時間にどうしたのー?」
梓「大した用事じゃないんですけど。心配で……えっと……」
唯「そっかー。ありがとね!あずにゃん」
梓「……はい、唯先輩」
唯「せっかくだから上がっていってよー。今なら温かいお茶もついてくるよ!」
梓「じゃあお言葉に甘えてお邪魔させてもらいます」
唯「はい、お客様一名ご案内でーす」
梓「……」
3: 2011/05/29(日) 21:25:43.06 ID:B3jEqWNwo
唯「粗茶ですが」
梓「ありがとうございます」
唯「粗茶ですが?」
梓「はい、おいしいですよ」
唯「よかったー。普段お茶なんて淹れないから、ちょっと心配だったんだ」
梓「温度も適温だと思います。60℃ぐらいが一番おいしいんですよね」
唯「そうなの?適当にパパっとやったんだけど、ばっちりだったみたい!」
梓「……」
唯「どうかしたの?」
梓「いえ、別に……」
唯「変なあずにゃーん」
梓「ありがとうございます」
唯「粗茶ですが?」
梓「はい、おいしいですよ」
唯「よかったー。普段お茶なんて淹れないから、ちょっと心配だったんだ」
梓「温度も適温だと思います。60℃ぐらいが一番おいしいんですよね」
唯「そうなの?適当にパパっとやったんだけど、ばっちりだったみたい!」
梓「……」
唯「どうかしたの?」
梓「いえ、別に……」
唯「変なあずにゃーん」
6: 2011/05/29(日) 21:31:43.93 ID:B3jEqWNwo
澪「……死んだ人にか。ちょっと悲しい話だな」
紬「遠野物語にもお屋敷が出てくるお話があった気がするわ。たしかマヨイガだったかしら」
梓「どんなお話なんですか?」
紬「山奥に迷い込んだ人が立派な門構えのお屋敷たどり着くの」
律「そこには未練を残したお化けたちが彷徨うお化け屋敷だった!」
澪「ひっ!」
紬「ところが人もお化けもいないんですって。そのお屋敷から戻ってきた人はお金持ちになると言われてるわ」
唯「眠りの家のお話と違ってマヨイガはハッピーエンドなんだね」
梓「マヨイガ……迷い家……」
紬「実はうちのご先祖様もマヨイガから帰ってきて財をなしたのよ~」
律「よっしゃー!今からマヨイガにとっこうだー!」
澪「えぇ!?」
紬「うふふ、冗談よ♪」
梓「あ、あはは……」
紬「遠野物語にもお屋敷が出てくるお話があった気がするわ。たしかマヨイガだったかしら」
梓「どんなお話なんですか?」
紬「山奥に迷い込んだ人が立派な門構えのお屋敷たどり着くの」
律「そこには未練を残したお化けたちが彷徨うお化け屋敷だった!」
澪「ひっ!」
紬「ところが人もお化けもいないんですって。そのお屋敷から戻ってきた人はお金持ちになると言われてるわ」
唯「眠りの家のお話と違ってマヨイガはハッピーエンドなんだね」
梓「マヨイガ……迷い家……」
紬「実はうちのご先祖様もマヨイガから帰ってきて財をなしたのよ~」
律「よっしゃー!今からマヨイガにとっこうだー!」
澪「えぇ!?」
紬「うふふ、冗談よ♪」
梓「あ、あはは……」
7: 2011/05/29(日) 21:32:53.48 ID:B3jEqWNwo
唯「……あずにゃん?あずにゃんってば」
梓「す、すみません。ぼーっとしてました」
唯「悩み事かな?それならこの唯先輩どーんと頼っちゃって!」
梓「あの……」
唯「なーに?」
梓「憂は……元気ですか……?」
唯「それがまだ体調が悪いみたいなんだよー」
梓「……っ」
唯「どうしたの?顔色が悪いよあずにゃん」
梓「な、なんでもありません」
唯「まさか風邪!?」
梓「大丈夫です……大丈夫ですから……」
唯「うーん、ならいいんだけど。無理はしないでね?」
梓「はい、ありがとうございます」
梓「す、すみません。ぼーっとしてました」
唯「悩み事かな?それならこの唯先輩どーんと頼っちゃって!」
梓「あの……」
唯「なーに?」
梓「憂は……元気ですか……?」
唯「それがまだ体調が悪いみたいなんだよー」
梓「……っ」
唯「どうしたの?顔色が悪いよあずにゃん」
梓「な、なんでもありません」
唯「まさか風邪!?」
梓「大丈夫です……大丈夫ですから……」
唯「うーん、ならいいんだけど。無理はしないでね?」
梓「はい、ありがとうございます」
8: 2011/05/29(日) 21:33:29.91 ID:B3jEqWNwo
梓「そろそろお暇しますね」
唯「もうちょっとゆっくりしてけばいいのにー」
梓「両親が心配しますので。すみません」
唯「そっか。もう遅い時間だもんね。それに雨も降ってるし」
梓「最近ずっと雨続きですよね」
唯「そだね。なんだか気持ちまでじめじめじとじとしちゃうよ」
梓「……」
唯「早く晴れないかなぁ」
唯「もうちょっとゆっくりしてけばいいのにー」
梓「両親が心配しますので。すみません」
唯「そっか。もう遅い時間だもんね。それに雨も降ってるし」
梓「最近ずっと雨続きですよね」
唯「そだね。なんだか気持ちまでじめじめじとじとしちゃうよ」
梓「……」
唯「早く晴れないかなぁ」
9: 2011/05/29(日) 21:35:55.45 ID:B3jEqWNwo
律「……しかし、まさか実在するとはなぁ」
梓「私もびっくりです」
澪「私は早く帰りたい」
唯「ムギちゃんが今度の合宿先は眠りの家よ!って言ったときはびっくりしたよー」
紬「山奥に建てた別荘の近くにお化けが出るって噂のお屋敷があったから」
律「よくよく調べたら眠りの家の噂元だったと。いやー、さすがに雰囲気出てるな」ギシッギシッ
澪「律!床が腐ってるんだからあまり歩きまわる危ないぞ」
梓「もっと奥行きのあるお屋敷だって噂でしたけど、ほとんど崩れてますね」
律「だいぶ昔に建てられたんだろーな」
紬「噂ではこのお屋敷の地下に海のようにひろーい湖があるんですって」
澪「そこで死者に会うのか……」ゴクリ
唯「あ、私水着持ってくるの忘れちゃったよぉ」
梓「泳がないでください」
梓「私もびっくりです」
澪「私は早く帰りたい」
唯「ムギちゃんが今度の合宿先は眠りの家よ!って言ったときはびっくりしたよー」
紬「山奥に建てた別荘の近くにお化けが出るって噂のお屋敷があったから」
律「よくよく調べたら眠りの家の噂元だったと。いやー、さすがに雰囲気出てるな」ギシッギシッ
澪「律!床が腐ってるんだからあまり歩きまわる危ないぞ」
梓「もっと奥行きのあるお屋敷だって噂でしたけど、ほとんど崩れてますね」
律「だいぶ昔に建てられたんだろーな」
紬「噂ではこのお屋敷の地下に海のようにひろーい湖があるんですって」
澪「そこで死者に会うのか……」ゴクリ
唯「あ、私水着持ってくるの忘れちゃったよぉ」
梓「泳がないでください」
10: 2011/05/29(日) 21:37:17.85 ID:B3jEqWNwo
律「つまりそこが黄泉の国の入り口なのか?」
紬「たぶんそうだと思うわ。漢語では【黄泉】は【地下の泉】を意味しているくらいだし」
澪「この下に広大な泉が……。ちょっと想像できないな」
梓「どうせ噂話に尾ひれがついたんでしょう。よくあることです」
紬「でもこの近辺では幽霊屋敷ってことでけっこう有名なのよ、ここ」
澪「うぅ、そういう話はやめてくれぇ」
律「まだ昼間だぜ?きっとお化けも空気よんで出ねーよ」
唯「それにしてもムギちゃんは色々詳しいね。都市伝説とか好きなの?」
紬「そうなの!実は一時期はまっちゃってインターネットで調べたのよ~」
律「はは、意外とミーハーなんだな」
紬「あのね、あのね!このお屋敷には他にも色んな怖い話があってね!」
澪「もぉやだ~!」
紬「たぶんそうだと思うわ。漢語では【黄泉】は【地下の泉】を意味しているくらいだし」
澪「この下に広大な泉が……。ちょっと想像できないな」
梓「どうせ噂話に尾ひれがついたんでしょう。よくあることです」
紬「でもこの近辺では幽霊屋敷ってことでけっこう有名なのよ、ここ」
澪「うぅ、そういう話はやめてくれぇ」
律「まだ昼間だぜ?きっとお化けも空気よんで出ねーよ」
唯「それにしてもムギちゃんは色々詳しいね。都市伝説とか好きなの?」
紬「そうなの!実は一時期はまっちゃってインターネットで調べたのよ~」
律「はは、意外とミーハーなんだな」
紬「あのね、あのね!このお屋敷には他にも色んな怖い話があってね!」
澪「もぉやだ~!」
11: 2011/05/29(日) 21:39:03.80 ID:B3jEqWNwo
憂「みなさん、そろそろ行かないと帰りのバスがなくなっちゃいますよ」
律「もうそんな時間か。もっとゆっくり見て周りたかったけど仕方ないな」
紬「あっ!写真撮るの忘れてたわ!ちょっと待って!!」
澪「む、ムギ~」
梓「あはは、ほんとに好きなんですね」
唯「……憂はこういうの嫌い?」
憂「都市伝説のこと?」
唯「うん。怖いけどなんだか気になっちゃうよね」
憂「ふふ、お姉ちゃんはいつもそういって怖い番組見てるよね」
唯「そう!それに近い感じがするよ!」
憂「怖い物見たさだね。たしかに気になるかも」
唯「でしょ!?」
憂「怖い番組を見るときはいつも私にべったりだけど」
唯「そ、そのことはみんなにナイショだよ~」
憂「分かってるよ、お姉ちゃん」
律「もうそんな時間か。もっとゆっくり見て周りたかったけど仕方ないな」
紬「あっ!写真撮るの忘れてたわ!ちょっと待って!!」
澪「む、ムギ~」
梓「あはは、ほんとに好きなんですね」
唯「……憂はこういうの嫌い?」
憂「都市伝説のこと?」
唯「うん。怖いけどなんだか気になっちゃうよね」
憂「ふふ、お姉ちゃんはいつもそういって怖い番組見てるよね」
唯「そう!それに近い感じがするよ!」
憂「怖い物見たさだね。たしかに気になるかも」
唯「でしょ!?」
憂「怖い番組を見るときはいつも私にべったりだけど」
唯「そ、そのことはみんなにナイショだよ~」
憂「分かってるよ、お姉ちゃん」
12: 2011/05/29(日) 21:41:19.03 ID:B3jEqWNwo
憂「もしかして、今回合宿に誘ってくれたのも怖かったから?」
唯「そ、そんなことないよ~?」
憂「ほんとかなぁ?」
唯「ごめんなさい、怖かったからです」
唯「みんなもいるけど、やっぱり憂と一緒のときが一番落ち着くって言うか……」
憂「安心する?」
唯「うん。それにね……」
憂「それに?」
紬「……うん、ばっちりカメラに収めたわ!」
澪「じゃ、じゃあそろそろ帰ろう。バスが行っちゃうぞ」
梓「わわ、そろそろ時間危ないですよ」
律「おーい、帰るぞー。平沢シスターズー」
唯「はーい!行こ、憂」
憂「うん、お姉ちゃん」
唯「そ、そんなことないよ~?」
憂「ほんとかなぁ?」
唯「ごめんなさい、怖かったからです」
唯「みんなもいるけど、やっぱり憂と一緒のときが一番落ち着くって言うか……」
憂「安心する?」
唯「うん。それにね……」
憂「それに?」
紬「……うん、ばっちりカメラに収めたわ!」
澪「じゃ、じゃあそろそろ帰ろう。バスが行っちゃうぞ」
梓「わわ、そろそろ時間危ないですよ」
律「おーい、帰るぞー。平沢シスターズー」
唯「はーい!行こ、憂」
憂「うん、お姉ちゃん」
13: 2011/05/29(日) 21:43:57.84 ID:B3jEqWNwo
『落石が走行中のバスを直撃。先日の大雨が原因か』
8日夕方、山間部の道路を走るバスに落石が直撃し、同乗していた市立桜が丘高校に通う
女子生徒一名が死亡した。運転手や他の乗客にけが人はなく、
警察は先日の大雨が事故の原因ではないかとみて、調査を進めている。
女子生徒は部員たちと一緒に部活の合宿で訪れていた。
8日夕方、山間部の道路を走るバスに落石が直撃し、同乗していた市立桜が丘高校に通う
女子生徒一名が死亡した。運転手や他の乗客にけが人はなく、
警察は先日の大雨が事故の原因ではないかとみて、調査を進めている。
女子生徒は部員たちと一緒に部活の合宿で訪れていた。
17: 2011/05/31(火) 02:03:31.44 ID:1c46Gqnoo
律「よっ」
梓「どうも」
律「梓が部室に来るのも久しぶりだな」
梓「そうですね。律先輩とムギ先輩はいつも部室に?」
紬「最近はね」
律「そういや昨日唯の家に行ったって聞いたけど……。どうだった?」
梓「元気そうでしたよ。唯先輩は……」
律「……まだ受け入れられないか」
梓「正直、私だっていまだに信じられないですよ」
紬「……梓ちゃん」
梓「どうも」
律「梓が部室に来るのも久しぶりだな」
梓「そうですね。律先輩とムギ先輩はいつも部室に?」
紬「最近はね」
律「そういや昨日唯の家に行ったって聞いたけど……。どうだった?」
梓「元気そうでしたよ。唯先輩は……」
律「……まだ受け入れられないか」
梓「正直、私だっていまだに信じられないですよ」
紬「……梓ちゃん」
18: 2011/05/31(火) 02:04:51.21 ID:1c46Gqnoo
梓「澪先輩は?」
律「澪は……」
紬「ここのところは学校をお休みしてるの」
梓「そうですか」
律「どうしてこうなっちまったんだろーな」
紬「……私のせい、よね」
律「それを言うならあの合宿を許可した私の責任でもある」
紬「でも!」
律「もうこの話はやめよう。変なこと言って悪かったよ」
梓「ムギ先輩。今日はケーキはないんですか?」
紬「あ、うん。今準備するね」
律「澪は……」
紬「ここのところは学校をお休みしてるの」
梓「そうですか」
律「どうしてこうなっちまったんだろーな」
紬「……私のせい、よね」
律「それを言うならあの合宿を許可した私の責任でもある」
紬「でも!」
律「もうこの話はやめよう。変なこと言って悪かったよ」
梓「ムギ先輩。今日はケーキはないんですか?」
紬「あ、うん。今準備するね」
19: 2011/05/31(火) 02:06:24.84 ID:1c46Gqnoo
紬「……あ」
律「どした?もしかして忘れちゃったのか?」
梓「律先輩じゃないんですから」
律「はは、言ってくれるぜ」
紬「ケーキ……持ってき過ぎちゃった……」
梓「……」
紬「だめね、私。りっちゃん、梓ちゃん、余ったのはよかったら持って行って?」
梓「どもです」
律「私は澪に届けてやるかな」
律「どした?もしかして忘れちゃったのか?」
梓「律先輩じゃないんですから」
律「はは、言ってくれるぜ」
紬「ケーキ……持ってき過ぎちゃった……」
梓「……」
紬「だめね、私。りっちゃん、梓ちゃん、余ったのはよかったら持って行って?」
梓「どもです」
律「私は澪に届けてやるかな」
20: 2011/05/31(火) 02:07:33.96 ID:1c46Gqnoo
澪「……」
律「おっす、調子どうだ?」
澪「……」
律「ムギからケーキもらったんだ。一緒に食べよう」
澪「いい」
律「そう言うなって。澪ちゃんの大好きなショートケーキもあるぞー」
澪「……」
律「ここに置いとくから。後で食べてくれよ」
澪「……ブツブツ」
律「え?」
澪「……ねいりゃさよ、はたて」
律「おっす、調子どうだ?」
澪「……」
律「ムギからケーキもらったんだ。一緒に食べよう」
澪「いい」
律「そう言うなって。澪ちゃんの大好きなショートケーキもあるぞー」
澪「……」
律「ここに置いとくから。後で食べてくれよ」
澪「……ブツブツ」
律「え?」
澪「……ねいりゃさよ、はたて」
21: 2011/05/31(火) 02:08:05.73 ID:1c46Gqnoo
律「なんだよそれ。新作の歌詞か?」
澪「子守唄」
律「子守唄?」
澪「夢の中で聞こえる気がするんだ。雪の降るお屋敷の中で」
律「それって……」
澪「……なぁ」
律「な、なに?」
澪「律はいなくならないよな?」
律「……っ!!」
澪「子守唄」
律「子守唄?」
澪「夢の中で聞こえる気がするんだ。雪の降るお屋敷の中で」
律「それって……」
澪「……なぁ」
律「な、なに?」
澪「律はいなくならないよな?」
律「……っ!!」
24: 2011/05/31(火) 22:29:28.96 ID:1c46Gqnoo
律「ふぅ、ギリギリセーフだったー」
梓「これを逃すともうバスないですからね。間に合ってよかったです」
澪「今日は十分遊んだんだから、別荘に戻ったら早速……」
紬「怪談話に華を咲かせましょう♪」
唯「さんせー!」
澪「れ、練習に決まってるだろ!」
律「まぁまぁ、澪さん。今日くらいは大目にみてさ」
澪「ダメだダメだ!練習するんだ~!」
梓「澪先輩の言う通りです。ムギ先輩の別荘についたらまず練習です」
唯「えー」
梓「怪談話は夜にしましょう」
澪「あ、梓!?」
律「じゃあまずは練習頑張るかー!」
唯「おー!」
憂「ふふ、お姉ちゃんたら」
梓「これを逃すともうバスないですからね。間に合ってよかったです」
澪「今日は十分遊んだんだから、別荘に戻ったら早速……」
紬「怪談話に華を咲かせましょう♪」
唯「さんせー!」
澪「れ、練習に決まってるだろ!」
律「まぁまぁ、澪さん。今日くらいは大目にみてさ」
澪「ダメだダメだ!練習するんだ~!」
梓「澪先輩の言う通りです。ムギ先輩の別荘についたらまず練習です」
唯「えー」
梓「怪談話は夜にしましょう」
澪「あ、梓!?」
律「じゃあまずは練習頑張るかー!」
唯「おー!」
憂「ふふ、お姉ちゃんたら」
25: 2011/05/31(火) 22:31:02.64 ID:1c46Gqnoo
澪「うぅ、ムギがあんなこと言うから」
紬「ごめんなさい。私怪談話や都市伝説に目がなくて」
澪「それのどこがいいんだよ。ただ怖いだけじゃないか」
紬「実は【眠りの家】ともう一つとっておきの話があってね、それも話したいなの♪」
澪「と、とっておき……?」
紬「【地図から消えた村】のお話」
澪「タイトルからしてすごく怖そうじゃないか……」
紬「とある儀式に失敗した女の子が村人を皆殺しにしちゃうの」
紬「その村では永遠に明けない虐殺の夜が続いているというわ」
澪「お化けなんてないさお化けなんて嘘さ……ブツブツ」
紬「その儀式は……を殺して……一つになる……を鎮める」
澪「え?」
ドォオオオオン─────!!
紬「ごめんなさい。私怪談話や都市伝説に目がなくて」
澪「それのどこがいいんだよ。ただ怖いだけじゃないか」
紬「実は【眠りの家】ともう一つとっておきの話があってね、それも話したいなの♪」
澪「と、とっておき……?」
紬「【地図から消えた村】のお話」
澪「タイトルからしてすごく怖そうじゃないか……」
紬「とある儀式に失敗した女の子が村人を皆殺しにしちゃうの」
紬「その村では永遠に明けない虐殺の夜が続いているというわ」
澪「お化けなんてないさお化けなんて嘘さ……ブツブツ」
紬「その儀式は……を殺して……一つになる……を鎮める」
澪「え?」
ドォオオオオン─────!!
26: 2011/05/31(火) 22:31:51.20 ID:1c46Gqnoo
律「今日は梓こないな」
紬「そうね」
律「……暇だな」
紬「ねぇ、りっちゃん」
律「ん?」
紬「昨日澪ちゃんの家に行ったのよね。澪ちゃんどうだった?」
律「相変らずだったよ」
紬「そう……」
律「……」
紬「そうね」
律「……暇だな」
紬「ねぇ、りっちゃん」
律「ん?」
紬「昨日澪ちゃんの家に行ったのよね。澪ちゃんどうだった?」
律「相変らずだったよ」
紬「そう……」
律「……」
27: 2011/05/31(火) 22:33:20.87 ID:1c46Gqnoo
律「【眠りの家】の都市伝説ってさ。最後どうなっちゃうんだっけ?」
紬「夢を見ていた人が失踪しちゃうの」
律「最初は大きなお屋敷に迷い込む夢を見始める」
紬「雪の降る、何度も増築したような日本家屋ね」
律「そこで近しい死者に会うんだよな」
紬「ええ。中にはお屋敷の中で子守唄を聞いたり、顔を隠した葬列を見る人もいるそうよ」
律「……」
紬「りっちゃん?」
律「そして……失踪する……」
紬「それがどうかしたの?」
律「なんとなく気になってさ」
紬「ならいいのだけど」
律「なぁ、ムギ」
紬「なぁに?」
律「……雨、止まないな」
紬「……うん」
紬「夢を見ていた人が失踪しちゃうの」
律「最初は大きなお屋敷に迷い込む夢を見始める」
紬「雪の降る、何度も増築したような日本家屋ね」
律「そこで近しい死者に会うんだよな」
紬「ええ。中にはお屋敷の中で子守唄を聞いたり、顔を隠した葬列を見る人もいるそうよ」
律「……」
紬「りっちゃん?」
律「そして……失踪する……」
紬「それがどうかしたの?」
律「なんとなく気になってさ」
紬「ならいいのだけど」
律「なぁ、ムギ」
紬「なぁに?」
律「……雨、止まないな」
紬「……うん」
28: 2011/05/31(火) 22:34:54.90 ID:1c46Gqnoo
気がつくと、私はその屋敷の前にいた
空には灰色の雲が広がって、雪が降っている
ギィ──ギィ──
視線を前に戻す。どうやら屋敷の扉がたてる音のようだ
風もないのに、どうして開いたり閉じたりしているのだろう
一歩前進してみる
ギィ──ギィ──
おいでおいでするように扉がまた鳴く
普段ならあんなところ絶対入らない。律と一緒でも嫌だな……
空には灰色の雲が広がって、雪が降っている
ギィ──ギィ──
視線を前に戻す。どうやら屋敷の扉がたてる音のようだ
風もないのに、どうして開いたり閉じたりしているのだろう
一歩前進してみる
ギィ──ギィ──
おいでおいでするように扉がまた鳴く
普段ならあんなところ絶対入らない。律と一緒でも嫌だな……
29: 2011/05/31(火) 22:36:36.68 ID:1c46Gqnoo
──バタン
私が中に入るのと同時に扉は閉じられた
屋敷の中は所々置かれている蝋燭で薄っすらと照らされている
だけど深い暗い闇を全部消し去ることなんてできなくて
闇の中に何かが息を殺して潜んでいるようで
とても怖かった
……誰か側にいてほしい
これほど強く思ったことはない。誰かが側に
律が側にいてほしいと強く思った
私が中に入るのと同時に扉は閉じられた
屋敷の中は所々置かれている蝋燭で薄っすらと照らされている
だけど深い暗い闇を全部消し去ることなんてできなくて
闇の中に何かが息を殺して潜んでいるようで
とても怖かった
……誰か側にいてほしい
これほど強く思ったことはない。誰かが側に
律が側にいてほしいと強く思った
30: 2011/05/31(火) 22:38:30.30 ID:1c46Gqnoo
ゆっくりと歩をすすめる
……思えば小さい頃からいつも一緒だった
歩くたびに、ギシリギシリと床が薄気味悪い音を立てる
……同じ高校に入って、大学も同じ所に通って
蝋燭の炎が揺らめく
……これからもずっとずっと一緒だと思った
震える足に鞭打ってゆっくりゆっくりと
……だけど、ずっと一緒にはいられない
この先に、答えがある気がしたから
……一緒には……いられない
私は、屋敷の奥へ奥へと進んでいく
……思えば小さい頃からいつも一緒だった
歩くたびに、ギシリギシリと床が薄気味悪い音を立てる
……同じ高校に入って、大学も同じ所に通って
蝋燭の炎が揺らめく
……これからもずっとずっと一緒だと思った
震える足に鞭打ってゆっくりゆっくりと
……だけど、ずっと一緒にはいられない
この先に、答えがある気がしたから
……一緒には……いられない
私は、屋敷の奥へ奥へと進んでいく
31: 2011/05/31(火) 22:41:41.61 ID:1c46Gqnoo
分かってた、分かってたよ
あの事故で改めて思い知らされた
律とだってずっと一緒にいられないこと、いつかくる別れのこと
逃げるように、私は屋敷の奥へ進む
この先に律とずっと一緒にいられる方法がある気がしたから
ムギがバスの中で言った儀式のことが分かる気がしたから
二人が……一つになる儀式……
それがどんな方法か知らないけど、律とずっと一緒にいられるなら私は
……気がつくと、目の前に赤い蝶が舞っていた
あの事故で改めて思い知らされた
律とだってずっと一緒にいられないこと、いつかくる別れのこと
逃げるように、私は屋敷の奥へ進む
この先に律とずっと一緒にいられる方法がある気がしたから
ムギがバスの中で言った儀式のことが分かる気がしたから
二人が……一つになる儀式……
それがどんな方法か知らないけど、律とずっと一緒にいられるなら私は
……気がつくと、目の前に赤い蝶が舞っていた
32: 2011/05/31(火) 22:43:38.30 ID:1c46Gqnoo
ブルリと身を震わせた
窓の格子の向こうではしんしんと雪が降っている
ゆらゆら揺れる蝋燭の炎に照らされるのは、昔ながらの日本家屋の廊下
どうやら私も【眠りの家】に誘われてしまったらしい
そのうち私も、とは思っていたがこんなにも早くだとは夢にも思わなかった
「ここに澪がいるんだよな」
奥へと進む理由を口にしてはみたが、足は動かない
怖いものは怖いのだ。叶うなら夢が覚めるまでここで時間を潰したいのだけど
「そうも言ってられないか。私は澪に消えてほしくない……」
今度は足が動いた。少し震えているのは寒いからだということにしておこう
窓の格子の向こうではしんしんと雪が降っている
ゆらゆら揺れる蝋燭の炎に照らされるのは、昔ながらの日本家屋の廊下
どうやら私も【眠りの家】に誘われてしまったらしい
そのうち私も、とは思っていたがこんなにも早くだとは夢にも思わなかった
「ここに澪がいるんだよな」
奥へと進む理由を口にしてはみたが、足は動かない
怖いものは怖いのだ。叶うなら夢が覚めるまでここで時間を潰したいのだけど
「そうも言ってられないか。私は澪に消えてほしくない……」
今度は足が動いた。少し震えているのは寒いからだということにしておこう
33: 2011/05/31(火) 22:44:35.13 ID:1c46Gqnoo
屋敷の中はまったくの無音だった
何もかもが死んでしまっているのだろう
音がない、という理由だけでどうして私はこんなにも怯えているのか
この首筋にねっとりとからみつくような視線は何処からくるのか
辺りを見回しても、当然誰一人いやしない……いるわけがない……
だけど、もしかしたら蝋燭に照らされていないあの暗がりに潜んでいるのかもしれない
あそこの曲がり角に
天井の裏に
縁の下に
──カツーン
音が聞こえる
何もかもが死んでしまっているのだろう
音がない、という理由だけでどうして私はこんなにも怯えているのか
この首筋にねっとりとからみつくような視線は何処からくるのか
辺りを見回しても、当然誰一人いやしない……いるわけがない……
だけど、もしかしたら蝋燭に照らされていないあの暗がりに潜んでいるのかもしれない
あそこの曲がり角に
天井の裏に
縁の下に
──カツーン
音が聞こえる
34: 2011/05/31(火) 22:45:39.13 ID:1c46Gqnoo
──カツーン
何かを打ち付けるような
──カツーン
釘でナニカを穿つような
頭の中をよくないものが満たし始める
落ち着け。もしかしたら私と同じようにこの夢に囚われた人かもしれないじゃないか
──カツーン
そうだよ。この音だって何か事情があって
──カツーン
何かって何だよ。こんな不気味な屋敷でいったい何をしてるってんだ
──カツーン
こんな場所でこんな音を出してるやつなんて、気がふれてるか
……それはきっと
──カツーン──カツーン
ニンゲンジャナイ
何かを打ち付けるような
──カツーン
釘でナニカを穿つような
頭の中をよくないものが満たし始める
落ち着け。もしかしたら私と同じようにこの夢に囚われた人かもしれないじゃないか
──カツーン
そうだよ。この音だって何か事情があって
──カツーン
何かって何だよ。こんな不気味な屋敷でいったい何をしてるってんだ
──カツーン
こんな場所でこんな音を出してるやつなんて、気がふれてるか
……それはきっと
──カツーン──カツーン
ニンゲンジャナイ
35: 2011/05/31(火) 22:47:52.26 ID:1c46Gqnoo
いつの間にか、音がより鮮明に聞こえる
どうやってここまで来たかなんて覚えてない。知らず知らずのうちに歩を進めていたようだ
──カツーン
すぐそばで聞こえているのに、音の発生源が見当たらない
いっそ分からないままのほうがいい
だけど気持ちとは裏腹に、私は辺りを調べ始めていた
ふと思い立って、壁に耳をつけてみる
──カツーン
どうやら壁の中から聞こえるみたいだ
壁を伝ってぐるりと回ってみる
しかし、入り口らしいものは見つけることができなかった
壁周りの広さからするに、壁の中に小さな部屋があるのだろう
どうやってここまで来たかなんて覚えてない。知らず知らずのうちに歩を進めていたようだ
──カツーン
すぐそばで聞こえているのに、音の発生源が見当たらない
いっそ分からないままのほうがいい
だけど気持ちとは裏腹に、私は辺りを調べ始めていた
ふと思い立って、壁に耳をつけてみる
──カツーン
どうやら壁の中から聞こえるみたいだ
壁を伝ってぐるりと回ってみる
しかし、入り口らしいものは見つけることができなかった
壁周りの広さからするに、壁の中に小さな部屋があるのだろう
36: 2011/05/31(火) 22:48:40.10 ID:1c46Gqnoo
よくよく壁の周りを調べてみると、目の高さぐらいの位置に覗き窓があった
ここから中が見える
──カツーン
音は止まない。やめるなら今うちなのだろう
──カツーン
やめたいのに、やめるべきなのに私はどうして覗こうとしているのか
好奇心だろうか。それともあまりの恐怖に頭がおかしくなっているのか
理由はよく分からない
だけど、私はたしかにそれを見た
ここから中が見える
──カツーン
音は止まない。やめるなら今うちなのだろう
──カツーン
やめたいのに、やめるべきなのに私はどうして覗こうとしているのか
好奇心だろうか。それともあまりの恐怖に頭がおかしくなっているのか
理由はよく分からない
だけど、私はたしかにそれを見た
37: 2011/05/31(火) 22:49:56.35 ID:1c46Gqnoo
少女だった
10歳ぐらいだろうか。巫女服を着た少女が木槌を片手に一心不乱に
壁に何かを打ち付けている。後ろ姿だからそれが何のかはよく見えない
──カツーン
一定のリズムでよどみなく。少女は打ち続ける
……もういいだろ。答えは分かったんだ。今すぐここを離れよう
少女はなお打ち続ける
……早くここを離れるべきだ。さぁ行こう
音が止まる
ゆっくりと少女は後ろを振り返り、私を見た
その口元に笑みを浮かべながら
10歳ぐらいだろうか。巫女服を着た少女が木槌を片手に一心不乱に
壁に何かを打ち付けている。後ろ姿だからそれが何のかはよく見えない
──カツーン
一定のリズムでよどみなく。少女は打ち続ける
……もういいだろ。答えは分かったんだ。今すぐここを離れよう
少女はなお打ち続ける
……早くここを離れるべきだ。さぁ行こう
音が止まる
ゆっくりと少女は後ろを振り返り、私を見た
その口元に笑みを浮かべながら
38: 2011/05/31(火) 22:53:32.68 ID:1c46Gqnoo
少女がこちらへ近づいてくるさまは、釣り糸の切れた人形のように思えた
カクリ、カクリ……そんな音を立てるように……
後姿からは見えなかったが、壁に打ち付けていたのは杭みたいだ
細長く、文鎮よりも少し太めの杭
切っ先が鋭く尖っている
一瞬だったけど、側面には奇妙な文様が刻まれているのが見えた
……なんでそこまで知っているのかって?
少女が今、私の左目にその杭を当てているから
あと1cmでも動かせば、私の左目は潰れてしまう
でもしない。まだしない
少女を見る。笑ってる。笑ってるよこの子
木槌を持った手を大きく振り上げる少女
逃げたければどうぞ。逃げられればどうぞ
足も手もまぶたも動かない動けない。どうしてどうしてどうしてどうしてどう……
振り下ろす
カクリ、カクリ……そんな音を立てるように……
後姿からは見えなかったが、壁に打ち付けていたのは杭みたいだ
細長く、文鎮よりも少し太めの杭
切っ先が鋭く尖っている
一瞬だったけど、側面には奇妙な文様が刻まれているのが見えた
……なんでそこまで知っているのかって?
少女が今、私の左目にその杭を当てているから
あと1cmでも動かせば、私の左目は潰れてしまう
でもしない。まだしない
少女を見る。笑ってる。笑ってるよこの子
木槌を持った手を大きく振り上げる少女
逃げたければどうぞ。逃げられればどうぞ
足も手もまぶたも動かない動けない。どうしてどうしてどうしてどうしてどう……
振り下ろす
44: 2011/06/04(土) 16:21:35.18 ID:725PQOqKo
律「よっす」
梓「どうも」
律「昨日はどうしたんだ?部室にこないから心配したぜ」
梓「少し用事がありまして。心配かけてすみませんです」
律「ま、大したことないなら別にいーんだけどな」
紬「それよりりっちゃん大丈夫?今日はずっと具合が悪そうだったけど」
律「ちょっと夢見が悪かったんだよ。それだけ」
紬「ほんとにそれだけなの?」
律「ほんとだって。ムギは心配性だなー。私はこの通り大丈夫だぜー」
紬「そう……」
梓「どうも」
律「昨日はどうしたんだ?部室にこないから心配したぜ」
梓「少し用事がありまして。心配かけてすみませんです」
律「ま、大したことないなら別にいーんだけどな」
紬「それよりりっちゃん大丈夫?今日はずっと具合が悪そうだったけど」
律「ちょっと夢見が悪かったんだよ。それだけ」
紬「ほんとにそれだけなの?」
律「ほんとだって。ムギは心配性だなー。私はこの通り大丈夫だぜー」
紬「そう……」
45: 2011/06/04(土) 16:22:26.29 ID:725PQOqKo
梓「あの、先輩方に相談があるんですけど……」
律「お金を貸してくれってのはなしな」
梓「……」
律「……それで相談ってのは?」
梓「昨日また唯先輩の家に行ってきたんです」
律「唯、ね……」
梓「少し話しをしたんですが……。気になることを言っていまして」
紬「気になること?」
梓「毎晩夢を見ると言っていました」
律「そりゃ誰だってみるだろ。私だって見る。昨日見たのは最悪の悪夢だったけど」
紬「どんな夢を見るって言ってたの?」
梓「憂に会う夢だそうです」
律「お金を貸してくれってのはなしな」
梓「……」
律「……それで相談ってのは?」
梓「昨日また唯先輩の家に行ってきたんです」
律「唯、ね……」
梓「少し話しをしたんですが……。気になることを言っていまして」
紬「気になること?」
梓「毎晩夢を見ると言っていました」
律「そりゃ誰だってみるだろ。私だって見る。昨日見たのは最悪の悪夢だったけど」
紬「どんな夢を見るって言ってたの?」
梓「憂に会う夢だそうです」
46: 2011/06/04(土) 16:23:52.77 ID:725PQOqKo
この夢を見始めたのはいつ頃だったか
憂が病気になってからだったかな?うーん、記憶が曖昧だ
そういえば憂っていつ病気になったんだっけ?
これもよく思い出せない。でも思い出せないってことは思い出さなくてもいいことなのだろう
今考えなきゃいけないことは憂を探すことだ
大きくて暗ーいお屋敷の中で憂は一人きりなのだから
きっと寂しい思いをしてるに違いない
だから私が探してあげるんだ。そうだよ、憂を探してあげなきゃ
憂が病気になってからだったかな?うーん、記憶が曖昧だ
そういえば憂っていつ病気になったんだっけ?
これもよく思い出せない。でも思い出せないってことは思い出さなくてもいいことなのだろう
今考えなきゃいけないことは憂を探すことだ
大きくて暗ーいお屋敷の中で憂は一人きりなのだから
きっと寂しい思いをしてるに違いない
だから私が探してあげるんだ。そうだよ、憂を探してあげなきゃ
47: 2011/06/04(土) 16:25:05.25 ID:725PQOqKo
お屋敷の中はどこまでも静寂が続いていた
私の息遣い、足音、心臓の鼓動がなければ
私がここに存在することすら疑わしく思えるくらいの静寂
こんな寂しいところに憂は一人ぼっちなんだ
そう思うだけで、自分のことのように胸が苦しくなった
壁伝いにゆっくりと歩く。ときおり揺れる蝋燭が怖いお化けを……
と言ってもただの陰なんだけど。お化けを作って私を怖がらせる
「憂待っててね。今迎えにいくからね」
言葉にしてみると、少し気分が紛れた
それにちょっぴり勇気も出た気がする。うん、まだまだ頑張れるね
私の息遣い、足音、心臓の鼓動がなければ
私がここに存在することすら疑わしく思えるくらいの静寂
こんな寂しいところに憂は一人ぼっちなんだ
そう思うだけで、自分のことのように胸が苦しくなった
壁伝いにゆっくりと歩く。ときおり揺れる蝋燭が怖いお化けを……
と言ってもただの陰なんだけど。お化けを作って私を怖がらせる
「憂待っててね。今迎えにいくからね」
言葉にしてみると、少し気分が紛れた
それにちょっぴり勇気も出た気がする。うん、まだまだ頑張れるね
48: 2011/06/04(土) 16:26:16.12 ID:725PQOqKo
たくさんのお地蔵様が並ぶ中庭を横切って
注連縄が巻かれた気味が悪い木の周りを頑張って探して
だけど、憂は見つからない
憂の名前を呼んでも、空しくこだまするだけ
たしかにお屋敷の中へと入っていく憂を見たんだ
なのにどうして見つからないんだろう
私は膝を抱えてぺたりと床に座り込んだ
……
……
ああ、また寂しくなってきた
注連縄が巻かれた気味が悪い木の周りを頑張って探して
だけど、憂は見つからない
憂の名前を呼んでも、空しくこだまするだけ
たしかにお屋敷の中へと入っていく憂を見たんだ
なのにどうして見つからないんだろう
私は膝を抱えてぺたりと床に座り込んだ
……
……
ああ、また寂しくなってきた
49: 2011/06/04(土) 16:27:29.97 ID:725PQOqKo
……っ
声が聞こえた。ほんのかすかだけど
顔上げて声がする方へ耳をかたむける
あっち……さっき調べた木の方から聞こえてくるようだ
そういえば御札がびっしりと貼られて、開かない扉があったっけ
もしかしたらあの奥だろうか?
一度深呼吸。そして足に力を入れて立ち上がる
ちょっとふらついた。でもまだ平気
行かなかなきゃ……
声が聞こえた。ほんのかすかだけど
顔上げて声がする方へ耳をかたむける
あっち……さっき調べた木の方から聞こえてくるようだ
そういえば御札がびっしりと貼られて、開かない扉があったっけ
もしかしたらあの奥だろうか?
一度深呼吸。そして足に力を入れて立ち上がる
ちょっとふらついた。でもまだ平気
行かなかなきゃ……
50: 2011/06/04(土) 16:28:23.97 ID:725PQOqKo
御札びっしりの扉をにらみつける。開かない
当然か。手で開けなきゃいけないのだけど、触って呪われたりしないだろうか
ええい、そんなもの関係ない。どうとでもなれ
取っ手に手をかけて、えいっ!っと思いっきり引っ張る
さっきはビクともしなかった扉が嫌な音を立てて開いた
扉を開けるとそこはお屋敷の外だった。砂利が敷き詰められていて
大きな鳥居があって、その奥にはお社があって。まるで神社みたい
当然か。手で開けなきゃいけないのだけど、触って呪われたりしないだろうか
ええい、そんなもの関係ない。どうとでもなれ
取っ手に手をかけて、えいっ!っと思いっきり引っ張る
さっきはビクともしなかった扉が嫌な音を立てて開いた
扉を開けるとそこはお屋敷の外だった。砂利が敷き詰められていて
大きな鳥居があって、その奥にはお社があって。まるで神社みたい
51: 2011/06/04(土) 16:30:44.29 ID:725PQOqKo
お社の前で見知った人影を見る
「……お」
私が何か言い終える前に、奥へと消えてしまった
一瞬だったけど、あれたしかに……
でもどうして行ってしまったのだろう
一人で寂しくないのだろうか
私はこんなにも側にいてほしいのに
きっと同じ気持ちだと思っていたのに
私は走り出した
「……お」
私が何か言い終える前に、奥へと消えてしまった
一瞬だったけど、あれたしかに……
でもどうして行ってしまったのだろう
一人で寂しくないのだろうか
私はこんなにも側にいてほしいのに
きっと同じ気持ちだと思っていたのに
私は走り出した
52: 2011/06/04(土) 16:31:59.02 ID:725PQOqKo
紬「お茶どうぞ」
梓「ありがとうございます」
律「3人だとこの部室も広く感じるな」
梓「はい……」
紬「寂しいわね」
律「……っ」
紬「りっちゃん具合が悪いの?」
律「いや、なんでもない。それよりムギに聞きたいことがあるんだけど」
紬「何かしら?」
律「【眠りの家】について、もっと詳しく教えてくれないか?」
梓「まさか律先輩は唯先輩の夢が【眠りの家】と関係があると思ってるんですか?」
律「ちょっと気になってさ」
梓「あれは単なる都市伝説でしょう?関係があるとは思えません」
紬「そうとも言い切れないわ」
梓「え?」
梓「ありがとうございます」
律「3人だとこの部室も広く感じるな」
梓「はい……」
紬「寂しいわね」
律「……っ」
紬「りっちゃん具合が悪いの?」
律「いや、なんでもない。それよりムギに聞きたいことがあるんだけど」
紬「何かしら?」
律「【眠りの家】について、もっと詳しく教えてくれないか?」
梓「まさか律先輩は唯先輩の夢が【眠りの家】と関係があると思ってるんですか?」
律「ちょっと気になってさ」
梓「あれは単なる都市伝説でしょう?関係があるとは思えません」
紬「そうとも言い切れないわ」
梓「え?」
53: 2011/06/04(土) 16:33:15.31 ID:725PQOqKo
紬「【眠りの家】の都市伝説ってね、最初は精神医学関係者の間で囁かれていた都市伝説なの」
律「精神医学?一般大衆じゃなくて?」
紬「ええ。話の内容はこないだ話したとおり。同じ夢を見始め、ある日突然失踪する」
梓「で、でも所詮都市伝説ですよね?実際におこったわけじゃ……」
紬「それが事例が何件もあるのよ。主に1980年代の話ね」
律「マジかよ」
紬「ある日を境にぱったりと失踪騒ぎは起こらなくなったけど、実際にあった話よ」
梓「……信じられません」
律「やっぱり関係があるんじゃないか?」
梓「あ、ありえませんよ。非現実的すぎます」
律「実は澪のやつもさ、見てるんだ」
梓「【眠りの家】の夢をですか」
紬「……りっちゃんもじゃない?」
律「はは、ムギは鋭いな」
律「精神医学?一般大衆じゃなくて?」
紬「ええ。話の内容はこないだ話したとおり。同じ夢を見始め、ある日突然失踪する」
梓「で、でも所詮都市伝説ですよね?実際におこったわけじゃ……」
紬「それが事例が何件もあるのよ。主に1980年代の話ね」
律「マジかよ」
紬「ある日を境にぱったりと失踪騒ぎは起こらなくなったけど、実際にあった話よ」
梓「……信じられません」
律「やっぱり関係があるんじゃないか?」
梓「あ、ありえませんよ。非現実的すぎます」
律「実は澪のやつもさ、見てるんだ」
梓「【眠りの家】の夢をですか」
紬「……りっちゃんもじゃない?」
律「はは、ムギは鋭いな」
54: 2011/06/04(土) 16:34:15.14 ID:725PQOqKo
律「だから妙に気になっちゃったんだ、【眠いの家】のこと」
梓「そうだったんですか」
律「夢ん中で澪を見かけたんだけど、何かを必死に探してるみたいだった」
紬「……」
律「澪のおばさんに聞いた話だと、澪のやつ起きてる時間が短くなってるんだ」
梓「それって……」
律「このままいくと失踪しちまうかもな」
紬「……」
律「安心しろい。私が探し出して無理矢理たたき起こしてやるよ」
梓「そうだったんですか」
律「夢ん中で澪を見かけたんだけど、何かを必死に探してるみたいだった」
紬「……」
律「澪のおばさんに聞いた話だと、澪のやつ起きてる時間が短くなってるんだ」
梓「それって……」
律「このままいくと失踪しちまうかもな」
紬「……」
律「安心しろい。私が探し出して無理矢理たたき起こしてやるよ」
55: 2011/06/04(土) 16:35:04.00 ID:725PQOqKo
梓「でもどうして律先輩まで夢を見るようになったんでしょうか」
律「なんでだろうな。さっぱり分からない」
梓「ムギ先輩、なぜだか分かりませんか?」
紬「……それは」
律「知ってるのか?」
紬「広がっていくらしいの」
梓「……どういう意味でしょう」
紬「眠りに落ちた人が恋人や友人の夢を見ると、その人を眠りに誘ってしまう」
紬「眠りの家の悪夢はね、伝染するのよ……」
律「なんでだろうな。さっぱり分からない」
梓「ムギ先輩、なぜだか分かりませんか?」
紬「……それは」
律「知ってるのか?」
紬「広がっていくらしいの」
梓「……どういう意味でしょう」
紬「眠りに落ちた人が恋人や友人の夢を見ると、その人を眠りに誘ってしまう」
紬「眠りの家の悪夢はね、伝染するのよ……」
64: 2011/06/11(土) 16:41:33.96 ID:IuePtBKKo
ふと目が覚める。またこの夢
「夢の中で目が覚めるってのもおかしなもんだよなぁ」
自嘲気味に笑うがここではむなしいだけだな
唯がいたら、そうだねと一緒に笑いあってくれるだろうか
澪が側にいたら……
頭を振る。私は澪を助けにきたんじゃないか。感傷に浸ってる場合じゃない
今助けに行くからな、澪
「夢の中で目が覚めるってのもおかしなもんだよなぁ」
自嘲気味に笑うがここではむなしいだけだな
唯がいたら、そうだねと一緒に笑いあってくれるだろうか
澪が側にいたら……
頭を振る。私は澪を助けにきたんじゃないか。感傷に浸ってる場合じゃない
今助けに行くからな、澪
65: 2011/06/11(土) 16:44:44.91 ID:IuePtBKKo
壁を背にちょっと一息
どれぐらい歩き周ったろうか。私の体内時計では2時間は歩いた気がする
実際はその半分にも満たないのかもしれないけど
ちくりと、左目が痛んだ
咄嗟に手で覆うがすぐに痛みは引いた
……あんなことがあったのに私もよく頑張るよ
ニヤリと笑ってみる。少しでも恐怖がやわらげればいいなと願いながら
澪を助けたらしっかりと報酬を貰わないとなー。何がいいだろうか
ケーキ、パフェ……とにかく何かしら奢らせてやる!
ゆらり……視界の隅で何かが動いた……
どれぐらい歩き周ったろうか。私の体内時計では2時間は歩いた気がする
実際はその半分にも満たないのかもしれないけど
ちくりと、左目が痛んだ
咄嗟に手で覆うがすぐに痛みは引いた
……あんなことがあったのに私もよく頑張るよ
ニヤリと笑ってみる。少しでも恐怖がやわらげればいいなと願いながら
澪を助けたらしっかりと報酬を貰わないとなー。何がいいだろうか
ケーキ、パフェ……とにかく何かしら奢らせてやる!
ゆらり……視界の隅で何かが動いた……
66: 2011/06/11(土) 16:47:16.37 ID:IuePtBKKo
筋肉が硬直する。身体中に鳥肌がたつ。目の前が真っ暗になる
大声をあげて逃げ出すことができたらどんなに楽だろう
それは、いまだにゆらゆらとはためている。こちらに危害を加える気はないのか?
くだらない根拠もない腑抜けた考えだなと思う
ようやく頭が回り始めたところでそれを正面にとらえた
ゆらりゆらりとはためくそれは儚げで、どこか寂しそうだ
不思議と悪意は感じられない。まぁ私の直感なのだけど
まるで私が落ち着くのを待つように、ゆっくりとそれは舞っている
心細さと寂しさと怖さでつぶされそうな心は、いつの間にか平穏を取り戻していた
側にいてくれることがこんなにも嬉しいなんて
落ち着いたのを確認したのか、それはゆっくりと動き始めた。ついてこいってことか?
大声をあげて逃げ出すことができたらどんなに楽だろう
それは、いまだにゆらゆらとはためている。こちらに危害を加える気はないのか?
くだらない根拠もない腑抜けた考えだなと思う
ようやく頭が回り始めたところでそれを正面にとらえた
ゆらりゆらりとはためくそれは儚げで、どこか寂しそうだ
不思議と悪意は感じられない。まぁ私の直感なのだけど
まるで私が落ち着くのを待つように、ゆっくりとそれは舞っている
心細さと寂しさと怖さでつぶされそうな心は、いつの間にか平穏を取り戻していた
側にいてくれることがこんなにも嬉しいなんて
落ち着いたのを確認したのか、それはゆっくりと動き始めた。ついてこいってことか?
67: 2011/06/11(土) 16:48:34.66 ID:IuePtBKKo
………
紅贄祭……虚……
蝶に導かれて訪れた部屋には、ムギが言っていた儀式について書かれた本が
たくさんあった。儀式は虚という黄泉に通じる穴の前で行わなければいけないこと
二人が一つになるには……×が×を×して……
虚に投げ捨てる……
そして二人は一つになれる
私が律を……
誰かが優しく私の頭を撫でる。そんな気がした
顔をあげてあたりを見回す。誰もいない……
……視線を本に戻す
「儀式を……」
紅贄祭……虚……
蝶に導かれて訪れた部屋には、ムギが言っていた儀式について書かれた本が
たくさんあった。儀式は虚という黄泉に通じる穴の前で行わなければいけないこと
二人が一つになるには……×が×を×して……
虚に投げ捨てる……
そして二人は一つになれる
私が律を……
誰かが優しく私の頭を撫でる。そんな気がした
顔をあげてあたりを見回す。誰もいない……
……視線を本に戻す
「儀式を……」
68: 2011/06/11(土) 16:49:17.50 ID:IuePtBKKo
「澪っ!!澪ったら!!」
紅い蝶の後追って、澪を見つけることができたけど
澪は座敷牢の中に閉じ込められていた
机の上に置かれた本をぼんやりと眺めている。声を張り上げても澪の耳には届いていないのか
見向きもしてくれない。おまけに木の格子が澪との接触を阻む
手を伸ばしても、声を出しても届かないなんて……
「儀式……一つに……」
本を眺めながら何かつぶやいているが、よく聞き取れない
どうして私を見てくれないんだよ、澪
澪がとても遠くに思えた
紅い蝶の後追って、澪を見つけることができたけど
澪は座敷牢の中に閉じ込められていた
机の上に置かれた本をぼんやりと眺めている。声を張り上げても澪の耳には届いていないのか
見向きもしてくれない。おまけに木の格子が澪との接触を阻む
手を伸ばしても、声を出しても届かないなんて……
「儀式……一つに……」
本を眺めながら何かつぶやいているが、よく聞き取れない
どうして私を見てくれないんだよ、澪
澪がとても遠くに思えた
69: 2011/06/11(土) 16:49:49.51 ID:IuePtBKKo
パンパンと両手で顔を叩く。らしくない、らしくないよな
梓に約束したじゃないか。澪を助けるって
弱音を吐く暇があったら、ここから澪を出す方法を考えないと
座敷牢の扉には南京錠がかかっている。これがなければ今すぐにでも
扉を開けて、澪のやつを抱きしめてやるのに
とにかく、今はこいつをなんとかしないとな
よく見ると南京錠には蝶の紋様が彫られていた
これと対になる鍵がどこかにあるのだろう
澪を見る
相変らず本に夢中みたいだ。私がこんな近くにいるってのに
今度は振り返らない。私は走り出した
梓に約束したじゃないか。澪を助けるって
弱音を吐く暇があったら、ここから澪を出す方法を考えないと
座敷牢の扉には南京錠がかかっている。これがなければ今すぐにでも
扉を開けて、澪のやつを抱きしめてやるのに
とにかく、今はこいつをなんとかしないとな
よく見ると南京錠には蝶の紋様が彫られていた
これと対になる鍵がどこかにあるのだろう
澪を見る
相変らず本に夢中みたいだ。私がこんな近くにいるってのに
今度は振り返らない。私は走り出した
70: 2011/06/11(土) 16:51:37.15 ID:IuePtBKKo
鍵は思いのほかあっさりと見つかった
南京錠と同じ蝶の紋様が彫られた鍵だ。きっとこれで開くだろう
だけど、こういうキーアイテムはもっと何かしらのイベントを踏んでから見つかるんじゃないのか
と心の中でツッコミを入れる。何かしらのイベント……
例えば幽霊に追われてようやく見つけるとかさ
ゾクリと悪寒が走る。冗談じゃない。そんなものはゲームの中だけで十分だ
鍵探しに夢中で忘れかけていた恐怖がゆっくりと首をもたげる
左目の奥がジンジン熱い
落ち着け!深呼吸して呼吸を整えろ!
南京錠と同じ蝶の紋様が彫られた鍵だ。きっとこれで開くだろう
だけど、こういうキーアイテムはもっと何かしらのイベントを踏んでから見つかるんじゃないのか
と心の中でツッコミを入れる。何かしらのイベント……
例えば幽霊に追われてようやく見つけるとかさ
ゾクリと悪寒が走る。冗談じゃない。そんなものはゲームの中だけで十分だ
鍵探しに夢中で忘れかけていた恐怖がゆっくりと首をもたげる
左目の奥がジンジン熱い
落ち着け!深呼吸して呼吸を整えろ!
71: 2011/06/11(土) 16:52:43.75 ID:IuePtBKKo
ギシリ──
廊下で床が軋む
ギシリ──
気のせいじゃない。誰かがいるんだ
ギシリ──
近づいてきてる。澪か?
ギシリ──
そんなわけあるか!澪は閉じ込められてるんだぞ!
じゃあ誰が?生者の気配が全くしないこんな屋敷に
ギシリ──
ああ、分かってるんだ。認めたくないから、考えないようにしてその答えから逃げてる
ギシリ──
つまりそれは、……人間じゃない
廊下で床が軋む
ギシリ──
気のせいじゃない。誰かがいるんだ
ギシリ──
近づいてきてる。澪か?
ギシリ──
そんなわけあるか!澪は閉じ込められてるんだぞ!
じゃあ誰が?生者の気配が全くしないこんな屋敷に
ギシリ──
ああ、分かってるんだ。認めたくないから、考えないようにしてその答えから逃げてる
ギシリ──
つまりそれは、……人間じゃない
72: 2011/06/11(土) 16:54:38.10 ID:IuePtBKKo
足音は私のいる部屋の扉の前でぴたりと止まった
得体の知れないそれが今にも扉を開けて入ってきそうで私の足はガクガク震える
とにかく、とにかく何かしなきゃ。私に対抗する術はない
となると選択肢は逃げる、隠れるの二つにしぼられる
出口はあの扉しかないから逃げるのは無理。となるとあとは隠れやり過ごすしかない
震える足に力を入れて一歩踏み出す。なんとか足は動く
肝心の隠れる場所は……
そうだ、鍵を入っていた大きな箱があるじゃないか!あそこなら人一人入れるスペースがあった
急いで、しかし音をださないよう慎重に箱の蓋を開ける
横になればなんとか大丈夫そうだ
得体の知れないそれが今にも扉を開けて入ってきそうで私の足はガクガク震える
とにかく、とにかく何かしなきゃ。私に対抗する術はない
となると選択肢は逃げる、隠れるの二つにしぼられる
出口はあの扉しかないから逃げるのは無理。となるとあとは隠れやり過ごすしかない
震える足に力を入れて一歩踏み出す。なんとか足は動く
肝心の隠れる場所は……
そうだ、鍵を入っていた大きな箱があるじゃないか!あそこなら人一人入れるスペースがあった
急いで、しかし音をださないよう慎重に箱の蓋を開ける
横になればなんとか大丈夫そうだ
73: 2011/06/11(土) 16:55:55.01 ID:IuePtBKKo
扉の開く音がしたのは私が蓋を閉めたのとほぼ同時だった
ギシリ──
何かを探すように部屋をぐるぐると回っているようだった
床の軋む音がするたびに、ドクンと私の胸も大きく脈打つ
呼吸が乱れる。激しい動悸が、呼吸が漏れまいと胸に口に手を当てる
ギシリ──
どうか気付かれませんように、どうか、どうか!
バタン──
扉の閉まる音がやけに遠くに聞こえた。それからは一切の物音がしない
……行っちゃたみたいだな
額には嫌な汗がどっと噴出していた。早いとここの薄暗い箱から出たい
蓋を持ち上げる
それと目が合った
ギシリ──
何かを探すように部屋をぐるぐると回っているようだった
床の軋む音がするたびに、ドクンと私の胸も大きく脈打つ
呼吸が乱れる。激しい動悸が、呼吸が漏れまいと胸に口に手を当てる
ギシリ──
どうか気付かれませんように、どうか、どうか!
バタン──
扉の閉まる音がやけに遠くに聞こえた。それからは一切の物音がしない
……行っちゃたみたいだな
額には嫌な汗がどっと噴出していた。早いとここの薄暗い箱から出たい
蓋を持ち上げる
それと目が合った
74: 2011/06/11(土) 16:56:37.11 ID:IuePtBKKo
目が合ったような気がした。実際に目は長い髪の毛隠れていたし
何よりもその黒く長い黒髪が印象的だった
口は真一文字に結ばれている。それは、その女性は身動きせずにじっと私を見ている
さっきまであんなに熱かったのが嘘のように、背中からお腹から
黒くて何か冷たいものがじわりじわりと押し寄せてくる
それが全身に広がったあたりで、彼女は口を開いた
「やっと……見つけた……」
何よりもその黒く長い黒髪が印象的だった
口は真一文字に結ばれている。それは、その女性は身動きせずにじっと私を見ている
さっきまであんなに熱かったのが嘘のように、背中からお腹から
黒くて何か冷たいものがじわりじわりと押し寄せてくる
それが全身に広がったあたりで、彼女は口を開いた
「やっと……見つけた……」
82: 2011/06/12(日) 15:00:58.00 ID:yttRLiugo
ザアアア──
梓「雨止みませんね」
紬「ええ」
梓「律先輩は今日も?」
紬「お休み」
梓「そうですか……」
紬「昨日お見舞いに行ってお母様に窺ったのだけど、最近はずっと寝たきりだそうよ」
梓「きっと夢の中で澪先輩を探してるんですよ」
紬「……」
梓「それで律先輩まで迷子になっちゃったんです。律先輩らしいです」
紬「そうよね。りっちゃんは今でも夢の中で澪ちゃんを探しているのよね」
梓「はいです。だから律先輩を信じて待ちましょう」
梓「雨止みませんね」
紬「ええ」
梓「律先輩は今日も?」
紬「お休み」
梓「そうですか……」
紬「昨日お見舞いに行ってお母様に窺ったのだけど、最近はずっと寝たきりだそうよ」
梓「きっと夢の中で澪先輩を探してるんですよ」
紬「……」
梓「それで律先輩まで迷子になっちゃったんです。律先輩らしいです」
紬「そうよね。りっちゃんは今でも夢の中で澪ちゃんを探しているのよね」
梓「はいです。だから律先輩を信じて待ちましょう」
83: 2011/06/12(日) 15:01:36.18 ID:yttRLiugo
紬「憂ちゃん……唯ちゃんはどう?」
梓「憂も寝たきりです」
紬「きっと目覚めるわよね」
梓「大丈夫ですよ。ムギ先輩も言ってたじゃないですか」
紬「私が?」
梓「眠りの家の被害はある年を境になくなったって。だからきっと……」
紬「そうね、そうだったわ」
梓「だから待ちましょう」
紬「待つことしかできないのってつらいわね」
梓「……」
ザアアア──
梓「憂も寝たきりです」
紬「きっと目覚めるわよね」
梓「大丈夫ですよ。ムギ先輩も言ってたじゃないですか」
紬「私が?」
梓「眠りの家の被害はある年を境になくなったって。だからきっと……」
紬「そうね、そうだったわ」
梓「だから待ちましょう」
紬「待つことしかできないのってつらいわね」
梓「……」
ザアアア──
84: 2011/06/12(日) 15:03:12.26 ID:yttRLiugo
身体がやけに冷える。毛布蹴飛ばしちゃったのかな
モゾモゾと毛布を探すが見つからない。おかしいな、ベッドから落ちてしまったのだろうか
ゆっくりと瞼を開ける。……ああ、そういやあの後気絶しちゃったのか
意識を覚醒。辺りを見回す。うん、あの幽霊はいないみたいだ
ムクリと立ち上がってもう一度状況確認。変な音も聞こえないしほんとに大丈夫みたい
箱の中で気絶したはずなのに、私はいつの間にか座敷牢の前にいた
幽霊がここまで運んだのか?まさかな
座敷牢に目を向ける。机の前に座っていた澪の姿が見えない
奥に引っ込んじゃったのかな。澪のことだから怖くて隠れているのかも
その光景がありありと想像できて思わず笑ってしまった
「澪ー。律王子様が助けにきましたよー」
馬鹿だなと思いながらも努めて明るく言ってのけた
こんなこと言うと澪はいつも私を叩くんだっけ。何気に痛いんだよな、あのゲンコツ
モゾモゾと毛布を探すが見つからない。おかしいな、ベッドから落ちてしまったのだろうか
ゆっくりと瞼を開ける。……ああ、そういやあの後気絶しちゃったのか
意識を覚醒。辺りを見回す。うん、あの幽霊はいないみたいだ
ムクリと立ち上がってもう一度状況確認。変な音も聞こえないしほんとに大丈夫みたい
箱の中で気絶したはずなのに、私はいつの間にか座敷牢の前にいた
幽霊がここまで運んだのか?まさかな
座敷牢に目を向ける。机の前に座っていた澪の姿が見えない
奥に引っ込んじゃったのかな。澪のことだから怖くて隠れているのかも
その光景がありありと想像できて思わず笑ってしまった
「澪ー。律王子様が助けにきましたよー」
馬鹿だなと思いながらも努めて明るく言ってのけた
こんなこと言うと澪はいつも私を叩くんだっけ。何気に痛いんだよな、あのゲンコツ
85: 2011/06/12(日) 15:04:38.68 ID:yttRLiugo
澪はいなかった。座敷牢には隠れる場所もない
いつの間に出て行ったのだろう。第一鍵はしっかり閉まってたんだ
出られるはずがないのに。澪に会えると浮かれた自分が途端にみじめに思えた
……澪は私と会いたくないのかもしれない。心の中の弱気な私がつぶやく
そんなわけないと否定しても、弱気な私は消えてくれなくて何度も同じ言葉を繰り返す
目頭が熱くなる。なに泣いてんだ、私。だけどそれをせき止めることはできなかった
そしてまた、私は蝶を見る
ゆらり揺らめく紅い蝶
いつの間に出て行ったのだろう。第一鍵はしっかり閉まってたんだ
出られるはずがないのに。澪に会えると浮かれた自分が途端にみじめに思えた
……澪は私と会いたくないのかもしれない。心の中の弱気な私がつぶやく
そんなわけないと否定しても、弱気な私は消えてくれなくて何度も同じ言葉を繰り返す
目頭が熱くなる。なに泣いてんだ、私。だけどそれをせき止めることはできなかった
そしてまた、私は蝶を見る
ゆらり揺らめく紅い蝶
86: 2011/06/12(日) 15:05:29.47 ID:yttRLiugo
ぽちゃんと水がしたたる音がした
蝶がゆらりゆらりはためき暗い洞窟を照らしている
ムギが屋敷には地下洞があるとか言ってたっけ。ここがそうなのだろう
下へ下へと進むたびに頭が変なもので満たされていく気がする
考えがまとまらない。私はここに何をしにきたのか
──儀式を
そうだ、儀式をするんだ。でも誰と?
──私と
澪とだったかな。たしかそうだ
──そして
一つに
蝶がゆらりゆらりはためき暗い洞窟を照らしている
ムギが屋敷には地下洞があるとか言ってたっけ。ここがそうなのだろう
下へ下へと進むたびに頭が変なもので満たされていく気がする
考えがまとまらない。私はここに何をしにきたのか
──儀式を
そうだ、儀式をするんだ。でも誰と?
──私と
澪とだったかな。たしかそうだ
──そして
一つに
87: 2011/06/12(日) 15:06:45.60 ID:yttRLiugo
階段を下りて、いくつもの鳥居をくぐった先に私が探していた人がいた
後ろ姿だけど、暗くて分かりづらいけど間違えるものか。あれは私の親友
「やっときてくれた」
ああ、ずいぶん探したよ
「ねえ、律」
さあ一緒に帰ろうぜ。みんな澪のこと心配してる
「私はね、律のことが好き。これからもずっとずっと一緒にいたい」
いられるさ。だから……
「いられないよ。ずっと一緒になんていられない」
シャンシャン──
どこかで錫杖を鳴らす音が聞こえる。それは遠いようでとても近く
「分かってた。ほんとは分かってたんだ」
また頭がぼーっとしたきた。ぐらりと足元が揺れるような錯覚
シャンシャン──
錫杖の音がより近くに聞こえた
後ろ姿だけど、暗くて分かりづらいけど間違えるものか。あれは私の親友
「やっときてくれた」
ああ、ずいぶん探したよ
「ねえ、律」
さあ一緒に帰ろうぜ。みんな澪のこと心配してる
「私はね、律のことが好き。これからもずっとずっと一緒にいたい」
いられるさ。だから……
「いられないよ。ずっと一緒になんていられない」
シャンシャン──
どこかで錫杖を鳴らす音が聞こえる。それは遠いようでとても近く
「分かってた。ほんとは分かってたんだ」
また頭がぼーっとしたきた。ぐらりと足元が揺れるような錯覚
シャンシャン──
錫杖の音がより近くに聞こえた
88: 2011/06/12(日) 15:08:43.80 ID:yttRLiugo
いつからそこにいたのか、顔を隠した宮司たちが錫杖を力強く打ち鳴らす
シャンシャン──
意識が遠のく。頭がおかしくなる
「ずっと一緒にはいられない。律も気付いてたんだろう」
気付いてたよ。でも、言葉にするのが怖かった
「でもね、ずっと一緒にいられる方法を見つけたんだ」
本当?澪と一緒にいられるなら私はなんだってする
「律ならそう言ってくれると思ったよ」
シャンシャン──
澪は私の手を引いて、自身は石棺の上に寝そべる
何をするのだろう?もしかしてここで暮らすのかな?夢の中ならいつまでも一緒にいられるかもしれない
夢の中で澪と同居か。いいな、素敵だな
シャンシャン──
音が大きくなる
そして澪は私の耳元でつぶやいた
「殺して……」
シャンシャン──
意識が遠のく。頭がおかしくなる
「ずっと一緒にはいられない。律も気付いてたんだろう」
気付いてたよ。でも、言葉にするのが怖かった
「でもね、ずっと一緒にいられる方法を見つけたんだ」
本当?澪と一緒にいられるなら私はなんだってする
「律ならそう言ってくれると思ったよ」
シャンシャン──
澪は私の手を引いて、自身は石棺の上に寝そべる
何をするのだろう?もしかしてここで暮らすのかな?夢の中ならいつまでも一緒にいられるかもしれない
夢の中で澪と同居か。いいな、素敵だな
シャンシャン──
音が大きくなる
そして澪は私の耳元でつぶやいた
「殺して……」
89: 2011/06/12(日) 15:09:35.53 ID:yttRLiugo
シャンシャン──
小さい頃からずっと一緒だった。小学校も中学校も
シャンシャン──
同じ高校に入れたときは本当に嬉しかった。照れくさくて、うまく言えなかったけどな
シャンシャン──
笑ってる顔が好き。すねてる顔もかわいくて好き
シャンシャン──
だから苦しそうに顔を歪める澪がかわいそうで……なんだか悲しくて……
首を絞める手に一層力をこめた
小さい頃からずっと一緒だった。小学校も中学校も
シャンシャン──
同じ高校に入れたときは本当に嬉しかった。照れくさくて、うまく言えなかったけどな
シャンシャン──
笑ってる顔が好き。すねてる顔もかわいくて好き
シャンシャン──
だから苦しそうに顔を歪める澪がかわいそうで……なんだか悲しくて……
首を絞める手に一層力をこめた
90: 2011/06/12(日) 15:10:57.03 ID:yttRLiugo
澪の顔が安らかなものになる
ああ、よかったと手を離す。強く絞めたためか、首には赤い手のひらのあとがついていた
その形はまるで、羽を広げた……
宮司たちが澪を持ち上げる。何をするのだろう
何を?……私は澪に何をした?
私は今何を?あれ?あれ?あれ?
澪を助けるために今まで頑張ってた
必ず助け出して連れ戻すって梓にも約束したっけ
血の変わりに冷たいものが全身に駆け巡る。ドクンドクンと胸から全身に
宮司たちが澪を目の前に広がる大穴へと投げ入れた
おまえら何してんだよ?私の親友だぞ?
……声が出ない
私何してんだよ?私の親友だぞ?
……胸がぎゅうっと締め付けられる
おまえが……私が殺したのは……大切な、大好きな親友だったんだぞ!!
ああ、よかったと手を離す。強く絞めたためか、首には赤い手のひらのあとがついていた
その形はまるで、羽を広げた……
宮司たちが澪を持ち上げる。何をするのだろう
何を?……私は澪に何をした?
私は今何を?あれ?あれ?あれ?
澪を助けるために今まで頑張ってた
必ず助け出して連れ戻すって梓にも約束したっけ
血の変わりに冷たいものが全身に駆け巡る。ドクンドクンと胸から全身に
宮司たちが澪を目の前に広がる大穴へと投げ入れた
おまえら何してんだよ?私の親友だぞ?
……声が出ない
私何してんだよ?私の親友だぞ?
……胸がぎゅうっと締め付けられる
おまえが……私が殺したのは……大切な、大好きな親友だったんだぞ!!
91: 2011/06/12(日) 15:11:44.10 ID:yttRLiugo
ふらりふらり、澪が投げ捨てられた穴に近づく
その穴は何処までも暗くて、底なんて見えやしない
……底できらりと何かが光った
ふわりふわりと登ってくる
それはゆらりゆらりはためく紅い蝶
耳元で懐かしい、一番聞きたかった声がした
「ありがとう」
「澪おおおおおおー!!!!!」
その穴は何処までも暗くて、底なんて見えやしない
……底できらりと何かが光った
ふわりふわりと登ってくる
それはゆらりゆらりはためく紅い蝶
耳元で懐かしい、一番聞きたかった声がした
「ありがとう」
「澪おおおおおおー!!!!!」
96: 2011/06/13(月) 20:34:33.21 ID:fwxVCCwio
まるで海のようだった。ざぶんざぶんと引いては繰り返す波。地下にこんな場所があるなんて
ようやく見つけた大好きな人の影
長い螺旋階段を下りてここまできたのに、行く手をさえぎられてしまった
よどほ広いのか、向こう岸さえ見えない
彼岸……
そう、向こう岸は黄泉の国なんだろう。あっちに行けばきっと
「うっ」
頭痛がする。あっちに行けばなんだというのか。私は憂を探していたんじゃなかったか
憂……憂……?
違和感
ようやく見つけた大好きな人の影
長い螺旋階段を下りてここまできたのに、行く手をさえぎられてしまった
よどほ広いのか、向こう岸さえ見えない
彼岸……
そう、向こう岸は黄泉の国なんだろう。あっちに行けばきっと
「うっ」
頭痛がする。あっちに行けばなんだというのか。私は憂を探していたんじゃなかったか
憂……憂……?
違和感
97: 2011/06/13(月) 20:36:34.25 ID:fwxVCCwio
憂っていつから病気なんだっけ?そもそも憂の看病ってしたっけかな?
頭が軋む。これ以上考えることを拒むように
心臓が激しく脈打つ。汗がどっと噴出す
身体全体が抗う。嘘で塗り固めたメッキが剥がれ落ちてしまぬために
私が、それに到らぬために
海の上でゆらりと何かが動く。音も立てずゆっくりと、それは彼岸へと移動している
身体の震えが止まる。激しく打ち付けていた心の波は穏やかなものになっていた
間違いない、あれは……
「憂!!」
叫ぶ
「探したんだよ憂!一緒に帰ろうよ!」
波の音にかき消されてしまわないよう、もっと大きな声で
……だけど、私を見てはくれない
頭が軋む。これ以上考えることを拒むように
心臓が激しく脈打つ。汗がどっと噴出す
身体全体が抗う。嘘で塗り固めたメッキが剥がれ落ちてしまぬために
私が、それに到らぬために
海の上でゆらりと何かが動く。音も立てずゆっくりと、それは彼岸へと移動している
身体の震えが止まる。激しく打ち付けていた心の波は穏やかなものになっていた
間違いない、あれは……
「憂!!」
叫ぶ
「探したんだよ憂!一緒に帰ろうよ!」
波の音にかき消されてしまわないよう、もっと大きな声で
……だけど、私を見てはくれない
98: 2011/06/13(月) 20:37:44.84 ID:fwxVCCwio
いつまでも一緒にいたい。ずっとずっと一緒にいたいよ
だから置いていかないで。一人にしないで。一人は寂しいよ
それなのに、どうしてこっちを見てくれないんだろう?なんで私に気付いてくれないんだろう?
分かってるくせに……
「……っ!!」
何か叫ぼうとするがうまく声が出せない。涙が止め処なくあふれる。かたかたと身体が震えだす
二度会えないと思っていた私の大好きな人が目の前にいるんだ
もう会えない、その現実から逃げて自分の殻に閉じこもった
自分をだまして作り上げた儚い虚像。そうしないと私が壊れてしまうから
それだけ大好きだったんだ。私は、あの人が……
「唯お姉ちゃああん!!」
だから置いていかないで。一人にしないで。一人は寂しいよ
それなのに、どうしてこっちを見てくれないんだろう?なんで私に気付いてくれないんだろう?
分かってるくせに……
「……っ!!」
何か叫ぼうとするがうまく声が出せない。涙が止め処なくあふれる。かたかたと身体が震えだす
二度会えないと思っていた私の大好きな人が目の前にいるんだ
もう会えない、その現実から逃げて自分の殻に閉じこもった
自分をだまして作り上げた儚い虚像。そうしないと私が壊れてしまうから
それだけ大好きだったんだ。私は、あの人が……
「唯お姉ちゃああん!!」
99: 2011/06/13(月) 20:38:53.13 ID:fwxVCCwio
全身の力が抜け、ぺたりと座りこんでしまった
お姉ちゃんは、あのときの事故で私をかばって死んだ
だから私はお姉ちゃんになった。自分が傷つかないために
お姉ちゃんが身をていしてかばってくれたのにそれを忘れようとした
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
自分が情けなくて、お姉ちゃんが私のために犠牲になったことがつらくて
私の感情が決壊して、水滴となって頬を伝う
「憂……」
優しい声が私の頭をそっと撫でる
もう聞けないと思っていた、お姉ちゃんの声
お姉ちゃんは、あのときの事故で私をかばって死んだ
だから私はお姉ちゃんになった。自分が傷つかないために
お姉ちゃんが身をていしてかばってくれたのにそれを忘れようとした
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
自分が情けなくて、お姉ちゃんが私のために犠牲になったことがつらくて
私の感情が決壊して、水滴となって頬を伝う
「憂……」
優しい声が私の頭をそっと撫でる
もう聞けないと思っていた、お姉ちゃんの声
100: 2011/06/13(月) 20:40:43.35 ID:fwxVCCwio
「ごめんね、憂」
どうしてお姉ちゃんが謝るの?謝らなきゃいけないのは私なのに
「死んじゃってごめんね」
私こそごめんなさい!お姉ちゃんは私をがばって……!
「えへへ、あのときは夢中だったから」
私そのことすら忘れてお姉ちゃんのフリをして自分をだましてた!
「残されたほうがつらいものね……だからいいんだよ……」
おねぇちゃ……おねぇちゃん……
「憂には見えなくなっちゃうけど、お話できなくなっちゃうけどこれからずっと一緒にいるから」
ほんと?
「そばにいるよ。だから生きて憂。あなたの人生を、私の分まで」
でも寂しいよ、お姉ちゃん……
「憂は一人じゃないよ。憂を支えてくれる人がいるじゃない」
梓ちゃん……
「うん。それにね、私もそばにいるからね……」
待ってお姉ちゃん!やっぱり寂しいよ!お姉ちゃんともう話せないなんて嫌だよ!
おねえ…………!
どうしてお姉ちゃんが謝るの?謝らなきゃいけないのは私なのに
「死んじゃってごめんね」
私こそごめんなさい!お姉ちゃんは私をがばって……!
「えへへ、あのときは夢中だったから」
私そのことすら忘れてお姉ちゃんのフリをして自分をだましてた!
「残されたほうがつらいものね……だからいいんだよ……」
おねぇちゃ……おねぇちゃん……
「憂には見えなくなっちゃうけど、お話できなくなっちゃうけどこれからずっと一緒にいるから」
ほんと?
「そばにいるよ。だから生きて憂。あなたの人生を、私の分まで」
でも寂しいよ、お姉ちゃん……
「憂は一人じゃないよ。憂を支えてくれる人がいるじゃない」
梓ちゃん……
「うん。それにね、私もそばにいるからね……」
待ってお姉ちゃん!やっぱり寂しいよ!お姉ちゃんともう話せないなんて嫌だよ!
おねえ…………!
101: 2011/06/13(月) 20:41:46.75 ID:fwxVCCwio
紬「こんにちは」
梓「どもです」
紬「憂ちゃんはもういいの?」
梓「ええ、すっかり意識を取り戻したみたいです」
梓「唯先輩が死んだことも思い出しました」
紬「これで良かったのかしら……」
梓「夢の中で唯先輩に言われたんだそうです。私の分まで生きて欲しいと」
紬「そう」
梓「憂はもう大丈夫だと思います。もし何かあっても今度は私が唯先輩の分まで」
紬「うふふ、私もいるわよ?」
梓「はい。一緒に憂を支えてあげましょう」
紬「そうね」
梓「……正直憂がちょっと羨ましいです。私も、もう一度唯先輩に会いたかった」
紬「梓ちゃん……」
梓「急に変なこと言ってごめんなさい」
梓「どもです」
紬「憂ちゃんはもういいの?」
梓「ええ、すっかり意識を取り戻したみたいです」
梓「唯先輩が死んだことも思い出しました」
紬「これで良かったのかしら……」
梓「夢の中で唯先輩に言われたんだそうです。私の分まで生きて欲しいと」
紬「そう」
梓「憂はもう大丈夫だと思います。もし何かあっても今度は私が唯先輩の分まで」
紬「うふふ、私もいるわよ?」
梓「はい。一緒に憂を支えてあげましょう」
紬「そうね」
梓「……正直憂がちょっと羨ましいです。私も、もう一度唯先輩に会いたかった」
紬「梓ちゃん……」
梓「急に変なこと言ってごめんなさい」
102: 2011/06/13(月) 20:43:08.10 ID:fwxVCCwio
梓「ところで律先輩は具合はどうですか?」
紬「体調はいいみたいだけど、目覚めてから部屋に篭ったきりね」
梓「澪先輩も何処へ行ってしまったんでしょう」
紬「りっちゃんが何か知っていそうなのだけど、何も教えてくれないのよ」
梓「どうして分かるんですか?」
紬「澪ちゃんのことを聞くと、首を押さえてひどく怯えるの」
梓「首をですか?」
紬「そういえばりっちゃんの首に赤いあざがでてきていたわ」
紬「聞いても答えてくれないし。何か関係があるんじゃないかと思うのだけど」
梓「……澪先輩、早くみつかるいいですね」
紬「ええ」
紬「体調はいいみたいだけど、目覚めてから部屋に篭ったきりね」
梓「澪先輩も何処へ行ってしまったんでしょう」
紬「りっちゃんが何か知っていそうなのだけど、何も教えてくれないのよ」
梓「どうして分かるんですか?」
紬「澪ちゃんのことを聞くと、首を押さえてひどく怯えるの」
梓「首をですか?」
紬「そういえばりっちゃんの首に赤いあざがでてきていたわ」
紬「聞いても答えてくれないし。何か関係があるんじゃないかと思うのだけど」
梓「……澪先輩、早くみつかるいいですね」
紬「ええ」
103: 2011/06/13(月) 20:43:34.23 ID:fwxVCCwio
梓「そろそろ帰りましょうか」
紬「そうね。もう暗くなってきたし」
梓「私は帰りに憂の家に寄ってみます」
紬「私はまたりっちゃんの家に行ってみるわ。それじゃ行きましょう」
梓「はいです」
紬「……」
梓「──っ──っ」
紬「そうね。もう暗くなってきたし」
梓「私は帰りに憂の家に寄ってみます」
紬「私はまたりっちゃんの家に行ってみるわ。それじゃ行きましょう」
梓「はいです」
紬「……」
梓「──っ──っ」
104: 2011/06/13(月) 20:44:03.88 ID:fwxVCCwio
紬「梓ちゃん、今なんて?」
梓「ごめんなさい、今の鼻歌です」
紬「……子守唄のようだったけど」
梓「どこで聞いたのか、このメロディが頭から離れなくて」
梓「気がつくといつの間にか口ずさんでるんです」
紬「それって……」
梓「ねーやさーよー、はーたーてー……ねーやさーよー、はーたーてー……」
──ザアアア
梓「ごめんなさい、今の鼻歌です」
紬「……子守唄のようだったけど」
梓「どこで聞いたのか、このメロディが頭から離れなくて」
梓「気がつくといつの間にか口ずさんでるんです」
紬「それって……」
梓「ねーやさーよー、はーたーてー……ねーやさーよー、はーたーてー……」
──ザアアア
105: 2011/06/13(月) 20:53:55.45 ID:fwxVCCwio
これにておしまいです。お付き合いありがとうございました
少しでも怖いと思ってくれると嬉しいです
自分で言うのもなんだけど色々とひどいなあ
比喩下手だし、語彙が貧しいから同じような言い回しばかりだし
時系列もとびとびで分かりにくい……
大まかな流れは
眠りの家の話をする→合宿で眠りの家へ→帰りに落盤事故(唯死亡)→
唯が死んだ事実を受け入れず、憂ちゃん唯のフリ→憂、澪が夢を見始める→
律も夢を見始める→そして……
だいたいこんな流れです
原作の零と比較するとおかしな所があったりしますが、気付いても黙っててね!
反省点ばかりですがいい経験になりました
これを糧に精進します
少しでも怖いと思ってくれると嬉しいです
自分で言うのもなんだけど色々とひどいなあ
比喩下手だし、語彙が貧しいから同じような言い回しばかりだし
時系列もとびとびで分かりにくい……
大まかな流れは
眠りの家の話をする→合宿で眠りの家へ→帰りに落盤事故(唯死亡)→
唯が死んだ事実を受け入れず、憂ちゃん唯のフリ→憂、澪が夢を見始める→
律も夢を見始める→そして……
だいたいこんな流れです
原作の零と比較するとおかしな所があったりしますが、気付いても黙っててね!
反省点ばかりですがいい経験になりました
これを糧に精進します
107: 2011/06/14(火) 00:51:32.67
わかんないんだけど、澪死んで
律はその事実知っている。
ってことでいいの?
あと最後子守唄歌うのはどういう意味?
梓も眠りの国行くよってことで大丈夫?
律はその事実知っている。
ってことでいいの?
あと最後子守唄歌うのはどういう意味?
梓も眠りの国行くよってことで大丈夫?
109: 2011/06/14(火) 01:36:02.57
>>107
零をプレイしたら理解できると思うよ。
とりあえず、澪は律が首しめて殺した。
鎮メ唄を知ってるってことは梓も眠りの家に迷い込んでるってこと
零をプレイしたら理解できると思うよ。
とりあえず、澪は律が首しめて殺した。
鎮メ唄を知ってるってことは梓も眠りの家に迷い込んでるってこと
108: 2011/06/14(火) 00:52:02.06
お疲れ様でした。
コメントは節度を持った内容でお願いします、 荒らし行為や過度な暴言、NG避けを行った場合はBAN 悪質な場合はIPホストの開示、さらにプロバイダに通報する事もあります