1: 2020/06/05(金) 01:16:51.46 ID:KzHMXUyn0
お姉ちゃん「・・・・・・え、よく聞こえなかったからもう一回聞くね。大きくなったら結婚してくれる?」

男「やだ」

お姉ちゃん「・・・・・・え、よく聞こえなかったからもう一回聞くね」

男「RPGの無限ループみたいなことしても返事は変わらないよ」

お姉ちゃん「なんでなのっ!7歳児なのにっ!なんでうんっていってくれないの!?」

男「だってお姉ちゃんの料理ドブの臭いと鋼の味がするんだもん」

お姉ちゃん「ど、ドブっ!?鋼っ!?どうしてそんなひどいこと言うの!?」

男「さっきおなかいっぱいドブの臭いと鋼の味がするごはんを食べたからだよ?」オエッ

https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1591287411

2: 2020/06/05(金) 01:17:40.50 ID:KzHMXUyn0
お姉ちゃん(16)「男くん!お姉ちゃん料理上手になったよ!これで大きくなったら結婚してくれる?」

男(8)「やだ」

お姉ちゃん(16)「うーん、聞こえなかったからもう一回言うね。お姉ちゃん料理上手になったよ!」

男「これ去年もやったよ?毎年やるの?」

お姉ちゃん「大きくなったら結婚してくれる?」

男「まだ続けるんだ。やだよ」

お姉ちゃん「どうしてっ!?どうしてなのっ!?」

男「だってお姉ちゃんお掃除したらお部屋が汚くなるんだもん。ぼくお家の中で荒野を見たのはじめてだよ」

お姉ちゃん「なんでっ!?どうしてそんなこと言うの!?」

男「お姉ちゃんが掃除してたお部屋がボロボロになってたからだよ?」

3: 2020/06/05(金) 01:18:22.47 ID:KzHMXUyn0
お姉ちゃん(17)「男君!お姉ちゃんお掃除きれいにできるようになったよ!これで大きくなったら結婚してくれる?」

男(9)「やだ」

お姉ちゃん「ほら、男君がお泊りしてるお部屋もきれいきれいに」

男「掃除できるアピールされてもかわんないよ」

お姉ちゃん「前から思ってたけど男君は幼児らしからぬ発言をするよね」

男「姉さんがおんなじようなこと言ってたから」

お姉ちゃん「あの女っ!リアル姉だからって男くんに悪影響与えやがってっ!男くんはもっとピュアに育っていいんだよー?」

男「お姉ちゃんのことは純粋にうっとうしいと思ってるよ」

お姉ちゃん「どうして!?ひどいよ!?」

男「毎年のアピールがうっとうしいからだよ?」

4: 2020/06/05(金) 01:18:49.55 ID:KzHMXUyn0
お姉ちゃん(18)「男君。私は大和撫子を目指してお勉強中なの。これで大人になったらお嫁さんにしてくれますか?」

男(10)「やだ」

お姉ちゃん「男君のお世話もできるよ?ちゃんとお風呂のお世話とかね?腕がなくなって大変だろうだからお姉ちゃんがんばるよ?」

男「さっきそれ言ってガシガシやられてすっごい痛かった。こっちは左腕の切れ目がまだ痛いんだぞ!まだちゃんと傷が塞がってないんだぞ!」

お姉ちゃん「ご、ごめんね?い、痛かったの?」

男「うん」

お姉ちゃん「な、直すから!がんばって力加減覚えるから!」

男「覚えるまで痛いのはやだよ?」

5: 2020/06/05(金) 01:19:30.99 ID:KzHMXUyn0
お姉ちゃん(19)「男くん!お姉ちゃん介護士の資格取ったよ!これで男君の面倒をずっと見てられるよ!これで結婚できるね!」

男(11)「嫌だけど」

お姉ちゃん「なんでっ!?お姉ちゃん男君の身の回りのお世話できるよ!?左腕がない分もサポートするよ!?」

男「義手があるから大丈夫だよ」

お姉ちゃん「でもでも、お風呂にはもちこめないでしょ!」

男「父さんとか母さんとか姉さんとか妹とか義妹とかアリスとか女神がいるから大丈夫だよ」

お姉ちゃん「なんでっ!?どうしてそんなに男君にはお世話してくれる人がいるのっ!?」

男「いっしょに住んでる家族だし」

お姉ちゃん「お姉ちゃんも家族になる!男君のおうちにすむ!」

男「お姉ちゃんは自分の妹の事ももうちょっと顧みてあげて?あそこで泣いてるよ?」

お姉ちゃんの妹(18)「姉さん、私と一緒に暮らすのは嫌だったの・・・・・・?」ウルウル

お姉ちゃん「妹ちゃんも一緒に行こう!」

お姉ちゃんの妹「いやだけど」

お姉ちゃん「なんでっ!?」

男「いやだけど」

お姉ちゃん「なんでっ!?」

6: 2020/06/05(金) 01:20:08.72 ID:KzHMXUyn0
お姉ちゃん(20)「男君!お姉ちゃん、ついに妹ちゃんを説得したよ!これで一緒に暮らせるね!」

男「嫌だけど」

お姉ちゃん「なんでっ!?お姉ちゃんこの1年頑張って毎日説得し続けてきたんだよ!?妹ちゃんの好きなものいっぱい作ったんだよ!?」

男(12)「それ僕には関係なくない?」

お姉ちゃん「関係なくない!」

男「あと、ウチは義妹が嫌がってる」

お姉ちゃん「なんでっ!?」

義妹(11)「妹が増えるのは大歓迎だけど姉が増えるのはめんどくさいから嫌だ」

お姉ちゃん「姉が増えるのは男君が結婚できる歳になってからだから問題ないと思うな」

義妹「もっとやだ」

お姉ちゃん「なんでっ!?」

お姉ちゃんの妹「男君、なんとかしてこれを引き取ってくれない?お菓子あげるから」

男「いやだよ」

7: 2020/06/05(金) 01:21:07.48 ID:KzHMXUyn0
お姉ちゃん(21)「男君!私義妹ちゃんと仲良しになったよ!」

男(13)「それはよかった」

義妹「兄さん、この人面白いね」

男「めんどくさいけどね」

お姉ちゃん「これで大きくなったら結婚できるね!」

男「そういえばそういう話だった。嫌だけど」

お姉ちゃん「なんでーっ!?」

男「だってお姉ちゃん研究の為とか言って宝石ばっか集めてるからお金全然貯められないし」

義妹「財布のひもが緩い人はダメ」

お姉ちゃん「し、しかたないじゃん!研究資料なんだもん!お姉ちゃんあれ見て今職人としての腕磨いてるの!」

男「お姉ちゃんが宝石職人になりたくて努力してるのはすごいし尊敬するけど、それで生活費が足りなくなってうちの大叔母妹さんにお金を借りたのはどうかと思ってる」

義妹「生活にだらしない人は結婚に向いてないと思う」

お姉ちゃん「男くんも義妹ちゃんも正論ばっかり言うよね」

男「身内の事だからだよ?」

お姉ちゃん「お姉ちゃんが!?」

男「大叔母妹さんの方が」

8: 2020/06/05(金) 01:21:58.13 ID:KzHMXUyn0
お姉ちゃん(22)「男君!お姉ちゃんちゃんとお金返してついでにお店も始めることになったよ!これで結婚できるね!」

男(14)「無理だけど」

お姉ちゃん「どうしてっ!?」

男「僕、彼女できたし」

お姉ちゃん「!?!?!?!?!?」

彼女「どうも、男君の彼女です」

お姉ちゃん「!?!?!?!?!?」

男「浮気はできないなー」

お姉ちゃん「なんでっ!?なんでなにも言ってくれないの!?なんで私に報告してくれないの!?」

男「なんで報告しなきゃいけないの?」

彼女「『毎年プロポーズしてるんだからこれぐらい言ってくれてもいいじゃん』だって」

お姉ちゃん「なんで考えてることがバレてるの!?」

男「彼女、悟り系女子なんだ」

彼女「どうも、悟り系女子です」

お姉ちゃん「むむむむむむ、つまり撃退するにはえっちなことばっかり考えればいい!」

彼女「・・・・・・?これが、えっちなこと?」

お姉ちゃん「えっ?」

彼女「あの、男君で妄想するのはいいけど、本物はもっとねっとりと」

お姉ちゃん「わーーーーーんっ!男くんのバカーーーーーっ!」

男「・・・・・・あんまり情事のことはひけらかさないでほしいな」

彼女「ごめんなさい、つい」

男「・・・・・・あんまりねっとりするのは好きじゃなかった?」

彼女「気持ちいいから問題ないわよ」

お姉ちゃん「惚気るなーーーー!猥談するなーーーーー!」

男「まだいたんだ」

9: 2020/06/05(金) 01:23:18.84 ID:KzHMXUyn0
お姉ちゃん(23)「・・・・・・はぁ」

男(15)「どうしたの?」

お姉ちゃん「あ、男くん。最近ちょっとスランプでね。思ったようにカットができないの。形がちょっと変になっちゃってね」

男「えっと、宝石の話だよね?」

お姉ちゃん「うん。あとアクセサリーのデザインもうまくいかないし、そのせいであんまり売れないし・・・・・・」

男「お店も大変なんだね」

お姉ちゃん「妹ちゃんが頑張っていい原石仕入れてくれて、がんばって売ってくれてるのにこれじゃ面目が立たないよ・・・・・・はぁ」

男「うーん、お姉ちゃんのお店ってお姉ちゃんと妹さんの二人でやってるんだよね?」

お姉ちゃん「いや、今は三人だよ。一応オーナーは私がやってて、妹ちゃんが店長って感じ。あとはバイトの子が一人」

男「デザイナー雇ったりしないの?」

お姉ちゃん「それも考えたんだけど、雇ったところでなぁって感じで。私、正直デザインの事あんまりわかんないし、その人がほんとに良いデザインできるのかもわからないし・・・・・・」

男「難しいね。あ、でもうちのお婆ちゃんならデザイナーもやってるから、話聞けるかも」

お姉ちゃん「あ、そっか!あの人なら安心できる!うん、ありがと!一回お話してくるね!」

男「今おばあちゃんは多分広間でみんなと話してるからそこに行けばいいともうよ」

お姉ちゃん「ありがとう!じゃあ行ってくるね!」

男「いってらっしゃーい」

10: 2020/06/05(金) 01:24:20.73 ID:KzHMXUyn0
お姉ちゃん(24)「いやー、快調快調!アルバイトも増えたし、なにより男君の大叔母妹さんがデザイナー兼任で社員になってくれたのがすっごく助かってるよ!」

男(16)「それはよかった。スランプも脱出できた?」

お姉ちゃん「もちろん!もう過去最高の物ばっかりできてるよ!」

男「やっぱ精神的に参ってたんだね」

お姉ちゃん「多分ね。それに、去年男くんのお婆ちゃんとお話したでしょ?その時からウェディングドレスの装飾のお仕事とかを任されるようにもなってさ!売り上げも絶好調だよ!」

男「おお、お婆ちゃんやるなあ」

お姉ちゃん「やっぱり大きい仕事があると気持ちが良いね!ただ、忙しすぎてちょっと手が足りてないけど・・・・・・」

男「バイト二人と、妹さんとお姉ちゃん合わせて社員が三人だよね?合計五人か」

お姉ちゃん「バイトの子は来年度から社員に昇格かな。そのまま入ってくれるようになったの。ただ、宝石削れるの私だけだから・・・・・・」

男「ああー」

お姉ちゃん「需要に対する供給が追い付かないんだよね。こればっかりはどうにもならないし仕方ないけどさ」

男「職人を育てるとかは?」

お姉ちゃん「それもそろそろ考えないといけないかな。バイトちゃんに声かけてみるか・・・・・・」

11: 2020/06/05(金) 01:25:08.14 ID:KzHMXUyn0
お姉ちゃん(25)「はい、男くん。これ今年のお給料ね」

男(17)「年が明けてすぐにバイトも入ってないのに給料を渡すのはどうかと思うんだ。それも年棒」

お姉ちゃん「だって!男くん貴重な職人見習いさんなんだよ!?私と違って売るのも得意だし!絶対に逃がしたくないの!」

男「そこまで買ってくれるのは嬉しいけどさ」

お姉ちゃん「いやー、これでウチのお店も安泰だなー。どっかで経営権も男くんに移せば完璧!」

男「いや、流石にそこまでは」

大叔母「あら、ダメですよ?男君にはウチの会社を継いでもらいますから」

男「大叔母さん」

お姉ちゃん「でたなっ!コミュ力オバケっ!」

大叔母「製菓会社を作って60年目、後継ぎに相応しい子として5歳のころから教育してきたんですから!」

男「遊んでただけだけど」

お姉ちゃん「私だって男君に宝石の種類とか石言葉とか覚えてもらうためにいろいろ仕込んだもん!男君のお家のトイレには宝石年表みたいなのが貼ってあるもん!」

男「五女に九九を覚えさせるために6月から九九表に変えたよ」

大叔母「ウチの会社の役員さんたちもちっちゃい頃から男くんのこと見てるから孫みたいに扱ってくれてますし!引継ぎに関しては満場一致ですよ!」

男「みんなお菓子くれるけど製菓会社が他社のお菓子を渡してくるのはどうなんだろう」

お姉ちゃん「うちだって男君の身内とか部活の先輩とか引き入れてるもん!負けないもん!」

大叔母「その身内私の妹なんですけど!」

男「あの、2人ともそこらでいったん落ち着いて」

彼女「男君にはウチの古書店を継いでもらいますので」

男「火にガソリンをぶちまけるな!」

12: 2020/06/05(金) 01:25:37.19 ID:KzHMXUyn0
お姉ちゃん(26)「男君!もうすぐ高校卒業だね!おめでとう!」

男(18)「う、うん。なんで今言ったの?」

お姉ちゃん「え?そういう気分だったからだよ?」

男「大学も地元だしバイトもそのまま続けるからいちいち新年会で言わなくても別に3月でよかったんじゃ」

お姉ちゃん「男くんはいつもそうやって正論で私をいじめるよね」

男「お姉ちゃんのマイペースにこっちが巻き込まれてるからだよ?」

お姉ちゃん「どうして?どうしてそんなこと言っちゃうの?マイペースなのはお姉ちゃんの個性だってみんな言ってくれるのに」

男「みんな対岸の火事だからそう言ってるんだよ」

13: 2020/06/05(金) 01:26:25.61 ID:KzHMXUyn0
お姉ちゃん(27)「男君!原点回帰だよ!もう結婚できる歳だから結婚しちゃおう!」

男(19)「僕彼女いるしまだ学生だしお姉ちゃんと結婚する気ないしだからやだ」

お姉ちゃん「どうしてすら潰してくるね」

男「お姉ちゃんが言いだしそうなことはわかってるから」

お姉ちゃん「ツーカーの仲ってやつだね!」

男「・・・・・・」

お姉ちゃん「あれ?」

男「ああ、あれか。阿吽の呼吸とか以心伝心とか的な」

お姉ちゃん「え、もしかして今言葉の意味が分からなかったの?あんなに成績優秀な男君が?」

男「ぶっちゃけツーカーの仲とか死語だよ。もう誰も言わないって」

お姉ちゃん「じぇ、ジェネレーションギャップ・・・・・・じゃあなんて言うのさ!」

彼女「熟年夫婦とかかしら」

男「声をかけただけで伝わる感じだね」

お姉ちゃん「そんなの本物の彼女さんが来たら勝てるわけないじゃんか!覚えてろー!」

彼女「楽しい人よね」

男「まあね」

14: 2020/06/05(金) 01:27:25.83 ID:KzHMXUyn0
お姉ちゃん(28)「男くん!おねえちゃんともっとかりゃむ!」

男(20)「はいはい、わかったから。近い。酒臭い」

お姉ちゃんの妹「男君はなんれのまないの!?のめるんれしょ!?」

男「妹さんも落ち着いて。僕は普通に飲んでます」

お姉ちゃん「妹とばっかりゃめ!おねえちゃんとかりゃむ!」

男「はぁ、コブラツイストでいい?」

お姉ちゃん「あり!」

男「ありなのかよ」

大叔母「おー、相変わらず潰れてますね。男君、大丈夫ですか?」

男「うん、酔っ払いは姉さんで慣れてるから」

大叔母「男君のお姉ちゃんも向こうで潰れてますし・・・・・・ウチのお姉ちゃんも酔ってめんどくさいことになってますし。姉ってお酒に弱い生き物なんでしょうかね」

男「叔母さんも一応姉じゃんか」

大叔母「戸籍上は3女ですけど本来の血縁上は末っ子なんですよ。今の姉妹全員義姉妹ですし」

お姉ちゃん「大叔母さん!のんれないの!?」

大叔母「飲んでますよ。嗜む程度に」

男「・・・・・・ウィスキーをジョッキストレートで飲むのが嗜む程度?」

15: 2020/06/05(金) 01:29:07.67 ID:KzHMXUyn0
お姉ちゃん(29)「男君!もうすぐ就活の時期だね!ウチのお店は男君のために経営者の席を開けてるよ!」

男(21)「そのままその席に座っててよ」

お姉ちゃん「んー、そうは言われてもさ。私、経営者には向いてないと思ってるんだ」

男「なんで?」

お姉ちゃん「知っての通り私はちゃらんぽらんだしさ。宝石屋をやってるのも自分で作った宝石を色んな人に売りたいって思っただけだから」

お姉ちゃん「だから、最初の方は全然うまくいってなかったのも知ってるでしょ?」

男「まあ、うん」

お姉ちゃん「でもね、男君のアドバイスっていうか鶴の一声っていうか、あれのおかげで経営も建て直せたし、私自身も立ち直れたんだ」

お姉ちゃん「男君自身もうちでアルバイトを高校1年生の終わりごろから始めてくれてもうすぐ5年。男君の営業トークは主に男性客にぶっ刺さりです。プロポーズを考えてる人とかね」

お姉ちゃん「きっと、男君のおかげで人生がうまくいったって人もたくさんいるの。だから、私はこのまま男君に働いていて欲しい」

男「・・・・・・」

お姉ちゃん「男君、私や男君の大叔母さんにずっと目を掛けてもらってるからって経営学部を選んだんだよね。経営について勉強してくれたんだよね」

男「それ、誰にも言ってなかったはずなんですけど」

お姉ちゃん「彼女ちゃんに聞いたよ?」

男「ったく、胸に秘めておきたかったのに」

お姉ちゃん「まあそういうわけだからさ。私が経営をするよりも、男君がやった方がきっとうまくいくの。それが、7年間経営者としてやってきた私の判断」

お姉ちゃん「もちろん、最終的に決めるのは男君だからさ。無理強いはできないよ。だけど、考えていてほしいな。町の小さな宝石屋さんで経営者をするっていう選択を」

男「・・・・・・うん」

16: 2020/06/05(金) 01:30:16.31 ID:KzHMXUyn0
男「お姉ちゃん、話があるんだ」

お姉ちゃん「うん。なにかな?」

男「・・・・・・僕、大叔母さんの会社に行くことに決めたんだ」

お姉ちゃん「っ!・・・・・・そっか。残念だなぁ」

男「・・・・・・ごめん」

お姉ちゃん「ううん、謝ることなんてないよ。男君はさ、それを悩んで悩んで、悩みぬいた末にそれを選んだんだから。むしろ感謝だよ。あんな大企業と、こんな小さな個人店で悩んでくれて」

男「でもさ、5年以上働かせてもらってて――」

お姉ちゃん「それ以上はダメ」

男「え?」

お姉ちゃん「男君が義理堅い人なのは知ってるよ。でもね、働くってことはそれだけじゃやっていけないの」

お姉ちゃん「世の中には悪い人がたくさんいる。申し訳ないって気持ちを利用しようとしてくる人がたくさんいる。正しい人を騙そうとする人がたくさんいる」

お姉ちゃん「男君の大叔母さんの会社の人たちは、いい人ばっかりだよね。それは、あの人がそういう人を選んで会社に入れているから」

お姉ちゃん「でも、心優しいあの人も、会社や会社の人たちを守るためにどこかで不義理なことをしている。全部を拾うことはできないから、どこかで切り捨てているものがある」

お姉ちゃん「これから男君が身につけないといけないのはそういうところなの。大企業の社長さんになるんだから、物事に優先順位をつけないといけないの」

お姉ちゃん「そして、その第一歩が今回のことだった。だから男君は自分の選んだ道を謝るだなんてことはしちゃいけないんだよ」

男「・・・・・・お姉ちゃん」

お姉ちゃん「これが、小さいながらもお店の経営者としてやってきたお姉ちゃんからのアドバイスだよ。これで貸し借りはなしだからね」

男「え、貸し借り?」

お姉ちゃん「うん。以前、私が悩んで迷っていた時は男君が助けてくれたから。その分のお返し」

男「ええ、そんなつもりは」

お姉ちゃん「そんなつもりでいいの。だからがんばれ、男くん!これから、もっともっと大変だからね!生半可な覚悟でやらないように!」

男「・・・・・・うん!」

17: 2020/06/05(金) 01:31:12.55 ID:KzHMXUyn0
お姉ちゃん「・・・・・・だめ、だったかぁ」

お姉ちゃんの妹「もっと押してみればよかったのに」

お姉ちゃん「ううん。そんなことできないよ。ここは男君みたいな人が収まる器じゃないから」

お姉ちゃんの妹「そんなこと言っちゃって。後悔してない?」

お姉ちゃん「・・・・・・してる」

お姉ちゃんの妹「ほら」

お姉ちゃん「私は、一度も選ばれなかった。男君のお嫁さんにもなれなかったし、男君に後継者になってもらうこともなかった」

お姉ちゃん「・・・・・・でも、よかったの。これで、よかったの」

お姉ちゃんの妹「ほんとに?」

お姉ちゃん「ほんとだよ!だって、だって・・・・・・だって!」

お姉ちゃん「男君、幸せになってるんだもん!きれいでかしこい恋人さんや、世界に名だたる大企業の社長の座!それが手に入るんだよ!?100人が聞いたら100人が幸せだって言える人生を歩んでるんだもん!」

お姉ちゃん「だから、私は選ばれちゃいけなかったんだよ・・・・・・これで、よかったの・・・・・・」

お姉ちゃんの妹「姉さん・・・・・・」

お姉ちゃん「でも、でも・・・・・・寂しいよぉ・・・・・・男君、私、寂しいよ・・・・・・私、お姉ちゃんじゃいられなくなっちゃう・・・・・・寒い、寒いよ・・・・・・」

お姉ちゃんの妹「・・・・・・よし!姉さん、飲もう!」

お姉ちゃん「ふぇ?」

お姉ちゃんの妹「飲んで忘れましょう!くよくよしてたら男君も出て行けないでしょ!ほら、立つ立つ!」

お姉ちゃん「・・・・・・うん、そうだね!よーし!今日は飲むぞー!」

18: 2020/06/05(金) 01:31:41.80 ID:KzHMXUyn0
お姉ちゃん(30)「男君男君!結婚の話なんだけどさ!」

男(22)「はい?」

お姉ちゃん「折角だから、指輪とか自分で作ったらどうかな?男君宝石加工できるし、彼女さんも喜ぶよ!」

男「やだ」

お姉ちゃん「恋人から手作りの宝石の指輪とか、憧れちゃうな~・・・・・・え?なんて?」

男「やだ、って言ったんだよ」

お姉ちゃん「・・・・・・どうしてそんなこと言うのかな?今回は正論じゃないよね?」

男「確かに、僕は自分で指輪を作ること自体はできると思う。ていうかできる。お姉ちゃんに教わってきたから」

お姉ちゃん「だったら――」

男「だけどさ、これは一つのけじめみたいなものなんだと思うんだよ」

お姉ちゃん「え?」

19: 2020/06/05(金) 01:33:14.64 ID:KzHMXUyn0
男「これから、自分が永遠を共にするパートナー。そうなってほしい相手に贈る物は、自分が渡せる最高のものじゃないといけない」

お姉ちゃん「うん、わかるよ。だからこそ」

男「だからこそ、僕みたいな素人が作るべきじゃないんだ」

お姉ちゃん「素人だなんて、男君の腕前は立派だよ。もうプロ級だよ」

男「でも、本物の職人には敵わない」

お姉ちゃん「それは・・・・・・」

男「そして、宝石を作ることに関しては、お姉ちゃんがこの世で一番の腕前だと思っている」

お姉ちゃん「・・・・・・え?わ、私?」

男「だから、お姉ちゃん。僕はこれからすごいひどいことを言うと思う。でも、聞いてほしい」

お姉ちゃん「・・・・・・うん」

男「僕のプロポーズのために、世界で一番の指輪を作ってください。僕が一番愛している人に渡すための贈り物を、作ってください」

お姉ちゃん「・・・・・・ほんとに、ほんとに私でいいんだね?私が作っていいんだね?」

男「うん。お姉ちゃんじゃなきゃダメなんだ。お姉ちゃんが世界一の物を作れるって、僕は思ってるんだ」

男「それが、6年近くすぐそばで職人の仕事を見せてもらった僕の判断だ。僕の中で、優先順位が一番高かったことなんだ」

お姉ちゃん「!」

男「・・・・・・おねがい、できるかな?」

お姉ちゃん「もちろん!」

20: 2020/06/05(金) 01:34:05.69 ID:KzHMXUyn0
お姉ちゃん(今まで選ばれてこなかった私。なにもなかった私)

お姉ちゃん(そんな私が、男君に、初めて選ばれた)

お姉ちゃん(こんな嬉しいことはない。こんなに素敵なことがほかにあるものか)

お姉ちゃん(だから、この幸せな気持ちを、もっと幸せになってほしい人たちのために、この宝石に込める)

お姉ちゃん(世界一、ううん。あの子たちの幸せはそんな器に収まらない。収まっちゃいけない)

お姉ちゃん(これから先の未来永劫、どんなものにも決して劣ることのない。この世の全ての中で一番の指輪を作る)

お姉ちゃん(それが、私を選んでくれた男君への、最後のお返しだよ)

21: 2020/06/05(金) 01:34:43.51 ID:KzHMXUyn0





お姉ちゃん「大きくなったね、結婚おめでとう」





22: 2020/06/05(金) 01:35:51.32 ID:KzHMXUyn0
お姉ちゃん「そういえば彼女ちゃんの古書店はよかったの?」

彼女「お父さんがまだまだ現役ですし、妹もいますし、私も仕事はしますし。それに、今の時代夫婦で同じ職場の必要もないかなと」

男「一つのお店を夫婦で切り盛りするっていうのにも憧れるけどね」

彼女「ウチのお店の経営が傾いたときのために男君はいっぱい稼いできてね」

男「がんばる」

お姉ちゃん「・・・・・・うわーん!また惚気やがってーーー!!!!」

25: 2020/06/05(金) 07:07:35.07
面白かった乙

26: 2020/06/05(金) 09:33:48.92
あああああああ悲しいやら尊いやらああああああああ乙。

引用元: お姉ちゃん(15)「大きくなったら結婚してくれる?」男(7)「やだ」