1: 2010/08/08(日) 20:46:57.66 ID:D5ar8UmYP

 それが恋だとは、しばらく気づかなかった

 たしかに憂は好きだけれど、その感情は母に対するそれだと思っていた

 だって憂はかわいい妹であり、かわいい母のようなものだから

 だけど違った

 小さな肩を揺らして料理をする

 部屋を隅々まで掃除してくれる

 毎朝、私を起こしてくれる

 一緒に歩いてて、私が手を握ると優しく握り返してくれる

 そんな妹が愛おしくて、魅力的で

 気付けば私は妹のすべてが欲しくなるほど愛するようになっていた

4: 2010/08/08(日) 20:55:16.37 ID:D5ar8UmYP
 朝、私は珍しく妹に起こされる前に目が覚めた

 時刻は七時二十七分

 あと三分もすれば憂がが起こしてくれるだろう

 それを目的に寝たフリをするなんてバカらしいけれど、楽しみなんだ

 ほら、可愛らしい足音がする

 たまには声で起こすだけじゃなくて、頬にキスでもしてくれないだろうか

 まるで、ラブラブな新婚みたいに

「お姉ちゃん、起きて」

「うぅん……」

 アホか、私は

9: 2010/08/08(日) 21:05:11.08 ID:D5ar8UmYP
「憂ぃ、起こしてぇ」

「はいはい」

 そう言って憂は私の腕を引っ張ってくれた

 私の腕が、心地よい音を鳴らす

 ふと悪戯心が働き、憂の腕を強く引っ張り返す

「きゃっ」

 憂はそのままベッドの上に倒れ、私の横で寝るような形になる

「あ……」

 憂の顔が近い

 吐息も聞こえるほど、近い

 自分でやっておいて、何恥ずかしがってるんだろう

「もう、お姉ちゃんったらぁ」

 そう言って憂はけらけらと笑うだけだった

 安心した

 でも、すこし心が軋むような気もした

10: 2010/08/08(日) 21:12:33.56 ID:D5ar8UmYP
「ほら、起きよう?」

「うん」

 リビングへ行くと、いつもように朝食が並べてある

 美味しそうなハムエッグ、食パン、コーヒー

 私はハムエッグを食パンの上にのせて食べるのを知っている憂は、すこし小さめに作ってくれている

 そんな些細なことでも、私のことを知ってくれてる

 私のために作ってくれてる

 そう思うと、なんだか嬉しい

 たぶん今の私、すごくにやけてるだろうな

11: 2010/08/08(日) 21:22:27.04 ID:D5ar8UmYP
 朝食を食べ終え、身支度を終え、
、家を出る

 学校に向かう私の隣にはいつものように憂がいる

 手を繋いで同じ歩幅で歩く

 私が憂を見ると、憂はそれに気づき私に微笑んでくれた

 このまま学校に着かなければいいのに、なんて

 学校まであと五分

 そんな時、後ろから声が聞こえた

「おーい」

14: 2010/08/08(日) 21:29:50.52 ID:D5ar8UmYP
「あ、梓ちゃん」

「おはよう、憂。唯先輩もおはようございます」

「おはよう、あずにゃん」

 中野梓、憂の良き友達で、私の後輩

 その小柄な身体に長いツインテールが良く似合っていて

 本当に可愛い女の子

 学校まであと五分

 憂はあずにゃんと並んで歩き、楽しく喋っている

 私はそれを見るような形で歩く

 繋いでいた手は、離れていた

15: 2010/08/08(日) 21:41:18.09 ID:D5ar8UmYP
 別に、あずにゃんが嫌いなわけじゃない

 だけど私は確かに怒っていた

 その怒りの矛先は

 愛する妹の、憂だった

 
 なんで手を離すの

 なんで楽しくお喋りするの

 
 そんなことを思ってしまう自分自身が気持ち悪くて、汚くて、悲しくなる

 苦しい

 恋をするって、苦しいなぁ

17: 2010/08/08(日) 21:55:23.03 ID:D5ar8UmYP
 学校に着くと、憂とあずにゃんとお別れをする

 二人に「ばいばい」と手を振ったけれど、その時私の顔は笑ってたかは覚えていない

 もし笑ってなかったら、憂に心配されたかな

 それともあずにゃんと喋るのが楽しいから私のことなんてどうでもいいかな

 ああ駄目だ

 私また、イライラしてる

 これじゃ眉間にシワできちゃうね

20: 2010/08/08(日) 22:10:45.01 ID:D5ar8UmYP
 自分の教室に着くと、私はすぐ机の上で伏せるように寝る

 するとりっちゃんが私に声をかけてきた

「唯ー、どした?寝不足かぁ?」

「んーん」

「んー?」

「ごめん。ほっておいて」

 私が冷たくそう言うと、りっちゃんは「ふーん」と言ってどこかに言ってしまった

 人の気持ちを考慮して、変に突っ込んでこないところはりっちゃんの良いところだ

 そんなりっちゃんに、他の友達に、こんな嫉妬にまみれた不細工な顔を見せたくない

 結局私は先生に指摘されるまで、不細工な顔を隠し続けた

23: 2010/08/08(日) 22:24:51.43 ID:D5ar8UmYP
 気づくと帰りのホームルームが始まっていた

 授業の内容は覚えていない

 あはは、それはいつものことか

 でも一つ違うのは、お昼に食べたお弁当の中身も覚えてないこと

 大好きなのになぁ、憂の作ったお弁当

 今日は部活出る気がしないや

 もう、帰っちゃうおうかな

 そんなことを考えているとムギちゃんが私のところに小走りしてきた

25: 2010/08/08(日) 22:43:00.63 ID:D5ar8UmYP
「ゆーいちゃん」

「……なーに」

「悲しそうな顔してるけど、どうかしたの?」

「そんな顔してるかな」

「してるよ、ほら」

 ムギちゃんはそう言うと、カバンから可愛らしい手鏡を取り出し私に向ける

 そこには虚ろで、曇った目をしていて、口をへの字にした私の顔がうつっていた

「……いやぁ」

「嫌だった?ごめんね。でも、すごく悲しそうだったから」

 ムギちゃんはまるで自分のように、悲しそうな声で心配してくれた

 すごいな、ムギちゃんは

 なんでも自分より先に、他人のこと考えてくれる

 自己中な私とは正反対だよ

26: 2010/08/08(日) 22:59:08.90 ID:D5ar8UmYP
「……ねぇムギちゃん」

「なぁに?」

「人を好きになるって、つらいことなのかな」

「……好きな人ができたの?」

 ムギちゃんは、眉毛をピクリと動かす

「うん……」

「……唯ちゃんは、今つらいの?」

「つらい。つらいよ」

「その人が他の人と話すだけで、イライラしちゃう」


「その人が隣にいないと、不安になっちゃう」

「時々、恋なんてしなきゃよかったって思う」

 とても低い声で、ムギちゃんに訴える

 ムギちゃんはただ「うん、うん」とうなずいてくれた

 教室には、すでに私とムギちゃんしかいない

 校庭からは、部活の音が聞こえる

29: 2010/08/08(日) 23:15:17.48 ID:D5ar8UmYP
 私が不安と苦しみをすべて吐き出すと、しばらく二人の間に沈黙が訪れる

 少しすると、ムギちゃんが小さく口を開けた

「私は恋なんてしなことないから、うまく言えないけど」

「その気持ち、全部そのままその人に伝えちゃえば?」

「え?」

「好きって気持ちを出さないと身体の中に『好き』が溜まってそのうち唯ちゃん、爆発しちゃうかもよ?」

「なーんて。うふふ」

「……あはは」

 ムギちゃんの言うとおりだ

 私はもう、爆発寸前なのかもしれない

34: 2010/08/08(日) 23:38:27.49 ID:D5ar8UmYP
「決めた、今日、全部出してくるね」

「うん。りっちゃん達には言っておくから」

「失敗したら、慰めてね」

「私で良ければ、好きなだけ」

「じゃあね!ムギちゃん!ありがとう!」

「うん、頑張ってね」

 私は笑顔でムギちゃんに手を振り、教室を出る

 久々に清々しい気持ちでの下校

 日暮の鳴き声が、よく聞こえる

48: 2010/08/09(月) 00:14:47.70 ID:mAZfNisOP
 家に着くと、二階からいい匂いがする

 この匂いは肉じゃがかな

 憂の作る肉じゃがは、じゃがいもが大きくて、甘くて好きだ

「ただいまぁ」

「お姉ちゃん?今日は早いね」

 憂がエプロン姿のまま階段の上から出迎えてくれた

 手から水がたれている

 手を拭くことより私を優先してくれた

 その事実がたまらなく嬉しい

52: 2010/08/09(月) 00:26:44.80 ID:mAZfNisOP
「うん、部活休んじゃった」

「どこが具合悪いの?」

 うん、恋の病

 なんて言ったら笑われちゃうだろうか

 その前に恥ずかしくてそんなこと言えないけれど

「ちょっと、頭痛くてね」

「大丈夫?」

「うん、大丈夫だよ」

「そう……?」

 憂の困った顔、かわいいな

 その顔を私以外に見せないで

 私のことだけを心配して

 私のことだけを見て

 
 どうしよう、私また自己中になってる

55: 2010/08/09(月) 00:37:42.22 ID:mAZfNisOP

 ギッギッギと階軋む音を立てながら階段を昇る

 一段、一段と昇るたびに鼓動が大きくなるのを感じる

 もう溜めないよ

 気持ち悪いと思われたっていい

 愚かだと思われたっていい

 全部出そう

 私の気持ちを

 全部

57: 2010/08/09(月) 00:45:37.30 ID:mAZfNisOP
「じゃあ、ご飯すぐ作っちゃうから」

「待って」

「え?」

「そこにいて」

 憂が目をパチクリとさせる

 たぶん今の私の顔、こわいよね

 でも、笑顔になる余裕がないんだ

 少しでも触られたら、爆発しちゃうかもしれない

 ギー太を背負ったまま、制服を来たまま

 使い込まれたエプロンを付けた憂を強く抱きしめた

 制服、汚れちゃうかも

 洗うのは憂なのに、ごめんね

60: 2010/08/09(月) 01:10:51.82 ID:mAZfNisOP
「好きだよ、憂」

「どしたの……いきなり。私もだよ」

「好きだよ、憂が好きなの」

「お姉ちゃん、恥ずかしいよ……」

「私ね、手を繋いでる時だってずっと胸がドキドキしてた」

「それに憂が、あずにゃんとお喋りしてるだけ嫉妬しちゃうんだ」

「ずるいよ、こんなの。私だけが憂を求めて、苦しむなんて」

「憂にも、私を求めてほしいよ……」

「え……あ……」

 憂は頬を赤らめ、口を半開きにし、目を上下左右に忙しく動かしている

 その顔が、たまらなく官能的で、私を欲情させてしまう

 私は欲望のまま憂の唇を、自分の唇で塞ぐ

 キッチンからは焦げた匂いがする

 やっぱり私は、駄目な姉だ

71: 2010/08/09(月) 01:44:01.40 ID:PbfggmHb0
どのくらいの時間が経っただろう…30分?30秒?私にはわからない

唇を重ねたまま薄目で憂を見た

初めは驚いて目を丸くしていたけど、少しずつ柔らかい表情になっていった

でも、気がついたように目を開くと、私を引き離した

「…お姉ちゃん」

「…ごめん、憂…」

「…」

「…火、止めてくるから、待ってて」

「…えっ?」

私の疑問は解決することなく、憂はキッチンに消えてしまった

私、確実に嫌われちゃったな、そう思いながら唇に残った感触を確かめていた

73: 2010/08/09(月) 01:52:53.99 ID:PbfggmHb0
唇の余韻が消える頃、同時に私の心にモヤモヤが生まれ始めた

これからどうしよう、どんな顔で憂に会えばいいんだろう、憂は私を軽蔑するだろうか…

次々と考えたくもない負の想像が私の頭の中に浮かんでくる

いたたまれなくなった私は自分の部屋に戻ることにした

「どうしよう…どうしよう…」

いくら考えても答えが見つからない

いや、見つけるための思考回路が回らない

このまま消えてしまいたい、とさえ考えた

憂に嫌われてしまったのなら、消えたほうがずっと楽だろう

私は布団に倒れこみ、そのまま考えることをやめてしまった

寝られない、何も考えない…ただそこに存在しているだけの私

105: 2010/08/09(月) 14:20:37.74 ID:mAZfNisOP
終わりです

122: 2010/08/09(月) 21:15:32.39 ID:PbfggmHb0
空白の時間が部屋に響く音によって途切れる

乾いた木の音、憂が部屋をノックしている

絶望と一緒にほんの少しの希望が生まれたことに罪悪感を感じる

私は必死で平静を装って返事を返す

「どうぞー!」

声が裏返りそうになるのを抑え、なんとかこの3文字を言い切った

ライブでも緊張しない私なのに、やっぱり憂はすごいや

すこしの時間をおいて、ドアの取っ手が音を立てる

入ってくる憂の顔を見られるほど余裕はなかった

「お姉ちゃん、ご飯持って来たよ」

憂の声はわずかに低い。普通の人なら気付かないだろうけど、私にはわかった

私は絶対音感を持っているらしいから、そして私は憂のお姉ちゃんだから

123: 2010/08/09(月) 21:56:46.96 ID:PbfggmHb0
布団にうつ伏せながら憂の声に耳を傾ける

「えへへ…ハンバーグ、焦げちゃった」

照れくさそうに笑う憂の優しい声が聞こえる

きっと天使のような笑顔で笑っているにちがいない

憂は間違いなく私の天使だから

そんなことを考えているうちに返事をすることを忘れてしまった

憂が不安そうに私に話しかけてくる

「お姉ちゃん…私ならもう気にしてないよ?」

気にしてない…嬉しいような、悲しいような、変な気分

でも憂は私のこと、嫌いになってないのかな?

そう思うだけで、心が救われるようだった

たとえそれが嘘だったとしても、単純な私を騙すには十分だ

125: 2010/08/09(月) 22:10:54.06 ID:PbfggmHb0
「憂…私…のこと、軽蔑したでしょ?」

布団に口を塞がれているから、何を言ってるのかわからないよ

それに、せっかく安心した自分をどうしてまた追い込もうとするの?

安心したい私と、憂に嫌われたくない私が戦っているのだろうか

憂がいま、どんな顔で返事を考えているのか、私には知る術がない

あるにはあるけど…今は顔を上げられる勇気がない

そもそもちゃんと通じたのかすらわからない

「軽蔑なんてするわけないよ…そんなこと言わないで」

とても悲しそうな憂の声が聞こえた

どうしてそんなに辛そうな声を出すの?

私は憂の顔を見るために顔を横に向けた

憂とキスをして以来、初めて目が合った

憂は必死で涙をこらえるような、潤んだ瞳で私を見つめていた

126: 2010/08/09(月) 22:17:10.56 ID:PbfggmHb0
「私が…お姉ちゃんを軽蔑するわけないじゃん…」

わかった、わかったよ、憂

だから悲しまないで

涙を流さないで

いつもの笑顔に戻って

こんなとき、人はどうするの?

優しい言葉をかけて涙を止めてあげるのかな?

澪ちゃんなら、きっとそうするだろう

りっちゃんだったら、頭をぐしゃぐしゃって撫でてあげるのかな

でも…私はそんなことできないから…


ベッドの横で正座して目をぐしぐしと拭いている憂を、そっと抱きしめた

さっきとは違う、純粋な気持ちだった

憂にとってはどっちでも同じなんだろうけど…私にはこれしかできないから

「ごめんね…憂」

「ばか…ばかお姉ちゃん!」

127: 2010/08/09(月) 22:26:14.45 ID:PbfggmHb0
憂は私の胸の中で泣き続けた

服の上から涙が滲み、私の肌が暖かくなる

涙ってあったかいな

胸で憂の涙を感じながら、手の方に意識を向ける

右手は憂の頭、左手は憂の背中。

ほどけた憂の髪の毛はサラサラで、すごくいい匂い

同じシャンプーを使ってるのに、どうしてこんなにいい匂いになるんだろう

震える憂の背中は、とっても柔らかい

ごめんね、泣いてるときにこんなこと考えるお姉ちゃんで

ごめんね、『もっと憂を感じていたい』なんて思って

ごめんね、こんなにも憂が大好きで。

130: 2010/08/09(月) 22:43:01.34 ID:PbfggmHb0
憂と抱き合ったまま、時間が過ぎていく

ずっと泣いていて欲しい、なんて少しでも思った自分が憎い

胸の中でだんだん落ち着いていくのがわかる

そして私のない胸に顔をうずめたまま、憂が言った

「ごめん…お姉ちゃんの服、濡らしちゃった」

どうしてこんな時にまで私の心配をしてくれるの?

今は憂の方が泣いてるんだよ?

どうして姉妹なのにこんなに違うのかな、私達

私はやきもち焼きで自己中で、憂が楽しくあずにゃんと喋ってるのにも嫉妬するのに

憂はどこまでも私のことを考えてくれていて…自分よりも私で…

憂がおねえちゃんに生まれてきたらよかったのにね

「ううん、いいの。憂が私のこと嫌いになってなくて…本当によかった」

131: 2010/08/09(月) 22:48:15.65 ID:PbfggmHb0
憂がそっと顔を上げる

目が赤いね。ごめんね、可愛い顔なのに

でも、泣きつかれた憂の顔も可愛いんだよ

でも…笑顔の憂が一番大好きだけどね

「お姉ちゃん…」

「…ん?」

「ほんとはね…お姉ちゃんに抱きつかれた時、嬉しかったんだ」

「…」

「お姉ちゃんは梓ちゃんの方が好きなんだって思ってたから」

「…あずにゃんも好きだけど、憂ほどじゃないよ」

「ありがとう…でも、キスされたときはほんとに驚いたんだからね?」

「…ごめん」

「…ちゃんと、するならするって言ってよ」

「…えっ…?」

132: 2010/08/09(月) 22:54:22.22 ID:PbfggmHb0
一瞬、憂が言った言葉の意味がわからなかった

『するならするって言ってよ』?

するって言えばしてもよかったの?

そんな深い意味はないよね…話の流れだよね

それで済ませばいいのに、私は我慢しきれなくなって聞いてしまった

「ど、どういうこと…?」

デリカシーがないよ、私。

どうやってごまかそうか考えているうちに、その必要がなくなった

「だって…」

「私だって、お姉ちゃんのこと大好きだもん…」

心臓が暴れだす

鼓動が早くなり、頭が真っ白になっていく

夢?これから覚めるのかな?だからこんな真っ白なの?

135: 2010/08/09(月) 23:01:42.37 ID:PbfggmHb0
違うよ、変な勘違いしないでよ、私

憂は私のことをお姉ちゃんとして好きなんだから。

私が思ってるような『好き』じゃないんだから

一生懸命気持ちをコントロールして、自分に言い聞かせる

でも憂はおかまいなしに気持ちをぶつけてきた

「お姉ちゃん、軽音部に入ってからすごく生き生きしてて」

「笑顔も増えて毎日楽しそうだったよね、私も嬉しかったよ」

「でも…だんだん違う感情が生まれてきて…私おかしくなっちゃったんだ」

「だんだん、お姉ちゃんの話を楽しく聞けなくなってきちゃった」

「軽音部が羨ましいな、笑顔のお姉ちゃんをずっと見ていられて」

「お姉ちゃんは私よりも軽音部の先輩達や梓ちゃんの方が大事なのかな」

「いけないことばっかり考えるようになっちゃった…最低なんだ、私」

最低なもんか

憂が誰よりも私のことを考えてくれていた

私はそんなことにも気付かなかった

136: 2010/08/09(月) 23:08:02.36 ID:PbfggmHb0
「えへへ…お姉ちゃん、私、おかしいよね」

おかしくない!憂はずっと憂なんだから!

言葉より先に体が動いてしまった


ちゅっ


今日、2回目のキスだね、憂

また自分を抑えられなくなっちゃった、ごめんね

やっぱりだめなお姉ちゃんだあ


「…ん」


憂の唇はすごく柔らかい

ふかふかの枕よりも、ムギちゃんが持ってきてくれたプリンよりも

きっと澪ちゃんのおっぱいよりも柔らかいんだ、触ったことないけど

137: 2010/08/09(月) 23:13:12.75 ID:PbfggmHb0
憂が言ったこと、また破っちゃった

するならするって言わなきゃいけないのに

憂、怒ってるかな?

そう思って薄目を開けようとしたけど、すぐにやめた

だって、憂いの腕が私を抱きしめてくれてくれたから

憂の気持ちが伝わってくるような気がして、とても幸せな気持ちだった

憂も同じこと、思ってくれているかな?そうだといいな

言葉を発することができないから、心の中でなんども言った

憂大好き、憂大好き

この気持ちが伝わっているといいな

そんなことを考えながら、私も憂を抱きしめ返した

138: 2010/08/09(月) 23:19:21.82 ID:PbfggmHb0
やがて憂の唇が離れてしまった

残念だな、もっと繋がっていたいな

憂がほっぺたを膨らませながら私を見ている

この後なんて言われるかは私でも大体予想がつく

「もう…するならするって言ってってば」

やっぱり。ごめんね、憂

でも、ふくれっ面の憂も可愛いから、いいよね

「えへへ…ごめんね」

憂の顔はすぐにいつもどおりに戻った

心なしか笑顔がいつもよりも可愛く見える

いつもの憂が可愛くないわけじゃないよ?

…もう一度、伝えてみようかな。私の気持ち

「憂…大好きだからね!」

「私も大好きだよ、お姉ちゃん」


憂の笑顔は太陽よりも眩しかった

139: 2010/08/09(月) 23:20:05.36 ID:PbfggmHb0
おわり

148: 2010/08/09(月) 23:39:25.46 ID:PbfggmHb0
いや、俺>>1じゃないけどね

149: 2010/08/09(月) 23:39:58.60
ちょっと大人っぽい唯も最高だな

引用元: 唯「私は妹に恋をする」