2: 2011/06/09(木) 19:22:15.04 ID:oyGXLEhi0
~ワルプルギスの夜当日、ほむらの家~

まどか「みんな……みんな死んじゃった」

まどか「マミさん……さやかちゃん……杏子ちゃん………」

まどか「ねぇ、ほむらちゃん。ほむらちゃんはこうなることをわかっていたの?」


ほむら「………」


まどか「ほむらちゃん?」


ほむら「私はね、未来から来たの」


まどか「えっ、未来……から……?」


ほむら「ええ、そうよ。信じられないでしょうけど、それが真実」

ほむら「私は自分の能力を使い、この一ヶ月を何度も何度も繰り返している」

ほむら「予想外の事もあったけれど……こうなってしまうかも知れないということは考えていたわ」

1: 2011/06/09(木) 19:19:56.89 ID:oyGXLEhi0
魔法少女まどか☆マギカの妄想設定SSです

本編11話以降(ワルプルギスの夜開始)のパラレル設定

びっくりするほどまどほむほむまど

SS初書+初投稿の為、随所におかしい箇所が見受けられますがご了承下さい

3: 2011/06/09(木) 19:25:06.31 ID:oyGXLEhi0
まどか「そ、そんな……」


ほむら「でもそれも仕方の無い事。貴女を助けるためだもの」


まどか「私を、助ける……?」


ほむら「ええ、そう。……いや少し違ったわね、訂正するわ」

ほむら「貴女だけを助けるためよ、他の誰がどうなろうが関係ない」


まどか「!!!」


ほむら「もう直ぐこの街にワルプルギスの夜が来るわ」

ほむら「とても強大な魔女よ。街にも大きな被害が出るかもしれない」

ほむら「だけど安心してまどか、貴女だけは何があっても守って見せる」


まどか「………の………っ…る…」


ほむら「……まどか?」


まどか「そんなの、間違ってるよ!」


ほむら「……っ!」ビクッ

4: 2011/06/09(木) 19:27:16.44 ID:oyGXLEhi0
まどか「私は、皆がいなくなってしまったら……一人になってしまったら、幸せになんてなれない」

まどか「助かったなんて、思え、ない、よ……」ポロポロ

まどか「私だけが助かればいいだなんて……」

まどか「そんなの、絶対おかしいよ……」グスッ


ほむら「あ……、あ……」ガクガク


まどか「それにほむらちゃんだって、本当はそんな事望んでいないはずだよ……」

まどか「マミさんの時だって、ずっと止めてくれようとしたよね」

まどか「私が、さやかちゃんのソウルジェムを捨ててしまった時も、あんなに必死になって取ってきてくれた」

まどか「杏子ちゃんが死んでしまった時、凄い悲しそうな顔をしてた……」


ほむら「あ、あ……私は……私は………」ガクガク


まどか「ねぇ、ほむらちゃん……ほむらちゃんはなんで……」スッ…


ほむら「……っ!」ビクッ

ほむら「う、うわあああああ」ダッ


まどか「あっ!待って、ほむらちゃん!」

5: 2011/06/09(木) 19:29:42.57 ID:oyGXLEhi0
まどか(ほむらちゃん、泣いてた……)

まどか(一番辛いのはほむらちゃんなのに、偉そうに間違ってるだなんて)

まどか(私……私はなんてことを………)


QB「まどか、こんな所にいたのかい」


まどか「キュゥべえ……」


QB「もうワルプルギスの夜がそこまで来ているよ!だから僕と早く契約…」


まどか「ねぇ、キュゥべえ。キュゥべえはほむらちゃんがどんな願いをしたのか、何をしてきたのか知ってるの?」


QB「暁美ほむらかい?あの子は極めつけのイレギュラーだからね」

QB「僕は彼女と契約した覚えも無いし、願い事も知らないよ」

QB「彼女が本当に未来から来たのならば、何をしてきたかなんて誰にも知る術は無いね」


まどか「そう……だね」


QB「そんな事より契約だよ。ワルプルギスの夜に暁美ほむら一人では勝ち目なんてない」

QB「君は暁美ほむらを見殺しにするつもりなのかい?」


まどか「!!!」


QB「暁美ほむらだけじゃない、ワルプルギスの夜が街を破壊すれば何千という人間が死んでしまうんだ」

QB「諦めたらそれまでだよ。でも、君なら運命を変えられる」

QB「避けようのない滅びも、嘆きも、全て君が覆せばいい。その為の力が、君には備わっているんだから」


まどか(ほむらちゃん……、私は……)

6: 2011/06/09(木) 19:32:45.77 ID:oyGXLEhi0
ワルプルギスの夜「アハハハハ」


ほむら「はぁっ……はぁっ………」

ほむら(……もう…限界かしら……ここまでやっても倒せないだなんて………)

ほむら(左腕はまだ無事ね……最後の気力を振り絞れば過去に戻れるかも知れない)

ほむら(……まどか………)


──そんなの、間違ってるよ!


ほむら(間違ってる、か……私は間違っていたのかな………)

ほむら(今までやってきた事、全部無駄で、まどかに膨大な因果だけ背負わせて……)

ほむら(もう、終わりにしよう……私もう疲れたよ……だからこのまま………)


まどか「ほむらちゃん!!!」

7: 2011/06/09(木) 19:34:44.60 ID:oyGXLEhi0
ほむら「まどか!?どうしてここに!?それに、その姿は……」


まどか「うん……ごめんなさい、ほむらちゃん。私、契約したよ」


ほむら「そんな……また、貴女を守れなかった………」


まどか「そんな事ないよ、ほむらちゃん。私はほむらちゃんに守ってもらってばっかりで……」

まどか「それなのに、私はほむらちゃんのこと全然わかってあげられなかった」

まどか「だからね、ほむらちゃん。私の願いは……」


ほむら「まどか……?」


QB「まどか!ワルプルギスの夜が来るよ!」


まどか「……うん。わかった」

まどか「街を破壊して、ほむらちゃんをこんなにして……」

まどか「私、あなたを許さない」スッ…

ドシュゥ

ワルプルギスの夜「ギャァァァァァ」

8: 2011/06/09(木) 19:38:02.58 ID:oyGXLEhi0
QB「まさかあのワルプルギスの夜を、一撃で倒すとはね」

QB「だけどまどか、あれほど強力な一撃だ。君のソウルジェムはもう限界なんじゃないかい?」



まどか「く…うう……」


ほむら「まどか!」


まどか「お願い、ほむらちゃん、過去に戻って」


ほむら「まどか!まさか貴女こうなることがわかって……」


まどか「へへへ……なんとなくね……でも大丈夫、自分でケジメはつけるから……」


ほむら「何を言ってるの……?まどか……」


まどか「うっ……ほ、ほむらちゃん、早く過去に……」


ほむら「で、でも……私は間違っていた……私では何も変えられない……」


まどか「大丈夫だよ、ほむらちゃん……今度はもう、一人じゃないから………」


ほむら「いや…嫌だよ……もう誰にも死んで欲しくない……」


まどか「……ほむらちゃんはやっぱり優しいね」ニコッ


ほむら「え……?」


まどか「その気持ちがあれば大丈夫。絶対に、ほむらちゃんを一人にはさせないから」

まどか「そろそろ限界かな……ほむらちゃん、ちょっと銃を借りるね」


ほむら「まどか……?」


まどか「ほむらちゃん、どうか皆を救ってあげて。我侭ばかりで……ごめんね」カチッ

タァァァン

ほむら「ま……ど…か……」

ほむら「うわああああああああああああああああああああああああああ」

9: 2011/06/09(木) 19:40:50.24 ID:oyGXLEhi0
ほむら「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」

ほむら(ここは……いつもの病室………)

ほむら(情けない、結局私は過去に戻って来てしまった)

ほむら「ひっく、ぐす…まどか…まどかぁ……」


──どうか皆を救ってあげて


ほむら「無理だよ……私、何にもできない。人に迷惑ばっかり掛けて」

ほむら「魔法少女になんかなったって結局何も変わってなかった。……何も変えられなかった」

ほむら(死んだ方が良いかな……死んで……しまえば……)


──今度はもう、一人じゃないから


ほむら(まどか……あれは一体どういう意味なの……?)

ほむら(そうだ……最期にまどかに会ってみよう………)

10: 2011/06/09(木) 19:43:40.69 ID:oyGXLEhi0
ほむら(足が重い……家までの道、こんなに遠かったっけ………)トボトボ

ほむら(あれ……家の前に誰かいる………)

ほむら(あ、あれ?あそこにいるのは……)


まどか「ほむらちゃん!」


ほむら「ま、まどか!?」

ほむら(う、嘘……この時点でまどかが私の事を知っているはずが……)


まどか「う、うわあああああん」ダキッ

まどか「ほむらちゃん……ほむらちゃあああん」ボロボロ


ほむら「ま、まどか……」

ほむら「とっ、取りあえず家に入りましょう?」


まどか「ひっく、ぐす……うん………」

11: 2011/06/09(木) 19:46:22.03 ID:oyGXLEhi0
ほむら「まどか、少し落ち着いた?」


まどか「えっ、あっ、うん。……ごめんね、ちょっと抑えきれなくなっちゃって」


ほむら「構わないわ。……えっと、まどか……貴女、前回の世界の記憶があるの?」


まどか「うん、覚えてるよ。それにね、それだけじゃない」

まどか「今までほむらちゃんが出会った、全ての私の記憶があるんだよ」


ほむら「えっ……」


まどか「だから、ほむらちゃんが魔法少女じゃなかった頃も知ってるんだよ」

まどか「まず最初に記憶の事を説明しようと思ったんだけど……」

まどか「あの頃はあんなに可愛かったほむらちゃんが、こんなにカッコよくなっちゃって……」

まどか「あの時、魔女に襲われた時、間に合って本当に良かったって。今でもそれが私の自慢で……」

まどか「そ、そんな事考えてたら、なんだか……涙……が………」ジワッ

まどか「あっ、ご、ごめんね、ほむらちゃん……また………」ポロポロ


ほむら「まどか……」ギュッ


まどか「ほ、ほむらちゃん……うん……ありがとう………」カァァ

12: 2011/06/09(木) 19:49:37.31 ID:oyGXLEhi0
ほむら「まどか、その記憶の事だけど……」


まどか「うん、ほむらちゃん。これが前回の世界での私の願いだよ」

まどか「前回の世界で私はほむらちゃんのこと全然わかってあげられなかった」

まどか「守ってもらってばかりで何もできないくせに、ほむらちゃんにあんなに酷い事を言って傷つけて……」

まどか「それで……こう願ったの、『暁美ほむらが過去に戻る時、今までに暁美ほむらが出会った全ての鹿目まどかの記憶をその世界の鹿目まどかに伝えて』って」

まどか「だからね、全部わかったよ。いくつもの時間で、ほむらちゃんが、私のためにがんばってくれたこと、何もかも」

まどか「何度も泣いて、傷だらけになりながら、それでも私のために」

まどか「ずっと気づけなくてごめん……ごめんね」


ほむら「まどか……」

ほむら「気づけるはずなんて無いわ、だって他の世界の事なんですもの」

ほむら「貴女が気に病む必要なんて無い。貴女を助ける事こそが私の望み」

ほむら「私は自分の願いでソウルジェムを輝かせたのだから……」

ほむら「その為に、永遠の迷路に閉じ込められても、構いはしないわ」


まどか「……ほむらちゃん、嘘は良くないよ」


ほむら「えっ……」

13: 2011/06/09(木) 19:54:56.35 ID:oyGXLEhi0
まどか「だって、ほむらちゃんがずっと時間を繰り返していたのは私との約束のせいでしょう?」


ほむら「そ、それは……いえ、そんな事は無いわ!」


まどか「嘘だよ。私があんな……あんな約束お願いする前と後では、ほむらちゃんの行動が違いすぎるもの」

まどか「私なんかとの、約束守って、ほむらちゃんはずっと傷ついて……」

まどか「ほむらちゃんを永遠の迷路に閉じ込めたのは私なんだよ……」

まどか「ごめん……ごめん、ね。ごめんなさい………」


ほむら「まどか……貴女さっきから謝ってばかりね」クス


まどか「えっ、そ、そうかな……」


ほむら「………」ダキッ


まどか「ほ、ほむら、ちゃん?」


ほむら「まどか……私ね、とっても嬉しいよ。違う時間を生きていた貴女が、また私と同じ時間を歩んでくれるなんて………」

ほむら「繰り返せば繰り返すほど、あなたと私が過ごした時間はずれていった。気持ちもずれて、言葉も通じなくなっていった」

ほむら「もうとっくに迷子になっていた私を、こうやって貴女がまた見つけてくれて……」

ほむら「あなたを救う。それが私の最初の気持ち。そして今もそれは変わらない、あなたが居るから……私は、まだ、戦える」


まどか「ほむらちゃん……ありがとう………」

14: 2011/06/09(木) 19:57:54.93 ID:oyGXLEhi0
ほむら「それでね、まどか。これからの事なんだけれども……」


まどか「うん……それなんだけど、私ずっと考えてたことがあるの」


ほむら「考えていたこと?」


まどか「うん、私、魔法少女になる」


ほむら「!!!」

ほむら「まどか……そんな………」

ほむら「ダメよ……まどか。お願い、止めて。やっと同じ時間を歩めたのに……… 」

ほむら「貴女が魔法少女になってしまったら、また同じ事の繰り返し。それじゃ……それじゃ私は、一体何のために………」


まどか「……ねぇ、ほむらちゃん。……ほむらちゃんはどうして私を魔法少女にしたくないと思ったの?」


ほむら「そ……それは……あなたとの約束でもあるし、何より魔法少女になってしまうと全てを失うことになる」

ほむら「祈りに見合うだけの呪いを背負い、永遠に戦い続け、ソウルジェムが黒く染まった時魔女へと堕ちる」

ほむら「そして魔女となった者は誰かを救った分だけ、誰かを祟りながら生きていく」

ほむら「それが、魔法少女になった者の、逃れられない運命」

ほむら「ねぇお願いよ、まどか……貴女は自分の人生や、家族や友達が、大切ではないの?」

ほむら「一度魔法少女になってしまったら、もう救われる望みなんてないのよ……」

15: 2011/06/09(木) 20:00:40.83 ID:oyGXLEhi0
まどか「ほむらちゃん……そんなこと、ないよ」

まどか「魔法少女が救われないだなんて、幸せになれないだなんて間違ってる」

まどか「だってそんな事認めてしまえば、ほむらちゃんはどうなるの?」


ほむら「私は……構わないわ。貴女さえ守る事ができるのなら、私なんてどうなっても構わない……」

パァン

ほむら「!?」


まどか「ごめんね、痛かったよね」

まどか「……ねぇ、ほむらちゃん、何時だったか私にこう言ってくれたよね」


──貴女は、なんで貴女は、いつだって、そうやって自分を犠牲にして
──役に立たないとか、意味がないとか、勝手に自分を祖末にしないで
──貴女を大切に思う人のことも考えて
──貴女を失えば、それを悲しむ人がいるって、どうしてそれに気づかないの!
──貴女を守ろうとしてた人はどうなるの!


ほむら「そ……それは………」

16: 2011/06/09(木) 20:04:23.80 ID:oyGXLEhi0
まどか「私だって、ほむらちゃんの事がとってもとっても大切だし、どんな事があっても守りたいと思ってるよ」

まどか「ほむらちゃんにはずっと、私の自分勝手な約束のせいで、全てを一人で背負わせてしまっていた」

まどか「だけど、同じ時間を歩めるようになった今だからこそ、同じ立場で向き合って、苦労も、涙も、幸せも分け合う事ができるんじゃないかなって」

まどか「同じ道を一緒に歩いて行けるんじゃないかなって、そう思うの」


まどか「ねぇ、ほむらちゃん」

まどか「私が、魔法少女のほむらちゃんを絶対に幸せにしてみせる。だから……」

まどか「ほむらちゃんも、魔法少女の私を、幸せにしてくれないかな」


ほむら「まっ、まどか……うぅ……」ポロポロ


まどか「ダメ……かな……?」


ほむら「ううん……そんな事無い!貴女は私が絶対に守る!幸せにだって…ひっく…絶対に、して、みせる、からぁ……」ボロボロ


まどか「うん……私も絶対にほむらちゃんの事、守ってみせるからね………」ギュウウ

22: 2011/06/09(木) 21:08:50.92 ID:oyGXLEhi0
────────────────────────

まどか「……すっかり夜になっちゃったね」


ほむら「うん…そうだね……。ごめんね、私ずっと泣いてしまって」


まどか「気にしなくていいよ、ほむらちゃん。そ、それに…その…泣いてるほむらちゃんも、可愛かったよ」テレテレ


ほむら「まどか!もう…いじわるなんだから……」


ドクンッ──


ほむら「!?」

ほむら「う…ぐっ、あ……」ドサッ


まどか「ほむらちゃん!?ほむらちゃん!!!」


ほむら「あ…う……、ま…ど…か……」


まどか「ほむらちゃん!ま、まさか……」ゴソゴソ

まどか「そんな……ソウルジェムが……こんなに黒く………」

23: 2011/06/09(木) 21:10:36.01 ID:oyGXLEhi0
ほむら「まどか……まどか………」


まどか「ほむらちゃん!しっかりしてぇ!」


ほむら「…っ……」

ほむら(この世界に来てから……泣き通しだったから……)

ほむら(嫌、嫌だ、死にたくないよ……)

ほむら(せっかく、まどかと幸せになるって誓ったのに……)


まどか「グリーフシードなんてある訳ないし……一体、一体どうすれば………」

まどか「ハッ、そうだ!」

まどか「待ってて、ほむらちゃん!直ぐ戻るよ!」ダッ

24: 2011/06/09(木) 21:14:09.67 ID:oyGXLEhi0
まどか「キュゥべえ!居るんでしょ!?早く出てきて!」


QB「………」

QB「へぇ、これは驚いたよ。僕の事を知っているのかい?」

QB「契約した覚えのない魔法少女の魔力を追ってきたんだけど、彼女に僕の話を聞いたのかな?」

QB(……!)

QB(この潜在能力……。これだけの素質を持つ子と出会ったのは初めてだ)


まどか「ねぇ、キュゥべえ。前置きは要らないよ。私、あなたと契約する」


QB「契約のことまで知っているとはね。話が早くて助かるよ。」

QB「君にはその資格がありそうだ。教えてごらん。君はどんな祈りで、ソウルジェムを輝かせるのかい?」


まどか「私の祈りは……」

25: 2011/06/09(木) 21:17:42.74 ID:oyGXLEhi0
まどか「私の願いは、『ソウルジェムの穢れを消し去る力を私に与えて』」


QB「その願い……君はまさか、魔法少女のシステムを知っているのかい?」


まどか「キュゥべえ、どうしたの?できないの?」


QB「君の願いは魔法少女のシステムを根底から覆しかねないものだ」

QB「並大抵の素質ではその願いを叶えることはできないだろう」

QB「しかし、君の素質なら……」


まどか「そんな事は聞いてないよ。願いを叶えられるなら早くして」

まどか「私にはその力で絶対に助けなければいけない人が居るの」

まどか「もし……もし、間に合わなかったら、私は自分のソウルジェムを破壊する。エネルギーの回収もできなくなるよ」


QB「!!!」

QB(……。君は一体………。)

QB「……契約は成立だ。君の祈りは、エントロピーを凌駕した。さあ、解き放ってごらん。その新しい力を!」


まどか「……うっうううう」

まどか「あああああああああ」パァァ

まどか「はぁっ、はぁっ、はぁっ」


QB「なんという魔力だ。君は恐らくこの世界で最強の魔法少女だよ」

26: 2011/06/09(木) 21:21:37.67 ID:oyGXLEhi0
まどか「急がなきゃ……ほむらちゃん!」ダッ


QB(今までの会話にも、契約の流れにも、出現したソウルジェムにも全く動じた様子がない)

QB(彼女は魔法少女を知っているだけじゃない……経験、しているのか?これは……極めつけのイレギュラーだ)


まどか「ほむらちゃん!」


ほむら「………」


まどか「ソウルジェムはまだ穢れきってない……!お願い、間に合って……!」パァァ


ほむら「……ぅ…」


まどか「!!!」


ほむら「あ……まどか……?」


まどか「ほむらちゃん!良かった……間に合って……本当に……」グスグス

27: 2011/06/09(木) 21:25:44.17 ID:oyGXLEhi0
ほむら「まどか、その姿は……やっぱり契約しちゃったんだね」


まどか「うん、ごめんね、ほむらちゃん……怒ってる?」


ほむら「ううん、そんな事ないよ。私はもう運命を受け入れる」

ほむら「貴女と二人、魔法少女でも幸せになるって、誓ったんだもの」


まどか「ほむらちゃん……。えへへ」ポッ


ほむら「私のソウルジェムが浄化されたのは、まどかの力なの?」


まどか「うん、そうだよ。これが今回の私の願い。ソウルジェムの穢れを消し去る力」


ほむら「凄い……そんな願いが叶っちゃうなんて、まどかはやっぱり凄いよ」


まどか「それは違うよ、ほむらちゃん。私だけの力なんかじゃない」

まどか「ずっとずっと、ずっーと、ほむらちゃんに守られて、望まれてきたから、今の私の力があるんだよ」

まどか「だから……ほむらちゃんにもらったこの力で、私はあなたを……守るよ」


ほむら「まどか……」

28: 2011/06/09(木) 21:29:32.43 ID:oyGXLEhi0
まどか「でもね、この力も万能って訳じゃないみたい」

まどか「これもやっぱり魔法の一種だから、ほむらちゃんのソウルジェムを浄化した時、私のソウルジェムも少しだけ濁っちゃった」


ほむら「えっ……?まどか、大丈夫なの!?」


まどか「これぐらいなら全然問題ないよ、自分のソウルジェムも浄化できるしね。ただやっぱり他の人にやるのと比べるとちょっと遅いけど……」


ほむら「良かった……」ホッ


まどか「それに結構集中しないといけないから、戦闘中にはちょっと厳しいかも」


ほむら「能力を手に入れて直ぐなんだから、当然だと思うよ」

ほむら「時間さえかければ、きっとまどかならもっともっと使いこなせるようになるよ」


まどか「へへっ、ほむらちゃん、ありがとっ」

38: 2011/06/10(金) 23:35:03.98 ID:KMseEgWH0
まどか「さてと、じゃあこれからの事を考えないとね」


ほむら「そうだね。でも、まどか、皆を救うって具体的には何をすればいいのかな」


まどか「えっ、あー、それは……うーん……」


ほむら「まどか?」


まどか「私も結構勢いで言っちゃったから……」ハハハ


ほむら「ふふ……それじゃできる範囲から少しずつやっていこう?」

ほむら「まずは、前回死なせてしまった巴マミ、美樹さやか、佐倉杏子の生存」

ほむら「巴マミは行動範囲がある程度わかっているし、魔女の出現する場所を探せば接触はそう難しくないはず」

ほむら「あの魔女のこともあるし、できれば早めに信用を得て協力体制を築いておきたいかな」

ほむら「美樹さやかについては魔法少女にさせない事が望ましいと思うけど……」

ほむら「まどかはどう思う?」


まどか「うーん…。さやかちゃんを巻き込みたくはないんだけど……」

まどか「上条君の手を直したいって祈りはさやかちゃんにとって、とっても大切で、無意味なんかじゃないって思うの」

まどか「それが叶わないまま生きるのは、さやかちゃんが望む形じゃないんじゃないかなって……」

まどか「だからね、正直わからないや……ごめんね」


ほむら「ううん、気にしないで。私はまどかの意志を尊重するよ」

ほむら「それじゃ美樹さやかについてはしばらく様子を見る事にしようか」

ほむら「その間は魔女との戦いに極力巻き込まずに、魔法少女の存在をにおわすような事も避ける……どうかな?」


まどか「うん、そうだね。ほむらちゃん、ありがとう」

39: 2011/06/10(金) 23:37:04.68 ID:KMseEgWH0
ほむら「次に佐倉杏子だけれども……彼女はまだ見滝原には来ていない」

ほむら「ワルプルギスの夜の事もあるし、来るようであれば協力をお願いしたいな」


まどか「杏子ちゃんとは一緒に戦った事ぐらいはあるけれど、できればもっと仲良くなってみたいな」


ほむら「うんうん。杏子はね、ああ見えても毎回ちゃんと話を聞いてくれるし、結構頼りになるんだよ」


まどか「へー……、それって、私よりも?」


ほむら「まどか、いじわる言わないで」


まどか「ふーん」


ほむら「もう、まどかったら……まどかを一番、頼りにしてるよ」


まどか「……えへへ。嬉しいよ、ほむらちゃん」

40: 2011/06/10(金) 23:41:19.44 ID:KMseEgWH0
ほむら「話に出たけどワルプルギスの夜については、そこまで心配はしていないよ」


まどか「前回は私の攻撃で一撃だったもんね」


ほむら「うん。私は毎回戦っているし、攻撃パターンもわかってる」

ほむら「今のまどかの力があればそこまで苦戦はしないはずだよ……だから問題はむしろ、倒した後かな」


まどか「倒した後?」


ほむら「もうっ、忘れちゃったの?」

ほむら「前回ワルプルギスの夜を一撃で倒した貴女は、一瞬でソウルジェムが真っ黒になってしまった」

ほむら「まどかの一撃が強力すぎたってインキュベーターは言ってたけど、あの速さは他にも何かある気がする……」

ほむら「念の為に、グリーフシードのストックを大量にしておいた方がいいと思う」


まどか「そっか…あの時は必死だったから……」

まどか「それじゃ普段からも浄化は私の能力でやるようにして、グリーフシードは節約しておかないとね」


ほむら「………」ギュウウ


まどか「ほむらちゃん?」


ほむら「もう、あんなのは絶対に嫌だよ。二度と見たくない。二度と私を……一人にしないで」


まどか「うん……。約束する。ほむらちゃんを二度と一人になんかさせないよ」

42: 2011/06/10(金) 23:47:24.02 ID:KMseEgWH0
ほむら「そうなると、まず最初に接触するべきなのは……」


まどか「マミさんだね」


ほむら「うん……」


まどか「ほむらちゃん、やっぱりあの事を気にしてるの?」


──ソウルジェムが魔女を産むなら、みんな死ぬしかないじゃない!


ほむら「それは……そうだよ、あんな事があったら……」


まどか「そうだね……ごめん。でも今回は私も一緒だよ」

まどか「二人で急がず慎重に説明すればきっとわかってくれると思う……」

まどか「だってマミさんはあんなに優しいし、魔法少女の私達にとっての先生だったんだから」


ほむら「う…ん……。そう…だね、そうだよね」

43: 2011/06/10(金) 23:51:11.57 ID:KMseEgWH0
まどか「そう言えばほむらちゃん、口調が昔に戻ったみたいだよね」


ほむら「えっ、あ、変…かな……?」


まどか「ううん、そんな事ないよ。とーっても可愛い」ニコッ


ほむら「あんまり、からかわないでよまどか……」

ほむら「それにね、こんな顔見せるのはまどかにだけだよ」


まどか「えー、勿体無いなぁ、こんなに可愛いのに……」

まどか「あっ、そうだ」


ほむら「?」


まどか「ねぇ、ほむらちゃん。マミさんに会う時も最初その調子で行ってみようよ」


ほむら「えっ?……ちょっと恥ずかしいよ」


まどか「大丈夫だって。その方が絶対上手く行くから」


ほむら「うーん……。まどかがそう言うなら……」


まどか「うんうん。それと初対面でいきなり巴マミ、なんて言っちゃダメだからね?」


ほむら「もうっ。……わかったよ、まどか」

44: 2011/06/10(金) 23:53:25.22 ID:KMseEgWH0
まどか「じゃあ今日はこれぐらいにしよっか」


ほむら「うん、そうだね。巴マミについては明日の夕方に一つ孵化するグリーフシードがあるの」

ほむら「大して強くはないから何時も先回りして倒してストックを増やしていたけど、待ってればそこで会えると思うよ」


まどか「ほむらちゃん、また呼び捨て」


ほむら「あっ、いつもの癖で……」


まどか「えへへ、ちゃんと練習しておいてね?」

まどか「それで、ほむらちゃんもマミさんと仲良くなって、また皆で笑いながらお茶を飲めたらいいなって」


ほむら「うん……そうだね。頑張るよ」

45: 2011/06/10(金) 23:57:29.44 ID:KMseEgWH0
~翌日、ある結界内~

マミ「こんなところに結界があるなんて……でもまだ魔女は孵化してないわね、早く見つかって良かったわ」

マミ(あら……?あそこに誰か居るわね)

マミ「あなた達、大丈夫?ここは危ないわよ」


まどか「あ、どうもこんばんは」

まどか「心配してくれて、ありがとうございます。でも私たち二人、魔法少女なんです」


マミ「!?」

マミ「…なるほどね、では先客ということかしら」


まどか「あ、いえ……。あなたにお会いしたくて……」


マミ「どういうこと?」


まどか「ほら、ほむらちゃん」


ほむら「うん……」

46: 2011/06/10(金) 23:59:45.82 ID:KMseEgWH0
ほむら「あの……巴、マミ…さんですよね」


マミ「ええそうよ、どこかでお会いしたかしら?」


ほむら「私、暁美ほむらっていいます」

ほむら「私は……昔あなたに命を救ってもらったんです」

ほむら「その時のお礼が、まだちゃんと言えてなくて……」

ほむら「助けていただいて、ありがとうございました」ニコッ


マミ「そう…だったの、ごめんなさい、私覚えてなくて」

マミ「でも嬉しいわ、貴女のような可愛い子を助けることができただなんて」


ほむら「え、あの……、巴、さん?」

47: 2011/06/11(土) 00:02:36.38 ID:gRjD7A770
まどか「……二人とも、ここ結界内ですよ」


マミ「あら、そうだったわね。えーと、貴女は……」


まどか「あっ、私は鹿目まどかっていいます」


マミ「その制服、貴女も見滝原の生徒みたいね。2年生かしら」

マミ「キュゥべえからは同じ学校に魔法少女が居るとは聞いてなかったけれど……」


まどか「はい、魔法少女と言ってもつい先日キュゥべえと契約したばっかりなんです」


マミ「そうなの、それは大変ね……」

マミ「じゃあ私が、あなた達を手伝ってあげましょうか?」


まどか「本当ですか!?是非お願いします!」


マミ「ふふふ……それじゃあよろしくね、暁美さん鹿目さん」

48: 2011/06/11(土) 00:07:16.59 ID:gRjD7A770
────────────────────────

マミ「ハッ!」

ドドドドドドドドド

マミ「今よ!鹿目さん!」


まどか「はいっ!」

ドシュゥ

魔女「オオオオオオオ」


マミ(凄まじい魔力ね……これまでに会ったどんな魔法少女よりも……)

マミ「あら、グリーフシードね。おめでとう、これはあなた達二人のものよ」


まどか「ありがとうございます、マミさん。でも、それ私たちは使わないんです」


マミ「……それはどういう意味かしら?」


まどか「えっと、それはですね……」


ほむら(まどか……)トントン

まどか(……ほむらちゃん?)


ほむら「巴さん、それを説明するのにもうちょっと静かな場所に変えさせてもらっていいですか?」


マミ「……わかったわ、それじゃ私の家でいいかしら?」

49: 2011/06/11(土) 00:11:58.03 ID:gRjD7A770
~マミの家~

マミ「独り暮らしだから遠慮しないで。ろくにおもてなしの準備もないんだけど」


まどか「いえ、とんでもないです。急に押しかけてしまって、すいません」


まどか『……ほむらちゃん、どうかな?』

ほむら『うん、大丈夫。近くにインキュベーターの気配はないよ』

ほむら『内容は後で巴さんから伝わっちゃうだろうけど、会話の時に邪魔されたくはないからね』


ほむら「まず、私の魔法から説明しますね」

ほむら「巴さん、私の手を握ってもらえますか?」


マミ「ええと……こうかしら」ギュッ


カチッ─────

マミ「!?……こ、これは……」

ほむら「これが私の魔法……時間停止です」

マミ「時間…停止……!?」

ほむら「はい。そう長くは止めていられないですけど……」

─────カチッ

ほむら「ふうっ……」


マミ「凄い魔法ね……」

50: 2011/06/11(土) 00:14:57.56 ID:gRjD7A770
まどか「次は私の魔法ですね」

まどか「ほむらちゃん、ほむらちゃんのソウルジェム貸してもらえるかな」


ほむら「うん、まどか」


まどか「ありがとう、ほむらちゃん。マミさん、このソウルジェム少しだけ濁ってるのがわかりますか?」


マミ「ええ、わかるわ」


まどか「私の魔法は……」パァァ


マミ「え……ソウルジェムの濁りが……」


まどか「……はい、ソウルジェムを浄化する事ができるんです」


マミ「そんな魔法が存在するだなんて……」

マミ「……なるほどね、グリーフシードが要らないというのはそう言う理由があったのね」


まどか「はい。良ければマミさんのソウルジェムも浄化しましょうか?」


マミ「……そう、ね。ちょっとどんなものかやってみてもらえないかしら」


まどか「はい!任せてください」パァァ


マミ「……本当に、浄化されている、わね……」

51: 2011/06/11(土) 00:18:04.50 ID:gRjD7A770
まどか「私たち二人の事、少しは信用してもらえましたか?」


マミ「ええ、ここまで手の内を晒してもらったんだし」

マミ「特に鹿目さん、あなたは私たち、魔法少女全ての希望になりうる存在かもしれないわね」


まどか「へへへ……、そんな事言われると照れちゃいます」


マミ「……私から一つ質問させてもらってもいいかしら?」


まどか「はい、なんでしょう」


マミ「結界内で私を待っていたのは何故なのかしら。この分じゃお礼を言う為だけにという訳ではないでしょう?」


まどか「そうですね……、実は私たちにマミさんの魔女退治のお手伝いをさせて欲しいんです」

52: 2011/06/11(土) 00:22:50.04 ID:gRjD7A770
マミ「お手伝い……?」


まどか「はい」


マミ「メリットが見えないわね……あなた達はグリーフシードを必要としていない」

マミ「そして自分を卑下するつもりはないけれど、あなた達二人は私よりも強い力を持っているわ」

マミ「この状況で私の手伝いをするメリットはあるかしら?」


まどか「私たちは……この街を守りたいんです」


マミ「この、街を……?」


まどか「はい、そうです。私たちが住むこの街とそこに暮らす皆を……」

まどか「こんな理由では、いけませんか……?」


マミ「………」


ほむら「それに、もうじきこの街にワルプルギスの夜と呼ばれる魔女がやってきます」


マミ「!!!」

マミ「その情報は本当なの?」


ほむら「はい……、ですからその時に是非、巴さんの力をお借りしたいんです」


マミ「………………」

マミ「……わかったわ」

マミ「あなた達が嘘をついてるようには見えないし、ワルプルギスの夜が来るとあっては他人事とは言えないものね」

マミ「私からも、是非、協力をお願いするわ」

53: 2011/06/11(土) 00:31:32.32 ID:gRjD7A770
────────────────────────

QB「やあ、マミ。調子はどうだい?」


マミ「あらキュゥべえ、丁度さっきまであなたと契約したばかりの子が来てたのよ」


QB「鹿目まどかがかい?彼女は素晴らしいほどの魔力を持っているね」


マミ「そうね、あれほど強い魔力を持った子は初めて見たわ」

マミ「それに一緒に居た暁美さんって子も凄い魔法を持っていたし……」


QB「それはとても興味深いね。一体どんな魔法だったんだい?」


マミ「?、キュゥべえあなた知らないの?」


QB「彼女はちょっとしたイレギュラーでね、僕は彼女が魔法を使ったところを見たことがないんだよ」


マミ「ふーん、そうなの。まぁ時間を止めてるんじゃ本人以外見えるわけもないものね」


QB「時間停止?それが彼女の魔法なのかい?」


マミ「ええ、そうよ。停止した時に接触しているものについては止まらないようだったけど……」


QB(時間停止……それが彼女の願い?いや、それだけでは既に契約している事の説明にはならない)

QB(となると、その魔法は願いの副産物と見るべきだ)

QB(時間操作の魔術……もしかすると、暁美ほむらと鹿目まどかはこの時間軸の人間ではないのかも知れない)


マミ「ねぇ、キュゥべえ。もうじきこの街にワルプルギスの夜が来るっていうのは本当なの?」


QB「!!!」

QB「どこでそれを知ったんだい?その情報は今日マミに伝えようと思っていたところだよ」


マミ「あら、じゃあやっぱりあの子たちが言ってたのは本当の事なのね」


QB(そんな事まで知っているとは……やはり……あの二人は……)

64: 2011/06/11(土) 15:34:40.03 ID:gRjD7A770
~数日後、ある魔女の結界内~

ほむら「……」ジャキ

ダダダダダダダダダ

魔女「グ……ガ……」


マミ「暁美さん、ナイスよ!」

マミ「これで止めよ、くらいなさい、ティロ・フィナーレ!!」

ズドーン

魔女「グアアアアアアア」


まどか「ほむらちゃん、マミさん、お疲れ様っ」パァァ


ほむら「ありがとう、まどか」


マミ「ありがとう、鹿目さん。私たち魔法少女トリオも板についてきたわね!」


ほむら(何時の間にそんな名称がついたのかな)


まどか「そうですね、私たち三人なら向かう所敵無しですよ」


マミ「うんうん。……と、そう言えば暁美さんは明日見滝原中学に転入するんでしょう?」


ほむら「あ、そうですね。もうそんなに経ったのかな」


まどか「えへへ、これで学校でも一緒だね、ほむらちゃん!」


ほむら「うん、そうだね、まどか」


マミ「それじゃ色々準備もあるでしょうし、今日は少し早いけれどこれでお開きにしましょう」


ま・ほ「はーい」

65: 2011/06/11(土) 15:38:21.75 ID:gRjD7A770
ほむら「……はぁ」


まどか「どうしたの?ため息なんかついちゃって」

まどか「あ、もしかして新しい学校で上手くやっていけるかどうか不安とか?」


ほむら「うーん、まぁ結構当たってるかも」


まどか「大丈夫だよ。マミさんの時も上手くいったでしょ?」

まどか「ほむらちゃんはこんなに可愛いんだから絶対大丈夫。ほむらちゃんの可愛さは私が保証するよ」


ほむら(そんな事保証されても……)

ほむら「でもやっぱり学校は知らない人ばかりだし……それに美樹さやかも」


まどか「ほむらちゃん、また呼び捨てになってるよ」

まどか「……ほむらちゃんはさ、さやかちゃんのこと嫌い?」


ほむら「えっ?」

ほむら「うーん……、嫌いではないよ。ちょっと合わないかなって思う事はあるけど」


まどか「そっか。それなら良かった」

まどか「さやかちゃんはね、思い込みが激しくて、意地っ張りで、結構すぐ人と喧嘩しちゃったりするけど……」

まどか「でもね、すっごくいい子なの。だから、ほむらちゃんも仲良くなって欲しいな……」


ほむら「うん、わかってる。いい子じゃ無かったらまどかの親友なわけがないものね」

66: 2011/06/11(土) 15:40:48.67 ID:gRjD7A770
~翌朝、通学路~

まどか「おっはよう~」


仁美「おはようございます」


さやか「まどか、おそーい」

さやか「お?可愛いリボン。まどか今日は随分と気合入ってるじゃない」


まどか「そ……そうかな?そんな事ないと思う、けど……リボンちょっと派手過ぎない?」


仁美「とても素敵ですわ」


まどか「えへへー」

67: 2011/06/11(土) 15:44:46.93 ID:gRjD7A770
さやか「まどか、今日は何かあるの?」


まどか「今日はね、ウチのクラスに転校生が来るんだよ」


さやか「へー、…ってなんであんたそんな事知ってるのよ」


仁美「もしかしたら、まどかさんはその方のお知り合いだとか?」


まどか「うん、そうだよ。……私のとっても大切な友達………」


さやか「なんだとー?どこの馬の骨かわからない男子なんて許さんぞー!まどかは私の嫁になるのだー!」


まどか「や…ちょっと……やめてよーさやかちゃん。それにね、女の子だよ」


仁美「あらあら、一体どのような方なんですの?」


まどか「うーんとね」

まどか「すーっごいカッコよくて、とーっても可愛くて、それでもってとびっきり優しいんだよ」テレテレ


さ・仁「………」


仁美「い、いけませんわ、まどかさん。女の子同士で。それは禁断の、恋の形ですのよ~!」


まどか「え?いや、これは……あの……その……」


さやか「へぇー、まどかがそこまで言うなんて私も興味が出てきたよ」

68: 2011/06/11(土) 15:47:30.05 ID:gRjD7A770
────────────────────────

早乙女「はい、あとそれから、今日はみなさんに転校生を紹介します」


さやか「そっちが後回しかよ……、どれどれ」


早乙女「じゃ、暁美さん、いらっしゃい」


ほむら「はい」

ほむら「暁美ほむらです。皆さんよろしくお願いします」


さやか「うお、すげー美人!」


まどか(やっぱりほむらちゃんカッコいいなー)ジー

ほむら(あれ?まどかがこっちを……)ニコッ


ザワザワザワ…


さやか「何あの笑顔……こりゃ反則だわ」

69: 2011/06/11(土) 15:53:24.93 ID:gRjD7A770
~昼休み~

仁美「暁美さん、大人気ですわね」


さやか「文武両道で才色兼備、おまけに笑顔が最高だなんてどこの完璧超人だっつーの」


まどか「あはは、休み時間になるたび他のクラスの人が来て大変だったね」


仁美「あら、噂をすれば……」


ほむら「まどか、一緒にお昼を食べましょう?」


まどか「うん、ほむらちゃん!さやかちゃんと仁美ちゃんも一緒だけどいいかな?」


ほむら「ええ、勿論よ」


さやか「おっ、話がわかるね、転校生。それじゃ食堂だと転校生の人気で囲まれそうだし屋上で食べますか」

さやか「……って、この学校転校生は初めてだからお弁当持ってきてないかな?」


ほむら「大丈夫よ。まどかに聞いてたから、あらかじめお弁当を持ってきたわ」

70: 2011/06/11(土) 15:58:02.21 ID:gRjD7A770
さやか「はい、屋上到着ーっと。ありゃ、ここも意外と人が居ますなぁ」


まどか「うん、そうだね。……あ、マミさんだ。マミさーん」


マミ「あら、鹿目さんに暁美さんも。お友達と一緒にお食事?」


まどか「そうなんです。マミさんも一緒にどうですか?」


マミ「あら、良ければ是非ご一緒させてもらうわ」


────────────────────────

さやか「うわー、マミさんの紅茶美味しい」


仁美「本当ですわ……」


マミ「ごめんなさいね、魔法瓶に入れたものしかなくて」

マミ「今度、私の家にご招待した時に淹れたてをご馳走させていただくわ」


さやか「ほんとですかー?今からめちゃ楽しみですよー」


ワイワイワイ


ほむら『上手くいったね、まどか』

まどか『うん、本当に良かったよ。それに、ほむらちゃんもね』

71: 2011/06/11(土) 16:03:04.67 ID:gRjD7A770
さやか「そうそう、転校生ー」


ほむら「何かしら美樹さん。それに転校生じゃなく、ほむらでいいわ」


さやか「おっ、ノリがいいね。それじゃあたしもさやかと呼んでちょーだいな」


ほむら「ええ、わかったわ。……さやか、よろしくね」スッ


さやか「素直でよろしい。よろしくねーほむらー」ガシッ


ほむら「それで、用件は何だったのかしら」


さやか「あ、そうだそうだ」

さやか「ほむらとまどかの馴れ初めを聞きたいなーって」


まどか「馴れ初……ってさやかちゃん!?」


マミ「あら、いいじゃない。私も興味あるわね」


仁美「禁断の恋の形……その始まり!ですわね」

72: 2011/06/11(土) 16:07:18.18 ID:gRjD7A770
まどか「ちょっと、皆止めてよ恥ずかしいよ。こんなの、絶対おかしいよ」


ほむら「そうね……」

ほむら「私は昔、ずっと病弱で入院ばかりしていた」

ほむら「たまに学校に出てきても、気が弱くていじめられてばかりで……」

ほむら「まどかは、そんな私に優しくしてくれた、最初の大切な友達なの」


まどか「ほ、ほむら、ちゃん……」テレテレ


ほむら「この場を借りて言わせてもらうわ。まどか、本当にありがとう」

ほむら「貴女がいたから、私、こんなに変われたんだよ……」ギュゥ


まどか「あ…、あ…はひっ、ほむらひゃん……」


マミ「完全に二人の世界ね……」

さやか「私たちだけじゃなくその辺にも何人か居るんですけどねー」

仁美「これぞまさしく禁断の愛……ですわ」

74: 2011/06/11(土) 16:12:59.31 ID:gRjD7A770
────────────────────────

さやか「あー、やっと授業終わったわー」


まどか「お疲れ様、さやかちゃん。それじゃ帰ろっか」

まどか「ほむらちゃん、仁美ちゃん、一緒に帰ろうよ」


ほむら「ええ、一緒に帰りましょう」


仁美「ごめんなさい、今日は習い事があるのでお先に失礼しますわ」


さやか「ほーい。……お嬢様は大変だね、私は小市民に生まれて良かったわ」


~下校中~

ほむら『……!』

ほむら『まどか、インキュベーターの気配が近くに……』

まどか『えっ!?』

ほむら『まださやかにアイツを接触させるわけには行かない。私が様子を見てくるよ、後で合流しようね)

まどか『う……うん。わかった!』


ほむら「ごめんなさい、二人とも。ちょっと急用を思い出したので先に帰らせてもらうわ」タッタッタッ


さやか「あっ、うん」

さやか「何かあったのかね、ほむら。大分慌ててたみたいだったけど」


まどか「えっ、あ、うん。そうだね。何かあったのかなぁ……」

75: 2011/06/11(土) 16:19:48.96 ID:gRjD7A770
ほむら(気配は確かこの辺りから……)


QB「おやおや、君の方からわざわざ出向いてくれるとはね」


ほむら「インキュベーター……!」


QB「その名前を知っているとは。君がどこでその知識を手に入れたのか、僕はとても興味深いね」


ほむら「私の方からと言ったわね。私に何か用でもあるのかしら?」


QB「うん、そうだよ。君の持つ魔法について教えてもらいにきたんだよ」


ほむら「魔法……?そんなことを言われて、はいそうですかと手の内を晒す馬鹿がいるのかしら?」


QB「それはとても残念だよ。マミから時間停止の魔法が使えるということは聞いているんだけどね」


ほむら(やはり、そこまでは知られている……。でもそれは想定内だわ)

ほむら「巴さんにも困ったものね。確かに私の魔法は時間停止よ。停止した時間の中で殺されたくなければ消えなさい」


QB「時間停止……確かに面白い能力だね。だけど……それだけじゃないんだろう?」


ほむら「!!!」

76: 2011/06/11(土) 16:27:28.16 ID:gRjD7A770
QB「能力自体を願いとするのはそこまで珍しいわけじゃない、今回の鹿目まどかもそうだ」

QB「けれども、それだけじゃ君達の知識や行動に説明がつかないんだよ」

QB「時間遡行、それが君の本当の能力……違うかい?」


ほむら「……消えなさい……本当に殺すわよ」


QB「図星のようだね。君はこの時間軸の人間じゃない」

QB「だけど、それでも一つ疑問が残る。鹿目まどかの存在だ。彼女の知識も聞きかじりといったレベルではない」

QB「しかし彼女はこの時間軸では最初契約していなかった……君とは仕組みが異なるようだけど、彼女も違う時間軸から来たのかい?」


ほむら「………」チャキ


QB「無駄な事だということも知っているんだろう?」

QB「代わりはいくらでもあるけど、無意味に潰されるのは困るんだよね」

QB「勿体ないじゃないか」

QB「それに今この近くには魔女を探しにマミも来ているんだ」


ほむら「!?」


QB「もし君がここで僕を撃てば、せっかく得られたマミの信用を失ってしまうかも知れないよ?」


ほむら「くっ……」


QB「理解が早くて助かるよ。それじゃ僕はこの辺りで失礼するよ」

QB「大体の疑問に確証が得られたしね。ではまた会おう、暁美ほむら」

82: 2011/06/12(日) 23:48:43.86 ID:0Ubq3E/v0
ほむら『まどか……聞こえる?』

まどか『うん。どうしたの?ほむらちゃん』

ほむら『インキュベーターに私の能力を知られちゃったよ』

まどか『ええっ!?……えっと、でも、それでどうなるの?』

ほむら『まだ、何とも言えない……。けどアイツまどかが違う世界の記憶を持っている事にも気付いてたの』

ほむら『アイツのことだからきっと何か仕掛けてくるよ……こっちも行動を早めないと』

まどか『うん、わかったよ。それじゃまず何をしようか』

ほむら『巴さんに、ソウルジェムの真実を話そうと思うんだけど……』

まどか『大丈夫かな……』

ほむら『まだ全部は言わないよ、だから多分大丈夫だと思う』

ほむら『それよりもインキュベーターに対する巴さんの感情を早く変えないと……』


マミ「あら、暁美さんこんなところに居たの」


ほむら「あ、巴さん……」


マミ「今日は遅かったわね、もうここの魔女は私が倒してしまったわ。あー、一人で疲れたなー」


ほむら「ごっ、ごめんなさい……」


マミ「ふふふ、冗談よ。やっぱり仲間がいるっていいものね」


ほむら「……巴さん」


マミ「どうしたの?」


ほむら「お話したいことがあるんです、この後私の家に来てもらえませんか?」

83: 2011/06/12(日) 23:51:14.39 ID:0Ubq3E/v0
~ほむらの家~

マミ「暁美さん、話したいってことは何かしら」

マミ「私たちはもう仲間よ。なんでも気兼ねなく言ってちょうだいね」


ほむら「はい……巴さん」


まどか「………」


ほむら「巴さんはソウルジェムについて、キュゥべえから何て聞いていますか?」


マミ「うーん。そんなに詳しく聞いてはいないのだけれど……」

マミ「魔法少女に選ばれた女の子が、契約によって生み出す宝石……」

マミ「私たちの魔力の源であり、魔法少女であることの証でもある」

マミ「とまぁ、その程度のことかしら」

マミ「ああ、そうそう。なるべく肌身離さず持ち歩いてくれとは言われたわね」


ほむら「……なぜ肌身離さずに持ち歩くかというのは聞きませんでしたか?」


マミ「ええ、そうね……。当時はほとんど疑問に思わなかったし、魔力の源なのだから余り離れたら魔法が使えなくなるんじゃないかしら?」


ほむら「それは……違います!巴さんはキュゥべえに騙されているんです!」


マミ「えっ……?」


QB「騙すとは人聞きが悪いね、暁美ほむら」

84: 2011/06/12(日) 23:53:55.98 ID:0Ubq3E/v0
ほむら「出たわね……」


QB「やれやれ。僕は訊かれなかったから答えなかっただけなんだけどね」

QB「知らなければ知らないままで、何の不都合もないのだから」

QB「騙すという行為自体、僕には理解できないよ」

QB「君が説明しようとしていたことは、僕が君たちの魂をソウルジェムに変える事だろう?」


ほむら「ええ、そうよ……。お前の口から説明してもらえれば助かるわ」


マミ「魂…を……?キュゥべえ、何を言っているの……?」


QB「いいかいマミ、君たち魔法少女にとって、元の身体なんていうのは、外付けのハードウェアでしかないんだ」

QB「ただの人間と同じ、壊れやすい身体のままで魔女と戦ってくれなんて、とてもお願い出来ないよ」

QB「君たちの本体としての魂には、魔力をより効率よく運用できる、コンパクトで安全な姿が与えられているんだ」

QB「魔法少女との契約を取り結ぶ、僕の役目はね。君たちの魂を抜き取って、ソウルジェムに変える事なのさ」

85: 2011/06/12(日) 23:56:30.35 ID:0Ubq3E/v0
マミ「魂を…抜き、取る……じゃあ…じゃあ、今動いている私の身体は………」


QB「身体?何を言ってるんだいマミ。それはマミじゃなくて、ただの抜け殻なんだって」

QB「君の本体はこっち。この輝くソウルジェムが君の魂だよ」


マミ「嘘…、嘘よ……そんな…いやぁ……」ボロボロ


まどか「マミさん……」


QB「君たち人間はいつもそうだね。事実をありのままに伝えると、決まって同じ反応をする」

QB「訳が分からないよ。どうして人間はそんなに、魂の在処にこだわるんだい?」


ほむら「……もう十分よ、消えて頂戴」


QB「やれやれ。説明させるだけさせておいてそれとはね」


マミ「キュゥべえ……」

マミ「私からもお願いよ……、しばらくあなたの顔は見たくないわ……」


QB「なら仕方ないね、僕はしばらく退散させてもらうとするよ」スゥ…

86: 2011/06/13(月) 00:00:18.97 ID:F3v/IHi50
ほむら「巴、さん……」


マミ「うっ…うっ…」ボロボロ


ほむら「巴さん、あまり自分を祖末にしないでください」

ほむら「私たちは、もう普通の身体とは違ってしまったけど、できることはたくさんあるはずです」

ほむら「だって巴さんは、私の命を救ってくれたんですよ?」


マミ「暁美、さん……」


まどか「そうですよ!マミさんはずっとこの街の平和を守ってきてくれたんです」

まどか「マミさんは私の……いえ、私たちの自慢の先輩です!」


マミ「鹿目さん……」

マミ「……ええ、そうね。この街を守るためにはこんなところでずっと泣いているわけにはいかないわね」

マミ「ありがとう、二人とも……」

87: 2011/06/13(月) 00:04:04.78 ID:F3v/IHi50
~数日後の放課後~

ほむら『今日は例のお菓子の魔女が出現する日だね』

まどか『うん……。マミさん大丈夫かな……』

ほむら『この前のショックからは大分立ち直ったように見えるけど……』

ほむら『でも前回の世界とは違う。危なかったら私たちが助けられるからね』


さやか「あ、二人とも。今日は恭介のお見舞いに行こうと思うから先帰っててよ」


ほむら『……!』

ほむら『まどか、上条恭介が入院している病院って……』

まどか『うん…。あの魔女が出る病院だよ……』

ほむら『仕方ないね……、私が巴さんの援護をするから、まどかはさやかが結界に近づかないようお願い』

まどか『わかったよ…。ほむらちゃんも気をつけてね?』

ほむら『うん、大丈夫。巴さんのことは私に任せて』


まどか「さやかちゃん、私もついていっていい?」


さやか「えっ、まどかも行くの?ほむらいるじゃん」


ほむら「ごめんなさい、今日は私も寄るところがあるのよ」


さやか「あー、そーなんだ。じゃあ行こっか、まどか」


まどか「うん!」

88: 2011/06/13(月) 00:06:21.88 ID:F3v/IHi50
~お菓子の魔女の結界内~

マミ「お待たせ、暁美さん」


ほむら「あ、巴さん。早かったですね」


マミ「それはそうよ、可愛い後輩を一人で戦わせるわけにはいかないもの」


ほむら「もう巴さんったら……」


マミ「ふふ……。それで、状況はどうかしら?」


ほむら「あ、はい。もうすぐ孵化がはじまるはずです」


マミ「そう、それじゃ行きましょう、暁美さん」

89: 2011/06/13(月) 00:11:06.25 ID:F3v/IHi50
────────────────────────

ドゥンドゥン

マミ「……せっかくのとこ悪いけど、一気に決めさせて…もらうわよ!」


ほむら(前回の世界で、私は巴さんが死んだ瞬間を見ていない)

ほむら(どのタイミングで来るのか、しっかりと見極めないと……)


マミ「ティロ・フィナーレ!!」

ズドーン

マミ「ふぅっ、終わったかし…」


魔女「グオオオオオオ」ガパァ


マミ「あ………」

マミ(私…、死……)

カチッ─────

ほむら「間に、合った……」フゥ

ほむら「巴さんを移動させないと……」ガシッ

タッタッタッ

ほむら「ここまで来れば……大丈夫かな」

─────カチッ

魔女「!?」ガチィン


マミ「え…、わ、私……」ガクガク


ほむら「巴さん、立てますか?」


マミ「あ、暁美さんが助けて、くれたの……?」

マミ「ごめん…なさい……身体が、震えて………」


ほむら「……大丈夫ですよ、あの魔女は私が倒します」


マミ「暁美さん……」


ほむら「今度は私が、貴女の命を救ってみせます」


マミ「……!」ポロポロ

90: 2011/06/13(月) 00:15:27.44 ID:F3v/IHi50
魔女「グオオオオオオ」


ほむら(さてと、後はこいつを倒すだけ)

カチッ─────

ほむら「そんなにお腹が空いてるなら、この爆弾でも食べなさい」

ポイポイッ

─────カチッ

チュドォン


ほむら「巴さん、終わりましたよ」


マミ「ありがとう……暁美さん、あなたは命の恩人ね」


ほむら「ふふふ、それはお互い様ですよ。それじゃ戻りましょうか」


マミ「あ、ちょっと待って!暁美さん」


ほむら「?」


マミ「えーと、その……まだ…立てないのよ……」

91: 2011/06/13(月) 00:21:48.47 ID:F3v/IHi50
────────────────────────

ほむら『まどか、終わったよ。巴さんも無事』

まどか『お疲れ様っ、ほむらちゃん!』

ほむら『でもまだちょっと一人で立てないみたいだから巴さんを家まで送っていくね』

まどか『うん、わかった。後で私も行くよ』


~マミの家~

マミ「ごめんなさいね、暁美さん」

マミ「ちょっと死にそうになったぐらいでこんなことになって、こんなんじゃ先輩失格よね」


ほむら「そんなことないですよ。あんな状況なら誰だってそうなります」


マミ「ふふ……。優しいわね、暁美さんは……」

マミ「でもね、まだあの瞬間を思い出すと身体が震えてしまうの」

マミ「だからちょっと落ち着くまで、しばらく魔女と戦うことはできそうにないわ……本当にごめんなさい」


ほむら「巴さん……」

ほむら「わかりました。それまでこの街の平和は私たちが守ります」

ほむら「だけど、早く戻ってきてくださいね。巴さんは私たちの自慢の先輩なんですから……」


マミ「………」

マミ「うっ…うっ…」ポロポロ

92: 2011/06/13(月) 00:25:52.65 ID:F3v/IHi50
ほむら「巴、さん……?」


マミ「憧れるほどのものじゃないわよ、私……」

マミ「無理してカッコつけてるだけで、怖くても辛くても、誰にも相談できないし、一人ぼっちで泣いてばかり……」


ほむら「巴さん……」スッ

ほむら「巴さんはもう一人ぼっちなんかじゃないですよ」

ほむら「私が……、私たちがいるじゃないですか」


マミ「暁、美、さん……うっ…うっ…」ボロボロ

マミ「うわぁぁぁぁぁん」ダキッ

マミ「ありがとう、ありがとう、暁美さん」

マミ「私、もう一人ぼっちじゃないのね……」グスグス

93: 2011/06/13(月) 00:29:57.95 ID:F3v/IHi50
ほむら「………」ナデナデ


マミ「ふふ……。これじゃどっちが先輩かわからないわね」

マミ「ねぇ、暁美さん……」


ほむら「?」


マミ「貴女っていつも『私たち』、『私たち』よね」

マミ「それじゃ寂しいわ……貴女さえ良ければ、私……」グイッ


ほむら「え…?あ、その、とっ巴、さん……?」


まどか(あ、カギが開いてる)

まどか「お邪魔しまーす」ガチャ


ほむら「あっ、まどか!?」


マミ「………」


まどか「………」

バタンッ タッタッタッ…

ほむら「まどか!待って!」バッ


マミ「あっ……」


ほむら「ごめんなさい、巴さん!また今度!」ガチャッ タッタッタッ


マミ「…あーあ、逃しちゃった、わね………」

94: 2011/06/13(月) 00:34:31.46 ID:F3v/IHi50
ほむら「まどか、待ってよ!」


まどか「………」スタスタスタ


ほむら「……くっ」

ほむら「待ちなさい!まどか!」


まどか「……!」ピタッ


ほむら(……効果あったかしら)

ほむら「まどか……」


まどか「……ほむらちゃんのバカ!」ダッ


ほむら「あっ、まどか!」

ほむら(仕方ない……)


カチッ─────
─────カチッ


ほむら「やっと追いついた……」

ほむら「私の話を聞いて、まどか」


まどか「ほむらちゃん……」

まどか「ほむらちゃん、何その格好?まさか時間止めて追ってきたの?必死だね」


ほむら「貴女のためなら必死になるぐらい当然よ……」


まどか「ふーん」

95: 2011/06/13(月) 00:41:30.99 ID:F3v/IHi50
ほむら「まどか、お願い、聞いて。さっきのは誤解よ」


まどか「誤解ってなんのこと?まだ私なんにも言ってないんだけど」


ほむら「うっ…、それは…その……巴さんが私に抱きついてきたことよ」


まどか「マミさんが?ふーん……。それで、それがなんの誤解なの?」


ほむら「そっそれは……」


まどか「言えないじゃない。なにか後ろめたい気持ちがあるんじゃないの?」

まどか「だいたい、私があんな約束お願いするまでは、ほむらちゃんマミさんと仲良かったんだしね」

まどか「ようやく約束から開放されたなら、もう遠慮する必要なんてないものね」

まどか「『巴さんのことは私に任せて』なんていって二人であんなことしてるなんて信じられないよ」


ほむら「……まどか、違うわ」


まどか「何が違うの?」


ほむら「私は貴女が好き。貴女だけを見ているの。だから他の人にうつつを抜かすようなことは誤解だと言ったのよ」


まどか「……!ふ、ふーん……」


ほむら「ねぇ、まどか。私が魔法少女になった祈りを貴女は知っているかしら?」


まどか「えっ……、ううん。……それは私の記憶にはない、けど……」


ほむら「そう。では今、この場所で、改めて貴女にこの祈りを捧げるわ」

ほむら「私は、鹿目さんとの出会いをやり直したい。彼女に守られる私じゃなくて、彼女を守る私になりたい」


まどか「……!」


ほむら「私の心は最初から貴女だけのもの。だからどうか、お願いだから、貴女を私に守らせて」


まどか「ほむら…ちゃ…ん……」ジワ

まどか「ほむらちゃん……ほむらちゃああああん」ダキッ

まどか「ごめんね……変な意地張って……私、ほむらちゃんが大好きだよ……」ポロポロ


ほむら「いいえ、私の方こそごめんなさい……私も、まどかが、大好きよ」








QB「………」

96: 2011/06/13(月) 00:52:30.05 ID:F3v/IHi50
~数日後~

まどか「ねぇ、ほむらちゃん。最近少し平和だね」


ほむら「そうね、まどか。インキュベーターも姿を見せないし」

ほむら(恐らくアイツは、まどかが魔女になれば十分だと思っているに違いない)

ほむら(今回、一向にさやかへ勧誘をしてこないし、それ以前に姿を現そうともしていない)

ほむら(まぁそれはこちらとしても好都合なのだけど……)

ほむら(となると、どこかでまどかを魔女化させる為に策を練っているはず……)

ほむら「まどか、気をつけて。アイツはきっと何か企んでるわ」


まどか「うん、わかったよ。でも大丈夫、ほむらちゃんが私を守ってくれるよね?」


ほむら「……え、ええ!勿論よ!」


まどか「えへへ……嬉しいな。勿論、ほむらちゃんのことは私が守るからね!」


ほむら「う……うん」カァッ


まどか「そう言えば、ほむらちゃんまた口調が戻ったね」


ほむら「あ、そう…かも」


まどか「えへへっ、可愛いほむらちゃんもいいけど、カッコいいほむらちゃんも素敵だよ」


ほむら「もう、まどかったら……」

97: 2011/06/13(月) 00:58:53.97 ID:F3v/IHi50
~ある廃教会~

QB「やあ、杏子。久しぶりだね」


杏子「珍しいね、キュゥべえがアタシを呼び出すなんて」


QB「今日はちょっとした情報を持ってきたんだよ」

QB「君なら興味を持ってくれるんじゃないかと思ってね」


杏子「へぇ、なんだい」


QB「マミが戦闘不能になった。死んではいないけれど、まだしばらくは戦えない状態だ」


杏子「……!?マミの奴が?」

杏子「じゃあ今、マミの縄張りには誰も魔女を狩る奴がいないってことか?」


QB「いやあの土地にはもう新しい魔法少女がいるんだ。つい先週契約したばかりだけどね」


杏子「何それ?超ムカつく」

杏子「でもまぁ、あんな絶好の縄張り、みすみすルーキーのヒヨッ子にくれてやるってのも癪だよねぇ」


QB「どうするつもりだい、杏子?」


杏子「決まってんじゃん」

杏子「要するに、ぶっ潰しちゃえばいいんでしょう?その子」

108: 2011/06/15(水) 00:06:11.60 ID:dGeGiZLp0
~見滝原~

杏子「ふぅん…。あれがこの街の新しい魔法少女ねぇ……」

杏子「あんなトロそうな奴、瞬殺っしょ?」


QB「油断しない方がいいよ、杏子。彼女の魔力資質は君以上だ」


杏子「へっ、上等じゃないの。退屈過ぎてもなんだしさ。ちっとは面白味もないとね」


QB「それに、すべて君の思い通りに行くとは限らないよ。この街にはもう一人、魔法少女がいるからね」


杏子「……はあ?どういうことさ。アンタこの前は新しい魔法少女だけだって言っただろ?」


QB「僕は一人だけだなんて言ってないよ?」

QB「それにもう一人の子はかなりのイレギュラーなんだ。僕はその子と契約した覚えも無いんだからね」


杏子「話が違うぜ……ったくもう」

109: 2011/06/15(水) 00:08:29.38 ID:dGeGiZLp0
QB「杏子、本当に彼女たちと事を構える気があるのなら、僕が力を貸してあげるよ」


杏子「……どういう風の吹き回しだよ」


QB「何を言ってるんだい、杏子。僕たちはこんなにも長い付き合いじゃないか」

QB「君がとても優秀な魔法少女だということは良くわかっている」

QB「それにね、彼女たちのやり方は僕にとって効率が悪いんだ。とってもね」


杏子「ふぅん……?」

杏子(……効率?グリーフシードか?)

杏子「それじゃそいつら使い魔まで全部倒してるってわけか?」


QB「そうだね、なんといってもマミの後輩だしね」


杏子「ウゼェ、卵産む前の鶏シメてどうすんだよ、こんな絶好の狩場で。ホントムカつくわ」

杏子「いいぜ、キュゥべえ。そいつらまとめてぶっ潰してやるよ」

110: 2011/06/15(水) 00:15:50.62 ID:dGeGiZLp0
杏子「で、力を貸すって何をしてくれんだ?」


QB「君が新しい魔法を使えるようにしてあげるよ」


杏子「はあ!?そんなことが、できるのか?」


QB「それは勿論、どんな魔法少女でもというわけにはいかないね」

QB「杏子が特別な魔法少女だからこそ、できることなんだ」

QB「ちょっとソウルジェムを貸してもらえるかい?」


杏子「あ、ああ……いいぜ。ほらよ」

111: 2011/06/15(水) 00:17:35.96 ID:dGeGiZLp0
QB「………」スッ


ドクンッ──


杏子「!?」

杏子「が……はっ……」


──お前は……お前は人の心を惑わす魔女だ!

──親父!もうやめてくれ!アタシが悪かった…!だから…だから……!

──もう、終わりだ…終わり……皆、父さんと一緒に死のう……

う、うわあああああああああ


杏子「あ……あ………?」


QB「気分はどうだい?杏子」


杏子「テメェ……人のトラウマほじくって、一体なんのつもりだ……」


QB「君の潜在意識を少し操作させてもらったよ」


杏子「潜在……意識……?」


QB「ああ、そうさ。せっかく使えるようになった能力を自分で使えなくするなんてどうかしてるよ」

QB「これで君の本来の魔力が開放された」

QB「その性質は眩惑と幻覚。今の君なら十分に使いこなせるだろう」


杏子「へぇ……そうかい。ご苦労だったね」

杏子「だけど、やり方が気に食わねぇ……」

杏子「今回の件が終わったら、テメェにも落とし前つけてやるからな」


QB「………」

112: 2011/06/15(水) 00:19:24.77 ID:dGeGiZLp0
~数日後、ある魔女の結界~

ほむら「……」

ズドドドドーン

魔女「ウオオオオオオン」


カランカラン

ほむら「ふぅ…。グリーフシードもストックに少し余裕が出てきたわね」


まどか「お疲れ様っ、ほむらちゃん」パァァ


ほむら「ありがとう、まどか。貴女もお疲れ様」


ザァァァァァァ───


ほむら「何!?周囲の景色が……」

ほむら(魔女の結界……?いや違う……!)


まどか「ほむらちゃん!これは……」


ほむら「まどか!気をつけて!」

113: 2011/06/15(水) 00:21:44.85 ID:dGeGiZLp0
────────────────────────

まどか「ここは……?」


ほむら「………」


まどか「あ、ほむらちゃん!無事だったんだね!」


ほむら「………」


まどか「ほむら、ちゃん?」


ほむら「なぜ……」


まどか「えっ?」


ほむら「なぜ貴女は毎回忠告を聞かないのかしら?どこまで貴女は愚かなの」

ほむら「何度繰り返しても結局契約してしまう。私に恨みでもあるのかしら?」

ほむら「愚か者が相手なら、私は手段を選ばない」チャキ


まどか「ほ、ほむらちゃん?一体何を……」

タァァァァン

まどか「きゃあ!」


ほむら「貴女はね、史上最強の魔女になるの」

ほむら「この星を壊滅させる最悪の魔女」

ほむら「だからその前にせめて私の手で殺してあげるわ…まどか」


まどか「………」

114: 2011/06/15(水) 00:25:11.40 ID:dGeGiZLp0
まどか「………」


ほむら「観念したのかしら?……いい心がけね」チャキ


まどか「…………し……でよ……」


ほむら「……?」


まどか「私とほむらちゃんの誓いを、馬鹿にしないでよ!」チャッ

ドシュゥ

ほむら幻影「ぐっ…あっ……」スゥ…


バリィィィン───


まどか「……」


杏子「うわっ、マジかよ…。私の幻術が……」


まどか「今のは、あなたがやったの?」


杏子「……!」ゾクゾクゾク

杏子(なんだよ、この威圧感は……!)


まどか「私ね、ちょっと怒ってるんだよ?」


杏子(ヤバすぎる……正面からやっても勝ち目がねぇ)


まどか「魔法、効かなくて残念だったね」


杏子「へぇ……そうかい。でもお仲間には効いたみたいだぜ?」


まどか「!?」


ほむら「うぅ……」グッタリ


まどか「ほむらちゃん!!!」

115: 2011/06/15(水) 00:26:49.81 ID:dGeGiZLp0
杏子「おっと!こいつはちょっともらっていくぜ」ザッ


ほむら「………」


まどか「あ!待って!」チャッ

まどか(ダメ……ほむらちゃんに当たっちゃうかも)

まどか「くっ……」


まどか(そんな……ほむらちゃんを守れなかった……)

まどか(ううん…まだだよね、落ち込んでる暇なんてない)

まどか「今助けにいくよ、ほむらちゃん」

116: 2011/06/15(水) 00:30:35.12 ID:dGeGiZLp0
~ある廃ビル~

ほむら「う……ん………」


杏子「……お目覚めかい?」


ほむら「!?」

ほむら「杏子!?」


杏子「おいおい…、なんでアタシの名前を知ってるんだ?」


ほむら「そ、それは……」ギチギチ

ほむら(な…、縛られてる!?)


杏子「おかしいな……どこかで会ったか?」


ほむら「これは一体どういうことなの?杏子」

ほむら「私の知ってる貴女は、あんな魔法使えなかったはず……」


杏子(そんな事まで知ってるなんて、こいつ何者だ?……覚えてないだけで昔の知り合いなのか?)

杏子「まぁアンタにはちょっとした人質になってもらおうかと思ってね」

117: 2011/06/15(水) 00:33:26.26 ID:dGeGiZLp0
ほむら「まさか、貴女……まどかと戦うつもりなの?」


杏子「察しが良いね。アイツと正面からやるのはちとキツそうだし、アンタの手を借りようと思ったのさ」


ほむら「そんな……。お願い、止めて!私たちは貴女と戦いたくはないわ!」


杏子(……ったくもう、調子狂うな、ホント)

杏子「おいアンタ…、もしかして、アタシ達どこかで…」


QB「杏子!まどかが来たよ!」


杏子「チッ、早すぎだろ……バケモンかよ」


ほむら「杏子!待って!」


杏子「……これが終わったら、また話を聞いてやるよ。んじゃな」

118: 2011/06/15(水) 00:37:14.62 ID:dGeGiZLp0
ほむら「インキュベーター……!」


QB「ひどい格好だね、暁美ほむら」

QB「その有様では時間を止めてもなにもできないだろう?」


ほむら「くっ…!杏子をたきつけたのは、やはりお前なのね」

ほむら「まどかと杏子を戦わせて、何をさせようというの!?」


QB「戦い?あの二人が勝負になるはずがないじゃないか」

QB「だからちょっとしたショーを演じてもらおうと思ってね」


ほむら「なんですって?」


QB「最高の魔法少女が最悪の魔女になり、そのエネルギーで僕らの宇宙が救われる」

QB「文句の付けようがないハッピーエンドになる予定なんだ。君も良いショーだとは思わないかい?」


ほむら「……!」ワナワナ

119: 2011/06/15(水) 00:43:46.94 ID:dGeGiZLp0
QB「最初鹿目まどかの願い事を聞いたときは驚いたよ」

QB「だけど、自分のソウルジェムが浄化できるといっても決して魔女にならないわけじゃない」

QB「簡単なことさ、浄化する時間もないぐらいの速さで絶望を与えてあげればいいんだよ」


ほむら「まどかは……まどかは絶望なんかに屈しないわ!」


QB「ケラケラケラケラ…」


ほむら「……何がおかしいというの?」


QB「普通ならばそうだろうね、彼女は精神力も相当なものだ」

QB「だけどたった一つ、彼女が執着するものがある。それが君だ」


ほむら「!!!」

ほむら(…でも……)

ほむら(私にとってのまどかは願いの対象であり、私の全て)

ほむら(だけど、まどかにとっての私は、好いてくれてはいるのだろうけど恋人同士というわけでもない)

ほむら(本当にそこまでの絶望が発生するのかしら)


QB「時間遡行者、暁美ほむら」

QB「君が時間を巻き戻してきた理由はただ一つ……鹿目まどかの安否だろう?」

QB「魔法少女としての潜在力はね、背負い込んだ因果の量で決まってくる」

QB「何故鹿目まどかが、魔法少女としてあれほど破格の素質を備えていたのか僕はずっと疑問に思っていたんだ」

QB「だが、君の能力が一つの疑問に答えを出してくれた」

QB「鹿目まどかは、君が同じ時間を繰り返す毎に、強力な魔法少女になっていったんじゃないのかい?」

QB「君が繰り返してきた時間……その中で循環した因果の全てが、巡り巡って、鹿目まどかに繋がってしまったんだろう」

QB「お手柄だよ、ほむら。君が鹿目まどかを最強の魔女に育ててくれたんだ」

120: 2011/06/15(水) 00:51:21.15 ID:dGeGiZLp0
ほむら「………」


QB「余り驚いてはいないようだね?」


ほむら「ええ、そうね。前の世界のお前にも似たような事を言われたわ」

ほむら「でも、それがどうしたというのかしら?」


QB「なるほどね、その時間軸の僕も同じ結論に至っていたとは面白い」

QB「でも今回の時間軸ではこの話には続きがあるんだよ、暁美ほむら」


ほむら「……?」


QB「鹿目まどかの因果の量を見れば、君が実に多くの時間軸を渡ってきたことがわかる」

QB「そして鹿目まどかは、恐らくこことは異なる時間軸の契約で、今までの時間軸での記憶を現在の時間軸で得ることができている…違うかい?」


ほむら(……!こいつ、そこまで……!)


QB「多くの時間軸を渡り、長い長い時間を鹿目まどかの為に費やしてきた君には、彼女に対して並々ならぬ感情があるのだろう?」

QB「それと同じ時間の記憶を得た彼女が、君に対して同じ感情を持ったとしても、なんら驚くには値しないね」

QB「ご丁寧にも彼女は、契約の際、君を助けられなければ自分のソウルジェムを破壊するとまで言っていたよ」


ほむら「!!!!!」


QB「そう、鹿目まどかは、たとえ目の前で家族や恋人を殺されようとも絶望しないかも知れない」

QB「だが、暁美ほむら、君が死ねば終了だ。彼女は自分を保てない」

143: 2011/06/26(日) 00:28:41.75 ID:nyBMdUfn0
杏子「へっ、もうお出ましかい」


まどか「………」


杏子(なんだよこの魔力は……冗談じゃねぇ!)


まどか「……杏子ちゃん」


杏子「!?」

杏子(こいつも…アタシの事を知っている……!?)

杏子(なんなんだよ、こいつらは一体!)


まどか「ほむらちゃんを、返して」


杏子「……!嫌だ、と言ったら?」

ドシュゥ ──ズンッ

杏子「が……はっ……」


まどか「大丈夫。ソウルジェムは外してあるから」


杏子幻影「…」スゥ…


まどか「……ふぅん」


杏子(はぁっ、はぁっ、はぁっ……)

杏子(こ、こいつは……マジでヤバイ)

杏子(やるしかない、か……)

144: 2011/06/26(日) 00:29:58.57 ID:nyBMdUfn0
QB「おや、杏子。随分と早く戻ってきたね」

QB「やっぱり正面から彼女と戦うのは無理があったんじゃないのかい?」


杏子「………」


ほむら「杏子……お願いよ、私の話を……」


杏子「悪いが予定が変わった。やっぱりアンタには人質になってもらうよ」


ほむら「杏子!?」

ドガッ

ほむら「うっ…」ガクッ


QB「やっと僕の作戦を実行してくれる気になったのかい?」


杏子「………」

145: 2011/06/26(日) 00:32:26.34 ID:nyBMdUfn0
────────────────────────

まどか(ほむらちゃん…!どこに居るの…?)タッタッタッ


杏子「おい、止まれ!これが見えねぇのか!?」グイッ


まどか「……?」


ほむら「………」グッタリ


まどか「ほむらちゃん!」


杏子「こいつの命が惜しけりゃ、変身を解除しな」


まどか「……!」


杏子「聞こえなかったのか?」

ザシュッ

ほむら「うっ!」


まどか「ほむらちゃん!」

まどか「うぅ……」シュウン


杏子「……よし、いいぞ」

146: 2011/06/26(日) 00:35:28.53 ID:nyBMdUfn0
まどか「お願い……」


杏子「……?」


まどか「私はどうなってもいい、だからほむらちゃんを解放して……」グスッ


杏子「……!?」


まどか「欲しいんなら、私の命だって、あげる、からぁ……」ポロポロ


杏子(なんだよ、これは!一体、なんだってんだよ……!)

杏子(でも…、ここまで来たらやるしかねぇ)

杏子「……そうはいかねぇな。これ以上、アンタ達に魔法を使ってもらわれると困るんでね」


まどか「え……?」

まどか(あ、あれは……ほむらちゃんのソウルジェム!?)

まどか「お願い、やめて!それだけは……!」


杏子「……まずはこいつだ」ポイッ


ヒュンッ…


───ガシャン



まどか「………」

ドクンッ──

まどか「あ………」

ドクンッ───

まどか「あ……あ……」

ドクンッ────

まどか「うわああああああああああああああああああああああああああ」

147: 2011/06/26(日) 00:39:40.29 ID:nyBMdUfn0
杏子「……!?な、なんだ……、オイ!」


QB「僕の作戦が成功したようだね、杏子」


杏子「何を言ってやがる…テメェに言われた事はまだ終わってねぇ」

杏子「アタシはソウルジェムを砕いただけだ……、なのにアイツのこの取り乱し様……」


QB「ああ、説明するのを忘れていたね。ソウルジェムというのは君たち魔法少女の魂なんだ」


杏子「!?」


QB「だからそのソウルジェムが壊れた時点で、暁美ほむらという存在は死んでしまったんだよ」


杏子「そういう…ことかよ……」パチンッ


ほむら幻影「…」スゥ…


QB「へぇ、幻とはね。さっき砕いたソウルジェムも偽物だったのかい?」


杏子「……ああ、そうだ」


QB「やれやれ、僕のことをもうちょっと信じてもらいたいものだね」


杏子「どの口がっ……!」ジャキ


QB「……だが効果としては十分にあったようだ」

QB「お手柄だね、杏子。これで最強の魔女が誕生するよ」


杏子「な、なんだと!?……テメェどういうことだ……」

杏子「ソウルジェムが濁りきったら、魔法が使えなくなるんじゃなかったのかよ!」


QB「僕は嘘なんてつかないよ、だってほら、見てごらん」

QB「とても魔法なんて使える状態じゃないだろう?」ケラケラケラケラ…


杏子「テメェェェ!」


ゴゴゴゴゴ──


杏子「うおっ!?」


QB「はじまるよ、この星の最高のハッピーエンドがね」

QB「この街の君たちには、一番最初に彼女に殺される権利をあげようじゃないか」



「それには及ばないわ」

148: 2011/06/26(日) 00:43:48.63 ID:nyBMdUfn0
QB「!?」

カチッ─────

ダッ

─────カチッ

ほむら「まどか、グリーフシードよ。気をしっかり持って!」カチリ


まどか「あ……ほむ…ら、ちゃん………?」


ほむら「そうよ、まどか。ごめんなさい遅くなったわ」


まどか「生きて……生きてたんだね。良かった…良かった……良かったよぉぉぉ……」ボロボロ


ほむら「約束した、でしょう……?貴女は、私が、守って、みせる…って……」ドサッ


まどか「ほむら…ちゃん?ほむらちゃん!ほむらちゃん!」


杏子「ア、アイツ…、爆弾で自分を拘束ごと吹き飛ばしたってのか……!?」


QB「………」

149: 2011/06/26(日) 00:46:39.65 ID:nyBMdUfn0
まどか「ほむらちゃん!ほむらちゃん!」ユサユサ


杏子「……クソッ!」ダッ


まどか「ほむらちゃん、ウソでしょ?嫌だよ……目を開けてよ……」ポロポロ


杏子「バカ野郎!」


まどか「……!」ビクッ


杏子「何ぼさっとしてやがる!ソウルジェムが無事なんだからさっさと治療しろ!」


まどか「!!!」

まどか「う…うん!」パァァ


杏子「……チクショウ……」パァァ


QB「やれやれ、今回は失敗のようだね」


杏子「………」ギロリ


QB「全く、君には困ったものだよ。まさか偽物なんて用意するとはね」

QB「おかげでこの有様だよ」


まどか「キュゥべえ……やっぱり全部、あなたの仕業だったのね」


QB「勘違いしないで欲しいんだが、僕らは何も、人類に対して悪意を持っている訳じゃない」

QB「全ては、この宇宙の寿命を伸ばすためなんだよ?」

ドシュゥ ──ズンッ

QB「」


まどか「………」


QB2「やれやれ、まさか君にも殺される日が来るとはね」

QB2「君に本気を出されるとまずそうだ。ここは退散させてもらうよ」スゥ…

150: 2011/06/26(日) 00:51:45.37 ID:nyBMdUfn0
~ほむらの家~

杏子「………」パァァ


まどか「……どう?杏子ちゃん」


杏子「右腕が殆ど吹っ飛んだんだ、ただの治療とはワケが違う」

杏子「頭にも大きな傷があるし、全身はボロボロ……魔法少女じゃ無かったら死んでたかも知れねぇ」

杏子「まぁ運良くソウルジェムのある左手はほとんど無傷だったし」

杏子「それにアンタの能力……、ソウルジェムを浄化する力があれば魔法も使い放題だから数日で治るだろう」


まどか「良かったぁ……」ホッ


杏子「……ったく、あんな魔力に加えてこんな能力があるだなんて、アンタどうかしてるぜ」


まどか「私はアンタじゃないよ杏子ちゃん。私、鹿目まどか。まどかって呼んでよ」


杏子「あー、はいはい。数時間前とはえらい違いだわ……」

杏子「………」

杏子「なぁ、まどか……」


まどか「どうしたの、杏子ちゃん?」


杏子「今回の事は全部アタシの責任だ。本当にすまなかった」

杏子「謝って済むことじゃないのはわかってる。だけど……」


まどか「ううん。もういいよ、杏子ちゃん」


杏子「……?」


まどか「杏子ちゃんが悪いんじゃないって私もわかってるし」

まどか「それに……杏子ちゃん、大怪我したほむらちゃんを助けてくれたよね」

まどか「だからね、それで十分。ありがとう、杏子ちゃん」


杏子「まどか……」


ガチャッ

マミ「暁美さん!」

151: 2011/06/26(日) 00:54:25.78 ID:nyBMdUfn0
まどか「あ、マミさん。こんばんは」


杏子「お、マミじゃねーか。久しぶりだな」


マミ「佐倉さん……」

マミ「私の可愛い後輩を傷物にするだなんて、どういうつもりかしら?」


杏子「ぐっ…、わかってるよ。こいつをこんな体にしちまったんだ、責任は取る」


マミ「責任ってどういうこと?どさくさに紛れて私たちの間に入り込もうとするのは止めてちょうだい」


杏子「はあ?何言ってんだ、アタシはなぁ…」

ギャーギャーギャー


まどか「………」

ドンッ

マ・杏「!?」ビクッ


まどか「二人とも静かにしてください。ほむらちゃんが寝てるんですよ?」ニコッ


マミ「え…ええ、そうね」


杏子(ヤベェぐらいに目が笑ってねぇな)

152: 2011/06/26(日) 00:57:21.62 ID:nyBMdUfn0
杏子「そう言えば、アンタ達には聞きたい事がある」

杏子「一つは、なぜまどかと、そこのほむらってやつが私の事を知っていたのか」

杏子「もう一つは…言うまでもねぇな。……さっきのあれは、一体どういうことだ?」


マミ「……?貴女たち、佐倉さんの事を知っていたの?」


まどか「………」


杏子「やっぱりマミから聞いたわけでもない……ますますわかんねぇな」


まどか「……マミさんと杏子ちゃんには、ちゃんと説明しなきゃいけないことはわかってます」

まどか「でも、ごめんなさい、もう少しだけ時間をもらえませんか?」

まどか「せめて…、ほむらちゃんが目を覚ましてから……」


杏子「ああ、アタシは構わないよ」


マミ「そうね、私もよ。貴女は大分疲れてるわ、鹿目さん。今日はゆっくりと休んでね」

153: 2011/06/26(日) 01:02:18.00 ID:nyBMdUfn0
────────────────────────

チュンチュン…チュン…

まどか「んっ……」

まどか「……?」ボー

まどか(そっか…私、何時の間にか寝ちゃってたんだ)

まどか(あ、毛布……マミさんが掛けてくれたのかな?)


杏子「よう、まどか。やっと起きたか」


まどか「あ、杏子ちゃん。おはよう」

まどか「私…そんなに寝てた?」


杏子「いや、そういう訳でもないんだがな……」

杏子「起き抜けで悪いが、ちょっとソウルジェムの浄化頼めるか?」


まどか「うん、いいよ。見せてみて」

まどか「うわ……、結構濁っちゃってるね。どうしたの?」パァァ


杏子「サンキュ。いやなんかマミの奴が妙に突っかかってきて……」

杏子「二人で張り合って治療してたらもうほとんど終わっちまったよ」


まどか「えっ、そうなの?杏子ちゃんありがとう!」

まどか「ほむらちゃんもう起きてるかな……」


杏子「あー、悪い、まどかもう一つ」


まどか「?」


杏子「マミもその辺でぶっ倒れてるから適当に浄化してやってくれ」


まどか「ははは…」

154: 2011/06/26(日) 01:04:11.75 ID:nyBMdUfn0
マミ「………」zzz…


まどか「マミさーん?ソウルジェム借りますよ」

まどか「あー…、杏子ちゃんのよりも更に濁ってるかも」

まどか(マミさんも……ほむらちゃんの為にこんなに頑張ってくれたんですね)


マミ「うーん…暁美、さん……」ムニャムニャ


まどか(ありがとうございます、マミさん)パァァ

155: 2011/06/26(日) 01:06:48.12 ID:nyBMdUfn0
まどか(ほむらちゃんは……まだ寝てるのかな)


ほむら「すぅ…すぅ…」zzz…


まどか(えへへっ…やっぱり可愛いな……)


杏子「おーい、まどか」


まどか「どうしたの?杏子ちゃん」


杏子「お前学生だろ?学校行かなくていいのか?」


まどか「うん、そうだけど…今日はお休みしようかな」

まどか「ほむらちゃんの目が覚めるまでは、傍に居たいから……」


杏子「……そうか。それならアタシは何も言わねぇよ」

杏子「マミはまぁ……起きないだろ、あれは」

杏子「それじゃアタシも少し仮眠してくるよ」


まどか「うん、ありがとう、杏子ちゃん。おやすみなさい」

156: 2011/06/26(日) 01:11:40.68 ID:nyBMdUfn0
まどか「ほむらちゃん……」

まどか「ごめんね、こんな大怪我させてしまって……」

まどか「私がほむらちゃんを守るって約束したのに……」グス

まどか(私…もっと、もっと強くならなくちゃ)


────────────────────────

まどか(もう夕方、か……)

まどか(学校、サボっちゃった…、パパとママにばれたら何て言われちゃうかな)


ほむら「……ぅ…ん」


まどか「!!!」

まどか「ほむらちゃん!」

まどか「良かった……もしかしたら、ずっと目が覚めないんじゃないかって……」ポロポロ


ほむら「……?」


まどか「……ほむらちゃん?」


ほむら「あ、あなたは……誰、ですか…?」

171: 2011/07/01(金) 00:22:02.79 ID:6YQFqvOP0
まどか「えっ……」

まどか「ウソ…だよね?私だよ……まどかだよ……」


ほむら「まどか……?」キョトン


まどか「そ、そんな……」ペタン

まどか「こんなのって…ない、よ……」

まどか「う、うわぁぁぁん」ボロボロ


ほむら「え…あ、あの……」オロオロ


マミ「鹿目さん!?何かあったの?」

杏子「まどか、どうした!?」


ほむら「……っ」ビクッ


マミ「暁美…さん…?」

172: 2011/07/01(金) 00:24:39.14 ID:6YQFqvOP0
────────────────────────

ほむら「………」オドオド


杏子『記憶喪失、だぁ?』

マミ『ええ、そうね。私たちの事も、ここが何処かも、自分の事すらも覚えていないみたい』

杏子『……ったく、そんな話がありえるのか?アタシたちは魔法少女なんだぞ』

マミ『私たちだって身体自体は普通の人とそう変わらないわ。なにより現にそうなってるじゃないの……。しかし困ったわね』

杏子『まどかはずっと泣いてるだけだし…、どうすんだよ』

マミ『まずは、暁美さんを落ち着かせる方が先でしょうね、佐倉さんも話を合わせてちょうだい』

173: 2011/07/01(金) 00:27:42.26 ID:6YQFqvOP0
ほむら「………」


マミ(さて、いきなり魔法少女の話なんてしても混乱してしまうわよね……)

マミ「落ち着いて聞いてちょうだい、順を追って説明するわ」

マミ「ここは、貴女の家よ」

マミ「そして貴女の名前は、暁美ほむら」


ほむら「暁美、ほむら……」


マミ「ええ、そうよ。貴女は昨日、近くの階段で足を滑らせてしまったの」

マミ「それでその時に頭を打って気を失ってしまっていたのよ」

マミ「特に外傷は無かったから、貴女の家で休んでいてもらったのだけど……」

マミ「でも大丈夫よ、今はちょっと混乱しているだけ。きっと直ぐに思い出す事ができるようになるわ」


ほむら「そ、そうだったんですか……。あの、あなたは…」


マミ「私の名前は、巴マミ。貴女が通っている見滝原中学校の3年生」

マミ「そしてこの子は、佐倉杏子。私の知り合いよ」

マミ「この子は、貴女が事故にあった時に偶然近くにいて、私たちに知らせてくれたのよ」


杏子『よくもまあ、そんなポンポンと話が出るよな』

マミ『早く話を合わせなさい』


杏子「あー、そうだな。アタシはその直前までマミと一緒だったんだ」

杏子「そんで、アンタがマミと同じ制服着てたから、取りあえず連絡して来てもらったのさ」

杏子「そしたら、マミの友達だっていうからね。この家まで一緒についてきたってワケさ」

174: 2011/07/01(金) 00:30:33.03 ID:6YQFqvOP0
ほむら「そうなんですか……ごめんなさい、ご迷惑をおかけして」


杏子「気にしなくていい、それより早く良くなるといいな」


ほむら「はっ、はい」

ほむら「……え、ええと、…その……」チラッ


まどか「ひっく、ぐすっ。うぅ…」ポロポロ


マミ「……あの子のことね?」


ほむら「はい…」


マミ「あの子の名前は、鹿目まどか。あの子は……貴女の一番の親友なのよ」


ほむら「……!」


マミ「貴女が記憶を無くしてしまったのが余程ショックだったみたいね……」

マミ「正直私も、今のあの子には何て言葉をかけてあげれば良いのかわからないわ」


ほむら「………」

175: 2011/07/01(金) 00:33:35.22 ID:6YQFqvOP0
ほむら「あっ、あの…」


まどか「ひっく、ぐすっ……ほむら、ちゃん……」


ほむら「ごめんなさい……私、まだあなたの事、思い出すことができなくて……」

ほむら「でっでも、頑張って思い出すから!あなたの事、きっと思い出してみせるから」

ほむら「だ、だから…お願い……そんなに泣かないで、鹿目さん……」


まどか(鹿目、さん……か……)

まどか「うん……。ありがとう、ほむらちゃん……」


まどか「……ねぇ、ほむらちゃん。私の事、まどかって呼んでくれないかな?」


ほむら「えっ?そ、そんな……」


まどか「ダメかな…」


ほむら「ちょ、ちょっとまだ、恥ずかしい、です…」


まどか「そっか…無理言ってごめんね、ほむらちゃん……」

176: 2011/07/01(金) 00:37:13.46 ID:6YQFqvOP0
────────────────────────

杏子「それでさ、これからどうするんだ?」


マミ「うーん…。魔女退治はまず無理として、学校に行くかどうかという問題があるわね……」

マミ「私としてはできるだけ、今まで通りの生活をしてもらいたいけれど……」

マミ「こればかりは本人の意思次第ね」

マミ「と言うか佐倉さん、貴女こそどうするつもりなの?」


杏子「アタシか?そうだな……」

杏子「アイツがこうなっちまったのはアタシの責任でもある」

杏子「だからアイツが治るまでは、アイツがやってた魔女退治はアタシが請け負ってやるよ」


マミ「驚いたわ……貴女が自分からそんな事を言うだなんて」


杏子「ま、アタシなりのケジメってやつさ。勿論カチ合えば協力する、使い魔もちゃんと倒す、これでいいだろ?」


マミ「そうね、私はそれで構わないわ。鹿目さんはどうかしら?」


まどか「………」ボー


マミ「鹿目さん?」


まどか「えっ……あっ、はい。私も…それで大丈夫、です」

177: 2011/07/01(金) 00:40:45.03 ID:6YQFqvOP0
~数日後、ほむらの家~

ほむら「あ、巴さん。こんばんは」


マミ「こんばんは、暁美さん。お邪魔するわね」


ほむら「い、いえ、そんな、お邪魔だなんて…」


マミ「ふふふ…。それで具合はどうかしら?」


ほむら「はっ、はい。身体の方はもう、すっかり大丈夫です。でもまだ、記憶の方は……」


マミ「そう……。学校の方にも来ていないみたいだし、やっぱりまだ抵抗があるのかしら?」


ほむら「はい……。まだ気持ちの整理が、付かなくて……ごめんなさい…」


マミ「謝る必要なんて無いわ、こういうのは無理が一番良くないの。今はゆっくりと気持ちを落ち着けてちょうだいね」


ほむら「あ、ありがとう、ございます…」

178: 2011/07/01(金) 00:45:06.49 ID:6YQFqvOP0
杏子「お、なんだマミ。来てたのかよ」


マミ「あら、佐倉さん。……と言うか貴女毎回居るわよね?魔女退治はどうしたの」


杏子「魔女なんてそう毎日見つかるものでもないだろ、アタシも暇なんだよ」


マミ「まったく……。肝心の鹿目さんは一体どこに行ったのかしら」


杏子「まどかか……。一応アイツも毎日来てはいるんだけどな」


マミ「そうなの?」


杏子「ああ。だけど来ても直ぐに帰っちまうんだよな、一体何しに来てるんだか」


ほむら「………」

ほむら「あっ、あの……」


マ・杏「?」


ほむら「わ、私……鹿目さんに、嫌われてしまったんでしょうか……」

ほむら「私が、いつまで経っても鹿目さんのこと、思い出さないから……」

ほむら「せっかく来てくれても、鹿目さんはずっとうつむいて……目を合わせてもくれないんです」グス

179: 2011/07/01(金) 00:47:43.01 ID:6YQFqvOP0
────────────────────────

マミ「やれやれ、これは鹿目さんと一度じっくりお話しする必要がありそうね」


杏子「今からか?まー頑張れよ」


マミ「何言ってるの、佐倉さん?貴女も一緒に行くのよ」


杏子「はぁ?マジかよ……」


マミ「貴女は確か、鹿目さんに聞きたい事があったのよね?」


杏子「そうだけど、アイツがこの調子じゃな……。まぁ仕方ねぇな、探すだけは探してやるよ」

180: 2011/07/01(金) 00:50:40.15 ID:6YQFqvOP0
まどか「はぁ……」トボトボ

まどか(私、何やってるんだろ……)

まどか(お見舞いに行っても、顔をまともに見ることすらできないで……)

まどか(繰り返して来た世界を知らないほむらちゃん……)

まどか(そんなほむらちゃんを見てると、まるでこの世界に私だけが一人取り残されてしまったみたいな)

まどか(……ほむらちゃんはずっと、こんな気持ちで、私のために……)


杏子「よう、まどか」

マミ「やっと見つけたわ、鹿目さん」


まどか「マミさん…、杏子ちゃんも」


マミ「鹿目さんちょっとお話があるの、私の家まで来てもらえないかしら?」

181: 2011/07/01(金) 00:58:55.24 ID:6YQFqvOP0
~マミの家~

マミ「鹿目さん」


まどか「はい…」


マミ「単刀直入に言わせてもらうわ。貴女、暁美さんを心のどこかで避けてるでしょう?」


まどか「そ、そんな、避けてるだなんて…」


杏子「それじゃあ何で毎回逃げるように帰るんだ?目を見て話もしてやらねぇんだ?」


まどか「………」


マミ「……自分の事を覚えていない暁美さんなんて、もう親友ではない、という事かしら」


まどか「……!そんな事、ありません!」


マミ「そうよね、貴女はそんな子じゃない。でも、それなら、どうして……」


まどか「………」


マミ「ねぇ、鹿目さん。あまりこんな事を言いたくはないのだけれど……」

マミ「暁美さんの記憶がずっと戻らない可能性だってあるのよ」

マミ「それなのに今からそんなに思い詰めていては、貴女いつか潰れてしまうわ」

マミ「貴女と暁美さんの思い出はとても貴いものだと思うけれども、私たちはまだ若いのよ?」

マミ「これからあなた達二人で、また新しい思い出を作っていけばいいじゃない」


まどか「……!」

まどか「………それじゃ、ダメ、なんです……」


マ・杏「えっ?」


まどか「それじゃダメなんですよ、私たちはぁ……」ポロポロ

193: 2011/07/09(土) 00:13:01.03 ID:MaYS/mg+0
まどか「ひっく、ぐすっ……」


マミ「……鹿目さん、貴女の抱えてるものを話してはもらえないかしら?」

マミ「頼りない先輩だとは思うけれど、それでも貴女の力になりたいのよ」


杏子「まったく、見てらんねぇっつうの。一人でうじうじ悩んでんじゃねぇよ」


まどか「二人とも……」

まどか「……わかりました。全部、お話します」

194: 2011/07/09(土) 00:15:32.66 ID:MaYS/mg+0
まどか「……私とほむらちゃんには未来の記憶があるんです」


マミ「未来の記憶?」


まどか「はい。正確に言うと、ほむらちゃんは時間停止以外に、過去に戻れる魔法が使えるんです」

まどか「ほむらちゃんはその力を使ってこの一ヶ月間を何度も何度も繰り返してる」

まどか「私は以前の世界での契約で、ほむらちゃんが過去に戻る時、それに便乗させてもらう形で記憶だけを持ち越すことができるようになったんです」


マミ「……にわかには信じがたい話ね」

マミ「だけど、思い当たる節が無い訳でもないわ」

マミ「鹿目さん、一つ聞いてもいいかしら?」


まどか「はい、なんですか?」


マミ「私が、以前に暁美さんの命を救ったというのは、こことは別の世界の話なの?」


まどか「……そうです。ほむらちゃんと私にとって最初の世界」

まどか「マミさんはそこで魔女に襲われたほむらちゃんを助けたんです」

まどか「だけど、その後この街にワルプルギスの夜が来て、皆死んでしまって……」

まどか「ほむらちゃんは、そんな未来を変えるために、この一ヶ月を繰り返してるんです」

195: 2011/07/09(土) 00:18:25.10 ID:MaYS/mg+0
杏子「ワルプルギスだと……そんなのがこの街に来るってのか?」


まどか「うん……今からだと、ちょうど二週間後になるかな」

まどか「杏子ちゃんは違う世界で、何度も私たちの事を手伝ってくれていたの」

まどか「ほむらちゃんも言ってたよ、杏子ちゃんは頼りになるんだって」


杏子「チッ…なんだよそりゃ、調子狂っちまうぜ」


マミ「鹿目さん、ワルプルギスの夜についてだけど、とても強大な魔女というのは知っているわ」

マミ「だけど……、何度も時間を繰り返しているという事は、貴女の魔力を持ってしても勝てない相手なの?」


まどか「……ほむらちゃんは、ずっと私を魔法少女にさせないように一人で頑張ってきたんです」


マミ「……それには何か理由があるのかしら?」


まどか「そっ…、それは……」


マミ「?」


まどか「………」


杏子「……まどか、アタシの考えを言ってもいいか?」


まどか「……うん、いいよ。杏子ちゃん」

196: 2011/07/09(土) 00:21:24.26 ID:MaYS/mg+0
杏子「理由は、まどかを魔女にさせない為、だろう?」


マミ「!?」

マミ「……佐倉さん、貴女何を言っているの?」


杏子「ソウルジェムが濁りきった時、アタシ達は魔女になっちまう」

杏子「しかも、魔法少女として強ければ強い程、魔女としても強くなる……違うか?」


まどか「……正解だよ、杏子ちゃん。この前の時に気付いたんだね」


杏子「ああ。……まぁ確証はなかったけどな」


マミ「そ、そんな……」

197: 2011/07/09(土) 00:23:48.97 ID:MaYS/mg+0
まどか「マミさん……」


杏子「おいマミ、大丈夫か?」


マミ「……とても大丈夫、とは言えないわね。私が今まで倒していたのは、元魔法少女の仲間だったなんて……」

マミ「その上、私もいつか魔女になるだなんて、何だか悪い夢でも見ているみたいよ」


まどか「………」


マミ「……だけど」

マミ「鹿目さんと暁美さんはその事実を知って尚、この街と私たちを守るために戦い続けてきたのよね」

マミ「それにこの世界で暁美さんは、私の命を助けてくれた恩人なの」

マミ「暁美さんにとってはお互い様でも、他の世界の事なんかじゃ、私にとってはただの一方通行じゃない」

マミ「その恩人があんな状態なのに、私一人で絶望している訳にはいかないわ」

198: 2011/07/09(土) 00:27:13.29 ID:MaYS/mg+0
杏子「それじゃ当面の目標はワルプルギスってワケか」

杏子「その戦いに参加できそうなメンツは、アタシたち三人と、回復すればほむらって事になるのか?」


まどか「うん、そうだね。他の世界だとさやかちゃんも契約している事が多かったんだけど……」


マミ「えっ?美樹さんも魔法少女の素質があったのかしら?」


まどか「はい。でもこの世界だと、さやかちゃんは魔法少女のことをまだ何も知らないんです」

まどか「だけど、さやかちゃんには大切な願い事もあるって知ってるから……私、どうしたらいいか」


マミ「……そうね。願い事の内容を知らない私が言うのもなんではあるけれど」

マミ「無理に巻き込むことはないと思うわ。こんな運命があるんじゃ尚更、ね」


まどか「そう…ですよね。……わかりました」


杏子「いくらワルプルギスの夜が超弩級の大物魔女でも、こっちにはアタシもマミもいるんだ」

杏子「それに加えてまどかのバカみたいな魔力があれば、そんなトーシロの出番なんてあるわけないぜ」


まどか「もう杏子ちゃん、バカは余計だよ…」

199: 2011/07/09(土) 00:30:55.94 ID:MaYS/mg+0
────────────────────────

マミ「……大体の事情はわかったわ」

マミ「あなた達の過去と記憶にこれほどの意味があっただなんて……」

マミ「……でもね、鹿目さん、これだけは言わせてちょうだい」


まどか「……?」


マミ「貴女がどれほど悲しんでいるのか、私には推し量る事もできないわ」

マミ「だけど、今一番悲しい思いをしているのは、何もかも失ってしまった暁美さんの方じゃないかしら」

マミ「そんな時に、貴女が傍に居てあげないでどうするの?」

マミ「あの子はね……泣いていたわ、自分が鹿目さんに嫌われたのではないかって」


まどか「えっ……」


杏子「今のアイツを見ていることは、お前にとって辛い事かもしれない」

杏子「けどさ、お前が居る時だけ、アイツは本当に嬉しそうな顔で笑うんだ」

杏子「それに一緒に居てやることで、少しは記憶を取り戻すかもしれないだろ?」

杏子「だからさ、早くアイツのとこに行ってやれ」


まどか「マミさん…、杏子ちゃん……」

まどか「……私、今からほむらちゃんのところに行ってきます」

まどか「ありがとうございます、二人とも!」ダッ

200: 2011/07/09(土) 00:33:19.82 ID:MaYS/mg+0
~ほむらの家~

ピンポーン

ほむら(誰だろう……こんな時間に)

ほむら「はーい」


ガチャ


まどか「ほむらちゃん、こんばんは。こんな遅くにごめんね」

まどか「……入っても、いいかな」


ほむら「か、鹿目さん……?」

ほむら「うん……、どうぞ……」


まどか「ありがと、ほむらちゃん」

201: 2011/07/09(土) 00:39:52.09 ID:MaYS/mg+0
ほむら「今日はどうしたの、鹿目さん?こんな時間に……」


まどか「ほむらちゃんにね、どうしても伝えたい事があったんだ」


ほむら「伝えたい、こと……?」


まどか「うん……」ギュッ


ほむら「ひゃっ!か、鹿目さん…?」カァァ


まどか「ごめんね、ほむらちゃん……寂しい思いをさせてしまって」

まどか「マミさんと杏子ちゃんに言われて気付いたの、私は嫌な事から目を背けてるだけだったんだって」

まどか「記憶が無くなって一番不安なのは、ほむらちゃん自身なのに……」

まどか「だけど、これからはちゃんと向き合って、あなたの全てをまっすぐに受け止めてあげたいから」

まどか「これからも、私をほむらちゃんの傍に居させて欲しいんだ……」


ほむら「あ、あの、そのっ、か…鹿目さ……」ボンッ


まどか「あ、ほむらちゃん!」

まどか「ごめん…急にこんなまくしたてられて、驚いたよね……イヤ、だった?」


ほむら「う、ううん…、そんな事無い。とっても、嬉しい、です……」


まどか「……えへへ、ありがとっ、ほむらちゃん」



まどか(ほむらちゃん……)

まどか(あなたが、全てを忘れてしまっても)

まどか(私が、ほむらちゃんとの思い出も、祈りも、誓いも全部覚えているから)

まどか(だから大丈夫。あなたとの誓いを、絶望で終わらせたりなんかしない)

まどか(ほむらちゃんを絶対に幸せにしてみせるよ……)

215: 2011/07/24(日) 00:07:42.43 ID:FvrJOeZt0
~数日後、通学路~

ほむら「ごめんね、鹿目さん。家まで迎えに来てもらっちゃって……」


まどか「ううん。気にしないで、ほむらちゃん」

まどか「学校への道順、まだ全部思い出せてないと思うし」

まどか「それにね、またほむらちゃんと一緒に学校にいけるなんて、とっても嬉しいなって」


ほむら「鹿目さん……」

ほむら「正直、まだちょっと不安だけど……鹿目さんが傍に居てくれるなら、私も、少しだけ勇気を出せるんじゃないかって思ったの」


まどか「えへへ、そう言われると私も少し照れちゃうな」


さやか「おはよー、まどかにほむら」


仁美「おはようございます、お二人とも」

216: 2011/07/24(日) 00:10:37.04 ID:FvrJOeZt0
さやか「ほむらー、あんたさ記憶喪失になったんだって?」


ほむら「はっ、はい…」


仁美「ちょっとさやかさん、ストレート過ぎますわ……」


さやか「まぁまぁ。あたしって回りくどいのは嫌いだからさ」

さやか「でも、まどかからちょっと聞いてたけど、あんた本当に雰囲気変わったよね、別人みたい」


ほむら「そ……、そうなんですか?」


さやか「ま、気にしないでいいよ、あんたとはもう友達なんだし」

さやか「困ったことがあったら、このさやかちゃんに任せなさい」


仁美「そうですわね。私も精一杯、暁美さんのお手伝いをさせていただきますわ」


ほむら「あ、ありがとうございます……」


さやか「しっかし……」


ほむら「?」


さやか「今度は気弱属性に記憶喪失だぁ?くーっ!どこまでキャラ立てすりゃあ気が済むんだよあんたってやつはー」


ほむら「えっ…?あっ、あの……」


さやか「萌えか?そこが萌えなのかあ!?」


仁美「あらあら…ふふふ」


まどか(皆また仲良くなれたみたいだね。さやかちゃん、仁美ちゃんありがとう)

217: 2011/07/24(日) 00:14:22.63 ID:FvrJOeZt0
~放課後~

ほむら「ふぅ……」


まどか「お疲れ様っ、ほむらちゃん」

まどか「久しぶりの学校、どうだった?」


ほむら「うん……色々と大変なこともあったけど」

ほむら「でも、とっても楽しかったです」


まどか「良かったぁ……」


さやか「でも記憶喪失の事、先生とあたし達しか知らないはずなのに噂ってのは広がるもんだね」

さやか「ほむらも休み時間になる度に囲まれちゃって、ほむらの転校初日を思い出しちゃったよ」


仁美「でも、毎回まどかさんが暁美さんを助けにいらして……とても格好良かったですわ」


まどか「えへへ……ほむらちゃんが困ってたら見過ごせる訳がないよ」

まどか「だからね、もっと私を頼ってくれていいんだよ。ほむらちゃんの為なら、私、なんでもしてあげるから……」


ほむら「か、鹿目さんっ」カァァ


さやか「あはは、ほむら、あんた顔真っ赤だよ」


仁美「素敵ですわ、記憶を失ってもお二人の禁断の愛は健在なのですわね」

219: 2011/07/24(日) 00:17:37.74 ID:FvrJOeZt0
────────────────────────

仁美「それでは、お先に失礼しますわ」

さやか「私も家こっちだし、じゃあね」


まどか「またねー」

ほむら「さようなら…」


まどか「それじゃほむらちゃん、家まで送っていくよ」


ほむら「えっ…、そんな……悪いよ」


まどか「そんな事ないよ、私がやりたいからやるんだし」

まどか「それに、もっとほむらちゃんと一緒に居たいの……ダメかな?」


ほむら「うっ…ううん。そんなこと、ない、です……」


まどか「やったぁ。それじゃ行こっ、ほむらちゃん」

220: 2011/07/24(日) 00:20:44.04 ID:FvrJOeZt0
ほむら「鹿目さん、今日は本当にありがとう」


まどか「えっ?」


ほむら「私ね、ずっと夢だったの、こうやって普通に学校に行って、普通に授業を受けて、普通に友達とおしゃべりして……」

ほむら「あれ……?でも記憶が無いのにずっとって、変な話だよね……」

ほむら「なんだろう……この気持ち……記憶が無くなる前の私って、何をしてたんだろう……」


まどか「ほむら、ちゃん……」


ほむら「ねぇ、鹿目さん。鹿目さんなら知ってるよね?以前の私って、一体……」


まどか「そ、それは……」


ズズズ───


ほむら「えっ、何これ……道が、変わっていく……」


まどか(魔女の結界!?ほむらちゃんを……守らなきゃ!)

221: 2011/07/24(日) 00:24:51.59 ID:FvrJOeZt0
ほむら「ど…どこなの、ここ……?」


使い魔「………」ヌゥ…


ほむら「何……何なの!?いやぁ!鹿目さん!」


まどか「……大丈夫だよ、ほむらちゃん」


ほむら「えっ?」


まどか「ほむらちゃんは、私が絶対に守るから」パァァ

ドシュゥ ──ズンッ

使い魔「」


ほむら「こ、これは……?」


使い魔「………」ヌゥ…


ほむら「あっ!また……」


マミ「鹿目さん、先に着いてたのね。加勢するわ!」

ドゥンドゥン

使い魔「」


ほむら「と、巴、さん……?」


マミ「えっ…、暁美さん?」

222: 2011/07/24(日) 00:26:44.81 ID:FvrJOeZt0
ほむら「あ、あなた達は……」


マミ「……私達は、魔法少女。魔女を狩る者よ」


ほむら「魔法……少女?」

──ズキンッ

ほむら「痛っ……」


まどか「ほむらちゃん!大丈夫!?」


ほむら「う、うん。ちょっと頭痛がしただけ……」

ほむら(魔法、少女……。以前にも聞いた事があるような)


マミ「ここからなら私の家が近くにあるわ、直ぐに終わらせてそこで少し休みましょう」


まどか「はいっ、わかりました。ほむらちゃんは私の傍を離れないでね」


ほむら「うん……」

223: 2011/07/24(日) 00:30:46.65 ID:FvrJOeZt0
~マミの家~

マミ「暁美さん、具合の方はどうかしら?」


ほむら「ちょっと頭痛がしただけですので大丈夫です。……気を遣っていただいて、すみません」

ほむら「……お二人は、いつも、あんなのと戦ってるんですか?」


マミ「そうね……私達、魔法少女はさっき貴女が見たモノ、『魔女』と呼ばれる存在と戦う運命を課されているのよ」


ほむら「魔女……?」

──ズキンッ

ほむら(また……頭が……)


マミ「魔女は呪いから産まれ、世界に絶望を蒔き散らす存在なの」

マミ「それは形のない悪意となって、人間を内側から蝕んでゆく……」

マミ「理由のはっきりしない自殺や殺人事件は、かなりの確率で魔女の呪いが原因なのよ」


ほむら「そんなことが……」

ほむら「………」

ほむら「あのっ……私、前から魔法少女や魔女のこと、知っていたような気がするんです」

ほむら「もしかして私、以前にお二人から同じ話を聞いた事があるんでしょうか?……それとも、私自身が魔法少女、だったり……」


まどか「……!」


マミ「……暁美さん、貴女は…」


まどか『マミさん、待ってください!』

マミ『鹿目さん?』

224: 2011/07/24(日) 00:33:29.69 ID:FvrJOeZt0
まどか「ほむらちゃん……」


ほむら「?」


──私ね、ずっと夢だったの、こうやって普通に学校に行って、普通に授業を受けて、普通に友達とおしゃべりして


まどか「……っ」


ほむら「どうしたの、鹿目さん?」


まどか「ほむらちゃんは……魔法少女なんかじゃない、普通の女の子だよ」

まどか「優し過ぎるぐらいに優しくて、いつだって私のこと助けてくれる、私の最高の友達……」


ほむら「鹿目、さん……?」


まどか「魔女とは私がほむらちゃんの分も戦うから……この街も、ほむらちゃんも私が全部守ってみせるから」

まどか「だからね、ほむらちゃんが危ない目に会う必要なんて、無いんだよ……」

225: 2011/07/24(日) 00:38:28.67 ID:FvrJOeZt0
────────────────────────

マミ「鹿目さん、何故暁美さんに本当の事を言わなかったの?」


まどか「……今のほむらちゃんを見ていると、魔法少女になる前のほむらちゃんを思い出してしまうんです」


マミ「それは、貴女が言っていた最初の世界でのことね?」


まどか「はい……。ほむらちゃんは、ほんのちょっと大人しいだけの普通の女の子で」

まどか「だけど、ずっと病気で入院していたせいで、クラスに馴染めないこともあったんです」

まどか「その事で、ほむらちゃんは悩んで、落ち込んで……」

まどか「ほむらちゃんはただ、『普通になりたい』って願っていただけなのに」

まどか「それなのに、私が弱かったせいで、私がワルプルギスの夜に負けたせいで、ほむらちゃんを魔法少女の運命に巻き込んでしまって」

まどか「私が、ほむらちゃんの願いを壊してしまったんです」


マミ「………」


まどか「罪滅ぼし、なんて言うつもりはありません。だけど、今のほむらちゃんはとっても幸せそうで……」

まどか「お願いします、マミさん。ほむらちゃんに魔法少女のことを話すのは、少しだけ待ってもらえませんか?」


マミ「……一つ聞くわ、今回ワルプルギスの夜に対して勝算はあるの?」


まどか「はい、今度は絶対に負けません!」


マミ「……わかったわ。こちらから暁美さんに魔法少女のことを話すのは止めましょう」

マミ「でも一つだけ条件をいいかしら」


まどか「条件?」


マミ「貴女が、自分の力でワルプルギスの夜を越えたら、暁美さんに全てを話しなさい」

マミ「確かに今のあの子を魔女との戦いに連れて行くことには私も迷いがあるわ」

マミ「それでも……自分が何をしたいのか、何が幸せなのかを決めるのは、その人自身の心なのだから」


まどか「……わかりました。ありがとうございます、マミさん」

227: 2011/07/24(日) 00:43:42.08 ID:FvrJOeZt0
~ワルプルギスの夜前日、放課後~

まどか「ほむらちゃん、一緒に帰ろ?」


ほむら「うん、もちろんだよ、鹿目さん」


まどか「えへへ……もちろんだなんて嬉しいな」

まどか「あっ、それでね、今日はちょっと寄りたいところがあるんだけど……付き合ってもらってもいいかな?」


~鉄橋~

ほむら「わぁ……キレイな夕日」

ほむら「鹿目さんが寄りたかった場所ってここの事?」


まどか「うん……、そうだよ」


ほむら「そうなんだ。ここになにかあるの?」


まどか「ううん、そういうわけじゃないんだけど」

まどか「自分の中の決意をもう一度、確かめておきたくて」


ほむら「えっ?」


チュッ──


ほむら「……っ!?」カァァ


まどか「……ほむらちゃん、大好きだよ」

まどか「それじゃ、またね、ほむらちゃん」


まどか「また、あした……」

228: 2011/07/24(日) 00:50:22.44 ID:FvrJOeZt0
~ワルプルギスの夜、避難所~

ほむら(すごい嵐……避難指示に従ってここに来たけれど……)

ほむら(……鹿目さん………)ボケー

ほむら(はっ、いけない!私、また変な事考えて……それよりも)


──また、あした


ほむら(なんでだろう……鹿目さんのあの言葉が、ずっと気になって……)

ほむら(なんでもない言葉のはずなのに、未だに耳から離れない……)


さやか「おーい。ほむらー」


ほむら「あ、美樹さん。どうしたんですか?」


さやか「ほむら、あんたさ、まどか見なかった?」


ほむら「えっ…?いえ、見てないです。鹿目さん避難していないんですか?」


さやか「うん……。さっきまどかの両親と会ったんだけど、朝からずっと居ないんだって」


ほむら「そんな……鹿目さん、こんな嵐の日に一体どこに……」

ほむら(痛っ…。また頭が……)ズキンッ


──すごい嵐の日には、絶対に外に出ないようにしてね


ほむら(鹿目さん……?何なの、この記憶……)


──もうワルプルギスの夜を止められるのは、私だけしかいないから

──さよなら、ほむらちゃん。元気でね


ほむら「……!」

ほむら「鹿目さん!」ダッ


さやか「あ、ちょっとほむら!?あんたどこ行くのよ!」

229: 2011/07/24(日) 00:55:31.88 ID:FvrJOeZt0
杏子「嵐が強くなってきたな……」


マミ「ええ…。鹿目さん、ワルプルギスの夜の出現位置はここで間違いないのね?」


まどか「はいっ。統計上、この場所からならどこに出ても直ぐに対応できるはずです」


杏子「統計ねぇ……」


マミ「どうしたの、佐倉さん?」


杏子「いや、統計だなんて簡単に言ってしまえるほど、まどかとほむらは同じ時間を繰り返してきたんだなって」

杏子「本当に良いんだな?アイツを連れずにこの戦いを始めてしまって」


マミ「佐倉さん。それについては私達が口を挟む問題ではないわ」


まどか「……いえ、いいんですマミさん。杏子ちゃんも気を遣ってくれてありがとう」

まどか「でも、大丈夫。ほむらちゃんにもらったこの力で、必ずこの夜を越える、越えてみせる」


QB「どんな力があるにせよ、油断は禁物だよ?鹿目まどか」


ま・マ・杏「!?」


QB「やぁ、君達。久しぶりだね」


まどか「キュゥべえ……!」

239: 2011/07/31(日) 00:13:37.96 ID:vGvssS8a0
杏子「どの面下げて出てきやがったテメェ……」


QB「やれやれ、招かれざる客ってわけかい?」

QB「僕は見届けに来たんだよ、君達とワルプルギスとの戦いの結末をね」


マミ「信用すると思って?」


QB「どうやら随分と嫌われてしまったようだね」

QB「だけど、今回は君たちのことが心配で来たんだ。特に君、鹿目まどかがね」


まどか「……どういうこと?」


QB「ワルプルギスの夜と戦う時はソウルジェムが壊されないように、十分注意して欲しいんだ」

QB「君が魔女になる前に死んでしまったら、それはこの宇宙にとってこの上ない損失だからね」


まどか「………」


杏子「相変わらずテメェは……、何様のつもりだ」


QB「その反応は理不尽だね。僕はただ事実を言っているだけだというのに」

QB「……さてそろそろ時間だ、ワルプルギスの夜の始まりだよ」

240: 2011/07/31(日) 00:16:49.30 ID:vGvssS8a0
~ワルプルギスの夜~

ワルプルギスの夜「アハハハハ」


杏子「出やがったか……」


マミ「まったく、ふざけた大きさね」


まどか(初めのうちは、様子を見てばかりでほとんど攻撃してこないはず……その間に!)


ワルプルギスの夜「………」

使い魔「キャハハハハ」ズラァ──


まどか「えっ…!?」


杏子「おいおい、なんだよこの大量の使い魔は!」


マミ「まるで空が埋め尽くされるようね……流石はワルプルギスの夜ってところかしら」


まどか(今までこんなことは……)


QB「どうしたんだい、鹿目まどか?」


まどか「ワルプルギスの夜があんなに大勢の使い魔を出すなんて……」


QB「前例が無いという事かい?」

QB「彼女は確かに魔女の中でも気まぐれだ、楽に勝てる相手になら遊ぶこともあるかもしれない」

QB「だが、自分を一撃で倒せるような相手が初めから相対していたとしたら……全力を出さない訳がないだろう?」

241: 2011/07/31(日) 00:21:49.33 ID:vGvssS8a0
杏子「なんだよ、まどか、こんなはずじゃなかったってか?」

杏子「どっちにしろやるしかねぇんだ、行くぞ!」


まどか「う、うんっ」


使い魔「キャハハハハ」


マミ「あっ…、使い魔の大群が街の方に向かっていくわ!」


まどか「!?」

まどか(向こうには避難所が……ほむらちゃん!)

まどか(助けに行かなきゃ……でも、今ここでワルプルギスをやっつけないと……)

まどか「……マミさん、杏子ちゃん」


マ・杏「?」


まどか「街に向かった使い魔を、お願いできませんか…?」


杏子「はぁ?何言ってんだバカ野郎!」

杏子「アタシ達がアレを追ったら、ワルプルギスをお前一人で相手することになるんだぞ!」


まどか「……お願い、します………」


マミ「……わかったわ」


杏子「おい、マミ!お前も何言ってんだよ!」


マミ「暁美さんのことなんでしょう?」


まどか「はい……」

まどか「もし、ほむらちゃんに何かあったら……私……」


杏子「チッ…、ほむらを助けたら直ぐ戻る。それまでやられんじゃねぇぞ」


マミ「くれぐれも無茶はしないようにね、鹿目さん」

242: 2011/07/31(日) 00:26:46.75 ID:vGvssS8a0
ほむら「はぁっ、はぁっ……」タッタッタッ

ほむら(どこ、どこにいるの?鹿目さん!)


さやか「待ちなさいよ、ほむら!」


ほむら「あ…、美樹、さん……」ハァハァ


さやか「こんな嵐の中、あんたどこに行こうっての?」


ほむら「えっ、あっ……わ、わかりません……」


さやか「はあ……、ちょっと無鉄砲過ぎでしょ、あんた」


ほむら「すみません……」

ほむら「だっ、だけど、どこかに行かなきゃいけないっていうのだけは感じるんです」

ほむら「今、行かなくちゃ鹿目さんに二度と会えなくなってしまう気がして……」


さやか「……それさ、あんたの無くした記憶ってやつと関係あるの?」


ほむら「えっ……?」


使い魔「キャハハハハ」


ほむら「……!?あ、あれは……」


さやか「やばっ……!ほむら、逃げるよ!」

244: 2011/07/31(日) 00:32:27.93 ID:vGvssS8a0
まどか(私のせいだ……ほむらちゃんに本当のこと話してたらこんなことには……)

まどか(ほむらちゃん……お願い、無事でいて……)

まどか「え、えい!」

ドシュゥ ──ドォンッ


ワルプルギスの夜「アハハハハ」


まどか「!?」


QB「やれやれ、全く集中できていないじゃないか」

QB「そんな精神状態ではワルプルギスに致命傷を与える事なんて不可能だよ」


まどか「そ、そんな……」


ワルプルギスの夜「ウフフフフ」

ゴゥッ──


まどか「きゃあああ!」


QB(……このままだと、ソウルジェムが濁る前に破壊されてしまう可能性が高すぎる)

QB(仕方ないね、ここは一つ手を打つとしよう)スゥ…

245: 2011/07/31(日) 00:35:12.38 ID:vGvssS8a0
さやか「ちょっと、ほむら!あんたもう少し早く走んなさいよ!」


ほむら「そ、そんなぁ……」ハァハァ


さやか「あっ…、行き止まり……」


ほむら「えぇっ!?」


使い魔「キャハハハハ」


さやか「あちゃー…、これはちょっとまずいかな……」


QB「やれやれ、こんなところに居たのかい」


さやか「キュウべえ!あんた今までどこほっつき歩いてたのよ!」


ほむら「!?」

ほむら「美樹さん…、何ですかそれ……生きてる……?」


さやか「説明は後、後!このままじゃ私もあんたも殺されちゃう!」

さやか「キュウべえ、契約するよ!」


QB「わかったよ。戦いの定めを受け入れ、その魂を代価にして、君は何を願う?」


さやか「私の願いは……」

さやか「ほむらの記憶喪失を治して!」

246: 2011/07/31(日) 00:38:59.18 ID:vGvssS8a0
ほむら「えっ…!?」


さやか「うっ……」パァァ


QB「さあ、受け取るといい。それが君の運命だ」


ほむら「み、美樹…さん……?」

──ズキンッ

ほむら「う…、あ……頭が……」

ほむら「あああああああ」


さやか「たあ!」

ザシュッ──

使い魔「ギャァァ」


さやか「ふうっ。気分良いわー、爽快爽快」

さやか「ほむら、どう?全部思い出したでしょ?」


ほむら「………」

ほむら「……なんで…、なんでよ……」

ほむら「なんで契約したの、さやか!」

247: 2011/07/31(日) 00:43:11.23 ID:vGvssS8a0
さやか「あー…、やっぱそういう反応?怒ってる?」


ほむら「ええ……そうね」

ほむら「どうして契約したのさやか?魔法少女になるってことがどういうことか、貴女わかってるの!?」


さやか「わかってるよ。ソウルジェムの事も、いつか魔女になることも、全部」


ほむら「……!?」


さやか「私さ、この前魔女に襲われて、杏子って子に助けてもらったんだ」

さやか「その時にキュウべえとも会ったんだけど……契約のこと聞いてたら、その子いきなり凄い剣幕でさ」

さやか「理由を知りたくて数日追い回してたら、根負けして教えてくれたってわけ」

さやか「ま、それはともかく、契約しなきゃ私もあんたも死ぬとこだったんだし、許してよ」


ほむら「なら……どう、して……」

ほむら「どうして、こんな願いなんか……」

ほむら「貴女の願いは、幼馴染の手を治すことじゃなかったの?」

248: 2011/07/31(日) 00:47:10.36 ID:vGvssS8a0
さやか「……そりゃあ、まあ、それも考えてたけどさ」

さやか「ねぇ、あんたが記憶を失くしてから、まどかがどうしてたか、知ってる?」


ほむら「えっ…?」


さやか「まどかのやつさ、まるでこの世の終わりみたいな顔して……」

さやか「前からちょっとしたことで、悩んだり、落ち込んだりもしてたけど、あんな顔してたのは初めてだった」

さやか「あの時のまどかは見てらんなかったな……それなのに、普段、親友なんて言ってるくせに、私は何もできなくて」


ほむら「………」


さやか「ほむらがまた学校に来るようになって、少しは立ち直ったように見えたけど、全然ダメ」

さやか「ちょっと目を離すとまたすぐ泣きそうになるくせに、私たちの前だと無理して笑ってた」

さやか「結局さ、まどかには今のあんたが必要なんだよ」

249: 2011/07/31(日) 00:50:22.09 ID:vGvssS8a0
ほむら「……たとえそうだとしても、私には貴女に救ってもらえる資格なんて……」


さやか「あー、もうっ!」


ほむら「!?」


さやか「あたしさぁ、あんたがウジウジしてるとこ見る為に契約したんじゃないんだけど」

さやか「せっかく記憶戻してあげたんだから、さっさとまどかのところに行ってきなさいよ!」


ほむら「……!」


さやか「キュウべえから聞いたんだ、ほむらがまどかの為にずっと頑張ってきたってこと」

さやか「だから、さっきあんたが感じたこと、私は信じるよ」


ほむら「さやか……」


さやか「ほら、行った行った!」

さやか「その代わり絶対、まどかと一緒に帰って来なさいよ。勝手に死んだら……許さない」


ほむら「……ありがとう、さやか」

ほむら「戻ったら必ず償うわ、何があっても」


さやか「そーゆーのナシナシ」

さやか「言ったでしょ、困ったことがあったら、このさやかちゃんに任せなさいってね!」

250: 2011/07/31(日) 00:54:37.34 ID:vGvssS8a0
ほむら(使い魔が居たということはワルプルギスの夜はもう出現しているはず……急がないと)タタタッ

ほむら「あれは……」


杏子「よっ、と」

ザシュッ──

使い魔「ギャァァ」


杏子「あーウゼェ、これで半分ってとこか?」


マミ「予想以上の多さね……急がないと街にも被害が出てしまうわ」

マミ「それに暁美さんもさっきの避難所に居なかったし、一体どこに……」


ほむら「巴さん!杏子!」


杏子「ほむら!?」


マミ「暁美さん、まさか……記憶が戻ったの!?」


ほむら「はい……ご迷惑をおかけしました」

ほむら「……?」

ほむら「まどか……まどかは、一緒じゃないんですか?」


杏子「……アイツは、一人でワルプルギスの夜を相手に戦ってる」


マミ「私たちは使い魔から貴女を守って欲しいと言われてこっちに来たのよ」


ほむら「そんな……」

251: 2011/07/31(日) 00:57:52.08 ID:vGvssS8a0
杏子「待てよ、こいつを持ってきな」ジャラ


ほむら「これは……グリーフシード?」


杏子「アンタ達を見てたらすっかり忘れてたものをまた思い出しちまった」

杏子「昔憧れてた、最後に愛と勇気が勝つストーリーってやつ、アタシに見せてくれよ」


マミ「ふふふっ。佐倉さんがそんなことを言うなんてね」


杏子「なんだよマミ、わりいかよ」


マミ「いいえ、私も大賛成よ」ジャラ

マミ「暁美さん、先に行って。あの子はきっと貴女を待っているわ」


ほむら「二人とも……ありがとうございます」

ほむら「それじゃ、行ってきます!」ダッ


杏子「おう、急げよ、アイツがやられちまう前に」


マミ「私たちは避難所付近の使い魔を倒してから戻るわ。鹿目さんのこと、頼むわね」


ほむら「はいっ!」タタタッ


カチッ─────

ほむら(まどか……今行くわ、絶対に、守ってみせる!)

267: 2011/08/09(火) 23:04:54.19 ID:bIMtbFck0
まどか「うぅ……」ボロボロ


ワルプルギスの夜「アハハハハ」


まどか(こんな夜で、立ち止まっているわけにはいかないのに……)

まどか(これまでで一番力があるはずなのに……なんで勝てないの)


──まどか…


まどか(ほむらちゃん……)

まどか(そっか……今までワルプルギスと戦った時は、いつもほむらちゃんが傍に居てくれたんだ)

まどか「……うぅぅ」グスッ

まどか(やっぱり、私……ほむらちゃんが居てくれないと、なんにもできないよ……)

まどか「会いたいよ……ほむらちゃん……」ポロポロ


ほむら「まどか!」

268: 2011/08/09(火) 23:07:46.70 ID:bIMtbFck0
まどか「えっ……」

まどか「ほむらちゃん……どうしてここに……」

まどか「そっ、それに今『まどか』って!」


ほむら「ええ、全部思い出したわ」

ほむら「ごめんなさい、まどか……今度は私が貴女を一人にさせてしまったのね」


まどか「ほむらちゃん……」

まどか「ううん、謝らなきゃいけないのは私のほう……」

まどか「ほむらちゃんがどんな想いで私のために頑張ってきてくれたのか、よくわかったから」

まどか「ごめんね、ほむらちゃん……どんなに謝っても、謝り、きれないけど……」グスッ


ほむら「まどか……」ギュッ

ほむら「今は何も言わなくていいわ。ただ貴女が傍に居てくれるだけで、私には充分過ぎるぐらいなのだから」


まどか「……ありがと、ほむらちゃん。でもね、あと一言だけ言わせて」

まどか「おかえりなさい、ほむらちゃん」


ほむら「……!」

ほむら「ええ。……ただいま、まどか」


ワルプルギスの夜「ウフフフフ」


まどか「あっ!」


ゴゥッ──

カチッ─────

ほむら「やれやれ……無粋なやつね」

ほむら「まどか、まだ話したいことは山ほどあるけれど……」

ほむら「まずは、二人でこの夜を越えましょう」


まどか「うんっ!」

269: 2011/08/09(火) 23:12:02.97 ID:bIMtbFck0
ほむら「まどか、貴女は少し休んでて。私が時間を稼ぐわ」


まどか「大丈夫だよ、ほむらちゃん。私もう元気になったから」


ほむら「何言ってるのよ、全身ぼろぼろじゃない」


まどか「ほむらちゃんに会えたら、疲れなんてどっか行っちゃった」

まどか「それにね、ほむらちゃんが隣に居てくれるなら、私が魔女に負ける理由なんてないよ」


ほむら「はぁ……わかったわ。でも、全力の一撃は控えてね、ソウルジェムに何があるかわからないから……」


まどか「はーい。ほむらちゃんってば心配性なんだから」


ほむら「まどか!……もうっ、行くわよ」

─────カチッ


ワルプルギスの夜「アハハ?」


ほむら「こっちよ、ウスノロ」ジャキ

ほむら(仕込みはできなかったけど……手持ちの武器でも足止めくらいは)

ダダダダダダダ

ワルプルギスの夜「アハハハハ」


ほむら「今よ、まどか!」


まどか「うんっ!」

ドシュゥ ──ドォンッ

270: 2011/08/09(火) 23:15:31.44 ID:bIMtbFck0
ワルプルギスの夜「ガ…ガ…」


ほむら(やはり加減した一撃では倒しきれなかった……でも確実に効いているわ)

ほむら「まどか、チャンスよ!」


まどか「う、うんっ!」チャッ

まどか「あ……、あれっ?」フラッ…


ほむら「まどか!?」


カチッ─────
─────カチッ


ほむら「大丈夫、まどか!?」ガシッ


まどか「うん……、ちょっとめまいがしただけだから……」

まどか「ほむらちゃん、お願い……後少しで倒せると思うから」


ほむら「……そうね。最後は二人でこの舞台に幕を降ろしましょう」ギュッ

271: 2011/08/09(火) 23:19:23.82 ID:bIMtbFck0
ほむら(恐らくこれが最後の時間停止……これで決める!)

カチッ─────

ほむら「まどか、私が支えるわ。時間を止めている間にできるだけ多く撃って」


まどか「うん、わかった!」

ドシュゥ ──ピタッ

ほむら(長時間の時間停止は魔力消費がきついけど……今は巴さんと杏子にもらったグリーフシードがある)

ドシュゥ ──ピタッ

ほむら(砂時計が落ちきる限界まで、魔力の矢をお見舞いしてやるわ)

ドシュゥ ──ピタッ

ほむら(まどかのソウルジェムはまだ大丈夫そうね、でも念の為にグリーフシードは使っておきましょう)

ドシュゥ ──ピタッ
ドシュゥ ──ピタッ
ドシュゥ ──ピタッ
ドシュゥ ──ピタッ
ドシュゥ ──ピタッ

ほむら(ワルプルギスの夜……)

ドシュゥ ──ピタッ

ほむら(思えば、お前とは長い付き合いだったわね)

ドシュゥ ──ピタッ

ほむら(結局、私一人では勝つことができなかった……でも、まどかと二人ならお前を倒すことができる)

ドシュゥ ──ピタッ


ほむら「これで終わりよ、ワルプルギス」

─────カチッ

ま・ほ「いっけぇぇぇぇぇ!」


ズドドドドドドドドドド─────


ワルプルギスの夜「ギャァァァァァ」

272: 2011/08/09(火) 23:24:09.26 ID:bIMtbFck0
まどか「終わった、の……?」


ほむら「ええ……、終わったわ」


まどか「……やった」

まどか「やったぁ~、やったね、ほむらちゃんっ!」ダキッ

まどか「これでやっと、私達二人、同じ道を歩くことができるんだね……」


ほむら「……そうね、まどか」


まどか「ほむらちゃん?」


ほむら「ごめんなさい、少しぼーっとしてしまって」

ほむら「やっと……やっと私は、この夜を越えることができたのね……」

ほむら「私の時間はこの夜からずっと止まっていたの」

ほむら「先に進むことは出来ず、何度も失敗を繰り返し、その度に無力な自分を呪って……」

ほむら「だけど、最後に折れかけた心を貴女が救ってくれて、私はまた歩き出すことができた」

ほむら「ありがとう、まどか。私に貴女を守らせてくれて、本当に、ありがとう……」


まどか「ほむらちゃん……」

まどか「私も同じだよ……この夜にずっと縛られていた」

まどか「ほむらちゃんが私の為に祈ってくれて、私に力をくれたから、私はこの夜を越えることができたの」

まどか「だから……ここから始めよう?動き出した私達の時間を、二人で、一緒に……」


ほむら「うん……!」


ドクンッ──

まどか「えっ……?」

ドクンッ───

まどか「だ……だめっ」パァァ

ドクンッ────

まどか「く…うぅ……」

273: 2011/08/09(火) 23:28:00.20 ID:bIMtbFck0
ほむら「まどか!?」


まどか「ほ、ほむら、ちゃん……」

まどか「どうして……ワルプルギス……倒した、のに……」


ほむら「しっかりして、まどか!」

ほむら「う、嘘……ソウルジェムが濁っていく……?」

ほむら「とっ、とにかくグリーフシードを」カチリ

ズズズ──

ほむら「なっ……!?」

ほむら(一瞬でグリーフシードが黒く……これ以上は!)


ブンッ──カランカランッ


QB「勿体無いことをしないでくれないかな」ヒョイパクッ

QB「この状況ではそんなもの、時間稼ぎにもならないよ」


ほむら「インキュベーター……」


QB「さて……カーテンコールが、始まったようだね」

274: 2011/08/09(火) 23:30:56.08 ID:bIMtbFck0
ほむら「お前っ……まどかに何をしたの!?」


QB「………」


ほむら「答えなさい!インキュベータァァァ!」


QB「やれやれ、君には言ってなかったかな?今回、僕の立場は傍観者に過ぎない」


ほむら「戯言を……!さやかに契約するよう誘導し、私を戦える状態に戻した」

ほむら「そうして、私がまどかを助けてワルプルギスの夜を倒すことも、計算した上だったのでしょう?」


QB「否定するほど間違ってはいないね」

QB「君がワルプルギスとの戦いで死んでくれれば最高だったけど、こればかりは仕方ない」

QB「そこまで知っているのなら理解できるだろう?これはワルプルギスの夜の性質によるものだよ」


ほむら「性質?」

275: 2011/08/09(火) 23:35:02.02 ID:bIMtbFck0
QB「ワルプルギスの使い魔が、何故魔法少女の姿をしているか知ってるかい?」

QB「それは、彼女が出現した土地の呪いと絶望を吸い上げているからさ」

QB「はるか昔より存在する伝説の魔女。彼女が集めた魔法少女達の絶望は数千、いや数万にも及ぶだろうね」


ほむら「……?」

ほむら「それが一体、何の関係があるというの?」


QB「まだわからないのかい?」

QB「あの魔女を倒すことができた魔法少女は、彼女が溜め込んだ呪いと絶望を受けて、最強の魔女としての役割を引き継ぐんだ」

QB「君たち魔法少女の演じる舞台が、希望から絶望へと変わる物語の脚本から外れた時、ワルプルギスはその本来の役目を果たす」

QB「まったく、良く出来た舞台装置だよ」


ほむら「そ、そんな……」

ほむら「それじゃ……それじゃ、まどかは……」


QB「手遅れだよ。今は能力で呪いの進行をぎりぎり抑えているようだけど」

QB「彼女は間もなく魔女となる。僕らの宇宙を救済するエネルギーを残してね」

276: 2011/08/09(火) 23:44:31.09 ID:bIMtbFck0
まどか「ほ……ほむらちゃ、ん……」


ほむら「まどか!」


まどか「お願い……私を、殺して」


ほむら「!?」


まどか「ごめんね……自分じゃ、もうできなくて」

まどか「わかるの、今浄化を止めたら、すぐ魔女になっちゃう」

まどか「だからその前に、私を……」


ほむら「そんなこと、できるわけがないでしょう!?」

ほむら「貴女は……いつもそう。そうやって自分を犠牲にして……」


まどか「お願い……私、魔女にはなりたくない」

まどか「魔女になったら、この街も、ほむらちゃんも私がめちゃくちゃにしちゃう」

まどか「そんなの、絶対に嫌だよ……」


ほむら「だからって……だからって……!」

ほむら「ねぇ、約束したじゃない……私を二度と一人になんかしないって……」


まどか「……大丈夫、ほむらちゃんは一人じゃないよ」

まどか「次の世界の私も、きっとほむらちゃんのことを覚えてる」

まどか「私には、ほむらちゃんを幸せにすることはできなかったけど……」

まどか「『わたし』が死んでも……次の世界の私がきっと、ほむらちゃんを幸せにしてくれるから……」


ほむら「……!」

ほむら「……そう。あくまで貴女は、そういうつもりなのね」


まどか「うん。……本当にごめんね、嫌なことばかり押し付けて……」


ほむら「………」

ほむら「ごめんなさい、まどか……」チャキ


タァァァン──

277: 2011/08/09(火) 23:46:00.80 ID:bIMtbFck0



ガシャン


302: 2011/08/18(木) 23:19:49.00 ID:KrDxlffT0
ザァァァァァ───

ほむら「……貴女の言う事でも、聞けないわ」


まどか「ど……どうして、ほむらちゃん……」

まどか「……なんで、砂時計を壊しちゃうの!?」

まどか「そんな事したら……もう、過去に……」


ほむら「……もういいのよ、まどか」


まどか「えっ…?」


ほむら「私はね、最初この世界に来た時……自殺しようと思っていたの」

ほむら「貴女を救うだなんて息巻いて、ずっと時間を繰り返してきたけれど……」

ほむら「それでできたことなんて、何一つない。ただ貴女に膨大な因果とその責任を押し付けただけ」

ほむら「そんな私がこれ以上生きていても、貴女に迷惑をかけるだけだって……そう、思ってた」


まどか「ほむらちゃん……」

303: 2011/08/18(木) 23:22:10.45 ID:KrDxlffT0
ほむら「だから、貴女が他の世界の記憶があると言った時も、本当は怖かった」

ほむら「私にとって今までの世界は失敗して、見捨てて、逃げ出してきた自分の罪と過ちそのもの」

ほむら「繰り返してきた世界の数だけ、私は貴女を傷つけて、泣かせて、殺したのだから……」

ほむら「貴女に恨まれたり、殺されたりしても仕方なかった。いえ、むしろそれが当然だったのよ」


まどか「……そんなことない!」

まどか「だって、ほむらちゃんは……私のせいで……」


ほむら「まどか、貴女は優し過ぎるのよ……私がやってきた事は、所詮独り善がりな我侭なの」

ほむら「でも……それでも貴女は、全ての記憶を知った上で、私を好きだと言ってくれた」

ほむら「私の罪も過ちも、その全てを受け入れてなお、同じ道を一緒に歩こうと言ってくれた」

ほむら「その言葉と想いで私は救われて……」

ほむら「こんな私なんかでも幸せになっていいんだって、貴女を幸せにすることができるんだ、って……そう思えたの」


まどか「……それじゃあ……なんで、過去に戻ってくれなかったの?」

まどか「このままじゃ私、魔女になっちゃうんだよ?」

まどか「魔女になったら、ほむらちゃんのこと、幸せになんてできないよ……」

304: 2011/08/18(木) 23:25:13.77 ID:KrDxlffT0
ほむら「……まどか、良く聞いて」

ほむら「私が幸せにすると誓ったのは、この世界の『あなた』なの」

ほむら「たとえ記憶があったって、『鹿目まどか』であったって」

ほむら「他の世界の貴女じゃないわ」


まどか「ほむら、ちゃん……」


ほむら「それにね、私と『あなた』は同じ道を一緒に歩くと約束したでしょう?」

ほむら「それなのに、『あなた』が苦しんでるのに、私だけ他の道に逃げるなんて違うよね……おかしいよね」


まどか「う…うぅ……」グスッ

まどか「でも……でもっ……!」


ほむら「大丈夫だよ、まどか」


まどか「えっ…?」


ほむら「『あなた』の力はこんな呪いなんかに負けたりしないって信じてる」

ほむら「だからお願い、『あなた』も最後まで、自分を信じて」

ほむら「私たちの誓いを、絶望で終わらせたりしないでよ……」


まどか「ほむらちゃん……」


ほむら「この先、私が『あなた』を絶対に幸せにしてみせるから」

ほむら「今は……せめて今は『あなた』が私を幸せにしてよ、まどかあああ!」


まどか「……!」

まどか「うん……うんっ!」

305: 2011/08/18(木) 23:28:16.44 ID:KrDxlffT0
QB「二人で心中する準備は済んだかい?」

QB「暁美ほむらが自分から過去に戻る力を捨てるなんてとんでもない僥倖だよ」

QB「性懲りもなく繰り返してきた、無意味な連鎖もここで終わり」

QB「後は君たちのエネルギーさえ回収すれば、この惑星での任務は終了だ」


まどか「……あなたの思い通りには行かないよ、キュゥべえ」


QB「なんだって?」


まどか「私はもう希望を捨てたりなんかしない」

まどか「世界で一番大切な人が、ずっと傍で私の幸せを祈ってくれるのなら」

まどか「私が絶望する必要なんて、ない!」


パァァ──


QB「無駄な足掻きだよ。君はワルプルギスが溜め込んだ呪いと絶望を全て浄化してみせるとでもいうのかい?」


パァァァァァ─────


QB「出鱈目だ、そんなこと出来る訳が……」


パァァァァァァァァ───────


まどか「ねぇ、キュゥべえ」

まどか「魔法少女には、絶望で終わる結末しか残されていないっていうのなら」

まどか「そんなルールなんて私が壊してみせる、変えてみせる」

まどか「だって『わたし』が、ほむらちゃんを幸せにしてみせるんだから!」


パァァァァァァァァァァ──────────


QB「馬鹿な……」

306: 2011/08/18(木) 23:31:42.88 ID:KrDxlffT0
~Epilogue~

ワルプルギスの夜を超えて一ヶ月が過ぎた。

まどかの能力はあの夜以降急激に成長し、この街のほぼ全体を一度に浄化できるようになっていった。
それによってこの街で新たに魔女が発生することは殆どなくなり、残った魔女も私たちによって全て倒された。
現時点で、この街に存在する魔女は一人も居ない。

今では何処からか浄化の噂を聞きつけた魔法少女たちが集まり、
見滝原は戦いを望まない魔法少女たちの楽園のような存在になっている。



そしてインキュベーターはあれ夜以降、私達の前に姿を見せていない。
単に今の見滝原ではエネルギーの回収効率が望めないからなのか、
それともまどかを下手に刺激して能力をこれ以上伸ばされたくないのかはわからないが、あいつの顔を見ないでいいのは清々する。
ただ魔法少女のシステムはそのままであり、まどかの魔力係数がある以上、また会う事があるかもしれない。
勿論その時は、丁重にお帰り願う次第だ。



佐倉杏子は現在、私のボディーガードと称し、半ば強引に同居している。
時の砂時計を破壊し、完全に能力が使えなくなってしまった私は、戦闘能力がひどく落ちてしまった。
武器の補充も絶望的になってしまった為、新しい攻撃方法を模索しているが、まだ少し時間がかかりそうだ。
突発的な魔女の発生に鉢合わせしたり、インキュベーターが何か仕掛けてくる可能性も有り得る為、
しばらくは杏子の言うとおりにするのが正解なのだろう。

杏子が私の家に住むと言い出した時、まどかが今までに見た事も無いような渋い顔をしていたが、
私の身の安全ということで、一応のところは納得してくれているようだ。多分。



巴マミは現在、魔法少女を一時休止し、静かに暮らしている。
まどかの浄化の力により、延々と続く戦いから解放された巴さんは、
今年中学三年という事もあり、学業に力を入れているようだ。

それでもベテランとして名が知れている巴さんは、若い魔法少女の相談役を務めたり、
魔法少女同士の諍いを仲裁するなど、立派にその役目を果たしてくれている。
ただ最近では、たまに隣町の様子を見に行ったりしているなどの話も聞いており、
巴さんが本当に静かに暮らせるのは、まだまだ先のような気がしてならない。



美樹さやかは現在、退院した上条恭介とぎこちないながらも交際を始めている。
見滝原に集まってきた魔法少女の中に、幸運にも魔法少女ではない人間も治癒できる能力を持つものがおり、
その子に頼み込んで秘密裏に上条恭介の身体を治療してもらったのだ。

それでも告白するにあたっては、さやかの思い込みが激しく意地っ張りな性格のせいで大分苦労させられたが、
杏子が尽力してくれたお陰で、なんとか事無きを得ることが出来た。
二人はこの件を通じて仲のいい友人となれたようで、やはりあの二人は本質的に似たところが多いのかもしれない。



そして、私とまどかは……

307: 2011/08/18(木) 23:34:43.77 ID:KrDxlffT0
~夕方、日が差す鉄橋~

まどか「あの映画面白かったね、ほむらちゃん」


ほむら「そうね、予告だけはループ中もずっとやっていたけれど」

ほむら「放映日がワルプルギスより後だったから、実際に見ることはできなかったものね」


まどか「うんうん」

まどか「それにね、雑誌の続きも、ドラマの続きも他にもみんな、みーんな」

まどか「あの夜をほむらちゃんと一緒に越えることができたから、今こうやって楽しむことができるんだなって」


ほむら「ふふっ、まどかったら……」

ほむら「そうね……繰り返す時間の中では、そういったことを気にする余裕すらなかったけれど」

ほむら「あの夜を越えた世界は、ただ何気ない平凡な日常だとしても私には全てが新鮮で」

ほむら「この時間を貴女と共に過ごせるなんて……今までは夢にも思わなかった」


まどか「………」

まどか「ねぇ、ほむらちゃん」


ほむら「どうしたの、まどか?」


まどか「ほむらちゃんは今……幸せ?」


ほむら「………」


まどか「ほむら、ちゃん……?」


ほむら「……はぁ」

308: 2011/08/18(木) 23:38:12.17 ID:KrDxlffT0
ほむら「まどか、その質問、この一ヶ月で何回目だと思ってるのよ」

ほむら「一体何度答えれば納得してもらえるの?」


まどか「だってぇ……」

まどか「私、不安なんだよ?ほむらちゃんを本当に幸せにすることができたかなって……」


ほむら「……ふむ」

ほむら「そうね、それじゃまどか」


まどか「うん?」


ほむら「自分の中の気持ちをもう一度、確認させてもらっていいかしら?」


まどか「えっ、ほむらちゃん、それって……」


チュッ──


まどか「んっ…………ぷはっ……」

まどか「……ほ、ほむら、ちゃん………」ボッ


ほむら「まどか……世界で一番大切な人」



「私、今最高に幸せよ」

309: 2011/08/18(木) 23:38:53.29 ID:KrDxlffT0



まどか「私がほむらちゃんを幸せにしてみせる」 ~おわり~

311: 2011/08/18(木) 23:40:21.70 ID:KrDxlffT0
この物語はこれで終了です

最後までお付き合いいただいた方には最大限の感謝を
SS初書でプロットに毛が生えたような拙文を閲覧してもらえただけでとても光栄です
html化依頼については数日後にこちらの方で処理させていただきます

それでは皆様ありがとうございました

310: 2011/08/18(木) 23:40:09.85
乙っちまどまど

314: 2011/08/18(木) 23:59:43.95
おっつー

引用元: まどか「私がほむらちゃんを幸せにしてみせる」