1: 2020/06/13(土) 17:30:10.096 ID:hkFVHm750
妖怪「ぐふふふ……」
女「なに、あなた」
妖怪「ワシは妖怪だ……おぬしの体液をよこせぇ!!!」
女「体液って血液?」
妖怪「いや、そうではない」
女「唾液?」
妖怪「違う!」
女「胃液?」オエッ
妖怪「違うし、わざわざ吐こうとするな!」
女「なに、あなた」
妖怪「ワシは妖怪だ……おぬしの体液をよこせぇ!!!」
女「体液って血液?」
妖怪「いや、そうではない」
女「唾液?」
妖怪「違う!」
女「胃液?」オエッ
妖怪「違うし、わざわざ吐こうとするな!」
9: 2020/06/13(土) 17:34:50.786 ID:hkFVHm750
女「分かった、尿か」
妖怪「ちがーう!」
妖怪「若いおなごがそんなはしたない言葉を口にするでない!」
女「じゃあなんなの」
妖怪「涙だ! おぬしの涙を欲しているのだ!」
妖怪「おぬしからは、“極上の涙にありつける”という確かな予感がするのだァ!」
女「はぁ……」
妖怪「というわけで、泣いてもらうぞ! 覚悟ォ!」
女「こりゃ参ったわね」
妖怪「ちがーう!」
妖怪「若いおなごがそんなはしたない言葉を口にするでない!」
女「じゃあなんなの」
妖怪「涙だ! おぬしの涙を欲しているのだ!」
妖怪「おぬしからは、“極上の涙にありつける”という確かな予感がするのだァ!」
女「はぁ……」
妖怪「というわけで、泣いてもらうぞ! 覚悟ォ!」
女「こりゃ参ったわね」
11: 2020/06/13(土) 17:37:27.481 ID:hkFVHm750
妖怪「ガオーッ!!!」
女「……」
女「そんなんじゃ、今時小学生でも泣かないわよ」
妖怪「うぐぐ……」
妖怪「だったら、これならどうだ! かつてワシが号泣した物語!」
妖怪「ある日、貧しい母と子はかけそばを一杯頼みました……」
妖怪「母は麺を全部食べ、子は汁を全部飲み、ゲップを……あれ、こんなんだっけ?」
女「うろ覚えにも程があるわよ」
女「……」
女「そんなんじゃ、今時小学生でも泣かないわよ」
妖怪「うぐぐ……」
妖怪「だったら、これならどうだ! かつてワシが号泣した物語!」
妖怪「ある日、貧しい母と子はかけそばを一杯頼みました……」
妖怪「母は麺を全部食べ、子は汁を全部飲み、ゲップを……あれ、こんなんだっけ?」
女「うろ覚えにも程があるわよ」
13: 2020/06/13(土) 17:41:17.670 ID:hkFVHm750
女「悪いんだけど……」
妖怪「?」
女「私、泣いたことないのよね」
妖怪「は……!?」
妖怪「だけど、さすがに赤ん坊の頃は泣いただろう?」
女「そりゃ泣いたでしょうけど、物心ついてから泣いた記憶が一度もないの」
妖怪「ウソだぁ!」
妖怪「親に叱られたり、誰かにいじめられたり、失恋したら……悲しくて泣くだろう!?」
女「そりゃ悲しいけど、涙は流さなかったわ」
妖怪「なんという血も涙もないおなごよ……」
妖怪「?」
女「私、泣いたことないのよね」
妖怪「は……!?」
妖怪「だけど、さすがに赤ん坊の頃は泣いただろう?」
女「そりゃ泣いたでしょうけど、物心ついてから泣いた記憶が一度もないの」
妖怪「ウソだぁ!」
妖怪「親に叱られたり、誰かにいじめられたり、失恋したら……悲しくて泣くだろう!?」
女「そりゃ悲しいけど、涙は流さなかったわ」
妖怪「なんという血も涙もないおなごよ……」
16: 2020/06/13(土) 17:44:06.925 ID:hkFVHm750
妖怪「しかし、ワシはなんとしてもおぬしの涙が欲しい! 極上の涙が飲みたいのだ!」
女「そういわれてもねえ」
妖怪「ならば、おぬしを泣かせるチャンスをくれ!」
妖怪「しばらくおぬしの家に居候させてくれえ!」
女「別にいいけど」
妖怪「いいの!? 普通断ると思いますけど!?」
女「悪い妖怪じゃなさそうだから」
妖怪「うむむ、こっちが泣きそうになってくるわい……」
女「そういわれてもねえ」
妖怪「ならば、おぬしを泣かせるチャンスをくれ!」
妖怪「しばらくおぬしの家に居候させてくれえ!」
女「別にいいけど」
妖怪「いいの!? 普通断ると思いますけど!?」
女「悪い妖怪じゃなさそうだから」
妖怪「うむむ、こっちが泣きそうになってくるわい……」
17: 2020/06/13(土) 17:48:02.015 ID:hkFVHm750
―女の自宅―
妖怪「さぁて……どうやって泣かすか……」
妖怪「そうだ! 手料理だ! ワシの手料理で感涙させてやる!」
トントントン…
ジュージュー…
グツグツ…
女「いい匂いがしてきたわね」
妖怪「さぁて……どうやって泣かすか……」
妖怪「そうだ! 手料理だ! ワシの手料理で感涙させてやる!」
トントントン…
ジュージュー…
グツグツ…
女「いい匂いがしてきたわね」
19: 2020/06/13(土) 17:51:06.565 ID:hkFVHm750
妖怪「さぁ、食ってみろ! ワシの愛と情熱がこもったビーフシチューと野菜炒めを!」
女「いただきます」モグッ
妖怪「どうだ?」
女「うん、おいしい」
妖怪「涙は!?」
女「おいしいけど、泣けはしないわね」
妖怪「はうっ! 作り損!」
女「いただきます」モグッ
妖怪「どうだ?」
女「うん、おいしい」
妖怪「涙は!?」
女「おいしいけど、泣けはしないわね」
妖怪「はうっ! 作り損!」
20: 2020/06/13(土) 17:53:30.886 ID:hkFVHm750
女「それじゃ、おやすみ」
妖怪「うむ」
妖怪「こうしてあったかい布団で眠るのも久しぶりだ……」
女「あら、どうして?」
妖怪「ワシのような妖怪を狙う“妖怪ハンター”がおるのでな……」
妖怪「人里に安息の地はないのだよ」
女「ふうん、妖怪も大変なのね」
女(涙でいいなら、飲ませてあげたいけど……)
妖怪「うむ」
妖怪「こうしてあったかい布団で眠るのも久しぶりだ……」
女「あら、どうして?」
妖怪「ワシのような妖怪を狙う“妖怪ハンター”がおるのでな……」
妖怪「人里に安息の地はないのだよ」
女「ふうん、妖怪も大変なのね」
女(涙でいいなら、飲ませてあげたいけど……)
22: 2020/06/13(土) 17:57:01.740 ID:hkFVHm750
―会社―
女「……」カタカタ
女「ねえ、後輩ちゃん」
後輩女「なんですか、先輩?」
女「泣いたことある?」
後輩女「泣く? しょっちゅうですよぉ!」
後輩女「映画見たら泣きますし、課長に叱られたら泣きますし、ケガした時も泣きますし……」
後輩女「今も、ペットの犬が死んだことを想像するだけで……」シクシク
女「羨ましいわ」
後輩女「ありがとうございますぅ~」グスッ
女「……」カタカタ
女「ねえ、後輩ちゃん」
後輩女「なんですか、先輩?」
女「泣いたことある?」
後輩女「泣く? しょっちゅうですよぉ!」
後輩女「映画見たら泣きますし、課長に叱られたら泣きますし、ケガした時も泣きますし……」
後輩女「今も、ペットの犬が死んだことを想像するだけで……」シクシク
女「羨ましいわ」
後輩女「ありがとうございますぅ~」グスッ
23: 2020/06/13(土) 17:59:47.353 ID:hkFVHm750
女「課長」
課長「なにかね?」
女「叱ってくれませんか?」
課長「え、なんで……? 君はよくやってくれてるのに……」
女「いいから、やってみて下さい。叱られたい気分なんです」
課長「分かった……コホン」
課長「なにかね?」
女「叱ってくれませんか?」
課長「え、なんで……? 君はよくやってくれてるのに……」
女「いいから、やってみて下さい。叱られたい気分なんです」
課長「分かった……コホン」
24: 2020/06/13(土) 18:03:39.201 ID:hkFVHm750
課長「コラーッ!!!」
課長「いつもいつも冷静に完璧な仕事をして!」
課長「おかげで上司の私の立場がないじゃないか!」
課長「どうしてくれるーっ!!!」
課長「……どう?」
女「もういいです」
課長「ううう……」
女(泣くって……難しいわね)
課長「いつもいつも冷静に完璧な仕事をして!」
課長「おかげで上司の私の立場がないじゃないか!」
課長「どうしてくれるーっ!!!」
課長「……どう?」
女「もういいです」
課長「ううう……」
女(泣くって……難しいわね)
1: 2020/06/13(土) 17:30:10.096 ID:hkFVHm750
妖怪「ぐふふふ……」
女「なに、あなた」
妖怪「ワシは妖怪だ……おぬしの体液をよこせぇ!!!」
女「体液って血液?」
妖怪「いや、そうではない」
女「唾液?」
妖怪「違う!」
女「胃液?」オエッ
妖怪「違うし、わざわざ吐こうとするな!」
女「なに、あなた」
妖怪「ワシは妖怪だ……おぬしの体液をよこせぇ!!!」
女「体液って血液?」
妖怪「いや、そうではない」
女「唾液?」
妖怪「違う!」
女「胃液?」オエッ
妖怪「違うし、わざわざ吐こうとするな!」
25: 2020/06/13(土) 18:06:19.046 ID:hkFVHm750
―女の自宅―
TV『全米が泣いた……!』
TV『孤独な狩人と心優しき熊の……愛と友情の物語! 涙腺が枯れ果てミイラになる感動作……!』
妖怪「むむむ……これは面白そうだ!」
妖怪「この映画、見に行こうぞ!」
女「まあ、いいけど」
妖怪「ぐふふふ、映画館で号泣するおぬしの体液をゴックゴクだぁ!」
女「そう上手くいくといいけどね」
TV『全米が泣いた……!』
TV『孤独な狩人と心優しき熊の……愛と友情の物語! 涙腺が枯れ果てミイラになる感動作……!』
妖怪「むむむ……これは面白そうだ!」
妖怪「この映画、見に行こうぞ!」
女「まあ、いいけど」
妖怪「ぐふふふ、映画館で号泣するおぬしの体液をゴックゴクだぁ!」
女「そう上手くいくといいけどね」
26: 2020/06/13(土) 18:10:28.369 ID:hkFVHm750
―映画館―
受付「いらっしゃいませ」
女「大人一枚、妖怪一枚」
受付「かしこまりました」
妖怪「体液とは関係なく、ワクワクしてきたのう!」
女「まあね」
妖怪「どうでもいいけど、映画始まる前の予告編ってどれもやたら面白そうに見えない?」
女「たしかにね」
受付「いらっしゃいませ」
女「大人一枚、妖怪一枚」
受付「かしこまりました」
妖怪「体液とは関係なく、ワクワクしてきたのう!」
女「まあね」
妖怪「どうでもいいけど、映画始まる前の予告編ってどれもやたら面白そうに見えない?」
女「たしかにね」
28: 2020/06/13(土) 18:14:13.724 ID:hkFVHm750
妖怪「うっ、うっ、うっ……」
妖怪「泣けた~! ワシ泣けた~!」
女「……」
妖怪「って、全然泣いてないんかーい! そんなにつまらなかったか!?」
女「面白かったわ」
妖怪「涙は?」
女「出なかったわ」
妖怪「ぐぬう……」
妖怪「泣けた~! ワシ泣けた~!」
女「……」
妖怪「って、全然泣いてないんかーい! そんなにつまらなかったか!?」
女「面白かったわ」
妖怪「涙は?」
女「出なかったわ」
妖怪「ぐぬう……」
30: 2020/06/13(土) 18:18:08.821 ID:hkFVHm750
―会社―
後輩女「せんぱーい! 最近なにか面白いことありました?」
女「映画が面白かったわ。今話題の全米が泣いたやつ」
後輩女「あっ、先輩もあれ見たんですか!」
後輩女「私なんかもう……大号泣しちゃって。隣の人に怒られちゃいましたよ」シクシク
女「私でも怒るでしょうね」
後輩女「主人公がまるで私みたいで……今思い出しても泣けちゃいますよぉ~」シクシク
女「その泣きやすさを少し分けて欲しいわ」
後輩女「せんぱーい! 最近なにか面白いことありました?」
女「映画が面白かったわ。今話題の全米が泣いたやつ」
後輩女「あっ、先輩もあれ見たんですか!」
後輩女「私なんかもう……大号泣しちゃって。隣の人に怒られちゃいましたよ」シクシク
女「私でも怒るでしょうね」
後輩女「主人公がまるで私みたいで……今思い出しても泣けちゃいますよぉ~」シクシク
女「その泣きやすさを少し分けて欲しいわ」
31: 2020/06/13(土) 18:20:04.510 ID:hkFVHm750
―女の自宅―
妖怪「おーい、今日は部屋を掃除したぞ!」
ピカピカ…
女「……まぁ」
女「ありがとう、嬉しいわ」
妖怪「涙は?」
女「出ないわ」
妖怪「……」ガクッ
妖怪「おーい、今日は部屋を掃除したぞ!」
ピカピカ…
女「……まぁ」
女「ありがとう、嬉しいわ」
妖怪「涙は?」
女「出ないわ」
妖怪「……」ガクッ
33: 2020/06/13(土) 18:23:02.506 ID:hkFVHm750
妖怪(そうだ! いっそ苦しんでみるか!)
妖怪「ううっ……苦しい……!」
妖怪「ワシはもう死んでしまう~! もうダメだぁ~!」
女「救急車呼ぶわ」
妖怪「呼ばんでいい! 呼ばんでいい!」ガバッ
女「あら、元気だったの」
妖怪「うむ……救急隊に迷惑をかけるわけにはいかん」
女「意外と常識あるのね」
妖怪「ううっ……苦しい……!」
妖怪「ワシはもう死んでしまう~! もうダメだぁ~!」
女「救急車呼ぶわ」
妖怪「呼ばんでいい! 呼ばんでいい!」ガバッ
女「あら、元気だったの」
妖怪「うむ……救急隊に迷惑をかけるわけにはいかん」
女「意外と常識あるのね」
35: 2020/06/13(土) 18:26:33.191 ID:hkFVHm750
妖怪「ケーキ作ったぞ!」
妖怪「泣けるDVD借りてきたぞ!」
妖怪「涙が出るツボを指圧してやろう!」
妖怪「玉ねぎを切ってやるぅ!」トントントントントン
……
妖怪「どれもダメだ……」ハァハァ…
女「これだけ頑張ってくれてるのに、ごめんなさいね」
妖怪「いや……よいのだ。ワシも好きでやってることだからな」
女「……」
妖怪「泣けるDVD借りてきたぞ!」
妖怪「涙が出るツボを指圧してやろう!」
妖怪「玉ねぎを切ってやるぅ!」トントントントントン
……
妖怪「どれもダメだ……」ハァハァ…
女「これだけ頑張ってくれてるのに、ごめんなさいね」
妖怪「いや……よいのだ。ワシも好きでやってることだからな」
女「……」
36: 2020/06/13(土) 18:29:25.373 ID:hkFVHm750
ある夜――
女「買い物に行ってくるわ」
妖怪「こんな時間にか?」
女「うん、食べ物がなくなっちゃったから。買い出しにね」
妖怪「だったらワシも同行しよう」
女「いいの?」
妖怪「若いおなごを守るのは、男子の務めよ……!」
女「じゃあお願いするわ」
女「買い物に行ってくるわ」
妖怪「こんな時間にか?」
女「うん、食べ物がなくなっちゃったから。買い出しにね」
妖怪「だったらワシも同行しよう」
女「いいの?」
妖怪「若いおなごを守るのは、男子の務めよ……!」
女「じゃあお願いするわ」
38: 2020/06/13(土) 18:32:45.735 ID:hkFVHm750
女「じゃ、買い物してくるから。外で待っててね」
妖怪「うむ」
妖怪「……」
妖怪(最初会った時は、“血も涙もないおなご”などといってしまったが……とんでもない)
妖怪(よいおなごではないか……泣かないけど)
妖怪「さて、買い物が終わるまで、ここで……」
「見ーつけた」
妖怪「うむ」
妖怪「……」
妖怪(最初会った時は、“血も涙もないおなご”などといってしまったが……とんでもない)
妖怪(よいおなごではないか……泣かないけど)
妖怪「さて、買い物が終わるまで、ここで……」
「見ーつけた」
39: 2020/06/13(土) 18:37:09.820 ID:hkFVHm750
妖怪「……む!?」
ハンター「パトロールしてたら、まさかこんなところで妖怪に出会えるなんてねえ。ついてる」
妖怪(この仮面、この出で立ち……! こやつ……妖怪ハンター!)
妖怪(しかも……相当の使い手……!)
ハンター「さいわい人通りもないし、私のナイフですぐ滅してあげる」ジャキッ
妖怪「……そうはいかん」
妖怪「ワシは……ここで待っていなければならんのだ!」
ハンター「待つ? 誰を待つか知らないけど、地獄で待ってなさいな!」
ハンター「パトロールしてたら、まさかこんなところで妖怪に出会えるなんてねえ。ついてる」
妖怪(この仮面、この出で立ち……! こやつ……妖怪ハンター!)
妖怪(しかも……相当の使い手……!)
ハンター「さいわい人通りもないし、私のナイフですぐ滅してあげる」ジャキッ
妖怪「……そうはいかん」
妖怪「ワシは……ここで待っていなければならんのだ!」
ハンター「待つ? 誰を待つか知らないけど、地獄で待ってなさいな!」
40: 2020/06/13(土) 18:39:03.225 ID:hkFVHm750
店員「ありがとうございましたー」
女「ふぅ、買い物終わり。ずいぶんかかっちゃった」
女(あれ? 妖怪はどこに行ったのかしら……)キョロキョロ
女「!?」
ガキンッ! キィンッ! ザシュッ…
女「ふぅ、買い物終わり。ずいぶんかかっちゃった」
女(あれ? 妖怪はどこに行ったのかしら……)キョロキョロ
女「!?」
ガキンッ! キィンッ! ザシュッ…
41: 2020/06/13(土) 18:42:20.710 ID:hkFVHm750
ハンター「ハァッ!」
ズバッ!
妖怪「ぐうっ……!」
ハンター「なかなか粘るけど、そろそろ地獄が見えてきたでしょ」
妖怪「く、くそっ……!」ゴフッ…
女(妖怪と……仮面をつけた怪しい人が戦ってる)
女(いったい何が起こってるの?)
ズバッ!
妖怪「ぐうっ……!」
ハンター「なかなか粘るけど、そろそろ地獄が見えてきたでしょ」
妖怪「く、くそっ……!」ゴフッ…
女(妖怪と……仮面をつけた怪しい人が戦ってる)
女(いったい何が起こってるの?)
42: 2020/06/13(土) 18:45:29.260 ID:hkFVHm750
ハンター「もらったァ!」
ザシュッ!
妖怪「ぐはぁぁぁ……!」ドサッ…
女「あっ……」
女「しっかりして!」タタタッ
妖怪「う、ぐ……」
ハンター「……え!?」
ザシュッ!
妖怪「ぐはぁぁぁ……!」ドサッ…
女「あっ……」
女「しっかりして!」タタタッ
妖怪「う、ぐ……」
ハンター「……え!?」
44: 2020/06/13(土) 18:48:47.055 ID:hkFVHm750
女「何があったの……!」
妖怪「あやつは……妖怪ハンター……」
妖怪「うっかり見つかってしまい……このざまだ……ぐふっ……」
女「なんで……! あなたは何もしてないのに……」
妖怪「気にするな……これでよいのだ……」
妖怪「人と妖怪は相容れぬ……人里に降りた時からこうなることは覚悟、してた……」
妖怪「だが、おぬしとの……日々は……とてもとても楽しい、ものだった、ぞ……」
女「……!」
妖怪「あやつは……妖怪ハンター……」
妖怪「うっかり見つかってしまい……このざまだ……ぐふっ……」
女「なんで……! あなたは何もしてないのに……」
妖怪「気にするな……これでよいのだ……」
妖怪「人と妖怪は相容れぬ……人里に降りた時からこうなることは覚悟、してた……」
妖怪「だが、おぬしとの……日々は……とてもとても楽しい、ものだった、ぞ……」
女「……!」
45: 2020/06/13(土) 18:52:16.890 ID:hkFVHm750
女「ごめんなさい……」
女「こんなことになってるのに……私の目からは一滴も……」
妖怪「ぐふふ……かまわん……」
妖怪「そうやって、ワシを想ってくれるだけで、ワシは、嬉しい……」
妖怪「おぬしに出会えて……よかった……」
妖怪「ワシらの別れに……涙はいらんよ……」
女「待って……死んだらダメ!」
ハンター「あ、あの」
女「ちょっとあなた」ギロッ
ハンター「……!」ビクッ
女「こんなことになってるのに……私の目からは一滴も……」
妖怪「ぐふふ……かまわん……」
妖怪「そうやって、ワシを想ってくれるだけで、ワシは、嬉しい……」
妖怪「おぬしに出会えて……よかった……」
妖怪「ワシらの別れに……涙はいらんよ……」
女「待って……死んだらダメ!」
ハンター「あ、あの」
女「ちょっとあなた」ギロッ
ハンター「……!」ビクッ
47: 2020/06/13(土) 18:56:25.727 ID:hkFVHm750
女「どうして、この妖怪を襲ったの。人を襲ったりしてたの? 何か悪いことしてたの?」
ハンター「……え」
ハンター「いえ、あの、妖怪だから……。見つけたから……」
女「妖怪だからって問答無用で退治するの!?」
女「そんなの、やってることは通り魔と同じじゃない!」
女「私はわけあって、今この妖怪を居候させてるんだけど……」
女「下手な人間より、よっぽど平和的で面白い妖怪だったわ」
女「それなのにこんなことして……いくら仕事だろうと許さない!」
妖怪「よ、よせ……。人間同士、争うなど……」
ハンター「う、うう……」
ハンター「……え」
ハンター「いえ、あの、妖怪だから……。見つけたから……」
女「妖怪だからって問答無用で退治するの!?」
女「そんなの、やってることは通り魔と同じじゃない!」
女「私はわけあって、今この妖怪を居候させてるんだけど……」
女「下手な人間より、よっぽど平和的で面白い妖怪だったわ」
女「それなのにこんなことして……いくら仕事だろうと許さない!」
妖怪「よ、よせ……。人間同士、争うなど……」
ハンター「う、うう……」
48: 2020/06/13(土) 18:59:06.372 ID:hkFVHm750
ハンター「ごめんなさぁ~~~~~い!!!」
女「え!?」
妖怪「え……?」
女「ちょっと、いきなりどうしたの」
妖怪「ワシも……死にそうなのに、気になって死ぬに死ねなくなってきたぞ……」
ハンター「私は、私は取り返しのつかないことをぉ~!」シクシク
女「……」ハッ
女(この泣き方、どこかで見たことあるような……)
女「え!?」
妖怪「え……?」
女「ちょっと、いきなりどうしたの」
妖怪「ワシも……死にそうなのに、気になって死ぬに死ねなくなってきたぞ……」
ハンター「私は、私は取り返しのつかないことをぉ~!」シクシク
女「……」ハッ
女(この泣き方、どこかで見たことあるような……)
50: 2020/06/13(土) 19:03:26.457 ID:hkFVHm750
ハンター「ごめんなさい、先輩……」カパッ
女「あ……!」
後輩女「私です」
妖怪「え……お知り合い……?」
女「まあ、ちょっとね。いえだいぶ知ってるけど……」
後輩女「私……本業は妖怪ハンターなんです。いや、副業かな? どっちだろ?」
後輩女「分かんなぁ~い!」シクシク
女「ああ、もう……」
女(そういえば、映画に出てくる狩人が自分みたいだっていってたわね……)
女「あ……!」
後輩女「私です」
妖怪「え……お知り合い……?」
女「まあ、ちょっとね。いえだいぶ知ってるけど……」
後輩女「私……本業は妖怪ハンターなんです。いや、副業かな? どっちだろ?」
後輩女「分かんなぁ~い!」シクシク
女「ああ、もう……」
女(そういえば、映画に出てくる狩人が自分みたいだっていってたわね……)
1: 2020/06/13(土) 17:30:10.096 ID:hkFVHm750
妖怪「ぐふふふ……」
女「なに、あなた」
妖怪「ワシは妖怪だ……おぬしの体液をよこせぇ!!!」
女「体液って血液?」
妖怪「いや、そうではない」
女「唾液?」
妖怪「違う!」
女「胃液?」オエッ
妖怪「違うし、わざわざ吐こうとするな!」
女「なに、あなた」
妖怪「ワシは妖怪だ……おぬしの体液をよこせぇ!!!」
女「体液って血液?」
妖怪「いや、そうではない」
女「唾液?」
妖怪「違う!」
女「胃液?」オエッ
妖怪「違うし、わざわざ吐こうとするな!」
53: 2020/06/13(土) 19:08:22.180 ID:hkFVHm750
後輩女「私の家は妖怪退治を生業とする家系で、出会う妖怪はいつも凶悪な奴ばかり……」
後輩女「人をムシケラみたいに殺す奴とも戦ったことがあります……」
後輩女「だから今日もそのつもりで戦ったんですが……」
後輩女「こんなことに……! 先輩の大切な同居人を……」シクシク
女「……」
女「妖怪ハンターに、妖怪を助ける力はないの?」
後輩女「ない……です」
女「そう……」
女(これ以上、この子を責めても仕方ないわね……)
後輩女「人をムシケラみたいに殺す奴とも戦ったことがあります……」
後輩女「だから今日もそのつもりで戦ったんですが……」
後輩女「こんなことに……! 先輩の大切な同居人を……」シクシク
女「……」
女「妖怪ハンターに、妖怪を助ける力はないの?」
後輩女「ない……です」
女「そう……」
女(これ以上、この子を責めても仕方ないわね……)
54: 2020/06/13(土) 19:11:03.332 ID:hkFVHm750
女「ならせめて……」
女「あなたの涙、ちょっともらえる?」
後輩女「こんなものでよければ……」グスッ
女(ハンカチに染み込ませて……)
女「妖怪、これを舐めて」
妖怪「む……」
女「私は涙を流せなかったけど、私の後輩が流してくれたから……」
妖怪(なんと優しいおなごよ……ワシに最期の食事をさせてくれるとは……)
妖怪「かたじけ、ない……」ペロッ
女「あなたの涙、ちょっともらえる?」
後輩女「こんなものでよければ……」グスッ
女(ハンカチに染み込ませて……)
女「妖怪、これを舐めて」
妖怪「む……」
女「私は涙を流せなかったけど、私の後輩が流してくれたから……」
妖怪(なんと優しいおなごよ……ワシに最期の食事をさせてくれるとは……)
妖怪「かたじけ、ない……」ペロッ
55: 2020/06/13(土) 19:15:39.238 ID:hkFVHm750
妖怪「……」
女「どう?」
妖怪「う、うまい!!!」
女「え」
後輩女「ふぇ?」
妖怪「ワシは涙を糧にするゆえ……これまで幾人もの涙を味わってきた……」
妖怪「だが、これは……今までで一番の味だ!」
妖怪「これぞ、まさに……まさに極上の涙……! ワシの追い求めていた涙よ……!」
女「あらま」
女「どう?」
妖怪「う、うまい!!!」
女「え」
後輩女「ふぇ?」
妖怪「ワシは涙を糧にするゆえ……これまで幾人もの涙を味わってきた……」
妖怪「だが、これは……今までで一番の味だ!」
妖怪「これぞ、まさに……まさに極上の涙……! ワシの追い求めていた涙よ……!」
女「あらま」
58: 2020/06/13(土) 19:19:23.908 ID:hkFVHm750
妖怪「そうか……。ワシら妖怪にとって、妖怪ハンターは天敵中の天敵……」
妖怪「その涙を舐めるなど、普通に考えればまず不可能」
妖怪「だが、このハンターのおなごは、おぬしの知り合いであった」
妖怪「だから、こうして極上の涙にありつけることができた」
妖怪「ワシがあの時感じた“予感”は、このことだったのだ」
女「なるほどね」
後輩女「よく分からないけど、よかったです!」
妖怪「その涙を舐めるなど、普通に考えればまず不可能」
妖怪「だが、このハンターのおなごは、おぬしの知り合いであった」
妖怪「だから、こうして極上の涙にありつけることができた」
妖怪「ワシがあの時感じた“予感”は、このことだったのだ」
女「なるほどね」
後輩女「よく分からないけど、よかったです!」
59: 2020/06/13(土) 19:21:24.299 ID:hkFVHm750
女「もうすっかりよくなったの?」
妖怪「うむ、この通りだ! 極上の涙を味わったら、すっかり回復したぞ!」シャキンッ
女「……」
女「よかったわね」クルッ
妖怪「“よかったわね”と言いつつ、そっぽ向かないで!」
後輩女「絶対呆れてますよね、これ!」
妖怪「うむ、この通りだ! 極上の涙を味わったら、すっかり回復したぞ!」シャキンッ
女「……」
女「よかったわね」クルッ
妖怪「“よかったわね”と言いつつ、そっぽ向かないで!」
後輩女「絶対呆れてますよね、これ!」
61: 2020/06/13(土) 19:25:33.460 ID:hkFVHm750
妖怪「ワシは極上の涙に巡り合えた。だが……」
後輩女「だが?」
妖怪「ワシはまだまだおぬしを泣かせることを諦めておらんぞ!」
後輩女「私も先輩が泣くところ見たいです!」
女「え?」
妖怪「というわけで、ワシらは共同戦線を張るぞ!」
後輩女「はい! 妖怪と妖怪ハンターの同盟です! これは歴史に残りますよぉ!」
女「……黒歴史にならなきゃいいけどね」
後輩女「だが?」
妖怪「ワシはまだまだおぬしを泣かせることを諦めておらんぞ!」
後輩女「私も先輩が泣くところ見たいです!」
女「え?」
妖怪「というわけで、ワシらは共同戦線を張るぞ!」
後輩女「はい! 妖怪と妖怪ハンターの同盟です! これは歴史に残りますよぉ!」
女「……黒歴史にならなきゃいいけどね」
63: 2020/06/13(土) 19:28:34.350 ID:hkFVHm750
その後――
後輩女「先輩、遊びに来ました!」
妖怪「来たな、ハンターのおなご!」
女「いらっしゃい」
後輩女「今日こそ先輩を泣かせてみせますからね!」
妖怪「うむ、ワシら最強タッグに不可能はない!」
女「最低の間違いじゃないの」
後輩女「先輩、遊びに来ました!」
妖怪「来たな、ハンターのおなご!」
女「いらっしゃい」
後輩女「今日こそ先輩を泣かせてみせますからね!」
妖怪「うむ、ワシら最強タッグに不可能はない!」
女「最低の間違いじゃないの」
65: 2020/06/13(土) 19:32:59.080 ID:hkFVHm750
後輩女「見て下さい、このヘビのオモチャ! リアルでしょ!」ウネウネ
女「……」
後輩女「ってリアルすぎて私が怖い! ギャーッ!」
妖怪「次はワシだ! ガオオオオオオッ!」
女「……」
妖怪「涙出たか!?」 後輩女「涙出ましたか!?」
女「出たわ。ため息が」
女「……」
後輩女「ってリアルすぎて私が怖い! ギャーッ!」
妖怪「次はワシだ! ガオオオオオオッ!」
女「……」
妖怪「涙出たか!?」 後輩女「涙出ましたか!?」
女「出たわ。ため息が」
67: 2020/06/13(土) 19:36:42.146 ID:hkFVHm750
妖怪「せっかく来てくれたのだ。今日はワシが手料理をふるまってやろう」
後輩女「わっ、楽しみです!」
女「料理の腕は本物だから、期待してていいわよ」
後輩女「じゃあ見学してもいいですか? 私、料理ヘタクソで……」
妖怪「ぐふふ、よかろう! 料理のイロハを叩き込んでやる!」
アハハハ… ワイワイ…
女(すっかり仲良くなっちゃって……)
女(どうやら、私が涙を流す日はまだまだ遠そうね)
女(だけど――)
後輩女「わっ、楽しみです!」
女「料理の腕は本物だから、期待してていいわよ」
後輩女「じゃあ見学してもいいですか? 私、料理ヘタクソで……」
妖怪「ぐふふ、よかろう! 料理のイロハを叩き込んでやる!」
アハハハ… ワイワイ…
女(すっかり仲良くなっちゃって……)
女(どうやら、私が涙を流す日はまだまだ遠そうね)
女(だけど――)
69: 2020/06/13(土) 19:41:34.766 ID:hkFVHm750
女(あの時、妖怪がもう大丈夫だと分かった時……)
女『よかったわね』クルッ
女(私の目が少し潤んでしまったのは……私だけの秘密よ)
~おわり~
女『よかったわね』クルッ
女(私の目が少し潤んでしまったのは……私だけの秘密よ)
~おわり~
70: 2020/06/13(土) 19:43:19.934
おつ
71: 2020/06/13(土) 19:44:44.839
面白かった
すっきりまとめるの上手いね
すっきりまとめるの上手いね
72: 2020/06/13(土) 19:46:19.366
目から心の汗が
引用元: 妖怪「ぐふふ、おぬしの体液をよこせぇ!!!」女「体液って血液? 唾液? 胃液? それとも……」
引用元:http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1592037010
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