1: 2011/07/21(木) 11:37:20.66 ID:S04Kvl8q0
男「なんだよ!!」

女「ちゅーして…?」

男「な、なんでお前としなくちゃダメなんだよ!!」

女「むぅ…いじわる…」

男「それよりプール行こうぜ!!」

女「うん!いつもの小さいとこじゃなくて、回るプールがいいな!」

男「よーし!!じゃあ自転車で行こうぜ!!」

女「やったぁ!!」


2: 2011/07/21(木) 11:42:20.95 ID:S04Kvl8q0
いつもの歩いて行けるプールに行けばよかった…そんなことを今更後悔しても遅い。
あの時キスしておけばよかった…今更だ。

女「男くーん!遅いよぉー!!」

男「まてよー!!おい!?女!!!車ぁぁああ!!!」

ガシャーン

ごめんな。
俺が先に走ってれば…
自転車で行こうなんて言わなければ…
今更だよな。

5: 2011/07/21(木) 11:47:03.69 ID:S04Kvl8q0
医者「女さんの意識はもう…」

そう告げられて3年が経った。
俺は背が伸びて、それなりに男らしくなった。

女はあの時から時間が止まったみたいに、小さいままで…
微笑みながら眠っていた。

男「女…ごめんな…ごめんな…俺が自転車で行こうなんて言わなければ、今ごろお前も俺と同じ中学校なのにな…ごめん…」

病院に来るたびに謝っていた。
本当に今更だ。
当然、女のいない学校なんておもしろくもなかった。
女…目を覚ましてくれよ…
何回も変わってやりたいって願った。
何回も何回も。
あの時以来、後悔ばかりだ。
情けない。

7: 2011/07/21(木) 11:52:24.13 ID:S04Kvl8q0
俺は高校生になった。
女はまだ眠ったままだ。

男「女?俺、高校生になっちゃったよ…俺の時間だけが進んでるみたいで…お前はまだ小さいままなのにな…」

男「ごめんな…」

情けない。
俺の時間も止めてくれよ、神様。
こんなことを願ってしまう自分が何よりも誰よりも女よりも情けなくて、格好悪い。
せめて女の前では男らしくいようと思った。
思ってはみたものの、やっぱりダメだった。
情けない。

8: 2011/07/21(木) 11:57:35.86 ID:S04Kvl8q0
高3の夏。
女が眠りについた日みたいに綺麗な夏空で、くそ暑い日に女は二度と起きることのない眠りについた。

男「女…お前は幸せなんかじゃなかったよな…俺のせいで…ごめん…ごめんな…」

俺は何もかも失った。
高校も辞めた。
全てがどうでもよくなった。
死んでしまいたいとも思った。
いや、いつも思っていた。
情けない。

翌年の夏、くそ暑くて綺麗な夏空の下で女がいた。
あの時みたいに笑っていた。
俺は涙が止まらなかった。

10: 2011/07/21(木) 12:02:51.50 ID:S04Kvl8q0
女「男くん!プール、行こうよ!」

笑っていた。

男「女…女なの…か!?なぁ!?なんでだよ!!お前死んだんじゃなかったのか!?なぁ!!」

泣いていた。

女「死んじゃった…そうなんだよね。でも、こうしてまた男くんと会えた!」

笑っていた。

男「なんだよ、それ…幽霊でもなんでもいい…女、ごめんな…直接言えないままお前死んじゃったからさ…」

泣いていた。

女「男くんは何も悪くないよ?毎日毎日病院に来てごめんなって…泣きながらごめんなって…もっと楽しい話をしてほしかったよ?学校での出来事とか、好きな人ができたとか、色々あったでしょ!?」

泣いていた。

男「そんなもん、お前がいないせいで楽しくなんてなかったよ!!お前がいない学校なんておもしろくもなんともなかったよ!!なんで目を覚ましてくれなかったんだよ…」

泣いていた。

11: 2011/07/21(木) 12:09:22.30 ID:S04Kvl8q0
女「男くんが楽しい話、してくれなかったから寝たふりをしてたんだよ!そしたら死んじゃった!」

笑っていた。

男「なんだよそれ!!!もうなんでもいい!!こうして会えたんだ、俺はずっとお前が好きだった。毎日毎日後悔ばっかりしてた。ごめんなしか言葉がでなかった。どうしてお前が…って思いと、後悔で押し潰されそうな毎日だった。情けないよな、俺。」

泣いていた。

女「私も好きだよ。男くんは情けなくなんてないよ!!だって何も悪くないもん!!もう自分を責めないでよ!お願いだよ…男くんの悲しそうな顔を見るのは嫌だよ…好きな人の泣いてる顔なんて見たくないよ…」

男「ごめんな…女、好きだよ…」

あの夏、できなかったキスをした。
女は暖かくて優しくて、俺の全てを包み込んでくれた。
俺は救われた。

12: 2011/07/21(木) 12:13:52.25 ID:S04Kvl8q0
それから女は死んだはずなのに、俺とずっと一緒だった。
あの時の幼いままの姿で。

男「お前、やっぱりどう見ても子供だよ。」

女「ひ、ひどいな!!ほら、胸とか…ん~お尻も…大きくなってないね…」

男「ハハハハ そのままでも可愛いよ。昔に戻ったみたいだ!」

女「なんか嬉しいような嬉しくないような複雑な気分だよ…」

本当に姿は昔のままだった。
でも、なんでも良かった。
そもそも死んだ人間が隣にいるんだから、姿がそのままとか小さいことはどうでもよかった。
いや、違うな。
女がそばにいてくれるだけで他のことはどうでもよかった、が正しいな。

16: 2011/07/21(木) 12:19:16.61 ID:S04Kvl8q0
女と過ごす日々はすごく楽しかった。
こんな日が続くとは思ってなかったが、願っていた。
このままずっと…一緒に…願っていた。

男「女ー!花火、見に行こうぜ?」

女「うん!!でっかいの?!」

男「あぁ!でっかいでっかい!」

女「行こう行こう!!あ、あっちで出店とか出てるの?」

男「多分出てるよ!なんか食いたいもんでもあんの?」

女「わたあめ!!!食べたことないから…」

男「ハハハハ 買ってやるよ!よし!!行こうぜ!!」

女と見たでっかい花火はこれが最初で最後だった。
女がわたあめを食ったのも最初で最後だった。

24: 2011/07/21(木) 12:35:40.06 ID:S04Kvl8q0
俺は女がてっきり生き返ったものと勘違いしていた。

男「母さん!!久しぶり!ほら、女だよ!覚えてるよな?!」

母「久しぶりだねぇ!おかえりなさい!隣にいる子、彼女?」

男「え…ほ、ほら!幼馴染みの女だよ!!覚えてるだろ!?」

母「あんたに幼馴染みなんていないでしょ?ハハハハ 女さん、初めまして、男の母です!」

女「初めまして!女って言います。」

なんでだよ…
幼馴染みがいない?どういうことだよ?
確かに女とは幼馴染みだったよな…
どういうことだよ!!
母さん、忘れたのか?わからない…

26: 2011/07/21(木) 12:41:43.44 ID:S04Kvl8q0
母「今日は泊まっていくの?」

男「い、いや今日は帰るよ…また盆に帰るよ…」

とてもこの場所にいれなかった。
どういうことなのか、どうすればいいのかわからなかった。
忘れたふりをしている…こう思うのが精一杯だった。

男「なぁ、女…なんでお前のこと、母さんはわからないんだ…?」

女「ん~どうしてだろうね…ハハハハ でも、死んじゃって、お通夜もお葬式もしたのは事実なんだよ。」

男「そ、それはわかってる…お前の母さんと親父さんは?会ったのか?」

女「ううん…まだ…」

男「お前の家に行こう。どういうことなのか俺にはわからん…」

女「うん…」

29: 2011/07/21(木) 12:46:00.14 ID:S04Kvl8q0
女の家に来なければ良かった。
そう思ってももう遅い。

男「ご無沙汰しています。男です。」

女母「あぁ!久しぶり!元気だった?」

男「は、はい…あの!この子、わかりますか?」

女母「えっと男くんの彼女…かな?」

男「違いますよ…あんたの娘だよ!!なんで覚えてないんだよ!!なぁ!!頼むよ…思い出してくれよ…」

女母「男くん、落ち着いて。あの子はもういないの。ほら…」

仏壇に置いてある女の写真だった。

男「わかってます…でも、ここにいる子とその写真を見比べてください…」

30: 2011/07/21(木) 12:48:37.83 ID:S04Kvl8q0
女母「似ているけど、私の娘じゃないよ?もういないのよ…」

男「そうですか…また、来ます。」

女母「うん!いつでも来てね!女さん、またね!」

男「はい…」

どうしてだ…
俺だけが覚えてるってことか?
女は中学校も高校もいっていなくて、共通の友達なんてどこにいるのかわからない…
どうすればいいんだよ…

31: 2011/07/21(木) 12:52:26.76 ID:S04Kvl8q0
女「男くん…もういいよ…そんなに思い詰めた顔、しないで?」

男「ごめん…でも…」

女「いいの!!男くんが覚えててくれてる…それだけでいいよ…」

男「あぁ…」

腑に落ちなかったが納得するしかなかった。
どうすることもできないのだから。

女「それより、花火しよ?」

男「お、おう!そうだな!花火買って帰るか!」

女にだけでも笑ってる俺の姿を見せたかった。
ずっと泣いた姿ばかり見せていたんだ。
女がいる時だけは…そう思うと自然に笑顔になれた。

32: 2011/07/21(木) 12:59:13.23 ID:S04Kvl8q0
男くん、ごめんね。
おばさん達がわからないのも当然だよ。
あなたにしか私のことはわからないよ。
男くんに会う前におばさん達、お母さん達、小学校の時の友達、みんなに会って来たんだよ。
黙っててごめんね。

女「男くん…もうすぐ夏も終わりだね…私、秋ってなんか嫌いだよ…楽しかった夏の思い出が走馬灯のように頭の中を駆け巡るでしょ…」

男「スースー」

女「そんなことよりも悲しいのが、もうすぐお別れなんだよ…どうして生き返ったのかとかは私にもわからない…でも、あんまり悲しそうな男くんを見かねた神様が生き返らせてくれたのかな…」

私は神様なんて信じないよ。
大切な人を二度も失う悲しみを…って思うと神様なんて信じたくない。
ずっとこのままがいいよ…

33: 2011/07/21(木) 13:04:16.35 ID:S04Kvl8q0
男「8月も終わりだなぁ…外も秋らしくなってきた…」

女「そうだねぇ…男くん、キスして…?」

俺はなんとなく女がいなくなる、そう思っていた。
ずっとこの幸せな時間が続くとわけがないって思っていた。
続けばいい…その願いは叶いそうにない。

男「あぁ…いいよ…」

最後のキスだった。
悲しい…寂しい…そんな思いが女の唇から吐息から感じた。
あの暖かくて優しくて全てを包んでくれたキスが最後じゃなくて良かった。
何故か悲しいキスで安心した俺がいた。

34: 2011/07/21(木) 13:12:27.68 ID:S04Kvl8q0
女「男くん、涙…」

男「あれ…なんでだろ…女、もうお別れか?」

女「え!?そんなことないよ!ずっとずっと、ずっと一緒だよ。」

男「ハハハハハ せっかく生き返ったもんな!!ずっと一緒だ。」

最後ぐらい笑顔でいたかった。
女、そんな透けた体でずっと一緒なんて説得力がなさすぎるぞ。

女「明日、また花火しようよ!!」

男「あぁ!!いいぜ!!いっぱい買ってきててやるよ!!」

やっぱ自然に涙が出てくるよ。
まだ逝くなよ。
もうちょっとだけ…頼むよ!!

35: 2011/07/21(木) 13:12:46.55 ID:S04Kvl8q0
女「それから、それからね!えっと…」

男「無理に楽しいことを考えなくていいんだぜ?これからずっと一緒なんだから、ゆっくり思い出作っていこうな!!」

男くん、泣きながらずっと一緒なんて説得力ないよ。
でも、嬉しいよ。
私はあなたを忘れないよ?
短かったこの夏も、昔一緒に遊んだ夏も…

男「女、愛してる。俺はお前を忘れないよ!ずっと、ずっとだ…」

女「ありが…とう…わた…しも…愛してる…よ?」

最後まで笑っていた。

37: 2011/07/21(木) 13:17:54.66 ID:S04Kvl8q0
男「女…女ぁああ!!」

やっぱり寂しいよ。
やっぱり悲しいよ。

男「女、ありがとう。本当に大好きだ。これからも今までも。」

この夏、俺は死んだはずの大好きな女の子と再開した。
絶対に忘れることのできない夏を体験した。
その代わり、二度と味わいたくない悲しみを味わった。

男「涼しくなったな…女…」

俺は大好きな女の墓の前で眠りについた。


おわり

38: 2011/07/21(木) 13:19:17.25 ID:S04Kvl8q0
最後まで見てくれた方ありがとうございました!
グダグタですが、思い付きで書いたSSに付き合ってくれてありがとうございました


39: 2011/07/21(木) 13:22:56.38

引用元: 女「ねぇねぇ!男くん!」