1: 2020/07/08(水) 21:49:23.581 ID:2GkGq0Bj0.bet
ドラゴン「ダイエットとはなんだ」

姫「長生きの癖にものを知らないわね」

ドラゴン「うむ。してダイエットとはなんだ」

姫「生存競争よ」

ドラゴン「む?」

姫「できるやつが生き残りできないクズは滅びる」

ドラゴン「死ぬのか」

姫「淘汰されるの」

ドラゴン「むう」

5: 2020/07/08(水) 21:51:38.594 ID:2GkGq0Bj0
ドラゴン「恐ろしいな」

姫「熾烈よ」

ドラゴン「人間界はもっと生に寛容だと思っていた」

姫「バカね。あそここそ真の魔界よ」

ドラゴン「王族でも戦うのだな」

姫「魔界の王族も戦うでしょう」

ドラゴン「ううむ」

姫「優雅と見えて平民のそれよりもはるかに残酷よ」

ドラゴン「なぜだ」

姫「逃げ場がないからね」

ドラゴン「むう?」

6: 2020/07/08(水) 21:53:11.060 ID:2GkGq0Bj0
姫「王が城を捨ててどこに逃げるの。仮に逃げたとしてどうやって誇りを保つの」

ドラゴン「……」

姫「落ちぶれた王は元から無惨な者よりも無惨よ」

ドラゴン「哀しいな」

姫「そうならないように戦うの」

ドラゴン「微力ながら我も手伝おう」

姫「腹筋するから足押さえて」

ドラゴン「承知した」

7: 2020/07/08(水) 21:54:42.928 ID:2GkGq0Bj0
ドラゴン「しかし疑問が残る」

姫「なに?」

ドラゴン「ダイエットがいかなるものかは分かった。だがなぜ今なのだ」

姫「?」

ドラゴン「昨日まではしていなかった。説明の通りならばなぜいきなり?」

姫「そろそろ勇者が来るからよ」

ドラゴン「どういうことだ」

9: 2020/07/08(水) 21:56:12.600 ID:2GkGq0Bj0
姫「わたしがこの洞窟にさらわれてきて一ヶ月ほど」

ドラゴン「正確には貴様が我の尻尾にこっそりしがみついてきて一ヶ月と五日と三時間二分十二秒」

姫「祖国が追手を手配していればそろそろ見つけ出す頃でしょう」

ドラゴン「かもしれん」

姫「そのための準備よ」

ドラゴン「助けに来た者と戦うのか」

姫「バカ?」

11: 2020/07/08(水) 21:57:32.060 ID:2GkGq0Bj0
ドラゴン「……」

姫「泣かないでよ」

ドラゴン「不可解だ」

姫「なにが」

ドラゴン「ダイエットが生存競争の手段で来るものへの準備ならばすなわち戦うのが道理であろう」

姫「なんで助けに来てくれたのにボコろうとするの」

ドラゴン「我が知りたい」

12: 2020/07/08(水) 21:58:36.409 ID:2GkGq0Bj0
姫「もういいから。あんたがちょっとおつむ足りないのはこの一ヶ月でよく分かってるから」

ドラゴン「うむ」

姫「……よいしょっと」

ドラゴン「む。なんだその姿勢は」

姫「ヨガ。英雄のポーズ」

ドラゴン「英雄?偉いのか?」

姫「知らない」

ドラゴン「偉いんだな。偉いに違いない」

13: 2020/07/08(水) 21:59:39.238 ID:2GkGq0Bj0
ドラゴン「ところで」

姫「なに?」

ドラゴン「勇者が来たらどうなる」

姫「わたしは帰る」

ドラゴン「そうか。我は?」

姫「死ぬ」

ドラゴン「なんだと」

姫「むごたらしく死ぬ」

ドラゴン「嫌だ」

14: 2020/07/08(水) 22:00:39.159 ID:2GkGq0Bj0
姫「仕方ないでしょう。弱い種は滅びるわ」

ドラゴン「生存競争か」

姫「そ」

ドラゴン「死にたくない」

姫「あなたもする?ダイエット」

ドラゴン「是非もなし」

15: 2020/07/08(水) 22:01:36.561 ID:2GkGq0Bj0
ドラゴン「ぬ……きつい」

姫「でも効くわよ。強くなりたくないの」

ドラゴン「なる」

姫「声が小さい!」

ドラゴン「なる!」

16: 2020/07/08(水) 22:03:05.203 ID:2GkGq0Bj0
姫「はー疲れた」

ドラゴン「やりすぎたのではないか」

姫「ダイエットにやりすぎはないわ。戦場で手を抜いた奴がどうなるか知ってる?」

ドラゴン「ぬう」

姫「どんどん行くわよ。体脂肪率をもっと絞るわ」

ドラゴン「なんだその対死亡率とやらは」

姫「戦闘力よ」

ドラゴン「得心がいった」

18: 2020/07/08(水) 22:04:10.276 ID:2GkGq0Bj0
ドラゴン「なあ姫よ」

姫「なに?」

ドラゴン「今日はダイエットはしないのか」

姫「今日は休み」

ドラゴン「戦場で手を抜くのか?」

姫「休みもなく行軍するのは馬鹿だわ」

ドラゴン「ぬう」

姫「ポテチいる?」

ドラゴン「我はそのプリンが欲しい」

姫「ダメ」

20: 2020/07/08(水) 22:05:20.025 ID:2GkGq0Bj0
勇者「ここがドラゴンの住むという洞窟か」

勇者「……ん?」


 イタイイタイ! タスケテ!


勇者「姫!今行きます!」

22: 2020/07/08(水) 22:06:23.181 ID:2GkGq0Bj0
姫「あいたたた!」

勇者「姫!」

姫「……勇者?」

勇者「姫!……その格好は?」

姫「ええと」

ドラゴン「何者だ」

勇者「!出たなドラゴン!」

24: 2020/07/08(水) 22:07:55.961 ID:2GkGq0Bj0
勇者「姫に何をした!?」

ドラゴン「何のことだ?」

勇者「しらばっくれるな!こんな……なんかよく分からん格好で苦しんでおられる!」

ドラゴン「貴様は何も知らんのだな」

勇者「なに?」

ドラゴン「それは牛の顔のポーズだ」

勇者「は?」

姫「いや、えと」

ドラゴン「熾烈な生存競争を生き延びるための術よ」

25: 2020/07/08(水) 22:09:31.002 ID:2GkGq0Bj0
勇者「よく分からん!分からんがこれだけは分かる!お前は邪悪だ!」

ドラゴン「……」

勇者「?泣いているのか?」

ドラゴン「ああ。だが我もまた強くなった。もうこれくらいでは折れん」

勇者(来る……!)

ドラゴン「ダイエットの成果!見るがいい!」

勇者(………………?)

26: 2020/07/08(水) 22:10:30.294 ID:2GkGq0Bj0
勇者「なんだそれは」

ドラゴン「英雄のポーズだ」

勇者「だからなんなんだそれは」

ドラゴン「偉いのだ。英雄だから」

勇者「また分からん」

27: 2020/07/08(水) 22:11:55.851 ID:2GkGq0Bj0
勇者「分からんが駆除しておこう。とりゃ」

ドラゴン「ぐわああ!」

勇者「とりゃとりゃ」

ドラゴン「が!ぐぼぉお!」

勇者「うーん弱い」

28: 2020/07/08(水) 22:13:23.879 ID:2GkGq0Bj0
勇者「まあいいや。トドメ」

ドラゴン「くっ……」


 ガンッ!!


勇者「がはッ……!?」

29: 2020/07/08(水) 22:14:43.019 ID:2GkGq0Bj0
勇者「キュウ……」

姫「はあ……」

ドラゴン「……姫?」

姫「行きましょ。こいつが目を覚ます前に」

ドラゴン「よいのか?」

姫「いいのいいの。後頭部を鍛えてなかった種は滅びるのよ」

ドラゴン「そうではなく」

姫「昨日サボっちゃったからね。帰れるプロポーションにはまだ遠いの」

ドラゴン「?」

30: 2020/07/08(水) 22:15:57.823 ID:2GkGq0Bj0



ドラゴン「我のダイエットが足りなかったのか……」

姫「でもよく頑張ったわよ。お腹周りスッキリしたんじゃない?」

ドラゴン「それではダメなのだ」

姫「英雄のポーズ格好良かったけど」

ドラゴン「ならばよし」

姫「いいんだ」

ドラゴン「もっと我に教えろ」

姫「意欲すげえ」

31: 2020/07/08(水) 22:16:40.703 ID:2GkGq0Bj0
ドラゴン「だが貴様は本当に帰らなくていいのか?」

姫「正直いろいろ重圧がすごすぎて戻りたくない」

ドラゴン「淘汰は怖いものな」

姫「まあね」

ドラゴン「ではもうしばらくは一緒に励もう」

姫「今日からの日々を祝して」

ドラゴン「ダイエット万歳」



32: 2020/07/08(水) 22:18:30.155