男「あぁ……」

座敷あらし「ふぅ……ま、こんなもんかな」

男「ひでぇ……めちゃくちゃだ……」

座敷あらし「あー、疲れた。久しぶりにハッスルしちゃった」

男「俺が何したって言うんだ……うぅ……」

座敷あらし「んじゃな」

男「ま、まてよ！！！」

座敷あらし「あ？」

男「せ、せめて……直していってくれよ……」

座敷あらし「うーん……やだ♪」

男「ふぇぇ」

座敷あらし「バイバーイ」

男「あぁ……」

男「ちくしょう……なんだよ、あいつ……」

男「よいしょ……はぁ……なんか、荒らされたあとを片付けるって虚しいな……」

男「……」

男「ん……冷蔵庫重いな……」

男「んん……はぁ……」

男「……もういいや。寝よう」

男「今更、すげー腹立ってきたし……」

男「くそ……」

男「すぅ……すぅ……」

男「ん……？」

男「……」


座敷あらし『あ、こ、これは別にその……ちょっとやり過ぎたなって思って、それだけだからね！！』


男「……」

男「みたいな展開もなしか」

男「片付けよう」

男「よいしょ……よいしょ……」

男「ふぅ、片付いた」

座敷あらし「……」

男「さて、と」

座敷あらし「畳んだばかりの洗濯物、ドーンｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗ」

男「！？」

座敷あらし「換えたばかりのトイレットペーパー、ポーイｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗ」

男「やめろ！！！やめろ！！！」

座敷あらし「綺麗に並べたリモコンの位置、グチャァｗｗｗｗｗｗｗｗｗ」

男「うわぁぁぁぁ！！！やめてくれぇぇぇ！！！！」

座敷あらし「あっはっはっはっはっは！！！」

座敷あらし「ふぅ。楽しかった」

男「あぁぁ……なんてことしやがる……」

座敷あらし「さてと、次のところに行こうかなぁ」

男「……まて！！」

座敷あらし「あ？」

男「いい加減にしろよ……」

座敷あらし「なにさ？」

男「片付けろ！！」

座敷あらし「やだねー」

男「このやろう！！！」

座敷あらし「ドーン！！」ﾄﾞｶﾞｧ

男「ぐほぉ！？」

座敷あらし「人間が私に勝てるはずないでしょ？バーカ」

男「ぐぐ……」

座敷あらし「バイバーイ」

男「くそ……なんだよ……あの野郎……」

男「はぁ……またかよ……」

男「虚しい……」

男「よいしょ……はぁ……」

男「あーあー、トイレットペーパーが……」

男「巻かないと……」

男「リモコンもちゃんと並べないと……」

男「くそ……泣けてきた」

男「これでいいな……」

男「……」

男「よ、よし。もういないみたいだ」

男（にしてもなんだったんだ……？）

男（座敷あらしってなんだよ……）

男（座敷わらしの親戚か？）

男「……考えても仕方ないな。運がなかったと思うしかないな」

男「疲れた、寝よう」

座敷あらし「……」ﾆﾔ

男「？！」

男「誰もいない……」

男「……気の所為か？」

男「すぅ……すぅ……」

座敷あらし「……」

男「……」

座敷あらし「……」

男「―――はっ！？」

男「いない……」

男「夢か……」

男「寝よう……」

座敷あらし「綺麗に並べてる漫画、ドーンｗｗｗｗｗｗｗｗｗ」

男「！？」

座敷あらし「CDラック、天変地異ｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗ」

男「やめろ！！お前！！！なんでまだいるんだよ！！！」

座敷あらし「DVDの配置、ゴシャァｗｗｗｗｗｗｗｗｗ」

天変地異……

男「―――やめろっていってんだろ！！！！！」ｶﾞﾊﾞｧ

座敷あらし「よっと」ﾋｮｲ

男「ちっ！」

座敷あらし「あっはっはっは！！人間が私を捕えられるものですか！！」

男「何が目的なんだよ……！！」

座敷あらし「私の目的？そんなの一つしかないって」

男「な、なんだ？」

座敷あらし「家をめちゃめちゃにすることさぁぁ！！！」

男「はぁ！？」

座敷あらし「印鑑、ポーイｗｗｗｗｗｗｗｗ」

男「おい！！！」

座敷あらし「洗面用具、大嵐ｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗ」

男「俺がなにしたっていうんだぁぁぁ！！！！」

可哀想…

男「うぅ……もうやめろ……やめてくれぇ……」

座敷あらし「アルバムの写真、抜き取って、ポーイｗｗｗｗｗｗｗ」

男「うぅ……ぐすっ……うわぁぁ……」

座敷あらし「野菜室の野菜……は、ないから、冷凍庫のアイスをチルド室のほうへｗｗｗｗｗｗ」

男「とけるだろぉ……やめろよぉ……」

座敷あらし「あとは……」

男「……」

座敷あらし「もうないか」

男「……食器棚は？」

座敷あらし「え？」

男「食器棚も荒らしてけよ！！！この際、全部めちゃめちゃにしてけよぉぉ！！！」

座敷あらし「食器は割れるじゃん。それはさすがにやり過ぎになっちゃう」

男「……」

良いぞ　とても良い

くそっwwwwwwwwwww

座敷あらし「あ、でも、全部出しちゃうのはありか」

男「……」

座敷あらし「よっと、これはここにおいてｗｗｗｗｗｗｗｗｗ」

男「……」

座敷あらし「丼の上にお皿重ねてやるｗｗｗｗｗｗｗ」

男「……」

座敷あらし「おぉｗｗｗｗｗ危ないｗｗｗｗｗｗ揺れるｗｗ揺れるｗｗｗｗｗｗｗ」

男「……」

座敷あらし「うし！！もうないよね。じゃあ、さよなら」

男「逃がさないぞ」

座敷あらし「どけ！！」ﾄﾞｶﾞｧ

男「ぐはぁ！？」

座敷あらし「バーカ。私はお前みたいな綺麗好きの人間が一番嫌いなんだよ！！べーっ」

男「うぅ……うわぁぁぁん……！！」

座敷あらし「なによ、この程度で泣くとか、ないわぁ」

男「折角、綺麗にしてたのにぃ……」

座敷あらし「しらねーよ。じゃあね」

男「うぅ……ぐすっ……」

男「食器から直そうか……」

座敷あらし「……」ｼﾞｰｯ

男「！？」

男「……まだ、いるのか？」

男「いるんだろぉ！！！」

男「でてこいよぉ！！！」

男「……」

男「……片付けるか」

男「―――よし」

男「もう、夜か」

男「はぁ……休日が潰れた……」

男「寝よう」

男「……よっこいせ」

座敷あらし「……」ｼﾞｰｯ

男「！？」

男「やっぱりいるんだろ！？」

男「でてこいやぁ！！！」

男「……」

男「……寝るか」

男「すぅ……すぅ……」

朝

男「ふわぁぁ」

男「昨日は酷い目にあったな」

男「……パンでも焼くか」

男「……」ｶﾞｻｶﾞｻ

男「セット……してっと」

座敷あらし「……」ｼﾞｰｯ

男「ふぅ。コーヒーでもいれ―――」

座敷あらし「コーヒーの元、ドバァァｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗ」

男「！？！！？」

座敷あらし「トースト、適当なところでチーンｗｗｗｗｗｗｗｗｗ」

男「うわぁぁぁ！！！！」

座敷あらし「生焼けトーストに大量のマーガリン、ベチョォｗｗｗｗｗｗｗｗ」

男「やめろ！！！！食べれなくなる！！！！俺の朝食をめちゃくちゃにするなぁぁぁ！！！！」

座敷あらし「リビングの椅子、全部デーンｗｗｗｗｗｗｗ」

男「きゃぁぁぁあ！！！！」

座敷あらし「あっはっはっはっは！！！あー、たのしー！！」

男「うわぁぁ……俺の朝がぁぁ……」

座敷あらし「いやぁ、楽しいわぁ」

男「いい加減にしろぉ！！！なんの怨みがあるんだよぉ！！！」

座敷あらし「怨み？無いけど？」

男「なんでこんなことするんだよぉ……」

座敷あらし「家をあらすのが私の存在意義みたいなところあるからねえ」

男「……」

座敷あらし「さて、この真っ黒のコーヒー、飲む？」

男「飲むかよ……」

座敷あらし「じゃ、私が飲む。もったいないし。……ゴク……しょっぺえｗｗｗｗｗｗｗｗｗ」

男「……」

座敷あらし「ゴクゴク……プハァ、こんな不味いコーヒー初めてだわ」

男「あんだけ素をいれてればな……」

座敷あらし「んで、もう出かけるんの？」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

男「あ！そうだ！！早く行かないと、遅れる！！」

座敷あらし「いってこーい」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

男「でてけよぉ！！！」

座敷あらし「はいはい」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

座敷あらし「じゃあ、バイバーイ」

男「くそ……」

男「腹減った……」

男「途中、コンビニでなんかかっていくか」

コンビニ

「いらっしゃいませ」

男「おにぎり……」

座敷あらし「おにぎりコーナー、ドーンｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗ」

男「！？！」

座敷あらし「ホットコーナー、グシャァｗｗｗｗｗｗｗｗ」

男「お、おまえ……！？」

座敷あらし「値札全然違うところに貼り替えｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗ」

「お客様！！！やめてください！！！」

座敷あらし「あ？」

「オーナー！！！オーナー！！！！」

座敷あらし「あっはっはっはっは！！！！」

男「駄目だ……もう時間がない……朝飯は諦めよう……」

座敷あらし「雑誌、配置入れ替えｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗ」

仕事場

男「おはようございます」

「おはよう」

「ちーっす」

男「はぁ……」

「どうしたの？」

男「いえ……」

「大丈夫ですか？」

男「うん」

座敷あらし「……」ｼﾞｰｯ

男「！？」

「どした？」

男「い、いや……」

男（まさかな……）

男「……」ｶﾀｶﾀ

「書類のほうは出来そうですか？」

男「うん、なんとか」

「がんばってください」

男「……」ｶﾀｶﾀ

座敷あらし「……」ｼﾞｰｯ

男「……？」

座敷あらし「……」ﾔﾍﾞｯ

男「……」

男「……」ｶﾀｶﾀ

男（まずい……いる……）

男（提出書類のデータを荒らされるわけには……）

男（バックアップはこまめに……）

座敷あらし「コーヒーいれましたー」

男「！？」

座敷あらし「……」ﾆﾔｧ

男「な、なにが目的だ……！？」

座敷あらし「……ふん」

男「……」

座敷あらし「あぁ！！USBメモリが誤ってコーヒーにダ～イブｗｗｗｗｗｗｗｗｗ」

男「！？」ﾊﾟｼｨ

座敷あらし「……なに？手を離してよ」

男「やめろ」

座敷あらし「ドーン！！」ﾄﾞｶﾞｧ

男「ぐふぅ！？」

「え？！どうしたんですかぁ！？――誰です？！その人？！！」

男「おまえ！！それは―――」

座敷あらし「もうおそーいｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗぽちゃんｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗ」

男「あ……」

「だれですかぁ！！？」

座敷あらし「あっはっはっはっは！！！！」

男「……」

「な、なにをしてるんですかぁ！？」

座敷あらし「あ～？」

男「あぁ……大事なデータが入ってたのに……」

座敷あらし「あっはっはっはっは！！！！」

男「なんてことしてくれたんだ！！その中にはなぁ！！今度のプレゼンで使うものが入ってたんだぞ！！！」

「ええ！？あのデータが！？」

座敷あらし「それがなにさ？」

男「あれが無いと……約200人もいる会社員が全員、路頭に迷うかもしれないんだぞ！！！」

座敷あらし「え……」

男「どうしてくれるんだぁぁ！！！」

座敷あらし「いや……バックアップとかあるっしょ？」

男「ねーよ」

座敷あらし「うそだぁ！！またまたぁ」

男「ない」

座敷あらし「いやいや、そんなのいいって。マジ声で言われてもさぁ」

男「マジだからな」

座敷あらし「……」

「あ、あの……そんなに大事なプレゼンでは―――」

男「しっ」

座敷あらし「……嘘でしょ？」

男「……あぁ、どうしよう」

座敷あらし「い、いや、私は……その、悪気はなかったし」

男「……会社は潰れるな」

座敷あらし「……あ、あの……」

男「はぁぁ……」

「あのぉ……」

座敷あらし「バックアップの一つもとってないあんたが……悪いんでしょ」

男「訳も無くコーヒーの中に浸した奴の言うことか？」

座敷あらし「うぐ……？！」

男「あーあー……もう駄目だな……今から再就職先探さないと」

座敷あらし「あの……その……」

男「くそ……こんな不景気じゃ、絶対に見つからないよ……」

座敷あらし「あ！！そうだ！！乾かせばいいんじゃないかな！？」ﾌｰﾌｰ

男「……」

座敷あらし「ほーら！かわけー！」

男「……無理に決まってるだろ」

座敷あらし「や、やってみないとわかんないし！！！」

座敷あらし「ちょっと！！」

「は、はい？」

座敷あらし「ドライヤーとかあるぅ？」

「ないですよ」

座敷あらし「んー……じゃあ、掃除機」

「掃除機？」

座敷あらし「ほら、後ろからゴーって風でるじゃん。あれで乾かすから」

「あ、はい……なら、こちらです」

座敷あらし「しゃー」

男「……」

「いいんですか？今度のプレゼンって、社内用のやつで……重要性なんてさほど」

男「いいんです」

「あの子は？」

男「座敷あらしとか言ってましたけど……詳しくは知りません」

「はぁ」

座敷あらし「よーし、よーし」ｺﾞｫｫ

男（うるさいなぁ）

「あの、廊下でお願いできますか？」

座敷あらし「なんで？」

「職場なんで……うるさくされると……」

座敷あらし「なにをぉ！？」

男「……」ｼﾞｰｯ

座敷あらし「うぐっ……わ、わかった。外でやればいいんでしょ……」

「はい」

座敷あらし「まったく……なんでこんなことに……」ﾌﾞﾂﾌﾞﾂ

男「はぁ」

男（仕事しよ）ｶﾀｶﾀ

座敷あらし「おらー！！」ﾊﾞｰﾝ

男「！？」

座敷あらし「乾いた！！」

男「……」

座敷あらし「ほら、差しこんでみてよ」

男「う、うん……」

座敷あらし「……」ﾄﾞｷﾄﾞｷ

男「……」ｶﾀｶﾀ

座敷あらし「……ど、どうかな？」ｿﾜｿﾜ

男「駄目だ……やっぱり、消えてる……」

座敷あらし「えぇぇ！？！嘘でしょ！？よく見て！！！絶対にあるって！！！」

男「ない！！」

座敷あらし「じゃあ、このフォルダはなんのさ！！？」

男「これは……バグだ」

座敷あらし「……マジで？ねえ、ほんとにないの？もっとよく見て、お願い……」

男「ないって」

座敷あらし「……」

男「もういいから。出ていって」

座敷あらし「あの、そんな大事なものだって知らなかっただけで……」

男「仕事の邪魔」

座敷あらし「悪気はなかったから……その……」

男「もういいって」

座敷あらし「……」

男「出ていってくれよ」

座敷あらし「……はい」ﾄﾎﾞﾄﾎﾞ

「少し可哀想じゃないですか？」

男「いいんですよ。昨日は部屋をめちゃめちゃにされましたから」

「そ、そうですか」

男「さて、仕事しないと」ｶﾀｶﾀ

すでに座敷じゃなくなってるんだが

自宅

男「……ん？ポストに何かが……」

男「なんだ？……タウンワーク？」

男「……」ﾍﾟﾗｯ

男（何か所かマル印が……）

男「なんだこれ」

男「どうでもいいか」ﾎﾟｲｯ

座敷あらし「……」ｼﾞｰｯ

男「！？」

座敷あらし「……」ｳﾙｳﾙ

男「……」

男（無視無視）

ガチャ……バタン

座敷あらし「……良い条件の仕事先、探したんだけど……やっぱりダメか……どうしよう……」

あらかわいい

男「ふぅ。疲れたな」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

座敷あらし「……」ｼﾞｰｯ

男「？！」

男「いるんだろ、出てこい！！」

男「そんなに俺の人生を荒らして楽しいか！！」

男「……」

座敷あらし「……」ｼﾞｰｯ

男「……」

座敷あらし「……」ｳﾙｳﾙ

男「また荒らすのか？」

座敷あらし「……」ﾌﾙﾌﾙ

男「じゃあ帰れよ」

座敷あらし「……」ｺｸ

男「素直に帰るのか……」

男「さてと……もう寝るかな」

男「すぅ……すぅ……」

座敷あらし「……」ｼﾞｰｯ

男「……」

座敷あらし「……」

座敷あらし（私の所為でこの人の人生がめちゃめちゃに……）

座敷あらし（私はただ憑いた人間の周囲を荒らすだけの妖怪）

座敷あらし（物を壊したりするのは勿論ダメだし……人生を荒らすなんてもってのほか……）

座敷あらし（責任、取らないと……）

座敷あらし「……」

座敷あらし「……あった」

座敷あらし「えっと……どこにしようかなぁ」

座敷あらし「私でも働ける場所は……」

二カ月後　朝　自宅

男「……」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

男（あれからあの子、みないな）

男（どうでもいいけど）

男「……よし」

男「行くか」

男「……ん？」

男「ポストに封筒が……」

男「差出人は書いてないな……」

男「……」ｶﾞｻｶﾞｻ

男「金だ……！？」

男「5万6000円？」

男「なんだこれ……気持ち悪いなぁ」

夜　コンビニ

男「今日はコンビニでいいか」

「なんど言えばわかるの！？」

座敷あらし「ひぃ」

「これはちゃんと色で揃えるの！！」

座敷あらし「すいません」

「まったく。売り場を荒らしてばっかりね、貴女」

座敷あらし「あ、荒らすのが得意なんで……」

「はぁ！？」

座敷あらし「ひぃ」

男「……」

座敷あらし「すいません。すぐに直します」

「そうして。―――あ、いらっしゃいませ」

男「お願いします」

「はい」

「ありがとうございました」

男「……」

座敷あらし「えっと……これがここで……これがこっちで……」ｵﾛｵﾛ

男（何やってんだ？）

「それが終わったらジュースの補充ね」

座敷あらし「あ、はい！！」

男（妖怪も働くのか）

座敷あらし「えっと……こっちで……あっちで……」ｵﾛｵﾛ

座敷あらし（がんばらないと……私が稼がなきゃ……）

座敷あらし「できた……♪」

座敷あらし「はぁ～」

「補充」

座敷あらし「あ、は、はい！！いますぐ！！」ﾀﾞﾀﾞﾀﾞｯ

自宅

男「ん？」

男「またタウンワークだ」

男「誰の悪戯だよ」ﾎﾟｲｯ

男「さ、ごはん食べて寝るか」

男「……」

男（そういえば、あの日からタウンワークが入るようになったな）

男（もしかして、これ座敷あらしの仕業か？）

男「……」

男「まさかな」

男「あの金……交番に届けた方がいいよなぁ」

ガチャ……バタン

1ヶ月後　朝　自宅

男「……ん？」

男「また金が……今度は7万2100円？」

男「えらい中途半端だな」

男「これも交番だな……」

男「……戸締りよし」

男「さあ、いくか」

ガチャ

男「！？」

座敷あらし「ぐぅ……」

男「……なに、家の前で寝てんだ？」

座敷あらし「ぐぅ……・すぅ……」

男「……」

座敷あらし「はっ！？！？今日はバイトだ！！！」

座敷あらし「……あれ？」

座敷あらし「……」

座敷あらし「ここは……あの人の部屋？」

座敷あらし「……おかしいなぁ。確か、お金を届けたあといつもの公園に戻って寝てたはず」

座敷あらし「……？？」

座敷あらし「……」

座敷あらし「そういえば最近荒らしてないなぁ」ｳｽﾞｳｽﾞ

座敷あらし「うー……でも、もうあの人のものを荒らすのは……」ｳｽﾞｳｽﾞ

座敷あらし「……」

座敷あらし「荒らしたい……荒らしたい……」ﾊｧﾊｧ

座敷あらし「……」ﾊｧﾊｧ

座敷あらし「なんでこう一々、整頓されてるのぉ？」ﾊｧﾊｧ

座敷あらし「荒らしたい……」ﾊｧﾊｧ

座敷あらし「……ちょっとだけなら」

座敷あらし「リモコンの配置を入れ替えるぐらいなら……」

座敷あらし「……」ｻｻｯ

座敷あらし「……ダメ。満足できない」

座敷あらし「……」

座敷あらし「そ、そうだ……タンスの中身を……」

座敷あらし「あとで片づければいいだけだし」

座敷あらし「うんうん……」

座敷あらし「……」ﾊｧﾊｧ

座敷あらし「―――タンスの中身、ドッパーンｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗ」

座敷あらし「ひゃあぁぁ！！！きもちいいぃぃ♪」ｿﾞｸｿﾞｸ

座敷あらし「もっともっと！！」

数分後

座敷あらし「……」

座敷あらし「どうしよう……」

座敷あらし「この服、ここだっけ？」ｵﾛｵﾛ

座敷あらし「えっと、このコートはここだったよね？」ｱｾｱｾ

座敷あらし「え！？こんなタオルとかあったっけ！？」

座敷あらし「下着は下段だった気がする……」

座敷あらし「……」

座敷あらし「うわぁぁぁ！！！！」

座敷あらし「わかんない！！わかんない！！！」

座敷あらし「怒られる！！絶対また怒るよ、これ！！！」

座敷あらし「ひーん……」ｳﾙｳﾙ

座敷あらし「もうすぐバイトなのにぃ……こんなの無理だよ……」

1時間後

座敷あらし「……」

座敷あらし「終わった……」

座敷あらし「さてと、バイトに行かないと」

座敷あらし「……」

座敷あらし「はぁ……」

座敷あらし「大丈夫……ばれない」

座敷あらし「出来る限りのことはやった」ｸﾞｯ

座敷あらし「これでばれたら、もうあの人が神経質ってことでいいし」

座敷あらし「うむ」

座敷あらし「……」

座敷あらし「……逃げろ！」ﾀﾞﾀﾞｯ

夜

ガチャ

男「……疲れた」

男「……」

男「な、なんだ？！」

男「服がめちゃめちゃだぁぁ！！！」

男「あいつは！？」

男「いない……」

男「はぁ……やられた……」

男「最近大人しかったから、何もしないだろうって思ったのが甘かった……」

男「……」

男「くそ！！」

コンビニ

「いらっしゃいませー」

男「すいません」

「は、はい？」

男「ここに新人の子、いますよね？」

「えっと……あの子のことでしょうか？」

男「……」

座敷あらし「レモンティーはここ……お茶はここ……」ｵﾛｵﾛ

男「……」ﾂｶﾂｶ

座敷あらし「飲むヨーグルト……どこだっけ？」ｷｮﾛｷｮﾛ

男「……」

座敷あらし「すいませ―――うおぉぉ！？！」

男「お前、何タンスの中身を荒らしてんだぁ！？何の恨みがあるんだよぉ！？」

座敷あらし「い、いや！！私、座敷あらしだし！！あらすのが生きがいだって前に言った！！」

男「じゃあ、コンビニは荒らさないのか？」

座敷あらし「え……」

男「ここは荒らさないのか？」

座敷あらし「い、いや……」

男「……」

座敷あらし「あ、あらすのはあんたの周りだけ」

男「どうして？」

座敷あらし「あんたに憑いたからに決まってるでしょ？」

男「どうやったら俺から離れてくれるんだ？」

座敷あらし「え？」

男「もういい加減にしてくれ……めちゃくちゃにしないでくれよ……」

座敷あらし「あ……」

男「……それだけ」

座敷あらし「あ……あの……私は……」

座敷あらし「……はぁ」

座敷あらし「飲むヨーグルト……どこだっけ？」

1ヶ月後

男「また封筒が……」

男「9万2300円……なんか増えてきたな」

男「交番に届けないと……」

男「……」

男「まさかな」

男「そんなことはありえないだろ」

男「仕事いこう」

ガチャ

男「……」

男（でも、この金、決まって給料日の翌日だよな）

男「……」

夜　コンビニ

座敷あらし「いらっっしゃいませー」

「タバコ」

座敷あらし「はーい。えと、こちらでよかったですか？」

「違う。ボックスのほう」

座敷あらし「あ、す、すいません」

「もうそろそろ覚えてよ」

座敷あらし「は、はい……410円です」

「はい」

座敷あらし「ありがとうございました……」

座敷あらし（あの人はマイルドセブンライトのボックス……ライトのボックス……）

座敷あらし「ていうか、こんなに種類あるのに覚えらんねーよ」

座敷あらし「……」

座敷あらし「しんどいなぁ」

座敷あらし（もう1か月ぐらい荒らしてないし……ストレスもマックスだ……）

座敷あらし「……」ｳｽﾞｳｽﾞ

座敷あらし「えーい！！レジ袋を荒らして―――」

男「すいません」

座敷あらし「あ、はい！？」

男「お弁当、温めてください」

座敷あらし「お……」

男「……」

座敷あらし「えっと……」ｵﾛｵﾛ

男「温めて」

座敷あらし「はい！！」

バタン……ブゥゥゥン

座敷あらし「……」ｵﾛｵﾛ

男「商品をレジに通してからじゃないと、効率悪くないか？」

座敷あらし「あ！！――えと、出さないと！！」

男「……」

座敷あらし「……」ﾋﾟｯ

座敷あらし「520円です」

男「はい」

座敷あらし「ちょうどお預かりします。レシートは？」

男「いらない」

座敷あらし「お待たせしました」ｱｾｱｾ

男「温めて」

座敷あらし「おぉ！？」

男「……」

座敷あらし「すいません、すいません」ｵﾛｵﾛ

男「……」

座敷あらし「……」ｱｾｱｾ

男「なんで働いてるんだ？」

座敷あらし「え？」

男「妖怪だろ？金がいるのか？」

座敷あらし「あの……だって……」

男「……」

座敷あらし「路頭に迷ってしまうんですよね？」

男「え……？」

座敷あらし「私は確かに人間に迷惑をかける妖怪ですが、人の人生を壊すようなことだけはしないようにしてきました」

男「……」

座敷あらし「ただ困る顔を見たいだけなんです。それが私の楽しみだから……」

男「それで？」

座敷あらし「でも、私は貴方の職を奪ってしまった……困るどころの騒ぎじゃない……」

男「……」

座敷あらし「だから……その……新しい職が見つかるまでは、私が援助を……」

男「あの金はやっぱりお前のだったのか」

ピーピー

座敷あらし「……どうぞ。お待たせしました」

男「ありがとう……でも、もういいから」

座敷あらし「え……」

男「お金、いらない」

座敷あらし「でも！！」

男「もういい。それより俺から離れてほしい」

座敷あらし「……」

男「金は全部交番に届けた。言えば返してもらえると思う。明細とかもっていけばいいかもしれない、よくわかんないけど」

座敷あらし「ちょっと……」

男「それじゃあ」

座敷あらし「……」

座敷あらし「なんで……」

「ほら。暇になったら商品の補充して」

座敷あらし「はい……」

自宅

男「ふぅー……」

男「……」

男（少し言い過ぎたか……？）

男（というか……俺の嘘を真に受けてあんなことしてんだもんな……）

男「……」

男「いや……元はと言えば座敷あらしが悪いんだし……」

男「寝るか」

男「……」

座敷あらし「……」ｼﾞｰｯ

男「ん……？」

座敷あらし「……」ｳﾙｳﾙ

男「うわぁ！！？？」

座敷あらし「あの……すいませんでした」

男「な、なにが？」

座敷あらし「勝手に憑いてしまって……もう、貴方に憑き纏うのやめます」

男「そ、そうか」

座敷あらし「……あの、でも……最後に……」ﾃﾚﾃﾚ

男「な、なに……？」

座敷あらし「んと……これで最後なんで……そのぉ」ﾓｼﾞﾓｼﾞ

男「……？」

座敷あらし「荒らしていっても、いいでしょうか？」ﾓｼﾞﾓｼﾞ

男「やめて」

座敷あらし「ですよね……」ｼｭﾝ

座敷あらし「……」ｳｽﾞｳｽﾞ

男「……」

座敷あらし「でーいｗｗｗｗｗｗｗ靴下の片方だけポーイｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗ」

男「やめろ！！！」

座敷あらし「かいかん……♪」ｿﾞｸｿﾞｸ

男「もうやめてくれ！！でてけえ！！！」

座敷あらし「はい。もう、これで出ていきます」

男「そ、そうか……」

座敷あらし「色々、ご迷惑をおかけしたかもしれません」

男「したよ」

座敷あらし「はぁ……やっと肩の荷がおりたわぁ」

男「……」

座敷あらし「では、バイバーイ」

男「2度とくんな！！」

男「全く……」

男「靴下片付けないと……」

男「……」

男「ん？なんだ……靴下に埋もれて……封筒？」

男「……」ｶﾞｻｶﾞｻ

男「金だ……手紙も……」

男「……」ﾍﾟﾗｯ

『今までの分は全部お渡しします。妖怪がお金持ってても仕方ないんで』

『もう貴方の目の前に現れることはしません』

『ただ、援助だけはさせてください。お願いします』

男「……」

男「なんだよ……これ……」

最後に男の心まで荒らしていきやがった

翌日　夜　コンビニ

男「あの……前、向こうでジュースの補充してた子は？」

「ああ、昨日突然やめちゃって」

男「そう……ですか」

「こっちも困ってるんです。ほんとに最近の子は慣れたときに辞めるから困る」ﾌﾞﾂﾌﾞﾂ

男「……ありがとうございます」

「あの子と知り合いかなにかですか？」

男「いえ……顔見知りなだけで」

「そうですか」

男「……」

男（どこ行ったんだ……？）

1ヶ月後

男「……入ってる」

男「……！？」

男「25万！？」

男「ど、どうやって……こんな大金……」

男「……あいつ……何やってんだよ……」

男「でも、この封筒を入れにきてるんだよな……」

男「なら……玄関で張っとけば……」

男「よし」

男（やめさせないと……）

1ヶ月後

男「今日が給料日だから……今日から明日の朝にかけて来るはずだ……」

男「……見張っとくか」


―深夜0時―

男「これからだ……」

男（いつくるんだろう……）


―深夜2時―

男「……」ｳﾄｳﾄ

男「はっ……ダメダメ……」


―早朝5時―

男「……くそ……結局来なかった……」

男「給料日が違うのか……？」

男「仕事、行かないと……」ﾌﾗﾌﾗ

夜　自宅

男「眠い……」

男「あ！？封筒！？」

男「……」ｶﾞｻｶﾞｻ

男「36万！？？」

男「増えてる……」

男「ちょっと待てよ……アイツ……まさか……」

男「盗みとか……やってないだろうな……」

男「……」

男「もうやめろよ……くそ……」

男「……そうだ。仕事が見つかったって張り紙でもしてりゃあ、いいのか」

男「そうだな。それが一番だ」

男「……」ｶｷｶｷ

男「もう仕事が見つかったから、お金はいいですっと」

男「これを給料日のときに貼りだしとけば……」

男「……」

男「でも……そうすると、もう会えなくなるのか」

男「……」

男「よし、決めた」

1ヶ月後　正午

座敷あらし「やっと給料日……」ﾌﾗﾌﾗ

座敷あらし「腰が痛い……妖怪なのに……」

座敷あらし「まあ、1日で回復するけど」

座敷あらし「さてと、今月は頑張ったから52万円もあるよぉ！！」

座敷あらし「これだけあれば、まあ、安心でしょう」

座敷あらし「次の仕事、見つかったのかなぁ？」

座敷あらし「ではでは、ポストに投函～」

男「おかえり」

座敷あらし「ただいまー」

男「……」

座敷あらし「え？今日は平日ですが……何故、扉の前に？」

男「有給使った。とりあえず入ってくれ」

座敷あらし「いえいえ……すぐに帰るし……」

男「いいから」

座敷あらし「うー……」ｳｽﾞｳｽﾞ

男「荒らしたいのか？」

座敷あらし「……いいえ」ｳｽﾞｳｽﾞ

男「嘘付け」

座敷あらし「そ、それより……話って？」

男「この金はどうしたんだ？」

座敷あらし「え？」

男「盗んできたんじゃないだろうな？」

座敷あらし「なにをぉ！？そんなことしないって！！」

男「じゃあ、なんだよ。この大金は！！」

座敷あらし「働いたんですぅ！！」

男「どこで？」

座敷あらし「それは……恥ずかしい……」ｳｽﾞｳｽﾞ

男「言えば、部屋を荒らしてもいいぞ？」

座敷あらし「マジ！？」

男「だから言ってくれ。変な店とかじゃないだろうな？」

座敷あらし「ちゃんとしたところだと思いますけど。残業がヘビーだけど」

男「なんの仕事だ？」

座敷あらし「ひ、ひかないで、くださいよ？」

男「なんで？」

座敷あらし「えと……だって、妖怪がこんな仕事してるなんて……」

男「いいから」

座敷あらし「……しゅ……」

男「え？」

座敷あらし「だ、だから……ちょ……長距離トラックの運転手……です」

男「……」

座敷あらし「免許証を偽造して……なんかすごく稼げるって友達の座敷わらしちゃんに聞いて……」

男「……はぁ」

座敷あらし「ほらひいたぁ！！だから言いたくなかったのにぃ……」

座敷童なにしてんのwww

友達なのかwww
わらしちゃん物知りだなぁ

座敷あらし「はい！！もう荒らすぅ！！この整理整頓された綺麗な部屋を荒らすぅ！！！」

男「どうぞ」

座敷あらし「いえーいｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗテーブル、ドーンｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗ」

男「……」

座敷あらし「椅子、バーンｗｗｗｗｗｗｗｗ」

男「……」ｲﾗｯ

座敷あらし「テレビはそーっと、床にｗｗｗｗｗよっこらせｗｗｗｗｗｗ」

男「……」

座敷あらし「ヨーグルトを冷凍庫にｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗ」

男「おい」

座敷あらし「エアコンのフィルターを外してｗｗｗｗポーイｗｗｗｗｗｗｗ」

男「いい加減に……」

座敷あらし「ベッドのシーツを無意味に剥がしてｗｗｗｗｗｗｗｗ私、てるてる坊主ｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗ」

男「……」

座敷あらし「ゴミ箱を横倒しにｗｗｗｗｗｗｗｗとぅｗｗｗｗｗｗｗｗ」

座敷あらし「うぅぅぅ……！！！」ｿﾞｸｿﾞｸ

座敷あらし「さいこぉぉぉぉ！！！！！」

男「満足か？」

座敷あらし「あい！！！」

男「よし。もういいから」

座敷あらし「なにが？」

男「働くのいいから」

座敷あらし「でも……」

男「ごめん。全部、嘘。会社は潰れないし、俺も首にはならない」

座敷あらし「え……」

男「あのときは少し頭にきてて、からかっただけだ。ごめん」

座敷あらし「じゃあ……ただ困ってただけ？」

男「う、うん」

座敷あらし「……」ﾌﾟﾙﾌﾟﾙ

男「あ……ごめ……いや、怒るのも仕方ないけど……」

座敷あらし「うえぇぇん……！！」

男「！？」

座敷あらし「よかった……よかったぁ……私ぃ……わたしぃ……とりかえしの……ひっく……つかないこと……しちゃったかと……」ｸﾞｽｯ

男「あ、の……」

座敷あらし「ふぇぇん……！！」

男「あーあー……」

座敷あらし「ぐすっ……よかったぁ……本当にぃ……」

男「これで鼻、拭いて」

座敷あらし「あい……」ﾁｰﾝ

男（そんなに思いつめてたのか……）

座敷あらし「はぁ……安心した」ﾊﾟｧｧ

男「そ、そう」

座敷あらし「では、これで」

男「あ、まって」

座敷あらし「え？」

数ヵ月後　公園

座敷あらし「お、そろそろ時間だ」

座敷わらし「また行くの？」

座敷あらし「うん。週に一度のお楽しみだしぃ」

座敷わらし「迷惑だと思うけどなぁ」

座敷あらし「だって、週に一度なら荒らしてもいいから他のところは荒らすなって言うんだもん」

座敷わらし「でもなぁ……その人に甘えてるだけでしょ？」

座敷あらし「べつにぃ。あの人が良いっていってくれてるし」

座敷わらし「そろそろ……フォローを入れておくべきか……」

座敷あらし「フォロー？」

座敷わらし「あなたみたいな迷惑をかける妖怪に憑かれっぱなしじゃあ、その人が可哀想だもの」

座敷あらし「そうかな？」

座敷わらし「これからは、私も同行するから」

座敷あらし「えぇ！？マジでー！？なにすんの！？」

わらしちゃん来たかﾍﾟﾛﾍﾟﾛ

男「……そろそろか？」

座敷あらし「いえーいｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗ」

男「！？」

座敷あらし「ちゃぶ台がえしｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗ」ﾊﾞｰﾝ

男「おぉ……」

座敷わらし「はい。ちゃぶ台は直しておきますね」

男「え？！」

座敷あらし「トイレットペーパーｗｗｗｗｗｗｗｗｗポーイｗｗｗｗｗｗｗ」

座敷わらし「はいはい。次はこれね」

男「あの……」

座敷あらし「タンスの中身ｗｗｗｗｗグチャァｗｗｗｗｗｗｗ」

座敷わらし「あらら、畳むの大変……」ｾｯｾｯ

男「えと……」

男（座敷あらしが荒らしたところを瞬時に片付けてる……誰だ、この子？）

座敷あらし「あっれー！？全然、散らかってないぞー！？」

座敷わらし「いつもご迷惑をおかけしまして、すいません。私、座敷わらしと申します」

男「あ、どうも」

座敷わらし「これからは私がここに住んで、この馬鹿から貴方をお守りします」

男「え！？」

座敷わらし「これまで大変だったでしょう？でも、もう安心です。私が全部片付けますから」

男「えぇ！？」

座敷あらし「おらー！！！なにふざけたこといってるかなぁ！？」

座敷わらし「あ？」

座敷あらし「部屋が荒れないと、私のフラストレーションが解消されないでしょうが」

座敷わらし「そんな性癖をもって生まれるほうが悪い」

座敷あらし「私の存在意義を否定するってか？お？その綺麗な着物、荒らしてやろうか？」

座敷わらし「おーっほっほっほ！！これは面白い。出来そこないの妖怪のくせに」

座敷あらし「なにぃ！？」

座敷わらし「やるかぁ！？」

男「あぁ……」

座敷あらし「かえれよぉ！！！テーブルアタック！！」ﾌﾞｩﾝ

座敷わらし「危ない！！―――このやろ、椅子の角で頭打って死ね！！」ﾌﾞｩﾝ

男「あぁ……部屋がぁ……」

座敷あらし「やるなぁ……よぉし……ＣＤ手裏剣だ！！」ｼｭｯｼｭｯｼｭ

座敷わらし「ちょ！いた！！―――こっちはＤＶＤ手裏剣！！」ｼｭｯｼｭｯｼｭ

男「やめろぉ……！！」

座敷あらし「ぐぬぬぬ……！！」

座敷わらし「むー……！！」

男「なあ、もう帰ってく―――」

座敷あらし「タンスどーん！！！！」

座敷わらし「ちゃぶ台ドーン！！！！」

男「ふぇぇ……もうやだ……どっちも……帰って……」

座敷あらし「帰れ！！」

座敷わらし「そっちこそ！！」
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おしまい。

乙

わらしまであらし化www
面白かったわ