1: 2017/05/07(日) 16:57:04.169 ID:6Q8F01tH0
これは、中学時代の話

……私はいつも1人だった

3: 2017/05/07(日) 16:57:32.454 ID:6Q8F01tH0
悪魔としての振る舞いができない私

先生には怒られて

みんなには、笑われる毎日

……私の居場所はお家だけ

そして心を許せる相手もお父さんとお母さんだけだった

5: 2017/05/07(日) 16:58:06.874 ID:6Q8F01tH0
友達のいない私

お家の隣のブランコに乗り

1人で寂しさを紛らわす毎日

そんな私の中学時代には、華がなかった

6: 2017/05/07(日) 16:58:24.902 ID:6Q8F01tH0
あの子と出会うまでは

7: 2017/05/07(日) 16:59:23.846 ID:6Q8F01tH0
…………………………………………………

ヴィーネ「うぅ、グスッグスッ」

???「どうして泣いてるの??」

ヴィーネ「……あ、あなたは??」グシグシ

???「私?私は大悪魔よ!」

ヴィーネ「だ、だいあくま?」

???「そうよ!未来の大悪魔よ!」

9: 2017/05/07(日) 17:00:07.512 ID:6Q8F01tH0
大悪魔「それでどうしてあなたは泣いてるの??」

ヴィーネ「……そ、それは……」

ヴィーネ「……なんでもない」

大悪魔「……大丈夫だから、話してみなさい」

ヴィーネ「……でも」

大悪魔「……」

大悪魔「もう、大丈夫だから」ギュッ

11: 2017/05/07(日) 17:00:44.707 ID:6Q8F01tH0
彼女はそう言って私に抱きついてきた

私にはそれを振り払う事は出来なかった

それは、怖かったからではない

振り払えないほど強く抱きつかれていたわけでもない

それどころか、とても優しく

……そしてとても暖かい抱擁



初めて親以外の人の暖かみに触れた気がした

12: 2017/05/07(日) 17:01:25.764 ID:6Q8F01tH0
ヴィーネ(……暖かい)

大悪魔「もう泣かなくていいのよ、なんたってこの大悪魔が相談に乗ってあげるんだから」

ヴィーネ「……そう、ね」

……この子なら私を……

ヴィーネ「ありがとうございます」

大悪魔「うん、じゃあ話してみなさい?」

ヴィーネ「……はい」

14: 2017/05/07(日) 17:02:17.272 ID:6Q8F01tH0
大悪魔「……留年するかもしれない、か」

ヴィーネ「……はい」

ヴィーネ「私、悪魔としての振る舞いができなくて……」

ヴィーネ「それで成績がとても悪くて……」

大悪魔「……そうだったの」

ヴィーネ「みんなにも笑われるし……」

ヴィーネ「……もういっそのこと留年しようかなって」

ヴィーネ「でもお父さんとお母さんに迷惑をかけるわけにはいかないし……」

15: 2017/05/07(日) 17:02:56.306 ID:6Q8F01tH0
大悪魔「……」

ヴィーネ「……私、どうすればいいかな」

大悪魔「……」

ヴィーネ「……いきなりこんなこと聞かれても仕方ないよね……」

大悪魔「……で、あなたはどうしたいの?」

ヴィーネ「えっ……どうしたいって言われても……私自身どうすればいいか……」

16: 2017/05/07(日) 17:04:27.743 ID:6Q8F01tH0
大悪魔「留年したいの?したくないの?」

大悪魔「はっきりしなさい!」

ヴィーネ「そ、そりゃあ……」

ヴィーネ「……したくない」

ヴィーネ「留年したくない!」

ヴィーネ「……で、でも」

大悪魔「……よく言ったわね」

大悪魔「……そういうことなら、私が直々に悪魔的行為のなんとやらを教えてあげようじゃないの!!」

18: 2017/05/07(日) 17:04:58.949 ID:6Q8F01tH0
そうして、私と彼女の付き合いが始まった

初めてできた友達だった

19: 2017/05/07(日) 17:05:34.020 ID:6Q8F01tH0
何事にも元気たっぷりな彼女

……なんだか私も元気になっていくようだ

彼女と一緒なら……私も

そう思っていた

20: 2017/05/07(日) 17:06:18.444 ID:6Q8F01tH0
「……」クスクス

「……」フフッ

ヴィーネ「……」

ヴィーネ「……」ハァ…

みんなに、笑われる

頑張れば頑張るほど、笑われる

どうして私が笑われなくちゃならないのか

21: 2017/05/07(日) 17:06:50.244 ID:6Q8F01tH0
大悪魔「……どうしたの?」

ヴィーネ「いや……なんでもない」

大悪魔「話してみなさい」

ヴィーネ「……」

大悪魔「……」

ヴィーネ「……分かった」

22: 2017/05/07(日) 17:07:24.902 ID:6Q8F01tH0
大悪魔「……なに、そんなこと気にしてるの?」

ヴィーネ「そんなこと……」

大悪魔「……人の頑張りを笑うやつはクズよ」

大悪魔「悪魔じゃあない……ただのクズよ」

大悪魔「そんなやつの言うことなんか気にすることじゃないわ」

ヴィーネ「……分かってる、分かってるけど……」

23: 2017/05/07(日) 17:08:16.325 ID:6Q8F01tH0
そう、分かってる、分かってはいるのだが……

人に笑われる度に心が蝕まれてゆく

心が病んでゆく

「大丈夫よ」

彼女は優しいからそういうだろう

確かに彼女といることで幾らか楽な気分になる

でも、少しずつ、そして着実に私の心は……

24: 2017/05/07(日) 17:10:13.244 ID:6Q8F01tH0
「大丈夫」

彼女はやはりそう言った

……私は大丈夫ではないのに

無神経なこと言わないで

……彼女は悪くないのに、彼女をも責めてしまう

……私は、本当にダメな……

「あなたは1人じゃないのよ」

「私がついてるじゃない」

わたしは、1人じゃない……

彼女がついてる……

そうだ、私には大悪魔がついてくれている

お父さんとお母さんもついてくれている

……どうして今まで1人で考え込んでいたんだろう

心が満たされていくような感覚を覚えた

25: 2017/05/07(日) 17:10:44.410 ID:6Q8F01tH0
たとえ周りにどんな目で見られても、私にはそばにいてくれる人がいる

そういう安心感を感じた

「……クスクス」

ヴィーネ「……」セッセッ

ふん、周りに笑われたとしても、私は私のやりたいことをする

留年なんてしてやるもんですか

26: 2017/05/07(日) 17:12:01.945 ID:6Q8F01tH0
誰かがそばにいてくれるという安心感はすごく大きい

誰か一人でもいい……そばにいてくれるだけで

ただそれだけで、心は軽くなる

27: 2017/05/07(日) 17:13:12.432 ID:6Q8F01tH0
しかし、そばにいてくれる人がいても気付かなければ意味がない

……どうして今までそんな事を気が付かなかったのだろう

ずっとそばには誰かがいてくれたのに

29: 2017/05/07(日) 17:14:16.095 ID:6Q8F01tH0
結果、私はギリギリ中学校を卒業することができた

それもすべて彼女のおかげ

彼女がいなかったら……どうなっていただろう

そばに誰かがいてくれるということに気付かなかっただろう

たぶん今の私はいなかっただろう

いや、断言できる

今の私は確実にいなかった

それを彼女が救ってくれた

……ありがとう、サターニャ

30: 2017/05/07(日) 17:15:04.907 ID:6Q8F01tH0
「ヴィネットぉぉ、助けてぇぇぇ」エグエグ

「次赤点取ったら留年しちゃうううう」

「もう……しょうがないわねぇ、ほら、教えてあげるから泣きやみなさい」

「あ、ありがとう……!!」ブワァ

「もう、サターニャは……フフッ」

彼女は幼い私を救ってくれた

だから、今度は私があなたを救う番

……お馬鹿で、おっちょこちょいで、寂しがり屋で

それでいて、優しくて、友達思いの

私の憧れの大悪魔様

おわり

31: 2017/05/07(日) 17:15:23.304 ID:6Q8F01tH0
綺麗なヴィネサタを書きたかったんです

ありがとうございました!

32: 2017/05/07(日) 17:15:26.543

33: 2017/05/07(日) 17:15:38.321
乙綺麗だった

34: 2017/05/07(日) 17:21:54.157
良き

引用元: ヴィーネ「私の大悪魔」