1: 2020/04/19(日) 18:04:03.337 ID:pBoJkkoG0
リポーター「撮影用の魔具を飛ばして、と……」
リポーター「さあ、始まりました! 旅番組≪秘境にいこう≫!」
リポーター「本日の≪秘境にいこう≫はなんと――」
リポーター「魔王城にやって来ましたー!」
リポーター「案内役をして下さるのは、魔王さんの側近であるこの方です!」
側近「どうも」
リポーター「本日は人間代表としてたっぷり取材させて頂きます。よろしくお願いします!」
側近「こちらこそよろしくお願いします」
リポーター「さあ、始まりました! 旅番組≪秘境にいこう≫!」
リポーター「本日の≪秘境にいこう≫はなんと――」
リポーター「魔王城にやって来ましたー!」
リポーター「案内役をして下さるのは、魔王さんの側近であるこの方です!」
側近「どうも」
リポーター「本日は人間代表としてたっぷり取材させて頂きます。よろしくお願いします!」
側近「こちらこそよろしくお願いします」
2: 2020/04/19(日) 18:07:10.980 ID:pBoJkkoG0
リポーター「このたびは打倒勇者、おめでとうございます!」
側近「ありがとうございます」
リポーター「結局、勇者は魔王城にたどり着くこともできなかったわけですが……」
リポーター「今のお気持ちはいかがですか?」
側近「これでやっとひと安心といったところですね」
側近「しかし、仮にたどり着けたとしても、勇者が魔王様に会うことはできなかったでしょうね」
リポーター「おおっ!」
側近「今回はそういったセキュリティ面も、差し支えない範囲でしっかりご説明したいと思います」
側近「ありがとうございます」
リポーター「結局、勇者は魔王城にたどり着くこともできなかったわけですが……」
リポーター「今のお気持ちはいかがですか?」
側近「これでやっとひと安心といったところですね」
側近「しかし、仮にたどり着けたとしても、勇者が魔王様に会うことはできなかったでしょうね」
リポーター「おおっ!」
側近「今回はそういったセキュリティ面も、差し支えない範囲でしっかりご説明したいと思います」
4: 2020/04/19(日) 18:10:13.499 ID:pBoJkkoG0
リポーター「あちらにおられるのは……?」
側近「門番です」
リポーター「門番さんですか、どうもこんにちはー!」
門番「こんにちは」
リポーター「魔王城の門を任されるだけあって、とても強そうですねー。ムッキムキです」
門番「ハハ、ありがとうございます」ムキッ
リポーター「おっ、ポージングをいただきました!」
側近「門番です」
リポーター「門番さんですか、どうもこんにちはー!」
門番「こんにちは」
リポーター「魔王城の門を任されるだけあって、とても強そうですねー。ムッキムキです」
門番「ハハ、ありがとうございます」ムキッ
リポーター「おっ、ポージングをいただきました!」
6: 2020/04/19(日) 18:13:04.829 ID:pBoJkkoG0
リポーター「門番のお仕事というのは、やはり大変ですか?」
門番「大変ですね」
門番「24時間寝ずに番をしなければなりませんし、いつ敵が襲ってくるかという緊張感もあります」
リポーター「そうですよねー。気の休まる時がなさそうです」
門番「しかし……だからこそ非常にやりがいのある仕事だと感じています」
リポーター「これからもお仕事頑張って下さい!」
側近「それでは城内へご案内します」
門番「大変ですね」
門番「24時間寝ずに番をしなければなりませんし、いつ敵が襲ってくるかという緊張感もあります」
リポーター「そうですよねー。気の休まる時がなさそうです」
門番「しかし……だからこそ非常にやりがいのある仕事だと感じています」
リポーター「これからもお仕事頑張って下さい!」
側近「それでは城内へご案内します」
7: 2020/04/19(日) 18:16:29.481 ID:pBoJkkoG0
側近「扉を開きます」ギィィ…
リポーター「わっ、広い!」
リポーター「想像通り、おどろおどろしい内装ですね」
側近「我々魔族はこういう装飾を好みますので」
リポーター「しかし、たとえばあの絵画など、非常に高い芸術性を感じます」
側近「魔王様のご趣味で、魔界の芸術品を広く取り揃えてあるのです」
リポーター「まるで一流の美術館にいるようですよ」
リポーター「わっ、広い!」
リポーター「想像通り、おどろおどろしい内装ですね」
側近「我々魔族はこういう装飾を好みますので」
リポーター「しかし、たとえばあの絵画など、非常に高い芸術性を感じます」
側近「魔王様のご趣味で、魔界の芸術品を広く取り揃えてあるのです」
リポーター「まるで一流の美術館にいるようですよ」
9: 2020/04/19(日) 18:19:50.115 ID:pBoJkkoG0
側近「ここからは気をつけて下さい」
リポーター「え?」
側近「罠がたっぷりありますから」
リポーター「えっ……」
側近「たとえば、あそこの通路」
側近「魔族以外の者が通ると、刃が落ちてきて体を切断されます」
リポーター「ひええ、恐ろしい……」
リポーター「え?」
側近「罠がたっぷりありますから」
リポーター「えっ……」
側近「たとえば、あそこの通路」
側近「魔族以外の者が通ると、刃が落ちてきて体を切断されます」
リポーター「ひええ、恐ろしい……」
10: 2020/04/19(日) 18:23:24.242 ID:pBoJkkoG0
グツグツ… ボコボコ…
リポーター「ここは……」
側近「溶岩地帯です」
リポーター「暑い……。これは……落ちたら助かりませんね」
側近「たしか勇者も火山に落下したと聞いています」
リポーター「ええ、魔物の大群に追い詰められて……」
側近「ここは足場が崩れやすく設計されてるので、勇者が火山に落ちなくてもここで落ちた可能性が高いですね」
リポーター「正しい場所を踏まないと、真っ逆さまというわけですか」
リポーター「ここは……」
側近「溶岩地帯です」
リポーター「暑い……。これは……落ちたら助かりませんね」
側近「たしか勇者も火山に落下したと聞いています」
リポーター「ええ、魔物の大群に追い詰められて……」
側近「ここは足場が崩れやすく設計されてるので、勇者が火山に落ちなくてもここで落ちた可能性が高いですね」
リポーター「正しい場所を踏まないと、真っ逆さまというわけですか」
12: 2020/04/19(日) 18:26:15.302 ID:pBoJkkoG0
側近「こちらでは侵入者を感知すると、壁が押し潰してきます」
側近「ちょっとやってみましょうか」サッ
ウイイイイイイン…
ズンッ!
リポーター「おお~、すごい仕掛けですね!」
側近「これに押し潰されたら、鋼鉄のゴーレムですら鉄板になってしまいますよ」
リポーター「その圧力を利用して、製品を作ることもできそうですね」
側近「なかなか面白いアイディアですね。魔王様に提案してみましょう」
側近「ちょっとやってみましょうか」サッ
ウイイイイイイン…
ズンッ!
リポーター「おお~、すごい仕掛けですね!」
側近「これに押し潰されたら、鋼鉄のゴーレムですら鉄板になってしまいますよ」
リポーター「その圧力を利用して、製品を作ることもできそうですね」
側近「なかなか面白いアイディアですね。魔王様に提案してみましょう」
14: 2020/04/19(日) 18:29:06.390 ID:pBoJkkoG0
側近「ここからは迷宮地帯です」
側近「ものすごく複雑な上、少しでもルートを外れると罠が待ってますので、ちゃんとついてきて下さい」
リポーター「は、はい」
スタスタ… スタスタ…
スタスタ… スタスタ…
スタスタ… スタスタ…
側近「もうすぐ出口です」
リポーター「ただ歩いてただけなのに、脂汗まみれですよ」
側近「ここからは比較的安全なエリアですので、リラックスなさって下さい」
側近「ものすごく複雑な上、少しでもルートを外れると罠が待ってますので、ちゃんとついてきて下さい」
リポーター「は、はい」
スタスタ… スタスタ…
スタスタ… スタスタ…
スタスタ… スタスタ…
側近「もうすぐ出口です」
リポーター「ただ歩いてただけなのに、脂汗まみれですよ」
側近「ここからは比較的安全なエリアですので、リラックスなさって下さい」
15: 2020/04/19(日) 18:32:55.991 ID:pBoJkkoG0
側近「こちらは食堂になります」
リポーター「骸骨が置かれたテーブルがオシャレですね~」
リポーター「今回料理を振る舞って下さるのは、魔界一の料理人といわれるこの方です!」
魔族シェフ「こんにちは」
リポーター「本日はご馳走になります」
側近「さあ、こちらの席にどうぞ」
リポーター「骸骨が置かれたテーブルがオシャレですね~」
リポーター「今回料理を振る舞って下さるのは、魔界一の料理人といわれるこの方です!」
魔族シェフ「こんにちは」
リポーター「本日はご馳走になります」
側近「さあ、こちらの席にどうぞ」
16: 2020/04/19(日) 18:35:33.950 ID:pBoJkkoG0
魔族シェフ「本日のメインは、魔界牛のソテーになります」
リポーター「いただきます」モグッ
リポーター「あ、おいしい……! これはうまぁい! 口の中でお肉がとろけます!」
魔族シェフ「人間の味覚に合うよう、アレンジさせて頂きました」
リポーター「ソースがまた濃厚で……いくらでも食べられちゃいます」モグモグ
魔族シェフ「ありがとうございます」
リポーター「いただきます」モグッ
リポーター「あ、おいしい……! これはうまぁい! 口の中でお肉がとろけます!」
魔族シェフ「人間の味覚に合うよう、アレンジさせて頂きました」
リポーター「ソースがまた濃厚で……いくらでも食べられちゃいます」モグモグ
魔族シェフ「ありがとうございます」
18: 2020/04/19(日) 18:39:24.821 ID:pBoJkkoG0
モグモグ…
リポーター「側近さんは、いつ頃から側近をやられているのですか?」
側近「ざっと千年前ですね」
リポーター「千年!」
側近「といっても、魔族というのは全て魔王様によって生み出された存在ですから」
側近「人間たちから見ると、私は魔王様の長男という言い方がしっくりくるかもしれません」
リポーター「なるほどー!」
リポーター「側近さんは、いつ頃から側近をやられているのですか?」
側近「ざっと千年前ですね」
リポーター「千年!」
側近「といっても、魔族というのは全て魔王様によって生み出された存在ですから」
側近「人間たちから見ると、私は魔王様の長男という言い方がしっくりくるかもしれません」
リポーター「なるほどー!」
19: 2020/04/19(日) 18:42:19.110 ID:pBoJkkoG0
リポーター「大変おいしかったです。ごちそうさまでした」
側近「では最後に、魔王様に会って頂きましょう」
リポーター「えっ、よろしいんですか!?」
側近「ええ、魔王様もぜひ取材を受けたいと」
リポーター「ありがとうございます!」
側近「こちらへどうぞ」
リポーター「はいっ! 私、ものすごい胸の高鳴りを感じております!」
リポーター「この後、本邦初公開、魔王さんとご対面します!」
側近「では最後に、魔王様に会って頂きましょう」
リポーター「えっ、よろしいんですか!?」
側近「ええ、魔王様もぜひ取材を受けたいと」
リポーター「ありがとうございます!」
側近「こちらへどうぞ」
リポーター「はいっ! 私、ものすごい胸の高鳴りを感じております!」
リポーター「この後、本邦初公開、魔王さんとご対面します!」
20: 2020/04/19(日) 18:46:11.719 ID:pBoJkkoG0
魔王「よく来た」
リポーター「はじめまして、旅番組≪秘境にいこう≫です」
リポーター「本日はよろしくお願いします」
魔王「うむ。側近よ、お前は下がれ」
側近「はっ!」
リポーター「いやぁー、やはり魔族の長となると、威厳がものすごいですね」
リポーター「こうして向かい合ってるだけで凍りつくようです」
魔王「ふふ……そう恐れるでない。楽にせよ」
リポーター「は、はいっ! ではいくつか質問させて頂きます!」
リポーター「はじめまして、旅番組≪秘境にいこう≫です」
リポーター「本日はよろしくお願いします」
魔王「うむ。側近よ、お前は下がれ」
側近「はっ!」
リポーター「いやぁー、やはり魔族の長となると、威厳がものすごいですね」
リポーター「こうして向かい合ってるだけで凍りつくようです」
魔王「ふふ……そう恐れるでない。楽にせよ」
リポーター「は、はいっ! ではいくつか質問させて頂きます!」
21: 2020/04/19(日) 18:49:07.216 ID:pBoJkkoG0
リポーター「魔王さんは魔族の中で最もお強いのですか?」
魔王「そうだ」
魔王「……と言いたいところだが、ワシの実力は側近や他の幹部とそう変わらん」
リポーター「そうなんですか!」
リポーター「ということは、カリスマ性で魔族を統治されているということでしょうか?」
魔王「むろん、それもあるのだが……」
魔王「そうだ」
魔王「……と言いたいところだが、ワシの実力は側近や他の幹部とそう変わらん」
リポーター「そうなんですか!」
リポーター「ということは、カリスマ性で魔族を統治されているということでしょうか?」
魔王「むろん、それもあるのだが……」
22: 2020/04/19(日) 18:52:31.019 ID:pBoJkkoG0
魔王「実はな……」
リポーター「はい」
魔王「ワシが氏ねば、全ての魔族は滅ぶのだ」
リポーター「ほう……!」
魔王「魔族というのは元々はワシが生み出したものであるからな」
リポーター「ああ……側近さんもおっしゃってましたね」
リポーター「だから、あまり前線には出ず、魔王城で暮らしておられるわけですか」
魔王「そういうことだ」
リポーター「はい」
魔王「ワシが氏ねば、全ての魔族は滅ぶのだ」
リポーター「ほう……!」
魔王「魔族というのは元々はワシが生み出したものであるからな」
リポーター「ああ……側近さんもおっしゃってましたね」
リポーター「だから、あまり前線には出ず、魔王城で暮らしておられるわけですか」
魔王「そういうことだ」
23: 2020/04/19(日) 18:55:26.875 ID:pBoJkkoG0
リポーター「これはいいことを聞きました」
魔王「ふふ……驚いたであろう」
リポーター「こんな格好して、リポーターに扮したかいがあった……」
魔王「?」
ズバァッ!
魔王「ぐ、ぐおっ……!」ガクッ
リポーター「流石の魔王も、不意を突かれちゃ脆いもんだな」
魔王「き、貴様……ッ! この剣さばき……ま、まさか……!?」
リポーター「ああ、俺は勇者だよ」
魔王「ふふ……驚いたであろう」
リポーター「こんな格好して、リポーターに扮したかいがあった……」
魔王「?」
ズバァッ!
魔王「ぐ、ぐおっ……!」ガクッ
リポーター「流石の魔王も、不意を突かれちゃ脆いもんだな」
魔王「き、貴様……ッ! この剣さばき……ま、まさか……!?」
リポーター「ああ、俺は勇者だよ」
24: 2020/04/19(日) 18:58:31.870 ID:pBoJkkoG0
リポーター「冒険の途中で魔族との戦いに限界を感じた俺は、あえて火山に落ちて氏を演じた」
リポーター「そして、人間の全面降伏を見届けた後、旅番組リポーターになりすまして取材を申し込んだ」
リポーター「“魔王さえ倒せば”という一縷の望みに賭けてな」
リポーター「案の定、勝利ムードに酔いしれたお前らは、負け犬丸出しで低姿勢な俺をここまで迎え入れてくれた」
魔王「ぐ、ぐう……ッ!」
リポーター「お前を殺せば魔族は全滅するんだろ? この戦い、どうやら人間側の逆転勝利で終わりそうだな」
魔王「こんな……こんなやり方で、ワシを狙うとは……なにが勇者だ……! 恥を知れ、恥を!」
リポーター「……」
リポーター「そして、人間の全面降伏を見届けた後、旅番組リポーターになりすまして取材を申し込んだ」
リポーター「“魔王さえ倒せば”という一縷の望みに賭けてな」
リポーター「案の定、勝利ムードに酔いしれたお前らは、負け犬丸出しで低姿勢な俺をここまで迎え入れてくれた」
魔王「ぐ、ぐう……ッ!」
リポーター「お前を殺せば魔族は全滅するんだろ? この戦い、どうやら人間側の逆転勝利で終わりそうだな」
魔王「こんな……こんなやり方で、ワシを狙うとは……なにが勇者だ……! 恥を知れ、恥を!」
リポーター「……」
25: 2020/04/19(日) 19:01:08.877 ID:pBoJkkoG0
リポーター「冥土の土産に、この番組の裏に秘められた真のタイトルを教えてやろう」
リポーター「≪卑怯にいこう≫だ」チャキッ
ザンッ!
― 完 ―
リポーター「≪卑怯にいこう≫だ」チャキッ
ザンッ!
― 完 ―
26: 2020/04/19(日) 19:02:52.603
シャレ言いたかっただけかよ!
27: 2020/04/19(日) 19:03:21.326
やめなシャレ
28: 2020/04/19(日) 19:04:31.654
乙
なるほどそういうオチか
なるほどそういうオチか
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