1: 2017/04/17(月) 21:02:05.129 ID:JBnwPIA20
-ラフィエルの家-
ラフィエル「どうやったらもっと天使らしくなれるか、ですか?」
タプリス「はい。わたし、こんな何をやってもダメダメな天使ですから」
タプリス「白羽先輩たちのように、もっと立派な天使になりたいんです!」
ラフィエル「タプちゃんは、もう十分に天使としての役割を果たしていると思いますよ」
タプリス「いえいえ、わたしなんて、ドジばかりで知らないことばかりですし……」
ラフィエル「少しおっちょこちょいなところも、それはそれで愛嬌があって」
ラフィエル「とても親しみやすいという利点がありますし」
ラフィエル「知識については、これから少しずつ蓄えていけば良いんです」
ラフィエル「急いで頭に入れても、使えなかったら意味がありませんしね」
タプリス「たしかに、そうですが……」
タプリス「わたしがもっともっと上を目指す姿を天真先輩が見てくれて」
タプリス「少しでも先輩の更生きっかけになればって、思って……」
ラフィエル「そうですかそうですかぁ」
2: 2017/04/17(月) 21:05:15.508 ID:JBnwPIA20
ラフィエル「タプちゃんの気持ち、重々伝わってきました」
タプリス「し、白羽先輩、それじゃあ……」
ラフィエル「それでは私からアドバイスです」
ラフィエル「もっと上を目指すのに、私のおすすめの方法はですね……」
タプリス「……ごくり」
ラフィエル「そのなりたい自分を、まず演じてみることです」
タプリス「えっ、演じるんですか?」
ラフィエル「なんとなくですが、タプちゃんの頭の中にも」
ラフィエル「素晴らしい天使像というものがありますよね?」
タプリス「は、はい」
ラフィエル「それに、自分がなろう、ではなくて」
ラフィエル「それを演劇のように、役を演じる感覚で過ごしてみるんです」
ラフィエル「自分とは違った役を演じているんだと、はっきり認識をして」
ラフィエル「それを毎日続けていきます」
タプリス「ふ、ふむふむ……」
5: 2017/04/17(月) 21:08:21.319 ID:JBnwPIA20
ラフィエル「最初はつらいかもしれませんが」
ラフィエル「これは役、役なんだって強く意識して、ずっと続けていくと」
ラフィエル「いつのまにか、前の自分のことを忘れてしまって」
ラフィエル「その役が自分になっている、という流れですかね」
タプリス「す、すごいです! さすが白羽先輩です!」
ラフィエル「しかし、最初がやはり大変です。タプちゃんはやれますか?」
タプリス「はい、これも天真先輩のため! がんばります!」
ラフィエル「ふふっ、わかりました」
ラフィエル「では私から一つ、タプちゃんにおまじないをかけてあげましょう」
タプリス「本当ですか! ぜひお願いします!」
ラフィエル「では、ちょっと頭を出してくださいね」
タプリス「えっと、こうですか?」
ラフィエル「タプちゃんの理想の天使像を思い浮かべてください」
タプリス「は、はい」
ラフィエル「じゃあいきますよ、せーのっ!」
ゴツンッ
9: 2017/04/17(月) 21:11:15.612 ID:JBnwPIA20
-公園-
女の子「タプリスお姉ちゃん、一緒に遊ぼー」
男の子「違うよ! お姉さんは僕達と遊ぶんだよ!」
タプリス「こらこら喧嘩してはいけませんよ」
タプリス「みんなで仲良く、一緒に遊びましょう?」
子供達「はーい」
タプリス「ふふっ、いい子たちですね」
ガヴリール「……」
ヴィーネ「あれっ、ガヴ?」
ガヴリール「ああ、ヴィーネか」
ヴィーネ「ガヴが外にいるなんて珍しいわね……」
ガヴリール「……ちょっと腰が痛くなったから、気分転換に散歩してるだけ」
14: 2017/04/17(月) 21:14:37.376 ID:JBnwPIA20
ヴィーネ「あら、子供たちと遊んでるのって、タプちゃんじゃない」
ガヴリール「ああ、そうみたいだな」
ヴィーネ「なんかすごく子供たちに好かれてる感じねぇ」
ガヴリール「……精神年齢が近いからじゃないか?」
ヴィーネ「もうそんな酷いこと言って。それで、声かけないの?」
ガヴリール「いいよ、邪魔しちゃ悪いし」
ヴィーネ「そう。じゃあ私もやめておこうかな」
タッタッタッ
女の子「お姉ちゃん、こっちこっちー」
タプリス「あははっ、待ちなさーい」
ガヴリール「……まあ、いいか」
ヴィーネ「ん、何か言った?」
ガヴリール「いや、なんにも」
ヴィーネ「そっか」
16: 2017/04/17(月) 21:18:23.576 ID:JBnwPIA20
-数日後 公民館-
お婆さん「おや、タプリスちゃん、また来てくれたのかい。嬉しいねぇ」
タプリス「こんにちは、お婆ちゃん。腰の具合はどうですか?」
お婆さん「最近はずいぶんと調子がいいよ」
お婆さん「タプリスちゃんがマッサージしてくれたおかげだねぇ」
タプリス「本当ですか、それはよかったです」ニコッ
お爺さん「タプリスちゃん、またあのお話の続き、聞かせてもらえんか」
タプリス「わかりました、ではお部屋お借りして、みなさんも呼びましょうか」
お爺さん「それがええ。タプリスちゃんのお話、楽しみじゃのう」
ガヴリール「……」
委員長「あら、天真さんじゃない。こんな所で会うなんて珍しいわね」
ガヴリール「ああ、委員長か。ちょっと役所手続きでね」
17: 2017/04/17(月) 21:20:28.983 ID:JBnwPIA20
委員長「そうなんだ。あれ、あの子たしか、千咲さんよね」
ガヴリール「え、委員長、タプリスのこと知ってるの?」
委員長「えぇ。最近、私も参加しているボランティア活動でよく会うのよ」
ガヴリール「ボランティアって?」
委員長「町内会のゴミ拾いとか、お年寄りのお世話とか、ね」
委員長「細かな気配りもできて、すごく働き者だから」
委員長「本当に助かっているわ」
ガヴリール「そうなんだ」
委員長「彼女、物腰がとても柔らかで真面目だし、いつもにこにこしていて」
委員長「しかも、それを鼻にかけることなんて一切しないし」
委員長「みんなに好かれる存在、そのものよね」
ガヴリール「えっ、あいつの物腰が……柔らかい?」
委員長「私と会っている時はそうだけど……違うの?」
ガヴリール「い、いや、なんでもない。今のは忘れて」
委員長「そう? それじゃ、私このあと買い物に行かないといけないから」
ガヴリール「ああ、また学校でな」
ガヴリール「……」
ガヴリール「……別にいいか」
18: 2017/04/17(月) 21:23:46.939 ID:JBnwPIA20
-エンジェル珈琲-
マスター「天真くんお疲れさま、今日はもうあがっていいよ」
ガヴリール「うす」
マスター「ああ、ごめん。最後にチラシの整理だけお願いしていいかな」
マスター「捨てるだけでいいから」
ガヴリール「うっす」
ぺらっ
ガヴリール「これは……」
マスター「ああ、それかい。市内の講演会のお知らせみたいだねぇ」
ガヴリール「ふーん……って!?」
------------------------------------------
題目:『人生を豊かに生きるために』 15:00-16:00
講演者:千咲=タプリス=シュガーベル
------------------------------------------
21: 2017/04/17(月) 21:26:17.151 ID:JBnwPIA20
ガヴリール(同姓同名……なわけないよな)
ガヴリール「な、なんであいつがこんなこと……」
マスター「あれ、天真くん。千咲さんと個人的な付き合いがあるのかい?」
ガヴリール「い、一応、知り合いです……」
マスター「そうなんだ。いや、彼女すごいよねぇ」
マスター「最近、市内のイベントで見ないことがないし」
マスター「まだかなり若そうに見えるのにねぇ」
ガヴリール「そ、そうなんですか……」
マスター「知り合いなら、ぜひ今度、ここにも招待してほしいな」
ガヴリール「う、うす」
ガヴリール「……」
ガヴリール(べ、別にあいつが何をやろうと、あいつの勝手だろ)
ガヴリール(私が、とやかく言うことじゃ……ない)
23: 2017/04/17(月) 21:29:17.006 ID:JBnwPIA20
-数週間後 サターニャの家-
サターニャ「ガヴリールゥ! 今日こそあんたを倒してみせるわ!」
ガヴリール「あれだけ負け続けてんのに……いい加減諦めろよ」
サターニャ「なはっ、今までのは全て様子見。つまり、今回のための布石よ!」
ガヴリール「はいはい……」
テレビ司会者『それでは、本日のゲストである……』
テレビ司会者『千咲=タプリス=シュガーベルさんのご登場です!』
ガヴリール「えっ!?」
サターニャ「なっ!?」
テレビ司会者『今、現代人の疲れた心に染み渡る、優しくて心がほっとするお話と』
テレビ司会者『可憐なお姿のギャップが大好評を博していますが』
テレビ司会者『今のお気持ちを、お聞かせ願いますか?』
タプリス『えぇ、わたしのお話が、少しでも……今を生きている人たちの』
タプリス『支えとなり、助けとなるならば』
タプリス『これ以上の喜びはありません』ニコッ
24: 2017/04/17(月) 21:32:48.199 ID:JBnwPIA20
サターニャ「な、なによこれ。最近見かけないと思ったら」
サターニャ「テレビに出るまでの人気者になってるなんて!」
サターニャ「しかも、これ全国放送じゃない! キィィッ! 悔しい!」
サターニャ「私よりも先に、こんな超有名になるなんて!」
サターニャ「なんてうらやま――じゃなくて生意気なのかしら!」
ガヴリール「……」
サターニャ「どうしたのよ、ガヴリール。黙っちゃって」
サターニャ「ははぁん、わかったわ」
サターニャ「あんたも後輩天使に先を越されて悔しいのね?」
ガヴリール「……そんなんじゃない」
サターニャ「ふふっ、そりゃあそうよね」
サターニャ「天使学校首席のあんたが、後輩に引けを取るだなん――」
ガヴリール「そんなんじゃないって言ってるだろ!!」
サターニャ「っ!? な、なによ、急に大声出したりして」
ガヴリール「……」
サターニャ「……」
ガヴリール「……ごめん、帰るわ」
バタンッ
サターニャ「ったく、なんなのよもう。って、また勝負すっぽかされた!?」
25: 2017/04/17(月) 21:35:36.902 ID:JBnwPIA20
-数週間後 ガヴリールの家-
ガヴリール(なんか最近、ネトゲも飽きてきたな……)
ガヴリール(てきとーに動画でも見るか……ランキングを覗いてっと)
ガヴリール(再生数一位、なんだこれ。再生数100億回だって!?)
ガヴリール(どんだけだよ……って)
ガヴリール(う、嘘……だろ?)
ガヴリール(Tapris Sugarbell Chisaki?)
ガヴリール(まさか、あいつ……なのか?)
ガヴリール(世界中の人からのコメントが付いてる……)
ガヴリール(大絶賛じゃん……)
ガヴリール「なんだよ、これ……」
ガヴリール「もう、わけがわからない……」
ガヴリール「あいつ……どこに行こうとしてるんだよ」
ガヴリール「……」
ガヴリール「……くそっ」
27: 2017/04/17(月) 21:38:43.780 ID:JBnwPIA20
-数ヶ月後 千咲教 総本山-
千咲教信者「教祖様にお会いしたい、と?」
ガヴリール「はい」
千咲教信者「失礼ですが、お約束はされていますか?」
ガヴリール「……いえ、していません」
千咲教信者「教祖様の面会予定は、この先、数年は埋まっておりまして」
千咲教信者「申し訳ありませんが、お引き取りください」
ガヴリール「私はあいつの先輩で、知り合いなんです!」
ガヴリール「私の名前を伝えてもらえれば、絶対会ってくれるはず!」
千咲教信者「そう言われましても……」
ガヴリール「おい! タプリス! いるんだろ!」
ガヴリール「私だ! ガヴリールだ!!」
千咲教信者「あ、あなたねぇ! いい加減にしてください!」
ガヴリール「ちょっ! 離せよ! 離せったら!!」
ガヴリール「おい、タプリス!! 返事をしろ!! タプリスゥゥ!!」
千咲教信者「おいっ! と、取り押さえろ!!」
「おやめなさい!」
28: 2017/04/17(月) 21:41:47.577 ID:JBnwPIA20
タプリス「……」
ガヴリール「タプリス! よかった、出てきてくれたんだな!」
千咲教信者「おいっ! 教祖様になんて口のきき方を!!」
ガヴリール「い、いたっ! 頭を、押さえつけるな!」
タプリス「……おやめなさいと、言っているのです!」
千咲教信者「きょ、教祖様……ははぁ……」
ズサァ
タプリス「……こちらへよろしいですか?」
ガヴリール「あ、あぁ」
-教祖の私室-
ガヴリール「お前が出てきてくれて、助かったよ」
タプリス「申し訳ありませんでした。皆さん、悪気はないのです」
ガヴリール「ああ、別にいいよ」
ガヴリール「それにしても、暫く見ないうちにすごいことになってるな」
ガヴリール「お前がこんなに人気者になるなんて思わなかったよ」
タプリス「お恥ずかしい限りです」
タプリス「ですが……わたしはただ、みなさんの幸せを願っているだけですから」
29: 2017/04/17(月) 21:44:43.740 ID:JBnwPIA20
タプリス「ところで、今日はどういった御用だったでしょうか」
ガヴリール「ああ、えっと……」
タプリス「……」
ガヴリール「なぁタプリス、その……みんなのところに帰ってこないか?」
タプリス「えっ……帰る?」
ガヴリール「お前が本当に立派な事をやってるってのはわかるんだけどさ」
ガヴリール「なんというか、……お前らしくないというか」
ガヴリール「こう……しっくりこないというか」
タプリス「……わたしらしく、とはなんでしょうか」
ガヴリール「それはその……おっちょこちょいでドジも多くて、すぐ泣いて」
ガヴリール「で、いつも私の後ろにくっついてきて」
ガヴリール「……正直、鬱陶しいと思うこともたまにあったけど、さ」
ガヴリール「でも別に嫌とか、そういうわけじゃなくって」
ガヴリール「むしろ嬉しいことの方が多かったというか……」
ガヴリール「つまりだな、その、お前はそういう奴だっただろ……?」
タプリス「……」
ガヴリール「なぁ、タプリ――」
タプリス「……忘れました」
32: 2017/04/17(月) 21:47:55.685 ID:JBnwPIA20
ガヴリール「はっ? 忘れたって……」
タプリス「そんな昔のわたしのことなんて、忘れてしまったんです」
ガヴリール「な、何言ってんだ! それじゃあ、私たちと過ごした時間も」
ガヴリール「忘れてしまったって、言うのかよ!」
タプリス「……」
タプリス「……わたしは今、本当に大勢の人たちの」
タプリス「生きる希望となっているんです」
タプリス「ですからわたしが、そのようなことをするわけにはいきません」
ガヴリール「お前はお前だろ! お前がしたいことをやって何が悪いんだよ!」
ガヴリール「そんな……他の知らない人のことなんて、どうでもいいじゃんか!」
タプリス「なっ……」
ガヴリール「お願いだ、タプリス。私たちともう一度、一緒に……」
タプリス「……お引き取りください」
ガヴリール「えっ、タプリス……?」
タプリス「お引き取りくださいと言ったんです、天真さん」
ガヴリール「お、お前っ……そ、それが答えか」
タプリス「はい」
ガヴリール「……わかったよ」
33: 2017/04/17(月) 21:50:32.032 ID:JBnwPIA20
-数ヶ月後 住宅街-
お婆さん「はぁ、こうやって幸せに長生きできるのも」
お婆さん「タプリス様のおかげですねぇ」
お爺さん「ほんとだわ、ありがたやありがたや」
お爺さん「それじゃ、タプリス様の像へ礼拝に行こうかの」
お母さん「こら! 悪戯すると、タプリス様から見放されてしまうわよ!」
女の子「えぇっ! それは嫌っ!」
お母さん「だったら言うことをききなさい!」
女の子「はぁい……」
ガヴリール(……)
ガヴリール(この世界は異常だ)
ガヴリール(あれから、あの時から……)
ガヴリール(犯罪は激減し、戦争は消え、飢えと貧困もなくなった)
ガヴリール(世界中の誰もが、幸福に暮らせるようになった)
ガヴリール(……あいつの望んでいた、世界になった)
ガヴリール(この世界は異常だ)
34: 2017/04/17(月) 21:54:02.009 ID:JBnwPIA20
ファサッ
ラフィエル「ガヴちゃん!」
ガヴリール「ラフィエルか、どうした」
ラフィエル「タ、タプちゃんの、タプちゃんの反応が……」
ガヴリール「あ、あいつの反応……って、これは」
ラフィエル「ガヴちゃんも感じますか?」
ガヴリール「あぁ、急速にタプリスの生命反応が小さくなって……」
ラフィエル「こ、このままじゃ、タプちゃんは……」
ガヴリール「くそっ、あ、あいつ何をするつもりだ……」
ラフィエル「場所は既に特定してあります、ですが私一人の力では……」
ガヴリール「わかった、協力する」
ラフィエル「私の力を全てお渡しするので、ガヴちゃんが行ってください」
ガヴリール「了解」
ラフィエル「それでは……タプちゃんを頼みましたよ」
ガヴリール「ああ、任せとけ」
ガヴリール「……神足通」
ヒュンッ
36: 2017/04/17(月) 21:57:46.999 ID:JBnwPIA20
-世界の果て-
パァァァァァッ
タプリス「……」
タプリス「……ようやく、ようやくこの時がきました」
シュンッ
ガヴリール「タ、タプリス!? なんだこの光!?」
タプリス「あなたは……」
ガヴリール「ともかく、こんなことはやめろ! お前、氏ぬ気か!」
タプリス「いえ、わたしは氏にません」
ガヴリール「な、なんだって……?」
タプリス「わたしはこれから、この世界となり、宇宙となることで」
タプリス「この世の中に生きる子らを未来永劫、愛し、見守っていくのです」
ガヴリール「何バカなこと言ってんだ! そんなことしたら……」
ガヴリール「お前は生物の一個体ではなくなってしまって」
ガヴリール「一生氏ぬことも許されず、苦しみ続けて」
ガヴリール「私たちとはもう二度と、会えなくなるんだぞ!」
39: 2017/04/17(月) 22:02:21.773 ID:JBnwPIA20
タプリス「わかっています」
ガヴリール「だったら……」
タプリス「それでもわたしは……この世界を」
タプリス「この世界に生きる人たちを、愛していますから」
ガヴリール「タプリス頼む……戻ってきてくれ」
タプリス「それは、できません」
ガヴリール「……私にはさ、お前が……必要なんだよ」
タプリス「……」
ガヴリール「行かないでくれ、お願いだ……頼むよ、ぐすっ……」
ガヴリール「タプリス……お願い、だからぁ……」
タプリス「……ありがとうございます」
タプリス「そのお気持ち、わたしはけっして忘れません」
ガヴリール「おいっ! タプリスッ! 行くなっ!!」
タプリス「あなたの幸せを、ずっとずっと願っていますから」
ガヴリール(ひ、光が……弾けて……)
『天真先輩』
パァァァァァッ
41: 2017/04/17(月) 22:05:54.546 ID:JBnwPIA20
――――――
――――
――
ガヴリール(……タプリスが、いなくなってしまってから)
ガヴリール(この世界は皮肉にも、以前の諸悪が蔓延る世界へと逆戻りした)
ガヴリール(世界中の人々が、幸せを感じることが少なくなっていた)
ガヴリール(あんなにも世界を愛していたあいつのことを……)
ガヴリール(世界中の人たちは忘れてしまった)
ガヴリール(だったら私がすべきことは……ただ一つ)
ガヴリール(あいつが望んだ世界をもう一度……私の手で……)
ラフィエル「ガヴちゃん……本当に良いのですか?」
ガヴリール「ああ、やってくれ」
ラフィエル「じゃあいきますね、せーのっ!」
ゴツンッ
43: 2017/04/17(月) 22:08:53.787 ID:JBnwPIA20
――――――
――――
――
『ガヴリールお姉ちゃん、一緒に遊ぼー』
『いつも掃除ありがとうね、天真さん』
『ガヴリールちゃん、また来てくれたのかい。嬉しいねぇ』
『講演者:天真=ガヴリール=ホワイト』
『ゲストである、天真=ガヴリール=ホワイトさんのご登場です!』
『Gabriel White Tenma 視聴回数:11,827,192,717』
『教祖様! ガヴリール様、ばんざーい!』
『ガヴリール様……はぁ、ありがたやありがたや』
『ガヴ、私は……私はあなたのことを……』
――
――――
――――――
44: 2017/04/17(月) 22:09:54.239
??
45: 2017/04/17(月) 22:12:15.520 ID:JBnwPIA20
-世界の果て-
ガヴリール「……」
ガヴリール「……ようやく、ようやくこの時がきました」
ガヴリール「タプリス」
ガヴリール「あなたの望んだ世界、やっと取り戻しましたよ」
ガヴリール「……今ならわかります」
ガヴリール「あの時のあなたの、気持ちが」
ガヴリール「本当に、本当に心から、この世界を……愛していたのですね」
ガヴリール「そして……私もまた、あなたと同じように」
ガヴリール「世界と一つに、なりたいと思います」
ガヴリール「それでは、いきましょうか」
ガヴリール「あの子の待つ場所へ――」
パァァァァァッ
46: 2017/04/17(月) 22:16:05.811 ID:JBnwPIA20
タプリス「……」
ガヴリール「……遅くなって悪かったな」
タプリス「……えっ」
ガヴリール「迎えに来たぞ、タプリス」
タプリス「て、天真先輩……? どうしてこんなところに!?」
ガヴリール「言っただろ」
ぎゅぅ
タプリス「あっ……」
ガヴリール「私にはお前が必要だって」
タプリス「先輩っ……ぐすっ……せんぱぁいっ……」
ガヴリール「本当に、お前の泣き虫は……変わらないな」
タプリス「だ、だって……わたし、ここで一人、一人きりで……」
タプリス「ずっとずっと、寂しくて……」
ガヴリール「今までよく頑張ったな、偉いぞタプリス」ナデナデ
タプリス「ぐすっ……ひっくっ……」
47: 2017/04/17(月) 22:20:28.975 ID:JBnwPIA20
ガヴリール「よし。それじゃあ帰るぞ、タプリス」
タプリス「えっ、帰るって……先輩?」
ガヴリール「みんなも心配してるからな」
タプリス「でもここは……何もない、いわゆる概念だけの世界……です」
タプリス「元の世界には……けっして戻ることはできません」
ガヴリール「……私を誰だと思ってるんだ」
タプリス「へっ」
ガヴリール「天使学校首席の、天真=ガヴリール=ホワイトだぞ?」スッ
タプリス「そ、それは……世界の終わりを告げるラッパ!?」
ガヴリール「概念だろうがなんだろうが……」
ガヴリール「お前を縛る、このクソッタレな世界なんて……」
ガヴリール「私がぶっ壊してやる!!」
タプリス「先輩……」
ガヴリール「私から離れるなよ、タプリス! ラッパ吹くぞ!!」
タプリス「わ、わかりました!」
ガヴリール「さあ帰ろう、私たちの世界へ!」
タプリス「はいっ、先輩!」
おしまい
50: 2017/04/17(月) 22:24:39.045
乙乙
54: 2017/04/17(月) 23:49:10.230
壮大な話だ乙
引用元: ガヴリール「千咲ちゃん、宇宙になる」
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