1: 2017/04/19(水) 21:00:33.326 ID:oZIRPa3g0
-住宅街-
タプリス「んーっ」
タプリス(今日も良い天気ですね、お散歩日和です)
タプリス(お誘いしたのに、天真先輩には断られてしまいましたが……)
タプリス「って、あれは……」
サターニャ「なはははっ!」
幼女「きゃっきゃっ!」
タプリス(胡桃沢先輩と……、小さな女の子?)
タプリス(あまり見ない組み合わせですね……)
タプリス(どちらかというと胡桃沢先輩は、一人で行動していることの方が)
タプリス(多い気がします)
タプリス(もしかして、何か裏があるのでは……)
タプリス(って、まさかこれは!?)
タプリス(……誘拐ってやつでしょうか!?)
8: 2017/04/19(水) 21:04:10.312 ID:oZIRPa3g0
タプリス(これは……後をつけるしかありませんね)
タプリス(いざとなったら、わたしがあの子を守らなくては!)
-公園-
サターニャ「ほら、もっと大きな声を出しなさい!」
幼女「なーはっはっはっ!」
サターニャ「なはっ! だいぶ良い感じになってきたじゃない」
タプリス(二人は何をやっているのでしょうか)
タプリス(何やら大きな声を出しているようですが……)
タプリス(なんとなく、仲は良さそうですね)
サターニャ「だけど、そんなんじゃ大悪魔への道は、まだまだ遠いわよ!」
幼女「はいっ、師匠!」
タプリス(なっ!? まさか、あんな小さい子を……)
タプリス(悪の道へと引きずり込む気ですか!?)
タプリス(これは一種の洗脳ですよ!? やめさせないと!)
10: 2017/04/19(水) 21:07:24.898 ID:oZIRPa3g0
タプリス(ですが……どうやって、あの悪行を阻止したら良いんでしょう)
タプリス(胡桃沢先輩には一度敗れていますし)
タプリス(正面から行っても、返り討ちにされてしまいます)
タプリス(うーん……)
サターニャ「ちょっとあんた、さっきからそこで何やってるのよ」
タプリス「ひえっ、胡桃沢先輩っ!? どうして、バレたんですか!?」
サターニャ「そんな頭丸出しで、ブツブツ言ってたら、わかるに決まってるでしょ」
タプリス「こ、これには深いワケがありまして……」
幼女「おねーさん、だぁれ?」
タプリス「あ、わたしはタプリスっていいます。胡桃沢先輩の知り合いですよ」
幼女「くるみ? せんぱい?」
サターニャ「ああ、こいつは私の下僕よ、覚えておきなさい」
タプリス「ちょ!? わたしは、先輩の下僕になった覚えはっ……」
幼女「げぼく? 下僕ってなーに?」
サターニャ「それは……」
タプリス「わー! そんなこと、小さい子に教えないでください!」
13: 2017/04/19(水) 21:10:11.824 ID:oZIRPa3g0
幼女「なぁんだ、師匠のライバル? だったんだね」
サターニャ「まぁ、私の相手にはならないけど、そんなところね」
幼女「じゃあ、あたしの敵だー! とぉりゃー!」ポコポコ
タプリス「いたたっ……て、敵じゃありませんからぁ!」
サターニャ「そんな弱い奴は放っておいて、あんたは発声練習の続きをしなさい」
幼女「はぁい」
タプリス(仕方ありません、それとなく実状を探るしかないですね)
タプリス「胡桃沢先輩、あの子に随分、懐かれているみたいですね」
サターニャ「懐く? 何を勘違いしているのかしら」
サターニャ「あの子はね、私の弟子よ」
タプリス「で、弟子ですか……」
サターニャ「そうよ、甘く接するつもりなんて毛頭ないんだから」
タプリス「あの子とはどうやって知り合ったんですか?」
サターニャ「どうしてそんなこと聞くのよ」
タプリス(う……、すごく怪しまれてる。こうなったら……)
タプリス「大悪魔である胡桃沢先輩の、弟子スカウトの手腕をですね」
タプリス「ぜひ教えていただきたいなぁと思いまして!」
サターニャ「ふーん、そう。それはいい心がけね」
サターニャ「……あれは、そうね。一週間くらい前のことだったわ」
14: 2017/04/19(水) 21:13:07.044 ID:oZIRPa3g0
- 一週間前 公園 -
サターニャ「なはっ、今日も特製メロンパンをゲットできたわ!」
幼女「ぐすっ……」
サターニャ「ん? 何よ、あのガキんちょ……泣いてるのかしら」
幼女「ひっくっ……うぇえん……」
サターニャ「べ、別にガキんちょが何してたって、大悪魔の私には関係ないでしょ」
幼女「ひっくっ……ひっくっ……」
サターニャ「……」
サターニャ「……ああっ、もうっ!」
幼女「ぐすっ……ひっくっ……」
サターニャ「あんた、何泣いてるのよ」
幼女「ひっく……、おねーさん……ぐすっ……だぁれ?」
サターニャ「誰でもいいでしょ。それより、何で泣いてるのかって聞いてるの」
幼女「ぐすっ……パパとママが……いなくなって」
サターニャ「ああ、迷子になったのね、それじゃあ――」
幼女「ちがうの」
サターニャ「え? 違うって、何がよ」
幼女「……パパとママ、氏んじゃったって」
サターニャ「……」
17: 2017/04/19(水) 21:16:16.224 ID:oZIRPa3g0
サターニャ「そう」
幼女「ひっくっ……ひっくっ……」
サターニャ「……そんなメソメソするのはやめなさい!」
幼女「ひぐっ……」
サターニャ「泣いてたらね、悲しい気分なんて、ずっとなくならないわよ!」
幼女「で、でもっ……」
サターニャ「なーはっはっはっはっ!!」
幼女「ふぇっ……」
サターニャ「ほら、あんたも笑いなさい! それで悲しい気持ちなんて吹き飛ばすの!」
幼女「笑うなんて、できないよ……」
サターニャ「いいから、無理にでも笑うの! ほら早く!」
サターニャ「なーはっはっはっはっ!!」
幼女「なぁ、はっ……はっ……」
サターニャ「声が小さい! もっと大きな声を出すのよ!!」
サターニャ「なーはっはっはっはっ!!」
幼女「な、なーはっはっはっはっ」
サターニャ「もっともっと大きく! 全力でやりなさい!」
幼女「なーはっはっはっはっ!」
サターニャ「そうよ、その調子!」
サターニャ「なーはっはっはっはっ!!」
幼女「なーはっはっはっはっ!!」
19: 2017/04/19(水) 21:19:33.250 ID:oZIRPa3g0
サターニャ「ぜぇ……ぜぇ……、どうよ?」
幼女「はぁ……はぁ……、なんか、楽しかったぁ……」
サターニャ「少しでも悲しいと思ったら、今のように笑いなさい」
サターニャ「そしたら、悲しい気持ちなんて、どっか行っちゃうんだから」
幼女「うんっ」
サターニャ「それにしてもあんた、なかなか見どころがあるわね」
サターニャ「特別に、私の弟子にしてあげるわ!」
幼女「でし?」
サターニャ「私があんたを、立派な悪魔に育ててあげる!」
幼女「ほんとに!?」
サターニャ「私は大悪魔、胡桃沢=サタニキア=マクドウェルよ!」
幼女「おぉ~、大悪魔すごーい!」
サターニャ「ふふっ、でしょう? あ、でも、私のことは師匠と呼びなさい」
幼女「はい、師匠!」
――――――
――――
――
サターニャ「とまぁ、こんな感じだったかしらね」
タプリス「うえええ、ぐるみざわぜんばいぃ……」ドバァ
サターニャ「な、何よ、涙鼻水たらして、気持ち悪い……」
タプリス「ずびばぜんでじだぁ……」
22: 2017/04/19(水) 21:22:27.343 ID:oZIRPa3g0
タプリス「わたしてっきり、胡桃沢先輩がこの子を誘拐したのかと……」
サターニャ「は? 何言ってるのよ! 失礼ね!」
タプリス「ご、ごめんなさい……」
サターニャ「というわけで、私は今、弟子の特訓に忙しいの」
サターニャ「用がないなら、どっかに行きなさい」
タプリス「でしたら……わ、わたしも手伝います!」
サターニャ「はぁ? 天使のあんたが何を……」
タプリス「敵役でもなんでも良いですから、何かわたしにさせてください!」
タプリス「そんなに長い時間は無理ですが……」
サターニャ「まぁ、そうね。弱いあんたなら、あの子の相手にぴったりだわ」
サターニャ「ちょっと来なさい!」
幼女「はい、師匠! なんでしょうか」
サターニャ「この天使を、今からぼこぼこにしてあげなさい」
幼女「あいっ!」
ポカポカポカッ
タプリス「い、痛いっ、痛いですってばぁ!」
サターニャ「なはっ! いいわよ、その調子でやりなさい!」
幼女「えーいっ!」
タプリス「もうっ、やりましたねぇ。こっちも反撃です! こちょこちょこちょ!」
幼女「あはははっ、くすぐったぁい!」
24: 2017/04/19(水) 21:25:06.163 ID:oZIRPa3g0
-ラフィエルの家-
タプリス「というようなことが、あったんです」
ラフィエル「あらあら」
タプリス「あれから色んなところに連れていってあげてるみたいで」
タプリス「まさか、胡桃沢先輩があそこまで面倒見が良い人だとは思いませんでした!」
ラフィエル「そうですかそうですかぁ」
タプリス「今度、白羽先輩にも紹介しますね。とっても可愛い子なんです」
ラフィエル「ええ、ぜひお願いしますね」
タプリス「あ、もうこんな時間!」
タプリス「す、すみません。それでは、わたしはそろそろ失礼しますね」
ラフィエル「はい、またいつでも来てくださいね、タプちゃん」
タプリス「ありがとうございます! それでは!」
バタンッ
ラフィエル「……」
ラフィエル「サターニャさんに限って、そんなことはないと思いますが……」
ラフィエル「もう少し、様子を見ましょうか」
27: 2017/04/19(水) 21:28:16.480 ID:oZIRPa3g0
-学校 体育の時間-
ヴィーネ「いくわよ、サターニャ! トス!」
サターニャ「任せなさいっ、ヴィネット!」
サターニャ「ウルトラスーパーサタニキア……スパイクッ!!」
スカッ ドシンッ
サターニャ「なはっ!」
ヴィーネ「えぇ……空振りぃ?」
サターニャ「いたたたたっ、私としたことが……」
ヴィーネ「ちょっとサターニャ、何やってるのよ」
サターニャ「仕方ないじゃない、たまにはこういうこともあるわよ」
サターニャ「それによく言うでしょ、弘法も木から落ちるって」
ヴィーネ「言わねーよ」
ヴィーネ「でも、サターニャが体育でミスするなんて珍しいわね」
サターニャ「それもそうね、どうしてかしら」
ヴィーネ「私に聞かれても……まぁ誰にだって調子の悪い時くらいあるでしょ」
ガヴリール「そうだぞ、誰だって調子の悪い時くらいある」
ヴィーネ「ガヴはいつもでしょうが」
28: 2017/04/19(水) 21:31:35.527 ID:oZIRPa3g0
ガヴリール「……」
ヴィーネ「ガヴ、どうしたの? サターニャのことなんて、じっと見て」
ガヴリール「いや、なんにも。あいつバカだなって思って」
ヴィーネ「まぁ、それは……いつものことでしょ」
ガヴリール「そうだな」
ガヴリール「……」
ガヴリール「まさか、な」
-数日後 教室-
サターニャ「すぴぃ……すぴぃ……」
担任「……胡桃沢」
ドンッ
サターニャ「なはっ!」
担任「お前、一時限目から寝ているそうだな」
サターニャ「あ、あれ、今何時限目よ!?」
担任「……五時限目だ」
サターニャ「えっ、う、うそっ! そんな冗談に騙されないんだからっ!」
担任「廊下に立ってろ!!」
ガヴリール「……」
29: 2017/04/19(水) 21:34:09.737 ID:oZIRPa3g0
-ガヴリールの家-
ラフィエル「ガヴちゃん。突然押しかけてしまって、すみません」
ガヴリール「別にいいよ。サターニャのことだろ?」
ラフィエル「気づいていましたか」
ガヴリール「まぁ、な」
タプリス「あ、あの……お話があまりよく、わからないのですが……」
ラフィエル「ああ、ごめんなさい」
ラフィエル「タプちゃんも一応、当事者かと思いまして、呼ばせてもらったんです」
タプリス「わたしが当事者?」
ガヴリール「単刀直入に言うぞ」
ガヴリール「サターニャの精気が、何らかの要因で急速に衰えていってる」
タプリス「精気……ですか?」
ガヴリール「まあ簡単に言うと、生きる気力ってやつだ」
ガヴリール「少しくらい減っても、別に対して影響はないが」
ガヴリール「あまりに大量に失われると、最悪、命に関わることもある」
タプリス「そ、そんな! 大変じゃないですか!」
30: 2017/04/19(水) 21:37:34.031 ID:oZIRPa3g0
ガヴリール「それで、最近あいつに変わったことがなかったか、と思ってな」
タプリス「変わったこと……」
ガヴリール「例えば……新しい交友関係ができた、とか」
タプリス「……えっ」
ガヴリール「心当たり、あるんだな」
タプリス「いえっ、いえいえ、そんな……おかしいです……」
タプリス「そんなはず……ありません……」
ラフィエル「タプちゃん……」
タプリス「だってあの子、あんなに小さいのに……」
タプリス「そんな悪さをするようには、けっして……」
ガヴリール「タプリス。知っていること、詳しく話してくれるか」
タプリス「は、はい、わかりました……」
ガヴリール「なるほどな。両親が氏んでいる、か」
タプリス「はい……でも胡桃沢先輩のおかげで」
タプリス「今は元気に遊べるまでになったんです」
ガヴリール「そうか」
ラフィエル「ガヴちゃん。私の予想が正しければ、その子は既に……」
ガヴリール「ああ、私もそう思う」
ガヴリール「あんな奴でも、一応友達だしな。助けに行くか」
32: 2017/04/19(水) 21:40:24.163 ID:oZIRPa3g0
-公園-
サターニャ「ぜぇ……ぜぇ……、次ぃ、いくわよ」
幼女「師匠、大丈夫? なんかつらそう……」
サターニャ「平気に……決まってるでしょ。元気よ元気」
サターニャ「それよりあんた、人の心配する前に、まず自分の心配しなさい」
幼女「は、はい……」
サターニャ「わかれば……いいのよ……、ほら発声練習開始!」
幼女「なーはっはっはっはっ!!」
サターニャ「なーはっはっはっはっ!!」
ガヴリール「あの子、か?」
タプリス「はい、そうです」
幼女「あ、天使のおねーさん!」
タプリス「久しぶりです、元気でした?」
幼女「うんっ! 元気! でも、師匠がちょっと元気ない!」
サターニャ「誰が元気がないですって!」ポカッ
幼女「ひえええっ」
ラフィエル「……間違いないですね」
ガヴリール「ああ」
33: 2017/04/19(水) 21:43:28.702 ID:oZIRPa3g0
ラフィエル「サターニャさん、少しいいですか?」
サターニャ「何よ、あんたたち。それにガヴリールまで……」
ラフィエル「お話したいことがあります、大事な」
サターニャ「そんなに改まって何なのよ、とっとと話しなさい」
ガヴリール「タプリス、その子と少し、向こうで遊んでてくれ」
タプリス「は、はい、わかりました。じゃあ、いきましょう?」
幼女「うんっ」
サターニャ「なに? あの子に聞かれたくないような話なの?」
ガヴリール「ああ」
ラフィエル「サターニャさん、単刀直入に言います」
ラフィエル「今後、あの子と一切、関わらないようにしてください」
サターニャ「は? 何言ってるのよ」
ラフィエル「それが、サターニャさんのためなんです」
サターニャ「私のためですって? 意味がわからないわね」
サターニャ「あの子は私の弟子で、将来が有望な大悪魔候補よ」
サターニャ「私が育て上げるって決めたの、だから却下」
ガヴリール「……そうしないと、お前が氏ぬとしたらどうだ?」
35: 2017/04/19(水) 21:46:18.451 ID:oZIRPa3g0
サターニャ「はぁっ!? わけわかんないこと言うんじゃないわよ!」
ガヴリール「……最近、体の調子がだいぶ悪くなってないか?」
サターニャ「ッ!?」
ガヴリール「そんなに目に隈を作って。それにお前、だいぶ痩せたろ」
サターニャ「こ、こんなの、調子が悪いうちに入らないわ!」
サターニャ「まぁ、仮にっ、だけど、私の体調が悪いとして」
サターニャ「それが、あの子となんの関係があるのよ!」
ガヴリール「お前の精気が、あの子に奪われているんだよ」
サターニャ「せ、精気ですって……?」
ガヴリール「ああ、しかも徐々にその量は増えていってる」
ガヴリール「このままいくと……あと数日で、お前の精気はすっからかんになって」
ガヴリール「お前は、氏ぬ」
サターニャ「何よそれ……そんなデタラメ言ったって、信じないんだから!」
サターニャ「そもそも、あんな小さな普通の子供に……」
サターニャ「そんなことできるはずないじゃない!」
ラフィエル「サターニャさん、よく聞いてください」
ラフィエル「あの子はもう……氏んでいるんです」
38: 2017/04/19(水) 21:49:16.342 ID:oZIRPa3g0
サターニャ「な、なんですって……」
ラフィエル「これは私の予想ですが……」
ラフィエル「おそらく、あの子のご両親が亡くなった時に」
ラフィエル「あの子も一緒に命を落としてしまった」
ラフィエル「しかし、ご両親のあの子に対する、生きて欲しいという強い願いが」
ラフィエル「あの子を現世にとどめていたのだと思われます」
サターニャ「……」
ラフィエル「あの子から微かですが、二つの異なる精気を感じるんです」
ラフィエル「それがおそらく……ご両親の想い」
ラフィエル「現世にとどまるために、それを使ってきましたが」
ラフィエル「とうとう、それも尽きかけてしまったのでしょう」
ラフィエル「本当ならその時点で、あの子は……召される、はずでした」
サターニャ「はずだった、ですって……?」
ラフィエル「そうです……しかし、予想外のことが起きたんです」
サターニャ「まさか……」
ラフィエル「はい、あなたと出会ってしまったんですよ、サターニャさん」
サターニャ「……」
40: 2017/04/19(水) 21:53:09.605 ID:oZIRPa3g0
ラフィエル「あなたの人一倍強い精気は、あの子を現世にとどめるための」
ラフィエル「格好の糧となってしまったんです」
サターニャ「……」
ラフィエル「おそらく、あの子に自覚はないでしょう」
ラフィエル「仮に知っていたとしても、あの子自身で止めることはできないと思います」
ガヴリール「それだけじゃない」
ガヴリール「このままもし、あの子が現世にとどまり続ければ」
ガヴリール「この世の邪気すらも多く取り込んでしまって、悪霊と化し」
ガヴリール「苦しみ、もがいて、誰かを呪い続けるだけの存在となるだろうな」
ガヴリール「そうならないようにするのが、私たち天使の役割の一つだ」
ラフィエル「ですから……あの子とサターニャさんを救うために」
ラフィエル「私たちの手で……あの子を召天させます」
ラフィエル「……わかって、いただけたでしょうか」
サターニャ「……」
ラフィエル「サターニャさん」
41: 2017/04/19(水) 21:55:20.000 ID:oZIRPa3g0
サターニャ「……わかったわ」
ラフィエル「では……」
サターニャ「あんたたちが理屈だけこねてる、天界の犬だってことがね」
ラフィエル「えっ……」
サターニャ「言いたいことは、それだけかしら」
ラフィエル「サターニャさん……」
サターニャ「そんなの……ぜぇったいにお断りよ!!」
ラフィエル「サターニャさん、私はあなたのことを思って……」
サターニャ「ふっざけないでッ!!!」
ラフィエル「……ッ」
サターニャ「あの子が氏んでるって何!? あの子は今、私の目の前にいるじゃないッ!!」
サターニャ「悪霊ですって!? 上等よッ!!」
サターニャ「大悪魔であるこの私が、悪霊の一つや二つ、飼いならしてみせるわ!!」
ラフィエル「サターニャさん、落ち着いてください……」
サターニャ「あの子はね、私の大事な弟子なの!!」
サターニャ「まだガキんちょだけど、優秀で、私のいうこと素直にきいてくれて!」
サターニャ「師匠師匠ってニコニコしながら、いっつもくっついてきて!」
サターニャ「こんなに私のことを慕ってくれた子、初めてだった!!」
サターニャ「そんなの……そんな弟子なんて、可愛いに決まってるじゃないっ!!」
サターニャ「大事にしたいって思うに、決まってるじゃない!!」
42: 2017/04/19(水) 21:58:22.761 ID:oZIRPa3g0
サターニャ「あんた達は……そんな子を、私から取り上げるつもりなのっ!!」
ラフィエル「……」
サターニャ「ねぇ、答えなさいよ!!」
サターニャ「ラフィエルッ!!」
ラフィエル「……はい」
サターニャ「ッ!?」
ラフィエル「サターニャさんがなんと言おうと、私は……」
ラフィエル「あの子を召天させます」
サターニャ「……それが、あんたの答えってわけね」
ラフィエル「ええ」
サターニャ「……あんたなんて」
ラフィエル「……」
サターニャ「大っ嫌いよッ!!」
ラフィエル「……ッ」
サターニャ「……あの子に、何かしてみなさい」
サターニャ「いくらあんた達だって、容赦しないんだから」
幼女「……し、師匠?」
サターニャ「場所を変えるわよ、来なさい」
幼女「えっ……あっ、はい」
44: 2017/04/19(水) 22:01:09.756 ID:oZIRPa3g0
ラフィエル「……」
ガヴリール「ラフィエル……」
ラフィエル「……サターニャさんに嫌われてしまいました」
ガヴリール「私が全部伝えても良かったんだぞ」
ラフィエル「いえ、私が自分で決めたことですから」
ガヴリール「そうか……頑張ったな」
ラフィエル「……ッ」
ガヴリール「お前は頑張ったよ、ラフィ」
ぎゅぅ
ガヴリール「……」
ラフィエル「ごめっ、ごめんな、さい……、少しだけ、少しだけで……いいですから」
ガヴリール「ああ、好きなだけ泣くといい」
-河川敷-
サターニャ「ほらメロンパン、食べなさい」
幼女「ありがとう、師匠! いただきまーす!」モグモグ
サターニャ「おいしい?」
幼女「うんっ! おいしい!」
サターニャ「そう、よかったわね」
46: 2017/04/19(水) 22:04:16.269 ID:oZIRPa3g0
幼女「……あたしが、氏んでいたって本当?」
サターニャ「えっ!? あんたまさか……」
幼女「ごめんなさい、師匠。聞こえちゃった」
サターニャ「あんなのあいつらの戯言よ、気にする必要ないわ」
幼女「……もし、あたしが天国にいったら」
幼女「パパとママにも会えるのかな……」
サターニャ「……ッ」
幼女「だとしたら、あたしは……」
サターニャ「……あんたは、私と一緒に大悪魔になるって約束したでしょ」
サターニャ「まあ私には劣るけど? あんたもそこそこ優秀だし?」
サターニャ「きっと、いい悪魔になれるわ」
幼女「そうだよね。あたしは、師匠のような、大悪魔になるんだもん!」
サターニャ「そう、その意気よ。ほら、笑いなさい。なーはっはっはっはっ!!」
幼女「なーはっはっはっはっ!!」
サターニャ「なーはっはっ――ごほっ、ゴホッ!!」
幼女「師匠? 大丈夫?」
サターニャ「へーきよ、ただ、むせただけ――ゲホッ! ゴホッゴホッ!!」
47: 2017/04/19(水) 22:07:12.820 ID:oZIRPa3g0
幼女「師匠! 大丈夫そうに見えな――うっ!!」
シュゥゥゥ
サターニャ「な、なにこれ? あんたの周りに黒いモヤが……」
幼女「えっ、えっ、なにこれ、怖い! 師匠、怖いよ!!」
サターニャ「くっ!! まさかこれが……」
サターニャ「あいつらの言っていた悪霊化ってやつなの!?」
幼女「師匠! 師匠、助けてっ!」
ぎゅぅ
幼女「あっ……」
サターニャ「大丈夫よ!! あんたは私が守ってあげるから!!」
ジュゥゥゥゥッ
サターニャ「……あぐぅぅぅッ!!」
幼女「師匠!? どうしたの!? 苦しいのっ!?」
サターニャ「こんなわけわからない黒いのなんて! 静まれ……静まりなさいッ!」
ぎゅぅぅぅ
サターニャ「静まれって、言ってんでしょうがッ!」
シュゥゥゥ
幼女「あ、黒いのが、消えて……」
サターニャ「……」フラッ
バタンッ
幼女「師匠!? 師匠、起きて! 師匠!」
48: 2017/04/19(水) 22:10:04.001 ID:oZIRPa3g0
サターニャ「……」
幼女「どうしよう、あたしのせいで、師匠が……」
幼女「助けなきゃ……」
幼女「師匠を、助けなきゃ!」
タッタッタッ
幼女「はぁっ、はぁっ、はぁっ」
ズルッ
幼女「あっ!」
ドテンッ
幼女「い、痛い……、でも……行かなきゃ……」
タプリス「あ、あれは!?」
幼女「天使のおねーさん! よかったぁ」
タプリス「えっと胡桃沢先輩、じゃなくて師匠さんはどこ?」
幼女「し、師匠が倒れちゃって、動いてくれなくて……」
タプリス「えっと……く、詳しく聞かせてくれるかな?」
49: 2017/04/19(水) 22:13:13.569 ID:oZIRPa3g0
タプリス「そんな大変なことに……」
幼女「お願い! 師匠を助けて!」
幼女「あたしが……あたしが悪いんだよね!」
タプリス「えっ……ど、どうして?」
幼女「あたしがここにいるから! パパとママのところにいかないから!」
幼女「師匠は、あんなに苦しんでるんだよね!?」
ガヴリール「私たちの話、聞いていたのか」
幼女「……ごめんなさい」
幼女「あたし、自分ではどうやるかわからないけど」
幼女「おねーさんたちは、知ってるんだよね?」
ガヴリール「ああ」
幼女「だったら、お願い!」
ガヴリール「でも、いいのか?」
ガヴリール「お前が、パパとママのいるところに、召されたら」
ガヴリール「もう、お前の師匠には会えなくなるんだぞ」
幼女「……」
幼女「それは嫌……だけど」
幼女「でも、それで……師匠が苦しんじゃうのは、もっと嫌!」
ガヴリール「……そうか、わかった」
50: 2017/04/19(水) 22:16:13.910 ID:oZIRPa3g0
パァァァァァッ
幼女「……」
ガヴリール「やれるな、ラフィエル」
ラフィエル「はい、ガヴちゃん」
ガヴリール「最後に、言い残したことはないか?」
幼女「……もし、師匠が目覚めたら」
幼女「ごめんなさい、って言ってほしいです」
ガヴリール「ごめんなさい、な。わかった」
ガヴリール「……じゃあ、始めるぞ」
ラフィエル「はい」
サターニャ「……待ちなさいよッ!」
タプリス「えっ、胡桃沢先輩!?」
サターニャ「ぜぇ……ぜぇ……、言ったわよね、私」
サターニャ「何かしたら、容赦しないって」
幼女「師匠! 違うの、これは!」
サターニャ「あんたは黙ってなさいッ!!」
51: 2017/04/19(水) 22:16:41.645
真っ直ぐなサターニャちゃんが好きだ
52: 2017/04/19(水) 22:18:37.103
大悪魔に二言はないからな
53: 2017/04/19(水) 22:19:28.818 ID:oZIRPa3g0
幼女「黙らないっ!! 師匠こそ、あたしの話を、聞いてよっ!!」
サターニャ「なっ!?」
幼女「あたしが、あたしが、天使のおねーさんたちに頼んだの!」
サターニャ「うそ……でしょ?」
幼女「ほんとだよ! だって……」
幼女「もう師匠に苦しんでほしくないんだもん!!」
幼女「これ以上、師匠に迷惑かけたくないんだもん!!」
サターニャ「め、迷惑だなんて私は一度も……」
幼女「だってあたし、本当ならパパとママと一緒に氏んでいたのに」
幼女「ここにいたおかげで、師匠と、いっぱいいっぱい楽しいことができた!」
幼女「パパとママが氏んで、悲しくて悲しくて、泣くしかなかったあたしに」
幼女「師匠は、笑い方を教えてくれた!」
幼女「師匠の真似したら、本当に悲しいのがどっかに飛んでいって」
幼女「あの時、笑ってた師匠は、本当にあたしにはぴかぴか輝いて見えたの!」
幼女「この人、ほんとにすごいなぁって、あたし思った!」
幼女「だからあたしは、自分からパパとママのところへ行くの!」
幼女「だって、ほんとにほんとに……師匠のことが」
幼女「大好きだからっ!!」
55: 2017/04/19(水) 22:22:09.479 ID:oZIRPa3g0
サターニャ「……わ、私だって……あんたと過ごした日々は……」
サターニャ「悪くなかったわよっ!」
幼女「えへへ、嬉しいな」
サターニャ「あんたがそこまで言うなら……私はもう、とめない」
幼女「師匠……」
サターニャ「……向こうでパパとママに会えると良いわね」
幼女「そうだね、でも……あたし、決めたんだ」
サターニャ「何を?」
幼女「向こうにいっても、師匠みたいな大悪魔を目指して頑張るって!」
サターニャ「……ッ」
幼女「いいよね、師匠?」
サターニャ「そう……、なら……私も負けてられないわね!」
サターニャ「どっちが立派な悪魔になれるか、勝負よ!!」
幼女「うんっ!」
ガヴリール「サターニャ、時間だ」
サターニャ「……わかったわ」
56: 2017/04/19(水) 22:25:39.331 ID:oZIRPa3g0
幼女「みんな、あたしのために、ここまでしてくれてありがとう」
幼女「天使のおねーさんも、一緒に戦ってくれたりして、ありがとうね」
タプリス「ぐすっ、うん……うんっ。向こうでも元気でね」
幼女「師匠」
サターニャ「さよならは言わないわ」
サターニャ「立派に務めを果たしてきなさい」
サターニャ「あんたは私の、最高の弟子なんだから!」
幼女「うっ……うぅ……師匠ぉ……」
サターニャ「ほら、泣くんじゃないわよ」
幼女「だって……だってぇ……」
サターニャ「泣きたいときには……教えたでしょう?」
幼女「あっ……」
サターニャ「いくわよ、大きな声で! せーのっ!!」
サターニャ「なーはっはっはっはっ!!」
幼女「なーはっはっはっはっ!!」
サターニャ「いってきなさい、我が愛弟子!!」
幼女「はいっ! いってきます、師匠!!」
パァァァァァッ
『本当に、ありがとうございましたっ!』
57: 2017/04/19(水) 22:29:20.665 ID:oZIRPa3g0
サターニャ「……」
ラフィエル「サターニャさん……」
サターニャ「礼は言わないわよ、ラフィエル」
ラフィエル「はい、わかっています」
サターニャ「……でも、あの時は言い過ぎた、ごめん」
ラフィエル「あ……はいっ」
-公園-
タプリス(あれから数日が経ち……)
タプリス(胡桃沢先輩は、すっかり元気になり)
タプリス(ぎくしゃくしていた先輩たちの仲も元に戻りました)
タプリス(また、以前と変わらぬ穏やかな日々が、続いて――)
サターニャ「なーはっはっはっはっ!!」
タプリス(――も、いませんね……)
サターニャ「ほら、ガキんちょども! 聞きなさい!」
サターニャ「今、超特別に、この大悪魔である私の弟子を募集してるわ!」
サターニャ「希望者は、ここに集まりなさい!」
ガキ1「なんだあれ、変なの!」
ガキ2「行こーぜ―!」
59: 2017/04/19(水) 22:31:22.594 ID:oZIRPa3g0
サターニャ「キーッ、私がわざわざ出向いて募集してやってるのに」
サターニャ「なんて生意気なのかしら!」
女の子「あの……」
サターニャ「なによ、あんたも冷やかし?」
女の子「い、いえ、その……詳しくお話、聞きたいなって」
サターニャ「へぇ、あんた見どころあるじゃない!」
サターニャ「そうね……ちょっとパッとしないけど」
サターニャ「あんたを私の弟子三号にしてあげるわ!」
女の子「さ、三号ですか?」
サターニャ「えぇ、一号は破門、二号は永久欠番だから三号よ」
女の子「はぁ……あ、ありがとうございます」
サターニャ「あんたを立派な悪魔にしてあげるから、覚悟しなさい!」
女の子「えっ、あ、悪魔……ですか? あ、あなたは一体……」
サターニャ「なーはっはっはっはっ!!」
サターニャ「教えてあげるわ、私は……」
サターニャ「大悪魔、胡桃沢=サタニキア=マクドウェルよ!!」
おしまい
61: 2017/04/19(水) 22:32:54.214
乙
62: 2017/04/19(水) 22:32:55.029
これは大悪魔ですわ
64: 2017/04/19(水) 22:35:43.964
一号誰よ?
66: 2017/04/19(水) 22:36:44.287
乙
>>64
ラフィでしょ
>>64
ラフィでしょ
69: 2017/04/19(水) 22:48:15.052
乙。じゃあ俺が四号になるわ
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