1: 2017/04/20(木) 21:08:56.764 ID:qHWXostz0
 
-図書館-


タプリス(はぁ……決まらない)


タプリス(天真先輩の誕生日まで、もう日にちがないのに……)

タプリス(先輩は、どんなプレゼントをあげたら、喜んでくれるんでしょうか)


タプリス(パソコンの何か? でも、先輩は先輩なりのこだわりがありそうですし)

タプリス(わたしが変な物をあげても、使ってもらえない可能性があります)

タプリス(それじゃあ食べ物? でも先輩、好き嫌い多そうですし)

タプリス(もしも、嫌いな食べ物をあげちゃったら、目も当てられません)

タプリス(あぁ……悩みますぅ……)


タプリス(先輩……他の方からもきっと、素敵なプレゼント貰うんだろうなぁ)

タプリス(……)

タプリス(あ、そうだ!)


タプリス(他の先輩たちが、天真先輩の誕生日に何をあげるか)

タプリス(聞いてまわって参考にしましょう!)

3: 2017/04/20(木) 21:12:49.625 ID:qHWXostz0
 
-ヴィーネの家-


ヴィーネ「ガヴの誕生日プレゼント? ええ、準備してるわよ」

タプリス「ほんとですか!? 是非教えていただきたいです!」

タプリス「わたしも考えているんですが、なかなか決まらなくて……」

ヴィーネ「別にそんなに深く考えなくても」

ヴィーネ「タプちゃんからのプレゼントだったら、何でも喜ぶと思うわよ」

タプリス「そ、そうでしょうか」


ヴィーネ「ええ。あ、ちょっと待っててね。作りかけだけど、持ってくるわ」

タプリス「は、はい!」

タプリス(作りかけ? ま、まさか手作りってやつですか、すごいなぁ……)

4: 2017/04/20(木) 21:16:05.520 ID:qHWXostz0
 
ヴィーネ「お待たせ、これよ」

タプリス「わぁ! 可愛いクマの人形! これ本当に手作りなんですか!?」

ヴィーネ「ありがとう、タプちゃん。裁縫は半分、趣味みたいなものだから」

タプリス「さすが月乃瀬先輩です! 少し触ってもいいですか?」

ヴィーネ「ええ、どうぞ」

タプリス「わぁ……」スッ

 カチャ

タプリス「ん??」

 ブンブンッ カチャカチャ

タプリス(中から金属音……?)

ヴィーネ「どうしたの、タプちゃん?」

タプリス「い、いえ、なんでもないです……」


タプリス(……聞かないでおきましょう)

5: 2017/04/20(木) 21:18:34.161 ID:qHWXostz0
 
-サターニャの家-


サターニャ「はぁ? なんで私がガヴリールなんかに……」

サターニャ「プレゼントをあげなきゃいけないのよ」

タプリス「あ、あれ? 誕生日って普通プレゼント渡しませんか?」

タプリス(悪魔の方にはそういう習慣はないのでしょうか)

タプリス(月乃瀬先輩が特別なだけ?)

サターニャ「いや、別にあげる人にはあげるけど……」

サターニャ「なんで私の最大の敵であるガヴリールに、ってことよ!」

タプリス「で、では、もしあげるとしたらっていう、仮定でいいですから!」

13: 2017/04/20(木) 21:20:14.166 ID:qHWXostz0
 
サターニャ「……そうねぇ、メロンパンでいいんじゃない?」

タプリス「それ、胡桃沢先輩が好きなだけじゃ……」

サターニャ「自分が好きなものあげて何が悪いのよ!」

タプリス(……でも、確かに自分の好きなものをプレゼントして)

タプリス(その良さをわかってもらえたり、共通の話題とかにできたら)

タプリス(嬉しいですよね)


タプリス「ありがとうございます、胡桃沢先輩! 参考になりました!」

サターニャ「そう。よくわからないけど、悪い気はしないわ」

サターニャ「確か……敵に塩を送るっていう言葉もあったわね」

サターニャ「癪だけど、誕生日にメロンパンの一つでもあげようかしら」

タプリス「あははは……」

15: 2017/04/20(木) 21:22:29.386 ID:qHWXostz0
 
-ラフィエルの家-


ラフィエル「ガヴちゃんへの誕生日プレゼントですか?」

タプリス「はい、白羽先輩のご意見をお聞きしたくて……」

ラフィエル「そうですかそうですかぁ」

タプリス「ずっと考えてはいるのですが、なかなか……」

ラフィエル「私は……最近、ガヴちゃん、目が疲れて辛いって言ってましたから」

ラフィエル「疲労回復効果のあるアロマアイマスクをあげようと思ってます」

タプリス「おぉ……天真先輩の最近の悩みからの、プレゼントですか」

タプリス「さすが白羽先輩です!」


ラフィエル「えぇ、これをつけると……とっても気持ちよくなれるんですよ」

タプリス「……気持ちよくなれる? 寝れる、ではなくてですか?」

ラフィエル「えぇ」

タプリス「……」

ラフィエル「……」

タプリス「それって、大丈夫なやつですよね?」

ラフィエル「うふふ、知りたいですか?」

タプリス「い、いえ、いいです……」

16: 2017/04/20(木) 21:25:09.255 ID:qHWXostz0
 
ラフィエル「あ、そうそう、タプちゃんに良い物を貸しましょう」

タプリス「えっ、なんでしょうか?」

ラフィエル「これです」

タプリス「これは……綺麗な石ですね」

ラフィエル「天使石といいまして、これで頭を叩くと」

ラフィエル「その人の性格が模範的な天使のようになるという、優れものです」

ラフィエル「そして、もう一度叩くと元に戻ります」

タプリス「そ、そんな道具があるんですね……って、まさか!?」

ラフィエル「うふふ、そのまさかです。困ったときに使用してみてください」


タプリス「あ、あまり頼りたくはないですけど……」

タプリス「最終手段として使わせていただきますね! ありがとうございます!」

ラフィエル「はい、がんばってくださいね、タプちゃん」

17: 2017/04/20(木) 21:28:15.880 ID:qHWXostz0
 
-商店街-


タプリス(皆さんの意見を聞くことができましたが)

タプリス(やっぱり、まだ迷っちゃいますね……)

タプリス(ここは甘いものでも食べて、頭を働かせましょうか)


タプリス「んーっ、シュークリームおいしいー!」

タプリス(このとっても甘めな生クリームが堪りません!)


タプリス「……そういえば、買った時に福引券をもらったような」

タプリス「どうせ、ポケットティッシュしか当たらないでしょうけど」

タプリス「貰っていきましょうか」

20: 2017/04/20(木) 21:30:57.414 ID:qHWXostz0
 
 からんからんっ


店員「おめでとうございまーす!!」

店員「特賞、ペア温泉宿泊チケット、大当たりぃぃ!!」

タプリス「……」パクパク

店員「はい、可愛いお嬢さん。こちらの封筒をお受け取りくださいね」

タプリス「こ、こんなすごいもの、本当に貰ってしまっても良いのですか?」

店員「ははっ、当たったんだから勿論だよ」

タプリス「あ、ありがとうございます!」ペコペコ

店員「そこまで喜んでもらえると、こっちも嬉しいねぇ!」

店員「また商店街、利用してくれよな!」

タプリス「は、はい!」


タプリス(こ、こんなの初めてです、一生分の運を使い切った感じがします)

タプリス(はっ、まさか明日、わたしは氏ぬのでは!?)


タプリス(でも、ペアチケット……ですか)

タプリス(先輩たちを誘うには、枚数が足りませんね……)

タプリス(誰か一人を誘うとしたら……)

タプリス(……)

タプリス(そうだ! これです!)

23: 2017/04/20(木) 21:33:49.894 ID:qHWXostz0
 
-ガヴリールの家-


ガヴリール「めんどいからパス」

タプリス「即答!?」


タプリス(と、当日はきっと、皆さんで誕生日会とかを開くでしょうから)

タプリス(前日に温泉旅行に誘ってみたものの……まさかの玉砕、です)


ガヴリール「他のやつ、誘ってくれ。ほら、ヴィーネとか喜んで行きそうだろ」

タプリス「で、ですが……わたしは、天真先輩と行きたいなぁって」

ガヴリール「なんで?」

タプリス「それは、その……日頃お世話になっているお礼といいますか」

ガヴリール「別に私、お前の世話とかしてないでしょ」

ガヴリール「ヴィーネとかの方が、よっぽどお前を気遣ってるじゃん」

ガヴリール「お礼するなら、あいつの方が良いと思うぞ」

タプリス「それは……そうかもしれませんが」

ガヴリール「それに私は、その日ネトゲのイベントで忙しいんだ」

ガヴリール「たかが風呂のために、遠出とかできん」

タプリス「うぅぅ……」


ガヴリール「……まぁでも、一番に誘ってくれたのは嬉しかったよ」

ガヴリール「ありがとな」

25: 2017/04/20(木) 21:37:18.477 ID:qHWXostz0
 
タプリス(こ、これでは、せっかく考えた計画を実行できません……)

タプリス(かくなる上は……最終手段です!)

タプリス(白羽先輩からお借りした、この天使石で)

タプリス(天真先輩を……)


タプリス「あー! ゴミの中に千円札が!!」

ガヴリール「えっ、どこどこ」


タプリス(ごめんなさい、先輩っ!)

タプリス「せーのっ、そぉい!」


 ゴツンッ
 

27: 2017/04/20(木) 21:40:23.353 ID:qHWXostz0
 
-誕生日前日 温泉旅館前-


タプリス「ここが、わたしたちが泊まる旅館みたいですね」

ガヴリール「素敵な建物ですね。今から楽しみです」

タプリス「えへへ、そうですね」

ガヴリール「本当にありがとうね、タプリス。今日は私を誘ってくれて」

タプリス「いえいえ、福引きで当たっちゃっただけですから」

タプリス「き、気にしないでください!」


タプリス(それにしても、天使石……効果抜群です!)

タプリス(性格や容姿さえも、これは完全に……)

タプリス(天使学校時代の天真先輩、そのものですよ!)

タプリス(本当にありがとうございます、白羽先輩!)


ガヴリール「タプリス? どうかしましたか?」ズイッ

タプリス(せ、先輩が近っ、近いです!)

タプリス「い、いえ! と、とりあえず、中に入りましょうか」

29: 2017/04/20(木) 21:42:52.041 ID:qHWXostz0
 
-旅館内 フロント-


ガヴリール「では、チェックインしてきますね」

タプリス「あ、はい。わたしも一緒に」


受付「こちらにサインをお願いします」

ガヴリール「はい」

受付「天真様、ですね。かしこまりました」


仲居「お部屋までお荷物お持ちします、天真様」

タプリス「あ、えっと……よ、よろしくお願いします」

仲居「はい」ニコッ


タプリス(今の人、わたしのこと、天真様って呼んでた)

タプリス(天真様、天真……かぁ)

タプリス(天真……タプリス・シュガーベル……)

タプリス(なんちゃって)

タプリス「……えへへ」

ガヴリール「ふふっ、タプリス嬉しそうですね。何かありましたか?」

タプリス「い、いえ! なんでもないです!」

32: 2017/04/20(木) 21:46:08.019 ID:qHWXostz0
 
ガヴリール「そう? そんなお顔には見えませんでしたけど」

タプリス「えっと……他の人たちから見て」

タプリス「わたしたち二人って、どう見えてるのかなぁって」

ガヴリール「そうですね……仲の良い姉妹、だったりして」

タプリス「あはは、やっぱりそうですよね」


ガヴリール「でもそれだと……私の方が妹にしか見えませんね」

タプリス「せ、先輩が妹ですか……」

ガヴリール「そうだ、良いこと思いつきました」

ガヴリール「今日一日、それで過ごしてみませんか?」

ガヴリール「私が妹で、タプリスがお姉ちゃん」

タプリス「わ、わたしが先輩のお姉ちゃんですか?」

ガヴリール「そうですよ、タプリスお姉ちゃんっ」

タプリス「かはっ!」

タプリス(うっ、破壊力抜群です……かわいすぎます)


ガヴリール「ほら、お姉ちゃんも私のこと呼んでみて」

タプリス「えっと、なんという風に……」

ガヴリール「それは、ガヴリールって」

タプリス「そ、そんな無理です、絶対無理です! 恐れ多いです!」

ガヴリール「いいじゃないですか。私たち二人しかいないんですし」

33: 2017/04/20(木) 21:49:49.530 ID:qHWXostz0
 
タプリス「それに先輩には、ゼルエルさんがいるじゃないですか」

ガヴリール「確かに、ゼルエル姉さんは天使としても素晴らしい方で」

ガヴリール「尊敬していますし、自慢の姉ですが……」

ガヴリール「実はあまり、甘えさせてもらったことがないんです」

タプリス「そ、そうだったんですか……」

ガヴリール「その点、タプリスがお姉ちゃんだったら、思いきり甘えることができます」

ガヴリール「ですから、私の長年の夢を叶えてくれませんか?」

タプリス(うぅ、覚悟を決めるしかありませんね……)

ガヴリール「ほら、早く早く」

タプリス「ガ、ガ、ガヴ……」

タプリス「……ガヴリール」カァァ

ガヴリール「はいっ、お姉ちゃんっ」

 ぎゅぅぅ

タプリス(はぅっ、抱きつかれちゃってますぅぅ……)

タプリス(せ、先輩がまさか、こんなに積極的な方だったなんて……)

タプリス(いえ、嬉しいですが、氏ぬほど嬉しいですが!)


タプリス「で、でもここまでで勘弁してください、お願いします……」

ガヴリール「そうですか……残念です」

ガヴリール「では、また今度ですね」ニコッ

タプリス「あはは……」

34: 2017/04/20(木) 21:52:39.354 ID:qHWXostz0
 
-客室-


タプリス「わっ、すごい豪華な和室ですね……」

ガヴリール「本当ですね。あ、見てください、タプリス。窓からの景色が」

タプリス「わぁ……湖に太陽の光が反射して、きらきらしてます」

ガヴリール「ええ、すごく綺麗……」

タプリス(あ、先輩の瞳も光を反射してて、とても綺麗……)

ガヴリール「タプリス? 私の顔に何かついていますか?」

タプリス「あ、いえ、その……先輩の目もきらきらしてて、綺麗だなぁって」

ガヴリール「そうですか、では……」スッ

タプリス「えっ」

ガヴリール「ずっと……見ていてくれても、いいんですよ?」

タプリス「それは……その……は、恥ずかしいといいますか……」

ガヴリール「その間、私もタプリスのこと、見てますから」

タプリス「うぅぅ……」カァァ


ガヴリール「ふふっ、かわいい。あ、今、お茶いれますね」

タプリス「あ、わたしがやりますよ!」

ガヴリール「いいんですよ、タプリスは座っていてください」

タプリス「は、はい。えと、ありがとうございます……」

35: 2017/04/20(木) 21:56:09.116 ID:qHWXostz0
 
タプリス「はぁ……それにしても和室は落ち着きますね」ズズッ

ガヴリール「そうですね。のんびりするには、とても良い場所です」

タプリス「ずっとこうしていたいです……」

ガヴリール「ええ、わかります……」

タプリス「……あれ、わたしたち、何をしに来たんでしたっけ」

ガヴリール「それは……」


タプリス・ガヴリール「あ」



-大浴場-


タプリス「うわぁ、すごい大きなお風呂。しかも、ほとんど貸し切りですね」

タプリス(それにしても、先輩とお風呂だなんて、ちょっと恥ずかしい……です)

ガヴリール「……」ジトー

タプリス「え、どうしましたか先輩、そんなにわたしの方を見て……」

ガヴリール「知りませんっ」

タプリス「えっ、えっ?」

ガヴリール「ほら、それよりも。せっかくですから、洗ってあげますね」

タプリス「え、先輩!? そ、そんなに引っ張らないでくださいっ」

39: 2017/04/20(木) 21:58:58.299 ID:qHWXostz0
 
ガヴリール「お客様、おかゆいところはございませんか?」

タプリス「あ、はぁい、気持ちいいです……」

ガヴリール「よかった。こうやって一度、髪を洗ってみたかったの」

タプリス「あははっ、わかります。あ、終わったら、交代してくださいね」

タプリス「わたしも先輩の髪、洗ってみたいです」

ガヴリール「ふふっ、ありがとう、タプリス」



タプリス「はぁ……露天風呂、最高ですねぇ……」

ガヴリール「なんといいますか、顔だけが外気に触れる感覚って」

ガヴリール「とても新鮮ですよね」

タプリス「あ、わかります、それ……露天風呂ならでは、ですよね」

ガヴリール「うーん、それにしても……」ズイッ

タプリス「せ、先輩?」

ガヴリール「ふふっ、タプリスの肌、もちもちしてますね」プニプニ

タプリス「ひゃぅ! も、もう先輩ったら……二の腕、突っつかないでくださいぃ」

タプリス「少し気にしてるんですから……」

ガヴリール「そんな、気にすることないと思いますよ」

タプリス「では、わたしも……反撃ですっ」プニプニ

ガヴリール「あははっ、タプリス。くすぐったいったら」プニプニ

タプリス「先輩だって……あははっ、くすぐったいですぅ……」

42: 2017/04/20(木) 22:01:46.763 ID:qHWXostz0
 
-脱衣所-


タプリス「はぁはぁ……ちょっとのぼせちゃいましたね」

ガヴリール「……タプリスがあんなに、はしゃいじゃうから」

タプリス「えぇー、先輩が最初に突っついてきたんですよっ」

ガヴリール「でも、その後はタプリスの方が多かったですっ」

タプリス「……ぷふっ」

ガヴリール「あはははっ」


ガヴリール「あぁ、笑ったらまた、体が熱くなってきましたね」

ガヴリール「少しだけ涼みに、外に出ませんか?」

タプリス「あ、いいですね、行きたいです!」



-湖畔-


タプリス「風がほんのり吹いていて、涼しくて気持ちいいです……」

ガヴリール「ほんとですね、体を冷ますにはちょうどいいかな」

タプリス「逆に寒くないですか? 大丈夫です?」

ガヴリール「ええ、大丈夫。ありがとうね」

タプリス「あ、向こうに手すりがありますね。湖の近くまで行けるみたいです」

ガヴリール「では、行ってみましょうか」

43: 2017/04/20(木) 22:04:11.189 ID:qHWXostz0
 
タプリス「ちょうど夕焼け時ですね、綺麗……」

ガヴリール「本当ね……夕日が湖面に沈んでいく……」

タプリス「ずっと見ていたく、なっちゃいます」

ガヴリール「ええ……でも、もし夕日をずっと見ることができたとしたら」

ガヴリール「こんな感動は生まれないと思わない?」

タプリス「えっ」

ガヴリール「夕日は沈んで、やがて見えなくなってしまうからこそ」

ガヴリール「こんなにも貴重で、綺麗だと、感じるのだと思うの」

タプリス「そうですね……こんなに楽しい時間も終わりがくるからこそ」

タプリス「本当に素敵な思い出になるんですね」

ガヴリール「うん……」

 ぎゅっ

タプリス「あっ……」

ガヴリール「……私もそう思う」

タプリス「……」

ガヴリール「タプリス」

タプリス「なんですか?」

ガヴリール「私をここに連れてきてくれて、ありがとうね」

タプリス「……わたしの方こそ、一緒にここまで来ていただいて」

タプリス「ありがとうございます、先輩」

45: 2017/04/20(木) 22:07:37.439 ID:qHWXostz0
 
-客室-


タプリス「夜ごはん、ほんとにおいしかったですね」

ガヴリール「ええ、あそこまで手が込んでるとは思いませんでした」

タプリス「あ、部屋にお布団が敷かれてるみたい……ですけど」

ガヴリール「あら?」

タプリス「一組、しかありませんね。仲居さん間違えたのでしょうか」

ガヴリール「でも枕は二つありますよ」

タプリス「わ、わたし、聞いてきます」

ガヴリール「あ、待ってください」

タプリス「どうしました?」

ガヴリール「仲居さんもお忙しいでしょうし、私はこのままでも構いませんよ」

47: 2017/04/20(木) 22:13:04.776 ID:qHWXostz0
 
タプリス「え、えっと……それってつまり……」

タプリス「わたしと先輩が、一緒のお布団で寝るってことです……よね?」

タプリス「わ、わたし……そんなに寝相に自信はありませんし、その……」

タプリス「先輩にご迷惑をかけちゃうかもしれません」

ガヴリール「タプリスが嫌でしたら、とめませんが……」

タプリス「あぅぅ……」カァァ

ガヴリール「どうします?」

タプリス「で、でしたら……、一緒で、よ、よろしくお願いします……」

ガヴリール「ふふっ、わかりました」


ガヴリール「でも、さすがにまだ寝ないですよね?」

タプリス「えっ、あ、はい」

ガヴリール「タプリスとお話したいことが山ほどあるんですから」

タプリス「えへへ、わたしもですっ」

48: 2017/04/20(木) 22:16:45.138 ID:qHWXostz0
 
-深夜 客室-


タプリス(そろそろ、かな……)

タプリス「せ、先輩。実はですね……」

ガヴリール「どうしました?」

タプリス「この辺りって、街の明かりが少ないので、星がよく見えるんです」

タプリス「もし良かったら、屋上へ行って見てみませんか?」

ガヴリール「それは良いですね、行きましょうか」



-屋上-


ガヴリール「すごい! タプリス、見てっ! 満天の星空!」

タプリス「せ、先輩。足元は暗いですから、気をつけてくださいね」

ガヴリール「ふふっ、はーい。でも、本当に綺麗ね……」

ガヴリール「タプリスが提案してくれて、本当によかった」

ガヴリール「こんなにも素敵な眺めを、見ることができたんだもの」

タプリス「気に入ってもらえて、よかったです、先輩」

ガヴリール「えっ……タプリス?」

タプリス「今、0時になりました」


タプリス「天真先輩、誕生日おめでとうございます」
 

53: 2017/04/20(木) 22:54:34.165 ID:SSsKJ0E00
 
ガヴリール「誕生日って……あっ……」

タプリス「ごめんなさい、先輩。誕生日に何をあげたら喜んでもらえるか」

タプリス「これでもずっとずっと考えてたんですけど」

タプリス「全然思いつかなくて……」

タプリス「だからこれが……この星空が、わたしからのプレゼントです」

タプリス「受け取って、もらえませんか?」


ガヴリール「タプリス……」

タプリス「せ、先輩? ど、どうして泣いて……」

ガヴリール「……嬉しい」

タプリス「えっ」

 ぎゅぅ

ガヴリール「嬉しい、本当に嬉しい……こんなに……」

ガヴリール「こんなに、素敵なプレゼントは生まれて初めて」


タプリス「……そんな、大げさですよ」

ガヴリール「だって、タプリスが私のために、ここまで考えてくれたんだもの」

ガヴリール「嬉しくないはずが、ないじゃない……」

タプリス「先輩……」

ガヴリール「ねぇ、タプリス。何かしてほしいことはある?」

タプリス「えっ」

ガヴリール「タプリスに何か、してあげたいの」

タプリス「そうですね、でしたら……」

タプリス「ベンチに座って、二人でゆっくり星を眺めませんか?」

55: 2017/04/20(木) 22:57:38.256 ID:SSsKJ0E00
 
ガヴリール「なんだか、こんなにも沢山の星に囲まれていると」

ガヴリール「私たちの方が、星々に見つめられているみたい」

タプリス「そ、それは……ちょっと恥ずかしいです」

ガヴリール「大丈夫、私がついているから」

タプリス「えへへ……はい」


タプリス「誰よりも早く……おめでとうって言えてよかった」

タプリス「先輩が生まれてきてくれて……」

タプリス「わたしと出会ってくれて、本当によかった」

ガヴリール「……」

 ぎゅぅ

タプリス「先輩?」

ガヴリール「……私も、あなたと出会えて、本当に良かった」


ガヴリール「ねぇ、タプリス」

タプリス「なんですか?」

ガヴリール「今夜は月は出ていないけれど」

ガヴリール「星がとても……綺麗ですね」

タプリス「えっ……あ、はい、そうですね」

ガヴリール「……ふふっ」

タプリス「どうしました?」

ガヴリール「……なんでもありませんよ」

ガヴリール「ありがとうね、タプリス。また二人で一緒に、来ましょうね」

タプリス「……はい、先輩」

56: 2017/04/20(木) 23:00:34.220 ID:SSsKJ0E00
 
-帰りの電車の中-


ガヴリール「すぅ……すぅ……」

タプリス(先輩、寝ちゃってます……かわいいです)

タプリス(いろいろドタバタしましたが、成功、でいいですよね)

タプリス(ああでも、先輩を元に戻す必要は、本当にあるのでしょうか)

タプリス(このままの先輩の方が、良いのではないでしょうか)

タプリス(……)


タプリス(……いえ、やっぱりダメですね)

タプリス(帰ったらみなさんが……待っているんですから)

タプリス(いつもの天真先輩を、待っているんですから)



タプリス(先輩、最高の思い出をありがとうございました)

タプリス(またいつか……お会いしましょう)



 ゴツンッ



おしまい

57: 2017/04/20(木) 23:00:58.755

63: 2017/04/20(木) 23:10:45.554
綺麗な話だなー

64: 2017/04/20(木) 23:11:14.111
乙乙

引用元: ガヴリール「千咲ちゃん、誕生日の天真先輩を殴る」