1: 2017/05/09(火) 21:09:08.657 ID:aBPENDOt0
-サターニャの家-
タプリス「えっ、みんなで野球……ですか?」
サターニャ「ええ。うちの高校の野球部にグラウンドの使用権を賭けて」
サターニャ「勝負を挑まれてね。仕方がないから、受けてやったのよ」
ガヴリール「お前なぁ……アホだろ」
サターニャ「アホって何よ! 挑まれたケンカは買うのが悪魔の流儀なのよ!」
ヴィーネ「たぶん、サターニャが事の発端でしょうね」
ガヴリール「何をどうやったら、そういう流れになるんだよ……」
サターニャ「というわけで、喜びなさい。あんたたちも我が軍門に加えてあげるわ」
ガヴリール「パスに決まってるだろ。野球なんてやってられるか、めんどい」
サターニャ「なっ、なんですって!?」
ラフィエル「まぁまぁ、ガヴちゃん、そう言わずに」
サターニャ「ラフィエル……」
ラフィエル「サターニャさんが、勝負に勝ったら焼肉をおごってくれるみたいですよ」
サターニャ「はぁ!? そんなこと、いつ私がっ!?」
ガヴリール「……仕方がないな、ちょちょいとやってやるか」
ヴィーネ「まぁ、ノリで勝負を受けちゃったサターニャも悪いしね……」
ヴィーネ「こればかりは擁護できないわ」
12: 2017/05/09(火) 21:11:48.342 ID:aBPENDOt0
タプリス「ちょ、ちょっと待ってください」
サターニャ「どうしたのよ」
タプリス「本で読んだことがあるのですが……」
タプリス「野球って九人でやるスポーツですよね?」
サターニャ「ええ、そうね」
タプリス「わたしたち、全員合わせても五人しかいないんですが……」
サターニャ「あ……」
ガヴリール「おいおい、まさかメンバーのこと考えてなかったのか?」
サターニャ「そ、そんなわけないじゃない! ちゃんと考えてるわ」
サターニャ「こうなったら……あんたたち! 一人ずつ、メンバーを集めてきなさい!」
ヴィーネ「うわぁ、人任せ……」
ラフィエル「そうですかそうですかぁ」
サターニャ「まぁタプリスは、下界に来て間もないし」
サターニャ「今回は特別に許してあげる」
タプリス「は、はぁ……ありがとうございます」
サターニャ「決戦は、金曜日よ!」
サターニャ「それまでに各自メンバー集めと、ルールの確認をしておくこと!」
サターニャ「いい? この勝負、絶対勝つわよ!!」
ラフィエル「うふふ、なんだか面白くなってきました」
14: 2017/05/09(火) 21:15:23.593 ID:aBPENDOt0
-試合当日 舞天高校グラウンド-
サターニャ「ふふっ、ついにこの時がやってきたわ」
サターニャ「あんたたちも、ちゃんとメンバーを連れてきたみたいだし」
サターニャ「この勝負、もう勝ったも同然ね」
委員長「あの……胡桃沢さん。私、野球のルールわからないんだけど……」
サターニャ「大丈夫、打って取るだけよ。簡単でしょ」
委員長「そんな大雑把な……」
ヴィーネ「マ、マスターさん。こんなことに巻き込んじゃって、ごめんなさいね」
マスター「それは良いんですが……」
マスター「私が高校生に混じって野球なんかして、いいんですかねぇ……」
ラフィエル「……」ニコニコ
マルティエル「お嬢様のためなら、この命、すべて捧げる所存です」
ラフィエル「くれぐれも、白羽家に泥を塗るような真似はしないでくださいね」ニコッ
マルティエル「……」ビクン
ゼルエル「嬉しいぞ、ガヴリール。お前が私を頼ってくれるなんてな」
ガヴリール「……やきに、じゃなくて、一度こうやって、姉さんと遊んでみたくてさ」
ゼルエル「ふふっ、そうか」
ゼルエル「だが、これも勝負であるならば、全力で相手を叩き潰すまでだ」ニコッ
サターニャ「さぁ、サタニキアデビルズの諸君! いくわよっ!」
ガヴリール「なんでお前の名前がチーム名になってんだよ」
15: 2017/05/09(火) 21:17:50.250 ID:aBPENDOt0
-打順-
1 一 ヴィーネ
2 遊 委員長
3 投 サターニャ
4 中 ゼルエル
5 ニ マルティエル
6 左 タプリス
7 三 ラフィエル
8 右 ガヴリール
9 捕 マスター
野球部部長「俺たちが表の攻撃で、胡桃沢たちが裏だ。それでいいな?」
サターニャ「ええ、その方が早く試合が終わるからね」
野球部部長「……言っとくけど、手加減はしないからな」
サターニャ「ふんっ、圧倒的な実力の差を見せつけてやるわ!」
――
ヴィーネ「ところで、サターニャ。あなたピッチャーなんてできるの」
サターニャ「ふっ、この日のために血の滲むような努力を重ね……」
サターニャ「ついに必殺の魔球を会得したのよ!」
サターニャ「その名も……スーパーウルトラマグナムボール三号!」
サターニャ「これで相手も木っ端微塵だわ」
ヴィーネ「……お願いだから、普通に投げてね」
タプリス「は、始まるみたいです、並びましょう」
みんな「よろしくお願いします!!」
審判「プレイボール!」
16: 2017/05/09(火) 21:20:55.188 ID:aBPENDOt0
<一回表 野0 - 0サ ノーアウト 走者なし>
一番「……」
サターニャ「あんたなんか、魔球を使うまでもないわ」
サターニャ「デビル……ボール!」
ヒュン パシンッ
審判「ストライクッ」
一番「なっ!? は、速い!?」
マスター「ぐっ……そして、なんて重いんですかねぇ」
ヴィーネ「サターニャ、やるじゃない!」
サターニャ「ふふっ、当然! 私を誰だと思ってるの」
サターニャ「このまま、全員抑えてやるわ!」
――
審判「スリーアウト、チェンジ!」
タプリス「胡桃沢先輩、すごいです! ヒットを一本も許さないなんて!」
サターニャ「まぁ、こんなもんね」
ヴィーネ「つ、次は、私が打つのね……」
サターニャ「とりあえず当てることだけ考えなさい、ヴィネット!」
ヴィーネ「わ、わかったわ」
17: 2017/05/09(火) 21:22:58.243 ID:aBPENDOt0
<一回裏 野0 - 0サ ノーアウト 走者なし>
投手「女だからって……容赦はしないぞ!」
ブンッ スカッ
ヴィーネ「あぅっ……」
審判「ストライクッ、バッターアウト!」
ブンッ スカッ
委員長「ひぃっ……」
審判「ストライクッ、バッターアウト!」
<一回裏 野0 - 0サ 2アウト 走者なし>
サターニャ「あんたたち、情けないわねぇ……」
ヴィーネ「面目ない……」
委員長「ごめんなさい……」
サターニャ「いいわ、始めから期待していないし」
サターニャ「私に全て任せなさい!」
カキーンッ
投手「くっ、打たれた!」
サターニャ「ふっ、そんな球、止まって見えるわ!」
タプリス「すごいです、二塁打! 投げてよし打ってよし、ですね!」
ヴィーネ「こういう時だけは、頼りになるわね……」
サターニャ「なーはっはっはっ! もっと褒め称えなさい!」
19: 2017/05/09(火) 21:25:39.650 ID:aBPENDOt0
<一回裏 野0 - 0サ 2アウト 2塁>
ゼルエル「この棒で、向かってくる球を打てばいいんだな?」
タプリス「はい、そうです! がんばってください、ゼルエルさん!」
ゼルエル「ふむ、なんとも慣れないな……素手じゃダメなのか?」
タプリス「す、素手!?」
ガヴリール「姉さん頼むから、バットを使ってくれ……」
投手「野球の試合なのに、着物だって? バカにして!」
ヒュンッ パシンッ
審判「ストライクッ」
投手「くくっ、全く手が出ないようだな。このまま終わらせてやる……ッ」
ゼルエル「見えたぞ、縫い目が」キッ
投手「なっ!? でたらめを!」
ヒュンッ
ゼルエル「そぉいっ!!」
ブンッッッ ズバシュゥゥゥゥ
投手「え?」
タプリス「ボ、ボールが、校舎を飛び越えて……いきます」
ガヴリール「おいおい……今、打球音が全くしなかったぞ……」
ラフィエル「風圧だけでホームランなんて、さすがゼルエルさんですね……」
ゼルエル「ふっ、ぬるいな」
20: 2017/05/09(火) 21:28:05.927 ID:aBPENDOt0
タプリス「これで、わたしたちが2点先制ですね!」
サターニャ「き、気に入らないけど、姉天使の実力だけは認めてあげるわ」
ゼルエル「ふふっ、君はもう少し、年上を敬うことを知った方がいいな」ニコッ
サターニャ「ひっ、ごめんなさいごめんなさいっ!」
<一回裏 野0 - 2サ 2アウト 走者なし>
タプリス「がんばってください、マルティエルさん!」
マルティエル「あなたは……タプリスさんですね」
マルティエル「お嬢様からお話は聞いています、とても良い後輩だと」
タプリス「うぅ……恐縮です」
マルティエル「ですが私は、あなたに一つだけ言いたいことがあります」
マルティエル「あなたは……自分にもっと正直に――」
ゴツンッ
マルティエル「エンッ!!」
ラフィエル「私の大切な後輩に、変なことを吹き込むのはやめてくださいね」ギロッ
マルティエル「あっ、あっ、あっ」ゾクゾク
タプリス「……」
ガヴリール「まあがんばれー、主砲マルちゃん」
マスター「よ、よく知ってるねぇ、天真くん」
21: 2017/05/09(火) 21:30:29.387 ID:aBPENDOt0
投手「さっきの着物の人には驚かされたが……」
投手「あんな奇跡は、もう二度と起きない!」
ヒュン パシンッ
審判「ストライクッ」
マルティエル「……この弾道は、お嬢様の太もも」
ヒュン パシンッ
審判「ストライクッ」
マルティエル「……この弾道は、お嬢様の背中」
投手「あの人、さっきから何言って……まあいい」
投手「これで終わりだ!」
マルティエル「見えたっ! これはお嬢様の――」
ビュゥゥゥゥ
タプリス「きゃっ、強風が……」
マルティエル「フローラルな香りっ!!!」
ブンッ スカッ
審判「ストライクッ、バッターアウト!」
審判「3アウト、チェンジ!」
マルティエル「……」スタスタスタ
ラフィエル「……」ニコニコ
ゴツンッ
22: 2017/05/09(火) 21:33:15.159 ID:aBPENDOt0
タプリス(こうして2点リードで迎えたニ回表でしたが)
タプリス(胡桃沢先輩の好投により、またしても無失点に抑えることができました)
タプリス(しかし……)
<ニ回裏 野0 - 2サ ノーアウト 走者なし>
ブンッ スカッ
ラフィエル「あらあら……」
審判「ストライクッ、バッターアウト!」
ブンッ スカッ
タプリス「こんなの無理ですぅ……」
審判「ストライクッ、バッターアウト!」
ガヴリール「打てないなら、当たりにいけ! 当たりに!」
タプリス「無茶苦茶言わないでくださいぃ……」
ガヴリール「……仕方ないな、私に任せとけ」
タプリス「て、天真先輩っ……」キラキラッ
ガヴリール「これは、ラフィエルのぶんッ!」
ブンッ スカッ
ガヴリール「これは、タプリスのぶんッ!」
ブンッ スカッ
ガヴリール「そしてこれが……私の怒りだぁぁぁっ!!」
ブンッ スカッ
審判「ストライクッ、バッターアウト!」
審判「3アウト、チェンジ!」
23: 2017/05/09(火) 21:35:28.001 ID:aBPENDOt0
ガヴリール「ふぅ……」
タプリス「いかにも、やりきった風ですけど、三振ですからね?」
ガヴリール「おかしいな、この試合のために読んだ漫画の通りに打ったんだが……」
タプリス「そんなので打てたら、苦労しません……」
――
タプリス(その後も、相変わらずの調子の良さで)
タプリス(野球部打線を抑えていた胡桃沢先輩でしたが……)
タプリス(徐々に相手も、その速球に慣れ始め、少しずつ失点を許してしまいます)
タプリス(それに比べて、こちらの攻撃はというと)
タプリス(胡桃沢先輩とゼルエルさん以外は、ほとんど打てない上に)
タプリス(途中から、ゼルエルさんは敬遠もされてしまって)
タプリス(点が取れない回が続きました)
タプリス(そして、ついには逆転を許してしまい、3対2で迎えた六回の裏)
<六回裏 野3 - 2サ 2アウト 走者なし>
マスター「まずいですねぇ、チーム唯一の男だというのに」
マスター「今まで良いところが全くないですねぇ」
マスター「ああ、でも、意識すると余計に、緊張で震えがとまりません……」
25: 2017/05/09(火) 21:38:10.248 ID:aBPENDOt0
タプリス「マスターさん!」
マスター「千咲くん? どうしましたか?」
タプリス「これ、天真先輩から。体が温まって、おいしいらしいです」
マスター「これは……飲み物かい?」
タプリス「ええ、コンソメスープらしいですけど」
マスター「て、天真くん、私のために……ありがとう、いただくよ」ゴクッ
タプリス「これを飲んで頑張ってくださ――」
マスター「カハッ……オ、オォォォ……」
タプリス「えっ? マ、マスターさん?」
ムキッ ムキムキムキッ
ビリィッ ビリビリビリッ
タプリス「ひっ、ひぃっ! マ、マスターさんの上半身がっ!」
マスター「フゥ……フゥ……デスネェ」
投手「ちょっと! 今までの人と明らかに体積が違うでしょ!」
審判「君たち、ど、どうなんだね!?」
ガヴリール「いいすよ、なんなら調べてくれても」
ガヴリール「ただし、証拠は絶対に出ないと思うけどね」ニヤッ
26: 2017/05/09(火) 21:40:28.583 ID:aBPENDOt0
マスター「……クワッ!」ギロッ
タプリス「ひえっ! て、天真先輩、このスープは……」
ガヴリール「ああ、これもある漫画を参考に作った、一種の栄養剤のようなものだ」
ガヴリール「一時的に身体能力を著しく向上させ」
ガヴリール「しかも、その成分が一切、体に残らない!」
ガヴリール「まさに私の、最高傑作!」
タプリス「その熱意を別のことに活かしましょうよ……」
審判「試合再開!」
投手「くそっ、あんなのありかよ……」
投手「だが、体が大きくなったくらいで……」
投手「俺の球を打てると……思うなよ!」
ヒュンッ
マスター「……」ニヤッ
ブンッッ
ゴ シ カ ァ ン
投手「なっ!?」
タプリス「す、すごい! また校舎越えです!」
サターニャ「これで同点ね!」
ラフィエル「代償は大きかったですが……」
マスター「ヒュゥ……ヒュゥ……」タタタッ
27: 2017/05/09(火) 21:42:58.408 ID:aBPENDOt0
<六回裏 野3 - 3サ 2アウト 走者なし>
ヴィーネ「うぅ……あんなの見せられたら、打ちづらいじゃない」
ガヴリール「流れに乗るんだ、ヴィーネ! がんばれ!」
ラフィエル「ヴィーネさん、ヴィーネさん」コソコソ
ヴィーネ「ラフィ? どうしたの?」
ラフィエル「ガヴちゃんがさっき言ってたんですが……」
ヴィーネ「ガヴが? な、なにを……?」
ラフィエル「この回にもし、逆転することができたら……」
ラフィエル「嬉しすぎて、その人にキスしちゃう、って言ってました」
――
ヴィーネ「オラァッ!!」
ブンッ カキーンッ
投手「……」パクパク
タプリス「やりました、月乃瀬先輩! ホームランです!」
ガヴリール「やったな、ヴィーネ! やきに……逆転だぞ!」
ヴィーネ「ガ、ガヴ……」カァァ
ガヴリール「どうした? ヴィーネ」
ヴィーネ「……んっ」
ガヴリール「ん?」
ヴィーネ「……んっ」ズイッ
28: 2017/05/09(火) 21:45:40.306 ID:aBPENDOt0
タプリス(その後、白羽先輩は月乃瀬先輩から、とてつもない罵倒を受け)
タプリス(委員長さんは普通に三振してしまい、マスターさんは次第にしぼんで)
タプリス(3対4と、わたしたちが逆転した六回の裏は終わりました)
タプリス(しかし、次の七回の表……)
タプリス(わたしたちは、最大のピンチを迎えたのです)
<七回表 野3 - 4サ 1アウト 満塁>
サターニャ「はぁ……はぁ……」
四番「……」グッ
ヴィーネ「サターニャ、肩で息をしてるわ……」
ラフィエル「もう限界かもしれませんね」
サターニャ「まだよ! まだ、投げられる!」
サターニャ「ふふっ、ピンチは最大のチャンスというじゃない!」
サターニャ「ここできっちり抑えるためにも、あれを使うわ!」
ヴィーネ「まさか、魔球? む、無理しちゃ……」
サターニャ「いくわよ! スーパーウルトラマグナムボール三号!」
サターニャ「とぉりゃああああっ!!」
ぎゅぃぃぃん パシィィンッ
マスター「ぐはっ」
四番「なっ!? 見えない、だと!?」
審判「ス、ストライクッ」
29: 2017/05/09(火) 21:48:06.818 ID:aBPENDOt0
ヴィーネ「す、すごいわ、サターニャ! そんな必殺技があったなんて!」
サターニャ「ふっふっふっ……」
ガクンッ
サターニャ「もう限界みたいね……」フラッ
ヴィーネ「って、おぃぃぃぃっ!」
ラフィエル「タ、タイムです!」
――
ヴィーネ「一球で肩壊す魔球投げてどうするのよ! バカ!」
ガヴリール「せめて、四番を討ち取ってから壊れろよ」
タプリス「で、でも、どうするんですか、胡桃沢先輩はもう……」
サターニャ「私が投げるわ、まだ……」
ラフィエル「無茶です、サターニャさん!」
ヴィーネ「そうよ。そんな肩じゃ、たとえ球が届いても……」
ガヴリール「ああ、バカスカ打たれるだろうな」
サターニャ「くっ」
ガヴリール「ピッチャー交代だ」
タプリス「そ、そうだ! ゼルエルさんにお願いすれば……」
ゼルエル「ついに私の出番か? ガヴリール!」ウキウキ
ガヴリール「姉さんはダメだ、氏人が出る」
30: 2017/05/09(火) 21:50:35.985 ID:aBPENDOt0
ゼルエル「し、氏人……」ズーン
タプリス「あはは……ど、どんまいです」
ヴィーネ「じゃあ、誰と交代するのよ、ガヴ」
ガヴリール「それは……こいつだ!」
ウィーン カションカション
ロボピッチャ「ピピッ、ガガガッ」
タプリス「ロボだーーー!!」
ガヴリール「これは天界と共同チームを組んで、この日のために特別に開発した」
ガヴリール「ロボピッチャニ号くんだ!!」
ラフィエル「あらあら、うふふ」
タプリス「い、一号がどうなったのか、気になります……」
四番「おい、審判! あれどう見てもロボじゃないか!」
ロボピッチャ「ロボチガウロボチガウロボチガウ」
審判「君たち! ど、どうなってるんですか!?」
ヴィーネ「そうよ。こんなロボ、試合に出られるはずないでしょ!」
ガヴリール「それがちゃんと、試合の選手登録をしているんだな」
ヴィーネ「な、なんですって!?」
審判「し、試合続行!」
四番「おいおい、嘘だろ……」
31: 2017/05/09(火) 21:53:06.326 ID:aBPENDOt0
ウィーン ブッピガンッ
ロボピッチャ「ガガガガガッ」ブンッ
ビュンッ スパァァン
マスター「ごはっ……」
審判「ス、ストライクッ!」
四番「な、なんだよ、今の……」
四番「150km/h以上、出てるんじゃないか?」
ガヴリール「すごいぞ、二号くん! 絶好調じゃないか!」
ロボピッチャ「ピー、ヒョロロロロ」
ロボピッチャ「ガガガガガッ」ブンッ
ビュンッ スパァァン
審判「ストライクッ! バッターアウト!」
四番「くそっ、卑怯だぞ! あんなん打てるはずねーよ!」
ガヴリール「あはははっ、愉快愉快!」
ガヴリール「このまま、1点リードを保って勝利だな!」
ヴィーネ「最初から、この子だけで良かったんじゃないかしら……」
32: 2017/05/09(火) 21:55:30.919 ID:aBPENDOt0
タプリス「すごいです、先輩! あんな奥の手があったなんて!」
ガヴリール「だから、私を信じろって言っただろ?」
タプリス「はい! そうだ、あの二号くんには、必殺技とかないんですか?」
ガヴリール「もちろんあるぞ、見せてやろう」
タプリス「わぁい!」
ガヴリール「それ、ポチッとな」
ウィーン カションカションカション
ロボピッチャ「ピガーッ、ピガーッ」
ボウッ ゴゴゴゴゴッ
タプリス「すごい! 二号くんの足元から、炎が!」
ヴィーネ「う、うそ!? 飛んでるの!?」
ズドドドドッ
タプリス「あ、あれ、どんどん、空へ……」
ズドドドドドドッ キラーンッ
ガヴリール「すごいだろ! 単独で成層圏を突破できるんだ!」
タプリス「……」パクパク
ヴィーネ「そんなことして、試合の続きはどうするのよ!」
ガヴリール「あ」
34: 2017/05/09(火) 21:58:05.710 ID:aBPENDOt0
ガヴリール「……タプリス、次のピッチャーはお前に任せた」
タプリス「ええっ!? 無理です! 絶対、無理です!」
ヴィーネ「そうね、タプちゃんには悪いけど……」
ヴィーネ「残りのメンバーの中では、あまり向いていない方かもしれないわね」
タプリス「そ、そうですよ!」
ガヴリール「お前が、必殺技が見たいなんて言わなければ」
ガヴリール「こんなことには、ならなかったんだ」
タプリス「うぅ……」
ヴィーネ「それはどう考えてもガヴの落ち度でしょ」
ガヴリール「それにな、私はお前が一番適任だと思ってる」
ヴィーネ「また、調子の良いことを……」
ガヴリール「違う違う。こういうのはな、ほどよく普通に投げられた方が」
ガヴリール「相手にとっては、逆に打ちやすいんだ」
ガヴリール「それに比べて、お前のひょろひょろ球の方が」
ガヴリール「まだ相手の調子を乱すことができる分、マシだと思う」
タプリス「そ、そうですかね」
ゼルエル「大丈夫だ、タプリス。たとえ打たれても、私たちがいる」
ゼルエル「お前は、相手に打たせてやるくらいの気持ちで、投げるといい」
タプリス「ゼルエルさん……」
35: 2017/05/09(火) 22:00:37.402 ID:aBPENDOt0
タプリス「わ、わかりました。どれだけできるかわかりませんが」
タプリス「全力で頑張ってみようと思います!」
ゼルエル「ああ、いい返事だ。お前は本当に、良い子だな!」
タプリス「えっと、そ、そんなことは……」
ゼルエル「いやいや、うちの妹たちに加えたいくらいだよ」
タプリス「きょ、恐縮です……」
タプリス(そしたら、先輩とわたしは家族に……な、なんてっ!)
ゼルエル「ふふっ。それでは、頑張っていくぞ」
タプリス「は、はいっ!」
<七回表 野3 - 4サ 2アウト 満塁>
タプリス「それでは、いきます! えーいっ!」
ひょろ~ ポスッ
審判「ボール!」
五番「何だ、この球……バカにしてんのか」
タプリス「ひぃっ、ごめんなさいごめんなさいっ!」
ひょろ~
五番「そりゃ!」
カキーンッ
36: 2017/05/09(火) 22:02:58.569 ID:aBPENDOt0
ガヴリール「まずい! 肩壊してるサターニャのレフトに!」
サターニャ「くっ!?」
タタタタッ パシッ
ゼルエル「そこは……私の間合いだ」
タプリス「ゼ、ゼルエルさん!?」
ガヴリール「おいおい、俊足ってレベルじゃねーぞ……」
審判「3アウト、チェンジ!」
タプリス「ありがとうございます! ゼルエルさん!」
ゼルエル「良いところに打たせたな、よくやった」ナデナデ
タプリス「えへへ」
ヴィーネ「どこまでが良いところなのか……計り知れないわね」
――
タプリス(こうして満塁の危機を脱した、わたしたちでしたが)
タプリス(やはり打線の方は奮わず、天真先輩の小細工もネタ切れのようで)
タプリス(点を取ることが、全くできませんでした)
タプリス(逆に守りでは……わたしの悪投が)
タプリス(ゼルエルさんの獅子奮迅の活躍によってカバーされていましたが)
タプリス(どうしても内野のミスは発生してしまい、9回表に2失点)
タプリス(再び、逆転を許してしまいました)
タプリス(それでも最後は、ゼルエルさんが内野まで滑り込んでくるという)
タプリス(超ファインプレーで、9回表は終了)
タプリス(そして、運命の9回裏を迎えたのです)
37: 2017/05/09(火) 22:05:46.232 ID:aBPENDOt0
<九回裏 野5 - 4サ 2アウト 走者なし>
ヴィーネ「ごめんね、みんな……」
委員長「私もごめんなさい……」
サターニャ「想定内よ、あとは私がなんとかする」
ヴィーネ「でも、サターニャ、肩が……」
サターニャ「大丈夫、ラフィエルにテーピングしてもらった」
サターニャ「これで少しは、まともに動くはずよ」
委員長「胡桃沢さん……」
サターニャ「そんな顔しないの、委員長」
サターニャ「あんたがいなかったら、人数不足で開始すらできなかったんだから」
サターニャ「……今日は来てくれてありがとう。助かったわ」
委員長「わ、私も、今日は楽しかった、です」
サターニャ「そう、それじゃあ……」
サターニャ「これから私たちが勝って、もっと楽しくなるわよ!」ニコッ
委員長「……ッ」トゥンク
サターニャ「さぁ、来なさい!」
投手「胡桃沢か、あいつ肩壊してたからな。くくっ、これで最後だ」
ヒュン パシンッ
審判「ストライクッ」
サターニャ(ぐっ、思った以上に、肩の痛みがっ……)
38: 2017/05/09(火) 22:08:02.547 ID:aBPENDOt0
サターニャ「けど……こんな痛みが、なんだってのよ」
投手「ん?」
サターニャ「私たちは負けない……私たちは絶対に勝つ!」
サターニャ「諦めない限り、私たちは負けないんだからっ!!」
投手「そんな根性論で!」
委員長「……胡桃沢さん」グッ
サターニャ「……私はみんなのぉぉぉ!!」
投手「終わりだっ!!」
ヒュンッ
サターニャ「思いを背負ってるんだからぁぁぁっ!!!」
ブンッ カキーンッ
投手「なっ!?」
委員長「やったっ! ヒット!!」
タタタッ ズサァ
サターニャ「ふふっ、どんなもんよ!」
タプリス「胡桃沢先輩、さすがです! この土壇場で二塁打だなんて!」
サターニャ「委員長! ちゃんと目に焼き付けたかしらっ!」
委員長「はい……ぐすっ……はいっ!」
39: 2017/05/09(火) 22:10:29.957 ID:aBPENDOt0
ガヴリール「よし、同点のランナーが出たぞ」
ラフィエル「そして、次は……」
ゼルエル「ああ、私だ」ニコッ
<九回裏 野5 - 4サ 2アウト 二塁>
ゼルエル「……」
投手「ここは……敬遠だな」
捕手「……」コクッ
ガヴリール「ダメだ、ここで姉さんが敬遠されたら、次が……」
ラフィエル「そうですね、本当に役に立たない無能ですから」
マルティエル「あっあっあっ」ビクビクッ
ガヴリール「仕方がない、最後の手段だ」
タプリス「えっ? まだ策があったんですか!?」
ガヴリール「ゼルエル姉さん! もう遠慮はいらない!」
ガヴリール「姉さんのフルパワーを、見せてくれ!」
ガヴリール「みんなのために! 勝利のために!」
ゼルエル「わかったぞ、ガヴリール」
ゼルエル「お前たちの期待に、必ず応えてみせる!」
41: 2017/05/09(火) 22:13:10.929 ID:aBPENDOt0
ラフィエル「まさか、ゼルエルさんは……」
ラフィエル「敬遠球すら風圧で飛ばして、ホームランにするつもりですか!?」
ガヴリール「……もう、それしか方法がない」
タプリス「そ、そんな滅茶苦茶な!」
ゼルエル「ふっ、私が本気を出すのは、何年ぶりだろうな」ギロッ
投手「ひっ!」
ゼルエル「……いくぞ!」
ゼルエル「はぁぁぁぁぁっ!!!」
ゴゴゴゴゴゴゴッ
投手「な、なんだ、地響きっ!?」
ラフィエル「す、すごいです、ゼルエルさんの天使力がっ!」
ラフィエル「どんどん高まっていきます!」
ピシッ ピシピシピシッ
タプリス「じ、地面が、割れて!!」
ガヴリール「なっ!? や、やりすぎだ、姉さん!! 誰か止めろ!!」
ヴィーネ「あんなの止めるなんて、無理に決まってるじゃない!!」
ゼルエル「はぁぁぁぁぁぁっ!! スパァァァキングッ!!!!」
カッ
ガヴリール「うぉっ、まぶしっ!!」
ドゴォォォォォォォォォォンッ
42: 2017/05/09(火) 22:15:29.764 ID:aBPENDOt0
シュゥゥゥゥ
ゼルエル「……」
みんな「」
投手「」
投手「……ハッ……き、気絶してたのか俺」
投手「な、なんなんだよ、あいつら……もう意味わかんねぇよ……」
投手「ん?」
サターニャ「」
投手「……」ズルズル
投手「……タッチ」
ぽふっ
ゼルエル「……くくっ、あははははっ! 力が、力がみなぎってくるぞ!!」
ゼルエル「さあ来い、人間ども! 私の本気を、見せてやるッ!」
審判「……アウト! ゲームセットッ!」
ゼルエル「え?」
43: 2017/05/09(火) 22:18:13.588 ID:aBPENDOt0
舞天高校野球部 対 サタニキアデビルズ
5対4 で 舞天高校野球部 の 勝利!
タプリス(その衝撃の事実を、わたしたちは……)
タプリス(各々が目を覚ましたときに知ったのでした)
タプリス(……ですが、不思議と悔いはありません)
タプリス(だってみなさん、精一杯……、全力を尽くしたんですから!)
ゼルエル「ふぅ、よくわからないうちに負けてしまったが」
ゼルエル「意外と楽しかったな!」
ゼルエル「また野球やろうな、ガヴリール!」
ガヴリール「……もう絶対、姉さんは呼ばない」
おしまい
45: 2017/05/09(火) 22:20:44.368
あの…セクシー要素は?
49: 2017/05/09(火) 22:40:48.041 ID:aBPENDOt0
>>45
マサルさん
マサルさん
46: 2017/05/09(火) 22:25:42.951
ゼルエル姉さんが予想通りの破壊力で面白かった
乙乙ww
乙乙ww
47: 2017/05/09(火) 22:30:12.890
乙勢いワロタ
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