1: 2017/05/23(火) 21:02:35.043 ID:W2Xtt50t0
-放課後 学校の校庭-
タプリス「はぁ……」
タプリス(今日も一日、授業についていくのが大変でした)
タプリス(帰ったら復習しないと……って、明日の予習もですね)
タプリス(下界での生活は、なかなか大変です……)
パサッ
タプリス(ん? 目の前に何か落ちて……)スッ
タプリス(これは、ピンク色のノート? 誰かの落とし物でしょうか)
タプリス(表紙には、YURINOTEって書いてますけど)
ペラペラッ
タプリス(ざっと見た感じ、中のページには……何も書かれていませんね)
タプリス(これじゃあ、誰の持ち物かわかりません)
タプリス(とりあえずは……明日、学校で職員室に届けましょうか)
-その日の夜 タプリスの家-
タプリス「ふぅ……これで、予習も終わりっと」
タプリス「そういえば、今日、拾ったノート」
ペラペラッ
タプリス「あ、やっぱり。表紙の裏に何か書かれてます」
タプリス「なになに、このノートに……」
タプリス「二人の女の子の名前を書くと……百合百合する?」
2: 2017/05/23(火) 21:04:12.931 ID:W2Xtt50t0
タプリス「百合百合って、なんでしょうか……」
スゥゥッ
百合神『それは、女の子同士が、いちゃいちゃラブラブするってことさ』
タプリス「うわあぁぁぁぁっ!! あ、あなた! だ、誰ですか!?」
タプリス「ど、どどどどうして、わたしの部屋に!? それに、あなた浮いて……」
百合神『僕の名前は百合神、そのノートに、とり憑いていた者さ』
タプリス「とり憑いていた……者?」
百合神『そして、そのノートの所有者に君が選ばれたんだ、おめでとう』
タプリス「は、はぁ……わたしが、ですか」
百合神『これから君には、僕の野望のため、いろいろ働いてもらうよ』
タプリス「そ、そんなこと、突然、言われても……」
タプリス「それに野望ってなんですか……?」
百合神『僕の野望はね、この世の中を、百合少女で満たすことさ!』
タプリス「百合……少女?」
百合神『そう、百合少女。女の子同士で仲良くしている少女たちのことだよ』
タプリス「あの……わたし、このノートを拾いたくて拾ったわけじゃなくて……」
タプリス「拒否権って……ないんですかね」
百合神『ないね』
タプリス「うぅ……そ、それで、ノートに名前を書くと百合百合するって」
タプリス「イマイチ、よくわからないんですけど……」
百合神『それじゃあ明日、君の知り合いで試してみようか』
タプリス「試す……?」
百合神『それがたぶん、一番よくわかるんじゃないかな』
3: 2017/05/23(火) 21:05:40.694 ID:W2Xtt50t0
-翌日の朝 住宅街-
タプリス「あの……」
百合神『なんだい』
タプリス「個性的なお姿の百合神さんと一緒に外を歩くと」
タプリス「少しだけ、恥ずかしいです……」
百合神『ああ、それなら平気さ。僕の姿や声は、ノートに触れた者しか認識されない』
タプリス「そ、そうなんですね……」
犬「わんわんっ!」
タプリス「い、犬にすごく吠えられてますけど!」
百合神『こいつはまさか……、そうだ、ちょうどいい』
百合神『僕の手足になる存在も欲しかったからね』
タプリス「えっ、何を言って……」
百合神『そぉい!』
バシッ
犬「……きゃいん!」
タプリス「な、何をしたんですか!?」
犬「……」
百合神『こいつに、僕の使い魔になってもらうのさ』
タプリス「つ、使い魔?」
犬『……』ムクッ
タプリス「あ、起き上がって……」
犬『ふぅ……また、畜生の体かい』
タプリス「犬が喋ったぁぁぁぁっ!?」
4: 2017/05/23(火) 21:07:11.840 ID:W2Xtt50t0
百合神『まぁよろしく頼むよ、犬』
犬『わかったよ、百合神』
タプリス「はぁ……もう何がなんだか……」
百合神『それで、君の知り合いというのはどこだい』
タプリス「えっと……あ、いました!」
ガヴリール「――」
ヴィーネ「――」
百合神『なるほど、二人で登校中って、わけだ』
タプリス「そ、そうですね……」
百合神『じゃあ、そのノートを使ってごらんよ』
タプリス「で、でも……もし本当なら、少し怖いんですが……」
犬『それならまずは軽めに、手を繋ぐ、とかでも良いんじゃないかな』
百合神『ああ、それはいいね』
タプリス「わ、わかりました……書いてみます」
カキカキカキ
タプリス「天真=ガヴリール=ホワイトと、月乃瀬=ヴィネット=エイプリルは」
タプリス「手を繋いで登校する、っと」
タプリス「これで、いいですかね」
百合神『問題ないと思うよ。さて、二人を観察してみようか』
5: 2017/05/23(火) 21:08:46.814 ID:W2Xtt50t0
ガヴリール「……ッ」
ヴィーネ「……ッ」
ガヴリール「ヴィーネ……、えっと、さ」
ヴィーネ「な、なに? ガヴ、どうしたの?」
ガヴリール「これからちょっと、変なこと……言っていいか?」
ヴィーネ「へ、変なことって?」
ガヴリール「別に、嫌だったら、笑ってくれてかまわないんだけど、さ」
ガヴリール「お前と、その……手、繋いでもいいか?」
ヴィーネ「ガヴと……手を?」
ガヴリール「……ダメ、か?」
ヴィーネ「う、ううん! 別にその……、嫌じゃ、ないから」
ガヴリール「そ、そうか……じゃあ、繋ぐぞ?」
ヴィーネ「よ、よろしく、お願いします……」
ぎゅっ
ガヴリール「……」カァァ
ヴィーネ「……」カァァ
――
タプリス「……」パクパク
百合神『どうだい、ノートの力は本物だろう?』
タプリス「はい……なんだかすごく、甘酸っぱいものを見ることができました……」
タプリス「こちらまで、顔が赤くなってしまいます……」
犬『それは君にも、百合を愛する素質があるってことだね』
6: 2017/05/23(火) 21:10:10.906 ID:W2Xtt50t0
百合神『とは言っても、実はあまり、このノートのことが好きじゃなくてね』
タプリス「え、そうなんですか?」
百合神『なんでも思う通りの、百合が叶ってしまうっていうのも』
百合神『面白くないじゃないか』
タプリス「は、はぁ……」
犬『店に売ってる野菜よりも、自分で苦労して作った野菜の方が』
犬『美味しく感じるのと同じだね』
百合神『もちろん、お店のだって美味しいとは思うけど、ね』
タプリス「そ、そういうものなんですかね」
百合神『というわけで、これからは君が、僕の手となり足となって』
百合神『迷える百合少女を結ばせる、手伝いをしてもらうから』ニコッ
犬『今から楽しみだね』ニコッ
タプリス「はぁ……大変なことに、巻き込まれてしまいました」
-数日後 公園-
百合神『どこかに百合少女が落ちてないかなぁ』
タプリス「人を物のように、言わないでください……」
百合神『君の知り合いに、まだ女の子と付き合っていない女の子は、いないのかい?』
タプリス「いやいやいや……」
タプリス「普通に相手を女の子にしないでください……」
サターニャ「ちょっと! あんたまた、私のメロンパン、奪わせたでしょ!」
ラフィエル「あらあら、一体何のことでしょう?」ニコッ
7: 2017/05/23(火) 21:11:43.374 ID:W2Xtt50t0
タプリス「あれは……白羽先輩に、胡桃沢先輩ですね」
百合神『知り合いかい?』
タプリス「あ、はい。学校の先輩です」
百合神『ふーん』
サターニャ「どうしてこう、いつもいつも、私の邪魔ばっかりして!」
ラフィエル「邪魔なんてとんでもない。私はサターニャさんのためを思って……」
サターニャ「……それ、絶対ウソでしょ」
ラフィエル「うふふふ……」
百合神『……決めた』
タプリス「え?」
百合神『あの子たちにしよう』
タプリス「ま、まさか、あのお二人を、百合百合に?」
百合神『ああ』
タプリス「む、無理ですよ、それは……だって、あのお二人は……」
百合神『あの銀髪の子が、赤髪の子をよく弄っちゃってるから?』
タプリス「えっ、ど、どうしてそれを!?」
百合神『そんなの、見たらすぐにわかるさ。それに……』
百合神『あれは決して、嫌っているから、とかではなくて、むしろ……』
百合神『少なからず好意を持っている、と僕は思う』
犬『好きな子はついつい、いじめたくなっちゃう、あれだね』
9: 2017/05/23(火) 21:13:10.718 ID:W2Xtt50t0
タプリス「そ、それは違うような……」
百合神『いや間違いないね、あとはそれをどうやって』
百合神『赤髪の子に伝えていくか、だけど』
百合神『それには少し、情報を集めないといけないね』
犬『百合神、ノートは使わないのかい?』
百合神『もちろんさ。さぁ、君にも少し働いてもらうよ』
タプリス「は、はぁ……わかりました」
-数週間後 タプリスの家-
百合神『基本的な情報は揃ったかな』
タプリス「仕方がないとはいえ、すごい罪悪感が……」
百合神『何を言う、二人の将来のためだよ?』
タプリス「本当にそうですかね……」
犬『百合神、ちょっとおかしなことが』
百合神『なんだい、おかしなことって』
犬『最近、街中でイチャイチャする女の子たちが急増しているみたいだ』
百合神『急増、ね。それは……おかしいな』
タプリス「え、別にあなたたちにとっては、良いことなのでは?」
百合神『それはそうだけど、短期間で急増するなんて』
百合神『不自然すぎるじゃないか』
タプリス「は、はぁ……」
タプリス(あなたたちの存在の方が、よほど不自然な気がしますけど……)
百合神『とりあえず、頭の片隅には置いておくよ』
11: 2017/05/23(火) 21:14:40.849 ID:W2Xtt50t0
-街中-
百合神『ついに、作戦を決行する時がきた』
犬『今日は二人で、食べ歩きのデートみたいだしね』
タプリス「デートって……ただ、白羽先輩が尾行してるだけな気がしますが……」
タプリス「とりあえず、お二人にバレませんように……」
百合神『お、二人が来たみたいだよ』
サターニャ「ほら、ラフィエル、あーん」
ラフィエル「ふふっ、ありがとうございます」パクッ
タプリス「な、ななななっ……」
百合神『これは……』
犬『いったい……』
サターニャ「おいしいかしら? ほら、口にクリームついてるわよ」
ラフィエル「んっ、サターニャさんに取って欲しいです」
サターニャ「仕方ないわね……」スッ
ラフィエル「うふふ、私のクリーム、どうするつもりですか?」
サターニャ「食べちゃうに決まってるでしょ?」パクッ
タプリス「……既に、お二人に何かしているんですか?」
百合神『いや、僕たちはまだ、何もしていない』
百合神『君こそ、ノートに何か書いたりしたのかい?』
タプリス「そ、そんなことしてませんよ!」
犬『じゃあ、いったいなぜ……』
13: 2017/05/23(火) 21:17:10.518 ID:W2Xtt50t0
グラサン「……」ニヤッ
百合神『あの、スキンヘッドのサングラスの男』
タプリス「あ、あれは……、わたしの学校の数学の先生です」
犬『同じ匂いを感じる』
タプリス「同じ匂いって、どういうことです?」
百合神『とりあえず、彼に接触してみよう。千咲くん、頼んだよ』
タプリス「えぇっ、わたしですか!? む、無理ですよ!」
百合神『仕方ないな……じゃあ、君の体を介して、僕が会話しよう』
タプリス「そ、そんなことできるんですか?」
百合神『君は、口パクだけしていてくれ』
タプリス「わ、わかりました……」
――
タプリス『先生、こんにちは』
グラサン「……千咲か。どうした」
タプリス『あのお二人のことが、気になるんですか?』
グラサン「……」ギロッ
タプリス「……ッ」ビクッ
タプリス(ひぃ、先生、怖いです……)
タプリス『お二人、お似合いですよね。まさにベストカップルって感じです』
グラサン「千咲、お前まさか……」
タプリス『ええ。ですが少し、急ぎすぎ、ではないでしょうか』
グラサン「……」
14: 2017/05/23(火) 21:19:48.814 ID:W2Xtt50t0
タプリス『物事には順序というものがあると、わたしは思います』
グラサン「……何が言いたい」
タプリス『今日はなんという偶然か、キスの日、ですよね』
タプリス『どちらが早く、あの二人にキスをさせることができるか』
タプリス『わたしと勝負をしませんか?』
タプリス『負けた方は、あの二人から、手を引く。それで、どうでしょう?』
タプリス(ゆ、百合神さん、なんてこと言ってるんですか……)
グラサン「……同業者か」
グラサン「いいだろう、その勝負受けて立ってやる」ニヤッ
タプリス『ありがとうございます。わたし、負けませんから』
グラサン「くくっ……せいぜい楽しませてくれ」
――
タプリス「な、なんで宣戦布告してるんですか!」
タプリス「しかも、わたしを使うなんてひどいです」
タプリス「学校で会ったら、気まずいですよ……」
百合神『だって、せっかく進めていた計画を台無しにされたから……』
タプリス「子供ですか、もう!」
犬『でも、どうするんだい、百合神。あっちはもう、何かしらの手段で』
犬『二人に手を加えているみたいだけど』
百合神『しかたない、ここは一度リセットだ』
15: 2017/05/23(火) 21:22:24.336 ID:W2Xtt50t0
-公園のベンチ-
ラフィエル「サターニャさん、アイス買ってきましたよ」
サターニャ「ありがとう、ラフィエル」
ラフィエル「じゃあ、食べさせてあげますね♪」
ラフィエル「はい、あーん」
サターニャ「んむ。おいしいわ、とてもおいしい」
ラフィエル「本当ですか? よかったぁ」
サターニャ「でも、おいしいのは、あなたが食べさせてくれてるからね」ニコッ
ラフィエル「もうサターニャさんったら……」
――
タプリス「すごいバカップルっぷりですね」
タプリス「このままだと、すぐにキスとか始めてしまいそうです……」
犬『あれを混ぜてきたよ、百合神』
百合神『ありがとう、犬』
タプリス「え、混ぜてきたってなんですか?」
百合神『鎮静効果のある漢方をだね、あのアイスに混ぜてきたんだ』
百合神『それで一度、二人の状態をリセットさせてから、僕たちの計画に切り替える』
タプリス「な、なるほど……」
犬『それにしても、容赦なく食べ物に盛るなんて、さすがだね』
16: 2017/05/23(火) 21:24:48.594 ID:W2Xtt50t0
サターニャ「なんだか少し眠くなってきたわ」
ラフィエル「ふふっ、食べたら眠くなるだなんて」
ラフィエル「サターニャさん、小さなお子さんみたいです」
サターニャ「そうね……そうかも」
ラフィエル「私の膝で良ければ、お貸ししましょうか?」
サターニャ「ありがと、そうさせてもらうわ」
ころんっ
サターニャ「あたたかくて、いい気持ち」
ラフィエル「ありがとうございます。ここは、サターニャさん専用ですから」
サターニャ「そう、じゃあ思い切り堪能しないとね、うりうり」
ラフィエル「ふふっ……もう、本当に子供なんですから」ナデナデ
サターニャ「あんたの前では、別にそれでもいいわよ」
ラフィエル「私も……、その方がいいです。だって……」
ラフィエル「こうやって、よしよしって、できますからね」ニコッ
サターニャ「それ、本当に落ち着く……」
――
タプリス「なんか、リセットどころか……」
タプリス「ますます、いちゃいちゃし始めてませんか?」
百合神『おかしいな、もう鎮静漢方が効いてきても、おかしくないはずなのに』
犬『たしかに、あのアイスを食べたはずなんだけど……』
17: 2017/05/23(火) 21:27:49.507 ID:W2Xtt50t0
百合神『まさか、あのサングラスの男、なにか先手を……』
犬『そんな、いつの間に……』
百合神『くそっ、次の手を、次の手を考えないと』
犬『このままじゃ負けてしまうよ』
タプリス「どうしたら……」
グラサン「……期待はずれだな」
タプリス「なっ、先生!?」
グラサン「千咲の実力がどんなものか、黙って様子を見ていたが」
グラサン「時間の無駄だったようだ」
グラサン「あれだけ意気揚々と、挑んできたのだから」
グラサン「もっと楽しませてくれると思っていたが」
グラサン「……正直、失望したぞ」
タプリス「……」
百合神『ぐぬぬぬ……』
グラサン「そこで指を咥えて、私の仕上げを見ているといい」スタスタスタ
百合神『何か……何か、手はないのか』
犬『あの男、仕上げって言ってたけど……』
タプリス「あ、先生が……何かしてますよ!」
18: 2017/05/23(火) 21:30:00.752 ID:W2Xtt50t0
グラサン「……これで下準備は、完了」カキカキカキ
犬『なっ!? あれは!』
百合神『YURINOTEじゃないか!』
タプリス「えっ? ノートって一冊だけじゃないんですか!?」
百合神『いや、百合神の数だけ、ノートはある』
百合神『おそらく、僕以外の百合神が、あの男にとり憑いているんだろう』
タプリス「そんな……それじゃあ、それを止めることなんて……」
百合神『くそっ、もっと早くに気づいていたら……』
――
サターニャ「ねぇ、それだけでいいの?」
ラフィエル「えっ?」
サターニャ「頭を撫でているだけでいいのって、聞いてるのよ」
ラフィエル「こうされるのは、お嫌ですか?」
サターニャ「嫌いじゃないし……むしろ好きだけど」
サターニャ「他にしたいこと、あるでしょ?」
ラフィエル「そうですね……ありますよ」
サターニャ「……早くしなさい」
ラフィエル「ふふっ、わかりました」スッ
――
犬『ああっ、もうダメだ! 二人が近づいて……』
グラサン「……これで、フィナーレだ」カキカキカキ
19: 2017/05/23(火) 21:32:22.380 ID:W2Xtt50t0
ピタッ
サターニャ「……」
ラフィエル「……」
グラサン「なんだ? 二人の動きが止まって……」
グラサン「ど、どうして、キスをしない!? たしかにノートには書き込んだはず!」
グラサン「もう一度だ! もう一度書いて……」カキカキカキ
サターニャ「……すぅ、すぅ」
ラフィエル「ふふっ、サターニャさん。寝てしまいました」
グラサン「なぜ、何も起こらない……なぜだ!」
犬『いったい、何が起こって……』
百合神『僕にもわからない……なぜ、あそこまで距離の近づいた二人が』
百合神『途中でキスをするのを、やめてしまったのか』
グラサン「どうしてだ、なぜなんだ……」
タプリス「……先生」
グラサン「千咲、か?」
タプリス「無理やり、お二人にキスをさせるのは……」
タプリス「やはり、よくないことだと、わたしは思います」
グラサン「なっ!? 千咲! お前、何をした!?」
21: 2017/05/23(火) 21:34:49.253 ID:W2Xtt50t0
タプリス「わたしも実は、先生と同じノートを持ってるんです」
グラサン「な、なんだって!?」
タプリス「そして、わたしは……それに、書き込みました」
タプリス「胡桃沢=サタニキア=マクドウェルと、白羽=ラフィエル=エインズワースは」
タプリス「氏が二人を分かつまで、自然体でいる、と」
グラサン「なん、だと……?」
タプリス「わたしは、先生のノートへの記載の合間に、これを書いたんです」
タプリス「よって、お二人が生きている間は、わたしが書いたノートの効力が持続され」
タプリス「他のノートの命令は、一切効かなくなります」
グラサン「そんな……」ガクッ
百合神『す、すごいぞ、千咲くん!』
犬『素晴らしい機転だね』
タプリス「あはは……、咄嗟に思いついたのが、うまくいって良かったです」
百合神『そうだ、千咲くん。その男に、ノートをタッチしてくれないか』
タプリス「え? あ、はい、わかりました」スッ
百合神『これで、聞こえるかな』
グラサン「こいつが……お前の百合神か、千咲」
タプリス「は、はい……」
百合神『あなたに一つだけ、言いたいことがある』
グラサン「……」
22: 2017/05/23(火) 21:37:30.607 ID:W2Xtt50t0
百合神『あなたのやったことが、間違っているとは言わない』
百合神『ただ、あなたの行為が、彼女たちの心までも捻じ曲げてしまっている』
百合神『そのことだけは、知っていてほしいんだ』
グラサン「……わかっては、いた」
グラサン「ただ、目の前の欲望に、目がくらんでしまった。それだけだ」
百合神『そうか……では』
百合神『僕と千咲くんが、自然に彼女たちを導くところを見せてあげよう』
グラサン「えっ?」
-夕方 公園のベンチ-
サターニャ「すぅ……すぅ……」
ラフィエル「……無邪気な寝顔ですね」
ラフィエル「私はどうして、あなたに悪戯をしてしまうのでしょう」
ラフィエル「……」
ラフィエル「嘘……そんなのはもう、わかっているんです」
ラフィエル「……これから、わたしが行うことは、戯れです」
ラフィエル「いつもの、戯れ、ですから」
ラフィエル「そう、それに対して、あなたがどんな仕草を見せてくれるのか」
ラフィエル「わたしにはそれが、楽しみで仕方がないんです」スッ
23: 2017/05/23(火) 21:39:56.237 ID:W2Xtt50t0
サターニャ「……」パチッ
ラフィエル「えっ?」
グイッ ドサッ
ラフィエル「サ、サターニャさん? お、起きて……」
サターニャ「知ってるでしょ。私が、負けず嫌いだって」グイッ
ラフィエル「えっ? えっ?」
サターニャ「あんたが、私に悪戯をするっていうんなら」
サターニャ「私だってあんたに悪戯してやるわ」
ラフィエル「え、えと、その……」
サターニャ「ほら、こっち向きなさい」
ラフィエル「あ、あの……えっと……」
サターニャ「……」
ラフィエル「~~~ッ!」カァァァ
サターニャ「……あんたも、そういう顔、するのね」
ラフィエル「な、ななっ……い、いくら、サターニャさんが負けず嫌いだからって」
ラフィエル「今、あなたが何をしたのか、わかってるんですか!?」
サターニャ「……当たり前でしょ」
ラフィエル「えっ?」
サターニャ「それに……他の誰にだって、こんなこと、しないわよ……」
ラフィエル「そ、それって……」
サターニャ「やられたらやり返す、目には目を歯には歯を、って言うでしょ」
ラフィエル「あ……」
サターニャ「ほら、早く……私にも」
ラフィエル「……はい」ニコッ
24: 2017/05/23(火) 21:43:24.567 ID:W2Xtt50t0
グラサン「師匠と呼ばせてください」
タプリス「えぇっ!?」
グラサン「私は今、猛烈に感動している。こんなにも素晴らしい百合があったなんて」
タプリス「は、はぁ……」
犬『本当だよ、君の実力は大したものだ』
百合神『これなら完全に、このYURINOTEを千咲くんに託せそうだ』
百合神『ぜひ、世の中の百合少女を導いてほしい』
タプリス「えっと……たぶん、使うことはないでしょうけど……」
タプリス「わかりました、受け取っておきます」
タプリス(これを初めて、校庭で拾った時は驚きましたけど)
タプリス(でもまぁ、使い方を誤らなければ、問題ないですよね)
タプリス(ああ、そうそう。あの時たしか、誰のノートかわからずに困りましたっけ)
タプリス(でしたら……)
百合神『ん? 千咲くん、ノートに何をしてるんだい』
タプリス「えっと、落としても大丈夫なように、自分の名前を書いてるんです」
百合神『あ』
犬『あ』
タプリス「え?」
ドドドドドドッ
タプリス「な、なんですか、この地響きは!?」
25: 2017/05/23(火) 21:44:54.651 ID:W2Xtt50t0
ガヴリール「タプリスゥゥゥゥ!!」
ヴィーネ「タプちゃぁぁぁん!!」
ぎゅぅぅぅ
タプリス「ぐえっ、せ、先輩たち!?」
ガヴリール「ああ、お前はほんとにかわいいなぁ」グイッ
ヴィーネ「ええ、タプちゃん、大好きよ」グイッ
タプリス「ぐるじい……いったい、何がどうなって……」
百合神『ノートに君の名前だけ書いて、対となる名前を書かないと、だね』
百合神『世界中の女性が、君に百合百合してしまうのさ!』
タプリス「そんな!?」
ドドドドドドッ
タプリス「ひっ! 人がたくさん来ます! 逃げないとっ!」ダッ
ガヴリール「待て! 逃げるな、タプリス!」
ヴィーネ「逃さないわよ! タプちゃん!」
百合神『全世界の女性から愛される女の子というのも……』
犬『なかなか、オツだね』
タプリス「いやぁ、助けてくださぁぁぁぁいぃぃぃっ!!」
おしまい
27: 2017/05/23(火) 22:10:10.764
乙
コメントは節度を持った内容でお願いします、 荒らし行為や過度な暴言、NG避けを行った場合はBAN 悪質な場合はIPホストの開示、さらにプロバイダに通報する事もあります