1: 2016/09/02(金) 00:14:50.100 ID:3NXRuAAH0
ココア「青山さんの新作!? 読んでいいの!?」

青山「ええ……そもそもそれは私がお仕事の合間の気晴らしに趣味で描いた作品で……」

青山「新作と言えば新作ですが別に出版するものではありませんし」

ココア「ってことは世に出回ることのない幻の一作……!!」

青山「あ、いえ、そんな大仰なものでは……」

ココア「じゃあ早速読ませて貰うね! えーと……裁判を舞台にしたお話かぁ……」

3: 2016/09/02(金) 00:16:31.168 ID:3NXRuAAH0
ココア「……?」

ココア「ふぁぁ……いつの間に寝ちゃったんだろ……」

ココア「あれ……見たことのないソファ……それに見たことのない部屋……?」

チノ「ようやく目が覚めたんですかココアさん……」

ココア「あー……チノちゃんおはよう……」

チノ「今日はココアさんが弁護士になって初めての法廷なんですからもっとシャキっとしてください」

ココア「うん……そうだ……ね゛ッ!?」

チノ「え……何ですか突然変な声上げて」

ココア「私が……弁護士になって……?」

4: 2016/09/02(金) 00:17:53.674 ID:3NXRuAAH0
ココア(おかしい……私はまだ弁護士になってないどころか司法試験すら受けてないはず……)

ココア(確かさっきまで青山さんの新作読んでて……途中で……寝ちゃった?)

ココア(ってことは……これは夢……?)

チノ「……ココアさん?」

ココア「ハッ!?」

チノ「大丈夫ですか? 何だかすごい顔してましたよ?」

ココア「い、いや、その……」

係官「まもなく裁判が始まりまーす。弁護人の方は法廷へお願いしまーす」

チノ「あ……もう裁判が始まる時間ですね。行きましょう」

ココア「えっ、ちょっ、被告人の人の話とか……」

チノ「昨日たくさん聞いたじゃないですか。そうそう、被告人のあの人はもう法廷に行ってますよ」

チノ「何でも法廷にいると創作意欲が沸くとかで」

ココア「……ん?」

7: 2016/09/02(金) 00:19:04.774 ID:3NXRuAAH0
千夜「それではこれより、被告人・青山翠さんの法廷を開廷致しまーす」

青山「ココアさん宜しくお願いします~」

ココア(……創作意欲云々で青山さんが被告人ってことはなんとなく察してたけど……)

ココア(千夜ちゃんが裁判長ってどういうことなの……)

シャロ「検察側、準備完了よ」

ココア(そして何でシャロちゃんが検事なの……夢とはいえ身内しかいないよこの裁判!)

千夜「ココアちゃん? 弁護士側の準備は大丈夫?」

ココア「え、あ……うん、多分……」

千夜「何だか元気がないみたいね……栗羊羹食べる?」

ココア「法廷に持ち込んでいいの……?」

9: 2016/09/02(金) 00:20:21.793 ID:3NXRuAAH0
シャロ「……裁判長」

千夜「あら、なぁに?」

シャロ「公平な立場であるあなたが弁護人を親しく名前呼びしないの」

千夜「あらごめんなさい。でも大丈夫よ、シャロちゃんもシャロちゃんって呼ぶから」

シャロ「いやダメでしょそれも!」

青山「あのう……それでしたら私もできれば『青山ブルーマウンテン』、もしくは『青山さん』でお願いしたいのですが」

シャロ「ほら被告人まで何か言い出した!」

千夜「あ、栗羊羹まだあるけどシャロちゃんもいる?」

シャロ「いらないわよ今は! 裁判終わった後にしなさい!」

ココア「……終わった後なら貰うんだ」もぐもぐ

チノ「ココアさんさっきツッコミ入れた割に普通に食べちゃってますね栗羊羹」

11: 2016/09/02(金) 00:22:17.373 ID:3NXRuAAH0
千夜「さて、場が盛り上がってきた所で」

シャロ「別に盛り上げなくていいわよ……」

千夜「シャロちゃん、冒頭弁論をお願いするわ」

シャロ「……被告人は三日前、小説家仲間の牧跡キャメラルさんを殺害した疑いがかけられているわ」

シャロ「現場は街の喫茶店『ピグミー』……現場に残された証拠・及び証言から」

シャロ「検察側は被告人が犯行を行った可能性が高いと考えているわ」

ココア「あ、青山さんが殺人をした証拠と証言って……?」

シャロ「それについての話は……これから召喚させて貰う証人にお願いするわ」

千夜「じゃあ、早速その証人の入廷をお願いしようかしら」

12: 2016/09/02(金) 00:23:21.283 ID:3NXRuAAH0
リゼ「……法廷でお前と会うのは初めてだな、ココア」

ココア(……ついにリゼちゃんまで出てきた……ホントに身内しかいない……)

シャロ「じゃあリゼせんぱ……じゃなかった証人」

リゼ「だから呼びにくければ前と同じでいいって言ってるだろ」

シャロ「あ、はい……そ、それじゃリゼ先輩……名前と職業をお願いします」

リゼ「天々座理世。この街の署の刑事だ」

ココア(リゼちゃんは刑事かぁ……似合うけども)

シャロ「では先輩……事件の簡単な説明をお願いします」

リゼ「ああ、任せろ!」

13: 2016/09/02(金) 00:24:24.439 ID:3NXRuAAH0
リゼ「事件が起きたのは三日前の午後3時頃……」

リゼ「被告人と被害者が同じテーブル席で飲み物を注文し、それを飲んですぐ……」

リゼ「急に被害者が苦しみ出し、そのまま倒れ動かなくなってしまった……」

リゼ「後の解剖でわかったことだが、毒を飲まされ中毒氏したようだ」

ココア「ど……毒……!」

リゼ「ああ、被害者の飲みかけのアイスコーヒーからも同じ成分の毒が検出された」

リゼ「つまりコーヒーに毒を入れられ、それを飲んだことで氏んでしまったわけだ」

リゼ「もちろん、これだけなら同じ席にいた被告人だけでなく、コーヒーを用意した店員にも可能に見えるが」

リゼ「被告人には……被害者に毒を盛ったという物的証拠があった」

千夜「それは重要な証言ね……その証拠についてはしっかりとした証言をお願いするわ」

リゼ「ああ、そのつもりだ」

16: 2016/09/02(金) 00:25:28.216 ID:3NXRuAAH0
 証言開始 ~被害者に毒を盛ったという物的証拠~

リゼ「店員の通報を受け駆け付けた我々警察は、すぐに現場の調査を開始した」

リゼ「現場の調査の他、被告人を含めた客や店員から話を聞き、手荷物も確認させて貰った」

リゼ「すると被告人のバッグの中から、被害者を殺害した毒と同じ成分の毒の液体が入った瓶が出てきたんだ」

リゼ「被告人のバッグから出てきた以上、これは決定的な証拠だろう」

17: 2016/09/02(金) 00:26:34.743 ID:3NXRuAAH0
ココア「……」

ココア「ヴェェェエエエ!?」

リゼ「これがあったからこそ、警察は被告人を容疑者として捕らえたわけだ」

リゼ「ちなみにこの毒について被告人は『知らない』の一点張りだ」

青山「そう言われましても……本当に知らないんです」

青山「そんな瓶いつバッグに入ったのか……」

リゼ「とりあえず、この《毒の瓶》を証拠品として提出する」

千夜「はーい、受理するわ」


 証拠品《毒の瓶》を法廷記録にファイルした。


 《毒の瓶》
 透明な瓶。青山さんの鞄の中から発見された。
 中に透明な液体が入っているのが見える。これが毒だと思うとちょっと怖い。

18: 2016/09/02(金) 00:27:51.584 ID:3NXRuAAH0
リゼ「私の証言とこれらの証拠に何の問題も無ければ……青山さんは有罪確定だな」

ココア「ちょ、ちょっと! リゼちゃん本気で青山さんが人頃しをしたって思ってるの!?」

リゼ「……いや」

リゼ「私の個人的な気持ちとしては……それは無いと思う」

リゼ「青山さんとは出会ってから随分経つ……この人は人を頃すような人じゃない」

ココア「じゃ、じゃあ何で……」

リゼ「……ココア」

リゼ「私は今、現場を捜査した刑事としてこの法廷に立って証言している」

リゼ「その立場でここにいる以上……証言に私情は挟めない」

ココア「そ、そんな……」

リゼ「……だからこそココア」

リゼ「お前の存在が必要なんだよ」

ココア「……え? 私?」

19: 2016/09/02(金) 00:29:22.728 ID:3NXRuAAH0
リゼ「私だけじゃない、シャロや千夜も同じだ」

リゼ「シャロは検事として、千夜は裁判長として……」

リゼ「被告人である青山さんに私情を挟むことはしないだろう」

千夜「……私それちょっと自信ないかも……」

シャロ「いやしっかりしなさいよ! ダメだからね判決に私情挟んだりしたら! 大問題になるわよ!」

ココア「……」

リゼ「……」

チノ「今のやりとりは聞かなかったことにしましょう」

リゼ「……助かる」

リゼ「と、とにかく! 今私達は個人的な感情で動くことはできない!」

リゼ「私達の分まで……お前が青山さんの力になってくれ!」

リゼ「弁護士として!!」

20: 2016/09/02(金) 00:31:11.482 ID:3NXRuAAH0
ココア「……」

ココア「うん! わかったよリゼちゃん! 私頑張る!」

千夜「そうね……そのためにも」

千夜「ココアちゃんにはこれからリゼちゃんの証言に対して尋問を行ってもらうわ」

ココア「じ、尋問?」

チノ「リゼさんの証言の追及して、何かムジュンが無いか……あるとすればどんなムジュンなのか」

チノ「それを指摘するんです」

ココア「要するに間違い探しみたいな?」

チノ「……もうちょっとカッコよく言えませんか」

ココア(でも……ムジュンかぁ……特に証言に問題はなかったように思えるけど……)

ココア(証言を詳しく聞いて行ったら何か新しい証言が出てこないかな?)

チノ「ムジュンの指摘には証拠品が欠かせませんので、法廷記録はしっかりチェックしておきましょう」

21: 2016/09/02(金) 00:32:52.960 ID:3NXRuAAH0
証拠品
《弁護士バッジ》
私の身分を証明する大切なバッジ……でも司法試験を受けた覚えはない。

《毒の瓶》
透明な瓶。青山さんの鞄の中から発見された。
中に透明な液体が入っているのが見える。これが毒だと思うとちょっと怖い。



 尋問開始 ~被害者に毒を盛ったという物的証拠~

リゼ「店員の通報を受け駆け付けた我々警察は、すぐに現場の調査を開始した」

リゼ「現場の調査の他、被告人を含めた客や店員から話を聞き、手荷物も確認させて貰った」

リゼ「すると……被告人のバッグの中から、被害者を殺害した毒と同じ成分の毒の液体が入った瓶が出てきたんだ」

 待った!

ココア「でも青山さんはその瓶について知らないって言ってるんでしょ?」

リゼ「そりゃ犯人だったとしても知らないって言うだろ……私の持ち物ですなんて言ったらほぼ自白だぞ……」

ココア「……それもそうだね」

22: 2016/09/02(金) 00:34:26.820 ID:3NXRuAAH0
ココア「で、でもその瓶は本当に青山さんのものなの? 青山さんの指紋とかあった?」

リゼ「いや……指紋は検出されなかった。青山さんの指紋はもちろん、誰の指紋もな」

リゼ「しかし、これも犯人だったらある意味当然の行動だ」

リゼ「何しろ毒の入った瓶を用意しているんだ。計画的な犯行に違いない」

リゼ「その瓶に極力証拠……つまり指紋を残したくなかったんだろう」

リゼ「自分に疑いがかからないよう、瓶の指紋を拭き取ったか、手袋か何かしてたんだな」

ココア「……?」

ココア(自分に疑いがかからないように……)

ココア(何だろう……何か引っかかる……)

ココア「リゼちゃん、今の話、証言に追加してくれる?」

リゼ「ん? ああ……別に構わないが」

24: 2016/09/02(金) 00:35:45.584 ID:3NXRuAAH0
リゼ「店員の通報を受け駆け付けた我々警察は、すぐに現場の調査を開始した」

リゼ「現場の調査の他、被告人を含めた客や店員から話を聞き、手荷物も確認させて貰った」

リゼ「すると……被告人のバッグの中から、被害者を殺害した毒と同じ成分の毒の液体が入った瓶が出てきたんだ」

リゼ「指紋は検出されなかった。自分に疑いがかからないよう、証拠を消すのは犯人なら当然だな」

ココア(……ここだ!)


 異議あり!!


 《毒の瓶》
 透明な瓶。青山さんのバッグの中から発見された。
 中に透明な液体が入っているのが見える。これが毒だと思うとちょっと怖い。

25: 2016/09/02(金) 00:37:17.894 ID:3NXRuAAH0
ココア「リゼちゃん……自分に疑いがかからないように、瓶の指紋を消したって言うんだね?」

リゼ「ああ。今時凶器に指紋を残したままにする犯罪者なんていないだろ」

ココア「……じゃあ仮に……リゼちゃんが誰かをナイフで刺したとしてさ」

ココア「そのナイフに指紋が残って無かったとして……警察に調べられるまでずっと自分の荷物の中に入れておく?」

リゼ「バカ言え。いくら指紋が残って無かったとしても、凶器をずっと持ってたら疑われ……」

リゼ「……!?」

ココア「そう……自分に疑いがかからないようにするなら」

ココア「この《毒の瓶》を自分のバッグにずっと入れてるはずがないよ!」

リゼ「!!」

26: 2016/09/02(金) 00:38:51.045 ID:3NXRuAAH0
千夜「そうね……確かに証拠を残したくないなら、毒の瓶そのものを処分するはずよね……」

 ザワザワ…… ザワザワ……

チノ「コ、ココアさん! 有罪一色だった法廷の空気が……」

チノ「コーヒーにミルクを注いだように変わっていきます! すごいじゃないですか!」

ココア「私自身ちょっとびっくりだよ……まるで本物の弁護士になってる気分だよ……」

チノ「……あれ、ココアさん今弁護士ですよね?」

ココア「……そうだった」

ココア「な、何はともあれ、この《毒の瓶》を物的証拠とするには、不自然な点が……」

 異議あり!!

ココア「……え」

シャロ「……」

ココア「シャロちゃん?」

シャロ「……私だって青山さんが人頃しをしたとは思えないけど」

シャロ「検事としての仕事はしなくちゃいけないからね」

27: 2016/09/02(金) 00:40:08.230 ID:3NXRuAAH0
シャロ「弁護側の主張をまとめると、こうなるわ」

シャロ「《毒の瓶》に指紋を残さなかったのが証拠を残さないためなら」

シャロ「何よりの証拠である《毒の瓶》を処分せずにずっと持っていたのはおかしい」

シャロ「だからこの《毒の瓶》は証拠として不自然な点がある」

ココア「そ、そうだよ! やっぱり何かおかしいよ!」

シャロ「……確かに、そうね」

シャロ「その《毒の瓶》が……被告人の手元にあったのなら、ね」

ココア「……えっ?」

シャロ「裁判長。ここで二人目の証人の証言を聞こうと思うのだけれど」

千夜「二人目? 誰かしら」

シャロ「二人目の証人は……」

シャロ「被告人・青山翠さんよ」

29: 2016/09/02(金) 00:42:35.313 ID:3NXRuAAH0
青山「……」

シャロ「証人。一応名前と職業を」

青山「青山ブルーマウンテンと申します。小説家として執筆活動を行っております」

シャロ「……できれば本名でお願いします」

千夜「まあいいんじゃないかしら。被告人の名前は最初に言ったわけだし」

シャロ「うう……いいのかしらこんなテキトーで」

ココア「ダメなんじゃないかな……本当は」

シャロ「ま……今はこれ以上言わずに続けるわ。面倒だし」

シャロ「証人。事件当日のことは覚えていますか?」

青山「はい。色々と衝撃的でしたが、それ故によく覚えています」

シャロ「じゃあ、事件当日のことについて証言をお願いするわ」

30: 2016/09/02(金) 00:44:03.208 ID:3NXRuAAH0
 証言開始 ~事件当日のことについて~

青山「あの日……キャメラルさんに誘われ、キャメラルさん行きつけの喫茶店『ピグミー』に参りました」

青山「私は緑茶を、キャメラルさんはアイスコーヒーを注文して、お話したり写真を撮ったりしました」

青山「でもキャメラルさんが店員さんの持ってきたコーヒーを一口飲むと……突然キャメラルさんは呻き声と共に床に倒れたんです!」

青山「近くにいた店員さんも倒れた音を聞いてすぐにやって来て……」

青山「店員さんはキャメラルさんの容態を見ながら、マスターを呼んできて欲しい、と私に頼みました」

青山「そこで荷物も放ったまま慌ててマスターを呼びに行って……あ、携帯はポケットにあったのでそれで救急車も呼びました」

青山「しかし、どうやら私が電話を終えた頃にはキャメラルさんはもうこの世を去ってしまったらしく……」

青山「何があったのかを警察の方に調べて貰うため、今度はマスターが警察に連絡しました」

青山「後は警察の方が来るまで現場を荒らさないよう、離れた席で待機しているよう店員さんに言われ……その通りにしました」

31: 2016/09/02(金) 00:45:35.866 ID:3NXRuAAH0
ココア「……荷物も放ったまま……」

チノ「……現場から……離れていた……?」

シャロ「そう……被告人は証拠である《毒の瓶》を処分しようにも、できなかったのよ」

シャロ「証拠の《毒の瓶》が入ったバッグは、ずっと現場に置きっぱなしで……」

シャロ「被告人自身は現場から離れていたんだからね!」



ココア「ええええええええええッ!?」

32: 2016/09/02(金) 00:48:03.059 ID:3NXRuAAH0
シャロ「何なら現場写真を証拠品として提出して見せてあげるわ。くらいなさい」

 《現場写真》
 犯行現場である席のテーブルの様子が写された写真。
 青山さんのバッグ、緑茶、アイスコーヒーだけが映っている。
 氏体は床に倒れたため写っていない。氏体って怖いから写っていないのはちょっと安心。

千夜「確かに……少なくとも警察がこの写真を撮るときまでは置かれていたみたいね。受理するわ」

 証拠品《現場写真》を法廷記録にファイルした。

ココア「で、でもでも! もし青山さんが犯人なら何が何でもバッグを取りに行くんじゃないの!?」

青山「店員さんに近寄らないよう止められていたんです。何かの病気だったら感染するかもしれないし危ない、と」

ココア「お客さんを守ろうと必氏な店員さんが有能すぎる……」

チノ「かつてうちで働いていたココアさんとは大違い……」

ココア「やめて」

青山「……ところで私の証言も何か尋問を……?」

ココア「い……一応しようかな……」

33: 2016/09/02(金) 00:50:39.179 ID:3NXRuAAH0
 尋問開始 ~事件当日のことについて~

青山「あの日……キャメラルさんに誘われ、キャメラルさん行きつけの喫茶店『ピグミー』に参りました」

青山「私は緑茶を、キャメラルさんはアイスコーヒーを注文して、お話したり写真を撮ったりしました」

 待った!

ココア「写真……?」

青山「ええ、キャメラルさんは写真がお好きで……よくご自分の携帯のカメラ機能で写真を撮っていたんです」

青山「確かキャメラルさんはいつもご自分のバッグの中に……」

シャロ「ええ、被害者の携帯なら被害者自身のバッグの中から出てきたわ」

シャロ「鑑識さん曰く、バッグにはダイヤルロックがかかっててちょっと開けるのに手間取ったらしいけど」

チノ「ココアさん、事件当日の写真ならもしかしたら……」

ココア「何か事件の手がかりになるものが写ってるかも……!」

シャロ「いや、二人とも……私達検察側もそう思って調べたんだけど……それがね」

34: 2016/09/02(金) 00:52:26.430 ID:3NXRuAAH0
 《被害者の写真》
 アイスコーヒーの入ったグラスとガムシロップ・ミルクの小さな容器が写っている写真。

シャロ「事件当日撮られた写真はこれだけよ」

ココア「……」

チノ「……」

青山「ブログに載せる用と言ってました」

千夜「せっかくだから証拠品として受理するわ」

シャロ「ええ……受理しちゃうの……? これを……?」

 証拠品《被害者の写真》を法廷記録にファイルした。

35: 2016/09/02(金) 00:54:48.501 ID:3NXRuAAH0
千夜「ココアちゃん、他に青山さんの証言で気になることはある?」

ココア「気になること……っていうか」

ココア「……気になる人ならいる、かな」

千夜「あらやだココアちゃん審理中に恋バナはダメよ?」

ココア「気になるってそっちじゃないよ!」

ココア「被害者の容態を見ていたっていう店員さん!」

ココア「その人が現場で何かを見たり……被害者から何か言葉を聞いたりしてるかも!」

シャロ「んー……確かにその店員も証人として用意はしてあるけど……」

シャロ「前に話と聞いたときはあんまり大したこと話してくれてないのよね……それでも呼ぶ?」

ココア「うん……」

ココア「きっと……何かあると思うの。青山さんは絶対犯人じゃないもん……」

36: 2016/09/02(金) 00:56:45.672 ID:3NXRuAAH0
シャロ「証人。名前と職業を」

上井「う、上井トレスと申します。き、喫茶店『ピグミー』でバイトしてる高校生です」

ココア「喫茶店のバイトさんかぁ……私やシャロちゃんリゼちゃんと同じだね」

シャロ「『昔の』ね」

上井「で、でも私全然お仕事ダメなんです……お料理がすっごく下手だからお食事の用意はできないし……」

上井「コーヒーはマスターが入れるので……わ、私は専ら接客と掃除……あとはガムシロップやミルクの準備くらいで……」

千夜「オドオド系ドジッ子ウエイトレス……ポイント高いわ! 今の情報を証拠品として受理します!」

 《上井トレスの仕事内容》
 料理が苦手なため料理は作らない。コーヒーもマスターが用意する。
 主な仕事は接客と掃除とガムシロップやミルクの準備等。

 《上井トレスの仕事内容》を法廷記録にファイルした。

シャロ「いや自分の趣味で勝手に証拠品受理しないでよ! っていうかこれ証拠品!?」

チノ「何か変な証拠ばっかりどんどん増えますね……」

37: 2016/09/02(金) 00:58:38.654 ID:3NXRuAAH0
シャロ「っていうか私語は慎むように! ここは法廷なんだからね!」

上井「す、すみません……」

シャロ「で、えーと……そうね。証人には事実確認程度の証言をして貰うつもりなんだけれど……」

上井「そ……それなんですが、ちょっといいでしょうか」

シャロ「?」

上井「……ずっと、心の奥底で気になっていたことがあるんです」

ココア「え?」

上井「も、もしかしたら……私……」


上井「被告人の方が毒を入れる瞬間を目撃したかもしれません」

38: 2016/09/02(金) 01:00:41.359 ID:3NXRuAAH0
ココア「……」

チノ「……」

シャロ「……」


ココア「ヴェアアアアア!?」


 ザワザワ…… ザワザワ……

千夜「あらあら、みんな騒いじゃダメよ? 静粛にねー」カンカン

ココア(ど……どういうことなの!? 青山さんが毒を入れる瞬間を目撃されてる!?)

シャロ(わ……私も予想外の事態だわ……)

上井「……」

シャロ「しょ、証人! え、えーと……そ、その目撃証言について! 詳しく証言を!」

上井「は、は、はい!」

39: 2016/09/02(金) 01:02:36.078 ID:3NXRuAAH0
 証言開始 ~目撃したこと~

上井「わ、私が被告人と被害者の方の注文のお品をテーブルに運んだ後のことです」

上井「近くのテーブルがちょっとだけ汚れているのが見えて……ちょ、丁度持っていた布巾で掃除してたんです」

上井「掃除をしながらお二人の方をそっと見ていたら……」

上井「被告人の方が、被害者が目を離した隙にアイスコーヒーに何かを入れているのが見えたんです!」

上井「そ、そして、そのアイスコーヒーを被害者の方が口にして……倒れてしまいました」

40: 2016/09/02(金) 01:04:21.330 ID:3NXRuAAH0
シャロ「……こ……こんな証言初めて聞いたわよッ!?」

上井「す、すみません……ずっとガムシロップか何かを入れてたのかと思ってたんです」

千夜「この証言……本当に間違いないの?」

上井「……ま、間違いないと思います」

チノ「そ、そんな……」

ココア(……青山さんは……人を頃すような人じゃない……)

ココア(ってことは……この証人は何か勘違いをしているはず……)

ココア(……もしくは)

ココア(意図的に嘘をついている……?)

41: 2016/09/02(金) 01:06:53.688 ID:3NXRuAAH0
 尋問開始 ~目撃したこと~

上井「わ、私が被告人と被害者の方の注文のお品をテーブルに運んだ後のことです」

上井「近くのテーブルがちょっとだけ汚れているのが見えて……ちょ、丁度持っていた布巾で掃除してたんです」

 待った!

ココア「近くのテーブルってことは……えーと、どの辺りにいたのかな?」

シャロ「簡易的な上面図を用意するわ。これで説明して頂戴」

上井「え、えーと……こ、この辺りだったかと」

ココア「……え?」

ココア「ほ、本当にここで間違いない?」

上井「え、あ……は、はい」

ココア(……?)

 証拠品《上面図》を法廷記録にファイルした。

 《上図面》
 喫茶店の簡易的な上図面。
 no title

42: 2016/09/02(金) 01:09:39.172 ID:3NXRuAAH0
上井「わ、私が被告人と被害者の方の注文のお品をテーブルに運んだ後のことです」

上井「近くのテーブルがちょっとだけ汚れているのが見えて……ちょ、丁度持っていた布巾で掃除してたんです」

上井「掃除をしながらお二人の方をそっと見ていたら……」

上井「被告人の方が、被害者が目を離した隙にアイスコーヒーに何かを入れているのが見えたんです!」

ココア(やっぱり……おかしい!)


異議あり!!


 《上図面》
 喫茶店の簡易的な上図面。

44: 2016/09/02(金) 01:11:43.686 ID:3NXRuAAH0
ココア「証人! あなたの立ち位置は本当にここで間違いない!?」

上井「は、はい……間違いない、です……」

ココア「……でもこの位置でテーブルを掃除してたってことは」

ココア「被告人と被害者のテーブルに……背を向けることになるよ?」

上井「……あっ……!」

ココア「……証人」

ココア「どうやって掃除をしながら毒を入れる瞬間が見れるっていうの!?」

上井「う、ううううぇ……ッ……!?」

45: 2016/09/02(金) 01:13:59.581 ID:3NXRuAAH0
上井「す、す、すみません。間違えました」

上井「そうです、そ、掃除をする前にふとお二人の方を見たんです。その後テーブルを拭いたんです」

上井「ちょっと勘違いしてただけです、そ、それだけなんです」

シャロ「……証人。証言は正確に……」

上井「し、仕方ないじゃないですか!! 勘違いしてただけなんだから!!」

シャロ「え……あ、まあ……そ、そうね……」

チノ「何か急にちょっと怒りっぽくなりましたねあの人」

ココア「お、落ち着いてね?」

上井「と、とにかく私は見たんですよ! そこの被告人がコーヒーに何かを入れる所を!」

上井「こう……瓶を逆さまにして中身全部入れてましたのしっかり見ましたからね!」

千夜「じゃあ今までの指摘で間違いがあった部分を修正して、もう一度証言してくれる?」

46: 2016/09/02(金) 01:16:39.918 ID:3NXRuAAH0
上井「わ、私が被告人と被害者の方の注文のお品をテーブルに運んだ後のことです」

上井「近くのテーブルがちょっとだけ汚れているのが見えて……ちょ、丁度持っていた布巾で掃除してたんです」

上井「掃除を終えて、お二人の方をそっと見たら……」

上井「被告人の方が、被害者が目を離した隙にアイスコーヒーに何かを入れているのが見えたんです!」

上井「瓶を逆さまにして中身を全部入れたのを、しっかり見ましたからね!」


 異議あり!!


 《毒の瓶》
 透明な瓶。青山さんのバッグの中から発見された。
 中に透明な液体が入っているのが見える。これが毒だと思うとちょっと怖い。

47: 2016/09/02(金) 01:18:28.289 ID:3NXRuAAH0
ココア「瓶を逆さまにして中身を全部入れた……それをしっかり見た、と」

上井「そ、そうですよ! 何か問題でも!?」

ココア「ここに……青山さんのバッグから発見された《毒の瓶》があってね」

ココア「中に残ってる液体から被害者を殺害した毒と同じ成分が検出されてるの」

上井「じゃ、じゃあやっぱり犯人は被告人の方じゃないですか!」

ココア「……まだ、わからない?」

上井「え?」

ココア「瓶の中に……毒は『残ってる』んだよ?」

ココア「でも証人は……瓶を逆さまにして『中身を全部入れた』って言ったよね!?」

上井「……!!」

ココア「証人の発言は明らかに……ムジュンしてるよッ!」

上井「う、う、う、うううううううううぇええ!?」

48: 2016/09/02(金) 01:21:00.869 ID:3NXRuAAH0
 ザワザワ…… ザワザワ……

千夜「静粛にー」カンカン

ココア「証人。まさかまた勘違いか何かと言うつもりなら」

ココア「証人の目撃証言はあまりに信憑性が無いと言わざるを得ないよ?」

上井「う、うえ、うぇえううう……」

上井「うううううううううう!!」ダァンッ!!


上井「んだよ!! いちいち細かいコトでギャーギャー騒いでんじゃねーよ!!」


ココア「えっ」

シャロ「しょ……証人……?」

49: 2016/09/02(金) 01:22:54.059 ID:3NXRuAAH0
上井「毒があの女のバッグの中から出てきたんだろ!? じゃあそいつで犯人決まりじゃねーのかよ!!」

ココア「い、いや、その……」

上井「むしろあの女以外に誰がコーヒーに毒を入れられたっつーんだよ!!」

上井「注文を受けたのはアタシで、飲み物を用意したマスターはコーヒーがどっちの女の注文か知らねえ!」

上井「だからマスターは毒を入れようにもどっちに毒を入れたらいいかわからねぇ!」

上井「そしてアタシは出された飲み物をお盆に乗せてテーブルまで運ぶだけだ!!」

上井「毒の瓶の蓋を開けるには片手で瓶を、もう一方の手で蓋を持って開ける必要があるよなぁ?」

上井「少なくとも一方の手はお盆持つために塞がってんだよ! 瓶の蓋なんて開けられねーよ!」

上井「わかるか? アタシらが毒を入れるのは不可能ってわけだよ!」

上井「アタシらにできねぇってことは……もうそこにいる物書きの女以外犯人いねーじゃねぇかッ!」

50: 2016/09/02(金) 01:24:38.455 ID:3NXRuAAH0
ココア「ぐ……ッ!」

シャロ「……確かに……そう言われると……」

千夜「あ、そうだわ! 私お盆三刀流できるし証人もお盆を頭に乗せれば……」

上井「どんな器用なお盆の持ち方してんだよ! アタシにゃできねーよ!」

チノ「ど、どうしましょうココアさん……確かにコーヒーに毒を入れるチャンスがあるのは……」

ココア(……青山さんしかいない……!)

上井「ククク……なんだよ黙っちまったな弁護士の姉ちゃんよォ!」

ココア「今お姉ちゃんって言った!?」ガタッ

上井「う、うぇ!? 何でそこで反応すんだよ!」

51: 2016/09/02(金) 01:27:03.505 ID:3NXRuAAH0
チノ「ふざけてないでちゃんと考えてくださいよココアさん……」

ココア「う、うん……」

ココア(……確かに、コーヒーに毒を入れるなら青山さんしか犯人はいない……)

ココア(ってことは……)

ココア(発想を『逆転』させて考えると……青山さん以外の人が犯人なら……)

ココア(……毒が入っていたのはコーヒーじゃない……?)

ココア(……)

ココア「!!」

ココア(ま、待って……確か……この証人のお仕事って……!)

53: 2016/09/02(金) 01:29:25.925 ID:3NXRuAAH0
ココア「……千夜ちゃん」

千夜「? なぁに?」

ココア「弁護側は……ある一つの可能性を示したいと思うよ」

ココア「青山さん以外の誰かが……毒を入れられたかもしれないという可能性を」

上井「バ……バカなッ!? そんな可能性あるはずねぇ!」

千夜「……わかったわ。じゃあ証拠品を注文させて貰うわね」

千夜「被告人以外の誰かが毒を入れられた可能性を証明する証拠を……お願いするわ」

ココア「……かしこまりました!」


 《上井トレスの仕事内容》
 料理が苦手なため料理は作らない。コーヒーもマスターが用意する。
 主な仕事は接客と掃除とガムシロップやミルクの準備等。

54: 2016/09/02(金) 01:32:17.640 ID:3NXRuAAH0
ココア「証人!」

ココア「証人は料理が苦手なため料理は作らず、コーヒーはマスターが用意……」

ココア「証人は接客と掃除……そして……」

ココア「ガムシロップやミルクを用意するそうだね?」

上井「……」

シャロ「……まさか」

ココア「そのガムシロップになら……」

ココア「証人は毒を入れることができる!!」

上井「……う……ぇ……ッ!!」

57: 2016/09/02(金) 01:35:30.727 ID:3NXRuAAH0
 ザワザワ…… ザワザワ……

千夜「静粛に、静粛にー。静かにしない悪い子には退廷を命じちゃうわよー?」カンカン

ココア「ガムシロップはみんな知ってる通り透明……そしてこの毒も透明」

ココア「混ざったとしても見た目じゃわからない……毒を混ぜるには最適だよね」

ココア「そして証人は……おそらく被害者がガムシロップをすべてコーヒーに入れる所を見てからテーブルを掃除した」

ココア「だから『中身を全部入れた』という証言を思わずしてしまった!!」

上井「お……おいおいちょっと待ちやがれ!!」

上井「ガムシロップに毒を混ぜただぁ? もしそうなら警察が調べてるはずだよなぁ!?」

ココア「……ど、どうなのシャロちゃん!?」

シャロ「……いえ……そんな調査結果はないわ……っていうか」

シャロ「あの……さっきの現場写真……ガムシロップやミルク自体写ってないわよ?」

ココア「え?」

58: 2016/09/02(金) 01:38:26.510 ID:3NXRuAAH0
 《現場写真》
 犯行現場である席のテーブルの様子が写された写真。
 青山さんのバッグ、緑茶、アイスコーヒーだけが映っている。
 氏体は床に倒れたため写っていない。氏体って怖いから写っていないのはちょっと安心。

ココア「……あ、あれ!?」

チノ「テ、テーブル全体は写ってますが……ガムシロップもミルクも見当たりません!」

上井「ああ、そうだそうだ思い出した!」

上井「常連客だったからガムシロップやミルク使わないの知ってたんだよ! だから最初から出さなかったんだ!」

ココア「う……嘘ッ!?」

上井「嘘じゃねーよ! もし毒入りのガムシロップ出してたら容器を警察が見つけてるはずだろうが!!」

青山「……変ですねぇ」

上井「あ?」

青山「私の記憶では……確かキャメラルさんはガムシロップをちゃんと入れて……」

上井「て、てめぇこそ嘘ついてんじゃねぇよ! 自分が助かりたいからでまかせ言ってんだろ!!」

千夜「はーい、一旦落ち着きましょう?」カンカン

59: 2016/09/02(金) 01:40:24.005 ID:3NXRuAAH0
千夜「話を整理するわね」

千夜「毒を入れるチャンスがあったのは二人」

千夜「コーヒーに毒を入れることができたのは被告人の青山さん」

千夜「ガムシロップに毒を入れることができたのは証人の上井さん」

千夜「現場からはガムシロップは発見されていない……」

千夜「上井さんはガムシロップを出してないと証言……」

千夜「でも青山さんは被害者がガムシロップを入れた所を見ていると証言……」

千夜「うーん……現場から毒の痕跡があるガムシロップが発見されていない以上」

千夜「証人の証言の方が信頼できるのかしら?」

上井「だ、だよなッ!?」

ココア「……逆に言うと」

ココア「ガムシロップさえあれば……むしろ証人の証言はまったく信頼できないことになるね」

上井「な……!?」

60: 2016/09/02(金) 01:42:21.206 ID:3NXRuAAH0
上井「て、てめぇ言いやがったな! じゃあ証明してみせろ!」

上井「アタシの証言が嘘だっていう証拠を!!」

ココア「しょ、証拠!?」

ココア(そ、そんなこと言われても……現場写真に無い物をあったなんてどう証明すれ……ば……)

ココア(……写真……)

ココア「あ……!」

61: 2016/09/02(金) 01:43:26.228 ID:3NXRuAAH0
上井「オラどうした! とっとと証拠を……」

ココア「……ご注文は証拠ですか?」

上井「え……?」

ココア「かしこまりました! ただいまご用意致します!」

上井「な、何だと……!?」

チノ「コ、ココアさん大丈夫なんですか?」

ココア「うん……大丈夫」

ココア「この証拠で……すべて決まるよ」

ココア「証人の発言が嘘だという証拠は――」


 くらえ!!


 《被害者の写真》
 アイスコーヒーの入ったグラスとガムシロップ・ミルクの小さな容器が写っている写真。

62: 2016/09/02(金) 01:45:02.554 ID:3NXRuAAH0
ココア「これは……被害者が事件当日に撮った写真だよ」

ココア「写っている写真の内容からして……注文が来た直後に撮った写真のはずだよね」

上井「……あ……あああああッ……!!」

ココア「見ての通り」

ココア「ガムシロップとミルクは……ちゃんと用意されてるんだよ!」

上井「うぇええええああああああッ!!!」

63: 2016/09/02(金) 01:46:53.589 ID:3NXRuAAH0
 ザワザワザワ…… ピョンピョン…… ザワザワ……

千夜「静粛に静粛に!」カンカンカン

シャロ「で、でも! ならどうして現場からガムシロップもミルクも発見されてないの!?」

ココア「当然……証人が片付けたんだよ!」

ココア「そのままだとガムシロップに毒を入れたことがバレちゃうからね!」

ココア「そう……ガムシロップをすぐ片付けるために『テーブルに汚れがあった』って理由を付けて自分はその場に留まり」

ココア「逆に青山さんにはマスターを呼んでくるように頼んで、その場から離れさせたんだと思う」

ココア「ガムシロップだけじゃなくてミルクも処分したのは、ミルクだけ残ってたら変に思われるからじゃないかな?」

ココア「そして、その時一緒に……この《毒の瓶》を青山さんのバッグに入れた!」

ココア「自分の罪を別の誰かに着せるために!」

64: 2016/09/02(金) 01:48:50.975 ID:3NXRuAAH0
ココア「さあ証人!」

ココア「ちゃんと用意したはずのガムシロップを出さなかったと嘘を付いた理由……」

ココア「存在したはずのガムシロップが警察が到着するまでに現場から消えた理由……」

ココア「さっきの私の仮説が通らないっていうなら」

ココア「それらの理由に、納得のいく説明をしてもらうよ!!」

上井「う……え……う……い……」

上井「ううううううううぇええええええあああああああああ!!!!!!!」

65: 2016/09/02(金) 01:50:38.673 ID:3NXRuAAH0
「頃すつもりなんて……無かった……」

「ただ……あの店で何かが起これば」

「きっとあの女はもう店に来なくなるだろうって思って……」

「もう……あの女にストーカー紛いのことされなくなると思って……」

「なのにあの女……毒を飲んであっさり氏にやがって……」

「とにかく証拠の瓶をなんとかしないと……そう思って……」

「自殺に見せかけようにも……あの女のバッグにはダイヤルロックがかかってて……」

「思わず……連れの女のバッグに……」

66: 2016/09/02(金) 01:52:48.921 ID:3NXRuAAH0
千夜「なるほど……証人は被害者からのストーカー被害にあっていた……と」

シャロ「それで……被害者に少しだけ仕返しをするつもりで……今回の事件を引き起こした」

チノ「でも……毒を入れすぎてしまい……被害者を頃してしまった……」

ココア「でも……そんな思い詰めてたんなら、毒なんか使う前に」

ココア「私達みたいな法律に携わる人たちを頼って欲しかったな」

リゼ「ああ……とにかく証人はさっき緊急逮捕したよ」

リゼ「随分大人しくなってたがな。本人も頃してしまったことや青山さんを巻き込んだことを後悔してるみたいだ」

67: 2016/09/02(金) 01:53:52.348 ID:3NXRuAAH0
千夜「……さて、被告人」

青山「はい」

千夜「今回はとんだ災難でしたね」

青山「いえ……私も昔、とある人にストーキング紛いのことをした経験はありますし」

青山「その罰が今になってこの身に降りかかったのかもしれません……」

シャロ「……まあその件に関してはもう気にしてないからいいわ……」

青山「ココアさん……」

ココア「はい!」

青山「今回は本当に……ありがとうございました」

ココア「……うん! 私の方こそありがとう! 私を弁護士に選んでくれて!」

千夜「では……被告人・青山ブルーマウンテンさんに判決を下します」


 無  罪

68: 2016/09/02(金) 01:55:25.994 ID:3NXRuAAH0
ココア「やったよチノちゃん! 私無罪を勝ち取っ……ん?」

ココア「あ、あれ……? ここ……ラビットハウス?」

青山「いかがなされました? ココアさん?」

ココア「え、あれ、私たちさっきまで法廷に……」

チノ「何言ってるんですかココアさん。ずっとその席に座って青山さんの小説読んでたじゃないですか」

ココア「え、あ、あれ? だって弁護士バッジがここに……」

ココア「……無い」

リゼ「何だ? 夢でも見てたのか?」

チノ「小説をずっと読んでたので寝ていたわけではないのでは……」

青山「デイドリーム……白昼夢という物でしょうか?」

69: 2016/09/02(金) 01:57:12.076 ID:3NXRuAAH0
ココア「え……じゃあ私の法廷での大活躍は……?」

リゼ「大活躍も何もお前まだ司法試験も受けてないだろ。どうやって法廷に立つんだ」

チノ「被告人としてなら誰だって立てますよ」

リゼ「なるほど!」

ココア「せめて証人にして!!」

チノ「ココアさんの場合年下の女の子を相手に何かやらかしそうなので被告人の方が可能性が高いです」

ココア「そんなことないよ! チノちゃんのその発言に――」

 異議あり!!



 逆転のデイドリーム おわり

70: 2016/09/02(金) 02:00:40.421
おもしろかった!

72: 2016/09/02(金) 04:06:29.773

引用元: ココア「逆転のデイドリーム」