1: 2012/02/16(木) 00:02:11.92 ID:mTEeUF9VO
勇者「魔王よ!これで終わりだ!!」カッ

魔王「………く…」

勇者「これが………最後の………一撃だ……」



魔王「……くはははは!」

勇者「そんな…」ガクッ

勇者(これが…魔王…人間では勝てない…のか…)

魔王「見事なり…勇者一行よ…」ビキンッ

勇者「?」

魔王「よもや我が人間に倒されるとはな…」ビキベキッ

魔王「しかし…これから現れる第二第三の魔王は手強いぞ…」ベキッ

勇者「………必ず…何とかしてやるさ…」

魔王「そうか…ならば…」

バキンッ




クハハハハハハハハ…

2: 2012/02/16(木) 00:04:28.40
僧侶「やりましたわね、勇者様!!」

勇者「ああ…これで…世界は救われた…」

僧侶「はい!明るい未来が待っているのですね…」

勇者「ああ…俺達…二人の未来もな…」

僧侶「どうか永遠に続きますように…」

勇者「さあ、行こう…」

僧侶「私達の…新しい未来へ…」

3: 2012/02/16(木) 00:06:02.76 ID:mTEeUF9VO
その日の午後



僧侶「あなたー、夕飯にしますわよー」

勇者「あなたはまだ早いよ、結納もしてないのに」

僧侶「そうでしたね、うかれちゃって」

勇者「ははっ」

僧侶「ふふっ、さあさあ、今日はあったかーいシチューですよー」

魔王「いただきまーす」

勇者「待て」

4: 2012/02/16(木) 00:07:35.23 ID:mTEeUF9VO
僧侶「はい?」

勇者「いやいやいやいや…気のせいだろう…何か前レスの下二行目で…」

僧侶「あらあら魔王ちゃんたら、口のまわりがばっちいですよー」

勇者「あ、気のせいじゃなかったんだ?」

僧侶「ほら、勇者様も冷めないうちに早く」

勇者「どうしてこうなった?」

5: 2012/02/16(木) 00:10:09.50 ID:mTEeUF9VO
魔王「しかし…これから現れる第二第三の魔王は手強いぞ…」ベキッ

勇者「………必ず…何とかしてやるさ…」

魔王「そうか…ならば…」
魔王「………いや、やめておこう…」

勇者「何だ…言ってみろ」

魔王「いやいや、お前では無理だろう…」

勇者「何がだ!」

魔王「勇者じゃなあ…」

勇者「言え!!」

魔王「言ってもいいけど…勇者じゃなあ…」

勇者「何だよ!?何とかしてやるっつったろ!!」

魔王「じゃあ…まあ言うだけだからな」

勇者「言ってみろよ!!」

魔王「我の子を立派な魔王になんて出来ないよなー」

勇者「やってやるよ!!」

魔王「ぐふっ…」パタンッ

7: 2012/02/16(木) 00:14:44.04 ID:mTEeUF9VO
勇者「…」

僧侶「…とまあ、これが映像魔法で一部始終を記録した事実です」

勇者「……」

僧侶「約束した直後、魔王は滅びましたが、約束は約束です」

魔王「ママー」

勇者「………」

僧侶「はいはい魔王ちゃん、少し向こうのおもちゃで遊んでてね」

勇者「…………」

僧侶「いいですね勇者様?約束したんですよ」

勇者「……………」

僧侶「幸いこの子から邪悪な気配は感じられません」

勇者「………………」

僧侶「魔王の子と言えども、子供に変わりありません、立派に育てましょう」

勇者「…………………」

8: 2012/02/16(木) 00:19:13.79 ID:mTEeUF9VO
魔法使い「やっほ!魔王ちゃんいる?」

僧侶「あら?魔法使い、お久しぶりです、魔王ちゃんなら今お昼寝してますよ」

魔法使い「マジ?ウヒョーかわいー」ジュルリ

僧侶「はいはい近寄らない、で?」

魔法使い「で?って?」

僧侶「そうね…普段着ではなく、完全武装の姿で来られたから、何かあったのかな…と」

魔法使い「あったりー!何かね、また…らしいよ」

僧侶「また…ですか…」

魔法使い「さて…また勇者様の出番…だね」

僧侶「はあ…真の平和はいつになるのかしら…」

9: 2012/02/16(木) 00:20:48.33 ID:mTEeUF9VO
勇者「またこのパーティーで…ですか?」

王「うむ、それで北に現れた魔王討伐を命ずる」

僧侶「しかし王様、我々には子が…」

王「魔王討伐の折に拾った子か、しかし魔王討伐が最優先」

勇者「…」

王「子が邪魔なら預けるなりすればよい、話は以上、下がれ」

勇者「………はっ…」

10: 2012/02/16(木) 00:22:27.95 ID:mTEeUF9VO
魔法使い「ムカつく」

僧侶「まあまあ…」

魔法使い「はああ!?あんたムカつかないの!?」

僧侶「ムカつきません、神の御名において…即氏魔法をかけようかと思いましたがやめました」

魔法使い「こあい」

僧侶「それより勇者様…どうしましょう…」

勇者「連れてかないぞ」

僧侶「です…よね…」

勇者「ああ、何だかんだで半年育てたんだからな、危ない目に会わせる訳にはいかないさ」

僧侶「では…どうしたらよいでしょう…」

勇者「そんなの…分からないよ…」

11: 2012/02/16(木) 00:24:47.81 ID:mTEeUF9VO
数日後



コンコン

僧侶「はい?どちら様…」

ガチャ

僧侶「あ…」

兵士「王からの通達です、即刻旅立ち、魔王を討伐せよとの事です」

勇者「待ってくれ、今この子の預け先を探してるところなんだ」

魔王「パパー」

兵士「伝えました」クルッ

勇者「待て!!」ガシッ

兵士「この手は?」

勇者「少しだけ…少しだけ待ってくれ」

兵士「離しなさい」

勇者「頼むから、少しでいいんだ…」

兵士「離せと言ったぞ!」

魔王「うるさいー」バツンッ

12: 2012/02/16(木) 00:27:07.35 ID:mTEeUF9VO
兵士「」ユラアッ

ドチャッ

僧侶「魔王ちゃん!?」

勇者「何て事を…!?」

魔王「うるさいー、きらいー」

勇者「魔王っ!?」

魔王「パパー…こわい…」

魔王「こわい…きらい…」

オ…

僧侶(!?)

僧侶「防御魔法!!」カッ

魔王「こわいパパきらいー!!」

ウオッ!!

13: 2012/02/16(木) 00:29:57.62 ID:mTEeUF9VO


パラパラ…

勇者「なん…だ…?」

僧侶「はあっ!はあっ…」

勇者「僧侶!?」

僧侶「う…う…」

勇者(たった一回の防御魔法で…力を使い果たしたのか…!?)

勇者「!?」

勇者「何だ…何でこんなに明るい…」

勇者「………!?」

勇者「何だ…これは…?」

勇者「街一つ…」

オオオオ…

勇者「消し飛んだってのか!?」

14: 2012/02/16(木) 00:32:06.50 ID:mTEeUF9VO




勇者「僧侶、許せ、これから俺は嘘をつく」

僧侶「勇者様?」

兵士「通れ」

謁見の間

王「何があった?」

勇者「は、突如空間より異形の者が現れ、街を破壊いたしました」

王「うむ、して、その時お前は何を?」

勇者「は、こちらの僧侶により張られた魔法の結界で身を守るのが精一杯で…」

王「不甲斐ない…」

勇者「は…」

15: 2012/02/16(木) 00:34:20.66 ID:mTEeUF9VO
王「まあ、その程度の損害ならば気にする事もない」

勇者(その程度…一万の民の命だぞ…)

王「お前は早急に新たなる魔王を討伐せよ、今回は特別に報酬をやる」

勇者「は…」

王「ならば早く行け」

勇者「しかし王よ…」

王「下がれ」

勇者「王よ!!」

ジャキンッ

勇者「……」

兵士「下がれ」

18: 2012/02/16(木) 09:02:54.56 ID:mTEeUF9VO

魔法使い「もう!引っ越したなら連絡してよね!」

勇者「悪い」

魔法使い「何よ、珍しく怒ってるじゃん」

勇者「ああ…」

僧侶「勇者様…」

魔法使い「何?街が崩壊したのと関係ある?」

勇者「ああ…」

魔王「ママー」

僧侶「はいはい魔王ちゃん、クッキーですよ」

魔王「あむー」

勇者(確かに王や兵士の態度も問題だが…)

魔法使い「かわいー」

僧侶「はい近寄らない」

勇者(一万もの命を…こいつは消したんだ…)

19: 2012/02/16(木) 09:04:46.46 ID:mTEeUF9VO
兵士長「はい、その報告で間違いありません」

騎士団長「ふむ…ならあの勇者は怪しいな…」

兵士長「は」

騎士団長「王よ」

王「うむ、騎士団長よ、主の好きにしろ、なあに…勇者の代わりなど…」

騎士団長「は、また募ればよいだけです」

王「ふん…たかが町民の倅…消えたところで痛くも痒くもない…」

王「まあ…税収が減ったのは痛いかな…」

騎士団長「おっしゃる通りですな」

王「ははははっ!」

20: 2012/02/16(木) 09:06:25.72 ID:mTEeUF9VO
魔法使い「えっ!?街崩壊の張本人って魔王ちゃんなの!?」

僧侶「魔法使い、声が大きい」

魔法使い「ゴメン、て言うより、魔王ちゃんて冗談じゃなく…」

勇者「ああ、多分魔王の子供だ」

魔法使い「多分て…あたしはあの時氏んでたから知らないけどさ…」

僧侶「魔王とのあの会話のタイミングですからね…」

勇者「ああ…」

魔法使い「そっかあ…なら何で『多分』なの?』

僧侶「邪悪な気配を感じないんです、魔王の子供なら少しくらい…」

勇者「………」

21: 2012/02/16(木) 09:07:56.18 ID:mTEeUF9VO
魔法使い「いただきー」

勇者「お前、少しは遠慮しろよ」

魔法使い「やーだね、お?これは僧侶ちゃん特製のポテトスープだね」

魔王「パパー…」

勇者「……」

僧侶「勇者様…」

勇者「ああ…ほら魔王、あーん…」

魔王「あーん、ムグムグ…パパー…こわい…?」

勇者「………怖くないよ…はい…」

魔王「あーむ…ムグムグ…」

勇者「………」

22: 2012/02/16(木) 09:10:27.24 ID:mTEeUF9VO


……

………カチャ

「音を立てるな…」

「は…」

「歴戦の勇者とはいえ…この数での夜襲…防ぐ事は出来まい…」

勇者「………」

僧侶「………」

魔法使い「………」



バンッ!!

「討て!討て!!」

「!?」

「いないぞ!?」

「どこだ!?」

僧侶(姿を消して、正解でしたね…でも…)

魔法使い(気配出しすぎだっつーの…けどよ…)

勇者(………魔王、しー………こいつ………)

魔王(…)

騎士団長「………魔王討伐に向かったのか…?」

騎士団長「……ふっ…王に報告だ、兵士長」

兵士長「は」

騎士団長「私は王に勇者が消えた旨を報告に戻る、お前は勇者暗殺の任を引き続き全うせよ」

兵士長「はっ!」

勇者(暗殺!?)

23: 2012/02/16(木) 09:12:55.13 ID:mTEeUF9VO
兵士長「………ふう…行ったか…」

兵士長「しかし騎士団長も無茶を言う…ドラゴンをも蹴散らす勇者をたったこれだけの兵で倒せとは…」

勇者「ホントだよな?」

兵士長「ああ…」

兵士長「…」

兵士長「な!?」

勇者「動くなよ」ジャキッ

兵士長「貴様!!」

魔法使い「消し炭になるのと…」

僧侶「体中の血液が凍りつくのと…」

勇者「話をするのと…」

勇者「どれがいいか…選ばせてやるよ…」

兵士長「くっ…」

24: 2012/02/16(木) 09:15:06.42 ID:mTEeUF9VO
魔法使い「邪魔あ!?」

兵士長「ああ、街を消したのはお前らだろ?あまりにも力を持ちすぎたお前らを、王は疎ましく思っておいでなんだよ」

僧侶「そんな…あれは私達がやったんじゃ…」

兵士長「じゃあ誰がやったと言うんだ?」

魔法使い「それは…!!」

勇者「待て、魔法使い」

魔法使い「何だよ!!」

勇者(仮に魔王がやったと説明したらどうなる…俺達は半年、魔王を拾い子として育ててきた…)

勇者(はっ…どっちにしろ言い訳にはならないな…)

25: 2012/02/16(木) 09:16:53.20 ID:mTEeUF9VO
勇者「説明はしたはずだ、いきなり空間から異形の何かが現れて…」

兵士長「何かとは?」

勇者「だから…何か分からない何かが…」

兵士長「何か分からないとは…見たのなら説明して見せるがいい!」

「いいだろう」

勇者「何だ!?」

ミシッ

兵士長「空間が!?」

ミシッ…ミシミシッ…

ベリィッ!!

26: 2012/02/16(木) 09:18:55.16 ID:mTEeUF9VO
勇者「くううっ!?」

僧侶「あうっ!?」

魔法使い「ぐっ!?」

魔王「あー」

兵士長「なっ!?何だこいつは!?」

男「諸君、まあそのままで聞きたまえ」

勇者(そのままどころか…プレッシャーで体が…)

男「君…何か分からない何か、が知りたいんだろう?教えてやろう…」

兵士長「あ…」

男「君が知る事で…」

兵士長「あああああ!!」

男「皆が私を知る事になるだろう…」

兵士長「あー!!」

グチャ

27: 2012/02/16(木) 09:21:04.48 ID:mTEeUF9VO
きた…の…ま…おう…

きた…の…ま…おう…

きた…の…ま…おう…

きた…の…ま…おう…

勇者「これは…」

男「素晴らしいオブジェだろう?ただの肉の塊じゃあない、喋る肉だ」

勇者「何をした!」ジャキッ

男「ほう?動けるか…」

男「まあいい、今回は挨拶だよ、さて…この肉の塊を城へ…」シュンッ

男「これでよし…後はあのオブジェが私を知らしめてくれるだろう」

勇者「目的は何だ!!」

男「挨拶だと言っただろう?待っているよ勇者…そして我が妹よ…」

勇者「な…」

男「北の大地…そこで待っている…気長にな…」

クハハハハハハハハ…

28: 2012/02/16(木) 09:22:41.28 ID:mTEeUF9VO
魔法使い「うっ!!うええぇえっ!!」ビチャビチャッ

僧侶「魔法使い!!」

勇者「あのプレッシャー…前の魔王よりも…」

魔法使い「はーっ!!はーっ!!っいやだ…」

僧侶「魔法使い?」

魔法使い「あたしはいやだぞ!!あんな化け物相手にするなんて!!」

勇者「止めないさ…」

僧侶「勇者様!?」

勇者「誰にだって逃げ道は必要なんだよ…」

勇者「魔王を倒して…明るい未来が来ると思ってたらこれだ…」

勇者「国からも魔王からも狙われてる?ははっ…」

勇者「俺も…出来るなら逃げ出したいよ…」

29: 2012/02/16(木) 09:24:39.00 ID:mTEeUF9VO
魔王「パパー抱っこ」

勇者「………」ナデナデ

魔王「ゴロゴロ♪」

勇者(逃げるか…)

勇者(もう…十分戦ったんだからな…)

勇者(それに…俺は…僧侶と…)

魔王「ママー」

僧侶「魔王ちゃん…」ギュ

勇者(魔王の娘…魔王の妹のこいつを…)

勇者(守らないと…)

魔法使い「っあー!よく吐いたぜ!!」

勇者「?」

30: 2012/02/16(木) 09:31:29.67 ID:mTEeUF9VO
魔法使い「よし!行こうぜ勇者!!」

勇者「どこへだよ…」

魔法使い「あの魔王のところだろうが!」

勇者「お前…さっき相手にしたくないって…」

魔法使い「相手にしないよ!!だけど行かないとは言ってないだろ!!」

僧侶「魔法使い…」

魔法使い「お前ら二人が幸せになれないって、それってどんだけ頑張っても世界は幸せになれないって事なんだと思う!!」

勇者「………」

魔法使い「どんなに怖くても、いつも行く事だけは、進む事だけはやめなかった!だから今回も…」

僧侶「………」

魔法使い「前に行くだけ行ってさ!止まったらまた進む方法を考えればいいだけだろ!!」

31: 2012/02/16(木) 09:33:20.62 ID:mTEeUF9VO
勇者「………ははっ…」

魔法使い「何だよ?」

僧侶「ふふっ」

魔法使い「何だって?」

勇者「まさか、バカだバカだと思ってた奴に諭されるなんてな」

魔法使い「誰がバカだ!!これでも魔法学院卒業なんだからな!!」

勇者「悪い悪い…さーて…もうここにはいられないな、どうする?」

僧侶「どうする?って…私は勇者様と一緒にいると誓いましたから」

勇者「……魔王…お前はどうする?」

魔王「パパー、ママー、いっしょいくー」

32: 2012/02/16(木) 09:34:56.61 ID:mTEeUF9VO
王「こ…これは…」

兵士「は、突如空間より現れた…その…」

きた…の…ま…おう…

きた…の…ま…おう…

きた…の…ま…おう…

王「ええい!不愉快だ!即刻捨て去れ!!」

兵士「しかし…これは…先日行方不明となった兵士長にございます…」

王「切り刻んで捨てろ!」

33: 2012/02/16(木) 09:36:46.95 ID:mTEeUF9VO
王「ええい!騎士団長はまだ戻らぬのか!?」

兵士「は、物見の報告では、半時とかからず戻るとの知らせが」

王「魔王めが…」ギリッ

王「勇者もろとも国を挙げて始末してくれよう…」



騎士団長「王よ、ここに」

王「うむ、遅かったな、物見の報告より四半時ずれたようだが?」

騎士団長「は、先日の雨により、悪路となっていたため、少々…」

王「まあよい、分かっているな?」

騎士団長「は、勇者討伐…御意に…」

王「頼んだぞ」

34: 2012/02/16(木) 09:38:35.12 ID:mTEeUF9VO
兵士「騎士団長殿、王はなんと?」

騎士団長「うむ、引き続き勇者討伐の任をな」

兵士「なるほど、先の壊滅事件、やはり勇者が?」

騎士団長「さあな」

兵士「しかし…魔法とは恐るべき力ですな…」

騎士団長「そうだな、使えない我々にとってはかなりの脅威だ」

兵士「ですな…しかし騎士団長殿、先ほどは何故ご自宅に寄られたので?」

騎士団長「うむ、忘れ物をな…」

35: 2012/02/16(木) 09:40:17.42 ID:mTEeUF9VO
勇者「はああ…何でこんな事に…」

僧侶「勇者様、溜め息つかないの」

魔法使い「でもよ、こんな感じの旅も久々だな」

勇者「そうだな…」

魔法使い「それはそうと…魔王ちゃんて成長早いよな…まだ半年だろ?」

僧侶「そうですね…もう見た目は五歳くらいに見えますね…」

勇者「魔王の娘だからな、俺達とは違うんだろ…」

36: 2012/02/16(木) 09:42:06.17 ID:mTEeUF9VO
魔王「ママーおなかー」

僧侶「はいはい、勇者様、少し休憩しましょう」

勇者「そうだな…しかし…」

魔法使い「どした?」

勇者「いきなりの子育て問題で、まだ結納も済ませてないってのに…はああ…」

僧侶「はい、溜め息つかない」

勇者「はい…」

37: 2012/02/16(木) 09:44:05.80 ID:mTEeUF9VO
騎士団長「よく聞け!」

ザワッ

騎士団長「目指すは勇者一行が向かった北の枯れた大地!!」

騎士団長「討つべくは世界を破壊せし悪しき存在!」

ザッ

騎士団長「我らが正義の旗の元、剣を取り、悪しき存在を討ち取ろうぞ!」

ジャキッ

騎士団長「我々騎士団が…正義たることを知らしめてやるのだ!!」

ウオオオオ!!

38: 2012/02/16(木) 09:46:33.32 ID:mTEeUF9VO
勇者「ハグッ…ムグムグ…」

僧侶「魔王ちゃん、お口のまわりばっちっちぃですよー」

魔王「ムグムグ」

勇者「さーて…これからどうすっかな…」

魔法使い「だから、北の大地に」

勇者「いや、そうじゃなくて、この先の飯とか宿とか…家が吹っ飛んだからさあ、無一文なんだよね…」

僧侶「そうですね…モンスターも全然いないですからね…」

魔法使い「そうなの?でもあたし蓄え全部持ってきたから大丈夫じゃね?」

勇者「魔法使い様!」

僧侶「魔法使い様!」

魔王「まほつかいさま!」

魔法使い「こいつら…」

39: 2012/02/16(木) 09:48:35.49 ID:mTEeUF9VO
「どうでした?」

男「いやあ、さすが俺の妹だけあって、なかなかの力を持ってたよ」

「そうですか…」

男「ふむ…しかしこれからだ…人間と共に過ごし、人間の邪悪さ、醜態、卑怯さなどを学べば、立派な魔王になろうぞ…」

「まさか…勇者一行にもそんなキャラで…?」

男「うん、その方が何かすごそうじゃん?」

「はああ…まったく…この大事な時に…」

男「まあまあ、さて…どのくらいでここに来れるか賭けない?」

「賭けません」

40: 2012/02/16(木) 09:51:01.86 ID:mTEeUF9VO
魔法使い「ありゃ、街道が分かれてら…」

僧侶「勇者様、北の大地はどっちですかね?」

勇者「まいったな…こっちは詳しくないからな…」

魔法使い「お?あそこに杖ついた婆さんがいるぜ、道知ってるかもよ」

勇者「すみません、少し道…を…」

村娘「…」

魔法使い「ありゃ?婆さんじゃなかった」

村娘「………」

41: 2012/02/16(木) 09:53:37.98 ID:mTEeUF9VO
勇者「あ、すみません、こいつバカなもんで」

魔法使い「誰がだ!」

勇者「お前が、それより、北の大地への道を知らないですかね?」

村娘「…」トン…トトン…

魔法使い「?」

勇者「いや、ですから、北の大地の…」

村娘「…」トン…トトン…

魔法使い「てめえ!バカにしてんのか!?」

村娘「…」トン…トトン…

僧侶「待って!あなた…もしかして声と目が…?」

村娘「…」トン…トン…

42: 2012/02/16(木) 09:58:17.41 ID:mTEeUF9VO
村娘「…」トン…トントン

僧侶「え?」

村娘「…」トン…トントン

僧侶「ついて…来い…?」

村娘「…」トン…トン…

勇者「『そうだ』って事かな?」

僧侶「ええ…」

魔法使い「よっしゃ!宿があれば地方の料理にありつけるぜ!」

魔王「ごはんー」

勇者「よし…行くか」

魔王「のろいー」

僧侶「魔王ちゃん、目が見えないんだから遅いのは仕方ないの、めっ」

47: 2012/02/16(木) 12:05:16.51 ID:mTEeUF9VO
村人「よう村娘ちゃん、誰だい?その人達は?」

娘「…」トトン…トン…トトン…

村人「そうかそうか、あ、母ちゃんが探してたぜ?」

村娘「…」トン…トン…


勇者「へえ…」

僧侶「簡単な会話は成り立ってるみたいですね」

魔法使い「宿は…と」

勇者「魔法使い、まずはこの子から北の大地の場所を聞かないと」

魔法使い「はぁーい…」

48: 2012/02/16(木) 12:26:29.13 ID:mTEeUF9VO
村長「おお村娘や、散歩は楽しかったかの?」

村娘「…」トン…トン…

村長「そうかそうか」

村娘母「そちらの方は?」

勇者「あ、どうも、いや、ただの旅人なんですが、少々北の大地の場所を聞きたくて…」

村娘母「北の…」

村長「枯れた大地…」

49: 2012/02/16(木) 12:28:19.53 ID:mTEeUF9VO
村長「そうか…うん…まあ教えても構わんが…」

魔法使い「何だよ?」

村長「確実に氏ぬぞ」

勇者「ストレートですね、まあ、物騒なところなのは間違いないだろうけど…」

村長「北の枯れた大地…木も草も水もなく、およそ生き物が生きては行けない大地………じゃった」

勇者「じゃった?」

村長「今では川や湖が出来、草原や森が復活し、花や果物、澄んだ川には魚が溢れる大地となっておる」

50: 2012/02/16(木) 12:30:19.43 ID:mTEeUF9VO
魔法使い「楽園じゃん…」
勇者「氏ぬどころか農園でも拓けそうだな…」

僧侶「新しい我が家でも建てますか…?」

村長「それからじゃ、亜人間や、魔王の統率下になかった怪物が続々と集まって来たのは…」

勇者「それで…」

村長「森や川の近くには知恵のある亜人間が集落を作り、見晴らしのいい草原にはドラゴンをも一飲みに出来るような野獣が溢れておるんじゃ」

僧侶「森も草原も安全なルートはないと…」

勇者「まあ、森だろうが草原だろうが、北の大地のどこにあるか分からない場所が目的だからな」

魔法使い「北の大地に差し掛かった瞬間に目的地あるかもしれないし」

51: 2012/02/16(木) 12:33:29.03 ID:mTEeUF9VO
村長「そう言えば…あなたがたが北の大地に行く目的とは…?」

魔法使い「魔王退治」

村長「何と!?魔王は半年も前に滅びたと聞き及んでおりますが…」

僧侶者「もう…口の軽い…まあ仕方ありませんね…」
勇者「先代魔王が、氏の間際に子供を残して行ったんですよ」

村長「おお…それじゃったのか…村娘の呪いが解けない理由は…」

勇者「呪い?」

村娘母「村娘を魔王に差し出せと言われ…一度断ったら…声と目を…」

魔王「のろいー」

52: 2012/02/16(木) 12:35:13.70 ID:mTEeUF9VO
勇者「あの魔王が人間の女の子を?イメージ湧かないなあ」

村長「あの魔王?」

勇者「はい、あの魔王」

村長「え…と…あなたがたは一体…?」

魔法使い「知らねーのかよ、半年前に魔王を倒した勇者一行だっての」

勇者「あ…バカ…」

村長「おお…おお…何という事じゃ…」

勇者「いやあの…」

村長「勇者様、どうかあの若き魔王を退治しては下さらぬか?」

勇者「若き魔王?」

53: 2012/02/16(木) 12:38:57.89 ID:mTEeUF9VO
村長「若き魔王ですが?」

魔法使い「あ、あいつじゃねえか?」

僧侶「ちょ…魔法使い…」

魔法使い「ほら、魔王ちゃんの兄貴」

村長「この子の…お兄さん…?」

勇者「バカだバカだと思ってたら、ホントにバカだったよ…」

村長「なぜ…魔王の妹をあなたがたが…」

勇者「いやあ…話せば長くなるけど…」

―――――――

54: 2012/02/16(木) 12:41:53.94 ID:mTEeUF9VO
村長「出て行っては下さらぬか…」

勇者「まあ…そうなりますよね」

魔王「…」

村長「幸いここにはあなたがたと私どもしかおりませぬ、他の者に知られる前に…どうか…」

魔王「のろいー」ギュ

村娘母「ちょっと!村娘に触らないで!」

魔王「」ビクッ

魔王「こわいー」

僧侶「魔王ちゃん」

55: 2012/02/16(木) 12:44:30.11 ID:mTEeUF9VO
勇者「買い物くらいはしてもいいですかね?北の大地に備えたいんで」

村長「まあ…それくらいはよいでしょう…」

村娘「…」

村娘母「村娘?」

村娘「…」トン…トントン…

勇者「?」

僧侶「ついて来いって」

村娘「…」トン…トン…

村娘母「ちょっと」

村長「まあ、よい…」

村長「自分に呪いをかけた者の妹がいるにも関わらんのに…」

村長「村娘には、何か感じるものがあるんじゃろ…」

56: 2012/02/16(木) 12:46:51.73 ID:mTEeUF9VO
勇者「よし、買い物はこんなとこでいいだろ」

僧侶「少し高いけど、いい薬草もありましたね」

魔法使い「しっかし腹立つよな、前の魔王を倒した勇者一行だぞ?あたし達は」

勇者「おい、魔法使い」

魔法使い「ああ、村娘がいるんだな、でもよー」

魔王「のろいー」ギュ

村娘「…」

魔王「えへへ、ありがとー」

村娘「…?」

57: 2012/02/16(木) 12:48:24.92 ID:mTEeUF9VO
勇者「さて、行くか」

僧侶「じゃあね、村娘ちゃん」

魔法使い「じゃな」

魔王「ばいばいー」ケプ

村娘「…」ヒラヒラ



―――――



村娘母「おかえり、何もされなかったかい?」

村娘「…」

村娘母「どうしたんだい?何かされたのかい!?」

村娘母「村娘…?村娘…?どこを見てるんだい…」

村娘「………お母さん…あたし…」

村娘母「!?」



――――――

62: 2012/02/16(木) 20:53:55.89 ID:mTEeUF9VO
勇者「さーて、今日はここらで野宿だな」

魔法使い「うわー野宿懐かしーな」

僧侶「前魔王の旅の時は、よく野宿しましたね」

勇者「そうだな、よっ」

僧侶「はい、魔王ちゃん」

魔王「ムグムグ」

魔法使い「今日はパンか、でも明日から…」

勇者「保存食の干し肉と干し芋だからな」

魔法使い「はいはい、慣れてますよ」

63: 2012/02/16(木) 20:58:49.43 ID:mTEeUF9VO
リ…リ…



ムクリ

魔王「……おしっこ…」

魔王「……ぅむ…?」

――――

魔王「ママー」

僧侶「んー…魔王ちゃん…寝てなさい…」

魔王「ママー、あかるくてきれいー」

僧侶「嫌だわ魔王ちゃん、そんな言葉どこで…」

魔王「さっきのむらー」

僧侶「さっきの村?さっきの村がどうし………!?

64: 2012/02/16(木) 21:00:45.60 ID:mTEeUF9VO
騎士団長「ふむ…なかなかの騒ぎだな」

村人「奇跡だ!」

村人「勇者様が呪いを解いて下さった!!」

村娘母「ああ…あたしは勇者様になんて事を…」

村長「気に病むでない、あの勇者様はきっとおぬしを恨んでなどおらんよ」

村娘「お母さん…あたし…あたしは…」

村娘母「おお…村娘…」ヒシ

騎士団長「浮かれているところを悪いが、いったい何の騒ぎだ?」

村長「おお、これはこれは、王国騎士団の方々ではありませぬか、実は…」

65: 2012/02/16(木) 21:02:45.13 ID:mTEeUF9VO
騎士団長「北の魔王の呪いを…?」

村長「さすが、半年前に魔王を倒しただけの事はありますな」

兵士長「騎士団長殿…」

騎士団長「うむ…魔王の呪いを解く程の力を…」

兵士長「このままでは…」

騎士団長「うむ…必ずや脅威になるだろう…」

騎士団長「村長、ここが北の大地への最後の村か?」

村長「はい、そうですが…」

騎士団長「ならば即刻、村人を広場へ集めてくれ」

村長「は…はあ…」

81: 2012/02/17(金) 20:26:02.97 ID:T/drsdhiO


広場



ザワザワ

騎士団長「あー、諸君、宴の最中だが聞いてくれ」

シ…ン…

騎士団長「ただ今、この時刻をもって、この村の全ての備蓄、水、食糧はもちろんの事、家屋や衣類に至るまで、我が王国騎士団が一時的に接収する」

村人「何だって!?」

村長「騎士団長殿…なぜいきなり…」

騎士団長「北に向かった反逆者を討つ、それだけだ」

村長「勇者様が!?それは何かの間ちが」ドスッ

兵士長「意見する者、歯向かう者は…」

村長「」ドサッ

騎士団長「対話する事なく、こうなるぞ」

82: 2012/02/17(金) 20:27:31.78 ID:T/drsdhiO
僧侶「勇者様!!起きて勇者様!!」

勇者「んー…う?」

僧侶「勇者様!!はーやーくー起きてー!!」

勇者「起きた起きた…んで…何?」

僧侶「あれ!!」

勇者「…………!?」

勇者「さっきの村!?」

僧侶「そうです!!何かあったみたい!!」

勇者「ちっ…!!」

83: 2012/02/17(金) 20:28:47.76 ID:T/drsdhiO
僧侶「魔法使い!!起きてってば!!」

魔法使い「…」ンガー

僧侶「魔法使い!!」

魔法使い「…」スピー

僧侶「とうっ!!」ガンッ

魔法使い「はうっ!?」

僧侶「起きた!?」

魔法使い「え?何?今頭に岩が落ちてきたみたいなんだけど…」

僧侶「夢よ!!」

勇者(女が女の顔面にキックするの初めて見た…)

84: 2012/02/17(金) 20:30:19.57 ID:T/drsdhiO
勇者「急いで戻るぞ!!」

魔法使い「何で?」

僧侶「何でって…あの炎は尋常じゃありません!!村全体が燃えてるとしか…」

魔法使い「ほっとけよ、あたしらを追い出した村なんだぜ?」

魔王「…」

勇者「そんなわけに行くかよ…」

僧侶「勇者様…」

勇者「目の前に助けを求めてる人がいるかも知れないってのに、それから目を反らしたら…」

魔法使い「ちっ…」

勇者「自分が進むべき道を見る事も出来なくなる…」

魔法使い「分かったよ…」

勇者「何か見付けて、横道にわざと入って遠回りしても、また元の道に戻ってくればいいさ」

魔法使い「分かったって!行くぞ!時間短縮!!」

『移動魔法!!』

85: 2012/02/17(金) 20:32:43.53 ID:T/drsdhiO
ガクンッ!!

魔法使い「何だっ!?」

僧侶「キャー!?」

ドサドサッ

勇者「いてて…どうしたんだ、いったい?」

魔法使い「わかんねえ、急に引っ張られた感じが…」

タッ

僧侶「魔王ちゃん?」

魔王「のろいー」ギュ

魔王「むー…もうない…」

勇者「村娘!?」

僧侶「しっかり!!」

86: 2012/02/17(金) 20:34:48.79 ID:T/drsdhiO
村娘「………う…」

勇者「!?」

村娘「逃げ…て…」

魔法使い「喋った!?」

勇者「それより…たいした事はないが、かなりの数の傷がある…僧侶」

僧侶「わかってる」

『回復魔法!』

村娘「う…あ…」

僧侶「これで傷は塞がったけど…」

勇者「出血が多かったようだな…意識がまだ…」

魔王「…」

87: 2012/02/17(金) 20:37:03.14 ID:T/drsdhiO
オオォオオオオォオオォォ…

魔王「…」

勇者「僧侶、村娘を頼む!魔法使い!俺と一緒に村に向かうぞ!!」

魔法使い「分かった!!」

『無駄だよ』

僧侶「魔王…ちゃん…?」

『やったのは人間』

『同族頃し』

『嫌悪から始まり』

『終わりを迎えず』

『殺戮を始める』

僧侶「魔王ちゃん!!」

『放任しろ』

魔法使い「…!!」

『放棄しろ』

勇者「………」

『崩壊しろ!!』

勇者「魔王!!」パシッ

89: 2012/02/17(金) 20:38:43.08 ID:T/drsdhiO
魔王「……パ…パ…」

勇者「はあっ…はあ…」

魔王「パパ…こわい…?」

勇者「ああ!怖いさ!」

魔王「」ビクッ

魔王「パパ…ヒック…こわいの…きらい…ウック…」

勇者「嫌いで結構!!だけどな!!お前は魔王だとしても!!」

魔王「………ウック…」

勇者「俺と僧侶が育ててきたんだ!少なくとも!滅べだ氏ねだなんて言うように育てた覚えはない!!」

ギュウッ

魔王「……パ…パ…いたい…よ…」

90: 2012/02/17(金) 20:41:44.46 ID:T/drsdhiO
村娘「う…」

僧侶「勇者様!!村娘さんが!!」

勇者「何!?村娘!しっかりしろ!大丈夫か!?」

村娘「勇者…様…?」

勇者「ああ…ゆっくりでいい、何があったのか、話してくれないか…」

村娘「はい…勇者様達とお別れした後…村に王国騎士団が現れ…」

101: 2012/02/18(土) 20:30:57.82 ID:/pMogs3+O

村娘「私が北の魔王にかけられた呪い…それは声と目ではなく、声と文字だったんです…」

僧侶「文字?」

村娘「北の魔王の求愛に答えなかった私に、北の魔王は自分以外の誰にも愛を伝えられぬよう、愛してると言えぬように、愛してるとしたためられぬように、声と文字を封じました…」

勇者「じゃあ、何で目を閉じて…?」

村娘「何も見えなくするためです…」

魔法使い「はあ?」

村娘「語弊がありましたね…目にも確かに呪いはかかっていました…」

村娘「目を開けている時は必ず…視界のどこかに北の魔王の姿が入る呪いを…」

村娘「それからです…私が自ら瞼を閉じ、光を断ったのは…」

102: 2012/02/18(土) 20:33:35.49 ID:/pMogs3+O
魔法使い「怖ぁ…」

僧侶「悪趣味…」

勇者「きついな…」

魔王「テラ変態」

村娘「それはともかく勇者様…村は…もう…」

勇者「しかし…今から行けば例え何人かでも…」

村娘「お母さんが…勇者様達を逃がせるためにと…」

村娘「最期に…言って…あたしを………っ…」

勇者「………」

僧侶「勇者様、それでも村に行って…」

勇者「行くぞ…」

僧侶「勇者様…はい!」

勇者「目指すは北の大地…北の魔王だ…」

僧侶「勇者様!?」

103: 2012/02/18(土) 20:35:22.85 ID:/pMogs3+O
勇者「村娘…俺達が全力で守る…北の大地に行って、全てを断ち切る覚悟はあるか?」

村娘「…」コクッ

勇者「よし…」

僧侶「勇者様!!なら村の人達は!?」

魔法使い「お前が目を反らすなって言ったのによ…」

僧侶「見損ないました…」

魔王「パパー」

僧侶「魔王ちゃん、こっちに来なさい」

魔王「パパー?おなかいたいー?なかないでー」

僧侶・魔法使い「!?」

104: 2012/02/18(土) 20:36:49.73 ID:/pMogs3+O
僧侶「勇者様…」

魔法使い「なんつーか…悪かったよ…」

勇者「泣いてない…泣いてる暇なんてない…」

ザッ

勇者「横道に反れる暇がないなら…」

勇者「前に向かって歩くだけじゃなく…」

勇者「走ってでも…」

勇者「泥にまみれて薄汚れても…」

勇者「例え誰に何と言われようとも…」

スゥ…

『ガンガン行こうぜ!!』

105: 2012/02/18(土) 20:38:56.86 ID:/pMogs3+O
「入ったわね…」

男「だね、順調に人間の汚さを学んでるねぇ…」

「残念ですけど…そうみたいね…」

男「へへっ…さて…ちょっかい出してくるかな…」

「おやめなさい、正確な判断が出来なくなって不公平よ…」

男「ほーい、さて…いつ着くか…賭け」

「ません…」

106: 2012/02/18(土) 22:15:51.57 ID:/pMogs3+O
ヒュウウゥ-

勇者「へえ…のどかだな」


僧侶「これが北の大地…」

魔法使い「風が気持ちいいな、んで?ドラゴンをも一飲みにする奴は?」

勇者「やめろ、そう言うのフラグになるから…」

僧侶「森…」

勇者「あっちに知能を持った亜人間が…」

魔法使い「元々知能はあるけど…集落なんてホントにあるのか?」

勇者「わからん、もしそこまで進化してるとしたら、かなり厄介だな」

107: 2012/02/18(土) 22:17:41.59 ID:/pMogs3+O
勇者「む?」

僧侶「あら、山脈が…」

魔法使い「たいした高さじゃないみたいだな」

勇者「ああ、ただどれだけ奥まであるのか…僧侶、北はあっちか?」

僧侶「えっと…影の長さと…太陽がこっちで…そうですね、あっちが北です」

勇者「まいったな…山脈の間にある森を抜けた方がいいかもな…」

魔法使い「魚の塩焼き!」

魔王「くだものー」

勇者「……分かったよ…」

108: 2012/02/18(土) 22:19:35.09 ID:/pMogs3+O




僧侶「そんなに薄暗いわけじゃありませんね」

勇者「そうだな、森林浴にはもってこいだ」

魔法使い「早く川探そうぜ?魚ー!!」

魔王「さかなー!!」

勇者「たった一日干し肉で過ごしただけなのに…」

魔法使い「成長期!!」

勇者「いや、お前もう二十ごっ!!」ガンッ

魔法使い「それ以上言ったら…燃やすよ?」

僧侶「殴りはするのね…」

109: 2012/02/18(土) 22:21:14.08 ID:/pMogs3+O
パチ…パチ…

魔法使い「魚ー」

魔王「さかなー」

勇者「入れ食いだったな」
僧侶「四半時かからず20匹ですからね、ここは本当に自然豊かな土地です」

勇者「そうだな、これで村長の言うような奴らがいなければ最高だな」

僧侶「そうですね、さ、勇者様、私達も自然の恵みをいただきましょう」

勇者「そうだな、たき火の周りに刺した魚があればそうしたいんだが…」

僧侶「あれえ!?」

110: 2012/02/18(土) 22:22:52.03 ID:/pMogs3+O
僧侶「ちょっと魔法使い!あなた何匹食べたの!?」

魔法使い「一匹…」

僧侶「じゃあ魔王ちゃんは!?」

魔王「いっぴきー」

僧侶「………あの……村娘さん………は……?」

村娘「…………18匹……」

勇者「来たよ…こう言う後付け設定…」

僧侶「作者が心配だわ…」

119: 2012/02/19(日) 21:42:40.61 ID:vAPkdVDvO

魔法使い「あたしだってさあ…あたしだってさあ…もっと食べたいよ…」

魔王「もっとー」

魔法使い「それがだよ?あたしが一口魚をかじると、村娘は一飲みだよ?」

勇者「…」

魔法使い「ドラゴンをも一飲みにする奴と同じ感じなんですよ?」

僧侶「…」

魔法使い「あれ?これ、川ごと吸った方が早くね?って感じですよ?」オヨヨ…

村娘「オヨヨて…古いですね…」

魔法使い「うっさい!!」

120: 2012/02/19(日) 21:44:27.66 ID:vAPkdVDvO
勇者「まあ、また釣ればいいだけだろ」

魔法使い「焼いてる時間がもどかしい」

僧侶「けど、また釣らないとあたし達が…」

勇者「そうだな…まだ一匹も食べてないからな…」

僧侶「お腹空きました…」

勇者「だな…よし、ここは入れ食い状態だから、各自釣竿を作って、自分の分を釣るようにしよう」

―――――

勇者「よし釣竿完成、さーて、釣る…ぞ…」

僧侶「あれ…村娘さん…釣竿…は…?」

村娘「吸ってきます」

勇者「おいマジ止めろ」

121: 2012/02/19(日) 21:45:55.56 ID:vAPkdVDvO
パチ…パチ…

勇者「ん、うまい」

僧侶「塩は最高の調味料ですね、勇者様」

勇者「そうだな、どの料理にも欠かせない味だな」

魔法使い「ふー、満足したぜ」

魔王「おなかいっぱいー」

勇者「あー食った…よ…っと…」

魔法使い「じゃあそろそろだな…」

勇者「ああ」

僧侶「待っててもらって、悪い事をしましたが…」

勇者「さっきから俺達を見張ってる奴らに…挨拶しないとな…」

122: 2012/02/19(日) 21:57:34.69 ID:vAPkdVDvO
ジャキッ

勇者「さて…そこにいるのは分かってるぜ…」

ザワワッ…

勇者「来ないのか…ならこっちから行くぞ…」

魔法使い「よーし…」

『爆…裂…魔…』

?「待て…」

勇者「!?」

?「ここは天が与えてくれた自然豊かな土地…」

勇者「……」

?「傷を付けるわけにはいかない…」

ザッ

?「お初にお目にかかる…わたしは亜人間の村の長、戦うつもりはない…」

123: 2012/02/19(日) 22:00:35.15 ID:vAPkdVDvO
勇者「え…と…亜人間て…どこまで…」

亜人間長「む、主だっては我々エルフ、そしてホビット、ドワーフだが」

勇者「はあ…」

亜人間長→以下エルフ「果てはコボルトからオーガまでを修めている」

勇者「…」

僧侶「まさかまさか…の…キャンター…じゃなくて…エルフ…ですか…」

魔法使い「こりゃ…厄介な事になるな…」

124: 2012/02/19(日) 22:02:30.30 ID:vAPkdVDvO
エルフ「我々エルフは、本来貴公ら人間とは何一つ相容れない存在」

勇者「はあ…」

エルフ「その人間が、荒野からここまで復活したこの土地に足を踏み入れる事、これまかり通らん」

勇者「はあ…」

エルフ「即刻立ち去り、人間に二度とこの地に足を踏み入れないよう、進言してはくれまいか?」

勇者「はあ…」

エルフ「分かったか?」

勇者「はあ…」

エルフ「かめはめ?」

勇者「波ぁっ!!」

125: 2012/02/19(日) 22:04:58.86 ID:vAPkdVDvO
エルフ「なんだ…ちゃんと聞いているのか」

勇者「まあね、でもまいったな…俺達もう帰る所がないんだよな…」

エルフ「帰る所が?」

勇者「ああ、俺達は国からも魔王からも命を狙われてる身、帰る所なんて…」

エルフ「そうか…境遇としては、我々と変わらんと言う事か…」

勇者「あんたらも?」

エルフ「ああ…我々も人間と姿が違い、魔族とも姿は違うと言うだけで虐げられて来た存在だからな…」

126: 2012/02/19(日) 22:10:31.49 ID:vAPkdVDvO
勇者「そうなのか?そんなに変わってる感じはしないんだがな…そのスラッとしたスタイルとか…」

エルフ「なっ!?」

僧侶「そうですよ、スリムなのに出てるとこは出てるそのボデー!!」

エルフ「通販の社長!?」

魔法使い「長く綺麗な銀髪も羨ましいし」

エルフ「あうあう…」

村娘「碧い目も綺麗…」

エルフ「見ないでー…」

魔王「ムグムグ」

エルフ「あ!?なんか食べてる!?」

127: 2012/02/19(日) 22:14:37.67 ID:vAPkdVDvO
勇者「ま、とにかくだ、あんたらのその話は、俺達が伝える事は出来ないな…」

エルフ「む…」

勇者「最悪、俺達もここにやっかいになるかも知れないし、あ、その時はどっか隅っこの一画を貸してくれよな?」

エルフ「むぅ…」

勇者「まあ、相手はあのプレッシャーを持つ魔王、生きて帰ってこれるかも疑問だがな」

エルフ「あの魔王?」

130: 2012/02/19(日) 22:32:55.45 ID:vAPkdVDvO


勇者「知らないのか?この北の大地にいるはずの魔王だよ」

僧侶「もの凄い力を持っているはずです…」

エルフ「魔王…力を持っている…?」

勇者「居場所とか、何か知らないかな?」

エルフ「むぅ…まさか…あの方か…?」

魔法使い「あの方?」

村娘「こんな感じの人なんですが」サッ…ザッ…

魔法使い「すげえ…」

僧侶「土に描いただけで写真のようなリアル感…」

勇者「もうこいつに関しては後付け設定何でもありって感じだな…」

131: 2012/02/19(日) 22:35:07.20 ID:vAPkdVDvO
エルフ「む…違うな、わたしの知っている方ではないようだ…」

勇者「そうか、ならもう行っていいか?別に俺達はあんたらと戦いに来たわけじゃないからな」

エルフ「む…むぅ…」

僧侶「貴女方も、私達に危害を加えるつもりはないんでしょう?」

魔法使い「だよな、そのつもりなら飯の時に矢でも放てば楽だもんな」

エルフ「むむむ…」

勇者「じゃあな、もしかしたら、ご近所さんになるかも知れないな」

エルフ(ご近所さん…)

132: 2012/02/19(日) 22:37:22.89 ID:vAPkdVDvO
ホビット「姐御ー!!大変ですぜー!!」

エルフ「どうした?」

ホビット「やっぱダメだあいつら!!オーガの連中がゴブリンやコボルトを従えて反乱を始めやした!!」

エルフ「むぅ…またか…」

ホビット「姐御、今回は違いやすぜ!!今回はただのわがままじゃねえ!!奴ら、武器を持って仲間と交戦中でやんす!!」

エルフ「何だと!?」

ホビット「今回は完全な反乱…でやんす!!」

エルフ「むぅ…よし…戻るぞ!!」

133: 2012/02/19(日) 22:39:14.12 ID:vAPkdVDvO
勇者「あらら…行っちゃったな」

僧侶「そうですね」

魔法使い「さて、あたしらも行きますか」

勇者「そうだな」ザッ

村娘「あれ?みなさん?北はあっちですよ?」

勇者「北はあっちかもな、けど俺達が行くのは」

僧侶「困った方々がいるところ…全てです…」

魔法使い「ま、実際めんどくせーけどな」

勇者「なんだろうな…損な役回りだよな…」

134: 2012/02/19(日) 22:42:06.82 ID:vAPkdVDvO
オーガ「グゥ…アッ!!」

ドワーフ「ぬんっ!」ガキッ

ゴブリン「オセッ!!オシコロセッ!!」

ドワーフ「ぬ…うううぅうぅうううっ!!」ブンッ

オーガ「!?」ズンッ

ドワーフ「ふうっ…次はどいつだ!!」

ゴブリン「コイツ…!」

ドワーフ「姐御が戻るまで、各々氏守しろ!!」

みんな『おうっ!!』

135: 2012/02/19(日) 22:44:32.42 ID:vAPkdVDvO
ザザザザッ

エルフ「くそ…人間の問題で手一杯なのに…」ザッ

エルフ「!?」

ドワーフ「あね…ご…」

オーガ「ふう…」

エルフ「こん…な…」

オーガ「やっと戻ったか…さて…話し合いは必要なのかな?」

エルフ「むぅ…」

オーガ「俺達は…自由があれば、それでいいがな…」

エルフ「………む…」

136: 2012/02/19(日) 22:46:27.52 ID:vAPkdVDvO
ゴブリン「サテ…ドウスル…ドウスル…!?」

オーガ「どうする!?」

エルフ「わたしは…何をすればいい…?」

オーガ「我々に自由を…叶わぬなら貴様らに氏を!」

エルフ「…!?」

ズンッ!!

魔法使い「蹂躙され」

僧侶「反撃され」

シャンッ…

オーガ「!?」

スタッ…

勇者「絶望的な気持ちを受けるより、未来を見据える力を見付けるのと、どれがいいかな?」

137: 2012/02/19(日) 22:48:02.70 ID:vAPkdVDvO
オーガ「何だ…貴様…?」

勇者「そいつのお隣りさん…かな?」

エルフ「む…」

オーガ「邪魔をするか…」

勇者「つもりはないよ、ただ、仲良く出来ないってのなら…」

ジャキッ

勇者「正義の方に着く、それだけだ」

オーガ「正義…面白い…」

138: 2012/02/19(日) 22:49:35.51 ID:vAPkdVDvO
エルフ「形勢はこちらが有利か…よし…反撃だ!!」

ドワーフ「おおおおっ!」

ブンッ

オーガ「!?」

ガキンッ!!

エルフ「!?」

勇者「うお…さすがバトルアックス、叩き落とすのもやっとだぜ」

エルフ「なぜだ!!なぜ邪魔をする!?」

勇者「なぜだ?こっちこそなぜだ?」

エルフ「む?」

勇者「なぜこいつらは傷だらけで鎖に繋がれているんだ?」

139: 2012/02/19(日) 22:52:54.34 ID:vAPkdVDvO
エルフ「なぜだと?仕方ないだろう、反乱を起こされてはかなわんからな」

オーガ「反乱なんて起こしたくなかったさ…ただ…」

勇者「ただ?」

オーガ「平等に…自由を与えてくれれば…」

エルフ「む…貴様らは知能も足りず、姿もまがまがしい、ただ力や体力はある、それを我々が有効に使ってやっているのだぞ?」

オーガ「でもよ…体力のないコボルトなんかは何人も氏んで…」

エルフ「む?必要ならまた集めてやるぞ?」

140: 2012/02/19(日) 22:54:36.54 ID:vAPkdVDvO
勇者「あー、ホント、あんたが言った通り、人間とあんたらとは気が合わないみたいだな」

エルフ「む?」

魔法使い「ホント、美人て嫌な奴ばっか」

僧侶「魔法使い、ひがみも入ってます?」

魔法使い「…!!んなわけねーよ!!」

エルフ「むぅ…なるほど…敵になるか…」

勇者「まあ…少なくとも俺達はオーガにつく」

エルフ「いいだろう…」

141: 2012/02/19(日) 22:56:45.26 ID:vAPkdVDvO
エルフ「我々エルフは…多少ながら魔力を持つ…」

勇者「へえ」

エルフ「我々が本気を出せば、貴様らなど軽くあしらえるぞ」

勇者「ほう、はい、魔法使いからね、んー、あそこに向かって」

『爆裂魔法!!』

ドズンッ

魔法使い「はい僧侶」

『烈風魔法!!』

ザンッ

僧侶「はい勇者様」

『超・雷撃魔法!!』

ガゴゴゴゴッ!!

魔法使い「まだ…」

僧侶「これを見ても…」

勇者「やり合う?」

エルフ「…」フルフル

勇者「分かるか?これが力で従える…って事だ」

150: 2012/02/21(火) 12:43:23.94 ID:0KqhOXImO
オーガ「もう仲間が氏んで行くのが耐えられないんだよ…」

ゴブリン「週に一度の休みもなく働かされ…」

オーガ「働く…働くさ…けど、俺達もエルフ達と同じ自由が欲しいんだ…」

コボルト「夜くらいはゆっくり休みたいよ…」

ゴブリン「綺麗な水を飲んでみたいよ…」

オーガ「たまには腐ってない飯を食べたいんだよ…」

151: 2012/02/21(火) 12:44:35.09 ID:0KqhOXImO
僧侶「ひどい…」

魔法使い「想像の斜め上の左の斜め下の右だな…」

勇者「戻ったな」

エルフ「むぅ…何が悪いのだ?使える者を使える位置に置いただけだ」

ドワーフ「有効だろ?使えない奴は使える位置に置く、それでも使えないなら淘汰される」

勇者「魔王だな」

僧侶「どこにでも…いるのですね…」

魔法使い「まあ…あたしらも淘汰されたけどな」

152: 2012/02/21(火) 12:47:57.94 ID:0KqhOXImO
勇者「ともかくだ…エルフ、もうこいつらは自由にしてやれ」

エルフ「む…簡単に言うが、統率されていないあいつらは厄介だぞ」

勇者「統率すればいいさ、だけど、さっきの意見も聞き入れてやればいい」

エルフ「むぅ…」

勇者「簡単な事だって、秩序を作った上で自由にしてやればいい」

勇者「お前らも、普通に暮らせれば…」

オーガ「ああ…反乱を起こす理由はない…」

153: 2012/02/21(火) 12:49:24.39 ID:0KqhOXImO
勇者「じゃあ行くぜ?もう辛く当たるなよ?」

エルフ「む…」

オーガ「すまない…そしてありがとう…」

勇者「はあ…ホントこういうの困るよな…」

僧侶「お礼を言われる事はしてませんのにね」

魔法使い「いいんじゃねーの?」

魔王「ふわふわおかしー」

オーガ「大地の雲のお菓子だ、うまいぞ」

魔王「ふわふわー」

154: 2012/02/21(火) 12:50:56.56 ID:0KqhOXImO
エルフ「この森の北西…そこにあの方はいる」

勇者「まだ北に行かないといけないのか…」

僧侶「でも…あの方とはいったい…?」

エルフ「神だ」

勇者「神?まさか…あの女神か…?」

エルフ「大地を変える力を持つ神」

オーガ「我等モンスターを従えた神…」

勇者「何にせよ…行ってみるか…」

僧侶「後戻りは出来ませんもんね」

魔法使い「はあ…」

155: 2012/02/21(火) 12:52:48.29 ID:0KqhOXImO
エルフ「すまなかったな…私もやり方がいまいち分からなかったのだ…」

オーガ「いや、分かってくれればいいさ…」

僧侶「これで一安心…ですかね」

勇者「そうだな」

魔法使い「よしっ、ならさっさと行こうぜ」

エルフ「まずは境遇を改善しよう!腐った食べ物がダメなら、傷みかけた食べ物ならよいのだろう!!」

オーガ「あれ?これ直んなくね?」

勇者「もういいよ」

157: 2012/02/21(火) 18:54:01.31 ID:0KqhOXImO


エルフ「冗談だ、きっちり改善はするさ」

勇者「頼むぜ…」

エルフ「まずはお前達の居住区の改善だ、我々が設計をし、ドワーフが木を切り、オーガ達が運び、ホビット達がそれを元に材料を作り、ゴブリン達が…」

勇者「……」

僧侶「今度は本当に大丈夫みたいですね」

魔法使い「まあエルフは長生きだからな、知識は豊富なんだろうよ」

勇者「さて…本当に行きますか…」

エルフ「待て」

158: 2012/02/21(火) 18:55:05.50 ID:0KqhOXImO
勇者「何だ?」

エルフ「北の魔王とやら、本当にあの方ではないんだろうな?」

勇者「ああ、違う、少なくとも神、なんて呼ばれる様な奴じゃなかった」

魔法使い「とんでもない威圧感と残忍さ…」

僧侶「……」

エルフ「ならばよいが…もしあの方に刃向ける事があるならば…」

オーガ「すまねえ…俺達は戦う事になる…」

勇者「そうか、まあ、そんな事にはならないよ」

159: 2012/02/21(火) 18:57:47.63 ID:0KqhOXImO
オーガ「そうだ、これを持っていけ」

勇者「何だこ…れ…くっさ!?」

魔法使い「おろろろろ!」

僧侶「ああっ!?魔法使いがさっきの魚を!?」

勇者「もう完全に吐きキャラだなくっさ!!」

村娘「おろろろろ!!」

エルフ「ああっ!?焼き魚がこんなにたくさん!?」

勇者「一飲みにしてたとは言ってたが…噛んでなかったのかよくっさ!!」

160: 2012/02/21(火) 19:01:23.93 ID:0KqhOXImO
オーガ「阿鼻叫喚の所悪いが…これは俺達がこっそり作った傷薬だ…」

勇者「傷薬?」

オーガ「ああ、怪我が絶えなかったんでな、少しくらいの傷ならすぐに塞がっちまうぞ」

勇者「そうか…」

魔法使い「これ…悪化しないだろうな…?」

僧侶「まあまあ、『良薬、口に苦し』って言いますから…」

勇者「違うと思う…」

161: 2012/02/21(火) 19:03:21.94 ID:0KqhOXImO
勇者「まあ…ありがとうな…」

オーガ「ああ」

エルフ「達者でな」

勇者「さて…行こうか」

僧侶「はい、勇者様」

魔法使い「ダメージがでかすぎる…」フラフラ

オーガ「行ったか…」

エルフ「ああ」

オーガ「さて、さっさと仕事に取り掛かるか」

エルフ「そうしよう、まずは居住区を…あ…」

エルフ(しまった…)

162: 2012/02/21(火) 19:05:00.64 ID:0KqhOXImO
勇者「はああ…いい天気だなあ…」

僧侶「本当ですね、こんなに風が気持ちいいのは久しぶりです」

魔法使い「よし!弁当にしようぜ!!」

村娘「お腹が空きました」

勇者「吐いたからね」

魔王「ごはんー」

僧侶「はいはい魔王ちゃん、勇者様、この辺りでさっきの集落で買った『モンスターも大好き弁当』でもいただきましょう」

勇者「そのネーミングに不安を感じるんだけど…」

171: 2012/02/23(木) 19:36:17.18 ID:aQlR7QIlO


魔法使い「いただきまーす!!」

魔王「いただきまーす」

僧侶「魔王ちゃん、お口の周りばっちっちぃですよ」

魔王「ムグムグ」

魔法使い「………」

勇者「どうした魔法使い?食べないのか?」

魔法使い「食べるよ!!…あのさ…悪かったな…」

勇者「それは俺にか?それとも村娘にか?」

魔法使い「ちぇ…何でもお見通しかよ…」

魔法使い「両方さ…」

172: 2012/02/23(木) 19:38:07.37 ID:aQlR7QIlO
魔法使い「あたしもさ…多分だけど、魔力だけなら勇者より上か、少し上だろ」

勇者「上前提ね」

魔法使い「なのに勇者はあたしじゃなかった…」

勇者「そうだな」

魔法使い「あたしに足りないのは…信じる心と、深い慈悲の心…」

勇者「…」

魔法使い「村娘…すまねえ…あたしは一回あんたの村を見捨てようとした…」

村娘「…」

魔法使い「そしてあたしは勇者を疑った…」

僧侶「わたしも…」

魔法使い「すまねえ…」

173: 2012/02/23(木) 19:39:53.50 ID:aQlR7QIlO
勇者「あー食った」

勇者「魔王、お口の周りばっちっちぃよ」

魔王「ムグムグ」

魔法使い「勇者…」

僧侶「勇者様…」

勇者「何をいまさら…」

勇者「よっ…と…」

勇者「んー…あー…いい天気だな…」

勇者「信じる心に慈悲の心かあ…」

勇者「お前達は俺を信じてくれて…」

勇者「ついてきてくれてるのに…これ以上何を望めば慈悲になるのか…」

174: 2012/02/23(木) 19:42:48.76 ID:aQlR7QIlO
魔法使い「勇者…」

僧侶「ダメですよ…」

魔法使い「は?」

僧侶「今好きになりかけてたでしょう!?」

魔法使い「なんねーよ!!こんなあのあれ!!」

僧侶「ほら図星!!」

魔法使い「なってねーから本当に!!」

勇者「俺を取り合う美女とちょっと美女か…かなりのおいしい展開…」

僧侶・魔法使い「その『ちょっと』はどっち?」ズイッ

勇者「やっべ…」

176: 2012/02/23(木) 20:49:39.44 ID:aQlR7QIlO
男「さて…『第七の封印』解けそう?」

?「人間、亜人間、動物、植物、魔王、神…」

男「そ…七つめの…」

?「そうね、もう解けたけど…解けたからって…変わるかしら…」

男「変わるさ」

スタスタ

男「少なくとも…今回の勇者はまともだからね…」

ピトッ

男「…」ニタァッ

男「変えてくれなきゃ…俺が困るよ…」

?「あなたも俗ね…」

男「まあね…そろそろ北の大地も半ば…いつ頃着くか賭け」

?「ないっつの」

180: 2012/02/24(金) 20:48:20.87 ID:JCFtleMEO
オオォオォオオォオォ…



魔法使い「さみひぃーよぉー」ガチガチガチガチ

僧侶「何で…先日まであんなにのどかな風景だったのに…」ブルブルブルブル

勇者「山二つ三つ越えたとたんにこれか…」

魔法「しろいー」

僧侶「そうか、魔王ちゃんは雪は初めてね」

勇者「まだ半年だからな」
魔法使い「けどよー…さすがに寒すぎる…」ガチガチ

勇者「確かにそうだな…僧侶、防御魔法を頼む」

僧侶「はい、勇者様」スゥ

『防御魔法!!』

村娘「………ムグムグ…」

勇者「おい、今声にまぎれて何か食ったろ?」

181: 2012/02/24(金) 20:50:47.08 ID:JCFtleMEO
魔法使い「お…?」

勇者「防御魔法の壁が、風と雪を遮ってくれるだけでもいいだろ?」

魔法使い「うへへ…ホントだ、なんか暖かくすら感じるぜ」

僧侶「そうですね、でも、どこかで冷えた身体を暖めたいですね」

村娘「そうですね」

魔法使い「あ?おあつらえむきに、あんな所に洞窟があるぜ」

勇者「やだなあ…こいつのフラグ立て」

182: 2012/02/24(金) 20:52:35.56 ID:JCFtleMEO
魔法使い「『火炎魔法』」

ボウッ

魔法使い「うーい…あったけえぜ…」

勇者「あったまるなあ」

パチパチ

村娘「………」ジュルリ

勇者「何でここぞとばかりにこの寒さで冷凍保存してたマイ魚を焼くかな?」

村娘「食べるからです」

勇者「もうホントに理由が普通すぎて反論すら出来ないよ…」

ゴトッ

勇者「何だ!?」

グウウゥウウウゥウウ…

僧侶「あれは…」

魔法使い「でかいな…」

勇者「へっ…話に出てきたドラゴン様かよ…」

村娘「これが…!?」

186: 2012/02/25(土) 00:28:20.95 ID:8fwi6RDkO
グルウウゥウウウゥウウ…

勇者「身の丈は…家屋三棟くらいか…」

ズンッ

村娘「ひっ!!」

グウウゥウウウ…

ドラゴン「人間よ…」

魔法使い「喋った…」

勇者「まずいな…人語を操るドラゴンか…」

僧侶「かなり上位のドラゴンですね…」

ドラゴン「食わせろ…」

グウゥウウウゥウウウ…

勇者「やなこった…さて…始めるか…」

ドラゴン「頼む…その魚…食わせてくれえ…」

グウウウウウウウウウウウウウ…

勇者「………」

188: 2012/02/25(土) 00:30:29.70 ID:8fwi6RDkO
ドラゴン「助かった…礼を言おう…」

勇者「いや、礼はいいよ、どうやら敵意はないみたいだからな」

ドラゴン「敵意などと、とんでもない、貴公らは我の命の恩人だ」

村娘「あたしの魚…」グスッ
魔王「」ナデナデ

ドラゴン「助かった…もう三日、何も食べてはいなかったからな」

勇者「三日?何でまた?」

ドラゴン「三日前から急に始まった、この吹雪のせいでだよ…」

189: 2012/02/25(土) 00:36:01.45 ID:8fwi6RDkO
ドラゴン「本当に急だった…この吹雪の為、動植物は氏に絶えた…我らドラゴンは、太陽の光を栄養と換え、足りない分は動植物から僅かながらの恩恵を受けて生きてきた」

勇者「吹雪のせいで、太陽が隠れてるから…」

ドラゴン「そうだ…」

魔法使い「肉食べて栄養になるなら、動物の氏体でもいいじゃん?」

ドラゴン「生きているか、この魚のように元気に生きていて、氏んで間もなくでなければダメなのだよ…生命力を貰っているのだから…皆、弱りに弱って氏んで行ったから…

勇者「なるほどな…」

190: 2012/02/25(土) 00:38:35.10 ID:8fwi6RDkO
魔法使い「飛んでどこかに行けばいいのに」

ドラゴン「試したさ…結果、多くの同胞があの吹雪に飲み込まれ…息絶えた…」

僧侶「あ!?ドラゴンをも一飲みにする…」

勇者「………ん………あの話か………」

魔法使い「ドラゴンって、火とか吹雪に強いイメージあったわ」

ドラゴン「中にはいる、が、この様な環境ではどのドラゴンも生き残れない…」

ドラゴン「なぜ…この様な事に…」

191: 2012/02/25(土) 00:40:18.14 ID:8fwi6RDkO
勇者「しゃーないな…よっ…と…」

魔法使い「まためんどくさい事になるのかよ…」

僧侶「さあさあ、早く原因を突き止めましょう」

ドラゴン「貴公ら…?」

勇者「出来るだけ早く、この吹雪の原因を見付けてくるよ」

ドラゴン「すまぬ…」

村娘「え?え?困った人々を助けるんじゃ…?」

僧侶「わたし言いました」

勇者「俺達が行くのは…」

僧侶「困った『方々』がいるところです」

194: 2012/02/25(土) 23:10:51.67 ID:8fwi6RDkO
男「いい感じ」

?「さて、再封印のやり方…見付けられますかね?」

男「賭け」

?「ねーっつってんだろ」

男「冷たいなぁ…ああ…早く覚醒した魔王に会いたいよ…」

?「どっちに転ぶにせよ…覚醒はしますよ…」

男「そうだね…クク…何だろう…ククククッ…楽しみすぎて涙が出てくる…」

?「悪趣味な…」

?(勇者…僧侶…魔法使い…魔王ちゃん…何…?この意識だけの存在は…?)

195: 2012/02/25(土) 23:12:05.25 ID:8fwi6RDkO
勇者「さーて…どこから何をどうしたらいい?」

僧侶「5W1Hですね?」

魔法使い「3Wしかなかったけどな」

勇者「まず魔法使い」

魔法使い「はいよ」

『超・火炎魔法!!』

ドジュウウウウウッ!

勇者「消火、蒸発して終わりか…僧侶」

僧侶「はい、勇者様」

『超・烈風魔法!!』

ズゴゴォオオォゥ…

勇者「風向き変わらず…」
勇者「はい詰んだ」

魔法使い「はえーよ」

196: 2012/02/25(土) 23:14:11.98 ID:8fwi6RDkO
勇者「仕方ないだろ?そもそも風なんてどこから始まって吹いてくるんだよ」

魔法使い「さ…さあ…」

勇者「だろ?そもそも冬って何で来るのか…」

村娘「太陽が低いからですよ」

勇者「え?」

村娘「何年も太陽を見て来たら何となくですが…太陽が低いと寒くなります」

勇者「太陽が低い…」

村娘「風ですが、風は寒い地域と暖かい地域の間では強くなってました」

勇者「ほ…ほう…」

村娘「確信はありませんが…経験です…」

197: 2012/02/25(土) 23:15:21.54 ID:8fwi6RDkO
僧侶「つまり…?」

村娘「二つ三つ山を歩いたくらいでは、気候は前の大地と変わらないはずです、つまりは、更に北からこの吹雪を生み出すだけの寒気が来ているんです」

勇者「て事は…はあ…更に北に行けって事か…」

村娘「ここはさほど高い山じゃないから、偏西風の影響とは考えにくいし…」

ブツブツ…

勇者「え?何?」

村娘「何でもありません、さあ行きましょう」ムグムグ

勇者「おい、今何か食ったろ?」

198: 2012/02/25(土) 23:16:59.28 ID:8fwi6RDkO
村娘「でもおかしいです…村長から聞いた話だと、更に北は数多の生物を焼き尽くす灼熱の大地…寒気が来るとはとても…」

勇者「て事…は」

魔法使い「あいつか…」

僧侶「北の魔王…でも…」

村娘「僧侶さんなら分かるはずですが…」

僧侶「そうね…神も魔王も、何人たりとも自然を覆す事はできない…」

魔法使い「知ってるぜ、神と魔の物語」

199: 2012/02/25(土) 23:18:56.37 ID:8fwi6RDkO
ずっとずっと昔、ある村に男がいました。

男は不思議な力を持っていて、指先で落ち葉に火を着け、軽く虚空を撫でると風が起き、大きな焚き火が出来、みんな喜びました。

ある時、村に大きな災害がやってきました。

風が荒れ狂い、巨大な雷が落ち、納屋を流すほどの洪水が押し寄せました。

みんな言いました。

男、もうやめてくれ。

と。

男はやっていませんでした、それどころか、男は村のために誰よりもたくさんたくさん働きました。

もうやめてくれ…

俺はやってない…

勘弁してくれ…

俺はやってない…

お前のせいだ…

俺は…

ドクンッ

やってもいいんだな?

魔王が生まれました。

200: 2012/02/25(土) 23:20:42.96 ID:8fwi6RDkO
その時、村に一人の女の人がやってきました。

女の人はみんなに話を聞くと、魔王の所に行きました。

もうおやめなさい。

やってない…

でないと…

やってない…

魔王は斬られました。

するとどうでしょう。

あれほど荒れ狂っていた嵐が、一陣の心地好い風と共に、嘘のように晴れ上がりました。

女の人は魔王を斬っただけでした。

でもみんなは口々にこう言いました。

素晴らしい…

救世主だ…

ああ…

あなたこそ…

女の人は神になりました。

201: 2012/02/25(土) 23:22:09.24 ID:8fwi6RDkO
パタンッ

男「なーに読んで…」チッ

?「神と魔の物語よ…」

男「なーんでそんなもん…てか何であんたの名前が最初なんだよ?」

神「そうね…性格?」

男「はいはい…それよりどう?封印は?」

神「これを…」

男「………これは…」

神「そう…さっき…」

男「村娘ちゃん!」

神「いや…」

男「何で早く村娘ちゃんを見せなかったの!?」

男「村娘ちゃーん!!」

神「いや…こうなるの分かってたから…」

210: 2012/02/26(日) 20:43:37.79 ID:RLgWyCdNO
村娘「風が…」

勇者「どうした村娘?」

村娘「いや…そこの山あいから風が…」

僧侶「風?」

魔法使い「風なんてそこらじゅうにあるじゃん」

勇者「いや…これは…」

僧侶「勇者様、行ってみましょう」

勇者「ああ…」

魔法使い「何?そっちに何…が…」

僧侶「雪の…」

勇者「竜巻か…」

勇者「僧侶、頼む」

僧侶「はい、勇者様」

『防御魔法!!』

魔法使い「さて…」

勇者「行くか…」

村娘「この先に…」

勇者「何かあればいいんだけどな」

211: 2012/02/26(日) 20:45:07.20 ID:RLgWyCdNO
山あい



魔法使い「おいおい…マジかよ…」

勇者「ああ…暑いな…」

僧侶「灼熱の大地の影響でしょうか?」

勇者「かもな、だけど、あの寒さに影響を及ぼすとはとても…」

魔法使い「だな、竜巻を越えた途端にこの暑さ…」

村娘「北から寒気が来たようではないですね…」

勇者「ああ…あそこを堺に急に…だな…」

212: 2012/02/26(日) 20:47:04.96 ID:RLgWyCdNO
勇者「しかし…やっぱり怪しいな、この竜巻」

魔法使い「よーし、ここはあたしが」スゥ

『超・爆裂魔法!!』

ドッ!!ズンッ!!

魔法使い「どうだ!!吹っ飛ばしたか!?」

ゴ…

ゴゴゴゴゴゴゴゴ…

勇者「変わらず…か」

オ…

村娘「待って…」

オオオォオオオオオ…

村娘「これは…!?僧侶さん!!防御魔法を!!」

僧侶「『防御魔法!!』」

オオオォオッ…

バズンッ!!

213: 2012/02/26(日) 20:49:09.63 ID:RLgWyCdNO
オオオォオオオオォオ…

勇者「何だ…今の爆発は…どこから…」

村娘「ダウンバーストです、それも、範囲が狭く威力の高いマイクロバースト、立ち木程度なら簡単にへし折ります」

勇者「何だってそんなもんが?」

村娘「分かりませんが…」

魔法使い「生意気だぜ!!よおーっし…じゃあ…」

魔法使い「更に凍れ」

『超・氷槍魔法!!』

ゴ…ォ…オオオォオ!!

僧侶「キャー!!さらに吹雪が強く!!」

勇者「何なんだ…」

214: 2012/02/26(日) 20:50:55.44 ID:RLgWyCdNO
魔王「ぜんぶー」

村娘「?」

魔王「のろいー」ギュ

村娘「どうしたの魔王ちゃん?」

魔王「むー」

勇者「厄介だな…受けた攻撃を似た力で返してくるみたいだ」

魔法使い「いったいどうすりゃいいんだよ…」

僧侶「まるで見当がつきませんわ…」

魔法使い「こうなったら…フルパワーだ!!」

勇者「バカ!?」

『超・火炎魔法!!』

バオオオオオォオッ!!

勇者「ヤバい!!僧侶!!全力で防御魔法…を…?」
オオオォオオオオ…

僧侶「あら…吹雪が…」

勇者「弱まった…?」

215: 2012/02/26(日) 20:52:53.27 ID:RLgWyCdNO
………………しかし。

神と崇められた女の人が村を去って数日後、また災厄がやってきました。

魔王はもういないのに。

神がいるのに。

そうでした。

男は何もしていないし、何も出来ないからです。

女の人は魔王を切っただけで、何も出来ないからです。

例え魔王でも。

例え神でも。

災厄を操る事は出来ないからです。

春に暖かな陽射しが雪を溶かします。

夏には雷雨が吹き荒れ。

秋には………

217: 2012/02/26(日) 20:57:02.85 ID:RLgWyCdNO

神「………」パタンッ

男「また読んでるし…」

神「暇なんだもん、今回の封印だって、何が解けたのかも答えも分からないし」

男「まあね…そうだ!?」

神「賭けないわよ?」

男「違うよ、さっきの宝珠貸して?」

神「いいけど、何に使うの?つまらない事ならやめてよね」

男「大事な宝珠だからね、ちゃんと使うさ」

神「仕方ないわね…はい」

男「ありがとー」スタスタ

バタンッ

神「………」

ムラムスメチャーン

神「やっぱつまらない事だったか…」

218: 2012/02/26(日) 21:01:01.49 ID:RLgWyCdNO
村娘「これは…」

勇者「火炎魔法か…よし魔法使い!」

魔法使い「任せろ!!」

村娘「待って!!」

勇者「村娘?」

村娘「火炎で…」ブツブツ

僧侶「村娘さん、どうしたんでしょうか?」

勇者「さあな…でも、村娘の経験で何か思い付いたんじゃないのかな…」

村娘「僧侶さん!!」

僧侶「はっ!はいっ!?」

村娘「神と魔の物語…最後を教えて下さい!!」

僧侶「はい!!」

219: 2012/02/26(日) 21:04:14.23 ID:RLgWyCdNO
春に暖かな陽射しが雪を溶かします。

夏には雷雨が吹き荒れ。

秋には野山にたわわに実った果実や生き物が溢れ。

冬には雪が野山を覆いつくし。

また春が訪れます。

みんなは知らなかったのです。

例え魔王でも。

例え神でも。

自然の力を操る事が出来ない事を。

みんなは知らなかったのです。

不思議な力を持って、村のために頑張った男が神になるべきだった事を。

みんなは知らなかったのです。

確たるなく人を切った女の人こそ、魔王たる事を。

魔王はそれからたくさんたくさん人を…

220: 2012/02/26(日) 21:08:07.19 ID:RLgWyCdNO
村娘「確信はありませんが…お願いします…」

勇者「何かの答えに辿り着いたか?」

村娘「はい」

勇者「よし…」

村娘「わたしの言う順番でお願いします…」

勇者「ああ、教えてくれ」

村娘「はい…」

村娘「暖かな陽射しで春は来ました…勇者様!!」

勇者「おう!!」

『超・雷撃魔法!!』

221: 2012/02/26(日) 21:10:27.05 ID:RLgWyCdNO
オオオォオ…

勇者「竜巻が弱まった!」

村娘「やっぱり…神と魔の物語…捩曲げられた自然の摂理…」

僧侶「聞いた事があります…ごくたまに、突如現れる超自然現象…」

魔法使い「あたしの先生も言ってたな、それが現れたら、本来なら学者総出で研究するってよ…」

勇者「それを一人で…すごいな…」

魔法使い「マジですげえぜ村娘!!」

僧侶「それで!次はどうしたらいいですか!?」

村娘「はい…あの竜巻に…わたしが入ります…」

勇者「!?」

227: 2012/02/28(火) 00:57:23.28 ID:P2nSlrQpO

勇者「何を言って…」

村娘「秋には供物が必要です…」

僧侶「そんな…」

村娘「だから…これは多分魔法では無理です…」

魔法使い「そんなの…」

村娘「大丈夫です、わたしにはもう何も…お母さんも…村も…」

勇者「違うだろ…」

村娘「大丈夫…それで…たくさんのドラゴンが…自然が助かるんですよ?」ザッ

勇者「違うっ!!」シャンッ

村娘「その剣は?」

勇者「ここは通さん!!」

229: 2012/02/28(火) 00:59:40.84 ID:P2nSlrQpO
村娘「………」グイッ

勇者「!?」

村娘「その剣でわたしの首を跳ねるより…ドラゴン達を助けてください…」

勇者「……くっ…」

村娘「覚悟を決めた女って…強いんですよ…」

勇者「だからって…」

村娘「……辛いの…」

勇者「………」

村娘「どんな事をしたってお母さんは…村のみんなは帰ってこない…」

村娘「せっかく声が出るのに…たくさんありがとうって言いたいのに…」

村娘「ずっとずっと苦労かけてきて…やっと恩返し出来ると思ったのに…」

村娘「こんな事になるのって…ずるいじゃんかあ…」グスッ

230: 2012/02/28(火) 01:02:13.57 ID:P2nSlrQpO
勇者「そうかもしれない…だけど俺は…」

ザッ

プツッ

勇者「!?」

僧侶「村娘さん!?」

村娘「少し首が傷付いただけ、大丈夫…」

村娘「魔法使いさん」

魔法使い「何っ…だ…?」

村娘「お願いします、最後にやるのは…」

ザッ

勇者「………」

オオオォオ…

勇者「何が勇者だ…」

オオオォオ…オッ!!

村娘「………と…う…」

オオオォオッ!!

勇者「何が勇者だ!!誰も…誰一人助けられないじゃないか!!」

231: 2012/02/28(火) 01:04:06.05 ID:P2nSlrQpO
魔法使い「………さーて…やってやりますか…」

勇者「よく平気だな…」

魔法使い「いっちょ本気で行きますよ…」コキッ

勇者「よく平気でいられるな!!」

僧侶「勇者様!!」

勇者「何だ!!」

魔法使い「もっかい冬が来て…また暖かい春…」

勇者「………」

魔法使い「暖かい春…」

勇者「………くそ…」

魔法使い「ったれえ!!」

『超・凍結魔法!!』

233: 2012/02/28(火) 01:08:31.70 ID:P2nSlrQpO
僧侶「竜巻が!?」

勇者「消えた!?」

魔法使い「さあ…あたしの魔力…」

グッ

魔法使い「どんだけ残ってるんだよ…」

キイイィイ…

魔法使い「全力で行ってやるからよ…」

イイイイィイイイ…

魔法使い「全力で来いよ…新しい春…」

キイイィイイイイイ!!

魔法使い「村娘!!」

ウオッ!!

魔法使い「受け取れ!!」

『絶・火炎魔法!!』

ドンッ!!

238: 2012/02/28(火) 21:34:23.64 ID:P2nSlrQpO
カアッ!!

勇者「ぐううっ!?」

僧侶「何て輝き…」

魔法使い「はああっ!?目が!?目がぁっ!!」

勇者「ばかな…こんな事って…あるのかよ…」

僧侶「太陽が…」

魔法使い「緑が…」

勇者「みるみる内に復活している…」

僧侶「封印されて、本来の姿に戻っているのですね…それもこれも…」

魔法使い「村娘…あたし…やったぜ…」

勇者「これでドラゴン達も大丈夫だろ…行こうか…」

僧侶「はい…」

魔法使い「北へ…」

勇者「村娘…」

ありがとう…

239: 2012/02/28(火) 21:36:09.40 ID:P2nSlrQpO
あったかい…

ポカポカ…

グウウウウ…

お腹空いた…

確かここに…

……

……?

……

……!?

ない!?

あれ確かここに…

やっぱりない!!

「あたしのお魚がなくなってる!!」ガバッ

勇者「!?」

240: 2012/02/28(火) 21:37:25.92 ID:P2nSlrQpO
村娘「ない!やっぱり一匹もなくなってる!!」アタフタ

勇者「村娘…」

村娘「あれ!?ちょっと!ねえ!!」

僧侶「村娘さん…」

村娘「あれおかしい!!あれ!?え!?」

魔法使い「村娘ぇ…」グスッ

村娘「あれ!?30匹のお魚が消えちゃったぁ!?」

勇者「仕込みすぎだろ」

241: 2012/02/28(火) 21:39:01.04 ID:P2nSlrQpO
魔法使い「村娘!!こんにゃろっ!!」ダキツキッ

村娘「えっ!?」

魔法使い「うううっ…」

村娘「魔法使いさん?」

僧侶「あらあら…」

勇者「あいつはホント…昔から人を好きになりやすいよな…」

僧侶「そうですね…」

勇者「しかし…何が起こったんだ?」

僧侶「魚じゃあないですかね?」

勇者「魚?」

僧侶「はい、供物として、身代わりに…」

勇者「なるほどな…30匹だもんな…」

242: 2012/02/28(火) 21:40:45.00 ID:P2nSlrQpO
魔法使い「んーっ…っあー!!気持ちいいな!?」

勇者「そうだな、あったかいし、空気も美味い」

村娘「これでご飯が干し肉じゃなければなあ…」

魔王「アグアグ」

勇者「なあに、少し行けば川もあるだろ」

村娘「魚!!」

僧侶「ふふっ」

魔法使い「へへっ」

勇者「村娘」

村娘「はい?」



『おかえり』



村娘「………ただいま…」

243: 2012/02/28(火) 21:44:17.13 ID:P2nSlrQpO
騎士団長「さて…補給も完了した…行くぞ」

兵士長「は」

騎士団長「聞け!!これより北の大地に入る!!」

ザッ

騎士団長「討つべくは反乱を起こせし勇者一行!!」

ザワッ

騎士団長「勇者の首討ち取りし強者には、王から相応以上の報酬が与えられるだろう!!」

ザワザワ

騎士団長「行くぞ!!反乱者には氏を!!」

『氏を!!』ザンッ

245: 2012/02/28(火) 21:46:14.09 ID:P2nSlrQpO
エルフ「しまった…」

オーガ「どうした?」

エルフ「いや、あの傷薬なんだが…」

オーガ「あれはいいぞ、すぐに傷が塞がる」

エルフ「お前達はな…だがあれは、人間には全く効果がない成分なんだ…」

オーガ「そうなのか!?」

エルフ「ああ…しかもあれは悪魔に与えると力が倍増する厄介な物だ…」

オーガ「じゃあ…あいつらが探してる魔王、とやらに渡ったら…」

エルフ「む…むうう…」

オーガ「何ですぐに言わないんだよ!?」

エルフ「む…忘れてた…」

246: 2012/02/28(火) 21:49:26.73 ID:P2nSlrQpO

勇者「さて…」

僧侶「ここからが辛いかも知れませんね…」

魔法使い「灼熱の大地…」

勇者「まずは西に迂回してみるか、東は海だし」

魔法使い「真っすぐ行かないのか?」

勇者「真っすぐはなあ…魔王はまだ小さいし…」

僧侶「そうですね…魔王ちゃんに無理はさせられませんから…」

魔王「あついー」

村娘「ああ…あの溶岩ならお魚さんが…」

勇者「よく焼けそうだけど行くぞ」

247: 2012/02/28(火) 21:51:59.11 ID:P2nSlrQpO


灼熱の大地・迂回路



勇者「…」グー

僧侶「…」スースー

魔法使い「…」グゴー

村娘「…」ンクー

魔王「…」ムクリ

魔王「…」スタスタ

魔王「ママ」

僧侶「うーん…魔王ちゃん…朝はまだよ…」

魔王「パパ」

勇者「むうー…魔王…もう少し寝かせてくれ…」

魔王「何か来てるよ」

勇者「?」パチクリ

254: 2012/02/29(水) 13:11:40.22 ID:y2VIXQxzO
勇者「なんっ!?お前!?え!?誰だ!?」ガバッ

僧侶「うーん…どうしたんですか…勇者様…のド変態!!」バチーン

勇者「ぶふぉ!!」

僧侶「見損ないました!!そんな若い子と…」

勇者「知らない!!いやホント知らない!!」

魔王「パパ、ママ、それはいいけど…」

勇者「え…?」

僧侶「魔王…ちゃん…?」

魔王「見られてるよ」

勇者「む?」

255: 2012/02/29(水) 13:18:40.10 ID:y2VIXQxzO
使い魔「…」バサッ

僧侶「あれは…」

勇者「行っちまったな」

僧侶「北の魔王の使い魔でしょうか…?」

勇者「かもな…」

僧侶「そうなると…向こうから仕掛けてくる可能性もありますわね」

勇者「だな…たまには干し肉以外がいいよな…」

僧侶「ですね…湯舟は気持ちいいですよね…」

魔王「現実逃避してんじゃねーぞ」

256: 2012/02/29(水) 13:31:00.72 ID:y2VIXQxzO
勇者「本当に魔王…か?」

僧侶「とにかく!その服を何とかしないと!!」

勇者「そうだな…えっと…魔法使いの服なら合いそうじゃないか?」

ゴソゴソ

僧侶「キャー!!勇者様のド変態!!何女の子の荷物を勝手に漁ってるんですか!!」

バチーン

勇者「ぶふぉ!!」

魔王「本当に勇者…か?」

260: 2012/02/29(水) 21:39:00.19 ID:y2VIXQxzO

魔法使い「成長が早いとは思ってたけど…」

村娘「まさか一晩で…」

僧侶「わたしもビックリいたしました…」

魔法使い「…」

勇者「しかし…まあ…前魔王の面影はないな」

魔法使い「くっ…」ウズウズ

僧侶「そうですね」

魔法使い「ダメだ!我慢出来ない!かわいー!」スリスリ

魔王「えー!?」

魔法使い「可愛いなお前!おい!おい!!ん!!服似合ってんな!!サイズもピッタシじゃねえか!?」

魔王「ちょっと胸が苦しいかな?」

魔法使い「…」

勇者「あ、沈黙した…」

261: 2012/02/29(水) 21:40:55.60 ID:y2VIXQxzO
勇者「しかし…何でまた一晩でこんなに…」

魔王「思念」

勇者「え?」

魔王「人の思い、願い、感情があたしのごはん」

勇者「ごはん…て…いつも普通に食べてるじゃ…」

魔王「あれは肉体エネルギーの一部分、魔王は全体の成長には人の思念をごはんにするの」

僧侶「それって…」

魔王「人が悲しみ」

―――――

『人が悲しみ』

『人が恨み』

『人が絶望する』

『この想いが魔王を育て、強くする』

『人よ無駄におののけ』

『人よ怒りを現せ』

『人よ己を裏切り啜り泣く人生を送れ』

262: 2012/02/29(水) 21:43:55.55 ID:y2VIXQxzO
―――――

魔王「おいしかったよ…パパと魔法使いさんの怒り」
ジュルッ

魔王「ママの悲しみも…」
魔王「村娘さんの絶望も…」

魔王「ふふふっ…」

魔王「あっはははは!!」

グアッ!!

魔王「これが力…」

魔王「すごい…体中の細胞が騒いでる…」

魔王「ああ…これならすぐにでも世界を焦土に…」

魔王「いいえ…」

魔王「普通に世界を統べるのもいいかもね…」

勇者「いいから行くぞ」

魔王「え!?」

263: 2012/02/29(水) 21:46:07.31 ID:y2VIXQxzO
勇者「だから、早く北の魔王の所に行くぞ」

魔王「いやその…だからあたしは…」

僧侶「魔王ちゃん、ママと同じくらいの背になっちゃったね」ナデナデ

魔王「いや、ちが…」

魔法使い「ま…まあ…行こうぜ…」

勇者「ものすごいダメージだな?」

魔王「だから…」

勇者「俺は、お前を悪に育てたつもりはない」

僧侶「魔王ちゃんからは邪悪な感じがしませんよ」

魔王「ちぇ…」

264: 2012/02/29(水) 21:49:30.73 ID:y2VIXQxzO
魔王「でも…あたしが本気で世界を征服しようとしたなら…どうする?」

勇者「…」

魔王「この力…簡単には止まらないよ…」

僧侶「はーい魔王ちゃん、パパにごめんなさいしましょうね」

魔王「子供扱いすんな!」

勇者「魔王」

魔王「何よ?」

勇者「本気でそう思ってるなら…俺を殺せ」

魔王「!?」

勇者「そう育てた俺の責任だ…もし冗談なら、二度と口にするな…」

魔王「…」

勇者「力ある人間がそれを口にすると…皆が怯えて暮らす事になる…」

魔王「………ごめんなさい…パパ…」

265: 2012/02/29(水) 21:53:37.14 ID:y2VIXQxzO
押せ

押せ!

圧せ!!

「ぐううっ!?」ドサッ

兵士長「殺せ!!ただの亜人間どもだ!!使える物はすべて奪え!!」

『火炎魔法!!』

バォッ!!

騎士団長「………ふん…」

エルフ「効かない!?」

騎士団長「常に防御魔法のかかっている鎧だ、そんな脆弱な魔法など、そよ風程度にも効かぬよ」シュラッ

エルフ「くっ!?」シュラッ

騎士団長「やるか?剣だけならば…勇者にすら負ける事はないぞ?」ジャキッ

エルフ「勇者を知っているのか!?」」

266: 2012/02/29(水) 21:55:28.38 ID:y2VIXQxzO
騎士団長「行くぞ」ザッ

エルフ「!?」

ギンッ!!

エルフ「ううっ!?」

騎士団長「ほら」ザンッ

エルフ「あうっ!!」

騎士団長「ほらほらほらほら!!」ザザザンッ!!

エルフ「あ…かっ…」ガクッ

騎士団長「止めだ…」チャッ

?「はあああああっ!!」

ガギィンッ

騎士団長「ぬうっ!?」

ジャリ…

?「あら?勇者様を追ってきたらこれはこれは…」

騎士団長「貴様…」

武闘家「お懐かしゅう、半年ぶりでしょうか?」ザッ

272: 2012/03/01(木) 10:17:37.28 ID:/IseOyEuO
オーガ「ああ…エルフ…こっちへ…」

エルフ「う…あ…」

オーガ「さあ…エルフ…傷薬だぞ…」

―――――

騎士団長「何をしにやってきた…」

武闘家「言ったでしょう?勇者様を追ってきたと」

騎士団長「……」

武闘家「あなたこそ何をしているのですか?あの様な者どもと?」

オーガ「何だお前ら!?」

騎士団長「!?」

273: 2012/03/01(木) 10:19:20.63 ID:/IseOyEuO
オーガ「やめろ!!エルフを舐めるな!!」

兵士長「うまぁーい」ベロッ

エルフ「く…」

兵士「ヨコセ…」

兵士「ヒヒヒ…」

メキッ…

騎士団長「何だ!?」

兵士長「キーヒヒヒヒ!」

ベリイッ!!

悪魔「キーヒヒヒヒヒ!!力が漲る!!」

騎士団長「これは…」

武闘家「はあっ!!」

ドンッ!!

悪魔「あ…が…」ザラァッ

武闘家「悪魔ですね…私が知る悪魔より…若干強く感じますが…」ジャリ…

武闘家「神のお膝元…荒らす輩には…」ユラァッ…

武闘家「消えて頂きます」

ザンッ!!

275: 2012/03/01(木) 11:53:36.79 ID:/IseOyEuO
騎士団長「はあっ!!はあっ!!はあっ!!」

兵士「うう…」

オーガ「ふううーっ!!ふううーっ!!」

武闘家「はぁ…少々数が多かったですね…」

エルフ「くっ…まさか…半分以上が悪魔…だと…?」
騎士団長「何て事だ…」

悪魔「………キヒヒッ…」

騎士団長「俺は…悪魔に騙されていたのか…」

悪魔「バー…カ…単純…すぎだよ…お前…」

騎士団長「くっ…」

悪魔「それらしい嘘に…簡単に引っ掛かる…」

騎士団長「…」

悪魔「お前が滅ぼした村は!!反逆した勇者一味の仲間なんかじゃ!!」

ドッ!!

騎士団長「ぬうっ!!」

悪魔「が…ぁ…」

ザラァッ

276: 2012/03/01(木) 11:55:54.52 ID:/IseOyEuO
武闘家「さて、なぜあなたがこんな事を?教えて頂けますか?『戦士』殿」

戦士「くっ…俺は…勇者を恨んでいるんだよ…」

武闘家「あの勇者様を…人格者であるのに?」

戦士「ああ!!絶対に許さん!!」ガンッ

武闘家「なぜそんなに勇者様を?教えてはいただけませんか?」

戦士「町を一つ破壊し!!兵士長を異形と変え!!そして!!」

戦士「北の魔王と手を組み…また世界を混沌に陥れる勇者…」

戦士「全部嘘だった…だが…俺には勇者に個人的な恨みが一つある…」

武闘家「それは?」

戦士「いや…こうなった以上…勇者に直接言わないと気がすまない…それに、お前には理解出来ない…」

武闘家「そうですか…ならそれ以上は、私は聞けませんね…」

277: 2012/03/01(木) 11:59:12.38 ID:/IseOyEuO
オーガ「すまん、助かった…あんた…名前は?」

武闘家「武闘家です」

オーガ「あんたがいなかったら…もっとたくさんの同胞が氏んでいた…」

エルフ「礼を言う…」

武闘家「お礼など…そうだ、あなたが戦士と戦っていた時、勇者様の名を聞きましたが、居場所などご存知ですか?」

エルフ「勇者の…知り合いか…?」

武闘家「はい、僭越ながら半年前、魔王との戦いに御一緒させて頂きました」

エルフ「なるほどな…しかし、よくは分からん…」

武闘家「そうですか…」

エルフ「北…という以外はな…」

278: 2012/03/01(木) 12:06:14.82 ID:/IseOyEuO
エルフ「あのお方と…何か関係があるのか…」

武闘家「あのお方?」

エルフ「ああ…くっ…」

オーガ「エルフ、まだ薬を塗ったばかりだ…あまり動いたら…」

エルフ「いや…大丈夫だ…この傷薬…わたしにも効くのだな…」

エルフ「そのお方は…神…と呼ばれる存在だ…」

エルフ「北の大地に住まう神…我々を導く存在…」

エルフ「そのお方がいる大地に…勇者は『魔王』がいると言い…旅立った…」

279: 2012/03/01(木) 12:07:51.49 ID:/IseOyEuO
武闘家「そうですか…それではもう一つ質問してもよろしいか?」

エルフ「ああ…」

武闘家「戦士をどうなさいますか?」

戦士「く…」

武闘家「騙されていたとはいえ、あなたがたを蹂躙した戦士を、私も見た、入口の村を滅ぼした戦士を」

武闘家「勇者様に恨みを持つ戦士を、私ならば…」

スッ…

武闘家「首を折ります…」

エルフ「待て!?確かにわたしも傷付き、仲間もたくさん氏んだ…」

オーガ「けどよ…そいつも俺達と一緒に、悪魔と戦ってくれたんだ…」

武闘家「そうですか…」

戦士「俺は…」

武闘家「ならば戦士の命…あなたがたに預けます」

戦士「どこで道を間違ったんだ…ただ王に仕えてきただけなのに…」

281: 2012/03/01(木) 21:53:52.54 ID:/IseOyEuO
?「王よ…」

王「うむ、貴様か」

?「どうやら順調のようですな?」

王「うむ、かなりの数の食事を馳走になったな」

?「滅相もございません…それもこれも王の為…この国を…世界をお収めになられるお方…」

王「して…あの肉の塊を送ってきた不届き者は?」

?「は…情報が少なく、確証はございませんが、恐らくは北の魔王かと」

王「ふむ…兵をやる、早急に食事の用意を…」

?「御意に…」

282: 2012/03/01(木) 21:55:42.11 ID:/IseOyEuO
武闘家「行きますよ」

戦士「ああ…」

エルフ「む…見送ろう」

オーガ「一緒に行ってやりたいけどよ…俺達はこの集落を守らないと…」

エルフ「すまない」

武闘家「お気になさらずに、私とて多少なりとも腕に覚えがありますから」

ザワザワ

エルフ「む?どうしたお前達?」

ドワーフ「ほらよ」

エルフ「む…これは…わたしの装備ではないか?」

ホビット「寂しくなるでやんす…姐御…」

283: 2012/03/01(木) 21:58:11.47 ID:/IseOyEuO
エルフ「待て…わたしはここを離れるとは…」

オーガ「行けよ、ここは俺達が守り抜く、お前は世界を見て、ここをより良くする手段を見付けてこい」

ゴブリン「それに…」

オーガ「年頃の女が、こんなところで腐ってるのはもったいないぞ?」

ドワーフ「違ぇねえ」

エルフ「しかし…」

オーガ「見たくないか?」

エルフ「む?」

オーガ「見た目が完全に化け物の俺達を助けてくれた勇者だ…偏見を持たないあの勇者が、一体何をやってくれるのか…」

エルフ「む…むむ…」

オーガ「この集落を…見違えるように立派ににしておいてやるからよ…」

エルフ「……すまない…」

武闘家「では…行きましょうか」

284: 2012/03/01(木) 22:00:33.37 ID:/IseOyEuO
北の大地 山脈



エルフ「のどかだ…」

武闘家「そうですね、さあ、少し休憩しましょう」

エルフ「ああ、あっちの川で魚を捕ってくる」

戦士「手伝おう…」

エルフ「………頼む」

武闘家「さて、私は火を起こしますか」



――――――



武闘家「よく焼けてますね、それでは…」

エルフ「いただきま…」フッ

戦士「影?」

?「むうう…よい匂いがする…」

武闘家「!?」

285: 2012/03/01(木) 22:03:00.99 ID:/IseOyEuO
ズンッ

エルフ「で…でかい…」

戦士「まずいぞ…」

武闘家「人語を操るドラゴンです!!エルフ!!下がっていて!!」ザッ

ドラゴン「ほう…怯まずにやり合うか?」

ドラゴン「我は少々食わせてもらおうと思っていただけなのだがな」

武闘家「くっ!!」

戦士「武闘家…ここは俺に任せろ…」

武闘家「………一人では無理でしょう…」

戦士「任せろ…」

武闘家「ダメです…」

戦士「任せろ!!」

286: 2012/03/01(木) 22:05:17.19 ID:/IseOyEuO
戦士「よくよく考えればよ…どの面下げてあいつに会えばいい…」

戦士「騙されていたとはいえ…俺は悪魔と同じ事をしていたんだ…」

戦士「そんな俺が!!勇者に胸張って会える訳ねえだろうが!!」

武闘家「なら胸なんて張らなくていい!!」

戦士「!?」

武闘家「だが一つ!!勇者様に言いたい事があるなら、言ってからにしろ!!」

武闘家「言って解決して怒って笑って!!心に闇を抱えたままの人間を…我は見捨てん!!」

エルフ「あのー…取り込み中悪いんだが…」

武闘家「え?」

エルフ「魚…全部食べられてしまったぞ…」

戦士「…」

287: 2012/03/01(木) 22:07:51.76 ID:/IseOyEuO
ドラゴン「ううむ…やはり魚は焼くに限る…ところで貴公ら、勇者殿の名を出していたようだが?」

戦士「!?!?」

武闘家「魔王討伐の折りに一緒に…」

ドラゴン「そうかそうか、勇者殿のお仲間か」

武闘家「敵意はない…?」

ドラゴン「勇者殿のお仲間に敵意などと、こちらは助けられた身だからな」

武闘家「つかぬ事をお伺いするが、勇者様の行き先などは…」

ドラゴン「知らぬな、礼を言う間もなく消えてしまったよ…残念だ…」

武闘家「そうですか…」

エルフ「……あのお方…」

288: 2012/03/01(木) 22:10:17.97 ID:/IseOyEuO
ドラゴン「ぬ?」

エルフ「あのお方の所に向かったかも知れない」

ドラゴン「あのお方か…」

エルフ「ああ、魔王を探しているようだが、ここには魔王など…」

ドラゴン「ふむ…気にはなるな…」

武闘家「そう言う訳で、私達は急いで勇者様の下に行かねば…」

ドラゴン「よかろう」

ブワッ

ドラゴン「我も勇者殿に礼を言いたいのでな…」

ドラゴン「急いで勇者殿を追おう…」

ドラゴン「さあ、乗れ!」

297: 2012/03/02(金) 20:54:21.86 ID:EXuz4Ud0O
勇者「さーて…」

僧侶「また海ですか…」

魔法使い「もう灼熱の大地を通るしかないんじゃねえか?」

勇者「でもなあ…あいつが言ったのは北の大地であって、灼熱の大地じゃあ…」

僧侶「そうですけど…」

魔王「あたしも何もしらないからね」

村娘「待って…あれ…」

勇者「あれは…」

魔法使い「小屋?」

僧侶「何か手掛かりがあるかもしれませんね」

勇者「行ってみるか…」

298: 2012/03/02(金) 20:59:04.85 ID:EXuz4Ud0O
コンコン

勇者「すいませーん」

僧侶「どなたかいらっしゃいませんかー?」

魔法使い「いたらいたで何でこんなトコに…」

?「はーい」

村娘「いた…」

ガチャ

?「あら?結構早かったですね?」

勇者「え?」

?「まあ入って、今お茶でも、ロアールティーでいいかしら?」

勇者「え?あ?はい…」

299: 2012/03/02(金) 21:00:21.23 ID:EXuz4Ud0O
コポコポ…

?「いい香り…」

魔法使い(僧侶…僧侶…)
僧侶(何ですか?)

魔法使い(すげえ美人だぞ?どうする?)

僧侶(何をですか?)

魔法使い(だってさ、勇者を待ってたみたいだぞ?)

僧侶(そうですけど!勇者様は…)

魔法使い(何者なんだ?)

僧侶(知りませんよ!!でも…勇者様は…)

勇者「なあ?あんた一体誰なんだ?」

魔王(よかったね…パパが空気読めなくて…)

僧侶(ホントだよ…)

300: 2012/03/02(金) 21:01:44.72 ID:EXuz4Ud0O
?「はい、お茶です」スッ

勇者「まだ飲めないな、あんたが何者なのかがはっきりするまでは」

?「あら?わたしはあなたと一度お会いしてますよ?夢…で、ですが」

勇者「夢…?」

?「はい、それから何度も助け舟を渡して来たつもりですが…」

ガタタッ!!

勇者「まさか…」

魔法使い「マジか…」

僧侶「神…様…?」

神「ふふっ…」

301: 2012/03/02(金) 21:03:51.40 ID:EXuz4Ud0O
神「さあ、冷めない内に」

勇者「あ…はい…」ズ…

ガチャ

?「ねえー!この宝珠壊れたよー!急に…」

村娘「………あ…」ガクガク

?「あ?」

村娘「あ…ああ…あああああ!!」ガクガクガクガクッ

勇者「貴様!!」

男「村娘ちゃん!?」

村娘「あー!!あーっ!!いやーっ!!」ガクガク

勇者「村娘!後ろに!」

男「邪魔するな!!」

302: 2012/03/02(金) 21:05:25.15 ID:EXuz4Ud0O
勇者「僧侶!!」

僧侶「はい勇者様!!」

『防御魔法!!』

勇者「喰らえ!!」

『超・雷撃魔法!!』

ドンッ!ドンッ!ドンッ!

男「邪魔…だっ!」バチッ

ガギィンッ!!

ギ…ギギギギ…

勇者「まさかこんなところで会えるとはな…」

ギャリッ

男「ああ…俺もまさか村娘ちゃんに会えるとは…」

勇者「北の魔王よ…目的は何だ…?」

神「魔王?」

勇者「はい…こいつは北の魔王…倒さねば…」

神「その人、魔王じゃありませんよ?つかあんたら家の中で暴れんな」

317: 2012/03/03(土) 21:13:00.31 ID:YJEXRHAtO

勇者「魔王…じゃない?」

村娘「嘘…その人は…わたしに呪いを…」

男「だってさ!だってさ!村娘ちゃんが…」

勇者「何だ!?」

男「俺は本気でさあ…村娘ちゃんが好きなんだ…」

神「もう飽きました、何回聞かされたか…」

勇者「好きなら呪いをかけるのかよ?」

男「呪い?」

僧侶「声を封じたり…」

魔法使い「文字を書けなくしたり…」

村娘「あたしの網膜に…あなたを写したり…」

男「えええっ!?そんなの知らないよ!?」

319: 2012/03/03(土) 21:15:22.97 ID:YJEXRHAtO
勇者「とぼけるな!!」

魔王「とぼけてないよ」

勇者「魔王?」

魔王「あたしでも、この人の呪いは解除出来ない」

男「あれ…もしかして…」

神「まあ…たった一日でこんなに…」

男「おおー!!我が妹よー!!」ヒシッ

魔王「や…ゴメン…一応あたしの中ではテラ変態でインプットされてるから…」
グイッ

男「お兄ちゃんを!?」

勇者「じゃあ…村娘に呪いをかけたのは誰だ…」

320: 2012/03/03(土) 21:17:54.39 ID:YJEXRHAtO


村娘「でも…呪いがあなたでないなら…なぜあなたの幻覚がいつも視界に…」

神「はあ…それは…」

男「いつもいつも近くで見てたからだよ」

村娘「へ?」

神「止めたのですが…まったく聞かなくて…」

男「いつも木陰から、草むらから見てたよ」

勇者僧侶魔法使い村娘「」

『まさかの本人だったー』

魔王「………テラ変態…」

321: 2012/03/03(土) 21:19:33.04 ID:YJEXRHAtO
勇者「まあ…呪いがこいつでないなら…神よ…なぜ俺達をここに導いた?」

神「魔王ちゃんの成長を見届けるために…」

勇者「魔王の?」

神「はい、神や魔王から産まれた子は、そこから更に神か魔王になるための成長を向かえます」

僧侶「成長…」

神「はい、本来なら殆どは神は神に、魔王は魔王になるのですが…」

男「半人半魔の俺達は、どちらになるか全く分からないのさ」

勇者「半人半魔?」

神「はい、魔王ちゃんは、前魔王と人間との間に産まれた子なのです」

322: 2012/03/03(土) 21:21:09.96 ID:YJEXRHAtO
勇者「魔王が…」

僧侶「前魔王と人間の…」

魔法使い「ハーフ!?」

村娘「………ムグムグ…」

勇者「今何食った?」

神「私はあなた…勇者を試しました、勇者に育てられた魔王ちゃんは、一体どう成長するのか…と」

勇者「結果…は…?」

神「さあ?」

僧侶「さあ?って…」

神「まだ覚醒していませんので…けど…」

男「けど…順調に魔王になれるように成長しているだろうね…人間の汚さを…学んでいるだろう?」

勇者「く…」

男「反論しろよ?出来ないのか?お前が育てたんだろう?自信がないのか?聞いてやるよ?立派に育てたって?ほら?言ってみろよ?聞いてやるよ?人間は汚くないんだって言ってみろよ!?」

ガンッ!!

323: 2012/03/03(土) 21:22:40.63 ID:YJEXRHAtO
勇者「!?」

魔王「はーっ!はーっ!」

男「痛いよ…お兄ちゃんに何すんのさ…?」

魔王「うるさいっ!!」

僧侶「魔王ちゃん!?」

魔王「うるさいうるさいうるさいっつーんだよ!!」

魔王「パパをバカにすんなよなっ!?パパは…パパはなあっ!!」

魔王「うぐぅっ…!何だよ…!パパは…何だよぅ…」

魔王「うーっ!!わかんないけど!パパは…!」

魔王「一番のパパなんだからなあっ!!」

グアッ!!

324: 2012/03/03(土) 21:24:09.91 ID:YJEXRHAtO
ズシンッ!!

勇者「ぐうっ!?」

僧侶「これは…!?」

魔法使い「あの時とっ…同じ…!?」

勇者「魔…王…!?」

神「あら…まさかこの子も…」

男「悪かったよ…魔王…これでも俺はこいつを買ってるんだ…」

魔王「…」

勇者「っ……はあっ!」

僧侶「はあっ…はあっ…」

魔法使い「とんでもねえ奴らだな…」

325: 2012/03/03(土) 21:25:56.24 ID:YJEXRHAtO
男「それより村娘ちゃん!!」

村娘「ひっ…」

勇者「待て、まだ村娘からお前への恐怖は消えていないんだぞ」

男「うるさいなあ…ねえー村娘ちゃーん?」

村娘「は…はい…」

男「好きな人いるー?」

村娘「…」フルフル

男「えー?いるでしょー?例えば目の前の俺とかさ」

村娘「」ブンブンブンブン

勇者「首取れるぞ?」

男「まあいいかー、いつか必ず好きにさせてみせるよー」

僧侶「完全拒否されてるはずなんですが…」

魔法使い「なんてポジティブ野郎なんだ…」

326: 2012/03/03(土) 21:28:17.03 ID:YJEXRHAtO
勇者「それより神よ、魔王の事は分かった、しかしこれから俺達は何を?」

神「そうね…勇者、あなたが勇者たる意味は?」

勇者「それは…魔王を倒し…世界を平和に…」

神「はい50点」

勇者「え!?」

神「私は夢で、何と言ったか覚えてますか?」

勇者「え…魔王を倒し…」
僧侶「真の平和を」

神「はいプラス30点」

僧侶「えっ!?まだ…」

神「簡単ですよ…一番身近でささやかな…」

魔法使い「あたしは…」

神「はい?」

魔法使い「よくわかんねえけど…」

神「…」

魔法使い「最低限…こいつら二人が…幸せにならないと…ダメだと思う…」

327: 2012/03/03(土) 21:30:20.04 ID:YJEXRHAtO
魔法使い「だってそうだろ!?いつも最前線で命懸けて戦った勇者!!」

勇者「…」

魔法使い「それを助けて自分より仲間優先で回復してきた僧侶!!」

僧侶「魔法使い…」

魔法使い「そんくらいしてやんなきゃ…」

神「…ふふ」

魔法使い「あたしはあんたを神と認めない!!」

神「いいでしょう!!」

オッ!!

神「自分の幸せも願ってこその100点!!」

神「しかし…更に友の幸せも願う答え150点!!」

神「さあ!!あなたがたの故郷に戻りなさい!!」

カッ!!

神「答えは…そこに…」

341: 2012/03/04(日) 21:20:30.03 ID:86ZF7IadO
ザワッ…

ザワザワ…

ザワザワザワザワザワザワザワッ!

「勇者だ!!」

「うわー!勇者だ!!」

「勇者だー!!」

「早く兵に知らせろ!!」

「逃げろー!!」

「うわー!」

勇者「これが…」

僧侶「幸せ…?」

342: 2012/03/04(日) 21:23:09.00 ID:86ZF7IadO
憲兵「どこだ!?」

「あそこです!!」

憲兵「街を一つと…北の村を滅ぼした勇者一行だな?おとなしくしろ!!」

勇者「な…」

僧侶「そんな…」

魔法使い「いいぜ…受けてたってやるよ…」

魔王「待って…」

村娘「神が…何の考えもなくこんな事をするとは思えません…」

魔王「暴れるのは…いつでも出来るじゃん…」

村娘「あたしも…本気を出せば人の一人くらいは…」

勇者「吸えるの?」

343: 2012/03/04(日) 21:26:24.30 ID:86ZF7IadO
ザンッ!!

勇者「おいおい…」

僧侶「問答無用で…処刑ですか…」

魔法使い「くそ…」

王「諸君!!」

ザワッ…

王「長らく不安にさせて悪かった…」

ザワザワ…

王「だがしかし!!その不安もなくなる!!街を破壊した勇者は!!明日滅っされる!!」

ウオオォー!!

勇者「してねーよ…」

魔王「まあ…あたしがやったからね…」

勇者「まあ…力の使い方も教えてなかったからな…」

僧侶「そう考えると…」

勇者「やったのは…俺…って事か…」

344: 2012/03/04(日) 21:28:32.23 ID:86ZF7IadO
男「お…いい物発見…くくく…楽しくなるぞ…」

コンコン

神「あら?お客様?」

神「はーい…」

――――――

魔法使い「どうする?」

僧侶「そう言われても…」

勇者「ま、なるようにしかならないさ、神が与えた試練だと思おう」

?「随分とお気楽じゃのう…殺されると言うのに…」

勇者「お…?あんたは…」

村娘「嘘…確か…殺されたはず…」

?「ふむ…あまり驚かれておらんな…勇者…」

勇者「ああ…何となく違和感があったんでな…」

勇者「あんたが知る訳がないんだよ、誰も足を踏み入れない北の大地の事を」

村長「くくく…」

345: 2012/03/04(日) 21:30:03.20 ID:86ZF7IadO
村長「そうだったな…まあ、わしはただの物見役じゃからな」

勇者「物見役?」

村長「ああ、各地に配置された物見役は、各地の動向を知らせるために、何人か街や村に溶け込んでおる」

村娘「え…でも村長は…」

村長「半年前には、わしに食われて氏んでおるよ」

村娘「そんな…」

勇者「何が目的だ…」

魔王「ごはん…」

勇者「え?」

魔王「成長するための…ごはん…だよね?」

村長「その通り…」

346: 2012/03/04(日) 21:31:39.78 ID:86ZF7IadO
村長「各地に入り込んだ仲間が手引きし、どんな強固な城塞も侵入可能にし、内側から食事をする…」

勇者「誰が…?」

村長「我が主…」

魔法使い「けっ!てめえみてえなショボい奴の主なんか怖くねえぜ!」

村長「そうじゃな…だが…明日には不滅なる力を手に入れとるじゃろう」

僧侶「明日?」

勇者「どういう事だ…」

村長「今夜、各地に散らばった仲間が、わしの号令と共に手引きをする」

勇者「まさか…」

村長「何百万もの悲鳴や恐怖が…我が主の糧となるのじゃよ…」

347: 2012/03/04(日) 21:34:06.79 ID:86ZF7IadO
勇者「貴様!!」

村長「吠えておけ、ここは魔力を抑える牢獄、どうせ何も出来はせんよ」

勇者「くっ!!」

村長「くくくくく…」

――――――

魔法使い「いっくぜ!!」

『火炎魔法!!』

ホヒュ

勇者「ダメだな…」

僧侶「魔法使いの魔法すら使えないんじゃ…あたし達には無理…ですね…」

魔王「ま、いいんじゃない?焦ったって何も出来ないんだから」

勇者「しかし…これから何人も氏ぬのが分かってて、おとなしくなんて…」

魔王「分かってる!!」

僧侶「魔王ちゃん…」

魔王「あたしだってもどかしいよ…これでもパパの…娘…なんだから…」

357: 2012/03/05(月) 21:29:07.37 ID:5V70OqdBO
ドラゴン「ぬうう…まさか勇者殿があの国に…」

武闘家「ですね…今あの国に行けば勇者様は…」

戦士「氏刑は確実…だが一番怖いのは…」

エルフ「あの国の王が…魔王候補…だとはな…」

ドラゴン「飛ばすぞ!しっかりと掴まっていろ!」

ゴウッ!!

ドラゴン「ぬ?あれは…」


?「おーい…長ー!」

ドラゴン「お前は…生きていたのか…」

?「ああ…あの時…氏んだと思ったけど…目が覚めたらあそこが前と同じになってたんだ…」

ドラゴン「そうかそうか…無事でなにより…」

?「それで長は何をしてるんだい?背中に人間なんて乗せちゃってさ?」

ドラゴン「うむ…実は…」

358: 2012/03/05(月) 21:49:34.45 ID:5V70OqdBO
?「そうかあ…そんな事があったのかあ…」

ドラゴン「ああ、だから我は勇者殿の元に行く、我にもし何かあったら…後は頼んだぞ…」

?「そんなあ…」

ドラゴン「では…」

バサッ

――――――

武闘家「つかぬ事をお伺いするが…」

ドラゴン「何だ?」

武闘家「『長』とは?」

ドラゴン「ああ、我はドラゴンの群れの長をやっているだけだ」

エルフ「ドラゴンロードなのか!?」

ドラゴン「そんな大層なものではない…ただの仲間の一員だ…」

戦士「とんでもない援軍だな…」

359: 2012/03/05(月) 21:51:37.83 ID:5V70OqdBO
カツッ…

勇者「………何だ…?」

村長「始まったよ…」

僧侶「まさか!?」

魔法使い「殺戮…」

村長「お…おお!?分かる!!分かるぞ!!」

メキッ…

村長「我が主の力に呼応して…わしの力も高ぶってきおったわ!!」

メキメキッ…

勇者「くっ…そ…!」

村長「分かるぞ!!我が主の力は…」



『前魔王を超えた!!』

362: 2012/03/05(月) 22:49:26.32 ID:5V70OqdBO
村長「くっ…はあっ…」

村長「くくく…」

村長「あーーー!!」

ベリイッ!!

村娘「ひっ!?」

村長「くくく…力が漲る…明日と言わず…すぐにでも貴様らを皆殺にしてやりたいわい…」

魔法使い「野郎…」

村長「しかし…貴様らの処刑を民が楽しみにしておるのでな…」

村長「明日…貴様らの氏を拝見しようとするかの…」

勇者「………っ」

村長「おっと、人間の姿にならんとな…では勇者よ…明朝、楽しみに…」

363: 2012/03/05(月) 22:51:17.01 ID:5V70OqdBO
魔法使い「どうすりゃいいってんだ!!」ガンッ

勇者「焦りは…」

僧侶「禁物よ」

魔法使い「はああ!?何であんたら落ち着き払ってんの!?勇者なんてさっきまで『くっ…』とか言ってたじゃんか!?」

勇者「演技だよ、魔王や村娘が言ってたろ…」

僧侶「神は何の考えもなしにこんな事はしませんし」

勇者「暴れるのはいつでも出来るっ…てな」

魔法使い「はいはい、ホントあんたらお似合いだわ」

364: 2012/03/05(月) 22:53:33.93 ID:5V70OqdBO
勇者「さて…問題はこれからだな…」

僧侶「チャンスは一度…」

勇者「処刑の直前…か…」

魔法使い「でもよ、どうせ魔力は封じられてるだろうから…どうする?」

僧侶「それに…話の主と抗うにも、街中では本領発揮出来ませんよね…」

魔王「じゃあさ…」

――――――

勇者「………ダメだな…」
魔法使い「結局何も有効な案が出なかったな…」

村娘「それじゃあ…もう氏を迎え入れるしか…」

勇者「氏なんてとっくに迎え入れてるさ…」

魔法使い「そ、加護があっても氏ぬ時は氏ぬし」

僧侶「全てを迎え入れ…そして全てを返す…」

勇者「氏ぬ気はないが、氏ぬまで戦って平和を勝ち取る、皆が幸せになるなら」

僧侶「ふふっ、だからわたしはあなたを好きになったのですかね?」

勇者「知らないよ…」

魔王「はいはい…」

365: 2012/03/05(月) 22:57:55.63 ID:5V70OqdBO
ガチャンッ

勇者「………」

「時間だ」

僧侶「………」

「ほら!キビキビ歩け!」

魔法使い「………」

「勇者と言えども、末路はこれか、笑えるな」

魔王「………」

「貴様等の首は、朽ちるまで晒されるだろうな」

村娘「………」

「我が主が…この世界を統べる所を見せたかったな」

「我が主?」

「おっと…お前人間か?それはそれは…」

バグンッ!!

「…」ドチャッ…

「さあ…行こうか…」ジュル

384: 2012/03/06(火) 20:10:18.04 ID:ia9wrOEWO
王「諸君!!」

ザワッ!!

王「街を一つ滅ぼし!!北の村を殺戮した勇者が参ったぞ!!」

ウオオォー!!

王「しかし!!不安な朝を迎えるのは今日限り!!」

ザワザワッ…

王「これより!!勇者の処刑を執り行う!!」

ウーワー!!

王「まずはその娘から!」

村娘「ひっ!?」

王「やれ!!」

385: 2012/03/06(火) 20:11:59.04 ID:ia9wrOEWO
王「最期に言い残す事はあるか?」

村娘「わたしは…」キッ

勇者「村娘…」

村娘「あなたのような悪魔を許さない…」

王「ふむ…」

村娘「みんな聞いて!!」

ザワッ…

村娘「ここにいる王は悪魔なのよ!!」

ザワザワ…

王「話にならん」

王「やれ」

グアッ!!

386: 2012/03/06(火) 20:14:18.71 ID:ia9wrOEWO
バツンッ!!

コロ…コロ…

グシャッ!!

男「てめえ…村娘ちゃんに
何しようとした…」

勇者「お前…!?」

ザワザワザワザワ!!

ザッ

勇者「変態男…」

僧侶「変態…」

魔王「変態野郎…

村娘「変態さん…」

魔王「テラ変態…」

変態「あれ!?名前まで変わっちゃったよ!?」

387: 2012/03/06(火) 20:15:43.14 ID:ia9wrOEWO
王「何だ…貴様…」

男「よかった…名前戻ったよ…へへ…さてね…」

王「やれ」

ザザッ

男「へえ…やるか?」

スッ…

勇者「やめろ!?一般人を巻き込むな!!」

村娘「お願い!!」

男「えっ…何だよ…ちまちまやれってのか?」

王「数で圧せ」

ウオオォー!!

男「くっ…そ!!」

388: 2012/03/06(火) 20:17:25.40 ID:ia9wrOEWO
カンッ!!

ギインッ!!

男「剣は得意じゃっ!!ないんだよなっ!!」

ガインッ!!

勇者「俺とやり合っただろうが?」

男「うるっ!!せえ!!」

ギャリンッ!!

男「めんどくせえ…」

村娘「ダメよ…」

男「くそ…」

390: 2012/03/06(火) 20:19:35.42 ID:ia9wrOEWO

王「剣を貸せ」

兵「はっ」

王「若僧…少し遊んでやろう…」

男「面白い…」

王「行くぞ…」

『超・火炎魔法!!』

男「こんなもん…」スッ

勇者「バカ!!避けるな!!弾き返せ!!」

男「え?」

ズゴウンッ!!

「きゃー!!」

「ぐあー!!」

「しっかりしろ!!」

「うう…」

391: 2012/03/06(火) 20:21:35.25 ID:ia9wrOEWO
王「すまぬ皆の者!!」

「王よ…」

ザワザワ…

王「勇者一行の仲間が現れた故!!わたしも手加減が出来ない!!」

ザワッ…

王「しばし避難していてはくれまいか!!」

「避難…」

「王がそう言うなら…」

「逃げろ…」

「みんな逃げろ!!」

ズンッ!!

「あ…」

グルルルル…

「うわー!!」

ゴウッ!!

「ドラゴンだー!!」

武闘家「勇者様!!」

392: 2012/03/06(火) 20:24:13.67 ID:ia9wrOEWO
勇者「武闘家!?」

僧侶「戦士!!」

戦士「間に合ったな」

勇者「よう…騎士団長…」

戦士「やめてくれ…俺は…馬鹿なんだよ…」

勇者「ははっ…相変わらずの堅物だな」

ドラゴン「魔力を抑える枷か…こんな物…」

ガギンッ

魔法使い「わりいな」

武闘家「神から聞いた…」

戦士「あいつは…魔王候補だとよ…」

僧侶「いえ…もう…」

勇者「魔王だ…」

393: 2012/03/06(火) 20:33:29.22 ID:ia9wrOEWO
武闘家「はあ・あ・あ!」

ドッ!!ドドンッ!!

戦士「開け!!」

ザンッ!!

勇者「魔王までの道を!」

僧侶「未来への!!」

魔法使い「道を!!」

王「小賢しい…」

オッ!!

勇者「!?」

王「終わりにしようじゃないか…勇者よ…」

勇者「待て…」

『超…』

勇者「民がまだ…」

『爆裂魔法!!』

勇者「いるんだぞ!!」

ドンッ!!

394: 2012/03/06(火) 20:38:42.10 ID:ia9wrOEWO
ドンッ!!

ドドンッドンッドンッ!!

ゴゴゴ…

ドラゴン「お前ら!?」

マスタードラゴン「長ー」

ドラゴン「なぜ…」

マスター「おいら達が民を守るさー」

僧侶「数百の…」

勇者「ドラゴンの…」

魔法使い「壁かよ…」

マスター「長が氏んだら、おいらどうしたらいいかわかんないよ」

ドラゴン「馬鹿者が…」

マスター「ほら、長、見本見本」

395: 2012/03/06(火) 20:44:45.03 ID:ia9wrOEWO
男「おもしろいよ!」

『超・防御魔法!!』

カッ!!

ドラゴン「ぬ?」

男「ドラゴンの壁!!民を守ってよ!!」

マスター「はいー」

魔法使い「やってもいいんだな!?」

『超・爆裂魔法!!』

ゴウッ!!

ズドンッ!!

王「脆弱な…」

魔法使い「脆弱…だと…」

『絶…』

魔法使い「なめんな!!」

『爆裂魔法!!』

396: 2012/03/06(火) 20:47:10.34 ID:ia9wrOEWO
キュンッ…

ゴッ…

ゴゴゴゴウッ…

魔法使い「どうだ!?」

王「くっ…ふう…」

勇者「効かない!?」

「勇者ふざけんな!」

「氏ねー!」

「くたばれー!」

勇者「!?」

僧侶「勇者様…」

魔王「あいつら…まだ分からないの!?」

村娘「みんなが…守ってくれてるのに…」

397: 2012/03/06(火) 20:53:29.63 ID:ia9wrOEWO
武闘家「やっ!!」

ザラアッ

武闘家「多過ぎる…」

戦士「ドラゴンの壁があるが…」

武闘家「これじゃ守り切れない…」

武闘家「せめて…王が魔王だと証明出来れば…」

男「あ!?」

シュタッ

男「へえ…君、可愛いね、村娘ちゃんほどじゃないけどさ…」

武闘家「何だ!?」

男「辛くなるけど…」

勇者「?」

男「お前が正義だと…証明してみせろ!!」

ビチャッ

398: 2012/03/06(火) 21:02:15.03 ID:ia9wrOEWO
メキッ…

「王様…?」

ベキンッ…

「あ…」

王「お…」

メキメキッ…

王「お…お!お!?」

ベリイッ!!

「王…?」

王「何だこれは!?力が湧いて来る!?」

メキャッ…

男「悪魔の力を倍増させる臭い薬…」

「あ…王が…」

「王は…」

「うわー!!」

「王は…」

「悪魔…」

勇者「なくなったと思ってたら…」

僧侶「あの人が持ってたのですね…」

413: 2012/03/07(水) 19:34:44.23 ID:Apo8ZEyFO
オ・オ・オ・オ…

「勇者…」

勇者「…」

「勇者…」

僧侶「…」

「勇者…」

魔法使い「…」

「勇者…」

武闘家「…」

「勇者…」

戦士「…」

「勇者…」

ドラゴン「…」



「勇者様!!」



勇者「行くぞ!!」

『おう!!』

414: 2012/03/07(水) 19:37:33.53 ID:Apo8ZEyFO
ガンッ!!

ガインッ!!

エルフ「はっ!!」

「が…う…」

ドサッ

エルフ「む…奴らの装備…これだな…」

ガシャッ

エルフ「やたらと重い…奴ら…こんな物を纏って今まで戦っていたのか…」

エルフ「わたしでも…力になれるのだな…」

エルフ「勇者よ…」

エルフ「神よ」

エルフ「感謝する…」

415: 2012/03/07(水) 19:39:19.21 ID:Apo8ZEyFO
王「ん…ぐう…う・う・う・う・う!!」

勇者「…」

魔王「パパより…」

男「強いよ?」

勇者「だが…」

僧侶「プレッシャーは感じません…」

魔法使い「無理矢理…」

武闘家「気を上げて困ってらっしゃる?」

戦士「まず…お前に言いたい事もあるが…」

シャンッ

勇者『ガンガン行こうぜ』

416: 2012/03/07(水) 19:41:00.26 ID:Apo8ZEyFO
ウオオォー!!

魔法使い「雑魚が!!」

『火炎魔法!!』

バウッ

「あ…」

「ぎ…」

ドンッ!!

「ヒハハー!!」

戦士「ぬうっ!!」

ザンッ!!

魔法使い「くそ…魔法だけじゃ切り抜けねえか…」

勇者「俺も剣があれば…」

ヒュンヒュンヒュン…

ドスッ!!

エルフ「それが必要か?」

勇者「エルフ!?」

エルフ「剣があればいいんだろ?」

ザッ…

勇者「へっ…」

僧侶「いい顔…」

魔法使い「あの時みたいだな…」

勇者「あの時よりは…楽だろうな…」

417: 2012/03/07(水) 19:43:51.60 ID:Apo8ZEyFO
勇者「魔王!!」

王「ふ…」

勇者「喰らえ!!」

ザンッ…

勇者「…」

王「………効かんよ…」

勇者「!?」

王「ただの剣ごとき…水が石を撫でるくらいにしか感じぬわ…」

魔王「じゃあ魔王の娘の一撃は!?」

オッ!!

王「ぬ!?」

ドンッ!!

勇者「僧侶!!」

僧侶『超・防御魔法!!』

カッ!!

418: 2012/03/07(水) 19:46:09.33 ID:Apo8ZEyFO
ズズズズズズ…

王「効かぬ…」

魔王「嘘っ!?」

王「なるほど…前魔王の娘か…魔王討伐の折に拾った子…魔王だったか…」

勇者「マジか…こいつ…」

王「このような攻撃…蚊程も効かぬわ…」

僧侶「勇者様…」

魔法使い「勇者…」

勇者「はあ?俺の娘を舐めるなよ?」

魔王「パパ?」

勇者「力の集中くらいは出来るか?」

魔王「やれるよ!!」

419: 2012/03/07(水) 19:47:31.48 ID:Apo8ZEyFO
キ…

イイイイ…

勇者「お前の力…」

キイイイイ!!

勇者「剣に込める!!」

キイイイイイイイイ!!

勇者「来い!!」

魔王「や…あっ!!」

グアッ!!

勇者「これが…」

王「ぬうう!!」

キイイイイ!!

勇者「皆の思いだ!!」

ドンッ!!

420: 2012/03/07(水) 19:49:02.36 ID:Apo8ZEyFO
王「あ…」

シュタッ…

王「これが…勇者…」

勇者「…」

王「そんな…」

僧侶「…」

王「こんな…」

魔法使い「…」

王「ものか…」

グアッ!!

勇者「なっ!?」

王「そうかそうか…」

勇者「何なんだ…」

王「勇者とはこの程度なんだな…」

438: 2012/03/08(木) 21:30:44.53 ID:zJYDe+0IO
魔法使い「化け物か…」

ジャキッ

勇者「そんな事は最初から分かってたさ…」

僧侶「ただ…」

武闘家「気になる事が一つありますね…」

戦士「いつから…」

勇者「お前はいつから王となっていた?」

王「産まれた頃からだ…」

勇者「何?」

439: 2012/03/08(木) 21:32:05.85 ID:zJYDe+0IO
王「この大国の息子が産まれた折に…」

ガパァッ…

王「喰った」

僧侶「酷い…」

王「皆よく働いた…」

王「我の邪魔になりそうな輩を魔王とし排除する…」

勇者「そして…俺も…」

王「ああ…もう邪魔だ…」
魔法使い「許せねえ…」

王「案ずるな…我はもう力を手に入れた…」

武闘家「その力…」

ジャリッ

戦士「打ち崩す!!」

ザンッ!!

440: 2012/03/08(木) 21:33:32.80 ID:zJYDe+0IO
男「行くぞ!!」

ドンッ!!

王「ぬるい」

ガシッ

男「お…?おおお!?動かない!?」

王「非力だな」

『超…』

男「え…おいおいおい!?ゼロ距離でそれは!!」

『爆裂魔法』

ゴウンッ!!

441: 2012/03/08(木) 21:35:44.79 ID:zJYDe+0IO
ドサッ

勇者「ばかな…あいつが…一撃だと…」

武闘家「あの臭い薬…身にした悪魔は力が上がっていました…」

僧侶「早くしないと!」

『回復魔法!!』

パアアッ

男「おっ…うっ…ガハッ!ガアアッ!?」

ビチャビチャッ

勇者「剣は効かない…」

魔法使い「魔法も役にたたない…」

僧侶「八方塞がり…」

戦士「そうかな…」

シュラッ

勇者「それは!?」

442: 2012/03/08(木) 21:37:47.21 ID:zJYDe+0IO
戦士「ああ…お前を追う時に、自宅から持ってきたんだ…」

戦士「全力のお前を倒したかったんでな…」

戦士「あの時…お前から記念に貰ったはいいが…」

戦士「輝かなかった…」

戦士「ただの一回も輝く事なく…鈍い鉛色…」

戦士「そうだよな…」

戦士「『勇者』のためにあるんだからな…」

戦士「また俺を頼ってくれるか…?」

戦士「また俺を仲間と認めてくれるか…?」

戦士「また俺と…」

『戦ってくれるか…?』

ジャキッ…

勇者「何言ってやがる…このバカ…」

シャンッ

勇者「当たり前すぎて…」

『答えるつもりもない』

443: 2012/03/08(木) 21:41:01.44 ID:zJYDe+0IO
勇者「精霊の命を犠牲にして作った剣…」

ジャキッ

勇者「頼む…」

僧侶「お願い…」

魔法使い「なあ…」

武闘家「精霊よ…」

戦士「輝きを…」

村娘「勇者様に…」

エルフ「魔王を倒す…」

ドラゴン「力を…」

男「大丈夫だろ…」

魔王「パパは…」

キランッ…



魔王「勇者だよ!!」



カアアアッ!!

444: 2012/03/08(木) 21:44:33.50 ID:zJYDe+0IO
勇者「お・お・お・お!」

シャンッ!!

ザンッ!!

王「ふ…何をした?」

ブシュッ!!

勇者「脇腹を切った」

王「ぬうう!?」

王「小賢しい!!」

『激…』

キイイイイ!!

『火炎魔法!!』

ドンッ!!

勇者「ああ…懐かしいな」

勇者「『あいつ』はこれを連発してたな…」

ザンッ!!

………

ドオンッ…

王「これを切った!?」

勇者「言っておくが、さっきまでの剣は…」

僧侶「変わりがなかったので、わたしが最初の町で買った剣ですよ?」

457: 2012/03/09(金) 22:21:36.83 ID:y1v+9sKtO
王「く…」

勇者「決めようぜ…」

王「くくく…」

勇者「何だ?」

王「剣よ…腐れ…」

ドロオッ…

勇者「一体何を…?」

王「さあ…腐った剣よ…」
オオオオ…

王「我が闇の力を吸い…」

僧侶「あれは!?」

魔法使い「あいつ…」

村娘「まさか…お伽話じゃなかったの…?」

エルフ「人の魂を…」

ドラゴン「喰らう剣…」

魔王「パパ…」

男「やれるさ…」



王「力となれ」



ゾルッ…

458: 2012/03/09(金) 22:23:43.22 ID:y1v+9sKtO
勇者「い…やああああ!」

ザンッ!!

『超!!』

ガカッ!!

『雷撃魔法!!』

ドドドドンッ!!

王「ぬるい!」

勇者「おおおおおお!!」

ギンッ!!

ギャリンッ!!

王「勇者よ…」

ギギギギ…

王「なかなかに良い力だ…どうだ?我が下部となり働くなら…想像以上の待遇を約束しよう…」

勇者「何だと…?」

王「新居も用意し、何不自由なく暮らせる保障をしようではないか…」

勇者「本当…か…?」

僧侶「勇者…様…?」

勇者「…」

スッ…

王「懸命だ」

459: 2012/03/09(金) 22:26:02.87 ID:y1v+9sKtO
勇者「俺だって人間だ…」

魔法使い「おい…」

勇者「幸せを願って何が悪いんだ?」

武闘家「悪くはない…」

勇者「だろ?だったら好きにさせてくれよ…」

戦士「だが…お前は…」

勇者「俺は勇者だ…って言うのか?」

エルフ「言えないさ…お前は私達を助けてくれた…」

勇者「人助けばかりの人生だったぜ…」

ドラゴン「我らも助けられたがな…」

勇者「頼むから…もう自由にさせてくれよ…」

男「ああ…自由にするがいいさ…」

勇者「そうするよ…」

魔王「パパ…」

勇者「この戦いが…」

キイイイイ!!

勇者「終わったらな!!」

460: 2012/03/09(金) 22:27:44.76 ID:y1v+9sKtO
王「愚かな!!」

勇者「ぬううううっ!!」
カッ

『絶・雷撃魔法!!』

ピビシッ…

ドンッ!!ドンッ!!ドンッ!!

王「くっ!?」

勇者「それで揺らぐか?」

僧侶「駄目ですわ」

魔法使い「そんなんじゃヤバいぜ?」

武闘家「さて…久しぶりですね…」

戦士「やるか…」

勇者「行くぜ…」

『皆の力を合わせた…』

『雷撃魔法!!』

ズドンッ!!

461: 2012/03/09(金) 22:29:51.32 ID:y1v+9sKtO
王「くっ…うっ…あ…あ…あああああ!!」

ザンッ

王「負けぬ!!」

王「我が負ける訳がないのだ!!」

ジャッ!!

ギインッ!!

勇者「そうだな…」

ベキンッ!!

王「我の剣が!?」

勇者「お前は…負ける訳はないさ…」

ドンッ!!

王「あ…」

勇者「最初から…」

ゾゾゾ…

王「ああああー!?」

ボシュウッ!!

勇者「自分で戦ってなかったんだからな…」

462: 2012/03/09(金) 22:31:59.40 ID:y1v+9sKtO
勇者「魔王!!」

魔王「はい!?」

王「あ…あ…」

勇者「剣に力を…全力で込めろ!!」

魔王「は…はい!!」

キイイイイ…

勇者「行くぜ…」

ギャインッ!!

勇者「新たな魔王よ…」

ジャキッ…

勇者「滅びろ!!」

勇者「ここは…」

グッ…

勇者「人間の国だ!!」

ザンッ!!

478: 2012/03/10(土) 07:47:51.82 ID:Gb1HGtCrO
王「くくく…」

勇者「…」

王「ははははは!!」

僧侶「…」

王「何をした…」

魔法使い「…」

王「我はまだ立っておるではないか!」

武闘家「…」

王「さあ勇者よ!」

戦士「…」

王「かかって来い!」

村娘「…」

王「その脆弱な力で抗ってみよ!」

エルフ「…」

王「さあ!!」

ドラゴン「…」

王「さあ!!」

男「…」

王「あ…」

ザラアッ…

魔王「終わり…」

王「………あ…」

ゴトンッ…

魔王「だよ…」

479: 2012/03/10(土) 07:49:52.29 ID:Gb1HGtCrO
「勝っ…た…」

「勇者様が…」

「悪魔を倒した…」

「勇者様…」

「勇者様…」

「勇者様!!」

ウオオオオオオー!!

勇者「まだだな…」

僧侶「はい…」

魔法使い「残った悪魔退治と行きますか」

武闘家「ええ」

戦士「ようし…」

勇者『自由に戦え!!』

480: 2012/03/10(土) 07:52:45.43 ID:Gb1HGtCrO
――――――



村長「まさか…あやつが負けるとは…」

村長「早く逃げないと…わしが危ない…」

「そうだな」

村長「!?」

ジャキッ

村長「お前…は…?」

男「ああ?会うのは初めてだったかな?あんなに派手に登場したのにな…」

村長「何の用じゃ…」

男「村娘ちゃんに呪いをかけたの…匂いからして、あんただろ?」

村長「ああ…」

男「何故だい?」

村長「………あやつの知識が危険じゃからだ…」

男「…」

村長「しかもあやつは…声と文字を封じたにも関わらず…すぐさま音で会話をする術をあみだした…」

村長「あやつは…必ずや脅威になるじゃろう…と…」

482: 2012/03/10(土) 07:54:53.68 ID:Gb1HGtCrO

男「なら、なぜすぐ喰わなかったんだい?」

村長「それは…」

男「喰えなかった…」

村長「…」

男「そうだろ?」

村長「…」

男「村娘ちゃんは…もう氏んでるからな…」

男「ははっ…何であんな子好きになったのか…」

男「ホント…」

男「俺ってバカだな…」

男「ああ…バカすぎて嫌になってきた…」

男「なあ…あんた…」

ニヤッ…

男「俺のストレス解消のはけ口になってくれよ…」

ユラアッ

村長「待っ!?」

グチャッ

483: 2012/03/10(土) 07:57:19.85 ID:Gb1HGtCrO
カッ…

チンッ…

勇者「終わったな…」

僧侶「はい…」

魔法使い「終わってないんだけどな…」

勇者「何?」

僧侶「まだどこかに悪魔が潜んで…?」

魔法使い「ああ、違うよ」

魔法使い「えっと…なんつーか…」ポリポリ…

魔法使い「お前らの未来はさ…これから始まるんだよ…ってさ…」

勇者「いや、終わった、ってのはこの戦いの事で…」
魔法使い「お前マジやめろよな!そういうの!恥ずかしくなるだろ!!」

486: 2012/03/10(土) 18:24:11.35 ID:Gb1HGtCrO
武闘家「さて…私は少し茶が飲みたい」

戦士「ん?おお、行って来い」

武闘家「バカが…」ボソッ

戦士「え?」

武闘家「お主も来い」

――――――

武闘家「もういいだろ?聞かせてくれ、勇者様を恨んでる理由を」

戦士「いや…それは…」

武闘家「さあ」

勇者「俺も聞きたいな」

戦士「ぬあっ!?」

武闘家「ほら」

勇者「早く」

戦士「こいつら…」

487: 2012/03/10(土) 18:25:59.78 ID:Gb1HGtCrO
戦士「………魔王討伐に…武闘家を選んだからだ…」

武闘家「はい?」

勇者「それって…」

僧侶「つまりは…」

魔法使い「自分がのけ者にされたから?」

戦士「ああっ!?さらに増えた!?」

勇者「でもそれは…」

戦士「違うわ!!」

僧侶「ならなぜ…?」ワクワク

戦士「その…」

魔法使い「どの?」

戦士「ああもう!!」

バンッ!!

戦士「俺はな!!」

戦士「大好きな武闘家を危険な魔王討伐に選んだ勇者が許せなかったんだ!!」

488: 2012/03/10(土) 18:27:31.68 ID:Gb1HGtCrO
勇者「うわあ…」

僧侶「そんな理由で…」

魔法使い「けどこれでフラグが…」

武闘家「立たない立たない…」

戦士「マジかよ…」

武闘家「そんな女々しい理由で勇者様を恨むような奴を好きにはなれない」

勇者「完全に折ったな…膝とかで折ったな…」

武闘家「私は男らしい男が好きなのだ」

戦士「うう…」

武闘家「だから…」

武闘家「………頑張れ…」ボソッ

489: 2012/03/10(土) 18:29:36.93 ID:Gb1HGtCrO
魔王「?」

魔王「やあ、テラ変態」

男「普通お兄ちゃんにそんな事言う?」

魔王「今言ったよ?」

男「だよね…」

魔王「で?何?」

男「悪いんだけどさ、二つ頼みがあるんだ」

魔王「はあ…まあ、あたしに出来るならね」

男「ホントに!?じゃあさ、魔力をありったけ貸してくれない?」

魔王「?……いいけど…」

カッ

男「さすが妹、ものすごい魔力だね」

魔王「もう一つは?」

男「……村娘ちゃんに…」
男「さようなら…と…」

オオ…オオオオ…

490: 2012/03/10(土) 18:31:38.09 ID:Gb1HGtCrO
男「さ…あ…!!」

男「俺だって見せ場の一つや二つ…!!」

男「作らないとな!!」

グアッ!!

魔王「お兄ちゃん!?」

男「妹よ…初めてお兄ちゃんと…」

男「ありがとう…」

―――――

村娘「あうっ…」

勇者「どうした!?」

村娘「体が…重い…」

勇者「は?」

僧侶「勇者様!!」

勇者「どうした?」

僧侶「あれを…見てください…」

491: 2012/03/10(土) 18:32:48.80 ID:Gb1HGtCrO
戦士「あれは…武器屋のおっさん…」

僧侶「あっちは洗濯屋のお姉さん…」

魔法使い「おい…ありゃあみんな…」

勇者「まさか…」

「おーい」

「何があったの?」

「街がないぞー」

僧侶「街のみんな…」

勇者「吹き飛んで…氏んだはずじゃあ…」

493: 2012/03/10(土) 18:34:20.23 ID:Gb1HGtCrO
村娘「はあっ…はあっ…」

勇者「おい!?さっきからどうした!?」

村娘「う…あ…」

神「あらあら…」

勇者「うわ!?」

僧侶「神様…」

神「久しぶりの肉体には馴れませんか?」

村娘「肉…体…?」

神「わたくしも最初分かりませんでしたが…」

神「なるほど…意識だけの存在はあなたでしたか…」

494: 2012/03/10(土) 18:37:12.27 ID:Gb1HGtCrO
勇者「意識?」

神「まあ…もう語る事ではありませんよ…」

神「語ったところで…」

神「あの人は報われませんからね…」

勇者「何を…」

神「あの人が…使える力を全て出し切り、今回魔王ちゃんと関わり氏んだ方々を蘇らせました…」

勇者「あいつ…そんな力を持ってたのか…」

神「バカな人…」

神「そう…」

神「あの人もそうなりたかったのかしら…」

神「魔王ちゃん…」

神「そこにいますね?」

魔王「はい…」

「アブー」

勇者「その赤ん坊は…」

魔王「お兄ちゃん…だよ…」

495: 2012/03/10(土) 18:38:39.65 ID:Gb1HGtCrO
神「わたくしは言いましたね?」

魔王「はい…」

神「神になるか…」

勇者「…」

神「魔王になるか…」

僧侶「…」

神「今…」

魔王「…」

神「選びなさい…」

魔王「あたしは…」

神「さあ…」

魔王「あたしは!!」

496: 2012/03/10(土) 18:40:39.14 ID:Gb1HGtCrO
「アムー…アウー…」

勇者「本気か?」

村娘「はい…」

僧侶「魔王よ?」

村娘「分かってます…」

村娘「まさか…ですけどね…」

村娘「この子は私がちゃんと育てます…」

村娘「大きくなったら…どうなるんですかね…」

魔法使い「村娘ちゃーん!とかって…」

村娘「あははっ!なりそうですね…」

村娘「だけど…」

「アブー」

村娘「はあ…いきなりお母さんか…」

村娘「全く…」

村娘「このダメっ子め…」

ギュ…

「ありがとう…」

497: 2012/03/10(土) 18:43:57.93 ID:Gb1HGtCrO
勇者「さて…この掘っ建て小屋が新居か…」

僧侶「まあ、三人なら問題ないですわ」

勇者「三人…か…」

魔王「何よ?」

勇者「いや…」

魔王「あたしは…魔王にも神にもなりたくない…」

勇者「さて…メシにしようぜ」

魔王「あたしは…」

僧侶「勇者様、ほら、牛肉ですよ」

勇者「すき焼き!!」

僧侶「はいはい」

魔王「人間に…」

魔王「なりたい…」



おしまい

525: 2012/03/10(土) 22:54:14.44 ID:Gb1HGtCrO
武闘家「やっ!はっ!」

武闘家「………ふう…」

戦士「精が出るな」

武闘家「はあ…またか…」

戦士「なっ!何だよ!?」

武闘家「また来たのか、そう言う意味だ」

戦士「いいじゃねえか…」

ズイッ

戦士「!?」

武闘家「お前の罪が消えた訳ではない、お前は騙されていたとは言え、北の村を滅ぼしたのだぞ?」

戦士「う…」

武闘家「罪ほろぼしに、街の掃除をしてこい」

戦士「街の…どこを…」

武闘家「街の全部に決まっているだろう」

戦士「ええっ!?」

武闘家「早くしろ」

戦士「はい…」

神『あらあら…これは尻に敷かれますわね…』

武闘家「ふむ…茶の用意をしてやるか…」クスッ

526: 2012/03/10(土) 22:56:08.98 ID:Gb1HGtCrO
エルフ「む…遠かったが…やっと着いたな…」

ドワーフ「何だとこのやろう!!」

オーガ「おう!?やろうってのか!?」

エルフ「何なんだ…帰っていきなり問題か…」

ドワーフ「エルフはやっぱり木で出来た植物豊かな家が似合うだろうが!!」

オーガ「いーや!!今の時代は最先端のプラズマクラ〇ターの冷蔵庫やビッ〇ドラムや何かをだな!!」

ホビット「電気がないでやんす…」

エルフ「お前達…」

オーガ「エルフ!?」

ドワーフ「エルフ!?」

エルフ「バリアフリーにしてくれ、老後に便利だ」

みんな『何百年後に?』

神『ふふ…未来が楽しみですわね…』

528: 2012/03/10(土) 22:59:05.93 ID:Gb1HGtCrO
来ました



ドラゴン「うむ…なかなかに良い眺めだ…」

マスター「長ー、あそこ見てよ」

ドラゴン「ぬ…あれは…」

――――――

女「きゃあああ!!」

盗賊「おーおー、なかなかのかわいこちゃんだな」

盗賊「へっへっへ…どうだい?俺達と少し遊んでかねえかい?」

盗賊「ここまでベタだと逆に愛着湧くだろ?」

ドンッ!!

ドドドドンッ!!

グルルルル…

盗賊「え…?」

女「ひっ…」

ドラゴン「勇者殿のいるこの地で…」

マスター「悪さはよくないと思うよ?」

盗賊「ひいいっ!?」

ドラゴン「我等は常に空から大地を見ているぞ…」

マスター「次は食べちゃうからねー」

盗賊「うわああー!?」

女「あ…あの…」

ドラゴン「礼はいらん…勇者殿と同じにな…」

神『これで治安はよくなりますわね…』

529: 2012/03/10(土) 23:01:09.12 ID:Gb1HGtCrO
魔法使い「う…く…」

魔法使い「ふあー…」

魔法使い「むー…よく寝たぜ…」ボリボリ…

トタトタ…

『火炎魔法…』

シュンシュン…

ゴポポポ…

魔法使い「三分か…」

―――三分後―――

ズルルル-

魔法使い「うめー」

魔法使い「あー…」ゴロン

魔法「あたしの扱い…雑じゃね?」

神『これは酷い』

553: 2012/03/12(月) 20:34:39.02 ID:eUCBTOnfO

勇者「よし…飾り付けはこんなもんか…」

僧侶「そうですね、私は料理を…と…」

勇者「あいつは?」

僧侶「友達と噴水広場で遊んでいますよ」

勇者「そうか…いつ戻るのかな?」

僧侶「半時したら、戻って来るように言っておきましたから…そろそろ…」

勇者「よし…」

554: 2012/03/12(月) 20:36:41.98 ID:eUCBTOnfO
魔王「ただいまー、ママ、用事って何?」

勇者「魔王」

僧侶「魔王ちゃん」

魔法使い「魔王ちゃん」

武闘家「魔王殿」

戦士「魔王」

魔王「な…」

魔王「何だよ…」

勇者「一歳の…」

僧侶「お誕生日ね…」

魔法使い「もう一年か…」

武闘家「さあ、プレゼントだ」

戦士「俺からはこれを…」

魔法使い「ほらよ…」

僧侶「魔王ちゃん、皆にありがとうね」

魔王「………ありがと…」

555: 2012/03/12(月) 20:39:06.36 ID:eUCBTOnfO
ドンッ!!

魔王「何!?」

グルルルル…

「むう…家に入れない…」

魔王「ドラゴンさん!?」

エルフ「やあ」

オーガ「よう」

貞子「よっ、邪魔するぜ」

エルフ「長旅すまなかったな、ドラゴンの長よ」

ドラゴン「何と言う事もない、好きな時に使ってくれ、さあ魔王よ、これはプレゼントだ」

エルフ「さあ、これを」

オーガ「俺からも…傷薬なんだが…」

勇者「お前それはやめろ」

556: 2012/03/12(月) 20:41:46.13 ID:eUCBTOnfO
神「やっほ」

勇者「神ってやっほとか言いながらフランクに人んちに来るもんなの?」

神「まあまあ、さーて魔王ちゃん…」

魔王「はい…」

神「わたくしからは…」

魔王「はっ!はい!!」

神「はい、これ」

魔王「これ…」

勇者「え…と…」

僧侶「魚…?」

神「はい」

勇者「あの…魚…?」

神「はい」

557: 2012/03/12(月) 20:43:35.11 ID:eUCBTOnfO
勇者「何で…魚…?」

神「あの子が…」

勇者「あの子…」

僧侶「まさか…」

魔王「お兄ちゃん…」

男「やっほ!!」

ズコー!!

勇者「なっ…なんっ!?」

男「いやー栄養貰うわ貰うわ!!何だかんだで復活出来たよ!!」

勇者「お前…」

村娘「すみません…」

僧侶「栄養与えすぎ…」

558: 2012/03/12(月) 20:45:42.29 ID:eUCBTOnfO
コンコン

「勇者様」

勇者「おっと…何?」

「新しく魔王が現れ…東の国が…」

勇者「そうかあ…まあ…何とかなるかな?」

僧侶「はあ…また戦いですか…」

魔法使い「いいじゃん…やろうぜ…」

武闘家「行こう…」

戦士「全ては…償いのために…」

エルフ「さて…」

オーガ「この薬が役に立つかな…」

ドラゴン「捨てろ」

村娘「わたしは足手まといですかね?」

男「全力で守る」

勇者「じゃあ…」

魔王「パパ…」

魔王「行こう…」

シャンッ

勇者「ああ!!」

561: 2012/03/12(月) 20:57:42.65 ID:eUCBTOnfO
勇者「そうだ、魔王、俺からはこれを…」

魔王「盾と…ダメだよこの剣は!!大切な剣なんでしょ!?」

勇者「ああ、だからお前が持っていろ…そして…」

勇者「勇者の娘として、その剣を輝かせてみろ」

魔王「パパ…」ギュ

僧侶「わたしからはこれをプレゼントね」

魔王「これ…って…」

僧侶「じゃーん!勇者様とお揃いの旅人の服よ!」

魔王「えー!ヤダよ!パパとお揃なんて!恥ずかしいじゃん!!」

勇者「お前恥ずかしいはないだろう!?」

魔王「だって恥ずかしいじゃん!?」

勇者「返せ!!パパの大切な剣返せ!!」

魔王「やーだよ!これはあたしが輝かせるの!!」

僧侶「あらあら」

勇者「えーい!!もういいよ!!」

勇者「出発だ!!」

『おう!!』



お し ま い

562: 2012/03/12(月) 21:04:50.23
今までありがとうございました
外伝受け付けます!!

581: 2012/03/14(水) 20:35:03.95 ID:91oxKDIhO


ペラッ

「魔法使いへ」

スタスタ

「お元気ですか、わたしも勇者様も、もちろん魔王ちゃんも元気です」

「さて、魔王ちゃんの成長が止まりました、神様の話では安定期に入ったとの事です、今ではすっかり年頃の女の子です」

ペラッ

「それからもう一つ、なんと、魔王ちゃんに弟か妹が出来る予定です、ごめんね、勇者様が安定期に入るまでは内緒にしておこうなんて言うもんだから」

プルプル

「それじゃあ、魔法使いも元気で、僧侶より」

プルプル

「PS,早くあなたもいい男見つけなさい」

プチンッ

魔法使い「うるっさいわー!!」

ドーン!!

582: 2012/03/14(水) 20:41:23.39 ID:91oxKDIhO
ペラッ

「魔法使いへ」

スタスタ

「お元気ですか、わたしも勇者様も、もちろん魔王ちゃんも元気です」

「さて、魔王ちゃんの成長が止まりました、神様の話では安定期に入ったとの事です、今ではすっかり年頃の女の子です」

ペラッ

「それからもう一つ、なんと、魔王ちゃんに弟か妹が出来る予定です、ごめんね、勇者様が安定期に入るまでは内緒にしておこうなんて言うもんだから」

プルプル

「それじゃあ、魔法使いも元気で、僧侶より」

プルプル

「PS,早くあなたもいい男見つけなさい」

プチンッ

魔法使い「うるっさいわー!!」

ドーン!!

583: 2012/03/14(水) 20:52:52.68 ID:91oxKDIhO
魔法使い「ふーっ!!ふーっ!!」

魔法使い「何だよ何だよ!三回も魔王倒した仲だってのに!」

魔法使い「住んでる街だって隣なのに一回も遊びに来やしねえ!!」

魔法使い「ま…まあ…来られても困るけど…」

チラッ



ゴチャァ…

魔法使い「なんか戦士と武闘家も仲いいし…」

魔法使い「村娘と男もそれなりに幸せだし…」

魔法使い「あたしだけ何で男がいないかな…」

魔法使い「はあ…」

魔法使い「とりあえず…」

ゴッチャァ…

魔法使い「部屋片すか…」

584: 2012/03/14(水) 20:54:11.13 ID:91oxKDIhO
魔法使い「よし!」

魔法使い「飽きた!!」

魔法使い「あーもう!何でこんなに散らかってるんだよこの部屋!」ゴロン

魔法使い「………暇…」

ゴロゴロ…

魔法使い「そうだ…」

魔法使い「久しぶりに先生に会いに行こうかな…」

魔法使い「………」

魔法使い「よし!!」

魔法使い「多分会ってくれる…よな…」

585: 2012/03/14(水) 20:56:42.92 ID:91oxKDIhO
魔法使い「うーん懐かしい…我が母校よ!」



―魔法学院―



ザワッ

「魔法使い…?」

「魔法使いさんだ…」

「嘘だろ…」

「魔法使いさんだ!!」



ウワー!!



「魔法使いさん!!」

「キャー!!」

「すげえ美人!!」

「かわいー!!」

「サイン下さい」

「あたしが先よ!!」

魔法使い「しょうがねえなあ…順番順番」

587: 2012/03/14(水) 20:59:20.20 ID:91oxKDIhO



魔法使い「とかなっちまうんだろうなあ…」ニヤァ…

魔法使い「おっと、さあ着替え着替え…と…」

ゴソゴソ

魔法使い「よし」

魔法使い「あ、土産くらい必要かな?」

魔法使い「角の土産屋で菓子折りでも買うか」

魔法使い「さーて、先生びっくりするかな?」

魔法使い「おっと、もう武器はいらないな…」

ゴトッ…

魔法使い「行きますか!」

588: 2012/03/14(水) 21:02:35.99 ID:91oxKDIhO


―魔法学院―


魔法使い「うーん懐かしい…我が母校よ!」

「」スタスタ…

魔法使い「…」

魔法使い「うーん懐かしい…我が母校よ!!」

「」スタスタ…

魔法使い「うーん懐かしい!あたし魔法使いにとっての母校よ!!」

ザワッ

魔法使い(来た!!)

「魔法…使い…?」

「魔法使いだ…」

「…………ひ…」

「キャー!!」

「逃げろー!!」

魔法使い「えーっ!?」

590: 2012/03/14(水) 21:08:12.72 ID:91oxKDIhO
ヒュウウー…

魔法使い「な…何なんだよこれ…」

ザッ

魔法使い「!?」

魔法使い(ダメだ…!!)

魔法使い(避けられない!!)

ガンッ!!

「貴様!!よくおめおめと顔を出せたな!?」

魔法使い「~~~っ!!」

魔法使い「痛えじゃねえか!?もちっとは手加減しろよな!?一応女だぞ!!」

「うるせえ!!お前また家壊したんだろ!?」

魔法使い「あっ!!あれは仕方ないだろ!!僧侶がムカつく手紙送って来たから…!!」

「その度に学校から捻出される金額も大変な事になってるんだよ!!」

魔法使い「仕方ないって言ったじゃん!!あたしの福利厚生や生活費は全部ここから出るんだから!!」

「だからって家壊すな!!破門にするぞ!?」

魔法使い「破門はないだろ!!先生!!」

591: 2012/03/14(水) 21:12:06.18 ID:91oxKDIhO
ザワザワ…

先生「チッ…まあ…魔王を倒したからな…茶ぁくらいは出してやる…」

魔法使い「ちぇ…あ…これ…先生に…」

先生「ほう…これは…」

魔法使い「菓子折り買おうと思ったんだけど、気に入ったか!?前に先生があそこの土産屋の話をしてたから…」

先生「ああ…したな、あそこの饅頭はうまい」

魔法使い「饅頭…」

先生「饅頭はうまいが、お前、菓子折りより木彫りのボストロールが好きだとは一言も言った覚えはないが?」

599: 2012/03/15(木) 05:25:50.01 ID:wJACmkUlO
先生「お前ホントにここを卒業したのか?」

魔法使い「う…」

先生「まあ…しちまったもんは仕方ないが…」

先生「言っておくが、お前は…」

魔法使い「……何さ…?」
先生「いや…それより今日はどうして来た?」

魔法使い「わかんない…」

魔法使い「あたしって…友達いないから…」

先生「…」

魔法使い「先生くらいしか会えるのいないし…」

魔法使い「ちゃんと話を聞いてくれるのも…」

魔法使い「先生しか…いないんだよぅ…」ボロッ

600: 2012/03/15(木) 05:38:05.12 ID:wJACmkUlO
先生「泣くな!!」

魔法使い「!?」

先生「泣いたら頃す」

魔法使い「」グッ

先生「泣くくらいなら、泣かずに胸張って生きれる人生を送れ!!」

先生「お前は…魔王を倒したんだからな…」

魔法使い「あたし…」

魔法使い「あたし…変わりたいよ…」

魔法使い「どうしたら…いいのかな…?」

先生「もうどうにもならないんじゃないか?」

魔法使い「えーっ!?」

601: 2012/03/15(木) 05:39:59.35 ID:wJACmkUlO
魔法使い「それはねえだろ!?何とかしろよ!!」

先生「ってもなあ…お前炊事は?」

魔法使い「お湯なら…」

先生「掃除洗濯は?」

魔法使い「陰干しなら…」

先生「物陰にあるだけのはナシな?」

魔法使い「う…」

先生「ない…と…家事出来ないだけでないわー」

先生「………ないわー」

魔法使い「二回言うな」

603: 2012/03/15(木) 06:07:52.38 ID:wJACmkUlO


先生「まあ…なんだ…」

魔法使い「何だよ…」

先生「うん…久しぶり…だな…」

魔法使い「………ああ…」
先生「まさか…お前が首席で卒業とは…」

魔法使い「先生には色々教わったからな」

先生「世も末…か…」

魔法使い「ふざけんな!!あたしはこれでも勇者くらい活躍してたぞ!!」

先生「どうだか?」

魔法使い「マジだわ!!魔王の動きも読めた!!」

先生「そうかそうか」

魔法使い「うっわ!!マジムカつく!!」

604: 2012/03/15(木) 06:13:56.48 ID:wJACmkUlO
先生「まあ…な俺が教えたんだからな…」ボソッ

魔法使い「え?」

先生「いや…何でも…まあ何だ、お前はもうこの学校では魔王みたいなもんだ」

魔法使い「何で!?」

先生「いや…さっき言ったつもりだが…」

魔法使い「………じゃあ…もう来ない方が…」

先生「ああ、もう来ない方がいいな」

魔法使い「分かった…」

先生「よろしい、分かったら家に帰れ」

魔法使い「………はい…」

605: 2012/03/15(木) 06:27:02.46 ID:wJACmkUlO
パタン…

ゴロン…

魔法使い「………」

ギュ…

魔法使い「みじめ…」

ポロッ…

魔法使い「泣くな…か…」

魔法使い「先生も無茶ばっかり言う…」

魔法使い「あたしだって…泣くさ…」

魔法使い「あたしだって……泣くんだからぁ…」

先生「泣いたら頃すと言ったはずだが?」

魔法使い「!?」

606: 2012/03/15(木) 06:30:49.69 ID:wJACmkUlO
魔法使い「先生!?」

先生「魔法使い、お前に頼みがある」

魔法使い「いやそれより!鍵かけてあったのに!?」

先生「あんなもん、針金あれば開くわ」

魔法使い「やめろよな!!レディーの家の玄関針金で開けんの!?」

先生「誰がレディーだ?こ汚い部屋のくせに」

魔法使い「う…」

先生「うお…これはないわー…」

先生「………ないわー…」

魔法使い「二回言うな!」

先生「うわ…これ…」ヒョイ

魔法使い「?」

先生「ほら?これだけ女の下着に興奮しないのもめずらしいぞ?」

魔法使い「何見つけてんだよ!?」バシッ!!

615: 2012/03/15(木) 21:02:29.22 ID:wJACmkUlO

魔法使い「それより!!頼みって何だよ!!」

先生「ああ、西の国に魔王が現れそうだ」

魔法使い「魔っ!?」

先生「ついてこい」

魔法使い「なら…勇者とか僧侶にも…」

先生「彼らには来てもらわない、今回はあくまで調査だからな、まだ現れそう…な段階だ」

先生「それに僧侶さんは妊娠しているし、旦那も今が大事だからな」

先生「戦士も武闘家もこれから幸せにならないといけないし…」

先生「ほら?今どうなっても問題ないのって、お前だけだろ?」

魔法使い「えーっ!?」

616: 2012/03/15(木) 21:05:05.65 ID:wJACmkUlO
魔法使い「ふざけんな!!魔王退治を二人でやんのかよ!?」

先生「退治じゃない、調査だ」

魔法使い「同じだわ!!」

先生「同じくない」

魔法使い「いやいやいや!二人じゃダメだって!!」

先生「あれ?勇者君くらい活躍したんじゃないの?」

魔法使い「う…」

先生「そうだな…お前に頼むくらいなら…他の生徒のが信頼出来るかな…」

魔法使い「…」

先生「魔法うまい奴たくさんいるからなあ…」

魔法使い「やってやる!」
先生「煽りに乗るの早ぇーよお前…」

617: 2012/03/15(木) 21:06:44.02 ID:wJACmkUlO
先生「ほら、早く武装しろよ」

魔法使い「いや…するけどさ…」

先生「早く」

魔法使い「だから…部屋から出てけよ…」

先生「何で?」

魔法使い「何で…って…着替えるから…」

先生「だから?ドラ〇エでも街中で普通にあぶないみずぎに着替えるだろ?」

魔法使い「あれとこれとは違うんだよ!!」

618: 2012/03/15(木) 21:08:37.72 ID:wJACmkUlO
先生「ほう…それが精霊が編んだ法衣か…」

魔法使い「何だよ…ジロジロ見るなよな…」

先生「ふむ…これは素晴らしい…馬子にも…」

魔法使い「うるせえ!!」

先生「さて…行くか…」

魔法使い「ああ」

先生「忘れ物は?」

魔法使い「ないよ」

先生「ほう…そのこ汚いテーブルの上にあるナイフはいいのか?」

魔法使い「あ…」

先生「どうせお前には使いこなせない物だろ?」

魔法使い「……悔しいが…そうだよ…」

魔法使い「精霊が…」

魔法使い「その命を懸けて作ってくれたのに…」

619: 2012/03/15(木) 21:10:01.71 ID:wJACmkUlO
先生「ま、お前は勇者になれない器だった、と言うわけだな」

魔法使い「うん…そうだったんだろうな…」

魔法使い「いや…だった…じゃないな…」

魔法使い「あたしは…魔法しか出来ないから…」

先生「魔法しか?」

魔法使い「え?」

先生「ほぉう…それはつまり、俺がお前に教えた魔法程度しか使えないと?」

魔法使い「いや!そう言う事じゃなくて!!」

先生「なるほどなるほど…なるほど…」

魔法使い「やばい…三回言った…」

先生「………来い…」グイ

魔法使い「えっ!?ヤダヤダヤダー!!」

―――――――

イーヤー!!

620: 2012/03/15(木) 21:11:35.02 ID:wJACmkUlO
先生「さて、行くか」

魔法使い「先生…関節という関節が取れそうなんですが…行くんですか…?」

先生「行く」

魔法使い「うわぁ…」

先生「西だ、魔王たりうる者か見極めるぞ」

魔法使い「仕方ねえな…」
グッ…

魔法使い「やるっていっちゃってるしな」

魔法使い「家にいても暇だし…張り切って行ってみましょうか!!」

先生「暇なら掃除しろよ」
魔法使い「………」

621: 2012/03/15(木) 21:13:37.98 ID:wJACmkUlO
先生「………遅い…」

タッタッタッ

魔法使い「悪ぃー先生!」

先生「何を買ってきた?」

魔法使い「これこれ、長旅に便利な食料だよ」

先生「これは…巷で最近発売されだした…」

魔法使い「ラ・アーメンだよ」

先生「確か小麦粉を棒状にのばし、乾燥させて、食べる前に湯で戻すタイプの保存の効く食料だったな」

魔法使い「これがけっこういけるんだよ」

先生「ほうほう」

魔法使い「残った器はごみ箱にも出来るし」

先生「さすが、汚ぇ部屋に住んでる奴は違うな?」

魔法使い「うるせえ!!」

622: 2012/03/15(木) 21:15:40.72 ID:wJACmkUlO
ズルルー

先生「む…うまい…」

ズルルー

魔法使い「だろ?人気なんだぜ、それ」

先生「ふむ、人気なのも頷けるな」

魔法使い「へへっ」

先生「さて、と…魔法使い、腕は落ちてないか?」

魔法使い「当たり前だよ」

先生「ほう?超・爆裂魔法くらいは使えるか?」

魔法使い「舐めんな!!」

先生「よし、あそこだ…あの山肌の少し下…そうだ、あそこを狙え」

『絶!!』

『爆裂魔法!!』

ドオォオオォオオオン!!

先生「よし、次は…」

―――――

623: 2012/03/15(木) 21:17:23.90 ID:wJACmkUlO
―――――

先生「よし、もういいぞ」
魔法使い「はあ…はあっ…何なんだよ…」

先生「腕を上げたな…」

魔法使い「えっ?」

先生「いや、腕はなまってないようだな」

魔法使い「ったりめーさ」

先生「よし、最初の街までは後少しだ、今日中には着くだろう」

魔法使い「えー?少し休憩しようぜー」

先生「よし、最初の街までは後少しだ、今日中には着くだろう」

魔法使い(やばい…二回目だ…)

魔法使い「はい…」

624: 2012/03/15(木) 21:19:07.73 ID:wJACmkUlO
先生「すっかり暗くなってしまったな」

魔法使い「でもすげえな、まだ活気がある」

先生「ここは人口が多いからな」

魔法使い「先生、先生」

先生「何だ?」

魔法使い「ほら…あそこに…」

先生「酒場か…」

魔法使い「先生のおごりで何とか!!」

先生「ふう…」スタスタ

魔法使い「先生?」

先生「今日はよく働いてくれたからな…」

魔法使い「先生ってば?」

クルッ

先生「一軒だけだぞ」

魔法使い「やったぜ!!」

625: 2012/03/15(木) 21:20:44.16 ID:wJACmkUlO
先生「ふう…」

魔法使い「いい飲みっぷりで、ささ、もう一杯」

先生「悪代官と大黒屋か」

魔法使い「先生と飲んだのは一回だけだな」

先生「ああ…あの時は大変だった…」

魔法使い「悪い、あたし記憶にないんだわ」

先生「今日は記憶がなくなるまで飲むなよ?明日も旅があるんだ」

魔法使い「はぁい」クイッ

魔法使い「ふぅ…」カランッ…

魔法使い「………うま…」

先生「………ああ…」

626: 2012/03/15(木) 21:22:39.28 ID:wJACmkUlO
先生「たく…酔い潰れるまで飲むなよ…」

魔法使い「」グゴー

先生「はあ…こりゃ嫁の貰い手もないな…」

先生「よっ…」

魔法使い「うーん…」

先生「!?」

魔法使い「うへへ」ボリボリ

先生「はあ…」

先生「宿で誤解されなければいいんだが…」

スタスタ…

先生「こいつ…」

先生「こんなにも軽いんだな…」

魔法使い「うーん…もう飲めない…」ムニャムニャ

先生「それなのに…何回も魔王との戦いに…」

先生「………」

先生「頑張ったな…」

638: 2012/03/16(金) 21:41:11.79 ID:Ffi/MD1WO
先生「よ…」

ギシッ…

魔法使い「」ンガー

先生「たく…こいつホントに女か?」

魔法使い「」ンゴー

先生「はあ…」

先生「もう少し飲んで…寝るとするか…」

――――――

チュン チュン チチチチ…

魔法使い「んが?」

魔法使い「あー…うあー…頭痛ぇー」ヨロッ

魔法使い「むー…?ここ…宿か…?」キョロキョロ

魔法使い「先生は…まあ、別の部屋か…」

ガチャ

魔法使い「!?」

641: 2012/03/16(金) 21:43:12.64 ID:Ffi/MD1WO
あ、なんかほんとありがとう



先生「」クー

魔法使い「せん…せ…」

魔法使い「おい!先生!」

ユサユサ

先生「む…?朝…か…」

魔法使い「朝か、じゃないだろ!何で廊下で!?」

先生「部屋が一つしか取れなかったからな」

魔法使い「だからって何で廊下で寝るんだよ!?」

先生「お前と一緒の部屋で寝る訳にはな…」

魔法使い「先生…」

先生「いびきがうるさい」

魔法使い「そーいう理由かよ!!」

643: 2012/03/16(金) 21:46:44.21 ID:Ffi/MD1WO
プリプリ

魔法使い「あーむっ!」

先生「ふむ…これは…」

魔法使い「ったくよー!心配したのによ!?」

ムグムグ

先生「心配?風邪をひかない眠り方くらいは熟知しているさ」

魔法使い「はいはい、お?このエビプリプリしててうめーな」

先生「エビもお前もプリプリしてるな」

ガタッ

魔法使い「ヤダ…先生…そんな目であたしを…?」

先生「いや?お前の体はプリプリじゃなくてスカスカしてっ!?」

ガンッ!!

魔法使い「それ以上言ったら…先生でも燃やすよ?」

先生「殴りはするんだ?」

645: 2012/03/16(金) 21:49:26.39 ID:Ffi/MD1WO
先生「さて…」

魔法使い「うあ…森ばっかり…」

先生「ここを下ったら、あの森に入る」

魔法使い「はああ…」

先生「おい、あそこに爆裂魔法を…」

―――――

先生「次はあそこに…」

魔法使い「何なんだよ!?いつもいつも!?」

先生「いいからやれ」

魔法使い「分かったよ!」

『超・爆裂魔法!!』

ドウンッ!!

646: 2012/03/16(金) 21:50:52.06 ID:Ffi/MD1WO
先生「この森を抜ければ、目的地だ…」

魔法使い「早いな」

先生「当たり前だ、魔王は必ずしも遠くに現れるとは限らないだろ」

魔法使い「まあ…魔王の城のそばに街や村も存在するからな…」

ザッ

先生「さて…」

魔法使い「へえ…」

先生「お出迎えだ…」

「キシャー!!」

647: 2012/03/16(金) 21:54:32.56 ID:Ffi/MD1WO
先生「出迎え感謝する」

魔法使い「あれ!?戦わないの先生!?」

先生「なぜだ?」

魔法使い「だって!?モンスターだぜ!?」

先生「モンスター…だから何だ?お前もオーガやドラゴンと友達だろう?」

魔法使い「けど…」

先生「魔王たりうる者かを見に来ただけだ、戦う理由など、何一つない」

魔法使い「………はい…」

648: 2012/03/16(金) 22:27:36.99 ID:Ffi/MD1WO
カッ…コッ…カッ…コッ…

カツンッ…

ギ…イ…イイイイッ…

ズアッ!!

魔法使い「うっ!?」

魔王?「よくぞ来られた…人間よ…」

先生「お初にお目にかかる、わたしは先生と申す」

魔王?「ほほう…たったの二人で…これはこれは…」

先生「人数は必要ありません、あなたと戦う理由はありませんから」

魔王?「ふむ…?」

先生「単刀直入に問う、あなたは世界に仇なす存在となりうるか?」

魔王?「それは…」

先生「それは?」

魔王?「ぬしらを喰ってみれば分かる事よ!!」

649: 2012/03/16(金) 22:29:06.68 ID:Ffi/MD1WO
『超・烈風魔法!!』

ド…ザンッ!!

魔法使い「ずるいぜ一人だけ!!」

『超・爆裂魔法!!』

ゴウンッ!!

先生「話は無意味!!あなたは魔王だ!!」

魔王「クカカカッ!!やってみろ!!」

魔法使い「無傷!?」

先生「手加減するな!」

魔法使い「しねえよ!」

『絶!!』

キイイイッ…

『爆裂魔法!!』

ズッ…ドオォオオ…

650: 2012/03/16(金) 22:30:50.92 ID:Ffi/MD1WO
魔法使い「大当り!!」

先生「さすがにこれなら…勝っただろう…」

ズ…

ズズズズズズ…

…………

キラッ…

先生「魔法使い!!」

魔法使い「えっ?」

ザンッ…

魔法使い「あ…」

ガクッ…

魔法使い「あああ…」

ドサッ…

魔法使い「先生!?」

651: 2012/03/16(金) 22:32:44.41 ID:Ffi/MD1WO
魔法使い「先生!?先生ってば!?」

先生「馬鹿…が…あんなものも…よける事が出来ない…のか…」

魔法使い「先生!!」

魔王「クカカカッ!!仲良く消え去れ!!」

オッ…

魔法使い「先生!!」

先生「逃げろ…」

ガフッ…

先生「あれを喰らえば…タダじゃ…済まない…」

オオオオオ…

先生「逃げろ…」

魔法使い「嫌だ…二回目…だけど…」

先生「逃げろ!!」

魔法使い「絶対嫌だ!!」
ゴアッ!!

652: 2012/03/16(金) 22:34:55.93 ID:Ffi/MD1WO
「ねえ、あの人、魔王に立ち向かってるよ?」

「えー?魔王にー?」

「勇者様じゃないよね?」

「勇者様じゃないね」

「え?勇者様だよ」

「勇者様じゃないよ」

「勇者様だってば」

「何でー?」

「だって…」

「綺麗だね」

「うん、綺麗」

「まっすぐー」

「だって、勇者様と同じ目をしてるよ…」

「ほんとだ…」

653: 2012/03/16(金) 22:36:33.37 ID:Ffi/MD1WO
ギャッ!!

ギャリリリリリッ!!

魔王「ぬうっ!?」

先生「閃光を…」

魔王「切り裂いた!?」

魔法使い「輝いた…」

先生「精霊が…」

魔法使い「認めてくれた…のか…?」

チャキッ…

魔法使い「精霊達…」

魔王「たかが一発防いだくらいで…!」

魔法使い「ありがとう…」

魔王「図に乗るな!!」

ガカッ!!

654: 2012/03/16(金) 22:39:05.37 ID:Ffi/MD1WO
ドウンッ!!

ゴゴゴゴゴゴ…

魔王「クッ…カカカッ!!やったか!?」

ズアッ!!

魔法使い「おいおい…ずいぶん安い魔王だな…」

魔王「!?」

魔法使い「自分に自信がねーから、やったか?なんて疑問に思うんだろ?」

魔王「こいつ…っ!?」

魔法使い「あたしならこう言うな…」

キイイイッ!!

魔法使い「先生…早く帰ろうぜ…」

オッ!!

『激・爆裂魔法』

カッ!!

ヅウゥウウウンッ!!

………………

シュタッ…

キッ

魔法使い「終ったな」

シャンッ!!

687: 2012/03/18(日) 19:41:58.25 ID:IdZIWsDtO


オオオオオ…

オオオオオ…

オオオオオ…



……………

ガランッ!!

魔法使い「!?」

魔王「クカカカッ…まだだ…まだだっ!!」

魔法使い「化け物が!!」

魔王「これからは全力で行ってやる!!」

魔法使い「マジか…へへ…もう…魔力…ないや…」

フラッ…

魔法使い「せんせ…」

先生「魔法使い…」

魔法使い「ゴメン…」

ドッ…

689: 2012/03/18(日) 19:46:40.39 ID:IdZIWsDtO

ザンッ…

魔王「………」

魔法使い「?」

先生「来たか…」

魔王「あ…あ…」



キイイイッ!!

魔王「お前まぎらわしい、次からザコな?」

ザコ「ああああっ!?我の腕が!?」

勇者「僧侶!!」

僧侶「はい、勇者様!!」

『回復魔法!!』

先生「く…」

魔法使い「先生!!」

690: 2012/03/18(日) 19:48:50.80 ID:IdZIWsDtO
魔法使い「先生!!先生…ううぅ…」ポロッ

先生「泣いたら頃す…そう言ったはずだが?」

魔法使い「そうだけど…頃してもいいから…今だけは泣かせてよ…」

先生「ふん…どうしようもない生徒だな…」

ポン…

魔法使い「せんせ…?」

先生「よく頑張った…お前は…俺が誇れる…」

魔法使い「…」

先生「いいくそ女だ…」

魔法使い「………はい!」

691: 2012/03/18(日) 19:51:02.11 ID:IdZIWsDtO
ザコ「このままでは…!!一時撤退を…!!」

ガンッ!!

ザコ「がっ!?」

エルフ「いったい…」

武闘家「何処へ?」

戦士「行くんだ?」

ザンッ!!



ザコ「ならば空へ…!!」

ザアアアア…

バサッ…バサッ…

ドラゴン「ほう…我等の縄張りへ来るか…」

ザコ「そんな!!」

勇者「魔法使い…」

僧侶「魔法使い…」

魔王「魔法使いさん…」

――――――

魔法使い「もう一回…輝いてくれ…」

キイッ…

692: 2012/03/18(日) 19:54:23.44 ID:IdZIWsDtO
魔法使い「精霊達…」

キイイイッ…

魔法使い「こんなあたしを認めてくれるんだな…」

キイイイイイイッ!!

魔法使い「すまねえ…」

ザコ「クッ…カカカッ!!我は魔王なるぞ!!」

ドッ!!

ザンッ!!



魔法使い「ああ…」



「がっ…かっ…」

ザッ…

……………

ザラアッ…

魔法使い「ついさっきまでの話だがな!!」

シャンッ!!

693: 2012/03/18(日) 19:57:36.21 ID:IdZIWsDtO
サアアッ…



魔法使い「しかし…来るの早かったな…」

僧侶「ええ、連絡があって出発しましたが、道中モンスターが全くいませんでしたから」

勇者「ああ、モンスターがいたらしき所には、クレーターしかなかった」

魔法使い「クレーター?」

勇者「ああ、まるで爆発が起こったとしか思えない跡があっただけだ」

魔法使い「まさか…!?」

バッ

先生「………私はお前の腕を見ただけだ…」

魔法使い「先生…」

694: 2012/03/18(日) 19:59:48.98 ID:IdZIWsDtO
魔法使い「先生…あの…何だ…」

先生「何だ?」

魔法使い「あたし…さ…こ
んなんだけど…」

先生「だけど?」

魔法使い「あの…その…」

グイッ

魔法使い「こっちに…」

僧侶「あらあら」

―――――

先生「何だ?こんな所に連れてきて…」

魔法使い「あのさ…」

先生「何だ?」

魔法使い「先生て…確か30代だよな…?」

先生「まあ、31だ」

魔法使い「あのさ…」

先生「撤収ー」

696: 2012/03/18(日) 20:05:44.43 ID:IdZIWsDtO
魔法使い「何で!?」

先生「何を言うかと思ったら…くだらん…」

魔法使い「くだらん…」

先生「ああ、くだらん…」

魔法使い「舐めんな…」

ポロッ…

魔法使い「あたしだってなあ…」

先生「その先は言うな…」

魔法使い「言うわ!!」

先生「言うな…」

魔法使い「先生!!」

先生「言ったら頃す!!」


魔法使い「あたし…!!」

先生「言うなと言った!」

魔法使い「先生を…」

697: 2012/03/18(日) 20:08:30.54 ID:IdZIWsDtO
ゴアッ…

魔法使い「!?」

先生「言ったら頃す…そう言ったはずだが…」

魔法使い「え…と…これ…何回目…?」

先生「四回目」

魔法使い「………え…」

ゴキンッ…

先生「言ったな…」

魔法使い「いや…ちが…あのね…」

先生「大丈夫…」

ザッ…ザッ…ザッ…

先生「優しくしてやる…」
魔法使い「ちょっとねえ待って!?」

―――――

アハーン!!

―――――

698: 2012/03/18(日) 20:10:20.15 ID:IdZIWsDtO
勇者「はあ…じゃあその…それ…を…」

僧侶「お願いします」

先生「任せてくれ」

魔王「ママ、ご飯」

僧侶「はいはい」

勇者「今回の魔王は楽だったな」

魔王「ザコね」

勇者「しかし…お前も精霊の剣を輝かせる事が出来るようになったか…」

魔王「まあ、パパの娘だからね、これくらいは」

僧侶「ふふふっ」

魔王「ところで…あの魔法使いさんだった物は…その…何て言うの…?」

勇者「え?お前『あれ』を知らないのか?」

僧侶「『ボロ雑巾』です」
魔王「………ひどい…」

700: 2012/03/18(日) 20:13:37.77 ID:IdZIWsDtO
―――――

魔法使い「んあ?」


先生「起きたか?」

魔法使い「あれ…あたし…いてて…」

先生「魔王との戦いの後だからな…力も使い果たしていたようだ…」

魔法使い「いや…痛いのは先生のせいだと思う…」

先生「ふん…」

魔法使い「あ…れ…?」

先生「どうした?」

魔法使い「部屋が…綺麗になってる…」

先生「………暇だったんでな…まあ私なりに整理整頓しておいた…」

魔法使い「先生…」

701: 2012/03/18(日) 20:19:14.32 ID:IdZIWsDtO
魔法使い「へへっ…さーて先生!ラ・アーメンでも買いに行こうぜ!」

先生「………ああ…」

魔法使い「さーて、パジャマから私服に着替えるから、先生は…外…に…」

先生「早くしろ」

魔法使い「待って…ねえ…先生…?」

先生「何だ?」

魔法使い「あたしさ…法衣だったよね…?」

先生「ああ」

魔法使い「誰が…このパジャマに着替えさせたの?」
先生「俺だが?」

ドーーーン!!

魔法使い「ふっ……………ざけんなーーー!!」

702: 2012/03/18(日) 20:22:02.73 ID:IdZIWsDtO
魔法使い「仮にも年頃の女が寝てる時に何て事しやがるんだ!!いくら先生でもやっていい事と悪い事ってのがあるだろが!?」

先生「年頃の女…か…」

スッ

魔法使い「先生!?」

先生「すまなかった…」

魔法使い「何…やめてよ…ねえ…先生…?」

先生「心より言う…本当にすまなかった…」

魔法使い「分かったから!許すから!頭上げてよ!頼むよ先生!!」

グイッ!

先生「傷…」

魔法使い「え?」

先生「傷だらけだった…」

魔法使い「まあ…な…結構激しい戦いだったから…」

先生「教え子に…年頃の女に…それだけの傷を負わす戦いを強いた私は…」

魔法使い「先生…」

先生「私は…先生として…失格なんだろうな…」

魔法使い「ざけんな!!」

パシッ!!

703: 2012/03/18(日) 20:23:54.34 ID:IdZIWsDtO
魔法使い「あんたが先生失格なら…あたしも魔法使い失格だな!?」

魔法使い「いいじゃねえか!失格者同士でお似合いだなあたしら!?」

先生「…」

魔法使い「でもな!!そんな失格者に魔法をおそわった失格者が!………たくさんの仲間を作って…」

ツ…

魔法使い「たくさん…傷ついて…」

ポロッ…

魔法使い「その傷の数よりたくさん笑って…」

ポロポロッ…

キッ!!

魔法使い「そんで今があるんじゃねーか!!」

704: 2012/03/18(日) 20:29:33.07 ID:IdZIWsDtO
先生「先生を…叩く教え子…か…」

パシッ!!

魔法使い「何度でも叩いてやる!」

パシッ!!

魔法使い「あんたが先生失格なんて言ったのを取り消すまではな!!」

パシッ!!

魔法使い「取り消せ!!」

パシッ!!

魔法使い「取り消せ!!」

パシッ!!

魔法使い「馬鹿野郎…」

ベシッ…

魔法使い「ううっ…う…」

パシッ…

魔法使い「あんたは…あたしの…誇りなんだよぅ…」

705: 2012/03/18(日) 20:36:19.12 ID:IdZIWsDtO
魔法使い「あたしみたいなダメな奴っがあ…うっ…魔王を倒しっ…たんだあ…」

先生「魔法使い…」

魔法使い「それなのに…せんっ…せ…までに否定されたらあ…」

魔法使い「あたしはぁ…」

魔法使い「あだしはぁ…」
魔法使い「何で魔法使いになったんだよぉ…」

魔法使い「あだしだって普通に暮らしたいよぉ…」

魔法使い「あたしはなあ…やっぱ…」

先生「やめろ…」

魔法使い「やっぱ…先生の事がぁ…」

先生「やめろと言った…」

魔法使い「聞くだけ聞いてくれよぉ…」

先生「やめろ…」

魔法使い「あだしは…」

先生「やめろ…」

魔法使い「先生がぁ…」

先生「やめろ!!」

706: 2012/03/18(日) 20:37:34.91 ID:IdZIWsDtO
ゴゴゴゴゴ…

魔法使い「………え…」

先生「五回目だ…」

魔法使い「待って!?いやこれは!!」

先生「覚悟はいいな…」

魔法使い「ヤダー!!」

グイッ

魔法使い「イーヤー!!」

先生「………家事だ…」

魔法使い「………は?」

先生「炊事洗濯、それから特に掃除…」

魔法使い「は…はあ…」

先生「しっかり出来るようになったら…考えてやる」
魔法使い「本当…に…?」

先生「本当だ」

魔法使い「せんせ…嘘とかナシ…だぜ…?」

先生「本当だ…」

魔法使い「ホントにホントのホントか…?」

先生「本当に…本当の…」

ゴゴゴゴゴ…

先生「本当…だ…」

魔法使い「へ…?」

707: 2012/03/18(日) 20:39:21.75 ID:IdZIWsDtO
ズゴゴゴゴゴ…

魔法使い「あれ!?今こんな流れになる!?」

先生「新記録だな…」

ユラアッ…

先生「最初と合わせて…」

魔法使い「ちょっ!?」

先生「六回…か…」

魔法使い「ヤダヤダヤダヤダー!?」

先生「心配するな…」

魔法使い「ひっ…」フルフル…

先生「優しくする…」

ジリッ…



――――――

ニャーッ!!

――――――

708: 2012/03/18(日) 20:41:20.01 ID:IdZIWsDtO
勇者「安らかに眠ってくれ…………よし…みんな…済んだか?」

僧侶「はい…魔王ちゃんも、ちゃんとお祈りした?」

魔王「うん…でも…何でこんな事に…」

勇者「多分…六回言わせたんだろうな…」

魔王「え?六回言ったら氏ぬの?」

勇者「うん」

僧侶「………さて…」

勇者「ああ…行くか…」

ボゴッ…

勇者「!?」

「まーてーや~…」

ボゴンッ!!

魔法使い「ふざけんなよ!絶対幸せになってやるからな!!」

魔法使い「くそったれ!」


お し ま い

引用元: 勇者「滅びろ!!ここは人間の国だ!!」