1: 2020/09/14(月) 21:11:04.369 ID:M4ADWkRD0
男「よく俺が悩んでるって分かりましたね。課長に相談して正解でした!」
女上司「上司は部下のことなんてみんなお見通しなんだから!」
ガタンゴトン… ガタンゴトン…
男「あ、ちょうど終電が来ましたね」
女上司「終電……!」ザワッ
男「どうしました?」
女上司「破ァッ!!!」
ドォォォォォォン!!!
女上司「終電……跡形もなくなっちゃったね」
男「なんてことするんだァァァッ!!!」
女上司「上司は部下のことなんてみんなお見通しなんだから!」
ガタンゴトン… ガタンゴトン…
男「あ、ちょうど終電が来ましたね」
女上司「終電……!」ザワッ
男「どうしました?」
女上司「破ァッ!!!」
ドォォォォォォン!!!
女上司「終電……跡形もなくなっちゃったね」
男「なんてことするんだァァァッ!!!」
3: 2020/09/14(月) 21:13:21.597
パワータイプはちょっと...
5: 2020/09/14(月) 21:14:34.389 ID:M4ADWkRD0
男「あんた、あの電車には人が何人乗ってたと思ってんだ!?」
女上司「ん~、十両編成で一両30人いたとして、ざっと300人ぐらい?」
男「て、てめえ……!」
男「こんな軽々しくそれほどの命を……! なんでだよッ!」
女上司「あなたは道端の石ころを蹴る時、いちいち理由を考えるの?」
男「……ッ!」
男「うおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
女上司「ん~、十両編成で一両30人いたとして、ざっと300人ぐらい?」
男「て、てめえ……!」
男「こんな軽々しくそれほどの命を……! なんでだよッ!」
女上司「あなたは道端の石ころを蹴る時、いちいち理由を考えるの?」
男「……ッ!」
男「うおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
8: 2020/09/14(月) 21:17:25.316 ID:M4ADWkRD0
老師「よせい」ガシッ
男「! なんだあんた……!」
女上司「あなたは……」
老師「今のおぬしでは、あの女には勝てん。無駄氏にするだけじゃ」
男「だけどッ! あの人を野放しには――」
老師「ふん」ボグッ
男「うっ……」ガクッ
老師「この坊や、連れていくぞよ」
女上司「ええ、好きにしたらいいわ。無駄だと思うし」
老師「それはどうかの」バッ
女上司「……」
男「! なんだあんた……!」
女上司「あなたは……」
老師「今のおぬしでは、あの女には勝てん。無駄氏にするだけじゃ」
男「だけどッ! あの人を野放しには――」
老師「ふん」ボグッ
男「うっ……」ガクッ
老師「この坊や、連れていくぞよ」
女上司「ええ、好きにしたらいいわ。無駄だと思うし」
老師「それはどうかの」バッ
女上司「……」
11: 2020/09/14(月) 21:21:25.418 ID:M4ADWkRD0
老師「起きんかい」バシャッ
男「ぶっ!?」
男「ここは……?」
老師「山じゃ」
男「山……!? 俺は課長を止め――」
老師「だからさっきもいったじゃろ。今のおぬしでは勝てん」
男「やってみなきゃ分からないだろ!」
老師「強情な奴じゃのう。どうしても下山したいのなら、ワシを倒してみい」
男「ならば遠慮なく!」
男「ぶっ!?」
男「ここは……?」
老師「山じゃ」
男「山……!? 俺は課長を止め――」
老師「だからさっきもいったじゃろ。今のおぬしでは勝てん」
男「やってみなきゃ分からないだろ!」
老師「強情な奴じゃのう。どうしても下山したいのなら、ワシを倒してみい」
男「ならば遠慮なく!」
13: 2020/09/14(月) 21:24:18.471 ID:M4ADWkRD0
男「ハァッ!」ブオンッ
老師「ほっ」ヒョイッ
男「!?」
老師「のろい突きじゃ。届く前に寿命が来ちまうかと思ったわい」
老師「こっちの番じゃ。ほれっ」シュッ
ドンッ!
男「ぐおおっ……!」ミシミシ…
男(なんて……突き……!)ガクン
老師「ワシの強さ……というより己の弱さがよく分かったじゃろ」
老師「ほっ」ヒョイッ
男「!?」
老師「のろい突きじゃ。届く前に寿命が来ちまうかと思ったわい」
老師「こっちの番じゃ。ほれっ」シュッ
ドンッ!
男「ぐおおっ……!」ミシミシ…
男(なんて……突き……!)ガクン
老師「ワシの強さ……というより己の弱さがよく分かったじゃろ」
14: 2020/09/14(月) 21:27:16.412 ID:M4ADWkRD0
老師「しかも、あやつはワシよりも強い」
男「!」
老師「そしてもう一つ。今のおぬしではあやつに勝てんが――」
老師「未来のおぬしなら分からん。ワシと違い、伸び代もある」
男「……!」
老師「どうじゃ、ここでしばらく修行してみんか」
男「やります……やらせて下さい!」
老師「よくいうた。ではさっそく――」
男「!」
老師「そしてもう一つ。今のおぬしではあやつに勝てんが――」
老師「未来のおぬしなら分からん。ワシと違い、伸び代もある」
男「……!」
老師「どうじゃ、ここでしばらく修行してみんか」
男「やります……やらせて下さい!」
老師「よくいうた。ではさっそく――」
16: 2020/09/14(月) 21:30:26.056 ID:M4ADWkRD0
老師「薪割りをしてもらおうかの。ワシは風呂に入りたいんじゃ」
男「は……?」
老師「薪割りじゃよ。はよせんか」
男「分かりました……道具は?」
老師「んなもんあるかい。素手でやるんじゃよ」
男「素手で!?」
老師「さあ、はよ割らんかい」
男「は、はいっ!」
男「は……?」
老師「薪割りじゃよ。はよせんか」
男「分かりました……道具は?」
老師「んなもんあるかい。素手でやるんじゃよ」
男「素手で!?」
老師「さあ、はよ割らんかい」
男「は、はいっ!」
20: 2020/09/14(月) 21:33:13.167 ID:M4ADWkRD0
男「せやっ!」ガッ
男「せやっ!」ガッ
男「せやあっ!」ガッ
老師「ダメじゃダメじゃ、もっと手指に意識を集中するんじゃ」
男「はいっ! せやぁっ!」ガッ
男「せやぁっ!」パキャッ
男「や、やっと一本割れた……」
老師「さあ、その調子でどんどん割るんじゃ。怠けたら許さんぞ」
男「せやっ!」ガッ
男「せやあっ!」ガッ
老師「ダメじゃダメじゃ、もっと手指に意識を集中するんじゃ」
男「はいっ! せやぁっ!」ガッ
男「せやぁっ!」パキャッ
男「や、やっと一本割れた……」
老師「さあ、その調子でどんどん割るんじゃ。怠けたら許さんぞ」
21: 2020/09/14(月) 21:35:14.563 ID:M4ADWkRD0
男「せやぁっ!」パキャッ
男「よ、よし……!」
老師「それじゃ、薪をくべて風呂を焚かんかい」
男「はいっ!」
ボワァァァッ
男「フーッ! フーッ!」
老師「ぬるいぞ。もっと温度を上げい」
男「はいっ!」
男「よ、よし……!」
老師「それじゃ、薪をくべて風呂を焚かんかい」
男「はいっ!」
ボワァァァッ
男「フーッ! フーッ!」
老師「ぬるいぞ。もっと温度を上げい」
男「はいっ!」
23: 2020/09/14(月) 21:39:36.218 ID:M4ADWkRD0
老師「ふぅ~、ぬるい湯じゃったわい」
老師「さて次の修行じゃが……うどんを食いたいのう」
男「うどん……?」
老師「とびきりコシが強いやつをな。つーわけで、手打ちしてくれんか」
老師「こねればこれるほど、コシが出る材料を用意しとる」
男「分かりました……」
男「……」コネコネコネ
男「……」コネコネコネ
男(これぐらいでいいだろう……)
老師「さて次の修行じゃが……うどんを食いたいのう」
男「うどん……?」
老師「とびきりコシが強いやつをな。つーわけで、手打ちしてくれんか」
老師「こねればこれるほど、コシが出る材料を用意しとる」
男「分かりました……」
男「……」コネコネコネ
男「……」コネコネコネ
男(これぐらいでいいだろう……)
25: 2020/09/14(月) 21:41:41.732 ID:M4ADWkRD0
男「どうぞ!」
老師「……」ズルッ
老師「まずい」ペッ
男「え」
老師「ぜーんぜんコシがない! こね方が足りん証拠じゃ! やり直し!」
男「は、はいっ!」コネコネコネコネコネ…
老師「……」ズルッ
老師「まずい」ペッ
男「え」
老師「ぜーんぜんコシがない! こね方が足りん証拠じゃ! やり直し!」
男「は、はいっ!」コネコネコネコネコネ…
26: 2020/09/14(月) 21:45:07.246 ID:M4ADWkRD0
男「ど、どうぞ……」
老師「……」ズルッ
老師「まずまずじゃな」モグモグ
男(あれだけこねて、まずまずだって……!?)
老師「これから毎日三食、うどんを作ってもらうからの。楽しみじゃわい」
男「……!」
男(これを一日三回も……!)
老師「……」ズルッ
老師「まずまずじゃな」モグモグ
男(あれだけこねて、まずまずだって……!?)
老師「これから毎日三食、うどんを作ってもらうからの。楽しみじゃわい」
男「……!」
男(これを一日三回も……!)
30: 2020/09/14(月) 21:48:22.096 ID:M4ADWkRD0
ドドドドドド…
老師「滝浴びをしてもらう」
男(ずいぶんオーソドックスな修行がきたな……)
老師「ワシがいいというまで、滝から出てはならんぞ」
男「はいっ!」
ドドドドドドド…
男(ぐっ……! 痛いし冷たい……! 滝浴びって、想像以上にキツイんだな……)
老師「滝浴びをしてもらう」
男(ずいぶんオーソドックスな修行がきたな……)
老師「ワシがいいというまで、滝から出てはならんぞ」
男「はいっ!」
ドドドドドドド…
男(ぐっ……! 痛いし冷たい……! 滝浴びって、想像以上にキツイんだな……)
31: 2020/09/14(月) 21:50:34.019 ID:M4ADWkRD0
ドドドドドドド…
男(体が冷えてきた……)
ドドドドドドド…
男(まだか……?)
ドドドドドドド…
男(もうかなりの時間が経ったと思うけど……)
ドドドドドドド…
男(ひょっとして、忘れられてるんじゃ……)
ドドドドドドド…
男(体が冷えてきた……)
ドドドドドドド…
男(まだか……?)
ドドドドドドド…
男(もうかなりの時間が経ったと思うけど……)
ドドドドドドド…
男(ひょっとして、忘れられてるんじゃ……)
ドドドドドドド…
33: 2020/09/14(月) 21:52:53.609 ID:M4ADWkRD0
男(くっ……限界だ! 耐えられない!)
男(もういいや! 出よう!)ザバッ
老師「こりゃあああああ!!!」
男「えっ!?」
老師「誰がいいというた?」
男「今いいましたけど」
老師「そんなトンチはしておらん! もう一回やり直しじゃ!」ドカッ
男「うわあああ!!!」ザバァン
男(もういいや! 出よう!)ザバッ
老師「こりゃあああああ!!!」
男「えっ!?」
老師「誰がいいというた?」
男「今いいましたけど」
老師「そんなトンチはしておらん! もう一回やり直しじゃ!」ドカッ
男「うわあああ!!!」ザバァン
35: 2020/09/14(月) 21:56:24.919 ID:M4ADWkRD0
老師「よし、ええぞ」
男「はぁ、はぁ、はぁ……」ビショ…
老師「これからしばらく、おぬしにはこの三つの修行をこなしてもらう」
男「は、はい……(これで一段落、か……)」
老師「というわけで腹が減ったのう……うどんを作ってくれんか」
男「え……? 今滝浴びを終えたばかり……」
老師「聞こえなかったか? うどんを作ってくれというたんじゃ」
男「は、はいっ!」
男「はぁ、はぁ、はぁ……」ビショ…
老師「これからしばらく、おぬしにはこの三つの修行をこなしてもらう」
男「は、はい……(これで一段落、か……)」
老師「というわけで腹が減ったのう……うどんを作ってくれんか」
男「え……? 今滝浴びを終えたばかり……」
老師「聞こえなかったか? うどんを作ってくれというたんじゃ」
男「は、はいっ!」
36: 2020/09/14(月) 21:59:33.967 ID:M4ADWkRD0
男「せやーっ!」パキャッ
男「せやーっ!」パキャッ
男「もっともっとこねるんだ!」コネコネコネ…
ドドドドドドド…
男「……」
男(意識を集中しろ……滝と一体化するんだ……そうすれば冷たさも重さも感じない……)
男「せやーっ!」パキャッ
男「もっともっとこねるんだ!」コネコネコネ…
ドドドドドドド…
男「……」
男(意識を集中しろ……滝と一体化するんだ……そうすれば冷たさも重さも感じない……)
38: 2020/09/14(月) 22:02:27.006 ID:M4ADWkRD0
ある日――
男「どうぞ」
老師「……」ズルルルッ
老師「おおっ、すごいコシじゃ……! ワシの歯が負けてしまいそうじゃった!」
男「ありがとうございます!」
老師「……そろそろよいか」
男「え?」
老師「今からおぬしに……技を授ける。とっておきの技をな」
男「……!」
男「どうぞ」
老師「……」ズルルルッ
老師「おおっ、すごいコシじゃ……! ワシの歯が負けてしまいそうじゃった!」
男「ありがとうございます!」
老師「……そろそろよいか」
男「え?」
老師「今からおぬしに……技を授ける。とっておきの技をな」
男「……!」
40: 2020/09/14(月) 22:05:41.587 ID:M4ADWkRD0
老師「まずは滝浴びを思い出すのじゃ」
男「はい」
老師「あの極限状況を思い出し、体内の気を噴出させてみい」
男「気なんて……いきなりいわれても……」
老師「今のおぬしならできるはずじゃ。やってみい」
男「はい……」
男(あの集中力を……爆発させる!)
ボアァァァ…
男「!」
男「はい」
老師「あの極限状況を思い出し、体内の気を噴出させてみい」
男「気なんて……いきなりいわれても……」
老師「今のおぬしならできるはずじゃ。やってみい」
男「はい……」
男(あの集中力を……爆発させる!)
ボアァァァ…
男「!」
42: 2020/09/14(月) 22:08:18.902 ID:M4ADWkRD0
男「力が……力が溢れてきます!」
男「だけど……!」ボロッ…
老師「そう、体が崩れてくるはずじゃ」
男「なぜ……!?」ボロボロ…
老師「当然じゃろう。自分の中に眠る力を全て出そうとしてる状態なんじゃから」
老師「肉体が耐えきれるはずもない」
男「どうすれば……!?」ボロボロ…
男「だけど……!」ボロッ…
老師「そう、体が崩れてくるはずじゃ」
男「なぜ……!?」ボロボロ…
老師「当然じゃろう。自分の中に眠る力を全て出そうとしてる状態なんじゃから」
老師「肉体が耐えきれるはずもない」
男「どうすれば……!?」ボロボロ…
43: 2020/09/14(月) 22:11:24.248 ID:M4ADWkRD0
老師「練るんじゃ」
男「練る……!?」
老師「うどんをこねる時のイメージで、その気を練るように操るのじゃ!」
男「や、やってみます!」
男「……!」
男(うどんをこねるように気を練る……うどんをこねるように……うどん……うどん……)
コネコネコネコネ…
男「出来ます! 気を操れます!」ズオオオ…
老師「見事じゃ」
老師(やはり、この青年には素質がある……!)
男「練る……!?」
老師「うどんをこねる時のイメージで、その気を練るように操るのじゃ!」
男「や、やってみます!」
男「……!」
男(うどんをこねるように気を練る……うどんをこねるように……うどん……うどん……)
コネコネコネコネ…
男「出来ます! 気を操れます!」ズオオオ…
老師「見事じゃ」
老師(やはり、この青年には素質がある……!)
44: 2020/09/14(月) 22:14:01.558 ID:M4ADWkRD0
老師「では仕上げじゃ……。その気を手――いや、“指”に集中させるのじゃ!」
男「ぐ……!」ブブブ…
男「難しい……!」ブブブ…
老師「薪割りの要領でやってみい」
男「はいっ!」ブブブ…
男「……」ブブ…
男「……」ブーン…
男「出来ました!」
男「ぐ……!」ブブブ…
男「難しい……!」ブブブ…
老師「薪割りの要領でやってみい」
男「はいっ!」ブブブ…
男「……」ブブ…
男「……」ブーン…
男「出来ました!」
46: 2020/09/14(月) 22:17:30.852 ID:M4ADWkRD0
老師「ではそれで、あの岩を叩くのじゃ。思い切りな」
男「はいっ!」
男「うおおおおおおおおおっ!!!」
ザシュウッ!!!
男「……!」
男「こんな大岩を軽々と切り裂いた……!」
老師「体を“崩”すほどの気を、“練”り上げることによって出来上がる、あらゆるものを切り裂く“爪”」
老師「これぞ、女上司を倒しうる奥義……≪崩・練・爪≫じゃ!」
男「崩・練・爪……!」
男「はいっ!」
男「うおおおおおおおおおっ!!!」
ザシュウッ!!!
男「……!」
男「こんな大岩を軽々と切り裂いた……!」
老師「体を“崩”すほどの気を、“練”り上げることによって出来上がる、あらゆるものを切り裂く“爪”」
老師「これぞ、女上司を倒しうる奥義……≪崩・練・爪≫じゃ!」
男「崩・練・爪……!」
48: 2020/09/14(月) 22:19:31.768
ホウレンソウw
49: 2020/09/14(月) 22:21:30.369 ID:M4ADWkRD0
老師「ここからはより実戦的な修行を行う」
男「はいっ!」
老師「すなわち、ワシとの組み手じゃ」
男「組み手……!」
老師「組み手とはいえ本気でやる。気を抜けば、致命の一撃を受けると思えよ。氏んだらそれまでじゃ」
男「……」ゴクッ
男「望むところです!」
男「はいっ!」
老師「すなわち、ワシとの組み手じゃ」
男「組み手……!」
老師「組み手とはいえ本気でやる。気を抜けば、致命の一撃を受けると思えよ。氏んだらそれまでじゃ」
男「……」ゴクッ
男「望むところです!」
51: 2020/09/14(月) 22:24:41.811 ID:M4ADWkRD0
老師「ではゆくぞ」
老師「崩・練・爪!!!」ギュオッ
男(いきなり!?)
男「(こっちも――)崩・練・爪!!!」ギュオッ
ズバァッ!
男「ぐああ……ッ!」
男(同じ技なのに……!)
老師「技は会得が終着地ではない。むしろそこが出発点だと知れい!」
老師「崩・練・爪!!!」ギュオッ
男(いきなり!?)
男「(こっちも――)崩・練・爪!!!」ギュオッ
ズバァッ!
男「ぐああ……ッ!」
男(同じ技なのに……!)
老師「技は会得が終着地ではない。むしろそこが出発点だと知れい!」
53: 2020/09/14(月) 22:27:15.464 ID:M4ADWkRD0
老師「崩・練――」
男(また来る!)バッ
老師「たわけが!」
ドゴォッ!
男(普通の蹴り……!?)
男「ぐふうっ……」ドサッ
老師「あやつはそんな正直ではないぞ」
男「くっ……!」
老師(だが、ワシの蹴りをまともに受けて、立ち上がるとはなんというタフネスよ……)
老師「さぁ、続きじゃ!」
男「はいっ!」
男(また来る!)バッ
老師「たわけが!」
ドゴォッ!
男(普通の蹴り……!?)
男「ぐふうっ……」ドサッ
老師「あやつはそんな正直ではないぞ」
男「くっ……!」
老師(だが、ワシの蹴りをまともに受けて、立ち上がるとはなんというタフネスよ……)
老師「さぁ、続きじゃ!」
男「はいっ!」
54: 2020/09/14(月) 22:29:17.807 ID:M4ADWkRD0
男「だだだだだっ!」ガガガガガッ
老師「ほいほいほいほいほい!」バババババッ
老師「崩・練・爪!!!」
男「崩・練・爪!!!」
ズガァッ!
老師「今日はこれまで。寝るとしよう」
男「はいっ!」
老師「ほいほいほいほいほい!」バババババッ
老師「崩・練・爪!!!」
男「崩・練・爪!!!」
ズガァッ!
老師「今日はこれまで。寝るとしよう」
男「はいっ!」
56: 2020/09/14(月) 22:32:18.790 ID:M4ADWkRD0
……
男「はーっ!」ドガガガガッ
老師「くっ……」
老師「崩・練・爪!!!」ザンッ
男「はっ!」バッ
老師「かわした!?」
男「そこだっ!」ブンッ
ピタッ
老師「うむむ……ワシの負けじゃ!」
老師(まさか、崩・練・爪を使わずワシから一本取るとはのう……)
男「はーっ!」ドガガガガッ
老師「くっ……」
老師「崩・練・爪!!!」ザンッ
男「はっ!」バッ
老師「かわした!?」
男「そこだっ!」ブンッ
ピタッ
老師「うむむ……ワシの負けじゃ!」
老師(まさか、崩・練・爪を使わずワシから一本取るとはのう……)
58: 2020/09/14(月) 22:36:59.421 ID:M4ADWkRD0
老師「これで免許皆伝といったところか。ようやった」
男「ありがとうございます!」
老師「じゃが、あやつは強い……」
老師「おぬしの崩・練・爪なら当たれば倒せるじゃろうが、もし外せば二度目はない」
男「チャンスは一度きり、というわけですか」
老師「……その通りじゃ。一対一ではな」
男「大丈夫、必ず当ててみせます」
老師「……」
老師「最後に……ワシとあやつの因縁を教えておこうかの」
老師「あやつをあのようにしてしまったのは……ワシなのじゃ」
男「え?」
男「ありがとうございます!」
老師「じゃが、あやつは強い……」
老師「おぬしの崩・練・爪なら当たれば倒せるじゃろうが、もし外せば二度目はない」
男「チャンスは一度きり、というわけですか」
老師「……その通りじゃ。一対一ではな」
男「大丈夫、必ず当ててみせます」
老師「……」
老師「最後に……ワシとあやつの因縁を教えておこうかの」
老師「あやつをあのようにしてしまったのは……ワシなのじゃ」
男「え?」
59: 2020/09/14(月) 22:39:32.416 ID:M4ADWkRD0
老師「あやつは……かつて、会社でワシの部下じゃった」
男「部下……!」
老師「あやつはワシの指示によく従い、よく働いた。理想的な上司と部下といってよかった」
老師「ある日、ワシとあやつはある重大なプロジェクトを進めており、残業していた」
老師「あやつは若い女性……本来なら早めに帰宅させるべきじゃった」
老師「じゃが、あやつの熱意に負け、なによりワシもあやつを頼りにしておった」
老師「だから、終電の時間まで残業させてしまったのじゃ」
男「部下……!」
老師「あやつはワシの指示によく従い、よく働いた。理想的な上司と部下といってよかった」
老師「ある日、ワシとあやつはある重大なプロジェクトを進めており、残業していた」
老師「あやつは若い女性……本来なら早めに帰宅させるべきじゃった」
老師「じゃが、あやつの熱意に負け、なによりワシもあやつを頼りにしておった」
老師「だから、終電の時間まで残業させてしまったのじゃ」
61: 2020/09/14(月) 22:42:33.898 ID:M4ADWkRD0
老師「じゃが、それがよくなかった」
老師「終電というのは知っての通り、タチの悪い客も乗っておることが多い」
老師「あやつは終電に乗っている時、酔っ払いに絡まれ、襲われ、誰にも助けてもらえず――」
男「なんてことだ……!」
老師「あやつはその酔っ払いには復讐を果たしたが、心に刻まれた傷は治らなかった」
老師「やがてあやつは……終電そのものを憎むようになっていったのだ」
老師「ついには、終電を見かけるなり、跡形もなく破壊するように……」
老師「ワシが知っているだけでも、既にあやつは十度、終電を破壊しておる」
男「十度も……!」
老師「終電というのは知っての通り、タチの悪い客も乗っておることが多い」
老師「あやつは終電に乗っている時、酔っ払いに絡まれ、襲われ、誰にも助けてもらえず――」
男「なんてことだ……!」
老師「あやつはその酔っ払いには復讐を果たしたが、心に刻まれた傷は治らなかった」
老師「やがてあやつは……終電そのものを憎むようになっていったのだ」
老師「ついには、終電を見かけるなり、跡形もなく破壊するように……」
老師「ワシが知っているだけでも、既にあやつは十度、終電を破壊しておる」
男「十度も……!」
62: 2020/09/14(月) 22:43:32.722
いや酔っぱらいを恨めよ
63: 2020/09/14(月) 22:45:12.140
ワロタ
64: 2020/09/14(月) 22:45:37.016 ID:M4ADWkRD0
老師「おそらく、あやつの行動はどんどんエスカレートしていくじゃろう」
老師「放っておけば、終電を根絶やしにするようになるに違いない」
男「終電を根絶やしって……そんなことしてったら……」
老師「そう、電車が日に一本なら、始発だって終電じゃ」
老師「行きつく果ては電車そのものの消滅……。そんなことを見過ごすわけにはいかん」
老師「しかし、ワシではもはやあやつに勝てぬ。警察でも止められんじゃろう」
老師「だから……この願いを君に託したいのだ」
男「喜んで引き受けます。あの人は必ず俺が倒します!」
老師「放っておけば、終電を根絶やしにするようになるに違いない」
男「終電を根絶やしって……そんなことしてったら……」
老師「そう、電車が日に一本なら、始発だって終電じゃ」
老師「行きつく果ては電車そのものの消滅……。そんなことを見過ごすわけにはいかん」
老師「しかし、ワシではもはやあやつに勝てぬ。警察でも止められんじゃろう」
老師「だから……この願いを君に託したいのだ」
男「喜んで引き受けます。あの人は必ず俺が倒します!」
65: 2020/09/14(月) 22:49:07.998 ID:M4ADWkRD0
……
ガタンゴトン… ガタンゴトン…
女上司「来たわね……終電」
女上司「また消し飛ばしてあげる!」
女上司「破ァッ!!!」ボウッ
バシュッ!
女上司「!? 私のエネルギーが……!」
男「お久しぶりです、課長」
女上司「あなたは……!」
ガタンゴトン… ガタンゴトン…
女上司「来たわね……終電」
女上司「また消し飛ばしてあげる!」
女上司「破ァッ!!!」ボウッ
バシュッ!
女上司「!? 私のエネルギーが……!」
男「お久しぶりです、課長」
女上司「あなたは……!」
66: 2020/09/14(月) 22:49:08.953
熱い展開だな
68: 2020/09/14(月) 22:51:37.228 ID:M4ADWkRD0
女上司「雰囲気が違う……あの人の下で鍛え直したのね」
男「ええ、もうあなたに終電は壊させません」
男「ここであなたを倒す!」
女上司「多少は強くなったようだけど……残念ながら不可能よ」
女上司「私はあなたを倒したら、この世の終電という終電を徹底的に消してやるわ!」
女上司「乗ってる連中もろともね」ニィッ
男「――行くぞッ!!!」
男「ええ、もうあなたに終電は壊させません」
男「ここであなたを倒す!」
女上司「多少は強くなったようだけど……残念ながら不可能よ」
女上司「私はあなたを倒したら、この世の終電という終電を徹底的に消してやるわ!」
女上司「乗ってる連中もろともね」ニィッ
男「――行くぞッ!!!」
69: 2020/09/14(月) 22:54:17.265 ID:M4ADWkRD0
男「だあああっ!」
ドガガガガッ!
バキィッ!
男(拳がクリーンヒットした!)
女上司「へえ、やるわね」
男(ほとんど効いてない……やはり崩・練・爪じゃないと決め手にならない!)
男(だけど、一度見せたら警戒される……確実に当てなくては!)
ドガガガガッ!
バキィッ!
男(拳がクリーンヒットした!)
女上司「へえ、やるわね」
男(ほとんど効いてない……やはり崩・練・爪じゃないと決め手にならない!)
男(だけど、一度見せたら警戒される……確実に当てなくては!)
71: 2020/09/14(月) 22:56:11.414 ID:M4ADWkRD0
女上司「こっちから行くわよ」ギュンッ
ズドォッ!
男「ぐふっ!」
女上司「ほらほらほら!」
ズドドドッ! バキィッ!
男「が、は……っ!」
男(なんて体術……! つ、強い……老師よりも……遥かに……ッ!)
ズドォッ!
男「ぐふっ!」
女上司「ほらほらほら!」
ズドドドッ! バキィッ!
男「が、は……っ!」
男(なんて体術……! つ、強い……老師よりも……遥かに……ッ!)
72: 2020/09/14(月) 22:58:22.256 ID:M4ADWkRD0
ガツンッ!
男「ぐおぉっ!」
女上司「ガッカリね……もっとやれると期待してたのに」
女上司「せめてもの情けよ。一瞬で跡形もなく消してあげる」バチバチッ
男「くっ……!」
女上司「破ァッ!!!」
ズガァァァァァンッ!!!
女上司「アハハハッ、跡形もなく消し飛んだわ! ざまあないわね!」
男「ぐおぉっ!」
女上司「ガッカリね……もっとやれると期待してたのに」
女上司「せめてもの情けよ。一瞬で跡形もなく消してあげる」バチバチッ
男「くっ……!」
女上司「破ァッ!!!」
ズガァァァァァンッ!!!
女上司「アハハハッ、跡形もなく消し飛んだわ! ざまあないわね!」
74: 2020/09/14(月) 23:00:52.203 ID:M4ADWkRD0
男「……」
男(気を練り上げ足に集中させることで、空中に逃れることができた……)
男(上空から攻撃を――)
女上司「なぁんてね」ギロッ
男(バレてる!)
女上司「あの程度で仕留められないことぐらい、お見通しなのよ!」
女上司「空中で回避行動は不可能ッ! 地獄へ始発なさいッ!」ブオンッ
ズガァッ!
男(気を練り上げ足に集中させることで、空中に逃れることができた……)
男(上空から攻撃を――)
女上司「なぁんてね」ギロッ
男(バレてる!)
女上司「あの程度で仕留められないことぐらい、お見通しなのよ!」
女上司「空中で回避行動は不可能ッ! 地獄へ始発なさいッ!」ブオンッ
ズガァッ!
77: 2020/09/14(月) 23:04:34.105 ID:M4ADWkRD0
男「ぐっ……!」ブシュゥゥゥゥゥ
女上司「私の拳を掴んだ!?」
男「この至近距離なら……かわせないはず……」
女上司「くっ!?」
男(今以上のタイミングはあり得ない――)
男「崩・練・爪!!!」
ザシュゥッ!!!
女上司「私の拳を掴んだ!?」
男「この至近距離なら……かわせないはず……」
女上司「くっ!?」
男(今以上のタイミングはあり得ない――)
男「崩・練・爪!!!」
ザシュゥッ!!!
80: 2020/09/14(月) 23:07:34.398 ID:M4ADWkRD0
男「手応えは……あった!」
女上司「がはぁぁぁ……!」
男(勝った……!)
女上司「ごふっ……!」ザウッ
男(踏みとどまった!?)
女上司「前に……いったよね? 上司は部下のことなんてお見通しだって……」
女上司「なにか切り札を隠してることは分かってたから……とっさに急所を外すことができた……」
女上司「ぐっ……ふふふ……もう二度と……今の技は喰わない!」ニィッ
男「くそぉっ……!」
女上司「さぁ、今度こそ跡形もなく消滅させてあげるわァ!」グワッ
女上司「がはぁぁぁ……!」
男(勝った……!)
女上司「ごふっ……!」ザウッ
男(踏みとどまった!?)
女上司「前に……いったよね? 上司は部下のことなんてお見通しだって……」
女上司「なにか切り札を隠してることは分かってたから……とっさに急所を外すことができた……」
女上司「ぐっ……ふふふ……もう二度と……今の技は喰わない!」ニィッ
男「くそぉっ……!」
女上司「さぁ、今度こそ跡形もなく消滅させてあげるわァ!」グワッ
82: 2020/09/14(月) 23:10:27.330 ID:M4ADWkRD0
ガシッ!
女上司「!?」
老師「捕まえたわい」
女上司「な……!?」
男「老師!?」
老師「上司は部下のことはお見通し……つまりワシも見通しておった……」
老師「おぬしが彼の崩・練・爪をかわすことをな」
女上司「くっ、ジジイ! はなせっ! はなせぇっ!」ドガッガッ
老師「だが、ダメージは受けておる……もう一撃は流石に耐えきれんじゃろう」
老師「今じゃッ! ワシごとやれい!」
男「!」
女上司「!?」
老師「捕まえたわい」
女上司「な……!?」
男「老師!?」
老師「上司は部下のことはお見通し……つまりワシも見通しておった……」
老師「おぬしが彼の崩・練・爪をかわすことをな」
女上司「くっ、ジジイ! はなせっ! はなせぇっ!」ドガッガッ
老師「だが、ダメージは受けておる……もう一撃は流石に耐えきれんじゃろう」
老師「今じゃッ! ワシごとやれい!」
男「!」
83: 2020/09/14(月) 23:13:50.842 ID:M4ADWkRD0
男「しかし……老師!」
老師「よいのじゃ……これで。こやつを魔道に堕としてしまったのはワシ……」
女上司「はなせっ! はなしやがれぇっ!」
老師「その責任を取りたかった……上司として……」
女上司「や、やめてっ! やめなさぁい!」
老師「早くやれーっ!!!」
男「……」グッ
男「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
男「崩・練・爪!!!」
ズバァッ!!!
老師「よいのじゃ……これで。こやつを魔道に堕としてしまったのはワシ……」
女上司「はなせっ! はなしやがれぇっ!」
老師「その責任を取りたかった……上司として……」
女上司「や、やめてっ! やめなさぁい!」
老師「早くやれーっ!!!」
男「……」グッ
男「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
男「崩・練・爪!!!」
ズバァッ!!!
85: 2020/09/14(月) 23:16:17.871 ID:M4ADWkRD0
女上司「がはっ……! この世の……終電を……すべ、て……」
ボシュゥゥゥゥゥ…
…………
……
老師「……」
男「老師! しっかりして下さい、老師!」
ボシュゥゥゥゥゥ…
…………
……
老師「……」
男「老師! しっかりして下さい、老師!」
88: 2020/09/14(月) 23:18:13.429 ID:M4ADWkRD0
老師「よ、ようやった……。見事な一撃じゃ、った……」
男「老師……!」
老師「ワシのことは気にするな……こうなって当然のことを、したのじゃから……」
老師「最後に弟子の成長を見届けることができて……幸せじゃ……」
男「ううっ……」
男「老師……!」
老師「ワシのことは気にするな……こうなって当然のことを、したのじゃから……」
老師「最後に弟子の成長を見届けることができて……幸せじゃ……」
男「ううっ……」
91: 2020/09/14(月) 23:20:26.636 ID:M4ADWkRD0
老師「これで……終電は救われた……消されることはもうない……」
老師「おぬしは……サラリーマンとして幸せに……」ガクッ
老師「……」
男「老師」
男「老師! 老師ッ!」
男「老師ィィィィィッ!!!」
…………
……
老師「おぬしは……サラリーマンとして幸せに……」ガクッ
老師「……」
男「老師」
男「老師! 老師ッ!」
男「老師ィィィィィッ!!!」
…………
……
92: 2020/09/14(月) 23:23:32.899 ID:M4ADWkRD0
……
……
女部下「……」カタカタ
男「君、よくやってくれてはいるが、早めに帰るようにな。残業は程々にね」
女部下「はい、これが終わったら帰ります!」
男「それならいいんだが。君は一度のめり込むと止まらないタイプだからね」
女部下「私のこと、よく分かってますね~」
男「上司は部下のことはお見通しだからね」
……
女部下「……」カタカタ
男「君、よくやってくれてはいるが、早めに帰るようにな。残業は程々にね」
女部下「はい、これが終わったら帰ります!」
男「それならいいんだが。君は一度のめり込むと止まらないタイプだからね」
女部下「私のこと、よく分かってますね~」
男「上司は部下のことはお見通しだからね」
94: 2020/09/14(月) 23:26:04.192 ID:M4ADWkRD0
女部下「あんまり遅くなって、終電がなくなっちゃったら大変ですしね!」
男「……いや」
女部下「?」
男「もう終電がなくなることはないよ。絶対にね」
― 完 ―
男「……いや」
女部下「?」
男「もう終電がなくなることはないよ。絶対にね」
― 完 ―
95: 2020/09/14(月) 23:26:28.800
良かった
96: 2020/09/14(月) 23:27:02.388
乙
楽しめた
楽しめた
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