14: 2008/10/25(土) 22:44:26.35 ID:i1J1ApFJO
キョン「は?」
長門 「見せて」
キョン「いや、お前が見たところで…」
長門 「構わない。見せて」
キョン「何が構わないのか分からんし、何より俺が構う側だろ」
長門 「………」


キョン「無言でこじ開けようとするな」

16: 2008/10/25(土) 22:51:12.05 ID:i1J1ApFJO
キョン「ちょ、その無表情に恐怖を覚えそうだから止めてくれ」
長門 「ならば、大人しく口内を見せるべき」
キョン「いや、だからな…」
長門 「…あーん」
キョン「………」
長門 「…あーん」


キョン「あ、あー…」

18: 2008/10/25(土) 22:59:06.84 ID:i1J1ApFJO
長門 「………」スッ
キョン「あがっ」
長門 「………」ムニムニ
キョン「ほっ、ほっほはっは!」
長門 「…何?」
キョン「口の両端を引っ張るな!」
長門 「虫歯の箇所を把握する為には仕方がない」
キョン「左の奥歯だ」
長門 「了承した」


長門 「…あーん」

19: 2008/10/25(土) 23:05:44.57 ID:i1J1ApFJO
長門 「………」
キョン「(…改めて他人に口の中を弄られるってのは複雑な気分だな)」
長門 「……視認した」
キョン「ほうは。ひゃー、へをははひてふへるは?」
長門 「……もっとよく見なければ進行状況が分からない」グイ


キョン「(顔を近づけすぎだ長門。そして口を引っ張りすぎだ長門)」

20: 2008/10/25(土) 23:12:59.42 ID:i1J1ApFJO
長門 「………」
キョン「………」
長門 「……痛い?」
キョン「(今更過ぎんだろその質問…)」

長門 「………」スッ
キョン「ふぅ……で?何がしたかったんだ?」
長門 「…結果から言えば、この程度なら情報操作で治せる」
キョン「おお、本当か?」
長門 「その為には、先程の問いに答えて欲しい」
キョン「問い?」


長門 「……痛い?」

22: 2008/10/25(土) 23:25:08.46 ID:i1J1ApFJO
キョン「ん、まぁ…痛いから歯医者に行こうとしてた訳だしな」
長門 「……激痛?」
キョン「そこまで大げさな痛みはないな」
長門 「……苦痛?」
キョン「いや、だから軽く痛むくらいで…」
長門 「……我慢できない?」
キョン「………」
長門 「………」


キョン「痛いなービックリするぐらいの痛みだー」

23: 2008/10/25(土) 23:35:33.74 ID:i1J1ApFJO
長門 「早急に処置を施す必要性がある」
キョン「(長門が何を考えてるかは知らんが、とりあえず治してくれるなら文句はないな)」

長門 「その為には、貴方の唾液が必要」
キョン「…は?」
長門 「貴方の唾液から情報を読み取り、貴方の虫歯に適した治療用ナノマシンを生成する」
キョン「あー…言ってる意味がよく…」


長門 「唾液の摂取には、口移しが一番効果的」

25: 2008/10/25(土) 23:48:55.80 ID:i1J1ApFJO
長門 「………」スッ
キョン「…ふんっ!」
長門 「……どうして避けるの?」
キョン「いやいやいや…いやいやいや!何を自然に唇を奪おうとしてんだ!?」
長門 「説明はした筈。貴方の唾液を私の体内に取り込む為」
キョン「納得できるかっ!キスする必要があるのか?」
長門 「新鮮な内に摂取する為」
キョン「唾液に新鮮も傷みもあるか!」


長門 「………ちっ」
キョン「おい、今の舌打ちは何だ?」

27: 2008/10/25(土) 23:58:30.78 ID:i1J1ApFJO
長門 「なら、貴方の指に唾液をつけて」
キョン「ん…これでいいか?」
長門 「いい」グイ
キョン「うお!?」長門 「ん……」チュ


キョン「(俺の指を舐めてらっしゃる…!?)」

28: 2008/10/26(日) 00:07:08.29 ID:OgB4g1sBO
長門 「ん……ふ…」
キョン「(凄く…官能的です…)」
長門 「ん……生成開始」

長門 「完了」
キョン「はやっ!…なぁ、本当に俺のツバが必要だったのか?」
長門 「治療用ナノマシンを貴方の体内に入れる」
キョン「まず答えなさい」
長門 「治療用ナノマシンを貴方の体内に入れる」
キョン「……もうなんでもいいか。じゃ、キバット噛みついてくれ」


長門 「……何故?」

30: 2008/10/26(日) 00:15:21.10 ID:OgB4g1sBO
キョン「今日は一段と会話が噛み合わない気がするな…」
キョン「噛まないと注入出来ないだろ?」
長門 「……何故?」
キョン「話が進まない!前にナノマシンを入れる時に歯形を残してくれただろうがっ!」
長門 「……あの時とは状況が違う」
キョン「じゃあ、どうやって注入するんだ?」


長門 「口移しが効果的」
キョン「デジャブ!?」

32: 2008/10/26(日) 00:31:50.91 ID:OgB4g1sBO
長門 「いい加減に観念するべき。苦痛からの解放を望むなら、そうした方がいい」
キョン「なぁ、俺は歯医者に行こうとしてたよな?それが何の因果でお前と接吻を交わさなきゃならんのだ」
長門 「………」スッ
キョン「だから自然に唇を近づけるんじゃない!」

長門 「……いや?」
キョン「嫌とかじゃなくて、お前とそんな行為をするのは罪悪感が…」
長門 「気にする必要は無い。これは治療」


キョン「くっ…真顔で言われると納得しそうな俺がいる…」

35: 2008/10/26(日) 00:44:15.11 ID:OgB4g1sBO
長門 「……どうするの?」
キョン「……だぁー、くそ!やっちまえ!」
長門 「……了承した」スッ
長門 「ん……ちゅ…」
キョン「(…ああ、宇宙人でもキスする時は目を瞑るんだな…)」

長門 「……ぷぁ…ナノマシンを注入した。これで痛みは無くなる」
キョン「お、おう。ありがとな」
長門 「……こちらの台詞」
キョン「ん?」
長門 「なんでもない」
キョン「そうか」
長門 「そう」

43: 2008/10/26(日) 02:21:37.55 ID:OgB4g1sBO
キョン「んじゃ、帰るか?」
長門 「………」コク
キョン「にしても、あいつら結局来なかったな…」

ガタガタ…

キョン「ん?」

ガターン!

古泉 「呼びましたか?」
キョン「どっから湧いてんだお前は…」
古泉 「んっふ、掃除道具入れです」
キョン「見りゃわかる。まさか、ずっと入ってたのか?」
古泉 「暇を持て余していたもので」
キョン「……見てたか?」
古泉 「何をです?」
キョン「いや、まぁ…なんだ…」


古泉 「キバット噛みついてくれ!」
キョン「何故それをチョイス!?」

45: 2008/10/26(日) 02:24:41.64 ID:OgB4g1sBO
古泉 「いやぁ、大胆な告白でしたね」
キョン「あれが告白に聞こえるなら、お前は耳鼻科に行って洗浄してもらえ」
古泉 「恥ずかしがる必要は無いですよ。ねぇ、朝比奈さん?」
キョン「は?」

ファサ

みくる「そうですよぉ」
キョン「か、カーテンに包まれていただと!?」
みくる「なんだかカーテンと戯れてみたくなったんです」クルクル
キョン「時たまに貴女の事が分からなくなります…」

キョン「な、長門は気づいていたのか?」
長門 「……無論」
キョン「気づいててあんな事を…?」


長門 「だからこそ」
キョン「確信犯んんんっ!」

46: 2008/10/26(日) 02:27:20.12 ID:OgB4g1sBO
キョン「まさかハルヒまで登場したりしないよな?」
古泉 「涼宮さんがこの場に居たなら、僕が全力で止めてますよ」
キョン「そりゃそうか…」

みくる「それにしてもキョンくん。虫歯が出来るなんて、ちゃんと歯磨きしてる?」
キョン「面目ないです…」
古泉 「いいですか?歯磨きとは、こうやって歯茎ごと磨くんです!」ゴッシュ ゴッシュ
キョン「おい、歯が血まみれだぞ?」
古泉 「これが快感になるんです!ふん!ふん!」
キョン「ただのMじゃねぇか」

みくる「良い歯磨き粉を知ってるので、明日持ってきてあげるね」
キョン「いやぁ、ありがとうござい…」
長門 「その必要は無い」
キョン「長門さん!」


長門 「貴方(の歯)は、私が守る」
キョン「長門さん!大事な台詞が台無しだっぜ!」

48: 2008/10/26(日) 02:29:45.93 ID:OgB4g1sBO
長門 「虫歯が出来たら私が治す。貴方に合ったナノマシンは記憶した」
キョン「まぁ、そりゃいいんだが、やるとしたら部室以外だな」
長門 「……何故?」
キョン「現在進行形で第三者にニヤニヤされてるからだ」
古泉 「んっふ」
みくる「私達は気にしないで」

長門 「……私は見られてる方がいい」
キョン「ああ、わざと見せつけたんだもんな…」


キョン「もう虫歯になんかならないぞ。なってたまるか」
古泉 「(あ、フラグが立った)」

49: 2008/10/26(日) 02:30:53.06 ID:OgB4g1sBO
ー翌日ー

キョン「………」
ハルヒ「うっわ、どうしたのよ?頬が腫れ上がってるわよ?」
キョン「ああ、大した事ない。ただの虫歯だ」
ハルヒ「バカねー。ちゃんと歯は磨きなさいよっ」
キョン「ああ、その通りだよチクショー」

51: 2008/10/26(日) 02:33:09.57 ID:OgB4g1sBO

キョン「――長門。急に頬が膨れる程の虫歯になったんだが、しっかり説明してもらえるか?」
長門 「……私のミス。不手際。治療用ナノマシンが逆に働いた」
キョン「いくらなんでも、一晩で活性化し過ぎだろ」
長門 「それが私クオリティ」
キョン「黙れ」

長門 「今度こそちゃんと治療する為に、貴方の唾液を多量に必要とする」
キョン「またか…」
長門 「今度は……ディープキス」



キョン「そうだ、歯医者に行こう」

ー完ー

53: 2008/10/26(日) 02:39:05.17 ID:OgB4g1sBO
うん、言いたい事はわかる
でも、眠気で俺の脳がやばい

もし残ってたら、ちゃんとしたのを改めて書こうと思う

85: 2008/10/26(日) 14:59:57.61 ID:OgB4g1sBO
 歯が痛い――
 高校生にもなって虫歯に苛まれる事になるとは、正直驚きだ。
 この歳になるまで、一度も歯医者に通院した事など無い。
診てもらったのは、小学生時代の定期検診ぐらいなものだ。

 誰も居ない――否。
やはりと言うべきか、あいつだけはいつもの定位置で、黙々と本に目を通している。
ご苦労なことだ。
 二人だけの部室に響くのは、彼女がページを切り替える度に発せられる紙の擦れる音。
そして、微妙な痛みに不快感を覚えた俺が、机を指先で叩く音。
その二つだけ。

 正直、長門相手では会話のキャッチボールが難しい為、他の団員達が居ないと退屈だ。
まぁ、長門とまったりしているのも悪くはないがな。
 ただ、今日は違った。
 今思うと、あれは俺なりのネタ振りだったのかもしれない。


「――…どうも歯が痛いな。帰りに歯医者にでも…」

「見せて」

 独り言を言い終える前に、平坦な声が俺に飛ぶ。
 声の主に視線を向けると、開いたままの本を膝に置き、こちらを見据えている長門が居た。

86: 2008/10/26(日) 15:01:41.88 ID:OgB4g1sBO
 俺が言葉の意味を理解する前に、スッと静かに椅子から立ち上がった長門が、
俺の横までトコトコ歩いてくる。
 そして、座っている俺の目線に合わせる様に腰を若干屈め、

「見せて」

そう再びのたまった。

「あー…虫歯を見せろって事でいいのか?」

「いい」

「いや、俺の虫歯なぞ見たところで、何も面白くないぞ?」

「かまわない。見せて」

 こんなもん人に見せる様なものではないし、適当にあしらおうとしたが、先に
長門が動いた。
 自然な動きでソッと俺の口に指先を置くと、そのまま指を口内に侵入させよう
としやがった。

「唐突に不可解なことをするんじゃない」

「開けないと見れない」

「お前が見たい意味が分からん」

87: 2008/10/26(日) 15:03:13.46 ID:OgB4g1sBO
 数秒の沈黙……なんて事もなく、再度俺の口をこじ開けようとする長門。
こいつは何がしたいんだ?

「大人しく見せるべき」

「だからな? お前が見たところで…」

「…あーん」

 俺の言葉を遮るように、小さな口を開けて、長門は自分と同じ事をしろと示す。
 それは実力行使よりかはマシではある。
何より、ちょっと可愛らしい。

「…あーん」

 長門なりに考えがあるのかもしれないし、意地になるような事でもない。
流石に何度も言わせるのも可哀想だしな。

「あ、あー…」

 俺が口を開けると、長門は自分の口を閉じ、視線を口内へと傾注させる。
 しばらく無言で眺めていたかと思えば、突然俺の口の両端に自分の指を引っ掛け、
グイッと横に引っ張った。

「…ほはへははひほひへふんは?」

「……ちゃんと見るため」

 お前は何をしてるんだ?と聞いたのだが、言葉の意味は伝わったらしい。
驚きだ。

90: 2008/10/26(日) 15:12:59.42 ID:OgB4g1sBO
 グイグイ引っ張り続ける長門の腕を叩いて行為を止めさせる。
まともに喋れん。

「あれじゃ逆に見えないだろ? 引っ張りすぎて口が閉じてるし」

「虫歯を確認するため。必要なこと」

 そう言うと、長門はまたもや細い指を口へ伸ばそうとした。

「待て待て。痛むのは左の奥歯だ」

「……了承した」

 短く言うと、今度は患部のある方の口を押し広げ、徐々に顔を近づける。

「……痛い?」

 ああ。歯より引っ張られている皮膚の方が痛いがな。

「視認した」

91: 2008/10/26(日) 15:13:57.98 ID:OgB4g1sBO
 相も変わらず簡潔に言い放つと、長門は指を離してジッと俺の顔を見た。
何か言うべきなのだろうか?

「あー…これで満足か?」

 そう聞いてやると、長門は首を横に振った。
まだ駄目なのか?

「違う。あの程度ならば、治療用ナノマシンでの治癒が可能」

「おお、本当か?」

「本当。ただ、その為には先程の問いに答えてほしい」

92: 2008/10/26(日) 15:15:18.38 ID:OgB4g1sBO
「問い?」

 俺が聞き返すと、長門は小首を傾げ、確かに先程聞かれた事を言った。

「……痛い?」

「歯が、って事か?」

「……激痛?」

「いや、そんな大げさには…」

「……苦痛?」

「だから、軽く痛む程度で…」

「……我慢できない?」

93: 2008/10/26(日) 15:17:57.08 ID:OgB4g1sBO
 あー…これは何を答えとして求めているのだろうか?
 ずっと俺に視点を合わせたまま動かない長門。
 最近では、こいつの考えている事も理解出来てきていると自負しているが、やはり
難しいものだ。
 だが、この場合はこれを答えとして返す事が適当だろうな。

「…痛いなーこれは我慢できない」

 やる気など微塵も感じない口調で、長門が待っているであろう返事を返してやる。
 すると、無表情の中に若干の動きを見せ、長門は曲げていた腰を戻した。

「ならば、早急に処置を施す必要がある。貴方の力も借りる」

94: 2008/10/26(日) 15:21:06.70 ID:OgB4g1sBO
 一般人な俺の力も必要なぞ、どんだけ強敵なんだ。虫歯よ。
 そんな下らない冗談に心の中で笑っていると、ふいに俺の顔に影がかかった。

「うぉ!?」

 思わず驚きに声を上げ、体を椅子ごと後ろに倒す。

「つぅー…」

「……なんで避けるの?」

 無表情ながらも不思議そうな顔で問いかけてくる、この腰の痛みを与えてくれた
張本人に、文句という突っ込みを入れてやる。

「急に唇を奪われそうになったら避けるだろ!」

「これは治療用ナノマシンを生成する為に必要なこと」

「why!? 何故!? 接吻が何をもたらすんだ!?」

 やはりこいつが何を考えているかなど、普遍的な人間である俺には分からん。
理解しているなんて調子に乗ってごめんなさいだ。

「よし。とりあえず落ち着いて、納得しうる説明を求める」

95: 2008/10/26(日) 15:26:12.79 ID:OgB4g1sBO
「適した治療用ナノマシンを生成するには、貴方の唾液から情報を読み込む必要がある」

「だが、だからと言ってキスする必要があるのか?」

 問いただすと、長門は倒れている俺を見下ろしたまま止まっている。
思考を巡らせているのだろうか?
 そして、ようやく考えがまとまったのか、

「唾液は新鮮な内がいい。つまり、口移しで摂取することが効果的」

「うさんくさい! ツバに新鮮なんて言葉は当てはまらん!」

「………ちっ」

 おい、今舌打ちが聞こえたんだが気のせいか?

「気のせい」

 まったく、こいつの言動には驚かされてばかりだな。
 俺は長門の動きに注意しながら立ち上がり、倒れた椅子も立たせ、腰をかける。
 すると、

「ならば、貴方の指に唾液をつけて」

そう言って俺の指を目で示した。
 まぁ、自分の指を舐めるぐらいなら、いくらでもやってやるさ。

96: 2008/10/26(日) 15:33:50.58 ID:OgB4g1sBO
「これでいいか?」

 ツバで湿らせた指を軽く差し出すと、長門は俺の手を持ち、自分へと近づける。

「ん……」

 そして、何気ない挙動で口元まで腕を伸ばさせ、静かに俺の指を舐めた。

「…っておいいいいい!!」

「ん……ふ…」

 滑らかに舌を動かし、丁寧に舐め、最後には先端に吸い付く。
 不覚にも、官能的な場面を想像してしまった。
俺も健全な男子という事だろう。

97: 2008/10/26(日) 15:37:23.53 ID:OgB4g1sBO
「ん……生成を開始」

 ふやけるんじゃないかとばかりに舐めていた指を放すと、目を閉じて詠唱を――

「完了」

 ――しないまま終わった。

「はやっ! なぁ、俺の唾液って本当に必要だったのか?」

「ナノマシンの注入を開始する」

「質問に答えなさい」

「ナノマシンの注入を開始する」

 無視か。まぁ、もうなんでもいい。
治してくれるなら問題は無いだろう。

98: 2008/10/26(日) 16:00:15.44 ID:OgB4g1sBO
「じゃ、キバット噛みついてくれ」

「……何故?」

「いや、噛みつかないと注入できないだろ?」

「噛む必要は無い」

「ん? なら、どうやって…」

 俺が言い切る前に、

「口から直接」

それだけ言って俺の両頬を手で挟んで唇を近づけた。

「…そぉいっ!」

 互いの唇が触れる前に顔を逸らし、大胆になりつつある宇宙人のロックから逃れる。
 油断してた。まさか、再び来るとは思わなかったぞ。

99: 2008/10/26(日) 16:00:48.76 ID:OgB4g1sBO
「もう、なんだ。どうしたんだ長門?」

「貴方こそ、何故避けるの?」

「いや、だからな? お前とそういう行為はしたくないんだよ。分かるか?」

「何故?」

「あー…背徳心というかなんというか…」

「気にする必要は無い。これは治療」

 長門の言うとおりなのかもしれないが、やはり抵抗感が否めない。
と言うより、本当に口を重ねる事は必須なのか?

100: 2008/10/26(日) 16:03:31.27 ID:OgB4g1sBO
「これは虫歯を治療するためのナノマシン。直接治癒する」

 言ってる事は分からんでもないが…

「……私とでは、いや?」

 おいおい、長門さん。
成長を見せるのは俺としても嬉しい限りだが、ちょっとベクトルを間違えてるぞ?
 女性に言われたい台詞の上位にランクインしてる言葉を言われた以上、俺も無碍に
出来ないじゃないか。
もとより厚意で言っているわけだしな。

「…やっちまえ長門」

「了承した」

 言うが早いか、もう一度俺の頬を小さな掌で包み直すと、長門は静かに唇を重ねた。
予想外に柔らかい。
 宇宙人も、キスをする時は目を瞑るんだな。

「ん……」

 長門の唾液が口に流れ込んでくる。
ナノマシンを送っているのだろうか?
 舌が歯をなぞっている不思議な感覚。
若干の気持ち悪さがある。
 ハルヒとした時は……無我夢中でいまいち覚えてないな。
必氏だったし。

101: 2008/10/26(日) 16:06:36.91 ID:OgB4g1sBO
「……ぷぁ…。これで痛みは無くなるはず」

 淡々と終了を告げる長門を見ていると、やはり他意は無かった事が分かる。
まさに俺の一人相撲だな。

「ありがとな長門」

「……私こそ」

「ん?」

「なんでもない」

「そうか?」

「そう」

 いつもの様にぶっきらぼうな返事をくれると、長門は音もたてずに定位置に戻った。
 今度、埋め合わせに飯でも奢るかな。

ー終わり

引用元: キョン「どうも歯が痛いな。帰りに歯医者に」長門「見せて」