1: 2012/02/06(月) 22:12:36.09 ID:+wjtvPzp0
おなじみSOS団の面々も大学生になりました。
それぞれ通う大学は違うけど、休日はあいかわらず集まって活動しています。
今日もいつもの喫茶店に集まって会議の真っ最中。
議題は夏休みの旅行についてです。
ハルヒ「聞かない名ね カリオストロ公国って」
古泉「人口3,500 世界で一番小さな国連加盟国ですよ」
古泉「お姫様の結婚式が盛大に行われるそうなのでぜひ見物に行きましょう」
ハルヒ「ふーん でもただの観光には興味ないわよ」
古泉「そう仰ると思いました 実はこの国にはある噂がささやかれています」
古泉「涼宮さんはゴート札をご存知ですか」
ハルヒ「ゴート札! 幻のニセ札という あれね」
古泉「そのゴート札の震源地がカリオストロ公国といわれてます」
キョン「何なんだ そのゴート札ってのは」
古泉「その筋じゃ有名な伝説です 名付けてニセ札界のブラックホール」
キョン「ブラックホール?」
古泉「ちょっかいを出して帰って来た者はいないという話です」
朝比奈「ふええ 怖いですう」
キョン「怖いから俺 寝る」
ハルヒ「ちょっと、キョン! 喫茶店で寝ないでよ」
キョン「昨日はおまえが寝かせてくれなかったからな」
ハルヒ「!!」
長門「…お盛ん」
ハルヒ「バ、バカ 何いってんのよ…とにかく! 古泉君の案が気に入ったわ」
ハルヒ「今年の夏合宿のテーマは ヨーロッパの暗部 ゴート札の謎よ」
ハルヒ「日本のラングドン教授といわれる涼宮ハルヒの出番ね!」
朝比奈「ラングドン教授って誰ですかあ?」
長門「ダン・ブラウンのサスペンス小説『天使と悪魔』『ダ・ヴィンチ・コード』
『ロスト・シンボル』に主人公として登場する架空の人物」
それぞれ通う大学は違うけど、休日はあいかわらず集まって活動しています。
今日もいつもの喫茶店に集まって会議の真っ最中。
議題は夏休みの旅行についてです。
ハルヒ「聞かない名ね カリオストロ公国って」
古泉「人口3,500 世界で一番小さな国連加盟国ですよ」
古泉「お姫様の結婚式が盛大に行われるそうなのでぜひ見物に行きましょう」
ハルヒ「ふーん でもただの観光には興味ないわよ」
古泉「そう仰ると思いました 実はこの国にはある噂がささやかれています」
古泉「涼宮さんはゴート札をご存知ですか」
ハルヒ「ゴート札! 幻のニセ札という あれね」
古泉「そのゴート札の震源地がカリオストロ公国といわれてます」
キョン「何なんだ そのゴート札ってのは」
古泉「その筋じゃ有名な伝説です 名付けてニセ札界のブラックホール」
キョン「ブラックホール?」
古泉「ちょっかいを出して帰って来た者はいないという話です」
朝比奈「ふええ 怖いですう」
キョン「怖いから俺 寝る」
ハルヒ「ちょっと、キョン! 喫茶店で寝ないでよ」
キョン「昨日はおまえが寝かせてくれなかったからな」
ハルヒ「!!」
長門「…お盛ん」
ハルヒ「バ、バカ 何いってんのよ…とにかく! 古泉君の案が気に入ったわ」
ハルヒ「今年の夏合宿のテーマは ヨーロッパの暗部 ゴート札の謎よ」
ハルヒ「日本のラングドン教授といわれる涼宮ハルヒの出番ね!」
朝比奈「ラングドン教授って誰ですかあ?」
長門「ダン・ブラウンのサスペンス小説『天使と悪魔』『ダ・ヴィンチ・コード』
『ロスト・シンボル』に主人公として登場する架空の人物」
2: 2012/02/06(月) 22:31:02.51 ID:+wjtvPzp0
という訳でSOS団は夏合宿に向かうべく日本を発った。
今回の合宿は朝比奈さんだけ欠席。
なんでも親友の鶴屋さんと二人で秘密のアルバイトをしているそうだ。
残りの四人はまずイタリアに入り、そこで安い中古車を購入する事にした。
古泉「お待たせしました 中古のフィアットが格安で手に入りましたよ」
古泉「あれ? 涼宮さんと長門さんはどこに行ったんですか」
キョン「さあな 真実の口でローマの休日ごっこでもしてるんじゃないか」
古泉「おやおや… しかし今年の合宿は人数が少なくて寂しいですね」
古泉「特にあなたの妹さんが来ないのは残念です」
キョン「むっ、おまえなんかに妹はやらんぞ」
古泉「変なこと言わないで下さい 彼女は僕にとっても妹みたいな存在ですよ」
キョン「そのニヤケ面を信用するなと俺の第六感がささやいてる」
キョン「まあ あいつもさすがに中学生だ あまり図々しいマネも出来ないさ」
キョン「そっちこそ 合宿といえばもれなく付いてくる例の人たちは?」
古泉「機関の同志はグリコのおまけではありません」
古泉「勿論すでに何人かカリオストロ公国内に潜入させてありますよ」
キョン「念のため言っておくが 俺は森さんのメイド服姿を眺めながら―」
キョン「新川さんの手料理を食べないと、合宿に来た気がしないんだ」
古泉「ご安心下さい その二人なら明日には合流できるはずです」
そこへハルヒが長門を引っ張るようにして走ってきた。
ハルヒ「聞いてよキョン! 真実の口でローマの休日ごっこをしたんだけど―」
ハルヒ「有希ったら まんまと引っかかってんの!」
長門「引っかかってはいない」
ハルヒ「私が口から手を出したとき、眉毛が2ミリも上がってたわよ」
キョン「うん 完全に引っかかってるなそりゃ」
長門「あえて驚いたふりをしただけ 我ながら迫真の演技といえる」
長門「むしろ引っかかったのは涼宮ハルヒの方」
古泉「往生際が悪いですよ」
長門「………」
今回の合宿は朝比奈さんだけ欠席。
なんでも親友の鶴屋さんと二人で秘密のアルバイトをしているそうだ。
残りの四人はまずイタリアに入り、そこで安い中古車を購入する事にした。
古泉「お待たせしました 中古のフィアットが格安で手に入りましたよ」
古泉「あれ? 涼宮さんと長門さんはどこに行ったんですか」
キョン「さあな 真実の口でローマの休日ごっこでもしてるんじゃないか」
古泉「おやおや… しかし今年の合宿は人数が少なくて寂しいですね」
古泉「特にあなたの妹さんが来ないのは残念です」
キョン「むっ、おまえなんかに妹はやらんぞ」
古泉「変なこと言わないで下さい 彼女は僕にとっても妹みたいな存在ですよ」
キョン「そのニヤケ面を信用するなと俺の第六感がささやいてる」
キョン「まあ あいつもさすがに中学生だ あまり図々しいマネも出来ないさ」
キョン「そっちこそ 合宿といえばもれなく付いてくる例の人たちは?」
古泉「機関の同志はグリコのおまけではありません」
古泉「勿論すでに何人かカリオストロ公国内に潜入させてありますよ」
キョン「念のため言っておくが 俺は森さんのメイド服姿を眺めながら―」
キョン「新川さんの手料理を食べないと、合宿に来た気がしないんだ」
古泉「ご安心下さい その二人なら明日には合流できるはずです」
そこへハルヒが長門を引っ張るようにして走ってきた。
ハルヒ「聞いてよキョン! 真実の口でローマの休日ごっこをしたんだけど―」
ハルヒ「有希ったら まんまと引っかかってんの!」
長門「引っかかってはいない」
ハルヒ「私が口から手を出したとき、眉毛が2ミリも上がってたわよ」
キョン「うん 完全に引っかかってるなそりゃ」
長門「あえて驚いたふりをしただけ 我ながら迫真の演技といえる」
長門「むしろ引っかかったのは涼宮ハルヒの方」
古泉「往生際が悪いですよ」
長門「………」
3: 2012/02/06(月) 22:36:49.09 ID:+wjtvPzp0
フィアットに乗った四人はハルヒの運転でカリオストロ公国に入った。
ところが安物の悲しさ、ものの一時間も走らないうちにタイヤがパンク。
ジャンケンで負けたキョンがタイヤ交換をするハメになった。
キョン「何だ このスペア丸坊主だ」
ぶつぶつ言いながら作業するキョン。
まわりにはのどかな田園風景が広がっている。
古泉「平和ですねえ」
突然、その脇を猛スピードのシトロエンが通り過ぎた。
運転しているのは花嫁衣裳を着た少女だった。
続いて黒塗りのハンバーがそれを追いかけるように走り去る。
キョン「何だ!?」
ハルヒ「キョン、乗って!」
非日常的な出来事に目がないハルヒはとっさに二台の車を追いかけた。
ハルヒ「これはいわゆる花嫁の脱走ね キャー 映画みたい!」
古泉「しかし男としては逃げられた新郎にも同情しますが」
キョン「ハルヒ、おまえはどっちにつく?」
ハルヒ「花嫁!」
キョン「だろうな」
ところが安物の悲しさ、ものの一時間も走らないうちにタイヤがパンク。
ジャンケンで負けたキョンがタイヤ交換をするハメになった。
キョン「何だ このスペア丸坊主だ」
ぶつぶつ言いながら作業するキョン。
まわりにはのどかな田園風景が広がっている。
古泉「平和ですねえ」
突然、その脇を猛スピードのシトロエンが通り過ぎた。
運転しているのは花嫁衣裳を着た少女だった。
続いて黒塗りのハンバーがそれを追いかけるように走り去る。
キョン「何だ!?」
ハルヒ「キョン、乗って!」
非日常的な出来事に目がないハルヒはとっさに二台の車を追いかけた。
ハルヒ「これはいわゆる花嫁の脱走ね キャー 映画みたい!」
古泉「しかし男としては逃げられた新郎にも同情しますが」
キョン「ハルヒ、おまえはどっちにつく?」
ハルヒ「花嫁!」
キョン「だろうな」
4: 2012/02/06(月) 22:41:02.24 ID:+wjtvPzp0
ハルヒは持ち前の反射神経と運転技術でたちまち二台に追いついた。
やがて道路は切り立った断崖の上に出た。その下は湖である。
キョン「あの黒塗りムチャクチャだ! 花嫁の車にバンバンぶつけてるぞ」
ハルヒ「面白くなってきたわね」
古泉「涼宮さん あまり無茶をされては…」
ハルヒ「まくるわよ!」
キョン「おいマジかよ やめてくれええええ!」
長門はひとり冷静に前方の車をスキャンしていた。
長門(前方の黒塗りハンバー・スーパー・スナイプの車内に重火器の存在を確認)
長門(短機関銃 PPSh-41 がニ丁 M24型柄付手榴弾が五個)
長門(このまま追跡を続ければ我々に深刻な危害を及ぼす可能性が高い)
長門(危険を避けるには涼宮ハルヒが追跡をやめる必要がある)
長門(情報操作で我々のフィアット500のエンジンを止めて…できない)
長門(このフィアットに対する情報操作はすべて遮断されてしまう)
長門(原因は涼宮ハルヒが追跡の続行を強く望んでいるためと思われる)
長門(ならば前方のハンバーを無力化するしか方法はない)
轟音とともに前方のハンバーの屋根が吹き飛んだ。
キョン「おわぁっ!」
ハルヒ「急に爆発したわよ なんで?」
古泉「深く考えない事にしましょう」
走行不能になったハンバーが後方に流れていく。
やがて道路は切り立った断崖の上に出た。その下は湖である。
キョン「あの黒塗りムチャクチャだ! 花嫁の車にバンバンぶつけてるぞ」
ハルヒ「面白くなってきたわね」
古泉「涼宮さん あまり無茶をされては…」
ハルヒ「まくるわよ!」
キョン「おいマジかよ やめてくれええええ!」
長門はひとり冷静に前方の車をスキャンしていた。
長門(前方の黒塗りハンバー・スーパー・スナイプの車内に重火器の存在を確認)
長門(短機関銃 PPSh-41 がニ丁 M24型柄付手榴弾が五個)
長門(このまま追跡を続ければ我々に深刻な危害を及ぼす可能性が高い)
長門(危険を避けるには涼宮ハルヒが追跡をやめる必要がある)
長門(情報操作で我々のフィアット500のエンジンを止めて…できない)
長門(このフィアットに対する情報操作はすべて遮断されてしまう)
長門(原因は涼宮ハルヒが追跡の続行を強く望んでいるためと思われる)
長門(ならば前方のハンバーを無力化するしか方法はない)
轟音とともに前方のハンバーの屋根が吹き飛んだ。
キョン「おわぁっ!」
ハルヒ「急に爆発したわよ なんで?」
古泉「深く考えない事にしましょう」
走行不能になったハンバーが後方に流れていく。
5: 2012/02/06(月) 22:46:06.14 ID:+wjtvPzp0
花嫁のシトロエンに追いついたハルヒは警笛を鳴らした。
しかしシトロエンはそのままトロトロと走りつづける。
ハルヒ「変ねえ」
古泉「気絶してるんですよ」
キョン「このままじゃ崖から落っこっちまうぜ」
古泉「それでは僕があの車に乗り移ります 涼宮さん、車を寄せてください」
古泉はサンルーフを開けて身を乗り出した。
キョン「しかしこの車 オンボロの癖によくここまで走ったなあ」
ハルヒ「そういえばそうねえ」
その途端ハルヒのフィアットのエンジンがストップした。
キョン(俺、今まずいこと言った?)
ハルヒ「古泉君は? 大丈夫?」
キョン「大丈夫 何とか飛び移ったようだ」
キョンは前方のシトロエンを指差す。
ボンネットにしがみ付いた古泉が器用に車内にもぐりこんだ。
しかしシトロエンは止まらない。
しかしシトロエンはそのままトロトロと走りつづける。
ハルヒ「変ねえ」
古泉「気絶してるんですよ」
キョン「このままじゃ崖から落っこっちまうぜ」
古泉「それでは僕があの車に乗り移ります 涼宮さん、車を寄せてください」
古泉はサンルーフを開けて身を乗り出した。
キョン「しかしこの車 オンボロの癖によくここまで走ったなあ」
ハルヒ「そういえばそうねえ」
その途端ハルヒのフィアットのエンジンがストップした。
キョン(俺、今まずいこと言った?)
ハルヒ「古泉君は? 大丈夫?」
キョン「大丈夫 何とか飛び移ったようだ」
キョンは前方のシトロエンを指差す。
ボンネットにしがみ付いた古泉が器用に車内にもぐりこんだ。
しかしシトロエンは止まらない。
6: 2012/02/06(月) 22:51:01.27 ID:+wjtvPzp0
車から降りたハルヒたちは走ってシトロエンを追いかけた。
長門(あのシトロエン・2CVはハンドルもブレーキも壊れている)
長門(このままでは古泉一樹が崖下に転落してしまう)
長門(幸い涼宮ハルヒはシトロエンに注目していて私の方を見ていない)
長門はすぐ横の崖を飛び降りて湖岸に着地した。
すぐさまシトロエンの落下予測地点まで高速で移動する。
そこからさらに崖の上によじ登ろうとした所で異変を感じた。
長門(地形が急速に変化している…)
切り立った断崖絶壁がなだらかなスロープに変化した。
中腹に踊り場が形成され、それを囲むように数本の木が現れた。
踊り場からは細い通り道が下の湖岸まで伸びていった。
長門(タイム・プレーン・デストロイド・デバイスの作動を感知)
長門(この地形変化は未来人による干渉行為と思われる)
地形変化が完了するとタイミングよくシトロエンが落ちてきた。
スロープを降りてきて、踊り場に達すると木にぶつかって止まった。
古泉「あいたたた 運よく助かったみたいですねえ」
古泉「花嫁の方も怪我はないみたいで…おや この人は」
そのとき崖の上からハルヒたちの声が聞こえた。
ハルヒの声「いやあああ 古泉君が 古泉君がああ」
キョンの声「ハルヒ落ち着け 車はどうやら無事らしいぞ」
古泉(早いとこ涼宮さんを安心させないと特大の閉鎖空間が生まれそうだ)
古泉「涼宮さん! 僕は大丈夫です 花嫁の方も無事です」
とにかく花嫁を運ばなければ… 古泉は崖を見上げた。
緩やかなスロープとはいえ手掛かりなしで登るのは難しい。
古泉「ここからでは上に登れそうにないので一度下に降りてみます」
古泉「涼宮さんたちも下に降りられる道を探してください」
ハルヒ「わかったわ!」
長門(あのシトロエン・2CVはハンドルもブレーキも壊れている)
長門(このままでは古泉一樹が崖下に転落してしまう)
長門(幸い涼宮ハルヒはシトロエンに注目していて私の方を見ていない)
長門はすぐ横の崖を飛び降りて湖岸に着地した。
すぐさまシトロエンの落下予測地点まで高速で移動する。
そこからさらに崖の上によじ登ろうとした所で異変を感じた。
長門(地形が急速に変化している…)
切り立った断崖絶壁がなだらかなスロープに変化した。
中腹に踊り場が形成され、それを囲むように数本の木が現れた。
踊り場からは細い通り道が下の湖岸まで伸びていった。
長門(タイム・プレーン・デストロイド・デバイスの作動を感知)
長門(この地形変化は未来人による干渉行為と思われる)
地形変化が完了するとタイミングよくシトロエンが落ちてきた。
スロープを降りてきて、踊り場に達すると木にぶつかって止まった。
古泉「あいたたた 運よく助かったみたいですねえ」
古泉「花嫁の方も怪我はないみたいで…おや この人は」
そのとき崖の上からハルヒたちの声が聞こえた。
ハルヒの声「いやあああ 古泉君が 古泉君がああ」
キョンの声「ハルヒ落ち着け 車はどうやら無事らしいぞ」
古泉(早いとこ涼宮さんを安心させないと特大の閉鎖空間が生まれそうだ)
古泉「涼宮さん! 僕は大丈夫です 花嫁の方も無事です」
とにかく花嫁を運ばなければ… 古泉は崖を見上げた。
緩やかなスロープとはいえ手掛かりなしで登るのは難しい。
古泉「ここからでは上に登れそうにないので一度下に降りてみます」
古泉「涼宮さんたちも下に降りられる道を探してください」
ハルヒ「わかったわ!」
7: 2012/02/06(月) 22:56:45.33 ID:+wjtvPzp0
古泉は花嫁を抱えると、踊り場から続く道を下りていった。
歩きながら花嫁をじっと観察する。
古泉(間違いない クラリス姫だ それにしても何という美しさ)
下りる途中でクラリスが目を覚ました。
クラリス「いやっ 放して!」
古泉「わっ! ダメです 暴れないで あぶない!」
古泉「下 下! 下見て! 下を見てください 下を!」
眼下に広がる湖。道を踏み外したら真っ逆さまである。
大人しくなったクラリスは古泉にギュッとしがみつく。
古泉「そう それでいいです そのまま」
古泉(彼女に触れていると心がざわめく…僕はおかしくなったのか?)
クラリス「外国の方ですか」
古泉「ええ偶然通りかかったものですから さあ着きましたよ」
抱えていたクラリスをそっと下ろす。首筋がチクリと痛んだ。
その途端、古泉は気を失って倒れてしまった。
クラリス「もしもし… もしっ!」
クラリスは手袋を外し、湖の水に浸して古泉の顔を拭いた。
湖の奥からポンポン船がやってきた。どうやら追っ手らしい。
クラリス「ごめんなさい」
クラリスは手袋を古泉の額に置くとその場を立ち去った。
入れ替わりに物陰から妖艶な美女が現れた。アダルト朝比奈みくるである。
手には麻酔銃を持っている。これで古泉の首筋を撃ったのだ。
みくる(大)「古泉君ごめんね ちょっと眠ってもらうだけだから」
長門「朝比奈みくる」
みくる(大)「ひっ…長門さん!」
長門「説明を要求する」
みくる(大)「と、とりあえずこれを持って上に行って下さ~い!」
アダルト朝比奈さんは長門に一抱えのロープを押し付けて消えた。
長門「………」
歩きながら花嫁をじっと観察する。
古泉(間違いない クラリス姫だ それにしても何という美しさ)
下りる途中でクラリスが目を覚ました。
クラリス「いやっ 放して!」
古泉「わっ! ダメです 暴れないで あぶない!」
古泉「下 下! 下見て! 下を見てください 下を!」
眼下に広がる湖。道を踏み外したら真っ逆さまである。
大人しくなったクラリスは古泉にギュッとしがみつく。
古泉「そう それでいいです そのまま」
古泉(彼女に触れていると心がざわめく…僕はおかしくなったのか?)
クラリス「外国の方ですか」
古泉「ええ偶然通りかかったものですから さあ着きましたよ」
抱えていたクラリスをそっと下ろす。首筋がチクリと痛んだ。
その途端、古泉は気を失って倒れてしまった。
クラリス「もしもし… もしっ!」
クラリスは手袋を外し、湖の水に浸して古泉の顔を拭いた。
湖の奥からポンポン船がやってきた。どうやら追っ手らしい。
クラリス「ごめんなさい」
クラリスは手袋を古泉の額に置くとその場を立ち去った。
入れ替わりに物陰から妖艶な美女が現れた。アダルト朝比奈みくるである。
手には麻酔銃を持っている。これで古泉の首筋を撃ったのだ。
みくる(大)「古泉君ごめんね ちょっと眠ってもらうだけだから」
長門「朝比奈みくる」
みくる(大)「ひっ…長門さん!」
長門「説明を要求する」
みくる(大)「と、とりあえずこれを持って上に行って下さ~い!」
アダルト朝比奈さんは長門に一抱えのロープを押し付けて消えた。
長門「………」
8: 2012/02/06(月) 23:01:23.35 ID:+wjtvPzp0
崖の上ではハルヒたちが下に降りる道を探していた。
ハルヒ「もう こんなときに有希ったら どこに行ったのかしら」
キョン「野グソかもしれないぜ 戻ってもあんまり追求してやるなよ」
長門「野グソではない」
キョン「うわっ! どっから出てきたんだ」
長門「ロープを探していた これで下に降りられる」
アダルト朝比奈さんに渡されたロープをキョンに突き出す。
キョン「お、おう さすが長門 頼りになるなあ」
長門「分かればいい」
三人はシトロエンが落ちた場所からロープを垂らして湖岸に降りた。
湖岸では古泉がひとり倒れていた。
長門「体温、脈拍、ともに正常 気を失っているだけ」
ハルヒ「あっ 気が付いた」
キョン「おい古泉よ なんつーザマだ」
古泉「あ 僕の花嫁は?」
長門が湖上を進むポンポン船を指差す。
古泉「くっ…!」
ハルヒ「たかが女の子一人に あいつら一体何者かしら?」
クラリスの手袋を握り締める古泉。中から何かがポロッと落ちた。
キョン「ん? 指輪じゃねえか」
指輪には山羊をかたどった紋章が彫られていた。
古泉(この紋章は大公家の…やっぱり彼女は)
ハルヒ「どうしたの? 指輪見て 急に目の色変えちゃって!」
古泉「いえ とりあえず宿に行きましょう」
ハルヒ「もう こんなときに有希ったら どこに行ったのかしら」
キョン「野グソかもしれないぜ 戻ってもあんまり追求してやるなよ」
長門「野グソではない」
キョン「うわっ! どっから出てきたんだ」
長門「ロープを探していた これで下に降りられる」
アダルト朝比奈さんに渡されたロープをキョンに突き出す。
キョン「お、おう さすが長門 頼りになるなあ」
長門「分かればいい」
三人はシトロエンが落ちた場所からロープを垂らして湖岸に降りた。
湖岸では古泉がひとり倒れていた。
長門「体温、脈拍、ともに正常 気を失っているだけ」
ハルヒ「あっ 気が付いた」
キョン「おい古泉よ なんつーザマだ」
古泉「あ 僕の花嫁は?」
長門が湖上を進むポンポン船を指差す。
古泉「くっ…!」
ハルヒ「たかが女の子一人に あいつら一体何者かしら?」
クラリスの手袋を握り締める古泉。中から何かがポロッと落ちた。
キョン「ん? 指輪じゃねえか」
指輪には山羊をかたどった紋章が彫られていた。
古泉(この紋章は大公家の…やっぱり彼女は)
ハルヒ「どうしたの? 指輪見て 急に目の色変えちゃって!」
古泉「いえ とりあえず宿に行きましょう」
9: 2012/02/06(月) 23:05:58.23 ID:+wjtvPzp0
予約していた宿は湖が一望できる場所にあった。民家の二階を借りる形式だ。
部屋の窓から対岸のカリオストロ城が見える。
城からはローマ時代の水道橋がこちらの岸まで湖を横切るように伸びていた。
その水道橋の終点あたりに巨大な時計塔がそびえ立っていた。
ハルヒ「さすが古泉君が手配しただけあるわ 眺めが最高ね」
古泉「恐縮です」
ハルヒ「あの時計塔はずいぶん大きいのね あれはかなり年代物よ」
ハルヒ「あら 塔の近くにも別の城があるじゃない ちょっと双眼鏡貸して」
キョン「ほらよ」
ハルヒ「やっぱり! 城門に彫ってある紋章…指輪と同じだわ」
古泉「さすがは涼宮さん よく気がつかれましたね」
ハルヒ「そっか 古泉君も気がついてたのね」
キョン「俺には見せてくれないのか?」
ハルヒ「邪魔しないで 私が見てるんだから」
キョン「ケチな奴だ」
ハルヒ「それより今から行ってみない? そこの城に」
古泉「いいですよ 夕食まで時間がありますし」
ハルヒ「ひょっとして謎の花嫁の正体がつかめるかも!」
部屋の窓から対岸のカリオストロ城が見える。
城からはローマ時代の水道橋がこちらの岸まで湖を横切るように伸びていた。
その水道橋の終点あたりに巨大な時計塔がそびえ立っていた。
ハルヒ「さすが古泉君が手配しただけあるわ 眺めが最高ね」
古泉「恐縮です」
ハルヒ「あの時計塔はずいぶん大きいのね あれはかなり年代物よ」
ハルヒ「あら 塔の近くにも別の城があるじゃない ちょっと双眼鏡貸して」
キョン「ほらよ」
ハルヒ「やっぱり! 城門に彫ってある紋章…指輪と同じだわ」
古泉「さすがは涼宮さん よく気がつかれましたね」
ハルヒ「そっか 古泉君も気がついてたのね」
キョン「俺には見せてくれないのか?」
ハルヒ「邪魔しないで 私が見てるんだから」
キョン「ケチな奴だ」
ハルヒ「それより今から行ってみない? そこの城に」
古泉「いいですよ 夕食まで時間がありますし」
ハルヒ「ひょっとして謎の花嫁の正体がつかめるかも!」
10: 2012/02/06(月) 23:10:39.47 ID:+wjtvPzp0
時計塔の近くにあった城は廃墟同然の古城だった。
ハルヒ「遠くからでは分からなかったけどひどい有り様ねえ」
古泉「無人になってからそう古くはなさそうです」
キョンが足元に散らばる木炭を踏み潰す。
キョン「火事か…」
老人「誰だ!」
管理人らしき老人がハルヒたちを呼び止めた。
古泉「ただの通りすがりです」
老人「観光か?」
キョン「ああ まあね」
古泉「ここはどういった場所ですか」
老人「大公殿下の館だ 他所者がウロチョロしてよい所じゃないんだぞ」
ハルヒ「これが大公の館? カラッポの廃墟じゃない」
老人「7年前の大火事でな 大公御夫妻がお亡くなりになって以来―」
老人「このとおり 荒れ放題になってしまったんだ」
ハルヒ「妙ね 大公って王様のことでしょう 今は王様なしってわけ?」
老人「摂政がいるからな 困りはしないそうだ 早く帰れよ」
キョン「ヘイヘイ」
ハルヒ「遠くからでは分からなかったけどひどい有り様ねえ」
古泉「無人になってからそう古くはなさそうです」
キョンが足元に散らばる木炭を踏み潰す。
キョン「火事か…」
老人「誰だ!」
管理人らしき老人がハルヒたちを呼び止めた。
古泉「ただの通りすがりです」
老人「観光か?」
キョン「ああ まあね」
古泉「ここはどういった場所ですか」
老人「大公殿下の館だ 他所者がウロチョロしてよい所じゃないんだぞ」
ハルヒ「これが大公の館? カラッポの廃墟じゃない」
老人「7年前の大火事でな 大公御夫妻がお亡くなりになって以来―」
老人「このとおり 荒れ放題になってしまったんだ」
ハルヒ「妙ね 大公って王様のことでしょう 今は王様なしってわけ?」
老人「摂政がいるからな 困りはしないそうだ 早く帰れよ」
キョン「ヘイヘイ」
11: 2012/02/06(月) 23:16:57.11 ID:+wjtvPzp0
古城の庭を出ると湖に出た。時計塔の鐘の音が響く。
ハルヒたちをやり過ごして一人になった古泉は石橋のたもとに座り込んだ。
ぼんやりと宙を見つめている。あたりが夕陽に染まっていく。
いつのまにか古泉の向かいに長門が立っていた。
長門「夕食の時間」
古泉は返事をせずに、ただ長門の顔を見つめた。
長門「何?」
古泉「花嫁の居場所を教えてくれませんか?」
長門は対岸の方を指差した。
長門「摂政カリオストロ伯爵の城 あそこを見て」
長門「もっと下…水道橋のむこう」
古泉「ウン? さっきの船ですね!」
長門「花嫁は あの城の中…」
カリオストロ城を食い入るように見詰める古泉。
古泉「あそこに水門がありますね…」
長門「古泉一樹 もし単独行動を取るつもりならやめて欲しい」
長門「私は涼宮ハルヒのそばを離れるわけにはいかない」
長門「涼宮ハルヒといる限りあなたの安全も確保できる」
長門「しかし離れて単独行動を取られてはあなたを守る事はできない」
長門「あなたは大切な友人…失いたくはない」
予想外の言葉を聞いて目を丸くする古泉。だがすぐにいつもの笑顔に戻る。
古泉「長門さんには敵いませんね 今の言葉、肝に銘じておきます」
西の空からオートジャイロが飛んできた。カリオストロ城に向っている。
古泉「オートジャイロとは古風ですね」
長門「あれが伯爵」
古泉「………」
ハルヒたちをやり過ごして一人になった古泉は石橋のたもとに座り込んだ。
ぼんやりと宙を見つめている。あたりが夕陽に染まっていく。
いつのまにか古泉の向かいに長門が立っていた。
長門「夕食の時間」
古泉は返事をせずに、ただ長門の顔を見つめた。
長門「何?」
古泉「花嫁の居場所を教えてくれませんか?」
長門は対岸の方を指差した。
長門「摂政カリオストロ伯爵の城 あそこを見て」
長門「もっと下…水道橋のむこう」
古泉「ウン? さっきの船ですね!」
長門「花嫁は あの城の中…」
カリオストロ城を食い入るように見詰める古泉。
古泉「あそこに水門がありますね…」
長門「古泉一樹 もし単独行動を取るつもりならやめて欲しい」
長門「私は涼宮ハルヒのそばを離れるわけにはいかない」
長門「涼宮ハルヒといる限りあなたの安全も確保できる」
長門「しかし離れて単独行動を取られてはあなたを守る事はできない」
長門「あなたは大切な友人…失いたくはない」
予想外の言葉を聞いて目を丸くする古泉。だがすぐにいつもの笑顔に戻る。
古泉「長門さんには敵いませんね 今の言葉、肝に銘じておきます」
西の空からオートジャイロが飛んできた。カリオストロ城に向っている。
古泉「オートジャイロとは古風ですね」
長門「あれが伯爵」
古泉「………」
12: 2012/02/06(月) 23:21:16.90 ID:+wjtvPzp0
オートジャイロがカリオストロ城の発着所に下りた。
コックピットから颯爽と降りた伯爵は飛行服のまま城に入る。
歩みを止めない伯爵の飛行服を執事のジョドーがたくみに脱がせて行く。
伯爵「ジョドー 不始末だな」
ジョドー「申し訳ありません 御婚礼衣装の仮縫いでございましたので―」
ジョドー「男どもが席を外した折でございました」
伯爵「今は北の塔か?」
ジョドー「ハイ お薬でよくお眠りになっていらっしゃいます」
伯爵「外国人といったな?」
ジョドー「ハイ 四人連れの男女が 逃亡を手助けしたとのことでございます」
伯爵「見つけ出せ 後始末は任せる」
ジョドーと別れた伯爵は本丸の外れにある秘密の部屋に入った。
壁のスイッチを操作すると本丸から通路が伸びて北の塔に接続した。
北の塔に入る手段はこれしかない。
伯爵は通路を通ってクラリスが幽閉されている部屋に向かった。
部屋の前ではなぜかアダルト朝比奈みくるが毛糸を編んでいる。
朝比奈は伯爵に気付くと立ち上がって一礼した。
部屋の中に入るとクラリスがベッドの上で気を失っていた。
伯爵はクラリスの指輪を確認するために、彼女の腕を掴んだ。
伯爵「うん? 指輪がない… ジョドーを呼べ!」
コックピットから颯爽と降りた伯爵は飛行服のまま城に入る。
歩みを止めない伯爵の飛行服を執事のジョドーがたくみに脱がせて行く。
伯爵「ジョドー 不始末だな」
ジョドー「申し訳ありません 御婚礼衣装の仮縫いでございましたので―」
ジョドー「男どもが席を外した折でございました」
伯爵「今は北の塔か?」
ジョドー「ハイ お薬でよくお眠りになっていらっしゃいます」
伯爵「外国人といったな?」
ジョドー「ハイ 四人連れの男女が 逃亡を手助けしたとのことでございます」
伯爵「見つけ出せ 後始末は任せる」
ジョドーと別れた伯爵は本丸の外れにある秘密の部屋に入った。
壁のスイッチを操作すると本丸から通路が伸びて北の塔に接続した。
北の塔に入る手段はこれしかない。
伯爵は通路を通ってクラリスが幽閉されている部屋に向かった。
部屋の前ではなぜかアダルト朝比奈みくるが毛糸を編んでいる。
朝比奈は伯爵に気付くと立ち上がって一礼した。
部屋の中に入るとクラリスがベッドの上で気を失っていた。
伯爵はクラリスの指輪を確認するために、彼女の腕を掴んだ。
伯爵「うん? 指輪がない… ジョドーを呼べ!」
13: 2012/02/06(月) 23:26:46.94 ID:+wjtvPzp0
SOS団の面々は夕食をとりに近くのレストランに入った。
レストランというより大衆酒場といった雰囲気の店である。
ハルヒは花嫁の指輪を調べて、そこに細かい文字が彫ってあるのを発見した。
ハルヒ「有希 これなんて書いてあるか分かる?」
長門「この文字は氏滅したゴート文字」
ハルヒ「ゴート文字!?」
長門「“光と影 再び一つとなりて甦らん 1517年”…年号はローマ数字」
キョン「500年前の代物か」
古泉「ちょっと指輪を貸してください」
そこへ店主の娘が山盛りの肉団子入りスパゲッティーを運んできた。
娘「おまちどうさま」
キョン「おおっ うまそう」
長門「………」ガバ
キョン「こら長門 取りすぎだろ!」
娘「ずいぶん熱心ね 何見てるの?」
古泉「いえ 古い指輪を拾ったもので 値打ち物かなと…」
娘「まあっ! きれいね これ クラリス様の紋章よ」
ハルヒ「クラリス…」
娘「ほら あの方 あそこの写真 子供の頃のだけど」
娘「きのう 修道院から戻られたの きっと素敵におなりだわ」
古泉「僕たちもクラリス様と伯爵様の結婚式を見に来たんですよ」
娘「でも クラリス様かわいそう 伯爵ってね 有名な女たらしなのよ」
ハルヒ「おや ま! 古泉君みたい」
古泉「今晩どうです?」ニコッ
娘「(ドキッ) いやだー ハハハ…///」
ハルヒ「古泉君 昼間の花嫁が大公のお姫様だって知ってたのね!」
古泉「あれ 言いませんでしたっけ?」
ハルヒ「自分ばっかりずるい! もっと色々知ってるんじゃないの?」
古泉「さあ…ちょっと失礼します」
ハルヒ「あっ、もう! 古泉君さっきから様子が変よ」
キョン「ハルヒ いい事を教えてやろう あれは恋する男の目だ」
ハルヒ「古泉君が? まさか」
古泉はクラリスの写真に近付いてじっと見つめていた。
レストランというより大衆酒場といった雰囲気の店である。
ハルヒは花嫁の指輪を調べて、そこに細かい文字が彫ってあるのを発見した。
ハルヒ「有希 これなんて書いてあるか分かる?」
長門「この文字は氏滅したゴート文字」
ハルヒ「ゴート文字!?」
長門「“光と影 再び一つとなりて甦らん 1517年”…年号はローマ数字」
キョン「500年前の代物か」
古泉「ちょっと指輪を貸してください」
そこへ店主の娘が山盛りの肉団子入りスパゲッティーを運んできた。
娘「おまちどうさま」
キョン「おおっ うまそう」
長門「………」ガバ
キョン「こら長門 取りすぎだろ!」
娘「ずいぶん熱心ね 何見てるの?」
古泉「いえ 古い指輪を拾ったもので 値打ち物かなと…」
娘「まあっ! きれいね これ クラリス様の紋章よ」
ハルヒ「クラリス…」
娘「ほら あの方 あそこの写真 子供の頃のだけど」
娘「きのう 修道院から戻られたの きっと素敵におなりだわ」
古泉「僕たちもクラリス様と伯爵様の結婚式を見に来たんですよ」
娘「でも クラリス様かわいそう 伯爵ってね 有名な女たらしなのよ」
ハルヒ「おや ま! 古泉君みたい」
古泉「今晩どうです?」ニコッ
娘「(ドキッ) いやだー ハハハ…///」
ハルヒ「古泉君 昼間の花嫁が大公のお姫様だって知ってたのね!」
古泉「あれ 言いませんでしたっけ?」
ハルヒ「自分ばっかりずるい! もっと色々知ってるんじゃないの?」
古泉「さあ…ちょっと失礼します」
ハルヒ「あっ、もう! 古泉君さっきから様子が変よ」
キョン「ハルヒ いい事を教えてやろう あれは恋する男の目だ」
ハルヒ「古泉君が? まさか」
古泉はクラリスの写真に近付いてじっと見つめていた。
14: 2012/02/06(月) 23:31:20.89 ID:+wjtvPzp0
夕食を終えたハルヒたちはぶらぶら歩いて宿に戻る。
ハルヒ「光と影 再び一つとなりて甦らん…か お宝でも甦るのかな?」
古泉「さあ どうでしょうね」
ハルヒ「あーもう じれったい! さっさと白状しちゃいなさいよ」
古泉「な、何がです?」
ハルヒ「私の目を誤魔化せると思ってるの? 花嫁よ、は・な・よ・め」
古泉「!!」
ハルヒ「あれは古泉君が用意した推理劇の一環なんでしょ?」
古泉「…へっ?」
ハルヒ「とぼけても無駄よ 合宿恒例の推理劇…今年は随分手が込んでるのね」
ハルヒ「でも凝りすぎが仇となったわね 早々と私にバレちゃってるもの」
ハルヒ「大体、逃げた花嫁が大公のお姫さまって 設定が無茶なのよ」
古泉「い、いや それはですね」
キョン「やっぱりそうだったか 俺も話が出来すぎてると思ったんだ」
キョン「しかし今回は推理劇というよりはハリウッド映画だな」
キョン「あのカースタントなんて ブルース・ウイリスも真っ青だったぜ」
キョン「長門なんか心配して必氏でロープを捜してたもんな」
キョン「ん?どうした長門」
長門「何でもない」
長門(後ろの男 店からずっと後をつけている…)
ハルヒ「光と影 再び一つとなりて甦らん…か お宝でも甦るのかな?」
古泉「さあ どうでしょうね」
ハルヒ「あーもう じれったい! さっさと白状しちゃいなさいよ」
古泉「な、何がです?」
ハルヒ「私の目を誤魔化せると思ってるの? 花嫁よ、は・な・よ・め」
古泉「!!」
ハルヒ「あれは古泉君が用意した推理劇の一環なんでしょ?」
古泉「…へっ?」
ハルヒ「とぼけても無駄よ 合宿恒例の推理劇…今年は随分手が込んでるのね」
ハルヒ「でも凝りすぎが仇となったわね 早々と私にバレちゃってるもの」
ハルヒ「大体、逃げた花嫁が大公のお姫さまって 設定が無茶なのよ」
古泉「い、いや それはですね」
キョン「やっぱりそうだったか 俺も話が出来すぎてると思ったんだ」
キョン「しかし今回は推理劇というよりはハリウッド映画だな」
キョン「あのカースタントなんて ブルース・ウイリスも真っ青だったぜ」
キョン「長門なんか心配して必氏でロープを捜してたもんな」
キョン「ん?どうした長門」
長門「何でもない」
長門(後ろの男 店からずっと後をつけている…)
15: 2012/02/06(月) 23:36:01.96 ID:+wjtvPzp0
昼間の事件がお芝居か否かについては宿に戻ってからも追求が続いた。
しかし古泉は否定も肯定もせず、のらりくらりと追及をかわす。
根負けしたハルヒは自分の部屋に入って不貞寝してしまった。
キョン「今回は妙に意地を張るんだな ハッキリ言っちまえばいいと思うが」
古泉「もし本当にお芝居なら安心して白状できるんですが…」
キョン「芝居じゃないって言うのか?」
古泉「残念ながらその通りです」
古泉「僕だって好き好んでブルース・ウイリスを演じたわけではありません」
キョン「にわかには信じがたい話だな 長門はどう思う?」
長門「彼の言うことは本当 あれは芝居ではない」
長門「現にこの建物は包囲されている」
キョン「なんだって!? 包囲?」
長門「全身を特殊装甲で覆った人間が十二名 ここを取り囲んでいる」
古泉「そいつらは暗殺のプロですね」
長門「すでに建物の周囲は私の制御下にあるので危険はない」
長門「制御空間に侵入した者から順次 凍結状態に入る」
古泉「やつらの狙いは恐らくこの指輪でしょう」
キョン「やれやれだぜ全く… で、どーすんだ? これから」
古泉「外の連中をやり過ごしたとしても 次から次へと追っ手が現れるでしょう」
古泉「何しろちっぽけな国です 日本人の四人連れなんて目立ってしょうがない」
古泉「さっさと指輪を返して日本に帰るのが一番いいのでしょうが…」
キョン「問題はハルヒか」
古泉「彼女の性格からして、正直に理由を話したら―」
古泉「かえって指輪を握り締めたままこの国に居座ってしまうでしょう」
キョン「そしてハルヒがそう願うかぎり俺たちはこの国を出られない…か」
古泉「困ったものです」
しかし古泉は否定も肯定もせず、のらりくらりと追及をかわす。
根負けしたハルヒは自分の部屋に入って不貞寝してしまった。
キョン「今回は妙に意地を張るんだな ハッキリ言っちまえばいいと思うが」
古泉「もし本当にお芝居なら安心して白状できるんですが…」
キョン「芝居じゃないって言うのか?」
古泉「残念ながらその通りです」
古泉「僕だって好き好んでブルース・ウイリスを演じたわけではありません」
キョン「にわかには信じがたい話だな 長門はどう思う?」
長門「彼の言うことは本当 あれは芝居ではない」
長門「現にこの建物は包囲されている」
キョン「なんだって!? 包囲?」
長門「全身を特殊装甲で覆った人間が十二名 ここを取り囲んでいる」
古泉「そいつらは暗殺のプロですね」
長門「すでに建物の周囲は私の制御下にあるので危険はない」
長門「制御空間に侵入した者から順次 凍結状態に入る」
古泉「やつらの狙いは恐らくこの指輪でしょう」
キョン「やれやれだぜ全く… で、どーすんだ? これから」
古泉「外の連中をやり過ごしたとしても 次から次へと追っ手が現れるでしょう」
古泉「何しろちっぽけな国です 日本人の四人連れなんて目立ってしょうがない」
古泉「さっさと指輪を返して日本に帰るのが一番いいのでしょうが…」
キョン「問題はハルヒか」
古泉「彼女の性格からして、正直に理由を話したら―」
古泉「かえって指輪を握り締めたままこの国に居座ってしまうでしょう」
キョン「そしてハルヒがそう願うかぎり俺たちはこの国を出られない…か」
古泉「困ったものです」
17: 2012/02/06(月) 23:41:28.22 ID:+wjtvPzp0
長門「…十二名全員の凍結が完了した」
キョンと古泉はカーテンを開けて外を覗いた。
黒ずくめの男達が突入寸前の状態で固まっていた。
古泉「黒いタイツに黒マスク、そして鉄の爪ですか 前時代的ですね」
キョン「なあ古泉 いっそ全部お芝居ってことで押し切ってみたらどうだ?」
古泉「?」
キョン「おまえのお芝居を本物と思わせるのがいつものパターンだったが―」
キョン「今回は逆だ 本物の襲撃をお芝居と思わせる」
キョン「そうやってハルヒを誤魔化しつつ おまえは隙を見て指輪を返しにいく」
古泉「果たしてそう上手くいきますかね」
キョン「いかせるさ それにおまえだってもう一度お姫様に会いたかろう」
古泉「はて 何の話ですか」
キョン「この期に及んでとぼけなさんな バレバレなんだよ」
キョン「まあその話は置いといて とりあえず外の連中をどうするかだな」
古泉「やつらには襲撃を実行してもらった方がいいでしょう」
古泉「僕たちが涼宮さんの前で芝居気たっぷりに撃退して見せるんです」
キョン「しかし暗殺のプロ相手にそんな芸当ができるかなあ」
キョン「長門 何かいいアイディアはあるか?」
長門「神経伝達を加速させるナノマシンをあなたたちに注入する」
長門「それによって あなたたちは常人を遥かに超える運動能力を獲得する」
長門「しかる後に外の十二名の凍結を解除」
長門「我々は涼宮ハルヒを守りつつ車に移動 ここを脱出する」
キョン「他に方法はなさそうだ それでいくか」
長門「ただし肉体に過度の負担をかけるのでナノマシンの使用は十五分が限度」
古泉「それだけあれば充分です」
キョンと古泉はカーテンを開けて外を覗いた。
黒ずくめの男達が突入寸前の状態で固まっていた。
古泉「黒いタイツに黒マスク、そして鉄の爪ですか 前時代的ですね」
キョン「なあ古泉 いっそ全部お芝居ってことで押し切ってみたらどうだ?」
古泉「?」
キョン「おまえのお芝居を本物と思わせるのがいつものパターンだったが―」
キョン「今回は逆だ 本物の襲撃をお芝居と思わせる」
キョン「そうやってハルヒを誤魔化しつつ おまえは隙を見て指輪を返しにいく」
古泉「果たしてそう上手くいきますかね」
キョン「いかせるさ それにおまえだってもう一度お姫様に会いたかろう」
古泉「はて 何の話ですか」
キョン「この期に及んでとぼけなさんな バレバレなんだよ」
キョン「まあその話は置いといて とりあえず外の連中をどうするかだな」
古泉「やつらには襲撃を実行してもらった方がいいでしょう」
古泉「僕たちが涼宮さんの前で芝居気たっぷりに撃退して見せるんです」
キョン「しかし暗殺のプロ相手にそんな芸当ができるかなあ」
キョン「長門 何かいいアイディアはあるか?」
長門「神経伝達を加速させるナノマシンをあなたたちに注入する」
長門「それによって あなたたちは常人を遥かに超える運動能力を獲得する」
長門「しかる後に外の十二名の凍結を解除」
長門「我々は涼宮ハルヒを守りつつ車に移動 ここを脱出する」
キョン「他に方法はなさそうだ それでいくか」
長門「ただし肉体に過度の負担をかけるのでナノマシンの使用は十五分が限度」
古泉「それだけあれば充分です」
18: 2012/02/06(月) 23:46:17.04 ID:+wjtvPzp0
キョンがおもむろにハルヒの部屋に飛び込んできた。
キョン「わあーっ 団体サマのお着きだ(棒読み)」
その言葉を合図にしたかのように暗殺者が窓を割って飛び込んでくる。
キョンは手に持った金棒を思い切り侵入者に叩きつけた。
侵入者は派手に吹き飛び、入ってきた窓をぬけて地面に落下した。
ハルヒ「へっ…一体なにごと?」
キョンはハルヒを抱えて部屋を飛び出した。
廊下では古泉が斧で暗殺者達をなぎ払っている。
金棒を抱えたキョンがそれに加勢した。二人は徐々に押し出して血路を開く。
しんがりを勤めるのは長門だ。
二刀流に構えた剣を巧みに操り、追いすがる敵を次々と倒す。
ハルヒ「ハハーン これも推理劇の一環って訳ね ご苦労様だこと」
表に停めてあったフィアットに乗り込む四人。
古泉の運転で急発進させるが二名の暗殺者が車体に取り付いた。
それを壁にこすりつけて振り落とす。
ハルヒ「あはははは よくやるわね」
キョン「ヒェーッ びっくらこいたぜ(棒読み)」
古泉「本格的に攻めてきやがった この事件 ウラは深いぜ(棒読み)」
長門「面白くなってきやがった(棒読み)」
ハルヒ「もう分かったから!」
キョン「わあーっ 団体サマのお着きだ(棒読み)」
その言葉を合図にしたかのように暗殺者が窓を割って飛び込んでくる。
キョンは手に持った金棒を思い切り侵入者に叩きつけた。
侵入者は派手に吹き飛び、入ってきた窓をぬけて地面に落下した。
ハルヒ「へっ…一体なにごと?」
キョンはハルヒを抱えて部屋を飛び出した。
廊下では古泉が斧で暗殺者達をなぎ払っている。
金棒を抱えたキョンがそれに加勢した。二人は徐々に押し出して血路を開く。
しんがりを勤めるのは長門だ。
二刀流に構えた剣を巧みに操り、追いすがる敵を次々と倒す。
ハルヒ「ハハーン これも推理劇の一環って訳ね ご苦労様だこと」
表に停めてあったフィアットに乗り込む四人。
古泉の運転で急発進させるが二名の暗殺者が車体に取り付いた。
それを壁にこすりつけて振り落とす。
ハルヒ「あはははは よくやるわね」
キョン「ヒェーッ びっくらこいたぜ(棒読み)」
古泉「本格的に攻めてきやがった この事件 ウラは深いぜ(棒読み)」
長門「面白くなってきやがった(棒読み)」
ハルヒ「もう分かったから!」
19: 2012/02/06(月) 23:51:46.98 ID:+wjtvPzp0
一方カリオストロ城ではアダルト朝比奈みくるが何やら嗅ぎまわってた。
城内に張りめぐらされた隠し通路を勝手知ったる様子で移動する。
地下深くに下りた朝比奈さんは覗き穴を使って中の様子を伺う。
そこは秘密のニセ札工場だった。伯爵が出来栄えをチェックしている。
伯爵「いい出来ではないな このところ 質が落ちていくばかりではないか」
工場長「申し訳ありません しかし今のような大量生産を続けては…」
伯爵「やり直せ! 納期も遅らせてはならん」
こちらを伺う者の気配に気付いた伯爵。
伯爵「誰だ?」
ジョドー「このジョドー 一生の不覚です ネズミめをとり逃がしました」
ジョドーは伯爵直属の暗殺機関「カゲ」のリーダーでもあった。
伯爵「ウン? ジョドー その背中の紙は何だ?」
ジョドー「あっ こ…これは!? いつの間に!」
伯爵「読め」
ジョドー「ハ ハイ いや しかし…」
伯爵「かまわん」
ジョドー「“色と欲の伯爵どの 花嫁は頂きます…”“近日参上 SOS団”」
伯爵「フフフ… よかったな ジョドー」
ジョドー「ハッ?」
伯爵「待とうではないか SOS団とやらが来るのを」
その様子を覗いてたアダルト朝比奈みくるはニヤリと笑った。
みくる(大)(ごめんなさいジョドーさん その紙は私が貼ったの)
みくる(大)(あなたがこの城に逃げ帰ってきたときに こっそりとね)
城内に張りめぐらされた隠し通路を勝手知ったる様子で移動する。
地下深くに下りた朝比奈さんは覗き穴を使って中の様子を伺う。
そこは秘密のニセ札工場だった。伯爵が出来栄えをチェックしている。
伯爵「いい出来ではないな このところ 質が落ちていくばかりではないか」
工場長「申し訳ありません しかし今のような大量生産を続けては…」
伯爵「やり直せ! 納期も遅らせてはならん」
こちらを伺う者の気配に気付いた伯爵。
伯爵「誰だ?」
ジョドー「このジョドー 一生の不覚です ネズミめをとり逃がしました」
ジョドーは伯爵直属の暗殺機関「カゲ」のリーダーでもあった。
伯爵「ウン? ジョドー その背中の紙は何だ?」
ジョドー「あっ こ…これは!? いつの間に!」
伯爵「読め」
ジョドー「ハ ハイ いや しかし…」
伯爵「かまわん」
ジョドー「“色と欲の伯爵どの 花嫁は頂きます…”“近日参上 SOS団”」
伯爵「フフフ… よかったな ジョドー」
ジョドー「ハッ?」
伯爵「待とうではないか SOS団とやらが来るのを」
その様子を覗いてたアダルト朝比奈みくるはニヤリと笑った。
みくる(大)(ごめんなさいジョドーさん その紙は私が貼ったの)
みくる(大)(あなたがこの城に逃げ帰ってきたときに こっそりとね)
20: 2012/02/06(月) 23:56:25.14 ID:+wjtvPzp0
夜が明けた。
しのつく雨の中、わらを積んだ荷馬車がゆっくり進んでいた。
荷台には二人の旅行者が便乗している。
メイド服の女性と執事の格好をした初老の男性…森さんと新川さんである。
荷馬車を降りた二人は廃墟となっている大公の館に入っていった。
館の奥では窓際に陣取った古泉がカリオストロ城を監視していた。
古泉「やあ 早かったですね 」
森「涼宮さんたちは安全な場所にかくまったわ」
新川「ここは交代しますから あなたも移動してください」
古泉「今回は申し訳ありません 僕の尻拭いにつき合わせてしまって」
新川「とんでもない! 嫌々やってるとは思われては心外ですな」
古泉「でも今回の合宿を企画したのは新川さんです」
古泉「あんなに張り切って準備してたのに、こう早々と予定変更になるとは」
新川「その点は少々残念でもありますが これも涼宮さんのためです」
新川「私のつまらないプランを面白くしてくれて、むしろ感謝したいくらいです」
古泉「そう言ってくれると助かります」
新川は古泉と場所を交代して窓際の望遠鏡をのぞく。
新川「これは… まずい事になりましたよ 覗いてみてください」
森「ああっ 橘京子」
望遠鏡にはトラックに乗って城内に入る敵対組織の幹部にして古泉のライバル―
橘京子の姿が写っていた。
トラックには橘警備保障とペイントされている。組織のダミー会社である。
中庭に入ったトラックから橘と部下達がゾロゾロと下りてきた。
古泉「おかしいですね まるで僕が潜入するのを予測したみたいに…」
森「ともあれ、これで役者が揃ったってわけね」
しのつく雨の中、わらを積んだ荷馬車がゆっくり進んでいた。
荷台には二人の旅行者が便乗している。
メイド服の女性と執事の格好をした初老の男性…森さんと新川さんである。
荷馬車を降りた二人は廃墟となっている大公の館に入っていった。
館の奥では窓際に陣取った古泉がカリオストロ城を監視していた。
古泉「やあ 早かったですね 」
森「涼宮さんたちは安全な場所にかくまったわ」
新川「ここは交代しますから あなたも移動してください」
古泉「今回は申し訳ありません 僕の尻拭いにつき合わせてしまって」
新川「とんでもない! 嫌々やってるとは思われては心外ですな」
古泉「でも今回の合宿を企画したのは新川さんです」
古泉「あんなに張り切って準備してたのに、こう早々と予定変更になるとは」
新川「その点は少々残念でもありますが これも涼宮さんのためです」
新川「私のつまらないプランを面白くしてくれて、むしろ感謝したいくらいです」
古泉「そう言ってくれると助かります」
新川は古泉と場所を交代して窓際の望遠鏡をのぞく。
新川「これは… まずい事になりましたよ 覗いてみてください」
森「ああっ 橘京子」
望遠鏡にはトラックに乗って城内に入る敵対組織の幹部にして古泉のライバル―
橘京子の姿が写っていた。
トラックには橘警備保障とペイントされている。組織のダミー会社である。
中庭に入ったトラックから橘と部下達がゾロゾロと下りてきた。
古泉「おかしいですね まるで僕が潜入するのを予測したみたいに…」
森「ともあれ、これで役者が揃ったってわけね」
21: 2012/02/07(火) 00:02:59.55 ID:JmHaV/C50
伯爵は朝食を取っていた。ゆで卵の黄身だけを器用にすくい取って食べる。
橘「お食事中に失礼します! 組織の橘です」
橘「SOS団の予告状が届けられたとの報告があって参りました」
伯爵「ああ 願望実現能力があるとかという 小娘のことか」
伯爵「組織はそんなことで人の朝食をさわがすのかね」
橘「閣下! 涼宮ハルヒを侮ってはなりません」
橘「来ると言えば彼女は必ず来るのです」
橘「御婚礼まであと3日 ぜひ私どもに城内を警備させて下さい」
伯爵「この国にも警察があってね もっとも より優雅に衛士と呼んでいるがね」
伯爵は卓上のベルを取って鳴らした。
グスタフ「お呼びですか」
伯爵「グスタフ その日本人に協力してあげなさい 下がってよし」
グスタフ「ハイッ!」
橘「閣下 今ひとつ! SOS団が花嫁を狙う理由は言うまでもないですが」
橘「なぜ我々の計画が漏れたのか、心当たりはございませんか?」
伯爵「さあ? それを調べるのも君の仕事じゃないのかね?」
橘「失礼しました!」
伯爵「待ちたまえ 本当に涼宮ハルヒに願望実現能力があるのなら」
伯爵「いくら警備しても無駄という事にならないかね」
橘「彼女は自分の能力を自覚してません 普通の人間だと思いこんでるのです」
橘「だから普通人の常識から見て無理だと思わせれば彼女は必ず失敗するのです」
衛士長のグスタフに連れられた橘が食堂から退出した。
ジョドー「よろしいのですか あのような者を城内に入れましては…」
伯爵「かまわん あの女が持ちかけた計画には私も興味がある」
橘「お食事中に失礼します! 組織の橘です」
橘「SOS団の予告状が届けられたとの報告があって参りました」
伯爵「ああ 願望実現能力があるとかという 小娘のことか」
伯爵「組織はそんなことで人の朝食をさわがすのかね」
橘「閣下! 涼宮ハルヒを侮ってはなりません」
橘「来ると言えば彼女は必ず来るのです」
橘「御婚礼まであと3日 ぜひ私どもに城内を警備させて下さい」
伯爵「この国にも警察があってね もっとも より優雅に衛士と呼んでいるがね」
伯爵は卓上のベルを取って鳴らした。
グスタフ「お呼びですか」
伯爵「グスタフ その日本人に協力してあげなさい 下がってよし」
グスタフ「ハイッ!」
橘「閣下 今ひとつ! SOS団が花嫁を狙う理由は言うまでもないですが」
橘「なぜ我々の計画が漏れたのか、心当たりはございませんか?」
伯爵「さあ? それを調べるのも君の仕事じゃないのかね?」
橘「失礼しました!」
伯爵「待ちたまえ 本当に涼宮ハルヒに願望実現能力があるのなら」
伯爵「いくら警備しても無駄という事にならないかね」
橘「彼女は自分の能力を自覚してません 普通の人間だと思いこんでるのです」
橘「だから普通人の常識から見て無理だと思わせれば彼女は必ず失敗するのです」
衛士長のグスタフに連れられた橘が食堂から退出した。
ジョドー「よろしいのですか あのような者を城内に入れましては…」
伯爵「かまわん あの女が持ちかけた計画には私も興味がある」
22: 2012/02/07(火) 00:08:23.27 ID:JmHaV/C50
望遠鏡を覗いていた森さんは中庭をゾロゾロと歩く集団を発見した。
森「橘京子だわ さすが就職氷河期世代 仕事熱心だこと」
中庭で橘と部下達はグスタフの案内で視察を行なっていた。
橘は対岸の古城に不審な影を発見した。
橘「何です あれは?」
グスタフ「それ以上進むな」
橘「えっ」
グスタフ「見ろ」
グスタフは煙草を一本取り出すと空中にゆっくり突き出した。
レーザーが発射され、煙草に火がついた。それを橘の口に突っ込む。
グスタフ「氏にたくなければウロチョロせんことだ」
グスタフ「部下にもそう伝えろ」
捨て台詞を残してグスタフは去っていった。
部下「橘さん 対人レーダーの反応もあります」
橘「いけ好かない城ね 素人にしては阻止装置が大げさすぎよ」
橘は煙草をプッと吐き出す。煙草はレーザーに焼かれて跡形もなく消えた。
森「橘京子だわ さすが就職氷河期世代 仕事熱心だこと」
中庭で橘と部下達はグスタフの案内で視察を行なっていた。
橘は対岸の古城に不審な影を発見した。
橘「何です あれは?」
グスタフ「それ以上進むな」
橘「えっ」
グスタフ「見ろ」
グスタフは煙草を一本取り出すと空中にゆっくり突き出した。
レーザーが発射され、煙草に火がついた。それを橘の口に突っ込む。
グスタフ「氏にたくなければウロチョロせんことだ」
グスタフ「部下にもそう伝えろ」
捨て台詞を残してグスタフは去っていった。
部下「橘さん 対人レーダーの反応もあります」
橘「いけ好かない城ね 素人にしては阻止装置が大げさすぎよ」
橘は煙草をプッと吐き出す。煙草はレーザーに焼かれて跡形もなく消えた。
23: 2012/02/07(火) 00:14:52.41 ID:JmHaV/C50
その様子を見た森は古泉の方を振り返った。
森「ぐずぐず出来ないわ 侵入路は見つかったの?」
古泉「いや すごいもんです レーザーとレーダーの巣ですよ」
森「そう 戦車がいるわね…」
新川「その上、橘京子ですからね」
古泉「彼女が裏で動いている事は分かってました」
古泉「こういう事態は予測できたはずなのに…僕のミスです」
新川「予測できなかったのは私たちも同じです」
森「毒を持って毒を制すと言うわ 彼女を利用できないかしら」
古泉「それについては後で考えましょう とりあえず進入路です」
古泉「実は思いついた事があるんです」
古泉は床に地図を広げた。
古泉「ここがカリオストロの城 僕たちはここ」
古泉「このローマ水道は今も生きています 侵入路はこれしかありません」
古泉「ローマの水道で こっちの湖から 城内まで水を引いているんです」
森「なるほど 水の中なら レーザーもないってわけね」
森「いいわ 準備しとくから みんなが寝静まったらここに来て」
森「ぐずぐず出来ないわ 侵入路は見つかったの?」
古泉「いや すごいもんです レーザーとレーダーの巣ですよ」
森「そう 戦車がいるわね…」
新川「その上、橘京子ですからね」
古泉「彼女が裏で動いている事は分かってました」
古泉「こういう事態は予測できたはずなのに…僕のミスです」
新川「予測できなかったのは私たちも同じです」
森「毒を持って毒を制すと言うわ 彼女を利用できないかしら」
古泉「それについては後で考えましょう とりあえず進入路です」
古泉「実は思いついた事があるんです」
古泉は床に地図を広げた。
古泉「ここがカリオストロの城 僕たちはここ」
古泉「このローマ水道は今も生きています 侵入路はこれしかありません」
古泉「ローマの水道で こっちの湖から 城内まで水を引いているんです」
森「なるほど 水の中なら レーザーもないってわけね」
森「いいわ 準備しとくから みんなが寝静まったらここに来て」
24: 2012/02/07(火) 00:19:20.19 ID:JmHaV/C50
SOS団は街の中心部にあるホテルのスイートルームに潜伏していた。
古泉の親戚である富豪の田丸氏が偶然にもこの国に来ていた。
そこで頼み込んで部屋を隠れ家として使わせてもらう事にしたのだ。
とハルヒには説明した。
そのハルヒは昼間からずっと寝室にこもったままだ。
ゴート文字の解説書やカリオストロ公国史などを机に積み上げている。
指輪の謎を解くまで意地でも部屋から出ないそうである。
ハルヒを除く三人は居間でルーム・サービスの夕食をとっていた。
古泉「丁度いい機会です 少し話したい事があります」
キョン「これ以上やっかいな話をするつもりなら俺は耳をふさぐぞ」
古泉「まあそう言わずに …橘京子を覚えてますか?」
キョン「忘れるもんか あいつには何度もひどい目に会ったからな」
古泉「最近になって彼女がまた活動を開始したんです」
古泉「数ヶ月前からカリオストロ伯爵としばしば会談を行なってます」
キョン「ちょっと待て 橘もこの国にからんでいるのか?」
古泉「実は今回の合宿はその調査もかねていたんです」
キョン「そんな事は機関だけでやってくれよ 何で俺たちを巻き込むんだ」
古泉「すいません こちらにも色々事情がありまして」
古泉「ちなみにこの部屋は元々、機関の拠点として使っていた場所です」
キョン「しかし妙だな 例の佐々木の一件ならもう片がついてるはずだろ」
古泉「今回は橘さんの単独行動です」
古泉「彼女はいまやSOS団を潰す事が生きがいになってます」
古泉「機関の調査によると佐々木さんに頼らなくても―」
古泉「涼宮さんの力を無効化できる方法を見つけたらしいのです」
キョン「その方法とやらが伯爵と何か関係があるのか」
古泉「分かりません しかし偶然にも橘さんはいまカリオストロ城にいます」
古泉「指輪を返すついでにちょっと彼女に接触してみようと思います」
古泉の親戚である富豪の田丸氏が偶然にもこの国に来ていた。
そこで頼み込んで部屋を隠れ家として使わせてもらう事にしたのだ。
とハルヒには説明した。
そのハルヒは昼間からずっと寝室にこもったままだ。
ゴート文字の解説書やカリオストロ公国史などを机に積み上げている。
指輪の謎を解くまで意地でも部屋から出ないそうである。
ハルヒを除く三人は居間でルーム・サービスの夕食をとっていた。
古泉「丁度いい機会です 少し話したい事があります」
キョン「これ以上やっかいな話をするつもりなら俺は耳をふさぐぞ」
古泉「まあそう言わずに …橘京子を覚えてますか?」
キョン「忘れるもんか あいつには何度もひどい目に会ったからな」
古泉「最近になって彼女がまた活動を開始したんです」
古泉「数ヶ月前からカリオストロ伯爵としばしば会談を行なってます」
キョン「ちょっと待て 橘もこの国にからんでいるのか?」
古泉「実は今回の合宿はその調査もかねていたんです」
キョン「そんな事は機関だけでやってくれよ 何で俺たちを巻き込むんだ」
古泉「すいません こちらにも色々事情がありまして」
古泉「ちなみにこの部屋は元々、機関の拠点として使っていた場所です」
キョン「しかし妙だな 例の佐々木の一件ならもう片がついてるはずだろ」
古泉「今回は橘さんの単独行動です」
古泉「彼女はいまやSOS団を潰す事が生きがいになってます」
古泉「機関の調査によると佐々木さんに頼らなくても―」
古泉「涼宮さんの力を無効化できる方法を見つけたらしいのです」
キョン「その方法とやらが伯爵と何か関係があるのか」
古泉「分かりません しかし偶然にも橘さんはいまカリオストロ城にいます」
古泉「指輪を返すついでにちょっと彼女に接触してみようと思います」
25: 2012/02/07(火) 00:26:38.96 ID:JmHaV/C50
突然、寝室からハルヒが飛び出してきた。
ハルヒ「解けたわ! 指輪の謎が!」
古泉「本当ですか!?」
ハルヒ「この指輪にはやっぱり財宝のありかが記してあるのよ」
ハルヒ「見て これは大公家の紋章よね この国の光を象徴してるの」
ハルヒ「そして光の紋章と対になる影の紋章がこの国にはあるはずなのよ」
ハルヒ「ほら指輪の縁のところに文字みたいなのが彫られてるでしょ」
ハルヒ「影の紋章をかたどったもう一つの指輪と合わせる事で」
ハルヒ「秘められたメッセージが浮かび上がるという仕掛けなの」
ハルヒ「それが“光と影 再び一つとなりて甦らん”の意味ってわけ」
キョン「なんて奴だ 本当にラングドン教授みたいじゃないか」
ハルヒ「この超人的天才的名探偵涼宮ハルヒ様にかかればお茶の子さいさいよ」
ハルヒ「それで指輪の縁にある模様を書き写してみたんだけど」
ハルヒは細長いリボン状の紙をテーブルに広げた。
ハルヒ「有希 なんて書いてあるか分かる?」
長門「文字列の半分しか判明していない このままでは解読不可能」
ハルヒ「というわけで古泉君 もう一つの指輪を持ってきてちょうだい」
古泉「そう言われても、どこを捜せばいいやら…」
ハルヒ「そんなの、お姫様の結婚相手の伯爵が持ってるに決まってるでしょ」
ハルヒ「団長命令よ 明日の朝食までに持ってくること いいわね」
古泉「困りましたね… こちらにも予定というものが」
ハルヒ「もう! いちいち古泉君のシナリオに従ってたら日が暮れちゃう」
キョン「無茶言うなよハルヒ そんなの無理に決まってるだろ」
古泉「分かりました 何とか用意してみましょう」
キョン「おい 良いのかよ 古泉」
古泉「団長命令とあらば仕方ありません」
ハルヒ「解けたわ! 指輪の謎が!」
古泉「本当ですか!?」
ハルヒ「この指輪にはやっぱり財宝のありかが記してあるのよ」
ハルヒ「見て これは大公家の紋章よね この国の光を象徴してるの」
ハルヒ「そして光の紋章と対になる影の紋章がこの国にはあるはずなのよ」
ハルヒ「ほら指輪の縁のところに文字みたいなのが彫られてるでしょ」
ハルヒ「影の紋章をかたどったもう一つの指輪と合わせる事で」
ハルヒ「秘められたメッセージが浮かび上がるという仕掛けなの」
ハルヒ「それが“光と影 再び一つとなりて甦らん”の意味ってわけ」
キョン「なんて奴だ 本当にラングドン教授みたいじゃないか」
ハルヒ「この超人的天才的名探偵涼宮ハルヒ様にかかればお茶の子さいさいよ」
ハルヒ「それで指輪の縁にある模様を書き写してみたんだけど」
ハルヒは細長いリボン状の紙をテーブルに広げた。
ハルヒ「有希 なんて書いてあるか分かる?」
長門「文字列の半分しか判明していない このままでは解読不可能」
ハルヒ「というわけで古泉君 もう一つの指輪を持ってきてちょうだい」
古泉「そう言われても、どこを捜せばいいやら…」
ハルヒ「そんなの、お姫様の結婚相手の伯爵が持ってるに決まってるでしょ」
ハルヒ「団長命令よ 明日の朝食までに持ってくること いいわね」
古泉「困りましたね… こちらにも予定というものが」
ハルヒ「もう! いちいち古泉君のシナリオに従ってたら日が暮れちゃう」
キョン「無茶言うなよハルヒ そんなの無理に決まってるだろ」
古泉「分かりました 何とか用意してみましょう」
キョン「おい 良いのかよ 古泉」
古泉「団長命令とあらば仕方ありません」
34: 2012/02/07(火) 22:40:40.73 ID:JmHaV/C50
深夜、大公の館の庭先にあるローマ水道の入り口に三つの影があった。
機関の古泉、森、新川である。
古泉「新川さん 見張りお願いします」
新川「あ、古泉さん ちょっといいですか?」
古泉「どうしました?」
新川「私の研究によればゴート札の秘密がこの城のどこかに隠されてるはずです」
新川「時間があればそれも調べていただけると嬉しいんですが」
古泉「うふっ さすが筋金入りのゴート札マニア」
森「馬鹿なこと言ってないで 出発するわよ」
ウエット・スーツを着た古泉と森は水門の鉄格子を外して中に入った。
森「気をつけて 穴があるわ」
古泉「うわっ 早く言ってください」
中に入っまもなく水路は急激な下り坂になる。
森「第一関門ね」
古泉「いきます」
古泉はアクアラングの弁を咥えると勢いよく坂を滑り降りた。
森もすぐ後に続く。しばらく下りると水路は水平に戻った。
ここからは思いのほか水流が激しくなっていて体勢を維持できない。
あっというまに水路の終点まで押し流されてしまった。
水路が切れた先は滝になっていて何処まで落下するのか予測できない。
危険を感じた森はとっさに壁の継ぎ目に指をかけた。
しかし古泉は手掛かりを掴み損ねてそのまま滝壷に落ちていく。
森「こっ 古泉ーっ!」
思わず水面から顔を出す森。
すかさずセンサーが反応してレーザー照射装置が起動する。
それに気付いた森は再び水に潜る。レーザーは間一髪で森の頭を掠めた。
森はこれ以上の侵入を断念し、もと来た水路を帰っていった。
森(あの先は時計の機関部だわ 古泉 うまくやったかしら…)
35: 2012/02/07(火) 22:45:28.81 ID:JmHaV/C50
橘と部下達は城の中庭でカップヌードルの夜食を食べていた。
ふと風車の不自然な動きが目に止まる。
橘「あの風車は何?」
部下「グスタフ殿の話では 城内へ水を揚げているとのことです」
橘「ム… その水の出口は?」
部下「上の砲台の泉水です」
そう聞くやいなや橘は駆け出した。
ふと風車の不自然な動きが目に止まる。
橘「あの風車は何?」
部下「グスタフ殿の話では 城内へ水を揚げているとのことです」
橘「ム… その水の出口は?」
部下「上の砲台の泉水です」
そう聞くやいなや橘は駆け出した。
36: 2012/02/07(火) 22:54:46.88 ID:JmHaV/C50
泉水の中央にはライオン像があり、その口からくみ上げられた水が流れている。
橘はライオンの口を覗き込んだ。奥は暗くてよく見えない。
もう一歩踏み出すと妙なものを踏んだ。ゴムのような感触である。
足元を見ると脱ぎ捨てられたウエット・スーツだった。
その時、橘の携帯が鳴った。送話者は古泉一樹となっている。
橘「もしもし! 一体どういうつもりですか!」
古泉「良かった 番号は変わってないみたいですね」
橘「こんな大それた事して ただで済むと思ってるの」
古泉「おや? 僕が何をするのか分かってるような口ぶりですね」
橘「とぼけないで下さい! 予告状を送りつけたくせに」
古泉「予告状?」
橘「花嫁を頂くって書いてあったわよ」
古泉「何のことか分かりません 僕は落し物を届けに来ただけですよ」
橘「落し物? どういう事ですか」
古泉「話がかみ合いませんね どこかで大きな行き違いがあるようです」
古泉「しかし花嫁を頂くというのは良いアイディアですね 考えてみましょう」
電話が切れた。
橘「もしもし! もしもし! もうっ! 落し物って何なの?」
橘「とにかく伯爵に知らせなくちゃ!」
橘はライオン像の部屋を出る。物陰から古泉があらわれた。
古泉「申し訳ありませんが 伯爵の所へ案内して頂きますよ」
橘はライオンの口を覗き込んだ。奥は暗くてよく見えない。
もう一歩踏み出すと妙なものを踏んだ。ゴムのような感触である。
足元を見ると脱ぎ捨てられたウエット・スーツだった。
その時、橘の携帯が鳴った。送話者は古泉一樹となっている。
橘「もしもし! 一体どういうつもりですか!」
古泉「良かった 番号は変わってないみたいですね」
橘「こんな大それた事して ただで済むと思ってるの」
古泉「おや? 僕が何をするのか分かってるような口ぶりですね」
橘「とぼけないで下さい! 予告状を送りつけたくせに」
古泉「予告状?」
橘「花嫁を頂くって書いてあったわよ」
古泉「何のことか分かりません 僕は落し物を届けに来ただけですよ」
橘「落し物? どういう事ですか」
古泉「話がかみ合いませんね どこかで大きな行き違いがあるようです」
古泉「しかし花嫁を頂くというのは良いアイディアですね 考えてみましょう」
電話が切れた。
橘「もしもし! もしもし! もうっ! 落し物って何なの?」
橘「とにかく伯爵に知らせなくちゃ!」
橘はライオン像の部屋を出る。物陰から古泉があらわれた。
古泉「申し訳ありませんが 伯爵の所へ案内して頂きますよ」
38: 2012/02/07(火) 23:02:15.09 ID:JmHaV/C50
橘は伯爵の居住区画の入り口にやってきた。
しかし入り口を固めている衛士に止められてしまう。
橘「大至急 伯爵に会わせて」
橘「聞こえないのですか! 通しなさい!」
奥からグスタフが現れた。
グスタフ「やめろ ここから先は信用ある者しか入れんのだ」
橘「なんですって! この橘京子が信用できないと言うのですか!」
グスタフ「そう喚くな 取り次がないとは言ってないだろ」
グスタフ「セキュリティ上ここからは入れない 用があるなら表にまわれ」
橘「そう わかりました ひとまず表にまわるわ」
橘が去って数秒後に古泉が駆け込んできた。
グスタフ「誰だおまえは」
古泉「橘さんの部下です 今 ここに橘さんが来ませんでした?」
グスタフ「ああ」
古泉「バカじゃないですか そいつは涼宮ハルヒです!」
グスタフ「何だと?」
古泉「橘さんに化けて もぐり込んだんですよ」
古泉「でっかい図体して変装も見破れないんですか! 穀潰し!」
グスタフ「くそっ つづけーっ!」
古泉「涼宮を逃がすなーっ!」
古泉はグスタフをやり過ごして中に入ろうとするが、
衛士たち「イヤァーッ!」
雪崩のように押し寄せてきた衛士たちに流され、橘の方に追いやられる。
しかし入り口を固めている衛士に止められてしまう。
橘「大至急 伯爵に会わせて」
橘「聞こえないのですか! 通しなさい!」
奥からグスタフが現れた。
グスタフ「やめろ ここから先は信用ある者しか入れんのだ」
橘「なんですって! この橘京子が信用できないと言うのですか!」
グスタフ「そう喚くな 取り次がないとは言ってないだろ」
グスタフ「セキュリティ上ここからは入れない 用があるなら表にまわれ」
橘「そう わかりました ひとまず表にまわるわ」
橘が去って数秒後に古泉が駆け込んできた。
グスタフ「誰だおまえは」
古泉「橘さんの部下です 今 ここに橘さんが来ませんでした?」
グスタフ「ああ」
古泉「バカじゃないですか そいつは涼宮ハルヒです!」
グスタフ「何だと?」
古泉「橘さんに化けて もぐり込んだんですよ」
古泉「でっかい図体して変装も見破れないんですか! 穀潰し!」
グスタフ「くそっ つづけーっ!」
古泉「涼宮を逃がすなーっ!」
古泉はグスタフをやり過ごして中に入ろうとするが、
衛士たち「イヤァーッ!」
雪崩のように押し寄せてきた衛士たちに流され、橘の方に追いやられる。
39: 2012/02/07(火) 23:07:16.41 ID:JmHaV/C50
グスタフ「待てーっ! 涼宮ーッ!」
橘「涼宮?」
振り返った橘は押し寄せてくる衛士たちの中に古泉の姿を見た。
橘「あれは! 古泉さん!」
部下「橘さんを助けろ! かかれ!」
部下たち「うわーっ」
衛士たちと橘の部下たちの大乱闘が始まった。
古泉「いやー すごい すごいです!」
乱闘を抜け出した古泉は伯爵の居住区に向かう。
橘はもみくちゃにされながらもその様子を見ていた。
橘「やめなさい! あいつは古泉一樹よ!」
橘は床を這って何とか乱闘を抜け出した。
40: 2012/02/07(火) 23:12:17.12 ID:JmHaV/C50
古泉は通路の突き当たりにある扉を開けた。目の前に石膏像が置いてある。
どこか違和感を感じて中に入るのをためらっていると、
橘「古泉さーん!」
ものすごい勢いで橘が追いかけてきた。
勢いに押されて一歩踏み出してしまった古泉の足元がパカッと割れた。
古泉「ああっ!?」
全力疾走してきた橘も急に止まれず、古泉にぶつかった。
橘「ああっ あっ…あっ…」
そのまま二人は底が見えないほど深い落とし穴に落ちてしまった。
二人「あ… ああーっ!」
古泉たちが落下していった先は巨大な地下牢だった。
牢の中央には長い年月をかけて作られたと思しき水溜りがあった。
水溜りといってもちょっとしたプールぐらいの広さはある。
二人は運よくそこに落ちた。水深はかなり深い。
古泉「ぶはっ! 人を排泄物扱いして!」
橘「フン とうとう捕まえたわよ 神妙にしなさい!」
どこか違和感を感じて中に入るのをためらっていると、
橘「古泉さーん!」
ものすごい勢いで橘が追いかけてきた。
勢いに押されて一歩踏み出してしまった古泉の足元がパカッと割れた。
古泉「ああっ!?」
全力疾走してきた橘も急に止まれず、古泉にぶつかった。
橘「ああっ あっ…あっ…」
そのまま二人は底が見えないほど深い落とし穴に落ちてしまった。
二人「あ… ああーっ!」
古泉たちが落下していった先は巨大な地下牢だった。
牢の中央には長い年月をかけて作られたと思しき水溜りがあった。
水溜りといってもちょっとしたプールぐらいの広さはある。
二人は運よくそこに落ちた。水深はかなり深い。
古泉「ぶはっ! 人を排泄物扱いして!」
橘「フン とうとう捕まえたわよ 神妙にしなさい!」
42: 2012/02/07(火) 23:15:42.92 ID:JmHaV/C50
廊下の奥から伯爵の召使いとジョドーがやってきた。
召使い「何か掛かったようですが」
石膏像の口から写真が吐き出された。
まさに穴に落ちようとする古泉と橘の写真だ。
ジョドー「こいつもか バカめ! 大人しくしてればよいものを」
召使い「衛士がいませんが」
ジョドー「グスタフめ! 持ち場を離れおって 何をしておる」
ジョドーは石膏像の首を横に向けた。落とし穴の仕掛けを解除したのだ。
ジョドー「お前はここにいろ」
召使い「ハッ」
なにやら騒がしい声がする。ジョドーは騒ぎの現場に走った。
そこでは橘の部下と衛士隊の乱闘が双方ふらふらになりながらも続いていた。
ジョドー「愚か者め バカ騒ぎをすぐにやめろ!」
ジョドー「わからんのか! まんまとSOS団に乗せられおって」
グスタフ「くそっ!」
ジョドーとグスタフは急いで伯爵の居住区画に戻った。
召使い「何か掛かったようですが」
石膏像の口から写真が吐き出された。
まさに穴に落ちようとする古泉と橘の写真だ。
ジョドー「こいつもか バカめ! 大人しくしてればよいものを」
召使い「衛士がいませんが」
ジョドー「グスタフめ! 持ち場を離れおって 何をしておる」
ジョドーは石膏像の首を横に向けた。落とし穴の仕掛けを解除したのだ。
ジョドー「お前はここにいろ」
召使い「ハッ」
なにやら騒がしい声がする。ジョドーは騒ぎの現場に走った。
そこでは橘の部下と衛士隊の乱闘が双方ふらふらになりながらも続いていた。
ジョドー「愚か者め バカ騒ぎをすぐにやめろ!」
ジョドー「わからんのか! まんまとSOS団に乗せられおって」
グスタフ「くそっ!」
ジョドーとグスタフは急いで伯爵の居住区画に戻った。
43: 2012/02/07(火) 23:19:50.88 ID:JmHaV/C50
写真を見て伯爵は高笑いをした。
伯爵「ハハハハ… SOS団め こんな所まで入り込んでたのか」
ジョドー「面目次第もございません」
伯爵「氏んだか」
ジョドー「たぶん」
伯爵「調べろ」
ジョドー「あそこは生ける者のおもむく所ではありません」
ジョドー「放っておけば必ず氏にます」
伯爵「指輪を奴が握っているかもしれん」
ジョドー「ウッ かしこまりました」
ジョドー「橘のほうはどういたしましょう?」
伯爵「放っておけ」
伯爵「組織へは 彼女は先に帰ったと伝えておけばいい」
伯爵「途中で蒸発することは よくあることだ」
ジョドー「ハッ しかしこれで彼女の計画はおじゃんになりましたね」
伯爵「もともと眉唾ものの計画だ それより指輪の方が重要だ」
伯爵「ハハハハ… SOS団め こんな所まで入り込んでたのか」
ジョドー「面目次第もございません」
伯爵「氏んだか」
ジョドー「たぶん」
伯爵「調べろ」
ジョドー「あそこは生ける者のおもむく所ではありません」
ジョドー「放っておけば必ず氏にます」
伯爵「指輪を奴が握っているかもしれん」
ジョドー「ウッ かしこまりました」
ジョドー「橘のほうはどういたしましょう?」
伯爵「放っておけ」
伯爵「組織へは 彼女は先に帰ったと伝えておけばいい」
伯爵「途中で蒸発することは よくあることだ」
ジョドー「ハッ しかしこれで彼女の計画はおじゃんになりましたね」
伯爵「もともと眉唾ものの計画だ それより指輪の方が重要だ」
44: 2012/02/07(火) 23:25:16.33 ID:JmHaV/C50
北の塔では幽閉されているクラリスが窓辺の椅子に座っていた。
一人 憂鬱に沈んでいる。
崖で出会った不思議な青年の面影がいつまでも脳裏を去らなかった。
ドアが開き伯爵が入ってきた。
伯爵「たった今 ネズミが一匹引っかかった」
落し穴に落ちる古泉の写真を見せる。
伯爵「この男に見覚えはあるか?」
クラリス「アッ…」
伯爵「やはりこいつがお前を助けた男か 残念ながら色男は穴に落ちたよ」
伯爵「フフフ… 一人として這い出た者のない 地獄へ通ずる穴にな」
伯爵は写真を床に落として踏みつけた。そしてクラリスの顎を掴む。
伯爵「可愛い顔をして もう男を引き込んだか」
伯爵「カリオストロの血は争えんな フフフ… わが妻にふさわしい」
クラリス「人頃し! あなたは人間じゃないわ」
伯爵「そうとも… 俺の手は血まみれだ」
伯爵「が お前もそうさ」
伯爵「わが伯爵家は代々 お前たち大公家の影として―」
伯爵「謀略と暗殺を司り 国を支えてきたのだ」
クラリス「放して! 汚らわしい!」
伯爵「それを知らんとは言わさんぞ お前もカリオストロの人間だ」
伯爵「その身体には俺と同じ古いゴートの血が流れている」
伯爵「クラリス 500年の永き年月―」
伯爵「光と影に分かれていた二つのカリオストロ家が―」
伯爵「今 一つになろうとしているんだよ」
伯爵「ごらん わが家に伝わる金の山羊と…」
伯爵「君の! 銀の山羊の指輪が一つに重なる時こそ」
伯爵「秘められた先祖の財宝が甦るのだ」
伯爵「そのためには銀の指輪を見つけなくてはならん それまで大人しくしてろ」
伯爵が部屋を出て行った。
クラリスは床に落ちている写真を拾った。
古泉が写っているその写真をいとおしそうに胸に抱く。
一人 憂鬱に沈んでいる。
崖で出会った不思議な青年の面影がいつまでも脳裏を去らなかった。
ドアが開き伯爵が入ってきた。
伯爵「たった今 ネズミが一匹引っかかった」
落し穴に落ちる古泉の写真を見せる。
伯爵「この男に見覚えはあるか?」
クラリス「アッ…」
伯爵「やはりこいつがお前を助けた男か 残念ながら色男は穴に落ちたよ」
伯爵「フフフ… 一人として這い出た者のない 地獄へ通ずる穴にな」
伯爵は写真を床に落として踏みつけた。そしてクラリスの顎を掴む。
伯爵「可愛い顔をして もう男を引き込んだか」
伯爵「カリオストロの血は争えんな フフフ… わが妻にふさわしい」
クラリス「人頃し! あなたは人間じゃないわ」
伯爵「そうとも… 俺の手は血まみれだ」
伯爵「が お前もそうさ」
伯爵「わが伯爵家は代々 お前たち大公家の影として―」
伯爵「謀略と暗殺を司り 国を支えてきたのだ」
クラリス「放して! 汚らわしい!」
伯爵「それを知らんとは言わさんぞ お前もカリオストロの人間だ」
伯爵「その身体には俺と同じ古いゴートの血が流れている」
伯爵「クラリス 500年の永き年月―」
伯爵「光と影に分かれていた二つのカリオストロ家が―」
伯爵「今 一つになろうとしているんだよ」
伯爵「ごらん わが家に伝わる金の山羊と…」
伯爵「君の! 銀の山羊の指輪が一つに重なる時こそ」
伯爵「秘められた先祖の財宝が甦るのだ」
伯爵「そのためには銀の指輪を見つけなくてはならん それまで大人しくしてろ」
伯爵が部屋を出て行った。
クラリスは床に落ちている写真を拾った。
古泉が写っているその写真をいとおしそうに胸に抱く。
46: 2012/02/07(火) 23:31:13.32 ID:JmHaV/C50
古泉と橘は迷路のように入り組んだ巨大な地下牢を探検していた。
おびただしい数の氏体が所狭しと横たわっている。
古泉「頃しも頃したり 500年分ですか ナンマンダブ ナンマンダブ… ん?」
ふいに橘は立ち止まって肩を震わせた。
橘「教えなさい! 出口はどこですか 隠すとためにならないわよ!」
古泉「僕が知るわけないでしょう」
橘「ううう…」
橘は必氏で涙をこらえているようだった。
古泉「だいぶ 歩きましたからね 肩を貸してあげましょうか」
橘「うるさいですっ 敵の情けは受けないわ!」
古泉「あなたなら佐々木空間に入り込めるはずですが」
古泉「たしか佐々木空間は地球全体を覆ってるんでしたよね」
橘「やるだけ無駄よ 私は古泉さんと違って―」
橘「入れるのは精神だけで、肉体は現実世界にとどまったままなのです」
橘「だから出口が見つからなければ結局ここから出られないのです」
橘「あなたの方こそ閉鎖空間はどうしたの」
古泉「涼宮さんの場合、発生する時間も場所もまちまちですからね」
古泉「それに最近の彼女は非常に精神が安定しています」
古泉「めったなことでは閉鎖空間が発生しないんです」
橘「超能力者が二人も揃っていながら 情けないですね」
古泉「まあ あきらめて寝ますか どうせ出口はないんでしょう」
古泉「ハイ ちょっと失礼しますよ」
古泉は壁際の氏体をどかしてスペースを作り、そこに寝転んだ。
橘もなんとなく古泉の横に座る。
おびただしい数の氏体が所狭しと横たわっている。
古泉「頃しも頃したり 500年分ですか ナンマンダブ ナンマンダブ… ん?」
ふいに橘は立ち止まって肩を震わせた。
橘「教えなさい! 出口はどこですか 隠すとためにならないわよ!」
古泉「僕が知るわけないでしょう」
橘「ううう…」
橘は必氏で涙をこらえているようだった。
古泉「だいぶ 歩きましたからね 肩を貸してあげましょうか」
橘「うるさいですっ 敵の情けは受けないわ!」
古泉「あなたなら佐々木空間に入り込めるはずですが」
古泉「たしか佐々木空間は地球全体を覆ってるんでしたよね」
橘「やるだけ無駄よ 私は古泉さんと違って―」
橘「入れるのは精神だけで、肉体は現実世界にとどまったままなのです」
橘「だから出口が見つからなければ結局ここから出られないのです」
橘「あなたの方こそ閉鎖空間はどうしたの」
古泉「涼宮さんの場合、発生する時間も場所もまちまちですからね」
古泉「それに最近の彼女は非常に精神が安定しています」
古泉「めったなことでは閉鎖空間が発生しないんです」
橘「超能力者が二人も揃っていながら 情けないですね」
古泉「まあ あきらめて寝ますか どうせ出口はないんでしょう」
古泉「ハイ ちょっと失礼しますよ」
古泉は壁際の氏体をどかしてスペースを作り、そこに寝転んだ。
橘もなんとなく古泉の横に座る。
47: 2012/02/07(火) 23:39:09.85 ID:JmHaV/C50
しばらくすると橘も落ち着きを取り戻してきた。
橘「古泉さん この仏の大群は一体何なのです 墓場とは思えないけど…」
古泉「そこの壁 見てください」
橘「ウン? こ これは…」
“1904 3.17 日本國軍偵 河上源之助 ここに果つ 仇”
壁には明治時代に日本から送り込まれた密偵の遺書が彫られていた。
橘「うーん ナンマンダブ ナンマンダブ…」
橘「ただの城じゃないと思ってましたが これ程までにして守る秘密って…」
橘「ねえ 涼宮さんの狙いもそれなの?」
古泉「何度も言ってますが涼宮さんは関係ありません」
古泉「それをやってるのは予告状を出した誰かさんでしょう」
古泉「誰だか知りませんが 仏さまにならなきゃいいんですけどねえ」
古泉「それより僕はあなたの方に興味があるんです」
橘「こ、古泉さん…///」
古泉「あなたの組織はなぜ伯爵にコンタクトを図ったんですか?」
橘「………」
古泉「あなたが活動を再開したと聞いて僕はピンときたんです」
古泉「涼宮さんの力を無効化するにはやはり能力の移植しかありません」
古泉「果たして涼宮さんの能力が移植可能な人間は佐々木さんだけでしょうか」
古泉「ひょっとして新たな候補者が見つかったんじゃないかとね」
古泉「クラリスには閉鎖空間を生み出す力がある… 違いますか?」
橘「!!」
古泉「図星ですね… あなたは伯爵をクラリスの鍵にしようと思ってる」
古泉「でもまわりを見てください 落とし穴の仕掛けを思い出してください」
古泉「大量のレーダーとレーザーは何のためにあるんですか?」
古泉「こんな城の主人がまともな人間だと思いますか?」
橘「………」
古泉「とにかく今はジタバタしても始まりません おやすみなさい 橘さん…」
橘「古泉さん この仏の大群は一体何なのです 墓場とは思えないけど…」
古泉「そこの壁 見てください」
橘「ウン? こ これは…」
“1904 3.17 日本國軍偵 河上源之助 ここに果つ 仇”
壁には明治時代に日本から送り込まれた密偵の遺書が彫られていた。
橘「うーん ナンマンダブ ナンマンダブ…」
橘「ただの城じゃないと思ってましたが これ程までにして守る秘密って…」
橘「ねえ 涼宮さんの狙いもそれなの?」
古泉「何度も言ってますが涼宮さんは関係ありません」
古泉「それをやってるのは予告状を出した誰かさんでしょう」
古泉「誰だか知りませんが 仏さまにならなきゃいいんですけどねえ」
古泉「それより僕はあなたの方に興味があるんです」
橘「こ、古泉さん…///」
古泉「あなたの組織はなぜ伯爵にコンタクトを図ったんですか?」
橘「………」
古泉「あなたが活動を再開したと聞いて僕はピンときたんです」
古泉「涼宮さんの力を無効化するにはやはり能力の移植しかありません」
古泉「果たして涼宮さんの能力が移植可能な人間は佐々木さんだけでしょうか」
古泉「ひょっとして新たな候補者が見つかったんじゃないかとね」
古泉「クラリスには閉鎖空間を生み出す力がある… 違いますか?」
橘「!!」
古泉「図星ですね… あなたは伯爵をクラリスの鍵にしようと思ってる」
古泉「でもまわりを見てください 落とし穴の仕掛けを思い出してください」
古泉「大量のレーダーとレーザーは何のためにあるんですか?」
古泉「こんな城の主人がまともな人間だと思いますか?」
橘「………」
古泉「とにかく今はジタバタしても始まりません おやすみなさい 橘さん…」
48: 2012/02/07(火) 23:41:47.27 ID:JmHaV/C50
4時の時鐘の音が鳴り響く。
森と新川はカリオストロ城の対岸で辛抱強く待機したままである。
森「ううーっ 寒っ! あ もうこんな時間… どう? 様子は」
新川「まだ動きません」
森「待つしかないわね…」
キョン「ちわーす 万能変態宇宙人の助太刀はいかがっすかー?」
長門「変態は余計」
森「あなたたち どうして…」
キョン「ごめんなさい森さん やっぱりほっとけなくて」
森「でも 涼宮さんの方は大丈夫なの?」
長門「摂政カリオストロ伯爵の部下は大部分が城内の警備に回された」
長門「これは古泉一樹の侵入に備えるためと思われる」
長門「したがって現在、城外にいる涼宮ハルヒは逆に安全といえる」
キョン「それに 古泉にばっかり良い格好はさせられないでしょう?」
長門「その台詞は氏亡フラグと呼ばれている 言わない方が賢明」
森「全くあきれた人たちね」
新川「では私が代わりに涼宮さんのところに行きましょう」
新川「ここでは私なんかよりよっぽど長門さんの方が役に立ちそうだ」
新川はそう言って立ち上がった。
森と新川はカリオストロ城の対岸で辛抱強く待機したままである。
森「ううーっ 寒っ! あ もうこんな時間… どう? 様子は」
新川「まだ動きません」
森「待つしかないわね…」
キョン「ちわーす 万能変態宇宙人の助太刀はいかがっすかー?」
長門「変態は余計」
森「あなたたち どうして…」
キョン「ごめんなさい森さん やっぱりほっとけなくて」
森「でも 涼宮さんの方は大丈夫なの?」
長門「摂政カリオストロ伯爵の部下は大部分が城内の警備に回された」
長門「これは古泉一樹の侵入に備えるためと思われる」
長門「したがって現在、城外にいる涼宮ハルヒは逆に安全といえる」
キョン「それに 古泉にばっかり良い格好はさせられないでしょう?」
長門「その台詞は氏亡フラグと呼ばれている 言わない方が賢明」
森「全くあきれた人たちね」
新川「では私が代わりに涼宮さんのところに行きましょう」
新川「ここでは私なんかよりよっぽど長門さんの方が役に立ちそうだ」
新川はそう言って立ち上がった。
49: 2012/02/07(火) 23:45:05.12 ID:JmHaV/C50
地下迷宮の中央の水溜りから三人のカゲが這い出してきた。
どうやら迷宮の入り口は水中にあったようだ。
カゲたちはゆっくりと古泉たちに近付いてきた。
古泉「橘さん 起きてますか?」
橘「ハイ どうやら追っ手が来たようです」
古泉「すいませんが僕の手を握ってもらえますか」
橘「古泉さん こんな時に…///」
古泉「なに照れてるんですか いいから手を貸して!」
三人のカゲが一斉に襲い掛かった。
その瞬間、古泉と橘の姿がパッと消失してしまった。
カゲの一人がマスクを脱いだ。ジョドーである。
ジョドー「消えた? そんなはずはない 徹底的に捜せ!」
どうやら迷宮の入り口は水中にあったようだ。
カゲたちはゆっくりと古泉たちに近付いてきた。
古泉「橘さん 起きてますか?」
橘「ハイ どうやら追っ手が来たようです」
古泉「すいませんが僕の手を握ってもらえますか」
橘「古泉さん こんな時に…///」
古泉「なに照れてるんですか いいから手を貸して!」
三人のカゲが一斉に襲い掛かった。
その瞬間、古泉と橘の姿がパッと消失してしまった。
カゲの一人がマスクを脱いだ。ジョドーである。
ジョドー「消えた? そんなはずはない 徹底的に捜せ!」
50: 2012/02/07(火) 23:48:46.80 ID:JmHaV/C50
橘はいきなり色覚を失ったような感覚におちいった。
地下牢が色彩のないモノクロームの空間に変わっていた。
自分達に襲い掛かってきた暗殺者の姿も見えない。
橘「あっ ここは閉鎖空間!?」
古泉「ここ数年めったにないとはいえ」
古泉「ごくたまに小規模の閉鎖空間が発生する事があるんです」
古泉「たとえば夜明け前の悪夢のときとか」
橘「古泉さんはこうなる事が分かってたのですか?」
古泉「そろそろ生理が始まる頃ですしね」
古泉「しかし こうもタイミングよく発生してくれるとは思いませんでした」
半透明の赤い球体が二人を取り囲むように出現した。
古泉が発生させた高エネルギー・フィールドである。
古泉「教えてください クラリスさんの居場所はどこです?」
橘「…北側の塔のてっぺんよ」
古泉「飛びます 僕に掴まってください」
古泉は橘を抱き寄せた。二人を包んだ球体がふわりと浮き上がる。
そのまま天井近くまで上昇すると向きを変え、猛スピードで壁に激突した。
壁がこなごなに砕け、球体は城外に出た。外は灰色の空に覆われている。
そのまま北の塔に向かうが見えない壁に行く手を阻まれてしまった。
古泉「駄目ですね 閉鎖空間の規模が小さすぎる」
古泉「どうやら本丸だけを取り囲むようにして発生しているようです」
古泉「これでは城の敷地外に出る事すら出来ません」
赤い球体は本丸の周囲をあてもなく旋回するだけであった。
橘「そういえば神人の姿が見えないようだけど」
古泉「この規模なら人間サイズの神人がどこかにいるはずですが―」
古泉「ほっといても問題ありません」
古泉「仕方ないですね 予定を変更して先に伯爵を捜しましょう」
橘「伯爵を捜してどうするのです?」
古泉「もう一つの指輪を頂くんですよ」
地下牢が色彩のないモノクロームの空間に変わっていた。
自分達に襲い掛かってきた暗殺者の姿も見えない。
橘「あっ ここは閉鎖空間!?」
古泉「ここ数年めったにないとはいえ」
古泉「ごくたまに小規模の閉鎖空間が発生する事があるんです」
古泉「たとえば夜明け前の悪夢のときとか」
橘「古泉さんはこうなる事が分かってたのですか?」
古泉「そろそろ生理が始まる頃ですしね」
古泉「しかし こうもタイミングよく発生してくれるとは思いませんでした」
半透明の赤い球体が二人を取り囲むように出現した。
古泉が発生させた高エネルギー・フィールドである。
古泉「教えてください クラリスさんの居場所はどこです?」
橘「…北側の塔のてっぺんよ」
古泉「飛びます 僕に掴まってください」
古泉は橘を抱き寄せた。二人を包んだ球体がふわりと浮き上がる。
そのまま天井近くまで上昇すると向きを変え、猛スピードで壁に激突した。
壁がこなごなに砕け、球体は城外に出た。外は灰色の空に覆われている。
そのまま北の塔に向かうが見えない壁に行く手を阻まれてしまった。
古泉「駄目ですね 閉鎖空間の規模が小さすぎる」
古泉「どうやら本丸だけを取り囲むようにして発生しているようです」
古泉「これでは城の敷地外に出る事すら出来ません」
赤い球体は本丸の周囲をあてもなく旋回するだけであった。
橘「そういえば神人の姿が見えないようだけど」
古泉「この規模なら人間サイズの神人がどこかにいるはずですが―」
古泉「ほっといても問題ありません」
古泉「仕方ないですね 予定を変更して先に伯爵を捜しましょう」
橘「伯爵を捜してどうするのです?」
古泉「もう一つの指輪を頂くんですよ」
51: 2012/02/07(火) 23:53:47.25 ID:JmHaV/C50
球体は伯爵の寝室を求めて片っ端から壁をぶち破りながら移動した。
しかしなかなか見つからない。そのうち印刷所のような場所にたどり着いた。
古泉「ウン? ここはひょっとして」
床に着地すると赤い球体が消えて、二人の姿が現れた。
橘「ああーっ! な 何ですか? ここは…」
工房には大量の紙幣がいたる所に積み上げられていた。
橘「1万円札じゃないですか! なによ これが全部そうなの!」
古泉「これは よく出来てますね! 橘さん 見てください!」
橘「中国の百元札!」
古泉「ポンド! ドル! ユーロ! クローネ! ルーブル!」
橘に向かって次々と札束を放り投げる。
古泉「ルピー! ペソ! ディナール! レアル!」
古泉「アハッ 北朝鮮ウォンまで! 世界中ありますよ」
橘「ニ ニセ札作り… 古泉さん! これがこの城の秘密なのですか!」
古泉「そう」
古泉「かつて本物以上と讃えられた ゴート札の心臓部がここです」
古泉「中世以来 ヨーロッパの動乱の陰に必ず うごめいていた謎のニセ金」
古泉「ブルボン王朝を破滅させ ナポレオンの資金源となり―」
古泉「1927年には世界恐慌の引き金ともなった」
古泉「歴史の裏舞台 ブラックホールの主役 ゴート札」
古泉「その震源地を覗こうとした者は 一人として帰って来ませんでした」
古泉「まあ今の説明は全部、新川さんの受け売りですけどね」
橘「私も噂には聞いていましたが まさか 独立国家が営んでいたとは」
古泉「日露戦争の頃、日本にもロシア経由で大量のゴート札が流入したそうです」
橘「するとあの遺書を彫った河上源之助はその調査でここに…」
しかしなかなか見つからない。そのうち印刷所のような場所にたどり着いた。
古泉「ウン? ここはひょっとして」
床に着地すると赤い球体が消えて、二人の姿が現れた。
橘「ああーっ! な 何ですか? ここは…」
工房には大量の紙幣がいたる所に積み上げられていた。
橘「1万円札じゃないですか! なによ これが全部そうなの!」
古泉「これは よく出来てますね! 橘さん 見てください!」
橘「中国の百元札!」
古泉「ポンド! ドル! ユーロ! クローネ! ルーブル!」
橘に向かって次々と札束を放り投げる。
古泉「ルピー! ペソ! ディナール! レアル!」
古泉「アハッ 北朝鮮ウォンまで! 世界中ありますよ」
橘「ニ ニセ札作り… 古泉さん! これがこの城の秘密なのですか!」
古泉「そう」
古泉「かつて本物以上と讃えられた ゴート札の心臓部がここです」
古泉「中世以来 ヨーロッパの動乱の陰に必ず うごめいていた謎のニセ金」
古泉「ブルボン王朝を破滅させ ナポレオンの資金源となり―」
古泉「1927年には世界恐慌の引き金ともなった」
古泉「歴史の裏舞台 ブラックホールの主役 ゴート札」
古泉「その震源地を覗こうとした者は 一人として帰って来ませんでした」
古泉「まあ今の説明は全部、新川さんの受け売りですけどね」
橘「私も噂には聞いていましたが まさか 独立国家が営んでいたとは」
古泉「日露戦争の頃、日本にもロシア経由で大量のゴート札が流入したそうです」
橘「するとあの遺書を彫った河上源之助はその調査でここに…」
52: 2012/02/07(火) 23:58:05.97 ID:JmHaV/C50
古泉「橘さん どうします? 見てしまった以上 後戻りは出来ませんよ」
橘「わかってます 我々の計画は中止する以外にないわね」
橘「これほどの危険人物をクラリスさんの鍵にする事は出来ません」
古泉「ここから逃げ出すまで一時休戦にしますか?」
橘「いいわよ でも あなたの手助けはしません」
橘「脱出した後には必ずSOS団を潰してやるんだから」
古泉「上出来です それでは まあ 握手でも」
橘「フン! 馴れ合いはしません」
古泉「おやまあ」
不意に古泉の後ろから人影が現れた。身の丈2メートルほどの神人である。
橘「危ない!」
いきなり神人が襲い掛かってきた。橘はとっさに古泉を押し倒す。
硬い床に倒れこんだ古泉が激痛に顔をゆがめる。
二人を見失った神人は勢い余って印刷機に頭から突っ込んでしまった。
橘は神人の方を見た。神人はゆっくりと立ち上がると再び向かってきた。
橘の右手にソフトボール大の赤い玉が現れた。
それを思い切り神人に投げつける。神人は悲鳴をあげて消滅した。
その途端、周囲が色つきの世界に戻った。もとの空間に戻ってきたのだ。
橘「よかった無事で… まだ印刷所には誰もいませんね」
古泉「あ、あなた 涼宮さんの空間でも能力が使えるんですか?」
橘「何だか無我夢中で 気がついたら…」
古泉「興味深い現象ですね あとで検証してみる必要があります」
古泉「しかし困りました 閉鎖空間がなければ我々はただの人ですから」
古泉「これでは身動きが取れません」
橘「わかってます 我々の計画は中止する以外にないわね」
橘「これほどの危険人物をクラリスさんの鍵にする事は出来ません」
古泉「ここから逃げ出すまで一時休戦にしますか?」
橘「いいわよ でも あなたの手助けはしません」
橘「脱出した後には必ずSOS団を潰してやるんだから」
古泉「上出来です それでは まあ 握手でも」
橘「フン! 馴れ合いはしません」
古泉「おやまあ」
不意に古泉の後ろから人影が現れた。身の丈2メートルほどの神人である。
橘「危ない!」
いきなり神人が襲い掛かってきた。橘はとっさに古泉を押し倒す。
硬い床に倒れこんだ古泉が激痛に顔をゆがめる。
二人を見失った神人は勢い余って印刷機に頭から突っ込んでしまった。
橘は神人の方を見た。神人はゆっくりと立ち上がると再び向かってきた。
橘の右手にソフトボール大の赤い玉が現れた。
それを思い切り神人に投げつける。神人は悲鳴をあげて消滅した。
その途端、周囲が色つきの世界に戻った。もとの空間に戻ってきたのだ。
橘「よかった無事で… まだ印刷所には誰もいませんね」
古泉「あ、あなた 涼宮さんの空間でも能力が使えるんですか?」
橘「何だか無我夢中で 気がついたら…」
古泉「興味深い現象ですね あとで検証してみる必要があります」
古泉「しかし困りました 閉鎖空間がなければ我々はただの人ですから」
古泉「これでは身動きが取れません」
53: 2012/02/08(水) 00:03:15.28 ID:C0A/PgfN0
北の塔ではクラリスが古泉の写真を握りしめ、窓辺にたたずんでいた。
そこに現れる人影。
クラリス「朝比奈さん!」
みくる(大)「潮時が来たので お別れを言いに来たの」
着ている服をサッと脱ぎ捨てると中から迷彩服が現れた。
クラリス「あなたは 一体?」
みくる(大)「クラリス様付き召使いとして雇われた城内ただ一人の女…」
みくる(大)「でも本当は この城の秘密を監視する未来人なの」
みくる(大)「もうちょっと いたかったけど古泉君が来たでしょ」
みくる(大)「規定事項に従ってもう帰るの」
クラリス「古泉?」
みくる(大)「その写真の彼よ まだ生きてるわ」
クラリス「生きてる… 本当に?」
みくる(大)「あいつ ああ見えて結構しぶといんだから」
クラリス「あの方をご存知なのね」
みくる(大)「うんざりするほどね」
みくる(大)「時には味方 時には敵 恋人だったこともあったかな」
みくる(大)「彼 生まれつきの女たらしよ 気をつけてね」
クラリス「捨てられたの!?」
みくる(大)「うふっ… 禁則事項です」
みくる(大)「ハッ 落とし穴から煙が!?」
クラリス「火事?」
クラリスは窓に駆け寄った。城の下層から煙が漏れている。
クラリス「地下からだわ」
そこに現れる人影。
クラリス「朝比奈さん!」
みくる(大)「潮時が来たので お別れを言いに来たの」
着ている服をサッと脱ぎ捨てると中から迷彩服が現れた。
クラリス「あなたは 一体?」
みくる(大)「クラリス様付き召使いとして雇われた城内ただ一人の女…」
みくる(大)「でも本当は この城の秘密を監視する未来人なの」
みくる(大)「もうちょっと いたかったけど古泉君が来たでしょ」
みくる(大)「規定事項に従ってもう帰るの」
クラリス「古泉?」
みくる(大)「その写真の彼よ まだ生きてるわ」
クラリス「生きてる… 本当に?」
みくる(大)「あいつ ああ見えて結構しぶといんだから」
クラリス「あの方をご存知なのね」
みくる(大)「うんざりするほどね」
みくる(大)「時には味方 時には敵 恋人だったこともあったかな」
みくる(大)「彼 生まれつきの女たらしよ 気をつけてね」
クラリス「捨てられたの!?」
みくる(大)「うふっ… 禁則事項です」
みくる(大)「ハッ 落とし穴から煙が!?」
クラリス「火事?」
クラリスは窓に駆け寄った。城の下層から煙が漏れている。
クラリス「地下からだわ」
54: 2012/02/08(水) 00:06:05.28 ID:C0A/PgfN0
カリオストロ城を見張っていた長門が突然、城の方を指さした。
長門「森園生 見て」
城のあちこちから煙が立ち込めている。
森「アッ」
長門「動いた」
キョン「始めやがったか!」
森「撤退の準備を始めるわよ」
三人は待機場所に散乱する毛布やカセットコンロなどを慌ててかき集める。
城からの脱出プランはいくつか立ててあった。
しかし古泉がどのプランを採用するかはまだ分からない。
だから早めにフィアットのエンジンを温めておく必要があった。
身軽なフィアットなら古泉がどう出ても対応できるからである。
長門「森園生 見て」
城のあちこちから煙が立ち込めている。
森「アッ」
長門「動いた」
キョン「始めやがったか!」
森「撤退の準備を始めるわよ」
三人は待機場所に散乱する毛布やカセットコンロなどを慌ててかき集める。
城からの脱出プランはいくつか立ててあった。
しかし古泉がどのプランを採用するかはまだ分からない。
だから早めにフィアットのエンジンを温めておく必要があった。
身軽なフィアットなら古泉がどう出ても対応できるからである。
56: 2012/02/08(水) 00:09:43.57 ID:C0A/PgfN0
城内でサイレンが鳴り響いた。伯爵の寝室に衛士が駆け込んできた。
衛士「大変です! 火元は地下工房と思われます」
伯爵「何だと!? すぐ消すんだ!」
衛士「ハイッ」
召使い達が不安げに伯爵を見ている。
伯爵「ええい お前たちも行け!」
伯爵「ジョドーめ まさかしくじったのでは…」
胸騒ぎがした伯爵は自分の指輪を保管している枕もとの宝石箱を開けた。
だが宝石箱の中身は綺麗サッパリ無くなっていた。
伯爵「指輪はどこにいった!」
空っぽの宝石箱を床に叩きつける。
慌ててシーツや枕を裏返して指輪を捜した。
そこにも無いと分かるや、狂ったように部屋中をひっくり返し始めた。
衛士「大変です! 火元は地下工房と思われます」
伯爵「何だと!? すぐ消すんだ!」
衛士「ハイッ」
召使い達が不安げに伯爵を見ている。
伯爵「ええい お前たちも行け!」
伯爵「ジョドーめ まさかしくじったのでは…」
胸騒ぎがした伯爵は自分の指輪を保管している枕もとの宝石箱を開けた。
だが宝石箱の中身は綺麗サッパリ無くなっていた。
伯爵「指輪はどこにいった!」
空っぽの宝石箱を床に叩きつける。
慌ててシーツや枕を裏返して指輪を捜した。
そこにも無いと分かるや、狂ったように部屋中をひっくり返し始めた。
57: 2012/02/08(水) 00:13:01.01 ID:C0A/PgfN0
火事に気がついたジョドーたちは地下牢から地下工房に移動した。
そこは一面火の海だった。
ジョドー「おおっ! おのれ 古泉め!」
ジョドー「探せ! まだこの中にいるはずだ!」
反対側の入り口から衛士長のグスタフが駆け込んできた。
グスタフ「おおっ! ひるむな! かかれ!」
ホースを持った衛士たちが水を出そうとした瞬間、
炎の中から古泉と橘が飛び出してきた。
グスタフ「うおーッ!」
二人はグスタフを突き飛ばすとそのまま城内に逃げていった。
グスタフ「古泉だ! 追えっ!」
続いてジョドーが炎の中から現れた。
ジョドー「グスタフ! お前は火を消せ!」
そこは一面火の海だった。
ジョドー「おおっ! おのれ 古泉め!」
ジョドー「探せ! まだこの中にいるはずだ!」
反対側の入り口から衛士長のグスタフが駆け込んできた。
グスタフ「おおっ! ひるむな! かかれ!」
ホースを持った衛士たちが水を出そうとした瞬間、
炎の中から古泉と橘が飛び出してきた。
グスタフ「うおーッ!」
二人はグスタフを突き飛ばすとそのまま城内に逃げていった。
グスタフ「古泉だ! 追えっ!」
続いてジョドーが炎の中から現れた。
ジョドー「グスタフ! お前は火を消せ!」
58: 2012/02/08(水) 00:15:46.23 ID:C0A/PgfN0
古泉たちは消火用のホースをたどってようやく出口にたどり着いた。
古泉「礼拝堂だ!」
そこは数日後に結婚式が行なわれる予定の場所だった。
その祭壇の下が地下工房の入り口だったのだ。
二人は礼拝堂から中庭に出た。
古泉の脳裏に長門と見たオートジャイロの姿が浮かんだ。
あれを使えば北の塔に行ける。
古泉「オートジャイロの発着場はどこです?」
橘「それならそこの外階段から行けるわ」
古泉「礼拝堂だ!」
そこは数日後に結婚式が行なわれる予定の場所だった。
その祭壇の下が地下工房の入り口だったのだ。
二人は礼拝堂から中庭に出た。
古泉の脳裏に長門と見たオートジャイロの姿が浮かんだ。
あれを使えば北の塔に行ける。
古泉「オートジャイロの発着場はどこです?」
橘「それならそこの外階段から行けるわ」
59: 2012/02/08(水) 00:17:48.30 ID:C0A/PgfN0
窓から消火活動を見ていたクラリスは礼拝堂から出てくる人影に気付いた。
クラリス「あの方だわ!」
みくる(大)「古泉君と…その後ろは橘さんね」
古泉と橘はオートジャイロの発着所に通じる階段を駆け上がっていく。
みくる(大)「彼はね あなたのために城へ潜入してきたの」
みくる(大)「ほら オートジャイロを奪おうとしてるでしょ?」
クラリス「もしかして 私をここから出して下さるの?」
みくる(大)「もしかしたら そうかもね」
クラリス「あの方だわ!」
みくる(大)「古泉君と…その後ろは橘さんね」
古泉と橘はオートジャイロの発着所に通じる階段を駆け上がっていく。
みくる(大)「彼はね あなたのために城へ潜入してきたの」
みくる(大)「ほら オートジャイロを奪おうとしてるでしょ?」
クラリス「もしかして 私をここから出して下さるの?」
みくる(大)「もしかしたら そうかもね」
60: 2012/02/08(水) 00:20:15.79 ID:C0A/PgfN0
発着所についた古泉はオートジャイロのコックピットに飛び乗った。
しかしエンジンがなかなか掛からない。
橘「急いでください!」
衛士たちが発着場に殺到してきた。
橘「くそーっ 大和撫子をなめるな!」
襲いかかる衛士たちを一本背負いで次々と投げ飛ばす。
ようやくエンジンが掛かった。
古泉「橘さん乗って!」
橘「わたしも さよなら」
橘は離陸するオートジャイロに間一髪で飛びついた。
古泉「橘さん ちょっと寄り道しますよ!」
橘「営利誘拐なら協力しません」
古泉「あんたが言うか!」
オートジャイロはそのまま北の塔へ向かった。
古泉は北の塔の屋根にオートジャイロを寄せた。
本丸から通路が伸びてきた。あまり時間がない。
古泉「橘さん 操縦頼みます」
そう言ってひらりと屋根に飛び降りた。
橘「え えーっ!? 待って 古泉さん やったことないですよ」
しかしエンジンがなかなか掛からない。
橘「急いでください!」
衛士たちが発着場に殺到してきた。
橘「くそーっ 大和撫子をなめるな!」
襲いかかる衛士たちを一本背負いで次々と投げ飛ばす。
ようやくエンジンが掛かった。
古泉「橘さん乗って!」
橘「わたしも さよなら」
橘は離陸するオートジャイロに間一髪で飛びついた。
古泉「橘さん ちょっと寄り道しますよ!」
橘「営利誘拐なら協力しません」
古泉「あんたが言うか!」
オートジャイロはそのまま北の塔へ向かった。
古泉は北の塔の屋根にオートジャイロを寄せた。
本丸から通路が伸びてきた。あまり時間がない。
古泉「橘さん 操縦頼みます」
そう言ってひらりと屋根に飛び降りた。
橘「え えーっ!? 待って 古泉さん やったことないですよ」
61: 2012/02/08(水) 00:23:31.99 ID:C0A/PgfN0
天井の丸窓から古泉が顔を出した。
古泉「クラリスさん!」
クラリス「古泉さま!」
古泉「お届けに参りました」
みくる(大)「情熱に燃える殿方てのは美しいわ」
古泉「朝比奈さん! こんな所で何してるんですか?」
みくる(大)「一年ぶりに会ったってのに つれないんだなぁ」
古泉「若い方の朝比奈さんにはしょっちゅう会ってますから」
古泉「おや? という事はひょっとして予告状を出したのはあなたですか?」
みくる(大)「き・ん・そ・く」
古泉「怒りますよ!」
その時、追っ手が部屋になだれ込んできた。
古泉「朝比奈さん TPDDを!」
みくる(大)「気安く使ってくれるわね」
追っ手たちが一斉に銃を構えた。
朝比奈はクラリスを後ろから抱きしめた。
みくる(大)「目をつむって」
古泉「クラリスさん!」
クラリス「古泉さま!」
古泉「お届けに参りました」
みくる(大)「情熱に燃える殿方てのは美しいわ」
古泉「朝比奈さん! こんな所で何してるんですか?」
みくる(大)「一年ぶりに会ったってのに つれないんだなぁ」
古泉「若い方の朝比奈さんにはしょっちゅう会ってますから」
古泉「おや? という事はひょっとして予告状を出したのはあなたですか?」
みくる(大)「き・ん・そ・く」
古泉「怒りますよ!」
その時、追っ手が部屋になだれ込んできた。
古泉「朝比奈さん TPDDを!」
みくる(大)「気安く使ってくれるわね」
追っ手たちが一斉に銃を構えた。
朝比奈はクラリスを後ろから抱きしめた。
みくる(大)「目をつむって」
62: 2012/02/08(水) 00:28:33.65 ID:C0A/PgfN0
朝比奈とクラリスは北の塔の屋根に空間移動した。
みくる(大)「開けていいわよ」
目を開けると目の前に古泉が立っていた。
クラリス「古泉さま!」
古泉「やあ また会いましたね」
クラリスは思わず古泉を抱きしめた。
古泉(彼女に触れるとやはり心がざわめく 前回と一緒だ)
古泉(僕がこういう感覚を味わったのは涼宮さんと佐々木さんだけだ)
古泉(間違いない クラリスは閉鎖空間の持ち主だ)
クラリス「あなたは一体 何者ですか?」
古泉「エスパーです」
クラリス「エスパー?」
古泉「忘れ物ですよ」
クラリスの手を取り指輪をはめる。
クラリス「まあ! このためにわざわざ?」
みくる(大)「それだけ?」
古泉「それだけとはどういう事です?」
みくる(大)「彼女 ここから出たがってるみたいよ」
古泉「いま考えてる所です 少し待ってください」
クラリスを連れ出す事は予定に入ってない。
みくる(大)「あまり考えてるひまは無いわよ」
みくる(大)「開けていいわよ」
目を開けると目の前に古泉が立っていた。
クラリス「古泉さま!」
古泉「やあ また会いましたね」
クラリスは思わず古泉を抱きしめた。
古泉(彼女に触れるとやはり心がざわめく 前回と一緒だ)
古泉(僕がこういう感覚を味わったのは涼宮さんと佐々木さんだけだ)
古泉(間違いない クラリスは閉鎖空間の持ち主だ)
クラリス「あなたは一体 何者ですか?」
古泉「エスパーです」
クラリス「エスパー?」
古泉「忘れ物ですよ」
クラリスの手を取り指輪をはめる。
クラリス「まあ! このためにわざわざ?」
みくる(大)「それだけ?」
古泉「それだけとはどういう事です?」
みくる(大)「彼女 ここから出たがってるみたいよ」
古泉「いま考えてる所です 少し待ってください」
クラリスを連れ出す事は予定に入ってない。
みくる(大)「あまり考えてるひまは無いわよ」
63: 2012/02/08(水) 00:30:38.19 ID:C0A/PgfN0
古泉は朝比奈に背を向けるようにしてオートジャイロに声をかけた。
古泉「橘さん こっち こっち こっち!」
橘「そう うまくいきませんよ! このスケコマシッ」
橘は機体をふらふらさせながらも必氏でオートジャイロを近づける。
古泉「よーし いいですよ」
古泉は翼に飛びのると、素早く走ってコックピットにもぐりんだ。
橘を後ろから抱えるようにして操縦桿を握る。
古泉「クラリスさんも連れていきます!」
その言葉と同時に、朝比奈がクラリスを抱えて機体に飛びついた。
そのままオートジャイロは塔を離れて湖の上を滑空してゆく。
古泉「結局 朝比奈さんの思惑通り 花嫁を誘拐してしまいましたね」
古泉「いいように踊らされてる気がしますが」
橘「これから どうしましょう」
古泉「このまま国境を越えるしかないでしょう」
みくる(大)「古泉君 頭を伏せて!」
機関銃の連射音が響いた。
銃弾は機体の後部を破壊し、オートジャイロが炎を吹き上げる。
後ろを振り返ると、塔の屋根の端に機関銃の銃座が備え付けてある。
そこに伯爵とジョドーの姿があった。
古泉「橘さん こっち こっち こっち!」
橘「そう うまくいきませんよ! このスケコマシッ」
橘は機体をふらふらさせながらも必氏でオートジャイロを近づける。
古泉「よーし いいですよ」
古泉は翼に飛びのると、素早く走ってコックピットにもぐりんだ。
橘を後ろから抱えるようにして操縦桿を握る。
古泉「クラリスさんも連れていきます!」
その言葉と同時に、朝比奈がクラリスを抱えて機体に飛びついた。
そのままオートジャイロは塔を離れて湖の上を滑空してゆく。
古泉「結局 朝比奈さんの思惑通り 花嫁を誘拐してしまいましたね」
古泉「いいように踊らされてる気がしますが」
橘「これから どうしましょう」
古泉「このまま国境を越えるしかないでしょう」
みくる(大)「古泉君 頭を伏せて!」
機関銃の連射音が響いた。
銃弾は機体の後部を破壊し、オートジャイロが炎を吹き上げる。
後ろを振り返ると、塔の屋根の端に機関銃の銃座が備え付けてある。
そこに伯爵とジョドーの姿があった。
64: 2012/02/08(水) 00:32:59.07 ID:C0A/PgfN0
オートジャイロは浮翌力を保ちながらも徐々に高度を下げていった。
古泉「駄目です! 機体が持ちません」
みくる(大)「こういう結果になったのも全部規定事項なの」
みくる(大)「黙っててごめんね」
古泉「…これだから未来人は嫌いなんです」
みくる(大)「お詫びのしるしにプレゼント」
朝比奈は昨夜のうちに盗んでおいた伯爵の指輪を取り出した。
ウインクをして古泉のポケットに入れる。
古泉「………」
古泉の額から血が滴り落ちてきた。さっきの銃撃でやられたらしい。
橘「こ、古泉さん!」
古泉の手が操縦桿から離れた。とっさに橘が代わって操縦桿を握る。
みくる(大)「ところで橘さん!」
橘「へっ?」
みくる(大)「あなたには積もる恨みが山ほどあります」
朝比奈は操縦している橘の首に麻酔銃を突きつけた。
橘「ななななな何を!」
みくる(大)「問答無用!」
そう叫ぶと、ためらいもなく引き金を引いた。
古泉「駄目です! 機体が持ちません」
みくる(大)「こういう結果になったのも全部規定事項なの」
みくる(大)「黙っててごめんね」
古泉「…これだから未来人は嫌いなんです」
みくる(大)「お詫びのしるしにプレゼント」
朝比奈は昨夜のうちに盗んでおいた伯爵の指輪を取り出した。
ウインクをして古泉のポケットに入れる。
古泉「………」
古泉の額から血が滴り落ちてきた。さっきの銃撃でやられたらしい。
橘「こ、古泉さん!」
古泉の手が操縦桿から離れた。とっさに橘が代わって操縦桿を握る。
みくる(大)「ところで橘さん!」
橘「へっ?」
みくる(大)「あなたには積もる恨みが山ほどあります」
朝比奈は操縦している橘の首に麻酔銃を突きつけた。
橘「ななななな何を!」
みくる(大)「問答無用!」
そう叫ぶと、ためらいもなく引き金を引いた。
65: 2012/02/08(水) 00:35:35.33 ID:C0A/PgfN0
対岸の古城に待機していた三人がフィアットを走らせた。
キョン「出番のないまま退却かよ」
ハンドルを握るのは森さんだ。彼女は機関随一のドライバーなのだ。
オートジャイロの進行方向に先行する形で車を走らせる。
だがパイロットを失った機体は大きく傾いて進路をそれた。
長門が助手席から身を乗り出して手をかざす。
するとオートジャイロは再び体勢を立て直し、フィアットの真上にきた。
後部座席のキョンがサンルーフを開けて立ち上がった。
みくる(大)「キョン君! 古泉君を落とすから受け取って!」
キョン「うぉっ 朝比奈さん!? しかも大人バージョン」
キョン「ミリタリー・ルックの朝比奈さんも素敵です!」
古泉が落ちてきた。彼はすでに意識を失っているようだ。
キョン「アチチ おい こいつ服が燃えてるぞ」
長門「古泉一樹の衣服の情報連結を解除」
キョン「よし 服が消えた」
長門「また つまらぬ物を解除してしまった…」
キョン「出番のないまま退却かよ」
ハンドルを握るのは森さんだ。彼女は機関随一のドライバーなのだ。
オートジャイロの進行方向に先行する形で車を走らせる。
だがパイロットを失った機体は大きく傾いて進路をそれた。
長門が助手席から身を乗り出して手をかざす。
するとオートジャイロは再び体勢を立て直し、フィアットの真上にきた。
後部座席のキョンがサンルーフを開けて立ち上がった。
みくる(大)「キョン君! 古泉君を落とすから受け取って!」
キョン「うぉっ 朝比奈さん!? しかも大人バージョン」
キョン「ミリタリー・ルックの朝比奈さんも素敵です!」
古泉が落ちてきた。彼はすでに意識を失っているようだ。
キョン「アチチ おい こいつ服が燃えてるぞ」
長門「古泉一樹の衣服の情報連結を解除」
キョン「よし 服が消えた」
長門「また つまらぬ物を解除してしまった…」
66: 2012/02/08(水) 00:38:16.76 ID:C0A/PgfN0
みくる(大)「次は橘さんよ!」
朝比奈はコックピットから橘を引きずり出してフィアットに落とした。
キョン「なんで橘まで連れてくの」
森「捕虜という訳ね ふふっ たっぷり可愛がってやるわ」
森は例の卒倒しそうなほどの凄惨な笑みを浮かべた。
キョン「森さん、機関はジュネーブ条約に調印してないでしょうが―」
キョン「捕虜の扱いは人道的にお願いしますよ」
みくる(大)「それからお姫様も」
キョン「えっ? お姫様って…」
クラリスが落ちてきた。
キョン「あわわわわ 本物だ! どーすんのこれ」
みくる(大)「くれぐれも粗相の無いようにね」
クラリスは上着の袖を引きちぎると古泉の頭に巻きつけた。
心配そうに古泉を見つめる。
キョン「さあ朝比奈さんもこちらに!」
みくる(大)「今回の任務はこれで終了なの じゃあね」
朝比奈はそう言って飛び降りると、空中で煙のように消えてしまった。
キョン「俺の胸に…飛び込まないのね」
長門「………」
長門はオートジャイロにかざしていた手を下げた。
その途端、機体が失速して林の中に突っ込んだ。
朝比奈はコックピットから橘を引きずり出してフィアットに落とした。
キョン「なんで橘まで連れてくの」
森「捕虜という訳ね ふふっ たっぷり可愛がってやるわ」
森は例の卒倒しそうなほどの凄惨な笑みを浮かべた。
キョン「森さん、機関はジュネーブ条約に調印してないでしょうが―」
キョン「捕虜の扱いは人道的にお願いしますよ」
みくる(大)「それからお姫様も」
キョン「えっ? お姫様って…」
クラリスが落ちてきた。
キョン「あわわわわ 本物だ! どーすんのこれ」
みくる(大)「くれぐれも粗相の無いようにね」
クラリスは上着の袖を引きちぎると古泉の頭に巻きつけた。
心配そうに古泉を見つめる。
キョン「さあ朝比奈さんもこちらに!」
みくる(大)「今回の任務はこれで終了なの じゃあね」
朝比奈はそう言って飛び降りると、空中で煙のように消えてしまった。
キョン「俺の胸に…飛び込まないのね」
長門「………」
長門はオートジャイロにかざしていた手を下げた。
その途端、機体が失速して林の中に突っ込んだ。
74: 2012/02/08(水) 22:35:34.34 ID:C0A/PgfN0
隠れ家のホテルの寝室でハルヒは鼻ちょうちんを出して熟睡していた。
キッチンでは新川が焼き魚に味噌汁の朝食を準備している。
そこにキョンと長門が駆け込んできた。
キョン「新川さん、古泉の奴がちょっと怪我をして来れなくなりました」
新川「怪我ですって? それで具合はどうですか」
キョン「長門のおかげで傷の方は綺麗サッパリなおったんですが」
キョン「意識がまだ戻らなくて」
新川「私にできる事があれば何でも仰ってください」
キョン「いえ 新川さんはしばらくここにいてください」
キョン「俺はハルヒを起こしてきます」
そう言うとキョンは寝室に入っていった。
新川「古泉さんの怪我はそんなにひどいんですか?」
長門「その事なら問題はない すぐに意識は戻るはず」
長門「それより今から森園生が橘京子を連れてここにやってくる」
長門「彼女達のサポートをしてほしい」
新川「分かりました では古泉さんを宜しくお願いします」
長門「朝食までに間に合ってよかった 古泉一樹の顔を潰さなくて済む」
新川はちょっとビックリした顔で長門を見た。
長門「何?」
新川「いえ…それでは指輪を手に入れる事が出来たんですね?」
長門「手に入れたのは朝比奈みくる」
長門「しかし重要なのは朝食前に指輪を涼宮ハルヒに渡すこと」
長門「古泉一樹がそう約束をしたのだから」
新川「長門さん…こういう言い方は失礼かもしれませんが」
新川「ずいぶん人間くさい思考ですね」
長門はちらりと新川を見た。だがすぐに視線を外すと、
長門「そうかも知れない」
無表情でそう言った。
75: 2012/02/08(水) 22:59:53.39 ID:C0A/PgfN0
ハルヒが寝室のドアを壊さんばかりの勢いで飛び出してきた。
ハルヒ「ちょっとバカキョン! あんたが付いてながらどういう事よ!」
キョン「仕方ないだろ 俺だって四六時中くっ付いてる訳じゃないんだから」
ハルヒ「あんたって人は そうやって言い訳ばっかり…」
長門「古泉一樹は車の屋根に芝居の仕込みをしている最中、足を滑らせて転落した」
長門「たいした怪我ではない 頭を打って気絶しただけ」
ハルヒ「打ち所が悪くてそのまま目が覚めなかったらどうするのよ」
ハルヒ「そうなったら承知しないわよ 二人とも覚悟しなさい」
ハルヒは二人を引っ張るようにして部屋を出て行った。
あまりにも慌てていたので、新川の存在に気付かなかったようだ。
少しして森が橘を抱えるようにして入ってきた。
新川「おや 橘さん 随分お疲れのようですね」
森「かなり無茶な真似をしてたみたいね その事に責任を感じてるらしいわ」
森「お姫様がひどい目に会ったのは自分のせいだって」
新川「ほう 詳しく話を聞きたいですね」
新川「橘さん お腹は空いてませんか? 良ければ朝食が用意してありますよ」
ハルヒ「ちょっとバカキョン! あんたが付いてながらどういう事よ!」
キョン「仕方ないだろ 俺だって四六時中くっ付いてる訳じゃないんだから」
ハルヒ「あんたって人は そうやって言い訳ばっかり…」
長門「古泉一樹は車の屋根に芝居の仕込みをしている最中、足を滑らせて転落した」
長門「たいした怪我ではない 頭を打って気絶しただけ」
ハルヒ「打ち所が悪くてそのまま目が覚めなかったらどうするのよ」
ハルヒ「そうなったら承知しないわよ 二人とも覚悟しなさい」
ハルヒは二人を引っ張るようにして部屋を出て行った。
あまりにも慌てていたので、新川の存在に気付かなかったようだ。
少しして森が橘を抱えるようにして入ってきた。
新川「おや 橘さん 随分お疲れのようですね」
森「かなり無茶な真似をしてたみたいね その事に責任を感じてるらしいわ」
森「お姫様がひどい目に会ったのは自分のせいだって」
新川「ほう 詳しく話を聞きたいですね」
新川「橘さん お腹は空いてませんか? 良ければ朝食が用意してありますよ」
76: 2012/02/08(水) 23:04:14.36 ID:C0A/PgfN0
湖にほど近い山の中腹にみすぼらしい小屋がある。
古泉はそこに担ぎこまれていた。昏睡状態でベッドに横たわっている。
その横ではクラリスがベッドにもたれかかって寝息を立てていた。
看病しているうちに眠ってしまったようだ。
クラリスの足下には一匹の老犬がうずくまっている。
ハルヒ「古泉君 おかしな鼾はかいてないわよね 本当に大丈夫なの?」
長門「大丈夫」
ハルヒはカーディガンを脱いでクラリスにかけてやる。
ハルヒ「よくこんな子 見つけてきたわね お姫様にそっくり」
突然、犬が起き上がり古泉の顔を舐めだした。
古泉「あはっ くすぐったいですよ」
キョン「気がつきやがった」
クラリス「古泉さま?」
ハルヒ「古泉君 具合はどう?」
古泉「涼宮さん 長門さん… お久しぶりです」
キョン「久しぶり!? 何言ってるんだよ」
長門「血液の減少による一時的な記憶の混乱」
古泉はそこに担ぎこまれていた。昏睡状態でベッドに横たわっている。
その横ではクラリスがベッドにもたれかかって寝息を立てていた。
看病しているうちに眠ってしまったようだ。
クラリスの足下には一匹の老犬がうずくまっている。
ハルヒ「古泉君 おかしな鼾はかいてないわよね 本当に大丈夫なの?」
長門「大丈夫」
ハルヒはカーディガンを脱いでクラリスにかけてやる。
ハルヒ「よくこんな子 見つけてきたわね お姫様にそっくり」
突然、犬が起き上がり古泉の顔を舐めだした。
古泉「あはっ くすぐったいですよ」
キョン「気がつきやがった」
クラリス「古泉さま?」
ハルヒ「古泉君 具合はどう?」
古泉「涼宮さん 長門さん… お久しぶりです」
キョン「久しぶり!? 何言ってるんだよ」
長門「血液の減少による一時的な記憶の混乱」
77: 2012/02/08(水) 23:15:37.31 ID:C0A/PgfN0
小屋のあるじが帰ってきた。
老人「わしじゃ」
いつか大公の館で会った老人である。
老人はパンや食材の入ったバスケットを抱えている。
老人「食い物だ」
キョン「すまねえな」
老人「どうだ 具合は?」
ハルヒ「意識が戻ったみたい おじいさんのおかげよ」
老人「礼なら クラリス様に言ってくれ」
老人「一国の姫君があの男からは離れようとせぬ」
老人「そうでなければ お前さんたちを匿ったりはしなかったろう…」
ハルヒ「匿う? それって一体どういうこと?」
長門「我々はお尋ね者という設定」
ハルヒ「ああ まだお芝居は続いてたのね」
ハルヒ「えーと 古泉君は囚われのお姫様を救出したんだっけ」
ハルヒ「ちょっと待って! じゃあ古泉君の怪我もお芝居だったわけ?」
長門「それは本当」
ハルヒ「怪しいわね まあいいわ ホッとしたらお腹すいちゃった」
ハルヒ「サンドイッチ作るから有希も手伝って」
ハルヒと長門はバスケットを持って台所に行った。
老人「わしじゃ」
いつか大公の館で会った老人である。
老人はパンや食材の入ったバスケットを抱えている。
老人「食い物だ」
キョン「すまねえな」
老人「どうだ 具合は?」
ハルヒ「意識が戻ったみたい おじいさんのおかげよ」
老人「礼なら クラリス様に言ってくれ」
老人「一国の姫君があの男からは離れようとせぬ」
老人「そうでなければ お前さんたちを匿ったりはしなかったろう…」
ハルヒ「匿う? それって一体どういうこと?」
長門「我々はお尋ね者という設定」
ハルヒ「ああ まだお芝居は続いてたのね」
ハルヒ「えーと 古泉君は囚われのお姫様を救出したんだっけ」
ハルヒ「ちょっと待って! じゃあ古泉君の怪我もお芝居だったわけ?」
長門「それは本当」
ハルヒ「怪しいわね まあいいわ ホッとしたらお腹すいちゃった」
ハルヒ「サンドイッチ作るから有希も手伝って」
ハルヒと長門はバスケットを持って台所に行った。
78: 2012/02/08(水) 23:19:46.75 ID:C0A/PgfN0
あいかわらず老犬は古泉にじゃれ付いている。
古泉「こらっ いいかげんにしないと怒りますよ ご主人の所に戻りなさい」
老人「お前さん どうしてそんなに懐かれてるんじゃ」
老人「この犬が懐くのは わしの他はもうクラリス様しかいないはずだ」
クラリス「こんな事は初めてだわ」
古泉「そうですか… お前のご主人はクラリス様というのですか」
古泉「クラリス… あっ!?」
クラリス「古泉さま?」
古泉「今日は何日です! あれから何時間たちました!」
キョン「ろっ 六時間だ!」
古泉「そんなに… じゃ 朝食は済んでしまったんじゃ こうしちゃ…!」
古泉「イタタタタ… 頭が」
キョン「ほら 無理するんじゃねえよ! 急に起き上がるから!」
古泉「僕の着てた服は何処へやったんですか?」
キョン「長門が連結を解除しちまったよ」
古泉「なんですって! では指輪も一緒に…」
キョン「あいつがそんなヘマするかよ」
キョンはポケットから伯爵の指輪を取り出した。
古泉「それを涼宮さんに渡してください」
キョン「慌てなくても大丈夫だ ハルヒはまだ朝食を取ってないぜ」
古泉「こらっ いいかげんにしないと怒りますよ ご主人の所に戻りなさい」
老人「お前さん どうしてそんなに懐かれてるんじゃ」
老人「この犬が懐くのは わしの他はもうクラリス様しかいないはずだ」
クラリス「こんな事は初めてだわ」
古泉「そうですか… お前のご主人はクラリス様というのですか」
古泉「クラリス… あっ!?」
クラリス「古泉さま?」
古泉「今日は何日です! あれから何時間たちました!」
キョン「ろっ 六時間だ!」
古泉「そんなに… じゃ 朝食は済んでしまったんじゃ こうしちゃ…!」
古泉「イタタタタ… 頭が」
キョン「ほら 無理するんじゃねえよ! 急に起き上がるから!」
古泉「僕の着てた服は何処へやったんですか?」
キョン「長門が連結を解除しちまったよ」
古泉「なんですって! では指輪も一緒に…」
キョン「あいつがそんなヘマするかよ」
キョンはポケットから伯爵の指輪を取り出した。
古泉「それを涼宮さんに渡してください」
キョン「慌てなくても大丈夫だ ハルヒはまだ朝食を取ってないぜ」
79: 2012/02/08(水) 23:24:30.97 ID:C0A/PgfN0
ハルヒの作ったサンドイッチで遅い朝食を取るSOS団一同。
ただしハルヒとクラリスは別室で伯爵の指輪とにらめっこをしていた。
老人「そうでしたか クラリス様のために…」
キョン「しかし 古泉がこのザマじゃな」
まだ起き上がれない古泉はベッドの中でサンドイッチを頬ばっていた。
古泉「ご老体はクラリスさんと深い関わりがあるようですが」
老人「わしは お屋敷の庭師じゃった」
老人「クラリス様は草木が好きなお子でな…」
老人「大公ご夫妻が亡くなられ修道院にお入りになる時」
老人「この愛犬のカールをわしに託されたのじゃ」
キョン「古泉の身体にお姫さんのにおいを嗅ぎつけたってわけか」
老人「いや クラリス様ご自身がここにいらっしゃるから それは有り得ん」
老人「あの懐きようは他に何か原因があると思えるのじゃが」
キョン「さあな 何しろもてる男だからな」
古泉「そんな事ではないみたいですよ」
キョン「お前 心当たりがあるのか?」
古泉「ちょっと突拍子もない話なんですが…」
古泉は老人の方をチラリと見た。
古泉「その話はまた後にしましょう」
ただしハルヒとクラリスは別室で伯爵の指輪とにらめっこをしていた。
老人「そうでしたか クラリス様のために…」
キョン「しかし 古泉がこのザマじゃな」
まだ起き上がれない古泉はベッドの中でサンドイッチを頬ばっていた。
古泉「ご老体はクラリスさんと深い関わりがあるようですが」
老人「わしは お屋敷の庭師じゃった」
老人「クラリス様は草木が好きなお子でな…」
老人「大公ご夫妻が亡くなられ修道院にお入りになる時」
老人「この愛犬のカールをわしに託されたのじゃ」
キョン「古泉の身体にお姫さんのにおいを嗅ぎつけたってわけか」
老人「いや クラリス様ご自身がここにいらっしゃるから それは有り得ん」
老人「あの懐きようは他に何か原因があると思えるのじゃが」
キョン「さあな 何しろもてる男だからな」
古泉「そんな事ではないみたいですよ」
キョン「お前 心当たりがあるのか?」
古泉「ちょっと突拍子もない話なんですが…」
古泉は老人の方をチラリと見た。
古泉「その話はまた後にしましょう」
80: 2012/02/08(水) 23:30:11.40 ID:C0A/PgfN0
突然、別室からハルヒがクラリスを引っ張るようにして飛び出してきた。
ハルヒ「解けたわ! 指輪の謎が!」
古泉「本当ですか!?」
ハルヒはいつの間にか“名探偵”と書かれた腕章を腕にはめていた。
ハルヒ「前にも言った通り、二つの指輪を合わせるとお宝のありかが分かるのよ」
クラリス「伯爵も涼宮さんと同じような事を言ってました」
クラリス「“指輪が一つに重なる時こそ 秘められた先祖の財宝が甦る”って」
ハルヒは二つの指輪を取り出して紋章が彫ってある面を重ねた。
継ぎ目の模様がぴたりと重なり合った。
ハルヒ「この模様を書き写したものがこれよ」
細長いリボン状の紙をテーブルに広げた。
古泉「これは例のゴート文字ですね」
ハルヒ「有希 なんて書いてあるか分かる?」
長門「“光と影を結び 時告ぐる 高き山羊の 陽に向かいし 眼に我を納めよ”」
クラリス「それは昔から私の家に伝わってる言葉です」
ハルヒは長門が訳した文章をメモ帳に書き留めると、ページを破って机に置いた。
ハルヒ「この“時告ぐる 高き山羊”というのがポイントよ」
ハルヒ「これはあの時計塔の高いところに山羊がいる事を暗示してるの」
クラリス「涼宮さんの言う通り 時計の文字盤には紋章の山羊が彫ってあります」
クラリス「十二時と一時の間のところです」
ハルヒ「そして“眼に我を納めよ”といってるから」
ハルヒ「その文字盤の山羊の眼に指輪を納めればいいのよ」
古泉「なるほど そうすればカリオストロ家の財宝が甦るということですね」
キョン「でも時計は塔の四面にそれぞれあるぜ」
キョン「本物は一つで残りはダミーという事は考えられないか?」
ハルヒ「それも簡単 “陽に向かいし 眼に”とあるから」
ハルヒ「朝陽に向かっている文字盤 つまり東側の時計が本物よ」
クラリス「指輪の謎は伯爵にも解けなかったのに」
クラリス「涼宮さんはほとんど一人で解いてしまったんです」
ハルヒ「なーに 初歩的なことだよ ワトソン君!」
ハルヒはクラリスの背中を思いっきり叩く。
キョン「あわわわわ ハルヒ! 失礼だろお前」
ハルヒ「解けたわ! 指輪の謎が!」
古泉「本当ですか!?」
ハルヒはいつの間にか“名探偵”と書かれた腕章を腕にはめていた。
ハルヒ「前にも言った通り、二つの指輪を合わせるとお宝のありかが分かるのよ」
クラリス「伯爵も涼宮さんと同じような事を言ってました」
クラリス「“指輪が一つに重なる時こそ 秘められた先祖の財宝が甦る”って」
ハルヒは二つの指輪を取り出して紋章が彫ってある面を重ねた。
継ぎ目の模様がぴたりと重なり合った。
ハルヒ「この模様を書き写したものがこれよ」
細長いリボン状の紙をテーブルに広げた。
古泉「これは例のゴート文字ですね」
ハルヒ「有希 なんて書いてあるか分かる?」
長門「“光と影を結び 時告ぐる 高き山羊の 陽に向かいし 眼に我を納めよ”」
クラリス「それは昔から私の家に伝わってる言葉です」
ハルヒは長門が訳した文章をメモ帳に書き留めると、ページを破って机に置いた。
ハルヒ「この“時告ぐる 高き山羊”というのがポイントよ」
ハルヒ「これはあの時計塔の高いところに山羊がいる事を暗示してるの」
クラリス「涼宮さんの言う通り 時計の文字盤には紋章の山羊が彫ってあります」
クラリス「十二時と一時の間のところです」
ハルヒ「そして“眼に我を納めよ”といってるから」
ハルヒ「その文字盤の山羊の眼に指輪を納めればいいのよ」
古泉「なるほど そうすればカリオストロ家の財宝が甦るということですね」
キョン「でも時計は塔の四面にそれぞれあるぜ」
キョン「本物は一つで残りはダミーという事は考えられないか?」
ハルヒ「それも簡単 “陽に向かいし 眼に”とあるから」
ハルヒ「朝陽に向かっている文字盤 つまり東側の時計が本物よ」
クラリス「指輪の謎は伯爵にも解けなかったのに」
クラリス「涼宮さんはほとんど一人で解いてしまったんです」
ハルヒ「なーに 初歩的なことだよ ワトソン君!」
ハルヒはクラリスの背中を思いっきり叩く。
キョン「あわわわわ ハルヒ! 失礼だろお前」
81: 2012/02/08(水) 23:35:02.14 ID:C0A/PgfN0
ハルヒ「というわけでキョン 今から時計塔に行くわよ」
キョン「おい 俺たちゃお尋ね者だぜ 昼間っから外に出られるわけないだろ」
ハルヒ「この期に及んでまだお芝居が続くの? じれったいわね」
ハルヒ「謎は解けたんだから さっさとクライマックスまで飛ばしてよ」
古泉「それは無理です」
ハルヒ「どうしてよ」
古泉「考えても見てください 指輪はここにある 花嫁もここにいる」
古泉「こんな状態を伯爵が黙って見過ごすはずありません」
古泉「国中いたるところで伯爵の手下が見張ってるはずです」
ハルヒ「ストーリーがいまいちね 私、たしかにミステリーは好きだけど」
ハルヒ「アクション系の話はあんまり興味ないのよ 無理やりな感じがして」
キョン「無理やりストーリーを変えさせたのはお前だろ」
キョン「古泉はしばらく動けないんだ 俺たちも大人しくしてようぜ」
ハルヒ「つまんないわね 有希 ちょっと散歩に行きましょ」
キョン「だから 外に出るなって」
ハルヒ「その辺を回ってくるだけよ ずっと部屋に閉じこもってて息が詰まるわ」
ハルヒは強引に長門を連れて小屋を出て行った。
キョン「やれやれ まあ長門が付いてりゃ大丈夫か」
キョン「おい 俺たちゃお尋ね者だぜ 昼間っから外に出られるわけないだろ」
ハルヒ「この期に及んでまだお芝居が続くの? じれったいわね」
ハルヒ「謎は解けたんだから さっさとクライマックスまで飛ばしてよ」
古泉「それは無理です」
ハルヒ「どうしてよ」
古泉「考えても見てください 指輪はここにある 花嫁もここにいる」
古泉「こんな状態を伯爵が黙って見過ごすはずありません」
古泉「国中いたるところで伯爵の手下が見張ってるはずです」
ハルヒ「ストーリーがいまいちね 私、たしかにミステリーは好きだけど」
ハルヒ「アクション系の話はあんまり興味ないのよ 無理やりな感じがして」
キョン「無理やりストーリーを変えさせたのはお前だろ」
キョン「古泉はしばらく動けないんだ 俺たちも大人しくしてようぜ」
ハルヒ「つまんないわね 有希 ちょっと散歩に行きましょ」
キョン「だから 外に出るなって」
ハルヒ「その辺を回ってくるだけよ ずっと部屋に閉じこもってて息が詰まるわ」
ハルヒは強引に長門を連れて小屋を出て行った。
キョン「やれやれ まあ長門が付いてりゃ大丈夫か」
82: 2012/02/08(水) 23:39:04.87 ID:C0A/PgfN0
古泉は親の敵のようにサンドイッチを食べつづけている。
キョン「どうでもいいけど そんなに慌てて食うなよ 胃が受けつけねえぞ」
古泉「血が足りないんですよ 何でもいいからジャンジャン持って来てください」
キョン「そんなこと言ったって もうサンドイッチは残ってないぜ」
老人「わしが何とかしよう」
古泉「12時間もあればジェット機だって直ります 僕だって…」
突然、古泉は真っ青になって口を押さえた。
キョン「ほーら 言わんこっちゃねえや! 洗面器か?」
キョン「あ? なに! ン?」
キョン「食ったから寝るって…」
古泉が眠ってしまった途端、キョンも猛烈な睡魔に襲われた。
キョン「ふああああ すいません こいつの寝顔を見たら俺も…」
少しのつもりでテーブルにふせて、そのまま深い眠りに落ちてしまった。
緊張が緩んだせいだ。キョンもまた徹夜で城の動向を見張ってたのだから。
老人「皆さんお疲れのようですな」
クラリス「無理もないわ」
クラリスはハルヒに借りたカーディガンを脱いでキョンにかけた。
老人「わしはまた食料を買出しに行きますかな」
老人「町の様子も見てきますんで 帰りは夕方になるでしょう」
キョン「どうでもいいけど そんなに慌てて食うなよ 胃が受けつけねえぞ」
古泉「血が足りないんですよ 何でもいいからジャンジャン持って来てください」
キョン「そんなこと言ったって もうサンドイッチは残ってないぜ」
老人「わしが何とかしよう」
古泉「12時間もあればジェット機だって直ります 僕だって…」
突然、古泉は真っ青になって口を押さえた。
キョン「ほーら 言わんこっちゃねえや! 洗面器か?」
キョン「あ? なに! ン?」
キョン「食ったから寝るって…」
古泉が眠ってしまった途端、キョンも猛烈な睡魔に襲われた。
キョン「ふああああ すいません こいつの寝顔を見たら俺も…」
少しのつもりでテーブルにふせて、そのまま深い眠りに落ちてしまった。
緊張が緩んだせいだ。キョンもまた徹夜で城の動向を見張ってたのだから。
老人「皆さんお疲れのようですな」
クラリス「無理もないわ」
クラリスはハルヒに借りたカーディガンを脱いでキョンにかけた。
老人「わしはまた食料を買出しに行きますかな」
老人「町の様子も見てきますんで 帰りは夕方になるでしょう」
83: 2012/02/08(水) 23:43:49.59 ID:C0A/PgfN0
ハルヒたちは時計塔の見える湖畔に来ていた。
ハルヒ「やっぱり文字盤に山羊が彫ってあるわね あそこまで登れるかしら」
長門「これ以上の散歩は推奨できない 小屋に戻るべき」
ハルヒ「有希までそんなこと言って 心配しなくても時計塔には行かないわよ」
長門はハルヒのポケットを指差した。
長門「指輪を隠し持っている 何故?」
ハルヒ「これは… 分かったわよ! 帰ればいいんでしょ」
ハルヒは回れ右して、もと来た道を戻り始めた。だが数メートル歩いたところで、
ハルヒ「なーんちゃって ここまで来て帰れるわけ無いじゃない!」
ダッシュで時計塔に突進していった。
もちろん一人で行かせる訳にはいかない。長門もハルヒの後ろを追いかける。
時計塔の扉を開けると、そこはカラクリで埋め尽くされた空間だった。
巨大な歯車と機械の連なりが上層部まで続いている。
ハルヒ「うわあ… 面白いわね ここ」
ハルヒは入り口の脇にある階段を見つけると、さっさと上っていった。
しかたなく長門も一緒に階段を上る。
レーザー射出装置が作動し、ハルヒに向けて発射された。
すかさず長門がレーザーを手で受け止める。
長門(ミクルビームに比べればたいした威力ではない)
ハルヒは気付かずにどんどん先に行く。
長門(カリオストロ家の財宝は涼宮ハルヒの考えてるものとは違う)
長門(それに時計のカラクリには発動者自身を頃す仕掛けが施されてある)
長門(涼宮ハルヒにカラクリを発動させてはならない)
ハルヒ「やっぱり文字盤に山羊が彫ってあるわね あそこまで登れるかしら」
長門「これ以上の散歩は推奨できない 小屋に戻るべき」
ハルヒ「有希までそんなこと言って 心配しなくても時計塔には行かないわよ」
長門はハルヒのポケットを指差した。
長門「指輪を隠し持っている 何故?」
ハルヒ「これは… 分かったわよ! 帰ればいいんでしょ」
ハルヒは回れ右して、もと来た道を戻り始めた。だが数メートル歩いたところで、
ハルヒ「なーんちゃって ここまで来て帰れるわけ無いじゃない!」
ダッシュで時計塔に突進していった。
もちろん一人で行かせる訳にはいかない。長門もハルヒの後ろを追いかける。
時計塔の扉を開けると、そこはカラクリで埋め尽くされた空間だった。
巨大な歯車と機械の連なりが上層部まで続いている。
ハルヒ「うわあ… 面白いわね ここ」
ハルヒは入り口の脇にある階段を見つけると、さっさと上っていった。
しかたなく長門も一緒に階段を上る。
レーザー射出装置が作動し、ハルヒに向けて発射された。
すかさず長門がレーザーを手で受け止める。
長門(ミクルビームに比べればたいした威力ではない)
ハルヒは気付かずにどんどん先に行く。
長門(カリオストロ家の財宝は涼宮ハルヒの考えてるものとは違う)
長門(それに時計のカラクリには発動者自身を頃す仕掛けが施されてある)
長門(涼宮ハルヒにカラクリを発動させてはならない)
84: 2012/02/08(水) 23:58:59.06 ID:C0A/PgfN0
階段の踊り場で、長門はハルヒの前に回りこんで両手を広げた。
長門「待って」
長門「私の正体はSOS団に潜入した伯爵のスパイである」
長門「財宝が欲しければ私を倒してからにして欲しい」
ハルヒ「あははは そう来たのね」
ハルヒ「いいわ 捕まえられるもんなら捕まえてみなさいよ」
そう言うとハルヒは踊り場からジャンプして歯車に掴まった。
連結している歯車を次々と乗り換えて、どんどん上層まで登ってゆく。
長門は手近のパイプを引き抜くと、それを持ってハルヒを追いかけた。
ハルヒ「ずるいわよ有希 そんな武器なんか持って」
ハルヒはまた階段にジャンプすると備え付けてあった大型レンチを取った。
そのまま階段を上る。しばらくするとおあつらえむきの決闘場が見つかった。
ハルヒ「ふっふっふっふ いざ尋常に勝負!」
そこは二つの巨大な歯車が横倒しになってる場所だった。
ハルヒは歯車に飛び移ると、足踏みして長門が来るのを待った。
カラクリに乗って長門が到着した。もう一方の歯車に飛び乗る。
そのまま歯車の回転によって自動的にハルヒのほうに向かっていった。
足踏みをして待ち受けていたハルヒが大型レンチを突き出す。
ハルヒ「有希 受け止めてみて」
長門はそれを鉄パイプで受け止めた。
ハルヒ「上手い上手い その調子でもう一丁!」
再び歯車の回転にのって長門が帰ってきた。またハルヒがレンチを突き出す。
怪我をさせるとまずいので、長門は弾かれたふりをしてパイプを手放した。
ハルヒ「あっ ごめん! 大丈夫だった?」
長門「平気」
ハルヒ「ほら 手を貸して」
また戻ってきた長門の手を取ってこちらの歯車に移らせる。
二人は歯車の回転によって自動的に階段のほうに運ばれていった。
ハルヒ「階段に飛び移るわよ せーのっ」
ハルヒと長門は同時に着地した。
ハルヒ「面白かったわね 有希」
長門「………」
85: 2012/02/09(木) 00:04:47.42 ID:pdEI/T530
長門の苦労もむなしく、ハルヒは最上層に到達してしまった。
長門(このままでは涼宮ハルヒによってカラクリが発動してしまう)
長門(情報操作により彫像とカラクリの連動部分を解除)
長門(…できない フィアットで花嫁を追跡したときと同じ現象がおきている)
長門(涼宮ハルヒが財宝の出現を望む限り情報操作は遮断される)
ハルヒは東側の文字盤に通じる扉を開けた。
カリオストロ公国を一望できる壮大なパノラマが展開された。
湖面が足元のはるか下に見える。岸に沿って城下の町並みが広がっている。
その対岸にある巨大なカリオストロ城には手に届きそうである。
ハルヒ「凄い! 感動的だわ! 涙が出てきた」
しばし絶景に見とれていたハルヒだが、気を取り直して扉まわりを観察する。
扉のわきにプレート状の出っ張りが梯子のように上まで続いていた。
ハルヒ「怖かったら有希はここにいていいのよ」
長門「平気」
二人は出っ張りを上って羊の彫像の所までやってきた。
ハルヒ「やっぱり! 目の部分が穴になってる ちょうど指輪が入る大きさ」
ハルヒが指輪を出して羊の目にはめ込もうとすると、
長門「指輪を入れても何も起こらない」
ハルヒ「えっ」
長門「なぜならこの部分の仕込みはまだ終わってないから」
ハルヒ「嘘…」
長門「古泉一樹がクライマックスまで飛ばすのは無理だと言ったのはそういう事」
長門「嘘だと思うなら指輪を入れてみればいい」
ハルヒが急にがっかりした表情になった。
長門(情報操作が可能になった 今のうちにカラクリを無効化する)
ハルヒは指輪を目にはめ込んだ。何も起こらない。
ハルヒ「えーっ! ここまで来てそれは無いわよ!」
ハルヒ「有希 そういう事は早く言ってよ! 何のためにここまで来たのよ」
長門(このままでは涼宮ハルヒによってカラクリが発動してしまう)
長門(情報操作により彫像とカラクリの連動部分を解除)
長門(…できない フィアットで花嫁を追跡したときと同じ現象がおきている)
長門(涼宮ハルヒが財宝の出現を望む限り情報操作は遮断される)
ハルヒは東側の文字盤に通じる扉を開けた。
カリオストロ公国を一望できる壮大なパノラマが展開された。
湖面が足元のはるか下に見える。岸に沿って城下の町並みが広がっている。
その対岸にある巨大なカリオストロ城には手に届きそうである。
ハルヒ「凄い! 感動的だわ! 涙が出てきた」
しばし絶景に見とれていたハルヒだが、気を取り直して扉まわりを観察する。
扉のわきにプレート状の出っ張りが梯子のように上まで続いていた。
ハルヒ「怖かったら有希はここにいていいのよ」
長門「平気」
二人は出っ張りを上って羊の彫像の所までやってきた。
ハルヒ「やっぱり! 目の部分が穴になってる ちょうど指輪が入る大きさ」
ハルヒが指輪を出して羊の目にはめ込もうとすると、
長門「指輪を入れても何も起こらない」
ハルヒ「えっ」
長門「なぜならこの部分の仕込みはまだ終わってないから」
ハルヒ「嘘…」
長門「古泉一樹がクライマックスまで飛ばすのは無理だと言ったのはそういう事」
長門「嘘だと思うなら指輪を入れてみればいい」
ハルヒが急にがっかりした表情になった。
長門(情報操作が可能になった 今のうちにカラクリを無効化する)
ハルヒは指輪を目にはめ込んだ。何も起こらない。
ハルヒ「えーっ! ここまで来てそれは無いわよ!」
ハルヒ「有希 そういう事は早く言ってよ! 何のためにここまで来たのよ」
86: 2012/02/09(木) 00:07:31.89 ID:pdEI/T530
ハルヒがプンプン怒りながら戻ろうとすると突然、足元が崩れた。
悲鳴をあげる余裕も無く落下するハルヒ。
長門は壁面を走るようにハルヒを追いかけた。
途中でジャンプして空中での平泳ぎに切り替える。
ようやく追いついた長門はハルヒを抱きかかえるようにして頭から着水した。
湖面に大きな水柱が立った。
いつの間にか時計塔の回りに黒服の男たちが集まっていた。
侵入者を察知して急行したジョドーの部隊だ。
ジョドー「湖に落ちたぞ 急げ!」
双眼鏡で落下地点を見る。だが何も浮かび上がる気配は無い。
ジョドー「奴らは時計に張り付いて何をしてたんだ?」
ジョドー「よし 半分は捜索にまわれ 残りは文字盤を徹底的に調べるんだ」
長門は水中に隠れてジョドーたちをやり過ごしていた。
水から取り入れた酸素を口移しでハルヒに供給している。
幸い彼女は落下の途中で気を失っていた。
長門(指輪を彫像に入れたままだった 回収するのを忘れるとは…迂闊)
悲鳴をあげる余裕も無く落下するハルヒ。
長門は壁面を走るようにハルヒを追いかけた。
途中でジャンプして空中での平泳ぎに切り替える。
ようやく追いついた長門はハルヒを抱きかかえるようにして頭から着水した。
湖面に大きな水柱が立った。
いつの間にか時計塔の回りに黒服の男たちが集まっていた。
侵入者を察知して急行したジョドーの部隊だ。
ジョドー「湖に落ちたぞ 急げ!」
双眼鏡で落下地点を見る。だが何も浮かび上がる気配は無い。
ジョドー「奴らは時計に張り付いて何をしてたんだ?」
ジョドー「よし 半分は捜索にまわれ 残りは文字盤を徹底的に調べるんだ」
長門は水中に隠れてジョドーたちをやり過ごしていた。
水から取り入れた酸素を口移しでハルヒに供給している。
幸い彼女は落下の途中で気を失っていた。
長門(指輪を彫像に入れたままだった 回収するのを忘れるとは…迂闊)
87: 2012/02/09(木) 00:11:58.52 ID:pdEI/T530
小屋の窓から夕陽が差してきた。古泉はその光を浴びて目を覚ました。
キョンがテーブルに突っ伏して寝ている。部屋にはそれ以外に誰も居ない。
老人はまだ買出しから戻ってきてないようだ。
古泉はそっとベッドから抜け出して窓の外を覗いた。
クラリスが井戸水を汲んでいるのが見える。
夕陽に照らされた彼女の横顔はひどく哀しげだった。
古泉はふらつく足で小屋を出てクラリスの方に歩いていった。
クラリス「どなた?」
古泉「病み上がりのエスパーです」
クラリス「古泉さま!」
古泉「こんばんは クラリスさん」
クラリス「お体はもう平気なんですか」
古泉「僕は大丈夫です それよりあなたの方こそ顔色が良くないですよ」
クラリス「涼宮さんとの謎解きは本当に楽しかったけど」
クラリス「でもそのうち急に不安になってきて…」
古泉「楽しすぎて逆に怖くなったというわけですか?」
クラリス「私 心配なんです 本当にこのまま逃げ切れるのか」
クラリス「古泉さま どうしてわざわざこんな事を?」
クラリス「伯爵に捕まったら殺されるというのに」
古泉「なあに 悪に狙われるのがエスパーの宿命です」
古泉「仕事が終われば帰ります」
クラリス「お仕事…?」
古泉「僕の仕事は 悪い魔法使いに追われているお姫様を逃がすこと…」
古泉「どうか このエスパーめに救い出されてやって下さい」
クラリス「本気で仰っているの?」
古泉「はい」
古泉「人知れず世界の崩壊を防ぎ―」
古泉「むりやり花嫁にされようとしている女の子は緑の野に放してあげる」
古泉「これ みんなエスパーの仕事なんです」
キョンがテーブルに突っ伏して寝ている。部屋にはそれ以外に誰も居ない。
老人はまだ買出しから戻ってきてないようだ。
古泉はそっとベッドから抜け出して窓の外を覗いた。
クラリスが井戸水を汲んでいるのが見える。
夕陽に照らされた彼女の横顔はひどく哀しげだった。
古泉はふらつく足で小屋を出てクラリスの方に歩いていった。
クラリス「どなた?」
古泉「病み上がりのエスパーです」
クラリス「古泉さま!」
古泉「こんばんは クラリスさん」
クラリス「お体はもう平気なんですか」
古泉「僕は大丈夫です それよりあなたの方こそ顔色が良くないですよ」
クラリス「涼宮さんとの謎解きは本当に楽しかったけど」
クラリス「でもそのうち急に不安になってきて…」
古泉「楽しすぎて逆に怖くなったというわけですか?」
クラリス「私 心配なんです 本当にこのまま逃げ切れるのか」
クラリス「古泉さま どうしてわざわざこんな事を?」
クラリス「伯爵に捕まったら殺されるというのに」
古泉「なあに 悪に狙われるのがエスパーの宿命です」
古泉「仕事が終われば帰ります」
クラリス「お仕事…?」
古泉「僕の仕事は 悪い魔法使いに追われているお姫様を逃がすこと…」
古泉「どうか このエスパーめに救い出されてやって下さい」
クラリス「本気で仰っているの?」
古泉「はい」
古泉「人知れず世界の崩壊を防ぎ―」
古泉「むりやり花嫁にされようとしている女の子は緑の野に放してあげる」
古泉「これ みんなエスパーの仕事なんです」
89: 2012/02/09(木) 00:14:52.83 ID:pdEI/T530
クラリス「ありがとう…とてもうれしいの」
クラリス「でも あなたは伯爵の本当の恐ろしさをご存知ないのです」
クラリス「あなただけでなく 涼宮さんも長門さんも無事ではすみません」
クラリス「私は楽しいひと時が過ごせただけで十分満足しています」
クラリス「どうかこのまま日本に帰って」
古泉「あーあ 何ということだ」
古泉「その女の子は悪い魔法使いの力を信じるのに―」
古泉「エスパーの力を信じようとはしなかった」
古泉「その子が信じてくれたなら―」
古泉「エスパーは空を飛ぶことだって」
古泉「火の玉を飛ばすことだって出来るのに…」
ウッ ウッ…
ウウッ
ウーッ ウムムム…
ポン!
クラリス「まあ! スプーン」
古泉「マッガーレ」グニャ
クラリス「すごい!」
古泉「今はこれが精一杯…」
クラリス「フフフフ…」
古泉「アハハハハ」
クラリス「でも あなたは伯爵の本当の恐ろしさをご存知ないのです」
クラリス「あなただけでなく 涼宮さんも長門さんも無事ではすみません」
クラリス「私は楽しいひと時が過ごせただけで十分満足しています」
クラリス「どうかこのまま日本に帰って」
古泉「あーあ 何ということだ」
古泉「その女の子は悪い魔法使いの力を信じるのに―」
古泉「エスパーの力を信じようとはしなかった」
古泉「その子が信じてくれたなら―」
古泉「エスパーは空を飛ぶことだって」
古泉「火の玉を飛ばすことだって出来るのに…」
ウッ ウッ…
ウウッ
ウーッ ウムムム…
ポン!
クラリス「まあ! スプーン」
古泉「マッガーレ」グニャ
クラリス「すごい!」
古泉「今はこれが精一杯…」
クラリス「フフフフ…」
古泉「アハハハハ」
90: 2012/02/09(木) 00:22:17.56 ID:pdEI/T530
突然、サーチライトの光が古泉とクラリスを包んだ。。
何処からともなく現れた暗殺機関カゲの軍団が二人を取り囲む。
クラリス「キャーッ!」
カゲたちに押さえ込まれる古泉。クラリスは古泉から引き離されてしまった。
クラリス「古泉さま!」
古泉「君達っ ご婦人はもっと丁重に扱いたまえ!」
林の奥から伯爵がゆっくりと歩いてきた。
伯爵「ここはクラリスが子供の頃よく遊びに来てたそうだな」
伯爵「そういう場所は残らず洗い出してある 私を甘く見ては困るよ」
古泉「あなたと顔を合わせるのは これが初めてですね 伯爵」
伯爵「わざわざ妻の遊び相手してくれてありがとう 古泉君」
古泉「盛大なお出迎え痛み入ります」
伯爵「さっそくだが 君には消えてもらおう」
古泉「さあて そう簡単に消せますか?」
クラリス「やめて! その人を傷つけてはいけません!」
古泉「大丈夫です お嬢さん エスパーの力を信じなきゃ」
古泉はカゲたちに押されて井戸の前に追いこまれた。
古泉「さて 何をして遊びますか?」
伯爵「君を引き裂くのは簡単だが」
伯爵「間男の血で花嫁の思い出の地を 汚すこともあるまいと思ってね」
古泉「そんなこと言って… 後で後悔しますよ」
伯爵「へらず口はそれまでだ!」
古泉はカゲたちに抱えられて井戸に放り込まれた。
クラリス「ああ…」
91: 2012/02/09(木) 00:27:28.23 ID:pdEI/T530
小屋の中を捜索していたカゲたちがキョンを連行してきた。
伯爵「間男がもう一匹 こっちの方は随分さえない奴だな」
キョン「ほっとけ!」
伯爵「こいつも井戸に放り込んでおけ」
クラリス「もうやめて…これ以上…」
伯爵「フフフ… あとは発破をかけて井戸を埋めてしまえばいい」
クラリス「指輪を! 指輪を差し上げます だから二人を助けて!」
伯爵「指輪は二つとも回収した さっきジョドーから連絡が入ってね」
クラリス「では 涼宮さんたちも…」
伯爵は井戸を覗き込んだ。古泉とキョンが恨めしそうに見上げている。
伯爵「いい眺めだ 古泉君 名残惜しいよ」
古泉「クラリスさんに指一本でも触れたら あなたを頃します」
伯爵「ネズミめ! 生き埋めにしてやる!」
キョン「くそっ 本当にマジでくたばる5秒前だぜ…」
カゲの工作隊によって井戸が爆破された。
それを確認してから伯爵は車に乗り込んだ。クラリスは薬で眠らせてある。
伯爵「帰るぞ」
伯爵たちが去ったあと、気絶したハルヒを抱えた長門が姿をあらわした。
ジョドーたちを撒くのに思いのほか手間取ってしまった。
長門「………」
長門は一瞬のうちに、ここで起きたことをすべて理解した。
彼女は井戸の残骸を一瞥すると、森たちのいるホテルに向かった。
伯爵「間男がもう一匹 こっちの方は随分さえない奴だな」
キョン「ほっとけ!」
伯爵「こいつも井戸に放り込んでおけ」
クラリス「もうやめて…これ以上…」
伯爵「フフフ… あとは発破をかけて井戸を埋めてしまえばいい」
クラリス「指輪を! 指輪を差し上げます だから二人を助けて!」
伯爵「指輪は二つとも回収した さっきジョドーから連絡が入ってね」
クラリス「では 涼宮さんたちも…」
伯爵は井戸を覗き込んだ。古泉とキョンが恨めしそうに見上げている。
伯爵「いい眺めだ 古泉君 名残惜しいよ」
古泉「クラリスさんに指一本でも触れたら あなたを頃します」
伯爵「ネズミめ! 生き埋めにしてやる!」
キョン「くそっ 本当にマジでくたばる5秒前だぜ…」
カゲの工作隊によって井戸が爆破された。
それを確認してから伯爵は車に乗り込んだ。クラリスは薬で眠らせてある。
伯爵「帰るぞ」
伯爵たちが去ったあと、気絶したハルヒを抱えた長門が姿をあらわした。
ジョドーたちを撒くのに思いのほか手間取ってしまった。
長門「………」
長門は一瞬のうちに、ここで起きたことをすべて理解した。
彼女は井戸の残骸を一瞥すると、森たちのいるホテルに向かった。
92: 2012/02/09(木) 00:36:07.34 ID:pdEI/T530
ホテルのスイートルームでは橘への尋問が続いていた。
橘は椅子に縛り付けられていた。食事とトイレ以外は縄を解かれる事は無い。
森「それで地下工房を脱出するために火をつけたわけね」
橘「そのとき手近にあったニセルーブルをくすねたのです」
新川「それがポケットに入っていたこの札束ですか 素晴らしい!」
新川「ゴート札の秘密はやはり城の地下にあったんですね 興奮してきました」
森「新川 少し黙ってなさい」
突然、長門が部屋の真ん中に現れた。
抱えていたハルヒを手近のソファーに寝かせる。彼女はまだ目が覚めていない。
長門「緊急事態」
長門が手短に事情を説明する。時計塔の冒険、小屋が襲撃された事、そして…
井戸が爆破されたくだりを話したとき、長時間の尋問にも耐えた橘が嗚咽した。
長門「善後策を協議する必要がある」
森「その前にスポンサーを非常招集しなくちゃ お伺いを立てておかないと」
森は日本の同志に指示を出すために受話器を取った。
長門「ここに睡眠薬があるはず それを涼宮ハルヒに投与して欲しい」
長門「これから起こる事を涼宮ハルヒに見られたくない」
新川「分かりました」
新川はカバンから注射器と睡眠薬のアンプルを取り出した。
長門は相変わらず無表情である。新川には長門の心中は窺い知れない。
だがSOS団のメンバーならその表情に怒りの感情を読み取ったかもしれない。
橘は椅子に縛り付けられていた。食事とトイレ以外は縄を解かれる事は無い。
森「それで地下工房を脱出するために火をつけたわけね」
橘「そのとき手近にあったニセルーブルをくすねたのです」
新川「それがポケットに入っていたこの札束ですか 素晴らしい!」
新川「ゴート札の秘密はやはり城の地下にあったんですね 興奮してきました」
森「新川 少し黙ってなさい」
突然、長門が部屋の真ん中に現れた。
抱えていたハルヒを手近のソファーに寝かせる。彼女はまだ目が覚めていない。
長門「緊急事態」
長門が手短に事情を説明する。時計塔の冒険、小屋が襲撃された事、そして…
井戸が爆破されたくだりを話したとき、長時間の尋問にも耐えた橘が嗚咽した。
長門「善後策を協議する必要がある」
森「その前にスポンサーを非常招集しなくちゃ お伺いを立てておかないと」
森は日本の同志に指示を出すために受話器を取った。
長門「ここに睡眠薬があるはず それを涼宮ハルヒに投与して欲しい」
長門「これから起こる事を涼宮ハルヒに見られたくない」
新川「分かりました」
新川はカバンから注射器と睡眠薬のアンプルを取り出した。
長門は相変わらず無表情である。新川には長門の心中は窺い知れない。
だがSOS団のメンバーならその表情に怒りの感情を読み取ったかもしれない。
93: 2012/02/09(木) 00:39:26.98 ID:pdEI/T530
数時間後、スイートルームの寝室ではスポンサーとの会見が行なわれていた。
相変わらず椅子に縛り付けられた橘の両脇に森と新川が立っている。
正面のテーブルの上にはノートパソコンが置かれていた。
そのモニターに何処かの会議室の様子が中継されている。
会議室のテーブルを囲んでいるのはいずれも日本の大企業のトップだ。
彼らは非常召集に集まった機関のスポンサーたちである。
長門はこの会見には立ち会わず、リビングに控えていた。
スポンサー1「何にしても困ったもんですな 陰謀です これは」
橘「まぎれもない事実なのよ、これは! 明白な証拠があるのです!」
橘「私は見たのです 最新の印刷機がズラーリとこう…」
森「そんなことは わかってるわよ! これは高度に政治的な問題なのよ」
橘は長門の話を聞いてクラリスを救う腹を決めていた。
古泉の弔い合戦である。
だが強引に連れ出すのが無理だという事は、嫌というほど思い知らされた。
残る手段はカリオストロ伯爵の権力を奪うしかない。
幸い自分はゴート札というスキャンダルの証拠を握っている。
そこで遺恨を捨て、この機会にマスコミへのパイプを持つ機関の協力を求めた。
しかし…
相変わらず椅子に縛り付けられた橘の両脇に森と新川が立っている。
正面のテーブルの上にはノートパソコンが置かれていた。
そのモニターに何処かの会議室の様子が中継されている。
会議室のテーブルを囲んでいるのはいずれも日本の大企業のトップだ。
彼らは非常召集に集まった機関のスポンサーたちである。
長門はこの会見には立ち会わず、リビングに控えていた。
スポンサー1「何にしても困ったもんですな 陰謀です これは」
橘「まぎれもない事実なのよ、これは! 明白な証拠があるのです!」
橘「私は見たのです 最新の印刷機がズラーリとこう…」
森「そんなことは わかってるわよ! これは高度に政治的な問題なのよ」
橘は長門の話を聞いてクラリスを救う腹を決めていた。
古泉の弔い合戦である。
だが強引に連れ出すのが無理だという事は、嫌というほど思い知らされた。
残る手段はカリオストロ伯爵の権力を奪うしかない。
幸い自分はゴート札というスキャンダルの証拠を握っている。
そこで遺恨を捨て、この機会にマスコミへのパイプを持つ機関の協力を求めた。
しかし…
94: 2012/02/09(木) 00:41:47.85 ID:pdEI/T530
森は冷たい目で橘を見下ろした。
森「わが機関の活動範囲は涼宮ハルヒ周辺に限定されているの」
橘「森さん! 伯爵は古泉さんを頃したのよ!」
森「わかってないわね 相手は国連加盟の独立国なのよ」
森「機関といえども首を突っ込む事は出来ないわ」
新川「しかも橘さん、情勢は極めて不利です」
新川「世界中の新聞のトップを飾っているこの写真をご覧になりましたか」
新川「“自ら花嫁を取り返した伯爵の勇気 SOS団 クラリス姫誘拐に失敗”」
スポンサー2「“SOS団の一味 警備会社社長に変装”ともあるが?」
橘「それは正真正銘の自分です!」
森「困った人ね 組織のトップが 軽率じゃない」
橘「真相は白状したはずよ!」
森「問題はね うちのスポンサーがどっちを選ぶかなの」
森「お飾りのお姫様か一国を牛耳る実力者か」
新川「お姫様に勝ち目はありませんね」
スポンサー3「伯爵は日本の財界に友人が多いそうじゃないか」
スポンサー4「真相を暴かれると困る企業も多いんじゃないかね」
スポンサー5「そのとおり!」
スポンサー6「現に大量のニセドルが某企業によって発注された証拠がある」
スポンサー7「そのニセルーブルこそ鶴屋財閥の発注じゃないのかね!」
森「おやめ下さい! ここに企業間の争いを持ち込んでもらっては困ります」
スポンサーにとって一機関員の生氏など問題ではないようだ。
絶望してうつむく橘。
新川「ご覧の通り この件はそちらだけで対処してもらうしかありませんな」
森「わが機関の活動範囲は涼宮ハルヒ周辺に限定されているの」
橘「森さん! 伯爵は古泉さんを頃したのよ!」
森「わかってないわね 相手は国連加盟の独立国なのよ」
森「機関といえども首を突っ込む事は出来ないわ」
新川「しかも橘さん、情勢は極めて不利です」
新川「世界中の新聞のトップを飾っているこの写真をご覧になりましたか」
新川「“自ら花嫁を取り返した伯爵の勇気 SOS団 クラリス姫誘拐に失敗”」
スポンサー2「“SOS団の一味 警備会社社長に変装”ともあるが?」
橘「それは正真正銘の自分です!」
森「困った人ね 組織のトップが 軽率じゃない」
橘「真相は白状したはずよ!」
森「問題はね うちのスポンサーがどっちを選ぶかなの」
森「お飾りのお姫様か一国を牛耳る実力者か」
新川「お姫様に勝ち目はありませんね」
スポンサー3「伯爵は日本の財界に友人が多いそうじゃないか」
スポンサー4「真相を暴かれると困る企業も多いんじゃないかね」
スポンサー5「そのとおり!」
スポンサー6「現に大量のニセドルが某企業によって発注された証拠がある」
スポンサー7「そのニセルーブルこそ鶴屋財閥の発注じゃないのかね!」
森「おやめ下さい! ここに企業間の争いを持ち込んでもらっては困ります」
スポンサーにとって一機関員の生氏など問題ではないようだ。
絶望してうつむく橘。
新川「ご覧の通り この件はそちらだけで対処してもらうしかありませんな」
96: 2012/02/09(木) 00:45:34.32 ID:pdEI/T530
開放された橘が肩を落として寝室から出てきた。
リビングには橘の部下が二名、身柄を引き取りに駆けつけていた。
部下1「橘さん 出動準備できました!」
部下2「いつでもカリオストロ城へ出発できます!」
橘「出動はありません」
部下2「ハッ?」
橘「協議の結果、我々はクラリス姫の件から手を引くことになった」
橘「全員 帰国の準備をして」
橘の組織は機関とは比べ物にならないほど小さい。
組織が伯爵のスキャンダルを叫んだところで、誰も取り合わないだろう。
あきらめてスイートルームを出ようとしたとき―
長門「橘京子 待って」
森と新川が寝室から出てきた。
森「橘さん、スポンサー向けのお芝居は終わったわ」
新川「改めて今後の打ち合わせをしましょうか」
橘「一体…どういう事ですか?」
森「古泉をあんな目に合わされて このまま引き下がれるわけ無いじゃない」
森「何としても伯爵に一泡吹かせないと気がすまないわ」
森「伯爵の秘密を全世界に公表してやる」
橘「でもスポンサーが」
新川「我々が勝手にやる事です もちろん処分は覚悟の上です」
新川「それにゴート札の真相を暴くチャンスです 逃す手はありません」
橘「新川さん…」
その時、何者かが部屋のドアをノックする音が響いた。凍りつく一同。
長門「TPDDの作動を感知した 表にいるのは朝比奈みくる」
長門は素早くドアに向かうと、扉を開けた。外には誰もいない。
長門「新聞の切抜きが落ちている」
長門「“明朝 結婚式のためバチカンから大司教が来る” とある」
リビングには橘の部下が二名、身柄を引き取りに駆けつけていた。
部下1「橘さん 出動準備できました!」
部下2「いつでもカリオストロ城へ出発できます!」
橘「出動はありません」
部下2「ハッ?」
橘「協議の結果、我々はクラリス姫の件から手を引くことになった」
橘「全員 帰国の準備をして」
橘の組織は機関とは比べ物にならないほど小さい。
組織が伯爵のスキャンダルを叫んだところで、誰も取り合わないだろう。
あきらめてスイートルームを出ようとしたとき―
長門「橘京子 待って」
森と新川が寝室から出てきた。
森「橘さん、スポンサー向けのお芝居は終わったわ」
新川「改めて今後の打ち合わせをしましょうか」
橘「一体…どういう事ですか?」
森「古泉をあんな目に合わされて このまま引き下がれるわけ無いじゃない」
森「何としても伯爵に一泡吹かせないと気がすまないわ」
森「伯爵の秘密を全世界に公表してやる」
橘「でもスポンサーが」
新川「我々が勝手にやる事です もちろん処分は覚悟の上です」
新川「それにゴート札の真相を暴くチャンスです 逃す手はありません」
橘「新川さん…」
その時、何者かが部屋のドアをノックする音が響いた。凍りつく一同。
長門「TPDDの作動を感知した 表にいるのは朝比奈みくる」
長門は素早くドアに向かうと、扉を開けた。外には誰もいない。
長門「新聞の切抜きが落ちている」
長門「“明朝 結婚式のためバチカンから大司教が来る” とある」
104: 2012/02/09(木) 21:31:39.28 ID:pdEI/T530
翌朝、カリオストロ公国の田園風景に異変が生じた。
イタリア国境と町を結ぶ幹線道路の途中で崖崩れが発生したのだ。
そこに結婚式の見物客が大量に押し寄せたため、交通が完全にマヒしてしまった。
キョンがパンクを直したのどかな道も鈴なりの車列で埋め尽くされた。
道路に椅子とテーブルを広げてカードを始めるドライバーまで現れる始末。
大司教を乗せた車も渋滞に巻き込まれて身動きが取れなくなっていた。
運転手「急いでるんだ どいてくれ」
観光客「ムダ ムダ この先ギッチリ詰まってるんだ」
大司教「他の道はないのかね? 遅れてしまうぞ」
運転手「はあ」
子山羊を抱いた少女が大司教に話し掛けてきた。
少女「大司教 あなたはこれからクラリス姫の結婚式に向かうところ」
少女「それがあなたがここにいる理由」
少女「私という個体はこの子山羊に祝福をもらう事を望んでいる」
大司教「ん…」
子山羊に十字を切る大司教。
運転手「土地の娘だね カリオストロの城へ行く他の道はないかね」
少女「田舎道でいいならあっちにある」
運転手「助かった 案内してくれないか さ 乗って乗って」
子山羊「ハイハイ 大司教様のためならば ハイッ」
運転手「?」
少女「今のは腹話術」
105: 2012/02/09(木) 21:35:34.68 ID:pdEI/T530
橘警備保障のトラックは夜のうちに突貫工事で白くペイントされた。
そして果物輸送トラックに偽装され、夜明けと同時に町を出た。
大きく迂回してカリオストロ城にたどり着くと、
ちょうど城門の前にある小高い丘の裏手に止まった。
橘が車を下りた。荷物に隠れてた部下達も荷台から降りて整列した。
橘「結婚式当日は夜通し城門が開放されている」
橘「日が落ちるのを待って我々は手で押してトラックを丘の頂上に運びます」
橘「その後は合図があるまで待機」
橘「合図と同時にトラックで丘を下って一気に城に突入する」
橘「段取りは以上です では日が沈むまで解散」
部下達「はっ!」
そして果物輸送トラックに偽装され、夜明けと同時に町を出た。
大きく迂回してカリオストロ城にたどり着くと、
ちょうど城門の前にある小高い丘の裏手に止まった。
橘が車を下りた。荷物に隠れてた部下達も荷台から降りて整列した。
橘「結婚式当日は夜通し城門が開放されている」
橘「日が落ちるのを待って我々は手で押してトラックを丘の頂上に運びます」
橘「その後は合図があるまで待機」
橘「合図と同時にトラックで丘を下って一気に城に突入する」
橘「段取りは以上です では日が沈むまで解散」
部下達「はっ!」
106: 2012/02/09(木) 21:39:53.81 ID:pdEI/T530
城の中庭にテレビの中継者が入ってきた。
ボディには大きくツルヤテレビのロゴ・マークがペイントされている。
中から颯爽と下りてきた鶴屋さんが早速スタッフに指示を出す。
続いて朝比奈さんのヤング・バージョンが降りてきた。
口を半開きにしてキョロキョロする姿はおのぼりさん丸出しだ。
みくる(小)「ここ、どこですか? 何でわたし連れて来られたんですかぁ?」
鶴屋「あはははっ これがハルにゃんにも内緒にしてた秘密のバイトっさ」
鶴屋「ツルヤテレビの誇る美人レポーター朝比奈みくるの初仕事にょろ」
鶴屋「みんなビックリすると思わないかいっ」
みくる(小)「ふえええええ!」
ボディには大きくツルヤテレビのロゴ・マークがペイントされている。
中から颯爽と下りてきた鶴屋さんが早速スタッフに指示を出す。
続いて朝比奈さんのヤング・バージョンが降りてきた。
口を半開きにしてキョロキョロする姿はおのぼりさん丸出しだ。
みくる(小)「ここ、どこですか? 何でわたし連れて来られたんですかぁ?」
鶴屋「あはははっ これがハルにゃんにも内緒にしてた秘密のバイトっさ」
鶴屋「ツルヤテレビの誇る美人レポーター朝比奈みくるの初仕事にょろ」
鶴屋「みんなビックリすると思わないかいっ」
みくる(小)「ふえええええ!」
107: 2012/02/09(木) 21:44:02.97 ID:pdEI/T530
城のベランダからその様子を見下ろしているジョドーとグスタフ。
グスタフ「よろしいのですか テレビなどに公開して」
ジョドー「正統なご婚儀であることを世界に示さんという殿下のお心だ」
ジョドー「おお 大司教様がお着きになった」
中庭に入ってきた車から大司教が降りてきた。
続いてちゃっかり同乗してきた子山羊を抱えた少女も車からおりる。
グスタフ「SOS団は来るのでしょうか」
ジョドー「花嫁は私のカゲどもがお守りする」
ジョドー「お前たちは門を守っておればよい」
グスタフ「ハッ」
グスタフ「よろしいのですか テレビなどに公開して」
ジョドー「正統なご婚儀であることを世界に示さんという殿下のお心だ」
ジョドー「おお 大司教様がお着きになった」
中庭に入ってきた車から大司教が降りてきた。
続いてちゃっかり同乗してきた子山羊を抱えた少女も車からおりる。
グスタフ「SOS団は来るのでしょうか」
ジョドー「花嫁は私のカゲどもがお守りする」
ジョドー「お前たちは門を守っておればよい」
グスタフ「ハッ」
108: 2012/02/09(木) 21:49:27.41 ID:pdEI/T530
礼拝堂にカメラを設置していた鶴屋が声をかけられた。振り返ると長門がいた。
鶴屋「あっ 長門っち どうしたのその格好 ハイジのコスプレ?」
長門「コスプレではない」
鶴屋「まずい所見られちゃったかな みんなには内緒にしてたのに」
鶴屋「実はツルヤテレビが結婚式の放映権を獲得したのさ」
鶴屋「この機会にみくるをレポーターとして大々的に売り出そうと思ったにょろ」
鶴屋「結婚式の後でそっちと合流するつもりだったけど」
鶴屋「長門っちがここにいるって事は みんなにはもうバレてるのかい?」
長門「知ってるのは私だけ それよりあなたに頼みがある」
鶴屋「長門っちが頼み事なんて珍しいね お姉さんが何でも聞いてあげるよっ」
鶴屋「あっ 長門っち どうしたのその格好 ハイジのコスプレ?」
長門「コスプレではない」
鶴屋「まずい所見られちゃったかな みんなには内緒にしてたのに」
鶴屋「実はツルヤテレビが結婚式の放映権を獲得したのさ」
鶴屋「この機会にみくるをレポーターとして大々的に売り出そうと思ったにょろ」
鶴屋「結婚式の後でそっちと合流するつもりだったけど」
鶴屋「長門っちがここにいるって事は みんなにはもうバレてるのかい?」
長門「知ってるのは私だけ それよりあなたに頼みがある」
鶴屋「長門っちが頼み事なんて珍しいね お姉さんが何でも聞いてあげるよっ」
109: 2012/02/09(木) 22:11:08.00 ID:pdEI/T530
深夜―
12時を告げる鐘の音が城内に響く。
伯爵が花嫁の控え室を開けた。花嫁衣裳のクラリスが立っている。
その目は薄い膜がかかったようにぼんやりしていた。
伯爵「光と影が一つとなる時が来た 来い クラリス」
伯爵がマントを翻してクラリスに手を差し伸べた。
彼女は酔ったようにふらふらと伯爵の胸にすがりついた。
黒頭巾を被ったカゲたちを従え、伯爵とクラリスは城の中庭を行進した。
かがり火がその行列を照らして城壁に濃い影を映しだす。
やがて行列は礼拝堂に到着した。世界中から集まった招待客が入口に注目する。
伯爵とクラリスはゆっくりと大司教の前まで歩いてきた。
大司教「由緒ある古き血の一族―」
大司教「カリオストロの正統な後継者である証しをここへ」
黒頭巾を被った介添え役のカゲが指輪を差し出す。
大司教「古の慣わしに従い指輪を交わして婚姻の誓いとなす」
大司教「カリオストロ公国大公息女クラリス・ド・カリオストロよ」
大司教「この婚姻に同意するか 異議なき時は沈黙をもって答えよ」
クラリス「………」
大司教「神の祝福があらんことを…」
古泉の声「異議あり」
古泉の声「この婚礼は欲望の汚れに満ちているぞ」
12時を告げる鐘の音が城内に響く。
伯爵が花嫁の控え室を開けた。花嫁衣裳のクラリスが立っている。
その目は薄い膜がかかったようにぼんやりしていた。
伯爵「光と影が一つとなる時が来た 来い クラリス」
伯爵がマントを翻してクラリスに手を差し伸べた。
彼女は酔ったようにふらふらと伯爵の胸にすがりついた。
黒頭巾を被ったカゲたちを従え、伯爵とクラリスは城の中庭を行進した。
かがり火がその行列を照らして城壁に濃い影を映しだす。
やがて行列は礼拝堂に到着した。世界中から集まった招待客が入口に注目する。
伯爵とクラリスはゆっくりと大司教の前まで歩いてきた。
大司教「由緒ある古き血の一族―」
大司教「カリオストロの正統な後継者である証しをここへ」
黒頭巾を被った介添え役のカゲが指輪を差し出す。
大司教「古の慣わしに従い指輪を交わして婚姻の誓いとなす」
大司教「カリオストロ公国大公息女クラリス・ド・カリオストロよ」
大司教「この婚姻に同意するか 異議なき時は沈黙をもって答えよ」
クラリス「………」
大司教「神の祝福があらんことを…」
古泉の声「異議あり」
古泉の声「この婚礼は欲望の汚れに満ちているぞ」
110: 2012/02/09(木) 22:16:20.89 ID:pdEI/T530
何処からともなく響いてきた声に騒然となる招待客たち。
祭壇の十字架が土台から崩れた。その土台の中から御輿に乗った古泉が現れた。
御輿を担いでいるのは長門と森だ。古泉の顔は包帯で包まれている。
大司教「オオッ 呪いじゃ」
伯爵「騒ぐな!」
伯爵「ネズミめ生きておったか」
古泉「地下牢の亡者を代表して参上した 花嫁を頂きたい」
大司教「ああ これでは式はムリじゃ」
伯爵「下がっておれ よい余興だ」
大司教はクラリスをかばって後ろに下がった。そしてこっそり耳元でささやく。
大司教「クラリスさん お迎えに来ましたよ」
古泉を担いだ御輿は一歩一歩伯爵に近付いていく。幽かに鈴の音が響いている。
招待客「化け物だ!」
祭壇の十字架が土台から崩れた。その土台の中から御輿に乗った古泉が現れた。
御輿を担いでいるのは長門と森だ。古泉の顔は包帯で包まれている。
大司教「オオッ 呪いじゃ」
伯爵「騒ぐな!」
伯爵「ネズミめ生きておったか」
古泉「地下牢の亡者を代表して参上した 花嫁を頂きたい」
大司教「ああ これでは式はムリじゃ」
伯爵「下がっておれ よい余興だ」
大司教はクラリスをかばって後ろに下がった。そしてこっそり耳元でささやく。
大司教「クラリスさん お迎えに来ましたよ」
古泉を担いだ御輿は一歩一歩伯爵に近付いていく。幽かに鈴の音が響いている。
招待客「化け物だ!」
111: 2012/02/09(木) 22:19:55.91 ID:pdEI/T530
桟敷からその様子を中継していたみくるにとっても驚愕の事態である。
しかし真面目な彼女は支離滅裂になりながらもレポートを続ける。
みくる(小)「たたたた大変なことになりました!」
みくる(小)「SOS団です SOS団が出ました! なぜか森さんもいます」
みくる(小)「わたしの代理という事でしょうか」
衛士「放送を中止しろ!」
朝比奈さんのマイクを奪おうとする衛士。
みくる(小)「ひ~っ ごめんなさ~い」
鶴屋「何すんのさっ おいたは駄目だよ青年!」
カメラマンの鶴屋も加わって激しい揉み合いになる。
しかし真面目な彼女は支離滅裂になりながらもレポートを続ける。
みくる(小)「たたたた大変なことになりました!」
みくる(小)「SOS団です SOS団が出ました! なぜか森さんもいます」
みくる(小)「わたしの代理という事でしょうか」
衛士「放送を中止しろ!」
朝比奈さんのマイクを奪おうとする衛士。
みくる(小)「ひ~っ ごめんなさ~い」
鶴屋「何すんのさっ おいたは駄目だよ青年!」
カメラマンの鶴屋も加わって激しい揉み合いになる。
112: 2012/02/09(木) 22:22:54.03 ID:pdEI/T530
その様子を車内テレビで見ていた橘警備保障の面々。
放送が中断され、画面がテストパターンに切り替わった。
橘「突撃!」
号令と同時にトラックが逆落としに丘を下っていく。
そのまま城門の遮断機を押し破ると、一気に中庭まで進入した。
放送が中断され、画面がテストパターンに切り替わった。
橘「突撃!」
号令と同時にトラックが逆落としに丘を下っていく。
そのまま城門の遮断機を押し破ると、一気に中庭まで進入した。
113: 2012/02/09(木) 22:29:29.67 ID:pdEI/T530
恐慌をきたした堂内では招待客が右往左往していた。
大司教は必氏でクラリスをかばっている。だが彼女は何の反応も見せない。
大司教「クラリスさん クラリスさん」
大司教「かわいそうに 薬を飲まされましたね」
大司教「伯爵め 口をきけないようにしたわけですか」
カゲたちが一斉に抜刀した。御輿の古泉をハリネズミのように串刺しにする。
クラリス「キャーッ!」
このショッキングな光景を目撃して、クラリスはようやく正気に戻った。
クラリス「古泉さま!」
大司教「ああ いけません 近づいてはなりませんぞ」
伯爵「ハハハハ! 愚かなり 古泉」
伯爵「その者どもも片づけろ!」
カゲたちが長門と森に殺到した。
だが二人は素早く左右に分かれると、招待客の中に紛れ込んだ。
古泉が串刺しのまま宙に持ち上げられた。だが彼はまだ喋っている。
古泉「クラリス 泣かないでください クラリス」
古泉「今 そこへ行ってあげます」
古泉「ふもっふ!」
突然、古泉の体が爆発して中から大量のゴート札が撒き散らされた。
伯爵「うわっ!」
古泉の首が伯爵の足元に転がってきた。それはマネキンの首である。
堂内のあちこちから古泉の笑い声が響いた。
古泉の声「アハハハハ… ウフフフ…」
古泉の声「気に入ってくれましたか 伯爵 このプレゼント」
大司教は必氏でクラリスをかばっている。だが彼女は何の反応も見せない。
大司教「クラリスさん クラリスさん」
大司教「かわいそうに 薬を飲まされましたね」
大司教「伯爵め 口をきけないようにしたわけですか」
カゲたちが一斉に抜刀した。御輿の古泉をハリネズミのように串刺しにする。
クラリス「キャーッ!」
このショッキングな光景を目撃して、クラリスはようやく正気に戻った。
クラリス「古泉さま!」
大司教「ああ いけません 近づいてはなりませんぞ」
伯爵「ハハハハ! 愚かなり 古泉」
伯爵「その者どもも片づけろ!」
カゲたちが長門と森に殺到した。
だが二人は素早く左右に分かれると、招待客の中に紛れ込んだ。
古泉が串刺しのまま宙に持ち上げられた。だが彼はまだ喋っている。
古泉「クラリス 泣かないでください クラリス」
古泉「今 そこへ行ってあげます」
古泉「ふもっふ!」
突然、古泉の体が爆発して中から大量のゴート札が撒き散らされた。
伯爵「うわっ!」
古泉の首が伯爵の足元に転がってきた。それはマネキンの首である。
堂内のあちこちから古泉の笑い声が響いた。
古泉の声「アハハハハ… ウフフフ…」
古泉の声「気に入ってくれましたか 伯爵 このプレゼント」
114: 2012/02/09(木) 22:34:39.05 ID:pdEI/T530
招待客の頭上をゴート札が舞い落ちている。
古泉の声「あなたの作ったニセ札です 指輪の代金に受け取ってください」
伯爵「くそーっ 奴を探せ! この中にいるはずだ」
介添え役が持っている指輪に大司教の手が伸びて、それを掴み取った。
介添え役「あっ!」
大司教「ふふっ 確かにもらいましたよ!」
伯爵「き 貴様は!? まさか…」
大司教が顔のマスクを剥ぎ取った。中から新川さんの顔が現れた。
伯爵「誰だ!」
クラリス「誰?」
新川「ウフフッ」
伯爵「おのれ ふざけたマネをしおって」
新川「妬かない 妬かない 口リコン伯爵 火傷しますぞ!」
新川はマントを広げた。そこには大量のロケットがくくり付けられていた。
新川「セカンドレイド!」
それらを一斉に発射する。堂内のいたるところで花火が炸裂した。
古泉の声「あなたの作ったニセ札です 指輪の代金に受け取ってください」
伯爵「くそーっ 奴を探せ! この中にいるはずだ」
介添え役が持っている指輪に大司教の手が伸びて、それを掴み取った。
介添え役「あっ!」
大司教「ふふっ 確かにもらいましたよ!」
伯爵「き 貴様は!? まさか…」
大司教が顔のマスクを剥ぎ取った。中から新川さんの顔が現れた。
伯爵「誰だ!」
クラリス「誰?」
新川「ウフフッ」
伯爵「おのれ ふざけたマネをしおって」
新川「妬かない 妬かない 口リコン伯爵 火傷しますぞ!」
新川はマントを広げた。そこには大量のロケットがくくり付けられていた。
新川「セカンドレイド!」
それらを一斉に発射する。堂内のいたるところで花火が炸裂した。
115: 2012/02/09(木) 22:44:33.45 ID:pdEI/T530
ツルヤテレビの映像が回復した。
スパナで衛士の頭を張り倒す鶴屋さんが映し出された。
鶴屋「エイッ 皆さん めがっさお待たせしました 放送を再開しますっ」
鶴屋「ほら みくる 続けて」
みくる(小)「い、今や式場はすごく…大混乱です」
みくる(小)「大司教と思ってた人は新川さんでした」
みくる(小)「え~と それから…新川さんはすごく料理が上手です!」
長門「落ち着いたほうがいい」
いつの間にかみくるの後ろに長門が立っていた。
みくる(小)「ひっ 長門さん! だって何がどうなってるのか…」
長門は撮影機材に偽装したシモノフPTRS1941 対戦車ライフルを取り出した。
ヨーロッパの武器商人にコネクションを持つ田丸兄弟が送ってくれたものだ。
銃身が2メートルもあるそれを軽々と持ち上げると反対側の壁にねらいを定める。
長門「耳を塞いで」
轟音とともに対戦車ライフルが火を噴き、壁に大きな穴があいた。
「素人が撃つと肩の骨が砕ける」といわれるほどの反動を持つライフルなのに、
長門は平然としている。
長門「また後で」
ライフルを抱えたまま長門は桟敷を飛び下りた。
みくる(小)「きゅぅ…」
鶴屋「みくる しっかりして! カメラは回ってるよっ!」
スパナで衛士の頭を張り倒す鶴屋さんが映し出された。
鶴屋「エイッ 皆さん めがっさお待たせしました 放送を再開しますっ」
鶴屋「ほら みくる 続けて」
みくる(小)「い、今や式場はすごく…大混乱です」
みくる(小)「大司教と思ってた人は新川さんでした」
みくる(小)「え~と それから…新川さんはすごく料理が上手です!」
長門「落ち着いたほうがいい」
いつの間にかみくるの後ろに長門が立っていた。
みくる(小)「ひっ 長門さん! だって何がどうなってるのか…」
長門は撮影機材に偽装したシモノフPTRS1941 対戦車ライフルを取り出した。
ヨーロッパの武器商人にコネクションを持つ田丸兄弟が送ってくれたものだ。
銃身が2メートルもあるそれを軽々と持ち上げると反対側の壁にねらいを定める。
長門「耳を塞いで」
轟音とともに対戦車ライフルが火を噴き、壁に大きな穴があいた。
「素人が撃つと肩の骨が砕ける」といわれるほどの反動を持つライフルなのに、
長門は平然としている。
長門「また後で」
ライフルを抱えたまま長門は桟敷を飛び下りた。
みくる(小)「きゅぅ…」
鶴屋「みくる しっかりして! カメラは回ってるよっ!」
116: 2012/02/09(木) 22:49:30.57 ID:pdEI/T530
華麗な宙返りを決めて長門は壁の穴の前に着地した。
クラリスを抱えた新川がこちらに向かっている。その二人を守る森。
森は剣をふるって、追いすがるカゲたちを防いでいた。
だがカゲは特殊装甲に守られているため、ダメージを与える事が出来ない。
長門は対戦車ライフルを構えた。
クラリスたちに襲いかかるカゲを一人一人正確に打ち抜いていく。
そのさい、氏なない程度に銃弾を空中で減速させておくのを忘れない。
地球人を頃す事は情報統合思念体から許可されていないのだ。
クラリス「長門さん!」
壁の穴にたどり着いたクラリスが嬉しそうに声をかける。
クラリス「無事だったのね では涼宮さんも?」
長門「無事」
クラリス「よかった…ところでこの方はどなたですか?」
クラリスは不思議そうに新川を見た。
長門「エスパー二号」
クラリス「では古泉さまのお仲間ですね」
クラリス「ねえ 古泉さまは何処にいらっしゃるの?」
新川「ここにはいません」
クラリス「でもさっきあの方の声が…」
長門「あれは私の腹話術」
この会話の間にも長門はライフルを撃ちつづけている。
森「クラリスさん とにかく今は脱出することだけを考えて」
クラリス「………」
クラリスたちは壁の穴を抜けて走り去った。
伯爵「追え 逃がすな!」
伯爵は動けるカゲをかき集めてクラリスたちを追った。
クラリスを抱えた新川がこちらに向かっている。その二人を守る森。
森は剣をふるって、追いすがるカゲたちを防いでいた。
だがカゲは特殊装甲に守られているため、ダメージを与える事が出来ない。
長門は対戦車ライフルを構えた。
クラリスたちに襲いかかるカゲを一人一人正確に打ち抜いていく。
そのさい、氏なない程度に銃弾を空中で減速させておくのを忘れない。
地球人を頃す事は情報統合思念体から許可されていないのだ。
クラリス「長門さん!」
壁の穴にたどり着いたクラリスが嬉しそうに声をかける。
クラリス「無事だったのね では涼宮さんも?」
長門「無事」
クラリス「よかった…ところでこの方はどなたですか?」
クラリスは不思議そうに新川を見た。
長門「エスパー二号」
クラリス「では古泉さまのお仲間ですね」
クラリス「ねえ 古泉さまは何処にいらっしゃるの?」
新川「ここにはいません」
クラリス「でもさっきあの方の声が…」
長門「あれは私の腹話術」
この会話の間にも長門はライフルを撃ちつづけている。
森「クラリスさん とにかく今は脱出することだけを考えて」
クラリス「………」
クラリスたちは壁の穴を抜けて走り去った。
伯爵「追え 逃がすな!」
伯爵は動けるカゲをかき集めてクラリスたちを追った。
117: 2012/02/09(木) 22:54:10.19 ID:pdEI/T530
ツルヤテレビの映像。
画面には必氏でレポートを続けるみくるの姿があった。
みくる(小)「みんな 逃げちゃいました 伯爵 激怒して追って行きます」
みくる(小)「無事に逃げる事が出来るのでしょうか…」
みくる(小)「大丈夫! 長門さんがいるならきっと上手く逃げられます」
カメラが入り口にパンすると、橘警備保障の一団が乱入してきた。
みくる(小)「あっ! あの人知ってます! 橘さんです」
みくる(小)「私 あの人に誘拐されかけて…えっ?」
鶴屋の出したカンペを読むみくる。
みくる(小)「たちばな…けいび…ほしょう…あっ、そうなんですか」
みくる(小)「え~と 彼女は城内のセキュリティを担当する人だそうです」
みくる(小)「しばらく見ないと思ったらそんな事をしてたんですね」
カメラが橘にズームした。
彼女は入り口に整列した部下に向かって号令をかけている。
橘「SOS団は祭壇の下です 一点突破! かかれ!」
みくる(小)「警備会社の人 祭壇に向かって猛進しています」
みくる(小)「なんで祭壇なんですか?」
画面には必氏でレポートを続けるみくるの姿があった。
みくる(小)「みんな 逃げちゃいました 伯爵 激怒して追って行きます」
みくる(小)「無事に逃げる事が出来るのでしょうか…」
みくる(小)「大丈夫! 長門さんがいるならきっと上手く逃げられます」
カメラが入り口にパンすると、橘警備保障の一団が乱入してきた。
みくる(小)「あっ! あの人知ってます! 橘さんです」
みくる(小)「私 あの人に誘拐されかけて…えっ?」
鶴屋の出したカンペを読むみくる。
みくる(小)「たちばな…けいび…ほしょう…あっ、そうなんですか」
みくる(小)「え~と 彼女は城内のセキュリティを担当する人だそうです」
みくる(小)「しばらく見ないと思ったらそんな事をしてたんですね」
カメラが橘にズームした。
彼女は入り口に整列した部下に向かって号令をかけている。
橘「SOS団は祭壇の下です 一点突破! かかれ!」
みくる(小)「警備会社の人 祭壇に向かって猛進しています」
みくる(小)「なんで祭壇なんですか?」
118: 2012/02/09(木) 22:58:36.16 ID:pdEI/T530
ふたたびカメラが入り口にパンする。衛士隊が入ってきた。
彼らは雄叫びを上げて橘警備保障に向かって突撃していった。
みくる(小)「あっ 衛士隊です! 先頭は…」
鶴屋の出したカンペを読むみくる。
みくる(小)「グスタフ衛士長さん…35才花嫁募集中です!」
橘の後方を固める部下達がすかさず衛士隊をブロックする。
部下達と衛士隊の乱闘が始まった。いつかのリターン・マッチである。
みくる(小)「ねえ鶴屋さん あの人たち味方同士じゃないの?」
鶴屋の声「複雑な事情があるらしいにょろ」
みくる(小)「複雑な事情ねえ 橘さんの考える事は分かりません」
部下達は徐々に衛士隊を押して、祭壇から引き離していった。
突然、橘がカメラの方を見て、祭壇の下を指差す。
みくる(小)「祭壇の下? 何かあるんですかぁ?」
みくる(小)「あっ 階段です 地下へ通じる穴があります」
みくる(小)「あの穴にシャミさんでもいるのでしょうか」
橘がみくるを手招きしている。
ハンディ・カメラを抱えた鶴屋が画面に入ってきた。
鶴屋「カメラもそこへ行ってみるっさ!」
みくるを引っ張って下に降りてゆく。
彼らは雄叫びを上げて橘警備保障に向かって突撃していった。
みくる(小)「あっ 衛士隊です! 先頭は…」
鶴屋の出したカンペを読むみくる。
みくる(小)「グスタフ衛士長さん…35才花嫁募集中です!」
橘の後方を固める部下達がすかさず衛士隊をブロックする。
部下達と衛士隊の乱闘が始まった。いつかのリターン・マッチである。
みくる(小)「ねえ鶴屋さん あの人たち味方同士じゃないの?」
鶴屋の声「複雑な事情があるらしいにょろ」
みくる(小)「複雑な事情ねえ 橘さんの考える事は分かりません」
部下達は徐々に衛士隊を押して、祭壇から引き離していった。
突然、橘がカメラの方を見て、祭壇の下を指差す。
みくる(小)「祭壇の下? 何かあるんですかぁ?」
みくる(小)「あっ 階段です 地下へ通じる穴があります」
みくる(小)「あの穴にシャミさんでもいるのでしょうか」
橘がみくるを手招きしている。
ハンディ・カメラを抱えた鶴屋が画面に入ってきた。
鶴屋「カメラもそこへ行ってみるっさ!」
みくるを引っ張って下に降りてゆく。
119: 2012/02/09(木) 23:03:55.91 ID:pdEI/T530
日本のどこかのとある会議室。
機関のスポンサーたちがテーブルを囲んで結婚式の中継を見ていた。
スポンサー1「あのバカ 何をやっとるんだ」
スポンサー2「さっき映ってたのは鶴屋さんのお嬢さんじゃないか?」
スポンサー3「命令無視だ 森たちを呼び戻せ」
スポンサー4「これは宇宙中継だ もう遅い」
カメラは橘を追いかけて地下工房にたどり着いた。
橘「おおっ 何です ここは? まるで造幣局ではないの!(棒読み)」
橘「ムッ あそこにあるのは…(棒読み)」
橘「アリャー 日本の札! これはニセ札なのです!(棒読み)」
スポンサー5「わざとらしくやりおって…」
画面にはいちいち大げさなポーズをとっている橘が映っていた。
みくるは事態を把握できなくてカメラをチラチラ見ている。
みくる(小)「それは大変な発見なんですか?」
橘「当たり前じゃない 私は世紀の大犯罪の証拠を掴んだのです」
橘「見てちょうだい 世界中の国のニセ札よーっ!(棒読み)」
橘「SOS団を追っててとんでもない物を見つけてしまいました!(棒読み)」
みくる(小)「やっちゃったって感じで~す!(ヤケクソ)」
機関のスポンサーたちがテーブルを囲んで結婚式の中継を見ていた。
スポンサー1「あのバカ 何をやっとるんだ」
スポンサー2「さっき映ってたのは鶴屋さんのお嬢さんじゃないか?」
スポンサー3「命令無視だ 森たちを呼び戻せ」
スポンサー4「これは宇宙中継だ もう遅い」
カメラは橘を追いかけて地下工房にたどり着いた。
橘「おおっ 何です ここは? まるで造幣局ではないの!(棒読み)」
橘「ムッ あそこにあるのは…(棒読み)」
橘「アリャー 日本の札! これはニセ札なのです!(棒読み)」
スポンサー5「わざとらしくやりおって…」
画面にはいちいち大げさなポーズをとっている橘が映っていた。
みくるは事態を把握できなくてカメラをチラチラ見ている。
みくる(小)「それは大変な発見なんですか?」
橘「当たり前じゃない 私は世紀の大犯罪の証拠を掴んだのです」
橘「見てちょうだい 世界中の国のニセ札よーっ!(棒読み)」
橘「SOS団を追っててとんでもない物を見つけてしまいました!(棒読み)」
みくる(小)「やっちゃったって感じで~す!(ヤケクソ)」
120: 2012/02/09(木) 23:27:11.62 ID:pdEI/T530
クラリスたちは城の端にある風車塔に逃げてきた。
城内に水を引いている風車塔の下層部から水道橋が伸びていた。
その先に時計塔が見える。
森「ローマ水道を渡れば向こう岸にいけるわ」
新川「しかし橋を渡ってる所を後ろから狙い撃ちされたら…」
森「そうね 誰かが残って敵を足止めする必要があるわ」
長門「先に行って」
新川「お願いできますか」
クラリス「長門さん 無茶です!」
長門の実力を知らないクラリスが叫ぶ。
森「大丈夫よ 彼女はこう見えてもこの中で一番頼りになるの」
長門「そう」
クラリスは王冠を脱ぎ捨てると長門の手を握った。
クラリス「ありがとう どうかご無事で」
長門はコクリと頷いた。
長門「決して振り向いてはいけない」
森「振り向いたら塩の柱にでもなるのかしら?」
新川「長門さんならやりかねませんよ」
クラリスたちを水道橋に逃がすと、長門は風車塔の上にたった。
伯爵「いたぞ! あそこだ!」
カゲたちが長門にむけて一斉に機関銃を発射した。弾はひとつも当たらない。
長門はクラリスが置いていった王冠を被った。そして―
長門「今宵の情報操作は一味違う」
助走もつけずにジャンプした。そのつま先から光が放射された。
光は扇形に広がり、虹色の膜となって城を覆っていく。
長門の跳躍は本丸の屋根を軽々と越え、反対側の城壁に達して着地した。
再びジャンプすると、もとの軌道を描いて水車塔に戻ってくる。
軌道に沿ってドーム状のシールドが形成され、城を完全に包み込んだ。
城内に水を引いている風車塔の下層部から水道橋が伸びていた。
その先に時計塔が見える。
森「ローマ水道を渡れば向こう岸にいけるわ」
新川「しかし橋を渡ってる所を後ろから狙い撃ちされたら…」
森「そうね 誰かが残って敵を足止めする必要があるわ」
長門「先に行って」
新川「お願いできますか」
クラリス「長門さん 無茶です!」
長門の実力を知らないクラリスが叫ぶ。
森「大丈夫よ 彼女はこう見えてもこの中で一番頼りになるの」
長門「そう」
クラリスは王冠を脱ぎ捨てると長門の手を握った。
クラリス「ありがとう どうかご無事で」
長門はコクリと頷いた。
長門「決して振り向いてはいけない」
森「振り向いたら塩の柱にでもなるのかしら?」
新川「長門さんならやりかねませんよ」
クラリスたちを水道橋に逃がすと、長門は風車塔の上にたった。
伯爵「いたぞ! あそこだ!」
カゲたちが長門にむけて一斉に機関銃を発射した。弾はひとつも当たらない。
長門はクラリスが置いていった王冠を被った。そして―
長門「今宵の情報操作は一味違う」
助走もつけずにジャンプした。そのつま先から光が放射された。
光は扇形に広がり、虹色の膜となって城を覆っていく。
長門の跳躍は本丸の屋根を軽々と越え、反対側の城壁に達して着地した。
再びジャンプすると、もとの軌道を描いて水車塔に戻ってくる。
軌道に沿ってドーム状のシールドが形成され、城を完全に包み込んだ。
121: 2012/02/09(木) 23:33:17.69 ID:pdEI/T530
長門は橋を渡って時計塔のドアを開けた。中でクラリスと森が待っていた。
クラリスは床に寝ている。まだ薬の影響が残っているようだ。
森「いま新川が車を取りに行ってるわ 急いで国境を越えないと」
長門「急ぐ必要は無い」
長門「大気中の微粒子を結合させた特殊シールドで城を包んだ」
長門「私以外にこれを破る事は不可能」
急に長門が城の方を振り返った。
長門「訂正」
長門「一人抜け出した」
森「破る事は不可能って言ったばかりじゃない」
長門「破られたのではない 位相変換された次元断層の隙間に逃げこまれた」
森「次元断層って まさか」
長門「あなた方が閉鎖空間と呼んでいるもの」
森「もしかしてそれはクラリスが発生させた閉鎖空間?」
橘への尋問で、その辺は森も把握していた。
長門「そう」
森「つまりクラリスの空間に入れる超能力者が城の中にいたって訳ね 厄介だわ」
森「抜け出したのは一体 何者なの?」
長門「伯爵」
クラリスは床に寝ている。まだ薬の影響が残っているようだ。
森「いま新川が車を取りに行ってるわ 急いで国境を越えないと」
長門「急ぐ必要は無い」
長門「大気中の微粒子を結合させた特殊シールドで城を包んだ」
長門「私以外にこれを破る事は不可能」
急に長門が城の方を振り返った。
長門「訂正」
長門「一人抜け出した」
森「破る事は不可能って言ったばかりじゃない」
長門「破られたのではない 位相変換された次元断層の隙間に逃げこまれた」
森「次元断層って まさか」
長門「あなた方が閉鎖空間と呼んでいるもの」
森「もしかしてそれはクラリスが発生させた閉鎖空間?」
橘への尋問で、その辺は森も把握していた。
長門「そう」
森「つまりクラリスの空間に入れる超能力者が城の中にいたって訳ね 厄介だわ」
森「抜け出したのは一体 何者なの?」
長門「伯爵」
122: 2012/02/09(木) 23:38:04.42 ID:pdEI/T530
夜明けまではまだ間があるはずなのに、淡く柔らかい光が空間を満たしていた。
ちょうど日没直後の光に似ている。いわゆるマジック・アワーである。
空は青空に夕焼けが混じったような紫色に染まっていた。
ここは我々の住む現実世界の異次元同位体ともいうべき空間だ。
この空間の特徴は範囲がカリオストロ公国に限定されている事。
そして佐々木空間と同じく常に発生している事だ。
この空間のカリオストロ城から赤い球体がふわりと浮かんできた。
高エネルギー・フィールドをまとった伯爵である。
伯爵(くそっ 何ということだ! 指輪も花嫁も奪われるとは…)
伯爵(もともとこの結婚は指輪を合法的に手に入れる手段に過ぎんのだ)
伯爵(こうなったら花嫁を犠牲にしてでも指輪を取り返さねば)
伯爵がこの空間に入るのは数えるほどしかない。
彼にとって何も起こらないこの世界は退屈そのものだった。
クラリスの内面世界など伯爵には何の興味もない。
ちょうど日没直後の光に似ている。いわゆるマジック・アワーである。
空は青空に夕焼けが混じったような紫色に染まっていた。
ここは我々の住む現実世界の異次元同位体ともいうべき空間だ。
この空間の特徴は範囲がカリオストロ公国に限定されている事。
そして佐々木空間と同じく常に発生している事だ。
この空間のカリオストロ城から赤い球体がふわりと浮かんできた。
高エネルギー・フィールドをまとった伯爵である。
伯爵(くそっ 何ということだ! 指輪も花嫁も奪われるとは…)
伯爵(もともとこの結婚は指輪を合法的に手に入れる手段に過ぎんのだ)
伯爵(こうなったら花嫁を犠牲にしてでも指輪を取り返さねば)
伯爵がこの空間に入るのは数えるほどしかない。
彼にとって何も起こらないこの世界は退屈そのものだった。
クラリスの内面世界など伯爵には何の興味もない。
123: 2012/02/09(木) 23:43:03.14 ID:pdEI/T530
再び時計塔の長門と森。
森「でも伯爵の超能力はクラリスが授けた物のはずよ」
森「能力を授けられた人間は授けた人間を崇拝するはずだわ」
森「伯爵がクラリスを崇拝してるとはどう見ても思えないけど」
長門「伯爵はイレギュラー因子」
長門「7年前に涼宮ハルヒによる情報爆発が起きた際」
長門「彼女は自身のバックアップを何人か用意した」
長門「その一人がクラリス」
長門「焼氏により両親を失った孤独感が涼宮ハルヒと感応した」
長門「しかしクラリスをバックアップとして作り変える際にバグが生じた」
長門「そのバグはいずれバックアップを破壊する要因ともなりかねない因子だった」
長門「それが伯爵」
長門「情報統合思念体はそのように考えている」
長門「崇拝の感情を欠如したバグは排除しなければならない」
長門「そういう涼宮ハルヒの深層意識が我々をここに呼んだものと思われる」
森「そうは言っても閉鎖空間に逃げ込まれたら手の打ちようが無いわ」
森「私も新川もクラリスの空間には入れないんだし」
森「でも…ひょっとして長門さん あなたなら入れるんじゃない?」
長門「入れなくはない」
長門「しかし私は入るべきではない」
森「どうしてよ」
長門「こういう時は白馬に乗った王子様の出番」
森「でも伯爵の超能力はクラリスが授けた物のはずよ」
森「能力を授けられた人間は授けた人間を崇拝するはずだわ」
森「伯爵がクラリスを崇拝してるとはどう見ても思えないけど」
長門「伯爵はイレギュラー因子」
長門「7年前に涼宮ハルヒによる情報爆発が起きた際」
長門「彼女は自身のバックアップを何人か用意した」
長門「その一人がクラリス」
長門「焼氏により両親を失った孤独感が涼宮ハルヒと感応した」
長門「しかしクラリスをバックアップとして作り変える際にバグが生じた」
長門「そのバグはいずれバックアップを破壊する要因ともなりかねない因子だった」
長門「それが伯爵」
長門「情報統合思念体はそのように考えている」
長門「崇拝の感情を欠如したバグは排除しなければならない」
長門「そういう涼宮ハルヒの深層意識が我々をここに呼んだものと思われる」
森「そうは言っても閉鎖空間に逃げ込まれたら手の打ちようが無いわ」
森「私も新川もクラリスの空間には入れないんだし」
森「でも…ひょっとして長門さん あなたなら入れるんじゃない?」
長門「入れなくはない」
長門「しかし私は入るべきではない」
森「どうしてよ」
長門「こういう時は白馬に乗った王子様の出番」
124: 2012/02/09(木) 23:49:15.67 ID:pdEI/T530
伯爵は戸惑った。目の前の時計塔から赤い球体が飛んできたのだ。
自分と同じ能力の持ち主が他にもいるとは思わなかった。
敵か味方かは分からないが、さほど不安は感じない。
少なくともこの国の人間なら自分には逆らえないはずだから。
しかし中の人間が判別できる距離まで近付いたとき―
伯爵の戸惑いは動揺に代わった。
伯爵「貴様! やはり生きていたか!」
古泉「いよいよ大詰めですね 伯爵」
伯爵「どうやってここまで来た? 貴様にそんな力は無いはずだ」
古泉「もちろん僕一人では無理です 友だちの力を借りました」
古泉が水道橋の方を指差す。
水道橋の上でキョンがこちらを見上げていた。
伯爵「嘘をつくな おまえらの事は橘から聞いてよく知ってるんだ」
伯爵「あいつこそ何の能力もないじゃないか」
古泉「よく見てください 友だちは人間とは限りませんよ」
再び橋の上を見る。キョンの足元に一匹の犬がいた。
クラリスの愛犬カールである。
伯爵「犬だと? あの犬がお前らを逃がしたというのか!」
古泉「僕も最初は信じられませんでした」
古泉「しかしまぎれもない事実です カールはあなたと同じ能力を持ってます」
井戸が爆破される直前―
突如として井戸の底にカールが現れて、二人を閉鎖空間に導いた。
それ以来、古泉とキョンはずっとこの空間に隠れていたのだ。
外の状態はときどき長門が連絡をよこしてくれた。
自分と同じ能力の持ち主が他にもいるとは思わなかった。
敵か味方かは分からないが、さほど不安は感じない。
少なくともこの国の人間なら自分には逆らえないはずだから。
しかし中の人間が判別できる距離まで近付いたとき―
伯爵の戸惑いは動揺に代わった。
伯爵「貴様! やはり生きていたか!」
古泉「いよいよ大詰めですね 伯爵」
伯爵「どうやってここまで来た? 貴様にそんな力は無いはずだ」
古泉「もちろん僕一人では無理です 友だちの力を借りました」
古泉が水道橋の方を指差す。
水道橋の上でキョンがこちらを見上げていた。
伯爵「嘘をつくな おまえらの事は橘から聞いてよく知ってるんだ」
伯爵「あいつこそ何の能力もないじゃないか」
古泉「よく見てください 友だちは人間とは限りませんよ」
再び橋の上を見る。キョンの足元に一匹の犬がいた。
クラリスの愛犬カールである。
伯爵「犬だと? あの犬がお前らを逃がしたというのか!」
古泉「僕も最初は信じられませんでした」
古泉「しかしまぎれもない事実です カールはあなたと同じ能力を持ってます」
井戸が爆破される直前―
突如として井戸の底にカールが現れて、二人を閉鎖空間に導いた。
それ以来、古泉とキョンはずっとこの空間に隠れていたのだ。
外の状態はときどき長門が連絡をよこしてくれた。
125: 2012/02/09(木) 23:53:54.44 ID:pdEI/T530
長門の話を聞いて森は憤慨した。
森「生きてたって? ひどいじゃない! 黙ってるなんて」
長門「古泉一樹に固く口止めされた」
森「あのヤロー 後でとっちめてやるわ!」
長門「古泉一樹は井戸で伯爵と初めて対面したとき」
長門「彼が超能力者であることを直感した」
長門「そこで私にある役目を依頼した」
長門「伯爵を閉鎖空間に追い込む事」
長門「指輪とクラリスを奪った上で城をシールドで包めば―」
長門「伯爵は必ず閉鎖空間に逃げ込むはず」
長門「古泉一樹はそう読んでいた」
森「つまり今夜の馬鹿騒ぎは全部 古泉が仕組んだ事ってわけ?」
長門「そう」
長門「彼が氏んだ事にすれば容易にあなたたちの協力がえられる」
森「生きてたって? ひどいじゃない! 黙ってるなんて」
長門「古泉一樹に固く口止めされた」
森「あのヤロー 後でとっちめてやるわ!」
長門「古泉一樹は井戸で伯爵と初めて対面したとき」
長門「彼が超能力者であることを直感した」
長門「そこで私にある役目を依頼した」
長門「伯爵を閉鎖空間に追い込む事」
長門「指輪とクラリスを奪った上で城をシールドで包めば―」
長門「伯爵は必ず閉鎖空間に逃げ込むはず」
長門「古泉一樹はそう読んでいた」
森「つまり今夜の馬鹿騒ぎは全部 古泉が仕組んだ事ってわけ?」
長門「そう」
長門「彼が氏んだ事にすれば容易にあなたたちの協力がえられる」
126: 2012/02/09(木) 23:58:35.82 ID:pdEI/T530
いつか橘はハルヒの空間で赤球を発生させる事が出来た。
同様の現象がクラリスの空間でも起きた。
古泉はこの空間でも高エネルギー・フィールドを発生させる事が出来たのだ。
そして今―
二つの赤い球体が湖の上空で対峙した。
古泉「行きます」
古泉が伯爵めがけて突進した。
神人相手に場数を踏んでいる彼はスピードとテクニックで伯爵を凌駕している。
伯爵はひとたまりも無く弾き飛ばされた。
飛ばされた先に素早く先回りした古泉が再び伯爵にぶつかる。
閉鎖空間内の戦闘に不慣れな伯爵は翻弄されるままになっていた。
だが…
古泉(やはり涼宮さんの空間じゃないからパワーが半減している)
何度も伯爵にぶつかっていくのだがエネルギー・フィールドの殻が破れない。
いくらテクニックで勝ろうと圧倒的なパワーの差は埋めがたかった。
伯爵は次第に冷静さを取り戻していった。
伯爵「どうした お前の力はこんなもんか」
今度は伯爵の方から古泉に向かっていった。
それを紙一重でよける古泉。恐らくぶつけられたらひとたまりも無いだろう。
氏の鬼ごっこがしばらく続いた。
だが、ついに伯爵が古泉を捉える瞬間がやってきた。
両者のフィールドが一瞬、接触した。
伯爵はその機を逃さず古泉に向けてパワーを放出した。
古泉のフィールドがこなごなに砕け散った。
飛行力を失った古泉が落下してゆく。
同様の現象がクラリスの空間でも起きた。
古泉はこの空間でも高エネルギー・フィールドを発生させる事が出来たのだ。
そして今―
二つの赤い球体が湖の上空で対峙した。
古泉「行きます」
古泉が伯爵めがけて突進した。
神人相手に場数を踏んでいる彼はスピードとテクニックで伯爵を凌駕している。
伯爵はひとたまりも無く弾き飛ばされた。
飛ばされた先に素早く先回りした古泉が再び伯爵にぶつかる。
閉鎖空間内の戦闘に不慣れな伯爵は翻弄されるままになっていた。
だが…
古泉(やはり涼宮さんの空間じゃないからパワーが半減している)
何度も伯爵にぶつかっていくのだがエネルギー・フィールドの殻が破れない。
いくらテクニックで勝ろうと圧倒的なパワーの差は埋めがたかった。
伯爵は次第に冷静さを取り戻していった。
伯爵「どうした お前の力はこんなもんか」
今度は伯爵の方から古泉に向かっていった。
それを紙一重でよける古泉。恐らくぶつけられたらひとたまりも無いだろう。
氏の鬼ごっこがしばらく続いた。
だが、ついに伯爵が古泉を捉える瞬間がやってきた。
両者のフィールドが一瞬、接触した。
伯爵はその機を逃さず古泉に向けてパワーを放出した。
古泉のフィールドがこなごなに砕け散った。
飛行力を失った古泉が落下してゆく。
127: 2012/02/10(金) 00:04:45.64 ID:zkv9j/1f0
キョンは思わず目をそむけた。
キョン「古泉…くそっ」
そのとき、足元のカールが一声吼えた。
カールのまわりにエネルギー・フィールドが発生し、古泉めがけて飛んでいった。
地面に衝突する直前、カールのフィールドは古泉をキャッチした。
そのままフィールドの中に古泉を入れる。
超能力者は互いを識別する事ができる。
カールにとって古泉は主人の想い人であると同時に、数少ない同類である。
だから一目見た瞬間に家族の一員と決めてしまった。
伯爵「クラリスの飼い犬か 昔からおまえは虫の好かん奴だった」
老人に引き取られて以来、カールは伯爵に会っていない。
だが昔からカールはこの男がクラリスに害をなす者であると認識していた。
伯爵「まとめて始末してやる!」
伯爵は自らカールにぶつかっていった。だが意外な力で弾き飛ばされた。
伯爵「おおっ!」
もとより犬のパワーは人間には及ばない。
しかしそこに古泉の力が加わる事により、初めて伯爵に拮抗する力が生まれた。
フィールドの中で古泉はカールをしっかりと抱えていた。
古泉「第二ラウンドです」
キョン「古泉…くそっ」
そのとき、足元のカールが一声吼えた。
カールのまわりにエネルギー・フィールドが発生し、古泉めがけて飛んでいった。
地面に衝突する直前、カールのフィールドは古泉をキャッチした。
そのままフィールドの中に古泉を入れる。
超能力者は互いを識別する事ができる。
カールにとって古泉は主人の想い人であると同時に、数少ない同類である。
だから一目見た瞬間に家族の一員と決めてしまった。
伯爵「クラリスの飼い犬か 昔からおまえは虫の好かん奴だった」
老人に引き取られて以来、カールは伯爵に会っていない。
だが昔からカールはこの男がクラリスに害をなす者であると認識していた。
伯爵「まとめて始末してやる!」
伯爵は自らカールにぶつかっていった。だが意外な力で弾き飛ばされた。
伯爵「おおっ!」
もとより犬のパワーは人間には及ばない。
しかしそこに古泉の力が加わる事により、初めて伯爵に拮抗する力が生まれた。
フィールドの中で古泉はカールをしっかりと抱えていた。
古泉「第二ラウンドです」
128: 2012/02/10(金) 00:09:38.83 ID:zkv9j/1f0
再び鬼ごっこが再開された。
パワーが拮抗すればテクニックに勝る古泉が有利だ。
古泉はトリッキーに動き回って伯爵を翻弄する。
何度か接触はしているが、まだフィールドは打ち破れない。
接触の瞬間にパワーを送り込めば殻は破れる。
しかし向こうから同等のパワーを返されれば威力は相殺されてしまう。
パワーは拮抗したが、それは果てしない長期戦を意味していた。
しかし、こうして伯爵の神経を消耗させればそのうち隙が生まれるだろう。
その隙を突けば防御するひまを与えずにフィールドを打ち破れるはずだ。
古泉たちは目くらましのように伯爵の右へ左へと移動しつづけた。
だがこの作戦は諸刃の剣だった。
慣れないカールが先に音を上げ始めた。
古泉「…カール もう少しの辛抱です 頑張ってください」
こちらの動きが鈍り始めたのを伯爵は見逃さなかった。
逆に古泉たちの方が隙をつかれ、思い切りぶつけられた。
かろうじて殻は守れたが、古泉たちは跳ね飛ばされて塔の中腹に激突した。
パワーが拮抗すればテクニックに勝る古泉が有利だ。
古泉はトリッキーに動き回って伯爵を翻弄する。
何度か接触はしているが、まだフィールドは打ち破れない。
接触の瞬間にパワーを送り込めば殻は破れる。
しかし向こうから同等のパワーを返されれば威力は相殺されてしまう。
パワーは拮抗したが、それは果てしない長期戦を意味していた。
しかし、こうして伯爵の神経を消耗させればそのうち隙が生まれるだろう。
その隙を突けば防御するひまを与えずにフィールドを打ち破れるはずだ。
古泉たちは目くらましのように伯爵の右へ左へと移動しつづけた。
だがこの作戦は諸刃の剣だった。
慣れないカールが先に音を上げ始めた。
古泉「…カール もう少しの辛抱です 頑張ってください」
こちらの動きが鈍り始めたのを伯爵は見逃さなかった。
逆に古泉たちの方が隙をつかれ、思い切りぶつけられた。
かろうじて殻は守れたが、古泉たちは跳ね飛ばされて塔の中腹に激突した。
129: 2012/02/10(金) 00:14:22.99 ID:zkv9j/1f0
森は驚いて上を見上げた。
轟音とともに時計塔の壁に穴があき、瓦礫が崩れてきた。
三人の頭上に降り注ぐ直前、長門の力によって瓦礫がはじけて消えた。
森「ど どうしたの一体!」
長門「古泉一樹が塔に叩きつけられた」
森「それがこっちの世界にまで影響を及ぼしたっていうの?」
森「涼宮さんの空間ではそんな事は考えられないけど…」
長門「クラリスの空間ではそれが起きる」
すなわち―
クラリスの閉鎖空間は現実世界と連動していたのだ。
閉鎖空間内の建造物を破壊すれば、こちら側も同様の状態になる。
その時、長門の脳裏に天啓がひらめいた。
では逆にこちら側の建物を動かしたらどうなるか?
長門「頼みがある」
長門「羊の目に指輪を入れて欲しい」
轟音とともに時計塔の壁に穴があき、瓦礫が崩れてきた。
三人の頭上に降り注ぐ直前、長門の力によって瓦礫がはじけて消えた。
森「ど どうしたの一体!」
長門「古泉一樹が塔に叩きつけられた」
森「それがこっちの世界にまで影響を及ぼしたっていうの?」
森「涼宮さんの空間ではそんな事は考えられないけど…」
長門「クラリスの空間ではそれが起きる」
すなわち―
クラリスの閉鎖空間は現実世界と連動していたのだ。
閉鎖空間内の建造物を破壊すれば、こちら側も同様の状態になる。
その時、長門の脳裏に天啓がひらめいた。
では逆にこちら側の建物を動かしたらどうなるか?
長門「頼みがある」
長門「羊の目に指輪を入れて欲しい」
130: 2012/02/10(金) 00:23:20.26 ID:zkv9j/1f0
キョンの携帯が鳴った。
この空間に電波を飛ばすような知り合いといえば一人しかいない。
携帯を開いて見ると案の定だった。
YUKI.N>みえてる?_
ああ
YUKI.N>その空間の特性を生かした攻撃方法を思いついた。
伯爵を倒すにはこの方法しかない。
どうすりゃいい?
YUKI.N>伯爵を文字盤の羊にぶつけて欲しい。
キョンは携帯を閉じた。閉鎖空間ではこの方法で長門と連絡を取っていた。
キョン「さて どうやって古泉に知らせるか…」
この空間に電波を飛ばすような知り合いといえば一人しかいない。
携帯を開いて見ると案の定だった。
YUKI.N>みえてる?_
ああ
YUKI.N>その空間の特性を生かした攻撃方法を思いついた。
伯爵を倒すにはこの方法しかない。
どうすりゃいい?
YUKI.N>伯爵を文字盤の羊にぶつけて欲しい。
キョンは携帯を閉じた。閉鎖空間ではこの方法で長門と連絡を取っていた。
キョン「さて どうやって古泉に知らせるか…」
131: 2012/02/10(金) 00:27:44.54 ID:zkv9j/1f0
森は文字盤の中央にある梯子状の出っ張りを上っていた。
森「尋常じゃない高さね 本当にあなた達ここに上ったの?」
長門「上った」
長門は扉のところから森に指示を出している。
森「それにしても何で私がやらなくちゃいけないの?」
長門「私に殺人は許可されていない」
森「だってこれはあなたがやらせてるんでしょ?」
長門「言いなおす 私が直接手を下す事はできない」
森「でも殺人教唆は良いわけ? 思念体の基準ってわかんないわ!」
長門「殺人の話をする事は禁止されていない」
長門「地球人同士の殺人行為を黙認する事も禁止されていない」
長門「この二つの項目を関連付ける項目は存在しない」
長門「私は現在この不備を悪用している」
森が梯子の最上段に到着した。
森「着いたわ なるほど羊の目に穴あいてるわね ここに入れれば良いの?」
長門「その時が来たら合図を出す」
森「尋常じゃない高さね 本当にあなた達ここに上ったの?」
長門「上った」
長門は扉のところから森に指示を出している。
森「それにしても何で私がやらなくちゃいけないの?」
長門「私に殺人は許可されていない」
森「だってこれはあなたがやらせてるんでしょ?」
長門「言いなおす 私が直接手を下す事はできない」
森「でも殺人教唆は良いわけ? 思念体の基準ってわかんないわ!」
長門「殺人の話をする事は禁止されていない」
長門「地球人同士の殺人行為を黙認する事も禁止されていない」
長門「この二つの項目を関連付ける項目は存在しない」
長門「私は現在この不備を悪用している」
森が梯子の最上段に到着した。
森「着いたわ なるほど羊の目に穴あいてるわね ここに入れれば良いの?」
長門「その時が来たら合図を出す」
132: 2012/02/10(金) 00:50:59.57 ID:zkv9j/1f0
伯爵に気付かれずに長門の作戦をどうやって古泉に伝えるか?
答えは単純明快、キョンは長門の文面をそのまま大声で怒鳴った。
日本語で。
日本語でなら何を言っても伯爵に理解される心配はない。
ちなみに今まで彼らは英語でカリオストロ人とやり取りしていた。
古泉「了解しました」
古泉は体勢を立て直すと、フィールド内でソフトボール大の赤球を手に浮かべた。
それを野茂ばりのトルネードで伯爵に投げつける。
赤球はフィールドをするりと通り抜けて飛んでいった。
伯爵「な 何だ?」
最初は慌てた伯爵も赤球に大した威力が無いのを悟ると、胸をなでおろした。
伯爵「どうした 万策尽きてヤケクソになったのか」
古泉は無言で次々と赤球を作り出しては伯爵に投げた。
威力が無いのは古泉にも分かっている。
それによって伯爵を羊の彫像まで誘導しているのだ。
伯爵は古泉の意図に気付かず、次第に時計塔に移動していった。
そして羊と伯爵と自分達が一直線に並んだ瞬間、古泉は突進していった。
答えは単純明快、キョンは長門の文面をそのまま大声で怒鳴った。
日本語で。
日本語でなら何を言っても伯爵に理解される心配はない。
ちなみに今まで彼らは英語でカリオストロ人とやり取りしていた。
古泉「了解しました」
古泉は体勢を立て直すと、フィールド内でソフトボール大の赤球を手に浮かべた。
それを野茂ばりのトルネードで伯爵に投げつける。
赤球はフィールドをするりと通り抜けて飛んでいった。
伯爵「な 何だ?」
最初は慌てた伯爵も赤球に大した威力が無いのを悟ると、胸をなでおろした。
伯爵「どうした 万策尽きてヤケクソになったのか」
古泉は無言で次々と赤球を作り出しては伯爵に投げた。
威力が無いのは古泉にも分かっている。
それによって伯爵を羊の彫像まで誘導しているのだ。
伯爵は古泉の意図に気付かず、次第に時計塔に移動していった。
そして羊と伯爵と自分達が一直線に並んだ瞬間、古泉は突進していった。
133: 2012/02/10(金) 00:53:55.00 ID:zkv9j/1f0
タイミングを計っていた長門が声を出した。
長門「入れて」
合図に合わせて、森は二つの指輪を羊の目に入れた。
彫像とカラクリの連結はすでにつなぎ直してある。
羊の顔面部分がズズズと奥に入っていった。
内部のカラクリが作動した。
二つの針が急速に動き出して森に迫ってきた。
森「ぎゃあああ! 挟まれるううう!」
次の瞬間、長門が扉のところから森の背後まで跳んだ。
襟を掴むと、落下に任せて彼女を引きずり下ろす。
森が離れた直後、彫像の表面が砕けた。
閉鎖空間内で伯爵が衝突したらしい。
長門と森はもつれ合ったまま塔の下に落ちていった。
長門「入れて」
合図に合わせて、森は二つの指輪を羊の目に入れた。
彫像とカラクリの連結はすでにつなぎ直してある。
羊の顔面部分がズズズと奥に入っていった。
内部のカラクリが作動した。
二つの針が急速に動き出して森に迫ってきた。
森「ぎゃあああ! 挟まれるううう!」
次の瞬間、長門が扉のところから森の背後まで跳んだ。
襟を掴むと、落下に任せて彼女を引きずり下ろす。
森が離れた直後、彫像の表面が砕けた。
閉鎖空間内で伯爵が衝突したらしい。
長門と森はもつれ合ったまま塔の下に落ちていった。
134: 2012/02/10(金) 00:57:09.02 ID:zkv9j/1f0
こちらの空間でも時計の針が動いていた。長門の予想通りである。
古泉とカールは伯爵を文字盤の羊に押しつけた。
同時にすべてのパワーを伯爵に送り込む。
自分達のフィールドを維持する力まで使ってようやく伯爵の殻を破った。
二つのフィールドが砕け散った。
そこに時計の針が動いてきて伯爵を捕らえた。
古泉とカールは湖に落下していった。
伯爵は針に挟まれて身動きが取れなくなった。
伯爵「グォォ…ッ」
時計の針は凄まじい力で伯爵の体を締め上げる。
伯爵「アアーッ!」
ついに二つの針は一つに重なり合った。
時計塔の鐘が鳴り始めた。
古泉とカールは伯爵を文字盤の羊に押しつけた。
同時にすべてのパワーを伯爵に送り込む。
自分達のフィールドを維持する力まで使ってようやく伯爵の殻を破った。
二つのフィールドが砕け散った。
そこに時計の針が動いてきて伯爵を捕らえた。
古泉とカールは湖に落下していった。
伯爵は針に挟まれて身動きが取れなくなった。
伯爵「グォォ…ッ」
時計の針は凄まじい力で伯爵の体を締め上げる。
伯爵「アアーッ!」
ついに二つの針は一つに重なり合った。
時計塔の鐘が鳴り始めた。
135: 2012/02/10(金) 01:01:18.22 ID:zkv9j/1f0
長門は落下の途中で態勢を変え、森をお姫さま抱っこした。
そして足をがに股に開くと、その姿勢で塔の下の水道橋に着地した。
石畳が砕け散り、足が50センチほどめり込んだが、二人とも無事だった。
赤い雨が降ってきた。肉片の混じった大量の血しぶきが空から落ちてきたのだ。
長門(伯爵がこの空間に戻った)
長距離ダイブに森が目を回している。
長門「立てる?」
森「駄目 腰が抜けたみたい…」
塔の崩壊が始まっている。ぐずぐずしてはいられない。
長門は塔に取り残されていたクラリスを素早く担ぎ出した。
そして森とクラリスを両脇に抱えて大公屋敷の庭に駆け込んだ。
そして足をがに股に開くと、その姿勢で塔の下の水道橋に着地した。
石畳が砕け散り、足が50センチほどめり込んだが、二人とも無事だった。
赤い雨が降ってきた。肉片の混じった大量の血しぶきが空から落ちてきたのだ。
長門(伯爵がこの空間に戻った)
長距離ダイブに森が目を回している。
長門「立てる?」
森「駄目 腰が抜けたみたい…」
塔の崩壊が始まっている。ぐずぐずしてはいられない。
長門は塔に取り残されていたクラリスを素早く担ぎ出した。
そして森とクラリスを両脇に抱えて大公屋敷の庭に駆け込んだ。
136: 2012/02/10(金) 01:05:40.05 ID:zkv9j/1f0
古泉とカールが落ちてきた。湖面に大きな水柱が上がる。
キョン「古泉! カール!」
キョンは橋から湖に飛び込んだ。
しばらくすると湖面に何かが浮かんできた。キョンはそこに向かった。
カールが古泉の襟を咥えて岸まで引っ張ろうとしている。
古泉は気を失っているようだ。
キョン「えらいぞカール 後は俺が引っ張ってやる」
カールが一声吼えた。
キョンは古泉の体を抱えて岸まで泳いでいった。
キョン「古泉! カール!」
キョンは橋から湖に飛び込んだ。
しばらくすると湖面に何かが浮かんできた。キョンはそこに向かった。
カールが古泉の襟を咥えて岸まで引っ張ろうとしている。
古泉は気を失っているようだ。
キョン「えらいぞカール 後は俺が引っ張ってやる」
カールが一声吼えた。
キョンは古泉の体を抱えて岸まで泳いでいった。
137: 2012/02/10(金) 01:10:00.95 ID:zkv9j/1f0
凄まじい轟音を立てて時計塔が崩れていった。
それに連動して湖をせき止めていた水門が開き、大量の湖水を吐き出した。
湖のあちこちに巨大な渦が発生し、渦は波を呼んで湖岸を襲った。
長門はカリオストロ城のシールドを解除した。
波が城を浸水させ、地下牢にも地下工房にも湖水が進入した。
工房の印刷機は半ば湖水に浸かり、世界中のニセ札が水面をぷかぷか漂った。
城の中庭でこの崩壊劇を目撃したジョドーがへたり込んだ。
橘がやってくる。
ジョドー「これでカリオストロも終わりだ… 殺せ」
橘はジョドーに平手打ちを浴びせた。
橘「楽なほうに逃げようったってそうは行かないわよ」
橘「この責任の矢面に立つのはあなたなのです 簡単に氏なせはしないわ」
それに連動して湖をせき止めていた水門が開き、大量の湖水を吐き出した。
湖のあちこちに巨大な渦が発生し、渦は波を呼んで湖岸を襲った。
長門はカリオストロ城のシールドを解除した。
波が城を浸水させ、地下牢にも地下工房にも湖水が進入した。
工房の印刷機は半ば湖水に浸かり、世界中のニセ札が水面をぷかぷか漂った。
城の中庭でこの崩壊劇を目撃したジョドーがへたり込んだ。
橘がやってくる。
ジョドー「これでカリオストロも終わりだ… 殺せ」
橘はジョドーに平手打ちを浴びせた。
橘「楽なほうに逃げようったってそうは行かないわよ」
橘「この責任の矢面に立つのはあなたなのです 簡単に氏なせはしないわ」
138: 2012/02/10(金) 01:17:06.52 ID:zkv9j/1f0
夜が明けた。
クラリスが目覚めると、傍らに古泉が立っていた。
クラリス「古泉さま… やはり生きていらしたのね」
古泉「やあ 立てますか? 見て下さい」
ここはクラリスが生まれ育った大公屋敷の庭である。
だが眺める景色は生まれて初めて見るものだった。
見慣れたはずの湖が消えうせ、代わりに古代ローマの遺跡で埋め尽くされていた。
古泉「隠された財宝です」
クラリス「湖の底にローマの町が眠っていたなんて…」
古泉「ローマ人がこの地を追われる時水門を築いて沈めたのを―」
古泉「あなたのご先祖様が密かに受け継いだんですよ」
古泉「まさに人類の宝ってやつです 涼宮さんのポケットには大きすぎます」
カリオストロ公国の空をユーロポールの輸送機が飛んでいた。
各国から特別編成された捜査員がパラシュートで次々と降下してくる。
古泉「ユーロポールが重い腰を上げたようです」
遠くでハルヒの叫び声が聞こえた。
見ると必氏になだめているキョンの頭をポカポカ叩きながらハルヒがやってくる。
ハルヒ「古泉君! どういう事よ!」
ハルヒ「目が覚めたらもうイベントが終わってるじゃないの!」
ハルヒ「こんな凄い見世物を私ぬきでやるなんてひどいじゃない!」
古泉がハルヒの方に向かおうとすると、
クラリス「行ってしまうの…?」
古泉「ええ 怖い団長が来てしまいましたからね」
古泉は頭脳をフル回転させてハルヒへの言い訳を組み立てていた。
ここは知らぬ存ぜぬで押し通すしかない。
時計塔の異変はSOS団とは全く関係のない偶然の一致であると。
あとは一切のメディア報道をハルヒの目から遮断する…
古泉は思わず溜息をついた。
古泉「まだまだ苦労は続きそうですね」
クラリスが目覚めると、傍らに古泉が立っていた。
クラリス「古泉さま… やはり生きていらしたのね」
古泉「やあ 立てますか? 見て下さい」
ここはクラリスが生まれ育った大公屋敷の庭である。
だが眺める景色は生まれて初めて見るものだった。
見慣れたはずの湖が消えうせ、代わりに古代ローマの遺跡で埋め尽くされていた。
古泉「隠された財宝です」
クラリス「湖の底にローマの町が眠っていたなんて…」
古泉「ローマ人がこの地を追われる時水門を築いて沈めたのを―」
古泉「あなたのご先祖様が密かに受け継いだんですよ」
古泉「まさに人類の宝ってやつです 涼宮さんのポケットには大きすぎます」
カリオストロ公国の空をユーロポールの輸送機が飛んでいた。
各国から特別編成された捜査員がパラシュートで次々と降下してくる。
古泉「ユーロポールが重い腰を上げたようです」
遠くでハルヒの叫び声が聞こえた。
見ると必氏になだめているキョンの頭をポカポカ叩きながらハルヒがやってくる。
ハルヒ「古泉君! どういう事よ!」
ハルヒ「目が覚めたらもうイベントが終わってるじゃないの!」
ハルヒ「こんな凄い見世物を私ぬきでやるなんてひどいじゃない!」
古泉がハルヒの方に向かおうとすると、
クラリス「行ってしまうの…?」
古泉「ええ 怖い団長が来てしまいましたからね」
古泉は頭脳をフル回転させてハルヒへの言い訳を組み立てていた。
ここは知らぬ存ぜぬで押し通すしかない。
時計塔の異変はSOS団とは全く関係のない偶然の一致であると。
あとは一切のメディア報道をハルヒの目から遮断する…
古泉は思わず溜息をついた。
古泉「まだまだ苦労は続きそうですね」
139: 2012/02/10(金) 01:21:00.88 ID:zkv9j/1f0
行政が混乱しているうちに、急いでこの国からズラかる必要があった。
城内組はユーロポールに拘束されているが、待ってる暇はない。
ここは田舎道を見下ろす小高い丘の上。
クラリスと老人がSOS団に別れの挨拶をしていた。
古泉はみんなと少し離れた場所でカールの頭をなでている。
クラリス「皆さん どうかお気をつけて キョン様も…」
キョン「へっ…!?」
クラリス「必ずまた来て下さいね ご恩は一生 忘れません」
クラリスは笑顔でキョンの手を握ると、古泉の方に歩いていった。
ハルヒ「キョン様だってさ…」
キョン「可憐だ…」
ハルヒ「ムッ…」
城内組はユーロポールに拘束されているが、待ってる暇はない。
ここは田舎道を見下ろす小高い丘の上。
クラリスと老人がSOS団に別れの挨拶をしていた。
古泉はみんなと少し離れた場所でカールの頭をなでている。
クラリス「皆さん どうかお気をつけて キョン様も…」
キョン「へっ…!?」
クラリス「必ずまた来て下さいね ご恩は一生 忘れません」
クラリスは笑顔でキョンの手を握ると、古泉の方に歩いていった。
ハルヒ「キョン様だってさ…」
キョン「可憐だ…」
ハルヒ「ムッ…」
140: 2012/02/10(金) 01:25:04.40 ID:zkv9j/1f0
向かい合うクラリスと古泉。
クラリス「本当に帰ってしまうのね…」
古泉「僕の仕事はもう終わりましたから」
クラリスは一度にさまざまな感情が溢れてきて言葉が出ない。
いや、言葉よりも先に体が勝手に動いた。
彼女は古泉の胸に飛び込むと、決して言うまいと思ってた言葉を口に出した。
クラリス「私も連れてって 超能力は使えないけど なんでも手伝います」
クラリス「私 私… お願い! 一緒に行きたい」
古泉「クラリス…」
古泉は強力な磁石に逆らうようにクラリスの肩を離した。
古泉「バカなこと言わないでください また闇の中へ戻りたいのですか?」
古泉「やっとお陽さまの下に出られたんじゃありませんか」
古泉「あなたの人生はこれから始まるんですよ」
古泉「僕のように 日陰の仕事に手を染めちゃいけないんです」
古泉「あ そうだ 困ったことがあったら いつでも言ってください」
古泉「僕は 地球の裏側からでもすぐ飛んで来ますからね」
古泉「それまではクラリス お元気で」
クラリスは溢れそうになる涙をこらえて目を閉じた。
その額にキスをする古泉。素早くきびすを返すとフィアットに走っていった。
クラリス「本当に帰ってしまうのね…」
古泉「僕の仕事はもう終わりましたから」
クラリスは一度にさまざまな感情が溢れてきて言葉が出ない。
いや、言葉よりも先に体が勝手に動いた。
彼女は古泉の胸に飛び込むと、決して言うまいと思ってた言葉を口に出した。
クラリス「私も連れてって 超能力は使えないけど なんでも手伝います」
クラリス「私 私… お願い! 一緒に行きたい」
古泉「クラリス…」
古泉は強力な磁石に逆らうようにクラリスの肩を離した。
古泉「バカなこと言わないでください また闇の中へ戻りたいのですか?」
古泉「やっとお陽さまの下に出られたんじゃありませんか」
古泉「あなたの人生はこれから始まるんですよ」
古泉「僕のように 日陰の仕事に手を染めちゃいけないんです」
古泉「あ そうだ 困ったことがあったら いつでも言ってください」
古泉「僕は 地球の裏側からでもすぐ飛んで来ますからね」
古泉「それまではクラリス お元気で」
クラリスは溢れそうになる涙をこらえて目を閉じた。
その額にキスをする古泉。素早くきびすを返すとフィアットに走っていった。
141: 2012/02/10(金) 01:30:18.48 ID:zkv9j/1f0
古泉に続いて長門とキョンも去ってゆく。
長門「達者で」
キョン「またなー」
クラリス「ありがとう 皆さん さようなら」
最後にハルヒがクラリスのそばに残った。
ハルヒ「あーあ 時すでに遅しね! 古泉君の奴 まんまと盗んじゃって」
クラリス「いいえ あの方は何も盗らなかったわ」
クラリス「私のために闘って下さったんです」
ハルヒ「ううん 奴はとんでもないものを盗んでいったわ」
ハルヒ「あなたの心よ」
その言葉にハッとしたクラリス。みるみるうちに目を輝かせる。
クラリス「ハイ!」
ハルヒ「じゃあね お姫さま役 板についてたわよ!」
ハルヒは手を振ってフィアットに戻った。
ハルヒ「何よキョンったら! デレデレしちゃって 氏刑よ氏刑!」
キョン「イテテテテ やめろって!」
SOS団を乗せたフィアットは国境に向けて走り去っていった。
老人「なんと気持のいい連中だろう」
クラリス「私 ずっと昔からあの方たちを待っていたような気がするの」
クラリス「古泉さま… きっと きっと また会えるわ」
長門「達者で」
キョン「またなー」
クラリス「ありがとう 皆さん さようなら」
最後にハルヒがクラリスのそばに残った。
ハルヒ「あーあ 時すでに遅しね! 古泉君の奴 まんまと盗んじゃって」
クラリス「いいえ あの方は何も盗らなかったわ」
クラリス「私のために闘って下さったんです」
ハルヒ「ううん 奴はとんでもないものを盗んでいったわ」
ハルヒ「あなたの心よ」
その言葉にハッとしたクラリス。みるみるうちに目を輝かせる。
クラリス「ハイ!」
ハルヒ「じゃあね お姫さま役 板についてたわよ!」
ハルヒは手を振ってフィアットに戻った。
ハルヒ「何よキョンったら! デレデレしちゃって 氏刑よ氏刑!」
キョン「イテテテテ やめろって!」
SOS団を乗せたフィアットは国境に向けて走り去っていった。
老人「なんと気持のいい連中だろう」
クラリス「私 ずっと昔からあの方たちを待っていたような気がするの」
クラリス「古泉さま… きっと きっと また会えるわ」
142: 2012/02/10(金) 01:34:45.49 ID:zkv9j/1f0
イタリア入りした一行はミラノへ移動し、そこでフィアットを売り払った。
ユーロポールの事情聴取から解放されたみくると鶴屋がここで合流。
ミラノ空港から鶴屋さんのチャーター機に便乗して日本に帰ることになった。
ハルヒは離陸早々、操縦席に入り込んで見学。
みくると鶴屋はバーでカクテルの飲み比べをしていた。
キョン「ハルヒの奴 強引に操縦桿を奪ったりしないだろうな」
キョンは向かいに座って何やらたそがれている古泉に目を向けた。
キョン「お前 残っててもいいんだぜ いい子だったからなあ…」
古泉「遠慮しておきます 二人の女神に同時に仕えることは出来ません」
古泉「何より僕はSOS団副団長の重責をになう身ですから」
キョン「それの何処が重責なのか俺にはサッパリわからん」
キョン「それにしてもだ」
キョン「今度の事件でSOS団は世界的に有名になっちまったぞ どうすんだ」
古泉「心配には及びません 現在 長門さんに情報操作をしてもらってる最中です」
キョン「情報操作だと?」
ユーロポールの事情聴取から解放されたみくると鶴屋がここで合流。
ミラノ空港から鶴屋さんのチャーター機に便乗して日本に帰ることになった。
ハルヒは離陸早々、操縦席に入り込んで見学。
みくると鶴屋はバーでカクテルの飲み比べをしていた。
キョン「ハルヒの奴 強引に操縦桿を奪ったりしないだろうな」
キョンは向かいに座って何やらたそがれている古泉に目を向けた。
キョン「お前 残っててもいいんだぜ いい子だったからなあ…」
古泉「遠慮しておきます 二人の女神に同時に仕えることは出来ません」
古泉「何より僕はSOS団副団長の重責をになう身ですから」
キョン「それの何処が重責なのか俺にはサッパリわからん」
キョン「それにしてもだ」
キョン「今度の事件でSOS団は世界的に有名になっちまったぞ どうすんだ」
古泉「心配には及びません 現在 長門さんに情報操作をしてもらってる最中です」
キョン「情報操作だと?」
143: 2012/02/10(金) 01:38:29.28 ID:zkv9j/1f0
キョンは隅の席の長門を見た。
シートを倒し、アイマスクをして横たわってる彼女はピクリとも動かない。
だがよく耳を澄ますと、例の呪文を唱えてるような声がかすかに聞こえてくる。
古泉「関係者の記憶はもちろん メディアの報道内容 それに接した人の記憶」
古泉「これらの膨大な範囲の情報をすべて書き換えるわけですからね」
古泉「さすがの長門さんも少々てこずってるようです」
キョン「情報操作はいいけど どう書き換えるんだ?」
キョン「まさか事件そのものを無かった事にするわけにも行くまい」
古泉「当然です 事件の痕跡は消せても 氏亡者がいますからね」
古泉「一度氏んだ人間を蘇らせる事は長門さんにも出来ません」
古泉「そこで一番手っ取り早い方法は―」
古泉「我々のした事を別の誰かがやった事にしてしまうんです」
キョン「別の誰かって あんなデタラメな事件を起こせる奴が他にいるのか?」
古泉「誰に罪を被せるかについては僕から長門さんにリクエストしておきました」
古泉「あなたはルパン三世をご存知ですか?」
キョン「ああ 世界的な有名人だからな」
古泉「かのアルセーヌ・ルパンの孫といわれる大泥棒」
古泉「我々の罪を被ってもらうのにうってつけの人物だとは思いませんか?」
キョン「まあルパンならそんな事をされても笑って許してくれそうではあるな」
古泉「事件はルパンの仕業としてメディアに記録され 人々の記憶に残るわけです」
シートを倒し、アイマスクをして横たわってる彼女はピクリとも動かない。
だがよく耳を澄ますと、例の呪文を唱えてるような声がかすかに聞こえてくる。
古泉「関係者の記憶はもちろん メディアの報道内容 それに接した人の記憶」
古泉「これらの膨大な範囲の情報をすべて書き換えるわけですからね」
古泉「さすがの長門さんも少々てこずってるようです」
キョン「情報操作はいいけど どう書き換えるんだ?」
キョン「まさか事件そのものを無かった事にするわけにも行くまい」
古泉「当然です 事件の痕跡は消せても 氏亡者がいますからね」
古泉「一度氏んだ人間を蘇らせる事は長門さんにも出来ません」
古泉「そこで一番手っ取り早い方法は―」
古泉「我々のした事を別の誰かがやった事にしてしまうんです」
キョン「別の誰かって あんなデタラメな事件を起こせる奴が他にいるのか?」
古泉「誰に罪を被せるかについては僕から長門さんにリクエストしておきました」
古泉「あなたはルパン三世をご存知ですか?」
キョン「ああ 世界的な有名人だからな」
古泉「かのアルセーヌ・ルパンの孫といわれる大泥棒」
古泉「我々の罪を被ってもらうのにうってつけの人物だとは思いませんか?」
キョン「まあルパンならそんな事をされても笑って許してくれそうではあるな」
古泉「事件はルパンの仕業としてメディアに記録され 人々の記憶に残るわけです」
144: 2012/02/10(金) 01:43:16.27 ID:zkv9j/1f0
キョンは視線を宙に漂わせて、古泉の言葉の意味を反芻していた。
キョン「なあ古泉よ お前 本当にそれで良いのか?」
古泉「と仰いますと?」
キョン「クラリスがお前に抱いた恋心」
キョン「これもルパンに対するものとして上書きされちまうんだろ?」
キョン「お前はそれで平気なのかよ」
古泉はその問いかけには答えなかった。
古泉「…少々 喉が渇きましたね」
古泉「僕もバーに行って 鶴屋さんのご相伴に預かりましょうか」
そう言って席を立った。
キョン「いずれにせよ相当なご都合主義だぜ このオチは」
キョン「スレ主も風呂敷を畳むのに四苦八苦って所か」
長門「メタな発言は慎むべき」
キョン「おっ 長門 情報操作は終わったのか?」
長門「終わった」
キョン「俺の記憶がまだ残ってるって事は 俺の脳はいじってないんだな」
長門「そう」
長門「今回の件ではSOS団のメンバーに限って記憶を残してある」
キョン「ふーん 今回の件ではね…」
長門「………」
キョン「おい 長門 こういう事は今回が初めてか?」
キョン「ひょっとして俺たちは前にもこんな事件を起こしてるんじゃないか?」
キョン「いや 頻繁に似たような事件を起こしていて」
キョン「そのたびにお前が俺たちの記憶を消していたという事はないのか?」
キョン「それどころか 今回の件にしたって」
キョン「お前の都合のいいように俺の記憶を改竄してないとは言い切れないぜ」
キョン「どうなんだ 長門 正直に言ってくれ」
長門は無表情でキョンを見つめると、唇に人差し指を当ててウインクした。
長門「それは 禁則事項」
(完)
キョン「なあ古泉よ お前 本当にそれで良いのか?」
古泉「と仰いますと?」
キョン「クラリスがお前に抱いた恋心」
キョン「これもルパンに対するものとして上書きされちまうんだろ?」
キョン「お前はそれで平気なのかよ」
古泉はその問いかけには答えなかった。
古泉「…少々 喉が渇きましたね」
古泉「僕もバーに行って 鶴屋さんのご相伴に預かりましょうか」
そう言って席を立った。
キョン「いずれにせよ相当なご都合主義だぜ このオチは」
キョン「スレ主も風呂敷を畳むのに四苦八苦って所か」
長門「メタな発言は慎むべき」
キョン「おっ 長門 情報操作は終わったのか?」
長門「終わった」
キョン「俺の記憶がまだ残ってるって事は 俺の脳はいじってないんだな」
長門「そう」
長門「今回の件ではSOS団のメンバーに限って記憶を残してある」
キョン「ふーん 今回の件ではね…」
長門「………」
キョン「おい 長門 こういう事は今回が初めてか?」
キョン「ひょっとして俺たちは前にもこんな事件を起こしてるんじゃないか?」
キョン「いや 頻繁に似たような事件を起こしていて」
キョン「そのたびにお前が俺たちの記憶を消していたという事はないのか?」
キョン「それどころか 今回の件にしたって」
キョン「お前の都合のいいように俺の記憶を改竄してないとは言い切れないぜ」
キョン「どうなんだ 長門 正直に言ってくれ」
長門は無表情でキョンを見つめると、唇に人差し指を当ててウインクした。
長門「それは 禁則事項」
(完)
147: 2012/02/10(金) 02:01:31.48 ID:zkv9j/1f0
最後まで読んでくれてありがとう。いやー疲れた! 脳みそが破裂しそうだ。
これはおまけ。
次回予告「ハルヒ三世」
俺の名は「ハルヒ三世」。かの願望実現能力者、涼宮ハルヒの孫だ。
ばあちゃん譲りの頭脳と運動神経で、狙った獲物は必ず奪う神出鬼没の大泥棒。
とっころが、ルックスはじいちゃんと瓜二つなんだなぁ。やれやれだぜ。
それが、この俺、「ハルヒ三世」だ。
「古泉大介」、俺の相棒。スプーン曲げしか見せてくれない自称超能力者。
常にイエスマン。そのうえ、まわりくどい喋り方の、ニヤケハンサム。
13代目「長門有希」。エラーの蓄積が止まらず13回もの初期化を余儀なくされた、
対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース。
情報操作の達人。なんでも情報連結解除しちまう、怒らせると怖ぁ~い宇宙人。
謎の未来人、「朝比奈みくる」。ばあちゃんの高校時代の次の赴任先がこの時代。
何の目的でここにいるのか、この俺にも分からない謎のカワイコちゃん。
彼女はいつもひどい目にあってるが、けなげに頑張るんだなぁ。
ご存じ、鶴屋財閥の次期当主にして警視庁の敏腕警部。富豪刑事か俺の空か。
俺を捕まえるのを生き甲斐とする、俺の最も苦手な「めがっつあん」だ。
さて、さて、これら一癖も二癖もある連中に囲まれて、
どんな事件を巻き起こしてやろうかな。
これはおまけ。
次回予告「ハルヒ三世」
俺の名は「ハルヒ三世」。かの願望実現能力者、涼宮ハルヒの孫だ。
ばあちゃん譲りの頭脳と運動神経で、狙った獲物は必ず奪う神出鬼没の大泥棒。
とっころが、ルックスはじいちゃんと瓜二つなんだなぁ。やれやれだぜ。
それが、この俺、「ハルヒ三世」だ。
「古泉大介」、俺の相棒。スプーン曲げしか見せてくれない自称超能力者。
常にイエスマン。そのうえ、まわりくどい喋り方の、ニヤケハンサム。
13代目「長門有希」。エラーの蓄積が止まらず13回もの初期化を余儀なくされた、
対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース。
情報操作の達人。なんでも情報連結解除しちまう、怒らせると怖ぁ~い宇宙人。
謎の未来人、「朝比奈みくる」。ばあちゃんの高校時代の次の赴任先がこの時代。
何の目的でここにいるのか、この俺にも分からない謎のカワイコちゃん。
彼女はいつもひどい目にあってるが、けなげに頑張るんだなぁ。
ご存じ、鶴屋財閥の次期当主にして警視庁の敏腕警部。富豪刑事か俺の空か。
俺を捕まえるのを生き甲斐とする、俺の最も苦手な「めがっつあん」だ。
さて、さて、これら一癖も二癖もある連中に囲まれて、
どんな事件を巻き起こしてやろうかな。
148: 2012/02/10(金) 04:20:34.15
乙!
これはまだ続くのか?
これはまだ続くのか?
150: 2012/02/10(金) 22:40:28.77
乙!! 見事なオチのつけ方だった。
鶴屋さんも出番あったし満足だ。
また会おうぜ!
鶴屋さんも出番あったし満足だ。
また会おうぜ!
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