1: 2020/10/07(水) 20:00:07.267 ID:4gJal0vV0
―会社―
女「おはようございます」
同僚「おはよ――」
同僚「え」
女「……」
同僚(手首に……包帯巻いてる!)
同僚(これってまさか、まさか……リストカット!?)
女(うふふ、さっそく気づいたみたい!)
女「おはようございます」
同僚「おはよ――」
同僚「え」
女「……」
同僚(手首に……包帯巻いてる!)
同僚(これってまさか、まさか……リストカット!?)
女(うふふ、さっそく気づいたみたい!)
2: 2020/10/07(水) 20:03:09.075 ID:4gJal0vV0
同僚「あ、あのさ……」
女「はい?」
同僚「その手首……」
女「手首がどうしました?」
同僚「い、いや……(あんまり触れない方がいいよな)」
同僚「頼みたい仕事があったんだけど……やっぱいいや! うん!」
女「そうですか」
女(やった! 効果テキメン!)
女「はい?」
同僚「その手首……」
女「手首がどうしました?」
同僚「い、いや……(あんまり触れない方がいいよな)」
同僚「頼みたい仕事があったんだけど……やっぱいいや! うん!」
女「そうですか」
女(やった! 効果テキメン!)
4: 2020/10/07(水) 20:06:02.858 ID:4gJal0vV0
課長「君ィ、こんなミスしちゃ困る……!?」
女「すみません……」
課長(手首に……包帯!?)
課長「いや、いいんだよ……このぐらいのミスはよくあることさ」
OL「よかったら、これ食べない?」
女「いいの? ありがとう」
OL「だから元気出してね」
女(みんな優しくしてくれるようになったわ! あとは――)
女「すみません……」
課長(手首に……包帯!?)
課長「いや、いいんだよ……このぐらいのミスはよくあることさ」
OL「よかったら、これ食べない?」
女「いいの? ありがとう」
OL「だから元気出してね」
女(みんな優しくしてくれるようになったわ! あとは――)
5: 2020/10/07(水) 20:09:12.673 ID:4gJal0vV0
―自宅―
女「ただいまー」
男「お帰り」
猫「ニャーン」
女「ちょっと遅くなっちゃった。すぐご飯にするから」
男「ああ、お腹減っちゃったよ。お前もだろ、なぁ?」
猫「ニャーン」
女「ごめんねえ。キャットフード出すからね」
男「おいおい、人間の飯を先にしてくれよ」
女(うーむ、特に変わった様子はないなぁ……)
女「ただいまー」
男「お帰り」
猫「ニャーン」
女「ちょっと遅くなっちゃった。すぐご飯にするから」
男「ああ、お腹減っちゃったよ。お前もだろ、なぁ?」
猫「ニャーン」
女「ごめんねえ。キャットフード出すからね」
男「おいおい、人間の飯を先にしてくれよ」
女(うーむ、特に変わった様子はないなぁ……)
6: 2020/10/07(水) 20:12:09.811 ID:4gJal0vV0
TV『ここで変わったニュースです』
TV『最近、都内で包帯を全身に巻いた“ミイラ男”の目撃情報が相次ぎ……』
男「なんだこりゃ」
女「ホントに変なニュースだね」
猫「ニャオーン」
女「大丈夫、ミイラなんているわけないんだから。これだってどうせイタズラでしょ」
男「じゃあ、今晩も……いいだろ?」
女「もう……」
女(包帯巻いても、この人は変わらないか)
TV『最近、都内で包帯を全身に巻いた“ミイラ男”の目撃情報が相次ぎ……』
男「なんだこりゃ」
女「ホントに変なニュースだね」
猫「ニャオーン」
女「大丈夫、ミイラなんているわけないんだから。これだってどうせイタズラでしょ」
男「じゃあ、今晩も……いいだろ?」
女「もう……」
女(包帯巻いても、この人は変わらないか)
8: 2020/10/07(水) 20:15:25.439 ID:4gJal0vV0
―会社―
同僚「悪いんだけど、これ急ぎで頼むよ!」
女「はーい」
OL「ごめーん、これ手伝って!」
女「分かったわ」
女(うーん……会社でも包帯の効力が切れてきたな……)
同僚「悪いんだけど、これ急ぎで頼むよ!」
女「はーい」
OL「ごめーん、これ手伝って!」
女「分かったわ」
女(うーん……会社でも包帯の効力が切れてきたな……)
9: 2020/10/07(水) 20:18:10.827 ID:4gJal0vV0
―ドラッグストア―
女「あったあった、包帯」
女「今度は両手首に巻いてみよう!」
女(そしたら、きっと彼だって……)
???「……」
女「あったあった、包帯」
女「今度は両手首に巻いてみよう!」
女(そしたら、きっと彼だって……)
???「……」
10: 2020/10/07(水) 20:21:28.435 ID:4gJal0vV0
女「両手首に巻いて、と……」グルグル
「やめろ……」
女「え?」
ミイラ男「……」
女「……きゃあっ!?」
女(全身に包帯を巻いてる……!)
女(こいつ、まさか……ニュースでやってたミイラ男!?)
「やめろ……」
女「え?」
ミイラ男「……」
女「……きゃあっ!?」
女(全身に包帯を巻いてる……!)
女(こいつ、まさか……ニュースでやってたミイラ男!?)
11: 2020/10/07(水) 20:24:26.486 ID:4gJal0vV0
女「な、なにか用ですか?」
ミイラ男「包帯巻くのをやめろ……」
女「なんで……?」
ミイラ男「いいからやめろ……後悔することになる……」
女「やめないわよ!」
女「私はこの包帯で、みんなに……彼に大切にしてもらうんだから!」
タタタッ…
ミイラ男「……」
ミイラ男「包帯巻くのをやめろ……」
女「なんで……?」
ミイラ男「いいからやめろ……後悔することになる……」
女「やめないわよ!」
女「私はこの包帯で、みんなに……彼に大切にしてもらうんだから!」
タタタッ…
ミイラ男「……」
12: 2020/10/07(水) 20:28:37.612 ID:4gJal0vV0
―自宅―
女「ただいまー」
男「お帰り」
猫「ニャーン」
女「私ね、さっき……」
男「どうした?」
女「ううん、なんでもない」
男「そっか。じゃあ早くメシにしてくれよ。腹減っちまった」
女「うん、分かった」
TV『強盗を繰り返していた青少年グループが、警察に保護され……』
女(あーあ、私も保護してもらいたいわ)
女「ただいまー」
男「お帰り」
猫「ニャーン」
女「私ね、さっき……」
男「どうした?」
女「ううん、なんでもない」
男「そっか。じゃあ早くメシにしてくれよ。腹減っちまった」
女「うん、分かった」
TV『強盗を繰り返していた青少年グループが、警察に保護され……』
女(あーあ、私も保護してもらいたいわ)
13: 2020/10/07(水) 20:31:19.160 ID:4gJal0vV0
―会社―
同僚「包帯が両手首になってるぞ……」
OL「また自殺未遂したのかも……」
ヒソヒソ…
女(会社では効果テキメン! 包帯を増やしたかいがあったわ!)
―自宅―
男「猫も寝たし、今夜もたっぷり楽しもうぜ」
女「しょうがない人ね……」
女(だけど、この人は変わらないか……)
同僚「包帯が両手首になってるぞ……」
OL「また自殺未遂したのかも……」
ヒソヒソ…
女(会社では効果テキメン! 包帯を増やしたかいがあったわ!)
―自宅―
男「猫も寝たし、今夜もたっぷり楽しもうぜ」
女「しょうがない人ね……」
女(だけど、この人は変わらないか……)
14: 2020/10/07(水) 20:33:56.398 ID:4gJal0vV0
―ドラッグストア―
女(私は諦めない!)
女(もっと! もっと包帯を巻けばきっと……)
女「包帯ください!」
店員「かしこまりました」
店員(こんなに買うの……? よほど怪我する人なんだな……)
女(私は諦めない!)
女(もっと! もっと包帯を巻けばきっと……)
女「包帯ください!」
店員「かしこまりました」
店員(こんなに買うの……? よほど怪我する人なんだな……)
17: 2020/10/07(水) 20:38:06.976 ID:4gJal0vV0
女「……あ!」
ミイラ男「前より包帯を増やしたな……愚か者め」
女「また来たの!? なんなのよもう!」
ミイラ男「包帯巻くのを……やめろ」
女「……!」
女「私はやめないわよ!」タタタッ
ミイラ男「……」
ミイラ男「前より包帯を増やしたな……愚か者め」
女「また来たの!? なんなのよもう!」
ミイラ男「包帯巻くのを……やめろ」
女「……!」
女「私はやめないわよ!」タタタッ
ミイラ男「……」
18: 2020/10/07(水) 20:40:27.824 ID:4gJal0vV0
―会社―
女「うふふ……これだけ巻けばきっと……」
ヒソヒソ…
同僚「彼女、どうしちまったんだ? どんどん包帯を増やしてるぞ」
OL「いくらなんでもおかしいわよ……」
課長「ううむ、単なるファッションならいいのだが……」
同僚「いや、よくないでしょう」
女「うふふ……これだけ巻けばきっと……」
ヒソヒソ…
同僚「彼女、どうしちまったんだ? どんどん包帯を増やしてるぞ」
OL「いくらなんでもおかしいわよ……」
課長「ううむ、単なるファッションならいいのだが……」
同僚「いや、よくないでしょう」
19: 2020/10/07(水) 20:43:45.661 ID:4gJal0vV0
……
女(両肘や首にも巻いてみたけど、彼には効果なし……)
女(だったら次は――)
ミイラ男「やめろ」
女「出たわね、ミイラ男!」
ミイラ男「包帯巻くのをやめろ」
女「だから、やめないっていってるでしょ!」
女(両肘や首にも巻いてみたけど、彼には効果なし……)
女(だったら次は――)
ミイラ男「やめろ」
女「出たわね、ミイラ男!」
ミイラ男「包帯巻くのをやめろ」
女「だから、やめないっていってるでしょ!」
22: 2020/10/07(水) 20:46:52.108 ID:4gJal0vV0
女「なんなの!? 私を口説くつもり!? あいにくミイラのコスプレするような変態に興味ないのよ!」
女「失礼するわ」スタスタ
ミイラ男「俺みたいになるぞ」
女「え?」
ミイラ男「あまり意味もなく包帯を巻いてると……俺みたいになってしまう」
女「……!?」
女「失礼するわ」スタスタ
ミイラ男「俺みたいになるぞ」
女「え?」
ミイラ男「あまり意味もなく包帯を巻いてると……俺みたいになってしまう」
女「……!?」
24: 2020/10/07(水) 20:50:21.835 ID:4gJal0vV0
女「あなたみたいってどういうこと?」
ミイラ男「お前がなぜ包帯を巻くか、俺には手に取るように分かる」
ミイラ男「包帯を巻くことで、周囲から心配されたり、チヤホヤされたいんだろう?」
女「なんで……分かるの……」
ミイラ男「なぜなら、俺もお前と同じ道をたどった人間だからだ」
女「……!」
ミイラ男「お前がなぜ包帯を巻くか、俺には手に取るように分かる」
ミイラ男「包帯を巻くことで、周囲から心配されたり、チヤホヤされたいんだろう?」
女「なんで……分かるの……」
ミイラ男「なぜなら、俺もお前と同じ道をたどった人間だからだ」
女「……!」
25: 2020/10/07(水) 20:53:37.842 ID:4gJal0vV0
ミイラ男「俺は元々、地味で平凡な人間だった……」
ミイラ男「しかし、目立ちたい、特別扱いされたいという思いは人一倍強かった……」
ミイラ男「だが、なんの取り柄もない俺が、特別扱いされるなど夢のまた夢……」
ミイラ男「もちろん、犯罪に走る度胸もない」
ミイラ男「そんな時、俺は自分の人生で“唯一主役になれた瞬間”を思い出したんだ」
女「いつよ?」
ミイラ男「小学校の頃、腕を骨折した時だ」
ミイラ男「しかし、目立ちたい、特別扱いされたいという思いは人一倍強かった……」
ミイラ男「だが、なんの取り柄もない俺が、特別扱いされるなど夢のまた夢……」
ミイラ男「もちろん、犯罪に走る度胸もない」
ミイラ男「そんな時、俺は自分の人生で“唯一主役になれた瞬間”を思い出したんだ」
女「いつよ?」
ミイラ男「小学校の頃、腕を骨折した時だ」
27: 2020/10/07(水) 20:56:31.932 ID:4gJal0vV0
ミイラ男「子供にとって、骨折した奴ってのは氏地から生還したヒーローみたいなもんだ」
ミイラ男「目立たない子供だった俺が、あの数日間だけはクラスの人気者になった」
『すっげえ包帯!』 『大丈夫かよ……』 『痛かった?』
ミイラ男「思い出せば思い出すほど、“もう一度味わいたい”という気持ちが強くなっていく」
ミイラ男「そして……ついに俺は怪我もしてないのに包帯を巻き始めた」
ミイラ男「巻いて巻いて巻きまくった! 映画に出てくるミイラ男のように!」
女「……」ゴクッ
ミイラ男「そうしたら――」
ミイラ男「目立たない子供だった俺が、あの数日間だけはクラスの人気者になった」
『すっげえ包帯!』 『大丈夫かよ……』 『痛かった?』
ミイラ男「思い出せば思い出すほど、“もう一度味わいたい”という気持ちが強くなっていく」
ミイラ男「そして……ついに俺は怪我もしてないのに包帯を巻き始めた」
ミイラ男「巻いて巻いて巻きまくった! 映画に出てくるミイラ男のように!」
女「……」ゴクッ
ミイラ男「そうしたら――」
28: 2020/10/07(水) 20:59:24.632 ID:4gJal0vV0
ミイラ男「俺の体はこの通りだ」シュルルッ
女「え……!?」
ミイラ男「どうだ、本物のミイラみたいだろう? 全身干からびて、醜くて……完全に化け物だ」
女「包帯を巻いただけで……?」
ミイラ男「お前は俺のことをただの包帯マニアとでも思ってただろうが――」
ミイラ男「包帯を巻いたことで、俺は本当にミイラ男になっちまったんだ!」
ミイラ男「世の中にはコスプレしてるうちに、自分こそが本物と思うようになり、体質すら変わる人間もいるという」
ミイラ男「俺にもあの現象が起こっちまったんだろう……」
ミイラ男「俺はもう人じゃない……。街をさまようしかできない哀れな“ミイラ男”なのさ」
女「……」
女「え……!?」
ミイラ男「どうだ、本物のミイラみたいだろう? 全身干からびて、醜くて……完全に化け物だ」
女「包帯を巻いただけで……?」
ミイラ男「お前は俺のことをただの包帯マニアとでも思ってただろうが――」
ミイラ男「包帯を巻いたことで、俺は本当にミイラ男になっちまったんだ!」
ミイラ男「世の中にはコスプレしてるうちに、自分こそが本物と思うようになり、体質すら変わる人間もいるという」
ミイラ男「俺にもあの現象が起こっちまったんだろう……」
ミイラ男「俺はもう人じゃない……。街をさまようしかできない哀れな“ミイラ男”なのさ」
女「……」
29: 2020/10/07(水) 21:02:21.035 ID:4gJal0vV0
ミイラ男「その証拠にほら!」ガシッ
女「きゃっ!」
ミイラ男「お前の手首の包帯をほどいてやる」シュルルッ
ミイラ男「やっぱりな……」
ミイラ男「お前の手首にもうっすら傷がついてる! リストカットなんかしてないのに!」
ミイラ男「このまま続けたら、お前も俺みたいになるぞ! だからもう包帯巻くのはやめろ!」
女「……」
女「きゃっ!」
ミイラ男「お前の手首の包帯をほどいてやる」シュルルッ
ミイラ男「やっぱりな……」
ミイラ男「お前の手首にもうっすら傷がついてる! リストカットなんかしてないのに!」
ミイラ男「このまま続けたら、お前も俺みたいになるぞ! だからもう包帯巻くのはやめろ!」
女「……」
30: 2020/10/07(水) 21:05:16.224 ID:4gJal0vV0
女「色々と身の上話してくれたところ、申し訳ないんだけど――」
ミイラ男「?」
女「この傷、元々よ」
ミイラ男「へ?」
女「私は元々リストカットしてたってことよ。薄い傷だから、誰も気づかなかったけどね」
ミイラ男「え……」
女「ああ、それと……あなたもなかなかひどい体だけど、私だって似たようなものよ」ヌギヌギ
ミイラ男「わっ、いきなり脱ぐなよ!」
ミイラ男「?」
女「この傷、元々よ」
ミイラ男「へ?」
女「私は元々リストカットしてたってことよ。薄い傷だから、誰も気づかなかったけどね」
ミイラ男「え……」
女「ああ、それと……あなたもなかなかひどい体だけど、私だって似たようなものよ」ヌギヌギ
ミイラ男「わっ、いきなり脱ぐなよ!」
31: 2020/10/07(水) 21:08:16.276 ID:4gJal0vV0
女「どう?」
ミイラ男「なんだこりゃ……!」
ミイラ男「服で隠れてる部分は、傷だらけ・痣だらけじゃないか! なんでこんなことに……」
女「これ、みんな彼氏にやられたの」
ミイラ男「彼氏……!?」
女「いえ……あんな奴、彼氏なんかじゃないわ……。悪魔よ!」
ミイラ男「なんだこりゃ……!」
ミイラ男「服で隠れてる部分は、傷だらけ・痣だらけじゃないか! なんでこんなことに……」
女「これ、みんな彼氏にやられたの」
ミイラ男「彼氏……!?」
女「いえ……あんな奴、彼氏なんかじゃないわ……。悪魔よ!」
34: 2020/10/07(水) 21:11:24.605 ID:4gJal0vV0
ミイラ男「説明してくれないか」
女「私の彼、ひどい男でね……」
女「私の家に住みついて、自分は働きもせず、一日中家に引きこもって、ゲームやネットして……」
女「仕事から帰ってきた私に暴力振るうの。毎晩のように……」
女「私がこれ見よがしに包帯巻いても、なーんにも変わらなかったわ」
ミイラ男「たしかに悪魔みたいな奴だな……」
ミイラ男「だけど、そんなの逃げればいいだけの話じゃないか? 逃げて、警察や行政に相談すれば……」
女「ダメなのよ」
女「私の彼、ひどい男でね……」
女「私の家に住みついて、自分は働きもせず、一日中家に引きこもって、ゲームやネットして……」
女「仕事から帰ってきた私に暴力振るうの。毎晩のように……」
女「私がこれ見よがしに包帯巻いても、なーんにも変わらなかったわ」
ミイラ男「たしかに悪魔みたいな奴だな……」
ミイラ男「だけど、そんなの逃げればいいだけの話じゃないか? 逃げて、警察や行政に相談すれば……」
女「ダメなのよ」
35: 2020/10/07(水) 21:14:18.393 ID:4gJal0vV0
女「猫が人質にされてるから」
男『今夜も楽しもうなぁ……オラァ!』バシッ!
女『いだいっ!』
男『いいか……もし、部屋に警察やらどこぞの役人が来るような事態になったら……』
男『この猫を頃すからなぁ……絶対頃す! こんな猫、一瞬で首ヘシ折れるからなァ!』
猫『ニャーン…』
女「……ってね」
男『今夜も楽しもうなぁ……オラァ!』バシッ!
女『いだいっ!』
男『いいか……もし、部屋に警察やらどこぞの役人が来るような事態になったら……』
男『この猫を頃すからなぁ……絶対頃す! こんな猫、一瞬で首ヘシ折れるからなァ!』
猫『ニャーン…』
女「……ってね」
36: 2020/10/07(水) 21:17:49.398 ID:4gJal0vV0
ミイラ男「……」
女「……というわけ。私はあの男から逃げられないのよ」
ミイラ男「一つだけ方法がある」
女「はぁ? 猫ちゃんを見捨てるなら無理よ。あの子は私の大事な――」
ミイラ男「そうじゃない」
ミイラ男「警官や役人を連れていったらアウトなんだろ? だけどミイラならどうだ?」
女「どういうこと……」
ミイラ男「俺が……お前の彼氏を倒してやる」
女「……!」
女「……というわけ。私はあの男から逃げられないのよ」
ミイラ男「一つだけ方法がある」
女「はぁ? 猫ちゃんを見捨てるなら無理よ。あの子は私の大事な――」
ミイラ男「そうじゃない」
ミイラ男「警官や役人を連れていったらアウトなんだろ? だけどミイラならどうだ?」
女「どういうこと……」
ミイラ男「俺が……お前の彼氏を倒してやる」
女「……!」
37: 2020/10/07(水) 21:20:52.486
謎の展開でワロタ
38: 2020/10/07(水) 21:21:13.916 ID:4gJal0vV0
……
女「……」ドキドキ
ミイラ男「……」
女「本当に大丈夫?」
ミイラ男「ああ。いつも通り、帰ればいいさ」
女「……うん」
女「ただいまー」
ガチャッ
女「……」ドキドキ
ミイラ男「……」
女「本当に大丈夫?」
ミイラ男「ああ。いつも通り、帰ればいいさ」
女「……うん」
女「ただいまー」
ガチャッ
39: 2020/10/07(水) 21:24:20.086 ID:4gJal0vV0
男「お帰り、遅かったな。なにやってたんだ?」
女「うん……ちょっと人に会ってね」
男「人ぉ?」
女「この人なんだけど……」
ミイラ男「よぉ」ヌウッ
男「わっ!?」
男「なんだこいつ!? てめえ、なに変な奴連れてきてんだよぉ! ふざけんなよぉ!」
男「猫頃してやるぅ!!!」ガシッ
猫「ニャッ!」
女「あっ……やめてぇぇぇぇぇ!!!」
女「うん……ちょっと人に会ってね」
男「人ぉ?」
女「この人なんだけど……」
ミイラ男「よぉ」ヌウッ
男「わっ!?」
男「なんだこいつ!? てめえ、なに変な奴連れてきてんだよぉ! ふざけんなよぉ!」
男「猫頃してやるぅ!!!」ガシッ
猫「ニャッ!」
女「あっ……やめてぇぇぇぇぇ!!!」
41: 2020/10/07(水) 21:27:29.684 ID:4gJal0vV0
ミイラ男「……」
女「もうダメだわ……! 猫ちゃんが……!」
ミイラ男「ああ、もう終わってる」
女「え」
男「……」ボケー…
猫「ニャーン」
女「あれ……? どうしちゃったの……?」
ミイラ男「ミイラの攻撃手段といえば決まってるだろう? “呪い”をかけたのさ」
ミイラ男「俺は憎しみを抱いた相手に呪いをかけることができる」
女「呪い……!」
ミイラ男「さっきのあんたの話を聞いて、こいつにはムカついてたからな。あっさりかけれた」
女「もうダメだわ……! 猫ちゃんが……!」
ミイラ男「ああ、もう終わってる」
女「え」
男「……」ボケー…
猫「ニャーン」
女「あれ……? どうしちゃったの……?」
ミイラ男「ミイラの攻撃手段といえば決まってるだろう? “呪い”をかけたのさ」
ミイラ男「俺は憎しみを抱いた相手に呪いをかけることができる」
女「呪い……!」
ミイラ男「さっきのあんたの話を聞いて、こいつにはムカついてたからな。あっさりかけれた」
42: 2020/10/07(水) 21:31:15.167 ID:4gJal0vV0
ミイラ男「俺の呪いを受けた者は、体じゃなく心が干からびる……」
男「……」フラフラ…
フラフラ… フラフラ…
女「行っちゃった……」
ミイラ男「氏にはしないが……フラフラと町をさまよい歩くだけだ。俺みたいにな」
女「今までも、誰かにかけたことがあるの?」
ミイラ男「街で強盗を繰り返してたチンピラどもを……数人な」
女(そういえば、そういうニュースがあったような……)
男「……」フラフラ…
フラフラ… フラフラ…
女「行っちゃった……」
ミイラ男「氏にはしないが……フラフラと町をさまよい歩くだけだ。俺みたいにな」
女「今までも、誰かにかけたことがあるの?」
ミイラ男「街で強盗を繰り返してたチンピラどもを……数人な」
女(そういえば、そういうニュースがあったような……)
43: 2020/10/07(水) 21:34:02.366 ID:4gJal0vV0
ミイラ男「ああ、それと傷跡を治してやる」
女「え?」
ミイラ男「俺の包帯であんたの体を包めば――」シュルルルルッ
ギュッ
ミイラ男「ほどく」シュルルッ
女「え……」
ミイラ男「ほら」
女「すごい! 傷が治った!」
猫「ニャーン!」
ミイラ男「どうだ、ミイラだってなかなかやるもんだろ」
女「ありがとう!」
女「え?」
ミイラ男「俺の包帯であんたの体を包めば――」シュルルルルッ
ギュッ
ミイラ男「ほどく」シュルルッ
女「え……」
ミイラ男「ほら」
女「すごい! 傷が治った!」
猫「ニャーン!」
ミイラ男「どうだ、ミイラだってなかなかやるもんだろ」
女「ありがとう!」
45: 2020/10/07(水) 21:37:06.721 ID:4gJal0vV0
ミイラ男「さて……これで俺の役目は終わりだ。じゃあな」
女「ま、待って……」
ミイラ男「ん?」
女「あなたは……私たちを助けてくれたわ。ちょっとぐらいお礼させてよ」
ミイラ男「いいよ、お礼なんて」
猫「ニャーン」
女「ほら、この子もあなたに感謝してるし」
ミイラ男「変わった女だな」
女「あなたと同じ程度にはね」
女「ま、待って……」
ミイラ男「ん?」
女「あなたは……私たちを助けてくれたわ。ちょっとぐらいお礼させてよ」
ミイラ男「いいよ、お礼なんて」
猫「ニャーン」
女「ほら、この子もあなたに感謝してるし」
ミイラ男「変わった女だな」
女「あなたと同じ程度にはね」
46: 2020/10/07(水) 21:40:14.371 ID:4gJal0vV0
女「あなたは人間に戻りたいと思ってるの?」
ミイラ男「そりゃ思うさ。早く人間に戻りた~いってなもんだ」
ミイラ男「だけど、戻る方法なんてあるわけない」
女「そうかなぁ」
ミイラ男「え?」
女「ミイラってようするに干からびた氏体でしょ? だったら水飲みまくれば治るんじゃない?」
ミイラ男「……へ」
ミイラ男「そりゃ思うさ。早く人間に戻りた~いってなもんだ」
ミイラ男「だけど、戻る方法なんてあるわけない」
女「そうかなぁ」
ミイラ男「え?」
女「ミイラってようするに干からびた氏体でしょ? だったら水飲みまくれば治るんじゃない?」
ミイラ男「……へ」
48: 2020/10/07(水) 21:43:18.792 ID:4gJal0vV0
ミイラ男「バカな……そんなんで戻れるわけが……」
女「そんなんでって、あなた包帯巻いただけでミイラになったじゃない」
ミイラ男「ド正論!」
ミイラ男「よーし、やってみるか!」
女「はい、水!」
ミイラ男「よしきた!」グビグビ
女「ほら、もっと飲んで飲んで!」
ミイラ男「まるでわんこそばだな……」グビグビ
女「そんなんでって、あなた包帯巻いただけでミイラになったじゃない」
ミイラ男「ド正論!」
ミイラ男「よーし、やってみるか!」
女「はい、水!」
ミイラ男「よしきた!」グビグビ
女「ほら、もっと飲んで飲んで!」
ミイラ男「まるでわんこそばだな……」グビグビ
50: 2020/10/07(水) 21:46:06.593 ID:4gJal0vV0
ミイラ男「ゲェーップ、もう飲めない……」
女「どう?」
ミイラ男「分からん……気持ち悪い」
女「歩くのも辛いほど?」
ミイラ男「ああ……胃袋がチャプチャプしてる。動くのもしんどい」
女「じゃあ、しばらくこの家に留まりなさいよ」
ミイラ男「ああ、そうさせてもらう」
ミイラ男(なんだか、上手く乗せられた気がするなぁ……。いや、飲まされた、か)
女「どう?」
ミイラ男「分からん……気持ち悪い」
女「歩くのも辛いほど?」
ミイラ男「ああ……胃袋がチャプチャプしてる。動くのもしんどい」
女「じゃあ、しばらくこの家に留まりなさいよ」
ミイラ男「ああ、そうさせてもらう」
ミイラ男(なんだか、上手く乗せられた気がするなぁ……。いや、飲まされた、か)
51: 2020/10/07(水) 21:49:13.415 ID:4gJal0vV0
しばらくして――
―会社―
女「よし、終わった!」
女「それじゃ、お疲れ様でーす!」
同僚「おう、お疲れ」
同僚「彼女……最近すごく元気になったな。包帯巻くのもやめちまったし」
OL「彼氏でも出来たのかな」
課長「それとも、長年抱えてた悩みが解決したのかもしれないねえ」
―会社―
女「よし、終わった!」
女「それじゃ、お疲れ様でーす!」
同僚「おう、お疲れ」
同僚「彼女……最近すごく元気になったな。包帯巻くのもやめちまったし」
OL「彼氏でも出来たのかな」
課長「それとも、長年抱えてた悩みが解決したのかもしれないねえ」
53: 2020/10/07(水) 21:52:42.214 ID:4gJal0vV0
女「さあ、お水を飲ーんで! 飲んで! 飲ーんで!」
ミイラ男「飲み会のコールじゃねえんだから」グビグビ
ミイラ男「ぷはっ! おおっ……肌がちょっと瑞々しくなってきたような!」
ミイラ男「人間時代に戻ったような! ……気がする」
女「でしょ!」
女「じゃあ、今夜のご飯はアジのミイラね」
ミイラ男「干物っていえよ」
ミイラ男「飲み会のコールじゃねえんだから」グビグビ
ミイラ男「ぷはっ! おおっ……肌がちょっと瑞々しくなってきたような!」
ミイラ男「人間時代に戻ったような! ……気がする」
女「でしょ!」
女「じゃあ、今夜のご飯はアジのミイラね」
ミイラ男「干物っていえよ」
54: 2020/10/07(水) 21:55:19.886 ID:4gJal0vV0
ミイラ男「だけど、住む場所を与えてくれたのは感謝するよ。ありがとう」
ミイラ男「あのまま街を徘徊してたら、きっともっと大騒ぎになってた」
女「どういたしまして」
女「“ミイラとりがミイラになる”って言葉があるけど――」
女「あなたはミイラになるかもしれなかった私を助けてくれた……」
女「だから……きっといつか人間に戻れるよ!」
ミイラ男「ハハ……だといいけどな」
猫「ニャーン」
おわり
ミイラ男「あのまま街を徘徊してたら、きっともっと大騒ぎになってた」
女「どういたしまして」
女「“ミイラとりがミイラになる”って言葉があるけど――」
女「あなたはミイラになるかもしれなかった私を助けてくれた……」
女「だから……きっといつか人間に戻れるよ!」
ミイラ男「ハハ……だといいけどな」
猫「ニャーン」
おわり
55: 2020/10/07(水) 21:55:24.358
平和
56: 2020/10/07(水) 21:56:06.043
感動した
57: 2020/10/07(水) 21:58:30.378
乙
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