1: 2014/03/29(土) 19:08:26.30
うちのめぐりをよろしくな。八幡くん」
目の前にいるめぐり先輩のお父さん。めぐりパパがそう言った。
めぐり先輩とは対照的に、ルールに厳格でしっかり者という印象を受ける。
なんでも中学の先生をしているらしい。俺の中学にもこんな感じの体育教師がいたなあ~
そしてやたら二人組つくらせようとしてたなあ~(遠い目) 俺はいつも余ってたなあ~(遠い目)
目の前にいるめぐり先輩のお父さん。めぐりパパがそう言った。
めぐり先輩とは対照的に、ルールに厳格でしっかり者という印象を受ける。
なんでも中学の先生をしているらしい。俺の中学にもこんな感じの体育教師がいたなあ~
そしてやたら二人組つくらせようとしてたなあ~(遠い目) 俺はいつも余ってたなあ~(遠い目)
2: 2014/03/29(土) 19:09:04.52 ID:FmSCfNes0
「まあ、結婚は二人が大学を卒業してからだけど、この同棲も練習だと思って」
めぐり先輩のお母さん。めぐりママが言った。こちらはめぐり先輩同様、ほんわかふわふ
わした感じがする。お母さん似だったんですね先輩。
俺は日本の慣習である年功序列には反対だが、こんなふうに年上に下手に出られたら
それはそれで居心地が悪い。これは幼少期からの刷り込みのせいだろう。
責任者は誰だ。メディアが悪い。社会が悪い。そうだ、アメリカへ行こう!
めぐり先輩のお母さん。めぐりママが言った。こちらはめぐり先輩同様、ほんわかふわふ
わした感じがする。お母さん似だったんですね先輩。
俺は日本の慣習である年功序列には反対だが、こんなふうに年上に下手に出られたら
それはそれで居心地が悪い。これは幼少期からの刷り込みのせいだろう。
責任者は誰だ。メディアが悪い。社会が悪い。そうだ、アメリカへ行こう!
3: 2014/03/29(土) 19:09:45.59 ID:FmSCfNes0
「いえそんな。こちらこそお願いします」
一応マナーとしてそう言ったら、隣からプッ~クスクスてな感じの笑いが聞こえた。
めぐり先輩~? 何がおかしいんですか~?
俺と目が合うと、彼女は恥ずかしそうにぶんぶんと首を振る。
か、かわいい……今の写メ撮りたかった。そしてプライベートフォルダに保存したかった(こ
こ重要)。なんで世のバカップルはツーショットを待ち受けにするんだろうね。
それこそプ~クスクスもんだろ。
一応マナーとしてそう言ったら、隣からプッ~クスクスてな感じの笑いが聞こえた。
めぐり先輩~? 何がおかしいんですか~?
俺と目が合うと、彼女は恥ずかしそうにぶんぶんと首を振る。
か、かわいい……今の写メ撮りたかった。そしてプライベートフォルダに保存したかった(こ
こ重要)。なんで世のバカップルはツーショットを待ち受けにするんだろうね。
それこそプ~クスクスもんだろ。
4: 2014/03/29(土) 19:10:45.12 ID:FmSCfNes0
そんなことがあったのが約一カ月前。
「八幡くん、サボっちゃだめだよ」
俺はほんわかした声で回想から引き戻された。
声の主、めぐり先輩は自分の荷物を部屋にえっちらおっちらと運んでいる。
俺たちは今、新居のアパートに荷物を運びこんでいるのだ。
「八幡くん、サボっちゃだめだよ」
俺はほんわかした声で回想から引き戻された。
声の主、めぐり先輩は自分の荷物を部屋にえっちらおっちらと運んでいる。
俺たちは今、新居のアパートに荷物を運びこんでいるのだ。
5: 2014/03/29(土) 19:12:02.97 ID:FmSCfNes0
「いや、ちょっと疲れちゃって」
「ふーん、じゃあ休憩しよっか」
片付け始めてまだ10分もたってないんだが……なんでこの人は真に受けちゃうのかな…
騙し合いのゲーム負けちゃうよ? 莫大な借金背負わされちゃうよ?
まだ家具一つ置いてないフローリングに二人して座り込む。来る前に買っておいたペット
ボトルのジュースを飲んだ。プハっ キンキンに冷えてやがる。
「ふーん、じゃあ休憩しよっか」
片付け始めてまだ10分もたってないんだが……なんでこの人は真に受けちゃうのかな…
騙し合いのゲーム負けちゃうよ? 莫大な借金背負わされちゃうよ?
まだ家具一つ置いてないフローリングに二人して座り込む。来る前に買っておいたペット
ボトルのジュースを飲んだ。プハっ キンキンに冷えてやがる。
6: 2014/03/29(土) 19:12:45.78 ID:FmSCfNes0
「意外と綺麗だねーこれで家賃3万は掘り出し物だね」
「そうですね。 こうなるとワケあり物件なんじゃないかと疑ってしまいます」
「も~怖いこと言わないでよ~」
めぐり先輩が俺の肩をぺちぺちと叩く。
そんな風にいちゃいちゃを楽しんでいると、ピンポーンとインターホンが鳴った。
ちっ!邪魔しやがって。
「そうですね。 こうなるとワケあり物件なんじゃないかと疑ってしまいます」
「も~怖いこと言わないでよ~」
めぐり先輩が俺の肩をぺちぺちと叩く。
そんな風にいちゃいちゃを楽しんでいると、ピンポーンとインターホンが鳴った。
ちっ!邪魔しやがって。
7: 2014/03/29(土) 19:13:13.14 ID:FmSCfNes0
立ち上がろうとする俺を制し、「あ、あたし出るよ」とめぐりが立ち上がった。
「こんにちは~ 今日入ってきた城廻さん?」
「はいそうです~」
どうやら大家さんらしい。ゴミだしの日やら家賃についてやらの説明を受けている。
律儀な大家さんである。以下めぐり先輩と大家さんの会話
「こんにちは~ 今日入ってきた城廻さん?」
「はいそうです~」
どうやら大家さんらしい。ゴミだしの日やら家賃についてやらの説明を受けている。
律儀な大家さんである。以下めぐり先輩と大家さんの会話
8: 2014/03/29(土) 19:13:46.66 ID:FmSCfNes0
「学生さん? 一人暮らし?」
「いえいえ二人です」
「ふ~ん彼氏?」
「ええまあ」
「同棲かー いいねー」
どこまで聞いてくるんだこの人は。と思っていたら
「じゃあ、そういうことだから」
といつの間にか会話が終了していた。
「いえいえ二人です」
「ふ~ん彼氏?」
「ええまあ」
「同棲かー いいねー」
どこまで聞いてくるんだこの人は。と思っていたら
「じゃあ、そういうことだから」
といつの間にか会話が終了していた。
9: 2014/03/29(土) 19:14:26.02 ID:FmSCfNes0
ぼっちは人の会話を聞くのも苦手だ。だから人数が増えると話に入っていけなくなる。
5人くらいになると、え?なにおまえいたの?って言われるレベル。 これ始めて言われ
た時きつかったわー。友達だと思ってたのになあ……
5人くらいになると、え?なにおまえいたの?って言われるレベル。 これ始めて言われ
た時きつかったわー。友達だと思ってたのになあ……
10: 2014/03/29(土) 19:15:25.99 ID:FmSCfNes0
「家具は今日の夜当たりに届くのかな」
「マジですか…早く終わりたいのに…」
「こればかりは、ちかたないね」
「マジですか…早く終わりたいのに…」
「こればかりは、ちかたないね」
11: 2014/03/29(土) 19:16:16.05 ID:FmSCfNes0
MEGURI
一通り片付けを済ませると、そのほか足りないものを買いに行くために、私と八幡くんはスーパーへと出かけた。
このアパートはスーパーもコンビニも近いので買い物も便利だ。
あと本屋も近い。暇つぶしには困らないかな。1,2、3年の頃と違って
今は八幡くんもいる。本屋さんに行く時は彼も誘ってみよう。いまから楽しみだな~
一通り片付けを済ませると、そのほか足りないものを買いに行くために、私と八幡くんはスーパーへと出かけた。
このアパートはスーパーもコンビニも近いので買い物も便利だ。
あと本屋も近い。暇つぶしには困らないかな。1,2、3年の頃と違って
今は八幡くんもいる。本屋さんに行く時は彼も誘ってみよう。いまから楽しみだな~
12: 2014/03/29(土) 19:17:19.51 ID:FmSCfNes0
春休み中とはいえ、平日昼間のスーパーは客足もまばらだ。
おかげで買い物もスイスイ。夕方に来てたらこうはいかない。
昔行ったことがあるが、仕事帰りのお母さんたちでごった返す。買い物はなかなか進まないし、レジでも30分く
らい並ぶ。家に帰ったときはヘトヘトになっていた。あれは本当に疲れた
おかげで買い物もスイスイ。夕方に来てたらこうはいかない。
昔行ったことがあるが、仕事帰りのお母さんたちでごった返す。買い物はなかなか進まないし、レジでも30分く
らい並ぶ。家に帰ったときはヘトヘトになっていた。あれは本当に疲れた
16: 2014/03/29(土) 20:32:27.14 ID:FmSCfNes0
あらかたの食材や飲み物を買い、家庭用グッズコーナーの近くまで来た。
「せっかくだし防災グッズも買っとこっか」
私は懐中電灯一つとペンライト二つを取る。
「ペンライトあるなら懐中電灯はいらないんじゃないですか?」
ぶーたれる八幡くん。うーん、意見が分かれてしまったか。でも負けないぞ。
「せっかくだし防災グッズも買っとこっか」
私は懐中電灯一つとペンライト二つを取る。
「ペンライトあるなら懐中電灯はいらないんじゃないですか?」
ぶーたれる八幡くん。うーん、意見が分かれてしまったか。でも負けないぞ。
17: 2014/03/29(土) 20:32:52.23 ID:FmSCfNes0
「携帯用と非携帯用ってことで。備えあれば憂いなし、ってね」
「はあ」
しぶしぶであるが、賛成してくれたようだった。
多すぎて困るものでじゃないから大丈夫だよ。と付け足す。八幡は頷いた。
「はあ」
しぶしぶであるが、賛成してくれたようだった。
多すぎて困るものでじゃないから大丈夫だよ。と付け足す。八幡は頷いた。
18: 2014/03/29(土) 20:33:19.75 ID:FmSCfNes0
スーパーを出て家に帰る途中、私は言った
「帰ったら引っ越しパーティーの準備だね」
「えー明後日ですよね? 準備は明日でいいんじゃ」
「今日やったら明日はお休みだよ。 わたしはそっちのほうがいいな」
「お、そうですね……」
「帰ったら引っ越しパーティーの準備だね」
「えー明後日ですよね? 準備は明日でいいんじゃ」
「今日やったら明日はお休みだよ。 わたしはそっちのほうがいいな」
「お、そうですね……」
19: 2014/03/29(土) 20:34:08.87 ID:FmSCfNes0
八幡の、思索をめぐらせる顔に、私は見とれてしまった。高校時代は弟、というか子ども
としか見えなかったけど。大学で久しぶりに出会って、やたら男の子っぽくなっていた。
こうして私が四年生になると、両親公認の中になったけどまだ彼にはやり残していること
がある。引っ越しパーティーはそれをやりとげるためでもある。
彼女としてはちょっと複雑だけど。
としか見えなかったけど。大学で久しぶりに出会って、やたら男の子っぽくなっていた。
こうして私が四年生になると、両親公認の中になったけどまだ彼にはやり残していること
がある。引っ越しパーティーはそれをやりとげるためでもある。
彼女としてはちょっと複雑だけど。
20: 2014/03/29(土) 20:34:34.87 ID:FmSCfNes0
おっと、八幡にも伝えとかなきゃね。
黙っておくのはフェアじゃないや。怒ったり…しないよね…?
「ねえ八幡、明後日来るのは」
「ああ小町? 大丈夫らしいですよ。あいつ自宅通学ですし」
「ううん、そうじゃなくてね。 雪ノ下さんと由比ヶ浜さんも来ることになったんだけど、いいかな?」
八幡の表情が一瞬だけひきつったのを私は見逃さなかった。でもすぐにいつもの表情に戻
る。クールな子だなあ
「ええ、構いませんよ。俺は」
黙っておくのはフェアじゃないや。怒ったり…しないよね…?
「ねえ八幡、明後日来るのは」
「ああ小町? 大丈夫らしいですよ。あいつ自宅通学ですし」
「ううん、そうじゃなくてね。 雪ノ下さんと由比ヶ浜さんも来ることになったんだけど、いいかな?」
八幡の表情が一瞬だけひきつったのを私は見逃さなかった。でもすぐにいつもの表情に戻
る。クールな子だなあ
「ええ、構いませんよ。俺は」
21: 2014/03/29(土) 20:35:04.09 ID:FmSCfNes0
彼は、私が事情を知らないと思っているはず。だから反対できないのだろう。
すれば不自然に映るから。私は八幡を騙していることになる。ごめんね。
でも同じ女の子としては、彼女たちのことも考えてほしいかな。
「あは、よかった」
「あと、もうひとつお願い。そろそろめぐり、って呼んでくれない?」
先輩付けてると雪ノ下さん達が、まだ自分たちにもチャンスがあるかもって受け取っちゃうかも。
「そうですね。じゃあめぐりさんで」
八幡は笑った。
信号を渡ると、私たちのアパートが見えてきた。
すれば不自然に映るから。私は八幡を騙していることになる。ごめんね。
でも同じ女の子としては、彼女たちのことも考えてほしいかな。
「あは、よかった」
「あと、もうひとつお願い。そろそろめぐり、って呼んでくれない?」
先輩付けてると雪ノ下さん達が、まだ自分たちにもチャンスがあるかもって受け取っちゃうかも。
「そうですね。じゃあめぐりさんで」
八幡は笑った。
信号を渡ると、私たちのアパートが見えてきた。
22: 2014/03/29(土) 20:35:48.57 ID:FmSCfNes0
HACHIMAN
「では乾杯―」
めぐりさんの声を合図にして、コップのぶつかり合う音がする。リア充じゃん。
俺リア充じゃんもう。ところがどっこい、由比ヶ浜と雪ノ下の二人とは上手く視線
を合わせられない。こいつらとは卒業間際に…ってどうでもいいよね。うんうん。飲みの
席でこんな話はするべきでない。うん。
「では乾杯―」
めぐりさんの声を合図にして、コップのぶつかり合う音がする。リア充じゃん。
俺リア充じゃんもう。ところがどっこい、由比ヶ浜と雪ノ下の二人とは上手く視線
を合わせられない。こいつらとは卒業間際に…ってどうでもいいよね。うんうん。飲みの
席でこんな話はするべきでない。うん。
23: 2014/03/29(土) 20:36:14.25 ID:FmSCfNes0
「めぐり先輩とヒッキーはいつから付き合ってるんですか?」
ガハマさーーん! そんなド直球の質問しちゃう?
「そ、それ小町も知りたいです」
おまえ知らなかったのかよ。てっきり聞いたもんだと思ってたが。
「えー、 は、はずかしーなー」
ガハマさーーん! そんなド直球の質問しちゃう?
「そ、それ小町も知りたいです」
おまえ知らなかったのかよ。てっきり聞いたもんだと思ってたが。
「えー、 は、はずかしーなー」
24: 2014/03/29(土) 20:36:42.56 ID:FmSCfNes0
めぐりさんは頬を若干赤らめながら、言った。これはあれだ。
べっ、別に言いたくないってわけじゃないんだからねっ! という表現だ。
めぐりさんツンデレだったのか。
めぐりさんとは俺大学二年、めぐり先輩三年の頃から付き合っている。
同じ大学で、自宅も近いということ、
さらにお互い昼寝や読書が趣味ということで気があったのだ。趣味の一致、自宅が近い。
心理学的にも二人が恋人同士になるのは理にかなっている。
べっ、別に言いたくないってわけじゃないんだからねっ! という表現だ。
めぐりさんツンデレだったのか。
めぐりさんとは俺大学二年、めぐり先輩三年の頃から付き合っている。
同じ大学で、自宅も近いということ、
さらにお互い昼寝や読書が趣味ということで気があったのだ。趣味の一致、自宅が近い。
心理学的にも二人が恋人同士になるのは理にかなっている。
25: 2014/03/29(土) 20:37:17.55 ID:FmSCfNes0
めぐりさんが答えた後も、デートの場所とか、由比ヶ浜が矢継ぎ早に質問を浴びせ
ている。まあ今回は俺たちの引っ越しパーティーだし、話題が俺たちの話になるのは自然
の摂理だろう。
しかし複数人いると弾かれるのは全く変わってないな俺。だんだんとガールズトーク
みたいになってきたぞこれ。女子の飲み会ってこんな感じなのか……と俺はまた一つ賢く
なってしまった。
ている。まあ今回は俺たちの引っ越しパーティーだし、話題が俺たちの話になるのは自然
の摂理だろう。
しかし複数人いると弾かれるのは全く変わってないな俺。だんだんとガールズトーク
みたいになってきたぞこれ。女子の飲み会ってこんな感じなのか……と俺はまた一つ賢く
なってしまった。
26: 2014/03/29(土) 20:37:44.78 ID:FmSCfNes0
そんな感じで思考の海に潜っていると
「あ、わたしおつまみ買ってくる」
めぐりさんがゆっくりと立ち上がった。
「あ、じゃあ俺も行きます」と俺が立ち上がると小町が俺の腕をがしっと掴んでくる。
いてえ…
「なんだよ?」
「小町が行くよ。 家主が一人もいないとまずいでしょ」
「八幡くんは残ってて。 また大家さんくるかもしれないし」
「わかりましたよ」
「あ、わたしおつまみ買ってくる」
めぐりさんがゆっくりと立ち上がった。
「あ、じゃあ俺も行きます」と俺が立ち上がると小町が俺の腕をがしっと掴んでくる。
いてえ…
「なんだよ?」
「小町が行くよ。 家主が一人もいないとまずいでしょ」
「八幡くんは残ってて。 また大家さんくるかもしれないし」
「わかりましたよ」
27: 2014/03/29(土) 20:38:22.67 ID:FmSCfNes0
とは言ったもののこの場を俺につなげと? 無理無理。ここは由比ヶ浜に任せよう。
…
…
…
…
俺の期待とは裏腹に場には沈黙が起きる。いつぞやの奉仕部部室のように。
ちがうのは由比ヶ浜の振る舞い。視線をきょろつかせ、必氏で話題を探していたあの頃と
は違う。俯いて何か言いたげな様子だった。
…
…
…
…
俺の期待とは裏腹に場には沈黙が起きる。いつぞやの奉仕部部室のように。
ちがうのは由比ヶ浜の振る舞い。視線をきょろつかせ、必氏で話題を探していたあの頃と
は違う。俯いて何か言いたげな様子だった。
28: 2014/03/29(土) 20:38:55.48 ID:FmSCfNes0
「ねえ比企谷くん」
口を開いたのは雪ノ下だった。
「なんだ?」
鋭い目。しかし出会った頃のような憎悪に満ちた目ではなかった。
何を言われるのかはうすうす感づいている。
口を開いたのは雪ノ下だった。
「なんだ?」
鋭い目。しかし出会った頃のような憎悪に満ちた目ではなかった。
何を言われるのかはうすうす感づいている。
29: 2014/03/29(土) 20:39:37.25 ID:FmSCfNes0
「どうして…私を…いえ、私たちをふったの?」
言葉が上手く見つからず俺は黙り込んでいた。
「いえ、別にあなたと城廻先輩の関係を壊そうとしているわけではないの。 私たちは応援しているわ。あなた達のこと」
「ただ…交際を断った理由を知りたいだけ…わたしたち聞いてないのよ」
「それを知ってどうすんだ…?」
やんわりと聞くつもりだったが、語調が荒っぽくなってしまう。
言葉が上手く見つからず俺は黙り込んでいた。
「いえ、別にあなたと城廻先輩の関係を壊そうとしているわけではないの。 私たちは応援しているわ。あなた達のこと」
「ただ…交際を断った理由を知りたいだけ…わたしたち聞いてないのよ」
「それを知ってどうすんだ…?」
やんわりと聞くつもりだったが、語調が荒っぽくなってしまう。
30: 2014/03/29(土) 20:40:21.71 ID:FmSCfNes0
雪ノ下と由比ヶ浜には、卒業間際に告白された。日はそれぞれ別だったが恐らく二人
で示し合わせていたんだろう。確か、
ごめん。おまえとは付き合えない
そう言って俺はすぐに立ち去ったんだっけか。否。正確にいえば逃げた。
顔を見るのが恐ろしかったんだ。
で示し合わせていたんだろう。確か、
ごめん。おまえとは付き合えない
そう言って俺はすぐに立ち去ったんだっけか。否。正確にいえば逃げた。
顔を見るのが恐ろしかったんだ。
31: 2014/03/29(土) 20:41:01.78 ID:FmSCfNes0
「ヒッキー、理由教えてくれない…かな…あっどうしてもイヤっていうなら…いい…けど」
由比ヶ浜が苦笑いしながら言う。一瞬その提案に乗ろうかという思いが頭をよぎった。
だめだ。おそらくこれはめぐり先輩も小町先輩も協力者だ。二人のためにこうやって場を
セッティングしたんだろう。ここで黙秘するのは卑怯だ。
由比ヶ浜が苦笑いしながら言う。一瞬その提案に乗ろうかという思いが頭をよぎった。
だめだ。おそらくこれはめぐり先輩も小町先輩も協力者だ。二人のためにこうやって場を
セッティングしたんだろう。ここで黙秘するのは卑怯だ。
32: 2014/03/29(土) 20:41:33.17 ID:FmSCfNes0
「まあ…俺はあのままの関係が好きだったんだよ…お前らとは」
「雪ノ下とは罵倒し合って、由比ヶ浜はたまにイジったりして」
「最初は腹たったけどな、いつのまにか楽しくなってたんだよ、それが」
「だったら」
「付き合ったらそれはもう出来なくなる」
「あ…」由比ヶ浜の掠れた声がする。
「理由は以上だ」
「雪ノ下とは罵倒し合って、由比ヶ浜はたまにイジったりして」
「最初は腹たったけどな、いつのまにか楽しくなってたんだよ、それが」
「だったら」
「付き合ったらそれはもう出来なくなる」
「あ…」由比ヶ浜の掠れた声がする。
「理由は以上だ」
33: 2014/03/29(土) 20:42:13.60 ID:FmSCfNes0
「呆れたわ…・ほんとに」
雪ノ下の声は鋭い。恨まれるのは覚悟の上だ。
「比企谷くん」
さて、どんな罵倒が来るのやら。
雪ノ下の声は鋭い。恨まれるのは覚悟の上だ。
「比企谷くん」
さて、どんな罵倒が来るのやら。
34: 2014/03/29(土) 20:43:06.71 ID:FmSCfNes0
「あなたらしく、屁理屈をごちゃごちゃ並べてくれて安心したわ」
…
…
…
…
「は?」
「は? 何? 日本語も理解できないの? 小学校からやり直した方がいいのでは?」
「おい」
…
…
…
…
「は?」
「は? 何? 日本語も理解できないの? 小学校からやり直した方がいいのでは?」
「おい」
35: 2014/03/29(土) 20:43:52.16 ID:FmSCfNes0
いきなり暴言スキルパワーアップですか。やっぱ可愛くねええ…
「うんうん。これで恋に理屈なんてないだろ、とか言ってたら殴ってたかもね」
「おい、理不尽すぎんだろ。腐るほどいるぞそんなこと言う男」
「ヒッキーが言うとなんか、ね…」
雪ノ下と顔を見合わせてうえへ、という顔をした。
か、可愛くねええ…
「ちなみに城廻先輩とはなんで付き合ったの?」
「別に特に理由はねえよ。恋に理屈なんていらねえだろ」
空になった缶チューハイが俺の目の前にとんできた。
「うんうん。これで恋に理屈なんてないだろ、とか言ってたら殴ってたかもね」
「おい、理不尽すぎんだろ。腐るほどいるぞそんなこと言う男」
「ヒッキーが言うとなんか、ね…」
雪ノ下と顔を見合わせてうえへ、という顔をした。
か、可愛くねええ…
「ちなみに城廻先輩とはなんで付き合ったの?」
「別に特に理由はねえよ。恋に理屈なんていらねえだろ」
空になった缶チューハイが俺の目の前にとんできた。
36: 2014/03/29(土) 20:44:34.56 ID:FmSCfNes0
MEGURI
「んー」
「んー」
私につられたのか、隣にいる小町ちゃんも伸びをする。
「大丈夫ですかね、お兄ちゃん」
「大丈夫だって。八幡くんなら」
私はそっと小町ちゃんの頭をなでる。彼女は私を見て微笑んだ。
「んー」
「んー」
私につられたのか、隣にいる小町ちゃんも伸びをする。
「大丈夫ですかね、お兄ちゃん」
「大丈夫だって。八幡くんなら」
私はそっと小町ちゃんの頭をなでる。彼女は私を見て微笑んだ。
37: 2014/03/29(土) 20:45:20.21 ID:FmSCfNes0
しばらくの沈黙……
おつまみを買った後、こうして公園のベンチに座り話しこんでいた。
主に八幡くんのことについてだったけど。
彼ならたぶん気が付いているだろう。
私たちが示し合わせてこんな状況を造り上げたことを。
おつまみを買った後、こうして公園のベンチに座り話しこんでいた。
主に八幡くんのことについてだったけど。
彼ならたぶん気が付いているだろう。
私たちが示し合わせてこんな状況を造り上げたことを。
38: 2014/03/29(土) 20:46:06.09 ID:FmSCfNes0
ふいに小町ちゃんの携帯が鳴った。
「ん? そうですか? じゃあ戻ります」
どうやら終わったらしい。
「結衣さんからでした。さっ、戻りましょう」
私は頷いた。戻ったら彼に謝ろう。
「ん? そうですか? じゃあ戻ります」
どうやら終わったらしい。
「結衣さんからでした。さっ、戻りましょう」
私は頷いた。戻ったら彼に謝ろう。
39: 2014/03/29(土) 20:46:50.34 ID:FmSCfNes0
HACHIMAN
めぐりさんと小町が戻ってきた。
つまみ買うのにどんだけ時間かかってんだおい。
まあ何をしていたかは薄々感付いているが。俺の不手際で手間かけさせたこと、
めぐりさんと小町にも謝らなきゃな。でも今は恥ずいんでこいつらが帰ってからにしよ。
めぐりさんと小町が戻ってきた。
つまみ買うのにどんだけ時間かかってんだおい。
まあ何をしていたかは薄々感付いているが。俺の不手際で手間かけさせたこと、
めぐりさんと小町にも謝らなきゃな。でも今は恥ずいんでこいつらが帰ってからにしよ。
40: 2014/03/29(土) 20:48:22.59 ID:FmSCfNes0
と、思ったのだが、思いつめていたことがいきなり爆発したのか、
ベロンベロンになるまで飲み続けた。今現在、雪ノ下、由比ヶ浜、小町
めぐりさんも、夢の中だ。
平塚先生に付き合わされたせいで俺は酒にはつよくなったのだ。これくらい
なんてことはまるでない。
俺は電気を消して、四人の女の子に囲まれて眠った。
ベロンベロンになるまで飲み続けた。今現在、雪ノ下、由比ヶ浜、小町
めぐりさんも、夢の中だ。
平塚先生に付き合わされたせいで俺は酒にはつよくなったのだ。これくらい
なんてことはまるでない。
俺は電気を消して、四人の女の子に囲まれて眠った。
41: 2014/03/29(土) 20:49:02.76 ID:FmSCfNes0
…
…
…
ピカッっと光が目をさす。
誰だバカ野郎。
「えへへへ、やっぱまだ起きてた?」
めぐり先輩がペンライトを持ち、悪戯っぽく笑っている。
42: 2014/03/29(土) 20:49:28.98 ID:FmSCfNes0
「そっちこそ」
「ふふふ、わたしはお酒にはぜったい飲まれないんだよー」
「意外ですね」
「あ、そうだ八幡くんもはい」
ペンライトを渡される。付けるとめぐりさんの顔が良く見えた。
「ふふふ、わたしはお酒にはぜったい飲まれないんだよー」
「意外ですね」
「あ、そうだ八幡くんもはい」
ペンライトを渡される。付けるとめぐりさんの顔が良く見えた。
43: 2014/03/29(土) 20:50:16.57 ID:FmSCfNes0
…
…
…
…
謎の沈黙。きょうは多いな、謎の沈黙。
めぐりさんは微笑んでいる。
俺は少しずつ顔を近づけていく。あと少し。あと少し。
めぐり先輩は笑顔を絶やさない。俺はペンライトの明かりを消した。
俺は彼女の唇に自分のそれを近づけた。
…
…
…
謎の沈黙。きょうは多いな、謎の沈黙。
めぐりさんは微笑んでいる。
俺は少しずつ顔を近づけていく。あと少し。あと少し。
めぐり先輩は笑顔を絶やさない。俺はペンライトの明かりを消した。
俺は彼女の唇に自分のそれを近づけた。
44: 2014/03/29(土) 20:50:55.40 ID:FmSCfNes0
お わ り
45: 2014/03/29(土) 21:05:32.61
まだいけるだろ
本気出しちゃえよ
本気出しちゃえよ
48: 2014/03/30(日) 11:52:43.15
お前なら書ける、やるんだ
49: 2014/03/30(日) 23:46:58.99
乙
面白かった
面白かった
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